(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656032
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】車両の後部保護構造
(51)【国際特許分類】
B60K 6/40 20071001AFI20141225BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20141225BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20141225BHJP
B60G 7/00 20060101ALI20141225BHJP
B62D 21/00 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
B60K6/40
B60K6/48
B60K1/00
B60G7/00
B62D21/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-527708(P2012-527708)
(86)(22)【出願日】2011年7月29日
(86)【国際出願番号】JP2011067413
(87)【国際公開番号】WO2012017935
(87)【国際公開日】20120209
【審査請求日】2013年6月10日
(31)【優先権主張番号】特願2010-174337(P2010-174337)
(32)【優先日】2010年8月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彰
(72)【発明者】
【氏名】新名 祐三
(72)【発明者】
【氏名】坂口 佳弘
【審査官】
岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−137806(JP,A)
【文献】
特開2006−088871(JP,A)
【文献】
特開2004−127747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00,6/40,6/48,15/063
B62D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行駆動源としてエンジン及び後輪駆動用モータを備え、前記後輪駆動用モータが前記車両の左右後輪の間に配置されるとともに、前記エンジンの燃料タンクと前記後輪駆動用モータとが車両前後方向に並べて配置された車両の後部保護構造であって、
前記後輪駆動用モータを支持するリヤサスペンションのサスペンションメンバが、車両前後方向に延びる左右のサイドメンバと、該左右のサイドメンバの前部を接続し車両左右方向に延びる第1のリヤクロスメンバと、前記左右のサイドメンバの後部を接続し車両左右方向に延びる第2のリヤクロスメンバとにより井桁状に形成されており、
前記燃料タンクは前記後輪駆動用モータの車両前方側に配置され、
前記第1のリヤクロスメンバは前記後輪駆動用モータと前記燃料タンクとの間を仕切るように該後輪駆動用モータの前方に立設し、
前記後輪駆動用モータ及び当該後輪駆動用モータに接続されている電力供給線は前記サスペンションメンバに囲まれた空間内に配置され、
前記第2のリヤクロスメンバは、前記後輪駆動用モータの下方に配置され、該後輪駆動用モータの後側下部を支持するとともに、
前記電力供給線と前記後輪駆動用モータとの接続部は、前記車両前後方向において前記燃料タンクとは反対側で前記後輪駆動用モータの後面に設けられ、前記第2のリヤクロスメンバの後端面よりも前方で、かつ前記後輪駆動用モータの後端部よりも前方で接続され、前記第2のリヤクロスメンバと平面視で重なっており、
更に、前記電力供給線は、前記接続部から車幅方向に延びてから湾曲して前記車両の前方に延びていることを特徴とする車両の後部保護構造。
【請求項2】
前記後輪駆動用モータは、前記後輪駆動用モータの上方に配置されて後輪駆動用モータの駆動を制御するコントロールユニットから前記電力供給線を介して電力が供給されており、
前記電力供給線は、前記サスペンションメンバに囲まれた空間内で前記コントロールユニットと接続されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の後部保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部構造に関し、後方から追突されたときに後輪駆動用モータ及び燃料タンクの保護を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
走行駆動源としてモータを搭載した車両において、後輪駆動車あるいは4輪駆動車のように、後輪をモータにて駆動する車両が知られている。このような車両では、動力伝達機構をコンパクト化するため、左右後輪の間にモータが配置されることが一般的である。また、モータは、荷室の下方に配置されることが多く、荷室のスペースを確保するためにモータはできるだけ低い位置に配置されるよう設定されている。
【0003】
更に、ハイブリッド車のように駆動源としてモータの他にエンジンを備えた車両も開発されている。このようにエンジンを備えた車両、特に乗用車では、車室を確保するため、通常、エンジンの燃料タンクが後部座席の下方に配置されている。したがって、モータにて後輪駆動するハイブリッド車では、モータの前方に燃料タンクが配置されることが、スペース上有効であり、モータと燃料タンクが車両前後方向に並んで配置されるレイアウトのハイブリッド車が公知となっている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−195259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、左右後輪の間にモータを備え、かつモータの前方に燃料タンクを配置した車両では、後方から追突された場合、モータが前方に押し出されて燃料タンクに接触し破損させる虞がある。
また、モータには、同モータの駆動を制御するコントロールユニットから駆動電力を供給するための電力供給線が接続されている。したがって、後方から後続車両に追突されてモータが移動した場合に、モータに接続されている電力供給線が切断あるいは破損する虞があり、露出した電力供給線が破損した燃料タンクに接触する虞もある。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、エンジンを備えるとともに後輪をモータにて駆動する車両において、後方から追突されたときに、モータ及び燃料タンクの保護を図ることが可能な車両の後部保護構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するため、車両の走行駆動源としてエンジン及び後輪駆動用モータを備え、後輪駆動用モータが車両の左右後輪の間に配置されるとともに、エンジンの燃料タンクと後輪駆動用モータとが車両前後方向に並べて配置された車両の後部保護構造であって、後輪駆動用モータを支持するリヤサスペンションのサスペンションメンバを井桁状に形成し、
燃料タンクを後輪駆動用モータの車両前方側に配置し、第1のリヤクロスメンバを後輪駆動用モータと燃料タンクとの間を仕切るように該後輪駆動用モータの前方に立設し、後輪駆動用モータ及び当該後輪駆動用モータに接続されている電力供給線を、サスペンションメンバに囲まれた空間内に配置
し、第2のリヤクロスメンバを、後輪駆動用モータの下方に配置し、該後輪駆動用モータの後側下部を支持させるとともに、電力供給線と後輪駆動用モータとの接続部を、車両前後方向において燃料タンクとは反対側で後輪駆動用モータの後面に設け、第2のリヤクロスメンバの後端面よりも前方で、かつ後輪駆動用モータの後端部よりも前方で接続し、第2のリヤクロスメンバと平面視で重ね、更に、電力供給線を、接続部から車幅方向に延びてから湾曲して車両の前方に延びるようにした。
【0008】
請求項2に記載の発明では
、後輪駆動用モータは、
後輪駆動用モータの上方に配置されて後輪駆動用モータの駆動を制御するコントロールユニットから電力供給線を介して電力が供給されており
、電力供給線は、サスペンションメンバに囲まれた空間内でコントロールユニットと接続するようにした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、後輪駆動用モータ及びこれに接続されている電力供給線が、井桁状に形成されたサスペンションメンバに囲まれた空間に配置されているので、車両が後方から追突されたり、後輪付近に側突された場合に、比較的高剛性であるサスペンションメンバによって後輪駆動用モータ及び電力供給線が保護される。また、追突されたときにサスペンションメンバに支持されている後輪駆動用モータの移動が抑制されるので、例えばモータの前方に燃料タンクが配置されている場合には、燃料タンクと後輪駆動用モータ及び電力供給線との接触を回避することができ、燃料タンクの保護を図ることができる。
【0010】
また、追突時に例え後輪駆動用モータあるいは燃料タンクが前方に移動したとしても、後輪駆動用モータに接続されている電力供給線が燃料タンクとは反対側に位置しているので、電力供給線と燃料タンクとの接触を確実に回避させることができる。
請求項
2の発明によれば、電力供給線がサスペンションメンバに囲まれた空間内でコントロールユニットと接続しているので、コントロールユニットとの接続部を含み電力供給線がサスペンションメンバに囲まれた空間内に配置され、追突時や側突時にこの電力供給線の接続部の剪断破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の走行駆動系機器の配置を示す側面図。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両後部の構造を示す平面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両後部の構造を示す後面図。
【
図4】本発明の実施形態に係る高電圧線の配置を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の走行駆動系の機器の配置を示す側面図である。
図1に示すように、本発明のモータ保護構造を採用した本実施形態の車両1は、前輪2a、2bを駆動するエンジン3と、前輪駆動用モータ4及び後輪駆動用モータ5とを備えた4輪駆動式のハイブリッド車である。
【0013】
車両の左右前輪2a、2bの間には、エンジン3、前輪駆動用モータ4、エンジン3により駆動されて発電するジェネレータ6が備えられている。また、前輪駆動用モータ4の上方には前輪駆動用モータ4を作動制御するフロントモータコントロールユニット7が備えられている。
車両1の左右後輪10a、10bの間には、後輪駆動用モータ5が備えられている。後輪駆動用モータ5は、減速機5aと一体化して構成され、ドライブシャフト11を介して左右後輪10a、10bを駆動可能となっている。後輪駆動用モータ5の上方には後輪駆動用モータを作動制御するリヤモータコントロールユニット12が備えられている。
【0014】
車室13の床面14の下方には、前輪駆動用モータ4及び後輪駆動用モータ5の動力源としてのモータ駆動用バッテリ15が備えられている。モータ駆動用バッテリ15はフロントモータコントロールユニット7を介して前輪駆動用モータ4に接続されているとともに、リヤモータコントロールユニット12を介して後輪駆動用モータ5に接続されている。フロントモータコントロールユニット7及びリヤモータコントロールユニット12は、夫々インバータ、充電器及びDC−DCコンバータ等によって構成されており、モータ駆動用バッテリ15より供給された電力を昇圧して前輪駆動用モータ4及び後輪駆動用モータ5に供給し、これらのモータ4、5を作動制御するとともに、車両減速時に前輪駆動用モータ4及び後輪駆動用モータ5より電力を回生してモータ駆動用バッテリ15に充電可能な構成となっている。また、モータ駆動用バッテリ15は、エンジン3により駆動されたジェネレータ6によって発電した電力により充電可能となっている。
【0015】
車両1の後部座席16の下方には、エンジン3の燃料タンク17が設けられている。燃料タンク17は、モータ駆動用バッテリ15の後方かつ後輪駆動用モータ5の前方に、後輪駆動用モータ5と略同一の高さで配置されている。
図2、
図3は、車両後部の構造、詳しくはリヤサスペンション19の概略構造を示し、
図2は平面図、
図3は後面図である。
図4は、高電圧線40の配置を示す側面図である。
【0016】
図2〜4に示すように、本実施形態では、車両1のリヤサスペンション19は、車体にラバーブッシュ20を介して支持されたサスペンションメンバ21、アッパーリンク22a、22b、ロアリンク23a、23b、トレーリングアーム24a、24b及びトーコントロールリンク25a、25b、車体とロアリンク23a、23bとの間に設けられたコイルスプリング26a、26b及びダンパ27a、27bを備えたマルチリンク式サスペンションである。
【0017】
各リンク22a、22b、23a、23b、25a、25bを支持するサスペンションメンバ21は、互いに車両左右方向に間隔をおいて車両前後方向に延びる左右のサイドメンバ30a、30bと、当該左右のサイドメンバ30a、30bの前部を接続し車両左右方向に延びる第1のリヤクロスメンバ31と、左右のサイドメンバ30a、30bの後部を接続し車両左右方向に延びる第2のリヤクロスメンバ32とにより構成され、これらの高剛性の各メンバ30a、30b、31、32によって井桁状に形成されている。サスペンションメンバ21の内部には、左右のサイドメンバ30a、30b、第1のリヤクロスメンバ31及び第2のリヤクロスメンバ32に囲まれた空間33が形成されている。
【0018】
サスペンションメンバ21は、後輪駆動用モータ5を支持している。詳しくは、サスペンションメンバ21の第2のリヤクロスメンバ32は、後輪駆動用モータ5の下方に配置され、後輪駆動用モータ5の後側下部を支持している。サスペンションメンバ21の第1のリヤクロスメンバ31は、後輪駆動用モータ5と燃料タンク17との間を仕切るように、後輪駆動用モータ5の前方に立設し車両左右方向に延びて配置されており、後輪駆動用モータ5の前部を支持している。
【0019】
後輪駆動用モータ5に駆動電力を供給制御するリヤモータコントロールユニット12は、略直方体の形状であって、左右のサイドメンバ30a、30bの上方を車両左右方向に延びるように配置されている。リヤモータコントロールユニット12から後輪駆動用モータへ電力を供給する高電圧線40(電力供給線)は、全てサスペンションメンバ21に囲まれた空間33内に配置されている。詳しくは、高電圧線40は、その両端の接続部40a、40bを含めて、左右のサイドメンバ30a、30b、第1のリヤクロスメンバ31及び第2のリヤクロスメンバ32により囲まれた空間33内に配置されている。高電圧線40とリヤモータコントロールユニット12との接続部40aは、後輪駆動用モータ5と右サイドメンバ30bとの間であってかつリヤモータコントロールユニット12の下面に設けられている。高電圧線40と後輪駆動用モータ5との接続部40bは、後輪駆動用モータ40の後面に設けられており、第2のリヤクロスメンバ32の後端面32aより前方で接続されている。高電圧線40は、後輪駆動用モータ5との接続部40bから後輪駆動用モータ5の後方かつ第2のリヤクロスメンバ32の後端面32aより前方で車両右方向に延び、後輪駆動用モータ5と右サイドメンバ30bとの間で上方かつ前方に延びてリヤモータコントロールユニット12に接続されている。
【0020】
本実施形態では、上記のように、後輪駆動用モータ5が高剛性のサスペンションメンバ21に囲まれた空間33内に配置されているので、後方から後続車両に追突されたり、後輪付近に側突されたりしたときに後輪駆動用モータ5の破損を防止することができる。特に、車両前後方向に並んで配置される後輪駆動用モータ5と燃料タンク17との間を仕切るように第1のリヤクロスメンバ31が配置されているので、追突時に例え後輪駆動用モータ5が前方に押し出されたとしても、第1のリヤクロスメンバ31によって燃料タンク17への接触が回避され、燃料タンク17の破損を防止することができる。
【0021】
また、リヤモータコントロールユニット12と後輪駆動用モータ5とを接続する高電圧線40も、高剛性のサスペンションメンバ21に囲まれた空間33内に配置されているので、追突時や側突時に高電圧線40の破損も防止することができる。
更に、高電圧線40は燃料タンク17とは反対側である後輪駆動用モータ5の後部に接続されているので、例え追突時に後輪駆動用モータ5が前方に移動するとともに高電圧線40が破損して露出したとしても、燃料タンク5に高電圧線40が直接は接触し難い構造となり、燃料タンク17内の燃料に引火し難い構造となる。
【0022】
また、高電圧線40とリヤモータコントロールユニット12との接続部40aも、高電圧線40とともにサスペンションメンバ21に囲まれた空間33内に配置されているので、追突時や側突時に接続部40aでの剪断破壊を防止することができる。
本実施形態では、後輪駆動用モータ5の前方に燃料タンク17が配置されているが、後輪駆動用モータ5の後方に燃料タンク17が配置されている車両にも適用可能である。
【0023】
また、本実施形態では、マルチリンク式のリヤサスペンション19を備えた車両に本発明を適用しているが、リヤサスペンションに高剛性のメンバで囲まれた空間が形成されている車両であれば、本発明を適用可能である。
また、本実施形態では、前輪駆動用モータ4及び後輪駆動用モータ5による4輪駆動式のハイブリッド車に本発明を適用しているが、本発明はこれに限定するものでなく、例えば後輪のみモータで駆動するハイブリッド車等、後輪駆動用モータとエンジンとを車両前後方向に並べて配置した車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 車両
5 後輪駆動用モータ
12 リヤモータコントロールユニット
17 燃料タンク
19 リヤサスペンション
21 サスペンションメンバ
31 第1のリヤクロスメンバ
32 第2のリヤクロスメンバ
40 高電圧線
40a、40b 接続部