特許第5656083号(P5656083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656083
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】仮設部材
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/26 20060101AFI20141225BHJP
【FI】
   E04G21/26
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-134435(P2011-134435)
(22)【出願日】2011年6月16日
(65)【公開番号】特開2013-2145(P2013-2145A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】菅野 英幸
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−194061(JP,A)
【文献】 特開2006−347661(JP,A)
【文献】 特開2001−65175(JP,A)
【文献】 特開2001−317216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/26
E04G 21/14−16
E04G 23/00−08
E04B 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの構造物の間に配設され、当該構造物によって圧縮荷重を受ける仮設部材であって、
板状を成し、荷重作用方向に直交する態様で構造物間に対向して配設する一対のベース材と、
板状を成し、前記ベース材に直交する態様で一対のベース材間に配設した一対の軸力支持材と、
一対の軸力支持材間に当該軸力支持材と分離可能に取付けてあり、一対の軸力支持材の座屈を防止する座屈拘束材と
を備えたことを特徴とする仮設部材。
【請求項2】
前記座屈拘束材は、板状を成し、少なくとも一方のベース材と所定間隔を空けて板面が荷重作用方向に沿う態様で一対の軸力支持材に取付けることを特徴とする請求項1に記載の仮設部材。
【請求項3】
前記座屈拘束材は、前記軸力支持材よりも剛性の高い板材からなることを特徴とする請求項2に記載の仮設部材。
【請求項4】
前記座屈拘束材をボルトによって一対の軸力支持材に取付けたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の仮設部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルや橋等の建築物の施工時に一時的に設置される仮設部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
仮設部材は、建築物の施工時に、建築物を構成する二つの構造物間に一時的に設置されるものである。この種の仮設部材は、例えば一方の構造物を支持する支持部材が施工されるまでの間、この構造物の荷重を支持する圧縮材として用いられる。このような仮設部材を撤去する場合には、仮設部材に作用している圧縮軸力を除去する必要がある。
【0003】
圧縮軸力を除去するものとしては、ジャッキやガス切断機が用いられている。ジャッキは、例えば二つの構造物間に設置され、構造物間の間隔を押し広げる。これにより、仮設部材に作用している圧縮軸力を除去して、仮設部材を撤去する。ガス切断機は、ガスにより仮設部材自体を切断する。これにより、仮設部材に作用している圧縮軸力を除去して、仮設部材を撤去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3058930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、仮設部材を撤去する場合には、何れも他の設備が必要になる。そのため、ジャッキを用いる場合には、ジャッキの設置と撤去に時間を要し、ガス切断機を用いる場合には、火災への対応が必要となり、仮設部材の撤去作業に時間がかかる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、他の設備を要せずに撤去可能な仮設部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る仮設部材は、二つの構造物の間に配設され、当該構造物によって圧縮荷重を受ける仮設部材であって、板状を成し、荷重作用方向に直交する態様で構造物間に対向して配設する一対のベース材と、板状を成し、前記ベース材に直交する態様で一対のベース材間に配設した一対の軸力支持材と、一対の軸力支持材間に当該軸力支持材と分離可能に取付けてあり、一対の軸力支持材の座屈を防止する座屈拘束材とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る仮設部材は、上述した請求項1において、前記座屈拘束材は、板状を成し、少なくとも一方のベース材と所定間隔を空けて板面が荷重作用方向に沿う態様で一対の軸力支持材に取付けることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る仮設部材は、上述した請求項2において、前記座屈拘束材は、前記軸力支持材よりも剛性の高い板材からなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る仮設部材は、上述した請求項1〜3において、前記座屈拘束材をボルトによって一対の軸力支持材に取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る仮設部材は、板状を成し、荷重作用方向に直交する態様で構造物間に対向して配設する一対のベース材と、板状を成し、ベース材に直交する態様で一対のベース材間に配設した一対の軸力支持材と、一対の軸力支持材間に当該軸力支持材と分離可能に取付けてあり、一対の軸力支持材の座屈を防止する座屈拘束材とを備えたものであるため、座屈拘束材が軸力支持材に取付けられている場合には、軸力支持材の座屈が防止され、構造物を支持することができる。一方、座屈拘束材が軸力支持材と分離された場合には、軸力支持材が座屈することにより、圧縮軸力を除去することができる。そのため、他の設備を要せずに仮設部材を撤去することができ、仮設部材の撤去作業にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態である仮設部材の設置例を示す図である。
図2図2は、本発明の実施の形態である仮設部材の正面図である。
図3図3は、図2に示した仮設部材の要部を示す一部分解図である。
図4図4は、図3に示した仮設部材の要部の側面図である。
図5図5は、図2に示した仮設部材の適用状態を示す概念図である。
図6図6は、図2に示した仮設部材の他の設置例を示す図である。
図7図7は、図2に示した仮設部材の他の設置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る仮設部材の好適な実施の形態について詳細に説明する。尚、この実施例により、この発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態である仮設部材の設置例を示したものである。ここで例示する仮設部材1は、吊構造100を用いたビルを構築する場合に適用されるものである。吊構造100は、図1において破線で示す吊部材140が内部柱130を介して下層階の梁120,121を支持することにより、最下層階に内部柱130の無い広い空間を形成するものである。仮設部材1は、吊部材140が設置されるまでの間、最下層階の梁120にかかる荷重を支持するものである。仮設部材1は、最下層階の外部柱(構造物)110と梁(構造物)120との間に設置され、この外部柱110と梁120とによって圧縮荷重を受ける圧縮材として用いられる。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態である仮設部材を示したものである。仮設部材1は、ベース材10と、軸力支持材20と、座屈拘束材30と、固定ボルト(ボルト)40と、長尺材50とを有している。
【0016】
ベース材10は、対を成す板状の部材によって構成してあり、板面が荷重作用方向(仮設部材1の軸力方向)に直交する態様で対向して配設されるものである。一対のベース材10の間には、軸力支持材20が配設してある。また、ベース材10の外側面には、夫々、長尺材50が配設してある。
【0017】
軸力支持材20は、板状の部材によって構成してあり、図2に示すように、夫々のベース材10に直交する態様で配設してある。本実施の形態において、軸力支持材20は、対を成す二枚の板からなり、具体的には、矩形状を成す一対の金属製の薄板からなる。夫々の軸力支持材20は、一対のベース材10に溶接接合されている。具体的には、図3に示すように、夫々の軸力支持材20は、僅かに外側に湾曲した状態でベース材10に接合されており、固定ボルト40によって座屈拘束材30が取付けられた状態で、一対の軸力支持材20の夫々の板面が荷重作用方向に平行となるように配設されている。夫々の軸力支持材20を外側に湾曲させてベース材10に接合することにより、軸力支持材20が外側に座屈し易い構成としている。
【0018】
座屈拘束材30は、軸力支持材20の座屈を防止するものである。本実施の形態において、座屈拘束材30は、軸力支持材20よりも剛性の高い板状の部材によって構成してあり、具体的には、軸力支持材20よりも厚みのある矩形状の金属製の板からなる。図3及び図4に示すように、座屈拘束材30は、一対の軸力支持材20の間に板面が荷重作用方向に沿う態様で配設され、当該軸力支持材20に固定ボルト40によって取付けられる。また、座屈拘束材30は一対の軸力支持材20と直交する態様で取付けられる。座屈拘束材30の荷重作用方向の幅(図2における上下方向の幅)の長さは、軸力支持材20の荷重作用方向の長さよりも短く形成してある。一方、座屈拘束材30の荷重作用方向と直交する方向の幅(図2における左右方向の幅)の長さは、平行に配設された一対の軸力支持材20の内面間の距離と略同一になるように形成してある。座屈拘束材30には、ナット41が取付けてある。
【0019】
ナット41は、座屈拘束材30の一方の面に溶接接合してある。図2図4に示すように、本実施の形態において、ナット41は、両端部に固定ボルト40を挿入可能な筒状の袋ナットからなり、端部を軸力支持材20に向けて荷重作用方向に沿って複数並設されている。
【0020】
図2及び図3に示すように、固定ボルト40は、軸力支持材20の外側から挿入され、軸力支持材20を貫通して座屈拘束材30のナット41に締結される。これにより、座屈拘束材30を一対の軸力支持材20に取付けている。本実施の形態では、複数の固定ボルト40によって座屈拘束材30が軸力支持材20に取付けられている。更に、締結された固定ボルト40を緩めることにより、座屈拘束材30を軸力支持材20と分離した状態にすることができる。
【0021】
図2図4に示すように、座屈拘束材30は、少なくとも一方のベース材10と所定の間隔を空けて取付けてある。本実施の形態では、夫々のベース材10との間に隙間を設けて座屈拘束材30を配設している。これにより、座屈拘束材30が軸力支持材20と分離された場合に、軸力支持材20が座屈し易い構成となっている。また、図4に示すように、座屈拘束材30は一対の軸力支持材20の間に複数配設してある。本実施の形態では、一対の軸力支持材20の間に二枚の座屈拘束材30を互いに平行となるように配設しており、夫々の座屈拘束材30が固定ボルト40によって一対の軸力支持材20に取付けられている。
【0022】
長尺材50は、長尺状に形成された剛性の高い棒状の部材である。長尺材50は、ベース材10の外側面に荷重作用方向に延在する態様で配設される。本実施の形態では、夫々のベース材10の外側面に長尺材50が配設してあり、長尺状の仮設部材1を構成している。本実施の形態において、長尺材50はH形鋼からなり、H形鋼の一方の端部には、板状の接合部が一方の板面をH形鋼に接合された状態で配設してある。この接合部に、上述した一対のベース材10と、一対の軸力支持材20と、座屈拘束材30と、固定ボルト40とからなる軸力除去機構が取付けられている。具体的には、接合部と、ベース材10とを夫々の面を当接させてボルト固定することにより、長尺材50の一方の端部に軸力除去機構を取付けた構成としている。長尺材50の他方の端部は、圧縮荷重を受ける構造物に接続される。
【0023】
上述した仮設部材1は、座屈拘束材30を固定ボルト40によって一対の軸力支持材20に取付けた状態で、図1に示す最下層階の外部柱110と梁120との間に設置される。
【0024】
仮設部材1には、最下層階の梁120にかかる荷重によって、図5(a)に示すように圧縮荷重が作用する。このとき、一対のベース材10間に配設された一対の軸力支持材20は、座屈拘束材30によって座屈が防止される。これにより、仮設部材1は所定の軸力を保持して梁120を支持することができる。
【0025】
図1に示す吊構造100において、最上層階に吊部材140を設置し、内部柱130を介して最下層階の梁120を吊部材140に支持させた後、仮設部材1は撤去される。このとき、仮設部材1には圧縮軸力が作用している。
【0026】
仮設部材1を撤去する場合、固定ボルト40を緩める。夫々の固定ボルト40を緩めることにより、座屈拘束材30が軸力支持材20と分離された状態となり、軸力支持材20が圧縮荷重に耐えられなくなると、図5(b)に示すように、軸力支持材20は外側に座屈する。これにより、仮設部材1の荷重作用方向の長さが縮小され、仮設部材1の圧縮軸力を除去することができる。その後、仮設部材1は撤去される。
【0027】
上述した仮設部材1では、板状を成し、荷重作用方向に直交する態様で外部柱110と梁120との間に対向して配設する一対のベース材10と、板状を成し、ベース材10に直交する態様で一対のベース材10間に配設した一対の軸力支持材20と、一対の軸力支持材20間に当該軸力支持材20と分離可能に取付けてあり、一対の軸力支持材20の座屈を防止する座屈拘束材30とを備えたものであるため、座屈拘束材30が軸力支持材20に取付けられている場合には、軸力支持材20の座屈が防止され、梁120を支持することができる。一方、座屈拘束材30が軸力支持材20と分離された場合には、軸力支持材20が座屈することにより、圧縮軸力を除去することができる。そのため、他の設備を要せずに仮設部材1を撤去することができ、仮設部材1の撤去作業にかかる時間を短縮することができる。
【0028】
図6及び図7に、仮設部材1の他の設置例を示す。
【0029】
図6に示す架構は、例えば庇を構成する吊構造であって、一端が柱210に支持された梁220を、当該梁220の上方に設置する吊部材240によって支持するものである。仮設部材1は、吊部材240が設置されるまでの間、梁220を支持するブレース材として用いられ、固定ボルト40によって座屈拘束材30が一対の軸力支持材20に取付けられた状態で、柱210と梁220との間に設置される。
【0030】
吊部材240が設置された後、この仮設部材1を撤去する場合には、固定ボルト40を緩めて、座屈拘束材30を軸力支持材20と分離させる。これにより、軸力支持材20が座屈し、仮設部材1の荷重作用方向の長さが縮小され、仮設部材1の圧縮軸力を除去することができる。その後、仮設部材1を撤去する。従って、他の設備を要せずに仮設部材1を撤去することができる。
【0031】
図7に示す架構は、二つの柱の間に梁を架設したものである。仮設部材1は、梁320の一部320aが施工上、一時的に取付けられない場合に、先に構築される梁320bを支持するブレース材として用いられる。仮設部材1は、固定ボルト40によって座屈拘束材30が一対の軸力支持材20に取付けられた状態で、先に構築される梁320bと柱310との間に設置される。
【0032】
梁320の構築が完成し、梁320の両端が柱に支持された後、仮設部材1は撤去される。仮設部材1を撤去する場合には、固定ボルト40を緩めて、座屈拘束材30を軸力支持材20と分離させる。これにより、軸力支持材20が座屈し、仮設部材1の荷重作用方向の長さが縮小され、仮設部材1の圧縮軸力を除去することができる。その後、仮設部材1を撤去する。従って、他の設備を要せずに仮設部材1を撤去することができる。
【0033】
尚、上述した実施の形態では、座屈拘束材30として板状の部材を用いているが、これに限られるものではない。座屈拘束材は、一対の軸力支持材の間に当該軸力支持材と分離可能に取付けられるものであって、軸力支持材の座屈を防止できるものであればよく、例えば棒状の部材であってもよい。また、本実施の形態では、座屈拘束材30を固定ボルト40によって軸力支持材20に取付けているが、これに限られるものではなく、軸力支持材と座屈拘束材とが分離可能に構成されるものであればよい。
【符号の説明】
【0034】
1 仮設部材
10 ベース材
20 軸力支持材
30 座屈拘束材
40 固定ボルト
110 外部柱
120 梁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7