特許第5656184号(P5656184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656184
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】三塩化ガリウムの噴射方式
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20141225BHJP
   C30B 25/14 20060101ALI20141225BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20141225BHJP
   C01B 21/06 20060101ALI20141225BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   C30B29/38 D
   C30B25/14
   C23C16/34
   C01B21/06 A
   H01L21/205
【請求項の数】7
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2009-538459(P2009-538459)
(86)(22)【出願日】2007年11月15日
(65)【公表番号】特表2010-510166(P2010-510166A)
(43)【公表日】2010年4月2日
(86)【国際出願番号】US2007084845
(87)【国際公開番号】WO2008064083
(87)【国際公開日】20080529
【審査請求日】2010年11月9日
(31)【優先権主張番号】60/866,923
(32)【優先日】2006年11月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/942,832
(32)【優先日】2007年6月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507088071
【氏名又は名称】ソイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100077481
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100088915
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 和夫
(72)【発明者】
【氏名】シャンタル アレーナ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ベルクホーフェン
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−335518(JP,A)
【文献】 特開2000−269142(JP,A)
【文献】 特開2006−179653(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/121418(WO,A1)
【文献】 特開2005−097045(JP,A)
【文献】 特開昭62−091494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
C23C16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶III−V族半導体材料のエピタキシャル堆積法であって、反応室内で、1つの反応物としてのある量の気体III族前駆体を、他の反応物としてのある量の気体V族成分と、前記単結晶III−V族半導体材料を形成するのに十分な条件下で反応させることを含み、前記単結晶III−V族半導体材料の製造を容易にするために、前記気体III族前駆体を、前記反応室に入れる前に、望ましくない前駆体化合物を前記反応室に導入することを防ぐ十分に高い温度まで加熱し、
前記望ましくない前駆体化合物は、前記気体III族前駆体と前記気体V族成分との反応を低減させる前記気体III族前駆体の二量体、三量体または他の分子異体を含み、
前記気体III族前駆体は、気体三塩化ガリウムであって、前記反応室に入る前に、塩化ガリウム二量体および三量体を分解するのに十分な温度まで加熱することによって、塩化ガリウム単量体へ分解され
前記気体V族成分は、単結晶III族窒化物が形成されるように、窒素を含む成分であり、前記気体III族前駆体よりも大量に供給されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記気体三塩化ガリウムは、前記反応室に入る前に少なくとも700℃まで加熱されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記気体III族前駆体は、III族元素として少なくとも50g/時の質量流量で、少なくとも48時間、前記反応内に連続的に供給されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記窒素を含む成分は、窒素を含むガス、あるいは窒素ガスのプラズマ活性化によって生成された窒素イオンまたはラジカルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応室は1つまたは複数の壁を含み、前記方法はさらに、1つまたは複数の基板上での前記単結晶III−V族半導体材料の形成を最適化するために前記1つまたは複数の基板の上方で反応が起こるように、前記気体III族前駆体および前記気体V族成分を前記反応室に制御された方式で導入することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応室は、床、天井、一対の側壁、開いた入口および開いた出口を含み、前記方法はさらに、前記加熱された気体III族前駆体を前記反応室の前記床のスロットを通して導入することを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記気体III族前駆体は、前記スロットのすぐ下のノズルの中で加熱されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体処理装置および方法の分野に関し、具体的には、光学および電子構成要素の製造に適した、エピタキシャル堆積用の基板などとして使用されるIII−V族化合物半導体ウェハの大量製造(high volume manufacturing)装置および方法を提供する。好ましい実施形態では、本発明の装置および方法は、III族窒化物半導体ウェハ、特に窒化ガリウム(GaN)ウェハの生産を対象とする。
【背景技術】
【0002】
III−V族化合物は、広く使用されている重要な半導体材料である。特にIII族窒化物は広い直接バンドギャップを有し、このことが、III族窒化物を、光学構成要素(特に短波長LEDおよびレーザ)およびある種の電子構成要素(特に、高温/高電力トランジスタ)の製造に特に有用にしている。
【0003】
III族窒化物が特に有利な半導体特性を有することは数十年前から知られている。しかしながら、その商用利用は、容易に使用可能な単結晶基板がないことによって実質的に妨げられてきた。チョクラルスキー法、垂直温度傾斜法、ブリッジマン法、フロートゾーン法などのシリコン、GaAsなどの他の半導体に対して使用されてきた伝統的な方法を使用して、III族窒化物のバルク単結晶基板を成長させることは、実際には不可能である。その理由は、GaNが大気圧で分解し、溶融しないGa−N結合の高い結合エネルギーである。溶融したGaNを得るためには、非常に高い圧力および温度(2500℃および>4GPa)が必要である。様々な高圧技法が検討されたが、それらの技法は極めて複雑であり、非常に小さく不規則な結晶しか得られなかった(非特許文献1)。
【0004】
自然(native)単結晶基板がないことは、低い欠陥密度ならびに望ましい電気および光学特性を有するエピタキシャルIII族窒化物層を生成する困難を大幅に増大させる。さらなる困難は、実際のデバイスにおいて使用するのに十分な導電率を有するp型GaNを製造することができないことである。半導体等級(semiconductor grade)のGaNを生産する試みは少なくとも1970年代初頭に始まったが、2つのブレークスルーが起こった1990年代後半まで、使用に適した進歩は果たされなかった。最初のブレークスルーは、サファイア上でのIII族窒化物層の許容可能な成長をもたらした低温GaNおよびAlNバッファ層の使用であった。第2のブレークスルーは、許容可能なp型導電率を達成するプロセスの開発である。これらの技術進歩にもかかわらず、III族窒化物層の欠陥密度は依然として極めて高く(転位に関して言えば1E9〜1E11cm-3)、p型導電率は他の半導体ほどには高くない。これらの限界にもかかわらず、これらの進歩は、LEDに適したIII族窒化物エピタキシャル膜の商業生産につながった(例えば非特許文献2参照)。
【0005】
高い欠陥密度は非自然基板上で成長させた結果である。最も広く使用されている基板はサファイアであり、炭化シリコンがそれに次ぐ。III族窒化物エピタキシャル層と基板との間の格子定数、熱膨張率および結晶構造の違いは、III族窒化物膜または基板の高い欠陥密度、応力および亀裂につながる。さらに、サファイアは、(導電性たりえない)非常に高い抵抗率、および低い熱伝導率を有する。
【0006】
SiC基板は、導電形と高抵抗形の両方を製造することができるが、サファイアよりもはるかに高価であり、より小さな直径のものしか得ることができない(一般に直径50mm、展示用として150mmおよび200mm)。このことは、より安価ではるかに大きな直径(サファイアでは直径150mm、GaAsでは300mm)のものを得ることができる、GaAs、シリコンなどの他の半導体用のサファイア基板および自然基板とは対照的である。
【0007】
サファイアおよびSiCの使用はいくつかのデバイス用途に適するが、これらの基板上に成長させたIII族窒化物層に関連した高い欠陥密度は、レーザダイオード内での短い寿命につながる。より短い波長が光記録法において非常に高い情報密度を可能にするため、III族窒化物レーザダイオードは特に重要である。欠陥密度が低い基板は、白熱電球および蛍光灯に取って代わることが求められているより明るいLEDをもたらすと予想される。最後に、III族窒化物材料は、高周波高電力電子デバイスに対する望ましい特性を有するが、それらのデバイスの商業化は、一つには基板の限界のためにまだ実現していない。高い欠陥密度は、電子デバイスの低性能および低信頼性問題につながる。サファイアの低い熱伝導率は、サファイアを、能動デバイス領域から熱を除去することができることが極めて重要な高電力デバイスで使用するのに不適当にする。SiC基板の小さな直径および高いコストは、(レーザまたはLEDに比べて)より大きなデバイスサイズがより低コストの大面積基板を要求する電子デバイス市場における商用使用に適さない。
【0008】
非自然基板上のエピタキシャルIII族窒化物中の欠陥密度をさらに低減させるため、多数の方法が検討された。残念なことに、成功した方法も面倒で不経済であり、たとえコストが目標でないとしても非理想的である。1つの共通の方法は、エピタキシャル横方向過成長(epitaxial lateral overgrowth:ELO)の形態を使用することである。この技法では基板に部分的にマスクをし、III族窒化物層がマスクの上で横方向に成長するように強制する。マスクの上のエピタキシャル膜は大幅に低減された転位密度を有する。しかしながら、開いた領域内のエピタキシャル膜は依然として、マスクされていない基板上に達成されるのと同じ高い転位密度を有する。さらに、隣接する横方向過成長領域が接するところでは追加の欠陥が生成される。転位密度をさらに低減させるために、複数のELOステップを実行することができる。このプロセスが、費用と時間が非常にかかるプロセスであり、結局は、低転位密度の領域と高転位密度の領域とを有する不均質な基板を生産することは明白である。
【0009】
現在までのところ、欠陥密度を低減させることに最も成功した方法は、非常に厚いIII族窒化物材料層を成長させる方法である。成長が進むにつれて、転位の向きは、成長方向に完全に平行にはならないため、転位の一部は合体し、互いに打ち消しあう。これを有効な方法にするためには、300から1000μm程度の層を成長させる必要がある。この方法の利点は、基板を横切って層が均質であることである。難しいのは、これらの層の厚さを実際に達成することができる成長ケミストリ(growth chemistry)および関連装置を見つけることである。MOVPEまたはMBE技法は、1μm/時未満から約5μm/時程度の成長速度を有し、したがって、数ミクロンから数十ミクロンの成長を必要とする上で論じた多くのELO技法に対してであっても、あまりに低速である。高い成長速度を首尾よく達成した唯一の成長技法は、水素化物気相エピタキシ(hydride vapor phase epitaxy:HVPE)である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】A.Denis et al, Mat.Sci.Eng. R50 (2006) 167
【非特許文献2】Nakamura et al. 2nd ed. 2000, The Blue Laser Diode, Springer-Verlag, Berlin
【非特許文献3】B.J.Duke et al. Inorg.Chem. 30 (1991) 4225
【非特許文献4】Barman, 2003, Gallium Trichloride, SYNLETT, 2003, no.15, p.2440-2441
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
まとめると、低転位のIII族窒化物材料を生産する現在の最新技術は、HVPEを使用して非常に厚い層を形成することである。しかしながら、現行のHVPEプロセスおよび装置技術は、高い成長速度を達成することはできるが、その一方でいくつかの欠点を有する。本発明はこれらの欠点を解決し、新規の革新的用途、例えば住居用および商業用照明システムでの使用につながる、比較的に低コストで高品質のIII族窒化物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、単結晶III−V族半導体材料のエピタキシャル堆積法およびシステムに関する。この方法は、反応室内で、1つの反応物としてのある量の気体III族前駆体を、他の反応物としてのある量の気体V族成分と、半導体材料を形成するのに十分な条件下で反応させることを含み、半導体材料の製造を容易にするために、気体III族前駆体を、反応室に入れる前に、望ましくない前駆体化合物を反応室に導入することを防ぐ十分に高い温度まで加熱する。
【0013】
一般に、望ましくない前駆体化合物は、III族前駆体とV族成分との反応を低減させる前駆体の二量体、三量体または他の分子異体(molecular variations)を含む。III族前駆体が気体三塩化ガリウムであるとき、この方法は、気体三塩化ガリウムが反応室に入る前に、塩化ガリウム二量体または三量体を分解するのに十分な温度までその前駆物質を加熱することを含む。一般に、気体三塩化ガリウムは、反応室に入る前に少なくとも700℃まで加熱される。
【0014】
大量製造のため、気体III族前駆体を、III族元素として少なくとも50g/時の質量流量で、少なくとも48時間、反応ゾーン内に連続的に供給することができる。単結晶III族窒化物が形成されるように、気体V族成分は窒素を含む成分とすることができ、気体V族成分は、気体III族前駆体よりもかなり大量に供給される。さらに、窒素を含む成分は、アンモニアなどの窒素を含むガス、あるいは窒素ガスのプラズマ活性化によって生成された窒素イオンまたはラジカルとすることができる。
【0015】
反応室は一般に1つまたは複数の壁を含み、この方法はさらに、1つまたは複数の基板上での単結晶材料の形成を最適化するために1つまたは複数の基板の上方で反応が起こるように、III族前駆体およびV族成分を反応室に制御された方式で導入することを含む。具体的には、反応室は、床、天井、一対の側壁、開いた入口および開いた出口を含むことができ、この方法はさらに、加熱されたIII族前駆体を室の床のスロットを通して導入することを含む。前駆体は、スロットのすぐ下のノズルの中で加熱されることが好ましい。
【0016】
本発明はさらに、単結晶III−V族半導体材料を形成するシステムであって、1つの反応物としての気体III族前駆体の供給源と、他の反応物としてのV族成分の供給源と、反応物を受け取り、それらと反応させて単結晶III−V族半導体材料を形成する反応室と、半導体材料の製造を容易にするために、気体III族前駆体を、反応室に入れる前に、望ましくない前駆体化合物を反応室に導入することを防ぐ十分に高い温度まで加熱する加熱装置とを備えるシステムに関する。
【0017】
半導体材料の大量製造を容易にするために、気体III族前駆体の供給源は、前駆体を、III族元素として少なくとも50g/時の質量流量で、少なくとも48時間、連続的に供給するだけの十分な大きさを有する。好ましい一実施形態では、反応室を水平方向の長方形の室として構成することができ、1つまたは複数の基板の表面に半導体材料を堆積させるために、反応物が、1つまたは複数の基板に隣接した、1つまたは複数の基板のすぐ上方の所定の位置で合流するまで、反応物が反応しないように、反応物を導入する開口は、室の異なる部分に配置される。反応室は一般に、床、天井、一対の側壁、開いた入口、開いた出口を含み、1つの反応物入室開口は、その反応物を反応室に導入する床の水平スロットを含み、スロットは、反応物を導入し、他の反応物と反応させるために反応物を所定の位置まで導くように構成され、寸法が決められている。前駆体をスロットを通して反応ゾーンに導入するために、気体III族前駆体の供給源は一般に、スロットとガス流に関して関連付けられている。
【0018】
このシステムは、熱伝達材料をその中に含んだノズルを含む反応物導入装置を含むことが好ましく、前駆体を反応室に導入する前に前駆体を加熱するために、この装置は、加熱装置に動作可能に関連付けられていることが好ましい。気体III族前駆体が三塩化ガリウムである場合、加熱された気体三塩化ガリウムが反応室に入る前に塩化ガリウム二量体または三量体を分解するために、加熱装置は、三塩化ガリウムを少なくとも700℃まで加熱する。
【0019】
反応室は一般に、単結晶半導体材料をその表面に堆積させる1つまたは複数の基板を保持する回転可能な支持体を含む。1つまたは複数の基板の表面に単結晶半導体材料を効率的に形成するために、反応室はさらに、他の反応物を所定の位置に導く噴射ノズルを備えた他の反応物の入室開口を含む。
【0020】
反応室は一般に石英でできている。さらに、反応室を囲いによって取り囲むことができ、この囲いは、1つまたは複数の反応室壁へのIII族前駆体または反応副生物の堆積を低減させ、あるいは防いで、保守が必要になるまでの動作時間をより長くするために、囲いの中で空気を循環させて1つまたは複数の反応室壁の温度を下げる1つまたは複数のファンに動作可能に関連付けられている。
【0021】
本発明の他の態様および詳細ならびに本発明の諸要素の代替組合せは、添付図面および以下の詳細な説明から明白であり、これらも本発明の範囲に含まれる。
【0022】
本発明は、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明、本発明の特定の実施形態の例示的な例、および添付図を参照することによってより十分に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のシステムを概略的に示す図である。
図2A】好ましいGaCl3供給源を示す図である。
図2B】好ましいGaCl3供給源を示す図である。
図2C】好ましいGaCl3供給源を示す図である。
図3A】好ましい反応室を示す図である。
図3B】好ましい反応室を示す図である。
図3C】好ましい反応室を示す図である。
図4】好ましい移送室/反応室組合せを概略的に示す図である。
図5】好ましい入口マニホルド構造を概略的に示す図である。
図6】代替の反応物ガス入口配置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
異なる図に示された同じ構造を識別するために同じ参照符号が使用されている。
本発明は、これまで不可能であったIII−V族化合物半導体ウェハの高成長速度/大量製造装置および方法を提供する。この装置は、数週間または数カ月の間、保守のために生産を停止する必要がない持続的生産能力を有する。この装置は、1ないし4時間ごとに少なくとも1枚のウェハ(または1バッチのウェハ)を生産することができる高スループット生産能力を有する。このように生産されたIII−V族化合物半導体ウェハは、光学および電子構成要素の製造、追加のエピタキシャル堆積用の基板、ならびに他の半導体材料用途に適する。
【0025】
好ましい実施形態では、これらの装置および方法が特にGaN窒化物ウェハの生産を対象とし、このような実施形態が以降の説明の多くの部分の焦点である。これに焦点を合わせるのは単に簡潔にするためであり、本発明を限定するものと解釈してはならない。これらの好ましい実施形態を、他のIII族窒化物、例えば窒化アルミニウム、窒化インジウムおよび窒化アルミニウム/ガリウム/インジウムの混合物のウェハを生産するように、また、III族リン化物およびヒ化物のウェハを生産するように容易に適合させることができることが理解される。したがって、半導体ウェハまたは任意のIII−V族化合物半導体のウェハを生産することは本発明の範囲に含まれる。
【0026】
Siのエピタキシャル堆積用にすでに市販されている装置を変更することによって特定の実施形態を実現することができるため、本発明は費用効果を特に高くすることができる。これにより、GaNエピタキシにとって特に重要な要素および特徴に集中することができ、同時に、シリコン技術において十分に発展した大量製造に関係する諸態様を維持することができる。さらに、本発明の装置は、大量製造能力を有するよう、かなり大きなデューティサイクルを有するように設計されている。さらに、本発明は、実際に堆積せず、したがって反応室(reaction chamber)装置から排出されたGaを回収、再利用することによって、高価なGaの事実上100%の使用効率を提供し、必要なダウンタイムは限定される。さらに、本発明のプロセスおよび装置はGa前駆体の経済的使用を含む。
【0027】
本発明は、知られている低サーマルマス(thermal mass)サセプタ(基板ホルダ)の使用、およびランプ加熱/温度制御されたリアクタ(reactor)壁の使用を含む。ランプ加熱の使用は、熱エネルギーが主としてサセプタに結合され、リアクタ壁を加熱しないようにすることを可能にする。ランプ加熱システムは、ランプへの非常に高速な電力変化を可能にする制御システムを備える。ランプ加熱システムに結合された低サーマルマスサセプタは、非常に高速な温度変化(昇温と降温の両方)を可能にする。温度ランプレート(ramp rate)は2〜10度/秒の範囲であり、4〜7度/秒程度であることが好ましい。
【0028】
望んでいない気相反応を最小限に抑え、リアクタ壁への堆積を防ぐため、本発明は、特定の温度に制御されたリアクタ壁を含む。壁への堆積がないことは、成長速度、応力および他の関連成長パラメータのin situ監視の簡単な使用を可能にする。
【0029】
本発明は、III族前駆体(1種または数種)の1つまたは複数の外部供給源を含む。III族前駆体の流れは、電子式質量流量コントローラによって直接に制御される。外部III族供給源のサイズに実用上限界はない。III族供給源容器は、50から100、300kgまでの範囲とすることができ、ダウンタイムのない容器間の切替えを可能にするためいくつかの供給源容器をマニホルドによって集合させることができる(manifolded together)。GaNの堆積ではGa前駆体がGaCl3である。このGa供給源は、GaCl3が十分に低い低粘度状態にあるときには、通常の物理手段、例えば液体GaCl3中でのキャリヤガス(carrier gas)のバブリング(bubbling)によって、GaCl3の十分な蒸発速度を得ることができ、GaCl3は、110から130℃の範囲の好ましい温度でこのような十分に低い粘度状態をとるという観察および発見に基づく。
【0030】
本発明は、低粘度状態にあるGaCl3の温度および圧力を一定に保つ装置と、制御された量のガスを液体GaCl3中に流し、GaCl3蒸気をリアクタに送達する装置とを含む。この装置は、サセプタに載せられた直径200mmの1枚の基板またはより小径の任意の数のウェハ上で100から400μm/時の範囲のGaN堆積速度を達成するGaCl3の高い質量流量(200から400g/時の範囲)を持続させることができる。GaCl3の凝縮を防ぐため、GaCl3容器からの送達システムは、特定の温度プロファイルを有するように維持される。
【0031】
本発明はさらに、III族ガスとV族ガスを堆積ゾーンまで別々に保持する入口マニホルド(manifold)構造を含み、本発明はさらに、堆積ゾーンにおいて高い気相均質性を達成し、したがって反応室に流入し、基板を支持するサセプタを横切って流れるプロセスガス(process gas)の流れを均一にする方法を提供する。このプロセスガスの流れは、流速が実質的に均一(したがって非乱流)となり、かつ化学組成が実質的に均一(したがってIII/V比が均一)となるように設計される。好ましい一実施形態では、これが、リアクタの全幅にわたってガスの分布を均一にして高い均一性を達成するIII族ガスおよび族Vガスの別個の1次入口ポートを提供することによって実現される。好ましい実施形態では、マニホルドおよびポート構造が、流体力学の原理に従ってガスの流れをモデル化することによって設計され、改良される。
【0032】
本発明はさらに、III族およびV族前駆体の反応効率を高めるため、III族入口とV族入口の一方または両方にエネルギーを加える方法を含む。好ましい一実施形態では、本発明が、III族前駆体を二量体形態Ga2Cl6から単量体形態GaCl3へ熱分解する方法を含むであろう。他の好ましい実施形態では、本発明が、例えば熱分解またはプラズマによってアンモニア前駆体を分解する方法を含むであろう。
【0033】
本発明はさらに、完全自動カセットツーカセット(cassette-to-cassette)ローディングと、別個の冷却段(cooling stage)と、ロードロック(load lock)と、非接触式ウェハハンドラとを含む自動ウェハハンドリング装置を含み、これらはすべて、完全にコンピュータ制御され、成長プログラム全体にインタフェースされる。
【0034】
本発明はさらに、リアクタの入口および出口フランジならびに排出システムの温度制御と、減圧、高温で動作することができる特別に設計された圧力調整弁とを含む。これらのエリアの温度制御は、早過ぎる気相反応を防ぎ、GaNの堆積物および様々な反応副生物を最小限に抑える。主要な反応副生物はNH4Clである。NH4Clの凝縮を防ぐため、リアクタの下流の排気全体の温度が制御される。
【0035】
弁材料およびリアクタの側壁の堆積物を低減させ、ガス再循環を低減させ、リアクタ内のガスの滞留時間を短縮するために、本発明はさらにガスパージ付きの仕切弁を含む。
【0036】
本発明の追加の態様および詳細は、1回の成長ラン(run)の間1枚または数枚のウェハを保持することができるサセプタ、および厚い成長ランの間サセプタへの基板の付着を防ぐように設計されたサセプタの使用を含む。
【0037】
本発明は、特定の金属ハロゲン化物はある固有の化学特性を有し、これらの特性を考慮して設計された装置に結合されると、この組合せを使用して、III−V族化合物半導体、特に窒化ガリウムの厚い層を、これまで達成できなかった高いスループット、高い動作可能時間および低いコストで、大量製造に特徴的な方式で堆積させることができるという発見に基づく。
【0038】
本発明では、「大量製造」(またはHVM:high volume manufacturing)が、高スループット、高前駆体効率および高装置利用率によって特徴づけられる。スループットは、1時間当たりに処理することができるウェハの枚数を意味する。前駆体効率は、システムへの材料投入の大部分が生成物となり、廃棄されないことを意味する。材料、プロセスおよび構造に関連した多数の変量があるが、HVM堆積速度は、少なくとも48時間持続するIII族元素(ガリウムなど)として約50g/時から、少なくとも100時間持続するIII族元素として100g/時、少なくとも1週間持続するIII族元素として200g/時、少なくとも1月持続するIII族元素として300から400g/時までの範囲にわたる。一般的な供給源容量は、1つの容器に5kgから60kgとすることができ、大規模なHVMについては、複数の容器を順次動作させることができる。これは、シリコン製造において得られるものと同様のIII−V族材料スループットを提供することができる。
【0039】
装置利用率は、基板がリアクタ内にある時間と24時間などの所与の時間との比を意味する。HVMに関しては、大部分の時間が、セットアップ、較正、洗浄または保守ではなく生成物の生成に費やされる。これらの測度の定量的範囲は、成熟したシリコン半導体処理技術に対して使用可能である。III−V族材料のHVMに対する装置利用率は約75から85%程度であり、これは、シリコンエピタキシャル堆積装置の装置利用率と同等である。
【0040】
リアクタ利用率は、リアクタ内の基板上で材料の成長が起こっている時間である。従来のHVPEリアクタではこの値が約40から45%程度であり、一方、本明細書に開示されたリアクタなどのなどのHVMリアクタではこの値が約65から70%程度である。
【0041】
成長利用率は、リアクタ内のオーバヘッド時間であり、これは、基板がリアクタ内に置かれて以後のリアクタ内で成長が起こっている時間を意味する。従来のHVPEリアクタではこの値が約65から70%程度であり、一方、本明細書に開示されたリアクタなどのなどのHVMリアクタではこの値が95%から約100%程度であり、すなわちシリコン製造プロセスの値に近い。
【0042】
本発明は、大量生産を妨げる現行のHVPE技術の主な限界に取り組む。これは、現行のHVPEのin situ供給源生成の代わりに外部供給源を使用し、現行のHVPEの高サーマルマスホットウォール(hot wall)リアクタの代わりに、温度制御された壁を有する低サーマルマスリアクタを使用することによって達成される。外部供給源の使用は、前駆体を充填するために生産を停止する必要性を排除し、装置利用率を大幅に増大させる。さらに、電子式質量流量コントローラによって前駆体の質量流束が直接に制御され、その結果、成長プロセスの制御が向上し、歩留りが高くなる。温度制御された壁を有する低サーマルマスリアクタは、成長中および保守中の加熱および冷却に必要な時間を大幅に短縮する。基板を急速に加熱、冷却できることはさらに、現行のHVPEホットウォールシステムでは事実上不可能な多温度プロセスの使用を可能にする。壁温を制御できることは、気相反応を低減させ、壁の堆積物をほぼ完全に排除する。壁の堆積物の排除は、洗浄と洗浄の間に時間を大幅に延長し、これは高いリアクタ利用率につながる。
【0043】
本発明は、III−V族化合物半導体のHVPE堆積の外部供給源として、ある種の金属ハロゲン化物を使用することができ、本発明において詳述される特定の送達装置とともに、大きなエリア上で高い堆積速度を達成し、維持するのに十分な大きさの質量流束を提供することができることに基づく。具体的には、溶融されたとき、GaCl3は、通常の物理手段、例えば液体GaCl3中でのキャリヤガスのバブリングを可能にする十分に低い粘度を有する状態にあり、GaCl3の十分な蒸発速度を提供することができ、GaCl3は、約130℃の範囲の温度でこのような粘度が十分に低い状態をとる。さらに、本発明は、約400℃未満の温度の液相および気相において、GaCl3が事実上二量体であることに基づく。この二量体の化学式は、(GaCl32またはGa2Cl6と書くことができる。
【0044】
Ga2Cl6の他に、関連クロロガラン(chlorogallane)をGa前駆体として使用することもできる。この化合物はGa2Cl6と同様だが、1つまたは複数のCl原子がHによって置換されている。例えば、モノクロロガランは、H原子によって2つの架橋Cl原子が置換されている。下式に示すように、Gaに結合した末端原子をHに置換することもできる(この化合物にはシスおよびトランス体があることに留意されたい)。非特許文献3によれば、二量体の安定性は、末端Ga−x結合の塩素化の増加とともに、Cl置換1つ当たり1〜2kcal/molだけ低下し、架橋H原子がClに置換されるたびに6〜8kcal/molだけ増大する。したがって、置換Cl原子数が減るにつれて、所与の温度における単量体の割合は低下することになる。
【0045】
【化1】
【0046】
Inを含む化合物およびAlを含む化合物の成長は、実質的に同様の装置を使用して達成することができるが、これらの供給源は容易には液体状態に保たれないという限界がある。InCl3は583℃で溶融する。GaCl3に対して記載される本発明を、583℃を超える温度で動作するように変更することができるが、これは実際には非常に困難である。代替方法は、融点よりも低いが、蒸気圧が許容可能な堆積速度を達成するのに十分である温度までInCl3を加熱する方法である。
【0047】
AlCl3は178℃で昇華し、190℃、2.5気圧で溶融する。GaCl3に関して記載された本発明を、大気圧よりも高い圧力およびAlCl3の融点よりも高い温度で動作するように変更することができる。さらに、十分に高い蒸気圧を達成するために融点よりも低い温度に加熱するInCl3に対して上で説明した方法の代替法も機能する。AlCl3も、液相および低温の気相において二量体(AlCl32を形成する。
【0048】
本発明の主要な他の構成要素は低サーマルマスリアクタである。温度制御された壁を有する低サーマルマスリアクタは、成長中および保守中の加熱および冷却に必要な時間を大幅に短縮する。基板を急速に加熱、冷却できることはさらに、現行のHVPEホットウォールシステムでは事実上不可能な多温度プロセスの使用を可能にする。壁温を制御できることは、気相反応を低減させ、壁の堆積物をほぼ完全に排除する。壁の堆積物の排除は、洗浄と洗浄の間に時間を大幅に延長し、これは高いリアクタ利用率につながる。
【0049】
低サーマルマスは、伝統的にコールドウォール(cold wall)システムと呼ばれているシステムを使用することによって達成されるが、本発明では、壁温が特定の温度に制御される。現行のホットウォールシステムは、炉の中に封入されることによって加熱される。本発明の新規のシステムでは、基板ホルダおよび基板だけが加熱される。ランプ加熱、誘導加熱または抵抗加熱を含め、これを達成する方法は数多くある。一実施形態では、このシステムが、石英から構築された反応室と、黒鉛から構築された基板ヒーターとからなる。黒鉛は、石英リアクタの外側のランプによって加熱される。石英リアクタ壁は、様々な方法を使用して制御することができる。ほとんどの場合、壁温制御システムは、様々な位置の壁温を測定する1つまたは複数の方法を、温度を予め設定された値に維持するために壁領域への冷却または加熱入力を調整するフィードバックシステムと組み合わせることからなる。他の実施形態では、リアクタ壁の外面に冷却のため空気を吹き付けるファンによって、壁温が制御される。壁温は常に一定に固定されるわけではなく、性能を向上させるために成長中または保守中に温度を変化させるように、温度コントローラをプログラムすることができる。
【0050】
以下の説明の焦点は主に、窒化ガリウム(GaN)ウェハを生産する好ましい実施形態に合わせられるが、当技術分野の平均的な技術者であれば、説明される装置および方法を、さらに任意のIII−V族化合物半導体のウェハを製造するように容易に適合させることができることが理解される。したがって、このような装置は本発明の範囲に含まれる。全体を通じて、単に分かりやすくするために見出しが使用される。これによって限定する意図はない。
【0051】
さらに、本発明は、構造および動作が経済的なGaNウェハの大量製造装置を提供する。本発明の好ましい実施形態は、シリコン(Si)エピタキシ用に設計され、市販されている既存のVPE装置を適合させ/変更することによって、経済的に実現/構築することができる。本発明を実施するために、GaN堆積装置のすべての構成要素をゼロから設計し構築する費用と時間のかかる過程を経る必要はない。その代わりに、証明済みの既存のSi処理生産装置に、狙いを定めた限られた変更を加えて、本発明の持続的高スループットGaN堆積装置を、より迅速にかつより経済的に実現/構築することができる。しかしながら、このような変更された既存の装置だけでなく、本発明は新たな構築をも包含する。
【0052】
したがって、以下の説明は最初に、GaN生産のため既存のSi装置に組み込まれる全般的に好ましい特徴を対象とする。Si処理から存続させることができる特徴は、当技術分野でよく知られているため、詳細には説明しない。異なる実施形態では、後述する特徴のうちの異なる特徴を実現することができ、本発明は、これらのすべての特徴を実現する実施形態に限定されない。しかしながら、より高いレベルの持続的高スループット生産のためには、これらのうちの大部分または全部の特徴が有利であり、それらの特徴には、カセットツーカセットローディング、ロードロック、ならびに一方が冷却している間にウェハを高速にロードおよびアンロードし、処理することを可能にする別個の冷却段を有する完全自動化されたウェハハンドリングが含まれる。ロードロックは、環境空気へのリアクタの望ましくない曝露を排除して、酸素および水蒸気の導入を最小限に抑え、実行前のパージ/ベーク時間を大幅に短縮する。さらに、自動化されたハンドリングは、ウェハのマニュアルハンドリングよりも歩留りの低下およびウェハの破損を低減させる。場合によっては、ウェハをハンドリングし、長い冷却時間を短縮するために、900℃もの高温度でのホットロードおよびアンロードを可能にするベルヌーイワンド(Bernoulli wand)が使用される。
【0053】
最初に、本発明の好ましい特徴の一般実施形態を、総称VPEシステムの文脈で説明する。どのようにすれば、これらの一般実施形態を通常の方式で特定の市販Siエピタキシ装置に適合させることができるのかが明らかにされる。次いで、以下の説明は、本発明およびその好ましい特徴の好ましい特定の実施形態を対象とし、この好ましい特定の実施形態は、ASM America,Inc.社(米アリゾナ州Phoenix)から販売されているEPSILON(登録商標)シリーズの1つの単ウェハ型エピタキシャルリアクタに基づく。しかしながら、本発明がこの好ましい特定の実施形態に限定されないことは明らかである。他の例として、本発明は、AMAT社(米カリフォルニア州Santa Clara)のCENTURA(登録商標)シリーズに容易に適合させることができる。
【0054】
本発明の(GaNウェハを生産する)装置および方法の好ましい実施形態が、図1を参照して全般的に説明される。次いで、好ましい特定の実施形態が図2〜5を参照してより詳細に説明される。一般に、本発明の装置は、基板上のエピタキシャルGaN層の大量製造と、構造および動作の経済性の両方を達成するように設計され、サイズが決められる。
【0055】
(本発明の一般的な実施形態)
便宜を考えて、次に、図1を参照して、本発明を、3つの基本サブシステム、すなわちプロセスガス(または液)を供給するサブシステム1、反応室を含むサブシステム3、および廃棄物低減(waste abatement)用のサブシステム5に関して概括的に説明する。ただし、本発明はこの説明に限定されない。
【0056】
前述のとおり、HVMは、本明細書に記載された総称的な諸特徴を含むこのシステムの様々な物理特徴の組合せの属性である。
【0057】
1.GaCl3の外部供給源
第1のサブシステムであるプロセスガスサブシステム、特にガリウム化合物蒸気供給源の構造は、本発明の重要な特徴である。ここで、知られているGaN VPEプロセスを簡単に説明する。GaN VPEエピタキシは、加熱された基板の表面に、窒素(N)およびガリウム(Ga)(ならびに、混合窒化物を形成するためのIII族金属を含む任意選択の他の1種または数種のガス、および特定の電子伝導性を与えるための任意選択の1種または数種のドーパント)を含む前駆体ガスからGaNを直接に合成することを含む。このGaを含むガスは通常、一塩化ガリウム(GaCl)または三塩化ガリウム(GaCl3)、あるいはガリウム有機化合物、例えばトリエチルガリウム(TEG)またはトリメチルガリウム(TMG)である。最初のケースでは、このプロセスが、HVPE(Halide Vapor Pressure Epitaxy)と呼ばれ、2番目のケースでは、MOVPE(Metal Organic Vapor Pressure Epitaxy)と呼ばれる。
【0058】
GaClの化学特性(高温でのみ安定であること)は、GaCl蒸気を反応容器内で、例えば液体Gaを含むボートの上にHClを流すことによって、in situで合成することを要求する。対照的に、GaCl3は、周囲条件(水分がない場合)で安定な固体であり、普通は、密封された石英アンプルに約100g程度入れて供給される。TMGおよびTEGは揮発性の液体である。Nを含むガスは通常アンモニア(NH3)であり、半導体品質のNH3は標準ボンベから利用可能である。
【0059】
あるいは、プラズマ活性化したN2、例えばNイオンまたはラジカルを含むN2を、Nを含むガスとして使用することもできる。分子N2は、たとえ高いプロセス温度であってもGaCl3またはGaClと実質的に反応しない。窒素ラジカルは、当技術分野で知られている方法で調製することができ、一般に、例えば窒素管路にRF源を追加して電磁誘導プラズマを生成することによってエネルギーを与えて窒素分子を分割することにより調製される。このモードで稼動しているとき、リアクタ内の圧力は通常低減される。
【0060】
知られているVPEプロセスの中で、MOCVDおよびGaCl HVPEは、III族窒化物層の持続的な大量製造に対してあまり望ましくないことが分かっている。第1に、MOCVDは、達成可能な堆積速度が、HVPEプロセスによって達成可能な堆積速度の5%未満であるため、10μmよりも厚い膜の成長に対してあまり望ましくない。例えば、HVPE堆積速度は100〜1000μ/時以上でありうるのに対して、MOCVDの速度は一般に10μ/時未満である。第2に、GaCl HVPEは、HClとの反応によってGaClを形成するために反応室内に液体Ga源が存在する必要があるため、あまり望ましくない。このような液体Ga源を、HClとの反応性を保ったまま大量製造に対して十分な形態に維持することは困難であることが分かっている。
【0061】
したがって、本発明の装置は主に、大量製造用のGaCl3 HVPEを対象とする。任意選択で、本発明の装置は、例えばバッファ層などを堆積させるMOCVDを実施することもできる。しかしながら、大量製造用のGaCl3 HVPEを使用するには、十分な期間、(反応室内のウェハのロード/アンロードを除く)中断なしに維持することができる十分な流量を達成するGaCl3蒸気の供給源が必要である。好ましくは、厚いGaN層であっても1枚のウェハ(または1バッチの複数のウェハ)がおよそ1または2時間以下の堆積時間ですむように、平均持続堆積速度が時間当たり100から1000μmGaN/時の範囲にある。このような好ましい堆積速度を達成するには、供給源が、質量流量約250または300g/時のGaCl3蒸気を供給する必要がある(直径200mm、厚さ300μmの円形GaN層はGaを約56g含み、GaCl3はGaを約40重量%含む)。さらに、供給源に再充填し/供給源を保守するのに必要な生産の中断が週にせいぜい1回、または好ましくは少なくとも2から4週に1回に制限されるように、十分な持続時間の間、このような流量を維持することができることが好ましい。したがって、少なくとも50枚のウェハ(または50バッチの複数のウェハ)、好ましくは少なくとも100または150または200または250から300、あるいはそれ以上のウェハまたはバッチに対してこの流量を維持することができることが好ましい。このような供給源は従来技術において知られていない。
【0062】
本発明の装置は、好ましい流量および持続時間を達成するための課題を解決するGaCl3供給源を提供する。これまで、好ましい流量の達成は、GaCl3のいくつかの物理特性によって妨げられてきた。第1に、GaCl3は周囲条件で固体であり、蒸気は、昇華によってしか形成しえない。しかしながら、GaCl3の昇華速度は、好ましい質量流量の蒸気を供給するには不十分であることが分かっている。第2に、GaCl3は約78℃で溶融し、蒸気は、液面からの蒸発によって形成することができる。しかしながら、この場合も、蒸発速度は、好ましい質量流量を提供するには不十分であることが分かっている。さらに、液体GaCl3は比較的に粘性であることが知られているため、蒸発速度を増大させる一般的な物理手段、例えば、攪拌、バブリングなども蒸発速度を十分には増大させない。
【0063】
必要なのは、十分に低粘度の形態の液体GaCl3であり、GaCl3は、約120℃以上、特に約130℃以上で、例えば水の粘度と同様の粘度を有する低粘度状態をとることが観察、発見された。さらに、この低粘度状態では、通常の物理手段によって、好ましい質量流量を提供するのに十分な程度にGaCl3の蒸発速度を効果的に上昇させることができることが観察、発見された。
【0064】
したがって、本発明のGaCl3供給源は、温度T1が約130℃に制御された液体GaCl3のリザーバ(reservoir)を維持し、蒸発速度を高める物理手段を提供する。このような物理手段は、液体を攪拌すること、液体を噴霧すること、液体の上にキャリヤガスを急速に流すこと、液体中でキャリヤガスをバブリングすること、液体を超音波分散させることなどを含むことができる。特に、当技術分野で知られている配置によって、低粘度状態の液体GaCl3、例えば約130℃のGaCl3中でHe、N2、H2、Arなどの不活性キャリヤガスをバブリングすることによって、GaCl3の好ましい質量流量を提供することができることが発見された。リザーバの外側の加熱要素を使用してより良好な温度制御を達成するため、GaCl3供給源の好ましい構成は、それらの容積に比例した大きな総表面積を有する。例えば、示されたGaCl3供給源は、高さが直径よりもかなり大きい円筒形である。GaCl3に関しては、質量流量が、少なくとも48時間の間の約120g/時から、少なくとも100時間の間の250g/時、少なくとも1週間の間の500g/時、少なくとも1カ月の間の750から1000g/時にもなる。
【0065】
さらに、好ましい流量および持続時間を達成することができるGaCl3供給源は、個々の100gアンプルに入れて供給されたGaCl3に頼ることはできない。このような量は、中断なしに15から45分堆積させるだけの量でしかないであろう。したがって、本発明のGaCl3供給源の追加の態様はGaCl3の大きな容量である。本発明の高スループット目標を達成するためには、GaCl3供給源の再充填にかかる時間が限定されることが好ましい。しかしながら、再充填は、大気中の水分と容易に反応するGaCl3の傾向によってより複雑になる。ウェハ生産の前、GaCl3充填物、供給源およびGaCl3供給管路は水分を含んではならない。様々な実施形態のスループット目標に応じて、本発明は、少なくとも約25kgまたは少なくとも約35kg、あるいは少なくとも約50から70kgのGaCl3を保持する能力を有する供給源を含む(上限は、反応室の近くに供給源を配置する利点を考慮したサイズおよび重量の要件によって決定される)。好ましい一実施形態では、GaCl3供給源が、約50から100kg、好ましくは約60から70kgのGaCl3を保持することができる。その構築および使用のロジスティックスを除き、GaCl3供給源の実際の容量に上限はないことが理解される。さらに、リアクタのダウンタイムのない1つの供給源から他の供給源への切替えを可能にするため、マニホルドを介して複数のGaCl3供給源を組み付けることができる。これにより、リアクタが稼動している間に空の供給源を取り外し、完全に充填された新たな供給源と交換することができる。
【0066】
本発明のGaCl3供給源の他の態様は、供給源と反応室の間の供給管路の綿密な温度制御である。供給管路内などでGaCl3蒸気が凝縮することを防ぐため、GaCl3供給管路および関連質量流量センサ、コントローラなどの温度は、供給源の出口のT2から反応室入口33のT3まで徐々に高くなることが好ましい。しかしながら、反応室入口の温度は、例えばガスケット、Oリングなどに対して石英反応室を密封するために供給管路および室入口で使用されているシール材料(および他の材料)に損傷を与えうるほどに高くてはならない。現在のところ、Clへの曝露に対して抵抗性を有し、かつ半導体産業における通常の商用利用に対して使用可能なシール材料は一般に、約160℃よりも高い温度に耐えることができない。したがって、本発明は、GaCl3供給管路の温度を感知し、次いで、供給管路の温度が、供給管路に沿って、約130℃であることが好ましい供給源から、約145から155℃(あるいはOリングまたは他のシール材料の高温許容値よりも低い他の安全な温度)であることが好ましい反応室入口における最大温度まで上昇する(または少なくとも低下しない)ように、GaCl3供給管路を必要に応じて加熱または冷却する(一般化して供給管路温度を「制御する」)ことを含む。必要な温度制御をより良好に実現するため、供給源装置と反応室入口との間の供給管路の長さは短くなければならず、約1フィート(約0.30m)未満、約2フィート(約0.61m)未満または約3フィート(約0.91m)未満であることが好ましい。GaCl3供給源にかかる圧力は圧力制御システム17によって制御される。
【0067】
本発明のGaCl3供給源の他の態様は、室内に入るGaCl3流速の正確な制御である。バブラ(bubbler)実施形態では、供給源からのGaCl3流束が、GaCl3の温度、GaCl3にかかる圧力およびGaCl3中でバブリングされるガス流に依存する。原理上は、これらのうちの任意の1つのパラメータによってGaCl3の質量流束を制御することができるが、好ましい一実施形態は、コントローラ21によってキャリヤガス流を変化させることによって質量流束を制御する。Piezocorなどの通常通りに使用可能な気体組成センサ71を使用して、反応室内への実際のGaCl3質量流束、例えば1秒当たりのグラム数の追加の制御を提供することができる。さらに、GaCl3供給源にかかる圧力を、バブラの出口に置かれた圧力制御システム17によって制御することができる。この圧力制御システム、例えば背圧レギュレータは、供給容器内の超過圧の制御を可能にする。容器圧力の制御は、バブラの制御された温度およびキャリヤガスの流量と連携して、前駆体流量の改良された決定を容易にする。任意選択で、供給容器はさらに外側断熱部分を含む。
【0068】
GaCl3供給源、GaCl3供給管路および入口マニホルド構造に使用され、GaCl3と接触する材料は塩素抵抗性であることが望ましい。金属成分に関しては、Hastelloyなどのニッケル基合金、タンタルまたはタンタル基合金が好ましい。耐食性保護コーティングによって金属成分の耐食性をさらに高めることができる。このようなコーティングは、炭化シリコン、窒化ホウ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウムを含むことができ、好ましい一実施形態では、金属成分を、溶融シリカ層または結合(bonded)アモルファスシリコン層でコーティングすることができ、例えばSILTEK(登録商標)およびSILCOSTEEL(登録商標)(Restek Corporation社から販売されている)は、酸化環境に対する高い耐食性を提供することが証明されている。非金属成分に関しては、塩素抵抗性ポリマー材料(炭素ポリマーまたはシリコーンポリマー)が好ましい。
【0069】
以上のことを考慮して、適当な一実施形態では、記載された持続時間の間、所望の量を送達するために、供給源が、その含まれるGaCl3を中断なしに送達することができることから、好ましい量のGaCl3を保持する能力を有する好ましいGaCl3供給源を「連続的に」動作すると記述する。しかしながら、特定の一実施形態では、断続的な室の保守、例えば洗浄などが必要となるように、反応室(または本発明のシステムの他の構成要素)が構築され、または構築することができ、あるいはある種のプロセス詳細が実行されることを理解されたい。対照的に、GaCl3供給源は、III−V族生成物の大量製造を容易にするため、所望の量の前駆体を中断なしに供給するように構成され、寸法が決められる。したがって、供給源は、固体の前駆体を補充するために停止または中断させる必要なしにこれらの量を提供する能力を有する。
【0070】
これは、十分に大きな量の固体前駆体を単一のリザーバに収容することによって、またはマニホルドによって集合させた複数のリザーバを提供することによって達成することができる。当然ながら、マニホルド集合システムでは、1つまたは複数のリザーバに固体前駆体材料を補給している間に、他の1つのリザーバを、気体前駆体を供給するように動作させることができ、リアクタの動作に影響を及ぼさないため、このシステムも無中断システムであることを、当業者は理解するであろう。このような実施形態では、供給源が完全には機能しない再充填、開栓、洗浄、補給または他の手順なしに、供給源がその含まれるGaCl3を送達することから、GaCl3供給源を連続的に動作すると記述する。言い換えると、供給源は単独ではGaN堆積の中断を必要としない。
【0071】
さらに、前述のとおり、好ましいGaCl3供給源は単一のリザーバ内にGaCl3を含むことができる。さらに、好ましい供給源は、複数のリザーバからGaCl3蒸気を順次にまたは並行して送達することができるように、マニホルドによって集合させた出口を有する複数(すなわち2、5、10など)のリザーバを含むことができる。以降、これらの両方の実施形態がしばしば単一の供給源と呼ばれる。好ましい実施形態では、MOCVDプロセスを実行することができるように、本発明の装置がさらに、III族金属有機化合物の供給源を提供することができる。例えば、MOCVDを使用して、例えば薄いGaNまたはAlNバッファ層、薄い中間層、混合金属窒化物の層などを堆積させることができる。追加のプロセスガスは、当技術分野で知られているように通常通りに供給することができる。
【0072】
V族前駆体は、1種または数種のV族原子を含むガスである。このようなガスの例にはNH3、AsH3およびPH3などがある。GaNを成長させる目的には一般にNH3が使用される。これは、NH3が、一般的な成長温度でNの十分な取込みを提供することができるためである。アンモニアおよび他のN前駆体は外部供給源である。例えば、半導体等級のNH3は、様々なサイズのボンベ19から容易に使用可能であり、キャリヤガス72は、やはり様々なサイズの容器に入れられた極低温の液体としてまたはガスとして使用可能である。これらのガスの流束は、質量流量コントローラ21などによって通常通りに制御することができる。代替実施形態では、本発明の装置がさらに、他のIII族塩化物の供給源を提供することができる。
【0073】
2.リアクタの形状
次に、経済性を向上させるため、リアクタサブシステムは、市販のリアクタシステムを適合させたものであることが好ましい。本発明における適合および使用に対して好ましい使用可能なリアクタは、次に説明する特徴の大部分または全部を含む。これらの特徴は、本明細書に開示された変更および改良を有するGaN層のHVMに対して有用であることが分かっている。以下の説明は主に既存の装置を適合させる実施形態を対象とするが、リアクタおよびリアクタシステムは、後述する特徴を含むように目的に合わせて構築することができる。本発明は、既存の装置を再設計し変更することと、新たな装置を設計し製造することの両方を含む。本発明はさらにその結果得られる装置を含む。
【0074】
好ましい反応室は一般に水平方向のプロセスガス流を有し、相対的に小さい垂直寸法と相対的に大きい水平寸法とを有するほぼ箱状または半球状の形状に形成される。水平反応室のある種の特徴は、非生産的なリアクタ時間を限定し、高品質GaNウェハのHVMを達成する際に重要である。
【0075】
3.低サーマルマスサセプタおよびランプ加熱
最初に、新たなウェハを導入した後に昇温させるのにかかる時間および堆積ラン後に降温させるのにかかる時間は非生産的であり、制限または最小化されなければならない。したがって、好ましいリアクタおよび加熱装置はさらに、低いサーマルマス(すなわち熱を急速に吸収する能力)を有し、サーマルマスが低いほど好ましい。好ましいこのようなリアクタは、赤外(IR)加熱ランプによって加熱され、IRを透過する壁を有する。図1は、石英でできたリアクタ25を示し、リアクタ25は、縦方向の下IRランプ27および横断方向の上IRランプ29によって加熱される。石英は、IRを十分に透過し、Clに対して十分に抵抗性であり、十分に耐火性であるため、好ましい室壁材料である。
【0076】
4.室壁およびフランジの閉ループ温度制御
反応室内部を洗浄するのにかかる時間も非生産的であり、やはり制限または最小化されなければならない。GaN堆積プロセスの間に、前駆体、生成物または副生物を内壁に堆積または凝縮する可能性がある。このような堆積または凝縮は、室壁の温度を制御することによって、一般的は、前駆体および副生物の凝縮を防ぐには十分に高いが、壁の表面でのGaNの形成および堆積を防ぐには十分に低い中間温度まで室壁を冷却することによって、大幅に制限しまたは低減させることができる。GaCl3 HVPEプロセスに使用される前駆体は、約70から80℃未満で凝縮し、主要な副生物であるNH4Clは約140℃未満でないと凝縮しない。GaNは、約500℃を超える温度で形成および堆積し始める。室壁は温度T5に制御され、温度T5は、前駆体および副生物の凝縮をかなり制限するのには十分に高いことが分かっている200℃と、室壁の表面のGaN堆積をかなり制限するのには十分に低いことが分かっている500℃の間にあることが好ましい。室壁の好ましい温度範囲は250から350℃である。
【0077】
好ましい範囲に温度制御するには一般に室壁の冷却が必要である。室壁はIRを透過するが、それでも、高温のサセプタから伝わった熱によってある程度は加熱される。図1は、完全または部分シュラウド(shroud)37の中に反応室25が収容され、シュラウドの中を反応室の外面に沿って冷却空気が導かれる好ましい1つの冷却配置を示す。壁温は赤外高温測定法によって測定することができ、その結果にしたがって冷却空気の流れを調整することができる。例えば、多速度または可変速度ファン(1つまたは複数)を配置し、室壁温を感受するセンサによってファンを制御することができる。
【0078】
5.ロードロック、カセットツーカセット
ウェハのロードおよびアンロード時間も非生産的である。この時間は、39に概略的に示された自動装置によって通常通りに制限することができる。当技術分野で知られているとおり、この自動装置はウェハを格納し、反応室にウェハをロードし、反応室からウェハをアンロードすることができ、一般に、外部ホルダと反応室内のサセプタとの間でウェハを、例えば移送ワンドを使用して移動させるロボットアームなどを含む。ウェハ移送の間、中間のウェハ移送室によって、周囲環境への曝露から反応室を分離することができる。例えば、移送室と外部との間の制御可能な扉は、ロードおよびアンロードを可能にすることができ、次いで周囲環境への曝露に対して移送室を密封することができる。フラッシングおよび調製の後、移送室とリアクタの間の他の制御可能な扉を開けて、サセプタ上へのウェハの配置およびサセプタ上のウェハの取出しを可能にすることができる。このようなシステムはさらに、酸素、水分または大気中の他の汚染物質へのリアクタ内部の曝露を防ぎ、ウェハのロードおよびアンロードの前のパージ時間を短縮する。石英ベルヌーイ移送ワンドは、汚染を引き起こすことなく高温のウェハをハンドリングすることを可能にすることにより、非生産的な時間を低減させるため、石英ベルヌーイ移送ワンドを使用することが好ましい。
【0079】
6.分離噴射
入口マニホルド33から出口マニホルド35までの矢印31の方向のプロセスガス流の制御は、高品質GaN層を堆積させるために重要である。この流れは、プロセスガスに対する以下の好ましい特性を含む。第1に、ガリウムを含むガス、例えばGaCl3と、窒素を含むガス、例えばNH3とは、別々の入口を通って反応室に入ることが好ましい。これらのガスが反応室の外側で混合されてはならない。このような混合は、望ましくない反応、例えばその後のGaN堆積を妨害するGaCl3分子とNH3分子の錯体の形成につながる可能性があるからである。
【0080】
次いで、別々に入室した後、GaCl3の流れとNH3の流れは、サセプタの上のガスが、空間的および時間的に均一な組成を有するように配置されることが好ましい。サセプタ(および支持された1枚または数枚のウェハ)の面上において、III/V比は、特定の時刻に、好ましくは約5%未満、より好ましくは約3%未満または約2%未満あるいは約1%未満だけ変化しなければならないことが分かった。さらに、III/V比は同様に、サセプタの面のすべての部分で、時間的に実質的に均一でなければならない。したがって、GaCl3およびNH3の速度プロファイルは、サセプタに到達したときに、両方のガスが、反応室の全幅にわたって、好ましくは少なくともサセプタの直径を横切って均一な非乱流を有するように、両方のガスがともに反応室の全幅にわたって横方向に広がると規定しなければならない。
【0081】
最後に、流れは、1種または数種のプロセスガスが異常に高濃度に集積しうる異常に低流量の再循環ゾーンまたは領域を有してはならない。低ガス流量の局所領域またはガスが停滞する局所領域は一番に回避される。
【0082】
好ましいプロセスガス流は、新たなまたは既存の反応室の入口マニホルドの綿密な設計または再設計によって達成される。本明細書で使用される場合、用語「入口マニホルド」は、プロセスガスおよびキャリヤガスを反応室内へ入れる構造を指す。その構造が単一構造なのか、または物理的に別個の2つ以上のユニットを含むのかは問わない。
【0083】
以下の一般特徴を有するように設計され製造された入口マニホルドは、好ましいプロセスガス流を達成することが分かった。しかしながら、大部分の実施形態では、提案された入口マニホルド設計によって製作された選択された反応室へのガスの流入を、当技術分野で知られている流体力学モデル化ソフトウェアパッケージを使用してモデル化すると有利である。これにより、提案された設計を実際の製造の前に繰返し改良して、均一性の向上を達成することができる。
【0084】
最初に、反応室へのプロセスガスの入室が、室の幅の一部、大部分または全部にわたって分布すると有利であることが分かった。例えば、そこを通ってガスが入室することができる複数のガス入口ポートあるいは1つまたは複数のスロットを、室の全幅にわたって横方向に分布させることができる。リアクタ内で、GaCl3ガスおよびNH3ガスをサセプタの上方の所望の反応位置まで導くのを助けるため、窒素、水素などのキャリヤガスを導入することができる。さらに、入口ポート付近でのスプリアス(spurious)堆積を防ぐため、入口ポートが約400〜500℃以上に加熱されないように、実際の入口ポートが、加熱されたサセプタから離隔されていると有利である。あるいは、入口ポートを冷却することもでき、またはプロセスガスが入口ポートの近傍で混合しないように入口ポートを互いに離隔させることもできる。
【0085】
次に、GaCl3およびNH3の入口の特定の構成によって生じたガス流動特性を向上させることができる、すなわち動的に「調整する」ことができることが分かった。例えばサセプタに衝突しまたはサセプタの下から発して、1次GaCl3流およびNH3流と混合する2次パージガス流を使用して、組成および速度の均一性を増大させ、またはリアクタ構成要素への堆積を防ぐようにGaCl3流およびNH3流を変更することができる。例えば、GaCl3流とNH3流が異なる入口から反応室に入る実施形態では、意図された堆積ゾーンの上方にプロセスガスを閉じ込め、意図されていない堆積からリアクタの側壁を保護するため、GaCl3流およびNH3流のやや上流から反応室内に入るパージガス流を供給すると有利であることが分かった。これらの目的のため、横方向の室壁の近くにはより多くの量のキャリヤガスを導入し、中心寄りの室の中央付近にはより少量のキャリヤガスを導入すると有利である。
【0086】
さらに、好ましい入口マニホルドは、動作中に観察される不均一性を改善することができるように、少なくとも1つのプロセスガス流を動的に調整する。例えば、プロセスガスの入口を2つ以上の流れに分割し、それぞれの流れの流量を独立に調整する個々の流量制御弁を配置することができる。好ましい一実施形態では、GaCl3入口が、独立に制御可能な相対流量を有する5つの流れに分割されて配置される。
【0087】
好ましい入口マニホルドの他の態様は温度制御を含む。これにより、前駆体、例えばGaCl3の凝縮を防ぎ、温度感受性材料、例えばガスケットまたはOリング材料に対する損傷を防ぐために、入口マニホルド温度T3を制御することができる。以前に論じたとおり、GaCl3入口ポートの温度は、約130℃から約150℃に高められることが好ましいGaCl3供給管路内で到達する最高温度以上でなければならない。入口マニホルドにおいて使用することができる、特に入口マニホルドを石英反応室に対して密封するために使用することができるガスケット材料、Oリング材料などの市販の塩素抵抗性シール材料は、約160℃を超える温度で劣化し始める。使用可能ならば、これよりも高い温度で使用できるシリコーンOリングなどの塩素抵抗性シール材料を使用することもでき、その場合には、入口マニホルドの上限温度を引き上げることができる。
【0088】
したがって、入口マニホルド温度T3は、昇温させるために周囲環境から熱を供給することによって、または高温の反応室および非常に高温のサセプタから伝達された熱を除去することによって、約155から160℃の範囲に留まるように制御されなければならない。好ましい実施形態では、入口マニホルドが温度センサおよび温度制御流体用の流路を含む。例えば、155から160℃の温度は、温度制御されたGALDEN(商標)流体を循環させることによって達成することができる。他の温度範囲に対しては他の知られている流体を使用することができる。この流体流路は入口マニホルドの温度感受性部分、例えばGaCl3入口ポートおよび密封Oリングの近くを通ることが好ましい。流路配置は、熱モデル化を考慮し、当技術分野で知られているソフトウェアパッケージを使用してより正確に選択することができる。
【0089】
GaCl3分子は、固相、液相、蒸気相のうちのいずれの状態にあるのかにかかわらず、主として二量体Ga2Cl6の形態で存在することが知られている。この形態は事実上800℃まで非常に安定である。気相ラマン分光法によって裏付けられた熱力学的計算によれば、300℃で、気相の90%超が二量体分子からなり、700℃で、二量体の99%超がGaCl3単量体に分解することが確認された。
【0090】
150℃以下の温度に保たれた金属噴射ポートを通して二量体分子が噴射されると、1000℃超の温度を有する高温のサセプタと接触したときにだけ二量体の分解が起こる。サセプタの上方におけるガスの速度またはその滞留時間によっては、分解する二量体の部分が、ウェハ上での高い成長速度を持続させるにはあまりに小さい可能性がある。GaN堆積プロセスは、GaCl3が吸着し、すべての塩素が除去されて吸着されたGa原子が得られるまでGaCl3がGaClx(x<3)に分解することによって進行する。したがって、GaN堆積プロセスは、単量体形態のGaCl3から始まることが望ましい。本発明の好ましい一実施形態は、サセプタ領域の上流に位置する反応室の下の石英管を通して二量体を導入する。この石英管は、楕円形の断面を有するファネル(funnel)を介して反応室に接続する。二量体を単量体に分解するため、二量体がファネル内にある間に二量体にエネルギーが供給される。好ましい一実施形態は、石英管およびファネルが高いIR放射束を受け取るように配置され、形成されたIRランプからのIR放射を使用する。この実施形態では、ファネル領域がIR吸収性材料で満たされ、放射パワーが、IR吸収性材料を600℃、より好ましくは700℃以上の温度に加熱するように調整される。二量体形態のGaCl3がこの石英噴射器内に噴射され、高温のファネルゾーンを通過すると、二量体は単量体に分解し、サセプタのすぐ上流の反応室内に噴射される。二量体の再形成を防ぐため、リアクタ内へのGaCl3の噴射位置とサセプタとの間の領域が800℃よりも高い温度に維持されることが好ましい。好ましい一実施形態は、ファネルとサセプタの間に、700℃よりも高い温度、好ましくは800℃よりも高い温度を維持するためにIR加熱ランプによって加熱されたSiCプレートを使用する。
【0091】
7.サセプタおよびマルチウェハサセプタ
サセプタおよびそのマウントは、当技術分野において一般に知られている標準構造とすることができる。例えば、サセプタは、炭化シリコンまたは窒化シリコンでコーティングされた黒鉛、あるいは耐火性の金属または合金を含むことができる。サセプタは、シャフト上で回転するように取り付けられることが好ましい。GaN堆積の間、サセプタ温度T4は約1000から1100℃(またはそれ以上)とすることができ、知られている温度制御回路によって制御された石英IRランプによって維持される。サセプタの下のデッドゾーン(dead zone)の形成を防ぐため、サセプタのマウントは、パージガスの噴射を提供することが好ましい。この噴射は、加熱されたサセプタおよび(直接にまたは間接的に)加熱される可能性がある隣接する構成要素の下面への不必要な堆積を制限または最小化することができるため有利である。サセプタは、1つまたは複数の基板を保持するように構成することができる。
【0092】
8.加熱された排気
反応室出口マニホルド35は、反応室から排出管路41を通って廃棄物低減システム5に至る排出ガスの自由で障害のない流れを提供する。この排出システムはさらに、ポンプ(42)および関連圧力制御システム(圧力制御弁(44)、圧力計(46)および減圧での動作を可能にする関連制御装置)を含むことができる。有利には、反応生成物の凝縮を制限するため、出口マニホルド排出管路および圧力制御装置(使用される場合)も温度制御される。排出ガスおよび反応生成物は一般に、キャリヤガス、未反応のプロセスガス、すなわちGaCl3およびNH3、主としてNH4Cl、NH4GaCl4、HClおよびH2である反応副生物を含む。前述のとおり、GaCl3の凝縮を防ぐためには約130℃を超える温度が必要である。約140℃未満の温度でNH4Clは凝縮して粉状材料となり、出口マニホルドおよび排出システムはこの温度よりも高温に維持されなければならない。一方、シール材料の劣化を防ぐためには、出口マニホルド温度が約160℃を超えてはならない。
【0093】
したがって、出口マニホルド温度T6は、入口マニホルドの温度制御に使用される手段と同様の温度制御手段(任意選択で熱モデル化を含む)によって、約155から160℃の範囲に維持されることが好ましい。排出管路の最大温度T7は、シールの最大許容温度によって制限され、約155から160℃の範囲であることが好ましい。
【0094】
9.廃棄物管理
次に、廃棄物低減サブシステム5を考えると、好ましい排除システムは、反応室から排出された廃棄ガリウム化合物を回収することによって、本発明の経済的な動作に寄与することができる。本発明の単一の実施形態は、1カ月の持続的大量製造の間に30kgまたは60kg、あるいはそれ以上を排出しうる(約50%が廃棄物になると仮定した場合)。現在のGa価格では、この廃棄Gaを回収し、それをGaCl3前駆体にリサイクルすることは経済的であり、これにより約90から100%のGa効率が効果的に達成される。
【0095】
図1はさらに、ガリウムの回収を提供し、市販製品から容易に適合させることができる廃棄物低減サブシステム5の好ましい一実施形態を概略的に示す。反応室25から排出された流れは、排出生成物の凝縮を制限するために温度T7、例えば都合のよい約155から160℃またはそれ以上の範囲の温度に温度制御された排出管路41を通って、次いでバーナユニット43に入る。バーナユニットは、例えばH2/O2燃焼を含む高温の燃焼ゾーン45に排出ガスを通すことによって排出ガスを酸化する。酸化された排出流は次いで、管47を通って向流スクラバユニット49に入り、そこで排出流は、水流51に対する向流として移動する。水流は、実質的にすべての水溶性および微粒子成分を酸化された排出流から除去する。スクラバで処理された排出ガスは次いでシステムから放出される57。
【0096】
可溶性および微粒子材料を含む水流は分離器59へと進み、そこで、微粒子成分、主として微粒子状の酸化ガリウム(例えばGa23)が、水溶性成分、主として溶解したNH4ClおよびHClから分離される61。分離は、篩別、濾過、遠心分離、凝集などの知られている技法によって達成することができる。本発明の単一の実施形態は、動作期間1カ月ごとに、微粒子状Ga23を60kg、または120kg、あるいはそれ以上生成しうる。微粒子状酸化ガリウムは集められ、有利には、Gaが回収され、知られている化学的技法によって例えばGaCl3にリサイクルされる。例えば非特許文献4を参照されたい。水溶性成分はシステムから除かれる。
【0097】
(本発明の好ましい特定の実施形態)
次に、以上に概括的に説明した発明の好ましい特定の実施形態を説明する。この実施形態は、ASM America,Inc.社のEPSILON(登録商標)シリーズの単ウェハ型エピタキシャルリアクタの変更および適合に基づく。したがって、以下の特徴の多くは、この好ましい特定の実施形態に固有である。しかしながら、これらの特徴は本発明を限定するものではない。他の特定の実施形態は、使用可能な他のエピタキシャルリアクタの変更および適合に基づくことができ、それらも本発明の範囲に含まれる。
【0098】
図2A〜Cは、GaCl3を50から75kg保持することができ、約130〜150℃までの制御された温度の液体としてGaCl3を維持することができるリザーバ103と、制御された質量流量のGaCl3を反応室に供給し、同時に管路内でのGaCl3の凝縮を制限しまたは防ぐ供給管路、弁および制御機構を含む供給アセンブリ105とを含むGaCl3送達システム101の諸態様を示す。リザーバは、液体GaCl3の蒸発を増大させる内部手段を含む。好ましい一実施形態では、この内部手段が、当技術分野で知られているバブラ(bubbler)装置を含み、代替実施形態では、この内部手段が、液体GaCl3を物理的に攪拌する手段、液体GaCl3を噴霧する手段、液体GaCl3を超音波分散させる手段等を含むことができる。任意選択で、供給管路(または送達管路)は、キャリヤガスおよびIII族前駆体を運ぶ内側管路と、同軸の囲い管路とを有する同軸部分を含み、囲い管路は、囲い管路の内側、内側管路の外側に環状空間を形成する。この環状空間は熱媒体を含むことができる。
【0099】
図2Cは、従来のプロセスガス制御キャビネット137に隣接して配置されたキャビネット135内の送達システム101の例示的な一配置を示す。GaCl3供給管路の長さを制限するため、キャビネット135はさらに、この図ではキャビネット137によって隠されている反応室に隣接して配置される。プロセスガス制御キャビネット137は例えば、ガス制御パネル139と、III族金属有機化合物などの追加のプロセスガスまたは液のための別個の部分141〜147とを含む。
【0100】
図2Bは、好ましい供給アセンブリ105をより詳細に示す。弁107および109は、キャリヤガスをリザーバ103内に導き、次いでリザーバ内の内部バブラに流し、次いで、蒸発したGaCl3蒸気とともにリザーバから取り出す管路を制御する。これらの弁は、保守などのためにリザーバを分離することができる。弁110は、容器システムの上記出口および入口弁よりも上のシステムのパージを容易にする。特に、凝縮はおそらく、ピグテール(pig−tail)要素111、112のところで起こるため、弁110は、これらのエリアをパージするのに有用である。容器圧力の制御は、バブラの制御された温度およびキャリヤガスの流量と連携して、前駆体流量の改良された決定を容易にする。弁110を追加することによって、成長モードでないときに送達システム全体を非腐食性のキャリヤガスによってパージすることができ、それにより、腐食性環境へのシステムの曝露を低減させ、したがって装置寿命を向上させることができる。このアセンブリはさらに、供給管路を流れる様々な態様の流れを制御する弁111〜121を含む。このアセンブリはさらに、GaCl3容器にかかる圧力を一定に維持する圧力制御器/変換器129を含む。さらに、GaCl3容器へのキャリヤガスの正確な流れを提供する質量流量コントローラ131が配置される。これらは、制御され較正された質量流量のGaCl3が反応室内へ流れるように動作する。このアセンブリはさらに圧力調整器125および127を含む。これらの供給管路、弁およびコントローラを含む供給管路アセンブリは、それぞれの構成要素を取り囲む二枚貝形の複数のアルミニウム加熱ブロックの中に封入される。これらのアルミニウムブロックはさらに、リザーバの出力から反応室の入口まで温度が増大する(または少なくとも低下しない)するように供給管路構成要素の温度を制御する温度センサを含む。GaCl3供給源への入口ガスを好ましくは少なくとも110℃まで加熱するため、ガスヒーターが配置される。
【0101】
任意選択で、キャリヤガスの入口管路内に、キャリヤガスの水分を5ppb以下まで除去する能力を有する浄化器が置かれ、さらに、このキャリヤガス浄化器の下流にキャリヤガスフィルタが配置される。キャリヤガスヒーターの近くの熱交換面を大きくするため、任意選択で、正弦曲がり、例えばピグテール112を有するように、キャリヤガスの管路を構成することができる。
【0102】
図3Aおよび3Bは、反応室201の好ましい一実施形態の斜視図を示す。この反応室は石英壁を有し、一般に、幅が相対的に大きく高さが相対的に小さい細長い長方形の箱形構造を有する。室壁を横断方向にまたいでいくつかの石英リッジ(ridge)203が延び、石英リッジ203は、特に室が真空下で動作しているときに壁を支持する。サセプタの温度よりも大幅に低い温度に室壁を制御することができるように、反応室は、冷却空気を導くシュラウドによって取り囲まれている。このシュラウドは一般に、反応室を露出させるためにこれらの図に示されているように開けることができるスーツケース状配置を有する。これらの図では、シュラウドの長い方の側面205および上面207が見えている。リアクタ内にはサセプタ215(この図面では見ることができない)が配置されている。サセプタは、2つの平行ランプアレイとして配置された石英ランプによって加熱される。シュラウドの上面には上側ランプアレイ209が見え、下側アレイは反応室の下に隠れている。入口マニホルドの部分が見えている。
【0103】
図3Cは、好ましい特定の反応室301の縦断面図を示す。ただし強化リブ203は省略されている。この図には、上石英壁303、下石英壁305および一方の側石英壁307が示されている。石英フランジ313は、反応室の入口端を入口マニホルド構造に対して密封し、石英フランジ309は、反応室の出口端を出口マニホルド構造に対して密封する。ポート315は、プロセスガス、キャリヤガスなどの入室に備えたものであり、ポート311は、排出ガスの退室に備えたものである。サセプタは一般に半円形の開口319の中に、サセプタの上面が石英シェルフ(shelf)317の上面と共面となるように配置される。これにより、入口マニホルド構造から入室したプロセスガスに実質的になめらかな表面が提示され、その結果、プロセスガスは、乱流となることなく、またはサセプタの下にそれることなくサセプタの上面を横切って流れることができる。円筒形の石英管321は、その上でサセプタを回転させることができるサセプタ支持シャフトのための管である。有利には、サセプタの下の容積をパージして、プロセスガスが集積しうるデッドゾーンを防ぐため、この管を通してキャリヤガスを噴射することができる。特に、加熱されたサセプタの下のGaCl3の集積が制限される。
【0104】
入口マニホルド構造は、ポート315とスリット状ポート329の両方を通してプロセスガスを供給する。ガスは最初に石英管323を通ってポート329に到達する。この管は、平たいファネル325内へ開いており、平たいファネル325は、ガスが横断方向(反応室内のプロセスガスの流れに対して直角の方向)に広がることを可能にする。このファネルは、シェルフ317の横断方向に配置されたスロットを通して反応室のベース内へ開く。
【0105】
図6を参照すると、ファネルには、炭化シリコンのビーズ(beads)607がぎっしりと充填され、平たいファネルの最上部に置かれた炭化シリコンインサート327が、ファネル325から反応室内へGaCl3が入るためのスリット状ポート329を形成する。ファネルの両側に、2つのIRスポットランプ601およびその反射光学部品が配置される。SiCビーズを約800℃に維持するスポットランプ電力の閉ループ制御を可能にするため、熱電対605を含む石英シース(sheath)603が、石英管323の下部から、SiCビーズの真中のファネルの高さのほぼ中央まで挿入される。ポート329を通してGaCl3が導入され、ポート315を通してNH3が導入されることが好ましい。あるいは、ポート315を通してGaCl3を導入し、ポート329を通してNH3を導入することもできる。あるいは、イオンまたはラジカルの生成によってNH3を活性化させることができるように、当技術分野で知られているように管323の下部にRF場を発生させてもよい。あるいは、NH3の一部または全部をN2に置き換え、それを同様にRF場によって活性化することもできる。スリットポート329とサセプタの縁の間にSiC延長プレート335が配置されている。スリット状ポート329とサセプタの間の気相中で二量体が再形成されないことを保証するため、このSiC延長プレートは主加熱ランプによって加熱される。SiC延長プレートの温度は700℃超でなければならず、800℃超であることが好ましい。
【0106】
図4は、反応室アセンブリ403に対合されたウェハ移送室401アセンブリを含む好ましい特定の反応室/移送室アセンブリの斜切断図を示す。図2および3において以前に識別された構造はこの図でも同じ参照符号で識別される。例示的な移送室401は、システム外から反応室内へ、および反応室から再びシステム外へ基板を移送するためのロボットアーム、ベルヌーイワンドおよび他の手段(図示せず)を収容する。本発明では他の設計の移送室を使用することができる。
【0107】
反応室アセンブリは、シュラウド405内に取り付けられた反応室301を含む。この図には、シュラウドの下壁407および向こう側の壁205の部分が示されている。シュラウドは、制御された壁温を維持するために反応室に沿って冷却空気を導く役目を果たす。下壁305、側壁307、出口マニホルド側フランジ309、シェルフ317、サセプタ215、ならびにサセプタ支持体および任意選択のパージガス流のための円筒管321を含むいくつかの反応室構造はすでに説明した。サセプタは、サセプタに横方向の安定性を提供する丸みを帯びたプレート409の円形の開口319の中で回転し、シェルフ317、SiC延長プレート335およびスリット状ポート329と共面をなす。これらの構成要素が平坦であることは、ガス入口からサセプタへのなめらかなガスの流れを保証する。出口マニホルド構造は、指示された方向に反応室から排気管路419内へ排出ガスを導くプレナム(plenum)407を含む。出口マニホルドと反応室のフランジ309は、例えば耐熱性および塩素抵抗性の材料でできたガスケットまたはOリング(図示せず)によって互いに密封される。
【0108】
入口マニホルド構造(本明細書ではこの用語が使用される)は破線の枠411の中に示されている。後述するプレナム211は、耐熱性および塩素抵抗性の材料でできたガスケットまたはOリング(図示せず)などによって、反応室の前フランジに対して密封される。移送室と反応室の間の仕切弁413が時計回りに(下方へ)回転して、2つの室間の通路を開き、反時計回りに(上方へ)に回転して、2つの室間の通路を閉じ、密封する。仕切弁は、例えばガスケットまたはOリングによってフェースプレート(face plate)415に対して密封することができる。Oリングの好ましい材料は、他のOリングに関して上で述べた材料と同じ材料である。仕切弁はさらに、後述するガス入室用のポートを提供することが好ましい。下ガス入口の構造は、以前に説明したとおり、連通石英管323、平たいファネル325およびスリット状ポート329を含む。
【0109】
図5は、好ましい特定の入口マニホルド構造および反応室アセンブリ内におけるそれらの配置の詳細を示す。図2および3において以前に識別された構造はこの図でも同じ参照符号で識別される。最初に、周囲の反応室アセンブリを考えると、シュラウド405と反応室301とを含む反応室アセンブリ403が左側にあり、移送室構造401が右側にある。反応室の内側には、サセプタ215およびサセプタ安定化プレート409がある。反応室の石英フランジ313は、シュラウド405の延長部分501によって、プレナム構造211に対して押し付けられる。反応室フランジとプレナム構造はOリングガスケット503によって密封され、断面図では、Oリングガスケット503がポート315の両側に見えている。
【0110】
次に、GaCl3(であることが好ましいが、任意選択で、その代わりにNH3)のスリット状ポート329を通って延びる入口構造を考える。この入口構造は、石英管323と、反応室の下壁のかなりの部分にわたって開くように縦につぶされ横に拡がったファネル325とからなる。IR吸収性多孔質材料の小さなビーズまたは小さな管、あるいは任意の形態のIR吸収性多孔質材料がファネル325を埋めている。ファネルの上部開口にインサート327がぴったりとはまり、インサート327は、サセプタの方に傾斜したスリット状ポート329を含み、サセプタとスリット状ポートの間の空間を延長プレート335が覆う。動作時、GaCl3(および任意選択のキャリヤガス)は供給管内を上方へ移動し、ファネルの中で横方向に広がり、スリットによって反応室内へ、次いでサセプタに向かって導かれる。これにより、GaCl3は、反応室の全幅にわたって実質的に均一な層流として、ポート329からサセプタ215に向かって移動する。
【0111】
次に、ポート315を通って延びる入口構造を考えると、この入口構造は、プレナム構造211、フェースプレート415および仕切弁413を含む。NH3(であることが好ましいが、任意選択で、その代わりにGaCl3)蒸気が、供給管路517を通してプレナム構造に導入され、いくつかの垂直管519を通って反応室に向かって下降する。NH3蒸気は次いで垂直管を出、または任意選択で、それぞれの垂直管が一群の分散ポートに配管された分散ポートを通り、プレナムのリップ(lip)511を迂回して進む。これにより、NH3蒸気は、反応室の全幅にわたって実質的に均一な層流として、サセプタに向かって移動する。垂直管の中を流れる流れはそれぞれ、別個の弁機構509によって制御され、弁機構509はすべてが外部から調整可能である213。プレナムはさらに、温度制御流体、例えばGALDEN(商標)流体を導くための管を含み、この温度制御流体は、NH3が通るプレナム構造が前述の温度範囲内に維持され、Oリング503に隣接したプレナム構造が、Oリングに使用されたシール材料の機能範囲内に維持されるように制御された温度を有する。前にも述べたとおり、Oリングの好ましい材料は、他のOリングに関して上で述べた材料と同じ材料である。Oリング503に隣接して温度制御管505が見えている(ポート315の下側の対応する管も見えている)。一般的な動作では、この管が、Oリングがその機能範囲内に留まるようにOリングを冷却する役目を果たす。
【0112】
有利には、仕切弁413が、反応室と移送室とを分離する役目を果たす他に、いくつかのガス入口ポート515を含む。仕切弁413は、移送室と反応室の間でポート315を通してウェハおよび基板への制御されたアクセスを提供するように開閉される。図示の仕切弁413は、Oリング507によって仕切弁413がフェースプレート415に対して密封された閉位置にある。好ましい実施形態では、ガス入口ポート515が、パージガス、例えばN2を噴射するために使用される。ガス入口ポート515の間隔は、この図では、仕切弁(および反応室)の縁部分の近くでより密、仕切弁(および反応室)の中心部分でより粗であるが、ガス入口ポート515のサイズおよび間隔は、プロセスガスがサセプタを越えて流れるときのプロセスガスの組成および速度の均一性を向上させるように、また、GaCl3ガスがサセプタの下に流れることを防いで、その位置でのGaNの望ましくない堆積を防ぐために、室の側壁に沿ってパージガスのカーテンを構築するように設計される。
【0113】
一般に、高品質エピタキシャル層を堆積させるため、入口マニホルド構造とポート構造は協力して、実質的に層流(したがって非乱流)であり、速度および組成が実質的に均一なプロセスガスの流れを提供する。この実質的に層状で均一な流れは、サセプタまで、さらにサセプタを越えて縦方向に、かつ反応室を横切って(または少なくともサセプタの表面を横切って)横断方向に広がらなければならない。好ましくは、反応室内のプロセスガス流の速度および組成が室を横切って、少なくとも5%まで、より好ましくは2%または1%まで均一である。組成が均一であるとは、III/V比(すなわちGaCl3/NH3比)が均一であることを意味する。これは、最初に、反応室を流れるプロセスガスの流れがすでにほぼ均一であるようにプロセスガス入口ポートを設計し、次に、このほぼ均一な流れがますます均一になるようにキャリヤガスの選択噴射を設計することによって達成される。サセプタから下流の流れの制御はあまり重要ではない。
【0114】
この好ましい特定の実施形態のガス流動力学の数値モデル化によって、実質的に均一な流れが生成される好ましい1つのプロセスガス入口ポート構成を決定した。意図された持続的高スループット動作に必要な選択されたGaN堆積条件および速度に従って、総プロセスガス流量の指針が確立される。次に、これらの全体的な流れ指針の範囲内で、反応室内へのモデル化されたGaCl3流が反応室全体にわたって実質的に均一になるように、インサート327およびスリット329を設計した。さらに、意図されたGaCl3流のモデル化は、NH3蒸気がリップ511を迂回して反応室内に出現した後、この流れはさらに反応室を横切って実質的に均一になることを指示した。さらに、動作中に生じる可能性がある不均一性を改善するように、弁509を制御することができる。
【0115】
さらに、数値モデル化の誘導により、1次プロセスガス流の均一性を増大させるために、2次キャリヤガス入口が追加された。例えば、この好ましい特定の実施形態では、仕切弁413を通してパージガスを供給すると、仕切弁413の面とリップ511の間(すなわちフェースプレート415によって囲まれた領域)に高濃度のGaCl3蒸気が集積することを防ぐことにより、改良が得られることが分かった。さらに、反応室の縁により大きなキャリヤガス流が流れ、中心により小さいパージガス流が流れるように入口を配置すると、サセプタ位置における流れの組成および速度の均一性が向上し、サセプタの表面の上方に反応性ガスがより良好に維持されることが分かった。
【0116】
(実施例)
次に、本発明に基づくIII−V族材料のHVMを実行したときに得られる利点および意外な利益を示すため、本発明を、標準または従来のHVPEシステムと比較する。この比較を記載する前に、導入として、従来のHVPEシステムの関連部分を簡単に説明する。
【0117】
従来のHVPEシステムは、通常は石英から製造されるホットウォール管状炉からなる。III族前駆体は、液体状態のIII族金属を保持したボートの上にHClを流すことによって、リアクタ内においてin situで形成される。V族前駆体は、外部貯蔵容器、例えば高圧ボンベから供給される。従来のHVPEは、ヒ化物、リン化物および窒化物半導体を成長させるために使用されている。GaNの成長に関しては、III族供給源が一般に、石英ボート内の溶融したGa(HClがこれと反応してGaClを形成する)であり、V族供給源は通常、アンモニアガスである。
【0118】
より詳細には、この石英管を垂直または水平方向に向けることができる。周囲の炉は通常、抵抗型であり、少なくとも2つの温度ゾーン、すなわちIII族金属をその融点よりも高い温度に維持するためのゾーンと、基板/ウェハを、エピタキシャル成長のために十分に高い温度に維持するためのゾーンとを有する。液体III族金属を入れるボート、基板/ウェハホルダおよびガス入口を含むIII族金属供給源装置が石英管状炉の一端に配置され、他端は、反応副生物を排出する役目を果たす。この装置は全体(または少なくとも管状炉に入る部分)が石英から製造されなければならず、ステンレス鋼を使用することはできない。大部分のリアクタは大気圧で一度にウェハを1枚だけ処理する。均一な堆積を達成するために、複数のウェハは、すべてのウェハの表面がガス流と一直線に並ぶようにリアクタ内に配置されなければならない。
【0119】
ウェハは、最初にウェハを基板支持体上に置き、次いでこの基板支持体を石英管状炉内の高温ゾーンに配置することによりロードされる。ウェハは、炉から支持体を取り出し、次いで支持体からウェハを取り上げることによりアンロードされる。基板支持体を配置する機構、例えばプッシュ/プルロッドも石英から製造されなければならない。それらも完全な成長温度にさらされるからである。ウェハおよび/または基板支持体の熱損傷、例えば亀裂を防ぐため、支持されたウェハ、基板支持体および配置機構は、通常高温のリアクタ管内に慎重に配置されなければならない。さらに、ウェハのロードおよびアンロード中にリアクタ管自体が空気にさらされる可能性もある。
【0120】
このような従来のHVPEリアクタは、いくつかの理由から、本発明のHVM法およびシステムでは可能な持続的な大量製造の能力を持たない。1つの理由は、本発明のリアクタはかなり低いサーマルマスを有することができるため、本発明のリアクタが、従来のHVPEリアクタが必要とするよりも短い非生産的な加熱および冷却時間を必要とすることである。本発明のリアクタでは、サセプタ(基板/ウェハ支持体)だけを加熱すればよく、サセプタは、急速に機能するIRランプによって加熱される。したがって加熱および冷却を迅速におこなうことができる。しかしながら、従来のHVPEリアクタでは、抵抗炉が、数時間から数十時間の長時間の加熱時間および(特に)冷却時間を必要とすることがある。このような長い加熱および冷却時間の間、このシステムはアイドル状態にあり、ウェハ生産、リアクタ洗浄、システム保守などは遅延されなければならない。さらに、熱損傷の危険があるにもかかわらず、ウェハは通常、さらなる加熱および冷却の遅延を回避するために、リアクタの温度が動作温度に近いときにリアクタ内に置かれ、リアクタから取り出される。これらの理由から、本発明のシステムおよび方法は、従来のHVPEシステムが達成できるよりも高いスループットを達成することができる。
【0121】
従来のHVPEシステムのスループットを制限する他の理由は、このようなシステムが、本発明のリアクタが必要とするよりもかなり多くのリアクタ洗浄を必要とすることである。従来のHVPEリアクタのすべての内部構成要素は、外部抵抗炉によって加熱されるため、III−V族材料は、成長させたい基板の表面だけでなく、リアクタの内側の至る所で成長しうる。このような望ましくない堆積物はしばしば洗浄によってリアクタから除かなければならず、さもないと、堆積物が、ウェハを汚染するダストおよびフレークを形成することがある。洗浄にかかる時間の間、リアクタは生産をおこなわない。
【0122】
さらに、III族前駆体は非効率に使用され、その大部分はリアクタの内部に堆積し、堆積させたい基板ウェハ上にはわずかしか堆積せず、再使用のためにIII族前駆体をリサイクルすることができるリアクタ排気中にはほとんどまたはまったく現れない。V族前駆体も非効率に使用され、余剰分は使用されなかったHClと反応して、塩化物(例えばNH4Cl)を形成することがあり、形成された塩化物は反応ゾーンの下流の低温エリアに堆積することがある。このような塩化物の堆積物もリアクタから洗浄によって除去しなければならない。
【0123】
対照的に、本発明のリアクタは、温度制御された壁を有し、その結果、III−V族材料の望ましくない成長はほとんどまたはまったく起こらない。本発明のリアクタは、非生産的な洗浄および保守をより短時間にすることができ、またはそれらをそれほど頻繁に実施する必要がなく、またはその両方であるため、より生産的であることができる。これらの理由からも、本発明のシステムおよび方法は、従来のHVPEシステムが達成できるよりも高いスループットを達成することができる。
【0124】
従来のHVPEシステムのスループットを制限する他の理由は、従来のHVPEシステムの従来の内部Ga供給源では、(Ga前駆体GaCl3が再充填される)本発明の外部Ga供給源よりもかなり頻繁に、(液体Gaまたは他のIII族金属の)再充填を実施する必要があることである。本発明の外部供給源は、流量と組成の両方を制御することができるGa前駆体流を、最大約200g/時以上の最大流量で持続的に送達する。外部供給源の容量はリアクタの形状によって制限されないため、外部供給源の容量を、数日または数週間にも及ぶ持続的生産に対しても十分なものにすることができる。例えば、外部供給源は、数十キログラム、例えば約60kgものGaを収容することができ、本質的に無制限の持続的生産のため、複数の供給源を順次動作させることができる。
【0125】
従来のHVPEシステムでは、Ga供給源が厳密に制限された容量を有する。供給源はリアクタ内に収まらなければならず、リアクタよりも大きくすることはできないため、従来の供給源の上限はGaで5kg未満であると考えられる。例えば、Gaを3kg収容するためには、約7×7×20cmのボートに深さ4cmまで液体Gaを満たす必要がある。これまでのところ、このような大きなGaボートの開示は従来技術には見当たらない。また、リアクタ内のGa供給源ボートの中の液体Gaの上にHClを流すことによってGa前駆体(GaCl)がin situで形成されるため、供給源の流量および組成をうまく制御することができない。この反応の効率は、リアクタの形状および正確なプロセス条件、例えば供給源ゾーンの温度に依存し、60%から90%超までの様々な効率値が報告されている。さらに、Gaのレベルが低下するにつれ、またGa供給源が古くなるにつれ、一定のプロセス条件であっても、堆積ゾーンへのGaCl流束は変化しうる。これらの理由からも、本発明のシステムおよび方法は、従来のHVPEシステムが達成できるよりも高いスループットを達成することができる。
【0126】
従来のHVPEシステムのスループットを制限する他の理由は、これまでのところ、従来のHVPEシステムの構造は標準化されておらず、実際、このようなシステムがしばしば特定のユーザのために個々に設計され、製造されることである。標準化されていないことは例えば、長時間の複雑な保守につながる。従来のHVPEシステムはしばしば、扱いが難しい複雑でもろい石英構成要素を含むため、そのようなリアクタは、分解および再組立てに時間がかかる。特にIII族供給源ゾーンは、HClのための別個の石英入口と、このHCl入口に隣接して配置された石英ボートと、V族前駆体のための別個の石英入口(これはIII族前駆体から分離して保持されなければならない)と、キャリヤガスのための可能な追加の石英入口とを含むため複雑である。対照的に、本発明のシステムおよび方法は、効率的な動作および保守のために最適化され、市販の構成要素を含むSi処理用の、試験され、標準化された知られている設計を広範囲に適合させたものである。例えば、この好ましい特定の実施形態は、仕切弁と、部分的に金属製のIII族前駆体プレナムおよび入口ポートとを有するIII族供給源ゾーンを含む。仕切弁は開閉に短い時間しかかからず、III族前駆体プレナムおよび入口ポートはかなり頑丈である。これらの理由からも、本発明のシステムおよび方法は、従来のHVPEシステムが達成できるよりも高いスループットを達成することができる。
【0127】
従来のHVPEシステムから本発明のシステムを区別するこれらの定性的設計選択は、エピタキシャル成長効率、リアクタ利用率およびウェハ生産速度、ならびに前駆体利用効率の驚くべき定量的利益につながる。以下、これらの驚くべき定量的利益を表1、2および3のデータを使用して概説する。これらの表は、直径100mmの1枚の基板を取り扱うように設計され、直径約20cm、長さ約200cmのリアクタ管を含む従来のHVPEシステムを、本発明の対応するシステムと比較したものである。
【0128】
最初に、達成可能なエピタキシャル成長効率を考えると、表1のデータは、本発明のHVMシステムが従来のHVPEシステムよりもかなり効率的でありえることを実証する。
【0129】
【表1】
【0130】
エピタキシャル成長効率は、実際のエピタキシャル成長時間と、実際のエピタキシャル成長時間にリアクタロード/アンロード時間を加えた時間との比によって表すことができる。本発明のHVMシステムおよび方法は、従来のHVPEシステムよりもかなり速くロード/アンロードすることができ、したがってより高いエピタキシャル成長効率を達成することができることが分かる。実際の動作では、本発明の外部Ga供給源が、従来システムで可能であるよりもかなり長い持続的動作を可能にすることも予想される。
【0131】
従来のHVPEシステムでは、ランとランの間、リアクタが堆積温度に近い温度に維持されるため、基板を、熱損傷を防ぐ十分に遅い速度でリアクタからプルし、またはリアクタにプッシュしなければならない。リアクタ入口から基板ホルダまでの距離が約80cmであり、熱損傷を防ぐためプル速度が2cm/分以下であると仮定すると、リアクタから基板をプルするのにも、基板をリアクタにプッシュするのにも約40分かかる。さらに、基板およびウェハがリアクタ内に配置された後、熱安定化、リアクタのパージおよびプロセスガスのセットアップのために最大10分が必要となることがある。(ロードロックを使用した場合には、パージとガスセットアップにそれぞれ5分かかり、ロードロックを使用しない場合には、セットアップはずっと長くなるであろう。)したがって、総ロード/アンロード時間は約90分、連続生産では52分である(この場合、連続する2つのラン間である時間が等しく共有されることになる)。
【0132】
対照的に、本発明のHVMシステムでは、ウェハを、より低温で、熱損傷の危険なしに、迅速にロード/アンロードすることができ、したがって長いウェハ配置時間が排除される。その低いサーマルマスおよびIRランプ加熱により、本発明のHVMシステムおよび方法において使用されるリアクタ(特にこのようなリアクタ内のサセプタおよびウェハ)を、より高い堆積温度とより低いロード/アンロード温度の間で迅速に循環させることができる。したがって、本発明のHVMシステムおよび方法は、従来のHVPEリアクタで可能なロード/アンロード時間よりもかなり短いロード/アンロード時間を達成する。
【0133】
ロードされた後、従来のHVPEシステムで使用されるGa前駆体供給源が、前駆体の十分な質量流量を維持することができると仮定すると、従来システムの実際のエピタキシャル成長時間と本発明のシステムの実際のエピタキシャル成長時間とはほぼ同じ大きさである。しかしながら、本発明のHVMシステムおよび方法で使用されるGa前駆体供給源は、従来のHVPEシステムで使用されるGa前駆体供給源に優るかなりの利点を有し、その結果、実際の動作では、本発明のシステムおよび方法が、表1に示された効率よりもはるかに大きな相対的エピタキシャル成長効率を達成すると予想される。
【0134】
例えば、たとえ最初のうちは十分な質量流量を達成できるとしても、従来のGa供給源が十分な質量流量を長期間持続することができるとは思えない。従来のHVPEシステムは、液体状態の金属ガリウムの上にHClガスを流すことによって、Ga前駆体をin situで生成し、リアクタに供給する。このプロセスの効率は、リアクタの形状およびプロセス条件に強く依存する(例えばGa温度により約60%から約90%超)ため、Ga前駆体(GaCl)の実際の質量流量も変化する。さらに、Gaのレベルが低下し、Ga供給源が古くなるにつれ、一定のプロセス条件(例えば一定の温度および投入HCl流束)であっても、Ga前駆体の流束は変化しうる。さらに、従来のGa供給源(具体的には液体Gaボート)はリアクタ内になければならず、したがってGa供給源の容量はリアクタの形状によって制限される。従来のHVPEシステムにおいて合理的に可能であると考えられる(さらに従来技術において開示されていないと考えられる)最も大きなボートは約3から5kgしか保持することができず、サイズは約7×7×20cmであり、液体Gaが深さ4cmまで満たされるであろう。
【0135】
対照的に、本発明のHVMシステムおよび方法は、長時間持続しうる(300μm/時間を超える成長速度を維持するのに十分な)最高200gGa/時以上の一定で変化しないGa前駆体流を供給することができる外部Ga供給源を使用する。第1に、この供給源は、エピタキシャル成長中であってもGaの質量流束を測定、制御することができるような方式で、GaCl3蒸気を供給することができる。第2に、前駆体を数十キログラム保持するリザーバからGa前駆体が給されるため、この外部Ga供給源は、中断なく持続的に動作する能力を有する。さらに、事実上無制限の動作のため、複数のリザーバを順次動作させることができる。
【0136】
まとめると、相対的なエピタキシャル成長効率は、ウェハがリアクタ内にある時間のうち成長が実際に起こっている時間の割合によって定義されるリアクタ利用率(R.U.:reactor utilization)によって概観することができる。本発明のHVMシステムおよび方法は約95%以上のR.U.を達成し、従来のHVPEシステムは約65%のR.U.しか達成することができないことが分かる。また、実際の動作では、本発明のHVMシステムおよび方法が、よりいっそう大きな相対的エピタキシャル成長効率を達成すると予想される。
【0137】
次に、達成可能なリアクタ利用率およびウェハ生産速度を考えると、表2のデータは、本発明のHVMシステムが従来のHVPEシステムよりも効率的でありえることを実証する。
【0138】
【表2】
【0139】
洗浄および予防保守のためにリアクタは定期的に生産から外されなければならない。本発明のHVMシステムおよび方法は、迅速に洗浄し保守することができるため、本発明のHVMシステムおよび方法は、従来のHVPEシステムが達成することができるよりも高いリアクタ利用率およびウェハ生産速度を達成することができる。
【0140】
動作中に、リアクタ内の望んでいない位置、例えばリアクタ壁および他のリアクタ内部構成要素の表面で材料が成長し、これらの材料の過度の成長が問題、例えばウェハの汚染を引き起こすことがある。これらの望んでいない材料を除去するために洗浄が必要であり、洗浄は、リアクタを分解することなくin situで、またはリアクタを分解した後にex situで実行することができる。in situ洗浄はしばしば、望んでいない堆積物をHClでエッチングすることによって実行される。何回かのin situエッチングまたは洗浄の後には、より徹底的なex situ洗浄が有利である。
【0141】
本発明のHVMシステムは、従来のHVPEシステムよりもかなり短いin situ洗浄時間を必要とする。本発明のリアクタは、制御されたより低い温度の壁を有し、その結果、ウェハ生産中に壁の表面には材料がほとんど堆積しない。対照的に、従来のHVPEリアクタはより高い堆積温度で動作し、その結果、リアクタ壁およびリアクタの内部部品の表面に、ウェハおよび基板の表面に成長するのと同じ量の材料が成長する。表2は、リアクタ壁およびリアクタ内部部品の表面に不必要な1.5mm以下のGaNが堆積することが許容されると仮定したシナリオを示す。
【0142】
従来のHVPEシステムでは、5回のランごとにin situ洗浄が必要であり、その5回のランの間に、リアクタ内部に不必要な1.5 mmのGaNが成長した(ラン当たり300um)。対照的に、本発明のリアクタのin situ洗浄がやはり5回のランごとに実行される場合には、公称量のGaN(例えば、従来のHVPEシステムで成長した量の20%以下)しかリアクタ内部に成長しない。(実際、本発明のHVMシステムのin situ洗浄は15ランごとに1回まで合理的に遅らせることができる。)したがって、従来のHVPEリアクタのin situ洗浄時間は、本発明のHVMリアクタのin situ洗浄時間よりも少なくとも5倍(最大15倍)長い。
【0143】
さらに、本発明のHVMシステムは、従来のHVPEシステムよりもかなり短いex situ洗浄時間を必要とする。第1に、これらのHVMシステムは、それぞれex situ洗浄の前および後に置かれなければならないかなり短い冷却/加熱時間を有する。さらに、本発明のHVMシステムおよび方法は、Si処理に関してすでに知られている市販の設計および構成要素を含むため、HVMシステムの分解/洗浄/再組立て時間は、Si処理システムに関して知られている短い時間と同様である。Si処理システムから組み込まれる設計および構成要素には、迅速に動作するリアクタ仕切弁、カセットツーカセットローディングによる完全に自動化されたウェハハンドリング、ホットロード/アンロードを実行する能力、別個の冷却段、in situ成長速度監視、および環境空気へのリアクタの曝露を防ぐロードロックが含まれる。
【0144】
すでに論じたとおり、従来のHVPEシステムで使用されるGa前駆体供給源、すなわちGaボートは、その限られた容量のため、一定の前駆体流を維持するために、定期的に再充填されなければならない。洗浄中に実行することができるこの前駆体再充填は、これらの従来のシステムの洗浄時間をさらに長くする。対照的に、本発明のHVMシステムおよび方法の外部Ga供給源は、長期間の中断をほとんどまたはまったく生じることなく動作することができる。
【0145】
まとめると、リアクタ保守時間は、別のR.U.およびウェハ生産速度によって概観することができる。この第2のR.U.は、ウェハがリアクタ内にある時間と、ウェハがリアクタ内にある時間に洗浄/保守時間を加えた時間との比を表す。本発明のHVMシステムおよび方法は約75%以上のR.U.を達成し、従来のHVPEシステムは約60%以下のR.U.しか達成することができないことが分かる。
【0146】
相対的なシステム効率はウェハ生産速度によって表すことができ、ウェハ生産速度は、生産されたウェハの数をこれらのウェハを生産するのにかかった総時間で割ることによって得ることができる。ウェハ生産ラン、in situ洗浄およびex situ洗浄、速度からなる1回の完全サイクルは、(表1および2の仮定によれば)15回のランを含むため、ウェハ生産速度は、15枚のウェハを生産するのにかかった総時間(ロード/アンロード時間、in situ洗浄時間、ex situ洗浄時間、保守時間および供給源再充填時間を含む)で15を割ることによって決定される。15枚のウェハ(ラン)を生産するのに本発明のHVMシステムおよび方法が必要とする総時間は、従来のHVPEシステムが必要とする総時間よりもかなり短いことが分かる。したがって、本発明のシステムおよび方法は、従来技術に比べて約2倍のスループット改良を達成する。上で論じたとおり、実際の動作中にはより大きなスループットの向上が予想される。
【0147】
最後に、相対的な前駆体効率を考えると、本発明のHVMシステムおよび方法は、前駆体、特にGa前駆体を、従来のHVPEシステムよりも効率的に利用する。これは表3のデータによって例示される。
【0148】
【表3】
【0149】
Gaの利用率は、表3において、最初に15cmウェハに適した従来のHVPEシステムが、アンモニアを約14slpm(standard liters per minute)を使用すると予想することができると考えることにより決定される。V/III比を30、Ga前駆体のGaNへの変換を95%と仮定すると、従来のシステムは、Gaを約1.8g/分使用すると予想することができる。GaNを200um/時で300um成長させるのに十分な90分のランはしたがって、Gaを約151g必要とする。15cmウェハ上の300um層にはGaが約31gあるため、従来のHVPEリアクタのGa効率は約21%(=31/151)である。残りの120g(=151−31)の大部分はリアクタの内側に堆積するため、リサイクルおよび再使用にはほとんど使用できない。リアクタから排出されたGaをリサイクルおよび再使用しても、従来のHVPEリアクタのGa効率は約25%でしかないと予想される。
【0150】
対照的に、HVMシステムおよび方法は、より低いアンモニア流(例えば10slpm)を使用し、したがって、15cmウェハに対してより低いGa流およびより低い総Ga(例えば114g)が必要であると予想することができる。したがって、本発明のHVMシステムおよび方法は、リサイクルおよび再使用なしで27%(=31/114)のGa効率を達成することができ、リアクタから排出されたGaをリサイクル、再使用すると、Ga効率はおそらく最大80%以上に達する。さらに、残りの83g(=114−31)はリアクタの内側にほとんど堆積しないため、この未使用のGaの大部分はリアクタ排気中に現れ、リサイクルおよび再使用することができる。排出されたGaのリサイクルおよび再使用によって、本発明のHVMシステムおよび方法のGa効率は80%以上に達することができると予想される。
【0151】
以上に説明した本発明の好ましい実施形態は、本発明の好ましいいくつかの態様を例示したものであるため、本発明の範囲を限定しない。等価の実施形態はすべて、本発明の範囲に含まれることが意図される。実際に本明細書に示され記載された変更だけでなく、記載された要素の有用な代替組合せなど、本発明の様々な変更が、上述の説明から当業者には明白である。このような変更も、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。上述の説明では、単に分かりやすさと便宜を考えて、見出しおよびキャプション(legend)が使用されている。
【0152】
本明細書に引用されたいくつかの参照文献は、その開示の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。また、引用した文献はいずれも、上でどのように評価されているかにかかわらず、本明細書で請求された内容の発明の先行技術とは認められない。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6