特許第5656208号(P5656208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656208
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】媒体及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/15 20060101AFI20141225BHJP
【FI】
   G02F1/15
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2007-255454(P2007-255454)
(22)【出願日】2007年9月28日
(65)【公開番号】特開2009-86259(P2009-86259A)
(43)【公開日】2009年4月23日
【審査請求日】2010年8月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 2007年9月19日 社団法人電気化学会発行の「2007年 電気化学秋季大会講演要旨集」の第189ページに発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 2007年3月29日 社団法人電気化学会発行の「電気化学会第74回大会講演要旨集」の第107ページに発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 2007年6月6日 日本画像学会発行の「“Imaging Conference JAPAN 2007”論文集」の第47ページから第50ページに発表
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】星野 勝義
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】武井 大希
(72)【発明者】
【氏名】唐戸 敏彦
【審査官】 山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−058228(JP,A)
【文献】 特開2006−145669(JP,A)
【文献】 特表2007−519776(JP,A)
【文献】 特開平03−036528(JP,A)
【文献】 特開2002−311459(JP,A)
【文献】 特開2007−148230(JP,A)
【文献】 特開昭59−024879(JP,A)
【文献】 特開昭61−107323(JP,A)
【文献】 特開2003−315843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含む溶媒、ビオロゲン誘導体及び支持電解質を含み、更に、下記式で表わされる界面活性基を有するフェロセン誘導体を含むエレクトロクロミック表示用媒体。
【化1】
(上記式中、X、Yは、アルキル部位、アリール部位、ハロゲン部位、エーテル部位、カルボキシル部位、シアノ部位、アミノ部位及びアンモニウム部位のいずれかを含む官能基であり、XとYは同じであっても、異なっていても良い。)
【請求項2】
下記式で表わされる前記ビオロゲン誘導体を含む、請求項1記載のエレクトロクロミック表示用媒体。
【化2】
(上記式中、R、Rは、アルキル部位、アリール部位、ハロゲン部位、エーテル部位、カルボキシル部位、シアノ部位、アミノ部位及びアンモニウム部位のいずれかを含む官能基であり、RとRは同じであっても、異なっていても良い。)
【請求項3】
水を含む溶媒、ビオロゲン誘導体及び支持電解質を含み、更に、界面活性基を有するフェロセン誘導体を含むエレクトロクロミック表示用媒体であって
前記溶媒、ビオロゲン誘導体及び支持電解質の合計を100重量部とした場合、これに対し前記フェロセン誘導体を0.001重量部以上20重量部以下含む、エレクトロクロミック表示用媒体。
【請求項4】
一対の基板と、
前記一対の基板の対向する面のそれぞれに形成される画素電極と、
前記一対の基板の間に挟持されるエレクトロクロミック表示用媒体層と、を有する表示装置であって、
前記エレクトロクロミック表示用媒体層は、水を含む溶媒、ビオロゲン誘導体及び支持電解質を含み、更に、界面活性基を有する下記式で表わされるフェロセン誘導体を含む、表示装置。
【化3】
(上記式中、X、Yは、アルキル部位、アリール部位、ハロゲン部位、エーテル部位、カルボキシル部位、シアノ部位、アミノ部位及びアンモニウム部位のいずれかを含む官能基であり、XとYは同じであっても、異なっていても良い。)
【請求項5】
前記エレクトロクロミック表示用媒体層において下記式で表わされる前記ビオロゲン誘導体を含む、請求項記載の表示装置。
【化4】
(上記式中、R、Rは、アルキル部位、アリール部位、ハロゲン部位、エーテル部位、カルボキシル部位、シアノ部位、アミノ部位及びアンモニウム部位のいずれかを含む官能基であり、RとRは同じであっても、異なっていても良い。)
【請求項6】
一対の基板と、
前記一対の基板の対向する面のそれぞれに形成される画素電極と、
前記一対の基板の間に挟持されるエレクトロクロミック表示用媒体層と、を有する表示
装置であって、
前記エレクトロクロミック表示用媒体層は、水を含む溶媒、ビオロゲン誘導体及び支持電解質を含み、更に、界面活性基を有するフェロセン誘導体を含み、前記溶媒、ビオロゲン誘導体及び支持電解質の合計を100重量部とした場合、これに対し前記フェロセン誘導体を0.001重量部以上20重量部以下含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は媒体及び表示装置に関し、特にエレクトロクロミック特性を利用した表示装置及びそれに用いられる媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等情報処理装置の普及に伴い、情報処理装置による処理結果を表示するための装置として、液晶表示装置をはじめとする表示装置が非常に重要な装置となってきている。
【0003】
現在、新たな表示装置として、いわゆるエレクトロクロミック特性を利用した表示装置が提案されている。エレクトロクロミック特性とは、電圧の印加により電気化学的酸化還元反応が起こり、物質の色が可逆的に変化する特性をいう。この特性を利用したディスプレイは、(1)視野性に優れる、(2)大型化が可能である、(3)視野角依存性が少ない、(4)鮮明な表示が可能である、といった利点があり、特に、いわゆる電子ペーパーといった極薄型のディスプレイへの応用が期待されている。
【0004】
ところで上記エレクトロクロミック特性を利用した表示装置に用いられる材料としてビオロゲンが知られている。一般にビオロゲンは発色の状態と消色の状態における色の変化が顕著であり、エレクトロクロミック特性を利用した表示装置の今後の発展において非常に重要な材料であると考えられている。
【0005】
ところが、確かに上記ビオロゲンは発色の状態と消色の状態における色の変化が顕著で有用なものであるが、電圧の印加を繰り返すと発色の状態から消色の状態に移る際に、消色過程で消えにくくなり、電極上に消え残りが生じてしまうといった課題がある。
【0006】
この課題を解決するための技術として、例えば下記非特許文献1乃至6がある。
【0007】
下記非特許文献1にはビオロゲン構造を工夫する技術が、下記非特許文献2及び3にはシクロデキストリンにビオロゲン分子を閉じ込め(包接し)、ビオロゲン同士の相互作用を防止することによって消え残りを防止する技術が、下記非特許文献4には支持電解質を工夫する技術が、下記非特許文献5及び6には酸化チタンナノ粒子の表面にビオロゲンを化学吸着させる技術がそれぞれ開示されている。
【非特許文献1】J.Bruinink,C.G.A.Kregting,J.J.Ponjee、Journal of Electrochemical Society、124巻、1854頁、1977年
【非特許文献2】A.Yasuda,H.Mori,J.Mizuguchi、Japanese Journal of Applied Physics、26巻、1352頁、1987年
【非特許文献3】A.Yasuda,J.Seto、Journal of Applied Electrochemistry、18巻、333頁、1988年
【非特許文献4】A.Yasuda,H.Mori,Y.Takehana,A.Ohkoshi,N.Kamiya、Journal of Applied Electrochemistry、14巻、323頁、1984年
【非特許文献5】D.Cummins,G.Boschloo,M.Ryan,D.Corr,S.Nagaraja,D.Fitzmaurice、Journal of Physical Chemistry B、104巻、11449頁、2000年
【非特許文献6】M.Gratzel、Nature、409巻、575頁、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載ではビオロゲン分子の設計指針が明確ではなく、しかも合成に多大の労力を有することとなる。また上記非特許文献2及び3に記載の技術では、特定のビオロゲン分子を包接するためには特定のサイズのシクロデキストリンを用いなければならず、この調整に多大な労力がかかるだけでなく一般的な解決策にはならない。また上記非特許文献4に記載の技術においても支持電解質を選定する明確な指針がなく、この選定作業が複雑になる。また上記非特許文献5及び6に記載の技術では、酸化チタンナノ粒子の表面にビオロゲンを化学吸着させるためにはそのための官能基をビオロゲン誘導体に設けなければならず、合成に多大の労力を要する。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、より簡便な手法で優れた発消色特性を有する表示装置及びそれに用いることができる媒体を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題について、発明者は鋭意検討を行っていたところ、ビオロゲン誘導体を含む表示装置に、フェロセン誘導体、ヒドロキノン誘導体、フェロシアンイオン塩、ナフトキノン誘導体、ナフトヒドロキノン誘導体の少なくともいずれかを添加することで、優れた発消色特性を維持しつつ、より色づきの少ない表示装置を提供することができることを発見し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の一手段に係る媒体は、溶媒、ビオロゲン誘導体及び支持電解質を有し、更に、フェロセン誘導体、ヒドロキノン誘導体、フェロシアンイオン塩、ナフトキノン誘導体、ナフトヒドロキノン誘導体の少なくともいずれかを含む。
【0012】
また、本発明の他の一手段に係る表示装置は、一対の基板と、一対の基板の対向する面のそれぞれに形成される画素電極と、一対の基板の間に挟持される媒体層と、を有し、かつ、この媒体層は、溶媒と、ビオロゲン誘導体及び支持電解質を含み、更に、ヒドロキノン誘導体、フェロシアンイオン塩、ナフトキノン誘導体及びフェロセン誘導体の少なくともいずれかを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上の構成により、より簡便な構成で優れた発消色特性を有する表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。また本明細書において、同様の機能を奏する構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る表示装置の一部断面の概略図である。図1に示すとおり、本実施形態に係る表示装置1は、一対の基板2a、2bと、一対の基板の対向する面のそれぞれに形成される画素電極3a、3bと、一対の基板の間に挟持される媒体層4と、を有し、かつ、この媒体層4は、溶媒、ビオロゲン誘導体、支持電解質、フェロセン誘導体と、を含むことを特徴の一つとする。
【0016】
本実施形態において、一対の基板2a、2bは、画素電極3a、3b及び液体層を保持する機能を有するものである。一対の基板2a、2bそれぞれの材質は同一であっても異なっていてもよいがビオロゲンによる発色及び消色が見えるように少なくとも一方が透明な部材で構成されていることが好ましい。基板2a、2bの材質としては、限定されるわけではないが、例えばガラス板、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックシート、ステンレスなどの金属板等を好適に用いることができ、フレキシブルな表示装置を目的とする場合は、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等の透明あるいは半透明プラスチックシートを用いることがより好ましい。なお一対の基板の間の距離としては、液体層に用いる材料、画素電極の厚さ、印加する電圧の範囲等に依存し適宜調整可能であるが、概ね10μm以上1cm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以上5mm以下である。
【0017】
本実施形態において画素電極3a、3bは、一対の基板2a、2bの対向する面にそれぞれ形成されるものであって、この間に所定の電圧を印加することでビオロゲンの発色及び消色を制御することができる。画素電極の占める領域が一画素領域となり、画素電極を複数設けることで、文字等の複雑な画像表示を実現することができる。画素領域の形状は予め表示したい形状となっているセグメントであっても良いし、マトリクス状に並べやすい多角形(例えば四角形)であってもよい。なお複数の画素領域をマトリクス状に配置し、画像表示をより細かく表示使用とする場合、一対の基板の対向する画素領域毎に独立した複数の画素電極を設けておくことが好ましいが、製造を容易にする等の観点から、一方の画素電極を全画素共通のいわゆる共通電極とすることは好ましい一形態である(本実施形態において共通電極は画素電極の一形態となる)。ここで図2に、独立した複数の画素電極が一対の基板の一方に配置されている場合の一例の概念図を示しておく。図2の例に示す基板2aには、複数の画素電極3aが配置されており、各画素電極3aは、略平行に配置される複数の走査電極31と、これら複数の走査電極31と交差して配置される複数の信号電極32とにより形成される空間に配置されており、各画素電極は例えば走査電極にゲート331が接続されたスイッチング素子33を介して信号電極と接続される。
【0018】
画素電極3a、3bの材質としては、導電性であり電圧を印加する際に溶解してしまわない限りにおいて限定されず、例えば金属又は導電性を有する金属酸化物であることは好ましい一態様である。金属の場合、白金、金及びステンレス並びにこれらの合金であり、導電性を有する金属酸化物としてはITO、IZO、FTOこれらいずれかの組み合わせを含む合金であってもよく、視認性の観点からは、半透明あるいは透明であることは好ましい一態様である。
【0019】
本実施形態において、媒体層4は、いわゆるエレクトロクロミック特性を示す層であり、少なくとも溶媒、ビオロゲン誘導体、支持電解質及びフェロセン誘導体を含む。
【0020】
本実施形態に係る溶媒は、ビオロゲン誘導体、支持電解質及びフェロセン誘導体を保持するために用いられるものであり、限定されるわけではないが、水又は有機溶媒(アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、無水酢酸、ジクロロメタン)及びその混合溶媒を用いることができるなお溶媒としては、限定されるわけではないが、無色透明であること及びビオロゲン誘導体を発色させた場合にビオロゲンの凝集状態を効率よく維持するためには水であることがより好ましい。
【0021】
本実施形態に係るビオロゲン誘導体は、ビオロゲンそのものも含み、電子の授受を行うことで発色又は消色するものであり、具体的には下記式に示す反応を行うことができるものである。なお、本実施形態において、ビオロゲン誘導体とは、電子の授受の状態において、下記式(1)で示される化合物をいう。下記一般式(1)で示されるビオロゲン誘導体は、電子を一つ放出して下記式(2)で示される化合物(有色)となり、またその後電子一つを受け取り下記式(1)に示す化合物(無色)に戻ることができる。
【化1】
【化2】
【0022】
また上記式(1)、(2)において、発色及び消色することができる限りにおいて限定されないが、R及びRの具体的な例としてはアルキル部位、アリール部位、アリールアルキル部位、シアノ部位のいずれかを含む官能基を挙げることができる。アルキル部位としては、C2n+1(n=1〜10)で示される鎖状及び分岐状の炭化水素を挙げることができる。アリール部位としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。また、アリールアルキル部位としては、ベンジル基等を挙げることができる。なおRとRとは同じであっても異なっていてもよい。
【0023】
媒体層4におけるビオロゲン誘導体の濃度としては、消着色が生じる限りにおいて限定されるわけではないが、例えば溶媒、ビオロゲン誘導体及び支持電解質の合計の重量を100重量部とした場合に、0.01重量部以上30重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1重量部以上5重量部以下である。0.01重量部以上とすることで優れた視認性が得られるといった効果を得ることができ、0.1重量部以上とするとこの効果がより顕著となる。また、30重量部以下とすることで、溶液粘度の増加を抑制し応答速度の低下を防ぐことができるといった効果があり、5重量部以下とすることでこの効果がより顕著となる。
【0024】
媒体層4における支持電解質は、電圧印加時に電気二重層を形成し、電気化学反応を生じさせるために用いられる層であり、この機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えばLiBr、LiCl、LiSO、LiClO、NaBr、NaCl、NaSO、NaClO、KBr、KCl、KSO、KClO、(CNClO、(CNBF、(CNPF、(CNClO、(CNBF、(CNPF、CHCOONa、HCl、HSO、及びCHCOOHの少なくともいずれかを用いることが好ましく、ビオロゲン誘導体の化学的安定性の観点からは上記電解質の内、中性塩であることがより好ましい。
【0025】
また支持電解質の濃度としては、限定されるわけではないが、溶媒、ビオロゲン誘導体及び支持電解質の合計の重量を100重量部とした場合に、0.01重量部以上50重量部以下であることが好ましく、0.5重量部以上10重量部以下であることがより好ましい。0.01重量部以上とすることで十分な電気化学反応の進行が可能となり0.5重量部以上とするとこの効果が顕著となる。また、50重量部以下とすることで溶液粘度の上昇を抑制し応答速度の低下を回避でき10重量部以下とするとこの効果がより顕著となる。
【0026】
媒体層におけるフェロセン誘導体とは、フェロセンそのものも含み、下記式(3)で示される化合物をいう。フェロセン誘導体は電子一つを放出し、下記式(4)で示される化合物となる。下記式(4)で示される化合物は電子一つを受け取り再び下記式(3)で示されるフェロセン誘導体となる。
【化3】
【0027】
なお上記式中、X、Yは、アルキル部位、アリール部位、アリールアルキル部位、ハロゲン部位、エーテル部位、カルボキシル部位、シアノ部位、アミノ部位及びアンモニウム部位のいずれかを含む官能基であり、XとYは同じであっても、異なっていても良い。アルキル部位としては、C2n+1(n=1〜10)で示される鎖状及び分岐状の炭化水素を挙げることができる。アリール部位としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。また、アリールアルキル部位としては、ベンジル基等を挙げることができる。
【化4】
【0028】
また、フェロセン誘導体の濃度としては、後述する効果を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば溶媒、ビオロゲン誘導体及び支持電解質の合計の重量を100重量部とした場合に、0.001重量部以上20重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.01重量部以上10重量部以下である。0.001重量部以上とすることでビオロゲンの消え残りを十分に解消でき0.01重量部以上とすることこの効果がより顕著となる。また、20重量部以下とすることで溶液粘度の上昇を抑制し応答速度の低下を回避することができ、10重量部以下とすることでこの効果がより顕著となる。
【0029】
また、本実施形態に係る表示装置は、上記構成のほか、例えば一対の基板の距離を一定に保つためのスペーサ5を設けることも好ましい態様である。スペーサ5としては、膜状の多孔質体であることが好ましいが、一対の基板の間に配置される柱状、球状のスペーサであることも可能である。スペーサの材質としてはセラミクス、ポリマー、セルロースを採用することができるがこれに限定はされない。
【0030】
さらに、本実施形態に係る表示装置は、画素電極の間に所望の電圧を印加するために、信号電極、走査電極(間接的に画素電極)と接続される外部電源6を有することも好ましい。このようにすることで、上記ビオロゲン誘導体及びフェロセン誘導体に電子の授受を可能とし、画像表示が可能となる。なお画像表示が可能となる限りにおいて限定されるわけではないが、一対の電極の間には、0.01V/cm以上10V/cm以下の電界が印加されるように電圧を印加することが好ましく、より好ましくは0.1V/cm以上5V/cm以下である。
【0031】
以上、本実施形態に係る表示装置によると、優れた発消色特性を有する表示装置を提供することができる。この効果については、推測の域を出ないが以下のように考えることができる。この概念図を図3に示す。図3は、ビオロゲン誘導体が一電子を受け取り(一電子還元を受け)、一方の電極に付着している状態(着色状態)から電子を放出し、当該電極から離脱する様子(消色過程)についての一連の概念図を表す。
【0032】
最初の段階において、ビオロゲン誘導体は一電子還元を受け電極に付着している(着色している)。一方、フェロセン誘導体はビオロゲン誘導体とともに電極に混合吸着する。そして、電極に正の電圧を印加すると、本来であれば、ビオロゲン誘導体の一電子還元体は、酸化され、元の状態に戻って電極から離脱するはずであるが、ビオロゲン誘導体は電極に付着している間に再結晶化を起こし、容易には酸化されない状態になっている。しかしながら、図に示すように、フェロセン誘導体が混入していると、ビオロゲン一電子還元体に代わってまずフェロセン誘導体が酸化される。(図3(a)、(b)参照)。
【0033】
次に、一電子引き抜かれた状態のフェロセン誘導体は、隣接するビオロゲン誘導体から一電子を引き抜く。この結果ビオロゲン誘導体は2価の陽イオンとなる(図3(b)、(c))。
【0034】
そして一電子放出し2価の陽イオンとなったビオロゲン誘導体は、支持電解質における陰イオンと結合し、電極から離脱し媒体層に溶解する(図3(c)、(d))。
【0035】
つまり、このようにフェロセン誘導体は、ビオロゲン誘導体の一電子還元体の間に入り込み、電極上での結晶化によって元に戻りにくくなった(電極酸化されにくくなった)ビオロゲン誘導体を化学的に酸化することができ、従って再結晶化によって生じる消え残りを防止することができるので、発消色に優れた表示装置を提供することができる。本実施形態に係る表示装置は、上記の通り、フェロセン誘導体を添加するだけで発消色に優れ、ビオロゲン誘導体や支持電解質等の材質に大きく依存することなく効果を発揮することができる。
【0036】
(実施形態2)
本実施形態に係る表示装置は、上記実施形態1のフェロセン誘導体がヒドロキノン誘導体となっている点が異なりそれ以外は実施形態1と同様である。以下異なる点について説明し、その他同様の点については省略する。
【0037】
液体層におけるヒドロキノン誘導体とは、下記式(5)で示される化合物をいう。ヒドロキノンは電子二つ及び水素イオン二つを放出し、下記式(6)で示されるベンゾキノンとなる。一方ベンゾキノンは電子二つ及び水素イオン二つを受け取り再びヒドロキノンになる。
【化5】
【0038】
上記式中、Rは、アルキル部位、アリール部位、アリールアルキル部位、ハロゲン部位、エーテル部位、カルボキシル部位、シアノ部位、アミノ部位及びアンモニウム部位のいずれかを含む官能基である。アルキル部位としては、C2n+1(n=1〜10)で示される鎖状及び分岐状の炭化水素を挙げることができる。アリール部位としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。また、アリールアルキル部位としては、ベンジル基等を挙げることができる。
【化6】
【0039】
またここでヒドロキノンの濃度としては、後述する効果を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば溶媒、ビオロゲン誘導体及び支持電解質の合計の重量を100重量部とした場合に、0.001重量部以上20重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.01重量部以上10重量部以下である。0.001重量部以上とすることでビオロゲン誘導体の十分な消色を達成することができ0.01重量部以上とすることでこの効果がより顕著となる。また、20重量部以下とすることで溶液粘度の上昇を抑制し、応答速度の低下を回避することができ、10重量部以下とすることでこの効果をより顕著にすることができる。
【0040】
以上本実施形態に係る表示装置によると、優れた発消色特性を有するだけでなく、より色づきの少ない(背景色が白色に近い)表示装置を提供することができる。この効果については、推測の域を出ないが以下のように考えることができる。この概念図を図4に示す。図4は、ビオロゲン誘導体が一電子を受け取り(一電子還元を受け)、一方の電極に付着している状態(着色状態)から電子を放出し、当該電極から離脱する様子(消色過程)についての一連の概念図を表す。
【0041】
最初の段階において、ビオロゲン誘導体は一電子還元を受け電極に付着している(着色している)。一方、ヒドロキノン誘導体はビオロゲン誘導体とともに電極に混合吸着する。そして、電極に正の電圧を印加すると、本来であれば、ビオロゲン誘導体の一電子還元体は、酸化され、元の状態に戻って電極から離脱するはずであるが、ビオロゲン誘導体は電極に付着している間に再結晶化を起こし、容易には酸化されない状態になっている。しかしながら、図に示すように、ヒドロキノン誘導体が混入していると、ビオロゲン一電子還元体に代わってまずヒドロキノン誘導体が酸化され、ベンゾキノンとなり電極に付着する(図4(a)、(b)参照)。この時、ヒドロキノンは電極によって二電子を引き抜かれる(二電子酸化される)。
【0042】
するとこのベンゾキノンはビオロゲン誘導体2分子から一電子ずつ引き抜き、再びヒドロキノン誘導体になる(図4(b)、(c))。
【0043】
すると、二電子放出したビオロゲン誘導体は二価のイオンとなり、電極から離脱し液体層に溶解する(図4(c)、(d))。
【0044】
つまり、このようにヒドロキノン誘導体は、ビオロゲン誘導体の一電子還元体の間に入り込み、電極上での結晶化によって元に戻りにくくなった(電極酸化されにくくなった)ビオロゲン誘導体を化学的に酸化することができ、従って再結晶化によって生じる消え残りを防止することができるので、発消色に優れた表示装置を提供することができる。本実施形態に係る表示装置は、上記の通り、ヒドロキノン誘導体を添加するだけで発消色に優れ、ビオロゲン誘導体や支持電解質等の材質に大きく依存することなく効果を発揮することができる。
【0045】
(実施形態3)
本実施形態に係る表示装置は、上記実施形態1のフェロセン誘導体がフェロシアンイオン塩となっている点が異なりそれ以外は実施形態1と同様である。以下異なる点について説明し、その他同様の点については省略する。
【0046】
液体層におけるフェロシアンイオンとは、下記式(7)で示される化合物をいい、それがアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属のカチオン(例えば、K、Na、Li、Ca2+等)と塩を形成したものをフェロシアンイオン塩という。フェロシアンイオンは電子一つを放出し、下記式(8)で示されるフェリシアンイオンとなる。一方フェリシアンイオンは電子一つを受け取り再びフェロシアンイオンになる。
【化7】
【化8】
【0047】
またここでフェロシアン塩の濃度としては、後述する効果を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば溶媒、ビオロゲン誘導体及び支持電解質の合計の重量を100重量部とした場合に、0.001重量部以上20重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.01重量部以上10重量部以下である。0.001重量部以上とすることでビオロゲン誘導体の十分な消色を達成することができ、0.01重量部以上とすることでこの効果がより顕著となる。また、20重量部以下とすることで溶液粘度の上昇を抑制し応答速度の低下を回避することができ、10重量部以下とすることでこの効果がより顕著となる。
【0048】
以上本実施形態に係る表示装置によると、優れた発消色特性を有するだけでなく、より色づきの少ない(背景色が白色に近い)表示装置を提供することができる。
【0049】
(実施形態4)
本実施形態に係る表示装置は、上記実施形態2のヒドロキノンをナフトヒドロキノンにした点以外は実施形態2と同様である。以下異なる点について説明し、それ以外の記載については省略する。
【0050】
液体層におけるナフトヒドロキノンとは、下記式(9)で示される化合物をいう。ナフトヒドロキノンは電子二つ及び水素イオン二つを放出し、下記式(10)で示されるナフトキノンとなる。一方ナフトキノンは電子二つ及び水素イオン二つを受け取り再びナフトヒドロキノンになる。
【化9】
【0051】
なお上記式中、R及びRは、アルキル部位、アリール部位、アリールアルキル部位、ハロゲン部位、エーテル部位、カルボキシル部位、シアノ部位、アミノ部位及びアンモニウム部位のいずれかを含む官能基であり、RとRは同じであっても、異なっていても良い。アルキル部位としては、C2n+1(n=1〜10)で示される鎖状及び分岐状の炭化水素を挙げることができる。アリール部位としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。また、アリールアルキル部位としては、ベンジル基等を挙げることができる。
【化10】
【0052】
またここでナフトヒドロキノンの濃度としては、後述する効果を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば後述する効果を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば溶媒、ビオロゲン誘導体及び支持電解質の合計の重量を100重量部とした場合に、0.001重量部以上10重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.01重量部以上5重量部以下である。0.001重量部以上とすることでビオロゲン誘導体の十分な消色を達成することができ、0.01重量部以上とすることでこの効果がより顕著となる。また10重量部以下とすることで溶液粘度の上昇を抑制し応答速度の低下を回避することができ、5重量部以下とすることでこの効果がより顕著となる。
【0053】
以上本実施形態に係る表示装置によると、優れた発消色特性を有するだけでなく、より色づきの少ない表示装置を提供することができる。
【0054】
なお上記実施形態1〜4において説明したフェロセン誘導体、ヒドロキノン誘導体、フェロシアンイオン塩、ナフトキノン誘導体、ナフトヒドロキノン誘導体は、単独で用いてもよく、適宜混合させて用いてもよい。
【実施例】
【0055】
ここで、上記実施形態に係る表示装置の効果について、実際に実験を行い、その効果を確認した。以下この結果について説明する。
【0056】
(実施例1)
まず水20mlに、下記式で示すジベンジルビオロゲンを7mM、下記式で示すフェロセン誘導体を2mM、支持電解質としてLiBrを0.1Mとなるように加え、媒体を作製した。
【化11】
【化12】
【0057】
(サイクリックボルタンメトリー)
まず、図5に示す装置を用いて、サイクリックボルタンメトリー(以下「CV」という。)を行なった。図5で示すとおり、本CVは、15mm×25mmのITOからなる透明電極と10mm×20mmのPtからなる金属電極とを10mm離して対向させた一対の電極を、媒体に浸し、電界を印加させることで行なった。なお電圧は、飽和カロメル参照電極(SCE)に対して−0.7V〜+0.5Vの間を20mV/sの掃引速度で変化させ、10回数繰り返した。この結果を図6に示す。
【0058】
この結果によると、−0.6V付近でジベンジルビオロゲンが一電子還元を受けて紫色の一電子還元体が生成され、ITO電極上に膜状に堆積して電極が紫色に着色した。そして、+0.3V付近で図3で記述された電極酸化反応が進行し、電極上の紫色が完全に消色した。電位の掃引を繰り返しても劣化や消え残りが生じることなく、しかも安定的に繰り返されたことが確認でき、優れた発消色特性を有する表示装置を提供することができることを確認した。
【0059】
(着色効率測定)
また、図7に示す装置を用いて、着色効率を測定した。図7で示すとおり、本測定は、一対の電極として30mm×30mmのITO(ガラス基板上に形成)と、φ0.3mmのAuワイヤを採用し、これを20mm程度離して配置するとともに、上記サイクリックボルタンメトリーにおいて用いたものと同じ媒体に浸し、−0.7Vの電位を印加したときの、吸光度と通電電気量を測定することで行なった。なお本測定において着色効率とは単位通電電気量に対して変化した吸光度をいい、吸光度は波長553nm(ビオロゲン一電子還元体の最大吸収波長)における吸光度を採用した。この測定で得られる通電電気量―吸光度の関係を図8に示す。このプロットの傾きが着色効率に相当する。
【0060】
この結果、着色効率として、120cm/Cの値が得られた。この値は、上記フェロセン誘導体を含まないジベンジルビオロゲン単独系の着色効率130cm/Cと比べてほぼ遜色のない値であり、フェロセン誘導体の添加は着色過程を妨げないことを確認した。
【0061】
(実施例2)
まず、25mm×30mmのITOが全面に形成されたガラス板(対向電極)と25mm×30mmのITOパターンが形成されたガラス板(表示電極)の一対のガラス基板の間に、媒体を浸み込ませた多孔質のスペーサ(厚さ400μm)を挟み、周囲をエポキシ樹脂で封止した。次に、表示電極側に、対向電極に対して−1.2Vの電圧を印加し、ITOパターン上でジベンジルビオロゲンの紫色の発色を確認した。そして、表示電極側に、対向電極に対して+1.2Vの電圧を印加し、ITOパターン上の紫色の発色が消失するのを確認し、発消色に優れた表示装置であることが確認できた。
【0062】
(実施例3)
まず水20mlに、ベンジルビオロゲンを7mM、下記式で示すフェロセン誘導体を2mM、支持電解質としてLiBrを0.1Mとなるように加え、媒体を作製した。
【化13】
【0063】
(サイクリックボルタンメトリー)
上記の媒体を使用した以外は実施例1と同じ条件にて行なった。なお電圧は、SCEに対して−0.7V〜+0.8Vの間を20mV/sの掃引速度で変化させ、10回数繰り返した。この結果を図9に示す。
【0064】
この結果によると、−0.6V付近でジベンジルビオロゲンが一電子還元を受けて紫色の一電子還元体が生成され、ITO電極上に膜状に堆積して電極が紫色に着色した。そして、+0.6V付近で電極酸化反応が進行し、電極上の紫色が完全に消色した。電位の掃引を繰り返しても劣化や消え残りが生じることなく、しかも安定的に繰り返されたことが確認でき、優れた発消色特性を有する表示装置及びその媒体を提供することができることを確認した。
【0065】
(着色効率測定)
上記の媒体を使用した以外は実施例1と同じ条件、同じ測定装置を用いて着色効率測定を行なった。この結果を図10に示す。この結果、着色効率として、130cm/Cの値が得られた。この値は、上記フェロセン誘導体を含まないジベンジルビオロゲン単独系の着色効率130cm/Cと同じ値であり、上記フェロセン誘導体の添加は着色過程を妨げないことを確認した。
【0066】
(実施例4)
また実施例2と同様のサイズからなる表示装置を作製し、発消色について確認した。なお本実施例において用いた媒体は、実験例3において作製した媒体と同じものを用いた。表示電極側に、対向電極に対して−1.5Vの電圧を印加し、ITOパターン上でジベンジルビオロゲンの紫色の発色を確認した。そして、表示電極側に、対向電極に対して+1.5Vの電圧を印加し、ITOパターン上の紫色の発色が消失するのを確認し、発消色に優れた表示装置であることが確認できた。
【0067】
(実施例5)
まず水20mlに、ビオロゲンを7mM、ヒドロキノンを2mM、支持電解質としてLiBrを0.1Mとなるように加え、媒体を作製した。
【0068】
(サイクリックボルタンメトリー)
上記の媒体を用いた以外は実施例1と同様の条件、同様の装置を用いてCVを行なった。なお、電圧は−0.75V〜0.4Vの間を20mV/sの掃引速度で変化させ、10回数繰り返した。この結果を図11に示す。
【0069】
この結果によると、−0.6V付近でジベンジルビオロゲンが一電子還元を受けて紫色の一電子還元体が生成され、ITO電極上に膜状に堆積して電極が紫色に着色した。そして、+0.2V付近で電極酸化反応が進行し、電極上の紫色が完全に消色した。電位の掃引を繰り返しても劣化や消え残りが生じることなく、しかも安定的に繰り返されたことが確認でき、優れた発消色特性を有する表示装置及びその媒体を提供することができることを確認した。
【0070】
(着色効率測定)
上記の媒体を用いた以外は実施例1と同様の条件、同様の測定装置を用いて着色効率測定を行った。この結果を図12に示す。
【0071】
この結果によると、着色効率として、160cm/Cの値が得られた。この値は、上記フェロセン誘導体を含まないジベンジルビオロゲン単独系の着色効率130cm/Cを上回る値であり、ヒドロキノンは消色過程の消え残り解消に寄与するばかりではなく、着色効率をも向上させることを確認した。
【0072】
(実施例6)
また実施例2と同様のサイズからなる表示装置を作製し、発消色について確認した。なお本実施例において用いた媒体は、実験例5において作製した媒体と同じものを用いた。表示電極側に、対向電極に対して−1.1Vの電圧を印加し、ITOパターン上でジベンジルビオロゲンの紫色の発色を確認した。そして、表示電極側に、対向電極に対して+1.1Vの電圧を印加し、ITOパターン上の紫色の発色が消失するのを確認し、発消色に優れた表示装置であることが確認できた。
【0073】
以上、本実験例、実施例により、この原理を用いることで優れた発消色特性を有する表示装置を提供できることを確認した。特に、本実施例におけるヒドロキノンは無色透明であり、素子の背景の色づきもほとんどなく特に有用である。
【0074】
(実施例7)
まず水20mlに、ビオロゲンを7mM、下記式に示すフェロシアン化カリウムを2mM、支持電解質としてLiBrを0.1Mとなるように加え、媒体を作製した。
【化14】
【0075】
(サイクリックボルタンメトリー)
上記媒体を用いた以外は同様の条件、同様の装置を用いてCVを行なった。電圧は−0.75V〜+0.6Vの間を20mV/sの掃引速度で変化させ、10回数繰り返した。この結果を図13に示す。
【0076】
この結果によると、−0.6V付近でジベンジルビオロゲンが一電子還元を受けて紫色の一電子還元体が生成され、ITO電極上に膜状に堆積して電極が紫色に着色した。そして、+0.2V付近で電極酸化反応が進行し、電極上の紫色が完全に消色した。電位の掃引を繰り返しても劣化や消え残りが生じることなく、しかも安定的に繰り返されたことが確認でき、優れた発消色特性を有する表示装置及びその媒体を提供することができることを確認した。
【0077】
(着色効率測定)
また、上記実験例3と同様に着色効率を測定した。本実験例において用いた媒体は上記CVと同じものであり、用いた装置は上記実験例2と同じものである。この結果を図14に示す。
【0078】
この結果によると、着色効率として、230cm/Cの値が得られた。この値は、上記フェロセン誘導体を含まないジベンジルビオロゲン単独系の着色効率130cm/Cを上回る値であり、フェロシアンイオンは消色過程の消え残り解消に寄与するばかりではなく、着色効率をも向上させることを確認した。
【0079】
(実施例8)
また実施例2と同様のサイズからなる表示装置を作製し、発消色について確認した。なお本実施例において用いた媒体は、実験例5において作製した媒体と同じものを用いた。表示電極側に、対向電極に対して−1.1Vの電圧を印加し、ITOパターン上でジベンジルビオロゲンの紫色の発色を確認した。そして、表示電極側に、対向電極に対して+1.1Vの電圧を印加し、ITOパターン上の紫色の発色が消失するのを確認し、発消色に優れた表示装置であることが確認できた。
【0080】
以上、本実験例、実施例により、この原理を用いることで優れた発消色特性を有する表示装置を提供できることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は表示装置に係るものであり、産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】実施形態1に係る表示装置の一部断面の概略図である。
図2】実施形態1に係る表示装置の一方の基板の電極は一の例を示す図である。
図3】実施形態1に係る表示装置において推測される動作の概略を示す図である。
図4】実施形態2に係る表示装置において推測される動作の概略を示す図である。
図5】実施例1におけるCV装置の概略を示す図である。
図6】実施例1におけるCVの結果を示す図である。
図7】実施例1における着色効率測定の装置の概略を示す図である。
図8】実施例1における着色効率測定の結果を示す図である。
図9】実施例3におけるCVの結果を示す図である。
図10】実施例3における着色効率測定の結果を示す図である。
図11】実施例5におけるCVの結果を示す図である。
図12】実施例5における着色効率測定の結果を示す図である。
図13】実施例7におけるCVの結果を示す図である。
図14】実施例7における着色効率測定の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1…表示装置、2a、2b…基板、3a、3b…画素電極、4…媒体層、5…スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14