(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかる車両用ホーンの実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、車両用ホーンの接合前状態を示す前方斜視図である。
図2は、車両用ホーンの接合前状態を示す後方斜視図である。
図3は、本実施形態における車両用ホーンの正面図である。
図4は、
図3中のA−A線における断面図である。
図5は、
図3中のB−B線における断面図である。
図6は
図3中のC−C線における断面図である。
【0013】
図1〜
図6のそれぞれに示すように、本実施形態における車両用ホーン10は、本体部40内に渦巻経路の音道20(
図4における20A,20B,20C,20D,20Eである)が形成され、音道20の始点位置には振動波を供給する音源である振動板30との連通部分(貫通孔54)が設けられている。また、本体部40には音道20内を伝播させた振動波を外部空間に放出するラッパ状の放音部70が一体に形成されている。放音部70の最下流部分は、地表面側に開口する開口端面に形成されている。放音部70の開口端面の下方側位置には放音部70の開口端面における平面領域を覆うと共に、放音部70の開口端面から本体部40の外部に放出された振動波を少なくとも車両の進行方向に反射させる被覆反射板80が配設されている。
【0014】
被覆反射板80は、放音部70の開口端面と所要間隔をあけて設けられており、放音部70の開口端面と被覆反射板80との隙間には被覆反射板80の前側部分および横側部分に車両用ホーン10の外部から異物が本体部40の内部空間に侵入することを防止するための異物侵入防止部90が配設されている。
このような車両用ホーン10は、本体部40の後部側にネジ留め等により取り付けられた取付板12と、ボルトおよびナットなどに代表される締結具を用いて車両(いずれも図示せず)に取り付けられて用いられる。
【0015】
図1および
図2に示されているように、第1部材50と第2部材60とを一体に組み立てることにより車両用ホーン10の本体部40が形成されている。第1部材50には、貫通孔54を有する隔壁51が形成されていて、第2部材60には、渦巻状壁部64が形成されているので、本体部40が形成されると、本体部40の内部空間には渦巻経路をなした音道20が同時に形成されることになる。第1部材50と第2部材60との組み立て方法としては、公知の組み立て方法を適宜用いることができるが、本実施形態においては超音波溶着による組み立て方法を採用した形態について説明する。
【0016】
図1および
図2に示すように、第1部材50には、円板状に形成された隔壁51と、隔壁51の外周縁に沿って立設された側壁52とにより、音源である振動板30を収容するための振動板収容部53が形成されている。隔壁51の中央部分には、振動板30により発生させた振動波を振動板収容部53から音道20に伝播させるための貫通孔54が穿設されている。
第1部材50の後部下側位置には放音部70の後方側壁部の一部を形成するための拡張壁部55が形成されている。また、放音部70の開口端面側における側壁52の下側位置には、本体部40の後方に延びた後、
被覆反射板80に接近する方向に屈曲するクランク壁部56が配設されている。クランク壁部56の後部側端部は本体部40の後部に形成される開口部42の上端縁の一部を形成する。
【0017】
また、第1部材50の隔壁51において、拡張壁部55が配設されている位置に隣接する部位には、側壁52の立設方向とは反対側(本体部40の前面側)に突出する異物侵入防止壁57が立設されている。異物侵入防止壁57は、放音部70を横断する配置で放音部70の延伸方向(振動波の伝播方向)に所要間隔をあけて隔壁51の複数箇所に形成されている。異物侵入防止壁57は、振動波の伝播方向における上流側壁面の高さ寸法に対して下流側壁面の高さ寸法の方が高く形成されており、異物侵入防止壁57の突出先端面は、隔壁51からの突出高さが上流側から下流側に徐々に高くなる傾斜面に形成されている。
【0018】
このような異物侵入防止壁57を放音部70内に設けることにより、異物侵入防止部90を通過した異物を放音部70内で捕捉する(音道20への侵入を阻止する)ことができ、音道20内への異物の侵入を防ぐことができる。異物侵入防止壁57は、異物侵入側における壁面の方が放音部70の奥側における壁面よりも高く形成されているため、特に異物侵入防止部90から侵入した異物が水である場合には、侵入してきた水を放音部70の開口端面側にはね返す際において好都合である。また、異物侵入防止壁57の突出側先端部が傾斜面に形成されているので、音道20からから伝播してきた振動波が放音部70内の異物侵入防止壁57により減衰されることを可及的に抑制することも可能である。
【0019】
また第1部材50の隔壁51には、側壁52の立設面とは反対側の(本体部40の前側となる)面に溶着用樹脂部58が設けられている。この溶着用樹脂部58は、第1部材50と第2部材60とを超音波溶着させる際に加えられる超音波振動により溶融し、溶融した溶着用樹脂部58は第1部材50と第2部材60とを接着させる接着剤として用いられる。溶着用樹脂部58は、後述する第2部材60の渦巻状壁部64との当接部に沿って配設されている。
【0020】
第2部材60は、
図1に示すように、本体部40の前面を形成する前面カバー61と、ラッパ状前面カバー62とが一体に形成されている。ラッパ状に形成された放音部70の一部を形成するラッパ状前面カバー62は、前面カバー61よりもさらに前側に迫り出した状態で設けられている。
放音部70は、第2部材60のラッパ状前面カバー62と第1部材50の隔壁51とにより形成されている。放音部70は、音道20(渦巻状壁部64)内を伝播してきた振動波を渦巻状壁部64の最外周部分を起点として、振動波が伝播する空間を徐々に前部側に離反させると共に、振動波が伝播する空間の断面積を徐々に増加して振動波を拡幅させながら本体部40の外部に放出することができるように形成されている。
【0021】
また、放音部70の開口端面位置でもあるラッパ状前面カバー62の下端部には、放音部70の開口端面の平面領域よりも外側の範囲に迫り出す配置で迫り出し板63がラッパ状前面カバー62と一体に形成されている。迫り出し板63の下面後端部とラッパ状前面カバー62の内側壁面下端部とによりエッジ部66が形成されている。エッジ部66は、被覆
反射板80側に突出する形状に形成されている。
また、迫り出し板63の下面には縦リブ91が一体形成されていて、この縦リブ91により被覆反射板80が迫り出し板63および放音部70の開口端面と所要間隔をあけた状態で保持されている。縦リブ91の高さ方向における中途位置には、横リブ92が一体に形成されている。すなわち、放音部70の開口端面位置に設けられた迫り出し板63と被覆反射板80との間には縦リブ91と横リブ92とからなる異物侵入防止部90が形成されていることになる。
【0022】
被覆反射板80は、前部側外周縁の形状が迫り出し板63の前部側外周縁形状に倣った形状に形成されていると共に、放音部70の開口端面の平面領域をすべて被覆する(覆う)ようにして縦リブ91の下端部に一体に形成されている。また、被覆反射板80の上面の、被覆反射板80の前部側端縁部から後部側へ所要距離をあけた位置には、被覆反射板80の前部側端縁部に沿った配置で、放音部70の開口端面側に突出する突出部81が形成されている。また、被覆反射板80の後部側には、被覆反射板80の外周縁に沿って複数の切り欠き部82が形成されている。
【0023】
図2に示すように、第2部材60の背面側には、渦巻経路をなす音道20を形成するための渦巻状壁部64が第1部材50の溶着用樹脂部58の位置に合わせた配列に形成されている。渦巻状壁部64の始端部は、第1部材50に形成された貫通孔54を囲むようにした行き止まり形状に形成されている。また、渦巻状壁部64の外側終端部は第2部材60の側壁部65に摺り付けられている。
渦巻状壁部64の最外周位置において放音部70に連なる部位である渦巻状壁部64の外側終端部には、放音部70側に突出する突出部67が形成されている。同じく渦巻状壁部64の最外周面において異物侵入防止部90に連通する部位には、迫り出し板63と横リブ92との間の隙間部分に向って突出する開口部側突出部64Aが形成されている。
【0024】
また、ラッパ状前面カバー62の内側壁面において、渦巻状壁部64の最外周位置において放音部70に連なる部位に設けられた突出部67と向かい合う部分にも同様の突出部67が形成されている。また、ラッパ状前面カバー62の内側壁面の異物侵入防止部90に連通する部位にも、開口部側突出部62Aが形成されている。さらにラッパ状前面カバー62の側壁面部62Zの内側壁面には、開口部側突出部62Aの上方側位置に放音部70の上流側から下流側に向って傾斜する傾斜板62Bが形成されている。この傾斜板62Bは、放音部70からの侵入した異物が放音部70のさらなる奥側への侵入することを阻止する異物侵入阻止部としての効果がある。
図2に示すように、開口部側突出部62A,64Aおよび突出部67は、それぞれ突出側先端部が先細となるエッジ状に形成されている。
【0025】
このような第1部材50と第2部材60は、第1部材50の隔壁51における前側面に第2部材60の渦巻状壁部64を向き合わせた状態とし、溶着用樹脂部58と渦巻状壁部64とを当接させた状態にして超音波振動を加え、溶着用樹脂部58を渦巻状壁部64に溶着させることにより一体化され、内部空間に渦巻経路をなした音道20を有する本体部40が組み立てられることになる。
【0026】
本体部40が組み立てられた後に、
図4および
図5に示すように、供給された電源により振動して振動波を生成する振動板30が本体部40の振動板収容部53に収容される。振動板30には後面側カバー31に組み付け固定されているので、振動板収容部53に振動板30を収容することにより、後面側カバー31が振動板収容部53の一部である第1部材50の側壁52と一体化され、振動板収容部53は閉塞空間に形成される。このようにして車両用ホーン10が組み立てられる。
【0027】
次に車両用ホーン10における振動波の30の伝播について説明する。
本体部40の振動板収容部53に収容された振動板30が発した振動波は、貫通孔54を通過し、第2部材60の前面カバー61により振動板30の振動方向に直交する方向に反射された後、渦巻経路に形成された振動波の伝播路である音道20A,20B,20C,20D,20Eを経由しながら振動板30の中心軸32の周りを周回することになる。すなわち振動波は、音道20の線形に沿って振動板30の中心軸32から徐々に離反しながら音道20(本体部40)の外周側に向かって伝播することになる。
【0028】
音道20の最外周位置(20E)に到達した振動波は、音道20の最外周位置(20E)に連結された放音部70に伝播した後、振動板30の振動面から本体部40の前部側に離反し、ラッパ状空間に形成された放音部70内で拡張された後に、地表面に向けられた開口端面から本体部40の外部に放出される。放音部70の開口端面から放出された振動波は、放音部70の開口端面から所要距離離反した位置に配設されている被覆反射板80によって水平面内に反射されることになる。
【0029】
本実施形態における車両用ホーン10は、音源である振動板30から発せられた振動波を放音部70の開口端面から本体部40の外部へ放出する際に、振動波の放出方向に対して直交する状態(振動波の伝播を妨げる状態)で配設された被覆反射板80によって反射させることにより、異物侵入防止部90の隙間部分から必要とする方向に向けて警報音を的確に放出することができる構成になっている。
【0030】
異物侵入防止部90についてより詳細に説明をする。
図6は、
図3内のC−C線における断面図であり、
図7は、
図3内のA−A線における本体部のうちの放音部の開口端面付近を拡大表示した端面図である。
先にも説明したとおり異物侵入防止部90は、放音部70の開口端面に設けられた迫り出し板63と被覆反射板80との間に設けられた縦リブ91と横リブ92とを有している。
図6に示すように縦リブ91の幅寸法は、縦リブ91の前部側(本体部40前面側)位置における幅寸法が最大幅寸法となる壁部91Aに形成され、後部側(本体部40後面側)になるにつれ徐々に幅狭になる三角形断面に形成されている。本実施形態においては、縦リブ91の最前面側位置における壁部91Aと、異物侵入防止部90の側面側における縦リブ91の端辺91Bとが直交する直角三角形断面を有する縦リブ91の構成を採用した。
【0031】
このように車両用ホーン10の前部側(本体部40前面側)に最大幅寸法を有する壁部91Aの面を対面させた状態で縦リブ91を配設することにより、縦リブ91による車両用ホーン10の前部側からの異物侵入防止効果を高めることができる。また、縦リブ91の斜辺91Cにより車両用ホーン10の正面側中央部分に飛来してきた異物を被覆反射板80を平面視した際の中央領域ではなく、被覆反射板80を平面視した際の左右側領域に誘導させることができる点においても好都合である。さらには、縦リブ91の端辺91Bにより、車両用ホーン10の側面からの異物の侵入も防止している。本実施形態においては、被覆反射板80の前方側端縁部に沿って被覆反射板80を平面視した際の中央部分を除いた4箇所に縦リブ91を配設した形態について説明しているが、縦リブ91の配設数は適宜変更することができる。
【0032】
横リブ92は、
図7に示すように、横リブ92の前端部位置における肉厚寸法(高さ寸法)が最大となる壁部92Aが形成され、横リブ92の後部側位置における肉厚寸法が徐々に薄くなるくさび型形状に形成されている。横リブ92の下面は、地表面に対して直交している壁部92Aに対して直角面となるように形成され、かつ放音部70の開口端面の直前位置には後部下側に屈曲する屈曲部92Bが形成されている。横リブ92の上面は、壁部92Aから放音部70の開口端面側に接近するに伴い高さ位置が徐々に低くなる傾斜面92Cに形成されている。
横リブ92は、異物侵入防止部90において振動板30が発した振動波を車両用ホーン10の内部空間から車両用ホーン10の外部空間へ放出する際に最低限必要な開口部面積が確保されていれば、壁部92Aの高さ寸法を可及的に高くすることが好ましく、
図7に示す壁部92Aのように、傾斜面92Cの前部側端部から壁部92Aが高さ方向に突出した変形三角形断面状に形成されていることが好ましい。
【0033】
また、
図7に示すように放音部70の開口端面を覆う迫り出し板63は、板厚寸法が前部側端部から放音部70の開口端面に近付くにつれて徐々に肉厚になるよう形成されていると共に、下面側が湾曲面に形成されている。このような湾曲面をなす迫り出し板63の下面の後端部分と、ラッパ状前面カバー62の内側壁面の下端部分が交差する部分は、下部側(
被覆反射板80側)に向けて先細形状をなして突出するエッジ部66を形成している。また、下面が湾曲面に形成された迫り出し板63を採用することにより、横リブ92の傾斜面92Cと共に車両用ホーン10の正面側から異物侵入防止部90を通過してきた異物が、本体部40の前部側から後部側に向って徐々に低位方向への移動を誘導(被覆反射板80側に向うように誘導)する侵入異物の誘導路94を形成することができる。
【0034】
この誘導路94は、特に侵入異物が水や空気などの流体である場合、放音部70の開口端面の連通部分において、迫り出し板63の下面を伝ってきた流体をエッジ部66において確実に迫り出し板63の下面から引きはがす(被覆反射板80側に吹き飛ばす)ことができる。すなわち、迫り出し板63の下面に沿って侵入した流体がその粘性によって放音部70のラッパ状前面カバー62の内側壁面に沿いながら移動することにより、音道20側に流体が巻き込まれること(侵入)を確実に回避することができる。
【0035】
また、被覆反射板80の上面には、被覆反射板80の前方側端縁部に沿った配置で、放音部70の開口端面側に突出する突出部81が形成されている。この突出部81により横リブ92の下面と被覆反射板80の上面との間の入り口部分の隙間を狭くすることができる。すなわち、突出部81もまた、異物侵入防止部90の一部を構成しているといえる。さらに、横リブ92の下面側における放音部70の開口端面側部分は、被覆反射板80側(下側)に屈曲する屈曲部92Bが形成されているから、被覆反射板80および突出部81と屈曲部92Bとにより、車両用ホーン10の前部側(本体部40前面側)から飛来する異物を被覆反射板80の上面に対する角度α1およびα2を小さくした状態にして誘導させることができる。
【0036】
このように壁部92Aおよび屈曲部92Bが形成された横リブ92と、突出部81が突設された
被覆反射板80とエッジ部66の一部を形成する迫り出し板63の構成を採用することにより、異物侵入防止部90の本体部40正面の下方側から本体部40の後部側を見通しした場合には、
図7中の矢印A1,矢印A2に示すように開口部42のみが視認可能となるように形成されている。すなわち、異物侵入防止部90に侵入した異物は、最短距離で開口部42に向って進むことになる。この点からも放音部70の開口端部分は、異物侵入防止部90から侵入した異物が音道20側に侵入しにくい構造になっていることがいえる。
【0037】
発明者らは、いわゆる高圧水を用いた洗車等を行った場合を想定した車両用ホーン10の信頼性実験を行った。この実験の結果、異物侵入防止部90を通過した高圧水は、被覆反射板80の平面領域上に残留している砂などの異物を弾き飛ばすことになるが、高圧水によって弾き飛ばされたほとんどの異物は、本体部40の後部側に設けた開口部42から本体部40の外部に排出されていることを確認した。しかしながら、被覆反射板80の特定の平面領域に異物が残留していた場合には、高圧水に弾き飛ばされた異物は本体部40の内壁面に跳ね返りながら音道20側に侵入することがごくまれにあることも確認している。
【0038】
そこで発明者らは、コンピューターシミュレーションをおこない、被覆反射板80の上面に残留していた異物が外部から侵入した高圧水によって弾き飛ばされた際に、音道20側に侵入するおそれがある平面領域を特定平面領域X(
図7参照)として算出した。
上記の突出部81とエッジ部66は、異物侵入防止部90における通過可能部分(迫り出し板63と横リブ92との間および横リブ92と被覆反射板80との間の隙間部分)を通過した水が
図7内の矢印B1および矢印B2に示すように、被覆反射板80の特定平面領域Xに誘導されない(特定平面領域Xよりも後ろ側の平面領域に誘導する)経路を形成するように配設位置、形状、大きさが最適化された状態で設定されている。
【0039】
このようにして配設された突出部81やエッジ部66の構成によって、異物侵入防止部90を通過可能な大きさの異物は、被覆反射板80の特定平面領域Xを除いた平面領域に誘導されることになる。すなわち、音道20側への異物侵入を防止し、かつ、
図7中の矢印B1および矢印B2に示すような本体部40の後部側に設けた開口部42から異物を確実に外部に排出することが可能になる。開口部側突出部62A,64Aもまた、本体部40の左右側面においてエッジ部66と同様の作用効果を奏する。
また、被覆反射板80の上面には常時走行風が通過していることにもなるので、被覆反射板80上の異物を開口部42や被覆反射板80の後部側端縁に形成した切り欠き部82から本体部40の外部への排出も促進され、被覆反射板80上への異物の残留そのものを防止することもできる。また、被覆反射板80が前部側位置よりも後部側位置の方が低位となる傾斜面をなした状態で配設されている構成も異物の排出促進のための構成の一部に含まれる。
【0040】
以上により、被覆反射板80の上面に細かい砂などの異物が残留している場合には、異物侵入防止部90から侵入した走行風や水によっても異物が音道20側に弾き飛ばされることはなく、開口部42から確実に車両用ホーン10の外部に排出させることができる。よって、車両用ホーン10の音道20内への異物侵入による故障の発生を確実に防止することが可能になる。
【0041】
また、
図7および
図8に示すように、放音部70の開口端面の後部側端面位置は、放音部70の開口端面の前部側端面位置より上側位置に形成されている。これにより、車両用ホーン10の正面側から本体部40に侵入してきた異物が放音部70の後部側の壁面である隔壁51に衝突した後、一部の異物が隔壁51に沿って音道20側に異物が侵入することを防止している。
さらには、放音部70の開口端面の後部側端面位置に設けたクランク壁部56により、放音部70の後部側部分に余剰空間が形成されることになり、この余剰空間が本体部40に侵入してきた水を一時貯留させるためのバッファ部100として機能させることもできる。
【0042】
バッファ部100の作用について説明する。
図7および
図8から明らかなとおりバッファ部100は、放音部70の後部側の開口端面と被覆反射板80との間に形成され、クランク壁部56が被覆反射板80に接近している部分で流路断面積が急縮する形状をなしている。このようなバッファ部100の存在により、被覆反射板80の上面に侵入してきた異物である水の一部をあえて開口部42から排出させずに本体部40の前面側に一旦戻すことで放音部70の開口端面側における位置において
図8中の矢印で示すような渦流を発生させているのである。このようにして発生させた水の渦流により、被覆反射板80の上面の砂や小石などの異物を洗い流すことができる。
【0043】
このように、
被覆反射板80の上側部分で生成された渦流により、一部の水が本体部40の後部側壁面である第1部材50の隔壁51に沿って音道20側に侵入するおそれがあるが、隔壁51に設けた異物侵入防止壁57により音道20側への水の侵入が防止されている。
図8に示されているように、隔壁51に設けた異物侵入防止壁57は、放音部70の開口端部側の起立壁面が隔壁51の表面に対してほぼ直角に立設されているので、放音部70の開口端面側から音道20側への異物の侵入を確実に防ぐと共に、異物による渦流を本体部40の前面側に誘導することができる。このような異物侵入防止壁57は放音部70の奥行き方向に複数箇所に配設されている。したがってこの異物侵入防止壁57もまた、バッファ部100の一部を構成しているともいえる。
【0044】
異物侵入防止壁57により本体部40の前面側に誘導された水は、ラッパ状前面カバー62に衝突し、ラッパ状前面カバー62の内側壁面形状に沿って被覆反射板80の上面に向って誘導されることになる。ラッパ状前面カバー62の内側壁面は放音部70の開口端面位置において迫り出し板63の下面と共にエッジ部66を形成していて、エッジ部66の先端部は被覆反射板80の上面に対してほぼ直角に突出するよう形成されている。これにより水は、被覆反射板80の上面に対してほぼ直角に叩きつけられ、被覆反射板80上の砂などの除去を行うことができる。また被覆反射板80に戻された水は、異物侵入防止部90から入りこむ風や水等の侵入速度を低減させることがないため、本体部40の後部側に設けた開口部42からの砂などの異物排出を妨げることなく共に開口部42から本体部40の外部に排出されることになる。
【0045】
また、異物侵入防止壁57よりもさらに上流側である放音部70の始端位置(音道20との境界部分)には、
図8および
図9に示すように、音道20への異物侵入を防止するための構成として、第1部材50には突出部59が、第2部材60には突出部67が、それぞれ形成されている。これら突出部59,67は、放音部70の延長方向に直交する方向に放音部70の内壁面を周回するようにして立設されている。突出部59,67の好適な配設位置は、本体部40を正面視した際に、隔壁51の貫通孔54形成位置を中心点とし、本体部40の頂上位置を起点として放音部70の開口端部側に40°〜60°の範囲で回転させた位置が好適である。本実施形態においてはこの角度が50°となる部位に突出部59,67を立設した。
【0046】
振動板30が無振動状態から振動を開始した直後には、振動板収容部53の気圧が低圧になり、貫通孔54を介して振動板収容部53に連通している音道20の気圧もまた低圧になる。これにより、音道20に連通している放音部70内のきわめて小さい異物が音道20に吸い込まれてしまうおそれがあり、突出部59,67はこのような振動板30の振動開始直後に生じる減圧状態によって音道20に吸引されようとする異物の捕捉(音道20の内部への侵入防止)と、音道20への最後の異物侵入防止部として機能する。
本実施形態における突出部59,67は、いずれも2mm程度の突出高さに形成されたものが用いられている。突出部59,67の突出高さは適宜変更することができる。
【0047】
このような突出部59,67には異物の侵入側である放音部70の開口端側にカエシ部が形成されていることが好ましい。また、
図2に示すように、振動波が音道20から放音部70に入る際における減衰を可及的に防止するために、突出部59,67の音道20側の壁面と、音道20の内壁面との間は緩和曲線により摺り付けられた形状に形成されていることがさらに好ましい。
【0048】
以上に本実施形態にかかる車両用ホーン10について詳細に説明してきたが、本願発明にかかる車両用ホーン10は本実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、4本の縦リブ91と1本の横リブ92とにより放音部70の開口端面と
被覆反射板80との間に異物侵入防止部90を形成しているが、異物侵入防止部90はこの形態に限定されるものではない。縦リブ91および横リブ92の配設本数は、放音部70の開口端面と
被覆反射板80との間の広さに応じて適宜変更してもよい。
また、放音部70の開口端面と被覆反射板80の上面との間に形成される隙間が狭ければ、異物侵入防止部90の構成を省略することもできる。
【0049】
また、ラッパ状前面カバー62の内側壁面の下端部と迫り出し板63の下面後端部とが交差してなるエッジ部66の形態は、迫り出し板63の下面を伝ってきた水がエッジ部66にて迫り出し板63から離反させることができればよい。すなわち、
被覆反射板80に対するエッジ部66の傾斜角度はほぼ直角をなしていなくてもよく、開口部42および被覆
反射板80に接近する方向に突出する形状に形成されていてもよい。
【0050】
また、クランク壁部56の配設を省略し、本体部40の後面側の開口部42の開口面積を本実施形態よりもさらに拡大した構成を採用することもできる。この構成によれば、バッファ部100が構成されないことになるが、本体部40の正面側から飛来する異物のすべてを開口部42から本体部40の外部に排出させることが可能である。
さらに、放音部70の内部空間に設けられた異物侵入防止壁57の配設数や形状についても適宜変更してもよい。
【0051】
また、被覆
反射板80は水平面に配設されている形態を採用することもできる。
さらには、迫り出し板63と、異物侵入防止部90と、被覆反射板80とをそれぞれ別体に形成し、組み立てにより一体化させる本体部40の構成を採用することも可能ではある。