(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0051】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した形状測定装置の一実施例を
図1〜4、
図18〜20を用いて説明する。
【0052】
(形状計測装置)
図1は、本発明の形状測定装置の測定原理を説明するための形状計測装置9を模式的に配置した光学系である。一点鎖線は光軸16、破線は遮光されたため光が通ってないことを示す。なお、
図1は、説明のため模式的に示すものであり、レンズは単レンズとして表示してあるが、各レンズは収差を補正するため複数のレンズからなるレンズ群として構成されているのがむしろ通常である。また、後述するように可変焦点の物でもよい。本実施形態の形状測定システム5(
図4参照)は、入射光学系である光源モジュール11から発射された平行光の中にワーク17のエッジ27を配置する。投影光学系であるレンズ鏡筒13に0次光の光線を遮光するアンチピンホールフィルタ25を挿入して、光源から発した透過光(0次光)が直接撮像素子26に到達しないように制限し、投影された画像は回折光(主に1次光)からなるワーク17のフラウンフォファ像のみが得られるようにしている。これにより、ワーク17の境界の判別精度が著しく向上でき、高精度に輪郭形状を求めることができるものである。なお、回折光に限らず散乱光として発生した光線も利用できる。
【0053】
光源モジュール11、レンズ鏡筒13に対物レンズ23、アンチピンホールフィルタ25および投影レンズ24、検出モジュール14の一端に内蔵された撮像素子26がこの順序に、レーザ発振器21から出射されたレーザ光と共通な光軸16上に、配置されている。
【0054】
(光源モジュール)
本実施形態の光源モジュール11には、例えばHe−Neレーザ発振器からなるレーザ発振器21が内蔵される。ここから照射された波長λ=632.8のレーザ光は、ビームエキスパンダや拡散レンズ(図示せず)により拡散され、この拡散された光線を減光する光量調整手段としてのNDフィルタ(Neutral Density Filter)19が配置される。また、調光されたレーザ光線はコリメータレンズ22により光軸と平行な平行光に変換される。このレーザ光31は、コヒーレントな状態が維持されている。したがって、光源モジュール11からは、均質で回折光を生じやすいコヒーレントな平行光が照射される。
【0055】
(光線分離器)
この光源モジュール11から射出された平行光を、エッジ27部分まで含めワーク17の形状全体に照射する必要がある。しかしながら、光源モジュール11から照射された平行光の範囲が、そのままではワーク17をカバーできない場合がある。そこで、本実施形態では光路シフト手段としての光線分離器33を光源モジュール11のコリメータレンズ22とワーク17の間に配置する。
【0056】
ここで、
図2は、光線結合器34を示す斜視図であるが、光線分離器33も基本的に同様な構成であるため、この図面を参照して説明する。
光線分離器33は、レーザ光31に対して透明な材質により形成されており、レーザ光31に対して高い屈折率と、色収差を生じ難い低分散性と、低い温度膨張係数を備えた光学ガラス、光学プラスチックスなどから形成された板状のプリズムとして構成されている。全体として、表面と裏面は、相互に光学的に平行が保たれた平坦な面を形成し、望ましくは表面に透過率を高めるコーティングを施す。
【0057】
図2に示す光線結合器34とは傾きの方向が反対となるが、光線分離器33は、光軸16を含み
図1の紙面に対して垂直な面(以下「基準面」という。)を基準としたとき、基準面の上側(
図1の上側)は光軸16と直交する平面に対してその上部が光源モジュール11側に傾いて形成されている。また、この上部と基準面について面対象となるように、基準面の下側(
図1の下側)は光軸16と直交する平面に対してその下部が光源モジュール11側に傾いて形成されている。そして、全体としてみると、その光軸16を含み基準面と直交する面における断面形状は、
図1に示す側から見れば逆「く」の字形状に一体に形成されている。
【0058】
このため、光線分離器33は、光源モジュール11から光軸16に平行な平行光を受けると、基準面を基準として、上半分に照射された平行光は上側に、下半分に照射された平行光は下側に、それぞれ相互に光線を分離させる方向に、光線の方向を変えることなく平行な状態を保ったままでシフトさせる。このとき、光線分離器33を通過した平行光の中央部は、光線のない部分ができるが、この部分にはワーク17のエッジ27がない部分であるので、形状測定には影響がない。
【0059】
(レンズ鏡筒)
レンズ鏡筒13には、光源モジュール11側から順に、対物レンズ23、アンチピンホールフィルタ25、投影レンズ24が光源の光軸16に沿って配置される。対物レンズ23は平行光を収束させるレンズで、光源モジュール11側に前側焦点27´を形成するとともに、検出モジュール14側に、後側焦点28を形成する。
【0060】
また、投影レンズ24は光源モジュール側に前側焦点28´を備えており、この前側焦点28´は対物レンズの後側焦点28と一致しており、これを本願では「共焦点」と呼ぶ。
【0061】
この共焦点である後側焦点28,前側焦点28´の位置には、対物レンズ23を通って後側焦点28に集光された透過光(0次光)30を遮光するフィルタ機能をもったアンチピンホールフィルタ25が配置されている。ここで、「アンチピンホール」とは、光軸16上の対物レンズ23の後側焦点28位置に配置され、透過光(0次光)のみを遮光してその通過を妨げ、回折光29は通過を妨げないように構成されているものである。アンチピンホールフィルタ25は、そのようなアンチピンホールを有したフィルタである。なお、このアンチピンホールフィルタ25は、光軸16方向に微調整可能な位置調整手段(不図示)を備えている。
【0062】
投影レンズ24の後側焦点26´は、検出モジュール14の撮像素子26の検出面(撮像面)と一致している。また、対物レンズ23の前側焦点27´を含む光軸16と直交する面に、被検出対象であるワーク17のエッジ27を一致させている。
【0063】
(等倍・拡大投影)
本実施形態の形状測定システム5では、投影レンズ24の焦点距離f2,f2と、対物レンズの焦点距離f1、f1との関係は、一例として、f1=f2となっており、f1とf2の焦点距離は等しい。この場合は、等倍の投影となる。なお、f1<f2とした場合は、拡大投影とすることができる。測定対象物であるワークと、撮像素子26の画面の大きさにより、この拡大倍率が決定される。なお、縮小投影も可能であるが、本発明のようなエッジ検出により形状測定を行なうものでは一般に好ましくない。なお、焦点距離をズームレンズとして可変焦点とすることもできるが、単焦点として可動部分を少なくすることでより精度が高い測定が可能になるとともに、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0064】
(光線結合器)
アンチピンホールフィルタ25と投影レンズ24との間に光線結合器34が配置されている。光線結合器34は、前述の光線分離器33と同様にレーザ光31に対して透明な材質により形成されており、レーザ光31に対して高い屈折率と、色収差を生じ難い低分散性と、低い温度膨張係数を備えた光学ガラス、光学プラスチックスなどから形成されたプリズムとして構成されている。全体として、表面と裏面とが光学的に平行が保たれた平坦な面を形成し、望ましくは表面に透過率を高めるコーティングを施す。
【0065】
光線結合器34は、
図2に示すように、光軸16を含み
図1の紙面に対して垂直な面(以下「基準面」という。)を基準としたとき、基準面の上側(
図1の上側)は光軸16と直交する平面に対してその上部が撮像素子26側に傾いて形成されている。また、この上部と基準面について面対象となるように、基準面の下側(
図1の下側)は光軸16と直交する平面に対してその下部が撮像素子26側に傾いて形成されている。そして、全体としてみると、その光軸16を含み基準面と直交する面における断面形状は、
図1に示す面から見れば「く」の字形状に一体に形成されている。
【0066】
このため、光線結合器34は、光源モジュール11から光軸16に平行な平行光を受けると、基準面を基準として、上半分に照射された平行光は下側に、下半分に照射された平行光は上側に、それぞれ相互に光線を結合させる方向に、光線の方向を変えることなく平行な状態を保ったままでシフトさせる。このとき、光線分離器33を通過した平行光の中央部は、光線が重なったり、乱れたりするが、そもそもこの部分にはワーク17のエッジがない、つまり基本的に光線がない部分であるので、形状測定には影響がない。
【0067】
(検出モジュール)
検出モジュール14は、ここで受信した光を電気信号に変換して、パソコン20で例えばドットマトリクスのデータとして画像処理させる。
【0068】
検出モジュール14を構成する撮像素子26としては、例えば、マトリクス状にCCDをアレイ配置したCCDカメラであり、エリアイメージが、縦11.84[mm]×横8.88[mm](1600pixel×1200pixel)の1.92Mega pixelのCCDカメラである。
【0069】
撮像素子としては、CCDのほか、CMOSなどのアレイ状の撮像素子が適用でき、一般に市販されているCCD、CMOSによる撮像素子の画面サイズは、1/3サイズの4.8×3.6mmのものから35mmフィルムフルサイズの36×24mmのものまで各種あるが、用途により大きさが選択できる。
【0070】
ここで大きな撮像素子26は、エッジ27を高倍率で拡大投影してエッジの検出をするには有利であるが、撮像素子26を大型化するには、光源モジュール11や投影光学系全体、レンズ鏡筒13などの大型化にともない装置全体が大型化し、且つ撮像素子26自体のコストも画面サイズに比例して大きくなるので、その点からは小型のものがこのましい。
【0071】
(ワーク)
測定対象物としてのワークの一例としては、特に限定されるものではないが、光源モジュール11により照射される平行光にその輪郭が包み込まれなければ、その輪郭のエッジ像は得られない。例えば、直径が0.3mm程度の極細ドリルなどであれば、光線分離器33や光線結合器34なしでも、等倍の投影はもちろん、20〜30倍に拡大投影しても十分に撮像素子26の画面内に収まる。
【0072】
他の例として、スローアウェイチップが挙げられるが、全体の長さが40mmのものもあり、これまでのエッジ検出装置による投影では、光路シフト手段である光線分離器33がなく、等倍であっても到底撮像素子26の撮像面には形状全体が入らない。
【0073】
(形状計測装置の作用)
以下本実施形態の形状計測装置の作用を説明する。
レーザ発振器21から出射されたレーザ光31が、コリメータレンズ22を通って光軸16に平行な平行光に変換され、光線分離器33を通過すると、光線分離器33は、基準面より上の平行なレーザ光31を上方に平行にシフトさせる。同様に、基準面より下の平行なレーザ光31を下方に平行にシフトさせる。そうして、このようにシフトされた平行なレーザ光31は、それぞれワーク17の上端と下端のエッジ27の部分を通過する。
【0074】
ワーク17のエッジ27に平行なレーザ光31が照射されると、エッジ27から0次光である透過光30と、それ以外にも回折が生じて一次回折光を主とする色々な次数の回折光29が発生する。また、同時に散乱光を発生させる。
【0075】
このレーザ光31のうちエッジ27から離れた箇所を通過する0次光成分の透過光30は、平行光として対物レンズ23に入射する。ワーク17を照射しているレーザ光31は、ワーク17に遮光される。
【0076】
エッジ27は、対物レンズ23の前側焦点27´に一致しているので、エッジ27の周辺を通る透過光30や回折光29は、対物レンズ23のフーリエ変換作用により、対物レンズ23の後側焦点28で、空間周波数に分解された透過光30を集光するが、回折光29を集光しない。この対物レンズ23の後側焦点28の位置に、0次光成分のみを遮るフィルタ機能をするアンチピンホールフィルタ25が設置されているので、集光された透過光30は完全に遮断される。
【0077】
一方、アンチピンホールフィルタ25を透過した高周波成分の回折光29は、光線結合器34を通過すると、光線結合器34は、基準面より上の平行な回折光29を下方に平行にシフトさせる。同様に、基準面より下の平行な回折光29を上方に平行にシフトさせる。そうして、このようにシフトされた平行なレーザ光31は、それぞれ投影レンズ24に入射される。そのため、対向する上下端のエッジ像は、光線結合器34がない場合より近接される。
【0078】
そして、このように近接され投影レンズ24に入射された回折光29は、投影レンズ24の逆フーリエ変換作用によって、投影レンズ24の後側焦点26´に配置された撮像素子26の検出面上に結像する。このとき、エッジ27により生じた同心円状の干渉像のうち、アンチピンホールフィルタ25により、干渉像の1次回折光すなわちエッジ27の形状を与えるエッジ像のみが抽出される。このような光学系の構成としたことにより、ワーク17のエッジ27のシャープなエッジ像を、干渉像の影響を受けることがなく高精度に識別できる。
【0079】
ここで、
図3を参照して、本実施形態の光線結合器の作用について、詳述する。
図3に示す回折光29は、本実施形態で撮像素子26の撮像面に実際にエッジ像を形成する光線である。また、アンチピンホールフィルタ25で遮光された0次光が、仮にアンチピンホールフィルタ25で遮光されなかったとした場合の0次光の光路30´を破線で示す。さらに、仮に本実施形態の光線結合器34がなかったとしたら、この0次光が辿るであろう光路29´を二点鎖線で示す。
【0080】
まず、本実施形態における撮像素子26におけるエッジ像は、回折光29が集光する位置、つまり、アンチピンホールフィルタで遮光された0次光が撮像素子26に入射するべき位置に結像する。このときの上下両端のエッジ像間の距離は、D
1となる。
【0081】
一方、仮に本実施形態の光線結合器34がなかったとしたら、0次光が辿る光路29´が撮像素子26に入射するべき位置に結像する。このときの上下両端のエッジ像間の距離は、D
2となる。
【0082】
ここで、それぞれの入射位置の差は、
図3の撮像素子26に示す偏差eとなり、画面上での距離の差[D
2−D
1]だけ、撮像素子26を小さくしても、上下両端のエッジ像を同時に同じ高倍率で同一の撮像素子で撮像できる。
【0083】
次に、
図4を参照して、撮像素子26に結像されるエッジ画像を模式的に示す。なお、図は明暗反転して示している。
図4の(a)は、本実施形態の光線結合器34がなかったとしたときの状態で、このときの上下両端部のエッジ間の距離がD
2であると、上下両端部のエッジは撮像素子26の撮像面外にあり、エッジ間の距離が測定できない。一方、(b)では、両端のエッジを含む映像がそのままの形状で、光軸16を含む基準面を境に、それぞれが近接するようにシフトしている。このときの距離D
1を計測して、それぞれのシフト量2eを加算すれば、両エッジ間の距離が算出できる。
【0084】
ここで、
図18、19を参照して、本実施形態の前提となるアンチピンホールフィルタ25を用いない投影光学系と本実施形態の形状測定システム5における投影画像の違いを簡単に説明する。
【0085】
図18(a)は、従来の投影光学系(
図21参照)を用いた
図19に示すような投影画像のエッジ部分の輝度を示すグラフである。グラフ右側が投影した映像のワーク17の輪郭内側で、左側が外側である。グラフは上方に向けて輝度が高いことを示す。
【0086】
図18(a)に示すグラフのように、従来は、実際のエッジの位置で、輝度がはっきりと変化せず、高輝度の部分と低輝度の部分は、なだらかに変化しており、この傾斜したグラフのいずれかにエッジが存在する。視覚的には、輪郭がぼけた映像となってしまった。このような変化であると、しきい値の取り方により大きくエッジ部分がずれてしまうことになり、正確なエッジの位置は検出できない。
【0087】
その理由を説明すると、レーザ光が被測定物のエッジ部分に照射されると、スリットでなくても回折が生じ、直進する0次光の他、ワーク17のエッジで回折する1次光、2次光、3次光…の回折光が発生する。このうち、2次光以降は、比較的光量が少ないので影響が小さい。従来のように、アンチピンホールフィルタ25がない従来の構成では、この0次光と、回折光のうち主に1次光がCCD画面上で像を結び、干渉縞ができる。これらが原因となりエッジ部の画像がボヤけ、エッジ部の判別が困難となり、測定精度が低下する。この問題を解決するため、アンチピンホールを用いたフーリエ変換光学系とした。
【0088】
ここで、
図18(b)は、本実施形態の投影画像のエッジ部分の輝度を示すグラフである。本実施形態の形状計測装置9では、全体が低輝度になっている部分に2つの高輝度のピークがあり、その中間がはっきりした低輝度の下向きのピーク(ボトム)がある。この高輝度の2つのピークは、回折光のうちの1次光により形成されたものである。アンチピンホールフィルタ25により0次光を遮光したため、0次光と1次光とが干渉することなく、また1次光同士も間隔が空いているので、それぞれ1次光がはっきりと表れたものである。そして、この間の低輝度のボトムは、本来0次光が到達する位置であり、言い換えれば正確なエッジの位置を示している。
【0089】
このようなグラフからわかるように、アンチピンホール法では、エッジ検出の閾値の設定が容易で、かつ極めて正確な位置にはっきりとした暗線でエッジが示される。そのため、画像処理が容易で且つロバストなデータを得られるため、数値化が容易で、そのためNC制御も容易にできることになる。
【0090】
本実施形態は以上のような構成を備えるため、以下のような効果がある。
(1) 本発明の前提構成であるアンチピンホール法によるエッジ検出は、2本の輝線に囲まれたはっきりした暗線としてエッジが現れるため、画像の位置が変位しても画像処理が極めて容易である。
【0091】
この場合、測定対象物の投影光学系の光軸に近い輪郭内部の部分は、形状の測定に寄与していない。そこで、本実施形態では、形状の測定に寄与する光線を適所でシフトする。そのことで、本来の光源モジュールの光束の幅や、対物レンズ・投影レンズで投影できる光束の幅や、撮像素子が受光できる光束の幅にかかわらず、大きな測定対象物でも、高倍率で精度の高いエッジ検出を行い、かつ一対のエッジ間の距離を正確に測定し、もって測定対象物の外形形状を正確に測定することができる。
【0092】
(2) 光線結合器34により、光束の幅をより小さくすることで、エッジ像をそのままの倍率で、撮像素子26に投影される映像を小さくすることができ撮像素子26を小型のものとすることができる。
【0093】
(3) さらに、投影レンズ24に導入される前に光束の幅をより小さくすることで、投影レンズ24に導入される光束の幅をより小さくして、投影レンズ24の径を小さくすることも可能になる。
【0094】
(4) 光源モジュール11から照射された平行光の光束の幅が、測定しようとするワーク17の外寸より小さい場合に、光線分離器33により光軸16を含む基準面に対して対称に離間するように光束をその方向を変えずに平行移動させて、ワーク17の対向する両方のエッジ27,27部分を平行光を照射することが可能となる。したがって、ワーク17の外寸より狭い光束の平行光しか照射することができない光源モジュール11でも、このワーク17の形状を測定できるようになる。
【0095】
(5) 光線分離器33と、光線結合器34とを、同一の構成とすることで、調整が容易になる。また、同一の若しくは近似の構成のものを前後逆に使うことで収差が比較的抑えられる。
【0096】
(第2の実施形態)
次に、
図5を参照して第2の実施形態を説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、光線分離器33を備えない点で相違する。
【0097】
以下、第1の実施形態と異なる点のみを説明し、共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、光源モジュール11から、光線分離器33を介さず、直接ワーク17を平行光で照射している。測定対象物であるワークが大きさが小さいものに限られる場合、若しくは光源モジュール11が幅広いレーザ光により平行光が照射可能なものであれば、光線分離器33はなくても、光線結合器34の効果を発揮しうる。第1の実施形態よりも構成が簡易になる。
【0098】
本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果(1)〜(3)に加え、以下のような効果がある。
(6) 簡易な構成とすることができる。
【0099】
(第3の実施形態)
次に、
図6を参照して第3の実施形態を説明する。第3の実施形態は、第2の実施形態と比較して、複数の光線結合器34a、34bを備えた点で相違する。
【0100】
以下、第1、第2の実施形態と異なる点のみを説明し、共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、第2の実施形態の構成に加え、光線結合器34bを、測定対象物であるワーク17と対物レンズ23との間にも配置した。
【0101】
図6に示すように、ワーク17が比較的大型で、かつ光源モジュール11も大型で、大型のワーク17に十分平行光を照射できる場合は、第2の実施形態と同様に光線分離器33は必要がない。一方、検出モジュール14の撮像素子26の撮像面が十分に大きくない場合は、第2の実施形態のように唯一の光線結合器34では、エッジ画像が撮像面に収まりきらない場合も生じる。
【0102】
このような場合には、本実施形態のように複数の光線結合器34a、34bを備えてもよい。
本実施形態では、アンチピンホールフィルタ25と投影レンズ24の間の光線結合器34aに加え、ワーク17と対物レンズ23の間にも光線結合器34bを配設した。
【0103】
本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果(1)〜(3)に加え、以下のような効果がある。
(7) ワーク17を通過した平行な光束の幅を光線結合器34bにより平行なまま小さくすることで、撮像素子26のみならず、対物レンズ23及び投影レンズ24を小さくすることができる。従って、投影光学系全体を小さくすることが可能となる。
【0104】
なお、本実施形態において構成を以下のように変更してもよい。
○ 光線結合器34なしで、光線結合器34bのみで構成してもよい。
このように構成することで、より簡易な構成で、ワーク17を通過した平行な光束の幅を光線結合器34bにより平行なまま小さくすることで、撮像素子26のみならず、対物レンズ23及び投影レンズ24を小さくすることができる。
【0105】
(第4の実施形態)
次に、
図7を参照して第4の実施形態を説明する。第4の実施形態は、第2、第3の実施形態と比較して、光線結合器34の配置が異なる点で相違する。
【0106】
以下、第2,3の実施形態と異なる点のみを説明し、共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、光線結合器34cを、投影レンズ24と撮像素子26との間に配置した。
【0107】
また、複数の撮像素子26a、26bを一体に備えた。
図7に示すように、光線結合器34cを、投影レンズ24と撮像素子26との間に配置し、投影レンズ24により撮像素子26に投影される光線を、基準面を基準として、上半分に照射された光は下側に、下半分に照射された光は上側に、それぞれ相互に光線を近接させる方向に、光線の方向を変えることなく平行な状態を保ったままでシフトさせる。このとき、光線結合器34cを通過した平行光の中央部は、光線が重なったり、乱れたりするが、そもそもこの部分にはワーク17のエッジ27がない、つまり基本的に光線がない部分であるので、形状測定には影響がない。
【0108】
このようにして、光線結合器34cにより、撮像素子26で結像する直前で光路をシフトすることで、同じワークであればより小さな撮像素子26とすることができる。
なお、光線結合器34cによっても、1つの撮像素子26の撮像面に収まりきらない場合は、複数の検出モジュール14a、14bを用いることもできる。
図7に示すように、2つの検出モジュール14a、14bは、光軸16に対して直交する方向に並べて配置される。このとき、撮像素子26a、26bは光軸16に直交する同一平面上となるようにする。2つの撮像素子26a、26bは、相対位置が変化しないように固定される。このとき2つの撮像素子26a、26bの間には、隙間ができるが、この部分にエッジ像が来ることがないので、形状計測には問題がない。
【0109】
この場合、それぞれの検出モジュール14a、14bによりそれぞれ対向する位置のエッジが検出されることになるが、エッジ間の距離が予め正確に分かっている基準ワークを測定して、その計測結果をキャリブレーションを行うことで、2つの撮像素子26a、26bの相対位置が変化しないので、その後は正確な形状測定ができる。
【0110】
本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果(1)〜(3)に加え、以下のような効果がある。
(8) 投影レンズ24を通過した対向する両端部のエッジ像を撮像素子26a、26bに投影するための光を、光線結合器34cにより結像を損なわないで相互に近接させることができる。そのため、撮像素子26a、26bを小さくすることができる。従って、投影光学系全体を小さくすることが可能となる。
【0111】
(9) また、光線結合器34cは、投影光学系のレンズ鏡筒13の外部にあるため、いわゆる外付けが容易にでき、既成のレンズ鏡筒13に追加したり、ワークの種類により交換することもできる。さらに、検出モジュール14a、14bと一体のアセンブリとして、ユニット化してもよい。
【0112】
(10) 本実施形態では、検出モジュール14を、を備えた2つの検出モジュール14a、14bとして構成した。そのため、2つの2つの撮像素子26a、26bにより大きなイメージエリアを得ることができ、より大型のワークの形状計測もできる。
【0113】
なお、本実施形態において構成を以下のように変更してもよい。
○ 撮像素子26a、26bを基準面から離間した位置に配置してもよい。そうすることで、より大きなワークをより小さな撮像素子で形状を計測することができる。
【0114】
○ さらに、2つの撮像素子を近接させまたは離間させる構成としてもよい。このように変位させても、形状計測の前に、基準ワークによりキャリブレーションすれば、その間隔が未知であってもよい。
【0115】
(第5の実施形態)
次に、
図8、
図9を参照して第5の実施形態を説明する。第5の実施形態は、第4の実施形態と比較して、光線結合器34cの構成が異なる点で相違する。
【0116】
以下、第2〜4の実施形態と異なる点のみを説明し、共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の光線結合器35では、投影レンズ24と撮像素子26との間に配置した光線結合器34cを、くの字形のプリズムではなく、ミラーを用いた構成とした。
【0117】
光線結合器35を構成するミラーは、ガラス、金属などの表面または裏面に金属膜などを形成し、ほぼ光線を100%反射する平面鏡から構成されている。ここでは底面が直角二等辺三角形の三角柱状のガラスブロックの所定の面に反射膜を施したものである。
【0118】
光線結合器35の第1ミラー35aは、直角を挟む等しい二辺(以下「二等辺」という。)側の面をそれぞれ反射面として、直角側の頂点を光源モジュール11側に向けて基準面上に配置される。このとき直角に対向する斜辺(以下「斜辺」という。)は基準面と垂直に配置されている。したがって光軸16方向からの光線を、基準面を基準として、上半分に照射された光は下側に、下半分に照射された光は上側に、それぞれ相互に光線を近接させる方向に、直交方向に反射させるように構成されている。
【0119】
1対の第2ミラー35b、35cは、斜辺側を反射面とし、二等辺のうち、一辺を基準面と直交する方向に、他の一辺を直角の頂点を挟んで検出モジュール14側に延びるように基準面と平行に配置される。したがって、第1ミラー35aにより反射された光線をそれぞれ光軸16と平行で、検出モジュール14側に直交するように反射するように構成されている。なお、第2ミラー35b、35cは検出モジュール14側にシフト可能に構成されている。
【0120】
一対の第3ミラー35d、35eは、二等辺のうち、一辺を基準面と平行かつ、第2ミラー35b、35cの一辺と同一面上になるように配置される。他の一辺は直角の頂点を挟んで基準面側に延びるように基準面と直交して配置される。そして、斜辺側が反射鏡となっている。したがって、第2ミラー35b、35cにより反射された光軸16と平行な光線をそれぞれ光軸16に向かうように光軸16と直交する方向に再び反射するように構成されている。
【0121】
第4ミラー35fは、二等辺側の面をそれぞれ反射面として、直角側の頂点を検出モジュール14側に向けて基準面上に配置される。このとき斜辺は基準面と垂直に配置されている。したがって光軸16と直交する方向からの光線を、基準面を基準として、上から照射された光線を上半分に、下から照射された光は下半分に、それぞれ相互に平行に検出モジュール14側の方向に、直交方向に反射させるように構成されている。
【0122】
以上のように第1〜4ミラー35a〜fが構成されているため、光線結合器35は、全体として基準面と面対称な構成となっている。
次に、このように構成された光線結合器の作用について
図9を参照して説明する。まず、
図9(a)の状態では第2ミラー35b、35cの反射面は、光軸16と直交する方向において、第1ミラー35aのそれぞれの反射面と同一の位置に配置されている。このため、第1ミラー35aで反射した光は、光軸16から比較的離れた光線の場合、その光線は、第2ミラー35b、35cの外側の部分で反射し、光軸16と平行に検出モジュール14側に進み、第3ミラー35d、35eで反射する。この光線は、第1ミラー35aで反射した位置と同じ位置である、第4ミラー35fの光軸16から比較的離れた位置で反射する。そして、撮像素子26の所定位置に結像する。すなわち、元の光路に復帰する。
【0123】
図9(b)は、第2ミラー35b、35cを検出モジュール14側にシフトした状態を示す図である。この場合、比較的光軸16から離れた位置の光線が第1ミラー35aの同じ場所で反射する。そして、第2ミラー35b、35cに向かって光線が進むが、第2ミラー35b、35cを検出モジュール14側にシフトした状態であるので、この光線は第2ミラー35b、35cの比較的光軸16に近いほうの位置で反射する。この光線は光軸16と平行に検出モジュール14側に進み、第3ミラー35d、35eで反射する。この光線は、第2ミラー35aで反射した位置と同じ比較的光軸16に近い位置である、
そして、このため、第4ミラー35fの光軸16から比較的近い位置で反射する。そして、撮像素子26の基準面側にシフトして結像する。
【0124】
この場合、もし投影光学系から光軸16に近い光線が入射すると、第2ミラー35b、35cがシフトしているので、この光軸16に近い光線は、第2ミラー35b、35cでは、反射されない。
【0125】
しかしながら、
図9において示すエッジ像は、光軸16から比較的離れた位置にあるものであり、光軸16に近い部分の光線がカットされても形状測定には影響がない。
また、光線がどの程度基準面側に近接するかは、第2ミラー35b、35cのシフトの程度で変更できることになる。
【0126】
図9(b)に示す図において、第2ミラー35b、35cがシフトすることで、第1ミラー35aと第2ミラー35bとの間の光路長が[l]だけ短くなる。そのため、撮像素子26を第2ミラー35b、35cと連動させて同一の方向に同じ[l]だけシフトする。すなわち、第2ミラー35b、35cと検出モジュール14は物理的に連動してシフトすればよく、簡易な構成で、常に投影レンズ24と撮像素子26の光路長を一定して、シフトに伴うピントのずれを防ぐことができる。
【0127】
本実施形態によれば、上記(1)〜(3)、(8)〜(9)の効果に加え以下のような効果がある。
(11) 本実施形態によれば、光路シフト手段の光学要素の一部をシフトすることで光線結合器35のシフト量が可変にすることができる。
【0128】
(12) 光軸16の幅方向に光路をシフトさせているため、光軸16方向の長さを短くし、装置全体の長さをコンパクトにすることができる。
(13) 反射部材のみで光線結合器を構成しているため、色収差や、入射角度による屈折角の変化などの影響が原理的にない。また、屈折部材を用いるのに比べて、はるかに大きなシフト量を容易に生じさせることができる。
【0129】
(14) 各構成要素が単なる反射鏡であるので、製造が容易で生産コストも低い。
なお、本実施形態において構成を以下のように変更してもよい。
○ 本実施形態では、三角柱形状のガラスブロックとしたが、単なるガラス盤や金属板からなる平面鏡から構成してもよい。
【0130】
○ 直角二等辺三角形のプリズムを用いて、その内部に光線を導入し、斜辺側の内面を全反射による反射板として用いてもよい。
○ 第2ミラー35b、35cのシフトに替えて、第1ミラー35a、若しくは第3ミラー35d、35e、若しくは第4ミラー35fのいずれか、又は、第2ミラーを含むすべてのミラーの中から複数のミラーをシフトするように構成することも可能である。
【0131】
(第6の実施形態)
次に、
図10を参照して第6の実施形態を説明する。
第1〜4の実施形態の光線分離器33、光線結合器34においては、単体の「く」の字形のプリズムにより、光路のシフトを行っている。第6の実施形態は、このような単体の「く」の字形のプリズムでは、十分に光路がシフトできない場合は、
図10に示すように「く」の字形のプリズム341〜344を複数用いて光路のシフトをおこなってもよい。
【0132】
なお、本実施形態の光線結合器341〜344は、基準面の上部と下部は別体のガラスを基準面で貼り合わせた構成となっている。
本実施形態によれば以下のような効果がある。
【0133】
(15) 本実施形態のように構成することで、光路のシフト量を大きくすることができる。
(16) なお、単体の「く」の字形のプリズムの厚みを厚くすることで、同様の効果を得られるが、そのような厚いプリズムは、コストが極めて高いものとなり好ましくない。したがって、本実施形態のように薄いプリズムを多数使用することで製造を容易としてコストを低減できる。
【0134】
(17) また、本実施形態の光線結合器341〜344は、基準面の上部と下部は別体のガラスを基準面で貼り合わせた構成となっているため、通常の市販のガラス板を加工するだけで簡単に、かつ低コストで製造することができる。
【0135】
なお、本実施形態において構成を以下のように変更してもよい。
○ 厚みの厚い「く」の字形のプリズムとしてもよい。コストを度外視すれば、単体のほうが光線の透過率などで有利となる。
【0136】
(第7の実施形態)
次に、
図11を参照して第7の実施形態を説明する。
第1の実施形態において、光路シフト手段として屈折部材を用いた光線分離器33と光線結合器34を備えるが、第7の実施形態においては、反射部材により構成された光線分離器/結合器36を備える点と、その配置の点で相違する。以下、第1〜6の実施形態と相違する点のみを中心に説明し、共通する構成は同一の符号を付しその説明を省略する。
【0137】
図11に示すように、光線分離器/結合器36を備える。本実施形態の光線分離器/結合器36は、屈折部材ではなく反射部材で構成されている。第1のミラー36a,36bは、コリメータレンズ22により平行とされたレーザ光31を基準面から分離する方向に直角に反射する。第2のミラー36c、36dは、第1のミラー36a,36bにより分離する方向に偏向された光線を再び光軸16と平行にするとともに、ワーク17のエッジ27にレーザ光を照射する。なお、ここでは、回折光についての説明は省略し、光路の中心方向のみを図示して説明する。この第1のミラー36a,36b、及び第2のミラー36c、36dが、光線分離器として機能する。
【0138】
第3のミラー36e、36fは、エッジ27部分を通過したレーザ光を再び結合する方向に反射し、第4のミラー36g、36hは、この光線を再び光軸16に平行に偏向するように反射する。この第3のミラー36e、36f、及び第4のミラー36g、36hが光線結合器として機能する。
【0139】
本実施形態によれば以下のような効果がある。
(18) 本実施形態では、すべての光路シフト手段を反射部材で構成しているため、シフト量が大きくでき、色収差の問題も生じにくい。
【0140】
(19) また、光線結合器を構成するミラー36e〜hを、ワーク17と対物レンズ23との間に配設したため、撮像素子26のみならず、対物レンズ23、投影レンズ24の小型が達成でき、装置全体の小型ができる。
【0141】
(20) さらに、レンズ鏡筒13の外部に設置できるので、既存のレンズ鏡筒に外付けも容易である。
(第8の実施形態)
次に、
図12を参照して第8の実施形態を説明する。
【0142】
第3、第7の実施形態において、光路シフト手段としてワーク17と対物レンズ23の間に屈折部材や反射部材を用いた光線結合器を備えるが、第8の実施形態においては、その構成がいずれとも異なる構成である点で相違する。
【0143】
以下、第3、7の実施形態と相違する点のみを中心に説明し、共通する構成は同一の符号を付しその説明を省略する。
図12に示すように、光線分離器を構成するミラー36a〜36dを備えるが、第7の実施形態と共通するため、説明を省略する。
【0144】
本実施形態の光線結合器37は、平行板状の矩形の光学ガラスからなるプリズムである。その端面の一方をワーク17のエッジ27の検出モジュール14側であって、その一辺が光軸16と直交する平面上に位置するように配置する。そして、他の端面が、基準面に近接するように傾けて配置する。
【0145】
なお、ここでは、回折光についての説明は省略し、光路の中心方向のみを説明する。
ワーク17のエッジ27を通過したレーザ光は、板状のプリズム37の端面からプリズム37の内部に進入する。進入したレーザ光は、プリズム37の上側内壁面で全反射し、再度下側内壁面で全反射し、他の端面から射出される。したがって、エッジ27を通過した光線は、その方向を変えず基準面に近接するようにシフトされる。
【0146】
なお、本実施形態では、ワーク17側および検出モジュール14側の端面はその位置を変位可能で、ワーク17や検出モジュール14に合わせて、光線を案内することができる。
【0147】
本実施形態によれば以下のような効果がある。
(21) 板状のプリズムを用いることで、主に内部反射を利用して、光線を任意の位置から別の任意の位置に案内することができる。
【0148】
(第9の実施形態)
次に、
図13を参照して第9の実施形態を説明する。
第9の実施形態において、光線分離器/結合器38のうちミラー39a〜39dは、第7、8の実施形態のミラー36a〜36dと基本的に共通するため、説明を省略する。
【0149】
また、第9の実施形態において、光線結合器を構成するミラー39e〜39hは、第5の実施形態の光線結合器35のうち、第3ミラー35d、35eおよび第4ミラー35fと取付位置が異なる以外は基本的な構成が共通するため、詳細な説明は省略する。
【0150】
本実施形態の光線分離器および光線結合器38は、それぞれ光軸16から離れた光線分離器の外側ミラー39b、39cと光線結合器の外側ミラー39d、39eとが光軸16に平行に近接、離間可能にシフトすることができる。
【0151】
本実施形態によれば以下のような効果がある。
(22) 本実施形態によれば、ワーク17の大きさに合わせて、外側のミラー39c、39d、39g、39hをシフトすることで、多種類のワークに対応することができる。
【0152】
(23) 光線分離器と光線結合器を同一の構成としているため、レンズ鏡筒13や検出モジュール14に与える影響がほとんどない。
なお、本実施形態において構成を以下のように変更してもよい。
【0153】
○ シフト方向は、光軸16に平行な方向に限らず、光軸16に直交する方向にシフトされるようにしてもよい。
(第10の実施形態)
次に、
図14−17を参照して第10の実施形態を説明する。
【0154】
本実施形態は、本発明の形状測定装置をシステム化して工作機械に搭載した一例である。
図14には本発明の形状計測システムの一実施例を、
図15には
図14に示した形状計測システムを搭載した成形研削盤を示す。
【0155】
(形状計測装置全体)
図14に示す形状測定システム5は、ワーク17のエッジ27(
図1参照)を検出する形状計測装置9と、ここにレーザ用の電力を供給する光源用電源12と、形状計測装置9からのデータを処理するパソコン20より構成されている。
【0156】
(形状計測装置)形状計測装置9は、ベース10の上に設けられた対象物にレーザ光を発射する光源モジュール11と、このレーザ光を投影するための光学系を備えたレンズ鏡筒13と、投影された画像を検出する検出モジュール14が、共通な光軸16に沿って、この順に配置されている。
【0157】
(ワーク)本実施形態のエッジ検出の対象物であるワーク17は、スローアウェイチップを例に挙げている。このスローアウェイチップは、極小径のボールエンドミルやドリルを加工するための旋盤などの切削工具の先端につける交換用の刃先で、ここでは砥石15により正確な外径に形成される。ワーク支持装置2(
図15)のチャックで固定されたスローアウェイチップは、光軸16を中心に回転可能に支持されている。本実施形態の加工対象物としてワーク17は、ワークテーブル4のワーク支持装置2で砥石15に対してX軸(前後)方向、Y軸(左右)方向、Z軸(上下)方向のうち必要な範囲で移動・回転可能となっている。もちろんワーク17は、スローアウェイチップに限るものではなく、各種ゲージ等はもちろん、ボールエンドミルを含む各種ミルなどの刃物など工具、ジグをはじめ、目的・材質を問わず正確な輪郭形状を必要とするものが挙げられる。
【0158】
(砥石)本実施形態の工作機械の工具の一例として砥石15を例に挙げている。砥石15は、ワーク17の軸心に平行な軸となるように配置されたスピンドル18に装着された円盤状の砥石で、ワーク17に対して接離可能に図示しない砥石支持手段で支持されており、X軸(前後)方向、Y軸(左右)方向、Z軸(上下)方向のうち必要な範囲で移動・回転可能に支持される。本実施形態の円盤状の砥石15は工具の一例であって、ボール状など各種の形状の砥石はもちろん、各種切削工具、研削工具、研磨工具等が挙げられ、その支持方法も目的に応じて各種の形態を取り得る。
【0159】
(機器の接続)
図14に示すように、光源用電源12は、光源モジュール11に電気的に接続され、この光源モジュール11に電力を供給している。
また、
図16に示すように、光源モジュール11、検出モジュール14は、パソコン20にデータ送受信可能に接続されている。また、ワーク支持装置2、および砥石支持装置(不図示)は、NC制御装置8を介してパソコン20に接続されている。そしてパソコン20は、検出モジュール14からの画像信号を受信する。また、パソコン20は、NC制御装置8を介して、ワーク支持装置2および工具支持装置からのフィードバック信号を受信するとともに、それらに制御信号を送信して研削加工を制御する。
【0160】
(成形研削盤)
図15は、成形研削盤40の全体を示す。いわゆる倣い研削盤で、ワークの形状を確認しながらその形状を形成していく工作機械である。形状測定システム5は、その光軸16(
図1参照)を、成形研削盤40のY軸方向に平行に採った場合を示している。もちろんいずれの方向にセットするかは、工具やワークにより適当な姿勢を選択すればよい。本実施形態では、上述のワーク17の中心を原点に、形状測定システム5の座標系に対して、成形研削盤40のX軸、Y軸およびZ軸方向のNC制御指令を用いて一致させ共通の座標系を用いる。また、実際のワーク17の動きと、エッジ検出のデータ、NC制御のデータの一連の設計・解析・製造データが相互に共有・互換・活用しやすいようになっている。同様に、CAD(Computer Aided Design)/CAE(Computer Aided Engineering)/CAM(Computer Aided Manufacturing)の一連の設計・解析・製造データが相互に共有・互換・活用しやすいようになっている。そのため、本実施形態では、収差を補正しつつ、実際のワークの形状を測定しながら正確かつ自動的なNC加工が可能になっている。
【0161】
(コンピュータ)
図16に示すように、撮像素子26からの信号を演算処理するコンピュータであるパソコン20は、CPU20a、RAM20b、ROM20c、外部記憶装置としてのHDD20d、外部インターフェイス20eを備える。HDD20dには、エッジ判定プログラム、エッジ表示プログラム、収差修正処理プログラムが記憶されており、パソコン20をエッジ判定、エッジ幅測定(エッジ幅測定手段)エッジ表示、収差処理の各制御装置として機能させている。このパソコン20は、外部インターフェイス20eを介して、表示装置20fとしての例えばLCD(液晶ディスプレー)と、入力装置20gとしての例えばキーボード、マウスが接続されている。表示装置20fは、パソコン20にインストールされた上述の各プログラムを実行するためのモニター画面であるとともに、パソコン20により画像信号として処理されたエッジ画像を表示することができる。
【0162】
(NC制御装置、CAD用コンピュータ)また、パソコン20は、成形研削盤40のNC制御装置8、CAD用コンピュータ7にもそれぞれ接続されている。NC制御装置8は、ワーク17と砥石15の相対位置をフィードバックしながら、入力された設計データに基づき制御信号をワーク支持装置2、砥石支持装置(図示せず)に送信して研削加工を行う。CAD用コンピュータ7は、ワーク17の設計データが記憶されており、このデータをNC制御装置に送信して、CADデータに基づくNC制御をすることができる。
【0163】
(形状測定の手順)次に、
図17に示すフローチャートに沿って本実施形態の成形研削盤40における、形状測定の手順およびその後のパソコン20の処理を説明する。
まず、予めパソコン20を立ち上げて、形状測定プログラムを起動する。ワーク17をワーク支持装置に装着する(S1)。このとき、ワーク17の中心とNC制御の座標軸の原点が一致するようにする。そして、距離を測定したい対向する一対のエッジを対物レンズ23の前側焦点27´の平行光の範囲内にくるようにワーク支持装置により移動させる。
【0164】
続いて、入力装置20gから光源用電源12をコントロールし適当な出力になるように調整して光源モジュール11からレーザ光を射出する。次に、表示装置20fを見ながら、距離を測定すべき対向する二つのエッジ27画面内に表示されるかを確認する。投影倍率が可変の場合には、倍率が最も大きくなるように調節する。一方、第5、第7〜9の実施形態のような光線結合器35〜38が可変のものは、それぞれの光学要素をシフトさせて画面内に二つのエッジの距離が測定可能にする。いずれも調節可能な場合は、両者を調節してもっとも倍率が大きくなるように調節する。なお、三角形や四角形のスローアウェイチップの場合は、二つのエッジ間の距離を測って、その形状を測定するため、ワーク17を回転させたときでも十分に測定の余裕がある倍率、シフト量にする。
【0165】
その後、光量調整手段であるNDフィルタ19によりいわゆる白飛びや黒潰れにならないように光量を微調整する(S2)。また、アンチピンホールフィルタ25のエッジが明確になるように軸方向の位置を調整する。検出モジュール14の位置を軸方向に調整し画像のピントの微調整をする(S3)。また、表示装置20fを見ながら、必要があれば、エッジ画像が帯状の2本の高輝度の部分に挟まれた1本の低輝度の部分となるようにワーク17、光量、アンチピンホールフィルタ25、検出モジュール14の調整を繰り返す(S4:NO)。
【0166】
調整ができれば、表示装置20fに表示されたワーク17は、エッジ部分が帯状の2本の高輝度の部分に挟まれた1本の低輝度の部分となって表示される(S4:YES)。
パソコン20は、エッジ判定プログラムによりエッジ判定手段として、画像処理により信号強度を判定し、帯状の2本の高輝度の部分に挟まれた低輝度の部分をエッジと判定する(S5)。具体的には、たとえば、高輝度のドットを選択し、ノイズ処理をした後、連続した帯状の領域を抽出する。さらに、この帯状の部分から低輝度の連続した部分を抽出する。
【0167】
エッジが検出されると、パソコン20は、測定対象物の両端部のエッジの測定面上の距離から当該測定対象物の幅を測定するエッジ幅測定の手順を実行する。エッジ幅測定の手順は、撮像素子26からの信号により検出された測定対象物の両端部のエッジの測定面上の距離に、光線結合器34〜38等によりシフトされた距離を加算して、実際のエッジ間の距離を計算する。
【0168】
光軸16を中心にワーク17の角度を変えて、他のエッジ間の距離を次々と測定する。回転させながらこれらのデータをプロットして360°測定し終わったら、実際の外形形状を演算して測定結果を出す。
【0169】
表示装置20fでは、この検出されたエッジの形状を線図としたエッジ画像で表示することもできる。なお、アンチピンホールフィルタ25を可動式にして光路から待避するように構成すれば、従来の投影機と同様の画像を表示することも可能である。
【0170】
なお、パソコン20は、検出されたエッジを表示装置20fに座標で表示することもできる。もちろん表示装置20fに表示されるワーク17の拡大された画像と比較しつつこの座標値を見たり、座標値によりワーク17の見たい部分を表示装置で表示することもできる。
【0171】
(キャリブレーション)
パソコン20は、シフトされた距離を補正するに当たり、予め正確な形状が判明している基準ワークを用い、キャリブレーションを行う。具体的には、基準ワークを測定し、演算して形状を求める。この結果を基準ワークと比較してその差を求める。このときの差を固定誤差として、これをゼロとするような補正値として記憶しておく。
【0172】
(マニュアル操作)また、パソコン20は、ワーク17を対象物として撮像素子26から入力された信号に基づきワークのエッジを検出するとともに、エッジデータに基づきエッジ画像を表示装置20fに表示する。このとき、CADにより設計した設計データに基づいてエッジ27を表示装置20fでエッジ画像と重畳して表示させることもできる。このとき成形研削盤40のオペレータは、この表示された設計画像を参照しつつ、同じ表示装置20fに表示されたエッジ画像に基づいてマニュアル操作で研削加工をすることができる。そのため、NC制御ではできないような高いスキルの技術を発揮することもできる。
【0173】
(NC自動制御)また、パソコン20は、CADを用いて設計されたワーク17の設計データを入力して、NC制御をおこなう。また、撮像素子26から入力された信号に基づきワーク17のエッジをエッジデータとして検出する。この設計データとエッジデータは同一の座標系を共有する。この座標系を用いて、現在形状測定システム5によりエッジが検出されている位置と同位置・同角度の設計データから、同位置・同角度で投影された計算上のエッジを演算して抽出する。そして、設計上のエッジの位置を表示装置20fで表示しつつ、実際に検出したエッジ画像を表示する。一方、コンピュータ内部でも、入力された対象物の設計データに基づき、逐次現状のワークの形状を測定して比較し、その差分を演算する(S6)。この差分をフィードバックすることで成形研削盤40によりワーク17の研削加工をNC制御により自動的に行う(S7)。この差分があれば、加工後のワーク17の形状を逐次測定し、加工を繰り返す(S8:NO)。そして、CADデータと抽出されたエッジの形状に差分がなくなれば加工は完了する(S8:YES)。
【0174】
本実施形態によれば以下のような効果がある。
(24) 形状計測装置9により計測されたエッジ27間の距離から、これをプロットすることで、正確な輪郭形状が測定できる。
【0175】
(25) さらに、測定した形状に基づいてこれを表示して、加工時に確認ができる。
(26) さらに、形状をデータ化してフィードバックすることで、NCデータやCADデータと比較して、自動で精度の高いNC加工が可能となる。
【0176】
(27) その結果、形状計測装置を搭載した工作機械の精度を飛躍的に高めることができる。
(第11の実施形態)
第1−10の実施形態実施形では、図示を省略するが、アンチピンホール法を前提とした発明であるが、従来技術として述べた0次光で測定をするアンチピンホール法ではない従来の形状測定装置に適用してもよい。その精度や、0次光のカットによる背景光の消失など、本発明の実施はアンチピンホール法が望ましいものといえるが、その技術的思想は、アンチピンホール法以外の方法への適用を妨げるものではない。
【0177】
具体的には、第1−10の実施形態から、アンチピンホールフィルタ25を除いた構成で実施できる。
本実施形態によれば以下のような効果がある。
【0178】
(28) 本実施形態は、光路シフト手段により、光源モジュール11の大きさ、ワーク17の大きさ、レンズ鏡筒13の大きさ、検出モジュール14の大きさなどに合わせることができる。つまり光線分離器や光線結合器など光路シフト手段により、数値処理可能なエッジ画像を撮像しつつ、測定する工具の両端のエッジの位置関係を正確に測定ことで全体の外形形状を測定することができる。アンチピンホール方と比較すると、エッジ検出の精度自体や、背景光が反射・屈折してノイズとなる点では不利であるが、この手の形状測定装置において、大きなワークを正確に形状を測定できる点では欠点を超えたメリットがある。
【0179】
以上、本発明を1から11の実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求項を逸脱しない範囲でその構成を付加し削除し変更して実施できる。