特許第5656265号(P5656265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656265
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】プロジェクタおよびその照明装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20141225BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   G03B21/14 A
   H04N5/74 H
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-551640(P2011-551640)
(86)(22)【出願日】2010年1月29日
(86)【国際出願番号】JP2010051239
(87)【国際公開番号】WO2011092843
(87)【国際公開日】20110804
【審査請求日】2012年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】300016765
【氏名又は名称】NECディスプレイソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 厚志
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 基恭
(72)【発明者】
【氏名】大坂 明弘
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 裕之
(72)【発明者】
【氏名】松原 正晃
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−219020(JP,A)
【文献】 特開2010−145638(JP,A)
【文献】 特開2010−225392(JP,A)
【文献】 特開2010−224493(JP,A)
【文献】 特開平03−215239(JP,A)
【文献】 特開平05−100174(JP,A)
【文献】 特開2004−341105(JP,A)
【文献】 特開2005−150041(JP,A)
【文献】 特開2004−241142(JP,A)
【文献】 特開2007−178727(JP,A)
【文献】 特開2005−309286(JP,A)
【文献】 特開2000−111941(JP,A)
【文献】 特開2009−277516(JP,A)
【文献】 特開2008−052070(JP,A)
【文献】 特表2008−538145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00−21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起により発生する蛍光の色が異なる複数の蛍光体をそれぞれ異なる領域に配置した蛍光部と、
前記蛍光部におけるレーザ光が当たる位置を変化させながら前記蛍光部の各色の領域にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
前記蛍光体の各領域からの蛍光を表示パネルに統合する光束統合部とを有し、
前記レーザ光照射手段は、レーザ光を発生させるレーザ光源と、該レーザ光の走査を行うことにより、前記蛍光部の各色の領域にレーザ光を照射する走査手段とを有し、
前記走査手段は、前記レーザ光を反射する光学部材と、該光学部材を駆動する駆動手段を有し、該駆動手段が該光学部材を駆動することにより前記走査を行い、
前記光学部材は、
上面が前記レーザ光を反射する第1の領域、下面が前記レーザを反射する第2の領域、および前記レーザ光を透過する第3の領域を有し、回転することで前記レーザ光が当たる領域が変化するカラーホイールと、
該カラーホイールの下部に配置され、該カラーホイールの前記第3の領域を透過したレーザ光を反射するミラーと、を含み、
前記駆動手段は、前記カラーホイールを回転させて、前記カラーホイールにまたは該カラーホイールを透過して前記ミラーに斜め方向から入射する前記レーザ光の反射方向を変化させることで前記走査を行う照明装置。
【請求項2】
励起により発生する蛍光の色が異なる複数の蛍光体をそれぞれ異なる領域に配置した蛍光部と、
前記蛍光部におけるレーザ光が当たる位置を変化させながら前記蛍光部の各色の領域にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
前記蛍光体の各領域からの蛍光を表示パネルに統合する光束統合部とを有し、
前記レーザ光照射手段は、レーザ光を発生させるレーザ光源と、該レーザ光の走査を行うことにより、前記蛍光部の各色の領域にレーザ光を照射する走査手段とを有し、
前記蛍光部は、各色の前記蛍光体の領域であるセルがマトリクス状に配置された蛍光体マトリクスを有し、
前記レーザ光照射手段は、前記レーザ光が前記蛍光体マトリクスの各セルを順次通るように前記走査を行い、
前記光束統合部は、
前記蛍光体マトリクスの各セルに対応した複数のレンズ素子が、該レンズ素子と対応するセルに近接するようにマトリクス状に配置された第1のフライアイレンズと、前記第1のフライアイレンズの各レンズ素子に対応する複数のレンズ素子が、対応する前記第1のフライアイレンズのレンズ素子からの蛍光が入射する位置となるようにマトリクス状に配置された第2のフライアイレンズとを有し、
前記蛍光体マトリクスの各セルから照射された蛍光を前記第1のフライアイレンズのレンズ素子で集光し、前記第2のフライアイレンズを用いて前記表示パネルに統合する照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン等に画像を投射するプロジェクタおよびその照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタやDMD(Digital Micromirror Device)プロジェクタのようなスクリーンに画像を投射するプロジェクタの光源としてLED(Light Emitting Diode)を用いる技術が注目されている(特許文献1参照)。
【0003】
LEDは寿命が長くまた信頼性が高いことに起因して、LEDを光源とするプロジェクタには長寿命で高信頼という利点がある。また、LEDは高速で点滅させることが可能なので、画像の色再現範囲を広くとることができる。
【0004】
しかしながら、プロジェクタ用の光源としてはLEDの光は一般に輝度が低いので、LEDを光源としてプロジェクタに十分な輝度の映像を得るのは容易ではない。光源からの光を表示パネルがどれだけ投射光として利用できるかはエテンデューにより制限される。つまり、光源の発光面積と放射角との積の値を、表示パネルの入射面の面積と照明光学系のFナンバーで決まる取り込み角との積の値以下にしなければ、光源からの光を効率良く投射光として利用できない。
【0005】
LEDによる光源では発光面積を大きくすれば光量を上げることはできるが、発光面積が大きくなれば光源のエテンデューが大きくなってしまう。エテンデューの制限からプロジェクタの光源としては発光面積を大きくせず光量を上げることが望まれるが、LEDによる光源で発光面積を大きくせずに光量を上げるのは困難である。
【0006】
これに対して高輝度の蛍光を得る方法として、レーザ光を蛍光体に照射して励起によって蛍光を得るものがある。この方法では蛍光体の物質を適切に選択することによりLEDよりも高輝度の蛍光を効率良く得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−186110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、レーザは空間的な光強度のピークが高いという特性を有するので、蛍光体のレーザが当たる部分にダメージが生じやすい。そのため、レーザを蛍光体に照射して励起によって蛍光を発生させる構成ではレーザの照射による蛍光体へのダメージが問題となる。蛍光体へのダメージによりプロジェクタの性能が劣化するため、この種のプロジェクタでは長寿命化が困難である。
【0009】
本発明の目的は、高輝度かつ長寿命のプロジェクタおよびその照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の照明装置は、
励起により発生する蛍光の色が異なる複数の蛍光体をそれぞれ異なる領域に配置した蛍光部と、
前記蛍光部におけるレーザ光が当たる位置を変化させながら前記蛍光部の各色の領域にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
前記蛍光体の各領域からの蛍光を表示パネルに統合する光束統合部と、
を有する。
【0011】
本発明のプロジェクタは、
励起により発生する蛍光の色が異なる複数の蛍光体をそれぞれ異なる領域に配置した蛍光部と、
レーザ光が当たる位置を変化させながら前記蛍光部の各色の領域にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
前記蛍光体の各領域からの蛍光を表示パネルに統合する光束統合部と、
前記光束統合部で統合された蛍光により画像を表示する画像表示部と、
を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、照射位置を変化させながら蛍光体に照射したレーザ光により励起した蛍光を画像の投射に用いるので、プロジェクタおよびその照明装置の高輝度化および長寿命化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態によるプロジェクタ全体の概略構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態によるプロジェクタのレーザ光照射部11、蛍光部12、光束統合部13を詳細に説明するための模式図である。
図3】蛍光体マトリクス17のセル配置とラスタスキャンの様子を示す図である。
図4】他の構成の蛍光体マトリクス17を示す図である。
図5】蛍光体マトリクス17と一体化した第1のレンズアレイ23を示す図である。
図6】第2の実施形態によるプロジェクタのレーザ光照射部11、蛍光部12、光束統合部13を詳細に説明するための模式図である。
図7】4色の蛍光体のセルを配置した透過型の蛍光体マトリクスを用いた変形例について説明するための模式図である。
図8】蛍光部材をライトトンネルの端面に近接して配置した変形例について説明するための模式図である。
図9】蛍光部材81における色の塗り分けを示す図である。
図10】3つの青紫色レーザダイオードを時分割で点灯させる変形例について説明するための図である。
図11】各青紫色レーザダイオードの時分割での点灯と、表示パネル18に入射される蛍光の変化を示すタイムチャートである。
図12】回転プリズムによってレーザ光の走査を行う変形例について説明するための模式図である。
図13図12に示した変形例による走査の様子を示す図である。
図14】回転プリズムによってレーザ光の走査を行う他の変形例について説明するための模式図である。
図15図14に示した変形例による走査の様子を示す図である。
図16】アクチュエータによってレーザ光の走査を行う変形例について説明するための模式図である。
図17】カラーホイールの回転によってレーザ光の走査を行う変形例について説明するための模式図である。
図18】カラーホイールの形状について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態によるプロジェクタ全体の概略構成を示すブロック図である。図1を参照すると、プロジェクタ10は、レーザ光照射部11、蛍光部12、光束統合部13、および画像生成部14を有している。レーザ光照射部11は光源15と走査部16を有している。
【0016】
蛍光部12は、レーザ光を吸収し、励起によって赤色、緑色、または青色の光を発する蛍光体を塗布したマイクロレンズからなるセルをマトリクス状に配列した蛍光体マトリクス17を備えている。蛍光体マトリクス17における各色のセルは、後述するレーザ光のラスタスキャンにより各色の蛍光が必要な輝度で得られるように所定順序で繰り返し配置される。本実施形態の蛍光体マトリクス17は、レーザ光の進行方向と同じ方向(透過方向)に蛍光を照射する透過型の蛍光体マトリクス17である。蛍光部12に照射されるレーザ光の波長は、その蛍光部から発せられる蛍光の波長よりも短い波長であればよい。
【0017】
レーザ光照射部11は、レーザ光の走査ビームが当たる位置が、蛍光部12に備えられた蛍光体マトリクス17の各マイクロレンズを順次通るようにラスタスキャンする。これにより蛍光部12から赤色、緑色、青色の蛍光が時分割で周期的に照射される。蛍光部12から照射された蛍光は光束統合部13に入射される。
【0018】
光束統合部13は、蛍光部12からの蛍光を適切なサイズの矩形に整形し、さらに輝度分布を均一にして画像生成部14に入射する。この光束統合部13をインテグレータと呼んでもよい。
【0019】
また、レーザ光照射部11、蛍光部12、および光束統合部13を合わせて照明装置と呼んでもよい。
【0020】
画像生成部14は、各色の蛍光の入射に同期して、表示すべき各色の画像に応じて各画素の状態を変化させる表示パネル18を備えている。画像生成部14は、光束統合部13で整形された蛍光を表示パネル18に透過させることにより、あるいは蛍光を表示パネル18で反射することにより画像を生成し、不図示のスクリーンに投射する。ここでは表示パネル18は一例として透過型の液晶パネルであるものとする。画像生成部14は、蛍光の入射に同期して液晶パネルの各画素の状態を高速で変化させる。
【0021】
図2は、第1の実施形態によるプロジェクタのレーザ光照射部11、蛍光部12、光束統合部13を詳細に説明するための模式図である。図2における青紫色レーザダイオード21と二次元MEMS22が図1における光源15と走査部16にそれぞれ対応する。第1のレンズアレイ23、第2のレンズアレイ24、およびその後段のレンズ群が光束統合部13に相当する。
【0022】
青紫色レーザダイオード(LD)21はレーザビームを送出する。ここではレーザビームの波長は一例として405nmであるとする。ここで、蛍光部12に照射されるレーザ光の波長は、その蛍光部から発せられる蛍光の波長よりも短い波長であればよく、例えば、450nmの青色であってもよい。青紫色レーザダイオード21からのビームは二次元MEMS22に入射する。青紫色レーザダイオード21は、蛍光部12の蛍光体マトリクス17から所望の輝度の蛍光が得られるように、パルス発振のデューティ比が制御されてもよい。
【0023】
二次元MEMS22は、例えば静電力などでミラーを駆動して光の反射方向を変化させることにより反射光で二次元的な走査を行うMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーであり、青紫色レーザダイオード21からのビームを反射した走査ビームによって蛍光体マトリクス17のマイクロレンズをラスタスキャンする。
【0024】
図3は、蛍光体マトリクス17のセル配置とラスタスキャンの様子を示す図である。図3の例では、水平方向の長さが16mmで垂直方向の長さが12mmの蛍光体マトリクス17に8×6のセル31が配置されている。各セル31には、赤色(R)、緑色(G)、または青色(B)の蛍光体32が塗布されている。赤色の蛍光体32(R)は、波長405nmの青紫色レーザの入射により、波長630nmの赤色の蛍光を照射する。緑色の蛍光体32(G)は、波長405nmの青紫色レーザの入射により、波長530nmの緑色の蛍光を照射する。青色の蛍光体32(B)は、波長405nmの青紫色レーザの入射により、波長445nmの青色の蛍光を照射する。
【0025】
各色のセル31は、ラスタスキャンで走査ビーム33が赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、緑色(G)の順番に通るように配列されている。走査ビーム33は一例として0.5〜1.0Φmm程度である。図中の矢印は走査ビーム33で蛍光体マトリクス17をラスタスキャンしている様子を示している。
【0026】
第1のレンズアレイ23は、蛍光体マトリクス17の各セル31に対応する複数のレンズ素子がマトリクス状に配置されたフライアイレンズであり、各レンズ素子が対応する蛍光体マトリクス17のセル31に正対するように、蛍光体マトリクス17に近接して配置される。
【0027】
第2のレンズアレイ24は、第1のレンズアレイ23の各レンズ素子に対応する複数のレンズ素子がマトリクス状に配置されたフライアイレンズであり、第1のレンズアレイ23と所定距離の位置に配置される。
【0028】
より詳細には、第1のレンズアレイ23および第2のレンズアレイ24は、蛍光体マトリクス17の各セル31の蛍光体32により第1のレンズアレイ23の各レンズ素子に生じる瞳が、第2のレンズアレイ24およびその後段のレンズ群により表示パネル18に結像するように設定される。
【0029】
この構成により、蛍光体マトリクス17の各セルから照射された蛍光が第1のレンズアレイ23の各レンズ素子で集光され、第2のレンズアレイ24の各レンズ素子に入射する。第2のレンズアレイ24の各レンズ素子に入射した蛍光は、第2のレンズアレイとその後段のレンズ群によりインテグレート(統合)され、表示パネル18に入射する。
【0030】
なお、第1のレンズアレイ23の各レンズ素子は、対応する蛍光体マトリクス17のセルからの蛍光を効率良くかつ瞳内をできるだけ均一に照明するように集光し、集光した光をできるだけ対応する第2のレンズアレイ24のレンズ素子のみに効率良く照射することが好ましい。これを実現するために第1のレンズアレイ23の各レンズ素子は蛍光体マトリクス17側が球面で第2のレンズアレイ24側が非球面となっている。ただし、これは公知の構造なので詳細な説明は省略する。
【0031】
以上説明したように本実施形態によれば、レーザ光照射部11が蛍光体マトリクス17のレーザ光の当たる位置が変化するようにラスタスキャンを行うので、蛍光体32へのダメージを緩和しつつ高輝度の蛍光を得ることができ、照明装置およびそれを用いたプロジェクタ10の長寿命化が図れる。
【0032】
また、本実施形態によれば、所望の輝度の蛍光が得られるように青紫色レーザダイオード21のパルス発振のデューティ比を制御することにより、適切な輝度の蛍光を得られる範囲で蛍光体32へのダメージをできるだけ抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、蛍光体マトリクス17に近接した第1のレンズアレイ23と第2のレンズアレイ24および後段のレンズ群を用いて、蛍光体マトリクス17の各セル31からの蛍光をインテグレートするので、蛍光部12と光束統合部13を小型化できる。
【0034】
また、二次元MEMS22による高速なラスタスキャンにより高速で蛍光の色を切り替えることができるので、カラーホイールを用いたプロジェクタで生じるようなカラーブレーキングは低減される。
【0035】
また、二次元MEMS22による高速なラスタスキャンにより高速変調ができるので、蛍光制御の自由度が高く、高輝度化が容易である。
【0036】
なお、本実施形態では、図3に示したように蛍光体マトリクス17において蛍光体32の色が赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、緑色(G)を繰り返すようにセル31を配置する例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ラスタスキャンの走査速度と必要される輝度とに応じてセル31の配置を決めてもよい。例えば、図4に示すように、蛍光体32の色が緑色(G)、赤色(R)、赤色(R)、青色(B)、青色(B)、赤色(R)、赤色(R)、緑色(G)を繰り返すようにセル31を配置してもよい。
【0037】
また、本実施形態では、図2に示したように、蛍光体マトリクス17に近接して第1のレンズアレイ23を配置する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。他の例として、第1のレンズアレイ23の各レンズ素子の入射面側に各色の蛍光体32を直接転写することにより、蛍光体マトリクス17を第1のレンズアレイ23と一体的に構成してもよい。これにより蛍光部12と光束統合部13が更に小型化できる。
【0038】
さらに、図5に示すように、第1のレンズアレイ23の各レンズ素子の中央部分にのみ各色の蛍光体32を配置してもよい。これにより、第1のレンズアレイ23は、蛍光体32から発せられる光を全て取り込むことができる。このとき、蛍光体があるところにだけレーザ光が離散的に照射されるように、青紫色レーザダイオード21の発光タイミングを制御することにより、不必要な発光がなされなくなるので、消費電力を抑えることができる。第1のレンズアレイ23の各レンズ素子において、蛍光体32が配置されてない箇所を光を透過しない材料の遮蔽板で覆ってもよい。
【0039】
(第2の実施形態)
第2の実施形態によるプロジェクタ全体の概略構成は図1に示した第1の実施形態のものと同じである。第2の実施形態は、レーザ光のビームを光変調素子によって走査する点と、各色の蛍光をライトトンネルによってインテグレートする点で第1の実施形態と異なる。
【0040】
図6は、第2の実施形態によるプロジェクタのレーザ光照射部11、蛍光部12、光束統合部13を詳細に説明するための模式図である。図6における青紫色レーザダイオード21と光変調素子61が図1における光源15と走査部16にそれぞれ対応する。ライトトンネル63およびその前後のレンズ群が光束統合部13に相当する。
【0041】
青紫色レーザダイオード21および表示パネル18は図1に示した第1の実施形態のものと同じである。
【0042】
光変調素子61は、青紫色レーザダイオード21からのレーザ光の進行方向を変化させることにより、レーザ光で蛍光体マトリクス62をラスタスキャンする。具体例として光変調素子61は電圧が印加されると屈折率をアナログ的に変調し、レーザ光の進行方向を変化させる音響光学素子である。
【0043】
蛍光体マトリクス62は、第1の実施形態による蛍光体マトリクス17とは異なり、反射型の蛍光体マトリクスである。蛍光体マトリクス62は、レーザ光を吸収し、励起によって赤色、緑色、または青色の光を発する蛍光体が塗布され、蛍光を反射するセルをマトリクス状に配列した構成である。蛍光体マトリクス62における各色のセルは、後述するレーザ光のラスタスキャンにより各色の蛍光が必要な輝度で得られるように所定順序で繰り返し配置される。蛍光体マトリクス62の各セルからの蛍光はレンズ群を介してライトトンネル63に入射する。
【0044】
ライトトンネル63は多角柱の形状を有し、蛍光体マトリクス62からの蛍光を内面で繰り返し反射することにより均一に整形する光学素子である。ここでライトトンネルには、中空の内側面がミラーで構成されたものと、中実の透明多角柱で構成され全反射を利用するものとが含まれる。後者はロッドレンズとも呼ばれる。
【0045】
図6に示したような構成により、蛍光体マトリクス62の各セルからの各色の蛍光は、ライトトンネル63でその輝度分布を均一化され、各色毎に時系列で表示パネル18に入射される。
【0046】
以上説明したように本実施形態によれば、レーザ光照射部11が蛍光体マトリクス62のレーザ光の当たる位置が変化するようにラスタスキャンを行うので、蛍光体32へのダメージを緩和しつつ高輝度の蛍光を得ることができ、照明装置およびそれを用いたプロジェクタ10の長寿命化が図れる。
【0047】
また、本実施形態によれば、レーザ光を直接アナログ変調する小型の光変調素子で走査部16が構成されているので、走査部16の小型化により照明装置およびプロジェクタの小型化が可能である。
【0048】
また、本実施形態によれば、高速変調が可能な光変調素子で走査部16が構成されているので、カラーブレーキングを低減することができる。また蛍光制御の自由度が高いため高輝度化が容易である。
【0049】
なお、本実施形態では、蛍光体マトリクス62に赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の蛍光体のセルを配置する例を示したが、蛍光体マトリクスに配置される蛍光体は3色に限定されず、色の数は幾つであってもよい。また、本実施形態では反射型の蛍光体マトリクス62を用いたが、第1の実施形態と同様に透過型の蛍光体マトリクス17を用いることもできる。図7には、本実施形態に適用可能な蛍光体マトリクスとして、赤色(R)、黄色(Y)、緑色(G)、青色(B)の4色の蛍光体のセルを配置した透過型の蛍光体マトリクス71を用いた構成が例示されている。多色の蛍光体を配した蛍光体マトリクス71を小型の光変調素子61で直接、高速でアナログ変調するので、小型構成の装置で色彩豊かな画像を表示することが可能である。
【0050】
また、本実施形態では、各色のセルを配列した蛍光体マトリクス62の蛍光をレンズ群を介してライトトンネルに入射する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
他の例として、色毎に領域を分けて蛍光体を塗布した部材(蛍光部材)をロッドレンズの端面に空気層を介して近接して配置し、蛍光部材からの蛍光をロッドレンズに直接入射することにしてもよい。これにより蛍光体を塗布した部材とロッドレンズの間にレンズ群が不要となる。さらにはロッドレンズの端面に領域を分けて各色の蛍光体を塗布しておくことにしてもよい。これにより蛍光部12と光束統合部13が一体化により更に小型化される。
【0052】
図8は、蛍光部材をロッドレンズの端面に近接して配置した変形例について説明するための模式図である。図8における蛍光部材81が図1における蛍光部12に相当する。図9は蛍光部材81における色の塗り分けを示す図である。蛍光部材81は上中下3段の領域が上から赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の蛍光体で塗り分けられている。
【0053】
レーザ光照射部11は走査レーザが蛍光部材81の各色の領域を順次通るように走査を行う。ここでの走査は例えば上下に往復するような走査である。走査レーザによる励起で各色の蛍光体から照射される蛍光がロッドレンズ82で整形され、レンズ群を介して表示パネル18に結像する。
【0054】
また、本実施形態では、1つの青紫色レーザダイオード21からのレーザ光が蛍光体マトリクス62の各色のセルを通るように走査を行う例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。他の例として、レーザ光照射部11は光源15として時分割で順番に点灯する3つの青紫色レーザダイオード21を有し、それぞれを各色に対応させてもよい。この構成によれば、各色の蛍光体を励起するレーザ光の波長を色毎に適切な値に設定できるので、各色の蛍光をより効率良く発生させることができる。また、プロジェクタを使用している時間に対する各青紫色レーザダイオード21の点灯時間を短くできるので、青紫色レーザダイオード21の長寿命化が図れる。
【0055】
図10は、3つの青紫色レーザダイオードを時分割で点灯させる変形例について説明するための図である。本変形例の蛍光部材81は図9に示したものと同じである。図11は、各青紫色レーザダイオードの時分割での点灯と、表示パネル18に入射される蛍光の変化を示すタイムチャートである。
【0056】
図10を参照すると、本変形例では、3つの青紫色レーザダイオードLD1〜3があり、それぞれが発生させたレーザ光は光ファイバ101〜103で導光される。青紫色レーザダイオードLD1〜3は図11に示すように時分割で点灯する。
【0057】
青紫色レーザダイオードLD1〜LD3の時分割による点灯で蛍光部材81の各色の蛍光体には時分割でレーザ光が照射されるので、蛍光部材81からライトトンネル63に入射する蛍光の色も赤色(R)、緑色(G)、青色(B)と時分割で変化する。
【0058】
図10に示した変形例において更に走査部16がそれぞれのレーザ光を各色の領域内で走査することにしてもよい。その例として、導光部材である光ファイバ101〜103の送出部に、送出部を運動させる不図示のアクチュエータが備えられている。アクチュエータが送出部を運動させることにより、蛍光部材81における各レーザ光の当たる位置が各レーザ光に対応する色の領域内を移動する。
【0059】
なお、本変形例では、3つの青紫色レーザダイオードLD1〜3を時分割で点灯させるものとしたが、本発明がこの例に限定されるものではない。他の例として、3つの青紫色レーザダイオードLD1〜3を同時に点灯させることにしてもよい。その場合、青紫色レーザダイオードLD1〜3のレーザ光の当たる位置が蛍光部材81の全ての蛍光体の領域にわたって移動し、かつ全てのレーザ光が同時に同じ蛍光体の領域に当たるように走査を行えばよい。ただし、青紫色レーザダイオードLD1〜LD3のレーザ光が同じ位置に重複して当たらないように走査することが好ましい。
【0060】
また、本実施形態の走査部16の変形例として回転プリズムによってレーザ光を走査する構成を採用してもよい。高精度で設計されるプリズムにより高精度で所望の走査を行うことが可能である。
【0061】
図12は、回転プリズムによってレーザ光の走査を行う変形例について説明するための模式図である。この例は、紙面に平行な断面の形状が正方形である直方体のプリズム121が、紙面に垂直でプリズム121を貫く直線を軸として回転する例である。
【0062】
青紫色レーザダイオード21からのレーザ光がプリズム121に入射する。(A)の状態から(B)更に(C)の状態へとプリズム121が回転することによりレーザ光の屈折の状態が変化する。レーザ光の屈折の変化によって、蛍光部12におけるレーザ光の当たる位置が変化する。図12の回転プリズムによって行われるレーザ光の走査は、図13において矢印で示されているような直線的な走査となる。なお、ここでは蛍光部12の例として、図9に示したような上段、中段、下段にそれぞれ赤色(R)、緑色(G)、青色(B)を塗布した蛍光部材81を用いている。
【0063】
なお、本変形例では、断面が正方形の回転プリズムを用いる例を示したが、この形状に限定されるものではない。図12に示した回転プリズムの代わりに他の断面形状の回転プリズムを用いてもよく、またポリゴンプリズムを用いてもよい。
【0064】
図14は、回転プリズムによってレーザ光の走査を行う他の変形例について説明するための模式図である。この例は、紙面に平行な断面の形状が台形である四角錘台のプリズム141が、紙面に平行で青紫色レーザダイオード21とプリズム141を通る直線を軸として回転する例である。
【0065】
青紫色レーザダイオード21からのレーザ光がプリズム141に入射する。(A)の状態から(B)の状態を経て再び(A)の状態に戻るようにプリズム141が回転すると、レーザ光の屈折の状態が順次変化する。図14の回転プリズムによって行われるレーザ光の走査は、図15において矢印で示されているような円を描く走査となる。なお、本変形例では、円を描く走査によって各色の領域を順次通るように蛍光部材151の入射面を上段、下段左側、および下段右側に分割し、それぞれを赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の蛍光体に塗り分けている。
【0066】
また、本実施形態の走査部16の変形例としてアクチュエータによってレーザ光を走査する構成を採用してもよい。
【0067】
図16は、アクチュエータによってレーザ光の走査を行う変形例について説明するための模式図である。図16の例では、光源15である青紫色レーザダイオード21から発光したレーザ光が光ファイバ161で導光される。光ファイバ161の送出部付近にアクチュエータ162が備えられている。光ファイバ161およびアクチュエータ162が走査部16に相当する。
【0068】
アクチュエータ162は光ファイバ161の送出部を連続的に小さく運動させる。この運動によって、蛍光部材81における光ファイバ161の送出部からのレーザ光の当たる位置が変化し、レーザ光が蛍光部材81の各色の領域を順次通るように走査する。なお、光ファイバ161の送出部の運動は、直線上の往復運動であってもよく、また円を描くような運動であってもよい。
【0069】
また、本実施形態の走査部16の変形例として回転するカラーホイールを用いてレーザ光を走査する構成を採用してもよい。
【0070】
図17は、カラーホイールの回転によってレーザ光の走査を行う変形例について説明するための模式図である。図18はカラーホイールの形状について説明するための模式図である。
【0071】
カラーホイール171には図18に示すように上面反射領域(A)、下面反射領域(B)、および透明領域(C)がある。上面反射領域は上方からのレーザ光を上面で反射する領域である。下面反射領域は上方からのレーザ光を下面で反射する領域である。透明領域はレーザ光を透過する領域である。
【0072】
図17に示すように、本変形例ではカラーホイール171に斜め上方からレーザ光を照射するように青紫色レーザダイオード21が配置され、カラーホイール171の下方にカラーホイール171と平行にミラー172が配置される。カラーホイール171およびミラー172が走査部16に相当する。カラーホイール171を回転させながら青紫色レーザダイオード21からレーザ光を照射するとレーザ光の反射の状態が図17(A)〜(C)に示すように変化する。
【0073】
青紫色レーザダイオード21と蛍光部材81とカラーホイール171とミラー172の相対位置は、青紫色レーザダイオード21からのレーザ光のカラーホイール171の上面反射領域を反射面とした反射方向に赤色(R)の蛍光体があり、カラーホイール171の下面反射領域を反射面とした反射方向に緑色(G)の蛍光体があり、ミラー172を反射面とした反射方向に青色(B)の蛍光体があることになるように位置決めされる。
【0074】
カラーホイール171の回転により、青紫色レーザダイオード21からのレーザ光がカラーホイール171の上面反射領域で反射する状態(A)ではレーザ光は蛍光部材の赤色(R)の領域に入射する。青紫色レーザダイオード21からのレーザ光がカラーホイール171の下面反射領域で反射する状態(B)ではレーザ光は蛍光部材の緑色(G)の領域に入射する。青紫色レーザダイオード21からのレーザ光がカラーホイール171を透過してミラー172で反射する状態(C)ではレーザ光は蛍光部材の青色(B)の領域に入射する。
【0075】
本変形例によれば、広く用いられているカラーホイールの技術を応用することにより高輝度かつ高寿命のプロジェクタを構成することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 プロジェクタ
11 レーザ光照射部
12 蛍光部
13 光束統合部
14 画像生成部
15 光源
16 走査部
17、62、71 蛍光体マトリクス
18 表示パネル
21 青紫色レーザダイオード
22 二次元MEMS
23 第1のレンズアレイ
24 第2のレンズアレイ
25 蛍光
31 セル
32 蛍光体
33 走査ビーム
61 光変調素子
63、151 ライトトンネル
81 蛍光部材
82 ロッドレンズ
101、161 光ファイバ
121、141 プリズム
162 アクチュエータ
171 カラーホイール
172 ミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図18