特許第5656276号(P5656276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656276
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】シャンプー組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20141225BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20141225BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20141225BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20141225BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20141225BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   A61K8/39
   A61K8/44
   A61K8/73
   A61K8/34
   A61K8/49
   A61Q5/02
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2009-5326(P2009-5326)
(22)【出願日】2009年1月14日
(65)【公開番号】特開2010-163377(P2010-163377A)
(43)【公開日】2010年7月29日
【審査請求日】2011年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100078064
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 鐵雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115901
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 英樹
(72)【発明者】
【氏名】川越 紘
(72)【発明者】
【氏名】岩田 望
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 勇希
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−127329(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/098888(WO,A1)
【文献】 特開2006−273838(JP,A)
【文献】 特開2006−169129(JP,A)
【文献】 特開2005−232113(JP,A)
【文献】 特開2009−120559(JP,A)
【文献】 特表平08−505875(JP,A)
【文献】 特開2003−135951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8
A61Q 5
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン化ポリマー、多価アルコール、下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンおよびポリオキシエチレンソルビットテトラ脂肪酸エステルが少なくとも配合され
上記ポリオキシエチレンソルビットテトラ脂肪酸エステルとして、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、またはテトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビットが配合されたことを特徴とするシャンプー組成物。
【化1】
【請求項2】
多価アルコールとして、プロピレングリコールが配合されている請求項1に記載のシャンプー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄後の毛髪にハリ、コシ(弾力感)を付与し得るシャンプー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪は加齢と共に細くなったり、ハリ、コシ(弾力感)が減少したりしやすいため、近年では、毛髪のアンチエイジングとして、こうした現象の抑制方法の研究が進んでいる。そして、毛髪のアンチエイジングを意識した製品の市場での重要性も増している。
【0003】
毛髪のアンチエイジングを意識した製品の具体例としては、例えば、毛髪にハリ、コシを与えるための、植物抽出油やタンパク質加水分解物といった種々の原料が配合されたシャンプーなどの毛髪化粧料が挙げられる(例えば、特許文献1、2など)。
【0004】
また、シャンプーにおいて、毛髪表面での皮膜形成能を有しているカチオン化ポリマーの配合量を高めることで、洗浄後の毛髪表面に良好な皮膜を形成し、その作用によって毛髪の弾力感を高めることも一般に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−77029号公報
【特許文献2】特開2007−238515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現在では、上記のような技術においても、毛髪にハリ、コシを与える点では更なる改良が求められている。また、特にカチオン化ポリマーとしてカチオン化セルロースを多量に配合したシャンプーでは、洗髪後に毛髪表面にカチオン化セルロースが残存しやすいため、これがシャンプーの連続使用によって蓄積して毛髪が硬く感じられるようになり、毛髪の感触を損なってしまうという問題もある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、洗浄後の毛髪にハリ、コシを付与し得るシャンプー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成し得た本発明のシャンプー組成物は、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン化ポリマー、多価アルコール下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンおよびポリオキシエチレンソルビットテトラ脂肪酸エステルが少なくとも配合され、上記ポリオキシエチレンソルビットテトラ脂肪酸エステルとして、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、またはテトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビットが配合されたことを特徴とするものである。
【0009】
【化1】
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、洗浄後の毛髪にハリ、コシを付与し得るシャンプー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のシャンプー組成物では、特に上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンと、多価アルコールとを併用することで、洗浄後の毛髪に良好なハリ、コシ(弾力感)を与えることを可能にし、また、泡質を良好にしている。
【0012】
本発明のシャンプー組成物で使用するポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンは、上記一般式(1)から明らかなように、グリセリンの有する水酸基のうちの一つが水酸基のまま残存している特徴的な構造を有している。
【0013】
なお、上記一般式(1)中、nは、5〜10の整数であるが、7であることが特に好ましい。また、上記一般式(1)における脂肪酸残基は、炭素数が8〜25の脂肪酸の残基であるが、具体的には、ヤシ油脂肪酸残基、ステアリン酸残基、パルミチン酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、カプリル酸残基、カプリン酸残基、オレイン酸残基などが挙げられ、ヤシ油脂肪酸残基であることが特に好ましい。
【0014】
このような上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンとしては、例えば、ミヨシ油脂社から市販されている「MファインオイルCOG−7M」(ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリン)が使用できる。
【0015】
上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンの、シャンプー組成物における配合量は、上記ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンを使用することによる効果(多価アルコールと併用することによる上記の各効果)をより良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。ただし、上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンの、シャンプー組成物中での量が多すぎると、洗浄後の毛髪がごわつきやすくなる傾向がある。よって、上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンの、シャンプー組成物における配合量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
シャンプー組成物に使用する多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリンなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、洗浄後の毛髪の感触がより良好になることからプロピレングリコールが好ましく、特に透明剤型のシャンプー組成物とする場合、透明性の安定度がより向上する点で、プロピレングリコールをポリプロピレングリコールと組み合わせて使用することがより好ましい。
【0017】
シャンプー組成物における多価アルコールの配合量は、多価アルコールを使用することによる効果[上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンと併用することによる上記の各効果]をより良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。ただし、シャンプー組成物中の多価アルコール量が多すぎると、洗浄後の毛髪がごわつきやすくなる。よって、シャンプー組成物における多価アルコールの配合量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
また、多価アルコールにプロピレングリコールとポリプロピレングリコールとを併用する場合、プロピレングリコールとポリプロピレングリコールとの比率(質量比)を、5:1〜1:1とすることが好ましい。
【0019】
また、本発明のシャンプー組成物には、アニオン性界面活性剤を使用する。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム、ココイルイセチオン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルキルスルホコハク酸二ナトリウム、ラウロイル加水分解シルクナトリウム、イソステアリン酸加水分解シルクAMP(イソステアリン酸と加水分解シルクとの縮合物の、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩)、ココイル加水分解ダイズタンパクカリウム、ココイル加水分解コラーゲンの塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アシルアミノ酸およびその塩[ラウロイルアスパラギン酸、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸、ミリストイルグルタミン酸、ステアロイルグルタミン酸、ヤシ油脂肪酸メチルアラニン、ラウロイルメチルアラニン、ミリストイルメチルアラニン、ヤシ油脂肪酸アシルグリシン、ヤシ油脂肪酸メチルタウリン、ラウロイルメチルタウリン、ヤシ油脂肪酸サルコシン、ラウロイルサルコシンなどのアシルアミノ酸、および、これらのアシルアミノ酸の塩(ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩など)]などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
シャンプー組成物におけるアニオン性界面活性剤の配合量は、2〜25質量%とすることが好ましい。シャンプー組成物におけるアニオン性界面活性剤の量が少なすぎると、洗浄力が弱くなる傾向があり、多すぎると、洗浄後の毛髪がごわつきやすくなる傾向がある。
【0021】
更に、本発明のシャンプー組成物には、両性界面活性剤を使用する。両性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸アミドプロピルベタイン液、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルベタイン、リノレイン酸アミドプロピル、パーム油脂酸アミドプロピルベタインなどのアミドプロピルベタイン型両性界面活性剤;ウンデシル−N−ヒドロキシエチル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのイミダゾリン型両性界面活性剤;N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルスルホン酸ナトリウム、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸ナトリウム、N−脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸ナトリウムなどのスルホベタイン型両性界面活性剤;ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシドなどのアミドアミンオキシド型両性界面活性剤;などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
シャンプー組成物における両性界面活性剤の配合量は、0.5〜20質量%とすることが好ましい。シャンプー組成物における両性界面活性剤の量が少なすぎると、泡立ちが低下しやすく、多すぎると、洗浄後の毛髪がごわつきやすくなる傾向がある。
【0023】
また、本発明のシャンプー組成物には、カチオン化ポリマーを使用する。カチオン化ポリマーとしては、例えば、カチオン化セルロース(塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースなど)、カチオン化グアーガム、カチオン化デンプン、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体などが挙げられる。
【0024】
シャンプー組成物におけるカチオン化ポリマーの配合量は、例えば、0.01〜1質量%であることが好ましい。シャンプー組成物におけるカチオン化ポリマーの量が少なすぎると、カチオン化ポリマーを使用することによる効果(洗浄後の毛髪の感触向上効果)が小さくなることがあり、多すぎると、毛髪に残留し、これがシャンプー組成物の連続使用によって蓄積し、毛髪がごわつく傾向がある。
【0025】
シャンプー組成物には、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルを更に配合することが好ましい。ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルを配合することで、シャンプー組成物の泡質(泡立ちの速さ、および泡のきめ細やかさ)が向上し、また、シャンプー組成物による洗浄後に毛髪に塗布するトリートメントののりがよくなり、特に細くなりがちな毛先に厚みを感じる毛髪に仕上げることが可能となる。
【0026】
ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルとしては、例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(30)ソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(40)ソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビット、テトラステアリン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビットなどが挙げられる(なお、上記の各ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルにおける「ポリオキシエチレン」の後の括弧内の数値は、オキシエチレンユニットの平均付加モル数を意味している。)。
【0027】
ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルのシャンプー組成物における配合量は、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルを使用することによる上記の各効果をより良好に確保する観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。ただし、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルのシャンプー組成物中の量が多すぎると、洗浄後の毛髪がごわつきやすくなる傾向がある。よって、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルのシャンプー組成物における配合量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
本発明のシャンプー組成物は、通常のシャンプーと同様に水を溶媒として使用する。シャンプー組成物における水の配合量は、例えば、25〜85質量%であることが好ましい。
【0029】
また、本発明のシャンプー組成物には、上記の各成分以外にも、毛髪にハリ、コシを与え得る成分として公知の各種成分を添加することができる。このような成分としては、例えば、タンパク質およびその誘導体、N−ラウロイル−L−グルタミン酸とリジンとの縮合物のナトリウム塩、ジメチコンプロピルPGベタイン(PGはプロピレングリコールの略である。)、メトキシPEG/PPG−7/3アミノプロピルジメチコン(PEGはポリエチレングリコールの略、PPGはポリプロピレングリコールの略であり、後の数値は、PEGとPPGとのモル比である。)、パルタミドプロピルトリモニウムクロリド、ステアラミドプロピルジメチルアミン、クレアチンなどが挙げられる。
【0030】
更に、本発明のシャンプー組成物には、上記の各成分以外にも、通常のシャンプーなどの毛髪化粧料に配合されている各種成分を、必要に応じて添加することができる。このような添加成分としては、例えば、油分(ラノリン誘導体、流動パラフィン、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油など)、シャンプー組成物の取り出しやすさを調節する増粘剤、シャンプー後の毛髪のきしみを少なくしたり仕上がり感をよくするコンディショニング剤(上記の各成分以外のコンディショニング剤)、変色や酸化防止のための抗酸化剤やキレート剤、フケ防止剤、殺菌剤、紫外線吸収剤、湿潤剤、香料などが挙げられる。
【0031】
本発明のシャンプー組成物は、上記の各成分を、溶媒である水に溶解または分散させることで調製することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。なお、以下の表1および表2ではシャンプー組成物全体で、また、表3ではトリートメント剤全体で、それぞれ100%となるように各成分の配合量を%で示すが、その%はいずれも質量%であり、また、表1〜表3中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。
【0033】
実施例1〜7および比較例1〜4
実施例1〜7および比較例1〜4のシャンプー組成物を、表1および表2に示す組成で調製した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
なお、シャンプー組成物の調製に使用した原材料の一部は、表に記載の成分以外の成分(溶媒など)を含んでいるもののあるが、表1および表2では、このような原材料に含まれる表に記載の成分のみの量を配合量として示している。そして、表1および表2において、精製水の欄の「計100とする」とは、シャンプー組成物を構成する精製水以外の各成分の合計量(表に記載の成分以外の成分も含む原材料における「表に記載の成分以外の成分」の量も含めた合計量)に、精製水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。
【0037】
また、表1および表2の「POE(7)ヤシ油脂肪酸グリセリン」、「POE(15)モノステアリン酸グリセリン」、「テトラオレイン酸POE(60)ソルビット」、「POE(10)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム」および「POE(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム」における「POE」は「ポリオキシエチレン」の略であり、POEの後の括弧内の数値は、オキシエチレンユニットの平均付加モル数である。更に、表1および表2の「PPG−17」の「PPG」は「ポリプロピレングリコール」の略であり、PPGの後の数値は、オキシプロピレンユニットの平均付加モル数である。
【0038】
また、表1および表2における「ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド」は、シャンプー組成物の粘度調整剤として用いたものであり、その配合量における「適量」とは、シャンプー組成物の粘度が1000cpsとなるような量で配合したことを意味している。
【0039】
なお、実施例1〜7および比較例1〜4のシャンプー組成物の調製に使用した原材料は、以下の通りである。
(1)POE(7)ヤシ油脂肪酸グリセリン:ミヨシ油脂社製「MファインオイルCOG−7M(商品名)」。
(2)POE(15)モノステアリン酸グリセリン:日光ケミカルズ社製「NIKKOL TMGS−15V(商品名)」。
(3)テトラオレイン酸POE(60)ソルビット:日光ケミカルズ社製「NIKKOL GO−460V(商品名)」。
(4)POE(10)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム:日光ケミカルズ社製「NIKKOL AKYPO−RLM100NV(商品名)」。
(5)POE(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム:三洋化成工業社製「サンデットEN(商品名)」。
(6)カチオン化セルロース:花王社製「ポイズC−80M(商品名)」。
(7)ラウリン酸アミドプロピルベタイン:花王社製「アンヒトール20AB(商品名)」。
(8)PPG−17:三洋化成工業社製「ニューポールPP−1000(商品名)」。
【0040】
肩よりも長い毛髪を有する女性10名をパネリストとし、それぞれに専門の評価者1名ずつを付け、これらパネリストの毛髪を用いて、各実施例および比較例のシャンプー組成物の使用による効果を評価した。
【0041】
各パネリストの頭部の左半分の毛髪に、標準品として比較例1のシャンプー組成物3gを塗布し、また、頭部の右半分の毛髪に実施例1〜7または比較例2〜4のシャンプー組成物3gを塗布して洗浄し、水で洗い流した。次に、表3に示す組成のトリートメント6gを、洗浄後の各パネリストの毛髪に塗布し、十分に馴染ませた後、洗い流した。その後、各パネリストの毛髪をドライヤーで乾燥して仕上げた。
【0042】
【表3】
【0043】
なお、表3において、精製水の欄の「計100とする」とは、トリートメント剤を構成する精製水以外の各成分の合計量に、精製水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。
【0044】
シャンプー組成物での洗浄後、トリートメント剤を塗布する前の各パネリストの毛髪について、頭部の左半分の毛髪のハリ、コシを基準として、頭部の右半分の毛髪のハリ、コシを、上記専門の評価者が評価した。また、頭部の左半分に塗布したシャンプー組成物(比較例1のシャンプー組成物)の泡質を基準として、頭部の右半分に塗布したシャンプー組成物の泡質を、上記専門の評価者が評価した。更に、トリートメント剤を塗布して洗い流し、ドライヤーで乾燥して仕上げた後の各パネリストの毛髪について、頭部の左半分の毛髪のハリ、コシ、および毛先の厚みを基準として、頭部の右半分の毛髪のハリ、コシ、および毛先の厚みを、上記専門の評価者が評価した。
【0045】
上記の各評価は、以下の通り5段階で点数付けし、全評価者の点数を合計することで行った。これらの結果を表4に示す。
よい ・・・+2。
ややよい ・・・+1。
どちらでもない ・・・0。
あまりよくない ・・・−1。
よくない ・・・−2。
【0046】
また、実施例1〜7および比較例1〜4の各シャンプー組成物で洗浄した後の上記の各パネリストの頭部から各5本の毛髪を採取して、ヤング率を測定した。ヤング率の測定は、以下のようにして行った。採取した各毛髪について、毛先から4cm離れたところを開始端として1cm幅のガラス繊維入りテープで止め、そこから2cm離れたところを開始端として再び1cm幅のガラス繊維入りテープで止め、上記2本のガラス繊維入りテープ間の2cm幅部分の毛髪の直径(長径および短径)をマイクロメーターで測定した。これらの試料を蒸留水に24時間浸漬した後、上記2cm幅の部分の毛髪の破断重量を引張試験機(テンシロンメーター)で測定し、水中強伸度曲線を得た。その水中強伸度曲線の最初の傾きがヤング率(10N/m)となる。このヤング率の値が大きいほど、毛髪のハリ、コシが良好であることを意味している。
【0047】
上記の各結果を表4に示す。なお、トリートメント後の毛髪のヤング率は、10名のパネリスト(各5本)の毛髪について得られた全測定値の平均値である。
【0048】
【表4】
【0049】
表4から明らかなように、実施例1〜7のシャンプー組成物は、上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンおよび多価アルコールを配合していない比較例1のシャンプー組成物に比べて、泡質がよく、洗浄後の毛髪のハリ、コシを良好にできており、更に、トリートメント剤による仕上げ後の毛髪についても、官能評価によるハリ、コシ並びに毛先の厚み感、およびヤング率から評価されるハリ、コシを良好にできている。
【0050】
これに対し、上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンに代えて、グリセリンの水酸基が残存していない構造のポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンであるポリオキシエチレン(15)モノステアリン酸グリセリンを使用した比較例2のシャンプー組成物では、泡質、および洗浄後並びにトリートメント剤による仕上げ後の毛髪のハリ、コシ並びに毛先の厚み感が劣っている。
【0051】
また、多価アルコールを配合していない比較例3のシャンプー組成物、および上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンを配合していない比較例4のシャンプー組成物では、泡質、および洗浄後の毛髪のハリ、コシが劣っており、トリートメント剤による仕上げ後の毛髪のヤング率が小さく、これにより評価される毛髪のハリ、コシが劣っている。