(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記作動回路要素は、前記方法が、前記事象基準点を前記テンプレート基準点からミスアライン状態にし、前記第1の事象表示と前記テンプレートとの間の第3の相関を計算することによって前記第1の事象表示を前記テンプレートと比較する別のステップを含むようにさらに構成されており、
前記第2の相関は、前記テンプレート基準点よりも前の1つまたは複数のサンプルにアライメントされた前記事象基準点を用いて計算され、前記第3の相関は、前記テンプレート基準点よりも後の1つまたは複数のサンプルにアライメントされた前記事象基準点を用いて計算される、請求項1に記載のICSシステム。
前記作動回路要素は、前記第2の相関が、第1の方向に前記テンプレート基準点から1サンプル離れてアライメントされた前記事象基準点を用いて計算されるようにさらに構成されており、
前記第2の相関が前記第1の相関より大きい場合、前記方法は、前記第1の方向に前記テンプレート基準点から2サンプル離して前記事象基準点をアライメントし、前記第1の事象表示と前記テンプレートとの間の第3の相関を計算することによって前記第1の事象表示を前記テンプレートと比較するさらに別のステップをさらに含み、
前記第2の相関が前記第1の相関より小さい場合、前記方法は、前記第1の方向と反対の方向に前記テンプレート基準点から1サンプル離して前記事象基準点をアライメントし、前記第1の事象表示と前記テンプレートとの間の第3の相関を計算することによって前記第1の事象表示を前記テンプレートと比較するさらに別のステップを、前記作動回路要素が実施することをさらに含む、請求項1に記載のICSシステム。
前記作動回路要素は、前記正確な事象検出が行われているかどうかを一連の相関結果を使用して判定する前記ステップが、相関結果の交互の高−低−高のパターンが起こっているかどうかを判定し、起こっている場合、低い相関結果を有する事象表示が、過検出信号から生じていると判定することを含むようにさらに構成されている、請求項1に記載のICSシステム。
前記作動回路要素は、前記方法が更に、前記第1の事象表示についての相関結果を閾値と比較することによって、一連の検出事象がショック可能かショック不可能かを判定することと、前記相関結果が前記閾値を超える場合、前記第1の事象表示に対応する検出事象がショック不可能であると判定することとを含むようにさらに構成されている、請求項1に記載のICSシステム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に詳細な説明を図面を参照して行う。必ずしも一定比例尺に従っていない図面は、例示的な実施形態を示し、本発明の範囲を制限することを意図しない。以下の実施例および説明の一部は、発行された特許および出願中の特許出願に対する参照を含む。これらの参照は、例示を目的とし、参照された特許および特許出願から得られる特定の方法または構造に本発明を限定することを意図しない。
【0009】
暗示的に必要とされるか、または、明示的に述べられない限り、以下の方法は、ステップの任意の特定の順序を必要としない。以下の実施例は、ある実施形態で、「目下の事象(current event )」と言うとき、これは、最も最新の検出事象が解析されていることを意味する。しかし、必ずしもその状況に限らず、ある実施形態は、1つまたは複数の検出だけまたは一定期間だけ遅延される解析を実施する。整流信号/非整流信号の使用に関して示される選択は、例示に過ぎず、任意に変更されてもよい。
【0010】
本明細書で使用される用語は、信号が埋め込み型心臓デバイスシステムによって検知され、事象が検知信号内で検出され、心臓活動が、検出事象(検出)の使用によって分類されることを示す。律動分類は、たとえば、心室細動またはある頻脈性不整脈などの悪性律動の識別を含む。埋め込み型治療システムは、心臓律動の分類に基づいて治療/刺激決定を行う。
【0011】
ある実施例では、検出事象は、受信信号を、検出プロファイルによって規定される検出閾値と比較することによって検出される。任意の適した検出プロファイルが使用されてもよい。検出事象は、間隔によって分離される。選択された数の間隔にわたって平均間隔を生成するために、いくつかの間隔が使用可能であり、平均間隔から心拍数を計算することができる。たとえば、4つ、8つ、または16の間隔が使用されて、平均間隔の関数として心臓事象レートが推定されてもよい。
【0012】
心臓電位図は、周知のように、特定の生理的事象に相当する、P、Q、R、S、およびTを含む文字で表示されるいくつかの部分(「波(wave)」と呼ばれることが多い)を含む。R波を検知する検出アルゴリズムを設計することが一般的であるが、繰返し検出される場合、心周期の任意の部分が、心拍数を生成するのに使用される。心拍数に加えて、形態(形状)解析が使用される場合、システムは、QRS群と呼ばれる、Q波、R波、およびS波を含む周期の部分を捕捉および/または解析してもよい。P波およびT波などの患者の心周期の他の部分は、心拍数を推定する目的では探されないアーチファクトとして扱われることが多いが、必ずしもこれに限定されない。
【0013】
通常、レートを確認するために、各心周期は1回だけカウントされる。(2重または3重検出などの)過検出は、単一心周期内で2つ以上の検出事象を宣言する場合に起こり得る。過検出は、単一心周期の2つ以上の部分が検出される場合に、もしくは、例えば外部治療またはノイズ、ペーシングアーチファクト、骨格筋ノイズ、電気治療などによるノイズによって、心臓事象が起こっていないときに事象が宣言される場合に起こり得る。
【0014】
1つの心周期が起こり、検出アルゴリズムが複数の検出事象を宣言する場合、過検出が起こっている。その後、これらの検出のそれぞれを計数することによって心拍数が計算される場合、過剰計数が起こる。計算された心拍数は、心臓律動を悪性または良性として分類するために、単独でまたは他の因子と組合わされて使用されてもよい。過検出事象に基づく過剰計数は、誤って高いレート計算をもたらし得る。心拍数の誤計算は、不正確な律動分類および治療決定をもたらし得る。これらの概念の一部は、「METHODS AND DEVICES FOR ACCURATELY CLASSIFYING CARDIAC ACTIVITY」という名称の米国特許出願番号第12/399,914号および「ACCURATE CARDIAC EVENT DETECTION IN AN IMPLANTABLE CARDIAC STIMULUS DEVICE」という名称の米国特許出願番号第12/399,901号においてさらに論じられている。
【0015】
図1は、過検出を識別し、補正処置をとる例示的な方法についてのプロセスフロー図である。例示的な方法は、事象検出10で始まり、受信された心臓信号が捕捉され、検出閾値と比較され、最後に、受信された信号が検出閾値を横切り、検出事象の宣言がもたらされる。
【0016】
次に、方法は、過検出識別ステップ12を実施する。これは、例示するように、形態解析14、間隔解析16、および幅広QRS解析18を含むいくつかの解析方法の1つまたは複数を含み得る。過検出識別ステップ12に続いて、1つまたは複数の過検出が識別される場合、方法は、20に示すようにデータを補正する。ステップ20にて、データ補正が全く必要とされない場合、このステップはバイパスされてもよい。
【0017】
最後に、方法は、22に示すように、治療決定を含む。治療決定22は、インプラント対象者の心臓律動を分類し、治療が送出されるかどうか/治療がいつ送出されるかを判定する。方法は、その後、反復して事象検出10に進む。
【0018】
治療決定22は、いくつかの形態の解析の1つまたは複数を含んでもよい。1つの実施例では、個々の検出事象は、ショック可能またはショック不可能としてマーク付けされ、XアウトオブY(X-out-of-Y)カウンタは、全体の心臓律動が治療を利するかどうかを判定するために維持される。ショック可能またはショック不可能としての個々の事象のマーク付けは、レートベース決定および/または形態ベース決定あるいはその組合せを含むいくつかの形態をとってもよい。以下の
図15は、一つの実施例を提供する。さらなる実施例は、その開示が参照により本明細書に組込まれる「APPARATUS AND METHOD OF ARRHYTHMIA DETECTION IN A SUBCUTANEOUS IMPLANTABLE CARDIOVERTER/DEFIBRILLATOR」という名称の米国特許番号第6,754,528号および「METHOD FOR DISCRIMINATING BETWEEN VENTCULAR AND SUPRAVENTCULAR ARRHYTHMIAS」という名称の米国特許番号第7,330,757号にも開示される。
【0019】
治療決定22はまた、悪性状態の持続性を考慮してもよい。一つの実施例は、その開示が参照により本明細書に組込まれる「METHOD FOR ADAPTING CHARGE INITIATION FOR AN IMPLANTABLE CARDIOVERTER−DEFIBRILLATOR」という名称の米国特許出願公報番号第2006/0167503号に示される。他の方法が、治療決定22として使用されてもよい。
【0020】
図2は、例示的な埋め込み型医療デバイスおよびインプラント場所を示す。より詳細には、例示的な皮下のみのシステムが
図2に示される。皮下システムは、心臓40に対して示され、リード線46に結合するキャニスタ42を含む。キャニスタ42は、好ましくは、心臓活動の解析を実施し、かつ、刺激出力を提供する作動回路要素を収容する。作動回路要素は、周知のように、電池、入力/出力回路要素、パワーキャパシタ、高電圧充電モジュール、コントローラ、メモリ、テレメトリコンポーネントなどを含み得る。
【0021】
たとえば、キャニスタ42上の電極44およびリード線46上の電極48、50、52を含む電極は、システム全体を通して複数の場所に配設される。電極44、48、50、52は、任意の適した形態をとってもよく、また、任意の適した材料で作られてもよい。たとえば、キャニスタ電極44は、絶縁されたボタン電極であってよく、あるいは、キャニスタ42の領域または表面であってよく、リード線46上の電極48、50、52は、コイル電極、リング電極、または当技術分野で知られている他の構造であってよい。
【0022】
電極44、48、50、52は、V1、V2、V3、およびV4などの複数の検知ベクトルを規定する。所望される場合、1つまたは複数のベクトルV1、V2、V3、およびV4は、たとえば、「SYSTEMS AND METHODS FOR SENSING VECTOR SELECTION IN AN IMPLANTABLE MEDICAL DEVICE」という名称の米国特許出願公報番号第2007−0276445号に記載されるように、デフォルト検知ベクトルとして選択されてもよい。複数のベクトルの他の使用は、たとえば、「MULTIPLE ELECTRODE VECTORS FOR IMPLANTABLE CAEDIAC TREATMENT DEVICES」という名称の米国特許番号第7,392,085号に示される。別の実施形態は、たとえば、「SENSING VECTOR SELECTION IN A CARDIAC STIMULUS DEVICE WITH POSTURAL ASSESSMENT」という名称の米国特許出願公報番号第2008−0188901号に記載されるように、ベクトル解析において姿勢を考慮する。複数の検知ベクトルが、所望に応じて、順次にまたは組合せて解析されてもよい。
【0023】
治療は、任意の選択された電極対を使用して適用されてもよい。一つの実施例は、治療を適用するために、缶電極44およびコイル電極52を使用する。他の電極の組合せが使用されてもよい。治療は、単相性または多相性の除細動、カルディオバージョン、および/またはペーシングを含んでもよい。
【0024】
本発明は、任意の特定のハードウェア、インプラント場所、またはインプラント構成に限定されない。代わりに、本発明は、任意の埋め込み型心臓治療システムに対する改良型として意図される。一つの実施形態はまた、(予告および/またはデータ記録を含む)監視機能を制御するため、および/または、特定の構成、状態、または患者に対するデータ解析の適合性を試験するために、監視システムにおいて使用されてもよい。
【0025】
一つの実施例は、たとえば、以下に制限されないが、デバイス試験、新しい/改定されたソフトウェアのアップロード、検出または治療設定などのプログラマブルなパラメータの修正、デバイスの動作状態、電池寿命、またはリード線の完全性の判定、機能の有効化または無効化、および/または、インプラント対象者の状態、直前のデータ捕捉または直前の処置に関するデータのダウンロードの1つまたは複数を含む種々の目的のために埋め込み式デバイスと通信するように構成された外部プログラマ54に関連し得る。種々のプロトコルおよび周知のハードウェアなどの任意の適した通信方法が使用されてもよい。
【0026】
図2は、いくつかの解剖学的目印を省略している。図示する例示的なシステムは、インプラント対象者の胸郭の外側で、皮膚の下に埋め込まれてもよい。例示的に示す場所は、心尖と同じ高さの、インプラント対象者のほぼ左腋窩にキャニスタ42を留置し、リード線46は、剣状軟骨の方に内側に、次に、胸骨の左側に沿ってインプラント対象者の頭部の方に延在する。1つの例示的な実施例は、「APPARATUS AND METHOD FOR SUBCUTANEOUS ELECTRODE INSERTION」という名称の同一譲受人に譲渡された米国特許出願公報番号第2006−0122676号に示される方法/システムを使用する。他の例示的な皮下システムおよび場所は、同一譲受人に譲渡された米国特許番号第6,647,292号、第6,721,597号、および第7,149,575号に示される。
【0027】
本発明はまた、たとえば、他の皮下のみの、血管のみの、および/または、経静脈的な埋め込み構成/場所を含む種々の埋め込み構成を有するシステムにおいて具現化されてもよい。キャニスタ42は、制限なしで、腋窩位置、胸筋位置、および胸筋の下の位置を含む前側位置、外側位置、および/または後側位置に留置されると共に、インプラント対象者の胴体の左側または右側に、および/または腹部に留置されてもよい。完全に血管内へのシステムの埋め込みも提案されている。キャニスタ42およびリード線36は、前側−後側の組合せ、前側のみの組合せ、経静脈留置、または他の血管留置を含むいくつかの適した構成のうちの任意の構成で留置されてもよい。一体型システムは、リード線46を省略し、代わりに、キャニスタ42上に全ての電極を含んでもよい。
【0028】
図3Aは、過検出を識別するために相関解析を使用する実施例を示す。本明細書で使用される「相関解析(Correlation analysis)」は、いくつかの形態をとり得る。1つの実施例は
図16に示される。
図16を参照して、捕捉信号500は、アナログ−デジタル変換502を受けて、504に示すように、信号のサンプリングされた(そして、通常デジタルの)表示を形成する時間順序付けされた一連のサンプル{S1,…,S9}をもたらす。
図16の実施例は、所与の信号についてのサンプル数が9より大きい可能性があるため、例示のために簡略化されている。たとえば、1つの例示的な実施形態では、捕捉信号500は、約160ミリ秒の長さであり、256Hzで捕捉された41サンプルをカバーする。他の継続時間および/またはサンプリング周波数が選択されてもよい。信号は、ほぼQRS幅までウィンドウイングされうるが、これは必要とされない。
【0029】
信号表示は、相関解析506を使用してテンプレートと比較される。テンプレートは、一連のサンプル値{T1,…,T9}を含むものとして示される。比較の前に、または、比較の一部として、信号表示またはテンプレートは、2つのデータセットの最大ピークが、振幅を等しくするようにスケーリングされる。相関解析の1つの実施例は、相関波形解析である。他の実施例は、当技術分野で広く知られている。
【0030】
相関解析の簡単なバージョンが、
図16に示されており、508に示すように、信号表示の最大サンプルまたはピークが、テンプレートのピークにアラインされ、周囲のサンプルが互いに比較される。ピークは、既に等しくなるようにスケーリングされているため、ピークにおける差は存在しないが、周囲のサンプルは異なる可能性がある。信号表示とテンプレートとの差は、クロスハッチで示される。
【0031】
次に、501に示すように、相関スコアが計算されてもよい。信号表示の(スケーリングされた)サンプルとテンプレートのサンプルとの差の絶対値の和が計算され、テンプレートの下の総面積で除算される。商が、1から減算され、相関スコア512が得られる。相関スコアが1に近い場合、差の面積は、テンプレートの下の面積に比べて小さく、高い相関を示す。相関を計算する他の方法は、当技術分野で知られており、置換えられてもよい。
図16に示す方法は、例に過ぎない。たとえば、重み付きCWAは、同一譲受人に譲渡された同時係属中の米国特許出願公報番号第2008−0077030号に示す方式で、個々のサンプル差に重み付き係数を適用してもよい。
【0032】
図3Aを参照して、個々の事象は、信号72に検出プロファイル70を適用することによって検出される。検出プロファイル70は、不応期74と、それに続く、一定閾値期間76および減衰期間78を含む。他の形状が、検出プロファイル70に使用されてもよい。
【0033】
信号72は、R波およびT波が強調されている。図示する実施例では、T波は、R波に比べて大きい。R波とT波の両方にわたってクロスハッチで示す不応期は、各R波および各T波が、検出事象として扱われることを示す。結果として、各心周期の間、検出プロファイル70は、2つの事象を検出する。これは、過検出の1つの例である。
【0034】
例示的な実施例では、個々の検出のそれぞれはまた、R波に基づくテンプレートに対する相関解析に対して扱われる。相関解析の結果は、80にプロットされる。プロット80は、「高い(High)」相関および「低い(Low)」相関用の境界を含む。実施例では、各「X」は、各検出事象についての相関スコアを示す。相関スコアの高−低−高のパターンが、82で示すように起こる。実施例では、各高−低−高のシーケンスは、「低い」スコアの検出事象が過検出されているという結論をもたらす。結果として、図示するように、「低い」スコアの検出事象は、高−低−高のパターンが見出されると、廃棄されることになる。数値実施例では、
図16の510に示す式を使用して計算されるとき、「高い」は、52%相関より大きいとして規定され、一方、「低い」は、25%未満として規定される。他の値および解析法が使用されうる。
【0035】
図3Bは、レート補正を含む実施例についての方法ステップを示す。90に示すように、形態過検出パターンが見出されると、92に示すように、1つまたは複数の過検出が識別される。次に、94に示すように、事象間隔および/またはレートが再計算される。
【0036】
たとえば、96に示すように、R波およびT波の一連の検出は、225ms(RからT)および300ms(TからR)の間隔計算のセットをもたらす可能性があり、263msの平均間隔が得られる。263ミリ秒の平均間隔は、約229拍動/分のレートをもたらし、この値は、多くの患者において処置可能な頻脈性不整脈であることになる。しかし、98に示すように、T波が過検出として識別され、T波の両側の間隔が結合されると、間隔は、平均して525ミリ秒になる。レートは、再計算されて約114拍動/分になり得り、データ補正がない場合に生じうる、考えられる除細動、カルディオバージョン、またはペーシングが回避される。
【0037】
図4は、事象間相関比較の実施例を示す。事象間比較は、2つの個々の検出事象が互いに比較される比較である。比較は、相関解析の形態をとってもよく、または、2つの検出事象間の類似性を考慮するために、ウェーブレット変換、主成分分析(PCA)などのようなある他のタイプの解析を利用してもよい。ウェーブレット変換またはPCA比較では、ウェーブレットまたはPCA出力へのデータ圧縮の結果の類似性が比較され得る。たとえば、PCAの固有値出力の類似性および/または次数、あるいはウェーブレット変換から得られるウェーブレット係数の類似性が、定性的または定量的方法で比較され得る。
【0038】
図4に示す実施例では、相関解析が実施される。実施例では、108に示すように、相関スコアは、低、中間、または高と見なされる。「高」スコアゾーンは、比較された信号が、同じ性状であるという強い信頼度を示し(たとえば、1つの事象がR波である場合、他の事象もR波である)、一方、「低」スコアは、比較された信号が、互いに非常に異なることを示す。「中間」ゾーンは、類似するが、2つの信号が同じ性状であるという強い信頼度を生じない信号を捕捉することを意図される。たとえば、レート依存性の形態変化(レート誘発性脚ブロックなど)を受ける患者では、捕捉されたR波は、格納された静的テンプレートと高い相関を持たないが、テンプレートに対して中間範囲に入る可能性がある。別の実施例では、単形性VTは、R波間で高いまたは中間の事象間相関を、T波間で中間の相関を有する可能性があり、一方、多形性VTは、R波間で中間のまたは低い相関を示すものとなる。
【0039】
所望される場合、ファジィ論理が適用されてもよい。「中間ゾーン」の使用がこれを示唆する。たとえば、単純な「高」および「低」特性ではなく、さらなるカテゴリが設けられてもよい。さらに、後続の特徴付けに、かろうじて類似するまたは不同の信号を知らせるために、前の測定値が使用されてもよい。
【0040】
100に示すように、一連の事象N、N−1、N−2、およびN−3は、ある群として考えられ、N番目の検出が、相関解析によって、N−1、N−2、およびN−3のそれぞれと比較される。事象間比較および静的テンプレートに対する比較の結果は、102の表に示される。事象間比較結果は、104に示され、所与の事象と前の3つの事象との比較について順序付けされた結果を示す。表102は、事象N、N−1、N−2、およびN−3についての結果を示す。事象間比較結果は、任意の所与の事象Xについて、X−2に対する相関が、X−1またはX−3の場合より高いことを示す。これは、交互の事象間の相関の増加に基づく2重検出パターンを示す可能性がある。
【0041】
一つの実施例では、静的な正常洞律動テンプレートに対する比較が実施されてもよい。例示的な結果が106に示される。交互の静的テンプレートの結果、低−中間−低−中間は、過検出の可能性を示唆するが、潜在的なR波が高い相関を持たないため、強い信頼度は、静的テンプレートだけに基づいて生じない。しかし、事象間比較情報と組合せて考えると、一部の事象が過検出であるという有意の信頼度が存在する。適用可能な規則のセットは次の通りである。
【0042】
1)N−1、N−2、およびN−3と比較するときの、Nについての交互の低−高−低、および、
2)N−3、N−4、およびN−5と比較するときの、N−2についての交互の低−高−低。
結論:N−1およびN−3をT波として扱う。
さらなる確証的規則は、
3)静的テンプレートに対するNおよびN−2についての少なくとも「中間の(Medium)」」相関
であってよい。別の手法は、規則のセットが満たされることに応答してN−1だけを過検出としてマーク付けしながら、規則1)および3)だけを適用することである。1つまたは複数の事象は、過検出としてマーク付けされると、上記
図3Bに示す方法で扱われてもよい。
【0043】
図5は、事象間相関比較の別の実施例を示す。ここでは、捕捉信号は、120に示すように、3重検出される。この事例では、N番目の検出は、N−1、N−2、N−3、およびN−4のそれぞれと比較される。4つの個々の比較の包含は、さらに、3重検出と2重検出とを区別するのを補助する可能性があるが、一つの実施形態は、3つの比較で停止する。
【0044】
結果は、124の表に示される。比較の各セットについて、3つの低い相関、および、1つの中間の相関または1つの高い相関が存在する。3重検出によって、一部の検出が、各比較において低い相関を有することになる可能性がある。例示的な規則のセットは、次の通りである。
【0045】
1.N番目の事象は、N−3の事象に対して高い相関を有する。
2.N−1およびN−2の事象は、Nの事象に対して低い相関を有する。
3.N−1およびN−2の事象は、静的テンプレートに対して低い相関を有する。
【0046】
これら3つの条件が満たされる場合、N−1およびN−2は、廃棄されてもよい。さらなる条件が付加されてもよい。たとえば、Nおよび/またはN−3の静的テンプレート特性が考慮されてもよい。
【0047】
4.N番目およびN−3の事象は、静的テンプレートに対して中間のまたは高い相関を有する。
そして、1〜4の全てが満たされる場合、N−1およびN−2が廃棄され、NからN−3までの間隔が、計算され、レート解析で使用されてもよい。
【0048】
さらなる実施例では、各事象の幅が、たとえばこの第4の条件を使用して考慮されてもよい。
5.N−1およびN−2の事象は、幅閾値より広い。
幅閾値は、所望に応じて設定されてもよい。一実施例では、幅閾値は、100から140msの範囲にある。この幅閾値規則は、事象が過検出として廃棄されるという任意の判定に対する付加的な層として適用されてもよい。別の実施例では、極性が考慮されてもよい。
【0049】
6.N−1およびN−2はそれぞれ、同じ極性を共有する。
極性は、たとえば、事象について大部分の信号サンプルを参照することによって、その事象において最大マグニチュードを有するサンプルの極性として、または、事象における最大の正または最小の正のいずれの極値が、最初に起こるかを判定することによって規定されてもよい。
【0050】
所望される場合、間隔カップリングが、別の条件として付加されてもよい。
7.所定の継続時間未満の結合間隔N〜N−3
ここで、「所定の継続時間(Duration)」は、800〜1200msの範囲である。この条件およびその変形はまた、以下の
図11〜13および14A〜14Bに関連して説明される。
【0051】
図6は、短いシリーズおよび長いシリーズの相関解析に対する解析的手法を示す。
図6は、一連の検出事象について相関スコアをプロットするプロット140を示す。Xとして示す相関スコアは、広い帯域148を規定するライン144および146、ならびに、狭い帯域154を規定するライン150および152に対してプロットされる。
【0052】
広い帯域148は、たとえば
図7Aに示すように、ライン146より低いスコアを有する1つの検出事象によって分離された、ライン144を超えるスコアを有する2つの検出事象が存在するときに、過検出を識別するために適用される。狭い帯域154は、たとえば
図7Bに示すように、一連の連続する検出が、交互に、ライン150を超えまたライン152より低くなるときに、過検出(複数可)を識別するために適用される。数値が、例示のために各閾値について示され、これらの数値は、相関をパーセンテージとして使用してもよい。
【0053】
狭い帯域154は、相関スコアに関して広い帯域152より厳格性に欠ける基準を適用する。したがって、低いスコアの事象を廃棄する決定を行う前に、より多くの事象が解析される。1つの例示的な実施例では、事象は、狭い帯域154を使用して廃棄されず、ついには、
図7Bに示す8事象パターンが満たされ、その時点で、低いスコアの事象のうちの1〜4の事象が廃棄され、廃棄される各事象の周りの間隔が補正される。この初期ステップにおいてパターンを満たした後、最新の低いスコアの事象だけが、廃棄されることとなる。解析的目的のために、以前に廃棄された事象は、たとえレート計算から排除されても、8連続アウトサイド規則(8-consecutive-outside rule)が満たされるかどうかを判定するために使用される。別の実施形態は、5つの事象だけを使用し、狭い帯域154を使用して、高−低−高−低−高のシーケンスを探し、こうしたシーケンスが発見される場合、低いスコアの事象の一方または両方が廃棄される。
【0054】
図6および7A〜7Bの実施例は、数値を示しており、50%および20%は広い帯域148を境界付け、40%および25%は狭い帯域154を境界付ける。これらの数値は例示であるに過ぎない。一実施例では、これらの数値は、
図16の510に示す式をパーセンテージベースにスケーリングすることによって適用される。
【0055】
図8A〜8Bは、テンプレートに対する観測される相関レベルに対して相関解析を調節する実施例を示す。
図8Aを参照して、テンプレートを一連の事象と比較するための相関スコアのプロットが158に示される。2重検出を識別するために、奇数番号事象について平均相関スコアが計算される。奇数番号事象のクラスタリングは、その後、たとえば、そのセットの標準偏差を使用して、または、一定距離を使用して、奇数番号事象が全て、その平均から予め規定された距離内に入るかどうかを判定することによって解析される。奇数番号事象が全て、平均から予め規定された距離内に入る場合、低い境界からの平均の分離が計算される。分離が所定の閾値より大きい場合、奇数番号事象がQRS群検出であるという推定を支持する単調性を、奇数番号事象が示していると判定される。奇数番号事象の単調性が識別される場合、低い閾値より低くなる偶数番号事象の1つまたは複数は、過検出としてマーク付けされる。
【0056】
別の実施形態では、偶数番号事象の任意の事象が過検出としてマーク付けされる前に、偶数番号事象のクラスタリングが起こったかどうかを、やはり偶数番号事象の平均を使用して判定するために、偶数番号事象が全て解析される。低い境界からの奇数番号事象平均の分離ではなく、偶数事象平均と奇数事象平均との分離が、事象のグルーピングを確立するために計算される。この実施形態では、過検出マーカは、偶数番号事象の十分なクラスタリングが現れるときにだけ適用される。
【0057】
図8Bは、過検出のマーク付けが、静的テンプレートに対する相関スコアに対して調節される別の実施例を示す。ここで、10事象のセットについての平均相関スコアが計算される。「空白(blank )」帯域が、その後、平均相関スコアの周りに確立される。たとえば、空白帯域は、+/−15%として規定されてもよい。他の「空白帯域(blank band)」サイズが使用されてもよい。
【0058】
図8Bの実施例では、高いスコアは、空白帯域を越えるスコアとして規定され、低いスコアは、空白帯域より低いスコアである。高−低−高のパターンが空白帯域の周りに現れる場合、過検出が識別され得り、低いスコアの事象の1つまたは複数は、過検出としてマーク付けされる。
【0059】
静的テンプレートの代わりに、
図8A〜8Bによって示される解析はまた、最新の検出事象を比較用のテンプレートとして使用して適用されてもよい。
図8A〜8Bについて述べる解析は、平均(mean)/算術平均(average )アベレージの計算を使用してもよく、または、最頻値、中央値、または他の数学的演算を含む、信号についての中心点のある他の予測子を使用してもよい。
【0060】
ここで示す事象間比較のさらなる使用は、ショック可能な律動が起こっているかどうかについての判定においてであってよい。刺激送出は、多形性心室頻脈および心室細動などの多形性状態に対処するために使用されることが多い。単形性心室頻脈(MVT)などの単形性状態は、処置されうるが、最もエネルギーの大きな処置を常に必要としない。たとえば、MVTは、徐細動またはカルディオバージョンの代わりに、抗頻脈ペーシング(ATP)を使用して処置されてもよい。その理由は、ATPが、少ないエネルギーを使用し、また、患者にとって外傷が少ない可能性がある。相関パターンは、単形性不整脈と多形性不整脈とを区別するために使用されうる。たとえば、高い相関が一貫して見出される
図7Aまたは7Bあるいはさらに
図6に示す進行中のパターンは、所望である場合、治療を遅延させるために使用されうる。
【0061】
別の実施例では、
図8Aに示すパターンは、クラスター化した高いスコアについての標準偏差のサイズを確定することによってさらに解析されてもよい。クラスター化した高いスコアが、静的テンプレートに基づき、かつ、低い標準偏差を示す場合、これは、単形性状態を示す可能性がある。一つの実施形態では、特にATPが利用可能である場合、単形性状態が、より多形性の状態に分解されるまで、治療が止められてもよい。
【0062】
一実施例では、システムは、処置可能な不整脈を識別するために、段階的相関解析を使用する。実施例では、静的テンプレートを使用する簡単な単一事象相関解析が、
図8Aに示すパターンが現れるまで実行される。こうしたパターンは、その後、
図4〜5に示す複数の事象間比較のきっかけとなる。そして、事象間比較が潜在的な過検出を示す場合、間隔データが補正されてもよい。さらに、事象間比較が単形性状態を示す場合、治療が止められてもよい。
【0063】
図9は、捕捉信号を相関解析テンプレートにアラインする方法および再アラインする方法を示す。相関解析テンプレートは200に示され、信号は202に示される。相関解析テンプレート200は、静的テンプレートであってよく、または、単一検出事象またはいくつかの最新の検出事象の平均を表してもよい。
【0064】
図16に述べるように、相関解析は、通常、順序付けされた一連のテンプレート値および信号サンプルについてのアライメントガイドとして基準点を使用する。
図9の実施例では、ベースアライメント点は、最大マグニチュードを有するテンプレート200および信号202のそれぞれのサンプルとして識別される。そして、210に示すベースアラインされた相関、212に示す右への単一サンプルシフト相関、および、214に示す左への単一サンプルシフト相関で始まる一連の比較が行われる。シフト1右相関212は、ベース相関210についての相関スコアより悪いため、シフト1右相関212の結果が廃棄される。シフト1左相関214は、アラインされた相関210より高い相関をもたらすため、ベース相関210の結果が廃棄され、別のシフト左相関が、今度はアライメント点を2つのサンプルだけオフセットして、216にて計算される。216の結果は、214のシフト1左相関より低い相関を示すため、プロセスは、停止し、シフト1左相関214について計算された相関スコアを、信号202についての相関スコアとして使用する。
【0065】
右および/または左へのシフトを実施するとき、テンプレートに対する信号のスケーリングが同様に修正されてもよい。たとえば、信号についてのピークとテンプレートについてのピークを比較し、その後、両者を等しくすることによって、スケーリングが最初に実施される場合、シフトするとすぐ、信号についてのピークは、代わりに、シフトが起こった後のテンプレート内の、そのピークがアラインする点にスケーリングされてもよい。
【0066】
図9に示す方法は、サンプル202のピークアライメント点を最適といえなくさせる可能性がある、ノイズまたはサンプリングアーチファクト、スルーレートなどに基づくミスアライメントを補正するのに役立つ可能性がある。方法は、最大相関スコアが見出されるまで、基準点がアラインされるとき、同様に、2つの方向のそれぞれの方向に1つまたは複数のサンプルだけ基準点がミスアラインされるときに、相関スコアを計算することを含む。所望に応じて、左または右へシフトするサンプル数に関する制限が設けられてもよい。別の実施形態では、いくつかの(たとえば、1つのベースの、左へ1つ、2つ、および3つの、右へ2つおよび3つの)スコアが、自動的に計算され、最良の値が選択される。
【0067】
図9で強調される別の実施形態では、複数のアライメント点が、テンプレート200について規定され得る。いくつかの例は、QRS開始、最大振幅、最大振幅の反対極性の最大振幅(最大振幅は、それぞれの最大振幅がdV/dt=0である転換点であることによって示される)、2つの主要なピーク間の最大傾斜点(dV/dt=MAXなどとして示される)を含む。信号内の類似点を識別することによって、方法は、考えられる異なるアライメント点の使用が、異なる相関解析結果を提供することになるかどうかを判定し得る。たとえば、デフォルトは、全体の信号の最大振幅点を使用することであってよいが、デフォルトは、代わりに、最大振幅点に続く単形性セグメント内の最大傾斜点を使用して一部の心臓事象がアラインされうることであってよい。
【0068】
図10は、相関解析のために、テンプレートを格納し、適用する別の方法を示す。この実施例では、テンプレート用の基礎を形成する信号が、230に示される。例示的な実施例の場合、テンプレートが形成されると、信号230の正のピークと負のピークとの間に補間領域が規定される。結果として、格納されたテンプレートは、240に示す形態をとる。テンプレート240は、正のピークの前の領域および負のピークの後の領域についてテンプレート信号230に一致するが、242の点線で示すように、2つのピーク間で融通性がある。正のピークは、図示する実施例では、テンプレート内の最大マグニチュードのピークであるため、捕捉信号に対してテンプレートをスケーリングするために使用される。
【0069】
サンプル232に対するアライメントは、その後、244に示すように実施される。正のピークおよび負のピークが、捕捉信号にアラインされ、正のピークと負のピークとの間で線形補間を有するように、テンプレートが調整される。正のピークおよび負のピークの外側では、テンプレートは、230に示すように、信号に一致し続けるが、正のピークと負のピークとの間の継続時間および傾斜は、捕捉事象に一致するように調整される。
図10に示す調整は、そのQRS幅がレートによって影響を受ける患者について、静的テンプレートが、継続時間が固定されるという困難さを回避する可能性がある。行われる調整は、テンプレートを過剰に幅広化することを回避するために制限されてもよい。
【0070】
別の実施例では、3つ以上のテンプレート点が識別され、テンプレート点間で線形補間が使用されてもよい。たとえば、テンプレートは、それぞれが相対的振幅および相対的場所を有する5つの値で構成されてもよい。検出事象がテンプレートと比較されると、検出事象の幅およびピーク振幅は、テンプレートの値のそれぞれをスケーリングするために使用され、テンプレート点間に線形補間が施される。
【0071】
図11〜12は、潜在的な過検出の識別に続いて、データ補正を止める方法を示す。
図11に示すように、QRS群は260にて起こり、続いて、262に示す心室期外収縮(PVC)が起こり、続いて、264にて別のQRS群が起こる。PVCは、この実施例では、テンプレートに対する低い相関を特徴とする。そのため、
図3Aで先に示したパターンと同様の、高−低−高の相関パターンが現れる。したがって、一つの実施例は、PVC262を廃棄するものとなる。しかし、解析的には、PVC262が、実際には、過検出事象でないため、PVC262を廃棄することは必要でない可能性がある。さらに、PVC262の周りの間隔は共に、500ミリ秒より大きい。たとえデータ補正がない場合でも、2つの間隔の平均は、約103拍動/分の事象レート、不必要な治療をもたらす怖れがないと思われるレートをもたらすこととなる。そのため、データ補正は、拍動感度を低減しながら、デバイス内の律動特異性を改善しないであろう。
【0072】
図12は、
図11に示すPVC262を廃棄することを回避し得る方法を示す。検出事象270に基づいて、方法は、272に示すように、2重検出(DD)または過検出の発見を支持するであろう相関スコアシーケンスが現れているかどうかを判定する。現れていない場合、データ補正が全く起こりそうにないため、方法は終了する。272からの結果が「はい」である場合、方法は、次に、274に示すように、データ補正から得られることになる新しい間隔が、所定の閾値より大きくなるかどうかを判定することを含む。例示的な実施例では、閾値は1000ms(60拍動/分)であるが、この数値は例示に過ぎない。いくつかの可能性のある閾値は、750〜1200ミリ秒の範囲にある。
【0073】
別の実施例では、解析の順序が逆にされ、計算レートが高く(しばしば、150bpm以上で)なければ、または、影響を受けうる間隔が、適用される試験をパスするのに十分に短くなければ、過検出解析は起こらない。別の実施形態では、個々の間隔が、(たとえば、400〜600msの範囲の)閾値と比較され、個々の間隔が共に、閾値を超える場合、間隔結合は起こらない。なお別の実施例では、閾値は、埋め込み型システムのプログラマブルなパラメータであってよい。別の実施例では、閾値は、埋め込み型システムが心室頻脈レートとして扱うことになる拍動レートを設定するために使用されるプログラマブルなVTパラメータに基づいてスケーリングされてもよい。
【0074】
補正された間隔が閾値より長くない場合、方法は、過検出事象(複数可)を補正するために、276に示すように、間隔を結合するステップを継続して行う。ステップ274にて、補正された間隔が閾値より長い場合、方法は、間隔を結合することなく、終了するだけである。こうして、格納されたデータの不必要な補正が回避され得る。
【0075】
図13は、過検出の識別後に相関解析を止めるさらなる方法を示す。
図13の方法は、生理的心周期のQT間隔とRR間隔との間の既知の関係を利用する。例示的な方法は、再び、300に示すように、過検出を示唆するパターンの識別で始まる。その後、302に示すように、潜在的な過検出事象が、T波として扱われ(ここで、推定は、3事象パターンが識別され、3つのうちの中間事象が潜在的な過検出であるということであり、他の変形が使用されてもよい)、304に示すように、潜在的な過検出のいずれかの側の事象が、R波として扱われる。
【0076】
ステップ302および304からの、これらの「推定される」R波およびT波は、その後、ステップ306にて、RR間隔からQT長を計算する公式を適用するために使用される。特に、いくつかの考えられる公式が、308に示される。実施例は、バゼットの公式(Bazett's formula):
【0077】
【数1】
フリデリシアの公式(Fridericia's formula):
【0078】
【数2】
およびサジー(Sagie )らの回帰式(regression formula):
【0079】
【数3】
を含む。サジーらは、A=0.154であることを見出した。
【0080】
各公式において、予想されるQTはQT(Exp)として示され、値RRは秒で与えられ、値QTは、インプラントとプログラマとの間で、プログラミングセッション中に捕捉される。QTは、60拍動/分の心拍数で捕捉されるか、または、60拍動/分の心拍数について調整される。RR間隔は、304にて見出され、測定されるQT間隔は、第1のR波と、推定されるT波との間の間隔に、推定されるT波の測定幅を加算することによって捕捉され得る。
【0081】
予想は、潜在的な過検出事象が過検出T波である場合、ある帯域が誤差を許容する状態で、適用される公式がいずれの公式であれそれを使用して、RRが与えられると、測定されるQT期間が予想されるQT値に一致することになるということである。
【0082】
306にて適用される公式が一致をもたらさない場合、310に示すように廃棄は起こらない。あるいは、306にて適用される公式が一致をもたらす場合、潜在的な過検出は、312に示すように廃棄される。潜在的な過検出が、312にて廃棄されると、過検出の周りの間隔が、
図3Bで先に示したように結合される。もう一度、解析の順序が、他の実施例において逆にされる。
【0083】
図14A〜14Bは、
図13に示す方法の適用を示す。
図14Aおよび14Bの実施例では、フリデリシアの3乗根の公式が適用される。各実施例では、前に測定されたQTは400ミリ秒である。この値は、60bpmの心拍数で起こるであろう仮定上の患者についての推定されるQT間隔を表す。
【0084】
図14Aを参照して、過検出を示す相関パターンを有する3つの事象X、Y、およびZが与えられると、方法は、YがT波であると推定することによって適用される。QT間隔が、XおよびYについて測定され、RR間隔が、示すように、XからZまで測定される。測定されるQTも参照され、これらの値が、選択された公式に挿入される。示す実施例では、RR=0.8秒を使用して、QTについて予想される値は、371ミリ秒である。計算のために+/−10%誤差の帯域を適用して、許容可能な範囲は、QTについて約334〜408ミリ秒である。しかし、図示するように、測定間隔は、約500ミリ秒であり、長過ぎて、所与のパラメータについてのQT間隔にならない。結果として、計算は、Y検出が過検出T波でないと示唆し、したがって、データ補正は起こらない。より小さいまたはより大きな誤差帯域が適用されてもよい。たとえば、+/−5%誤差の帯域が、別の例示的な実施例で使用される。
【0085】
代わりに
図14Bを参照して、今度は、XおよびYについて測定されるQT間隔は約370ミリ秒である。この値は、予想範囲内に入り、したがって、計算は、Y検出が過検出T波であると示唆する。したがって、Y検出は廃棄され、XとZとの間の間隔データが補正される。
【0086】
図11〜13および14Bの実施例では、潜在的な過検出が廃棄されず、データ補正をもたらす場合、潜在的な過検出は、代わりに、疑わしい検出としてマーク付けされてもよい。ある実施例では、疑わしい検出は、心臓活動のインジケータとしても、レート解析で使用されうる間隔の終点としても信頼性がないものとして扱われる。潜在的な過検出が、疑わしい検出としてマーク付けされる場合、疑わしい検出ならびに疑わしい検出の周りの先行する間隔および後続の間隔のそれぞれが、解析から完全に取除かれる。
【0087】
図15は、ショック可能な検出事象および処置可能な律動を識別するための解析方法を示す。
図15は、事象検出402、それに続く、波形評価404および拍動認定406の複数のステップを含むことによる解析方法の横断的構造を示す。特に、事象検出402は、通常、心臓事象を示す信号振幅変化を検出するために、捕捉信号を監視することを含むことになる。402にて、心臓事象が捕捉されると、波形評価404が起こりうる。波形評価404中に、検出事象に関連する信号の特性が、ノイズまたはアーチファクトによって生じる可能性がある検出事象を識別し、なくすために解析される。
【0088】
次に、波形評価404をパスする検出事象は、拍動認定406を受け、拍動認定406中に、検出事象は、正確な検出を示す形態または間隔特性を示すかどうかを判定するために解析される。これは、先に示した相関解析、および/または複数の間隔すなわち2つの間隔の結合の解析を含んでもよく、たとえば、幅広で複雑な2重検出をなくすための解析は、潜在的な過検出を識別するために、検出事象の近接性および形状特性を使用し得る。さらなる説明は、「METHODS AND DEVICES FOR ACCURATELY CLASSIFYING CARDIAC ACTIVITY」という名称の米国特許出願番号第12/399,914号に記載されている。
【0089】
そして、アーキテクチャは、ブロック408にてレートの考慮によって始まりうる律動分類に頼る。レートが低い場合、個々の検出は、410に示すように、「ショック不可能(Not Shockable )」としてマーク付けされる。あるいは、レートは、非常に高い場合、心室細動(VF)を示すと考えられ、したがって、412に示すように、「ショック可能(Shockable )」としてマーク付けされる。これらの低いレート帯域とVFレート帯域との間に、心室頻脈(VT)ゾーンが存在し、VTゾーン内のレートは、414に示すように、検出向上(Detection Enhancement)と呼ばれることになるものを使用して解析される。
【0090】
検出向上の実施例は、次の通りである。
1.静的テンプレートと比較する:一致する場合、ショック不可能である、そうでなければ、
2.動的テンプレートと比較する:一致しない場合、ショック可能である、そうでなければ、
3.QRS幅閾値と比較する:幅広である場合、ショック可能であり、そうでなければショック不可能である。
ここで、動的テンプレートは、以下のもののうちの任意のものでありうる。
【0091】
a)互いに相関するいくつかの以前の検出の平均、
b)個々の事象のセット、たとえば、{N−1、…、N−i}、ここで、個々の事象の一部または全てに一致することは、動的テンプレートに一致することとして計数する、
c)連続して更新されるテンプレート。
【0092】
先に述べたQRS幅閾値は、所与のシステムで使用されるQRS幅測定法に対して調節されうる、および/または個々の患者に対して調節されてもよい種々の方法で適用されてもよい。一実施例では、以下の規則がQRS幅に当てはまる。
【0093】
x)QRS幅は、解析中、基準点の前の、不応期中に捕捉される最も長い単調セグメントの開始から、基準点の後の、不応期中に捕捉される最も長い単調セグメントの終了までの継続時間として計算され、
y)QRS幅は、プログラミングセッション中に患者について測定され、113msの最大許容可能値を有し、
z)解析中のQRS幅は、QRS幅閾値より少なくとも20ms長い場合、幅広であると考えられる。
これらの規則x)、y)、およびz)は、1つの特定の実施形態に対して調節され、使用されるシステムに応じて変わる可能性がある。
【0094】
ショック不可能410またはショック可能412として事象をマーク付けすることに続いて、X/Yカウンタ条件が、416に示すように適用される。X/Yカウンタ条件は、波形評価404と拍動認定406の両方をパスする検出事象の以前のセットY中にマーク付けされるショック可能事象の数Xを解析する。適用される比および使用されるセットサイズは、変わる可能性がある。一実施形態は、416にて、18/24X/Yカウンタ条件を適用する。他の実施形態は、12のうちの8または9、16のうちの12または13、24/32などとして比を使用する。
【0095】
X/Y条件が満たされない場合、418に示すように、ショックは送出されないことになる。X/Y条件が満たされる場合、方法は、充電確認ブロック420に進んでもよい。たとえば、一つの実施形態は、X/Y比/セットサイズが、選択された数の連続する事象について満たされることを必要とし、この条件が、充電確認420において試験されてもよい。別の例示的な条件は、直前の検出事象のセットNが、全てショック可能である、すなわち、検出された不整脈が進行中であるという結論を支持するのに十分に短い間隔を有しているかどうかを判定することである。他の因子はまた、たとえば、過検出が、最近になって記録されたかどうかを観測することによって(「不整脈」が過剰計数の表示でないことを保証するために、治療が遅延されるべきであることを示唆する可能性がある)、または、一貫性がある長い間隔が検出されたかどうかを観測することによって(患者による正常律動への自発的な転換を示唆する可能性がある)、充電確認において適用されてもよい。たとえば、充電確認420はまた、その開示が参照により本明細書に組込まれる「METHOD FOR ADAPTING CHAREGE INITIATION FOR AN IMPLANTABLE CARDIOVERTER−DEFIBRILLATOR」という名称の、同一譲受人に譲渡され、同時係属中の米国特許出願第11/042,911号に示すような方法を含んでもよい。
【0096】
充電およびショックブロック422は、充電確認420がパスする場合、到達される。通常、充電プロセスは、ある期間かかるため、方法400は、充電が終了する前に、何回か繰返してもよい。充電が開始すべきであるという初期判定に達するために使用される解析の一部または全ては、このプロセス中に繰返されてもよい。最後に、処置可能状態が、充電中に持続するか、または、充電に続いて識別される場合、刺激が送出されてもよい。
【0097】
埋め込み型システムに関して、種々のハードウェア機構が組込まれてもよい。たとえば、リチウムイオン電池などの任意の適した化学電池が使用されてもよい。治療出力は、1つまたはいくつかのキャパシタを使用して刺激レベルに達するまでエネルギーを貯蔵するために、容量性システムを使用して作られ得る。フライバック変圧器回路などの充電回路は、治療電圧を生成するために使用され得る。治療は、たとえば、Hブリッジ回路またはその改良型を使用して送出され得る。解析機能を実施するために、専用または汎用回路要素が使用されてもよい。たとえば、専用の心臓信号アナログ−デジタル回路、ならびに、所望に応じて、専用相関解析ブロックが使用されてもよく、一方、他の機能は、マイクロコントローラによって実施されてもよい。スタティックメモリおよびダイナミックメモリが、任意の適した機能のために設けられ、使用されてもよい。これらの要素は全て、埋め込み型心臓刺激システム用の作動回路要素のコンポーネントであってよい。
【0098】
本発明が、本明細書で述べられ、考えられる特定の実施形態以外の種々の形態でもよいことを当業者は認識し得る。したがって、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく実施形態の変更が行われてもよい。