(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656294
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッドの合金
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20141225BHJP
C22C 38/42 20060101ALI20141225BHJP
C22C 38/44 20060101ALI20141225BHJP
C21C 7/00 20060101ALI20141225BHJP
B22D 27/20 20060101ALI20141225BHJP
B22D 25/02 20060101ALI20141225BHJP
A63B 53/04 20150101ALI20141225BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
C22C38/42
C22C38/44
C21C7/00 A
B22D27/20 B
B22D25/02 Z
A63B53/04 B
A63B53/04 G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-1876(P2012-1876)
(22)【出願日】2012年1月10日
(65)【公開番号】特開2012-144807(P2012-144807A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2012年1月13日
(31)【優先権主張番号】100101186
(32)【優先日】2011年1月13日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】511048409
【氏名又は名称】復盛應用科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100129469
【弁理士】
【氏名又は名称】池山 和生
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】陳 建同
(72)【発明者】
【氏名】蔡 文慶
(72)【発明者】
【氏名】胡 勝智
(72)【発明者】
【氏名】曾 慶聰
【審査官】
河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−069522(JP,A)
【文献】
特開昭62−256949(JP,A)
【文献】
特開2011−058040(JP,A)
【文献】
特開平06−269520(JP,A)
【文献】
特開平04−202643(JP,A)
【文献】
特開2003−193202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00−38/60
A63B 53/00−53/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量百分率で2.5%から4.0%の銅、5.0%から6.0%のニッケル、15%から18%のクロム、0.65%から0.81%のシリコン、0.66%から0.78%のマンガン、0.002%から0.125%のモリブデン、残部の鉄および不可避不純物からなる合金であって、上記銅/ニッケルの比が0.4から0.8で、かつ上記合金は同時にオーステナイト相、フェライト相とマルテンサイト相の組織を有することを特徴とするゴルフクラブヘッドの合金。
【請求項2】
上記合金の銅は質量百分率で2.8%から3.5%であることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの合金。
【請求項3】
上記合金のクロムは質量百分率で15.5%から17%であることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの合金。
【請求項4】
上記合金の不可避不純物には質量百分率で0.027%より低い燐、0.019%より低い硫黄および0.06%より低い炭素が含まれることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合金およびその製造方法に関するもので、特にゴルフクラブヘッドの
合金に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、異なる使用者の需要性に応じるべく、通常、ゴルフクラブヘッドの一体成形のホーゼルは傾斜角度を調整しやすい特性を有しなければならない。そのため、従来のゴルフクラブヘッドの一体成形ホーゼルは硬度の低い軟鉄材質、例えば、低炭素鋼または低合金鋼などの材質により製造されるため、ゴルフクラブヘッドのホーゼルは上述したように傾斜角度を調整しやすい特性を有するように形成される。しかし、上記軟鉄材質では酸化しやすく、かつ耐腐蝕性に乏しいという問題点があった。
【0003】
上述した問題点を改良するべく、中華民国公告第438610号と460306号においては、全てSUS17−4PH規格のステンレス鋼の材質でゴルフクラブヘッドを製造するものが提案されており、製造されるゴルフクラブヘッドは同時に低い硬度と比較的良好な耐腐蝕性を有するように形成される。
【0004】
このSUS17−4PHステンレス鋼の機械的性質と熱処理条件の数値はそれぞれ表1と表2に示す如くである。
【表1】
【表2】
【0005】
このうち、表2の中の注解Aの鋳造の熱処理は、固溶化熱処理1040℃の平均温度60分間窒素冷却、時効処理580℃の持続温度90分間を指す。注解Bの鋳造の熱処理は、固溶化熱処理1040℃の平均温度60分間窒素冷却、時効処理538℃の持続温度240分間を指す。注解Cの鋳造の熱処理は、固溶化熱処理1040℃平均温度60分間窒素冷却、時効処理482℃の持続温度240分間を指す。注解Dの板材の一般熱処理は、固溶化熱処理1040℃の平均温度60分間窒素冷却、時効処理482℃の持続温度240分間を指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中華民国公告第438610号
【特許文献2】中華民国公告第460306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のゴルフクラブヘッドにおいては、一般的に次のような問題点を有している。表1と表2から知ることができるように、上記SUS17−4PHのステンレス鋼の中に、ニッケル成分が占める比率が僅か約4.0wt%であるため、延性が比較的悪く、かつ依然として比較的高い降伏強度の数値を有する。仮に上記SUS17−4PHのステンレス鋼をゴルフクラブヘッドの材質にすると、上記ゴルフクラブヘッドは延性が比較的悪いため、または降伏強度の数値が比較的高いため、傾斜角度の調整がし難くなるという問題点があった。そのため、上述した従来のゴルフクラブヘッドの合金およびその製造方法についてはさらに改良を必要とするものであった。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みて発明されたものであって、その主な目的とするところは、銅/ニッケルの比を調整することにより、ゴルフクラブヘッドの合金の硬度、引張強度と降伏強度を低く抑えることができるゴルフクラブヘッドの合金を提供することにある。
【0009】
本発明の第二の目的は、上記合金は同時にオーステナイト相、フェライト相とマルテンサイト相の組織を有することができるゴルフクラブヘッドの
合金を提供することである。
【0010】
本発明の第三の目的は、特定の銅/ニッケルの比を有する配分で同時にオーステナイト、フェライトとマルテンサイトの組織を有する合金を製造することができるゴルフクラブヘッドの
合金を提供するである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によるゴルフクラブヘッドの合金は、質量百分率で計算すると2.5%から4.0%の銅、5.0%から6.0%のニッケル、15%から18%のクロム、残部鉄および不可避不純物からなる合金であって、上記銅/ニッケルの比が0.4から0.8で、かつ上記合金が同時にオーステナイト相、フェライト相とマルテンサイト相の組織を有する。
【0012】
また、本発明によるゴルフクラブヘッドの合金は、上記合金には質量百分率で計算すると2.8%から3.5%の銅が含まれることもできる。また、上記合金には質量百分率で計算すると15.5%から17%のクロムが含まれることもできる。また、上記合金には質量百分率で計算すると0.65%から0.81%のシリコンが含まれることもできる。また、上記合金には質量百分率で計算すると0.66%から0.78%のマンガン銅が含まれることもできる。また、上記合金には質量百分率で計算すると0.002%から0.125%のモリブデンが含まれることもできる。また、上記合金には質量百分率で計算すると0.027%より低い燐、0.019%より低い硫黄と0.06%より低い炭素が含まれることもできる。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明によるゴルフクラブヘッドの合金の製造方法は、順序に従って母合金、クロム鉄、銅とニッケルを高温熔炉の中に加入することにより、上記金属を熔融して混合する熔融の段階と、上記熔融された後の混合金属は質量百分率で計算すると2.5%から4.0%の銅、5.0%から6.0%のニッケル、15%から18%のクロム、かつ銅/ニッケルの比が0.4から0.8で、残部鉄および不可避不純物により構成され、さらに上記比率を維持することにより、上記熔融の混合金属はオーステナイト相、フェライト相とマルテンサイト相を兼ねて有する合金に形成する比率維持の段階と、上記合金を用いて精密鋳造を行なうことによりゴルフクラブヘッドを形成するヘッド鋳造の段階とを含む。
【0014】
さらに、本発明によるゴルフクラブヘッドの合金の製造方法は、上記母合金には鉄以外に質量百分率で計算すると、0.04%の炭素、0.80%のシリコン、1.00%のマンガン、6.38%のニッケル、22.9%のクロム、0.90%のモリブデン、0.03%の燐と0.01%の硫黄が含まれることもできる。また、上記比率維持の段階において、上記銅の質量百分率が2.8%から3.5%であることもできる。また、上記比率維持の段階において、上記クロムの質量百分率は15.5%から17%であることもできる。また、上記比率維持の段階において、上記熔融された後の混合金属には他に質量百分率で計算すると0.027%より低い燐、0.019%より低い硫黄と0.06%より低い炭素が含まれることもできる。また、上記熔融の段階において、さらに進んでシリコン鉄が加入され、かつ上記比率維持の段階において、上記熔融された後の混合金属には他に質量百分率で計算すると0.65%から0.81%のシリコンが含まれることもできる。また、上記熔融の段階において、さらに進んでマンガン鉄が加入され、かつ上記比率維持の段階において、上記熔融された後の混合金属には他に質量百分率で計算すると0.66%から0.78%のマンガンが含まれることもできる。また、上記熔融の段階において、さらに進んでモリブデン鉄が加入され、かつ上記比率維持の段階において、上記熔融された後の混合金属には他に質量百分率で計算すると0.002%から0.125%のモリブデンが含まれることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のゴルフクラブヘッドの合金によれば、銅/ニッケルの比を調整することにより、ゴルフクラブヘッドの合金の硬度、引張強度と降伏強度を低く抑えることができるという利点がある。
【0016】
本発明のゴルフクラブヘッドの合金の製造方法によれば、上記合金は同時にオーステナイト相、フェライト相とマルテンサイト相の組織を有することができるという利点がある。
【0017】
本発明のゴルフクラブヘッドの合金の製造方法によれば、特定の銅/ニッケルの比を有する配分で同時にオーステナイト、フェライトとマルテンサイトの組織を有する合金を製造することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明のゴルフクラブヘッドの合金の製造方法のブロックである。
【
図2】
図2は、本発明のゴルフクラブヘッドの合金の相の組織図(200倍)である。
【
図3】
図3は、本発明のゴルフクラブヘッドの合金の相の組織図(500倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、以下、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明のゴルフクラブヘッドの合金の製造方法のブロックである。
図1を参照すると、本発明のゴルフクラブヘッドの合金の製造方法は主に熔融の段階S1と、比率維持の段階S2と、ヘッド鋳造の段階S3とが含まれる。
【0021】
本発明の熔融の段階S1においては、順序に従って母合金、クロム鉄、銅とニッケルなどの材料を高温の熔炉の中に加入することにより、上記材料を熔融して混合する。さらに詳しく言えば、上述した銅、クロム、ニッケルと鉄を主な成分とする材料は高温の熔炉(例えば高周波炉)の中で熔融された後、混合によって特定の組成比率と特定の組成相を有する銅、ニッケル、クロムと鉄などの元素の合金材質が形成されるため、後続の段階においてゴルフクラブヘッドの基材(matrix)として使用することができる。本実施形態において使用される母合金は鉄以外に質量百分率で計算すると0.04%の炭素、0.80%のシリコン、1.00%のマンガン、6.38%のニッケル、22.9%のクロム、0.90%のモリブデン、0.03%の燐と0.01%の硫黄が含まれる。また、当然ながら使用上の需要性に応じて異なる材料に変えて熔融することにより、同じ組成の比率を有する鉄合金の材質を形成することができる。
【0022】
その他に、本発明において好ましく特定の熔融の順序に従って母合金、シリコン鉄、マンガン鉄、クロム鉄、モリブデン鉄、銅、ニッケルなどの材料を高温の熔炉(例えば高周波炉)の中に入れて合金の熔解の製造工程を行なうことにより、上記熔融される合金の中に他にシリコン、マンガンとモリブデンなどのその他の成分が含まれるため、熔融されて出来上がる合金は適当な特性を有することができる。また、特定の熔融の順序に従って上記材料を入れることにより、上記材料が熔融される時に沈殿現象が生じるのを避けることができ、さらに後続の段階で製造されるヘッドの完成品の歩留まりが下がるのを防止することができる。さらに、本実施形態においては細粒状態の上記材料を使用し、かつできるだけ少量多数の方式で高温の熔炉の中にゆっくり入れることで、上記材料を大量に入れることによって上記材料が完全に熔融できずに団塊状に付着してしまうのを避けることができ、さらに高温の熔炉の中において空洞または気泡が生じることで危険性が生じるのを避けることができる。
【0023】
再び
図1を参照すると、本発明の比率維持の段階S2においては、上述した上記材料の組成を、質量百分率で、2.5%から4.0%の銅、5.0%から6.0%のニッケル、15%から18%のクロム、残部鉄および不可避不純物に維持し、かつ上記銅/ニッケルの比は0.4から0.8であるため、上記材料は共同で同時にオーステナイト相、フェライト相とマルテンサイト相の組織を兼ねて有するように形成される。さらに詳しく言えば、上記材料が順序に従って高温の熔炉の中に加入されて熔融の合金に形成された後、それからサンプルを抜き取って熔融合金の質量の組成比率を測定することにより、上記材料の質量百分率を、2.5%から4.0%の銅、5.0%から6.0%のニッケルと15%から18%のクロム、残部鉄(65%から75%)と不可避不純物に維持し、かつ上記銅/ニッケルの比は0.4から0.8であるように確保する。
【0024】
また、上記熔融合金の中における銅の組成比率は、好ましくは、2.8%から3.5%(質量百分率で計算)、クロムのよりよい比率は15.5%から17%(質量百分率で計算)である。上記熔融合金を上記特定の組成比率と銅/ニッケルの比を維持することにより、上記熔融の合金は冷却して固化された後、オーステナイト相(austenite)、フェライト相(ferrite)とマルテンサイト相を兼ねて有する合金材質に形成される。その中に、本発明では上記ニッケルの比率を高めることにより、全体の合金の延性を高めることができる。また、仮に上記熔融合金の中の銅/ニッケルの比が0.4より低くなると、銅の比率は相対的に低くなり、ニッケルの比率は相対的に高くなるため、冷却して固化された後に形成される合金の強度は不足になる。一方、仮に上記熔融合金の中の銅/ニッケルの比が0.8より高くなると、銅の比率は相対的に高くなり、ニッケルの比率は相対的に低くなるため、冷却して固化された後に形成される合金の硬度は高過ぎることになり、ゴルフクラブヘッドとして後続における傾斜角度の調整に不利になる。そのため、本発明においては上記銅/ニッケルの比を0.4から0.8に介在させることにより、上記合金は低硬度と適当な強度を同時に有するように形成される。その中、上記合金の中にはその他の金属成分または部分的な不純物が含まれ、例えば、その他の金属成分は質量百分率で計算すると0.65%から0.81%のシリコン、0.66%から0.78%のマンガンまたは0.002%から0.125%のモリブデンで、不純物は例えば炭素(C)、硫黄(S)または燐(P)などの成分で、質量百分率で計算すると、炭素は、好ましくは、0.06%より低く、硫黄は、好ましくは、0.019%より低く、燐は、好ましくは、0.027%より低い。
【0025】
上述したように、本発明においては予定される組成比率の鉄などの各種の元素と特定の銅/ニッケルの比によってオーステナイト相、フェライト相とマルテンサイト相を兼ねて有する合金材質を形成することにより、製造される合金材質はフェライト相、オーステナイト相とマルテンサイト相の利点(例えばフェライト相の耐孔食性と低硬度、オーステナイト相の耐均一腐蝕性と耐衝撃性とマルテンサイト相の高耐磨性)を共に有すると同時に、上記三種類の鉄相の欠点(例えばフェライト相の低靭性とσ相の脆性が発生し易い問題、オーステナイト相の孔食が生じ易い問題およびマルテンサイト相の耐食性がよくない問題)を低く抑えることができる。このように、本発明のゴルフクラブヘッドの合金によれば、適当な低硬度と高延性などの優れる機械性質を有することができる。
【0026】
再び
図1を参照すると、本発明のヘッド鋳造の段階S3においては、上記合金を利用して精密鋳造を行なうことにより、予定の形状を有するゴルフクラブヘッドを形成する。さらに詳しく言えば、上記熔融合金が上述した所定の配分と銅/ニッケルの比に符合するように確認できた後、熔炉から出てくる前にエア抜きとかす取りを行なった後、直ちにそれを直接精密鋳造を行なう型の中に注入することにより、予定される形状のゴルフクラブヘッド(および/またはそのフェース板)を製造することができる。このように、鋳造を完成したゴルフクラブヘッドは熱処理を行なうことなく、直ちに脱殻、ゲート除去、カット、研磨、角度調整、艶出し研磨などの段階を行なうことにより、アイアンまたはウッドのヘッドの完成品を製造することができ、かつ、製造し得るヘッドの材質はオーステナイト相、フェライト相とマルテンサイト相を兼ねて有する混合の組成相に形成され、さらに適当な低硬度、高耐腐蝕性と高延性などの特性を有するように形成される。特に、上記低硬度と高延性の特性によってヘッドは鋳造時において比較的よい流動性と成形性を有するように形成されるため、かす穴と気孔が生じるのを減らすことができ、また、上記低硬度の特性によってヘッドは比較的大きい可塑性を有するため、角度調整を簡単に行なうことができる。
【0027】
上記ゴルフクラブヘッドを鋳造し終えた後、仮にさらに進んで一個のフェース板と熔接を行なう場合、好ましくは、熔接後において選択的に高温焼なまし処理を用いて熔接時に生じた応力を除去する。
【0028】
上述したことを総合すると、上記製造工程によって本発明のゴルフクラブヘッド用の合金を獲得することができ、上記合金は主に、質量百分率で計算すると、15%から18%のクロム、2.5%から4.0%の銅と5.0%から6.0%のニッケル、残部の鉄および不可避不純物により構成される。その中、銅/ニッケルの比は0.4から0.8であり、かつ上記合金は同時にオーステナイト相、フェライト相とマルテンサイト相の組織を有する。これにより、上記ゴルフクラブヘッド用の合金は低硬度、高延性と高耐腐蝕性を有するため、ゴルフクラブヘッドの角度調整に役立つことができる。上記合金は、好ましくは、他に0.65%から0.81%のシリコン、0.66%から0.78%のマンガンと0.002%から0.125%のモリブデンが含まれるため、上記合金の特性を適当に調整することができる。
【0029】
表3から表5を参照すると、表3は本発明と従来のSUS17−4PHのステンレス鋼の組成の差異の表であり、表4は本発明のゴルフクラブヘッド用の合金の各種の異なる実施形態の成分の組成表であり、表5は本発明の各種の異なる実施形態の機械的性質の表である。
【0033】
この結果から明らかに知ることができるように、本発明はニッケルの組成を高めることにより、さらに同時に銅/ニッケルの比を0.4から0.8の間に介在するように制御することにより、上記合金の硬度を低く下げることができるとともに、上記合金の降伏強度を低く下げることができるため、ゴルフクラブヘッドの角度調整に役立つことができる。
【0034】
図2は本発明のゴルフクラブヘッドの合金の金相の組織図(200倍)であり、
図3は本発明のゴルフクラブヘッドの合金の金相の組織図(500倍)である。
図2、3を参照すると、本発明のゴルフクラブヘッドの合金を鋳造した後、10gのK
3Fe(CN)
6+10gのKOH+100mlのH
2Oの腐蝕液で腐蝕を行なった後の合金材料の金相の組織図である。
図2と
図3はそれぞれ本発明の合金200倍と500倍による拡大のミクロ組織図で、図から知ることができるように、それはフェライト、オーステナイトとマルテンサイトを含めて三相共存のFe−Cr−Ni合金であり、すなわち同時に三相の強度と延性などの利点を有する。それよって、本発明の合金は適当に銅/ニッケルの比を制御することにより、確実に上記合金は同時にフェライト、オーステナイトとマルテンサイトによる三相共存の構造を有するように証明することができる。
【0035】
上述したことを総合すると、本発明のゴルフクラブヘッド合金は特定の比率の銅/ニッケルの比で上記合金を製造することにより、上記合金の硬度、引張強度と降伏強度を低く抑えることができるため、上記合金をゴルフクラブヘッドに製造する時に角度調整が簡単になるという利点がある。
【0036】
本発明のゴルフクラブヘッドの合金によれば、特定の比率の銅/ニッケルの比で上記合金を製造することにより、上記合金は同時にオーステナイト相、フェライト相とマルテンサイト相の組織を有するように形成される。
【0037】
本発明のゴルフクラブヘッドの合金の製作方法によれば、特定の銅/ニッケルの比を調整することによって、上述した低硬度を有する三相のステンレス鋼の合金を製造することができる。
【0038】
本発明は、その精神とび必須の特徴事項から逸脱することなく他のやり方で実施することができる。従って、本明細書に記載した好ましい実施例は例示的なものであり、限定的なものではない。