(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の内部リンクおよび前記第1の外部リンクは、それらが前記第2の内部リンクおよび前記第2の外部リンクを自由に通過できるように構成および連結される、請求項1に記載のリンク機構。
前記外部リンクの1つは、前記外部軸および前記中間軸から離間して配置された挿入軸をさらに含み、該挿入軸は前記球面回転の遠隔中心を通過する、請求項1に記載のリンク機構。
前記制約部は、前記並列の5バー球面リンク機構を前記コンパクトな姿勢の範囲に制限するために該第1の中間関節と連結された機械的停止部を含む、請求項13に記載のロボットアーム。
前記制約部は、前記コンパクトな姿勢の範囲を維持するために、前記並列の5バー球面リンク機構への2つの並列の回転運動入力のそれぞれに機械的停止部を含む、請求項13に記載のロボットアーム。
前記制約部は、該第1のリンク対および該第2のリンク対の両方が同じ「利き手」を有するように前記並列の5バー球面リンク機構の前記コンパクトな姿勢の範囲を制限する、請求項13に記載のロボットアーム。
前記ロボットアームを患者の上方に支持するために、前記並列の5バー球面リンク機構と前記台との間に連結された設置アームをさらに備える、請求項22に記載のロボットアーム。
前記方法は、前記ロボットアームを患者の上方に支持するために、前記並列の5バー球面リンク機構のリンクを台に連結することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
前記ロボットアームを患者の上に支持するために、前記並列の5バー球面リンク機構のリンクを、設置アームを有する台に連結することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
前記並列の5バー球面リンク機構の前記球面運動を前記コンパクトな姿勢の範囲内に制約することにおいて、同じ「利き手」を維持するために、前記第1の中間関節および前記第2の中間関節の運動を機械的に制限する、請求項24に記載の方法。
前記ロボットアームは、前記並列の5バー球面リンク機構と連結された第1のモータおよび第2のモータを有し、該並列の5バー球面リンク機構の前記球面運動を前記コンパクトな姿勢の範囲内に制約することにおいて、該並列の5バー球面リンク機構の該球面運動を該コンパクトな姿勢の範囲内に制約するように該第1のモータおよび該第2のモータを制御する、請求項24に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(発明の詳細な説明)
詳細な説明では、腹腔鏡手術において使用され得る場合の本発明について記載する。これは、本発明が使用され得る手術の種類の単なる一例であることを理解されたい。本発明は、腹腔鏡検査にも図示されている特定の構造配置にも限定されず、それらは本発明の理解を補助するための例に過ぎない。従来の低侵襲手術では、執刀医の手からかなりの距離の所にある手術ツールを執刀医の手の動きによって制御しているため、高度な手術技能が必要であり、多くの場合、不自然かつ非直観的な手の運動を必要とする。ロボット支援手術において、執刀医は、マスタコントローラを動作させて、手術部位における手術器具の運動を制御することができる。サーボ機構は、執刀医による手入力デバイスの操作に基づいて、手術器具を移動させ、関節を作ることができる。ロボットによる支援は、執刀医が手術器具の運動をより容易に且つ極めて正確に制御することを可能にし得る。
【0007】
図1は、本発明が使用され得る手術室の概略平面図を示す。手術台112上には、ロボット支援腹腔鏡手術を受けている患者110が示されている。執刀医120は、マスタコントローラ122を使用して、体内の手術部位のビデオ画像を見るとともに、ロボットサーボ機構を用いて1つ以上の手術器具および腹腔鏡カメラを制御することができる。マスタコントローラ122は、一般に、サーボ機構によって手術器具に連結された、1つ以上の手入力デバイス(ジョイスティック、外骨格グローブ(exoskeletal glove)等)を含むことになる。
【0008】
本発明を具現化する1つ以上のロボットアーム100、102は、ロボット支援手術中、手術部位に手術器具104を支持および移動させるために使用され得る。手術器具のツールシャフト118が、該ツールシャフトの長さに沿った空間内に配置された球面回転の中心の回りを枢動するように該器具を支持することが望ましい。追加のロボットアーム116により、腹腔鏡カメラを支持し、移動させてもよい。該カメラを支持するためのロボットアーム116は、手術器具104を支持するためのロボットアーム100、102とは異なる形態のものである。
【0009】
各ロボットアーム100、102、116は、関節のある設置アーム130、132、134によって支持され得る。設置アームは、手術台112に装着されてもよい。各設置アームは、画定された運動範囲内にロボットアームを位置づけることを可能にする1以上の自由度を提供する関節によって連結された多数のセグメントを含み得る。ロボットアームが所望の位置にある場合、設置アームのセグメントおよび関節を固定するために、1つ以上の係止機構を設けてもよい。設置アームは、ロボットアーム100、102が、手術台およびその上の患者に対して任意の位置に固定されるのを可能にすることができる。設置アームの姿勢および結果として生じる支持されたロボットアームの位置を決定することを可能にするために、設置アームに関節角度センサを設けてもよい。
【0010】
各ロボットアーム100、102は、球面回転の中心が、実質的に体内の手術部位へのアクセスポイント114にある位置(例えば、腹腔鏡手術中に腹壁においてトロカールまたはカニューレ106用の入口を提供する切開部を有するもの)に固定され得る。ロボットアーム100によって支持される手術器具104のエンドエフェクタは、ロボットアーム100によってツールシャフト118の近位端を移動させることにより、腹壁に対して危険な力を与えることなく、安全に配置され得る。
【0011】
各ロボットアーム100、102は、ロボットアームから取り外し可能であってもよい1つの手術器具を支持することになる。種々の手術器具108が、単一手術の経過中にロボットアーム100上にある手術器具104に置き換わり得る。各ロボットアーム100は、切開部114を通過して患者110の体内に至るカニューレ106を支持することができる。手術器具104のツールシャフト118は、カニューレ106を通過して体内の手術部位に至る。
【0012】
ロボットアーム100は、カニューレ106および器具のツールシャフト118が、カニューレ106の長さに沿った空間内に配置された球面回転の中心の回りを枢動するように、手術器具104を支持することができる。球面回転の中心は、ロボットアーム用の回転運動の球の中心であり、1つでロボットアームの構造体から離間して配置されていることから、球面回転の遠隔中心とも称される場合がある。球面回転の中心の回りにおける運動は、該球面回転の中心から半径方向距離にある点が、その半径として半径方向距離を有する球面上を移動することから、球面運動と称される場合がある。カニューレ106は、患者110の腹壁内にある切開部114等のアクセスポイントを通過して体内の手術部位に至る、挿入軸を画定する。ツールシャフト118は、挿入軸に沿って伸展する。
【0013】
各ロボットアーム100、102、116は、該アームを所望の位置へ移動させるために、1つ以上のサーボモータを含み得る。各ロボットアームは、手術器具104および/または該手術器具上のエンドエフェクタを移動させるために、1つ以上の追加のサーボモータを含んでもよい。1本以上の制御ケーブル124は、マスタコントローラ122内のコンピュータ123とロボットアーム100、102、116のサーボモータとの間に信号を提供し得る。マスタコントローラ122は、執刀医の入力およびサーボ機構からの受信フィードバックに基づいて、ロボットアームのサーボ機構および手術器具を制御する信号を提供するために、コンピュータ123を含み得る。
【0014】
図2は、患者110およびロボットアーム100、102、116を含む、
図1の一部の拡大図を示す。
図3は、患者の頭部から足部の方へ見たロボットアーム100、102の端面図を示す。患者110の概略断面を、カニューレ106が挿入されるエリアに示している。手術器具104のツールシャフト118は、患者110の内部にあるカニューレ106の端部から現れるのが見える。ツールシャフト118の内側端部にあるエンドエフェクタ300は、ロボットアーム100によって支持することができるサーボ機構200(
図2に示す)によって作動され得る、種々の手術ツールのいずれかを提供し得る。
【0015】
ロボットアームによってとられる特定の位置は、姿勢と称される場合がある。ロボットアームを特定の位置に設置することを、ロボットアームに姿勢をとらせると称する場合がある。
図4、5、および6は、
図1〜3に示すものと同じ姿勢において、患者の右手側で使用されるロボットアーム100の直交図である。
図4は平面図である。
図5は側面図である。
図6は端面図である。
【0016】
図2および3を再度参照すると、ロボットアーム100、102は、以下でさらに詳細に論じるように、手術器具104を支持するための球面リンク機構を含む。球面リンク機構は、カニューレ106の長さに沿って位置し得る球面回転の遠隔中心206の回りの回転に、挿入軸の運動を制約する。球面回転の遠隔中心206を、切開部114またはその付近に位置させることにより、挿入軸は、該切開部における有意な運動なく移動され得る。
【0017】
エンドエフェクタ300は、カニューレ106を通過し、挿入軸に沿って体内の手術部位へ至る。エンドエフェクタ300は、ツールシャフト118によって支持され、該ツールシャフトを介してサーボ機構200と連結される。サーボ機構200は、エンドエフェクタ300を操作することができ、挿入軸の回りにおける運動および挿入軸に沿った平行移動を含み得る種々の運動を可能にすることができる。エンドエフェクタ300の平行移動は、ツールシャフト118および装着されたエンドエフェクタを用いた手術器具104の平行移動によって達成され得る。
【0018】
エンドエフェクタ300は、その球面回転の遠隔中心206の回りでツールシャフト118を移動させることにより、2つの追加の次元において移動させられることができる。ロボットアーム100は、空間内におけるその角度位置を変化させるために、ツールシャフト118を移動させることによって、これら二次元の運動を制御することになる。ツールシャフト118の運動は、球面座標系内における挿入軸の位置の観点から説明され得る。空間内の点は、2つの角度および球面座標系の中心からの距離の観点から特定され得る。球面座標系の中心を通過する挿入軸を特定するためには、その2つの角度があればよいことが十分に理解されるであろう。
【0019】
本発明のロボットアーム100は、器具のツールシャフト118が、挿入軸に沿った空間内に、概してカニューレ106の長さに沿って配置された球面回転の遠隔中心206の回りを枢動するように、手術器具104を移動させて支持するための、並列の球面5バーリンク機構を含む。
【0020】
図7は、並列の5バーリンク機構700の、単純化した二次元概略図を示す。この例は、本質的に平坦な面において動作するリンク機構を図解するものである。本発明のリンク機構は、三次元空間においても同様に動作し、それについては後に説明する。並列の5バーリンク機構は、4つの剛なバーまたはリンク701、702、703、704のシステムであって、4つの剛なバーは互いの、および固定基準リンク705の回りを枢動する。固定基準リンクは、基盤リンクと称される場合がある。基盤リンク705は、残り4つのリンクに固定基準系を提供するという意味でのみ固定されることを理解されたい。基盤リンク705は、5バーリンク機構全体を移動させるために、空間内に配置され得る。
【0021】
各リンクは2つの枢動軸を含む。基盤リンクの2つの枢動軸712、713は、一致するものであってもよく、それにより、長さゼロの基盤リンクを作成する。残り4つのリンクはいずれも、各リンクにおける2つの枢動軸の間に実質的な距離を有する。枢動軸711、712、713、714、715はすべて、共有面に対して垂直である。これらのリンクは、該リンクが連結された枢動軸の回りを互いに回転可能なように、枢動軸に連結される。枢動軸におけるリンクの回転可能な連結は、連結されたリンクの運動を枢動軸の回りの回転に制限する、任意の種々の形態をとることができる。並列の球面5バーリンク機構のための多数の軸が記載されている。「軸」という用語は、挿入軸を除き、「関節」または「ピボット」と称するものと同義で使用され得る。
【0022】
基盤リンク705は、2つの内部軸712、713を提供する。内部リンク701、704は、内部軸713、712のそれぞれと枢動可能に連結される。各内部リンク701、704は、内部軸713、712から離間して配置された中間軸714、711を有する。各内部リンク701、704は、中間軸714、711において外部リンク702、703と枢動可能に連結される。各外部リンク702、703は、中間軸714、711から離間して配置された外部軸715を有する。2つの外部リンク702、703は、それらの外部軸715において枢動可能に連結される。外部軸715は、その運動範囲内であれば何処にでも、共有面(この二次元の図解例において)と垂直に配置され、したがって、外部軸715における終点運動に2自由度を提供することができる。それらの内部軸713、712の回りにおいて内部リンク701、704のそれぞれを回転させるためにモータが設けられている場合、矢印で示すように、外部軸715は、2つの内部リンクをモータで回転させることによって、その運動範囲内であれば何処にでも配置され得る。逆に、その運動範囲内における外部軸715の動きは、それらの内部軸713、712の回りにおける2つの内部リンク701、704の回転に転換される。
【0023】
2つの基盤基準の独立したリンクの回転を軸の二次元の動きと連結するリンク機構は、並列リンク機構である。2つのモータによって2つの内部リンクに提供される回転運動は、並列回転運動入力と称される場合がある。「並列」は、本願において使用する場合、互いに独立して提供される2つの入力を示し、幾何学的意味で入力の方向を示すものではないことに留意すべきである。並列リンク機構において、2つの独立した並列入力は、入力と連結されたリンクが結合するいずれかの遠位点において、同じオブジェクトまたはリンクを駆動するよう、同じ本体に作用する。
【0024】
球面リンク機構は、この説明を目的として、上述した二次元の機械的リンク機構の三次元版である。三次元リンク機構においては、すべての枢動軸が共通の球面回転の遠隔中心を通過する。「通過する」とは、リンク機構が実質的に同じ運動学(特徴的運動)を有するのに十分なほど変位が小さい場合、正確な理論上の球面回転の遠隔中心に軸が実際に含まれるかのように、ロボットアームの構造的制限を収容するために、球面回転の遠隔中心から(例えば、物理リンクの製造におけるわずかな誤差によって)わずかに離れている場合がある軸を含む。球面回転の遠隔中心を通過する軸も、球面回転の遠隔中心を中心とする球面に対して垂直であることに留意されたい。
【0025】
ここで、
図7の元の二次元リンク機構を参照すると、外部軸の考えられる位置のほとんどのための5バーリンク機構において、内部リンク701、704のそれぞれのための2つの考えられる位置があることが十分に理解されるであろう。例えば、内部リンク701を、点線701′で示すように位置づけてもよい。内部リンクのためのこの位置は、中間軸714′、711間の距離が短縮され、外部リンク702′、703間の角度が縮小されることから、概して望ましくないと考えられている。通常、外部軸715に広範な支持基盤を提供するために、中間軸間の距離を最大化することが望ましい。通常、外部軸715を支持するために、互いに可能な限り直角に近づくような外部リンク702′、703を有することも望ましい。従来の構成の5バーリンク機構は外部軸715に良好な構造的支持を提供するが、結果として生じる構造体は、移動するためにかなりの空間を必要とする。点線を引いた701′、702′位置によって示されるような代替的な構成は、(平面に投影されているような)より小さい面積、したがって、よりコンパクトな機械的構成を占める。
【0026】
図8は、並列の球面5バーリンク機構800の概略図を示す。前述した平面的な5バーリンク機構と同様に、並列の球面5バーリンク機構800は、互いにおよび固定基準または基盤リンク805へ枢動する4つの剛なリンク801、802、803、804のシステムである。並列の5バーリンク機構が球形に構成されている場合、枢動軸811、812、813、814、815はすべて、共通の球面に対して垂直であり、したがって、球体の球面回転の遠隔中心820を通過する。特に、外部軸815は、その運動範囲内において常に球面回転の遠隔中心820を通過することになる。したがって、並列の球面5バーリンク機構800は、該リンク機構800の外部軸815によって支持および移動させられるときに、器具のツールシャフトが球面回転の遠隔中心の回りを枢動するよう、所望の制約運動を手術器具に提供する。手術器具を移動させるためのモータは、基盤リンク805の内部軸813、812に設置される。これにより、直列アーム機構を使用した場合に必要とされる場合がある、一方のモータを他方のモータによって移動させる必要性を回避する。
【0027】
図9で図式的に示すように、並列の球面5バーリンク機構900が制約されることにより、中間軸914、911は、考えられる最大距離間隔にある従来の構成をとることができないが、驚くべきことに、外部軸915に良好な構造的支持を提供することあり得ることが発見された。この結果、手術器具を支持するためのロボットアームとしての使用に対して、より適した、よりコンパクトな構成をもたらすこととなり、この構成においては、
図1〜3の例示的なシステムによって示されるような限られた量の空間内において、極めて接近した2つ以上のそのようなアームを使用することがしばしば必要になる。
【0028】
図示されている概略リンク機構900は、基盤リンク905と、2つの内部リンク901、904と、2つの外部リンク902、903とを含む。第1の内部リンク901は、第1の回転軸から第1の距離に、第1の回転軸913および第1の中間軸914を含む。第1の外部リンク902は、第1の中間軸914において第1の内部リンク901と枢動可能に連結される。第1の外部リンク902は、第1の中間軸914から第2の距離に外部軸915を有する。
【0029】
機械的停止部916は、第1の外部リンクを該機械的停止部の限界まで回転させた場合、第1の回転軸913から外部軸915までの第3の距離が、実質的に、第1の距離に第2の距離を加えたものより短くなるよう、第1の中間軸914の回りにおける第1の外部リンク902の回転を制限することができる。別の実施形態(図示せず)において、機械的停止部は2つの部分であってもよく、それらのそれぞれは、2つの内部リンクのうち1つの回転を制限する。
【0030】
図9に示すリンク901〜905等、単純な弓形セグメントであるリンクの場合、機械的停止部916は、第1の内部リンク901と第1の外部リンク902との間の角度が常に実質的に180度未満となるように、リンクの運動を制約する。より一般的には、第1の回転軸913から第1の中間軸914までの線分と、第1の中間軸914から外部軸915までの線分との間の角度が、実質的に180度未満となるように制約される。
【0031】
第2の内部リンク904は、第1の回転軸913から第4の距離に第2の回転軸912を、第2の回転軸912から第5の距離に第2の中間軸911を有する。第2の外部リンク903は、第2の中間軸911において第2の内部リンク904と、外部軸915において第1の外部リンク902と、枢動可能に連結される。外部軸915は、第2の中間軸911から第6の距離にある。本発明の球面5バーリンク機構は、外部軸915および第1の回転軸913または第2の回転軸912のいずれかを含む平面の同じ側に第1および第2の中間軸914、911を有するように、さらに制約される。この制約は、第2の内部リンク904および第2の外部リンク903の構成および組み立てによって実現され得る。
【0032】
第2の内部リンク904と第2の外部リンク903とを組み合わせた長さが、第1の回転軸913と第2の回転軸912との間の距離を考慮して十分な長さである場合、第1の内部リンク901および第1の外部リンク902の運動の制約部は、本発明の構成のままとなるように、第2の内部リンク904および第2の外部リンク903を制約することになる。所与の長さの第1の内部リンク901および第1の外部リンク902、第1のリンク対901、902の間の角度に対する所与の制約、および第1の回転軸913と第2の回転軸912との間の所与の距離の場合、第2の回転軸912から外部軸915までの距離が最大となる。第2の内部リンク904と第2の外部リンク903とを組み合わせた長さがその最大距離よりも長い場合、第2のリンク対904、903は、それらが中間軸914、911の相対位置と関連して組み立てられた構成のままとなるように制約されることになる。
【0033】
並列の球面5バーリンク機構は、2つの中間軸914、911が、ロボットアーム900の任意の所与の姿勢について可能な最大距離間隔と比較して、比較的近くなるように、その運動が制限され得る。第1のリンク対901、902および第2のリンク対904、903のいずれも、同じ「利き手」を有することになる。すなわち、両方のリンク対について中間軸914、911にある「肘」は、アームの同じ側に屈曲する。このように形成されたロボットアーム900は、機械的停止部916がどのように配列されているかに応じて、右利きまたは左利きであるという特徴を有する。
図9に示す例示的な実施形態は、第1の中間関節および第2の中間関節が右方向を指すために右側に維持されていることから、右利きであると考えられる。同様に、左利きのロボットアームは、左方向を指すために左側に維持された、第1の中間関節および第2の中間関節を有することになる。上記の制約にしたがって構成された並列の5バー球面リンク機構は、コンパクトな姿勢の範囲に限定されるものとして説明される場合がある。
【0034】
図9に示す実施形態によって示唆されるように、ロボットアーム900は、第1の回転軸913および第2の回転軸912の間の第4の距離を、実質的に移動中のリンク901、902、903、904のいずれかの軸の間の距離をより短くすることにより、さらにコンパクト化され得る。
【0035】
図10は、ロボットアーム用の並列の球面5バーリンク機構1000の別の実施形態を示す。ロボット用の並列の球面5バーリンク機構1000は、外部軸1015の運動の主要範囲が概して、第1の回転軸1013または第2の回転軸1012のいずれかおよび外部軸1015を含む平面の片側にあるようにリンク機構を配列することにより、さらに一層コンパクト化され得る。
【0036】
図10に示す並列の球面5バーリンク機構1000の実施形態等、いくつかの実施形態において、第1の回転軸1013および第2の回転軸1012は、第1および第2のモータに信号を提供するために、コントローラ1018と連結されたモータによって駆動される。第1のモータは第1の内部リンク1001を回転させ、第2のモータは第2の内部リンク1004を回転させる。コントローラ1018は、第1および第2の中間軸1014、1011が、外部軸1015および第1の回転軸1013または第2の回転軸1012のいずれかを含む平面の同じ側にあるように、内部リンク1001、1004の運動を制限することができる。コントローラ1018は、機械的停止部916が
図9に示す実施形態のリンク901〜904に提供するのと同じ制約を、リンク1001〜1004の運動範囲に提供することができる。
【0037】
並列の球面5バーリンク機構1000は、サーボモータまたはステッピングモータを使用する等して内部リンクを制御可能に回転させることにより、外部軸を所望の位置まで移動させるために使用され得る。別の実施形態において、並列の球面5バーリンク機構1000は、外部軸の操作に起因する2つの内部軸の方向を測定することにより、外部軸の位置を検知するために使用され得る。例えば、回転エンコーダまたはその他のセンサを、
図10に示す並列の球面5バーリンク機構の第1の回転軸1013および第2の回転軸1012に設置してもよい。コントローラ1018を、内部リンク1001、1004のぞれぞれの方向を受信するために、2つの回転エンコーダと連結されたコンピュータと置き換えてもよい。続いて、コンピュータは外部軸の位置を計算することができ、これをオペレータが操作して位置入力を提供することができる。外部軸は球面リンク機構の球面回転の遠隔中心1020の回りを回転するように制約されることが十分に理解されるであろう。したがって、執刀医120から外部軸1015の位置入力を受信するために、並列の球面5バーリンク機構を
図1の制御コンソール122において使用してもよい。位置入力は、ロボットアーム100の外部軸と同じ制約運動を有し得る。
【0038】
図11は、
図1〜6に示すロボットアーム100と同様の構造を有する、本発明を具現化する並列の球面5バーリンク機構1100を示す。並列の球面5バーリンク機構1100は、構造および姿勢の点で、
図10の並列の球面5バーリンク機構1000の概略と同様である。その回りで4つの可動リンク1101〜1104が回転する5本の枢動軸1111〜1115はすべて、共通の球面回転の遠隔中心1120を通過する。図の機構は、第1の回転軸1113および第2の回転軸1112の回りにおいてリンクを回転させることができるように、それぞれ第1の内部リンク1101および第2の内部リンク1104と連結された2つのモータ1123、1122を含む。2つのモータ1123、1122は、共に連結されて、基盤リンクである第5のリンク1105を形成する。
【0039】
内部リンク1101は、ほぼ弓状形態を有するものとして示されている。残り3つのリンク1102、1103、1104は、リンクおよびピボットが互いに通過できるように枢動接続部1111、1114、1115の配置を調整するために、弓形セグメントを含み得る不規則な形状を有するように示されている。リンクは、本発明の機能に影響を及ぼすことなく、あらゆる所望の形態を有し得ることが十分に理解されるであろう。枢動接続部1111、1112、1113、1114、1115の軸がすべて実質的に共通の球面回転の遠隔中心1120を通過する限り、リンク機構は球面リンク機構として機能することになる。
【0040】
図12は、リンク1101、1102、1103、1104、1105と、枢動接続部1111、1112、1113、1114、1115との関係をより明確に示すための、
図11の並列の球面5バーリンク機構1100の概略図である。
図12は、構造体の球状の性質を強調するために、弓状形態のリンクを示す。
図13は、
図11の実施形態におけるリンクの形態を示唆する概略形態のリンクを示す。
図13に示す不規則な形状のリンクは、第1のリンク対1101、1102と第2のリンク対1104、1103との間の距離間隔を増大させることが分かる。それらのリンクが実質的に球面回転の遠隔中心1120を通過するように枢動軸を保持している限り、リンクの形態は重要でないことが十分に理解されるであろう。
【0041】
本発明の並列の球面5バーリンク機構のコンパクトな構成において、第1の回転軸1113を外部軸1115に連結する第1のリンク対1101、1102が、第2の回転軸1112を外部軸1115に連結する第2のリンク対1104、1103を自由に通過できるようにリンク機構を構成することが望ましい場合がある。並列の球面5バーリンク機構の唯一の要件は、すべての枢動軸が実質的に共通の球面回転の遠隔中心1120を通過することであるため、第1のリンク対1101、1102および第1の中間ピボット1114は、第1の対によって掃引された第1のボリュームが、第2のリンク対1104、1103および第2の中間ピボット1111によって掃引された第2のボリュームと交差しないように構成されてもよい。第1および第2のボリューム間の唯一の接続部は、外部軸1115および基盤リンク1105に近接している。
図11および13によって示される実施形態におけるリンクの形態は、第1のリンク対1101、1102が第2のリンク対1104、1103を通過することを可能にする構成の一例である。
【0042】
図14は、ロボットアーム用の並列の球面5バーリンク機構1400の別の実施形態を示す。
図10のリンク機構1000と比較すると、並列の球面5バーリンク機構1400は、外部軸1415から離隔距離だけ離間して配置された挿入軸1419を有する外部リンク1402を含む。挿入軸1419が外部軸1415と一致するのが理想的である。しかしながら、挿入軸1419を外部軸1415から分離することにより、機械的なパッケージングの利点を得ることができる。
【0043】
好ましくは、挿入軸1419は、外部軸1415よりも中間軸1414から離れている、外部リンク1402に設置される。挿入軸1419が球面回転の遠隔中心1420を中心とする球体の表面に対して垂直であり、したがって球面回転の遠隔中心1420を通過する限り、挿入軸は並列の球面5バーリンク機構1400の枢動軸1411〜1415と同じ運動学的特徴を有することになる。すなわち、挿入軸1419は、球面回転の遠隔中心1420に対して移動することになる。挿入軸1419は、中間軸1414と外部軸1415とによって画定される平面内にあってもよいし、そうでなくてもよい。
【0044】
並列の球面5バーリンク機構の枢動軸の外側での挿入軸1419の設置は、リンク機構1400の運動を妨害することなく手術ツールが支持および操作されることを可能にし得る。カニューレ106およびその関連する機械的装着手段の構成、据付、除去、および無菌境界構成を単純化することもできる。
【0045】
図14に図示するもの等、離間して配置された挿入軸を有するいくつかの実施形態において、挿入軸1419、外部軸1415、および中間軸1414は、同一平面上にあってもよい。この配列により、2つの内部リンク1401、1404の位置と外部軸1415の位置との間の関係を単純化することができる。挿入軸1419を、2つの外部リンク1402、1403のいずれに設置してもよいことに留意されたい。
【0046】
本発明の並列の球面5バーリンク機構は、球体の表面上における平面幾何学である、球面幾何学を使用して説明され得る。本発明のリンク機構のリンクは、同じ球面上にある必要も、またいかなる球面上にある必要もないが、リンク機構について説明することを目的として、共通の球面に投影され得る。球面幾何学において、球面上の幾何学的関係は球体の半径を変化させることによって影響を受けないことから、距離を角度として計測することができる。角距離は、球体の半径に関係なく依然として同じである。
【0047】
地球表面における航海法は、球面幾何学の一般的な例である。地球規模の航海法において使用される緯度および経度は、球面系における位置および方向を説明するための馴染みのあるシステムである。赤道は、緯度0°の地点を定義する。北極は緯度90°を定義し、南極は緯度−90°を定義する。経度は、経度0°の任意に定義された線から一定緯度の円上における角距離である。経度は従来、東に180°、西に180°の緯度0°の線として表現される。方向は、該方向と北極への方向線との間の角度として表現される地点からの方向線である。以下は、球面幾何学の用語によって表現される、本発明の一実施形態についての説明である。
【0048】
図14を参照すると、第1の内部リンク1401の第1の回転軸1413は、緯度0°、経度0°にあるものと考えられることになる。第2の内部リンク1404の第2の回転軸1412は、同じ経度、負の緯度にあるものとして示されている。
【0049】
第1の中間軸1414は、第1の回転軸1413から60°離間して配置され得る。第1の外部軸1415は、第1の中間軸1414から40°離間して配置され得る。挿入軸1419は、外部軸1415から30°離間して配置され得る。第2の回転軸1412は、経度0°および緯度マイナス18°の定位置に配置され得る。定位置は、リンク機構の球面幾何学の基準系内に固定されていることを意味し、その基準系を有するリンク機構全体は、空間内に自由に配置され得ることを記憶にとどめておかなくてはならない。第2の中間軸1411は、第2の回転軸1412から45°離間して配置され得る。第2の中間軸1411は、外部軸1415から55°離間して配置され得る。
【0050】
第1の回転軸1413の回りにおける第1の内部リンク1401の回転の範囲は、80°から−30°の方向であってもよい。
図1〜6のロボットアーム100は、第1の内部リンクが約15°の方向を有するように示されている。第1の内部リンク1401と第1の外部リンク1402との間の角度は、110°〜30°であってもよい。
図1〜6のロボットアーム100は、第1の内部リンクと第1の外部リンクとの間に約75°の角度を有するように示されている。
【0051】
これらの寸法は、単なる例に過ぎない。本発明は、実質的に異なる寸法および実質的に異なる運動範囲を有するリンク機構によって実行され得る。本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。挿入軸の運動範囲について、およびデバイスがその運動範囲によって占める空間について特定の要件を有する、特定種類の手術の必要性に本発明を適合させるために、異なる寸法および異なる運動範囲を使用することが望ましい場合がある。
【0052】
図15は、
図14に示す並列の球面5バーリンク機構1400の概略の外形と同様の外形を有するロボットアーム1500の一実施形態を示す。
図15のビューは、
図15のビューを見るために概して
図14の左から右へ見た際の、
図14のビューに関連する。基盤リンク1505は、ロボットアーム1500の近位端であると考えることができる。第1のモータアセンブリ1523は、第1のモータの第1の回転軸1513において基盤リンク1505と連結され得る。第2のモータアセンブリ1522は、第1の回転軸から第1の距離だけ離間して配置された第2のモータの第2の回転軸1512において基盤リンク1505と連結され得る。回転軸1512、1513は、モータアセンブリ1522、1523内にあり、モータが透明であるかのようにこれらの軸が描かれているため、これらの軸と該実施形態の構造との関係が、より明確に分かることに留意されたい。
【0053】
図16は、ロボットアームの一実施形態において使用され得るモータアセンブリ1522を示す。該アセンブリは、回転運動を提供するためのモータ1602を含み得る。モータは、モータ1602の回転を低減し得るギヤボックス1604を介して、内部リンクの回転軸1512を中心とするシャフト1616と連結され得る。ブレーキ1606は、移動中でないときにモータを停止および保持するために、モータ1602と連結され得る。エンコーダディスク1610は、モータ1602と連結され得る。光学センサ1618は、エンコーダディスク1610の角運動または角位置を検知し、ロボットアーム用のコントローラと連結され得る電気コネクタ1614に信号を提供することができる。
【0054】
第1の内部リンク1501は、第1の回転軸1513において基盤リンク1505と枢動可能に連結される。第1の内部リンク1501は、第1の回転軸1513から遠位の第2の距離に第1の中間軸1514を有する。第1の外部リンク1502は、第1の中間軸1514において第1の内部リンク1501と枢動可能に連結される。第1の外部リンク1502は、第1の中間軸1514から遠位の第3の距離に外部軸1515を有する。第1の外部リンク1502は、外部軸1515および中間軸1514から離間して配置された挿入軸1519をさらに含む。挿入軸1519は、ロボットアーム1500の遠位端にある。第1の外部リンク1502は、挿入軸1519を中心とするカニューレ1506を支持することができる。挿入軸1519は、カニューレ1506を通過し、カニューレが透明であるかのように挿入軸が描かれているため、挿入軸と回転軸および該実施形態の構造との関係が、より明確に分かることに留意されたい。
【0055】
図17に示すように、制約部によって、第1の中間軸1514の回りにおける第1の外部リンク1502の回転を制限することができる。第1のモータ1523が基盤リンク1505と連結される第1の回転軸1513と外部軸1515との間の可変距離の最大限は、実質的に、第1の回転軸1513から第1の中間軸1514までの距離と第1の中間軸1514から外部軸1515までの距離との合計より短くなるように制約される。
図17は、第1の内部リンク1501を第1の外部リンク1502と枢動可能に連結する第1の中間軸1514の詳細を示す。停止ピン1716が、第1の外部リンクと共に移動するように、第1の外部リンク1502と連結され得る。第1の内部リンク1501上に、中で停止ピン1716が制約されるスロット1718を設け、それによって第1の中間軸1514の回りにおける第1の外部リンク1502の回転を制限し得る。
【0056】
第2の内部リンク1504は、第2の回転軸1512において基盤リンク1505と枢動可能に連結される。第2の内部リンク1504は、第2の回転軸1512から遠位の第5の距離に第2の中間軸1511を有する。第2の外部リンク1503は、第2の中間軸1511において第2の内部リンク1504と枢動可能に連結される。第2の外部リンク1503は、外部軸1515において第1の外部リンク1502とも枢動可能に連結され、それによって並列の球面5バーリンク機構を閉鎖している。並列の球面5バーリンク機構のすべての枢動軸が、球面回転の遠隔中心1520を通過する。第1の中間軸1514および第2の中間軸1511は、外部軸1515および第1の回転軸1513または第2の回転軸1512のいずれかを含む平面の同じ側にあり、これらは第1のモータ1523および第2のモータ1522と併用される。第1の中間軸1514および第2の中間軸1511が肘として見られる場合、両肘は、ロボットアーム1500の制約された運動範囲全体にわたって、同じ方向に屈曲したままである。
【0057】
本発明の並列の球面5バーリンク機構は、動力を受ける構成および受けない構成の両方において具現化され得ることを理解されたい。動力供給を受ける実施形態においては、サーボモータ等のデバイスが内部リンクを回転させる。並列の球面5バーリンク機構は、それらの回転を外部軸の二次元の動きに転換する。動力供給を受けない実施形態においては、外部軸の二次元の動きは、並列の球面5バーリンク機構によって内部リンクの回転に転換される。回転エンコーダ等のデバイスは、内部リンクの方向を検知することができ、該情報を使用して、外部軸の位置を計算することができる。前述したように中間軸の回転を制約することは、該制約により、外部軸の位置を、内部リンクの方向に対応する2つの考えられる位置の1つに制限することから、動力供給を受けない実施形態において有利である。
【0058】
図18は、並列の球面5バーリンク機構の動力供給を受けない実施形態において使用され得るエンコーダアセンブリを示す。外部軸の位置は、外部軸の操作に起因する並列の球面5バーリンク機構の2つの内部軸の方向を測定することによって検知され得る。エンコーダディスク1810は、並列の球面5バーリンク機構の2つの内部リンクのそれぞれの回転軸1812を中心とするシャフト1816と連結され得る。エンコーダディスク1810は、該エンコーダディスクの回転を増大させ得るギヤボックス1804を介して連結され得る。光学センサ1818は、エンコーダディスク1810の角運動または角位置を検知することができる。光学センサ1818は、電気コネクタ1814に信号を提供することができる。2つの回転エンコーダからの信号は、内部リンクのそれぞれの方向を測定するために、コンピュータと連結され得る。
【0059】
コンピュータは、2つの方向から外部軸の位置を測定することができる。内部リンクの方向の所与の対について、概して外部軸のための考えられる2つの位置があることに留意すべきである。コンピュータには、制約部によって限定されるような、中間軸の回りにおける外部リンクの1つの回転範囲が提供されてもよい。回転範囲の追加の入力は、コンピュータが外部軸の位置を一意的に測定することを可能にし得る。
【0060】
いくつかの例示的な実施形態を説明し、添付の図面に示したが、そのような実施形態は広範な本発明の単なる例示であって限定的なものではなく、当業者であればその他種々の修正形態に想到し得るため、本発明は図示および説明した特定の構成および配列に限定されるものではないことを理解されたい。むしろ、本発明の実施形態は、以下に続く特許請求の範囲によって解釈されるべきである。