【0009】
(炭酸基含有水酸化マグネシウム)
本発明の複合水酸化マグネシウムは、BET法比表面積が100m
2/g以上の炭酸基含有水酸化マグネシウムスラリーを原料とする(以下、原料スラリーということがある)。
原料スラリーは、水溶性マグネシウム塩とアルカリ金属水酸化物もしくはアンモニア水とを、炭酸塩の存在下で、水中で反応させ製造することができる。
水溶性マグネシウム塩として、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなどが挙げられる。
アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。アルカリ金属水酸化物のかわりにアンモニア水を用いてもよい。
炭酸塩として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。
反応温度は、好ましくは5〜60℃である。反応時間は、好ましくは3〜180分である。洗浄は、固形分の5〜50倍重量の水で通水洗浄もしくは乳化洗浄により行うことが好ましい。乾燥温度は、好ましくは90〜350℃である。
炭酸塩の存在下で水溶性マグネシウム塩とアルカリ金属水酸化物もしくはアンモニア水とを反応させることにより水酸化マグネシウムの結晶成長が阻害され、BET法比表面積が大きい炭酸基含有水酸化マグネシウムを得ることができる。
【実施例】
【0013】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0014】
実施例1
(原料スラリー)
1.5mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液12Lと、総アルカリ濃度を3.0Nに調製した苛性ソーダと炭酸ソーダとのアルカリ混液(2NaOH:Na
2CO
3=90:10)11.4Lを室温撹拌条件下で、滞留時間10分で連続注加反応を行った。得られた反応スラリー約23.4Lを濾過し、21Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通して、BET法比表面積260m
2/gの下記式で表される白色粉末1040gを得た。
Mg(OH)
1.80(CO
3)
0.10・0.10H
2O
(2価金属の担持)
この白色粉末50gに500mlの水を加え、撹拌下、1.0mol/Lの塩化亜鉛水溶液43.2mlを添加後、室温で30分撹拌保持した。得られた反応スラリーを濾過し、1Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通して、BET法比表面積206m
2/gの下記式で表される白色粉末48.9gを得た。
Mg
0.95Zn
0.05(OH)
1.76(CO
3)
0.12・0.11H
2O
【0015】
実施例2
(原料スラリー)
1.5mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液12Lと、総アルカリ濃度を3.0Nに調製した苛性ソーダと炭酸ソーダとのアルカリ混液(2NaOH:Na
2CO
3=90:10)11.4Lを室温撹拌条件下で、滞留時間10分で連続注加反応を行った。得られた反応スラリー約23.4Lを濾過し、21Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通して、BET法比表面積260m
2/gの下記式で表される白色粉末1040gを得た。
Mg(OH)
1.80(CO
3)
0.10・0.10H
2O
(2価金属の担持)
この白色粉末50gに500mlの水を加え、撹拌下、1.0mol/Lの硫酸銅水溶液43.2mlを添加後、室温で30分撹拌保持した。得られた反応スラリーを濾過し、1Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通して、BET法比表面積214m
2/gの下記式で表される水色粉末49.3gを得た。
Mg
0.95Cu
0.05(OH)
1.80(CO
3)
0.10・0.14H
2O
【0016】
実施例3
(原料スラリー)
1.5mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液12Lと、総アルカリ濃度を3.0Nに調製した苛性ソーダと炭酸ソーダとのアルカリ混液(2NaOH:Na
2CO
3=90:10)11.4Lを室温撹拌条件下で、滞留時間10分で連続注加反応を行った。得られた反応スラリー約23.4Lを濾過し、21Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通し
て、BET法比表面積260m
2/gの下記式で表される白色粉末1040gを得た。
Mg(OH)
1.80(CO
3)
0.10・0.10H
2O
(2価金属の担持)
この白色粉末50gに500mlの水を加え、撹拌下、1.0mol/Lの塩化ニッケル水溶液43.2mlを添加後、室温で30分撹拌保持した。得られた反応スラリーを濾過し、1Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通して、BET法比表面積225m
2/gの下記式で表される淡緑色粉末48.5gを得た。
Mg
0.94Ni
0.06(OH)
1.80(CO
3)
0.10・0.16H
2O
【0017】
実施例4
(原料スラリー)
1.5mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液12Lと、総アルカリ濃度を3.0Nに調製した苛性ソーダと炭酸ソーダとのアルカリ混液(2NaOH:Na
2CO
3=90:10)11.4Lを室温撹拌条件下で、滞留時間10分で連続注加反応を行った。得られた反応スラリー約23.4Lを濾過し、21Lの水にて通水洗浄後、水に乳化して10Lにした。これをスプレードライヤーで乾燥し、BET法比表面積263m
2/gの下記式で表される白色スプレー造粒粉末950gを得た。
Mg(OH)
1.80(CO
3)
0.10・0.18H
2O
(2価金属の担持)
この白色スプレー造粒粉末50gに500mlの水を加え、撹拌下、1.0mol/Lの塩化亜鉛水溶液43.2mlを添加後、室温で30分撹拌保持した。得られた反応スラリーを濾過し、1Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を目開き500μmの金網を通して、BET法比表面積180m
2/gの下記式で表される白色粉末48.0gを得た。
Mg
0.94Zn
0.06(OH)
1.78(CO
3)
0.11・0.12H
2O
【0018】
実施例5
(原料スラリー)
1.5mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液12Lと、総アルカリ濃度を3.0Nに調製した苛性ソーダと炭酸ソーダとのアルカリ混液(2NaOH:Na
2CO
3=90:10)11.4Lを室温撹拌条件下で、滞留時間10分で連続注加反応を行った。得られた反応スラリー約23.4Lを濾過し、21Lの水にて通水洗浄後、水に乳化して10Lにした。これをスプレードライヤーで乾燥し、BET法比表面積263m
2/gの下記式で表される白色スプレー造粒粉末950gを得た。
Mg(OH)
1.80(CO
3)
0.10・0.18H
2O
(2価金属の担持)
この白色スプレー造粒粉末50gに500mlの水を加え、撹拌下、1.0mol/Lの硫酸銅水溶液43.2mlを添加後、室温で30分撹拌保持した。得られた反応スラリーを濾過し、1Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を目開き500μmの金網を通して、BET法比表面積209m
2/gの下記式で表される水色粉末48.5gを得た。
Mg
0.94Cu
0.06(OH)
1.82(CO
3)
0.09・0.12H
2O
【0019】
比較例1
試薬特級水酸化カルシウムを用いた。BET法比表面積は13.2m
2/gであった。
【0020】
比較例2
協和化学工業(株)製水酸化マグネシウム「KISUMA 5」を用いた。BET法比表面積は5.9m
2/gであった。
【0021】
比較例3
協和化学工業(株)製水酸化マグネシウム「キョーワスイマグF」を用いた。BET法比表面積は57.6m
2/gであった。
【0022】
比較例4
1.5mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液12Lと、総アルカリ濃度を3.0Nに調製した苛性ソーダと炭酸ソーダとのアルカリ混液(2NaOH:Na
2CO
3=90:10)11.4Lを室温撹拌条件下で、滞留時間10分で連続注加反応を行った。得られた反応スラリー約23.4Lを濾過し、21Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通して、BET法比表面積260m
2/gの下記式で表される白色粉末1040gを得た。
Mg(OH)
1.80(CO
3)
0.10・0.10H
2O
【0023】
比較例5
1.5mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液12Lと、総アルカリ濃度を3.0Nに調製した苛性ソーダと炭酸ソーダとのアルカリ混液(2NaOH:Na
2CO
3=90:10)11.4Lを室温撹拌条件下で、滞留時間10分で連続注加反応を行った。得られた反応スラリー約23.4Lを濾過し、21Lの水にて通水洗浄後、水に乳化して10Lにした。これをスプレードライヤーで乾燥し、BET法比表面積263m
2/gの下記式で表される白色スプレー造粒粉末950gを得た。
Mg(OH)
1.80(CO
3)
0.10・0.18H
2O
【0024】
上記実施例1〜5および比較例1〜5について次の方法により分析を行った。(1)マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、ニッケル(Ni);キレート滴定法
(2)炭酸(CO
2);JIS R9101 水酸化ナトリウム溶液−塩酸滴定法
(3)乾燥減量(H
2O);局外規 乾燥減量
(4)BET法比表面積;液体窒素吸着法装置(ユアサアイオニクス製NOVA2000)
(5)X線構造解析;自動X線回折装置(リガク製RINT2200V)
(6)造粒粒子外観;走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所製S−3000N)
【0025】
組成分析およびBET法比表面積の測定結果を表1に示す。
図1に実施例1〜5で得られた複合水酸化マグネシウム化合物のX線回折像を示す。X線回折パターンはいずれも実施例1〜5で得られた粒子が水酸化マグネシウムであること示している。
実施例5のスプレー造粒品のSEM写真を
図2に示す。
図2によれば、本願発明の炭酸基含有複合水酸化マグネシウムは造粒性に優れ、スプレードライヤーや押出し造粒機等で容易に目的とする大きさの造粒品となることが分かる。
【0026】
【表1】
【0027】
次に、上記実施例1〜5および比較例1〜5について酸性ガス吸着試験を下記の方法に
よりおこなった。各酸性ガスの吸着試験の結果を表2〜4に示す。
(1)塩化水素ガス吸着破過試験
内径14mmのガラス製カラムにガラスウールとともに粉末試料を0.5g充填した。このカラムに94.1ppmの塩化水素ガスを流量0.44L/分で流通させ、カラム出口濃度を検知管で測定した。破過時間はカラム出口濃度が供給濃度の0.5%(0.5ppm)を超えた時間とした。
(2)SOxガス吸着破過試験
内径14mmのガラス製カラムにガラスウールとともに粉末試料を0.5g充填した。このカラムに136ppmのSO
2ガスを流量0.44L/分で流通させ、カラム出口濃度を検知管で測定した。破過時間はカラム出口濃度が供給濃度の0.5%(0.7ppm)を超えた時間とした。
(3)硫化水素ガス吸着試験
粉末試料30mgを1L容テドラーバッグに入れ、脱気後に99.1ppmの硫化水素標準ガスを充填し、テドラーバック内の硫化水素ガス濃度を島津ガスクロマトグラフィーGC−14B(FPD検出器付)を用いて経時的に測定した。カラムは充填カラム「β,β’−オキシジプロピオニトリル25%」を使用した。吸着時間180分以内に硫化水素除去率が100%になった試料については、テドラーバッグ内のガスを抜き、再度99.1ppmの硫化水素標準ガスを充填してもう一度測定をおこなった。
硫化水素除去率(%)=(吸着前ガス濃度−吸着後ガス濃度)/吸着前ガス濃度×100
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
実施例1〜5のBET法比表面積が大きい複合水酸化マグネシウムは比較例1〜3の通常の水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムと比べて、試験に用いた全ての酸性ガスにおいて吸着率が高かった。比較例4〜5のBET法比表面積大きい炭酸基含有水酸化マグネシウムは、塩化水素ガスやSOxガスには優れた吸着能力を示すが、硫化水素ガスに関しては吸着能力が低く、ZnやCu、Niを複合化させた実施例1〜5には全く及ばなかった。