特許第5656298号(P5656298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5656298複合水酸化マグネシウム、その製造方法および吸着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656298
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】複合水酸化マグネシウム、その製造方法および吸着剤
(51)【国際特許分類】
   C01F 5/00 20060101AFI20141225BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20141225BHJP
   C01G 3/00 20060101ALI20141225BHJP
   C01G 9/00 20060101ALI20141225BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20141225BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   C01F5/00
   C01G53/00 A
   C01G3/00
   C01G9/00 B
   B01J20/04 C
   B01J20/30
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-520372(P2012-520372)
(86)(22)【出願日】2011年5月31日
(86)【国際出願番号】JP2011062874
(87)【国際公開番号】WO2011158675
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2013年5月2日
(31)【優先権主張番号】特願2010-247245(P2010-247245)
(32)【優先日】2010年11月4日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-136148(P2010-136148)
(32)【優先日】2010年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162489
【氏名又は名称】協和化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080609
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 正孝
(74)【代理人】
【識別番号】100109287
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 泰三
(72)【発明者】
【氏名】立藤 智子
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−528965(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/057796(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/123566(WO,A1)
【文献】 特開平11−180808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 5/00 − 5/42
B01J 20/04
B01J 20/30
C01G 3/00
C01G 9/00
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表され、BET法による比表面積が100〜400m/gである複合水酸化マグネシウム。
Mg1−x(OH)2−y(CO0.5y・mHO (1)
(但し式中Mは、Zn2+、Cu2+およびNi2+らなる群より選ばれる少なくとも一種の2価金属イオンを示す。x、yおよびmは下記の条件
0<x≦0.1
0.02≦y≦0.7
0≦m≦1
を満足する。)
【請求項2】
BET法による比表面積が120〜350m/gである請求項1に記載の複合水酸化マグネシウム。
【請求項3】
yが0.04≦y≦0.6を満足する請求項1に記載の複合水酸化マグネシウム。
【請求項4】
BET法比表面積が100m/g以上の炭酸基含有水酸化マグネシウムスラリーに、Zn2+、Cu2+およびNi2+らなる群より選ばれる少なくとも一種の2価金属の塩の水溶液を添加し混合して、水酸化マグネシウムの表面に2価金属の水酸化物を担持させることを特徴とする請求項1に記載の複合水酸化マグネシウムの製造方法。
【請求項5】
COイオンの存在下で、Mgイオン、Zn2+、Cu2+およびNi2+らなる群より選ばれる少なくとも一種の2価金属イオンおよびOHイオンを水中で接触させることからなる請求項1に記載の複合水酸化マグネシウムの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の複合水酸化マグネシウムを含む吸着剤。
【請求項7】
複合水酸化マグネシウムを粒子径0.05〜20mmの範囲に造粒した請求項記載の吸着剤。
【請求項8】
請求項に記載の吸着剤を用いてなるケミカルフィルタ。
【請求項9】
酸性ガスまたは有機溶剤中の酸性物質の吸着用または脱臭用である請求項に記載の吸着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸イオンを含有しBET法比表面積が大きい複合水酸化マグネシウム、その製造方法、およびそれを用いた吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水酸化マグネシウムは古くから知られており、固体塩基であることから酸性物質の吸着(中和)に広い分野で使用されている。例えば、医薬用としては制酸剤があり、工業用としては排煙脱硫剤や排水中和剤、農業用では酸性土壌の中和剤として利用されている。このような酸性物質の吸着(中和)には、酸性物質との接触面積が大きいこと、つまりBET法比表面積が大きいことが望ましい。水酸化マグネシウムの製造方法としては、海水と消石灰とを反応させる海水法や酸化マグネシウムを脱炭酸水で水和させる水和法等が知られている。しかし、これらの方法で合成した水酸化マグネシウム粒子のBET法比表面積は80m/gを超えることはない。
BET法比表面積が大きい水酸化マグネシウム粒子を得る方法として、水酸化マグネシウムが生成する過程において、水酸化マグネシウムの結晶成長を阻害する二価アニオンを添加することが知られている。即ち、マグネシウム塩溶液とアルカリ金属の水酸化物もしくはアンモニア水とを炭酸イオンの存在下で反応させると、炭酸基を含有しBET法比表面積が80m/g以上の炭酸基含有水酸化マグネシウムが得られる(特許文献1)。この炭酸基含有水酸化マグネシウムは、塩化水素ガスやSOxガス、酢酸系ガスとは瞬時に反応し、極めて有効な酸性ガス吸着剤である。しかし、硫化水素ガスやメチルメルカプタンに関しては効果が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2008/123566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の目的は、塩化水素ガス、SOxガス、酢酸系ガスのみならず、硫化水素ガスやメチルメルカプタンに対して優れた吸着性能を有するBET法比表面積が大きい複合水酸化マグネシウムおよびその製造方法を提供することにある。また本発明の目的は、この複合水酸化マグネシウム含む吸着剤を提供することにある。
本発明者は上述の問題点を改善するために鋭意検討した結果、炭酸基を含有するBET法比表面積が大きい水酸化マグネシウム粒子表面に、CuやZnなどの他の金属水酸化物を担持させると、硫化水素やメチルメルカプタンの吸着能に優れた複合水酸化マグネシウムが得られることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0005】
本発明の複合水酸化マグネシウムは、極めて高いBET法比表面積を有する。本発明の複合水酸化マグネシウムは、塩化水素ガス、SOxガス、酢酸系ガスのみならず、硫化水素ガスやメチルメルカプタンに対して優れた吸着性能を有する。
本発明の複合水酸化マグネシウムは、亜鉛、銅などの2価金属が水酸化マグネシウム表面に偏在するので、少量の2価金属の担持させることにより複合化の効能を発揮することができる。
本発明の製造方法によれば、先にBET法比表面積が大きい炭酸基含有水酸化マグネシウムを合成し、そこに複合化させたい金属の金属塩水溶液を添加するので、容易にBET法比表面積が大きい複合水酸化マグネシウムを得ることができる。
また本発明の複合水酸化マグネシウムは、マグネシウム塩とZnやCu等の他の金属塩との混合金属塩水溶液とアルカリ物質とをCOイオンの存在下で反応しても合成できる。この方法であれば、亜鉛、銅などの2価金属が均一に分散したBET法比表面積が大きい複合水酸化マグネシウムが得ることができ、複合化によるBET法比表面積の低下を防ぐことができる。用途に応じて製造方法を変更すれば、複合化金属の分布を選択することができる。
本発明の吸着剤は、塩化水素ガス、SOxガス、酢酸系ガスのみならず、硫化水素ガスやメチルメルカプタンに対して優れた吸着性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の複合水酸化マグネシウム化合物のX線回折像。
図2】スプレー乾燥により造粒された本発明の複合水酸化マグネシウム化合物のSEM写真。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<複合水酸化マグネシウム>
本発明の複合水酸化マグネシウムは、下記式(1)で表される。
Mg1−x(OH)2−y(CO0.5y・mHO (1)
式中Mは、Zn2+、Cu2+およびNi2+らなる群より選ばれる少なくとも一種の2価金属イオンを示す。
吸着する物質によって金属イオンを選択することができる。特にCu2+やNi2+は硫化水素ガスの吸着速度が速く、持続性にも優れている。
式中xは、0<x≦0.1を満足する。
式中yは、0.02≦y≦0.7、好ましくは0.04≦y≦0.6、より好ましくは0.1≦y≦0.4を満足する。
式中mは、0≦m≦1、好ましくは0≦m≦0.6、より好ましくは0≦m≦0.4を満足する。
本発明の複合水酸化マグネシウムは、BET法による比表面積が100〜400m/g、好ましくは120〜350m/g、より好ましくは150〜300m/gである。
【0008】
<製造方法(1)>
本発明の複合水酸化マグネシウムは、BET法比表面積が100m/g以上の炭酸基含有水酸化マグネシウムのスラリーに、Zn2+、Cu2+およびNi2+らなる群より選ばれる少なくとも一種の2価金属の塩の水溶液を添加し混合して、炭酸基含有水酸化マグネシウムの表面に2価金属の水酸化物を担持させ製造することができる。
【0009】
(炭酸基含有水酸化マグネシウム)
本発明の複合水酸化マグネシウムは、BET法比表面積が100m/g以上の炭酸基含有水酸化マグネシウムスラリーを原料とする(以下、原料スラリーということがある)。
原料スラリーは、水溶性マグネシウム塩とアルカリ金属水酸化物もしくはアンモニア水とを、炭酸塩の存在下で、水中で反応させ製造することができる。
水溶性マグネシウム塩として、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなどが挙げられる。
アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。アルカリ金属水酸化物のかわりにアンモニア水を用いてもよい。
炭酸塩として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。
反応温度は、好ましくは5〜60℃である。反応時間は、好ましくは3〜180分である。洗浄は、固形分の5〜50倍重量の水で通水洗浄もしくは乳化洗浄により行うことが好ましい。乾燥温度は、好ましくは90〜350℃である。
炭酸塩の存在下で水溶性マグネシウム塩とアルカリ金属水酸化物もしくはアンモニア水とを反応させることにより水酸化マグネシウムの結晶成長が阻害され、BET法比表面積が大きい炭酸基含有水酸化マグネシウムを得ることができる。
【0010】
(2価金属塩)
2価金属は、Zn2+、Cu2+およびNi2+らなる群より選ばれる少なくとも一種である。これらの塩として、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩などが挙げられる。具体的には、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化ニッケルなどが挙げられる。
2価金属は、炭酸基含有水酸化マグネシウムスラリーに2価金属の塩の水溶液を添加し、混合して担持させることができる。
担持温度は、好ましくは5〜60℃である。また担持時間は、好ましくは5〜120分である。
このようにあらかじめBET法比表面積が大きい炭酸基含有水酸化マグネシウムを作っておき、そのスラリーにZnやCu等の2価金属塩水溶液を後から添加する方法で合成すれば、用途に合わせて多種類の複合水酸化マグネシウムを容易に合成できるとともに、複合化させる2価金属イオンが粒子表面に偏在するために、少量の添加量で2価金属イオンの効果が得られやすい。
【0011】
<製造方法(2)>
本発明の複合水酸化マグネシウムは、COイオンの存在下で、Mgイオン、Zn2+、Cu2+およびNi2+らなる群より選ばれる少なくとも一種の2価金属イオン、並びにOHイオンを水中で接触させることにより製造することができる。
本発明の複合水酸化マグネシウムは、マグネシウム塩とZnやCu等の他の金属塩との混合金属塩水溶液とアルカリ物質とをCOイオンの存在下で反応しても合成できる。しかし、水酸化マグネシウムを吸着剤として利用する場合、水酸化マグネシウム粒子表面にCuやZnなどの他の金属水酸化物を析出させて合成した方が少量の他金属量でCuやZnなどの効果を得ることができるため好ましい。しかし、CuやZnの水溶液が弱酸性であるため、製造方法(1)の方法で合成すると、担持前より若干BET法比表面積が低下する。製造方法(2)であれば、この心配はない。
反応方法は、水溶性マグネシウム塩の水溶液の部分を水溶性マグネシウム塩とZnやCu等の水溶性2価金属塩水溶液とを混合した水溶液に変更するだけで、あとは製造方法(1)に記載されている原料スラリーの製造方法と全く同じである。
【0012】
<吸着剤>
本発明は、前記複合水酸化マグネシウムを含む吸着剤を包含する。吸着剤は、複合水酸化マグネシウムを粒子径0.05〜20mmの範囲に造粒した造粒物を含有することが好ましい。また吸着剤をカラム等に充填して酸性ガスを流通させ使用する場合には、スプレー造粒品または押出造粒品が通気性・ガス接触性の観点から優れている。
吸着剤は、酸性ガス吸着用であることが好ましい。吸着剤は、有機溶剤中の酸性物質吸着用であることが好ましい。吸着剤は脱臭用であることが好ましい。
本発明は、前記複合水酸化マグネシウムを含むケミカルフィルタを包含する。
硫化水素ガスやメチルメルカプタンを吸着するためには、複合水酸化マグネシウムにおける式(1)中のXは好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上である。
【実施例】
【0013】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0014】
実施例1
(原料スラリー)
1.5mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液12Lと、総アルカリ濃度を3.0Nに調製した苛性ソーダと炭酸ソーダとのアルカリ混液(2NaOH:NaCO=90:10)11.4Lを室温撹拌条件下で、滞留時間10分で連続注加反応を行った。得られた反応スラリー約23.4Lを濾過し、21Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通して、BET法比表面積260m/gの下記式で表される白色粉末1040gを得た。
Mg(OH)1.80(CO0.10・0.10H
(2価金属の担持)
この白色粉末50gに500mlの水を加え、撹拌下、1.0mol/Lの塩化亜鉛水溶液43.2mlを添加後、室温で30分撹拌保持した。得られた反応スラリーを濾過し、1Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通して、BET法比表面積206m/gの下記式で表される白色粉末48.9gを得た。
Mg0.95Zn0.05(OH)1.76(CO0.12・0.11H
【0015】
実施例2
(原料スラリー)
1.5mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液12Lと、総アルカリ濃度を3.0Nに調製した苛性ソーダと炭酸ソーダとのアルカリ混液(2NaOH:NaCO=90:10)11.4Lを室温撹拌条件下で、滞留時間10分で連続注加反応を行った。得られた反応スラリー約23.4Lを濾過し、21Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通して、BET法比表面積260m/gの下記式で表される白色粉末1040gを得た。
Mg(OH)1.80(CO0.10・0.10H
(2価金属の担持)
この白色粉末50gに500mlの水を加え、撹拌下、1.0mol/Lの硫酸銅水溶液43.2mlを添加後、室温で30分撹拌保持した。得られた反応スラリーを濾過し、1Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通して、BET法比表面積214m/gの下記式で表される水色粉末49.3gを得た。
Mg0.95Cu0.05(OH)1.80(CO0.10・0.14H
【0016】
実施例3
(原料スラリー)
1.5mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液12Lと、総アルカリ濃度を3.0Nに調製した苛性ソーダと炭酸ソーダとのアルカリ混液(2NaOH:NaCO=90:10)11.4Lを室温撹拌条件下で、滞留時間10分で連続注加反応を行った。得られた反応スラリー約23.4Lを濾過し、21Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通し
て、BET法比表面積260m/gの下記式で表される白色粉末1040gを得た。
Mg(OH)1.80(CO0.10・0.10H
(2価金属の担持)
この白色粉末50gに500mlの水を加え、撹拌下、1.0mol/Lの塩化ニッケル水溶液43.2mlを添加後、室温で30分撹拌保持した。得られた反応スラリーを濾過し、1Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通して、BET法比表面積225m/gの下記式で表される淡緑色粉末48.5gを得た。
Mg0.94Ni0.06(OH)1.80(CO0.10・0.16H
【0017】
実施例4
(原料スラリー)
1.5mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液12Lと、総アルカリ濃度を3.0Nに調製した苛性ソーダと炭酸ソーダとのアルカリ混液(2NaOH:NaCO=90:10)11.4Lを室温撹拌条件下で、滞留時間10分で連続注加反応を行った。得られた反応スラリー約23.4Lを濾過し、21Lの水にて通水洗浄後、水に乳化して10Lにした。これをスプレードライヤーで乾燥し、BET法比表面積263m/gの下記式で表される白色スプレー造粒粉末950gを得た。
Mg(OH)1.80(CO0.10・0.18H
(2価金属の担持)
この白色スプレー造粒粉末50gに500mlの水を加え、撹拌下、1.0mol/Lの塩化亜鉛水溶液43.2mlを添加後、室温で30分撹拌保持した。得られた反応スラリーを濾過し、1Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を目開き500μmの金網を通して、BET法比表面積180m/gの下記式で表される白色粉末48.0gを得た。
Mg0.94Zn0.06(OH)1.78(CO0.11・0.12H
【0018】
実施例5
(原料スラリー)
1.5mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液12Lと、総アルカリ濃度を3.0Nに調製した苛性ソーダと炭酸ソーダとのアルカリ混液(2NaOH:NaCO=90:10)11.4Lを室温撹拌条件下で、滞留時間10分で連続注加反応を行った。得られた反応スラリー約23.4Lを濾過し、21Lの水にて通水洗浄後、水に乳化して10Lにした。これをスプレードライヤーで乾燥し、BET法比表面積263m/gの下記式で表される白色スプレー造粒粉末950gを得た。
Mg(OH)1.80(CO0.10・0.18H
(2価金属の担持)
この白色スプレー造粒粉末50gに500mlの水を加え、撹拌下、1.0mol/Lの硫酸銅水溶液43.2mlを添加後、室温で30分撹拌保持した。得られた反応スラリーを濾過し、1Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を目開き500μmの金網を通して、BET法比表面積209m/gの下記式で表される水色粉末48.5gを得た。
Mg0.94Cu0.06(OH)1.82(CO0.09・0.12H
【0019】
比較例1
試薬特級水酸化カルシウムを用いた。BET法比表面積は13.2m/gであった。
【0020】
比較例2
協和化学工業(株)製水酸化マグネシウム「KISUMA 5」を用いた。BET法比表面積は5.9m/gであった。
【0021】
比較例3
協和化学工業(株)製水酸化マグネシウム「キョーワスイマグF」を用いた。BET法比表面積は57.6m/gであった。
【0022】
比較例4
1.5mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液12Lと、総アルカリ濃度を3.0Nに調製した苛性ソーダと炭酸ソーダとのアルカリ混液(2NaOH:NaCO=90:10)11.4Lを室温撹拌条件下で、滞留時間10分で連続注加反応を行った。得られた反応スラリー約23.4Lを濾過し、21Lの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて105℃で18時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通して、BET法比表面積260m/gの下記式で表される白色粉末1040gを得た。
Mg(OH)1.80(CO0.10・0.10H
【0023】
比較例5
1.5mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液12Lと、総アルカリ濃度を3.0Nに調製した苛性ソーダと炭酸ソーダとのアルカリ混液(2NaOH:NaCO=90:10)11.4Lを室温撹拌条件下で、滞留時間10分で連続注加反応を行った。得られた反応スラリー約23.4Lを濾過し、21Lの水にて通水洗浄後、水に乳化して10Lにした。これをスプレードライヤーで乾燥し、BET法比表面積263m/gの下記式で表される白色スプレー造粒粉末950gを得た。
Mg(OH)1.80(CO0.10・0.18H
【0024】
上記実施例1〜5および比較例1〜5について次の方法により分析を行った。(1)マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、ニッケル(Ni);キレート滴定法
(2)炭酸(CO);JIS R9101 水酸化ナトリウム溶液−塩酸滴定法
(3)乾燥減量(HO);局外規 乾燥減量
(4)BET法比表面積;液体窒素吸着法装置(ユアサアイオニクス製NOVA2000)
(5)X線構造解析;自動X線回折装置(リガク製RINT2200V)
(6)造粒粒子外観;走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所製S−3000N)
【0025】
組成分析およびBET法比表面積の測定結果を表1に示す。
図1に実施例1〜5で得られた複合水酸化マグネシウム化合物のX線回折像を示す。X線回折パターンはいずれも実施例1〜5で得られた粒子が水酸化マグネシウムであること示している。
実施例5のスプレー造粒品のSEM写真を図2に示す。図2によれば、本願発明の炭酸基含有複合水酸化マグネシウムは造粒性に優れ、スプレードライヤーや押出し造粒機等で容易に目的とする大きさの造粒品となることが分かる。
【0026】
【表1】
【0027】
次に、上記実施例1〜5および比較例1〜5について酸性ガス吸着試験を下記の方法に
よりおこなった。各酸性ガスの吸着試験の結果を表2〜4に示す。
(1)塩化水素ガス吸着破過試験
内径14mmのガラス製カラムにガラスウールとともに粉末試料を0.5g充填した。このカラムに94.1ppmの塩化水素ガスを流量0.44L/分で流通させ、カラム出口濃度を検知管で測定した。破過時間はカラム出口濃度が供給濃度の0.5%(0.5ppm)を超えた時間とした。
(2)SOxガス吸着破過試験
内径14mmのガラス製カラムにガラスウールとともに粉末試料を0.5g充填した。このカラムに136ppmのSOガスを流量0.44L/分で流通させ、カラム出口濃度を検知管で測定した。破過時間はカラム出口濃度が供給濃度の0.5%(0.7ppm)を超えた時間とした。
(3)硫化水素ガス吸着試験
粉末試料30mgを1L容テドラーバッグに入れ、脱気後に99.1ppmの硫化水素標準ガスを充填し、テドラーバック内の硫化水素ガス濃度を島津ガスクロマトグラフィーGC−14B(FPD検出器付)を用いて経時的に測定した。カラムは充填カラム「β,β’−オキシジプロピオニトリル25%」を使用した。吸着時間180分以内に硫化水素除去率が100%になった試料については、テドラーバッグ内のガスを抜き、再度99.1ppmの硫化水素標準ガスを充填してもう一度測定をおこなった。
硫化水素除去率(%)=(吸着前ガス濃度−吸着後ガス濃度)/吸着前ガス濃度×100
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
実施例1〜5のBET法比表面積が大きい複合水酸化マグネシウムは比較例1〜3の通常の水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムと比べて、試験に用いた全ての酸性ガスにおいて吸着率が高かった。比較例4〜5のBET法比表面積大きい炭酸基含有水酸化マグネシウムは、塩化水素ガスやSOxガスには優れた吸着能力を示すが、硫化水素ガスに関しては吸着能力が低く、ZnやCu、Niを複合化させた実施例1〜5には全く及ばなかった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の複合水酸化マグネシウムは、酸性物質との反応が速いため、速効性がある酸性
物質吸着剤・中和剤として有用である。また各種フィラーやセラミック素材、食品添加物や制酸剤等多岐にわたる利用が期待できる。
図1
図2