(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
0.11重量%乃至11.0重量%の請求項1乃至7のうちのいずれかの項に記載のシャダー防止添加剤組成物を、主要量の潤滑粘度の油と混合する工程を含むトランスミッション液の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明では各種の変更や代替形態が可能であり、その特定の態様については口述の実施例に例示することで明らかにしたが、一般的な態様については、以下に詳細に説明する。しかし、特定の態様についての以下の説明は開示する特定の形態に本発明を限定しようとするものではないこと、むしろ反対に、本発明は、特許請求の範囲に記載する本発明の真意および範囲内に入る全ての変更、同等の形態および代替形態を包含するものであることを了解されたい。
【0020】
車両の変速機は、エンジンによって発生した動力を車両の車輪に供給するものである。変速機の機能は、車両の運転に重要であるが、非常に複雑である。変速機は、プレートやバンド付きクラッチ、トルクコンバータ、ギヤ、任意には数ある中でも湿式クラッチなど多数の部品から構成されている。通常、変速機は手動、自動または無段式のいずれかである。ATFが提供する様々な機能ゆえに、ATF用添加剤については注意して選択することが欠かせない。トランスミッション液は通常、分散剤、摩擦緩和剤、耐摩耗性添加剤、酸化防止剤、および清浄剤等のような多数の添加剤を含んでいる。摩擦緩和剤はしばしばシャダーを抑えるために使用される。好適なトランスミッション液が無ければ、変速機はそのピークで作動せず、また自動車の運転に要する費用も増加することになる。
【0021】
最近まで、大半の自動変速機に採用されていたクラッチ・メカニズムは連続滑り式トルクコンバータ・クラッチ(CSTCC)であった。CSTCCには、優れた燃費と滑らかな乗り心地とを達成するために維持しなければならない特定の摩擦要求条件が要求される。しかし、CSTCCで要求されるような速度と共に摩擦が増加しないと、「粘着滑り(スティック−スリップ)」が生じる。「粘着滑り」とは、2つ以上の接触面の接触時間または速度が変化するときに、摩擦力の変動に起因した接触面の振動による相対移動をいう。変速機では粘着滑りの結果、車線に振動が生じることになって車両に乗車中に感知されるが、そのような振動はシャダーと呼ばれている。この粘着滑り現象を減らすために、自動変速機用トランスミッション液には通常シャダー防止添加剤が含まれている。
【0022】
シャダーを低減する一般的な方法としては、トランスミッション液に摩擦緩和剤を添加する方法がある。摩擦緩和剤は、緩やかな滑りが生じたときに面と面の間の摩擦を低減する成分である。一般にこれら成分は、長鎖状炭化水素鎖と小さな極性官能基とから構成されている。摩擦緩和剤の例としては、脂肪酸、脂肪アミン、脂肪酸アミド、および脂肪酸のエステルが挙げられる。ただし、多くの摩擦緩和剤は、ブッシュの一般的な材料であるPbやCuに対して腐食性を示す。また、摩擦緩和剤は望ましくないクラッチ能力の低下を引き起こすことがある。
【0023】
このような事情から、今日、自動車製造業者は、クラッチ・メカニズムとして電子制御式コンバータ・クラッチ(ECCC)を採用し始めている。この種のクラッチ・メカニズムは、CSTCCとは形状が異なり、また異なったエネルギー密度と高い作動温度を示す。CSTCCと同様にECCCでも、最適作動条件を維持するためには、シャダーを最小に抑えなければならない。よって、トランスミッション液もこの種のクラッチ・メカニズムに適したものでなければならない。
【0024】
従って、摩擦緩和剤を添加することなく粘着滑りを減らし、それによりシャダーを抑えるのに使用することができるトランスミッション液は有用である。本発明のトランスミッション液(TF)は、自動変速機または無段変速機に使用したときに初期シャダーを抑制するのに特に効果がある。
【0025】
[定義]
説明の中で使用する以下の用語は、次のように定義される:
【0026】
「シャダー」は、摩擦により誘発される振動を意味する。振動は、粘着滑り現象によって引き起こされ、互いに滑り合う金属面の速度と関係がある摩擦係数の挙動に関連している。
【0027】
「調合油」は、添加剤を含む潤滑油組成物を意味する。
【0028】
「コハク酸イミド」には、アルケニル又はアルキルモノ、ビスコハク酸イミドおよびその他高次の類似物が含まれるが、一般にはアルケニル置換コハク酸又は無水物とポリアミンとの反応の生成物を意味すると受け取られている。
【0029】
「ビスコハク酸イミド」は、主としてビスコハク酸イミドである反応生成物を意味し、モノコハク酸イミドを約5重量%まで含有していてもよい。
【0030】
[シャダー防止添加剤組成物]
本発明のシャダー防止添加剤組成物は、油溶性の添加剤組成物からなる。このシャダー防止添加剤組成物は、潤滑油、例えば、これらに限定されるものではないが、自動変速機および無段変速機用トランスミッション液に使用することができ、電子制御式コンバータ・クラッチ用のトランスミッション液に使用したときに特に効果がある。本発明のシャダー防止添加剤組成物は、(a)少なくとも一種の中性亜リン酸エステル化合物と、(b)炭化水素ビスコハク酸イミドおよびポリオールの炭化水素置換コハク酸エステルおよびそれらの混合物からなる群より選ばれ、炭化水素置換基の炭素原子数が少なくとも50である少なくとも一種の炭化水素置換コハク酸分散剤とを、粘着滑り現象により生じるシャダーまたは摩擦誘発振動を劇的に低減するような割合で含んでいる。
本発明の添加剤組成物は摩擦誘発振動を低減できるが、本発明の添加剤組成物および/または潤滑油組成物はさらに摩擦緩和剤を含んでいてもよい。エトキシル化アミンを除けば、どのような種類の摩擦緩和剤でもシャダー防止添加剤組成物および/または潤滑油組成物に添加することができる。本発明のシャダー防止添加剤組成物または潤滑油組成物は、長鎖カルボン酸の第一級アミドを含まない。なお、本発明の添加剤組成物および潤滑油組成物は、さらにモノコハク酸イミドを含んでいてもよいが、その場合には、炭化水素置換コハク酸分散剤とモノコハク酸イミドとの比は少なくとも7:3である。より好ましくは、炭化水素置換コハク酸分散剤とモノコハク酸イミドとの比は少なくとも7.5:2.5である。更に好ましくは、炭化水素置換コハク酸分散剤とモノコハク酸イミドとの比は少なくとも8:2である。最も好ましくは、炭化水素置換コハク酸分散剤とモノコハク酸イミドとの比は少なくとも9:1である。
【0031】
[炭化水素置換コハク酸分散剤]
本発明では、炭化水素置換コハク酸分散剤は中性亜リン酸エステル化合物と混合され、それによりシャダー防止添加剤組成物を得ることができる。本発明の一態様では、炭化水素置換コハク酸分散剤は炭化水素ビスコハク酸イミドであるが、より好ましくは、ビスコハク酸イミドはホウ酸化ビスコハク酸イミドである。
【0032】
ビスコハク酸イミドは、一種以上のポリアミン反応体と炭化水素置換コハク酸または無水物(あるいはコハク酸アシル化剤のようなもの)との反応による完全反応生成物であり、そして生成物が、第一級アミノ基と無水物部分の反応から生じる種類のイミド結合のほかに、アミド、アミジンおよび/または塩の結合を有するような化合物を包含するものである。ビスコハク酸イミドは、これらに限定されるものではないが、下記の方法を含む当該分野では公知の方法に従って製造される。
【0033】
コハク酸イミドのある基本的な種類、および「コハク酸イミド」なる技術用語に含まれる関連物質については、米国特許第2992708号、第3018291号、第3024237号、第3100673号、第3219666号、第3172892号及び第3272746号に開示されていて、その開示内容も、本発明の参照技術事項として本明細書の記載内容とする。「コハク酸イミド」には、多数のアミド、イミド、およびこの反応により生成するアミジン種も含まれると当該分野では解釈されている。しかし、主生成物はコハク酸イミドであり、この用語は一般に、上記のようにアルケニル置換コハク酸又は無水物とポリアミンとの反応の生成物を意味すると受け取られている。本明細書で使用するとき、この用語にはアルケニル又はアルキルモノ、ビスコハク酸イミドおよびその他高次類似物が含まれる。
【0034】
[A(1)無水コハク酸]
ポリオレフィンと無水マレイン酸の反応によるアルケニル置換コハク酸無水物の製造については、例えば米国特許第3018250号及び第3024195号に記載されている。そのような方法としては、ポリオレフィンと無水マレイン酸との熱的反応、および塩素化ポリオレフィンなどハロゲン化ポリオレフィンと無水マレイン酸との反応が挙げられる。アルケニル置換コハク酸無水物の還元によって、対応するアルキル誘導体が生じる。あるいは、米国特許第4388471号及び第4450281号に記載されているようにしてアルケニル置換コハク酸無水物を製造することもできる。これらの特許明細書の記載内容も全て参照技術事項として本明細書の記載内容とする。
【0035】
無水マレイン酸と反応するポリオレフィン重合体は、C
2〜C
5のモノオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンおよびペンテンを主要量で含む重合体である。重合体は、ポリイソブチレンのような単独重合体であってもよいし、また二種以上のそのようなオレフィンの共重合体、例えばエチレンとプロピレン、ブチレンおよびイソブチレンとの共重合体等であってもよい。他の共重合体としては、少量の共重合体単量体、例えば1乃至20モル%がC
4〜C
8の非共役ジオレフィンであるようなもの、例えばイソブチレンとブタジエンとの共重合体、またはエチレンとプロピレンと1,4−ヘキサジエンとの共重合体等を挙げることができる。
【0036】
ポリオレフィン重合体において、Rで表されるアルケニル又はアルキル部は通常、炭素原子約10〜300個を含んでいるが、好ましくは炭素原子10〜200個、より好ましくは炭素原子12〜100個、最も好ましくは炭素原子20〜100個を含んでいる。
【0037】
特に好ましい部類のオレフィン重合体にはポリブテンが含まれ、一種以上の1−ブテン、2−ブテンおよびイソブテンの重合により製造される。特に望ましいのは、イソブテンから誘導された単位を相当量の割合で含むポリブテンである。ポリブテンは、少量のブタジエン(重合体に組み込まれていてもいなくてもよいが)を含んでいてもよい。極めてしばしばイソブテン単位が、重合体の単位のうちの80%を占め、好ましくは少なくとも90%を占めている。これらのポリブテンは、当該分野の熟練者にはよく知られていて、容易に入手できる市販物質である。それらに関する開示は、例えば米国特許第3215707号、第3231587号、第3515669号、第3579450号及び第3912764号に見られる。上記の内容も、好適なポリブテン開示の参照技術事項として本明細書の記載内容とする。
【0038】
ポリオレフィンと無水マレイン酸との反応のほかに、他の多数のアルキル化炭化水素も同様に、無水マレイン酸と一緒に使用してアルケニルコハク酸無水物を生成させることができる。他の好適なアルキル化炭化水素としては、分子量が100〜4500かそれ以上の範囲、より好ましくは分子量が200〜2000の範囲にある環状、線状、分枝鎖及び内部又はアルファオレフィンが挙げられる。例えば、パラフィンろうの熱分解によりアルファオレフィンが得られる。一般に、これらのオレフィンの長さは炭素原子数5〜20の範囲にある。別のアルファオレフィン源としてはエチレン成長法があり、炭素数が偶数のオレフィンが得られる。別のオレフィン源としては、公知のチーグラー触媒のような適切な触媒を用いてアルファオレフィンを二量化する方法がある。内部オレフィンは、シリカのような好適な触媒を用いてアルファオレフィンを異性化することにより容易に得られる。
【0039】
[A(2)ポリアミン]
アルケニル又はアルキルコハク酸イミドの製造に用いられるポリアミンは、2〜約12個のアミン窒素原子と2〜約40個の炭素原子を持つポリアミンであることが好ましい。ポリアミンとアルケニル又はアルキルコハク酸無水物とが反応して、本発明に用いられるポリアミノアルケニル又はアルキルコハク酸イミドが生成する。コハク酸イミド当り少なくとも一個の塩基性アミンを与えるようにポリアミンが選ばれる。炭化水素オキシカルボニル、ヒドロキシ炭化水素オキシカルボニルまたはヒドロキシポリオキシアルキレンオキシカルボニルを生成させるのに、ポリアミノアルケニル又はアルキルコハク酸イミドの窒素の反応は第二級または第一級アミンで効率良く進むと考えられるから、ポリアミノアルケニル又はアルキルコハク酸イミドの塩基性アミン原子のうちの少なくとも一個は、第一級アミンまたは第二級アミンのいずれかでなければならない。よって、コハク酸イミドが塩基性アミンを一個しか含まないような例では、そのアミンは第一級アミンまたは第二級アミンのいずれかでなければならない。ポリアミンの炭素対窒素比は約1:1乃至約10:1であることが好ましい。
【0040】
ポリアミノアルケニル又はアルキルコハク酸イミドのポリアミン部分は、(A)水素、(B)炭素原子数1〜約10の炭化水素基、(C)炭素原子数2〜約10のアシル基、および(D)モノケト、モノヒドロキシ、モノニトロ、モノシアノ、(B)及び(C)の低級アルキル及び低級アルコキシ誘導体から選ばれた置換基で置換されていてもよい。「低級」とは、低級アルキルまたは低級アルコキシのような用語で使われるとき、炭素原子1〜約6個を含む基を意味する。ポリアミンの一個のアミン上の少なくとも一個の置換基は水素である、例えば、ポリアミンの少なくとも一個の塩基性窒素原子は第一級又は第二級アミノ窒素原子である。
【0041】
本発明のポリアミン成分に関して記載されている炭化水素基は、炭素と水素とからなる有機基を意味し、脂肪族、脂環式、芳香族、またはそれらの組合せ、例えばアラルキルであってよい。炭化水素基は、脂肪族不飽和、すなわちエチレン及びアセチレン不飽和、特にアセチレン不飽和が殆ど無いことが好ましい。本発明の置換ポリアミンは一般には、必然ではないが、N−置換ポリアミンである。炭化水素基および置換炭化水素基の例示としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル等のアルキル;プロペニルイソブテニル、ヘキセニル、オクテニル等のアルケニル;2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、ヒドロキシイソプロピル、4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシアルキル;2−ケトプロピル、6−ケトオクチル等のケトアルキル;エトキシエチル、エトキシプロピル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、2−(2−エトキシエトキシ)エチル、2−(2−(2−エトキシ−エトキシ)エトキシ)エチル、3,6,9,12−テトラオキサテトラデシル、2−(2−エトキシエトキシ)ヘキシル等のアルコキシ及び低級アルケノキシアルキルを挙げることができる。上記(C)置換基のアシル基は例えば、プロピオニル、アセチル等である。より好ましい置換基は、水素、C
1〜C
6のアルキル、およびC
1〜C
6のヒドロキシアルキルである。
【0042】
置換ポリアミンには通常、置換基を受容できる任意の原子で置換基が存在する。置換された原子、例えば置換された窒素原子は一般には幾何学的に不等価であり、それゆえ、本発明で使用する置換アミンは、置換基が等価及び/又は不等価原子に位置したモノ及びポリ置換ポリアミンの混合物であってよい。
【0043】
本発明の範囲内で使用する、より好ましいポリアミンは、アルキレンジアミンを含み、またアルキル置換ポリアルキレンポリアミンなどの置換ポリアミンを含む、ポリアルキレンポリアミンである。アルキレン基は、炭素原子2〜6個を含むことが好ましく、また窒素原子と窒素原子の間に炭素原子2〜3個があることが好ましい。そのような基の例示としては、エチレン、1,2−プロピレン、2,2−ジメチルプロピレン、トリメチレン等がある。そのようなポリアミンの例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジ(トリメチレン)トリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、トリプロピレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、およびペンタエチレンヘキサアミンを挙げることができる。そのようなアミンには異性体も含まれ、例えば分枝鎖ポリアミン、および前述した炭化水素置換ポリアミンを含む置換ポリアミンがある。ポリアルキレンポリアミンのうちでは、2〜12個のアミン窒素原子と2〜24個の炭素原子を含むものが特に好ましく、そしてC
2〜C
5のアルキレンポリアミンが最も好ましく、とりわけエチレンジアミン、ジプロピレントリアミン等の低級ポリアルキレンポリアミンが好ましい。
【0044】
また、ポリアミン成分には、複素環式ポリアミン、複素環式置換アミンおよび置換複素環式化合物も含まれる、ただし、複素環は酸素および/または窒素を含む1個以上の5−6員環からなる。そのような複素環は、飽和でも不飽和でもよく、また前述の(A)、(B)、(C)および(D)から選ばれた基で置換されていてもよい。複素環の例示としてはピペラジンがあり、例えば2−メチルピペラジン、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1,2−ビス(N−ピペラジニル)エタン、およびN,N’−ビス(N−ピペラジニル)ピペラジン、2−メチルイミダゾリン、3−アミノピペリジン、2−アミノピリジン、2−(3−アミノエチル)−3−ピロリン、3−アミノピロリジン、N−(3−アミノプロピル)−モルホリン等がある。複素環式化合物のうちではピペラジンが好ましい。
【0045】
本発明で用いる化合物を生成させるのに使用することができる代表的なポリアミンとしては、次のようなものがある:エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタアミン、メチルアミノプロピレンジアミン、N−(ベータアミノエチル)−ピペラジン、N,N’−ジ(ベータアミノエチル)ピペラジン、N,N’−ジ(ベータアミノエチル)−イミダゾリドン−2、N−(ベータ−シアノエチル)エタン−1,2−ジアミン、1,3,6,9−テトラアミノオクタデカン、1,3,6−トリアミノ−9−オキサデカン、N−(β−アミノエチル)ジエタノールアミン、N−メチル−1,2−プロパンジアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)−エタノール、1,2−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]−エタノール。
【0046】
別の好適なポリアミン群としては、プロピレンアミン(ビスアミノプロピルエチレンジアミン)がある。プロピレンアミンは、アクリロニトリルをエチレンアミン、例えば式H
2N(CH
2CH
2NH)
ZH(ただし、Zは1〜5の整数である)を有するエチレンアミンと反応させた後、得られた中間体に水素添加することにより製造される。よって、エチレンジアミンとアクリロニトリルから製造される生成物は、H
2N(CH
2)
3NH(CH
2)
2NH(CH
2)
3NH
2となる。
【0047】
多数の例において、本発明のコハク酸イミドの製造に反応体として使用されるポリアミンは、単一化合物でなく、主として一種以上の化合物からなり平均組成が表示されるような混合物である。例えば、アジリジンの重合またはジクロロエチレンとアンモニアの反応により製造されるテトラエチレンペンタアミンは、低級と高級両方のアミン構成員、例えばトリエチレンテトラアミン、置換ピペラジンおよびペンタエチレンヘキサアミンを有するが、組成物は大部分はテトラエチレンペンタアミンであり、全アミン組成物の実験式はテトラエチレンペンタアミンの式に極めて近い。最後に、本発明に使用されるコハク酸イミドの製造において、ポリアミンの様々な窒素原子が幾何学的に等価ではない場合に、幾つかの置換異性体が可能であり、それらも最終生成物に含まれる。ポリアミンの製造方法およびその反応については、シジウィック(Sidgewick)著、「窒素の有機化学(The Organic Chemistry of Nitrogen)」、クラレンドン・プレス(Clarendon Press)、オックスフォード、1966年;ノラー(Noller)著、「有機化合物の化学(Chemistry of Organic Compounds)」、ソーンダース(Saunders)、フィラデルフィア、第2版、1957年;およびカーク/オスマー(Kirk-Othmer)著、「化学工学大辞典(Encyclopedia of Chemical Technology)」、第2版、特に第2巻、p.99〜116に詳しく記載されている。
【0048】
好適なポリアミンの例としては、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、およびダゥ(Dow)HPA−X重質ポリアミン(数平均分子量275、ダゥ・ケミカル・カンパニー(ミシガン州ミッドランド)製)が挙げられる。そのようなアミンには異性体も含まれ、例えば分枝鎖ポリアミン、および前述の炭化水素置換ポリアミンを含む置換ポリアミンがある。HPA−X重質ポリアミン(「HPA−X」)は、分子当り平均でおよそ6.5個のアミン窒素原子を含んでいる。そのような重質ポリアミンは一般に優れた結果をもたらす。
【0049】
ポリアミンとアルケニル又はアルキルコハク酸無水物とが反応してポリアミノアルケニル又はアルキルコハク酸イミドが生成することについては、当該分野ではよく知られていて、米国特許第2992708号、第3018291号、第3024237号、第3100673号、第3219666号、第3172892号及び第3272746号に開示されている。これらの特許明細書の記載も、アルケニル又はアルキルコハク酸イミド製造方法に関する参照技術内容として本明細書の記載内容とする。
【0050】
上述したように、「ポリアミノアルケニル又はアルキルコハク酸イミド」は、ポリアミノアルケニル又はアルキルモノ及びビスコハク酸イミド両方を意味し、またアルケニル又はアルキルポリコハク酸イミドの高次類似物も意味する。ビス及び高次類似物の製造は、試薬のモル比を調整することにより遂行することができる。例えば、ポリアミンと無水コハク酸のモル比を調整することによって、主としてモノ又はビスコハク酸イミドからなる生成物を製造することができる。よって、1モルのポリアミンが1モルのアルケニル又はアルキル置換コハク酸無水物と反応するならば、主にモノコハク酸イミド生成物が製造される。ポリアミン1モル当り2モルのアルケニル又はアルキル置換コハク酸無水物が反応するならば、ビスコハク酸イミドが製造される。高次類似物も同様に製造することができる。
【0051】
本発明の方法に用いられる特に好ましい部類のポリアミノアルケニルまたはアルキルコハク酸イミドは、下記II式により表すことができる:
【0052】
【化1】
【0053】
上記式中、Rは炭素原子数10〜300のアルケニルまたはアルキルであって、R
2は炭素原子数2〜10のアルキレンであり、R
3は水素、低級アルキルまたは低級ヒドロキシアルキルであって、aは0〜10の整数であり、そしてWは−NH
2または下記III式の基を表す:
【0054】
【化2】
【0055】
式中、Rは炭素原子数10〜300のアルケニルまたはアルキルである。ただし、Wが上記III式の基であるとき、aは0ではなく、少なくとも一個のR
3は水素であるとの条件が付く。
【0056】
上に示したように、コハク酸イミドの製造に用いられるポリアミンはしばしば様々な化合物の混合物であり、得られたコハク酸イミドはII式として示した平均組成を有する。よって、II式でR
2およびR
3の各値は他のR
2やR
3と同じでも異なっていてもよい。
【0057】
Rは、炭素原子数10〜200のアルケニルまたはアルキルであることが好ましく、最も好ましくは炭素原子数20〜100のアルケニルまたはアルキルである。
【0058】
R
2は、炭素原子数2〜6のアルキレンであることが好ましく、最も好ましくはエチレンまたはプロピレンである。
【0059】
R
3は、水素であることが好ましい。
【0060】
aは、1〜6の整数であることが好ましい。
【0061】
II式において、ポリアミノアルケニル又はアルキルコハク酸イミドは便宜上、三つの部分から構成されているとみなすことができる、すなわち、アルケニル又はアルキル部R、下記式で表されるコハク酸イミド部:
【0062】
【化3】
【0063】
および下記基で表されるポリアミノ部:
【0064】
【化4】
【0065】
この反応に用いられる好ましいアルキレンポリアミンは、一般に下記式で表される:
H
2N−(R’−NH)
a−R’−NH
2
【0066】
式中、R’は炭素原子数2〜10のアルキレン部であり、そしてaは約0〜10の整数である。しかし、これらアルキレンポリアミンの製造では単一化合物が生成するわけではなく、ピペラジンなどの環状複素環もある程度まではアルキレンジアミンに含まれてもよい。
【0067】
さらに、これらに限定されるものではないが、次に記載するような方法を含む他の方法によってもコハク酸イミドを製造することができる:米国特許第5616668号(ハリソン、外)、同第5565528号(ハリソン、外)、同第5753597号(ハリソン、外)、同第6617396号(ハリソン、外)、同第6451920号(ハリソン、外)及び同第4746446号(ウォレンベルグ、外)。これら参照文献の記載内容も全て参照技術事項として本明細書の記載内容とする。
【0068】
後処理したコハク酸イミドは、これらに限定されるものではないが、次のものを含む当該分野では公知の方法に従って製造される:米国特許第5716912号(ハリソン、外)、同第5821205号(ハリソン、外)、同第5849676号(ハリソン、外)、同第5872083号(ハリソン、外)、同第6015776号(ハリソン、外)、同第6107450号(ハリソン、外)、同第6146431号(ハリソン、外)、同第6358892号(ハリソン、外)。基本的には無リンの窒素含有分散剤も、例えばホウ酸または同様のホウ素化合物と反応させてホウ酸化分散剤を生成させることによって後処理することができる。ホウ酸(ホウ素酸)以外の好適なホウ素化合物の例としては、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、およびホウ酸のエステルが挙げられる。一般に、無リン窒素含有分散剤に対してホウ素化合物は約0.1当量乃至10当量で用いることができる。
【0069】
[ポリオールの炭化水素置換コハク酸エステル]
本発明の別の態様では、ポリオールの炭化水素置換コハク酸エステルを中性亜リン酸エステル化合物に混合することができる。そのようなコハク酸エステルは通常、炭化水素置換コハク酸又は無水物(例えば、ポリイソブテニルコハク酸無水物)とポリオール(例えば、ペンタエリトリトール)との反応生成物である。ポリオールの炭化水素置換エステルについては、米国特許第3381022号に記載されていてその内容も参照として本明細書の記載とし、また米国特許第4173540号にも記載されていて、その記載内容も参照技術情報として本明細書の記載内容とする。
【0070】
好適なポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、およびアルキレン基が炭素原子2〜8個を含む他のアルキレングリコールを挙げることができる。その他の使用できる多価アルコールとしては、グリセロール、ペンタエリトリトール、1,2−ブタンジオール、2,3−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、ピナコール、エリトリトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトール、1,2−シクロヘキサンジオール、およびキシレングリコールを挙げることができる。特に好ましい部類の多価アルコールは、少なくとも3個のヒドロキシル基を持つもの、例えばペンタエリトリール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、ソルビトール、およびマンニトールである。最も好ましいのはペンタエリトリトールである。
【0071】
また、本発明に使用されるペンタエリトリトールのエステルは、シェブロン・オロナイト・カンパニー、LLC(カリフォルニア州サンラモン)より入手でき、またルブリゾル・コーポレーション(オハイオ州ワイクリフ)からも入手できる。
【0072】
[中性亜リン酸エステル]
本発明において好ましい中性亜リン酸エステル化合物として、亜リン酸三炭化水素エステルが挙げられる。より好ましい亜リン酸三炭化水素エステルとしては、亜リン酸トリアルキルが挙げられる。最も好ましい亜リン酸トリアルキルとしては、亜リン酸トリラウリルが挙げられる。亜リン酸トリラウリルは、当該分野で公知の方法以外にも、ローディア社(ニュージャージー州クランベリー)より製造販売されて商品名デュラホスTLPとして市販されている。デュラホスTLPのMSDSによればこの化合物は、亜リン酸トリラウリルを約90重量%、亜リン酸水素ジラウリルを7.5重量%、およびフェノールを0.5重量%以下で含んでいる。
【0073】
亜リン酸トリラウリルなどの中性亜リン酸エステル化合物は、下記式で表される:
【0074】
【化5】
【0075】
式中、R、R’およびR”は独立に、炭素原子数約1〜24、好ましくは炭素原子数約4〜約18、より好ましくは炭素原子数約6〜約16の炭化水素基である。R、R’およびR”基は、飽和又は不飽和の、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素基であってよい。好適なR、R’およびR”基の代表的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−プロペニル、n−ブテニル、n−ヘキシル、ノニルフェニル、n−ドデシル、n−ドデセニル、ヘキサデシル、オクタデセニル、ステアリル、i−ステアリル、およびヒドロキシステアリル等を挙げることができる。好ましくは、R、R’およびR”はそれぞれアルキルまたはアリールである。
【0076】
好ましい中性亜リン酸エステル化合物としては、亜リン酸三炭化水素エステルが挙げられる。より好ましい亜リン酸三炭化水素エステルとしては、亜リン酸トリアルキルが挙げられる。最も好ましい亜リン酸トリアルキルとしては、亜リン酸トリラウリルが挙げられ、ローディア社より製造販売されて商品名デュラホスTLPとして市販されている。
【0077】
ローディア社より入手できること以外に、亜リン酸トリアルキルは、米国特許第2848474号に記載されているような公知の方法から合成することもでき、その明細書の記載内容も参照技術事項として本明細書の記載内容とする。
【0078】
[潤滑油組成物]
本発明の潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度の油と少量のシャダー防止添加剤組成物を含み、該添加剤組成物は、(a)少なくとも一種の中性亜リン酸エステル化合物と、(b)炭化水素ビスコハク酸イミドおよびポリオールの炭化水素置換コハク酸エステルおよびそれらの混合物からなる群より選ばれ、炭化水素置換基の炭素原子数が少なくとも50である少なくとも一種の炭化水素置換コハク酸分散剤を含むが、添加剤組成物はエトキシル化アミンを含まず、かつ添加剤組成物は長鎖カルボン酸の第一級アミドを含まず、そして潤滑油組成物がさらにモノコハク酸イミドも含有する場合には、該炭化水素置換コハク酸分散剤とモノコハク酸イミドとの比は少なくとも7:3である。より好ましくは、炭化水素置換コハク酸分散剤とモノコハク酸イミドとの比は少なくとも7.5:2.5である。更に好ましくは、炭化水素置換コハク酸分散剤とモノコハク酸イミドとの比は少なくとも8:2である。最も好ましくは、炭化水素置換コハク酸分散剤とモノコハク酸イミドとの比は9:1である。
【0079】
シャダー防止添加剤組成物は、自動変速機および無段変速機内にあるギヤや他の部品を潤滑にすると共に、摩擦誘発振動によって生じるシャダーを低減するのに充分な有効量で、基油に添加される。一般に本発明の潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度の油と少量のシャダー防止添加剤パッケージを含んでいる。
【0080】
具体的には潤滑油組成物は、(a)好ましくは約0.01重量%乃至約1.00重量%の亜リン酸三炭化水素エステル、例えば亜リン酸トリアルキル、例えば亜リン酸トリラウリルからなる少なくとも一種の中性亜リン酸エステル化合物を含んでいる。より好ましくは、約0.10重量%乃至約0.85重量%の亜リン酸三炭化水素エステル、例えば亜リン酸トリアルキル、例えば亜リン酸トリラウリルが潤滑油組成物中に存在する。更に好ましくは、約0.20重量%乃至約0.70重量%の亜リン酸三炭化水素エステル、例えば亜リン酸トリアルキル、例えば亜リン酸トリラウリルが潤滑油組成物中に存在する。最も好ましくは、約0.30重量%乃至約0.65重量%の亜リン酸三炭化水素エステル、例えば亜リン酸トリアルキル、例えば亜リン酸トリラウリルが潤滑油組成物中に含まれる。
【0081】
ある態様では、潤滑油組成物の(b)成分は、炭化水素置換基の炭素原子数が少なくとも50である炭化水素ビスコハク酸イミドであり、好ましくは約0.10重量%乃至約10.0重量%のビスコハク酸イミド、例えば後処理ビスコハク酸イミド、例えばホウ酸化ビスコハク酸イミドからなる。より好ましくは、約0.20重量%乃至約8.0重量%のビスコハク酸イミド、例えば後処理ビスコハク酸イミド、例えばホウ酸化ビスコハク酸イミドが潤滑油組成物中にある。更に好ましくは、約0.3重量%乃至約6.0重量%のビスコハク酸イミド、例えば後処理ビスコハク酸イミド、例えばホウ酸化ビスコハク酸イミドが潤滑油組成物中にある。最も好ましくは、約0.4重量%乃至約5.0重量%のビスコハク酸イミド、例えば後処理ビスコハク酸イミド、例えばホウ酸化ビスコハク酸イミドが潤滑油組成物中に含まれる。
【0082】
別の態様では、潤滑油組成物の(b)成分は、炭化水素置換基の炭素原子数が少なくとも50であるポリオールの炭化水素置換コハク酸エステル及びその混合物であり、好ましくは約0.10重量%乃至約10.0重量%のポリアルコールのエステル、例えばペンタエリトリトールのエステルからなる。より好ましくは、約0.20重量%乃至約8.0重量%のポリアルコールのエステル、例えばペンタエリトリトールのエステルが潤滑油組成物中にある。更に好ましくは、約0.3重量%乃至約5.0重量%のポリアルコールのエステル、例えばペンタエリトリトールのエステルが潤滑油組成物中にある。最も好ましくは、約0.4重量%乃至約5.0重量%のポリアルコールのエステル、例えばペンタエリトリトールのエステルが潤滑油組成物中に含まれる。
【0083】
本発明のまた別の態様では、潤滑油組成物の(b)成分は、炭化水素ビスコハク酸イミドとポリオールの炭化水素置換コハク酸エステルとの混合物であってもよい。
【0084】
用いられる基油は、各種の潤滑粘度の油のいずれであってもよい。そのような組成物に使用される潤滑粘度の基油は、鉱油であっても合成油であってもよい。粘度が40℃で少なくとも2.5cStで、流動点が20℃未満、好ましくは0℃かそれ未満である基油が望ましい。基油は合成または天然の原料から誘導することができる。本発明に基油として使用される鉱油としては例えば、パラフィン系、ナフテン系、および通常潤滑油組成物に使用されるその他の油を挙げることができる。合成油としては例えば、合成炭化水素油と合成エステルの両方、および所望の粘度を有するそれらの混合物を挙げることができる。合成炭化水素油としては例えば、エチレンの重合により合成された油、ポリアルファオレフィン又はPAO、あるいは一酸化炭素ガスと水素ガスを用いてフィッシャー・トロプシュ法などの炭化水素合成法により合成された油を挙げることができる。使用できる合成炭化水素油としては、適正な粘度を有するアルファオレフィンの液体重合体が挙げられる。特に有用なものはC
6〜C
12オレフィンの水素化液体オリゴマー、例えば1−デセン三量体である。同様に、適正な粘度のアルキルベンゼン、例えばジドデシルベンゼンも使用することができる。使用できる合成エステルとしては、モノカルボン酸およびポリカルボン酸と、モノヒドロキシアルカノールおよびポリオールとのエステルが挙げられる。代表的な例としては、ジドデシルアジペート、ペンタエリスリトールテトラカプロエート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、およびジラウリルセバケート等がある。モノ及びジカルボン酸とモノ及びジヒドロキシアルカノールとの混合物から合成された複合エステルも使用することができる。鉱油と合成油のブレンドも使用できる。
【0085】
従って、基油は、精製パラフィン型基油、精製ナフテン系基油、あるいは潤滑粘度の合成炭化水素又は非炭化水素油であってもよい。また、基油は、鉱油と合成油の混合物、I−IV種およびそれらの混合物であってもよい。最も好ましい基油は、II種、III種およびそれらの混合物である。好ましい基油としては、シェブロン・フィリップス(Chevron Phillips)PAO4cSt(シェブロン・フィリップス社(テキサス州ウッドランズ)より入手可能)と、RLOP100N(シェブロン・テキサコ・コーポレーション(カリフォルニア州サンラモン)より入手可能)とのブレンドが挙げられる。別の好ましい基油は、ペトロカナダ(PetroCanada)4(ペトロ−カナダ社(カナダ、アルバータ州カルガリー)より入手可能)である。
【0086】
さらに、潤滑油組成物でよく知られているその他の添加剤を本発明の添加剤組成物に加えて、調合油を完成させてもよい。
【0087】
[その他の添加剤]
以下の添加剤成分は、本発明に好ましく用いることができる成分の幾つかの例である。これら添加剤の例は、本発明を説明するために記されるのであって本発明を限定するものではない:
【0088】
2)金属清浄剤
硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェネート、アルキル又はアルケニル芳香族スルホネート、ホウ酸化スルホネート、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテネート、アルカノール酸の金属塩、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩、およびそれらの化学的及び物理的混合物。
【0089】
3)酸化防止剤
酸化防止剤は、鉱油が使用中に劣化する傾向を低減するものであり、金属表面のスラッジ及びワニス状堆積物のような酸化生成物および粘度の増加が劣化の証拠となる。本発明に使用できる酸化防止剤の例としては、これらに限定されるものではないが、フェノール型(フェノール系)酸化防止剤、例えば4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−5−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−I−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−t−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−10−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)を挙げることができる。ジフェニルアミン型酸化防止剤としては、これらに限定されるものではないが、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、およびアルキル化−アルファ−ナフチルアミンを挙げることができる。その他の型の酸化防止剤としては、金属ジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、および15−メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)を挙げることができる。
【0090】
4)耐摩耗性添加剤
その名称が意味するように、これら添加剤は可動金属部分の摩耗を低減する。そのような添加剤の例としては、これらに限定されるものでないが、潤滑油組成物の0.08重量%以下を占めるリン酸エステル、カルバメート、エステル、およびモリブデン錯体を挙げることができる。
【0091】
5)錆止め添加剤(錆止め剤)
a)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。
b)その他の化合物:ステアリン酸およびその他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0092】
6)抗乳化剤
アルキルフェノールと酸化エチレンの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0093】
7)極圧耐摩耗剤(EP/AW剤)
ジアルキルジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル、第二級アルキルおよびアリール型)、硫化ジフェニル、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、ナフテン酸鉛、中和リン酸エステル、ジチオリン酸エステル、および無硫黄リン酸エステル。
【0094】
8)摩擦緩和剤
エトキシル化アミンを除く、脂肪アルコール、脂肪酸、アミン、ホウ酸化エステル、その他のエステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル、およびホスホン酸エステル。
【0095】
9)多機能添加剤
硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノリンジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン−モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物。
【0096】
10)粘度指数向上剤
ポリメタクリレート型重合体、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水和スチレン−イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、および分散剤型粘度指数向上剤。
【0097】
11)流動点降下剤
ポリメチルメタクリレート。
【0098】
12)消泡剤
アルキルメタクリレート重合体、およびジメチルシリコーン重合体。
【0099】
13)金属不活性化剤
ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、およびメルカプトベンズイミダゾール。
【0100】
14)分散剤
アルケニルコハク酸イミド、他の有機化合物で変性したアルケニルコハク酸イミド、エチレンカーボネート又はホウ酸による後処理で変性したアルケニルコハク酸イミド、ペンタエリトリトール、フェネート−サリチレート及びそれらの後処理類似物、アルカリ金属又は混合アルカリ金属、アルカリ土類金属のホウ酸塩、水和アルカリ金属ホウ酸塩の分散物、アルカリ土類金属ホウ酸塩の分散物、およびポリアミド無灰分散剤等又はそのような分散剤の混合物。
【0101】
[シャダー防止添加剤組成物の製造方法]
本発明のシャダー防止添加剤組成物は、次の二成分を約70°F乃至195°Fの高温、例えば約140°Fで混合することにより製造される:(a)少なくとも一種の中性亜リン酸エステル化合物、例えば亜リン酸三炭化水素エステル、例えば亜リン酸トリアルキル、例えば亜リン酸トリラウリル、および(b)炭化水素ビスコハク酸イミドおよびポリオールの炭化水素置換コハク酸エステルおよびそれらの混合物からなる群より選ばれ、炭化水素置換基の炭素原子数が少なくとも50である少なくとも一種の無リン炭化水素置換コハク酸分散剤。少なくとも一種の中性亜リン酸エステル化合物は、約0.10重量%乃至約90.9重量%で添加剤組成物に使用することが好ましい。より好ましくは、少なくとも一種の中性亜リン酸エステル化合物を約1.2重量%乃至約81.0重量%で添加剤組成物に使用する。更に好ましくは、少なくとも一種の中性亜リン酸エステル化合物を約3.9重量%乃至約70.0重量%で、最も好ましくは約5.7重量%乃至約61.9重量%で添加剤組成物に使用する。炭化水素ビスコハク酸イミドおよびポリオールの炭化水素置換コハク酸エステルおよびそれらの混合物からなる群より選ばれ、炭化水素置換基の炭素原子数が少なくとも50である少なくとも一種の炭化水素置換コハク酸分散剤は、約9.1重量%乃至約99.9重量%で添加剤組成物に使用することが好ましい、より好ましくは、少なくとも一種の炭化水素置換コハク酸分散剤を約19.0重量%乃至約98.8重量%で添加剤組成物に使用する。更に好ましくは、少なくとも一種の炭化水素置換コハク酸分散剤を約30.0重量%乃至約96.1重量%で、最も好ましくは約38.1重量%乃至約94.3重量%で添加剤組成物に使用する。
【0102】
[本発明の調合油]
本発明の調合済み潤滑油組成物の第一の製造方法は、上述したシャダー防止添加剤組成物を主要量の潤滑粘度の油に添加することからなるが、他の添加剤は存在してもしなくてもよく、また主要量とは50重量%以上であり、潤滑油組成物がさらにモノコハク酸イミドを含有する場合には炭化水素置換コハク酸分散剤とモノコハク酸イミドとの比は少なくとも7:3である。より好ましくは、炭化水素置換コハク酸分散剤とモノコハク酸イミドとの比は少なくとも7.5:2.5である。更に好ましくは、炭化水素置換コハク酸分散剤とモノコハク酸イミドとの比は少なくとも8:2である。最も好ましくは、炭化水素置換コハク酸分散剤とモノコハク酸イミドとの比は少なくとも9:1である。シャダー防止添加剤組成物は、潤滑油組成物の全重量に基づき約0.11重量%乃至約11.0重量%の範囲で潤滑油組成物中に含まれることが好ましく、より好ましくは約0.30重量%乃至約8.85重量%で、更に好ましくは約0.50重量%乃至約6.70重量%で、そして最も好ましくは約0.70重量%乃至約5.65重量%で含まれる。
【0103】
本発明の調合済み潤滑油組成物の第二の製造方法は、シャダー防止添加剤組成物の(a)成分と(b)成分を別々に潤滑粘度の油に添加することからなる。
【0104】
調合油の第三の製造方法は、シャダー防止添加剤組成物またはシャダー防止添加剤組成物の個々の成分を第二の添加剤パッケージに混合し、それにより組合せの添加剤パッケージを生成させる方法である。次いで、組合せ添加剤パッケージを主要量の潤滑粘度の油に添加するが、主要量とは50重量%以上である。
【0105】
[本発明の使用方法]
本発明は、これらに限定されるものではないが、自動及び無段変速機を含む変速機のシャダーを低減するために使用される。具体的には、本発明の潤滑油を変速機の金属部品と接触させてシャダーを低減する。シャダー防止添加剤組成物は、潤滑油組成物の全重量に基づき約0.11重量%乃至約11.00重量%の範囲で潤滑油組成物中に存在することが好ましく、より好ましくは約0.30重量%乃至約8.85重量%、更に好ましくは約0.50重量%乃至約6.70重量%、そして最も好ましくは約0.70重量%乃至約5.65重量%で存在する。シャダー防止添加剤組成物は任意に、輸送や貯蔵過程での取扱いを容易にするために充分な量の無機液体希釈剤を含んでいる。シャダー防止添加剤組成物は、有機液体希釈剤を一般に約0.5重量%乃至約45重量%含み、好ましくは約2重量%乃至約20重量%含んでいる。使用することができる好適な有機希釈剤としては例えば、溶剤精製100N(すなわち、シトコン(Cit-con)100N)、および水素化分解100N(すなわち、シェブロン(Chevron)100N)等を挙げることができる。有機希釈剤の粘度は100℃で約10乃至20cStであることが好ましい。
【0106】
[性能試験]
本発明のシャダー防止潤滑油組成物は一般に、電子制御式コンバータ・クラッチ(ECCC又はEC
3)試験を使用したときに、ジェネラル・モーターズ・コーポレーション(GM)がデクスロン(DEXRON)−III(商品名)の仕様(デクスロン−III、H改訂、自動変速機用トランスミッション液仕様、GMN10055)に課したシャダー防止試験要求値を満たす。該試験は、IHSエンジニアリング社(http://www.global.ihs.com)より入手することができる。ECCC車両性能試験は、ダイナモメータを用いて一連の予め決めた速度と荷重条件により車両を運転して試験することにより、トルクコンバータのシャダーおよび滑り速度ハンティング特性を評価するものである。また、実際の路上試験も変速機にシャダが生じるか否かを検知するのに使用することができる。
【0107】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を説明するために記されるのであって、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。