特許第5656363号(P5656363)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656363
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】手術縫合糸配置システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/06 20060101AFI20141225BHJP
   A61L 17/00 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   A61B17/06 310
   A61L17/00
【請求項の数】24
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2009-96330(P2009-96330)
(22)【出願日】2009年4月10日
(65)【公開番号】特開2009-279395(P2009-279395A)
(43)【公開日】2009年12月3日
【審査請求日】2012年3月8日
(31)【優先権主張番号】61/123,900
(32)【優先日】2008年4月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/415,288
(32)【優先日】2009年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507362281
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ボガート
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ シー. クレール
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ジー. フィッシュベイン
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル プリバニック
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド カーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ケネス ダブリュー. ホートン ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ディー. コーサ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス マイオリーノ
(72)【発明者】
【氏名】マーク エス. ブシュター
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/005296(WO,A1)
【文献】 特表2002−516693(JP,A)
【文献】 米国特許第5865836(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合糸配置システムであって、
手術針と、
遠位端と近位端とを有する可撓性の縫合糸であって、該可撓性の縫合糸の該遠位端は、該手術針に取り付けられる、可撓性の縫合糸と、
遠位端と近位端とを有する標的縫合糸と、
該標的縫合糸を該可撓性の縫合糸と解放可能に結合するカラーであって、該可撓性の縫合糸の該近位端は、該カラーに固定され、該標的縫合糸の該遠位端は、該カラーに結合され、該カラーと、該標的縫合糸の該遠位端との間の結合は、該可撓性の縫合糸に所定の引っ張り力が加えられると破断するように構成されており、該カラーと、該標的縫合糸の該遠位端との間の結合の該破断は、該所定の引っ張り力が加えられると、該標的縫合糸の該遠位端が該カラーから解放されることを可能にする、カラーと
を備える、縫合糸配置システム。
【請求項2】
前記標的縫合糸は、該標的縫合糸の外面上に配置された複数のとげを含む、請求項1に記載の縫合糸配置システム。
【請求項3】
前記カラーは、遠位端と近位端とを有する中空のカラーであって、該中空のカラーは、前記可撓性の縫合糸の前記近位端と前記標的縫合糸の前記遠位端との中間に配置される、請求項1に記載の縫合糸配置システム。
【請求項4】
前記標的縫合糸の前記遠位端と、前記カラーとの間の結合は、前記中空のカラーの前記近位端内でされる、請求項3に記載の縫合糸配置システム。
【請求項5】
前記標的縫合糸は、モノフィラメントである、請求項3に記載の縫合糸配置システム。
【請求項6】
前記可撓性の縫合糸の前記遠位端は、前記手術針の本体部分内に形成された縫合糸穴内に固定される、請求項1に記載の縫合糸配置システム。
【請求項7】
前記縫合糸穴は、前記本体部分の中央に形成される、請求項6に記載の縫合糸配置システム。
【請求項8】
前記可撓性の縫合糸の前記遠位端は、前記本体部分に形成された前記縫合糸穴内にクリンプされる、請求項6に記載の縫合糸配置システム。
【請求項9】
前記手術針は、前記本体部分の各端部に形成された、組織を貫通する先端を有する両先針である、請求項7に記載の縫合糸配置システム。
【請求項10】
前記手術針は、手術縫合装置と関連付けられる係合構造の受容のための、各組織を貫通する先端に隣接して形成された、係合スロットを含む、請求項9に記載の縫合糸配置システム。
【請求項11】
本体部分と該本体部分の各端部に形成された組織を貫通する先端とを有する手術針と、
遠位端と近位端とを有するマルチフィラメント縫合糸であって、該マルチフィラメント縫合糸の該遠位端は、該手術針の該本体部分における縫合糸穴内に固定される、マルチフィラメント縫合糸と、
遠位端と近位端とを有する中空のカラーであって、該マルチフィラメント縫合糸の該近位端は、該中空のカラーの該遠位端あり、かつ、該中空のカラーの該遠位端に固定される、中空のカラーと、
遠位端と近位端とを有するモノフィラメント標的縫合糸であって、該モノフィラメント標的縫合糸の該遠位端は、該中空のカラーの該近位端内で該中空のカラーに結合され、該モノフィラメント標的縫合糸の該遠位端と、該中空のカラーの該近位端との間の結合は、該マルチフィラメント縫合糸に所定の引っ張り力が加えられると破断するように構成されており、該中空のカラーと、該モノフィラメント標的縫合糸の該遠位端との間の結合の該破断は、該所定の引っ張り力が加えられると、該標的縫合糸の該遠位端が該中空のカラーから解放されることを可能にするように構成される、モノフィラメント標的縫合糸と
を備える、縫合糸配置システム。
【請求項12】
前記モノフィラメント標的縫合糸は、とげのある縫合糸である、請求項11に記載の縫合糸配置システム。
【請求項13】
前記手術針は、前記縫合糸穴に隣接する少なくとも1つのクリンプ隆起を含む、請求項11に記載の縫合糸配置システム。
【請求項14】
前記手術針は、手術縫合装置と関連付けられる係合構造の受容のための、少なくとも1つの係合スロットを含む、請求項11に記載の縫合糸配置システム。
【請求項15】
前記とげのある縫合糸は、とげのある合成縫合糸であり、該とげのある合成縫合糸は、
細長い本体と、
該細長い本体から延びており、内面を画定する少なくとも1つのとげと
を含み、該内面は、
該細長い本体の長手軸に対して第1の向きに配置された第1の部分と、
該長手軸に対して第2の向きに配置された第2の部分と
を含む、請求項12に記載の縫合糸配置システム。
【請求項16】
前記第1の部分および第2の部分のうちの少なくとも1つは、直線状である、請求項15に記載の縫合糸配置システム。
【請求項17】
前記第1の部分および第2の部分は、前記細長い本体のそれぞれの長手軸に対して第1の角度および第2の角度にある、請求項16に記載の縫合糸配置システム。
【請求項18】
前記第2の角度は、前記第1の角度未満である、請求項17に記載の縫合糸配置システム。
【請求項19】
前記第1の角度は、0°〜90°である、請求項17に記載の縫合糸配置システム。
【請求項20】
前記第1の角度は、30°〜50°である、請求項17に記載の縫合糸配置システム。
【請求項21】
前記第2の角度は、0°〜90°である、請求項17に記載の縫合糸配置システム。
【請求項22】
前記第2の角度は、2°〜25°である、請求項17に記載の縫合糸配置システム。
【請求項23】
前記少なくとも1つのとげの前記内面は、前記細長い本体の前記長手軸に対して第3の向きに配置された第3の部分を含み、該第3の向きは、0°〜90°である第3の角度を画定する、請求項15に記載の縫合糸配置システム。
【請求項24】
前記第3の角度は、2°〜50°である、請求項23に記載の縫合糸配置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮出願第61/123,900号(2008年4月11日出願)の優先権の利益を主張し、その全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本出願はまた、PCT/US07/21482(2007年10月4日出願)、PCT/US07/21412(2007年10月5日出願)、PCT/US07/21447(2007年10月5日出願)、PCT/US07/21449(2007年10月5日出願)、PCT/US07/21457(2007年10月5日出願)、PCT/US07/21466(2007年10月5日出願)、PCT/US07/21495(2007年10月5日出願)、PCT/US07/21496(2007年10月5日出願)、PCT/US07/21506(2007年10月5日出願)の優先権の利益を主張し、これらの各々の全体は、参照により本明細書に援用される。
【0003】
(技術分野)
本開示は、患者の身体の中への手術縫合糸の挿入のための配置システムに関する。より詳細には、本開示は、腹腔鏡で(laparoscopically)患者の身体の中へ比較的硬い(stiff)ある長さの縫合糸を挿入するための配置システムに関する。
【背景技術】
【0004】
様々な手術処置は、しばしば固い(touch)組織を再建および再結合するために、比較的硬い縫合糸を用いる。硬い縫合糸は、靭帯または腱が再結合される開口手術処置において必要とされたり、あるいは、硬い縫合糸が関連する手術器具と一緒に幅の狭いカニューレを通って下行するために必要とされる内視鏡および/または腹腔鏡の手術処置において必要とされたりし得る。
【0005】
手術針に対する硬い縫合糸の直接的な取り付けは、硬い縫合糸を用いて組織を断裂させるリスクを伴わずに、または縫合糸の過度の屈曲による、縫合糸自身を損傷するリスクを伴わずに、固い組織を介して手術針を操作する能力を制限し得る。さらに、硬い縫合糸に対する縫合針の直接的な取り付けは、カニューレ構造を介して縫合針および硬い縫合糸を前進させ、体腔の内部にアクセスする能力を制限し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、組織を損傷したり、硬い縫合糸を屈曲させたりするリスクを伴わずに、組織を介して手術針と硬い縫合糸とを挿入するためのシステムを提供することが望ましい。さらに、カニューレを介して手術針と縫合糸とを配置し、縫合糸を屈曲また破断させるリスクを伴わずに、体腔内に手術針と硬い縫合糸とを配置するシステムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(概要)
本開示は、腹腔鏡で患者の身体の中へ比較的硬いある長さの縫合糸を挿入する際に用いるための配置システムに関する。
【0008】
本開示にしたがうと、縫合糸配置システムが提供され、この縫合糸配置システムは、手術針と、遠位端と近位端とを有する可撓性の縫合糸であって、可撓性の縫合糸の遠位端は、手術針に取り付けられる、可撓性の縫合糸と、遠位端と近位端とを有する標的縫合糸であって、標的縫合糸の遠位端は、可撓性の縫合糸の近位端に固定される、標的縫合糸とを備える。
【0009】
標的縫合糸は、標的縫合糸の外面上に配置された複数のとげを含み得る。
【0010】
縫合糸配置システムは、遠位端と近位端とを有する中空のカラーを含み得、中空のカラーは、可撓性の縫合糸の近位端と標的縫合糸の遠位端との中間に配置される。標的縫合糸の遠位端は、中空のカラーの近位端内に解放可能なように固定され得る。標的縫合糸は、モノフィラメントであり得る。標的縫合糸は、可撓性の縫合糸の近位端に解放可能なように固定され得る。
【0011】
可撓性の縫合糸の遠位端は、手術針の本体部分内に形成された縫合糸穴内に固定され得る。縫合糸穴は、本体部分の中央に形成され得る。可撓性の縫合糸の遠位端は、本体部分内に形成された縫合糸穴内にクリンプされ得る。手術針は、本体部分の各端部に形成された組織を貫通する先端を有する両先針であり得る。手術針は、手術縫合装置と関連付けられた係合構造の受容のための、各組織を貫通する先端に隣接して形成された、係合スロットを含み得る。
【0012】
本開示の別の局面にしたがうと、縫合糸配置システムは、本体部分と本体部分の各端部に形成された組織を貫通する先端とを有する手術針と、遠位端と近位端とを有するマルチフィラメント縫合糸であって、マルチフィラメント縫合糸の遠位端は、手術針の本体部分における縫合糸穴内に固定される、マルチフィラメント縫合糸と、遠位端と近位端とを有する中空のカラーであって、マルチフィラメント縫合糸の近位端は、中空の遠位端内にある、中空のカラーと、遠位端と近位端とを有するモノフィラメント標的縫合糸であって、モノフィラメント標的縫合糸の遠位端は、中空のカラーの近位端内に解放可能なように固定される、モノフィラメント標的縫合糸とを備える。
【0013】
モノフィラメント標的縫合糸は、とげのある縫合糸であり得る。
【0014】
手術針は、縫合糸穴に隣接する少なくとも1つのクリンプ隆起を含み得る。
【0015】
手術針は、手術縫合装置と関連付けられる係合構造の受容のための、少なくとも1つの係合スロットを含み得る。
【0016】
とげのある縫合糸は、とげのある合成縫合糸であり得、とげのある合成縫合糸は、細長い本体と、細長い本体から延びており、内面を画定する少なくとも1つのとげとを含み得る。内面は、細長い本体の長手軸に対して第1の向きに配置された第1の部分と、長手軸に対して第2の向きに配置された第2の部分とを含み得る。第1および第2の部分のうちの少なくとも1つは、実質的に直線状であり得る。
【0017】
第1および第2の部分は、細長い本体のそれぞれの長手軸に対して第1および第2の角度にあり得る。第2の角度は、第1の角度未満であり得る。第1の角度は、約0°〜約90°であり得る。第1の角度は、約30°〜約50°であり得る。第2の角度は、約0°〜約90°であり得る。第2の角度は、約2°〜約25°であり得る。
【0018】
少なくとも1つのとげの内面は、細長い本体の長手軸に対して第3の向きに配置された第3の部分を含み得、第3の向きは、約0°〜約90°である第3の角度を画定し得る。第3の角度は、約2°〜約50°であり得る。
【0019】
縫合糸配置システムであって、手術針と遠位端および近位端を有する可撓性の縫合糸とを含む、縫合糸配置システムもまた、開示される。可撓性の縫合糸の遠位端は、手術針に固定的に固定される。標的縫合糸が提供され、標的縫合糸は、遠位端と近位端とを有する。標的縫合糸の遠位端は、可撓性の縫合糸の近位端に解放可能なように固定される。遠位端と近位端とを有する中空のカラーが、可撓性の縫合糸の近位端と標的縫合糸の遠位端との中間に配置される。標的縫合糸の遠位端は、中空のカラーの近位端内に解放可能なように固定される。
【0020】
一実施形態において、標的縫合糸は、比較的硬い縫合糸である。特定の実施形態において、標的縫合糸は、標的縫合糸の外面上に配置された複数のとげを含む。
【0021】
可撓性の縫合糸の遠位端は、手術針の本体に形成された縫合糸穴内に固定される。縫合糸穴は、本体部分の中央に形成される。可撓性の縫合糸の遠位端は、本体部分に形成された縫合糸穴内にクリンプされる。
【0022】
一実施形態において、手術針は、本体部分の各端部に形成された組織を貫通する先端を有する両先針である。より特定の実施形態において、手術針は、手術縫合装置と関連付けられる係合構造の受容のための、各組織を貫通する先端に隣接して形成された、係合スロットを含む。
【0023】
縫合糸配置システムであって、本体部分と本体部分の各端部に形成された組織を貫通する先端とを含む、縫合糸配置システムもまた開示される。手術針は、本体部分内に中央に配置された縫合糸穴を含む。縫合糸配置システムはまた、遠位端および近位端を有する可撓性のマルチフィラメント縫合糸を含み、このマルチフィラメント縫合糸の遠位端は、手術針の本体部分における縫合糸穴内に固定される。縫合糸配置システムは、遠位端および近位端を有する中空のカラーをさらに含み、マルチフィラメント縫合糸の近位端は、中空のカラーの遠位端内に固定的に固定される。加えて、縫合糸配置システムは、遠位端および近位端を有する比較的硬い標的縫合糸を含む。硬い標的縫合糸の遠位端は、中空のカラーの近位端内に解放可能なように固定される。
【0024】
特定の実施形態において、比較的硬い標的縫合糸は、とげのある縫合糸である。別の実施形態において、手術針は、縫合糸穴に隣接した少なくとも1つのクリンプ隆起を含む。なおもさらなる特定の実施形態において、手術針は、手術縫合装置に関連付けられる係合構造の受容のための、少なくとも1つの係合スロットを含む。
【0025】
本発明は、さらに以下の手段を提供する。
(項目1)
手術針配置システムであって、
手術針と、
遠位端と近位端とを有する可撓性の縫合糸であって、該可撓性の縫合糸の該遠位端は、該手術針に取り付けられる、可撓性の縫合糸と、
遠位端と近位端とを有する標的縫合糸であって、該標的縫合糸の該遠位端は、該可撓性の縫合糸の該近位端に固定される、標的縫合糸と
を備える、縫合糸配置システム。
(項目2)
上記標的縫合糸は、該標的縫合糸の外面上に配置された複数のとげを含む、項目1に記載の縫合糸配置システム。
(項目3)
遠位端と近位端とを有する中空のカラーをさらに含み、該中空のカラーは、上記可撓性の縫合糸の上記近位端と上記標的縫合糸の上記遠位端との中間に配置される、項目1に記載の縫合糸配置システム。
(項目4)
上記標的縫合糸の上記遠位端は、上記中空のカラーの上記近位端内に解放可能なように固定される、項目3に記載の縫合糸配置システム。
(項目5)
上記標的縫合糸は、モノフィラメントである、項目3に記載の縫合糸配置システム。
(項目6)
上記標的縫合糸は、上記可撓性の縫合糸の上記近位端に解放可能なように固定される、項目4に記載の縫合糸配置システム。
(項目7)
上記可撓性の縫合糸の上記遠位端は、上記手術針の本体部分内に形成された縫合糸穴内に固定される、項目1に記載の縫合糸配置システム。
(項目8)
上記縫合糸穴は、上記本体部分の中央に形成される、項目7に記載の縫合糸配置システム。
(項目9)
上記可撓性の縫合糸の上記遠位端は、上記本体に形成された上記縫合糸穴内にクリンプされる、項目7に記載の縫合糸配置システム。
(項目10)
上記手術針は、上記本体部分の各端部に形成された、組織を貫通する先端を有する両先針である、項目8に記載の縫合糸配置システム。
(項目11)
上記手術針は、手術縫合装置と関連付けられる係合構造の受容のための、各組織を貫通する先端に隣接して形成された、係合スロットを含む、項目10に記載の縫合糸配置システム。
(項目12)
本体部分と該本体部分の各端部に形成された組織を貫通する先端とを有する手術針と、
遠位端と近位端とを有するマルチフィラメント縫合糸であって、該マルチフィラメント縫合糸の該遠位端は、該手術針の該本体部分における縫合糸穴内に固定される、マルチフィラメント縫合糸と、
遠位端と近位端とを有する中空のカラーであって、該マルチフィラメント縫合糸の該近位端は、該中空のカラーの該遠位端内にある、中空のカラーと、
遠位端と近位端とを有するモノフィラメント標的縫合糸であって、該モノフィラメント標的縫合糸の該遠位端は、該中空のカラーの該近位端内に解放可能なように固定される、モノフィラメント標的縫合糸と
を備える、縫合糸配置システム。
(項目13)
上記モノフィラメント標的縫合糸は、とげのある縫合糸である、項目12に記載の縫合糸配置システム。
(項目14)
上記手術針は、上記縫合糸穴に隣接する少なくとも1つのクリンプ隆起を含む、項目12に記載の縫合糸配置システム。
(項目15)
上記手術針は、手術縫合装置と関連付けられる係合構造の受容のための、少なくとも1つの係合スロットを含む、項目12に記載の縫合糸配置システム。
(項目16)
上記とげのある縫合糸は、とげのある合成縫合糸であり、該とげのある合成縫合糸は、
細長い本体と、
該細長い本体から延びており、内面を画定する少なくとも1つのとげと
を含み、該内面は、
該細長い本体の長手軸に対して第1の向きに配置された第1の部分と、
該長手軸に対して第2の向きに配置された第2の部分と
を含む、項目13に記載の縫合糸配置システム。
(項目17)
上記第1および第2の部分のうちの少なくとも1つは、実質的に直線状である、項目16に記載の縫合糸配置システム。
(項目18)
上記第1および第2の部分は、上記細長い本体のそれぞれの長手軸に対して第1および第2の角度にある、項目17に記載の縫合糸配置システム。
(項目19)
上記第2の角度は、上記第1の角度未満である、項目17に記載の縫合糸配置システム。
(項目20)
上記第1の角度は、約0°〜約90°である、項目17に記載の縫合糸配置システム。
(項目21)
上記第1の角度は、約30°〜約50°である、項目17に記載の縫合糸配置システム。
(項目22)
上記第2の角度は、約0°〜約90°である、項目17に記載の縫合糸配置システム。
(項目23)
上記第2の角度は、約2°〜約25°である、項目17に記載の縫合糸配置システム。
(項目24)
上記少なくとも1つのとげの上記内面は、上記細長い本体の上記長手軸に対して第3の向きに配置された第3の部分を含み、該第3の向きは、約0°〜約90°である第3の角度を画定する、項目16に記載の縫合糸配置システム。
(項目25)
上記第3の角度は、約2°〜約50°である、項目24に記載の縫合糸配置システム。
【0026】
(摘要)
縫合糸配置システムが開示され、この縫合糸配置システムは、縫合糸配置システムに固定的に取り付けられた可撓性の縫合糸と、可撓性の縫合糸に解放可能なように固定された標的縫合糸とを含む。可撓性の縫合糸と標的縫合糸との間にはカラーが配置され、このカラーは、可撓性の縫合糸に固定的に固定される。標的縫合糸は、カラーに解放可能なように固定され、標的縫合糸は、手術処置が完了した際に、カラーから取り外され得る。手術針は、手術縫合装置によって操作されるように特別に構成された、両先手術針である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、縫合糸配置システムの斜視図であり、パーツが分離されている。
図2図2は、図1の詳細図の拡大領域である。
図2A図2Aは、図1の縫合糸配置システムのとげのある縫合糸のセグメントの平面図である。
図3図3は、図1の組み立てられた縫合糸配置システムの斜視図である。
図4図4は、縫合糸配置システムと共に用いるための、図1の縫合糸配置システムと手術縫合装置との斜視図である。
図4A図4Aは、図1の縫合糸配置システムと共に用いるための、さらなる実施形態にしたがう、手術縫合装置の遠位端の斜視図である。
図4B図4Bは、図1の縫合糸配置システムと共に用いるための、なおもさらなる実施形態にしたがう、手術縫合装置の遠位端の斜視図である。
図5図5は、カニューレを介して縫合糸配置システムを前進させる図4の手術縫合装置の、部分的に断面で示された拡大側面図である。
図6図6は、一対の組織のまわりで縫合糸配置システムを配置する手術縫合装置の、部分的に断面で示された拡大側面図である。
図7図7は、一対の組織を介して縫合糸配置システムの針を駆動する手術縫合装置の、部分的に断面で示された拡大側面図である。
図8図8は、組織を介して縫合糸配置システムの中間縫合糸、スリーブの標的構造を引っ張る手術縫合装置の、部分的に断面で示された拡大側面図である。
図9図9は、組織を介して標的縫合糸を引っ張る手術縫合装置の、部分的に断面で示された拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示の縫合糸配置システムの実施形態は、図面を参照して開示される。
【0029】
ここで、本開示の縫合糸配置システムの実施形態が、図面を参照しながら詳細に記載され、いくつかの図面の各々において、同じ数字は同一または対応する要素を示す。技術分野において一般的であるように、用語「近位」はユーザまたはオペレータ(すなわち、外科医または医師)に近いパーツまたはコンポーネントを示し、その一方で、用語「遠位」は、ユーザから遠いパーツまたはコンポーネントを示す。
【0030】
図1を参照すると、患者の体内への縫合糸配置システム10の比較的硬い標的縫合糸12を搬送および操作する際に用いる縫合糸配置システム10を開示している。縫合糸配置システム10は、概して、標的縫合糸12と、組織を貫通させる手術針14であって、それを通して標的縫合糸12を配置するための手術針14とを含む。以下でより詳細に記載されるように、比較的可撓性の縫合糸16は、手術針14と標的縫合糸12との間に配置され、標的縫合糸16の過度の屈曲を伴わずに、手術針14が体腔内で組織を介して操作されることを可能にする。加えて、可撓性の縫合糸16は、標的縫合糸12が手術針14に連結され、標的縫合糸12の損傷または屈曲を伴うことなく、カニューレを介して挿入されることを可能にする。中空の口輪またはカラー18が、標的縫合糸12に可撓性の縫合糸16を解放可能なように連結し、縫合糸配置システム10の残りが患者の身体から除去された後に、標的縫合糸12が組織内にとどまることを可能にするように提供される。
【0031】
特に、標的縫合糸12の遠位端20は、カラー18の近位端22内に解放可能なように保持される。可撓性の縫合糸16の近位端24は、カラー18の遠位端26内に固定的に固定される。同様に、可撓性の縫合糸16の遠位端28は、以下でより詳細に記載される方法で、手術針14に固定的に固定される。
【0032】
ここで図2を参照すると、標的縫合糸12は、比較的固い組織の再建に関連して用いられるタイプの硬い縫合糸であり、縫合糸の強度、縫合糸材料が屈曲しないことまたは巻きつかないことは、最も重要である。そのような用途の例は、例えば、靭帯または腱の再建および再結合等を含み得る。標的縫合糸12は、外面32に形成された一連の係留突起またはとげ30を有する「とげのある縫合糸」であり得る。とげ30は、比較的固い組織内に標的縫合糸12を係留することを容易にする。
【0033】
図1に戻ると、標的縫合糸12とは対照的に、可撓性の縫合糸16は、比較的たるんでおり(flacid)、手術針14が標的縫合糸12上に屈曲応力を課すことなしに操作されることを可能にする。一実施形態において、可撓性の縫合糸16は、従来技術おいて公知な典型的なタイプの、比較的短い長さのマルチフィラメント縫合糸である。上述のように、カラー18は、標的縫合糸12を可撓性の縫合糸16に解放可能なように連結するように提供される。カラー18は、様々な生体適合材料、例えば、ポリマー材料、ステンレス鋼等から形成され得る。
【0034】
本開示の縫合糸は、吸収性または非吸収性である。様々な材料(例えば、自然または合成、または生体吸収および非生体吸収の材料)から形成されたフィラメントの組み合わせが、本縫合糸を形成するために用いられ得ることが理解されるべきである。
【0035】
適切な合成吸収性物質としては、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、カーボネート(例えば、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート)、ジオキサノン(例えば、1,4−ジオキサノン)、δ−バレロラクトン、1−ジオキセパノン(例えば、1,4−ジオキセパン−2−オンおよび1,5−ジオキセパン−2−オン)、エチレングリコール、エチレンオキシド、エストラミド(esteramide)、γ−ヒドロキシバレレート、β−ヒドロキシプロピオネート、α−ヒドロキシ酸、ヒドロキシブテレート、オルトエステル、ヒドロキシアルカノエート、チロシンカーボネート、ポリイミドカーボネート、ポリイミノカーボネート(例えば、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)およびポリ(ヒドロキノンイミノカーボネート))、およびポリマー薬(例えば、ポリジフルニサル(polydiflunisol)、ポリアスピリン、およびタンパク質治療剤)から製造されるポリマー、ならびにそれらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられる。適切な天然の吸収性ポリマーとしては、コラーゲン、セルロースおよび腸線(gut)が挙げられる。実施形態において、グリコリドおよびラクチドベースのポリマー(ラクチドとグリコリドとのコポリマーを含む)が使用され得る。
【0036】
本明細書中に開示される縫合糸を形成するのに使用され得る適切な非吸収性物質としては、非吸収性の天然物質、例えばコットン、シルク、およびゴムが挙げられる。適切な非吸収性の合成物質としては、ナイロン、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレン)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリアミド、ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリアリールエーテルケトン、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、アクリル、ポリアミド、アラミド、フルロポリマー(fluropolymer)、ポリブタエステル(polybutester)、シリコン、およびポリマーブレンドのような物質に由来するモノマーおよびポリマー、それらのコポリマー、ならびに分解性ポリマーとの組み合わせが挙げられる。ポリプロピレンもまた、上記縫合糸を形成するために利用され得る。このポリプロピレンは、イソタクチックポリプロピレンであってもよいし、イソタクチックおよびシンジオタクチックまたはアタクチックポリプロピレンの混合物であってもよい。さらに、非吸収性の合成および天然のポリマーおよびモノマーは互いに組み合わされ得、そして種々の吸収性ポリマーおよびモノマーとも組み合され得、本発明の縫合糸のためのファイバーおよびフィラメントを形成し得る。
【0037】
本明細書中で用いられるとき、用語「ファイバー」、用語「フィラメント」および用語「ヤーン」の各々は、全体または部分的に縫合糸を形成するために用いられ得る。この文脈において用語「ファイバー」は、概して、直径または幅よりも大きな約3オーダーを上回る大きさの長さを有する自然または合成の構造を意味するように用いられる。用語「フィラメント」は、典型的に、不定または極端な長さの「ファイバー」を意味するように用いられ、「ヤーン」は、一般的な意味として、編むこと(knitting)、織ること(weaving)、組むこと(braiding)、または絡み合わせること(intertwisting)に適した形態における、捩れたまたは捩れていない「ファイバー」または「フィラメント」の連続的なストランドである。
【0038】
本開示の可撓性の縫合糸16は、マルチフィラメント(例えば、組まれている)であり得、標的縫合糸12は、モノフィラメントであり得る。これらの適切な材料から縫合糸を形成する方法は、例えば押し出しおよび成形の当業者の理解の範囲内にある。フィラメントは、例えば混合すること(commingle)、捩ること(twisting)、組むこと、織ること、もつれさせること(entangling)、および編むことのような、当業者の理解の範囲内にある任意の技術を用いて、マルチフィラメントを形成するために組み合わされ得る。例えば、フィラメントは、ヤーンを形成するために単純に組み合わされたり、または、組まれたりし得る。別の例においては、フィラメントは、ヤーンを形成するように組み合わされ得、その後、それらのマルチフィラメントのヤーンは、組まれ得る。本開示を読む当業者は、フィラメントが組み合わされ得るその他の方法を構想し得る。ファイバーはまた、不織マルチフィラメントの大直径の縫合糸を形成するように、組み合わされ得る。特定の実施形態において、本開示にしたがう係留縫合糸を形成する際に有用なマルチフィラメント縫合糸は、組むことによって生成され得る。組むことは、当業者の理解の範囲内にある任意の方法によって実行され得る。さらに、係留縫合糸は、モノフィラメントの部分と、マルチフィラメントの部分とを含み得る。一部の実施形態において、細長い本体の近位端は、マルチフィラメントであり得、ループ状の部分(以下で記載されるループ部分)は、モノフィラメントであり得る。
【0039】
特定の実施形態において、上記縫合糸は、全体としてまたは部分的(例えば、アンカー)に、形状記憶ポリマーを使用して構築され得る。形状記憶ポリマーの硬質セグメントおよび軟質セグメントを調製するのに使用される適切なポリマーとしては、ポリカプロラクトン、ジオキサノン、ラクチド、グリコリド、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、ポリウレタン/尿素、ポリエーテルエステル、およびウレタン/ブタジエンコポリマー、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記縫合糸は、金属(例えば、鋼鉄および分解性マグネシウム)、金属合金などを含み得る。
【0041】
さらに、上記縫合糸は、生物学的に受容可能な添加剤、例えば可塑剤、抗酸化剤、色素、希釈剤、生物学的活性物質、およびそれらの組み合わせを含み得る。これらは、本開示の縫合糸を形成するために使用されるフィラメントまたはファイバー上にコーティングされることもできるし、または(例えば、調合または押し出しの間に)このファイバーまたはフィラメントにしみこませることもできる。
【0042】
取り扱いおよび結紮の強度のような機械的特性を向上させるため、または医学的物質を送達するために、種々の組成物および物質がまた、上記縫合糸に塗布されるか、または上記フィラメントまたはファイバーに含まれ得る。適切なコーティング物質としては、縫合糸に慣習的に塗布される任意の物質が挙げられる。例えば、適切な物質としては、そのコーティング組成物において脂肪酸の金属塩と組み合わされ得る脂肪酸エステルが挙げられる。そのようなエステルとしては、例えば、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸マグネシウム、ステアロイル乳酸アルミニウム、ステアロイル乳酸バリウム、またはステアロイル乳酸亜鉛;パルミチル乳酸カルシウム、パルミチル乳酸マグネシウム、パルミチル乳酸アルミニウム、パルミチル乳酸バリウム、またはパルミチル乳酸亜鉛;オレイル乳酸カルシウム、オレイル乳酸マグネシウム、オレイル乳酸アルミニウム、オレイル乳酸バリウム、またはオレイル乳酸亜鉛のような、ステアリン酸カルシウム、ステアロイル乳酸エステル、パルミチル乳酸エステル、オレイル乳酸エステルが挙げられ;ステアリン酸カルシウムおよびステアロイル−2−乳酸カルシウム(例えば、American Ingredients Co.,Kansas City,MOからVERVの商標名で市販されているステアロイル−2−乳酸カルシウム)が好ましい。所望される場合には、上記脂肪酸エステルは、溶媒と組み合わされ得る。適切な溶媒としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)、塩素化炭化水素(例えば、塩化メチレン、クルルホルム、1,2−ジクロロエタン)、および脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプテン、酢酸エチル)を含むがこれらに限定されない、極性溶媒および非極性溶媒が挙げられる。
【0043】
実施形態において、上記縫合糸は、適切な物質と組み合わされ得る、かつ/または適切な物質でコーティングされ得る。この適切な物質としては、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、それらのコポリマーなど(アクリル酸PEG、アクリル酸PEG/PPGコポリマーのようなアクリレート基を有するものを含む)が挙げられる。そのような組み合わせとしては、ポリアルキレンオキシドオリゴマーもしくはポリマー、または他の非毒性界面活性剤とのブレンドまたはコポリマーが挙げられる。得られる組成物は、上述のコポリマーの存在に起因して、抗菌特性を有し得る。他の実施形態において、上記縫合糸は、アクリル酸シリコンと組み合わされ得る。コーティングは、滅菌技術の前の任意の時点で、個々のフィラメントまたは縫合糸全体に施され得る。コーティングは、当業者の範囲内の任意の技術を使用して塗布され得る。
【0044】
さらに、上記縫合糸は、種々の薬学的物質および医学的物質を組み込み得る。医学的物質および薬物は、当業者の範囲内の方法によって、その縫合糸および/または構築材料に塗布され得る。この方法としては、浸漬、スプレー、ブラッシング、蒸着、共押し出し、キャピラリーウィッキング、フィルム鋳造、成型が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、係留縫合糸に種々の物質を組み込むために、溶媒が使用され得る。適切な溶媒としては上に列挙されたものが挙げられる。
【0045】
上記縫合糸に組み込まれ得る医学的物質としては、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤などが挙げられる。本明細書中で使用される抗菌剤は、それ自体で、または身体(免疫系)を補助することを介して、病原性(疾患を引き起こす)であり得る微生物を、身体が破壊するか、またはその微生物に抵抗することを助ける物質として定義される。用語「抗菌剤」としては、抗生物質、集団感知ブロッカー、界面活性剤、金属イオン、抗菌タンパク質およびペプチド、抗菌多糖類、防腐剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
物質は、溶媒を使用してコーティング中に組み込まれてもよいし、種々のモノマーまたはポリマーと混合されて係留縫合糸に塗布されてもよい。使用され得るさらなる適切な医学的物質としては、着色剤、色素、保存料、タンパク質およびペプチド調製物、タンパク質治療剤、ヒアルロン酸のような多糖類、レクチン、脂質、プロバイオティクス、抗生物質、脈管形成剤、抗血栓剤、抗凝固剤、凝固剤、鎮痛剤、麻酔剤、創傷修復剤、化学療法剤、生物学的物質、抗炎症剤、抗増殖剤、診断剤、解熱剤、消炎および鎮痛剤、血管拡張薬、抗高血圧薬および抗不整脈剤、低血圧剤、鎮咳薬、抗腫瘍剤、局所麻酔薬、ホルモン調製物、喘息鎮静剤および抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、抗凝固剤、鎮痙薬、脳血行および代謝改善剤、抗うつ剤および抗不安剤、ビタミンD調整物、低血糖剤、抗潰瘍剤、催眠薬、抗生物質、抗真菌剤、鎮静薬、気管支拡張剤、抗ウイルス剤、排尿障害剤、臭素化またはハロゲン化フラノンなどが挙げられる。実施形態において、例えば、ポリマー性抗生物質、ポリマー性防腐剤、ポリマー性化学療法剤、ポリマー性抗増殖剤、ポリマー性防腐剤、ポリマー性非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などのポリマー薬(すなわち、上記化合物のポリマー性形態)ならびにそれらの組み合わせが、利用され得る。
【0047】
本開示の縫合糸は、さらに、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにそれらのアナログ、ムテイン、活性フラグメント(例えば、イムノグロブリン、抗体(モノクローナルおよびポリクローナル)、サイトカイン(例えば、リンフォカイン、モノカイン、ケモカイン))血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN)、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インシュリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制剤、血中タンパク質、ゴナドトロピン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍状、細菌性、およびウイルス抗原)、ソマトスタチン、抗原、血中凝血因子、成長因子、タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニスト、およびタンパク質アゴニスト、核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド)およびリボザイム)、ならびにそれらの組み合わせのような適切な医薬物質を含み得る。
【0048】
これらの医薬物質と本開示の組成物とを組み合わせるための方法は、当業者の範囲内にあり、混合、ブレンド、浸漬、スプレー、ウィッキング、溶媒蒸発などを含むが、これらに限定されない。
【0049】
上述に記載され、また図2に見ることができるように、標的縫合糸12は、外面32上に形成された一連の係留突起またはとげ30を有する「組まれた縫合糸」であり得る。とげ30は、標的縫合糸12を比較的固い組織内に係留することを容易にする。
【0050】
とげは、螺旋状パターン、直線状パターン、または長手軸「A」に対してランダムに間隔が空けられたパターンを含む、任意の適切なパターンで、その長さに沿って配置され得る。とげの個数、構成、間隔および表面積は、縫合糸が用いられる組織、ならびに、縫合糸を形成するために利用される材料の組成および幾何学的形状に応じて変動し得る。例えば、創傷閉鎖デバイスが脂肪組織(比較的やわらかい)において用いられる場合に、とげは、比較的長く、広い間隔が空けられ、縫合糸がやわらかい組織を縫合することを可能にし得る。とげは、様々な方法に、様々な角度で配置され得、あるいは、単一のとげは、2つ以上の角度を含み得る(例えば、合成とげ)。
【0051】
代替的な実施形態において、また図2Aにおいて見られるように、縫合糸は、内面を有し、この内面は、第1の角度であって、内面の長手軸「A」に対して第1の向きに配置されている第1の角度と、第2の内面を有する第2の角度であって、内面の長手軸「B」に対して第2の向きに配置されている第2の角度とを含む。
【0052】
図2Aに見ることができるように、第1、第2および第3の部分12a〜12cを有する合成とげ30は、概して、細長い本体14の表面に切り込みを入れることによって、形成される。実施形態において、第1、第2および第3の部分12a〜12cの各々は、それぞれ、細長い本体14の長手軸a、b、c(これらは、中心の長手軸「D」に対して平行である)に対して第1、第2および第3の角度α、β、γで切り込まれ得、第2の角度βは、第1の角度αよりも小さく、第3の角度γは、第2の角度βよりも小さい。合成とげ12は、長手軸「a」に対して約0°〜約90°の第1の角度αで細長い本体14に切り込みを入れることによって形成された第1の部分12a(その他の実施形態においては、第1の角度αは、長手軸「a」に対して約30°〜約50°の範囲である)と、長手軸「b」に対して約0°〜約90°の第2の角度βで細長い本体14に切り込みを入れることによって形成された第2の部分12b(その他の実施形態においては、第2の角度βは、長手軸「b」に対して約2°〜約25°の範囲である)と、オプションとして、長手軸「c」に対して約0°〜約90°の第3の角度γで細長い本体14に切り込みを入れることによって形成された第3の部分12c(その他の実施形態においては、第3の角度γは、長手軸「c」に対して約2°〜約50°の範囲である)とを含み得る。「Compound BarbMedical Device and Method」と題された、米国仮出願第61/029,964号(2008年2月20日出願)に対する参照がなされ得、この仮出願は、合成とげの様々な幾何学的形状等に関する詳細な議論のために、参照により本明細書中に援用される。
【0053】
縫合糸は、オプションとして、第1および第2の向きとは異なる第3の向きを含み得る。一実施形態において、第1、第2および第3の向きの各々は、長手軸に対して異なる角度で配置される。一部の実施形態において、縫合糸は、大きいまたは小さいとげの千鳥配置(staggered arrangement)を含み得る。その他の実施形態において、縫合糸は、大きいおよび小さいとげのランダム構成を有し得る。
【0054】
複数のとげの表面積もまた変動し得る。例えば、フラーチップとげ(fuller−tipped barb)が、特定の手術目的のために設計された様々なサイズで形成され得る。脂肪および比較的やわらかい組織を接合するときには、大きなとげが望ましくあり得るが、コラーゲンの密な組織に対しては、小さなとげが望ましくあり得る。一部の実施形態において、例えばファイバーが異なる層構造を有する、組織の再建に用いられるときには、同じ構造内での大きなとげと小さなとげとの組み合わせが有利であり得る。同じファイバーでの大きな係留と小さな係留との組み合わせ(とげのサイズは、各組織層に対してカスタマイズされる)の使用は、最大の保持特性を保証する。
【0055】
手術針14は、組織を貫通し、比較的固い組織を介して、可撓性の縫合糸16と標的縫合糸12とを引っ張るために提供される。手術針14は、組織を介して縫合糸材料を搬送したり、糸を通したりするために用いられる、任意の公知の手術針の形態を取る。開示された実施形態において、手術針14は、手術針14を固い組織を介して駆動することが可能な手術縫合装置(以下に記載される)と共に使用するように特別に構成された両先針である。手術針14は、概して、第1の端点36および第2の端点38のそれぞれを有する湾曲した本体部分34を含む。本体部分34は、可撓性の縫合糸16の遠位端28を受容するための中央縫合糸穴44を含む。以下でより詳細に記載されるように、可撓性の縫合糸16を縫合糸穴40内に固定するために、一対のクリンプ隆起(crimpping bump)42および44が、縫合糸40に隣接して提供される。係合スロット46および48が端点36および38に隣接して提供される。以下に記載されるように、係合スロット46および48は、手術縫合針14を手術縫合装置のジョーの間でやりとりするために、手術縫合装置に関連付けられた手術縫合糸を交互的に受容するように構成されている。手術針14の例示的実施形態は、Granger等の米国特許第5,569,301号に開示されており、この米国特許の全体の開示は、参照により本明細書に援用される。
【0056】
ここで図1図3を参照すると、縫合糸配置システム10を組み立てるために、可撓性の縫合糸16の近位端24が、カラー18の遠位端26内に挿入され、例えば、接着、溶接、クリンプ等のような様々な公知の方法で、その中に固定的に固定される。標的縫合糸12の遠位端20が、カラー18の近位端22内に挿入され、カラー18に対して十分な力が加えられた際に、遠位端20がカラー18から分離することを可能にし得る方法で、その中に固定される。これは、弱い接着剤を利用することにより、標的縫合糸12の遠位端20のまわりでのカラー18の部分的なクリンプにより、または、カラー18の近位端22内での遠位端20の摩擦嵌めにより、達成され得る。可撓性の縫合糸16の近位端24のまわりでのカラー18の遠位端26の固定が、カラー18の近位端22のまわりでの縫合糸12の遠位端20の固定よりも実質的に強いことが、留意されるべきである。したがって、可撓性の縫合糸16上に十分な緊張を与えると、可撓性の縫合糸16は、標的縫合糸12がカラー18から解放可能なように取り外されるが、カラー18に対して取り付けられたままであり得る。
【0057】
可撓性の縫合糸16の遠位端28を縫合針14に固定するために、遠位端28が、手術針14の本体部分34に形成された縫合糸穴40に挿入される。その後、クリンプ力が、矢印Fの方向に加えられ、クリンプ隆起42および44を圧迫し、可撓性の縫合糸16の遠位端28のまわりで、縫合糸穴40を閉じさせたり、またはクリンプしたりし得る(Granger等の米国特許第5,569,301号を参照のこと)。
【0058】
カラー18が、標的縫合糸12と可撓性の縫合糸16とを互いに連結するために記載され図示されているが、その他の方法、標的縫合糸12と可撓性の縫合糸16との上またはそれらの間に延びたオーバーモールドを使用すること、標的縫合糸12と可撓性の縫合糸16とを互いに融合させること等を含むがそれらには限定されないその他の方法が構想され、本開示内に含まれる。
【0059】
ここで図4を参照すると、カニューレを介して縫合糸配置システム10を搬送し、組織を介して手術針13を操作する際に用いる手術縫合装置50が図示されている。手術縫合装置50は、概して、細長い管状部材54を有する本体部分52を含み、細長い管状部材54は本体部分52から遠位に延びている。第1のジョー56および第2のジョー58は、細長い管状部材54の遠位端60上に可動なように搭載されている。一対のハンドル66および68は、本体部分52上に可動なように搭載されており、実質的に間隔が空けられた開いた位置と、第1のジョー56および第2のジョー58が実質的に互いに隣接する閉じた位置との間で、第1のジョー56および第2のジョー58を動かすように動作可能である。第1のジョー56および第2のジョー58は、手術針14と交互的に係合し、組織を介して手術針14を通すように、提供されている。特に、第1のジョー56および第2のジョー58は、手術針14の受容のために、穴62および64をそれぞれが含む。トグルレバー70は、本体部分52上に提供され、第1のジョー56および第2のジョー58のそれぞれの針穴62および64内で手術針14を交互的に固定するように動作する。係合縫合糸(図示されず)は、トグルレバー70に関連付けられ、手術針14におけるスロット46および48に交互的に係合し、手術針14を第1のジョー56および第2のジョー58において、交互的に固定するように機能する。この方法で、手術針14は、最初は第1のジョー56内で固定され、制御され、第1のジョー56および第2のジョー58の閉鎖およびトグルレバー70の操作の際に、制御が第2のジョー58に渡され、手術針14がその中で固定されることを可能にする。装填レバー72が、本体部分52上に提供され、手術針14が、第1のジョー56と第2のジョー58との間で装填されることを可能にする。手術縫合装置50の例示的実施形態は、Tovey等の米国特許第5,674,229号において開示されており、この米国特許の全体は、参照により本明細書に援用される。
【0060】
図4Aに見ることができるように、手術縫合装置50は、管状部材54aの長手軸に関して矢印「B」の方向またはそれとは反対の方向に、軸外に旋回し得る遠位端60aを有する細長い管状部材54aを含み得る。矢印「C」によって示されているように、遠位端60aが長手軸のまわりで回転し得ることがさらに構想される。
【0061】
図4Bにおいて見ることができるように、手術縫合装置50は、複数の接合部等のまわりで、軸外に関節運動(articulate)され得る遠位端60bを有する細長い管状部材54bを含み得る。
【0062】
ここで図4図9を参照し、最初に図5を参照すると、標的縫合糸12を組織内に挿入するための手術縫合装置50および縫合糸配置システム10の操作がここで記載される。手術針14は、最初に手術縫合装置50の第1のジョー56および第2のジョー58内に配置され、手術針14の第1の端点36が、第1のジョー56の第1の針穴62内に配置され、手術針14の第2の端点38が、第2のジョー58の第2の針穴64内に配置される。トグルレバー70(図4)は、手術針14の第1の端点36を、第1のジョー56の第1の針穴62内に配置するように作動される。明確には示されていないが、これは、第1のジョー56とトグルレバー70とに関連付けられた係合構造を前進させ、手術針14の第1の端点36と隣接する係合スロット46に係合させることにより、達成される。手術針14の第2の端点38は、第2のジョー58における第2の針穴64の内外に自由に移動できる。
【0063】
様々な外科手術の間に、カニューレ(例えば、カニューレ74)は、体腔内に挿入されることにより、手術縫合装置50に対するアクセスを提供する。上に記載されているように、縫合糸配置システム10は、縫合糸12がカニューレ74を介して、標的縫合糸12の過度の屈曲を引き起こすことなしに、搬送されることを可能にする。手術縫合装置50のハンドル66および68は、第1のジョー56と第2のジョー58とを閉じた位置に動くように作動される。示されているように、第1のジョー56および第2のジョー58は、カニューレ74を介して矢印Aの方向に前進させられ、カニューレ74の遠位端76から出る。可撓性の縫合糸16は、標的縫合糸12がカニューレ74を通るときに、標的縫合糸12が比較的まっすぐなままであり続け、第1のジョー56および第2のジョー58に沿って横たわることを可能にする。図5および図6に最も良く見られるように、標的縫合糸12が矢印Aの方向に前進させられるとき、標的縫合糸12の近位端78は、カニューレ74を通り、カニューレ74の遠位端76から出る。
【0064】
ここで図6を参照すると、示されているように、標的縫合糸12の近位端78がカニューレ74の遠位端78をクリア(clear)するときに、標的縫合糸12は、矢印Bの方向に、第1のジョー56および第2のジョー58に沿って自由に落下できる。特に、可撓性の縫合糸16のたるんだ性質は、可撓性の縫合糸16が、手術針14の操作の間に屈曲するが、標的縫合糸12が比較的直線的であり続けることを可能にする。標的縫合糸12の近位端78が、カニューレ74の遠位端76をクリアすると、手術縫合装置50(図4)のハンドル66および68は、第1のジョー56および第2のジョー58を互いから離れた開いた位置に動かすように操作され得る。その後、開いた第1のジョー56および第2のジョー58は、一対の比較的固い組織部分のまわりに配置され得、例えば組織部分T1およびT2が、互いに縫合される。上述のように、手術針14は、第1のジョー56内に固定される。この段階において、可撓性の縫合糸16は、上述のように、手術針14から延びており、カラー18によって、標的縫合糸12に固定されている。ここで、標的縫合糸12は、第1の組織部分T1および第2の組織部分T2に隣接して配置され、そのとき、カラー18は、第1の組織T1の第1の組織表面TS1に実質的に隣接する。
【0065】
図7を参照すると、第1のジョー56および第2のジョー58が、第1の組織部分T1および第2の組織部分T2のまわりで正確に配置されると、ハンドル66および68は、第1のジョー56および第2のジョー58を、互いに隣接する閉じた位置にもって行くように操作される。第1のハンドル56および第2のハンドル58は、閉じた位置に動かされ、手術針14、特に手術針14の第2の端点38は、第1の組織部分T1および第2の組織部分T2を貫通し、第2のジョー58における第2の針穴64に入る。示されているように、カラー18によって標的縫合糸12に取り付けられた可撓性の縫合糸16は、標的縫合糸12の過度の屈曲を引き起こすことなしに、手術針14の動きと共に自由に動くことができる。第1のジョー56および第2のジョー58を開く前に、トグルレバー70(図4)は、第1のジョー56から第2のジョー58に、手術針14の制御を渡すように操作される。特に、手術針14は、第1のジョー56との係合から解放され、第2のジョー58に関連付けられた係合構造は、手術針14における第2の係合スロット48と係合する。したがって、手術針14は、第2のジョー58における第2の穴64内でしっかりと係合される。
【0066】
図8において最も良く見ることができるように、組織部分T1およびT2が、手術針14によって貫通されると、ハンドル66および68は、第1のジョー56および第2のジョー58を、互いに間隔が空けられた開いた位置へと、動かすように操作され得る。示されているように、第1のジョー56および第2のジョー58が、開いた位置に動かされるとき、手術針14は、第1の組織部分T1および第2の組織部分T2を介して形成された第1の縫合糸穴SH1および第2の縫合糸穴SH2を介して引っ張られる。可撓性の縫合糸16もまた、第1の縫合糸穴SH1および第2の縫合糸穴SH2を介して引っ張られる。可撓性の縫合糸16が、第1の縫合糸穴SH1および第2の縫合糸穴SH2を介して引っ張られるとき、カラー18(可撓性の縫合糸16に固定されている)は、カラー18が第1の組織T1における第1の縫合糸穴SH1に隣接して配置されるまで、第1の組織表面TS1に沿って引っ張られる。比較的硬い性質の標的縫合糸12は、矢印Cの方向に、第1の組織部分T1および第2の組織部分T2のそばで、引き上げられ得る。カラー18が第1の縫合糸穴SH1を介して引っ張られ始めるとき、比較的硬い標的縫合糸12は、矢印Cの方向にフリップされ、概して、第1の組織表面TS1に対して実質的に垂直な向きを取る。手術器具50がさらに操作されるときに、第2のジョー58は、手術針14、可撓性の縫合糸16、カラー18、および標的縫合糸12を、矢印Dの方向に、第1の縫合糸穴SH1および第2の縫合糸穴SH2を介して引っ張る。
【0067】
ここで図9を参照すると、標的縫合糸12が、第1の組織部分T1および第2の組織部分T2における第1の縫合糸穴SH1および第2の縫合糸穴SH2のそれぞれを介して引っ張られると、細長い管状部材54の遠位端60は、矢印Eの方向に動かされ、第2のジョー58を第1の組織部分T1および第2の組織部分T2に対して下方向に動かし、それにより、標的縫合糸12を、矢印Dの方向に、第1の組織部分T1および第2の組織部分T2を介して、完全に引っ張る。標的縫合糸12が第1の組織部分T1および第2の組織部分T2内に完全に配置されると、組織部分T1およびT2から離れる第2のジョー58のさらなる動きが、手術針14、可撓性の縫合糸16およびカラー18に、さらなる緊張を与える。所定の量の緊張が達成されると、標的縫合糸12の遠位端20は、カラー18の近位端22を離れるように、それにより、縫合糸配置システム10の残りから、標的縫合糸12を解放する。標的縫合糸12の外面32のとげ30は、標的縫合糸12を第1の組織部分T1および第2の組織部分T2内に固定することを容易にする。可撓性の縫合糸16およびカラー18を含む、縫合糸配置システム12の残りは、第2のジョー58と共に、矢印Fの方向に自由に落下することができる。
【0068】
このようにして、縫合糸配置システム10は、比較的硬い標的縫合糸12が、カニューレ74を介して、そして組織部分T1およびT2を介して、標的縫合糸12を破断または屈曲することなく、操作されることを可能にする。
【0069】
本明細書中に開示されている実施形態に対して、様々な改変がなされ得ることが理解されるべきである。例えば、様々なその他のタイプの標的縫合糸が、開示されている縫合糸配置システムを用いて配置され得る。さらに、開示の縫合糸配置システムは、様々なその他のタイプの手術針、例えば単一の先の手術針、直線的な手術針、湾曲した手術針等が提供される。加えて、標的縫合糸に対して可撓性の縫合糸を固定するための解放可能な手段(例えば、接着剤、連結組みひも、溶接等)が提供され得る。したがって、上述の記載は、制限として見なされるべきではなく、単に特定の実施形態の例示として見なされるべきである。当業者は、本明細書に添付の特許請求の範囲の権利範囲および精神に含まれるその他の改変を構想し得る。
【符号の説明】
【0070】

10 縫合糸配置システム
12 標的縫合糸
14 手術針
16 可撓性の縫合糸
18 カラー
20 標的縫合糸の遠位端
22 カラーの近位端
24 可撓性の縫合糸の近位端
26 カラーの遠位端
34 本体部分
36、38 端点
40 縫合糸
42、44 クリンプ隆起
46、48 係合スロット
図1
図2
図2A
図3
図4
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9