(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656372
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】液体材料容器、液体材料供給装置、及び、液体材料の供給方法
(51)【国際特許分類】
B01J 4/00 20060101AFI20141225BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20141225BHJP
B65D 83/34 20060101ALI20141225BHJP
B65D 83/36 20060101ALI20141225BHJP
B67D 7/72 20100101ALI20141225BHJP
B67D 99/00 20100101ALI20141225BHJP
【FI】
B01J4/00 103
H01L21/30 569A
H01L21/30 564C
H01L21/30 564Z
B65D83/14 Z
B67D7/72
B67D99/00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2009-170491(P2009-170491)
(22)【出願日】2009年7月21日
(65)【公開番号】特開2011-25104(P2011-25104A)
(43)【公開日】2011年2月10日
【審査請求日】2012年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109428
【氏名又は名称】日本エア・リキード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 利幸
(72)【発明者】
【氏名】大脊戸 政恵
(72)【発明者】
【氏名】滋野 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】柳田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】向畑 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】室 正晃
(72)【発明者】
【氏名】重本 隆充
(72)【発明者】
【氏名】植竹 義男
(72)【発明者】
【氏名】木本 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】中本 直之
(72)【発明者】
【氏名】松井 良平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美鈴
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭39−006494(JP,U)
【文献】
特開2003−192100(JP,A)
【文献】
実開昭57−134633(JP,U)
【文献】
特開平08−238317(JP,A)
【文献】
実開昭48−064808(JP,U)
【文献】
特開2004−276919(JP,A)
【文献】
実開昭49−045108(JP,U)
【文献】
実開平02−010294(JP,U)
【文献】
特表2003−531688(JP,A)
【文献】
特開平08−337296(JP,A)
【文献】
特開平09−267900(JP,A)
【文献】
特開平07−328518(JP,A)
【文献】
特表2001−503106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/00
B65D 83/34
B65D 83/36
B67D 7/72
B67D 99/00
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の液体材料が充填される充填容器と、
前記充填容器内の気層を加圧する加圧用ガスが導入される加圧用ガス導入配管と、
前記充填容器内の液体材料を外部へ供給する配管Laと
を備え、
前記配管Laは、下端が前記充填容器内の液体材料の液層内に浸され、上端が閉塞する配管L1と、前記配管L1の上端にその一部が挿入されて接続され、前記配管L1の内径よりも外径が小さい配管L2を有し、
前記配管L1の下端から前記充填容器の底までの距離Hが、前記配管L1の内径Dに対して下式(A)を満たすとともに、
式(A):((1/2×D)2×π)<(D×π×H)
前記充填容器内に前記加圧用ガス導入配管を介して加圧用ガスを導入することにより、前記配管Laを介して液体材料を供給することを可能とすることを特徴とする液体材料容器。
【請求項2】
前記加圧用ガスが導入され、前記配管La内の液面が前記配管L1の上端に挿入された配管L2の下端よりも上側まで到達すると、前記配管L2の下端と前記配管L1内上側の間であって前記配管L2の外径側に、空間1dが形成されることを特徴とする請求項1に記載の液体材料容器。
【請求項3】
少なくとも制御部を備え、請求項1または2記載の液体材料容器から液体材料を供給する液体材料供給装置であって、
前記液体材料容器は、さらに、前記加圧用ガス導入配管から分岐し、前記配管L2の下端よりも上側において、前記配管L1に接続された配管Lbと、前記配管Lb上に設けられた開閉弁Vaと、前記配管Laの上端に設けられた継手部とを備えており、
前記制御部は、常時には、前記開閉弁Vaを閉状態とし、前記継手部からの液体材料の漏洩が発生した場合には、前記開閉弁Vaを開状態にして、前記配管L1内の気圧と前記容器内の圧力を等圧にし、前記配管L1内の液面を降下させることを特徴とする液体材料供給装置。
【請求項4】
所定量の液体材料が充填される充填容器と、前記充填容器内の気層を加圧する加圧用ガスが導入される加圧用ガス導入配管と、下端が前記充填容器内の液体材料の液層内に浸され、上端が閉塞する配管L1、及び、前記配管L1の内径よりも外径が小さく、前記配管L1の上端からその一部が挿入されて接続された配管L2を有する配管Laと、前記加圧用ガス導入配管から分岐し、前記配管L2の下端よりも上側において、前記配管L1に接続された配管Lbと、前記加圧用ガス導入配管と前記配管Lbの間に設けられた開閉弁Vaと、前記配管Laの上端に設けられた継手部とを備えた液体材料容器からの液体材料の供給方法であって、
常時には、前記開閉弁Vaを閉状態とした状態で前記充填容器内を加圧し、前記継手部を介して液体材料を供給し、前記継手部からの液体材料の漏洩が発生した場合には、前記開閉弁Vaを開状態にして、前記配管L1内の気圧と前記容器内の圧力を等圧にし、前記配管L2内の液面を降下させることを特徴とする液体材料の供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製膜装置等の消費施設へ液体材料を供給するための液体材料容器、液体材料供給装置、及び、液体材料の供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造プロセス等の製造プロセスにおいては、例えば、イソプロピルアルコール、フッ酸、ジエチルシラン等、各種の液体材料が供給される。液体材料を供給する液体材料供給装置としては、容器に充填された液体材料に浸るように液体材料供給用の配管が設置されるとともに、容器の上方に加圧用ガス供給用の配管が設置されており、加圧用ガス供給用の配管から容器内に加圧用ガスを導入することにより、液体材料を圧送により供給する液体材料供給装置が挙げられる(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
図4は、従来の液体材料供給装置を模式的に示す概略図である。
図4に示すように、液体材料供給装置100は、容器101と、容器101に充填された液体材料102に浸るように設置された液体材料供給用の配管103と、容器101の上方に設置された加圧用ガス供給用の配管104とを備えており、配管104から容器101内に加圧用ガスを導入することにより液面が加圧され、液体材料102が配管103を介してCVD装置等の消費設備105に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−344758号公報
【特許文献2】特開平8−326995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来の液体材料供給装置においては、液体材料供給用の配管13が容器101の底近傍まで延設されているため、容器101の底に沈殿した不純物(パーティクル)が、液体材料とともに配管103に巻き込まれ易くなっており、パーティクルの含まれた液体材料が供給されてしまうおそれがあった。
【0006】
特に、供給対象の液体材料が、自己反応性・分解性の高い液体材料である場合、極微量の水分や空気成分と反応し、液体材料中に固形の不純物(パーティクル)が多量に発生してしまうおそれがあり、液体材料の純度が低下してしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、容器の底に沈殿したパーティクルが巻き込まれることを防止し、純度の高い液体材料を供給することを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような目的を達成するために、本発明は、以下のようなものを提供する。
(1) 所定量の液体材料が充填される充填容器と、
上記充填容器内の気層を加圧する加圧用ガスが導入される加圧用ガス導入配管と、
上記充填容器内の液体材料を外部へ供給する配管Laと
を備え、
上記配管Laは、下端が上記充填容器内の液体材料の液層内に浸され、上端が閉塞する配管L1と、上記配管L1の上端にその一部が挿入されて接続され、上記配管L1の内径よりも外径が小さい配管L2を有し、
上記充填容器内に上記加圧用ガス導入配管を介して加圧用ガスを導入することにより、上記配管Laを介して液体材料を供給することを可能とすることを特徴とする液体材料容器。
【0009】
(1)の発明によれば、充填容器内の液体材料を外部へ供給する配管Laが、下端が上記充填容器内の液体材料の液層内に浸され、上端が閉塞する配管L1と、上記配管L1の上端にその一部が挿入されて接続され、上記配管L1の内径よりも外径が小さい配管L2を有している。従って、配管Laを介して液体材料を外部へ供給する場合、配管L1内を通過する液体材料の流速は、配管L2内を通過する液体材料の流速よりも、緩やかとなる。その結果、配管La(配管L1)の下端を容器の底近傍まで延設しても、容器の底に沈殿したパーティクルが配管Laに巻き込まれることを防止することができ、純度の高い液体材料を供給することが可能となる。
【0010】
また、配管L1内を通過する液体材料の流速は、配管L2内を通過する液体材料の流速よりも、緩やかとなるため、時間当たりの供給量を多くした場合であっても、容器の底近傍での配管L1内の液体材料の流速を抑えることが可能となる。
【0011】
さらに、
前記加圧用ガスが導入され、前記配管La内の液面が前記配管L1の上端に挿入された配管L2の下端よりも上側まで到達すると、前記配管L2の下端と前記配管L1内上側の間であって前記配管L2の外径側に、空間1dが形成されることを特徴とする。液体材料の供給開始時には、配管La内の液面が配管L2の下端よりも上側まで到達すると、配管La内上側の空間が加圧され、この空間を有した状態で、液体材料が配管L2から供給されることとなる。その結果、この空間がクッションとなり、供給開始時のウォーターハンマーを抑制することができ、開閉弁、継手、その他の部材(例えば、圧力計)が破損することを低減することができる。
【0012】
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(2)上記(1)の液体材料容器であって、
上記配管L2の上記配管L1への
挿入長さ(挿入量
)が、上記配管L1の長さの5〜10%であることを特徴とする。
【0013】
(2)の発明によれば、充填容器内の液体材料よりも比重の小さい、充填容器の上部に溜まったパーティクルが巻き込まれることをより確実に防止することができるとともに、充填容器内の液体材料よりも比重の大きい、充填容器の下部に溜まったパーティクルが巻き込まれることをより確実に防止することができる。
【0014】
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(3) 上記(1)又は(2)の液体材料容器であって、
上記配管L1の下端から上記充填容器の底までの距離は、上記配管L1の下端での液体材料の流速が、上記配管L1内を通過する液体材料の流速よりも遅くなるように設計されていることを特徴とする。
【0015】
配管L1の内径を大きくしたとしても、配管L1の下端から充填容器の底までの距離が近いと、配管L1の下端での液体材料の流速は速くなることとなる。しかしながら、(3)の発明よれば、配管L1の下端での液体材料の流速が、配管L1内を通過する液体材料の流速よりも遅くなるように、配管L1の下端から充填容器の底までの距離が設計されているため、充填容器の底に沈殿したパーティクルが配管L1に巻き込まれることをさらに確実に防止することができる。
具体的には、配管L1の下端から充填容器の底までの距離Hが、配管L1の内径Dに対して下式(A)を満たす構成を有する。
式(A):((1/2×D)2×π)<(D×π×H)
【0016】
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれか1に記載の液体材料容器から液体材料を供給する液体材料供給装置であって、
上記液体材料容器は、さらに、上記加圧用ガス導入配管から分岐し、上記配管L2の下端よりも上側において、上記配管L1に接続された配管Lbと、上記配管Lb上に設けられた開閉弁Vaと、上記配管Laの上端に設けられた継手部とを備えており、
上記制御部は、常時には、上記開閉弁Vaを閉状態とし、上記継手部からの液体材料の漏洩が発生した場合には、上記開閉弁Vaを開状態にして、上記配管L1内の気圧と上記容器内の圧力を等圧にし、上記配管L1内の液面を降下させることを特徴とする。
【0017】
継手部を介して液体材料を外部に供給している際に、継手部からの液体材料の漏洩が発生した場合、充填容器内の圧力が大気圧と同圧となるまで液体材料が漏洩し続けるおそれがあった。しかしながら、(4)の発明によれば、継手部を介して液体材料を外部に供給している際に、継手部からの液体材料の漏洩が発生した場合、開閉弁Vaを開状態にすると、開閉弁Va、及び、配管Lbを介して充填容器内の加圧用ガスが配管L1内に流れ込む。その結果、配管L1内の気圧と充填容器内の圧力をなるべく瞬時に等圧にすることができ、液体材料の漏洩量を最小限とすることができる。特に、液体材料が引火性、酸化性、禁水性等を有する危険物である場合、漏洩を最小限に食い止めることにより、爆発や火災等の重大な災害が発生する可能性を著しく低減することが可能となる。
【0018】
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(5) 所定量の液体材料が充填される充填容器と、上記充填容器内の気層を加圧する加圧用ガスが導入される加圧用ガス導入配管と、下端が上記充填容器内の液体材料の液層内に浸され、上端が閉塞する配管L1、及び、上記配管L1の内径よりも外径が小さく、上記配管L1の上端からその一部が挿入されて接続された配管L2を有する配管Laと、上記加圧用ガス導入配管から分岐し、上記配管L2の下端よりも上側において、上記配管L1に接続された配管Lbと、上記加圧用ガス導入配管と上記配管Lbの間に設けられた開閉弁Vaと、上記配管Laの上端に設けられた継手部とを備えた液体材料容器からの液体材料の供給方法であって、
常時には、上記開閉弁Vaを閉状態とした状態で上記充填容器内を加圧し、上記継手部を介して液体材料を供給し、上記供給時に、上記継手部からの液体材料の漏洩が発生した場合には、上記開閉弁Vaを開状態にして、上記配管L1内の気圧と上記容器内の圧力を等圧にし、上記配管L1内の液面を降下させることを特徴とする。
【0019】
(5)の発明によれば、継手部を介して液体材料を外部に供給している際に、継手部からの液体材料の漏洩が発生した場合、開閉弁Vaを開状態にすると、開閉弁Va、及び、配管Lbを介して容器内の加圧用ガスが配管L1内に流れ込む。その結果、配管L1内の気圧と容器内の圧力をなるべく瞬時に等圧にすることができ、液体材料の漏洩量を最小限とすることができる。特に、液体材料が引火性、酸化性、禁水性等を有する危険物である場合、漏洩を最小限に食い止めることにより、爆発や火災等の重大な災害が発生する可能性を著しく低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、容器の底に沈殿したパーティクルが巻き込まれることを防止し、純度の高い液体材料を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る液体材料供給装置の基本的な構成を模式的に示す概略図である。
【
図2】
図1に示した液体材料供給装置の使用状態を示す図である。
【
図3】
図1に示した液体材料供給装置の使用状態を示す図である。
【
図4】従来の液体材料供給装置を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る液体材料供給装置の基本的な構成を模式的に示す概略図である。
本実施形態に係る液体材料供給装置10が備える液体材料容器12は、所定量の液体材料が充填される充填容器1と、充填容器1内の気層1bを加圧する加圧用ガスが導入される加圧用ガス導入配管L3(以下、「配管L3」ともいう)と、充填容器1内の液体材料を外部へ供給する配管Laと、加圧用ガス導入配管L3から分岐し、配管Laに接続されたバイパス配管Lb(以下、「配管Lb」ともいう)と、配管Lbにおける加圧用ガス導入配管L3側の一端に設けられた開閉弁Vaと、配管Laの上端に設けられた継手部5と、継手部5近傍に設けられたセンサ6とを備える。配管Laは、下端が充填容器1内の液体材料の液層1a内に浸され上端が閉塞する配管L1と、配管L1の上端にその一部が挿入され、且つ、配管L1の内径よりも外径が小さい配管L2とから構成されている。バイパス配管Lbは、配管L2の下端よりも上側において配管L1に接続されている。また、液体材料供給装置10は、制御部(図示せず)を備えており、開閉弁の作動やセンサの動作等を制御する。
【0023】
図2、及び、
図3は、
図1に示した液体材料供給装置の使用状態を示す図である。なお、
図2、及び、
図3では、開状態にある開閉弁を黒色、閉状態にある開閉弁を白色で示している。
【0024】
液体供給時には、まず、継手部5に液体材料供給配管L4(以下、「配管L4」ともいう)を、開閉弁V3を介して接続する。なお、液体材料供給配管L4の他端には、CVD装置等の消費設備4が接続されており、液体材料供給配管L4には、さらに、その途中に開閉弁V4が設けられており、開閉弁V3とV4との間には、圧力センサPが設けられている。
【0025】
次に、制御部による制御により、開閉弁V1,V2, V3,V4を開状態、開閉弁Vaを閉状態とし、配管L3を介して充填容器1内に加圧用ガスを導入する。そうすると、加圧用ガスは、充填容器1の気層1bに蓄積され、気層1bが液体材料の液層1aを加圧し、押し下げる(
図2参照)。
【0026】
ここで、配管Laは、下端が充填容器1内の液体材料の液層1a内に浸され、上端が閉塞する配管L1と、配管L1の上端にその一部が挿入されて接続され、配管L1の内径よりも外径が小さい配管L2とから構成されている。従って、配管La内の液面1cが配管L2よりの下端よりも上側まで到達すると、配管La内上側の空間1dが加圧され、空間1dを有した状態で、液体材料が配管L2から、継手部5、開閉弁V3,V4を介して消費設備4に供給される。
このように、空間1dを有した状態で液体材料が供給されるため、この空間1dがクッションとなり、液体材料供給開始時のウォーターハンマーを抑制することができ、開閉弁、継手、その他の部材(例えば、圧力計)が破損することを低減することができる。
【0027】
配管L1の下端は、充填容器1の底近傍まで延設されている。配管L1の下端が、充填容器1の底近傍まで延設されているため、充填容器1内の液体材料の残量が少なくなっても、消費設備4への供給を継続することが可能となる。また、配管L2の外径は、配管L1の内径よりも小さいため、配管L1内を移動する液体材料の流速は、配管L2内を移動する液体材料の流速よりも、緩やかとなる。その結果、配管L1の下端を容器の底近傍まで延設しても、充填容器1の底に沈殿したパーティクルが配管Laに巻き込まれることを防止することができ、純度の高い液体材料を供給することが可能となる。また、配管L1内を通過する液体材料の流速は、配管L2内を通過する液体材料の流速よりも、緩やかとなるため、時間当たりの供給量を多くした場合であっても、容器の底近傍での配管L1内の液体材料の流速を抑えることが可能となる。
【0028】
配管L1の下端から充填容器1の底までの距離は、配管L1の下端での液体材料の流速が、配管L1内を通過する液体材料の流速よりも遅くなるように設計されていることが好ましい。配管L1の内径を大きくしたとしても、配管L1の下端から充填容器の底までの距離が近いと、配管L1の下端での液体材料の流速は速くなることとなるが、上記構成とすれば、充填容器1の底に沈殿したパーティクルが配管L1に巻き込まれることをさらに確実に防止することができるからである。上記構成は、例えば、液体材料の流れる方向に対する液体材料の通過面積の大小により規定することができ、(配管L1内部における液体材料の通過面積)<(配管L1の下端への液体材料の流入面積)を満たす構成を挙げることができる。具体的には、配管L1の内径(配管L1の内側の直径)をDとし、配管L1の下端から充填容器1の底までの距離をHとすると、下記式(A)を満たす構成を挙げることができる。
式(A):((1/2×D)
2×π)<(D×π×H)
【0029】
配管L1の内径と配管L2の内径との比率は、配管L2の内径が配管L1の内径よりも小さければ、特に限定されないが、(配管L1の内径)/(配管L2の内径)が、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。すなわち、配管L1内の液体材料の流速と配管L2内の液体材料の流速との比、(配管L1内の流速)/(配管L2内の流速)が、1/4以下であることが好ましく、1/25以下であることがより好ましい。
【0030】
このように、本実施形態に係る液体材料容器12よれば、充填容器1の底に沈殿したパーティクルが配管Laに巻き込まれることを防止することができる程度に、配管L1内を移動する液体材料の流速を緩やかとしつつ、時間当たりの供給量を充分に確保することが可能となる。
【0031】
次に、液体材料の供給時に、継手部5における接続の不具合等の理由で、継手部5から液体材料の漏洩が発生した場合について説明する。
【0032】
液体材料の供給時に接続の不具合等の理由で、継手部5から液体材料の漏洩が発生し、センサ6がこれを検知すると、制御部の制御により開閉弁V1,V2, V3,V4を閉状態とし、その後、開閉弁Vaを開状態とする(
図3参照)。これにより、充填容器1内の加圧用ガスが開閉弁Va、及び、配管Lbを介して配管L1内に流れ込み、配管L1内の気圧と充填容器1内の圧力とが等圧となる。その結果、配管L1内の液面1cが降下し、多くても配管L2内の液体材料のみが漏洩する程度にとどめることができる。
【0033】
本発明におけるセンサとしては、液体材料の漏洩を検知できるものであれば特に限定されず、液体材料の性質に合わせて、適宜、漏洩センサ、煙センサ、熱検知器、赤外線センサ等を採用することができる。なお、本発明におけるセンサの設置位置は、液体材料、及び、検知方法に応じて適宜に設定すればよい。
【0034】
なお、図示しないが、液体材料供給装置10には、作業者等が操作することが可能な操作部(例えば、ボタンやレバー)が備えられており、この操作部が操作されたことを条件として、開閉弁V1,V2, V3,V4が閉状態、開閉弁Vaが開状態へと制御部により制御される。これにより、センサ6による検知がなくとも、液体材料が漏洩したと作業者が判断した時点で、漏洩を最小限に食い止めることが可能となる。
【0035】
配管L2は、配管L1の上端からその一部が挿入されて接続されている。
挿入長さ(挿入量
)としては、配管L1の長さの5〜10%が好ましい。この範囲内であれば、充填容器1内の液体材料よりも比重の小さい、充填容器1の上部に溜まったパーティクルが巻き込まれることをより確実に防止することができるとともに、充填容器1内の液体材料よりも比重の大きい、充填容器1の下部に溜まったパーティクルが巻き込まれることをより確実に防止することができるからである。
【0036】
このように、本実施形態に係る液体材料供給装置10及び液体材料の供給方法によれば、開閉弁V1,V2, V3,V4を閉状態とし、その後、開閉弁Vaを開状態とすることにより、配管L1内の気圧と充填容器1内の圧力とをなるべく瞬時に等圧にすることができ、液体材料の漏洩量を最小限とすることができる。
【0037】
充填容器1の輸送時には、配管Laの上側(継手部側)から加圧用ガスが微加圧で充填される。これにより、配管La内の液面1cを微加圧することができ、輸送時に大きな振動等があった場合であっても、継手部5から液体材料が漏洩しにくくすることができる。
【0038】
本発明における液体材料としては、特に限定されないが、例えば、半導体製造プロセスなどにおいて用いられている、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ酸、リン酸等の処理用液体材料や、モノシラン、ジエチルシラン,ジエチル亜鉛、四塩化チタン等に代表される半導体デバイス用液体材料等の各種の液体材料を挙げることができる。
【0039】
本発明における加圧用ガスとしては、特に限定されないが、液体材料に対する反応性や溶解性がなく、入手が容易で操作し易いガスが好ましい。具体的には、例えば、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを挙げることができる。
【0040】
本発明における充填容器としては、特に限定されないが、消費設備4に供給するに十分な液体材料を充填できる内容量を有し、上記液体材料の成分によって耐蝕性や堅牢性などを有する材質等で構成されていることが好ましい。
【0041】
上述した実施形態では、配管Laが配管L1と、配管L1よりも内径が小さい配管L2とから構成されているとともに、バイパス配管Lbを備える構成である場合について説明した。このような構成の場合、液体材料供給時のパーティクル巻き込み防止機能、液体材料供給開始時のウォーターハンマー防止機能、及び、継手部からの液体材料の漏洩が発生した場合の液体材料漏洩防止機能を有する。しかしながら、液体材料供給時のパーティクル巻き込み防止機能、及び、液体材料供給開始時のウォーターハンマー防止機能さえ有すればよい場合には、バイパス配管Lb、及び、開閉弁Vaを備えない構成としてもよい。
【0042】
本発明における、配管Lb上に設けられている、とは、配管Lbの端に設けられている場合を含む。従って、配管Lbの加圧用ガス導入配管L3側の一端に設けられている本実施形態における開閉弁Vaは、本発明の、配管Lb上に設けられている開閉弁Vaに相当する。本実施形態では、開閉弁Vaが配管Lbにおける加圧用ガス導入配管L3側の一端に設けられている場合について説明したが、本発明においては、配管Lb上であれば、どの位置に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 充填容器
1a 液層
1b 気層
1c 液面
1d 空間
5 継手部
6 センサ
10 液体材料供給装置
12 液体材料容器
La、Lb、L1、L2、L3、L4、 配管
Va、V1、V2、V3、V4 開閉弁
P 圧力センサ