(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656383
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】排ガス熱交換器の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
F28G 1/16 20060101AFI20141225BHJP
【FI】
F28G1/16 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2009-229548(P2009-229548)
(22)【出願日】2009年10月1日
(65)【公開番号】特開2011-75243(P2011-75243A)
(43)【公開日】2011年4月14日
【審査請求日】2012年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 武史
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 英治
【審査官】
仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−003266(JP,A)
【文献】
特開2008−101873(JP,A)
【文献】
特開平01−155114(JP,A)
【文献】
特開平02−085605(JP,A)
【文献】
特開平02−082014(JP,A)
【文献】
実開平04−049727(JP,U)
【文献】
特開平08−247696(JP,A)
【文献】
特表2007−513312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼設備の排ガス流路に設置される排ガス熱交換器の洗浄方法であって、
前記熱交換器に対して定格時間に亘り洗浄水の噴射を行なう定格洗浄を可及的低頻度で実施するとともに、前記熱交換器に対して前記定格時間の1/3以下の短時間だけ洗浄水の噴射を行なう部分洗浄を、前記定格洗浄の合間に複数回分散的または周期的に実施する方法において、
前記熱交換器の洗浄対象領域を分担すべく分散配置された複数の洗浄水供給管を複数のグループに按分し、前記定格洗浄では、全グループの全洗浄水供給管への給水を順次切替えて実施し、前記複数回の部分洗浄では、各回の部分洗浄毎に給水対象グループを切替えかつ当該グループに属する各洗浄水供給管への給水を順次切替えて実施し当該グループ以外の洗浄水供給管への給水を実施しないようにすることを特徴とする排ガス熱交換器の洗浄方法。
【請求項2】
前記定格洗浄および前記複数回の部分洗浄を、いずれも単位時間当たりの定格水量にて実施する、請求項1に記載の排ガス熱交換器の洗浄方法。
【請求項3】
前記複数の洗浄水供給管を、同一グループに属する洗浄水供給管同士が相互に隣接せずかつ前記洗浄対象領域全体に分散配置されるように、前記複数のグループに按分する、請求項1に記載の排ガス熱交換器の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ等の燃焼設備の排ガス流路に設置される排ガス熱交換器の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等の燃焼設備から煙突に至る排ガス流路には、排ガスの熱を回収するために熱交換器が設置される場合がある(例えば特許文献1参照)。このような排ガス熱交換器の伝熱管表面に、燃焼排ガスに含まれるダストが付着堆積すると、通風損失が増大することに加えて、ダストが断熱層となって伝熱性能を低下させ、交換熱量すなわち回収される熱量が減少する問題を生じる。そこで、排ガス熱交換器の通風および伝熱性能を回復させるために、排ガス熱交換器に定期的に洗浄水を噴射して洗浄する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−61008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、洗浄時には、排ガス熱が洗浄水の蒸発に消費されてガス温度が低下し、交換熱量が低下する問題がある。
図6(a)は、1日に3回の洗浄を実施する場合の交換熱量の変化を示しており、各回の洗浄時に交換熱量が一時的に低下した後に回復し、その後、時間の経過と共に再びダストが付着堆積し交換熱量が減少していく様子が見て取れる。
図6(b)は洗浄時における交換熱量の変化をより詳細に示した拡大図であり、洗浄開始f1に伴い洗浄水の影響によって交換熱量が大きく低下し(f2)、洗浄終了f3の後に伝熱管表面に残留した水分が蒸発して交換熱量が回復するが(f4)、ダストの付着によって交換熱量が低下し始める。
【0005】
したがって、洗浄回数を1日4回、さらには5ないし6回に増加しても、それによる交換熱量の増分は、追加された洗浄に伴う交換熱量の低下分で相殺され、交換熱量の増加は見込めないばかりか、洗浄水の消費量が増大するという新たな問題を生じることになる。排ガス熱交換器の設置目的からしてランニングコストの増加は抑制されるべきである。
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、洗浄水量の増加を抑制しつつ総体的な交換熱量を向上させることが可能な排ガス熱交換器の洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の有する課題を解決するため、本発明は、燃焼設備の排ガス流路に設置される排ガス熱交換器の洗浄方法であって、前記熱交換器に対して定格時間に亘り洗浄水の噴射を行なう定格洗浄を可及的低頻度で実施するとともに、前記熱交換器に対して前記定格時間の1/3以下の短時間だけ洗浄水の噴射を行なう部分洗浄を、前記定格洗浄の合間に複数回分散的または周期的に実施する
方法において、前記熱交換器の洗浄対象領域を分担すべく分散配置された複数の洗浄水供給管を複数のグループに按分し、前記定格洗浄では、全グループの全洗浄水供給管への給水を順次切替えて実施し、前記複数回の部分洗浄では、各回の部分洗浄毎に給水対象グループを切替えかつ当該グループに属する各洗浄水供給管への給水を順次切替えて実施し当該グループ以外の洗浄水供給管への給水を実施しないようにすることを特徴とする洗浄方法を採用した。
【0008】
上記洗浄方法における「定格洗浄」とは、洗浄水の噴射より、排ガス熱交換器に付着堆積したダストを完全に除去する完全洗浄であり、排ガス熱交換器の通風および伝熱性能を定格まで回復させる洗浄である。これに対し、「部分洗浄」とは、定格洗浄の1/3以下の短時間だけ洗浄水の噴射を行なう不完全洗浄であり、単独で実施される場合には、排ガス熱交換器に付着堆積したダストを完全には除去できないが、短い間隔で実施される場合には、排ガス熱交換器の伝熱性能を回復でき、かつ、噴射時間が短い分、洗浄時における一時的な交換熱量の低下も少ない。
【0009】
本発明に係る洗浄方法では、このような部分洗浄を、定格洗浄の合間に複数回分散的または周期的に実施して、熱交換器に付着堆積したダストを湿らせ、ダストの空気層を破壊して熱抵抗を小さくすることにより、洗浄水量の増加を抑制しつつ、総体的な交換熱量を向上させることを可能にしている。付加的に実施される部分洗浄による洗浄水量の増加は、定格洗浄の頻度を増加させる場合の洗浄水量の増加に比べて少ないことに加えて、部分洗浄の実施により、定格洗浄時におけるダストの堆積量が減少するので、定格洗浄における洗浄水の噴射時間すなわち定格時間の短縮や、定格洗浄の頻度をさらに少なくすることも見込め、実質的に洗浄水量を増加させずに交換熱量を向上させることも可能になる。また、上記のような部分洗浄を導入しつつも、定期的に実施される定格洗浄によって残留ダストを確実に除去できるので、一時的な排ガスダストの増加等が生じても、残留ダストが次の洗浄周期に持ち越されることがない。
【0010】
また、排ガス熱交換器に対して複数の洗浄水供給管(ノズル)が分散配置され、それらへの給水を順次切替えて洗浄を実施することで、一時に多量の洗浄水が消費されることがなく、給水設備への負担が小さいことは勿論であるが、排ガス熱交換器の洗浄中の対象領域以外では熱交換が維持されており、総体的なガス温度の低下が抑制される利点がある。
【0011】
さらに、各回の部分洗浄において、給水対象となったグループに属する各洗浄水供給管に対してのみ給水が実施されることで、給水対象以外のグループが分担する排ガス熱交換器の対象領域ではガス温度の低下がなく、総体的なガス温度の低下が一層抑制され、また、給水対象となったグループが分担する排ガス熱交換器の対象領域における洗浄後の熱交換量の回復が促進される利点がある。
【0012】
本発明方法において、前記定格洗浄および前記複数回の部分洗浄を、いずれも単位時間当たりの定格水量にて実施することが好ましい。
【0013】
本発明は、洗浄水量の抑制を課題の1つとしているが、それを、噴射水量の抑制によって達成するのではなく、定格洗浄および部分洗浄の各場合において、洗浄装置が設計通りの洗浄能力を発揮できる定格水量にて洗浄水を噴射しつつ、その噴射時間と噴射時期のみを上述のように設定することで、洗浄水量の増加を抑制することが意図され、かつ、それにより交換熱量を確実に向上できる。
【0014】
本発明方法において、前記複数の洗浄水供給管を、同一グループに属する洗浄水供給管同士が相互に隣接せずかつ前記洗浄対象領域全体に分散配置されるように、前記複数のグループに按分することが好適である。
【0015】
グループを切替えて実施される各部分洗浄において、排ガス熱交換器の特定部位に洗浄が集中するのが防止され、かつ、各回の部分洗浄毎の温度分布が一様になる利点がある。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明に係る排ガス熱交換器の洗浄方法によれば、洗浄水量の増加を抑制しつつ総体的な交換熱量を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明方法が実施される排ガス熱交換器およびその洗浄装置を備えた排ガス流路を示す側断面図である。
【
図3】本発明実施例に係る洗浄方法を示す概略的なタイミングチャートである。
【
図4】(a)〜(c)は、本発明実施例に係る洗浄方法における各洗浄パターンを示すタイミングチャートである。
【
図5】本発明実施例および比較例の各洗浄方法における交換熱量の変化を示すグラフである。
【
図6】(a)は、従来の洗浄方法における交換熱量の変化を示すグラフ、(b)はそのX部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1および
図2は、本発明に係る洗浄方法が実施される排ガス熱交換器1およびその洗浄装置3の一例を示している。図において、排ガス熱交換器1は、図中上下方向に配向された多数の伝熱管11と、それらを横方向に連結する伝熱要素12などで構成され、図示しないボイラなどの燃焼設備から煙突に至る排ガス流路2中に、構造要素21を介して支持されている。
【0019】
排ガス流路2の外部に位置した排ガス熱交換器1の最上部には、水などの熱交換媒体を流通させる配管との接続部13,14が配設され、これらの接続部13,14を介して熱交換媒体が伝熱管11内を通過することにより、熱交換媒体と排ガスとの間で熱交換がなされる。例えば、ボイラに供給される水が排ガス熱交換器1を通過することにより予熱されるのと同時に排ガスが冷却される。
【0020】
洗浄装置3は、排ガス熱交換器1に対して、排ガス流れ方向上流側に、図中上下方向に配向された10本の洗浄水供給管7(p1〜p10)を備えている。各洗浄水供給管7(p1〜p10)は、排ガス流路2内に分散して等間隔で並設され、排ガス熱交換器1の構造要素21に固定された支持部材22に支持されており、それぞれの上下方向に離間してかつ排ガス熱交換器1に対向して3つのノズル8が配設されている。
【0021】
各洗浄水供給管7(p1〜p10)は、排ガス流路2の外部に位置した上端部において、それぞれ弁6(v1〜v10)を介して主配管5に接続され、主配管5は、ポンプ4を介して、図示しない給水タンクに接続されている。それぞれの弁6(v1〜v10)は、アクチュエータを備えた自動弁で構成され、制御装置9からの制御信号によって所定のタイミングで開閉される。制御装置9は、予め設定されたスケジュール、洗浄パターン(後述する)に従って、ポンプ4および各弁6(v1〜v10)を動作させるタイムスイッチなどで構成される。
【0022】
以上のように構成された洗浄装置3の基本動作は次の通りである。先ず、制御装置9によってポンプ4と洗浄パターンに応じたタイムスイッチが起動され、ポンプ4により、給水タンクに貯留された洗浄水が主配管5に圧送される。次いで、前記洗浄パターンに応じた1つの弁6(例えばv1)が開き、対応する洗浄水供給管7(例えばp1)に洗浄水が供給され、当該洗浄水供給管7(p1)の各ノズル8から、排ガス熱交換器1に向けて洗浄水が噴射される。所定時間の噴射の後、当該洗浄水供給管7(p1)の弁6(v1)が閉じ、次の弁6(例えばv2)が開いて対応する洗浄水供給管7(例えばp2)に洗浄水が供給され、次の噴射が行なわれる。このようにして順次洗浄水供給管7(p1〜p10)を切替えて洗浄が実施される。
【0023】
なお、洗浄水は、水がそのまま使用される場合の外に、排ガス性状に応じてpH調整されたアルカリ性の洗浄水や、洗剤などを添加した洗浄水が使用される場合もある。また、各ノズル8を、洗浄液噴射ノズルの周囲にエアの吸引部を備えたエゼクターとして構成し、洗浄液を気液二層流体として噴射するようにしても良い。いずれの場合も洗浄液の主成分は水であるので、便宜的に洗浄水として記載する。
【0024】
次に、定格洗浄Aおよび部分洗浄B1〜B15の実施時期と洗浄パターンの実施例について説明する。
【0025】
図3は、洗浄装置3によって実行される定格洗浄Aおよび部分洗浄B1〜B15の実施時期を示している。なお、
図3では、それぞれの所要時間(矩形部分の幅)が便宜的に拡張されて示されており、実際の所要時間は図示より短い。
【0026】
本発明に係る洗浄方法は、排ガス熱交換器1に付着堆積したダストを完全に除去し、排ガス熱交換器1の通風性能および伝熱性能を定格通りに回復させるために可及的低頻度で実施される定格洗浄Aの合間に、短い間隔で複数回実施される部分洗浄B1〜B15を追加した点に特徴があることは既に述べた通りである。図示例では、定格洗浄Aは10本の洗浄水供給管7(p1〜p10)の全てを用いて8時間サイクルで実施され、したがって24時間に3回実施される。
【0027】
図4(a)は、1回の定格洗浄Aにおける弁6(v1〜v10)の開閉時期を示している。定格洗浄Aでは、ポンプ4とタイムスイッチの起動から昇圧待機時間T0=10秒経過後に弁6(v1)が開き、対応する洗浄水供給管7(p1)の各ノズル8からT1=60秒間に亘り洗浄水を噴射する。次いで、弁6(v1)を閉じた後、休止時間T2=2秒経過後に、次の弁6(v2)が開き、対応する洗浄水供給管7(p2)の各ノズル8からT1=60秒間に亘り洗浄水を噴射する。このようにして10本の洗浄水供給管7(p1〜p10)を順次切替えて、各60秒間の定格洗浄Aが実施される。1回の定格洗浄Aにおける洗浄水の積算噴射時間は600秒(10分)、所要時間は10分28秒である。
【0028】
一方、部分洗浄B1〜B15は、
図3に示されるように、10本の洗浄水供給管7(p1〜p10)に対応する各弁6(v1〜v10)を2つのグループに分けて、30分サイクルで各グループ交互に実施され、したがって、各グループについて1時間サイクルで実施されるが、定格洗浄Aと重複するタイミングB0では、定格洗浄Aが優先され、部分洗浄としては実施されない。実施例では、各弁6(v1〜v10)を奇数グループ(v1,v3,v5,v7,v9)と偶数グループ(v2,v4,v6,v8,v10)に分け、半数ずつ交互に計15回の部分洗浄B1〜B15が実施される。
【0029】
図4(b)は、奇数グループの弁6(v1,v3,・・・)の1回の部分洗浄B1,B3,・・・B15における開閉時期を、
図4(c)は偶数グループの弁6(v2,v4,・・・)の1回の部分洗浄B2,B4,・・・B14における開閉時期を、それぞれ示しており、図から明らかな通り、各グループの部分洗浄は同じパターンで実行される。
【0030】
例えば、
図4(b)に示す奇数グループでは、定格洗浄Aの場合と同様に、ポンプ4とタイムスイッチの起動から昇圧待機時間T0=10秒経過後に弁6(v1)が開くが、対応する洗浄水供給管7(p1)の各ノズル8からは、定格洗浄Aの場合の1/6に過ぎないT1=10秒間だけ洗浄水を噴射する。次いで、弁6(v1)を閉じた後、休止時間T2=2秒経過後に、1つ置いて隣の弁6(v3)が開き、対応する洗浄水供給管7(p3)の各ノズル8からT1=10秒間だけ洗浄水を噴射する。このようにして1つ置きに配置された5本の洗浄水供給管7(p1,p3,p5,p7,p9)を順次切替えて、各10秒間の部分洗浄Aが実施される。1回の部分洗浄B1〜B15における洗浄水の積算噴射時間は50秒、所要時間は68秒(1分8秒)である。
【0031】
上記のような部分洗浄B1〜B15では、排ガス熱交換器1の伝熱管11表面に付着したダストを完全に除去することはできず、排ガス熱交換器1の通風損失を定格まで回復することはできないが、伝熱性能は定格まで回復できることが、後述の実験で確認されており、かつ、洗浄水の噴射時間T1が定格洗浄Aの1/6の短時間に限定されるため、洗浄時における排ガス熱交換器1の一時的な温度低下を抑制でき、総体的な交換熱量を向上するうえで有利である。
【0032】
特に、上記実施例における部分洗浄B1〜B15では、各回の部分洗浄で全数の洗浄水供給管7を用いず、半数(あるいは一部)の洗浄水供給管7のみを用いて短時間の部分洗浄を実施することで、排ガス熱交換器1の一時的な温度低下を一層抑制でき、総体的な交換熱量の向上に一層有利である。
【0033】
また、各回の部分洗浄B1〜B15での洗浄水供給管7の配列、すなわち奇数グループの洗浄水供給管7(p1,p3,p5,p7,p9)の配列と偶数グループの洗浄水供給管7(p2,p4,p6,p8,p10)の配列が同様になり、かつ、いずれも排ガス熱交換器1の洗浄対象領域全体に分散されることで、各回の部分洗浄B1〜B15における温度分布も一様になる。
【0034】
さらに、各洗浄水供給管7(p1〜p10)の洗浄対象領域は、確実な定格洗浄Aを実施するために、必然的にある程度オーバーラップしている。したがって、各回の部分洗浄B1〜B15で、部分洗浄を行なう洗浄水供給管7(例えば、p1,p3,p5,p7,p9)と、部分洗浄を行なわない洗浄水供給管7(例えば、p2,p4,p6,p8,p10)とが、交互に配置されることで、部分洗浄を行なわない洗浄水供給管7(p2,p4,p6,p8,p10)に、隣接した洗浄水供給管7(p1,p3,p5,p7,p9)の洗浄水や、伝熱管11に打ち当てられて飛散した洗浄水が及び、洗浄とまではいかないものの、ダストの空気層を部分的に破壊するような副次的効果も期待できる。
【0035】
図5は、定格洗浄Aに部分洗浄B1〜B15を追加した上記実施例(実線)と、定格洗浄Aのみを行なう比較例(破線)の各洗浄方法における交換熱量(%)の変化を示している。グラフでは、定格洗浄A後に洗浄水が全て蒸発した時点の交換熱量を100(%)としており、それぞれの線で囲まれた面積を比較すると、定格洗浄Aのみを行なう比較例に対し、部分洗浄B1〜B15を追加した実施例では、総体的な交換熱量が5(%)増加している。
【0036】
また、上記実施例は、比較例と同じ8時間間隔で3回の定格洗浄Aを実施しているが、それぞれの定格洗浄A直前の交換熱量を比較すると、比較例では90(%)であるのに対して、部分洗浄B1〜B15を追加した実施例では、98(%)程度までの降下に留まっており、定格洗浄A直前のダスト付着量が少ないことを示している。したがって、部分洗浄B1〜B15を追加した実施例では、同条件において、定格洗浄Aでの各洗浄水供給管7(p1〜p10)の洗浄水噴射時間T1=60秒をさらに短縮でき、かつ、定格洗浄Aを実施する頻度をさらに少なくし、すなわち時間間隔を8時間より長くできることが予見されている。このような調整を行なうことで、洗浄水量の増加を抑制しつつ、総体的な交換熱量を向上することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態につき述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能である。
【0038】
例えば、上記実施形態では、部分洗浄Bの噴射時間T1を、定格洗浄Aの1/6とする場合を示したが、部分洗浄Bの頻度次第では、定格洗浄Aの1/10〜1/3とすることもできる。洗浄水量を抑制するためには、部分洗浄Bの噴射時間は短い方が良いが、極端に短いと部分洗浄Bの効果が得られず、切替え動作に伴うロスや設備への負担が大きくなる。また、部分洗浄Bの噴射時間が、定格洗浄Aの噴射時間の1/3を越えると、洗浄水量が顕著に増加することは勿論、各部分洗浄時における交換熱量の低下が大きくなり、総体的な交換熱量の向上が見込めなくなる。
【0039】
また、上記実施形態では、本発明に係る洗浄方法を、水平方向に配向された排ガス流路2に設置された排ガス熱交換器1に実施する場合を示したが、排ガス流路2や排ガス熱交換器1、洗浄装置3の設置形態はこれに限定されるものではない。例えば、上下方向に配向された排ガス流路内に設置された排ガス熱交換器の上方に洗浄装置が設置される場合などにも実施可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 排ガス熱交換器
2 排ガス流路
3 洗浄装置
4 ポンプ
5 主配管
6,v1〜v10 弁
7,p1〜p10 洗浄水供給管
8 ノズル
9 制御装置
11 伝熱管
A 定格洗浄
B,B1〜B15 部分洗浄