(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656404
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】電動装置の起動及び運転方法およびそのシステム
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20141225BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20141225BHJP
H02P 9/08 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
F04B49/06 331A
F04B49/06 311
H02P9/04 P
H02P9/08 A
【請求項の数】22
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2009-528193(P2009-528193)
(86)(22)【出願日】2007年9月12日
(65)【公表番号】特表2010-503791(P2010-503791A)
(43)【公表日】2010年2月4日
(86)【国際出願番号】NO2007000322
(87)【国際公開番号】WO2008033033
(87)【国際公開日】20080320
【審査請求日】2010年8月19日
(31)【優先権主張番号】20064084
(32)【優先日】2006年9月12日
(33)【優先権主張国】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】509072478
【氏名又は名称】アーカー エンジニアリングアンドテクノロジー エイエス
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】ビェルクネス,オーレ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ルンド,トリグベ
【審査官】
佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−067369(JP,A)
【文献】
実開昭61−043752(JP,U)
【文献】
特開昭58−058880(JP,A)
【文献】
特開2001−132648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
H02P 9/04
H02P 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンや燃焼機関等の機械的動力伝達装置から供給される電力により、圧縮機(1)やポンプ等の電動装置の起動および運転を行う方法であり、それによって前記電動装置が10MW以上の出力の第1電気機械に機械的に連結され、前記機械的動力伝達装置が第2電気機械に機械的に連結され、
前記方法は、
1)前記第1電気機械および前記第2電気機械が非励起状態かつ停止状態であるときに、前記第1電気機械を前記第2電気機械と電気的に相互接続し、これにより前記第2電気機械は前記第1電気機械の担当とされ、
2)前記第1電気機械および前記第2電気機械を励起し、
3)加速段階において、前記機械的動力伝達装置を用いて前記第2電気機械を加速することによって前記第1電気機械を加速し、
4)前記第1電気機械が所定の回転速度に達したら、前記第1電気機械を現場の電力網に同期させて、前記第1電気機械を前記電力網に接続する
ことを特徴としている。
【請求項2】
タービンや燃焼機関等の機械的動力伝達装置から供給される電力により、海中用圧縮機(1)や海中用ポンプ等の海中用電動装置の起動および運転を行う方法であり、それによって前記海中用電動装置が第1電気機械に機械的に連結され、前記機械的動力伝達装置が第2電気機械に機械的に連結され、
前記方法は、
1)前記第1電気機械および前記第2電気機械が非励起状態かつ停止状態であるときに、前記第1電気機械を前記第2電気機械と電気的に相互接続し、これにより前記第2電気機械は前記第1電気機械の担当とされ、
2)前記第1電気機械および前記第2電気機械を励起し、
3)加速段階において、前記機械的動力伝達装置を用いて前記第2電気機械を加速することによって前記第1電気機械を加速し、
4)前記第1電気機械が所定の回転速度に達したら、前記第1電気機械を現場の電力網に同期させて、前記第1電気機械を前記電力網に接続する
ことを特徴としている。
【請求項3】
前記現場の電力網は外部電力網から電力を得ていることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ガスタービンや蒸気タービン等のタービンを少なくとも1基用いて駆動される電気機械により電力が前記現場の電力網に供給されることを特徴としている請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
タービンや燃焼機関等の機械的動力伝達装置、外部電力系統から電力が供給される周波数変換器、または、前記機械的動力伝達装置等の現場の電源から電力を供給することにより、圧縮機(1)やポンプ等の電動装置の起動および運転を行う方法であり、前記電動装置は10MW以上の出力の第1電気機械により駆動され、
前記方法は、
1)加速段階において、
a)前記機械的動力伝達装置に連結され、また、前記第1電気機械に電気的に相互接続され、これにより前記第1電気機械の担当とされている、変換器として機能する第2電気機械を加速するか、または、
b)周波数変換器から前記第1電気機械に電力を供給する
ことによって、前記電動装置の電動機として前記第1電気機械をゼロ、約ゼロ、または低速の状態から加速し、
2)前記第1電気機械を現場の電力網に同期させ、その後、
3)前記加速段階後、
a)外部電力網、または、
b)少なくとも1台の第2電気機械に連結された少なくとも1基の機械的動力伝達装置より電力が供給される前記現場の電力網を用い、前記現場の電力網から電力を供給することにより前記第1電気機械を運転し、これにより前記周波数変換器を他の作業に使用可能な状態とすることを特徴としている。
【請求項6】
タービンや燃焼機関等の機械的動力伝達装置、外部電力系統から電力が供給される周波数変換器、または、前記機械的動力伝達装置等の現場の電源から電力を供給することにより、海中用圧縮機(1)や海中用ポンプ等の海中用電動装置の起動および運転を行う方法であり、前記電動装置は第1電気機械により駆動され、
前記方法は、
1)加速段階において、
a)前記機械的動力伝達装置に連結され、また、前記第1電気機械に電気的に相互接続され、これにより前記第1電気機械の担当とされている、変換器として機能する第2電気機械を加速するか、または、
b)周波数変換器から前記第1電気機械に電力を供給する
ことによって、前記海中用電動装置の電動機として前記第1電気機械をゼロ、約ゼロ、または低速の状態から加速し、
2)前記第1電気機械を現場の電力網に同期させ、その後、
3)前記加速段階後、
a)外部電力網、または、
b)少なくとも1台の第2電気機械に連結された少なくとも1基の機械的動力伝達装置より電力が供給される前記現場の電力網を用い、前記現場の電力網から電力を供給することにより前記第1電気機械を運転し、これにより前記周波数変換器を他の作業に使用可能な状態とすることを特徴としている。
【請求項7】
前記機械的動力伝達装置には蒸気タービンが備えられ、前記加速段階において約ゼロ以上の速度で前記蒸気タービン(6)を起動させることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記加速段階において、最低速度で運転されるガスタービン(7)により駆動される前記第2電気機械(4)の励磁を制御することによって、前記第1電気機械(2)を誘導電動機として速度ゼロから加速させることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第2電気機械(5)に機械的に連結されているガスタービン(7)を最低速度からその定格速度に加速することにより、前記第2電気機械(5)の加速を行うことを特徴とする請求項1から6および8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
周波数が固定された電力とは独立して、可変周波数の電力システムにおいて電気定速駆動装置を運転することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記加速段階後、前記周波数変換器を用いることにより、前記外部電力網からの電力を前記現場の電力網の特性に、または、前記現場の電力網からの電力を前記外部電力網の特性に適合させて、前記現場の電力網に電力を供給するおよび/または前記現場の電力網から電力を供給できるようにすることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1台の機械装置を起動および運転するための起動および運転システムであって、前記機械装置は少なくとも1台の10MW以上の出力の第1電気機械に連結されて駆動され、変換器として機能する第2電気機械に機械的に連結された機械的動力伝達装置により前記第1電気機械に電力が供給され、前記第2電気機械は1台または複数の第1電気機械に独自に連結されるようになっており、これにより、前記システムは、前記第2電気機械から前記第1電気機械へ伝達された制御された電力により、前記第1電気機械を加速させる構造となっており、
前記システムは第1および第2電気機械を相互接続するための送電網を備えており、前記第1電気機械を起動するための前記第2電気機械の運転とは独立して他の電気装置を平行利用可能とするため、前記送電網は二重母線を少なくとも1ヶ所または少なくとも一つの二重回路遮断系統を備えていることを特徴としている。
【請求項13】
少なくとも1台の海中用機械装置を起動および運転するための起動および運転システムであって、前記海中用機械装置は少なくとも1台の第1電気機械に連結されて駆動され、変換器として機能する第2電気機械に機械的に連結された機械的動力伝達装置により前記第1電気機械に電力が供給され、前記第2電気機械は1台または複数の第1電気機械に独自に連結されるようになっており、これにより、前記システムは、前記第2電気機械から前記第1電気機械へ伝達された制御された電力により、前記第1電気機械を加速させる構造となっており、
前記システムは第1および第2電気機械を相互接続するための送電網を備えており、前記第1電気機械を起動するための前記第2電気機械の運転とは独立して他の電気装置を平行利用可能とするため、前記送電網は二重母線を少なくとも1ヶ所または少なくとも一つの二重回路遮断系統を備えていることを特徴としている。
【請求項14】
少なくとも1台の圧縮機やポンプ等の機械装置を起動および運転するための起動および運転システムであって、前記機械装置は少なくとも1台の10MW以上の出力の第1電気機械に連結されて駆動され、前記システムは、
第2電気機械に連結された機械的動力伝達装置を備え、前記第2電気機械は1台以上の第1電気機械に独自に電気的に接続されるようになっており、それにより前記第2電気機械は加速段階や次の運転段階において変換器として機能し、さらに、前記システムは、
VFD(Variable Frequency Drive、可変周波数駆動装置)のような周波数変換器を備え、前記周波数変換器は1台以上の第1電気機械に独自に連結されるようになっており、前記周波数変換器により加速段階において前記第1電気機械を加速させたり、運転段階において前記第1電気機械の運転を行い、これにより、
外部電力網または現場の電力網から前記周波数変換器に電力が供給されるようになっており、
前記システムは第1および第2電気機械を相互接続するための送電網を備えており、前記第1電気機械を起動するための前記第2電気機械の運転とは独立して他の電気装置を平行利用可能とするため、前記送電網は二重母線を少なくとも1ヶ所または少なくとも一つの二重回路遮断系統を備えていることを特徴としている。
【請求項15】
少なくとも1台の海中用圧縮機や海中用ポンプ等の海中用機械装置を起動および運転するための起動および運転システムであって、前記海中用機械装置は少なくとも1台の第1電気機械に連結されて駆動され、前記システムは、
第2電気機械に連結された機械的動力伝達装置を備え、前記第2電気機械は1台以上の第1電気機械に独自に電気的に接続されるようになっており、それにより前記第2電気機械は加速段階や次の運転段階において変換器として機能し、さらに、前記システムは、
VFD(Variable Frequency Drive、可変周波数駆動装置)のような周波数変換器を備え、前記周波数変換器は1台以上の第1電気機械に独自に連結されるようになっており、前記周波数変換器により加速段階において前記第1電気機械を加速させたり、運転段階において前記第1電気機械の運転を行い、これにより、
外部電力網または現場の電力網から前記周波数変換器に電力が供給されるようになっており、
前記システムは第1および第2電気機械を相互接続するための送電網を備えており、前記第1電気機械を起動するための前記第2電気機械の運転とは独立して他の電気装置を平行利用可能とするため、前記送電網は二重母線を少なくとも1ヶ所または少なくとも一つの二重回路遮断系統を備えていることを特徴としている。
【請求項16】
前記機械的動力伝達装置には蒸気タービンが備えられ、前記システムは、前記機械的動力伝達装置および前記第2電気機械を約ゼロ以上の速度から起動することにより前記第1電気機械を加速させるように構成されていることを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載のシステム。
【請求項17】
前記第2電気機械にはガスタービンが連結されており、前記ガスタービンは前記機械的動力伝達装置に備えられており、前記システムは、前記ガスタービンを備えた前記第2電気機械(4)の励磁を制御することによって前記第1電気機械を速度ゼロまたは低速から加速させるように構成されていることを特徴としている請求項12から15のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
前記第2電気機械(5)に機械的に連結されているガスタービン(7)を最低速度からその定格速度に加速することにより、前記第2電気機械(5)の加速を行うことを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記現場の電力網からの電力を前記外部電力網の特性に適合させ、前記現場の電力網から前記外部電力網に電力を供給できるように前記周波数変換器は構成されていることを徴とする請求項14から18のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
前記送電網には、少なくとも2つの異なる周波数で運転可能な母線が少なくとも2つ備えられていることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項21】
前記第1電気機械には、1台以上の電気同期装置および/または誘導装置が備えられていることを特徴とする請求項12から20のいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
前記第2電気機械には、電気同期装置が備えられていることを特徴とする請求項12から21のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大電流定速駆動装置に係わり、特に、10MW級以上のものに関する。海中で用いる際、本発明はあらゆる駆動装置の大きさ(低消費電力の装置、例えば弱小電源装置を備えたものも含む)に適用できる。本発明は、特に、大型または超大型のガス圧縮機駆動装置およびポンプ駆動装置に好適であるが、各種用途の他の高出力装置の運転にも用いることができる。本発明は、天然ガス処理装置、例えばLNGプラントにおける液化天然ガスの製造に用いる装置の運転に非常に好適である。LNGプラントでは、ガス処理設備において圧縮機により天然ガスを液化するが、この圧縮機は電気駆動システムで駆動されている。
【背景技術】
【0002】
石油及びガス関連事業では大型のポンプおよび/または圧縮機駆動装置がよく用いられており、それらは様々な条件において起動および運転が行え、コスト効率の高い建設に好適なように設計されている。関連事業としては、例えばLNGプラントが挙げられる。
【0003】
液化天然ガスすなわちLNGは、天然ガスを液体になる温度まで冷却して得た生成物である。天然ガスは、特にパイプラインを利用できない場合やパイプラインが非常に高価である場合、またその導入に時間が掛かる場合に、経済的な方法により液化状態で大量に輸送される。一般的に、LNGタンカーにより大量の天然ガスを海路で生産現場から消費圏や中間貯蔵場所に輸送を行っている。
【0004】
特許文献1に記載の液化天然ガスの製造装置では、主冷却段階が機械的に相互連絡されて共通のガスタービン1基で駆動されるようになっており、補助エンジンがガスタービンの起動用に設置されている。装置の駆動部および被駆動部を機械的に相互接続することの欠点として、特に、共通の軸で機械を回転させる長い列が挙げられ、この列は非常に場所をとるうえ、綿密にバランスをとった軸が必要となり、また、駆動装置および被駆動装置を互いに近接して設置させる必要があることが挙げられる。
【0005】
現在のところ、LNGの製造は、天然ガスの液化に用いられる冷凍機を駆動する電力を供給するため、ガスおよび/または蒸気タービンを基にすることが多い。一例として、特許文献2に記載のLNG製造用駆動システムが挙げられ、この駆動システムでは冷凍圧縮機をガスタービンにより駆動しており、ガスタービンと圧縮機の間をつなぐ共通の駆動軸によってガスタービンと始動電動機とが連結されている。
【0006】
LNGプラントにおいてガスタービンによって圧縮機を駆動させると、ガスタービンは圧縮機の比較的近くに設置される機械的伝達機構であるため、冷凍圧縮機のかなり近傍に配置されて通常非常に高温で運転されるガス燃焼装置に関連した危険がある。また、ガスタービンは通常排気ガスを排出し、天然ガス処理プラント内の危険を制限するために、この排気ガスをいくつかの方法によって処分することになる。陸上、沖合い、またはどこかでLNGプラントを建設したり運転しようとする際、危険地帯におけるガス燃焼部および高温の排気ガスの排出というのは決して理想的な方法ではなく、製造工程も改善できるような代替方法のほうが好ましいといえるだろう。周波数制御の電動装置を代わりに用いればよいのは明らかであるが、電動装置もまた、タービン駆動装置といろいろ組み合わせて用いなければならない。Statoil社により操業されるノルウェーのハンメルフェストのプラントは、周波数制御型LNGプラントの一例である。
【0007】
特許文献3に記載の天然ガス液化プラント用圧縮機駆動システムでは、周波数変換器を用いて起動を行い、周波数変換器によりガスタービンをラム速度まで加速して点火を行う。この場合、通常の定速運転中には、電動機が変換器として機能し、電動機がガスタービンにより発生した過剰な機械力を電気エネルギーに変換し、この電気エネルギーをプラントの主電源へ供給する。この態様では、ガスタービンおよび圧縮機は共通の軸により組まれている。
【0008】
周波数変換器は非常に大型の装置である。50MW程度の電力を変換するのに、周波数変換器は土地が約1000m
2で4階または5階建ての建物を占める大きさとなる。周波数変換器の大きさやコストにもかかわらず、電力が10MW程度以上のときは、駆動装置と被駆動装置の間で電力を送るためには周波数変換器が必要であると考えられることが多い。
【0009】
特許文献4に記載の天然ガス液化処理システムでは、機械的動力伝達装置と電動機とを圧縮機駆動装置として利用している。ここでは、圧縮機と電動機の様々な組合せが挙げられており、これらは各種冷媒で用いられる。特許文献4には、LNGプラントにおいて従来のガスタービンを用いることのいくつかの欠点が簡単に述べられており、圧縮機と電動機とを組み合わせてLNGプラントの圧縮機を駆動する各種方法が開示されている。これらの方法においては、電動機は各種方法による起動に用いられていることが多いが、通常の運転中や機械的な一連の動作中におけるガスタービンの補助、場合によっては蒸気タービンの補助に用いることもできると考えられる。
【0010】
上記従来技術や特許文献4において指摘されている欠点を考慮すると、LNGプラントや他の目的で用いられる圧縮機駆動システムの最適な機能性が得られ、上述の欠点を一つ以上解消可能な新規で進歩的な方法を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開WO97/33131号
【特許文献2】国際公開WO2005/047789A2号
【特許文献3】米国特許公報第5689141号
【特許文献4】米国特許公報第6640586B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、高価で大型の周波数変換器の必要性がほとんどない、圧縮機やポンプ等の装置に用いる装置駆動システムを提供することを目的としている。これにより、装置系統全体のコスト、重量、および体積が低減できるとともに、プラントの運転や建設をより容易に行うことができる。
【0013】
本発明は、処理工場、特に、天然ガス液化プラントで用いることができ、待機装置および予備部のコストを低減できる、圧縮機やポンプ等の一般装置に用いる装置駆動システムを提供することを第2の目的としている。
【0014】
また、本発明は、例えば閉鎖空間などの電力のみで設備を駆動することが好ましい形態に用いることのできる、圧縮機やポンプの駆動装置の配置方法を提供することをさらなる目的としている。特に、ガスまたは蒸気タービンを圧縮機やポンプの機械軸と連結させて駆動することが実用的ではない石油および/または天然ガス処理プラントに用いることができる。
【0015】
さらに、本発明は、駆動装置の新しい配置方法を提供することを目的としており、定速駆動運転に一般的な穏やかな起動方法やオンライン起動を行いにくい、同期していない長距離間をこの配置方法によって結ぶことができる。典型的な例としては、特に海等の、非常に近づきにくい遠隔地の駆動現場が挙げられる。
【0016】
本発明は、共存する電力系統から独立させて、互いにほぼ独立している電動機および発電機の各種組合せを起動および運転できるように、発電機を電動機に対して柔軟に配置するのに好適な新しい駆動配置方法を提供することを他の目的としている。また、本発明は、部分的に互いに独立して共存する電力系統、すなわち、アイランドモードの電力系統の運転方法を提供することを目的としている。アイランドモードで運転される電力系統では、非常に自由に各電力系統内の周波数を選択できる。これらは、各種電力変換方法を用いることにより電力交換が可能となり、それにより、アイランドモードで運転されている各電力系統内の発電量を増加できる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様は、タービンや燃焼機関等の機械的動力伝達装置から供給される電力により、圧縮機(1)やポンプ等の電動装置の起動および運転を行う方法であり、それによって電動装置が第1電気機械に機械的に連結され、機械的動力伝達装置が第2電気機械に機械的に連結される。ここで、上記方法は、
1)
第1電気機械および第2電気機械が非励起状態かつ停止状態
であるときに、第1電気機械を第2電気機械と電気的に相互接続し、
2)
前記第1電気機械および前記第2電気機械を励起し、
3)加速段階において、機械的動力伝達装置を用いて第2電気機械を加速することによって第1電気機械を加速し、
4)第1電気機械が所定の回転速度に達したら、第1電気機械を現場の電力網に同期させて、第1電気機械を電力網に接続する
ことを特徴としている。
【0018】
この方法によれば、発電機と電動機の間に連結された周波数変換器とは独立して、いつでも第1
電気機械を起動して駆動することが可能となる。
【0019】
本発明の第2の態様は、タービンや燃焼機関等の機械的動力伝達装置、外部電力系統から電力が与えられる周波数変換器、または、機械的動力伝達装置等の現場の電源から電力を供給することにより、圧縮機(1)やポンプ等の電動装置の起動および運転を行う方法であり、電動装置は第1
電気機械により駆動される。ここで、上記方法は、
1)加速段階において、
a)機械的動力伝達装置に連結され、また、第1
電気機械に電気的に相互接続されており、変換器として機能する第2
電気機械を加速するか、または、
b)周波数変換器から第1
電気機械に電力を供給する
ことによって、電動装置の電動機として第1
電気機械をゼロ、約ゼロ、または低速の状態から加速し、
2)第1
電気機械を現場の電力網に同期させ、その後、
3)加速段階後、
a)外部電力網、または
b)少なくとも1台の第2
電気機械に連結された少なくとも1基の機械的動力伝達装置
より電力が供給される現場の電力網を用い、電力網から電力を供給することにより第1
電気機械を運転し、これにより周波数変換器を他の作業に使用可能な状態とすることを特徴としている。
【0020】
好ましくは、周波数変換器を用いる場合は、第2
電気機械を接続するときや接続しているときは周波数変換器の接続を切るとよい。これにより、他の発電機/電動機の起動や他の目的に、周波数変換器を自由に用いることが可能となる。
【0021】
本発明の第1または第2の態様による好ましい実施形態においては、速度が約ゼロ以上の蒸気タービンを起動することにより第2
電気機械の加速を行う。この蒸気タービンは第2電気機関に機械的に連結されている。このため、起動時に周波数変換器を用いなくても済む。
【0022】
また、本発明の第1または第2の態様による好ましい実施形態においては、ガスタービンをその最低速度から定格速度まで加速することにより第2
電気機械の加速を行う。このガスタービンは第2電気機関に機械的に連結されている。このため、上記と同様に、起動時に周波数変換器を用いなくても済む。
【0023】
本発明の第2の態様による特に好ましい実施形態においては、周波数変換器を用いることにより、加速段階後、外部電力網からの電力を現場の電力網の特性に、または、現場の電力網からの電力を外部電力網の特性に適合させて、現場の電力系統に電力を供給するおよび/または現場の電力系統から電力を供給できるようにする。
【0024】
本発明の第3の態様は、少なくとも1台の機械装置を起動および運転するための起動および運転システムであって、機械装置は少なくとも1台の第1
電気機械に連結されて駆動され、変換器として機能する第2
電気機械に機械的に連結された機械的動力伝達装置により第1
電気機械に電力が供給され、第2
電気機械は1台または複数の第1
電気機械に独自に連結されるようになっている。これにより、システムは、第2
電気機械から第1
電気機械へ伝達された制御された電力により、第1
電気機械を加速させる構造となっている。
【0025】
本発明の第3の態様による好ましい実施形態においては、通常運転中は、定速、または変換器に対して同期する速度において機械装置は運転される。したがって、周波数変換器を上記変換器と機械装置の間に連結する必要がない。
【0026】
本発明の第4の態様は、少なくとも1台の圧縮機やポンプ等の機械装置を起動および運転するための起動および運転システムであって、機械装置は少なくとも1台の第1
電気機械に連結されて駆動され、上記システムは、
第2
電気機械に連結された機械的動力伝達装置を備え、第2
電気機械は1台以上の第1
電気機械に独自に電気的に接続されるようになっており、それにより第2
電気機械は加速段階や次の運転段階において変換器として機能し、さらに、上記システムは、
VFD(Variable Frequency Drive、可変周波数駆動装置)のような周波数変換器を備え、周波数変換器は1台以上の第1
電気機械に独自に連結されるようになっており、周波数変換器により加速段階において第1
電気機械を加速させたり、運転段階において第1
電気機械の運転を行い、これにより、
外部電力網または現場の電力網から周波数変換器に電力が供給されるようになっていることを特徴としている。
【0027】
本発明の第3または第4の態様による好ましい実施形態においては、電動機が圧縮機を駆動するが、この電動機を起動するための変換器の動作とは別に他の電気装置を平行利用できるようにするため、二重母線を少なくとも1ヶ所含む電力系統がシステムに備えられている。
【0028】
本発明のシステムの好ましい実施形態においては、第2
電気機械はタービン装置やディーゼルエンジン等により駆動される。
【0029】
また、本発明のシステムの好ましい実施形態においては、タービンにはガスタービンおよび/または蒸気タービンが備えられている。
【0030】
さらに、本発明のシステムの好ましい実施形態においては、第1
電気機械には電気同期機および/または電気誘導機関が備えられている。
【0031】
本発明の第4の態様による他の好ましい実施形態においては、現場の電力網からの電力を外部電力網の特性に適合させることができるように周波数変換器が構成されており、電力を現場から外部の電力網へ供給できるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】天然ガスを液化する冷媒圧縮機の最新式の駆動方法を示す図であり、通常、専用周波数変換器を駆動する。
【
図2】本発明に係わる方法を実施するための本発明の原理に基づいたLNG圧縮駆動回路を示す図である。
【
図3】本発明に係わるLNG圧縮駆動回路の第1実施形態のより詳細な系統図である。
【
図4】本発明に係わるLNG圧縮駆動回路の第2実施形態のより詳細な系統図である。
【
図5】異なる周波数で運転される共存する電力システムのさらに詳細な系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ここまで、本発明の最も重要な特徴について述べてきたが、以下、図を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【0034】
図1には、本発明の導入として現行の一般的な技術が示されている。
図1には複合サイクル発電(蒸気および電気を熱併給設備において発生させる)が示されており、電気可変速駆動装置(VSD)により電動機の速度が制御されている。冷媒圧縮機1の駆動軸10に機械的に連結されている電動機2により、圧縮機1が駆動される。電動機2の速度を制御するため、可変速駆動装置3を発電機4、5と電動機2の間に組み込んでいるが、この方法は一般的に知られている。ここで、可変速駆動装置は、VSD(Variable Speed Drive)またはVFD(Variable Frequency Drive;可変周波数駆動装置)とも呼ばれる。VFDは入力の交流信号を直流に変換し、異なる周波数の交流信号を発生する。VFDの電気出力信号の周波数により電動機の速度が制御され、VFDにより無限周波数制御が可能となり、これにより電動機の速度制御が可能となる。VSD/VFDを備えているため、電動機2および圧縮機1の速度を必要に応じて変えながら、タービン7および発電機5を比較的一定速度で運転できるようになっている。これらの原理は、様々な圧縮装置によく用いられている。
【0035】
ガス製造プラントの一部である天然ガスの液化には、十分な容量の圧縮機を駆動させるために数十MWの電力が必要であり、このため、例えばVFD等の構成要素は通常大型となり、設計、設置、および点検に関してかなりの費用が掛かる。
【0036】
図2は、本発明によるLNG圧縮駆動装置の構成の簡易さを示す図である。ここでは、圧縮機は好適な方法で起動されるようになっており、通常運転中はタービン速度と同期する速度で駆動されるように圧縮機を構成している。
図2に示すシステムに好適な運転方法を以下に述べる。ここでは、圧縮機の起動手順について特に詳細に述べる。
【0037】
図2は、冷媒圧縮機1を電動機2によって駆動する方法を説明する図である。送電網40を介して発電機4および/または発電機5からの電力により電動機2は作動する。この電力は可変速度/周波数駆動装置では使用されずに、直接伝達される。発電機4、5は、蒸気タービン6およびガスタービン7により、それぞれ駆動される。
【0038】
図3には、
図2に示す本発明の原理をより複雑なシステムに適用した場合の一実施形態が詳細に示されている。
図2において、冷媒圧縮機1A、1Bは電動機2A、2Bにより駆動され、電動機は圧縮機の駆動軸10A、10Bに機械的に連結されている。電動機は、例えば、2つの区分スイッチおよび電路遮断器(通常、ガス絶縁型開閉装置)50A、50Bからなる標準的な開閉装置または配電盤を介して、送電網40に接続されている。送電網40は、この例では2つの母線40a、40bから構成されている。
図3の例においては、蒸気タービン6により駆動される発電機4から、電力が電動機2A、2Bに供給される。発電機4は第2開閉装置50Bを介して送電網40に接続されており、第2開閉装置50Bは開閉装置50Aと同様なものとする。
【0039】
圧縮機1A、1Bを駆動する電動機2A、2Bの起動を行う発電機4の運転とは別に、他の電気設備を平行して用いることが可能なように、送電網40に二重母線型網を設けることが好ましい。この場合、母線40a、40bのどちらかを通して、発電機4、5a、5bを電動機2a、2bに接続することができる。
【0040】
送電網40は、母線接続線60を通して他の電力網に接続される。
【0041】
蒸気タービン6および発電機4に加えて、ガスタービン7A、7B、および連結して発電機5A、5Bをシステムに設ける。これらも同様に、電動機2A、2Bを駆動するのに用いられ、または、蒸気タービン6と協働させて電動機2A、2Bに電力を供給するのに用いられる。
【0042】
図4には、本発明によるLNG駆動装置の第2の実施形態の詳細が示されている。
図4に示す装置は、
図3に示す装置と原理が同様であるが、周波数変換器80がさらに備えられている点で異なっている。ここでは、周波数変換器を用いた従来の圧縮駆動装置を運転するように構成している。本形態では、周波数変換器80は直流リンクインターフェースであり、周波数変換器80によって第1送電網40Bと第2送電網40Aとが接続している。第1送電網40Bには、ガスタービン6A、6Bに機械的に連結された発電機4A、4Bが接続されており、第2送電網40Aには、電動機2Bおよび発電機5Aが接続されている。電動機2Bは圧縮機1Bに機械的に連結され、発電機5Aは蒸気タービン7Aに機械的に連結されている。
【0043】
起動時には、例えばガス圧縮機6Aおよび発電機4Aから、可変周波数の電力が周波数変換器80を通して電動機2Bに供給される。起動後は、電動機2Bは一定周波数で作動し、例えば、発電機4aから供給された電力の周波数60Hzで稼動する。
【0044】
この起動工程後は、母線接続線60や70を備えた同期バイパス回路が周波数変換器80の代わりとなる。すなわち、周波数変換器80の接続を切り、一方で、同期バイパス回路60または70によって第1および第2送電網40B、40Aを接続させる。これによって、起動させた電動機2Bを、一定周波数および一定電圧レベルのその場の送電網内に配置することができる。このとき、周波数変換器80は、他の電動機を起動させるために利用できる状態となっている。
【0045】
一例として、同期速度において大型の周波数変換器を、HVDC(高圧直流送電)Light接続器、HVDC Plus接続器、または、通常時は現場の駆動装置専用の同様なシステム装置、あるいは各種システム間接続器の一端として再使用してもよい。HVDC Light接続器は、例えばABB社により製造されており、HVDC Plus接続器は、例えばシーメンスAG社により製造されている。上記システム間接続器は、地域間を接続したり、電力市場のある他の離れた場所と接続するのに用いられる装置である。
【0046】
HVDC接続器は、例えば、離れた地域と電力の供給および受給の両方を行う場合には、発電の節約/余剰の視点から利用する。すなわち、ガスタービン駆動装置の数を削減することによってコストを低減できる。上記の発電機からの電力に加えて、または上記の発電機からの電力の代わりに、現場またはリモート接続器から起動時の電力を供給してもよい。
【0047】
ここまで、本発明によるLNG圧縮駆動装置の実施形態をいくつか述べてきたが、以下、電動機2を起動させる工程についてさらに詳細に述べる。
(第1起動方法)
【0048】
電気系統の周波数および電圧が可変の大型または超大型圧縮駆動装置の起動を、特に蒸気タービン駆動の発電機(
図3参照)を用いて行う場合において、
1.蒸気タービン駆動の発電機4を停止し(著しい負荷をかける前に、通常、蒸気タービンを暖機運転する)、個別の電動機2Aにより駆動される圧縮機1Aの起動を行う。発電機と電動機とを”アイランドモード(island mode)”で連結することが好ましい。すなわち、例えば、
図3に示すような二重母線回路の母線40a、40bのうち1つを利用して、他の装置から干渉されないようにこれら2つの装置を連結する。
2.次に、”停止状態”において発電機4および電動機2Aを電気的に接続し、他の電源から電力を供給してそれらの励磁システムを作動させる。
3.そして、タービン6、発電機4、電動機2A、および圧縮機1Aを含む系全体を同時に起動させる。発電機4および電動機2Aの励起過程中に蒸気タービン6の歯車を回転させる場合は、圧縮機1Aがそれに続いて起動する。
4.蒸気を流すと、蒸気タービン駆動の発電機4から周波数変換器と同様な出力の電気が得られ、系統4、2Aの全体が送電網40(図では母線40a)を介して電気的に相互接続され、それにより2つの同期装置4、2Aが滑らかに起動され加速される。
5.発電機4および電動機2Aである稼動された2つの同期装置4、2Aが定格速度に達したら、送電網40(母線接続線60、65)を介して系統2A、4の全体を他の電力系統と同期させることができる。
【0049】
また、上記方法は、電気的に相互接続された複数の同期装置、すなわち、電動機および発電機を半同時起動させるのにも用いることができる。上記方法は、遠隔地の孤立したガス田やパイプラインに接続していない小規模の石油および/またはガス田のLNG製造に非常に適しているといえる。この起動方法において、二軸または多軸ガスタービンを蒸気タービンの代わりに用いてもよい。
(第2起動方法)
【0050】
電気系統の周波数および電圧が可変の大型または超大型圧縮駆動装置の起動を、ガスタービン駆動の発電機(
図3参照)を用いて行う場合において、
1.はじめに、ガスタービン7Aにより駆動される発電機5Aを約60%または最低速度まで減速し、脱励起して、電動機2Aにより駆動される圧縮機1Aの起動に用いる。
2.次に、発電機5Aおよび電動機2Aを”非励起”状態で電気的に接続し、発電機の励磁システムを作動させて、誘導電動機として非励起同期装置を運転周波数の約60%で穏やかに起動させる。圧縮機を約60%の速度に加速するのに必要なトルクは、通常かなり限られており、このため、非同期時または誘導機の運転時において同期装置の制動巻線に電流を流し過ぎないようにすべきである。
3.”誘導電動機”が同期速度に近くなったら、誘導電動機を励磁して、所定の発電機との同期運転状態にする。
4.発電機および電動機である同期装置が定格速度に達したら、系全体を残りの電気系統と同期させることができる。
【0051】
この第2起動方法はかなり着実な起動方法であり、ブロック変圧器を用いた場合でも複数の電気的に相互接続された同期装置を同時起動させることができると考えられる。したがって、この方法では付加設備を柔軟に選択できる。
(第3起動方法)
【0052】
同期バイパスを用いた周波数制御による定格速度での起動において(
図4参照)、
1.同期速度運転で用いる同期バイパス60、70の接続を切り、周波数変換器80を電動機2Bと1台以上の発電機4A、4Bとの間に接続する。発電機4A、4Bより電力を供給して、電動機2Bの加速を行う。このとき、電動機2Bを停止状態から加速してもよい。
2.圧縮機1Bが定格速度に達したら、周波数変換器80の接続を切り、同期バイパス60、70を接続する。これにより、周波数変換器が系から離脱し、電動機が現場の送電網40a、40bにより駆動される。この結果、AC/DC/DC/AC変換器または周波数変換器80を、電動機2A等の他の電動機の起動や他の目的に自由に用いることができるようになる。
【0053】
この第3起動方法は、周波数変換器を1つ以上の目的に用いることが適している事業に好適である。HVDC Linkを介して他の電力系統と連動させるのが適している事業の場合、上記の構成を用いることにより、直流リンクの他の遠端とは独立させて定速圧縮駆動装置を起動させることが可能である(
図4参照)。この起動方法により発電機および電動機を従来のように起動してもよいが、各電動機専用の周波数変換器は不要である。したがって、周波数変換器の数を1台に低減できる。
【0054】
上記3つの方法は、特に、電気圧縮駆動装置を駆動するためのガスまたは蒸気タービンが機械系統にない場合の電気圧縮駆動装置を対象としている。しかしながら、同期速度運転は圧縮機だけに適しているわけではない。その主要原理は、他の装置の駆動にも同じように適用できる。図中にある前述の冷媒圧縮機1を、ガス圧縮機、ポンプ、またはガスタービン等の大型の始動電動機が必要な他の装置に代えて、上述の定速駆動およびそれに関連する起動方法を用いればよい。前述の起動方法では、実際の出力範囲が適していれば、誘導電動機を同期電動機の代わりに用いてもよい。
【0055】
一例であるが、上記の電気により定速運転を行う方法で説明した原理と同じ原理により、適切な電気装置を系統上に備えた産業用一軸ガスタービン駆動装置を、速度ゼロからガスタービンのラム速度に加速してもよい。
【0056】
図5には、
図4に示したシステムと同様のシステムが示されており、
図4のシステムよりも多少複雑になっている。
【0057】
図5のシステムには、4つの母線40a、40b、40c、40dがあり、そこに複数の発電機4a−e、5a−b、および電動機2a−fが接続可能となっている。発電機および電動機は、それぞれ少なくとも母線40a−dのうちの2つと接続可能であり、4つの母線40a−dは、母線接続線60a−bおよび70a−bを通して他の母線40a−dに接続可能となっている。さらに、電動機2a−f以外の電力消費装置に電力を供給したり、現場の電力供給系統90で発生した余剰電力を利用するため、母線は電力供給系統90に接続されている。また、交流電力をやりとりするため、母線40a−dは外部電力供給系統100に接続可能とされている。外部電力供給系統100としては、国立または地方電力供給系統等が挙げられる。
【0058】
母線40a−dが相互接続されていない場合は、それぞれ異なる周波数で利用できる。例えば、図に示される母線40aおよび40cを56Hzで利用し、母線40bおよび40dを61Hzで利用することができる。このとき、同じ周波数で利用している母線は相互接続してもよい。このような柔軟性により、複数の圧縮機を異なる運転速度で稼働できるようになる。したがって、圧縮機の速度を変えなくても外部需要に応じてLNG等を供給することができる。
【0059】
母線40a−dのいずれかと現場系統90との間に電力を供給する場合は、直流リンク91を介して行われ、母線40a−dの周波数と現場系統の周波数を異ならせることもできる。
【0060】
また、発電機/電動機を起動させるため、リンク92に示されるように、現場系統/現場網90から周波数変換器80に電力を供給してもよい。
【0061】
4つ以上の母線を用いたシステムも可能である。
【0062】
上記全ての例において、本発明の原理から逸脱しない範囲で駆動装置(タービン)および被駆動装置(圧縮機)を他種の装置と取り換えてもよく、例えば、ディーゼルエンジンを駆動装置とし、ポンプを被駆動装置としてもよい。
【0063】
適用可能な装置の全部を詳細には説明してはいないが、同様の定速駆動技術およびその方法を圧縮機やガスタービン以外の装置に適用するのに、そのような構成を妨げる装置固有の特性がないならば、当業者にとっては上記の説明で十分であると考えられる。上記の構成および方法は、軸に取り付けられ、電気機器やガスタービン等によって通常駆動されるあらゆる種類の回転装置の稼動にも同様に用いることができる。
【0064】
タービンや発電機それぞれから発生する電力が第1
電気機械に必要な電力よりも多い場合は、他の電力系統/電力網に供給するのに適している直流を周波数変換器80を用いて生成すればよい。また、外部系統100のような外部の交流電力網に適する電力を生成するのに周波数変換器80を用いてもよい。
【0065】
以上、LNGプラントを典型例に挙げて、圧縮装置が電気駆動定速運転に適していることを述べてきた。専用のVSD装置を電気液化圧縮駆動装置から取り除く、または専用の蒸気および/またはガスタービンを機械圧縮駆動装置から取り除くことにより、コスト/重量/占有面積に対する著しい効果が期待される。
【0066】
また、点検頻度や維持費、建設費等の削減のために、定速運転に適している一般的なパイプラインの昇圧圧縮機駆動装置および他の大型駆動装置についても同様な方法を用いることができる。
【0067】
ここで述べた3つの同期速度の考えは、新規計画も含め、既に決定されているが中途でまだ稼動していないLNGプラントの計画にも適用可能である。さらに、過渡電圧変動/過渡電圧ディップに対しては、同等の周波数変換器により制御される駆動装置よりも定速運転のほうがより確実である。
【0068】
所望の設備や、現場、地方、または国立の電力網との任意の接続部へ供給される電力は、周波数が固定されている。しかしながら、本発明で概説した原理に基づく大型および/または遠隔地の定速駆動装置の起動および運転が可能な電気系統では、上記周波数の影響を受けずに、電気定速駆動装置を可変周波数の電力システムにおいて運転可能である。