【実施例1】
【0012】
図1は本発明による液化ガス供給システムの一実施例を示すシステム構成図である。
図1に示されるように、液化ガス供給システム10は、液化ガス貯槽20と、加圧装置90と、液化ガス供給配管経路(供給ライン)40と、気相部連通経路50とを有する。液化ガス貯槽20は、被供給容器30に比べて多量の液化ガスを貯蔵する容量の大きい大型タンクである。
【0013】
液化ガス供給配管経路40は、上流側端部が液化ガス貯槽20の液相部に接続される。また、液化ガス供給配管経路40の下流側端部は液化ガスが供給される被供給容器(燃料タンク)30の接続口32に接続されるホース60を有する。ホース60の基端には、所定以上の張力が作用した場合に分離する安全カップリング62が設けられ、ホース60の先端には充填開始時に開弁操作される手動開閉弁64、接続カップリング66が設けられている。
【0014】
被供給容器30は、液化ガスを燃料とするエンジンが搭載された車両70に設けられている。また、被供給容器30と接続口32とを連通する配管34には、手動開閉弁36が設けられている。尚、接続口32が接続カップリング66と非接続時に内部通路(開口部)を閉とする弁構造を有する場合は、手動開閉弁36を必ずしも設ける必要はない。
【0015】
尚、自動車などの車両用燃料として使用される液化ガスとして、例えば、ブタン・プロパンなどを主成分とするLPG(Liquefied petroleum gas)、酸素含有率が高く黒煙が出ないディーゼル燃料として使用されるDME(ジメチルエーテル)がある。この種の液化ガスは、気体燃料を圧縮することにより液化できるため、上記液化ガス貯槽20及び被供給容器30内においては、液相部と気相部とが併存しており、容器内の圧力は、温度に応じて変化する。
【0016】
液化ガス供給配管経路40は、ディスペンサ80を通して被供給容器30に接続されている。また、液化ガス供給配管経路40の液化ガス貯槽20とディスペンサ80との間を連通する配管42には、液化ガスを圧送する加圧手段としてのポンプ90が設けられている。
【0017】
また、液化ガス供給配管経路40のうちディスペンサ80の筐体内部に配された配管44には、セパレータ100と、容積式流量計110と、背圧弁120と、電磁弁からなる第1開閉弁130とが設けられている。セパレータ100は、液化ガス供給配管経路40により供給される液化ガスから気泡を分離する気液分離装置である。また、セパレータ100に連通された配管44には、液化ガスの温度を測定する温度センサ102が設けられている。
【0018】
容積式流量計110は、液化ガス供給配管経路40により供給される液化ガスの流量(供給流量)を計測し、計測した容積流量に応じた流量パルスを出力する。また、容積式流量計110は、所謂ピストン式流量計とも呼ばれる流量計であり、例えば、特開平8−94408号公報にみられるように4つのピストンが90°の位相差で往復動し、各ピストンの往復動に伴う回転力が回転軸に伝達され、回転軸の回転角に応じた容積分(ピストンの移動により押し出された液化ガスの体積)に比例する流量パルスを生成する流量パルス生成部を有する。従って、容積式流量計110においては、回転軸の回転角に応じてピストンによって吐出された容積分の体積流量に比例する流量パルスを生成するため、流量パルスを積算することにより液化ガスの供給量を演算することが可能になる。なお、本実施例においては、容積式流量計110により液化ガスの流量を計測しているが、これに限られるものではなく、例えば、渦流量計やタービン式流量計など流量計測方式の異なる他の流量計を用いてもよい。
【0019】
また、液化ガス供給配管経路40のうち第1開閉弁130とホース60との間を連通する配管46には、気相部連通経路50の一端(上流側端部)が分岐接続されている。気相部連通経路50の他端(下流側端部)は、第2開閉弁170を介してベーパ回収経路140のマニホールド150に連通されている。マニホールド150は、ベーパ回収経路140を介して液化ガス貯槽20の気相部と連通されており、液化ガス貯槽20の圧力P1が導入されている。
【0020】
マニホールド150には、液化ガス貯槽20の圧力P1を検知する第1圧力検知器160が設けられている。さらに、マニホールド150には、容積式流量計110の安全弁112の排出管114と、背圧弁120の背圧管122とが連通されている。
【0021】
また、気相部連通経路50には、電磁弁からなる第2開閉弁170と、第2圧力検知器180とが設けられている。第2開閉弁170は、燃料供給開始前の被供給容器30と液化ガス貯槽20との気相圧力差が所定圧力以上である場合に開弁される。このように第2開閉弁170を開弁することにより被供給容器30内のベーパが液化ガス貯槽20に回収され、被供給容器30の圧力を減圧する。第2圧力検知器180は、液化ガス供給開始前に被供給容器30の圧力を検出するため、前記気相部連通経路50に設けて良いし、あるいは、第1開閉弁130より下流側の配管46に設けても良い。
【0022】
ディスペンサ80は、上記各機器の他に、制御装置200と、記憶部210と、表示器220と、供給開始スイッチ222と、供給終了スイッチ224と、圧力計230とが設けられている。制御装置200は、液化ガス供給制御手段201と、圧力差演算手段202と、圧力判定手段203と、液化ガス回収手段204と、回収量演算手段205と、供給量補正演算手段206とを有する。
【0023】
液化ガス供給制御手段201は、第1圧力検知器160及び第2圧力検知器180の検知圧力に基づいて第1開閉弁130及び第2開閉弁170を開閉制御する制御プログラムを実行する制御手段である。
【0024】
圧力差演算手段202は、被供給容器30に液化ガスを供給する前に、第2圧力検知器180により検知された被供給容器30の圧力P2から第1圧力検知器160により検知された供給圧力P1を差し引いた圧力差P2−P1を演算する制御プログラムを実行する制御手段である。
【0025】
圧力判定手段203は、圧力差演算手段202により演算された圧力差P2−P1が予め設定された所定値ΔPより高い場合、被供給容器30の圧力P2では被供給容器30への液化ガスの適切な供給流量でのガス充填が不可能と判定し、圧力差P2−P1が予め設定された所定値ΔPより低い場合は、被供給容器30の圧力P2が適切な液化ガスの充填が可能と判定する制御プログラムを実行する制御手段である。この圧力差P2−P1を求めることにより、配管抵抗などによる圧力損失も考慮し、ポンプ90の吐出差圧により適切な液化ガス充填の可否の判定を行う。
【0026】
液化ガス回収手段204は、圧力判定手段203により被供給容器30への液化ガスの充填が不可能であると判定された場合、第2開閉弁170を開弁させて被供給容器30の気相部のベーパを液化ガス貯槽20に回収して被供給容器30の圧力を減圧する制御プログラムを実行する減圧手段である。
【0027】
回収量演算手段205は、被供給容器30から液化ガス貯槽20に回収された液化ガスの回収量を演算する制御プログラムを実行する制御手段である。
【0028】
供給量補正演算手段206は、流量計110により計測された液化ガスの供給量から回収量演算手段205により演算された回収量を減算する制御プログラムを実行する制御手段である。
【0029】
記憶部210は、上記制御装置200において実行される各制御手段の制御プログラムを格納している。また、記憶部210には、容積式流量計110により計測された液化ガスの供給量と、第1圧力検知器160及び第2圧力検知器180により検知された圧力値とが格納されている。
【0030】
表示器220は、例えば、液晶モニタなどから構成されており、液化ガスの供給量、被供給容器30の充填圧力、液化ガス温度等の他に操作者に操作手順や注意事項など表示して報知する。
【0031】
圧力計230は、セパレータ100に連通された第1圧力導入配管232と、マニホールド150に連通された第2圧力導入配管234とが連通されており、セパレータ100における供給圧力(ポンプ圧力)P3とマニホールド150に供給された圧力P1との圧力とを検出して双針表示する。
【0032】
作業者は、接続カップリング66を車両70の被供給容器(燃料タンク)30の接続口32に接続した後、ホース60先端の手動開閉弁64を開弁させ、供給開始スイッチ222をオンに操作する。これで、第2圧力検知器180により被供給容器30の圧力P2が検知されると共に、制御装置200による燃料供給のための制御処理が開始される。また、作業者は、被供給容器30への液化ガスが供給開始された場合、圧力計230の指針により圧力差(P3−P1)を確認することができる。
【0033】
また、セパレータ100には、気液分離されたベーパが所定量に達すると自動的にベーパ回収経路140に流出するように開となり、流出後に自動的に閉となるフロート弁(図示せず)を内蔵しており、この弁と手動開閉弁251(常時開)とが連通しベーパマニホールド150に接続されている。また、第1圧力導入配管232、第2圧力導入配管234、液化ガス排出配管240の夫々には手動式開閉弁252〜254が設けられている。
【0034】
尚、通常、手動式開閉弁251、252、253は通常開弁されており、手動式開閉弁254は閉弁されている。
【0035】
ここで、
図2を参照して上記のように構成された液化ガス供給システム10における液化ガス供給のための制御処理について説明する。
図2はディスペンサ80の制御装置200が実行する制御処理を説明するためのフローチャートである。
【0036】
先ず、車両70がディスペンサ80の前に到着すると、作業者はホース60を伸ばして接続カップリング66を車両70の被供給容器(燃料タンク)30の接続口32に接続する。続いて、作業者は、ホース60先端に設けられた手動開閉弁64を開弁させてホース60と被供給容器30とを連通させる。この後、作業者は、ディスペンサ80の供給開始スイッチ222をオンに操作する。
【0037】
図2に示されるように、S11において、供給開始スイッチ222がオンに操作されると、S12に進み、液化ガス供給開始前に第1圧力検知器160により検知された液化ガス貯槽20の圧力P1及び第2圧力検知器180により検知された被供給容器30の圧力値P2を読み込む。次のS13では、第2圧力検知器180により検知された被供給容器30の圧力P2から第1圧力検知器160により検知された供給圧力P1を差し引いた圧力差P2−P1を演算し(圧力差演算手段202)、上記のように演算された圧力差P2−P1が予め設定された所定値ΔP1より小さい値か否かを判定する(圧力判定手段203)。
【0038】
S13において、圧力差P2−P1が予め設定された所定値ΔP1より大きい場合(NOの場合)、被供給容器30の圧力が適切な充填可能な圧力値よりも高く液化ガスの充填に支障があると判定し、S14に進む。S14では、第1圧力検知器160により検知された液化ガス貯槽20の圧力P1、及び第2圧力検知器180により検知された被供給容器30の圧力値P2を記憶部210に記憶する。
【0039】
続いて、S15では、被供給容器30の圧力値P2が適切な充填可能な圧力値よりも高いので、第2開閉弁170を開弁させる(液化ガス回収手段204:減圧手段)。これにより、第1開閉弁130から接続カップリング66までの間を連通するホース60、配管46、気相部連通経路50に残っていた液化ガスは、ベーパ化しながらマニホールド150、ベーパ回収経路140を通過して液化ガス貯槽20に回収される。
【0040】
また、被供給容器30の気相部に溜った液化ガスのベーパがホース60、配管46、気相部連通経路50、マニホールド150、ベーパ回収経路140を通過して液化ガス貯槽20の気相部に回収される。そのため、被供給容器30のベーパが回収されると共に、被供給容器30の圧力P2が減圧される。
【0041】
次のS16では、被供給容器30からのベーパ回収後の第1圧力検知器160により検知された液化ガス貯槽20の圧力P12、及び第2圧力検知器180により検知された被供給容器30の圧力値P22を読み込む。
【0042】
続いて、S17に進み、第2圧力検知器180により検知された被供給容器30の圧力P22から第1圧力検知器160により検知された供給圧力P12を差し引いた圧力差P22−P12を演算し、上記のように演算された圧力差P22−P12が予め設定された所定値ΔP2より大きい値か否かを判定する(ΔP1>ΔP2)。
【0043】
S17において、圧力差P22−P12が予め設定された所定値ΔP2より大きい値の場合(NOの場合)、被供給容器30の圧力P22が液化ガス貯槽20の圧力P12よりも所定値ΔP2以上高いので、上記S16の処理に戻り、S16〜S17の処理を繰り返す。やがて、被供給容器30の圧力P22が減圧されて圧力差P22−P12が所定値ΔP2以下に低下した時点で第2開閉弁SV2を閉弁し(S18)、被供給容器30からのベーパ回収を停止する。
【0044】
S18では、第2開閉弁170を閉弁させて被供給容器30の減圧操作を止める。すなわち、この時点で液化ガス貯槽20の圧力P12に対して被供給容器30の圧力P22が液化ガス充填に支障がない圧力に減圧されたため、被供給容器30のベーパ回収を止めて、被供給容器30に液化ガスを充填する通常の液化ガス供給処理を効率良く行なうことが可能になる。
【0045】
次のS19では、第2開閉弁170が閉弁した後の第2圧力検知器180により検知された被供給容器30の圧力値P23を読み込む。続いて、後述のS21の処理に進む。
【0046】
ここで、通常の液化ガス供給処理を行なう前に被供給容器30から液化ガス貯槽20に回収されたベーパの回収量QCを演算して流量計110により計測された液化ガスの供給量から差し引いて真の供給量Q0を演算する供給量補正演算処理について説明する。
【0047】
供給量補正演算処理によれば、ホース60の接続カップリング66を車両70の接続口32に接続した時点から後述のS32に至る充填プロセスが完了するまでの間に流量計110により計測された液化ガスの供給量から回収されたベーパ量を液化ガス量に換算し、S21以降の充填により被供給容器30への液化ガスの充填量から減算することにより真の供給量Q0を演算することが可能となる。
【0048】
ここで、供給量補正演算処理に必要なデータ項目(A)〜(G)は、以下の通りである。
(A)被供給容器30への液化ガス供給開始に際し、接続カップリング66を車両70の接続口32に接続した時点の被供給容器30の圧力をP21とする。
(B)上記(A)と同時に測定した供給開始前の液化ガス貯槽20の圧力をP1とする。
(C)第2開閉弁170を開弁したことにより、第1開閉弁130及び第2開閉弁170からホース60先端の手動開閉弁64までの液化ガス、及び被供給容器30のベーパが液化ガス貯槽20に流出され、圧力差P2−P1が液化ガス供給に支障がない圧力差ΔP1以下であるΔP2以下となり、第2開閉弁170を閉弁した時点で測定した被供給容器30の圧力をP23とする。
(D)流量計110により計測されたみかけの供給量をQとする。
(E)第1開閉弁130及び第2開閉弁170の下流側(被供給容器30側)から配管46、気相部連通経路50、ホース60、手動開閉弁64までの管路の内容積をVHとする。
(F)被供給容器30に供給される液化ガスの飽和蒸気圧力と密度との関係データ
(G)被供給容器30に供給される液化ガスの液密度と温度との関係データ
(H)
図2のフローチャート中、S24において行なう温度補正の基準温度における液化ガスの密度をρLとする。
【0049】
次に、演算内容について説明する。
【0050】
先ず、ホース60の接続カップリング66を車両70の接続口32に接続した時点で、第2開閉弁170を開弁し、圧力差P2−P1が液化ガス供給に支障がない圧力差ΔP1(或いはΔP2)以下に低下し、第2開閉弁170を閉弁させるまでに被供給容器30側から液化ガス貯槽に回収される液化ガスは、大別すると以下のようになる。
(I)第1開閉弁130及び第2開閉弁170の下流側(被供給容器30側)から配管46、気相部連通経路50、ホース60、手動開閉弁64までの管路の液化ガス
(J)被供給容器30から流出される液化ガスのベーパ
上記(I)の液体積量はVHである。このVHは装置の設計製作により決まる既知の値である。
上記(J)の体積をVVとする。
(K)第2開閉弁170を開弁したことにより、液化ガス貯槽20に流入された液化ガスの体積VHと、被供給容器30から流出されたベーパの体積VVとの合計である総体積量をVRとする。
【0051】
上記被供給容器30から流出されたベーパ体積量VVは、次式により求まる。
VV=V1(P21−P23)/P21・・・(式1)
ここで、V1は被供給容器30の液化ガス供給開始前の気相部体積である。従って、気相部体積V1は、車両70の走行距離に応じて消費される液化ガスの残量によって変動する。
【0052】
上記ベーパ体積量VVは、元々被供給容器30に入っていたベーパであり、このベーパが液化ガス充填に先立ち被供給容器30から液化ガス貯槽側に還流するので、被供給容器30への液化ガスの真の充填量を求める上では上記ベーパ体積量VVのベーパ体積を液量に換算し被供給容器30への液充填量から差し引く必要がある。
【0053】
被供給容器30への液化ガス供給前に第2開閉弁170を開弁し、圧力差P2−P1が液化ガス供給に支障がない圧力差ΔP1(或いはΔP2)以下となり、第2開閉弁170を閉弁させた時点では、第1開閉弁130及び第2開閉弁170の下流側(被供給容器30側)から配管46、気相部連通経路50、ホース60、手動開閉弁64までの管路の液化ガスが液化ガス貯槽20に押し出され、被供給容器30から流出されたベーパに置き換わっている。この第1開閉弁130及び第2開閉弁170の下流側の配管経路に流出されたベーパは、ポンプ90を起動して液化ガスの供給が開始されると、被供給容器30に押し戻される。
【0054】
従って、第1開閉弁130及び第2開閉弁170の下流側の配管経路に流出されたベーパ量は、前記差し引くべきベーパ体積量VVから差し引く必要がある。よって、真の供給量を求めるために差し引くべきベーパ体積VVCは、次式となる。
VVC={V1(P21−P23)/P21}−VH・・・(式2)
もともと、第1開閉弁130及び第2開閉弁170の下流側(被供給容器30側)から配管46、気相部連通路50、ホース60、手動開閉弁64までの管路にあった液化ガスは第2開閉弁170の開弁に伴い液化ガス貯槽20側にベーパ回収管路140を通じて流れ込む。従って、真の供給量を求めるためには、S21以降の液化ガス充填で計量した液化ガス量から上記管路内に残留する液化ガス量を差し引く必要がある。
【0055】
この真の供給量を求めるために差し引くべき液体積量はVHである。
【0056】
次に液化ガスを被供給容器30に充填する場合の供給量について考える。液化ガスの容器への充填は、保安上の観点から一定量の気相部を設けることが義務づけられている。一般的には、容器容量の85%を満量(満タン)として液化ガスの供給量を制御している。
【0057】
また、液化ガスの再充填については、通常、車両70の被供給容器30の残量が所定値以下になったときに被供給容器30への充填がディスペンサ80により行なわれるため、被供給容器30の残量がゼロということはなく、少ない場合でも容器容量の15%程度の残量がある。この残量の場合の最大液化ガス供給量は、容器容量の70%となる。
【0058】
また、最小供給量は、残量が容器容量の60%程度の場合で、このときの液化ガス供給量は容器容量の25%程度となる。従って、ディスペンサ80による液化ガスの供給量は、被供給容器30の容量の25%〜70%程度の範囲内と考えられる。
【0059】
また、被供給容器30への液化ガス供給前に第2開閉弁170を開弁し、圧力差P2−P1が液化ガス供給に支障がない圧力差ΔP1(或いはΔP2)以下となり、第2開閉弁170を閉弁させるまでの間に被供給容器30から液化ガス貯槽20に回収された液化ガスのベーパは、液に換算した場合、体積が1/70程度になる。そのため、ベーパ体積の計測誤差は、流量計110による液体積の計測誤差に対して70倍が許容されることになる。この観点から上記容器容量に対する供給量の範囲を考慮すると、被供給容器30の供給開始前の気相部体積V1は次式と表せる。
V1=KQ・・・(式3)
ここで、Kは上記充填液量の範囲から求まる最適な補正係数である。
【0060】
従って、ベーパ体積VVCは、上記補正係数Kを考慮すると、次式により求まる。
VVC={KQ(P21−P23)/P21}−VH・・・(式4)
次に、被供給容器30への液化ガス供給前に第2開閉弁170を開弁し、圧力差P2−P1が液化ガス供給に支障がない圧力差ΔP1(或いはΔP2)以下となり、第2開閉弁170を閉弁させるまでの間に被供給容器30から液化ガス貯槽20に回収された液化ガスのベーパの平均圧力P2Hは、次式により求まる。
P2H=(P21+P23)/2・・・(式5)
圧力P2Hにおける液化ガスの飽和蒸気の密度をρVとすると、被供給容器30への液化ガス供給前に第2開閉弁170を開弁し、圧力差P2−P1が液化ガス供給に支障がない圧力差ΔP1(或いはΔP2)以下となり、第2開閉弁170を閉弁させるまでの間に被供給容器30から液化ガス貯槽20に回収された液化ガスのベーパのうち、真の供給量Q0を求めるために差し引くべきベーパ量VCCの質量値GVVCは、次式により求まる。
GVVC=VVC×ρV・・・(式6)
次に被供給容器30に供給される液化ガスの液密度をρL(前述の(H)の値)とすると、質量GVVCの液換算体積値QCVは、次式により求まる。
QCV=GVVC/ρL・・・(式7)
従って、真の供給量Q0を求めるために差し引くべき液化ガス貯槽20に回収された液化ガスとベーパのトータル値QCは、次式のとおりとなる。
QC=QCV+VH・・・(式8)
このように、S30においては、上記(式7)によりベーパ回収量の液換算値QCを演算する。
【0061】
次に、再び
図2のフローチャートに戻って説明する。
図2の上記S13において、圧力差P2−P1が予め設定された所定値ΔP1より小さい場合(YESの場合)、被供給容器30の圧力P2が液化ガスの充填に支障がないと判定し、S21に進む。また、上記S19において圧力P23を読み込んだ後にS21に進む。
【0062】
S21では、ポンプ90を起動させて液化ガス貯槽20の液化ガスを加圧して液化ガス供給配管経路40に吐出させる。続いて、S22に進み、第1開閉弁130を開弁させる。これにより、ポンプ90により圧送された液化ガスは、配管42、セパレータ100、流量計110,背圧弁120、第1開閉弁130、配管46、ホース60、手動開閉弁64、接続カップリング66、接続口32、配管34、手動開閉弁36を介して被供給容器30に充填される。
【0063】
次のS23では、流量計110により検出された流量パルスを積算して供給量Q(体積流量)を計測し、供給量の計測値を記憶部210に記憶する。上記S21〜S23の処理は、液化ガス供給制御手段201によって実行される。
【0064】
S24では、温度センサ102により測定された液化ガスの測定温度を読み込み、液化ガスの液密度と温度との関係データに基づいて供給量に対する温度補正演算を行なう。次のS25では、一定温度に換算された液化ガス量供給量QGを演算する。
【0065】
続いて、S26に進み、供給終了スイッチ224がオンに操作されたか否かをチェックする。S26において、供給終了スイッチ224がオンに操作されないときは(NOの場合)、S27に進む。また、S26において、供給終了スイッチ224がオンに操作されたときは(YESの場合)、後述するS30に進む。
【0066】
次のS27では、流量計110から流量パルスが出力されたか否かをチェックする。S27において、流量計110から流量パルスが出力されないときは(YESの場合)、液化ガスの供給が停止しているものと判断してS28に進む。また、S27において、流量計110から流量パルスが出力されたときは(NOの場合)、上記S23の処理に戻り、S23以降の処理を再度実行する。
【0067】
S28では、液化ガスの供給停止時間Tの計時を開始する。続いて、S29に進み、液化ガスの供給停止時間Tが予め設定された所定停止時間(供給停止検出時間)を越えたか否かをチェックする。S29において、液化ガスの供給停止時間Tが予め設定された所定停止時間を越えないうちに流量パルスが出力されたときは(NOの場合)、今回の流量パルスの停止は、一時的なもの、或いは、被充填容器30への低流量での液化ガスの供給が継続しているものであり、被充填容器30への液化ガスの充填が終了していない(充填継続中である)ものと判断し、上記S23の処理に戻り、S23以降の処理を再度実行する。
【0068】
また、S29において、液化ガスの供給停止時間Tが予め設定された所定停止時間を越えたときは(YESの場合)、被充填容器30に内蔵され、当該被充填容器30内の液化ガスが所定量に達した場合にそれ以上の被充填容器30への液化ガスの充填を防止するための過充填防止弁(図示せず)が閉止したことにより液化ガスの供給が停止していること、即ち、被充填容器30への充填が終了したと判断し、S30の処理に進む。S30では、前述の演算により液化ガス貯槽20に回収されたベーパの回収量QCを演算する(回収量演算手段205)。続いて、S31に進み、液化ガスの供給量Qからベーパ回収量の液換算値QCを差し引いて被供給容器30に充填された真の供給量Q0を演算し、演算された供給量Q0を表示器220に表示する(供給量補正演算手段206)。続いて、S32に進み、第1開閉弁130を閉弁させて今回の液化ガス供給処理を終了する。
【0069】
この後、作業者は、ホース60先端に設けられた手動開閉弁64を閉弁させ、さらにホース60先端の接続カップリング66を被供給容器30の接続口32から分離させてホース60及び接続カップリング66をディスペンサ80に戻す。
【0070】
従って、被供給容器30の圧力P2が温度上昇により高くなっている場合には、第2開閉弁170を一時的に開弁させることで被供給容器30のベーパを液化ガス貯槽20に回収すると共に、被供給容器30の圧力P2を減圧して液化ガスの供給効率を高めて供給時間を短縮することが可能になる。さらに、液化ガス貯槽20に回収された被供給容器30のベーパ量を液量に換算して流量計110により計測された流量計測値(体積流量)からベーパ量に相当する液量を差し引いて被供給容器30に供給された真の供給量Q0を正確に表示することが可能になる。