【実施例】
【0066】
実施例1〜5
本発明のナノ分散体を以下の表1に説明する。
【表1】
【0067】
手順
薬剤、硫酸コレステリル、カプリル酸、およびPVP K−30をバイアル中に正確に秤量した。
内容物を、攪拌および45℃で加熱しながら、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に溶解させ、溶液を得た。
溶液を、0.2μPVDFメンブランフィルターに通して濾過した。
次いで、ブドウ糖溶液(5%)を、薬剤の溶液を収容しているバイアルにゆっくりと加え、穏やかに振盪すると、透明から半透明なナノ分散体を得た。
ナノ分散体のpHを、pH計(Mettler Toledo−seven easy)を使用して確認する。
ナノ分散体の粒径を、粒径分析器(Nano−ZS、Malvern)により測定する。
観察された組成物の外観、pH、および粒径を、以下の表2にまとめる。
【0068】
【表2】
【0069】
本発明のナノ分散体が物理的に安定であり、室温で24時間保存時に、実質的な凝集も製剤の外観の変化も全くないことが分かった。
【0070】
これらの実施例のナノ分散組成物は、150mg/100mlのパクリタキセルを含む。70kgの人へのおよそ300mgのパクリタキセルのヒト投与量には、200mlの各ナノ分散組成物を患者に投与できる。したがって、20から80mgの硫酸コレステリル、25から100mgのカプリル酸、65から250mgのPVP、および約300mgのエタノールが、実施例1から5のパクリタキセル組成物の単一の成人投与量で与えられるであろう。このように、本発明の組成物は、活性薬剤と同時投与される賦形剤の量が非常に少ないナノサイズの粒子を提供する。
【0071】
以下の実施例6〜7に記載されている医薬組成物は、患者への投与前に本発明のナノ分散体を得るために、希釈剤(5w/v%ブドウ糖溶液)により数倍に希釈する必要のある濃縮溶液である。
【0072】
本発明は特定の態様および用途の点で記載されてきたが、当業者は、本教示に照らして、特許請求された発明の精神から逸脱せずに、またはその範囲を超えることなく、追加の態様および改良を生み出せる。本発明の上述の態様、特に「好ましい」態様が、単に本発明の実施の可能性のある例に過ぎず、本発明の原理の明確な理解のために述べられているのみであることを強調すべきである。
【0073】
したがって、本明細書の図面および説明が、本発明の理解を容易にするための例示のために好ましく、その範囲を限定すると解釈すべきでないことが理解できよう。
【0074】
実施例6〜7
タキサン誘導体の濃縮溶液としての本発明の医薬組成物を、以下の表3に説明する。
【表3】
【0075】
手順
薬剤、硫酸コレステリル、カプリル酸、およびPVP K−30をガラスバイアル中に正確に秤量した。
内容物を、攪拌および45℃で加熱しながら、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に溶解させ、濃縮薬剤溶液を得た。
溶液を、0.2μPVDFメンブランフィルターに通して濾過した。
実施例6の溶液をバイアル(60mgの薬剤を含むバイアルあたり1グラム)に満たし、安定性のために充填した。
安定性試料を、ナノ分散体の形態で分析した。ブドウ糖溶液(5w/v%)(40ml)を、薬剤濃縮液(60mg薬剤)を収容するバイアルに、穏やかに攪拌しながらゆっくりと加え、1.5mg/mlの希釈度を有する薬剤の透明から半透明のナノ分散体を得た。ナノ分散体を以下の試験で分析した:以下の表4に記載の外観、薬剤のアッセイ、pH(Mettler Toledo−seven easy、pH計)、および粒径(Nano−ZS、Malvern粒径分析器)。
【0076】
【表4】
【0077】
パクリタキセルのアッセイには3ヶ月間全く変化がなく、製剤が化学的に安定であると推定された。また、本発明の組成物が物理的に安定で、保存時の実質的な凝集も組成物の外観の変化も全くないことが分かった。
【0078】
実施例8
PVP K−12を利用する本発明の医薬組成物を、以下の表5に説明する。ナノ分散体の調製手順は、実施例1〜7と同じである。
【0079】
【表5】
【0080】
組成物の外観、pH、および粒径を観察し、以下の表6にまとめる。
【表6】
【0081】
本発明の組成物が物理的に安定であり、室温で24時間保存時に、実質的な凝集も組成物の外観の変化も全くないことが分かる。
【0082】
実施例9
タキサン誘導体の濃縮溶液としての本発明の組成物を、以下の表7に説明する。
【0083】
【表7】
【0084】
安定性試料は、以下に記載のとおり分析し、安定性データを以下の表8にまとめる。薬剤のアッセイは、濃縮薬剤溶液で実施した。他の観察には、ブドウ糖溶液(5w/v%)(40ml)を、薬剤濃縮液(60mgの薬剤)を収容しているバイアルに、穏やかに攪拌しながらゆっくりと加え、希釈度1.5mg/mlの薬剤の透明から半透明のナノ分散体を得た。次いで、ナノ分散体を以下の試験で分析した:外観、pH(Mettler Toledo−seven easy、pH計)、および粒径(Nano−ZS、Malvern粒径分析器)。
【0085】
【表8】
【0086】
パクリタキセルのアッセイに3ヶ月間全く変化がなく、製剤が保存時に化学的に安定であることが推定された。また、本発明の組成物が物理的に安定であり、種々の保存条件で保存時に、実質的な凝集も製剤の外観の変化も全くないことが分かる。
図4−aは、初期のナノ分散体の粒径分布を示すヒストグラムであり、
図4−bは、室温で24時間保存時のパクリタキセル実施例9のナノ分散体の粒径分布を示すヒストグラムである。前記ヒストグラムは、室温で約24時間保存した後に、平均粒径がほとんど一定であることを示し、ナノ分散体の安定性を示している。
【0087】
実施例10
PEG−3350を含む本発明の医薬組成物を表9に説明する。
【0088】
【表9】
【0089】
調製
薬剤、硫酸コレステリル、カプリル酸、PVP K−30、およびPEG−3350をバイアル中に正確に秤量した。
バイアルの内容物を、攪拌および45℃で加熱しながら、必要な量の無水エタノールに、透明な溶液が得られるまで溶解させた。
上記のエタノール溶液を、攪拌しながらブドウ糖溶液(5%)にゆっくりと加え、ナノ分散体を形成した。
ナノ分散体のpHを、pH計(Mettler Toledo−seven easy)を使用して確認する。
ナノ分散体の粒径を、粒径分析器(Nano−ZS、Malvern粒径分析器)により確認する。
ナノ分散体を、0.2μメンブランフィルターに通して濾過する。
上記のナノ分散体の20mlを、バイアルに充填し、凍結乾燥(Vitris)した。
凍結乾燥前のナノ分散体の外観および粒径を、ナノ分散体調製直後および室温で(RT)24時間および48時間保存後に観察した。これらを以下の表10にまとめる。
【0090】
【表10】
【0091】
本発明の組成物が物理的に安定であり、室温で24から48時間保存時に、実質的な凝集も製剤の外観の変化も全くないことが分かった。
【0092】
凍結乾燥ケーキの再構成:凍結乾燥後、バイアル中に得られたケーキを、軽く振盪しながら注射用の水(20ml)に注入して分散させ、濃度1.5mg/mlのパクリタキセルナノ分散体を得た。
【0093】
バイアル毎の内容物および再構成されたナノ分散体の特性を、それぞれ以下の表11および12に示す。
【0094】
【表11】
【0095】
各バイアルは、組成物中に30mgのパクリタキセルを含んでいた。70kgの人のパクリタキセルのおよそ300mgのヒト投与量では、上述の組成物の10個のバイアルを、60から600mlの注射用水などの希釈剤に再構成し、0.5から5.0mg/mlのパクリタキセル注入液を得ることができる。この希釈した組成物は、患者に投与される場合、20mgの硫酸コレステリル、25mgのカプリル酸、および125mgのPVPを含むだろう。
【0096】
【表12】
【0097】
本発明の組成物が物理的に安定であり、室温で24時間保存時に、実質的な凝集も製剤の外観変化も全くないことが分かった。
【0098】
実施例11および比較例1〜3
【表13】
【0099】
【表14】
【0100】
実施例12
本発明の医薬組成物を、表15にさらに説明し、種々のパラメータの観察結果を表16に記載する。
【0101】
【表15】
【0102】
【表16】
【0103】
オレイン酸およびステアリン酸を利用して調製した本発明のナノ分散組成物を以下の表17に説明する。
【表17】
【0104】
これらの組成物の調製手順は実施例1〜5に記載のものと同じである。そのように得られるナノ分散体は、ほとんど透明から半透明であり、平均粒径はそれぞれ134nmおよび155nmであった。
【0105】
実施例15
コレステロールを利用して調製した本発明の医薬組成物を、以下の表18に説明する。
【表18】
【0106】
手順
薬剤、コレステロール、カプリル酸、およびPVP K−30を、ガラスバイアル中に正確に秤量した。
内容物を、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に、攪拌および45℃で加熱しながら溶解させ、濃縮溶液を得た。
濃縮溶液を、0.2μPVDFメンブランフィルターを通して濾過した。
ブドウ糖溶液(5w/v%)を、穏やかに振盪しながら、濃縮溶液(100mgの薬剤)を収容しているバイアルにゆっくりと加え、1.5mg/mlの希 釈度の透明から半透明のナノ分散体を得た。
ナノ分散体のpHを、pH計(Mettler Toledo−seven easy)を使用して確認する。
ナノ分散体の粒径を、粒径分析器(Nano−ZS、Malvern)により確認する。
【0107】
この実施例のナノ分散組成物は、ほとんど透明から半透明であり、平均粒径が217nmであった。
【0108】
実施例16
胆汁酸/塩(グリココール酸ナトリウムおよびウルソデオキシコール酸)を使用して調製した本発明の医薬組成物を、以下の表19に説明する。
【0109】
【表19】
【0110】
手順
薬剤、胆汁酸/塩、カプリル酸、およびPVP K−30を、ガラスバイアル中に正確に秤量した。
内容物を、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に、攪拌および45℃で加熱しながら溶解させ、濃縮溶液を得た。
濃縮溶液を、0.2μPVDFメンブランフィルターを通して濾過した。
ブドウ糖溶液(5w/v%)を、穏やかに振盪しながら、濃縮溶液(100mgの薬剤)を収容しているバイアルにゆっくりと加え、1.5mg/mlの 希釈度の半透明のナノ分散体を得た。
ナノ分散体のpHを、pH計(Mettler Toledo−seven easy)を使用して確認する。
ナノ分散体の粒径を、粒径分析器(Nano−ZS、Malvern)により確認する。
【0111】
このように製造されたナノ分散組成物は、ほとんど半透明の外観であり、平均粒径がそれぞれ197nmおよび180nmであった。
【0112】
PVP K−90を含む本発明の医薬組成物を、以下の表20に説明する。
【表20】
【0113】
調製の手順は、実施例1〜5に記載のものと同じである。このように製造されたナノ分散組成物は、外観がほとんど透明から半透明であり、平均粒径が207nmであった。
【0114】
実施例18
ヒアルロン酸塩を含む本発明の医薬組成物を、表21に説明する。
【表21】
【0115】
手順
薬剤、硫酸コレステリル、およびカプリル酸を、ガラスバイアル中に正確に秤量した。
内容物を、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に、攪拌および45℃で加熱しながら溶解させ、濃縮薬剤溶液を得た。
溶液を、0.2μPVDFメンブランフィルターを通して濾過した。
ヒアルロン酸ナトリウムをブドウ糖溶液(5w/v%)に溶解させ、濃縮薬剤溶液(30mg)を収容しているバイアルにゆっくりと加え、その後残りの5w/v%ブドウ糖溶液を穏やかに振盪しながら加え、1.5mg/mlの希釈度の半透明のナノ分散体を得た。
ナノ分散体のpHを、pH計(Mettler Toledo−seven easy)を使用して確認した。
ナノ分散体の粒径を、粒径分析器(Nano−ZS、Malvern)により確認した。
【0116】
このように製造されたナノ分散組成物は、外観がほとんど半透明であり、平均粒径が263nmであった。
【0117】
実施例19
ポリグルタミン酸塩を含む本発明の医薬組成物を、表22に説明する。
【表22】
【0118】
ナノ分散体の調製手順は、実施例18に記載されたものと同じである。そのように製造されたナノ分散組成物は、外観がほとんど半透明であり、平均粒径が295nmであった。
【0119】
実施例20
追加の治療薬デキサメタゾンを含む本発明の医薬組成物を、以下の表23に説明する。
【表23】
【0120】
このように製造されたナノ分散組成物は、外観がほとんど半透明であり、平均粒径が185nmであった。
【0121】
実施例21
ドセタキセルを含む本発明の医薬組成物を、表24に説明する。
【表24】
【0122】
この実施例のナノ分散体は、実施例1〜5に与えられた手順により調製した。ナノ分散体は、青みがかった色合いのある白色であり、平均粒径は172nmであった。
【0123】
組成物は1.50mg/mlのドセタキセルを含む。70kgの人へのドセタキセルのおよそ180mgのヒト投与量には、120mlのナノ分散組成物を患者への投与に使用でき、そのため組成物は180mgのデセタキセルを含んでいた。この実施例の組成物が投与される患者は、12mgの硫酸コレステリル、15mgのカプリル酸、150mgのPVP、および約180mgのエタノールを受け取る。したがって、本発明の組成物は、活性薬剤と同時投与される最低限の量の賦形剤を含むナノサイズ粒子を与える。エタノールは、存在するとしても、非習慣性の量である。
【0124】
実施例22
ドセタキセルを含む本発明の医薬組成物を以下に示す。
【表25】
【0125】
表25に与えられた処方によるドセタキセルのプレコンセントレートを、分子量の異なるポリビニルピロリドンを使用して調製した。
ポリビニルピロリドンの分子量が増加すると、凝集およびナノ分散体が安定なままでいる時間の点で、ナノ分散体の安定性が向上することが分かった。
【0126】
実施例23および比較例4、5、および6
【表26】
【0127】
特定量の薬剤、硫酸コレステリル、およびカプリル酸を、ガラスバイアル中に正確に秤量した。
内容物を、必要な量の無水エタノールおよびPEG−400に、攪拌および45℃で加熱しながら溶解させ、濃縮薬剤溶液を得た。
溶液を、0.2μPVDFメンブランフィルターを通して濾過した。
ブドウ糖溶液(5w/v%)を調製し、濃縮薬剤溶液(30mg)を収容しているバイアルにゆっくりと加え、その後残りの5w/v%ブドウ糖溶液を穏やかに振盪しながら加え、1.5mg/mlの希釈度の半透明のナノ分散体を得た。
ナノ分散体のpHを、pH計(Mettler Toledo−seven easy)を使用して確認した。
ナノ分散体の粒径を、粒径分析器(Nano−ZS、Malvern)により確認した。
【0128】
【表27】
【0129】
実施例24
【表28】
【0130】
特定量のドセタキセル、硫酸コレステリルナトリウム、カプリル酸、およびポリビニルピロリドンを、バイアル中に秤量した。乾燥させた量のアルコールおよびポリエチレングリコールを混合し、40℃でわずかに加温されている超音波処理槽中で、無色透明なプレコンセントレートが得られるまで溶解させた。プレコンセントレートを、表29に示す異なる添加剤を含む水性ビヒクルで希釈した。そのように形成されたナノ分散体に、Malvern粒径分析器を利用して平均粒径測定を行った。
【0131】
【表29】
【0132】
5%ブドウ糖注射液中の0.5%ヒスチジン、0.001%エデト酸二ナトリウムの実施例の粒径分布の結果を、
図5−aおよび図%−bに示す。
図5−aは、初期のナノ分散体に粒径分布(平均粒径=98nm)を示すヒストグラムであり、
図5−bは、平均粒径が96.4nmである8時間でのナノ分散体の粒径分布を示すヒストグラムであり、ナノ分散体の安定性を示している。
【0133】
実施例25
CD−1マウスにおける本発明のパクリタキセルナノ分散体の急性毒性
試験品目
1.実施例12aの組成物を、5w/v%ブドウ糖により10mg/mlに希釈して、プラセボと共に使用した。
2.実施例9の組成物を、5w/v%ブドウ糖により8mg/mlに希釈して、プラセボと共に使用した。
3.0.9%塩化ナトリウムにより10mg/mlに希釈されるABRAXANE(登録商標)。
【0134】
CD−1マウスを、動物四等分数(animal quarter number)2で、個別換気ケージシステム(IVC)の状態に5日間順応させた。獣医学的な健康チェックの後、5匹のオスおよび5匹のメスのマウスを、各投与量群に割り付けた。マウスは、実験期間中、水および餌に自由にアクセスできた。以下の投与量の試験品目およびプラセボを、ビヒクルによる希釈をせずにそのまま、目盛り付きシリンジに結合した26ゲージの針を利用してマウスの尾部静脈を通して静脈内投与した。注射前に、尾を温水で拭き、血管を拡張させた。150、200、250、300、350、および400mg/kgの総投与量を、パクリタキセルナノ分散体(実施例12)で試験し、250、300,および400mg/kgの投与量を、プラセボ(実施例12のプラセボ)で試験し、200および250mg/kgの投与量をパクリタキセルナノ分散体(実施例9)で試験し、250mg/kgの投与量をプラセボ(実施例9のプラセボ)で試験し、300mg/kgの投与量をABRAXANE(登録商標)で試験した。これらの製剤を全て、2回の投与/注射の間に1時間の間隔をおいて3分割された投与量にして、CD−1マウスに静脈内投与した。最後の注射後、1日2回1時間、投薬後4〜6時間動物を観察した。その後、マウスを1日2回観察し、中毒症状および死亡率がある場合には、最長45日まで記録した。
【0135】
【表30】
【0136】
結果は、実施例12のパクリタキセルナノ分散体が、400mg/kgで90%死亡率を示し、300mg/kgの投与量でゼロパーセントの死亡率を示すことを示した。試験された最高投与量(400mg/kg)での実施例12のプラセボで死亡は見られなかった。パクリタキセルナノ分散体の直線外挿で、得られたLD
50およびLD
10値は、それぞれ342.5mg/kgおよび310mg/kgであった。同様に、実施例9のパクリタキセルナノ分散体は、250mg/kgで20%の死亡率を示し、パクリタキセルナノ分散体のLD
50は250mg/kgを超えていた。試験された最高投与量(250mg/kg)での実施例9のプラセボで死亡は見られなかった。市販されているナノ粒子製剤、ABRAXANE(登録商標)は、300mg/kgで90%の毒性を示した。これらのデータは、本発明のナノ分散組成物が、市販されているABRAXANE(登録商標)より毒性が低いであろうことを明らかに示している。また、本発明のナノ分散組成物のLD
50値(342.5mg/kg)を市販のTAXOL製剤のLD
50値(7.5〜12.0mg/kg:米国特許第6753006号)と比較すると、本発明のパクリタキセルナノ分散体で観察されたLD
50値が、市販TAXOL溶液のLD
50値よりはるかに高いことが明らかである。
【0137】
SDラットにおける本発明のパクリタキセルナノ分散体の急性毒性
試験品目
1.実施例9の組成物を、5w/v%ブドウ糖により10mg/mlに希釈をして、プラセボと共に使用した。
2.0.9%塩化ナトリウムにより5mg/mlに希釈されたABRAXANE(登録商標)。
ラットを、動物四等分数3で、個別換気ケージシステム(IVC)の状態に5日間順応させた。獣医学的な健康チェックの後、5匹のオスおよび5匹のメスのSDラットを、各投与量群に割り付けた。ラットは、実験期間中、水および餌に自由にアクセスできた。以下の投与量の試験品目およびプラセボを、ビヒクルによる希釈をせずにそのまま、目盛り付きシリンジに結合した26ゲージの針を利用してラットの尾部静脈を通して静脈内投与した。注射前に、尾を温水で拭き、血管を拡張させた。注射後、1日2回1時間、投薬後4〜6時間動物を観察した。その後、ラットを1日2回観察し、中毒症状および死亡率がある場合には最長14日まで記録した。
【0138】
【表31】
【0139】
結果は、実施例9の本発明のパクリタキセルナノ分散体が、90mg/kgで死亡率40%を示したことを示す。試験された最高投与量(90mg/kg)での実施例9のプラセボで死亡は見られなかった。本発明のパクリタキセルナノ分散体のLD
50値は、90mg/kgを超えていた。市販ナノ粒子製剤ABRAXANE(登録商標)は、70mg/kgで100%の毒性を示した。
【0140】
結果は、本発明のナノ分散組成物が薬剤に関連する毒性を最低限にし、薬剤の効果ある投与可能な治療範囲を広げ、ABRAXANE(登録商標)などの既存市販製剤よりも毒性が低いことを明らかに示す。
【0141】
実施例26
実施例24Bの組成物を、5w/v%ブドウ糖により10mg/mlに希釈して、プラセボと共に使用し、10mg/mlに希釈された市販製剤Taxotere(登録商標)に、CD−1マウスにおける静脈内経路によるドセタキセルのナノ分散体およびプラセボの急性毒性試験を実施した。マウスを、動物四等分数2で、実験室の状態に6日間順応させた。獣医学的な健康チェックの後、5匹のオスおよび5匹のメスのマウスを、各投与量群にランダムに割り付けた。マウスは、実験期間中、水および餌に自由にアクセスできた。試験品目およびプラセボを、ビヒクルによる希釈をせずにそのまま、目盛り付きシリンジに結合した26ゲージの針を利用してマウスの尾部静脈を通して静脈内投与した。注射前に、尾を温水で拭き、血管を拡張させた。200、250、および300mg/kgの総投与量を、ドセタキセルナノ分散体(実施例24B)で試験し、プラセボを最高投与量(実施例24Bのプラセボ)で試験した。これらの製剤を、2回の投与/注射の間に1時間の間隔をおいて3分割された投与量にして、CD−1マウスに静脈内投与した。最後の注射後、1時間、投薬後4〜6時間動物を観察した。その後、マウスを1日2回観察し、臨床症状および死亡率を15日間観察した。投薬後1日、7日、および14日に、生存している動物の体重を記録した。15日に、生存している動物の剖検を実施し、もしある場合には総病理を記録した。
【0142】
【表32】
【0143】
結果は、実施例24Bの本発明のドセタキセルのナノ分散体が、300mg/kgでの死亡率10%および投与量250mg/kgでLD
0を示したことを示した。試験された最高投与量で(300mg/kg)プラセボによる死亡は見られなかった。市販製剤Taxotere(登録商標)は、120mg/kgで10%の毒性を示した。本発明のドセタキセルのナノ分散体で観察されたLD
10値が、市販Taxotere(登録商標)溶液製剤のLD
10値よりはるかに高いことは明らかである。Taxotere(登録商標)の報告されているLD
10値は、95mg/kgである(参考:SBA-NDA-20449)。
【0144】
実施例27
MX−1腫瘍異種移植片を移植されたヌードマウスにおけるパクリタキセルナノ分散体(実施例12a)の抗腫瘍効能(腫瘍縮小)
動物:種:マウス、株:Balb/cヌード、性別:メス、年齢:6〜8週齢(18.9g±1.8g)
ヒト腫瘍異種移植片:MX−1(乳房)
試験試料:実施例12aの組成物、5%ブドウ糖により2mg/mlに希釈。
参照:市販製剤ABRAXANE(登録商標)、0.9%塩化ナトリウムにより2mg/mlに再構成。
プラセボ:タキサン誘導体のない試験試料。
投与量:20mg/kg、5日間連続1日1回、静脈内投与経路、10ml/体重kg。
試験デザイン:
1.30mgから40mgの断片として、腫瘍を、動物の右脇腹に皮下経路で移植した。
2.治療開始前に、125mm
3から132mm
3のサイズ中央値に腫瘍を増大させる。
3.腫瘍を持つ動物を、10匹の動物からなる群に分ける。
4.動物に上述の投与量を与え、腫瘍を以下のとおり評価した。
【0145】
結果:腫瘍体積の有意な減少が、対照群と比べ8日より後に試験で見られた。腫瘍は、日で表す時間に対して腫瘍体積(mm
3)で評価した。42日間のデータを
図1にグラフで表す。
中程度の抗腫瘍活性が、20mg/kgで(最適%T/C<20)(optimal T/C)で参照に見られたが、高度に有意な抗腫瘍活性が、20mg/体重kgで(最適%T/C<10)に試験で見られた。試験および参照の最適%T/C値は、それぞれ0および13.34であった。高度に有意な抗腫瘍活性が、ヌードマウスにおけるMX−1ヒト乳ガン異種移植片における20mg/kgで試験により(注射用のパクリタキセルナノ分散体濃縮液)示された。
【0146】
実施例28
MX−1腫瘍異種移植片を移植されたヌードマウスにおけるパクリタキセルナノ分散体(実施例9の組成物)の抗腫瘍効能(腫瘍縮小)
動物:種:マウス、株:無胸腺ヌード、性別:メス、年齢:6〜8週齢(20〜25g)
ヒト腫瘍異種移植片:MX−1(乳房)
試験試料:実施例9の組成物、5%ブドウ糖により2mg/mlに希釈。
参照:市販製剤ABRAXANE(登録商標)、0.9w/v%塩化ナトリウムにより2mg/mlに再構成。
投与量:20mg/kg、5日間連続1日1回、静脈内、10ml/体重kg。
試験デザイン:
1.おおよそ2×2mmの断片として、腫瘍を、動物の右脇腹に皮下経路で移植した。
2.治療開始前に、200mm
3から220mm
3のサイズに腫瘍を増大させた。
3.腫瘍を持つ動物を、10匹の動物からなる群に分けた。
4.動物に上述の投与量を投与し、腫瘍を以下のとおり評価した。
【0147】
腫瘍評価:腫瘍は、日で表す時間に対して腫瘍体積(mm
3)で評価した。42日間のデータを
図2にグラフで表す。
結果:高度に有意な抗腫瘍活性が、試験およびABRAXANE(登録商標)群(最適%T/C<10)で見られる。20mg/kg投与量での試験およびABRAXANE(登録商標)群の最適%T/C値は、それぞれ0.25および0.00であった。0日と比べて、プラセボ/対照群において、体重の有意な減少は見られなかった。高度に有意な抗腫瘍活性が、ヌードマウスにおけるMX−1ヒト乳ガン異種移植片における20mg/kgでの試験により(注射用のパクリタキセルナノ分散体濃縮液)示された。
【0148】
実施例29
HT−29ヒト結腸腫瘍異種移植片を移植されたヌードマウスにおけるパクリタキセルナノ分散体(実施例9の組成物)の抗腫瘍効能(腫瘍縮小)
動物:種:マウス、株:無胸腺ヌード、性別:オス、年齢:6〜8週齢(20〜25g)
ヒト腫瘍異種移植片:HT−29ヒト結腸
試験試料:実施例9の組成物、5%ブドウ糖により2mg/mlに希釈。
投与量:20mg/kg、5日間連続1日1回、静脈内、10ml/体重kg。
参照:
(a)市販製剤ABRAXANE(登録商標)、0.9%塩化ナトリウムにより2mg/mlに再構成され2mg/mlに希釈。
投与量:20mg/kg、5日間連続1日1回、静脈内、10ml/体重kg。
(b)市販製剤Oncotaxel(登録商標)
投与量:13.4mg/kg、5日連続1日1回、静脈内
試験デザイン:
1.おおよそ2×2×2mmの断片として、腫瘍を、動物の右脇腹に皮下経路で移植した。
2.治療開始前に、130mm
3から160mm
3のサイズに腫瘍を増大させた。
3.腫瘍を持つ動物を、10匹の動物からなる群に分けた。
4.動物に上述の投与量を投与し、腫瘍を以下のとおり評価した。
腫瘍評価:腫瘍は、日で表す時間に対して腫瘍体積(mm
3)の減少で評価する。49日間のデータを
図3にグラフで表す。
結果:高度に有意な抗腫瘍活性が、試験およびOncotaxel(登録商標)100群(最適%T/C<10)で見られる。20mg/kg投与量での試験および投与量13.4mg/kgでのOncotaxel(登録商標)100群の最適%T/C値は、それぞれ5.92および8.79であったが、中程度の抗腫瘍活性が、最適%T/C値20.33でABRAXANE(登録商標)により示される。高度に有意な抗腫瘍活性が、ヌードマウスにおけるHT−29ヒト結腸ガン異種移植片における20mg/kgでの試験により(注射用のパクリタキセルナノ分散体濃縮液)示された。