(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656752
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】フィラメントワインディング方法、フィラメントワインディング装置及びタンク
(51)【国際特許分類】
B29C 70/16 20060101AFI20141225BHJP
F17C 1/06 20060101ALI20141225BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20141225BHJP
B29L 22/00 20060101ALN20141225BHJP
【FI】
B29C67/14 C
F17C1/06
B29K105:08
B29L22:00
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-130626(P2011-130626)
(22)【出願日】2011年6月10日
(65)【公開番号】特開2013-887(P2013-887A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】相山 武範
(72)【発明者】
【氏名】魚住 忠司
(72)【発明者】
【氏名】谷川 元洋
【審査官】
増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−692(JP,A)
【文献】
特開2008−195000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00−70/68
F17C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同径の胴部とその両側に向けて縮径する一対のドーム部を有するタンクに繊維を巻回するフィラメントワインディング方法であって、
タンクの周囲の同心円上に配置されたヘリカル巻きヘッドの複数の給糸部から、タンクに繊維を給糸しながら、前記タンクを前記ヘリカル巻きヘッドに対しタンク軸方向に相対的に往復移動させてタンクにヘリカル巻きを行い、前記タンクの最後の折り返し後、前記タンクの一方のドーム部と胴部に繊維を巻いて、繊維の巻回終端部を前記胴部の一の端部に位置させる工程と、
フープ巻きヘッドから前記胴部に繊維を給糸して、前記胴部のヘリカル巻きの上にフープ巻きを行う工程と、
その後、前記繊維の巻回終端部のある前記胴部の一の端部において、前記ヘリカル巻きヘッドの給糸部に接続されている繊維を切断する工程と、を有する、フィラメントワインディング方法。
【請求項2】
同径の胴部とその両側に向けて縮径するドーム部を有するタンクに繊維を巻回するフィラメントワインディング装置であって、
タンクの周囲の同心円上に位置する複数の給糸部を有し、当該給糸部からタンクに繊維を給糸しタンクにヘリカル巻きを行うためのヘリカル巻きヘッドと、
タンクに繊維を給糸してフープ巻きを行うためのフープ巻きヘッドと、
前記ヘリカル巻きヘッドに対しタンクをタンク軸方向に相対的に移動させるための第1の移動装置と、
前記フープ巻きヘッドに対しタンクをタンク軸方向に相対的に移動させるための第2の移動装置と、
前記第1の移動装置、前記第2の移動装置、前記ヘリカル巻きヘッド及び前記フープ巻きヘッドの動作を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記ヘリカル巻きヘッドの複数の給糸部からタンクに繊維を給糸しながら、前記タンクを前記ヘリカル巻きヘッドに対しタンク軸方向に相対的に往復移動させてタンクにヘリカル巻きを行い、前記タンクの最後の折り返し後、前記タンクの一方のドーム部と胴部に繊維を巻いて、繊維の巻回終端部を前記胴部の一の端部に位置させる工程と、前記フープ巻きヘッドから前記胴部に繊維を給糸して、前記胴部のヘリカル巻きの上にフープ巻きを行う工程を実行する、フィラメントワインディング装置。
【請求項3】
同径の胴部とその両側に向けて縮径するドーム部を有し、外周面に繊維が巻回されているタンクであって、
繊維のヘリカル巻きの最外層が一方のドーム部と胴部に形成されて、当該胴部の一の端部に繊維の巻回終端部があり、前記胴部のヘリカル巻きの上にフープ巻き層が形成され、前記繊維の巻回終端部のある前記胴部の一の端部において、前記ヘリカル巻きの繊維が切断されている、タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング方法、フィラメントワインディング装置及びタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両に搭載される燃料電池システムには、燃料ガスの供給源としてガスタンクが用いられている。
【0003】
この種のガスタンクの製造工程は、略楕円体状のライナ(内容器)の外周に繊維強化樹脂(FRP(Fiber Reinforced Plastics))層を形成する工程を有し、当該工程は、通常熱硬化性樹脂が含浸された繊維をライナに巻き付けるフィラメントワインディング(Filament Winding)方法(以下、「FW方法」とする。)を用いて行われている。
【0004】
上記FW方法では、一般的にガスタンクのタンク軸に対し垂直方向に巻かれるフープ巻きと、タンク軸に対し斜めに傾けた方向に巻かれるヘリカル巻きが行われ、このフープ巻きとヘリカル巻きが所定回ずつ行われて繊維強化樹脂層が形成される。
【0005】
上記FW方法のヘリカル巻きには、多数本の繊維を多方向から同時にライナに巻回する多給糸方法がある。この多給糸方法は、繊維を巻回する時間を大幅に短縮できる(特許文献1参照)。
【0006】
上記多給糸方法では、ガスタンクの周りの同心円上の複数方向からガスタンクに繊維を給糸するヘリカル巻きヘッドが用いられ、ガスタンクとヘリカル巻きヘッドをタンク軸方向に相対的に往復移動させながら、ヘリカル巻きヘッドからガスタンクに繊維を給糸することによって、ガスタンクにヘリカル巻きが行われる。
【0007】
ところで、ヘリカル巻きを終了する際には、ヘリカル巻きの多数本の繊維の終端部をガスタンク側に固定する必要がある。繊維の終端部を固定する方法として、繊維の終端部をガスタンクの両側にある口金に巻き付けて固定する方法や、繊維の終端部を樹脂クリップ等で固定する方法が考えられている(特許文献2〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−148777号公報
【特許文献2】特開2009−174554号公報
【特許文献3】特開2009−191927号公報
【特許文献4】特開2009−166434号公報
【特許文献5】特開2009−066883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、例えば繊維の終端部をガスタンクの口金に巻き付けて固定する方法を用いた場合には、多給糸方法では、多数本の繊維を口金に集中的に巻き付ける必要があるため、口金の巻き付け部分の長さが必要になる。また、この場合、巻き付けた後の各繊維の終端部の貼り付けが別途必要になり、作業が大変になる。
【0010】
また、繊維の終端部を樹脂クリップ等で固定する方法を用いた場合には、多給糸方法では、100本以上の繊維について一本ずつ固定しそれを確認する作業が必要になり、作業が大変で時間がかかる。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、多給糸方法を用いてヘリカル巻きを行う場合において、繊維の終端部の固定を簡単に行うことができるフィラメントワインディング方法、その装置及びタンクを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明は、同径の胴部とその両側に向けて縮径する一対のドーム部を有するタンクに繊維を巻回するフィラメントワインディング方法であって、タンクの周囲の同心円上に配置されたヘリカル巻きヘッドの複数の給糸部から、タンクに繊維を給糸しながら、前記タンクを前記ヘリカル巻きヘッドに対しタンク軸方向に相対的に往復移動させてタンクにヘリカル巻きを行い、前記タンクの最後の折り返し後、前記タンクの一方のドーム部と胴部に繊維を巻いて、繊維の巻回終端部を前記胴部の一の端部に位置させる工程と、フープ巻きヘッドから前記胴部に繊維を給糸して、前記胴部のヘリカル巻きの上にフープ巻きを行う工程と、その後、前記繊維の巻回終端部のある前記胴部の一の端部において、前記ヘリカル巻きヘッドの給糸部に接続されている繊維を切断する工程と、を有するものである。
【0013】
本発明によれば、ヘリカル巻きの多数本の繊維の終端部をフープ巻きにより一度に固定するので、多給糸方法を用いてヘリカル巻きを行う場合でも繊維の終端部の固定を簡単に行うことができる。
【0014】
別の観点による本発明は、同径の胴部とその両側に向けて縮径するドーム部を有するタンクに繊維を巻回するフィラメントワインディング装置であって、タンクの周囲の同心円上に位置する複数の給糸部を有し、当該給糸部からタンクに繊維を給糸しタンクにヘリカル巻きを行うためのヘリカル巻きヘッドと、タンクに繊維を給糸してフープ巻きを行うためのフープ巻きヘッドと、前記ヘリカル巻きヘッドに対しタンクをタンク軸方向に相対的に移動させるための第1の移動装置と、前記フープ巻きヘッドに対しタンクをタンク軸方向に相対的に移動させるための第2の移動装置と、前記第1の移動装置、前記第2の移動装置、前記ヘリカル巻きヘッド及び前記フープ巻きヘッドの動作を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記ヘリカル巻きヘッドの複数の給糸部からタンクに繊維を給糸しながら、前記タンクを前記ヘリカル巻きヘッドに対しタンク軸方向に相対的に往復移動させてタンクにヘリカル巻きを行い、前記タンクの最後の折り返し後、前記タンクの一方のドーム部と胴部に繊維を巻いて、繊維の巻回終端部を前記胴部の一の端部に位置させる工程と、前記フープ巻きヘッドから前記胴部に繊維を給糸して、前記胴部のヘリカル巻きの上にフープ巻きを行う工程を実行するものである。
【0015】
また別の観点による本発明は、同径の胴部とその両側に向けて縮径するドーム部を有し、外周面に繊維が巻回されているタンクであって、繊維のヘリカル巻きの最外層が一方のドーム部と胴部に形成されて、当該胴部の一の端部に繊維の巻回終端部があり、前記胴部のヘリカル巻きの上にフープ巻き層が形成され、前記繊維の巻回終端部のある前記胴部の一の端部において、前記ヘリカル巻きの繊維が切断されているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、多給糸方法を用いてヘリカル巻きを行う場合において、繊維の終端部の固定を簡単に行うことができるので、作業時間を短縮しタンクの製造時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】ヘリカル巻きヘッドの構成の概略を示す正面図である。
【
図3】各工程時のガスタンク、フープ巻きヘッド及びヘリカル巻きヘッドの動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態にかかるフィラメントワインディング装置(以下、「FW装置」とする。)1の構成の概略を示す模式図である。
【0019】
FW装置1は、例えば基台10と、ガスタンク2を支持するタンク支持装置11と、タンク支持装置11に支持されたガスタンク2に対し繊維Aを供給しヘリカル巻きを行うヘリカル巻きヘッド12と、ガスタンク2に対し繊維Aを供給しフープ巻きを行うフープ巻きヘッド13と、ヘリカル巻きヘッド12に対しガスタンク2をタンク軸方向Xに相対的に移動させるための第1の移動装置14と、フープ巻きヘッド13に対しガスタンク2をタンク軸方向Xに相対的に移動させるための第2の移動装置15と、制御装置16等を有している。
【0020】
タンク支持装置11は、例えばガスタンク2の両端の口金3部分に連結可能な一対のシャフト20と、当該各シャフト20の外側端部を保持する一対のチャック21と、チャック21を支持する一対の支持柱22と、支持柱22が固定され、基台10に対してタンク軸方向Xに移動する移動台23を有している。チャック21には、図示しない回転駆動源が設けられており、シャフト20を回転させてガスタンク2を回転できる。また、移動台23は、基台10にタンク軸方向Xに沿って設けられたレール24上に設けられ、モータなどの駆動源25によりレール24上を移動できる。これにより、シャフト20に支持されたガスタンク2をタンク軸方向Xに移動させることができる。なお、本実施の形態では、移動台23、レール24及び駆動源25により第1の移動装置14が構成されている。
【0021】
ヘリカル巻きヘッド12は、例えば
図2に示すようにガスタンク2の周囲に同心円状に配置されたガイドリング30と、ガイドリング30に沿って同一円周上に等間隔で配置され、繊維Aをガスタンク2に向けて給糸する複数の給糸部としてのガイド筒31と、ガイド筒31の給糸口32をタンク軸心方向Yに向けて前後移動させる給糸口移動装置33を有している。
【0022】
ガイド筒31は、ガスタンク2の軸心に向けて放射状に設けられている。各ガイド筒31は、筒ホルダー40によりガイドリング30に固定されている。ガイド筒31には、外側からタンク軸心方向Yに向けて繊維Aが挿通し、ガイド筒31のガスタンク2側の先端が給糸口32になっている。
【0023】
給糸口移動装置33は、例えば歯車機構とその駆動源によりガイド筒31の給糸口32をタンク軸心方向Yに向けて前後方向に移動できる。
【0024】
ヘリカル巻きヘッド12は、
図1に示すようにガイドリング30に固定された支持部材60により支持されている。支持部材60は、例えば基台10に固定されている。
【0025】
フープ巻きヘッド13は、例えばガスタンク2の軸周りに配置され、回転可能な回転リング70と、回転リング70に設けられ、繊維をガスタンク2に給糸する給糸部71を有している。フープ巻きヘッド13は、支持部材72に支持されている。支持部材72は、基台10のタンク軸方向Xに沿ったレール73に取り付けられており、モータなどの駆動源74によってレール73に沿って移動できる。なお、本実施の形態では、支持部材72、レール73及び駆動源74により第2の移動装置15が構成されている。
【0026】
制御装置16は、例えば記憶部に記憶されたプログラムに従ってヘリカル巻きヘッド12、フープ巻きヘッド13、第1の移動装置14、第2の移動装置15等の動作を制御し、ガスタンク2に対する後述するFW方法を実行できる。
【0027】
次に、上記FW装置1を用いたFW方法について説明する。
【0028】
先ず、
図1に示すようにガスタンク2がタンク支持装置11に支持される。ガスタンク2には、フープ巻きとヘリカル巻きが所定回数ずつ行われ、外周面に強化繊維層が形成される。
【0029】
例えばフープ巻きを行う際には、フープ巻きヘッド13の回転リング70が回転しながら、給糸部71からガスタンク2に繊維Aが供給され、その状態でフープ巻きヘッド13が、胴部2aの両端部間でタンク軸方向Xに往復移動することによって、ガスタンク2の胴部2aに繊維Aがフープ巻きで巻かれる。
【0030】
ヘリカル巻きを行う場合には、ガスタンク2が回転した状態で、ガスタンク2がヘリカル巻きヘッド12に対し両側の口金3間に亘ってタンク軸方向Xに往復移動し、その状態でヘリカル巻きヘッド12の各ガイド筒31からそれぞれ一本の繊維Aがガスタンク2に供給されて、ガスタンク2の全体に繊維Aがヘリカル巻きで巻かれる。
【0031】
ここで、本FW方法において、ヘリカル巻きの繊維の終端部をガスタンク2に固定するための処理について説明する。
【0032】
先ず、
図3の(a)に示すようにガスタンク2とフープ巻きヘッド13が同期して回転しながら、ヘリカル巻きヘッド12側(
図3の(a)の右方向)に移動する。そして、ガスタンク2がヘリカル巻きヘッド12内を通過する際に、ガスタンク2に繊維Aが巻かれる。なお、ヘリカル巻きヘッド12は、固定されており移動しない。
【0033】
そして、ガスタンク2の一の端部(
図3の(b)の左側の端部)Bまで繊維Aが巻かれると、ガスタンク2とフープ巻きヘッド13が折り返され、ヘリカル巻きヘッド12から離れる方向(
図3の(b)の左方向)に移動する。このとき引き続きヘリカル巻きヘッド12からガスタンク2に繊維Aが給糸され巻かれる。そして、ガスタンク2の一の端部Bから一方のドーム部2b、胴部2aに繊維Aがこの順で巻かれ、そこで、ガスタンク2の回転及び移動が停止され、ヘリカル巻きヘッド12からの繊維Aの給糸が停止される。よって、ヘリカル巻きの最外層には、一方のドーム部2bと胴部2aにのみ繊維Aが巻かれ、繊維Aの巻回終端部A1が胴部2aの一の端部Pに位置する。
【0034】
次に、フープ巻きヘッド13が回転しながらヘリカル巻きヘッド12側(
図3の(c)の右方向)に移動し、ガスタンク2の胴部2aに繊維Aが巻かれる。胴部2aの一の端部Pまで繊維Aが巻かれると、フープ巻きヘッド13の回転及び移動が停止され、繊維Aの供給が停止される。フープ巻きの繊維の終わりは、ガスタンク2に固定される。この固定方法は、一般的に熱圧着、接着剤によるものや、下層の繊維に折り込む等の方法が挙げられる。こうして、
図3の(d)に示すように胴部2aのヘリカル巻きの最外層の上にフープ巻き層が形成され、ヘリカル巻きの繊維の終端部がガスタンク2に固定される。なお、このときフープ巻きヘッド13を一回以上往復移動させて、ヘリカル巻きの上にフープ巻き層を形成してもよい。給糸の停止後、フープ巻きヘッド13は、さらにヘリカル巻きヘッド12側(
図3の(d)の右方向)に移動し、ガスタンク2上から退避する。
【0035】
次に、
図3の(e)に示すように繊維の巻回終端部A1のある胴部2aの一の端部Pにおいて、ヘリカル巻きヘッド12に接続されている繊維Aが切断される。その後、フープ巻きヘッド13に接続されている繊維Aも切断される。
【0036】
本実施の形態によれば、ヘリカル巻きの多数本の繊維の終端部をフープ巻きにより一度に固定するので、多給糸方法の場合でも繊維の終端部の固定を簡単に行うことができる。よって、ヘリカル巻きの繊維の終端部を固定する作業時間を短縮できる。また、ヘリカル巻きを胴部2aの一端部Pまで行い、その上にフープ巻きを胴部2aの全体に行うので、ヘリカル巻きの繊維の終端部を高い強度で固定できる。さらに、ヘリカル巻きの繊維端が外部から目視できるので、本実施の形態のFW方法で製造されたガスタンク2を判別しやすい。
【0037】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0038】
例えば以上の実施の形態において、ヘリカル巻き時にガスタンク2側がタンク軸方向Xに移動していたが、ヘリカル巻きヘッド12側がタンク軸方向Xに移動してもよい。また、フープ巻き時においてフープ巻きヘッド13側がタンク軸方向Xに移動していたが、ガスタンク2側がタンク軸方向Xに移動してもよい。
【0039】
また、以上の実施の形態におけるFW装置1及びFW方法は、燃料電池自動車1のみならず、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両のほか、各種移動体(例えば、船舶や飛行機、ロボットなど)や定置設備(住宅、ビル)に用いられるタンクの製造にも適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 FW装置
2 ガスタンク
2a 胴部
2b ドーム部
11 タンク支持装置
12 ヘリカル巻きヘッド
13 フープ巻きヘッド
14 第1の移動装置
15 第2の移動装置
16 制御装置
31 ガイド筒
A 繊維
A1 繊維の巻回端部
P 胴部の一端部
X タンク軸方向
Y タンク軸心方向