(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656773
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】水中モータポンプ用軸封装置の油水分離による水分除去方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/12 20060101AFI20141225BHJP
F04D 13/08 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
F04D29/12 B
F04D13/08 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-184785(P2011-184785)
(22)【出願日】2011年8月26日
(65)【公開番号】特開2013-44316(P2013-44316A)
(43)【公開日】2013年3月4日
【審査請求日】2014年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150844
【氏名又は名称】株式会社鶴見製作所
(72)【発明者】
【氏名】村井 実
【審査官】
加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−221190(JP,A)
【文献】
特開2008−69726(JP,A)
【文献】
実開昭56−90593(JP,U)
【文献】
米国特許第6422822(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/12
F04D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中モータポンプのポンプ部とモータ部との間に介在する、潤滑オイルが封入されたオイル室内を貫通するポンプ軸の外周にダブル型軸封装置を嵌装させて、その外側を円筒状壁体で囲繞し、円筒状壁体の内周面にポンプ軸の回転方向に向かって上り勾配の傾斜面を形成するようガイドベーンを定着させ、円筒状壁体の上縁部を上部のメイティングリングとシールリングとの摺動面よりも上方部において、オイル室内の上壁面に接近させてその環状間隙部をオイルの流出溝に形成し、円筒状壁体の下縁部には外側方向へ突出するフランジを付設して該フランジの下面を回り止め用押え板の上面へ定着させ、且つ円筒状壁体の下方部にガイドベーンの下端部裏側とオイル室とを導通させるオイル流入用横穴を開設し、該オイル流入用横穴から流入された潤滑オイルはガイドベーンに沿って上昇されてオイルの流出溝から緩やかに流出されるので、オイル室内の潤滑オイルは上記円筒状壁体により下から上へと循環されることから、該オイル流入用横穴に吸水剤が吸込まれないよう、上記円筒状壁体の外側に遮蔽リングを付設し、更に該遮蔽リングの外側のオイル室内の下壁面に配設された吸水剤が上記潤滑オイルの循環作用によって、オイル室内に浸水される水分を効率よく該吸水剤に吸水させることで、油水分離しながら水分を除去させることを特徴とする、水中モータポンプ用軸封装置の油水分離による水分除去方法。
【請求項2】
水中モータポンプのポンプ部とモータ部との間に介在する、潤滑オイルが封入されたオイル室内を貫通するポンプ軸の外周にダブル型軸封装置を嵌装させて、その外側を円筒状壁体で囲繞し、円筒状壁体の内周面にポンプ軸の回転方向に向かって上り勾配の傾斜面を形成するようガイドベーンを定着させ、円筒状壁体の上縁部を上部のメイティングリングとシールリングとの摺動面よりも上方部において、オイル室内の上壁面に接近させてその環状間隙部をオイルの流出溝に形成し、円筒状壁体の下縁部には外側方向へ突出するフランジを付設して該フランジの下面を回り止め用押え板の上面へ定着させ、且つ円筒状壁体の下方部にガイドベーンの下端部裏側とオイル室とを導通させるオイル流入用横穴を開設し、該オイル流入用横穴から流入された潤滑オイルはガイドベーンに沿って上昇されてオイルの流出溝から緩やかに流出されるので、オイル室内の潤滑オイルは上記円筒状壁体により下から上へと循環されることから、該オイル流入用横穴に吸水剤が吸込まれないよう、上記円筒状壁体の外側に遮蔽リングを付設し、更に該遮蔽リングの外側のオイル室内の下壁面に配設された吸水剤が上記潤滑オイルの循環作用によって、オイル室内に浸水される水分を効率よく該吸水剤に吸水させることで、油水分離しながら水分を除去するよう構成されたことを特徴とする、水中モータポンプ用軸封装置の油水分離による水分除去装置。
【請求項3】
水中モータポンプのモータ部のフレーム下端のハウジング下端面とポンプ部のケーシングの上端面との間に形成される空間部へ着脱可能に介装させるオイルタンク内に潤滑オイルが封入された水中モータポンプ用軸封装置であって、上記空間部を貫通するポンプ軸へ挿脱可能に嵌着される円筒状軸スリーブの外周にダブル型軸封装置を嵌装させてその外周をオイルタンクで囲繞し、オイルタンクの上蓋下面に凹設された上部環溝にダブル型軸封装置の上部メイティンリングを嵌着させ、オイルタンクの下壁上面に凹設された下部環溝にダブル型軸封装置の下部メイティリングを嵌着させて該メイティンリングの回り止め用押え板を下部環溝の周壁上面へ定着させ、ダブル型軸封装置を囲んでオイルタンク内に立設される円筒状壁体の内周面にポンプ軸回転方向に向って上り勾配の傾斜面を形成するようガイドベーンを定着させ、円筒状壁体の下縁部には外側方向へ突出するフランジを付設して該フランジの下面を回り止め用押え板の上面へ定着させ、且つ円筒状壁体の下方部にガイドベーンの下端部裏側とオイルタンク内とを導通させるオイル流入用横穴を開設し、円筒状壁体の上縁部を上部メイティンリングとシールリングとの摺動面よりも上方においてオイルタンク上壁に接近させて内側方向へ突出するフランジを付設し、該フランジ上面と上部環溝の周壁下面との対向面間にオイル流出用の環状溝隙を形成させ、オイルタンクの周壁上縁部にモータフレーム下端のハウジング下端面へ当接する取付座を付設すると共に、上記オイル流入用横穴から流入された潤滑オイルはガイドベーンに沿って上昇されてオイルの流出溝から緩やかに流出されるので、オイルタンク内の潤滑オイルは上記円筒状壁体により下から上へと循環されることから、該オイル流入用横穴に吸水剤が吸込まれないよう、上記円筒状壁体の外側に遮蔽リングを付設し、更に該遮蔽リングの外側のオイルタンクの下壁上面に配設された吸水剤が上記潤滑オイルの循環作用によって、オイルタンク内に浸水される水分を効率よく該吸水剤に吸水させることで、油水分離しながら水分を除去するよう構成されたことを特徴とする、水中モータポンプ用軸封装置の油水分離による水分除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中モータポンプ等に装着される軸封装置の油水分離による水分除去方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水中モータポンプのポンプ部とモータ部の間に設けられた、オイル室内を貫通するポンプ軸の外周に嵌装され上下環溝に嵌着されて介装される軸封装置(メカニカルシール)により、ポンプ部側からの浸水をシールする下部摺動密封面と該オイル室内のオイルがモータ部側へ侵入しないうにシールする上部摺動密封面の上下2箇所をシールするダブル型軸封装置が、油水分離による水分除去機能を有しない状態で油封されている。
【0003】
そして、モータフレーム下面とポンプケーシング上面との間に設けられたオイル室内において、ポンプ軸の外周に嵌装されたダブル型軸封装置の上部メイティリングをベアリングブラケットの下面に嵌着して支承させ、下部メイティリングをポンプケーシングの上壁上面に嵌着して支承させ、コイルスプリングのバネ圧により上部シールリングを上部メイティリングに圧接させると共に下部シールリングを下部メイティリングに圧接させ、これら圧接部が摺動密封面を構成するように組立られているものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、円筒状軸スリーブの外周にダブル型軸封装置を嵌装させてその外周を環状のオイルタンクで囲繞し、ダブル型軸封装置を囲んでオイルタンク内に立設された円筒状壁体の内周面にオイル掻揚げ用のガイドベーンを定着させ、ガイドベーンの下端部裏側に接近させて円筒状壁体の下方部にオイル流入用の横穴を開設し、円筒状壁体の上縁部にオイル流出用の環状溝隙を形成させ、オイルタンクの周壁上縁部に取付座を付設させてオイルを封入する軸封ユニットに構成されているものが提案されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に開示された油水分離による水分除去機能を有していない軸封装置の密封面が摺動する構成において、該摺動面からの漏れ量をゼロとする完全密封状態とすることは実質的に不可能であることから、必然的にポンプ部側で発生する水圧により、オイル室へ微量の水分が侵入されることで、長期間の使用において該微量浸水の蓄積水分がオイル室内のオイルに混入されるために、シール機能を維持させる摺動密封面への潤滑オイルの粘性が低下されて、摺動密封面の潤滑不良に起因した摺動面の面荒れや破損により、シール機能が破壊されてしまい、最悪はモータ充電部の浸水による感電や水蒸気爆発等の重大事故を招いてしまうという問題を有している。
【0006】
更にまた、油水分離真空チャンバ内を真空にするための真空ポンプと、チャンバに油水を送入制御する油水送入弁と、油水分離後油分を排出する排油弁と、排油時にチャンバ内を外気と均圧する均圧弁と、水分の蒸発を促進するのにドレンを加熱する加熱器より構成された油水分離装置を別途用いて、水分を分離回収することも周知である(例えば、下記の特許文献2参照)。しかしながらが、別途油水分離装置を設けなければ成らないことから、別途設置スペースが必要でありコンパクト化することができないと共に、イニシャルおよびランニングコストが嵩むという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−221190号公報
【特許文献2】特開平11−343976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1の油水分離機能を有しない油封構成のダブル型軸封装置においては、ポンプ部側で発生する水圧による微量浸水により、長期使用においてオイル室内に水分が混入することで、シール機能を維持させる摺動密封面への潤滑オイルの粘性が低下することで、摺動密封面の潤滑不良に起因した摺動面の面荒れや破損によりシール機能が破壊され浸水事故を招き、最悪はモータ充電部による感電の人身事故や水蒸気爆発等の重大事故を招いてしまうという欠点があった。
【0009】
また、前記特許文献2の油水分離装置を別途用いて、水分を分離回収するものにおいては、別途油水分離装置を設けなければ成らないことから、別途設置スペースが必要でありコンパクト化することができないと共に、イニシャルおよびランニングコストが嵩むという欠点があった。
【0010】
そこで、本発明は前記問題点を鑑み、水中モータポンプの長期使用によるオイル室内への水分の混入に対して、別途油水分離装置を設けることなく、水中モータポンプ自体に油水分離の水分除去機能を付加することで、水中モータポンプを大きくすることなくコンパクト化すると共に、イニシャルおよびランニングコストが嵩むことなく、しかも既存の水中モータポンプにおいても極めて容易に対応することのできる、水中モータポンプ用軸封装置の油水分離方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明の方法では、水中モータポンプのポンプ部とモータ部との間に介在する、潤滑オイルが封入されたオイル室内を貫通するポンプ軸の外周にダブル型軸封装置を嵌装させて、その外側を円筒状壁体で囲繞し、円筒状壁体の内周面にポンプ軸の回転方向に向かって上り勾配の傾斜面を形成するようガイドベーンを定着させ、円筒状壁体の上縁部を上部のメイティングリングとシールリングとの摺動面よりも上方部において、オイル室内の上壁面に接近させてその環状間隙部をオイルの流出溝に形成し、円筒状壁体の下縁部には外側方向へ突出するフランジを付設して該フランジの下面を回り止め用押え板の上面へ定着させ、且つ円筒状壁体の下方部にガイドベーンの下端部裏側とオイル室とを導通させるオイル流入用横穴を開設し、該オイル流入用横穴に吸水剤が吸込まれないよう、上記円筒状壁体の外側に遮蔽リングを付設し、更に該遮蔽リングの外側のオイル室内の下壁面に配設された吸水剤により、オイル室内に浸水される水分を該吸水剤に吸水させることで、油水分離しながら水分を除去させることを最も主要な特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る発明の装置では請求項1発明の方法を使用して、水中モータポンプのポンプ部とモータ部との間に介在する、潤滑オイルが封入されたオイル室内を貫通するポンプ軸の外周にダブル型軸封装置を嵌装させて、その外側を円筒状壁体で囲繞し、円筒状壁体の内周面にポンプ軸の回転方向に向かって上り勾配の傾斜面を形成するようガイドベーンを定着させ、円筒状壁体の上縁部を上部のメイティングリングとシールリングとの摺動面よりも上方部において、オイル室内の上壁面に接近させてその環状間隙部をオイルの流出溝に形成し、円筒状壁体の下縁部には外側方向へ突出するフランジを付設して該フランジの下面を回り止め用押え板の上面へ定着させ、且つ円筒状壁体の下方部にガイドベーンの下端部裏側とオイル室とを導通させるオイル流入用横穴を開設し、該オイル流入用横穴に吸水剤が吸込まれないよう、上記円筒状壁体の外側に遮蔽リングを付設し、更に該遮蔽リングの外側のオイル室内の下壁面に配設された吸水剤により、オイル室内に浸水される水分を該吸水剤に吸水させることで、油水分離しながら水分を除去するよう構成している。
【0013】
更にまた、本発明の請求項3に係る発明の装置では請求項1発明の方法を使用して、水中モータポンプのモータフレーム下端のハウジング下端面とポンプ部のケーシングの上端面との間に形成される空間部へ着脱可能に介装させる潤滑オイルが封入された水中モータポンプ用軸封装置であって、上記空間部を貫通するポンプ軸へ挿脱可能に嵌着される円筒状軸スリーブの外周にダブル型軸封装置を嵌装させてその外周をオイルタンクで囲繞し、オイルタンクの上蓋下面に凹設された上部環溝にダブル型軸封装置の上部メイティンリングを嵌着させ、オイルタンクの下壁上面に凹設された下部環溝にダブル型軸封装置の下部メイティリングを嵌着させて該メイティンリングの回り止め用押え板を下部環溝の周壁上面へ定着させ、ダブル型軸封装置を囲んでオイルタンク内に立設される円筒状壁体の内周面にポンプ軸回転方向に向って上り勾配の傾斜面を形成するようガイドベーンを定着させ、円筒状壁体の下縁部には外側方向へ突出するフランジを付設して該フランジの下面を回り止め用押え板の上面へ定着させ、且つ円筒状壁体の下方部にガイドベーンの下端部裏側とオイル室とを導通させるオイル流入用横穴を開設し、円筒状壁体の上縁部を上部メイティンリングとシールリングとの摺動面よりも上方においてオイルタンク上壁に接近させて内側方向へ突出するフランジを付設し、該フランジ上面と上部環溝の周壁下面との対向面間にオイル流出用の環状溝隙を形成させ、オイルタンクの周壁上縁部にモータフレーム下面へ当接する取付座を付設すると共に、上記オイル流入用横穴に吸水剤が吸込まれないよう、上記円筒状壁体の外側に遮蔽リングを付設し、更に該遮蔽リングの外側のオイル室内の下壁面に配設された吸水剤により、オイル室内に浸水される水分を該吸水剤に吸水させることで、油水分離しながら水分を除去するよう構成している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、潤滑オイルが封入されたオイル室内を貫通するポンプ軸に嵌装されたダブル型軸封装置の回転により、旋回された潤滑オイルが円筒状壁体の内周面にポンプ軸の回転方向に向かって上り勾配の傾斜面を形成されたガイドベーンに沿って上昇されることで、該ガイドベーンの下端部裏側とオイル室とを導通させるオイル流入用横穴より流入された潤滑オイルを上昇させて、円筒状壁体上縁部のフランジ上端面と対向するオイル室内の上壁面に接近させた環状間隙部のオイルの流出溝内から緩やかに流出されながら、該円筒状壁体外周面を伝うようにして、封入された潤滑オイルに空気が混入しないよう緩やかに流下させることで、円筒状壁体の外側に付設する遮蔽リング外周のオイル室内の下壁面に配設された吸水剤により、潤滑オイルより比重の大きなオイル室内に浸水される水分を効率よく該吸水剤に吸水させることで、油水分離しながら水分が除されるので、潤滑オイルの粘性を低下させることなく、安定した潤滑オイルを円筒状壁体の下縁部から上縁部に循環させることで、ダブル型軸封装置に円滑に潤滑オイルが安定供給されることで、安定したシール機能が維持される。
【0015】
また、後記実施例2においては、ポンプ部で発生する水圧がオイル室内のダブル型軸封装置の下部に、直接伝播しないよう空間部を隔てた圧抜き構成にも容易に対応し得ることから、高揚程使用の水中モータポンプに対しても、安定したシール機能を維持することができる。
【0016】
更に、複雑で大掛かりな油水分離装置を別途用いることなく、既存の水中モータポンプのオイル室内に吸水剤が容易に配設することができるので、水中モータポンプを大きくすることなくコンパクト化すると共に、イニシャルおよびランニングコストが嵩むことなく、しかも既存の水中モータポンプにおいても極めて容易に対応することのできると共に、吸水剤を網袋等に入れて使用すればメンテナンス時に容易に交換できるという、従来にない多くの効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1の水中モータポンプ用軸封装置の油水分離装置の要部縦断側面図である。
【
図2】本発明の実施例2の水中モータポンプ用軸封装置の油水分離装置の要部縦断側面図である。
【
図3】本発明の実施例2の水中モータポンプ用軸封装置の油水分離装置を介装させた水中モータポンプの要部縦断側面図である。
【
図4】本発明の実施例1,2の水中モータポンプ用軸封装置の油水分離装置における、円筒状壁体の縦断側面図である。
【
図5】本発明の実施例1,2の水中モータポンプ用軸封装置の油水分離装置における、回り止め用押え板16の縦断側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の水中モータポンプのポンプ部とモータ部との間に介在する、潤滑オイルが封入されたオイル室内にシールを司るダブル型軸封装置と、該ダブル型軸封装置に潤滑オイルを循環供給する円筒状壁体と、遮蔽リングの外側のオイル室内の下壁面に配設された吸水剤が上記潤滑オイルの循環作用によって、オイル室内に浸水される水分を効率よく該吸水剤に吸水させることで、油水分離しながら水分を除去させる機能を具備させた、水中モータポンプ用軸封装置の油水分離方法およびその装置の実施形態として、以下の如く本願発明の実施例に基づき、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施例の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
図1において、1は水中モータポンプのモータ部であり、水中モータポンプのポンプ部2との間に介在する、潤滑オイル9oが封入されたオイル室9内を貫通するポンプ軸4の外周にダブル型軸封装置7を嵌装させてその外側を円筒状壁体15で囲繞し、円筒状壁体15の内周面にポンプ軸4の回転方向に向かって上り勾配の傾斜面を形成するようガイドベーンGを定着させ、円筒状壁体15の上縁部の内側方向へ突出するフランジF1の上端面をモータ部1のハウジング18の環溝に嵌着された上部メイティングリング11Aと、ポンプ軸4に嵌着された上部シールリング13Aとの上部摺動面14Aよりも上方部において、オイル室9内の上壁面に接近させてその環状間隙部をオイルの流出溝17Aに形成し、円筒状壁体15の下縁部には外側方向へ突出するフランジF2を付設して該フランジF2の下面をポンプ部2のケーシング2Cの環溝に嵌着された下部のメイティングリング11Bと、ポンプ軸4に嵌着された下部シールリング13Bとの下部摺動面14Bよりも下方部に回り止め用押え板16の上面へ定着させ、ポンプ軸4の回転方向と反対方向に巻き上げられたコイルスプリング12のバネ圧により、上部シールリング13Aを上部メイティンリング11Aに圧接させると共に下部シールリング13Bを下部メイティンリング11Bに圧接させて上記上下部摺動面14A,14Bを構成し、上記回り止め用押え板16の上面且つ円筒状壁体15の下方部にガイドベーンGの下端部裏側とオイル室9とを導通させるオイル流入用横穴17Bを開設し、該オイル流入用横穴17Bから流入された潤滑オイル9oはガイドベーンGに沿って上昇されてオイルの流出溝17Aから緩やかに流出されるので、オイル室9内の潤滑オイル9oは上記円筒状壁体15により下から上へと循環されることから、該オイル流入用横穴17Bに吸水剤21が吸込まれないよう、上記円筒状壁体15の外側に吸水剤21が通過しないよう複数の透孔20Hを穿設した遮蔽リング20を付設し、更に該遮蔽リング20の外側のオイル室9内の下壁面に配設された、例えば多孔質で吸水性を有する炭やシリカゲルなどの吸水剤21が上記潤滑オイル9oの循環作用によって、オイル室9内に浸水される水分を効率よく該吸水剤21に吸水させることで、水中モータポンプ用軸封装置の油水を分離し水分を除去させる方法。
【0020】
そして、前記水中モータポンプ用軸封装置の油水分離による水分除去方法を用いた
図1に示す装置において、1は水中モータポンプのモータ部であり、水中モータポンプのポンプ部2との間に介在する、潤滑オイル9oが封入されたオイル室9内を貫通するポンプ軸4の外周にダブル型軸封装置7を嵌装させてその外側を円筒状壁体15で囲繞し、円筒状壁体15の内周面にポンプ軸の回転方向に向かって上り勾配の傾斜面を形成するようガイドベーンGを定着させ、円筒状壁体15の上縁部の内側方向へ突出するフランジF1の上端面をモータ部1のハウジング18の環溝に嵌着された上部メイティングリング11Aと、ポンプ軸4に嵌着された上部シールリング13Aとの上部摺動面14Aよりも上方部において、オイル室9内の上壁面に接近させてその環状間隙部をオイルの流出溝17Aに形成し、円筒状壁体15の下縁部には外側方向へ突出するフランジF2を付設して該フランジF2の下面をポンプ部2のケーシング2Cの環溝に嵌着された下部メイティングリング11Bと、ポンプ軸4に嵌着された下部シールリング13Bとの下部摺動面14Bよりも下方部に回り止め用押え板16の上面へ定着させ、ポンプ軸4の回転方向と反対方向に巻き上げられたコイルスプリング12のバネ圧により、上部シールリング13Aを上部メイティンリング11Aに圧接させると共に下部シールリング13Bを下部メイティンリング11Bに圧接させて上記上下部摺動面14A,14Bを構成し、上記回り止め用押え板16の上面且つ円筒状壁体15の下方部にガイドベーンGの下端部裏側とオイル室9とを導通させるオイル流入用横穴17Bを開設し、該オイル流入用横穴17Bから流入された潤滑オイル9oはガイドベーンGに沿って上昇されてオイルの流出溝17Aから緩やかに流出されるので、オイル室9内の潤滑オイル9oは上記円筒状壁体15により下から上へと循環されることから、該オイル流入用横穴17Bに吸水剤21が吸込まれないよう、上記円筒状壁体15の外側に該吸水剤21が通過しないよう複数の透孔20Hを穿設した遮蔽リング20を付設し、更に該遮蔽リング20の外側のオイル室9内の下壁面に望ましく網袋等に入れて配設された吸水剤21が上記潤滑オイル9oの循環作用によって、オイル室9内に浸水される水分を効率よく該吸水剤21に吸水させることで、油水分離しながら水分を除去するように構成された、実施例1の水中モータポンプ用軸封装置の油水分離による水分除去装置。
【実施例2】
【0021】
また、別の実施例として前記水中モータポンプ用軸封装置の油水分離による水分除去方法を用いた
図2,3に示す装置において、前記実施例1と同一部位品は同一符号にて示すと、1は水中モータポンプのモータ部であり、該モータ部1のフレーム1F下端のハウジング18下端面とポンプ部2のケーシング2C上端面との間に形成される空間部3へ着脱可能に介装させるオイルタンク8内に潤滑オイル9oが封入された水中モータポンプ用軸封装置であって、上記空間部3を貫通するポンプ軸4へ挿脱可能に嵌着される円筒状軸スリーブ6の外周にダブル型軸封装置7を嵌装させてその外周をオイルタンク8で囲繞し、オイルタンク8の上蓋8A下面に凹設された上部環溝10Aにダブル型軸封装置7の上部メイティンリング11Aを嵌着させ、オイルタンク8の下壁8B上面に凹設された下部環溝10Bにダブル型軸封装置7の下部メイティリング11Bを嵌着させて該メイティンリング11Bの回り止め用押え板16を下部環溝10Bの周壁上面へ定着させ、ポンプ軸4の回転方向と反対方向に巻き上げられたコイルスプリング12のバネ圧により、上部シールリング13Aを上部メイティンリング11Aに圧接させると共に下部シールリング13Bを下部メイティンリング11Bに圧接させて上下部摺動封面14A,14Bを構成し、ダブル型軸封装置7を囲んでオイルタンク8内に立設される円筒状壁体15の内周面にポンプ軸回転方向に向って上り勾配の傾斜面を形成するようガイドベーンGを定着させ、円筒状壁体15の下縁部には外側方向へ突出するフランF2を付設して該フランジF2の下面を回り止め用押え板16の上面へ定着させ、且つ円筒状壁体15の下方部にガイドベーンGの下端部裏側とオイルタンク8内(オイル室9)とを導通させるオイル流入用横穴17Bを開設し、円筒状壁体15の上縁部を上部メイティンリング11Aと上部シールリング13Aとの上部摺動面14Aよりも上方においてオイルタンク8上壁8Aに接近させて内側方向へ突出するフランジF1を付設し、該フランジF1上面と上部環溝10Aの周壁下面との対向面間にオイル流出用17Aの環状溝隙を形成させ、オイルタンク8の周壁上縁部にモータフレーム1F下端のハウジング18下端面へ当接する取付座19を付設すると共に、上記オイル流入用横穴17Bから流入された潤滑オイル9oはガイドベーンGに沿って上昇されてオイルの流出溝17Aから緩やかに流出されるので、オイルタンク8内の潤滑オイル9oは上記円筒状壁体15により下から上へと循環されることから、該オイル流入用横穴17Bに吸水剤21が吸込まれないよう、上記円筒状壁体15の外側に該吸水剤21が通過しないよう複数の透孔20Hを穿設した遮蔽リング20を付設し、更に該遮蔽リング20の外側のオイルタンク8の下壁8B上面に望ましくは網袋等に入れて配設された吸水剤21が上記潤滑オイル9oの循環作用によって、オイルタンク8内(オイル室9)に浸水される水分を効率よく該吸水剤21に吸水させることで、油水分離しながら水分を除去するように構成された、実施例2の水中モータポンプ用軸封装置の油水分離による水分除去装置。
【0022】
更に、前記実施例2のモータ部1のフレーム1F下端のハウジング18下端面とポンプ部2のケーシング2C上端面との間に形成される空間部3へ着脱可能に介装させるオイルタンク8内に潤滑オイル9oが封入された水中モータポンプ用軸封装置では、
図3に示すようにオイルタンク8を取付座19によってモータフレーム1F下端のハウジング18下端面へ当接させて垂設させることで、ポンプ部2で発生する水圧がオイルタンク8内のダブル型軸封装置7の下部に直接伝播しないよう空間部を隔てた、圧抜き構成にも対応することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 モータ部
1F フレーム
2 ポンプ部
2C ケーシング
3 ハウジング下端面とケーシング上端面間の空間部
4 ポンプ軸
6 円筒状軸スリーブ
7 ダブル型軸封装置
8 オイルタンク
8A オイルタンクの上蓋
8B オイルタンクの下壁
9 オイル室
9o 潤滑オイル
10A 上部環溝
10B 下部環溝
11A 上部メイティンリング
11B 下部メイティンリング
13A 上部シールリング
13B 下部シールリング
14A 上部摺動面
14B 下部摺動面
15 円筒状壁体
16 回り止め用押え板
17A オイル流出用
17B オイル流入用横穴
18 ハウジング
19 取付座
20 遮蔽リング
21 吸水剤
G ガイドベーン
F1 内側方向へ突出するフランジ
F2 外側方向へ突出するフランジ