【文献】
WILBERTZ C,PROCEEDINGS OF THE SPIE,米国,SPIE,1994年,V2194,P407-417
【文献】
KALBITZER S,NUCLEAR INSTRUMENTS & METHODS IN PHYSICS RESEARCH: SECTION - B,NL,ELSEVIER,1999年 9月 2日,V158 N1-4,P53-60
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0079】
各種図面中における同種の参照記号は、同種の要素を示している。
【0080】
概略紹介
顕微鏡システムにおいては、試料の画像化や他の用途にイオンを作り出して用いることができる。気体電界イオン源を用い、試料分析(例えば、画像化)に使用できるイオンを発生させる顕微鏡システムは、気体電界イオン顕微鏡と称される。気体電界イオン源は、導電性先端の頂部に高い正電位(例えば、抽出部(以下の記載を参照)に比べて1kV以上)を印加しながら中性気体種を導電性先端の近傍(例えば、約4〜5Åの距離の範囲内)に持ち込むことによって、中性気体種をイオン化してイオン(例えば、イオンビームの形態で)を発生させる導電性先端(一般に10個以下の原子を具える頂部を有する)を含む装置である。
【0081】
図1は、気体源110と、気体電界イオン源120と、イオン光学機器130と、試料マニピュレータ140と、前面検出器150と、裏面検出器160と、通信回線172a〜172fを経由して気体電界イオン顕微鏡システム100の各種要素と電気的に接続される電子制御システム170(例えば、コンピュータ等の電子処理装置)とを含む気体電界顕微鏡システム100の概念図を示す。試料180は、イオン光学機器130と検出器150、160との間にある試料マニピュレータ140の内/上に位置している。使用時には、イオンビーム192は、イオン光学機器130を通して試料180の表面181に向けられ、イオンビーム192の試料180との相互作用によって生じる粒子194が検出器150及び/又は160により測定される。
【0082】
一般に、システム100を排気することで、該システムにおける望ましくない特定の化学種の存在を低減することが好ましい。一般に、システム100の異なる要素は、異なるバックグランド圧力で維持される。例えば、約10
-10Torrの圧力で気体電界イオン源120を維持することができる。気体電界イオン源120中に気体を導入する場合には、バックグランド圧力が約10
-5Torrに上昇する。イオン光学機器130は、気体電界イオン源120中への気体の導入に先立って、約10
-8Torrのバックグランド圧力で維持されている。気体を導入する場合には、一般に、イオン光学機器130中のバックグランド圧力を約10
-7Torrに増大させる。試料180は、一般に約10
-6Torrのバックグランド圧力で維持される室内に位置している。この圧力は、気体電界イオン源120中の気体の存在又は不在によって、ほとんど変化しない。
【0083】
図2に示すとおり、気体源110は、気体電界イオン源120に一種以上の気体182を供給するように構成される。以下、詳細に説明されるように、気体源110は、種々の純度、流量、圧力及び温度で一種又は複数種の気体を供給するように構成できる。一般に、気体源110により供給される気体の少なくとも一種は希ガス(ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe))であり、該希ガスのイオンがイオンビーム192中の主成分であることが好ましい。一般に、試料180の表面181で測定すると、システム100中の希ガスの圧力が大きくなるので、イオンビーム192中のイオンの電流は単調に増大する。特定の実施態様において、この関係は、一定範囲の希ガス圧力について、電流は一般に気体圧力に比例して増加するという指数法則によって説明できる。作業時に、希ガスの圧力は、一般に、先端頂部(以下の記載を参照)の近傍で10
-2Torr以下(例えば、10
-3Torr以下、10
-4Torr以下)及び/又は10
-7Torr以上(例えば、10
-6Torr以上、10
-5Torr以上)である。一般に、比較的高純度の気体を使用することが好ましい(例えば、システム内の望ましくない化学種の存在を低減させる)。一例としてHeを用いる場合、Heは少なくとも純度99.99%(例えば、純度99.995%、純度99.999%、純度99.9995%、純度99.9999%)とすることができる。同様に、他の希ガスを用いる場合(Neガス、Arガス、Krガス、Xeガス)、気体の純度は高純度の商業グレードであることが好ましい。
【0084】
気体源110は、一種又は複数種の希ガスに加えて、任意に一種以上の気体を供給することができる。以下、詳細に述べるように、かかる気体の一例は窒素である。一般に、一種又は複数種の追加気体は、一種又は複数種の希ガス中における不純物のレベルを超えたレベルで存在することができるが、一種又は複数種の追加気体は、依然として気体源110により導入される気体混合物全体の少数成分を構成する。一例としてHeガス及びNeガスが気体源110によって気体電界イオン源中に導入される実施態様では、気体混合物は全体でNe20%以下(例えば、15%以下、12%以下)及び/又はNe1%以上(例えば、3%以上、8%以上)を含むことができる。例えば、気体源110によりHeガス及びNeガスを導入する実施態様においては、気体混合物は全体でNe5%〜15%(例えば、8%〜12%、9%〜11%)を含むことができる。他の例として気体源100によりHeガス及び窒素ガスを導入する実施態様においては、気体混合物は全体で窒素1%以下(例えば、0.5%以下、0.1%以下)及び/又は窒素0.01%以上(例えば、0.05%以上)を含むことができる。例えば、気体源110によりHeガス及び窒素ガスを導入する実施態様においては、気体混合物は全体で窒素0.01%〜1%(例えば、0.05%〜0.5%、0.08〜0.12%)を含むことができる。一部の実施態様においては、システム100に入れる前に、(例えば、気体を混合した後、その混合物を単一の注入口を通してシステム100に送出する気体マニホールドの使用によって)一種又は複数種の追加気体を一種又は複数種の希ガスと混合する。特定の実施態様においては、システム100に入れる前に、一種又は複数種の追加気体を一種又は複数種の希ガスと混合しない(例えば、分離注入口は、システム100中に各気体を注入するために使用されるが、それらの分離注入口は、気体電界イオン源120中のいずれかの元素と相互作用する前に気体が混合されるよう十分に近接している)。
【0085】
気体電界イオン源120は、気体源110から一種以上の気体182を受け取り、一種又は複数種の気体182から気体イオンを発生するように構成される。気体電界イオン源120は、先端頂部187を有する導電性先端186と、抽出部190と、任意にサプレッサとを含む。一般に、先端頂部187から試料180の表面181(
図2において図示せず)までの距離は、5cm以上(例えば、10cm以上、15cm以上、20cm以上、25cm以上)及び/又は100cm以下(例えば、80cm以下、60cm以下、50cm以下)である。例えば、一部の実施態様においては、先端頂部187から試料180の表面181までの距離は、5cm〜100cm(例えば、25cm〜75cm、40cm〜60cm、45cm〜55cm)である。
【0086】
導電性先端186を各種物質で形成することができる。一部の実施態様においては、先端186が金属(例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、イリジウム(Ir)、レニウム(Rh)、ニオブ(Nb)、白金(Pt)、モリブデン(Mo))で形成される。特定の実施態様においては、導電性先端186を合金で形成することができる。一部の実施態様においては、導電性先端186を異なる物質(例えば、炭素(C))で形成することができる。
【0087】
使用時には、先端186は抽出部に対して正にバイアスされ(例えば、約20kV)、抽出部190は外部接地部に対して負又は正にバイアスされ(例えば、-20kV〜+50kV)、任意のサプレッサ188は先端186に対して正又は負にバイアスされる(例えば、-5kV〜+5kV)。先端186は導電性物質で形成されるので、先端頂部187での先端186の電場は先端頂部187の表面から外側を向く。先端186の形状によって、その電場は先端頂部187の近傍で最も強い。先端186の電場の強さは、例えば、先端186に印加した正の電圧を変化させることによって調整できる。この構成の場合、気体源110によって供給されるイオン化していない気体原子182はイオン化され、先端頂部187の近傍において正に帯電したイオンになる。正に帯電したイオンは、イオンビーム192として正に帯電したイオンを先端186からイオン光学機器130中に向けるように、正に帯電した先端186によって同時に弾き出され、負に帯電した抽出部190により引き付けられる。サプレッサ188は、先端186と抽出部190間の電場全体を制御するのに役立ち、その結果、正に帯電したイオンの先端186からイオン光学機器130への軌道を制御するのに役立つものである。一般には、正に帯電したイオンを先端頂部187で作り出す速度や、正に帯電したイオンを先端186からイオン光学機器130に移送する効率を制御することで、先端186と抽出部190間の電場全体を調整することができる。
【0088】
理論に縛られることを望むものではないが、一例として、以下のようにHeイオンを作り出すことができると思われる。先端頂部187の近傍における先端186の電場が、イオン化していないHeガス原子182のイオン化電場を超えるように気体電界イオン源120を構成し、先端186を比較的低い温度で維持する。イオン化していないHeガス原子182が先端頂部187に近接したとき、先端の電場によってHe原子を分極させることができ、He原子182と先端頂部187間に弱い引力を作り出す。結果として、He原子182は先端頂部と接触し、しばらくの間結合(例えば、物理吸着)した状態を保つことができる。先端頂部187の近傍における電場は、先端頂部187上に吸着したHe原子182をイオン化するのに十分高く、正に帯電したHeイオンを(例えば、イオンビームの形態で)発生させる。
【0089】
図3は、先端頂部187の略図である(該先端頂部はW(111)で形成され、以下の記載を参照)。先端頂部187は、原子棚を形成するように配置された原子の層を含む。末端原子棚は原子142で形成される。第二原子棚は原子144で形成され、第三原子棚は原子146で形成される。気体源110により送出された中性気体原子182は、先端頂部187の近傍に存在している。原子182は先端頂部187の電場によって分極化し、原子182の矢印に示すように、原子182を先端頂部187に向かわせる比較的弱い引力を受ける。
【0090】
先端の電場の強度によって、先端頂部187に近接した原子棚中の各原子は、対応するイオン化ディスク148を有することができる。イオン化ディスク148は、中性He原子がその中に入ることでイオン化を受ける可能性が高い空間領域である。一般に、中性He原子のイオン化は、中性He原子から先端頂部の原子へ通り抜ける電子によって起こる。従って、イオン化ディスク148は、Heイオンが発生してHeイオンが抜け出る空間領域を示す。
【0091】
特定の先端頂部原子用のイオン化ディスク148の大きさは、先端頂部187の形状や先端頂部187に印加される電位によって決まる。一般に、He原子のイオン化は、先端頂部187に近接した、局所電場がHe原子のイオン化電位を超える空間領域で起こることができる。従って、先端頂部187に印加される大きな電位のため、多数の先端原子がイオン化ディスクを有することになる。加えて、先端頂部187の近傍における局所電場は、先端頂部187の形状によって決まる。比較的尖った先端頂部では、先端頂部187の近傍における局所電場が比較的高くなる。比較的尖っていない先端頂部では、局所電場が、先端頂部187の近傍でさえ小さくなる。
【0092】
図3において、先端頂部187の個々の原子に対応するイオン化ディスク148は、相互に空間的に分離されている。一部の実施態様においては、先端頂部187の電場が十分に大きい場合に、1個を超える原子(例えば、原子142)からのイオン化ディスクが空間的に重なり合うことができ、複数の先端頂部原子に近接した空間領域に及ぶ大きなイオン化ディスクを形成する。先端頂部187にて電場を低減することで、イオン化ディスク148により占められる空間の体積を低減することができ、
図3に示す形状を実現することができ、ここで、少数の先端頂部原子はそれぞれが空間的に分離された特有のイオン化ディスクを有する。多くの場合、イオン源120の使用時には先端頂部187の形状を容易に変更しないので、先端頂部187の近傍における電場は、一般に先端頂部187に印加される電位を調整することで制御される。
【0093】
更に、先端頂部187に印加される電位を低減することによって、
図3に示すイオン化ディスクの一部を除去することができる。例えば、先端頂部187は第二原子棚の原子144の近傍において鋭くなく、そして、先端頂部187に印加される電位を低減することによって、原子144の近傍における先端頂部187の電場を低減することができるので、それらの領域においては、高い可能性でHe原子のイオン化が起きない。その結果、原子144に対応するイオン化ディスクはもはや存在していない。しかしながら、末端棚の原子142の近傍における先端頂部187の電場は、He原子のイオン化をもたらすのに十分高いままでいることができ、そのため、原子142に対応するイオン化ディスク148は残存している。先端頂部187に印加される電位を慎重に制御することによって、末端棚の原子142に対応するイオン化ディスクのみが存在し、末端棚の原子に対応するイオン化ディスクが互いに空間的に分離されるように、イオン源120は作動することができる。結果として、先端頂部187の近傍でイオン化されたHe原子が、特定の末端棚原子の近傍におけるイオン化によって作り出される。
【0094】
中性He原子182は、イオン化ディスク148内に長く滞在するほど、イオン化を受ける可能性が高い。He原子の分極は、先端頂部187の電場によって誘起し、分極したHe原子を先端頂部187に向けて移動させ、更に分極したHe原子が先端頂部187に結合した状態のままであることを確実にし、He原子182がイオン化ディスク148内に残存する時間を増加させ、分極したHe原子のイオン化の可能性を時間とともに高める。
【0095】
また、分極したHe原子は、一の位置から他の位置へ先端頂部187の表面に沿って移動することができる。分極したHe原子と先端頂部187間の引力は分極したHe原子の位置における先端頂部187の電場の局部強度によって決まるので、分極したHe原子の動きは、局部電場が最も高い先端186の先端頂部187の端に向けて(例えば、末端棚142に向けて)該原子を移送する傾向がある。この分極したHe原子の移送機構は、(例えば、末端棚の原子142のみに対応する別個のイオン化ディスクが存在することを確実にするため)先端186に印加される電位の制御と組み合わせて、Heイオンビーム192が気体電界イオン源120によって作り出されるようにイオン源120を作動させるのに使用できる。ここで、上記イオンビーム中の個々のHeイオンは、Heガスと末端棚原子142の一つとの相互作用によって発生する。従って、イオンビーム192は、各末端棚原子142からの複数のHeイオンを含み、そして、各Heイオンは末端棚原子142の内の一つからのイオン化に帰することができる。
【0096】
上記したように、一般に、先端頂部187に印加される電位を変えることでイオン化ディスクの大きさ及び形状を変更することができ、適切に大きく印加された電位によって近接したイオン化ディスク148を重なり合わせることができたり、適切に小さく印加された電位によって互いが空間的に分かれた状態を維持させることができる。一般に、イオン化ディスク148は、先端原子142、144及び146から約0.4nmの距離で間隔があけられる。先端原子に対応する個々のイオン化ディスクは、一般に、与えられたディスクとそれに対応する原子を結ぶ線に沿った方向で測定すると、約0.02nmの厚さを有している。イオン化ディスク148は、一般に、与えられたディスクとそれに対応する原子を結ぶ線と垂直な方向で測定すると、対応する原子の直径と同じくらいの直径を有している。
【0097】
図4は、先端頂部187の作動構成を示し、ここで、先端186に印加される電位は、それぞれが三つの末端原子棚原子142の一つに対応する三つのイオン化ディスク148を作り出す。Heイオンが先端頂部187の近傍で作り出された時点で、それらは大きな正の先端電位によって急速に加速され先端から離れる。Heイオンは複数の軌道に沿って加速され先端頂部187から離れる。このような二つの軌道156を
図4に示す。
図4に表すように、軌道156は、末端棚の中央原子についての軌道分布の半値全幅(FWHM)の右極限及び左極限に相当する。そのようにして軌道156を中央末端棚原子の位置に向かって後方に(例えば、線154に沿って)推定すると、それらは中央末端棚原子についての仮想源154を定める。仮想源152の直径は、一般に中央末端棚原子の直径より小さく、中央末端棚原子の直径よりかなり小さい場合もある(例えば、2倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上)。同様の考察が他の末端棚原子にも当てはまり、各末端棚の原子は対応する仮想源の大きさを有している。
【0098】
末端棚原子用の仮想源の大きさが小さいことは、多くの利点を提供することができる。例えば、イオンビーム192の仮想源の大きさが小さいことと、イオンビーム192中のイオンが生じるイオン化ディスクの厚みが小さいことは、イオンビーム192が比較的高い輝度及び比較的狭いイオンエネルギー分布を有することを確実にするのに役立つことができる。
【0099】
理論に縛られることを望むものではないが、低過ぎる先端温度を使用することによって、電流安定度に悪影響を与えたり及び/又は先端上で増加した不純物吸着からの望ましくない効果を大きくしたりする場合があると思われる。一般に、先端186の温度は、5K以上(例えば、10K以上、25K以上、50K以上、75K以上)及び/又は100K以下(例えば、90K以下、80K以下)である。例えば、先端186の温度は5K〜100K(例えば、25K〜90K、50K〜90K、75K〜80K)とすることができる。例えば、液体ヘリウム又は液体窒素等の冷却剤と熱結合することによって、先端186の温度を達成することができる。代わりに又は追加的に、極低温冷却器を用いて先端186を熱的に冷却することができる。
【0100】
先端186の温度が低過ぎると、吸着He原子を先端頂部187の末端原子棚の原子142に移動することにより移送する速度を低減するので、He原子が単位時間当たり不十分な量でそれらをイオン化できる原子142に到着すると思われる。結果として、(例えば、電界イオン顕微鏡(FIM)技術を用いて又は走査FIM(SFIM)技術によって)先端186の放出パターンを観察すると、個々の末端棚原子からのイオンの存在量は、比較的高い存在量から比較的低い存在量まで行ったり来たりする(通常、ブランキングと呼ばれる)。このことは、例えば、ある時間で末端棚原子の近傍においてイオン化に利用できるHe原子が存在しないときに起こり得る。先端186の温度が上昇するにつれて、先端頂部187の原子の末端棚に向かうHe原子の移送速度が上昇し、末端棚原子142からのこのような交互の高/低の存在量が観察されることを減らすか又はなくす。
【0101】
また、先端186の温度が高過ぎると、分極したHe原子が大き過ぎる運動エネルギーを有することになり、末端棚原子142の近傍におけるHe原子の効率的なイオン化を確保するのに十分長い時間先端186に結合した状態を保つことができないと思われる。更に、このことは、FIM画像化技術及び/又はSFIM画像化技術を用いて観察すると、個々の末端棚原子から放出パターンの消失をもたらす場合がある。結果として、各末端棚原子142でのHeイオン化処理よって各末端棚原子142から安定したイオン電流を生成することを確実にするには、先端186の温度を慎重に制御し、望ましくない高温効果及び低温効果の双方に対して緩和させることである。
【0102】
一般に、イオン光学機器130は、試料180の表面181にイオンビーム192を向けるように構成される。以下、詳細に説明するように、イオン光学機器130は、例えば、イオンビーム192中のイオンを集束し、平行にし、加速し及び/又は減速することができる。また、イオン光学機器130は、イオンビーム192中の一部のイオンのみがイオン光学機器130を通過することを可能にする。通常、イオン光学機器130は、所望のとおりに構成される種々の静電イオン光学素子や他のイオン光学素子を含む。イオン光学機器130における一つ以上の成分(例えば、静電偏向器)の電場強度を操作することによって、試料180の表面181に亘ってHeイオンビーム192を走査することができる。例えば、イオン光学機器130は、直交する二つの方向にイオンビーム192を偏向させる二つの偏向器を含むことができる。偏向器は、変動する電場強度を有することができ、その結果、表面181領域に亘ってイオンビーム192をラスタ化する。
【0103】
イオンビーム192が試料180に衝突するとき、様々な異なる種類の粒子194を作り出すことができる。これら粒子は、例えば、二次電子、オージェ電子、二次イオン、二次中性粒子、一次中性粒子、散乱イオン及び光子(例えば、X線光子、IR光子、可視光子、UV光子)を含む。検出器150及び160は、Heイオンビーム192と試料180の間に相互作用を与える一種以上の異なる種類の粒子をそれぞれが測定できるように設置し構成される。
図1に示すように、検出器150は主として試料180の表面181から発生する粒子194を検出するために位置しており、検出器160は主として試料180の表面183から出てくる粒子194(例えば、透過粒子)を検出するために位置している。以下、詳細に説明するように、一般に本願に開示の顕微鏡システムにおいては、検出器をいかなる個数及び構成でも用いることができる。一部の実施態様においては、複数の検出器を用いており、複数の検出器の一部は異なる種類の粒子を測定するように構成される。特定の実施態様において、検出器は、同一の種類の粒子について異なる情報(例えば、粒子エネルギー、与えられた粒子の角度分布、与えられた粒子の全存在量)を提供するように構成される。任意には、かかる検出器の配置を組み合わせて用いることができる。
【0104】
一般に、検出器により測定される情報を用いて試料180についての情報を決定する。試料180についての例示的な情報としては、表面181についてのトポグラフィー情報、(表面181及び/又は試料180の内層面の)物質構成情報、試料180の結晶配向情報、表面181についての電圧コントラスト情報(及びその結果の電気特性)、試料180の内層面についての電圧コントラスト情報、試料180の光学特性、及び/又は試料180の磁気特性が挙げられる。一般に、この情報は、試料180の画像を一つ以上得ることで決定される。表面181に亘ってイオンビーム192をラスタ化することによって、試料180についての画素毎の情報を不連続な段階で得ることができる。検出器150及び/又は160は、各画素で一種以上の異なる種類の粒子194を検出するように構成できる。一般に、画素は正方形であるが、一部の実施態様においては、画素が異なる形状(例えば、長方形)を有することができる。画素サイズは、画素の辺の長さに相当し、例えば、100pm〜2μm(例えば、1nm〜1μm)とすることができる。一部の実施態様においては、隣接した画素の位置を少なくとも200pm以内(例えば、少なくとも100pm以内、少なくとも75pm以内、少なくとも50pm以内)に決定することができる。従って、システムの作業者は、ビームスポットの中心の位置を少なくとも200pm以内(例えば、少なくとも100pm以内、少なくとも75pm以内、少なくとも50pm以内)に決定することができる。特定の実施態様において、試料180の視野(FOV)は200nm以上(例えば、500nm以上、1μm以上、50μm以上、100μm以上、500μm以上、1mm以上、1.5mm以上)及び/又は25mm以下(15mm以下、10mm以下、5mm以下)である。視野は、イオン顕微鏡により画像化される試料表面の範囲を指す。
【0105】
顕微鏡システム100の操作は、一般に電子制御システム170によって制御される。例えば、気体源110により供給される一種又は複数種の気体、先端186の温度、先端186の電位、抽出部190の電位、サプレッサ188の電位、イオン光学機器130の要素の設定、試料マニピュレータ140の位置、及び/又は検出器150及び160の位置及び設定を制御するように、電子制御システム170を構成することができる。任意には、(例えば、電子制御システム170と一体となったユーザーインターフェースによって)これらパラメータの一つ以上を手動で制御してもよい。追加的に又は代わりに、(例えば、コンピュータ等の電子処理装置によって)電子制御システム170を用い、検出器150及び160により収集した情報を分析し、試料180についての情報(例えば、トポグラフィー情報、物質構成情報、結晶情報、電圧コントラスト情報、光学特性情報、磁気情報)を提供することができ、該情報は、任意に画像、グラフ、表、表計算等の形態とすることができる。一般には、電子制御システム170は、表示部又は他の種類の出力装置、入力装置、及び記録媒体を特徴とするユーザーインターフェースを含むことができる。
【0106】
ヘリウムイオン顕微鏡システム
A.概説
図5は、Heイオン顕微鏡システム200の概略図を示す。顕微鏡システム200は、Heイオン源及びイオン光学機器130を囲む第一真空ハウジング202と、試料180及び検出器150、160を囲む第二真空ハウジング202とを含む。気体源110は、送出管228を通してHeガスを顕微鏡システム200に送り出す。流量調整器230は送出管228を通るHeガスの流量を制御し、温度制御器232は気体源110中のHeガスの温度を制御する。Heイオン源は、先端マニピュレータ208に取り付けた先端186を含む。また、Heイオン源は、先端186からイオン光学機器130中にHeイオンを誘導するように構成された抽出部190及びサプレッサ188を含む。イオン光学機器130は、第一レンズ216と、軸合わせ偏向器220及び222と、絞り224と、非点収差補正器218と、走査偏向器219及び221と、第二レンズ226とを含む。絞り224は、絞り取付け部234に位置している。試料180は、第二真空ハウジング204内の試料マニピュレータ140内/上に取り付けられる。また、第二真空ハウジング204内には、検出器150及び160が位置しており、試料180から粒子194を検出するように構成される。気体源110、先端マニピュレータ208、抽出部190、サプレッサ188、第一レンズ216、軸合わせ偏向器220及び222、絞り取付け部234、非点収差補正器218、走査偏向器219及び221、試料マニピュレータ140、並びに/又は検出器150及び/若しくは160は、一般に電子制御システム170によって制御されている。また、任意に、電子制御システム170は、真空ポンプ236及び237を制御し、該真空ポンプ236及び237は、真空ハウジング202及び204の内部やイオン光学機器内に減圧環境を提供するように構成される。
【0107】
B.イオン源
上述のとおり、先端186は、一般に、適した導電性物質のいずれかにより形成できる。特定の実施態様においては、先端186を単結晶金属等の単結晶物質で形成することができる。一般には、先端頂部187の原子の末端棚における特定の単結晶の配向を先端186の長手方向軸と3°以下の範囲内(例えば、2°以下の範囲内、1°以下の範囲内)で軸合わせする。一部の実施態様において、先端186の頂部187は、一定数の原子(例えば、20個以下の原子、15個以下の原子、10個以下の原子、9個以下の原子、6個以下の原子、3個以下の原子)を有する原子棚で終端処理することができる。例えば、先端186の頂部187は、W(111)で形成でき、三個の原子(三量体)を具える末端棚を有することができる。
図6及び7は、それぞれ先端頂部に最も近いW先端186の二つの原子棚における拡大上面略図及び拡大側面略図を示す。末端棚は、三量体で配置された三個のW原子302を含み、Wの(111)表面に相当する。理論に縛られることを望むものではないが、W(111)結晶面の表面エネルギーが正三角形に配置され三量体を形成する三個のW原子によって形成された末端棚を有利に支持するので、この三量体は(形成、再形成及び安定性の容易さの観点から)有利であると思われる。三量体原子302は、W原子304の第二棚によって支持されている。
【0108】
一部の実施態様において、先端186は、三個未満の原子又は三個を超える原子を含む末端棚を有することができる。例えば、W(111)先端は、二個の原子を含む末端棚を有していてもよいし、一個の原子のみを含む末端棚を有することもできる。或いは、W(111)先端は、4個以上の原子(例えば、5個以上の原子、6個以上の原子、7個以上の原子、8個以上の原子、9個以上の原子、10個以上の原子、10個を超える原子)を含む末端棚を有することもできる。
【0109】
代わりに又は追加的に、他のWの結晶配向(例えば、W(112)、W(110)又はW(100))に相当する先端を使用することができ、かかる先端は、1個以上の原子(例えば、2個以上の原子、3個以上の原子、4個以上の原子、5個以上の原子、6個以上の原子、7個以上の原子、8個以上の原子、9個以上の原子、10個以上の原子、10個を超える原子)を含む末端棚を有することができる。
【0110】
一部の実施態様においては、単結晶W以外の物質で形成される先端をイオン源に用いることができ(例えば、上記した金属のうち一の金属の単結晶等の金属の単結晶)、かかる先端は1個以上の原子(例えば、2個以上の原子、3個以上の原子、4個以上の原子、5個以上の原子、6個以上の原子、7個以上の原子、8個以上の原子、9個以上の原子、10個以上の原子、10個を超える原子)を含む末端棚を有することができる。
【0111】
以下に記載のように、先端頂部187の形状はイオンビームの質に影響を与えることができ、該イオンビームは顕微鏡システム200の性能に影響を与えることができる。例えば、側面から見たときに、先端頂部187をその長手方向軸について対称に形成してもよいし、先端頂部187をその長手方向軸について非対称に形成してもよい。特定の実施態様においては、一方向以上の側面から見て、先端頂部187をその長手方向軸について対称に形成してもよいし、一方向以上の異なる側面図から、先端頂部187をその長手方向軸について非対称に形成してもよい。
図8は、その長手方向軸308に対して非対称に形成される例示的な先端300の側面図を(
図6及び7と比べて非常に小さい倍率で)示す。与えられた側面図から、先端300が長手方向軸308に沿って非対称に形成される度合いを、例えば、平均完全円錐角度や平均円錐方向等のパラメータを用いて定量化することができる。これらパラメータを以下のように決定する。
【0112】
先端300の画像は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて得られる。
図8は、かかる画像の略図である。先端300は、頂点310及び第二点312を含み、双方は長手方向軸308上に位置され、点312は長手方向軸308に沿って頂点310から1μmをあけて配置されている。想像線314は、
図8の面において点312を通して軸308に対し垂直に伸びる。線314は、点316及び318で先端300の輪郭と交差する。左円錐角θ
lは、先端300の輪郭の点316での接線と線320(点316を通って軸308と平行に伸びる想像線)との間の角度である。同様に、右円錐角θ
rは、先端300の輪郭の点318での接線と線322(点318を通って軸308と平行に伸びる想像線)との間の角度である。先端300の完全円錐角度は、θ
lとθ
rの大きさの合計である。例えば、θ
lの大きさが21.3°で、θ
rの大きさが11.6°である実施態様の与えられた側面図については、その側面図について先端300の輪郭の完全円錐角度が32.9°である。先端300は一の側面図では対称に見えて異なる側面図では非対称に見え得るので、通常、先端300の平均完全円錐角度を決定することが好ましい。平均完全円錐角度は、先端300の八つの異なる側面図についての完全円錐角度を測定し(それぞれは、先端300の先の側面図に対し軸308まわり45°での先端300の連続回転に相当する)、次いでこのように決定された八つの完全円錐角度の平均を計算することで決定され、平均完全円錐角度をもたらす。理論に縛られることを望むものではないが、平均完全円錐角度が小さ過ぎると、先端の使用時(例えば、先端300を用いてイオンビーム192を作り出すとき)にアーク放電が起こる場合があり、また、先端の末端棚におけるHe原子とそれ以外の先端原子との相互作用によるHeイオンの発生が、先端300の近傍における大きな電場によって起こる場合があると思われる。また、平均完全円錐角度が大き過ぎると、再現性良く先端300を再構築する能力が低下する場合があり、先端300の近傍における電場が低すぎてHe原子を確実にイオン化できず、安定なHeイオン電流を作り出すことができないおそれがあると思われる。一部の実施態様においては、先端300の平均完全円錐角度が45°以下(例えば、42°以下、40°以下、35°以下、32°以下、31°以下)とすることができ、及び/又は平均完全円錐角度が15°以上(例えば、20°以上、23°以上、25°以上、28°以上、29°以上)とすることができる。例えば、先端300の平均完全円錐角度は、27°〜33°(例えば、28°〜32°、29°〜31°、30°)とすることができる。特定の実施態様においては、八つの完全円錐角度測定についての標準偏差が、その平均完全円錐角度の40%以下(例えば、30%以下、20%以下、10%以下)である。
【0113】
円錐方向は、θ
lとθ
rの大きさの差の絶対値の半分である。そのため、例えば、θ
lの大きさが21.3°で、θ
rの大きさが11.6°である実施態様の与えられた側面図については、円錐方向が、0.5*|21.3°−11.6°|、即ち4.9°である。平均完全円錐角度について上記したのと同一の理由のため、先端の平均円錐方向を決定するのが好ましい場合がある。平均円錐方向は、先端300の八つの異なる側面図の円錐方向を測定し(それぞれは先の側面図に対し軸308まわり45°での先端300の連続回転に相当する)、次いで八つの平均円錐方向測定の平均を計算することで決定され、平均円錐方向をもたらす。一部の実施態様においては、先端300の平均円錐方向が10°以下(例えば、9°以下、8°以下、7°以下、6°以下、5°以下)とすることができ、及び/又は先端300の平均円錐方向が0°以上(例えば、1°以上、2°以上、3°以上、4°以上)とすることができる。特定の実施態様においては、先端300の平均円錐方向が0°〜10°(例えば、1°〜10°、3°〜10°、6°〜10°、2°〜8°、4°〜6°)である。
【0114】
また、先端300は、その曲率半径を特徴とすることができ、該曲率半径を次のように決定することができる。
図9は、先端300の略側面図を示す。実際には、この側面図はSEMを用いて得られる。長手方向軸308の両側で、先端300の輪郭の傾きを測定する。点324及び326は、頂部310に最も近い先端300の表面上に示され、先端300の輪郭の傾き(接線328及び330によりそれぞれ示される)は、それぞれ1及び-1の値を有する(例えば、45°の傾斜線)。
図9の面において軸308と垂直に測定した点324と軸308間の距離は、先端300の左側接線距離T
lである。
図9の面において軸308と垂直に測定した点326と軸308間の距離は、先端300の右側接線距離T
rである。左側半径R
lは
として算出され、右側半径R
rは
として算出される。先端300の曲率半径Rは、R
lとR
rの平均として算出される。そのため、例えば、T
lが120nmで、T
rが43nmである実施態様においては、R
lが169nmで、R
rが61nmで、Rが115nmである。平均完全円錐角度及び平均円錐方向について上記したのと同一の理由のため、先端の平均曲率半径を決定するのが好ましい場合がある。平均曲率半径は、先端300の八つの異なる側面図について曲率半径を測定し(それぞれは先の側面図に対して軸308まわり45°での先端300の連続回転に相当する)、次いで八つの曲率半径の平均を計算することで決定され、平均曲率半径をもたらす。理論に縛られることを望むものではないが、平均曲率半径が小さ過ぎると、先端の使用時にアーク放電が起こる場合があり及び/又は先端の末端原子棚上でHeガスのイオン化がそれ以外の先端原子の近傍で起こる場合があると思われる。平均曲率半径が大き過ぎると、再現性良く先端を再構築する能力が低下する場合があり、先端300近傍の電場強度の低下によって先端300近傍におけるHe原子のイオン化率を低減するおそれがある。一部の実施態様においては、先端300の平均曲率半径が200nm以下(例えば、180nm以下、170nm以下、160nm以下、150nm以下、140nm以下、130nm以下)であり、及び/又は先端300の平均曲率半径が40nm以上(例えば、50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上、90nm以上、100nm以上、110nm以上)である。例えば、一部の実施態様においては、先端300の平均曲率半径が40nm〜200nm(例えば、50nm〜190nm、60nm〜180nm、70nm〜170nm、80nm〜160nm)である。特定の実施態様においては、八つの曲率半径測定の標準偏差が、その平均曲率半径の40%以下(例えば、30%以下、20%以下、10%以下)である。
【0115】
図10は、三量体の末端原子棚を有するW(111)先端を作製する処理400の流れ図である。第一工程402では、単結晶W(111)の前駆体線を支持組立体に取り付ける。一般に、W(111)前駆体線は3mm以下(例えば、2mm以下、1mm以下)及び/又は0.2m以上(例えば、0.3mm以上、0.5mm以上)の直径を有する。一部の実施態様においては、W(111)前駆体線が0.2mm〜0.5mm(例えば、0.3mm〜0.4mm、0.25mm)の直径を有する。適した前駆体線を、例えば、FEIビームテクノロジー社(ヒルズバロ,OR)から得ることができる。
【0116】
一部の実施態様において、より一般には、先端用前駆体が線と異なる形態であることができる。例えば、結晶構造で終端処理する突起部を有する導電性物質の先端用前駆体を形成することができる。該突起部の末端は、例えば、単結晶構造とすることができ、W(111)で形成されたり又は同様の若しくは異なる結晶配向の他の物質で形成されたりすることができる。
【0117】
図11A及び11Bは、それぞれ支持組立体520の一の実施態様における斜視図及び底面図を示す。支持組立体520は、支持基盤524に接続される支持柱522a及び522bを含む。柱522a及び522bは加熱線526a及び526bに接続され、一本のW(111)前駆体線528が加熱線526a及び526bに(例えば、溶接によって)接続される。柱522a及び522bは、例えば、電源(例えば、電力供給)等の補助装置に接続でき、W(111)前駆体線528の温度制御を可能にする。
【0118】
基盤524は、組立体520用の機械的支持を提供し、通常、温度サイクルに耐えることができ電気絶縁体として作用する一種以上の物質で形成される。例えば、一部の実施態様においては、ガラス及び/又は硬質重合体及び/又はセラミック等の電気絶縁体から基盤524を形成する。
【0119】
柱522a及び522bは、通常、一種以上の導電性物質で形成される。一般に、柱522a及び522bの形成に用いる材料は、柱522a及び522bと基盤524とが同程度の熱膨張率を有することができ、前駆体線528の温度サイクル中、柱522a及び522bが基盤524に対し適切な位置に固定されたままであるように選択される。一部の実施態様においては、柱522a及び522bが、鉄、ニッケル及びコバルトを含む合金から形成される。柱522a及び522bを形成できる市販の材料の一例は、KOVAR
TMである。
【0120】
加熱線526a及び526bは、一般に、前駆体線528と比較して高い電気抵抗を有する一種以上の物質から形成される。例えば、一部の実施態様においては、タングステン−レニウム合金等の物質から加熱線526a及び526bを形成することができる。以下に説明するように、加熱線526a及び526bは、(例えば、外部電力供給から)電流が該線を通して流される際に熱を発生し、その熱を用いて、様々な先端処理工程中の前駆体線528の温度を上昇させたり及び/又は制御したりすることができる。一般に、加熱線526a及び526bの直径及び材料は、前駆体線528の温度の適切な制御が製造過程中に達成できるように選択される。一部の実施態様において、加熱線526a及び526bは、例えば、100μm〜750μmの直径を有する。
【0121】
基盤524、柱522a及び522b並びに加熱線526a及び526bの幾何学的特性は、通常、所望のとおりに選択できる。例えば、一部の実施態様においては、柱522aと522b間の距離が、1mm〜10mmとすることができる。
【0122】
任意に、2本を超える柱(例えば、3本の柱、4本の柱、5本の柱、6本の柱)を基盤524に取り付けることができ、それぞれの柱は対応する加熱線を通して前駆体線528に接続されている。追加の柱を用意することは、組立体520の安定性を増大し及び/又は組立体520の機械的振動に対する感受性を低減することができる。
【0123】
一部の実施態様においては、前駆体線528に圧縮力をかける支持組立体によって、前駆体線528を適切な位置に保持することができる。例えば、
図12は、前駆体線528を固定するボーゲル取付け部を含む例示的な支持組立体550を示す。適したボーゲル取付け部は、例えば、APテック社(マクミンビル、OR)から市販されている。支持組立体550は、支持基盤556と、該基盤556に取り付けられた取付け腕部552とを含む。前駆体線528を固定するには、腕部552をこじ開け、該腕部間の隙間に(例えば、熱分解炭素で形成される)スペーサ554を挿入する。次に、スペーサ554間の開口部に前駆体線528を挿入して、取付け腕部552を放す。腕部552の弾力性によって、腕部は、スペーサ554及び前駆体線528に対し矢印558及び560により示される方向に圧縮力をかけ、それにより、前駆体線528をスペーサ554に対して固定する。線528、スペーサ554及び腕部552間の静止摩擦係数は、それら部材の相対運動を抑え、線528が支持組立体550中の適切な位置に固定されたままであることを確実にする。一般に、線528は、腕部552の上方に、例えば、1mm〜5mmの距離で伸びる。
【0124】
基盤556は、基盤524の形成に使用できるものと同様の物質から形成できる(例えば、ガラス及び/又は硬質重合体及び/又はセラミック)。基盤556の物質は、一般に温度サイクルに耐えることができる電気絶縁体である。
【0125】
取付け腕部552は、一種以上の導電性物質から形成できる。また、腕部552の形成に用いる物質は、基盤556及び腕部552が同程度の熱膨張率を有し、前駆体線528の温度サイクル中、腕部552が基盤556に対し適切な位置に固定されたままであるように選択される。一部の実施態様においては、腕部552が、鉄、ニッケル及びコバルトを含む合金から形成される。腕部552を形成するのに適した市販の材料としては、KOVAR
TMが挙げられる。
【0126】
スペーサ554は、熱分解炭素等の物質から形成される。適した熱分解炭素のスペーサは、例えば、APテック社(マクミンビル、OR)から入手できる。熱分解炭素スペーサは、一般に、互いの上に重ねて層構造を形成する一連の炭素平板で形成される。一般に、熱分解炭素の抵抗率は方向に従って変化し、板に対し垂直な方向(例えば、積層板の面に略垂直な方向)における炭素の抵抗率は、板の面と平行な面の方向に沿った抵抗率と比べて高い。取り付け時には、スペーサ554の高い抵抗率の方向が腕部552にかけられる圧縮力の方向と略平行(例えば、矢印558及び560と略平行)であるようにスペーサ554を配向させる。腕部552に電流を導入した場合、スペーサ554はその高い抵抗率によって熱を発生させる。従って、スペーサ554は、前駆体線528の温度を調整する加熱素子として機能することができる。
【0127】
再度、
図10を参照すると、第二工程404では、電気化学用の槽中で前駆体線528をエッチングし、線528の先端を付形する。一般に、工程404は、複数の副工程を含む。
【0128】
エッチング処理における第一副工程は、任意に、線528から表面汚染物質を除去するための清浄工程とすることができる。このエッチング処理は、電気化学エッチング液中に線528を配置することと、線528に交流(AC)電圧を当てることを伴う。例えば、エッチング液は1Nの水酸化ナトリウム(NaOH)溶液とすることができ、1VのAC電圧を使用することができる。次に、支持組立体(例えば、支持組立体520又は550)の全体を掃除し(例えば、水中での超音波洗浄)、特定の残留汚染物質を取り除くことができる。
【0129】
工程404における次の副工程は、任意に線528の一部にレジスト材料を塗布することである。一般に、レジスト材料は、線528の頂部から線528の約0.5mmの長さを覆うように塗布される。レジスト材料の塗布は、例えば、清浄表面に少量のレジスト液を落としたり、塗布の間でレジストを乾燥させながらレジスト中に線528を数回浸漬させることで達成できる。塗布されたレジストは、その後の処理工程の間にエッチングされる前駆体線528の量を制限する。前駆体線528上での後の先端の形成がしばしばエッチングによる先の先端の除去に続くので、レジスト材料の使用によって、前駆体線を廃棄する前に多数の先端を与えられた前駆体線上に形成することを可能にする。多種多様のレジスト材料を前駆体線528に適用することができる。例示的なレジスト材料は、化粧品の爪用光沢剤である。一部の実施態様においては、一種以上のレジスト材料を用いることができる。レジスト材料の使用は先端形成過程に任意的であり、一部の実施態様においては、製造過程において前駆体線528にレジスト材料を塗布しないで、後の工程を始める場合がある。
【0130】
工程404の次の副工程は、前駆体線528を電気化学的にエッチングすることである。様々な電気化学エッチング手段を用いることができる。一部の実施態様においては、下記に示す電気化学エッチング手段を用いる。支持組立体、皿、及び該皿に及ぶ電極(例えば、ステンレス電極)を平行移動させるための平行移動装置を含むエッチング固定具に支持組立体を設置する。エッチング液が電極と接触するように、皿にエッチング液を設置する。線528のレジスト接触面がエッチング液とちょうど接触するまで、平行移動装置によって支持組立体を皿に向かって下げる。次に、エッチング液中に線528を追加の量(例えば、0.2mm)下げる。
【0131】
エッチング液は、線528を化学的に腐食する成分(例えば、NaOH)を含む。エッチング液がNaOHを含む実施態様においては、エッチング液中のNaOHの濃度を選択し、前駆体線528の腐食速度や該液の化学環境を変えることができる。例えば、一部の実施態様においては、NaOHの濃度が、0.1M以上(例えば、0.2M以上、0.5M以上、0.6M以上、0.8M以上、1.2M以上、1.4M以上、1.6M以上、2.0M以上、2.5M以上、3.0M以上)及び/又は10.0M以下(例えば、9.0M以下、8.0M以下、7.0M以下、6.5M以下、6.0M以下、5.5M以下、5.0M以下、4.5M以下、4.0M以下)とすることができる。一部の実施態様においては、NaOHの濃度が0.5M〜10.0M(例えば、1.0M〜9.0M、1.5M〜8.0M、2.0M〜7.0M、2.0M〜6.0M、2.0M〜3.0M)である。
【0132】
特定の実施態様においては、NaOHの代わりに又はNaOHに加えて、エッチング液に他の腐食剤を添加することができる。かかる腐食剤の例としては、KOH(溶融KOHを含む)、HCl、H
3PO
4、H
2SO
4、KCN及び/又は溶融NaNO
3が挙げられる。特定の種類の物質で形成された前駆体線を腐食する能力に基づいて、エッチング液中の腐食剤を選択することができる。例えば、NaOH等の試薬を用いて、Wで形成された線を腐食することができる。Ir等の異なる物質で形成された線には、エッチング液中に他の腐食剤を用いることができる。
【0133】
一部の実施態様において、エッチング液は、比較的少量の界面活性剤を含むことができる。理論に縛られることを望むものではないが、界面活性剤は、前駆体線528の対称的なエッチングを促進するのに役立つことができると思われる。このような目的に適した界面活性剤としては、イーストマンコダック社(ロチェスター、NY)から入手可能なPhotoFlo 200等の材料が挙げられる。一般に、エッチング液中の界面活性剤の濃度は、0.1体積%以上(例えば、0.2体積%以上、0.3体積%以上、0.4体積%以上)及び/又は2体積%以下(例えば、1体積%以下、0.8体積%以下、0.6体積%以下)である。
【0134】
また、一部の実施態様においては、エッチング液を攪拌しながらエッチング処理を行うことができる。エッチング処理の結果物に基づいて、経験的にエッチング溶液の攪拌速度を決定することができる。
【0135】
エッチング液中に前駆体線528を設置した後、線528と電極の双方に外部電力供給を接続し、線528及び電極に亘って電位を印加して、線528の電気化学的な腐食反応を容易にすることができる。一般に、AC源又は直流(DC)源の一方から電圧を印加することができる。通常、均一にエッチングされた前駆体線528を作り出す振幅の経験的な決定に基づいて、印加電圧の振幅を所望のとおりに選択することができる。例えば、一部の実施態様においては、印加電位の振幅が、3.0V以上(例えば、3.2V以上、3.5V以上、4.0V以上、5.0V以上、10V以上、15V以上、20V以上)及び/又は50V以下(例えば、40V以下、35V以下、30V以下、25V以下)である。一部の実施態様においては、印加電位の振幅が、3.0V〜50V(例えば、3.5V〜40V、4.0V〜30V、4.5V〜20V)である。
【0136】
エッチング液に印加されるACパルスの継続時間は、通常、線528の制御されたエッチングを促進するため所望の通りに変えることができる。例えば、一部の実施態様においては、エッチング液に印加されるパルスが、10ms以上(例えば、25ms以上、50ms以上、75ms以上、100ms以上、150ms以上、200ms以上、250ms以上)及び/又は1秒以下(例えば、900ms以下、800ms以下、700ms以下、650ms以下、600ms以下)の継続期間を有する。一部の実施態様においては、エッチング液に印加されるパルスが、10ms〜1秒(例えば、10ms〜900ms、10ms〜800ms、10ms〜700ms、10ms〜600ms)の継続時間を有する。
【0137】
一般に、継続期間及び/又は振幅を変えるパルスをエッチング液に印加して、該液と接触する線の領域での前駆体線528の腐食をもたらすことができる。一般に、処理中、前駆体線528の端の一部がエッチング液中に脱落し、更に、前駆体線528の新たに露出しエッチングされる領域がその後の工程において処理される。例えば、適したエッチング処方は、振幅5Vの約100ACパルスの初期印加を含み、各パルスは約580msの継続時間を有している。その後、一連の約60パルスを印加し、各パルスは約325msの継続時間と5Vの振幅を有している。次に、線528の端の一部がエッチング液中に脱落するまで、35msの継続時間及び5Vの振幅を有するパルスを印加する。
【0138】
電気パルスのエッチング液への印加中、前駆体線528の浸漬深さを調整することができる。一般に、エッチング処理は、前駆体線528に径小部領域の形成をもたらす。線528の浸漬深さを調整することは、エッチング液のメニスカスの位置を径小部領域の中間点の近くに合わせることを確実にするのに役立つことができ、比較的対称的な先端を形成する可能性を高めることができる。脱落点に近づくとき(例えば、径小部領域の直径が非常に小さくなるとき)、浸漬深さの調整を行い、前駆体線528の端がポキッと折れないことを確実にする。前駆体線528の端の脱落後、新たに露出した線528の先端をエッチング液に極めてわずかに浸漬させ、追加の電気パルスを印加する。一部の実施態様においては、二つの電気パルスを印加する。一例として、第一パルスは20ms〜50ms(例えば、30ms〜40ms、35ms)の継続時間で1V〜10V(例えば、3V〜7V、5V)とすることができ、第二パルスは10ms〜25ms(例えば、15ms〜20ms、17ms)の継続時間で1V〜10V(例えば、3V〜7V、5V)とすることができる。
【0139】
次に、エッチング固定具から支持組立体を取り外し、(例えば、蒸留水又は脱イオン水で)すすぎ、(例えば、乾燥窒素ガス流下)乾燥させる。
【0140】
処理400の次の工程406は、支持組立体(特に、線528のエッチングした先端)を調べて、エッチング先端が適した形体を有していることを点検することである。先に述べたように、例えば、形体の決定は、エッチングした先端の輪郭の画像を得ることと、その輪郭画像より得られるデータから種々の幾何学的パラメータを計算することを含む。例えば、SEMを用いて、点検を行うことができる。線528の先端の輪郭画像は、例えば、65,000×の倍率等の非常に高い倍率で得ることができる。測定される幾何学的パラメータとしては、例えば、先端の平均曲率半径、平均円錐方向及び平均完全円錐角度を挙げることができる。ここで、エッチングした先端の形状が不適当であれば、エッチング固定具に戻して組立体を挿入し、線528のエッチングした先端がエッチング液とちょうど接触するまで該先端を皿に向かって下げることで、先端を少し再付形することができる場合がある。少数の電気パルス(例えば、継続時間35ms及び振幅5Vの1〜3パルス)を用い、線528の先端を再付形することができる。例えば、線528の先端の平均完全円錐角度が小さ過ぎると、少数の短い継続期間のパルスを用い、実質的にエッチングした先端の平均半径を増大させずに平均完全円錐角度を増大させることができる。このような追加の電気パルスの印加に続いて、SEMで先端を再調査し、先端が正しく再付形されたことを点検することができる。
【0141】
次に、工程408では、エッチングした線528の先端頂部の末端棚が三量体に形成される。この処理は、通常、先端を(例えば、FIM又はSFIMを用いて)画像化することと、先端を(例えば、電界蒸発を用いて)付形することとを伴う。
【0142】
一部の実施態様において、工程408は、FIMに支持組立体を設置することと、FIMを排気することとを含む。線528の先端を(例えば、液体窒素温度まで)冷却し、HeガスをFIMに(例えば、約5×10
-6Torrの圧力で)供給する。抽出部に対して正の電位(例えば、抽出部に対して5kV以上)を線528の先端に印加して、He原子は線528の先端頂部と相互作用し、Heイオンを形成する。Heイオンを加速し、正に帯電した線528の先端頂部から離す。CCDカメラ等の二次元画像装置と任意に連結される蛍光スクリーン等の検出器は、イオン源から選択された距離に位置しており、イオン源からの主要なイオンビームの軌道と略垂直に配向されている。衝突イオンは、蛍光スクリーンに光子を放出させ、これをCCDカメラによって検出する。比較的多数の検出イオンに対応する画像領域は、比較的少数の検出イオンに対応する画像領域に比べて明るく見える。Heガス原子のイオン化は、個々のイオン源原子の近傍における線528の先端頂部で起こる。結果として、検出器によって取り込まれる画像は、イオン源の放出パターンに対応している。特に、検出器から得られる画像の輝点は、イオン源頂部での個々の原子に対応している。従って、FIMの画像は、原子的に分解される線528の先端頂部の画像である。FIMの画像に基づいて、イオン源頂部での原子の結晶構造、配向及び特定配列を決定することができる。
【0143】
線528の先端頂部について所望の特性がない場合、例えば、電界蒸発を用いて、先端を付形することができる。電界蒸発の間、線528のエッチングした先端の画像がFIM検出器上で焦点の合ったまま、依然としてFIM内にHeガスのバックグラウンド圧力が存在する状態で、結果として得られる電場が局所電場の最も高い先端位置からW原子(及び汚染原子)を取り除き始めるまで、先端の正の電位を増大させる(例えば、抽出部に対して15kV以上)。原子を取り除く速度を制御し、原子の群が同時に取り除かれることを防ぐ。通常、エッチングした先端の表面が適正な結晶配向であることを確認するまでFIM放出パターンを監視しながら電界蒸発を継続し、先端の末端棚での望ましくない汚染物がないことを決定する。
【0144】
電界蒸発の後に先端を研磨することが好ましい場合がある。先端を研磨するには、FIM室から外にHeガスを送り出し、そして、線528の先端のバイアスを共通接地部に対し負に変更する結果、線528の先端頂部は電子を放出する。入射電子を受けて光子を発生させる、蛍光体を被覆したガラススクリーン等の検出器は、先端から電子を捕まえるように位置している。発生した光子は適した検出器により検出され(例えば、CCD装置、光電子増倍管、光ダイオード又は他の種類の光子検出器)、先端からの電子の放出を監視するのに使用される。一部の実施態様において、検出器は、光子発生装置に直接連結できる。特定の実施態様においては、検出器と光子発生装置を直接連結していない。例えば、鏡等の光学素子を用いて、発生した光子を検出器に向けることができる。
【0145】
所望の電子電流が測定されるまで(例えば、25pA〜75pA、40pA〜60pA、50pA)、先端に印加される電圧バイアスを調整する。次に、先端を所望の温度(例えば、1000K〜1700K、1300K〜1600K、1500K)に加熱し、先端を視覚的に監視して電圧及び熱の双方の適用を受けて先端から放出される光を検出する。先端からの光の放出は、例えば、先端により放出された光を適した光子検出器(例えば、CCD装置、光電子増倍管、光ダイオード又は他の種類の光子検出器)に向けて反射するように配置した鏡を用いて監視できる。抵抗加熱装置(例えば、フィラメント加熱器)、放射加熱装置、誘導加熱装置又は電子ビーム等の様々な装置を用いて、先端に熱を加えることができる。先端からの光が最初に出現した後15秒〜45秒(例えば、25秒〜35秒、30秒)で、印加電位と加熱装置の両方を停止し、末端原子棚として三量体を具える線528を得る。
【0146】
任意に、気体を用いて先端を研磨することができる。例えば、FIM室に酸素を導入し、丸いW先端表面の研磨を促進することができる。FIM室からHeを取り除いた後、研磨気体(例えば、酸素)を導入し、酸素の存在下、選択した圧力で一定時間先端を加熱する。例えば、丸いW先端を研磨するには、最初にHeをFIM室から外に送り出し、次いで1300K〜1700Kの温度(例えば、1500K)に先端を加熱する。先端は、1分〜5分間1500Kに維持される。次に、先端の温度を約2分間維持しながら、約10
-5Torrの圧力で酸素を上記室に導入することができる。上記室への酸素流れを継続して、次に先端の温度を700K〜1200K(例えば、1000K)に低下し、その温度で約2分間先端を維持する。最後に、上記室への酸素供給を閉じて、ここでの酸素圧力が10
-7Torr未満になるまで酸素を室から外に送り出す。同時に、先端を正常動作温度(例えば、一部の実施態様においては約77K)に冷却し、HeをFIM室に再導入する。先端をFIMモードで画像化するとき、W(111)ファセットに対応する先端の上にWの三量体が観察される。次に、三量体の末端棚を有するW(111)線をFIMから取り外し、将来使用するために保存することができる。
【0147】
システム200から分離したFIMを用いて線の先端頂部を画像化/付形する実施態様が先に記載されるが、一部の実施態様においては、FIMとしてシステム200を用いることができる。かかる実施態様においては、イオン源内部に支持組立体を設置し、通常、先の段落に記載された手順に従い、FIMとしてシステム200を作動させる。一部の実施態様において、システム200をFIMモードで作動させる場合、検出器は、試料280が通常位置しているところに位置することができる(即ち、試料180は通常位置にない)。特定の実施態様において、システム200をFIMモードで作動させる場合、比較的高い二次電子放出量を有する平坦な試料は、試料180が通常位置しているところに位置することができ、検出される二次電子の強度が一般に平坦な試料に入射するHeイオンの強度に対応することになるので、Heイオンと平坦な試料との相互作用によって発生する二次電子が検出される。
【0148】
任意に、線の先端頂部を画像化/付形する処理の間、SFIMモードでシステム200を作動させることができる。かかる実施態様において、その処理は、軸合わせ偏向器220及び222を用い、絞り224の表面に亘ってイオンビームをラスタ化し、線の先端頂部の電界放出パターンを発生させることを除いて、先の段落に記載されている。絞り224を通過するイオンビームの一部は、任意に第二レンズによって集束されるか又は非集束のままである。SFIMモードでは、線先端の画像を画素毎に得て、測定される各画素強度は絞り224を通過することが可能な一部のイオンビームに対応している。画素強度を一緒に使用し、画像として又はより一般には複数の電気信号として、先端の電界放出パターンを表すことができる。次に、電界放出パターンを用いて先端の種々の特性を評価し、気体電界イオン顕微鏡で用いる適合性を決定することができる。SFIMモードでは、先の段落に記載される種類の検出器を設置することができる。任意に、検出器は、光電子倍増管又は光ダイオード等の空間統合検出器とすることができる。
【0149】
通常、初めてW先端を研磨するのに上記した手順を用いることができ、また、イオン顕微鏡システム内でW先端を再研磨するのに使用することもできる。W先端を研磨する最初の処理がシステム200以外のFIMで行われても、かかる再研磨を行うことができる。一般に最初の研磨と同じ方法で再研磨を行ってもよいし、再研磨技術が最初の研磨技術と異なっていてもよい。一部の実施態様においては、再研磨が望ましいかどうか評価するため、上記したようにFIM及び/又はSFIMモードで作動するように、顕微鏡システム200を構成することができる。一以上の先端の画像に基づいて、再研磨処理を開始するか又は先送りにすることができる。特定の実施態様においては、他の基準を用いて、再研磨を開始するときを決定することができる。例えば、測定される先端からのイオン電流が動作期間の後に設定された閾値を下回る場合には、再研磨を開始することができる。
【0150】
再研磨の第一工程として、先端を電界蒸発し、先端頂部に近い原子を取り除くことができる。例えば、顕微鏡システム200は、上記したようにFIM及びSFIMモードで作動できるように構成されることができ、先端に印加される電位を慎重に調整し、先端原子の制御された電界蒸発を作り出すことができる。電界蒸発処理の間、検出器(例えば、蛍光体を被覆した光子検出器又は平坦な試料からの二次電子放出を測定するように構成される二次電子検出器)によりFIM又はSFIMモードで、先端の電界放出画像が得られ、その電界放出画像を監視し、電界蒸発処理を停止するときを決定することができる。既に述べたように、先端の表面が適正な結晶配向であってきれいであれば、先端を再研磨することができる。
【0151】
Heガスは、Heのバックグランド圧力が約10
-7Torr未満になるまで顕微鏡システム200から外に送り出される。一部の実施態様においては、再研磨を開始するため、負の電位を先端に印加し、電子モードで顕微鏡システム200を作動させ、上記したように加熱を経て先端を研磨する。特定の実施態様においては、上記したように、顕微鏡システム200に酸素等の研磨気体を導入し、酸素の存在下、選択時間の間、先端を加熱する。再研磨の手順に続いて、顕微鏡システム200にHeガスを再導入し、該システムがFIM及び/又はSFIMモードで作動するように構成された状態で、再研磨した先端の一以上の画像を取り込み、先端頂部がW(111)ファセットに相当する三量体を含むことを確認する。
【0152】
一部の実施態様においては、電子制御システム170のハードウェア及び/又はソフトウェアによって、特定の再研磨工程を自動的に行うことができる。例えば、特定の実施態様において、丸い先端に適用される研磨手順を自動化した方法で行うことができる。電子制御システム170により実行される研磨アルゴリズムの一例は、次の通りである。最初、制御システム170は、ポンプ236及び/又は237を駆動することで顕微鏡システム200を排気し、先端を液体窒素温度まで冷却する。顕微鏡システム200中の気体のバックグランド圧力が設定される閾値未満であるとき、制御システム170によって先端を支持する加熱線に較正電流を印加することで、1500Kの温度に先端を加熱する。1500Kで2分後に、制御システム170は、酸素ガス源の弁を開くことで顕微鏡システム200に酸素ガスを導入する。弁の開きを調整し、顕微鏡システム200内で約10
-5Torrの酸素圧を維持する。更に2分後、制御システム170によってシステム中に液体窒素冷却剤の流れを調整することで、先端の温度を1100Kに低下させる。1100Kで2分後、制御システム170は、システムへの酸素供給を止めて、先端を液体窒素温度まで冷却する。ここで、(作業者により測定される)先端のFIM及び/又はSFIM画像を用い、先端頂部でのW(111)の存在を手動で確認することができる。
【0153】
理論に縛られることを望むものではないが、酸素は先端の末端原子棚として三量体の形成を促進することができると思われる。特定の実施態様においては、FIM室内の酸素ガスの圧力が、10
-7Torr以上(例えば、10
-6Torr以上、10
-5Torr以上、10
-4Torr以上)及び/又は1Torr以下(例えば、10
-1Torr以下、10
-2Torr以下、10
-3Torr以下)とすることができる。特定の実施態様においては、FIM室内の酸素ガスの圧力が、10
-8Torr〜10
-2Torr(例えば、10
-7Torr〜10
-3Torr、10
-6Torr〜10
-4Torr)とすることができる。また、他の気体及び物質を用いて、先端を研磨する間、末端原子棚としての三量体の形成を促進することができる。例えば、再研磨に先立ち丸い先端の表面上に、パラジウム、白金、金及び/又はイリジウム等の物質を蒸着することができる。これらの物質は先端の頂部に更に信頼性のある三量体の形成を促進することができると思われる。
【0154】
一部の実施態様においては、電場の印加又は酸素の計画的な追加をせずに先端の加熱を制御することで、W先端の研磨を達成することができる。例えば、1)FIM室に先端を設置する工程、2)FIM室内を減圧する工程、3)先端を5分間1000Kに加熱し、(例えば、液体窒素温度まで)冷却する工程によって、W先端を研磨することができる。理論に縛られることを望むものではないが、先端上に酸化物として存在する微量の酸素は、加熱によって先端を研磨するのに役立つことができると思われる。特定の実施態様において、酸素流れに未研磨の先端をさらし、実質的に酸素のない環境に設置され、制御された加熱により研磨することができる。このアプローチは先端表面上にWの酸化物を作り出すことができ、加熱の際にWの酸化物から解放される酸素が先端の研磨処理の役に立つことができると思われる。
【0155】
一部の実施態様においては、先端の研磨の間、一種以上の追加の気体が存在していてもよい。例えば、特定の実施態様においては、窒素ガスが存在することができる。理論に縛られることを望むものではないが、窒素ガスは先端のエッチングに役立ち、末端原子棚が三量体である場合に丸みの大きい構造を提供することができると思われ、かかる構造は丸みがなく三量体の末端処理がなされた先端と比べて安定していると思われる。一般に、窒素ガスは酸素ガスと同時に導入される。特定の実施態様においては、FIM室内の窒素ガスの圧力が、10
-8Torr以上(例えば、10
-7Torr以上)及び/又は10
-5Torr以下(例えば、10
-6Torr)とすることができる。特定の実施態様においては、FIM室内の窒素ガスの圧力が、10
-5Torr〜10
-8Torr(例えば、10
-6Torr〜10
-7Torr)とすることができる。
【0156】
任意には、三量体を形成した後に先端の研磨処理が繰り返し可能であることを確保することを助けるため、先端の制御された電界蒸発が起こるように研磨した先端に印加される正の電位を増大させる。先端を一定期間電界蒸発した後、先端頂部は丸い形状を再び取る。一般に、丸い先端は、最初の電界蒸発工程後の先端の放出パターンと同様な放出パターンを作り出す。次に、丸い先端を電子モードで再度研磨し、(例えば、上記した手順によって)三量体である末端原子棚を作り出す。一部の実施態様においては、研磨した先端の寿命及び安定性を増大させるため、電界蒸発技術を用いて研磨した先端から一つ以上の三量体を取り除くことができる。例えば、三個の原子の棚によって形成された、研磨した先端最上部の原子層を取り除き、三個を超える原子を含む原子棚下部を見せる。新たに露出した原子棚は、更に電界蒸発され、その頂部にW原子の三量体を作り出すことができる。この新たに形成される三量体は、電界蒸発中に形成される更なる三量体と共に蒸発できる。この処理は、先端頂部の近傍において先端を層毎に丸くすることにつながる。先端を丸くすることによって、先端頂部に近い電場勾配を低減し、顕微鏡システム200が作動しながら先端の原子が電界蒸発を受ける可能性を低くし、先端の安定性と寿命を増大させる。
【0157】
処理400の工程410においては、システム200内で、先端186の頂部187を軸合わせする。支持組立体が顕微鏡システム200に設置された状態で、一つ以上の真空ポンプを用いて顕微鏡システム200を排気し、次いで先端187に熱を加えて、例えば、酸化物、凝縮物及び/又は先端表面に付着し得る他の不純物を取り除く。一般に、例えば、先端186を900K以上(例えば、1000K以上、1100K以上)の温度に加熱し10s以上(例えば、30s以上、60s以上)の間維持する。また、加熱は、先端の形状が不純物の存在によって傷付けられる場合において、先端186を再び面付けするのに役立つことができる。
【0158】
先端186が熱を加えた結果として放射状に発光して、次に、イオン光学機器130の長手方向軸に沿って伝播する先端からの光を観察することで(例えば、鏡等の反射素子を挿入し、CCDカメラ等の検出器に光の一部を向けることで)、先端をイオン光学機器130の長手方向軸とおおざっぱに軸合わせする。先端マニピュレータ208を調整しイオン光学機器130を通して先端186からの光を方向付けることで、先端186の位置及び/又は配向を変えることができる。
【0159】
このおおざっぱな軸合わせの手順に続いて、真空ハウジング202及び204内のバックグラウンド圧力を低減し、先端186を(例えば、ほぼ液体窒素温度まで)冷却し、気体源110によって先端186の近傍領域にHeガスイオン流れを導入することにより、FIM又はSFIMモードで作動するように、顕微鏡システム200を構成する。先端186からのHeイオンの電界放出パターンの画像が、適切に構成される検出器によって測定され、この画像に基づき、先端マニピュレータ208を用いて電界放出パターンをイオン光学機器130の長手方向軸と軸合わせすることで、先端186の電界放出パターンを長手方向軸の中心に置く。誘起される先端186の電界放出パターンの変調を観察しながら、第一レンズ216に印加される電位を変更することで、中心位置の試験を行うことができる。検出器により観察される電界放出パターンの大きさがレンズ216に印加される電位の変化によって変わるが、該パターンの中心の位置が変わらない場合、そのときの先端186は、第一レンズ216の長手方向軸と軸合わせされる。反対に、先端186の電界放出パターンの中心位置が第一レンズ216に印加される電位の変化に応じて変わる場合、そのときの先端186は、第一レンズ216の長手方向軸の中心にない。先端マニピュレータ208による先端186の配向及び位置の調整は、先端186が第一レンズ216の長手方向軸と十分に軸合わせされるまで、反復して繰り返し行うことができる。一般に、適切な位置に絞り224がなければ、この中心位置試験を行う。
【0160】
次に、細かい軸合わせ手段を行い、Heガス原子と先端186の頂部187における三個の原子の棚との相互作用により発生するHeイオンが絞り224を通過することを確実にすることができる。偏向器220及び222(以下の記載を参照)に印加される電位を調整することで、Heガス原子と先端186の頂部における三個の三量体原子の唯一つとの相互作用によって、絞り224を通過するイオンビーム192中のHeイオンの70%以上(例えば、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上)が発生する。同時に、偏向器220及び222に印加される電位の調整は、絞り224が、Heガス原子と他の二個の三量体原子との相互作用により発生するイオンビーム192中のHeイオンの50%以上(例えば、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上)が試料180の表面181に達するのを防ぐことを確実にする。この細かい軸合わせ手段の結果として、絞り224を通過しイオン光学機器130から抜け出るHeイオンビームは、先端186の頂部における三個の三量体原子の唯一つの近傍で最初にイオン化されるHe原子を含む。
【0161】
再び
図10を参照すると、処理400の工程412では、先端186を第一レンズ216の長手方向軸と軸合わせし、そして、イオンビーム192の一部が絞り224を通過するようにHeイオンビームを軸合わせした状態で、顕微鏡システム200をHeイオンモードで作動させることができる。先端研磨の間、システム200をFIMモードで用いた実施態様においては、FIM検出器及び/又はFIM構成部品を移動させるので、イオンビーム192の照射のために試料180を配置することができる。抽出部190に対して正の電位を先端186に印加し、気体源110によって真空ハウジング202にHeガスを導入する。Heガス原子と先端186の頂部における三個の三量体原子の最初の一つとの相互作用によって発生するHeイオンは、絞り224を通してイオン光学機器130により誘導され、試料180に向けられる。
【0162】
一部の実施態様においては、先端186に印加される電位が5kV以上(例えば、10kV以上、15kV以上、20kV以上)である。特定の実施態様においては、先端186に印加される電位が35kV以下(例えば、30kV以下、25kV以下)である。例えば、一部の実施態様においては、先端186に印加される電位が5kV〜35kV(例えば、10kV〜30kV、15kV〜25kV)である。
【0163】
一部の実施態様においては、顕微鏡システム200の作動中、Heガスの圧力が10
-8Torr以上(例えば、10
-7Torr以上、10
-6Torr以上、10
-5Torr以上)である。特定の実施態様においては、顕微鏡システム200中のHeガスの圧力が10
-1Torr以下(例えば、10
-2Torr以下、10
-3Torr以下、10
-4Torr以下)である。例えば、一部の実施態様においては、顕微鏡システム200中のHeガスの圧力が10
-7Torr〜10
-1Torr(例えば、10
-6Torr〜10
-2Torr、10
-5Torr〜10
-3Torr)である。
【0164】
先端186の完全性を点検するため、上記したように顕微鏡システム200をFIM又はSFIMモードで作動させることにより、先端186からの電界放出パターンを定期的に監視することができる。三量体構造が先端頂部187で無傷のままである場合には、そのときの先端186を用いイオンビーム192を顕微鏡システム200に供給し続けることができる。しかしながら、特定の状況下では、先端のFIM又はSFIM画像により、三量体構造が先端頂部187でもはや無傷でないことを明らかにする場合がある。この場合、最初に先端186を電界蒸発し、先端を丸くして損傷を受けた三量体構造を取り除き、次いで上記した処理によりそのままの位置で(例えば、顕微鏡システム200から先端186を取り外すことなく)再研磨することができる。
【0165】
先端186からの電界放出パターンの監視は、低下した性能(例えば、低減したイオン電流)、観察される結像収差及び/又は誤差、他の予定される基準等の基準に基づき、自動的に行うことができる。先端186のFIM画像を取り込むため、試料180をその位置から取り外すことができ、蛍光体を結合したCCD検出器等の検出器を試料180の元の位置に設置することができる。或いは、試料180の代わりに比較的高い二次電子放出量の平坦な試料を所定の位置に平行移動させることができ、そして、適した検出器が設置され、Heイオンの試料との相互作用によって試料から出る二次電子を検出するように構成され得る。Heガス原子の先端186との相互作用から発生するイオンが著しく妨害されないように、絞り224を取り除くことができる(又は大きな直径の開口部225を選択することができる)。これらの操作を自動化して行うことができる。
【0166】
先端186のSFIM画像を取り込むため、FIM画像化について説明したように、検出器を導入することができ、絞り224を適切な位置に維持することができる。軸合わせ偏向器220及び222を用い、絞り224に亘って先端186のイオン放出パターンをラスタ化し、画素毎に先端186の画像を得ることができる。絞りの配置、試料及び検出器の移動、並びに先端186や軸合わせ偏向器220及び222に印加される電位を制御することができる電子制御システム170によって、先端186の一つ以上の画像の取得を自動化することができる。
【0167】
図13を参照すると、上記した軸合わせ手段により、一般に先端186の長手方向軸207をイオン光学機器130の長手方向軸132と軸合わせする結果、先端186の頂部187での軸207及び132間の距離dは2mm未満(例えば、1mm未満、500μm未満、200μm未満)である。一部の実施態様においては、先端186の頂部187での軸207及び132間の角度が、2°以下(例えば、1°以下、0.5°以下、0.2°以下)である。
【0168】
抽出部190は開口部191を含む。一般に、抽出部190及び開口部191の形状は所望のとおりに選択できる。一般に、それらの特徴部は、イオン光学機器130中にHeイオンを効率的かつ確実に向けることができるように選択される。例えば、
図13に示されるように、抽出部190は、z方向に測定される厚さt
e及びx方向に測定される幅aの開口部191を有し、先端186の頂部187からz軸方向に測定される距離eに位置している。一部の実施態様においては、t
eが100μm以上(例えば、500μm以上、1mm以上、2mm以上)であり及び/又はt
eが10mm以下(例えば、7mm以下、5mm以下、3mm以下)である。特定の実施態様においては、先端186の頂部187と抽出器190間の距離eが10mm以下(例えば、8mm以下、6mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下)である。一部の実施態様においては、
図13に示されるように抽出部190が先端186より更に+z方向に位置している。特定の実施態様においては、抽出部190が先端186より更に−z方向に位置している。かかる実施態様においては、例えば、先端186が抽出部190を通して突き出て、更にz軸に沿って抽出部190より+z方向に伸びる。抽出部190は
図13において特定の構成を有するように示されるが、より一般には、抽出器190はあらゆる所望のデザインとすることもできる。例えば、一部の実施態様において、開口部191は、あらゆる所望の形状の曲線状側面を有することができる。
【0169】
通常、抽出部190を先端186に対して正又は負にバイアスすることができる。一部の実施態様においては、抽出部190に印加される電位が、先端186に対して-10kV以上(例えば、-5kV以上、0kV以上)及び/又は20kV以下(例えば、15kV以下、10kV以下)である。
【0170】
また、任意にサプレッサ188が先端186の近傍に存在することができる。サプレッサ188を用い、例えば、サプレッサ188に印加される電位を調整することにより先端186の近傍の電場分布を変更することができる。抽出部190と共にサプレッサ188を用いて、先端186で作り出されるHeイオンの軌道を制御することができる。サプレッサ188は、x方向に測定される幅kとz方向に測定される厚さt
sの開口部を有し、z方向に測定される先端186の頂部からの距離sに位置している。一部の実施態様においては、kが3μm以上(例えば、4μm以上、5μm以上)及び/又は8μm以下(例えば、7μm以下、6μm以下)である。特定の実施態様においては、t
sが500μm以上(例えば、1mm以上、2mm以上)及び/又は15mm以下(例えば、10mm以下、8mm以下、6mm以下、5mm以下、4mm以下)である。一部の実施態様においては、sが5mm以下(例えば、4mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下)である。特定の実施態様においては、
図13に示されるようにサプレッサ188が先端186より更に+z方向に沿って位置している。一部の実施態様においては、先端186がサプレッサ188より更に+z方向に沿って位置しており、その結果、先端186はサプレッサ188を通り抜けて+z方向に伸びる。
【0171】
一般に、抽出部190を通過した後にイオンビーム192中のイオンエネルギーを所望のとおりに選択することができるように、顕微鏡システム200を構成することができる。一般に、イオンビーム192中の平均イオンエネルギーは、イオン光学機器130への入口開口部133を通過した後で、5keV以上(例えば、10keV以上、20keV以上、30keV以上)及び/又は100keV以下(例えば、90keV以下、80keV以下、60keV以下、50keV以下、40keV以下、30keV以下)である。例えば、一部の実施態様においては、入口開口部133を通過した後で、イオンビーム192中のイオンエネルギーが5keV〜100keV(例えば、10keV〜90keV、20keV〜80keV)である。例えば、試料を通って透過するイオンを検出することが好ましい実施態様においては、高いイオンエネルギー(例えば、50keV〜100keV)を用いることができる。
【0172】
更に、特定の実施態様においては、イオン電流を変えずにイオンビーム192中のイオンエネルギーを変えることができる。即ち、先端186に印加される電位を調整し、イオンビーム192からのイオンビーム電流を実質的に変えずにイオンビーム192の平均エネルギーを変更することができる。
【0173】
C.イオン光学機器
図14を参照すると、イオンビーム192は、気体電界イオン源120から入口開口部133を通ってイオン光学機器130に入る。最初、イオンビーム192は第一レンズ216を通過する。第一レンズ216の位置及び電位は、通常、イオンビーム192を交差点Cに集束するように選択され、ここで、点Cはz方向に測定される絞り224からの距離pである。一般に、第一レンズ216は、z方向に測定される入口開口部133からの距離fに位置している。一部の実施態様においては、距離fが5mm以上(例えば、10mm以上、15mm以上)及び/又は30mm以下(例えば、25mm以下、20mm以下)である。
【0174】
一般に、第一レンズ216を先端186に対し正又は負にバイアスすることができる。一部の実施態様においては、第一レンズ216に印加される電位が、先端186に対して-30kV以上(例えば、-20kV以上、-10kV以上)及び/又は40kV以下(例えば、30kV以下、20kV以下、15kV以下、10kV以下)である。
【0175】
一般に、距離pは1mm以上(例えば、5mm以上、10mm以上)及び/又は100mm以下(例えば、70mm以下、50mm以下、30mm以下、20mm以下)とすることができる。点Cの位置の変更は、x方向及び/又はy方向における絞り224の位置でのイオンビーム192の大きさを変えることができ、絞り224を通過するイオンビーム192中のイオンの画分を選択的に制御することができる。
図14では、絞り224より更に−z方向に位置するように示されるが、一部の実施態様において、交差点Cは、絞り224より更に+z方向に位置することができる。
【0176】
軸合わせ偏向器220及び222は、イオンビーム192の一部を方向付けて絞り224及び第二レンズ226を通過するように構成される。種々のデザイン及び/又は部品を用いて偏向器を組み立てることができる。一部の実施態様においては、例えば、偏向器220及び222がそれぞれ四重極電極とすることができ、二つの四重極電極が連続して配置されている。
【0177】
偏向器220及び222は、それぞれがx方向及びy方向の双方にイオンビーム192を偏向することができる。偏向器220及び222の電極に印加される電位を調整し、イオンビーム192の一部が絞り224及び第二レンズ226の両方を通過することを確実にすることができる。特定の実施態様においては、偏向器220及び222に印加される電位を調整して特定の軸合わせの状態を達成し、その後、電位は、顕微鏡システム200が作動中である間、変化しないままである。例えば、絞り224を画像化できるように構成される適切な検出器を用いてイオンビーム192を観察することで、絞り224を通るイオンビーム192の軸合わせを評価する。また、偏向器220及び222を調整することができ、その結果、絞り224を通過するイオンビーム192の一部を第二レンズ226の長手方向軸と軸合わせする。第二レンズ226を通るイオンビーム192の軸合わせを評価するため、第二レンズ226に印加される電位を変更することができ(通常、ぶれと称される)、その結果を画像検出器で観察する。第二レンズ226に印加される変化電位の結果として、イオンビーム192の画像が大きさにおいて変化するが位置において変化しない場合、そのときのイオンビーム192は、第二レンズ226を通して軸合わせされる。イオンビーム192の中心位置が変化電位の結果として変化する場合、そのときのイオンビーム192を第二レンズ226と軸合わせしない。この場合、偏向器222及び/又は220に印加される電位を更に調整することができ、軸合わせが達成されるまでぶれ試験を反復して繰り返し行う。
【0178】
一般に、軸合わせ偏向器220及び222の各種電極素子に印加される電位は、所望のとおりに選択され、イオンビーム192の絞り224及び第二レンズ226に対する特定位置への偏向を作り出す。偏向器220及び222の各電極を、共通の外部接地部に対して正又は負にバイアスすることができる。一般に、任意の電極に印加される電位は、共通の外部接地部に対して100V以下(例えば、75V以下、50V以下)及び/又は10V以上(例えば、25V以上、40V以上)とすることができる。例えば、作動時に、偏向器220及び222の任意の電極に印加される電位は、共通の外部接地部に対して10V〜100V(例えば、10V〜75V、10V〜50V)とすることができる。
【0179】
絞り224は、イオンビーム192に対して、イオンビーム192中のイオンの一部がそれを通過するように位置している。一般に、絞り224は、印加電位を有していない。一部の実施態様においては、x方向に測定される絞り224中の開口部225の幅wが、1μm以上(例えば、2μm以上、5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上)及び/又は100μm以下(例えば、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下)である。特定の実施態様においては、例えば、wが1μm〜100μm(例えば、5μm〜90μm、15μm〜50μm、20μm〜50μm)である。一部の実施態様においては、y方向に測定される絞り224中の開口部225の幅が1μm以上(例えば、2μm以上、5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上)及び/又は100μm以下(例えば、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下)である。特定の実施態様においては、例えば、wが1μm〜100μm(例えば、5μm〜90μm、15μm〜50μm、20μm〜50μm)である。
【0180】
絞り224は、絞り取付け部234上に位置している。絞り取付け部234は、電子制御システム170から受信する信号を制御することによって、x−y平面における絞り224の平行移動を可能にする。また、一部の実施態様において、絞り取付け部234は、イオン光学機器130の長手方向軸132に沿ってz方向における絞り224の平行移動を可能にする。更に、特定の実施態様において、絞り取付け部234は、x−y平面に対して絞り224の傾斜を可能にする。絞り224を傾けることを利用し、絞り224の長手方向軸をイオン光学機器130の長手方向軸132と軸合わせすることができる。
【0181】
一部の実施態様において、絞り224は、異なる幅wを有する複数の開口部を含むことができる。例えば、
図15は、複数の開口部225a〜225gを含む円板状絞り224aの(z方向に沿った)上面図である。絞り224aは、絞り224aの中心と一致する回転軸227の周りを回転するように構成される。各開口部225a〜225gの中心は、回転軸227から同一の距離に位置している。従って、選択された開口部がイオンビーム192の経路に位置するように絞りディスク224aを回転し、必要に応じて、開口部のイオンビーム192との正確な軸合わせを確実にするために絞りディスク224aを平行移動させることによって、特定の大きさの絞り開口部を選択することができる。
【0182】
図16は、絞り224bを貫通する複数の開口部229a〜229eを含む棒状絞り224bの(z方向に沿った)上面図である。絞り224b内の開口部を選択することで、絞りの大きさを選択することができる。この選択は、絞り224bを矢印221と平行な方向に移動させ、開口部229a〜229eの一つをイオンビーム192と軸合わせすることによって行われる。
【0183】
一般に、開口部225a〜225g及び229a〜229eは、所望のとおりに選択できる直径を有している。一部の実施態様においては、例えば、開口部のいずれかの直径が5μm以上(例えば、10μm以上、25μm以上、50μm以上)及び/又は200μm以下(例えば、150μm以下、100μm以下)とすることができる。特定の実施態様においては、開口部225a〜225g及び/又は229a〜229eの直径が5μm〜200μm(例えば、5μm〜150μm、5μm〜100μm)とすることができる。
【0184】
一部の実施態様においては、絞り以外の装置を用いて、イオンビーム192中のイオンの一部のみがイオン光学機器130を通過し試料180の表面に衝突することを可能にする。例えば、二つの垂直スリットを、イオンビームの飛行経路に沿って連続して設置することができる。
【0185】
非点収差補正器218は、通常、その形状、イオンビーム192の経路に沿う位置及び印加される電位によって、イオンビーム192の非点収差を低減し又は排除するように構成される。様々な構成部品を用いて非点収差補正器218を組み立てることができるが、非点収差補正器218は、一般に絞り224と走査偏向器219及び221との間に位置している八重極電極である。一般に、八重極非点収差補正器の八つの電極は、四つの電極の二つのグループに分けられ、ここで、四つの電極(例えば、先端186に対して正にバイアスされる四つの電極の第一グループ)の電圧を調整するように構成される第一制御器と、他の四つの電極(例えば、先端186に対して負にバイアスされる四つの電極の第二グループ)の電圧を調整する第二制御器とを具える。第一電極グループ及び第二電極グループの電極は、交互に八重極のセグメントを形成するように配置され、ここで、隣接したセグメントは異符号のバイアス電圧を有する。この電極の配置は、八重極の長手方向軸に沿って伝播するイオンビームを集束し且つ軸外のイオンビームの集点をぼかすカスプ磁場を形成する。
【0186】
一般に、八重極の各電極を独立して構成することができ、そのため、非点収差補正器218はイオンビーム192の高感度制御を可能にする。一部の実施態様においては、非点収差補正器218の電極のいずれかに印加される電位が、共通の外部接地部に対して-30V以上(例えば、-20V以上、-10V以上、-5V以上)及び/又は30V以下(例えば、20V以下、10V以下、5V以下)とすることができる。
【0187】
軸合わせ偏向器220及び222に加えて、イオン光学機器130は、走査偏向器219及び221を含む。走査偏向器219及び221は、一般に非点収差補正器218と第二レンズ226との間に位置しているが、一般に、イオン光学機器130内において走査偏向器219及び221の他の配置も可能である。
【0188】
走査偏向器219及び221は、試料180の表面に亘ってイオンビームを走査するように構成される。例えば、イオンビーム192をx方向に偏向するように偏向器219を構成することができ、また、イオンビーム192をy方向に偏向するように偏向器221を構成することができる。偏向器219及び221により作り出される複合偏向は、イオンビーム192を試料180の特定位置に合わせることができる。
【0189】
一般に、偏向器219及び221に印加される電位を調整し、イオンビーム192の特定の偏向を作り出す。印加電位を系統的に変化させ、試料180の一部に亘ってビーム192をラスタ走査することができる。一部の実施態様においては、例えば、偏向器221に印加される電位を段階的に一定間隔で増大させ、試料180に亘ってy方向に不連続な段階(例えば、横列ごと)でイオンビーム192を偏向する。同時に、偏向器219に印加される電位を段階的に増大させ、試料180に亘ってx方向に不連続な段階(例えば、縦列ごと)でイオンビーム192を偏向する。イオンビーム192が偏向器219に印加される電位の段階的な増加によって全ての縦列に亘って完全な走査を行ったら、新しい横列に対してy方向にイオンビーム192を偏向できるように、偏向器221に印加される電位を増大させる速度を選択することができる。各横列については、同じ段階パターンの電位増加の増分を検出器に当てて、イオンビーム192をx方向に不連続な段階で掃引することができる。
【0190】
一般に、走査偏向器219及び/又は221は、複数の電極から形成できる。一部の実施態様においては、例えば、走査偏向器219及び/又は221がそれぞれ一対の平行板電極を含むことができる。偏向器219の電極を配向させ、偏向器221により作り出されるイオンビーム192の偏向と直角の方向にイオンビーム192を偏向することができる。
【0191】
特定の実施態様においては、走査偏向器219及び/又は221がより複雑なデザインとすることができる。例えば、走査偏向器219及び/又は221は、四重極電極及び/又は八重極電極を含むことができる。これらの電極は、それぞれがx−y平面における単一方向に又はx−y平面における二つ以上の方向にイオンビームの偏向を提供するように構成できる。
【0192】
走査偏向器219及び221の各電極素子を、共通の外部接地部に対して正又は負にバイアスすることができる。一般に、各電極に印加される電圧は、-150V以上(例えば、-100V以上、-50V以上、-20V以上)及び/又は150V以下(例えば、100V以下、50V以下、20V以下)とすることができる。作動中では、例えば、偏向器219及び221の各電極に印加される電圧が、-150V〜150V(例えば、-100V〜100V、-50V〜50V、-20V〜20V)とすることができる。
【0193】
一般に、第二レンズ226が試料180の表面181上にイオンビーム192を集束するのに役立つように、第二レンズ226の位置及び電位を選択する。第二レンズ226に印加される電位は、一般に共通の外部接地部に対して正又は負にすることができる。特定の実施態様においては、第二レンズ226に印加される電位が、共通の外部接地部に対して-50kV以上(例えば、-40kV以上、-30kV以上)及び/又は40kV以下(例えば、30kV以下、20kV)である。第二レンズ226は、絞り224からz方向に測定される距離uをあけて配置されている。一部の実施態様においては、uが5cm以上(例えば、10cm以上、15cm以上)及び/又は50cm以下(例えば、45cm以下、40cm以下、35cm以下、30cm以下、25cm以下、20cm以下)である。
【0194】
第二レンズ226は、試料180からz軸に沿って測定される距離h(一般に作動距離と称される)をあけて配置されている。一部の実施態様においては、hが2mm以上(例えば、5mm以上、10mm以上、15mm以上、20mm以上)及び/又は200mm以下(例えば、175mm以下、150mm以下、125mm以下、100mm以下、75mm以下、65mm以下、55mm以下、45mm以下)とすることができる。特定の実施態様においては、hが2mm〜200mm(例えば、5mm〜175mm、10mm〜150mm、15mm〜125mm、20mm〜100mm)である。一般に、第二レンズ226に印加される電位を変えてレンズ226の集点面を調整し、試料180を(試料マニピュレータ140によって)レンズ226の新しい焦点面に平行移動させることで、hを調整することができる。顕微鏡システム200によって可能となる比較的大きな距離hは、多くの利点をもたらす。例えば、顕微鏡システムを用いて、表面突起部を有する平坦でない試料を調べることができる。更に、イオンビーム192の主軸に対し大きな角度で試料を傾けることもできる。一部の実施態様においては、例えば、試料180の表面181の法線とイオンビーム192の主軸との間の角度が5°以上(例えば、10°以上、20°以上、30°以上、40°以上、50°以上、60°以上)及び/又は85°以下(例えば、80°以下、75°以下、70°以下、65°以下)である。特定の実施態様においては、試料180の表面181の法線とイオンビーム192の主軸との間の角度が5°〜85°(例えば、10°〜80°、20°〜70°、30°〜70°、40°〜60°)である。加えて、比較的大きな距離hはまた、様々な検出器及び他の装置が表面181上のイオンビーム192の入射領域に近接して設置されることを可能にし、立体角の比較的大きな範囲に亘って試料から出る粒子の検出を可能にすることができる。一般に、このことは、(例えば、異なる種類の検出器を用いて)強い信号の検出や複数の異なる種類の信号の検出を可能にする。
【0195】
一部の実施態様においては、円錐半角が10°以上(例えば、15°以上、20°以上、25°以上)及び/又は50°以下(例えば、45°以下、40°以下、35°以下)の直角円錐として、第二レンズ226を付形する。特定の実施態様においては、第二レンズ226の円錐半角が10°〜50°(例えば、15°〜45°、20°〜40°)である。レンズ226用の比較的小さな円錐半角は、試料180のイオンビーム192に対する広範な傾斜角や、表面181上の入射ビーム点の近傍において検出器や他の装置を配置することができる大容積の自由空間を含めて、多くの利点をもたらす。
【0196】
上記のとおり、一般に、He原子と先端186の頂部187における三量体原子の一つとの相互作用によって発生するHeイオンのみが実質的に絞り224を通過する。しかしながら、一部の実施態様においては、イオン光学機器130の構成部品(例えば、第一レンズ216及び/又は軸合わせ偏向器220、222及び/又は絞り224)を、He原子と三量体原子の二つとの相互作用により発生するHeイオンの実質的な画分が絞り224を通過するように設置することができる。このことは、例えば、第一レンズ216及び/又は偏向器220、222に印加される電位の適切な選択によるか、及び/又は絞り224の大きさを変えることで(例えば、
図15及び16にそれぞれ示される絞り回転部又は絞り棒上の異なる絞り開口部を選択することで)、達成できる。特定の実施態様においては、イオン光学機器130の構成部品(例えば、第一レンズ216及び/又は軸合わせ偏向器220,222及び/又は絞り224)を、Heガス原子と三量体原子の三つ全てとの相互作用により発生するHeイオンの実質的な画分が絞り224を通過するように設置することができる。このことは、例えば、第一レンズ216及び/又は偏向器220、222に印加される電位の適切な選択によるか、及び/又は絞り224の大きさを変えることで(例えば、
図15及び16にそれぞれ示される絞り回転部又は絞り棒上の異なる絞り開口部を選択することで)、達成できる。
【0197】
任意に、イオン光学機器130中のイオンビーム192の経路に沿って、一つ以上の追加電極(例えば、レンズ、偏向器及び/又は他の要素)を配置することができる。追加電極を、例えば、第二レンズ226の後ろに配置することができたり、既存の要素間に導入することができる。追加電極を先端186に対し正又は負にバイアスして、イオン光学機器130内のイオンビーム192におけるイオンエネルギーを増大し又は低減する等の機能を果たすことができ、及び/又はそのイオンの軌道を変えることができる。例えば、一つ以上の加速電極を試料180の近傍に配置し、イオンビーム192中のイオンを試料180上に入射するエネルギーを変えることができる。
【0198】
他の例として、イオン光学機器130は、(共通の外部接地部に対して)負にバイアスされた鏡筒ライナーチューブを含み、試料180の表面181におけるイオンビーム中のイオンエネルギーを増大させることができる。該チューブは、共通の外部接地部に対して、-50kV以上(例えば、-25kV以上、-15kV以上、-10kV以上)及び/又は-1kV以下(例えば、-3kV以下、-5kV以下)にバイアスできる。一般に、該チューブは、例えば、絞り224と第二レンズの間等、イオン光学機器130の軸132に沿う任意の位置に設置できる。イオンがイオン光学機器130を通過する際にイオンを加速することによって、例えば、イオンビーム192の発散を低減するのに役立ち得る同等の電荷イオン間での相互作用時間の短縮を含んだ、特定の利点を実現することができる。
【0199】
一部の実施態様においては、試料180をバイアスすることで(例えば、イオンビーム192中のイオンエネルギーの減少が好ましい場合には正にバイアスし、又は消極的にはイオンビーム192中のイオンエネルギーの増加が好ましい場合には負にバイアスすることで)、試料180の表面181におけるイオンビーム192中のイオンエネルギーを増加又は減少させることができる。イオンビーム192の大きな入射角では、バイアスされた試料180によって作り出される電場の円筒非対称性がプリズムのような効果を作り出すことがあり、この場合、イオンビーム192中の低エネルギーイオンは、x方向及びy方向において高エネルギーイオンより大きな量で検出され、試料180の表面181上でのイオンビーム192のスポットサイズの増大や他の潜在的に望ましくない結果をもたらす。従って、一部の実施態様においては、試料180をバイアスしてイオンビーム192中のイオンエネルギーを変化させており、イオンビーム192と表面181の法線との間の角度が6°未満(例えば、5°未満、4°未満、3°未満、1°未満)である。
【0200】
イオン光学機器の特定の実施態様について説明してきたが、イオン光学機器の他の実施態様を使用することもできる。一例として特定の電極タイプ(例えば、八重極)について説明した場合には、一つ以上の異なる電極タイプ(例えば、四重極)を用いて同じ効果を達成することができる。通常、顕微鏡システム200に多種多様なイオン光学システムを用いることができる。一部の実施態様においては、例えば、イオン光学機器130が、偏向器、絞り及び他のイオン光学素子に加えて、単一のレンズのみ含む。特定の実施態様においては、イオン光学機器130が、第一レンズ及び第二レンズを含み、それらの間に絞りを有する。
【0201】
他の例として、一部の実施態様においては、イオン光学機器が、第一レンズと、第二レンズと、該第一レンズと第二レンズ間の絞りとを含むが電極を含まない。該イオン光学機器は、第一レンズがイオンビームの発散を低減でき(例えば、イオンビームをイオン光学システムの長手軸方向と実質的に軸合わせでき)、絞りによりイオンビームの一部が該絞りを通過するの遮ることができ、第二レンズがイオンビームを試料表面上の比較的小さいスポットサイズに集束するのに役立つことができるように設計される。かかる実施態様において、試料の表面に達するイオンビーム中のイオンは、主として(例えば、上記のように)He原子と三量体の唯一つの原子との相互作用によって発生することができる。一部の実施態様においては、試料の表面に達するイオンビーム中のイオンの略等しい数が、He原子と三個の三量体原子それぞれとの相互作用によって発生する。
【0202】
追加の例として、特定の実施態様においては、イオン光学機器が、第一レンズと、第二レンズと、該第一レンズと第二レンズ間の絞りとを含むが電極を含まない。該イオン光学機器は、第一レンズがイオンビームを絞り内の開口部の中心に向けて集束することができ、絞りによって集束したイオンビームが発散し、該絞りを通過することができ、第二レンズがイオンビームを試料表面上の比較的小さいスポットサイズに集束するのに役立つことができるように設計される。かかる実施態様において、試料の表面に達するイオンビームは、気体原子と三量体における三個の原子それぞれとの相互作用によって発生する略等しい数のイオンを含むことができる。先端186の頂部が三個を超える原子(例えば、5個以上の原子、7個以上の原子、9個以上の原子)を含む場合、イオンビームは、気体原子と先端186頂部における原子それぞれとの相互作用により発生する略等しい数の原子を含むことができる。
【0203】
更なる例として、一部の実施態様においては、イオン光学機器が、第一レンズと、第二レンズと、該第一レンズと第二レンズ間の絞りとを含むが電極を含まない。該イオン光学機器は、第一レンズがイオンビームの発散を低減し、その低発散ビームを絞りに向けることができ、絞りによってイオンビーム中の実質的に全てのイオンが該絞りを通過することができ、第二レンズがイオンビームを試料表面の比較的小さいスポットサイズに集束するのに役立つことができるように設計される。かかる実施態様において、試料表面に達するイオンビームは、気体原子と三量体における三個の原子それぞれとの相互作用によって発生する略等しい数のイオンを含むことができる。先端186の頂部が三個を超える原子(例えば、5個以上の原子、7個以上の原子、9個以上の原子)を含む場合、イオンビームは、気体原子と先端186頂部における原子それぞれとの相互作用によって発生する略等しい数の原子を含むことができる。
【0204】
他の例として、特定の実施態様においては、イオン光学機器が、第一レンズと、第二レンズと、該第一レンズと第二レンズ間の絞りとを含むが電極を含まない。該イオン光学機器は、第一レンズがイオンビームを絞りに向けて部分的に集束でき、絞りによってイオンビーム中のイオンの一部が該絞りを通過するの遮ることができ(しかし、依然としてイオンビーム中のイオンの比較的大きい画分が該絞りを通過することができ)、第二レンズがイオンビームを試料表面上の比較的小さいスポットサイズに集束するのに役立つことができるように設計される。かかる実施態様において、試料表面に達するイオンビームは、気体原子と三量体における三個の原子それぞれとの相互作用によって発生する略等しい数のイオンを含むことができる。先端186の頂部が三個を超える原子(例えば、5個以上の原子、7個以上の原子、9個以上の原子)を含む場合、イオンビームは、気体原子と先端186頂部における原子それぞれとの相互作用によって発生する略等しい数の原子を含むことができる。
【0205】
D.先端の傾斜及び平行移動機構
先端マニピュレータ208は、x−y平面において先端の平行移動と、イオン光学機器130の軸132に対する先端186の傾斜の両方を可能にするよう構成されている。
図17は、先端186と、支持組立体520と、先端マニピュレータの一の実施態様とを含む顕微鏡システム200の部分断面図である。先端マニピュレータ208は、軸部502と、半球体部504と、ショルダー部510と、平行移動部514とを含む。平行移動部514は、ショルダー部510の開口部516を貫通嵌合できる寸法に合わされた軸部502に接続されている。更に、軸部502は、基盤508に接続され、順繰りに組立体520に接続されている。ショルダー部510は、表面512と表面513間の静止摩擦力によって、半球体部504に対し固定された位置にあり、平行移動部514は、表面518と表面519間の静止摩擦力によって、ショルダー部510に対し固定された位置にある。
【0206】
先端マニピュレータ208は、x−y平面における先端186の平行移動を提供する。先端206を平行移動させるには、注入口503に高圧ガスを導入する。注入口503に導入される高圧ガスは、例えば、大気等の気体とすることができる。一般に、50ポンド毎平方インチ(psi)以上(例えば、75psi以上、100psi以上、125psi以上)の圧力で、気体を導入することができる。高圧ガスの導入の結果として、平行移動部514に−z方向の力が加えられ、ショルダー部510から離れる。加えられた力は、表面518及び519間の摩擦力を小さくし(しかし、ゼロに低減するのではなく)、x−y平面において横方向の力を加えることでショルダー部510に対し平行移動部514の再配置を可能にする。先端186は、平行移動部514が再配置されるときにx−y平面において平行移動される。先端186が新しい位置にあるとき、高圧ガスの供給を停止し、一つ以上の真空ポンプを用いて先端マニピュレータ208の内部を排気することで、表面518及び519間の強い静止摩擦力を回復する。先端186は、回復した強い静止摩擦力の結果として、適切な位置で強固に固定される。
【0207】
また、先端マニピュレータ208は、イオン光学機器130の軸132に対して先端186の傾斜を提供する。先端186を傾けるには、注入口505に高圧ガスを導入する。注入口505に導入される高圧ガスは、例えば、大気等の気体とすることができる。一般に、50ポンド毎平方インチ(psi)以上(例えば、75psi以上、100psi以上、125psi以上)の圧力で気体を導入することができる。高圧ガスの導入の結果として、ショルダー部510に−z方向の力が加えられ、半球体部504から離れる。加えられた力は、表面512及び513間の摩擦力を小さくする(しかし、ゼロに低減するのではない)。次に、矢印506で示される方向にショルダー部を平行移動させる横方向の力を加えることで、ショルダー部510を半球体部504に対して再配置することができる。ショルダー部510の平行移動は、半球体部504の曲面に沿った相対運動に対応する。この運動の結果として、軸132と軸207の間の角度(先端186の傾斜角に相当する)が変化する。先端186の傾きの調整を完了すると、高圧ガスの供給を停止し、先端マニピュレータ208の内部を排気することで、表面512及び513間の静止摩擦力を回復する。先端186は、回復した強い摩擦力の結果として、適切な位置で強固に固定される。
【0208】
一部の実施態様においては、
図17に示されるように、先端マニピュレータ208は、半球体部504の曲率半径Rの中心が先端186の頂部の位置と一致するように構成されている。結果として、先端186を傾けて軸132及び207間の角度を変えるとき、x−y平面における先端186の平行移動は起こらない。結果として、先端186の第一レンズ216の軸に対する平行移動を起こすことなく、先端マニピュレータ208を用いて、気体原子と先端原子の一つとの相互作用により発生するイオンの軌道を第一レンズ216の長手方向軸と軸合わせすることができる。
【0209】
特定の実施態様においては、追加軸の周りの回転運動を可能にするように、先端マニピュレータ208を構成することができる。例えば、
図17に示す実施態様においては、注入口503に高圧ガスを導入して表面518及び519間の摩擦力を低減し、x−y平面における平行移動部514の平行移動を可能にした場合、平行移動部514に適したトルクをかけることで、平行移動部514は軸207の周りを回転することもできる。この回転は、先端186の平行移動及び先端186の傾きの調整と分けて又はこれらに加えて、行うことができる。
【0210】
E.試料台
再度、
図5を参照すると、顕微鏡システム200は、試料180を支持して適当な位置に置くための試料マニピュレータ140を含む。電子制御システム170からの制御信号に応えて、試料マニピュレータ140は、x方向、y方向及びz方向のそれぞれにおいて試料180を平行移動させることができる。また、一部の実施態様においては、試料マニピュレータ140が、制御信号に応じてx−y平面において試料180を回転させることができる。更に、特定の実施態様においては、試料マニピュレータ140が、適した制御信号に応じて、x−y平面から外に試料180を傾けることができる。それらの自由度は、それぞれ独立して調整され、イオンビーム192に対して試料の適した配向を達成することができる。
【0211】
以下、詳細に記載するように、一部の実施態様においては、試料マニピュレータ140に比較的小さい電位を印加することによって、共通の外部接地部に対して正又は負に、試料マニピュレータ140をバイアスすることができる。例えば、一部の実施態様においては、共通の外部接地部に対して5V以上(例えば、10V以上、20V以上、30V以上、40V以上、50V以上)の正電位バイアスをマニピュレータ140に印加し、正に帯電したHeイオンが試料180の表面181に付着するのを防ぐのに役立つことができる。特定の実施態様においては、共通の外部接地部に対して-200V以上(例えば、-150V以上、-100V以上、-50V以上、-40V以上、-30V以上、-20V以上、-10V以上、-5V以上)の負電位バイアスをマニピュレータ140に印加し、例えば、二次電子(イオンの試料180との相互作用によって試料180の表面181から出る)を加速して試料から離すのに役立つことができ、二次電子が適切に構成された検出器によって検出できることを確実にする。一般に、研究中である特定の物質、Heイオン電流及び試料の照射時間によって、マニピュレータ140に印加される電位を所望のとおりに選択することができる。
【0212】
F.検出器
検出器150及び160は、
図5において概略的に表され、検出器150は、試料180の表面181(イオンビームが衝突する表面)からの粒子を検出するように位置しており、また、検出器160は、試料180の表面183からの粒子を検出するように位置している。一般に、多種多様の異なる検出器を顕微鏡システム200に用い、異なる粒子を検出することができ、一般に、顕微鏡システム200は、所望の数の検出器を含むことができる。一の又は様々な検出器の構成を、測定される粒子や測定条件に従って選択することができる。一部の実施態様においては、スペクトル分解検出器を用いることができる。かかる検出器は、異なるエネルギー及び/又は波長の粒子を検出することができ、また、検出された各粒子のエネルギー及び/又は波長に基づいて粒子を分解することができる。特定の実施態様においては、スペクトル分解検出器が、粒子のエネルギー及び/又は波長に基づき、粒子を検出器の異なる領域に向けることが可能な構成部品を含む。
【0213】
以下に、特定の例示的な検出器及び検出器の配置を説明する。
【0214】
(i)エバーハート−ソーンリー検出器
エバーハート−ソーンリー(ET)検出器を用いて、二次電子、イオン及び/又は中性粒子を検出することができる。
図18は、粒子セレクター601、変換物質602、支持部604、光子検出器606並びに電源607及び608を含むET検出器600の概念図を示す。
【0215】
粒子セレクター601は、導電性物質で形成される。一部の実施態様においては、例えば、粒子セレクター601が、約30%未満(例えば、25%未満、20%未満、10%未満、5%未満)の金属充填率の金属格子又はメッシュとすることができる。格子は大部分が空間であるため、格子に衝突する粒子は、比較的遮るもののないところを通過することができる。
【0216】
特定の実施態様においては、粒子セレクター601が金属環又は管で形成される。例えば、粒子セレクター601は、粒子が環又は管を通過することを可能にする内部開口部を有し、形状が実質的に円筒状の環又は管とすることができる。例えば、銅又はアルミニウム等の高導電性金属から環又は管を形成することができる。
【0217】
より一般に、粒子セレクター601は、通過すべき粒子用の通路を含むあらゆる開口電極構造から形成できる。粒子セレクター601は、一つ以上の電極から形成でき、一つ以上の電極に印加される電位は、通常、測定される粒子の種類に従って所望のとおりに選択できる。
【0218】
変換物質602は、帯電粒子(例えば、イオン、電子)との相互作用により光子を形成することができる物質で形成される。例示的な材料としては、蛍光体材料及び/又はシンチレータ材料(例えば、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)及びイットリウム−アルミニウム−ホスフェート(YAP)等の結晶性物質)が挙げられる。支持部604は、変換物質602により形成される光子を比較的通す物質で形成される。
【0219】
作動時に、電源607は、比較的小さい大きさ(例えば、100V〜500V等の500V以下)の電圧を粒子セレクター601(導電性物質で形成される)に印加し、また、電源608は、比較的大きい大きさ(例えば、5kV以上、10kV以上)の電圧を変換物質602に印加する。ET検出器を用いて試料180からの電子(例えば、二次電子)を測定する実施態様において、粒子セレクター601及び変換物質602に印加される電圧の信号は、試料180に対して正である。ET検出器を用いて試料180からのイオン(例えば、二次イオン、散乱イオン)を測定する実施態様において、粒子セレクター601及び変換物質602に印加される電圧の信号は、試料180に対して負である。また、特定の実施態様においては、試料180を(共通の外部接地部に対して)バイアスし、試料180からの粒子を検出器600に送るのに役立つことができる。例えば、ET検出器を用いて試料180からの二次電子を測定する場合、試料を共通の外部接地部に対して負にバイアスすることができる。マニピュレータ140に負電位バイアスを印加することは、例えば、試料中の高アスペクト比の(例えば、深い)ホール又はビアで発生する二次電子を検出するときに特に有用な場合がある。共通の外部接地部に対する負電位バイアスは、ホール又はビアから出る電子を加速して試料から離すのに役立つことができ、電子の検出を容易にさせる。負のバイアスを欠くとき、二次電子の多くは、代わりにホール又はビア壁面に沿う点で試料に戻るおそれがあり、検出されるためにホール又はビアから決して脱出することがない。
【0220】
例えば、ET検出器を用いて試料からのイオンを測定する場合、試料180を正にバイアスすることができる。試料をバイアスするために印加される電位の大きさは、5V以上(例えば、10V以上、15V以上、20V以上、30V以上、50V以上、100V以上)とすることができる。
【0221】
試料180からの帯電粒子610(例えば、電子又はイオン)は、粒子セレクター601に引き付けられ、粒子セレクター601を通過し、変換物質602に向かって加速される。次に、帯電粒子601は変換物質602と衝突し、光子612を発生する。光子612は支持部602を通過し、光子検出器606によって検出される。
【0222】
帯電粒子の測定に関してET検出器の動作を説明してきたが、一般に、変換物質602に衝突する粒子は光子を発生させるのに帯電する必要がないのでET検出器を用いて中性粒子を検出することもできる。特に、試料180からの一次原子は、変換物質602に衝突し、光子検出器606による検出のために光子を発生させることができる。光子検出器606は、例えば、光電子増倍管(PMT)、ダイオード、ダイオードアレイ又はCCDカメラとすることができる。
【0223】
試料180に対して任意の位置にET検出器を設置し、中性粒子又は帯電電子を検出することができる。一般に、例えば、ET検出器は、イオン光学機器130の第二レンズ226に隣接して位置している。任意に、ET検出器は、(例えば、
図5の検出器に表されるものと同様な構成で)試料180に向かって若干下向きに傾けるように位置することもできる。
【0224】
特定の実施態様において、ET検出器は、試料180の表面183の近傍に位置することができる。かかる構成は、例えば、表面183から抜け出る試料180からの二次電子を測定しようとする際に(例えば、試料180を透過した後に)好ましい場合がある。かかる実施態様においては、ET検出器は、
図5の検出器の構成と同様な構成を有することができる。
【0225】
(ii)光子検出器
イオンの試料180との相互作用により発生する光子を検出するには、PMT等の標準的な光子検出器を用いることができる。試料180から放射される光子束が十分に大きい場合、ダイオード、ダイオードアレイ及びCCDカメラ等の低感度光子検出器を用いることができる。
【0226】
また、一部の実施態様においては、光子検出器が、例えば、他の光信号の中から興味のある特定の光信号を分離するように構成できる各種光学素子を含むことができる。例えば、特定の実施態様においては、光子検出器が、試料180から現れる光子信号の特定の波長域を選択するフィルタ等の光学素子を含むことができ、試料180についての物質構成情報を提供することができる。例えば、該フィルタは、望ましくない波長の光子を遮ることができる(例えば、望ましくない波長の光子を吸収する、望ましくない波長の光子を反射する、望ましくない波長の光子のそらす)。一部の実施態様においては、光学素子が、異なる波長を空間的に分散させることで、スペクトル分解能(例えば、試料180により発生する光子のスペクトルを測定する)を提供することができる(例えば、一つ以上の回折格子等の回折素子及び/又は一つ以上のプリズム等の屈折素子及び/又は光子の波長分解検出器を提供する一つ以上の分光計システム)。一部の実施態様においては、光子検出器が、波長板及び/又は偏光子等の偏光操作素子を含むことができる。これらの偏光操作素子は、選択された偏光状態だけの光子がPMTに達するのを可能にするように構成されることができ、例えば、試料180から現れる光子信号の偏光選択性の検出を可能にする(例えば、試料180についての結晶配向情報を決定するのに役立つ)。特定の実施態様において、光子検出器はまた、鏡、レンズ、ビームスプリッター及び入射光子の方向を変えて操作するための他の素子(例えば、検出される光子の立体角を増大させる)を含むことができる。
【0227】
一般に、光子検出器は、試料180からの所望の角度及び距離における光子を検出するために配置できる。例えば、特定の実施態様において、光子検出器は、表面181(イオンビーム192が入射する試料180の表面)又は表面182(イオンビーム192が入射する表面と反対側の試料180の表面)から現れる光子を検出するために配置できる。任意に、複数の光子検出器を用い、表面181(イオンビームが衝突する表面)、183(イオンビームが衝突するところと反対側の表面)及び/又は試料180の他の表面からの光子を検出するように構成することができる。
【0228】
一部の試料では、試料180で起こる光学的過程の選択規則に従って、特定の方向に光子を散乱させ、試料180からの光子放出量の角度分解測定により、例えば、試料180についての物質構成情報を提供することができる。
【0229】
(iii)マイクロチャンネルプレート検出器
一部の実施態様においては、マイクロチャンネルプレート検出器を用い、試料180からの二次電子、中性原子又はイオンの束を増幅させることができる。マイクロチャンネルプレートは、一般に溶融シリカ等の材料から形成され、通常、アレイの形態で配置される多数の小口径チャンネルを含む。粒子は、個々のチャンネルに入って、チャンネル壁面と衝突し、自由電子を発生させる。一般に、複数の自由電子は、粒子(中性原子、イオン又は電子)のチャンネル壁面との各衝突で発生する。結果として、入力粒子信号の増幅に対応するカスケード電子信号が、マイクロチャンネルプレートから出る。
【0230】
マイクロチャンネルプレート系検出器(一つ以上のマイクロチャンネルプレートを含むことができる)は、試料180からのイオン、二次電子及び/又は中性原子を検出するように構成できる。試料180から形成される中性粒子及び/又はイオン(例えば、二次イオン及び二次原子、散乱イオン並びに一次原子)は、一般に試料180の表面181(イオンビームが衝突する表面)から出る。従って、試料180からの中性のもの及び/又はイオンを測定するように構成されるマイクロチャンネルプレート系検出器は、通常、
図1及び5に表す検出器150の位置と同様な位置にある。しかしながら、特定の実施態様においては、中性粒子及び/又はイオン(例えば、透過イオン)を調べることができる。かかる実施態様において、マイクロチャンネルプレート系検出器は、
図1及び5の検出器160の位置と同様な位置に位置することができる。試料180の表面181(イオンビームが衝突する表面)及び/又は表面183(イオンビームが衝突するところと反対側の表面)から二次電子を検出することができ、試料180から二次電子を検出するように構成されるマイクロチャンネルプレート系検出器は、
図1及び5に表される検出器150及び/又は検出器160と同様の位置にある。
【0231】
マイクロチャンネルプレートは、入力粒子信号を増幅し、入力信号を出力電子信号に変換する。出力電子信号を視覚化するため、マイクロチャンネルプレート系検出器はまた、変換物質、スクリーン及び光子検出器(上記記載を参照)を含むことができる。
【0232】
一部の実施態様においては、マイクロチャンネルプレートが、イオン光学機器130の素子に直接取り付けられる。
図19は、第二レンズ226に直接取り付けたマイクロチャンネルプレート検出器620の断面図を示す。第二レンズ226は、円錐形状を有し、平坦な下面622を有する。検出器620は、表面622に直接取り付けられる。試料180にイオンビーム192を照射するとき、マイクロチャンネルプレート検出器620によって試料180からのイオン、二次電子及び/又は中性原子(矢印624によって纏めて示す)を検出することできる。検出器620は、検出される粒子束に比例する電流を記録し、電子制御システム170に伝えることができる。
【0233】
(iv)変換板
一部の実施態様においては、変換板を用いて、試料180からのイオン(例えば、散乱イオン、二次イオン)又は試料180からの中性粒子(例えば、一次中性He原子)を検出することができる。一般に、変換板は、入射イオン又は原子に当たる際に高い二次電子放出量を有する薄箔物質から形成できる。かかる物質の一例は白金である。その二次電子放出量は、例えば、検出器150及び/又は160(
図1及び5)として構成される適切な電子検出器によって容易に検出される多数の二次電子を作り出す。
【0234】
(v)チャンネルトロン検出器
また、チャンネルトロン検出器を用いて、試料180から出る電子、イオン、中性原子等の粒子を検出することができる。チャンネルトロン検出器は、マイクロチャンネルプレート検出器に関し記載したものと同様に、複数の内部衝突によって粒子信号を増幅することで機能する。試料180からの比較的弱い二次電子束、イオン束又は中性原子束の測定は、(例えば、電子制御システム170を用いて)チャンネルトロン検出器によって出力される増幅粒子信号を測定することによって可能となる。試料180からの二次電子を測定する場合、チャンネルトロン検出器は、
図1及び5の検出器150及び/又は検出器160について表されるのと同様の位置に位置することができる。一般に、試料180からのイオン及び/又は中性粒子の測定のため、チャンネルトロン検出器は、
図1及び5に表される検出器150の位置及び/又は検出器160の位置と同様の位置にある。
【0235】
(vi)蛍光体検出器
蛍光体系検出器は、透明基板の上に堆積される蛍光体材料の薄層と、CCDカメラ、PMT又は一つ以上のダイオード等の光子検出器とを含み、これを用いて、試料180からの電子、イオン及び/又は中性原子を検出することができる。粒子が蛍光体層に当たって、光子検出器により検出される蛍光体からの光子の放出を誘発する。蛍光体系検出器は、測定される粒子の種類に応じて、
図1及び5に表される検出器150及び/又は検出器160と同様の位置に配置することができる(上記記載を参照)。
【0236】
(vii)固体検出器
固体検出器を用いて、試料180からの二次電子、イオン及び/又は中性原子を検出することができる。固体検出器は、ケイ素等の物質又はドープケイ素物質で形成されるセンサーから組み立てることができる。入射粒子がセンサーに当たると、センサーの物質内に電子−正孔対を生じ、電子制御システム170によって検出できる電流を作り出す。入射粒子により発生する電子−正孔対の数や、その結果生じる対応する電流の大きさは、一部分において粒子のエネルギーによって決まる。従って、固体検出器は、特に粒子のエネルギー測定に役立つことができ、試料180からの高いエネルギーの粒子(例えば、散乱Heイオン及び中性He原子)を検出するときに特に有利な場合がある。
【0237】
(viii)シンチレータ検出器
蛍光体系検出器と同様に、シンチレータ系検出器は、入射粒子(電子、イオン又は中性原子)に当たって光子を発生させるシンチレータ材料を含む。適したシンチレータ材料としては、例えば、YAG及びYAPが挙げられる。シンチレータ系検出器の光子放出量は、入射粒子のエネルギーによって決まる。結果として、シンチレータ検出器は、特に粒子のエネルギー測定に役立つことができ、試料180からの高いエネルギーの粒子(例えば、散乱Heイオン及び中性He原子)を検出するときに特に有利な場合がある。
【0238】
(ix)イオン用のエネルギー検出器
様々な異なる検出器を用いて様々な異なる検出計画を実施し、試料180からのイオン(例えば、散乱Heイオン)のエネルギーを測定することができる。電場及び/又は磁場を用いて入射イオンを偏向させて、その偏向量がイオンエネルギーによって決まる静電プリズム検出器を用い、異なるエネルギーでイオンを空間的に分離することができる。また、磁気プリズム検出器を用いて、イオンエネルギーに基づき、イオンを空間的に分離することもできる。その後、上記の適した検出器(例えば、マイクロチャンネルプレート、チャンネルトロン及びその他のもの)のいずれかを用いて、偏向されたイオンを検出することができる。
【0239】
また、四重極検出器を用いて、試料180からのイオンのエネルギーを分析することができる。四重極検出器において、四重極内の高周波(RF)場は、選択した質量とエネルギーを有するイオンが四重極内の直線で未偏向の軌道に沿って伝播することを確実にする。異なる質量及び/又はエネルギーを有するイオンは、四重極内の曲線軌道に沿って伝播する。四重極分析器内のイオンの偏向位置から、イオンエネルギーを決定することができる。
【0240】
一部の実施態様においては、正にバイアスされた粒子セレクター(例えば、導電性物質のスクリーン若しくはメッシュ又は円筒状の金属管若しくは環)をイオンの飛行経路に沿って検出器の前に設置することで、イオンエネルギーを決定することができる。粒子セレクター601に印加される電位の大きさは、最初に非常に高くすることができ(例えば、試料180からのイオンが通過するのを阻止すると見られる値)、イオンを検出するのに適した検出器(上記記載を参照)を用いながら、電位の大きさを低減することができる。粒子セレクター上の電位バイアスの大きさに応じて検出器に達するイオンの電流を用いて、イオンエネルギーについての情報を決定することができる。
【0241】
(x)電子用のエネルギー検出器
様々な異なる検出器を用いて様々な異なる検出計画を実施し、試料180からの電子(例えば、二次電子)のエネルギーを測定することができる。電場及び/又は磁場を用いて入射電子を偏向させて、その偏向量が電子エネルギーによって決まるプリズム検出器を用い、異なるエネルギーで電子を空間的に分離することができる。その後、上記の適した検出器のいずれかを用いて、偏向された電子を検出することができる。
【0242】
一部の実施態様においては、負にバイアスされた粒子セレクター(例えば、導電性物質のスクリーン若しくはメッシュ又は円筒状の金属管若しくは環)を電子の飛行経路に沿って検出器の前に設置することで、電子エネルギーを決定することができる。粒子セレクターの電位の大きさは、最初に非常に高くすることができ(例えば、試料180からの電子が通過するのを阻止すると見られる値)、電子を検出するのに適した検出器(上記記載を参照)を用いながら、電位の大きさを低減することができる。粒子セレクター上に印加された電位の大きさに応じて検出器に達する電子電流を用いて、電子エネルギーについての情報を決定することができる。
【0243】
(xi)飛行時間検出器
また、二次電子、イオン及び中性原子についての飛行時間の情報を測定するように、上記の検出器を構成することができる。飛行時間の検出を行うには、イオンビーム192をパルスモードで作動させる。例えば、検出器220及び222の一方又は双方に印加される電位を急速に変化させることで、イオンビーム192をパルス化することができる。これらの電位を増加させることによって、例えば、イオン光学機器130の通常の経路からイオンビーム192をそらすことができ、その結果、イオンビーム192を絞り224によって一時的に遮る。その後、検出器220及び222の電位を再び増加させる前に短時間でそれらの正常値に戻した場合、Heイオンのパルスを試料180に送ることができる。
【0244】
同時に、検出器150及び160は、偏向器220及び/又は222に印加される電位の時間的変化に基づく電子制御システム170からのクロック信号に同期させることができる。結果として、Heイオンパルスの開始から試料180からの粒子の検出までの期間を正確に測定することができる。イオン光学機器130内のHeイオンパルスの伝播時間についての既知の情報から、試料180と検出器150及び/又は160間の検出粒子の飛行時間を決定することができる。
【0245】
(xii)角度依存測定
試料180からの粒子の相対存在量及びエネルギーを測定することに加えて、上記した検出器を用いて角度に依存した散乱情報を得ることができる。一般に、角度依存情報を得るには、試料180についての一連の立体角に亘って検出器の移動を可能にする取付け部(例えば、回転取付け部)に、検出器を取り付ける。試料180に対し特定の立体角に対応する与えられた配向で、粒子の存在量及び/又はエネルギーの測定を記録する。異なる立体角に検出器を連続的に再配置し、測定を繰り返し行い、測定数量の角度依存を決定する。一部の実施態様においては、検出器の前で散乱粒子の経路にピンホール等の制限絞りを設置し、試料180からの粒子の測定を行う角度範囲を更に制限することができる。
【0246】
G.作動パラメータ
イオンビーム192は、試料180の表面181上に比較的小さいスポットサイズを有することができる。例えば、一の実施態様においては、試料180の表面181上にあるイオンビーム192のスポットサイズが、10nm以下(例えば、9nm以下、8nm以下、7nm以下、6nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下)の寸法を有することができる。特定の実施態様においては、試料180の表面181上にあるイオンビーム192のスポットサイズが、0.05nm以上(例えば、0.1nm以上、0.2nm以上、0.25nm以上、0.5nm以上、0.75nm以上、1nm以上、2nm以上、3nm以上)の寸法を有する。一部の実施態様においては、表面181上にあるイオンビーム192のスポットサイズが、0.05nm〜10nm(例えば、0.1nm〜10nm、0.2nm〜10nm、0.25nm〜3nm、0.25nm〜1nm、0.1nm〜0.5nm、0.1nm〜0.2nm)の寸法を有する。本願で使用されるように、
図20A〜20Cを参照して、以下のようにスポットサイズを決定する。金で形成され50nm〜2000nmの寸法を有する島状粒子1700が炭素表面1710に配置される。島状金粒子は、例えば、金の炭素表面への蒸着によって形成される。炭素上に堆積した島状金粒子を含む測定試料は、本願に記載の分解能の測定に適しており、例えば、ストラクチャープローブインコーポレーテッド社(ウェストチェスター、PA)から市販されている。島状金粒子の一部や該島状金粒子片側の炭素表面の一部を直線的に横切ってイオンビーム192を移動させるように(矢印1730)、イオン顕微鏡を作動させることができる。イオンビームの位置に応じて、二次電子の強度を測定する(
図20C)。炭素及び金についての全存在量の平均値に相当する漸近線1740及び1750を計算し(又は引いて)、全存在量がそれぞれ漸近線1740と漸近線1750間の存在量の差の25%及び75%となる位置に相当する縦線1760及び1770を計算する(又は引く)。イオン顕微鏡200のスポットサイズは、線1760と線1770間の距離である。
【0247】
一般に、試料180の表面181でのイオンビーム192の電流は、1nA以下(例えば、100pA以下、50pA以下)及び/又は0.1fA以上(例えば、1fA以上、10fA以上、50fA以上、100fA以上、1pA以上、10pA以上)である。例えば、一部の実施態様においては、試料180の表面181でのイオンビーム192の電流が0.1fA〜1nA(例えば、10fA〜100pA、100fA〜50pA)である。特定の実施態様においては、試料を画像化する際に比較的低いビーム電流を使用するのが好ましい場合がある。例えば、一部の生物学的用途及び/又は薬学的用途においては、(例えば、試料への損傷の可能性を低減するため)試料の画像化に低い電流を使用することが重要である場合がある。かかる実施態様においては、一の電流量を用いて使用のための気体電界イオン顕微鏡を準備することができ(例えば、10fA以上の電流)、また、異なる電流量を用いて試料の画像化をすることができる(例えば、0.1fA等の1fA未満の電流)。
【0248】
通常、イオンビーム192は、試料180の表面181で5eV以下(例えば、4eV以下、3eV以下、2eV以下、1eV以下、0.5eV以下)のエネルギーの広がりを有する。一部の実施態様においては、イオンビーム192が、試料180の表面181で0.1eV以上(例えば、0.2eV以上、0.3eV以上、0.4eV以上)のエネルギーの広がりを有する。例えば、イオンビーム192は、試料180の表面181で0.1eV〜5eV(例えば、0.1eV〜3eV、0.1eV〜1eV)のエネルギーの広がりを有することができる。
【0249】
イオンビーム192は、試料180の表面181で比較的高い輝度を有することができる。例えば、イオンビーム192は、試料180の表面181で1×10
9A/cm
2sr(例えば、1×10
10A/cm
2sr以上、1×10
11A/cm
2sr以上)の輝度を有することができる。一部の実施態様においては、先端186に隣接した気体圧力を増大させるか及び/又は先端186の温度を低下させることによって、輝度を増大させることができる。本願を参照するように、イオンビームの輝度は以下のとおりに測定される。イオンビーム192中のイオン軌道分布のFWMHは(正味電場が比較的小さく、イオン軌道が略直線である抽出部190と第一レンズ216との間の空間領域において)、x方向及びy方向の双方で決定される。x方向及びy方向の双方においてFWHM幅の範囲内にある合計100のイオン軌道が、イオンビーム192中のイオン軌道分布から無作為に選択される。100のイオン軌道のそれぞれはほぼ直線であり、先端頂部187に戻る方向に投影される。z軸に沿う特定点z
tでの軌道の空間広がりは、x−y平面と平行で点z
tを通過する平面Z
tにおいて、後方伝搬軌道の平面Z
tとの交差点の全てを囲む最小径の円を構築することによって評価される。最小径の円の直径はd
sである。一般に、先端頂部187に近い点z
tでは、d
sが小さくなり、試料180に近い点z
tでは、d
sが大きくなる。特定の点z
t=z
0において、d
sは最小値d
0となる。即ち、x−y平面と平行な平面における軌道の空間広がりが最小になる。点z
0での最小径の円の直径d
0は、顕微鏡システム200の仮想源サイズと称される。次に、上記した通り、抽出部190と第一レンズ216間でのイオンビーム192のFWHM領域におけるイオンビーム192の発散及びビーム電流を測定する。最後に、仮想源サイズとイオンビーム192の立体発散角との積でビーム電流を割って、輝度を計算する。
【0250】
イオンビーム192は、試料180の表面181で比較的高い還元輝度を有することができる。例えば、イオンビーム192は、試料180の表面181で5×10
8A/m
2srV以上(例えば、1×10
9A/m
2srV、1×10
10A/m
2srV)の還元輝度を有することができる。本願を参照するように、イオンビームの還元輝度は、ビーム電流を測定する位置でのイオンビーム中の平均イオンエネルギーで割ったイオンビームの輝度である。
【0251】
イオンビーム192は、抽出部190の遠位端193で比較的低いエタンデュを有することができる。例えば、イオンビーム192は、抽出部190の遠位端193で5×10
-21cm
2sr以下(例えば、1×10
-22cm
2sr以下、1×10
-23cm
2sr以下、1×10
-23cm
2sr以下、1×10
-24cm
2sr以下)のエタンデュを有することができる。本願を参照するように、イオンビームのエタンデュは、輝度の逆数とビーム電流との数学の積として算出される。
【0252】
イオンビーム192は、抽出部190の遠位端193で比較的小さい還元エタンデュを有することができる。例えば、イオンビーム192は、抽出部190の遠位端193で1×10
-16cm
2sr以下(例えば、1×10
-17cm
2sr以下、1×10
-18cm
2sr以下、1×10
-19cm
2sr以下)の還元エタンデュを有することができる。イオンビームの還元エタンデュは、イオンビームのエタンデュとビーム電流を測定する位置でのイオンビーム中のイオンの平均エネルギー対電荷の比率との数学の積である。
【0253】
イオンビーム192は、試料180の表面181に関して比較的低い角度収束を有することができる。例えば、一部の実施態様においては、イオンビーム192の収束半角が5mrad以下(例えば、1mrad以下、0.5mrad以下、0.1mrad以下)及び/又は0.05mrad以上とすることができる。本願を参照するように、イオンビームの収束半角は以下のとおりに決定される。上記したように炭素基板の上に島状の金粒子を含む試料をイオン顕微鏡200に取り付けて、z方向に平行移動させる結果、イオンビーム192の焦点の位置が、島状金粒子の直径に沿った最高標高点のできるだけ近くに位置する。次に、上記したように、島状金粒子の直径に沿ってイオンビーム192を直線的に平行移動させて、イオンビームの集束スポットサイズs
fを測定する。次に、試料を+z方向に平行移動させて、s
z=1μmでイオン光学機器130から離し、島状金粒子の同じ直径に沿ってイオンビーム192を直線的に平行移動させて、イオンビーム192の非集束スポットサイズs
dを測定する。次に、収束角度ηが、下記式に示すように、平行移動距離と共に集束スポットサイズと非集束スポットサイズの測定から三角法にて決定できる。
【数1】
イオン顕微鏡200の収束半角は、η/2である。
【0254】
イオン顕微鏡200は、非常に信頼性のあるものとすることができる。一例として、一部の実施態様においては、Heイオン源(先端186、抽出部190、及び任意のサプレッサ188)が、気体原子と連続して相互作用し、システムから先端186を取り外さずに一週間以上(例えば、二週間以上、一月以上、二月以上)の間イオンビームを発生させることが可能である。一部の実施態様においては、Heイオン源が気体原子と連続して相互作用し、イオンビームを発生させる期間に、試料180の表面181でのイオンビーム192の電流が1分当たり10%以下(例えば、5%以下、1%以下)で変化する。
【0255】
他の例として、一部の実施態様においては、気体電界イオン源(先端186、抽出部190、及び任意のサプレッサ188)が、気体原子と相互作用し、合計10時間以下(例えば、5時間以下、2時間以下、1時間以下)の中断時間と共に一週間以上(例えば、二週間以上、一月以上、二月以上)の間イオンビームを発生させることが可能である。かかる実施態様においては、気体電界イオン源が気体原子と相互作用し、その間ずっと(合計ゼロ時間の中断時間に相当する)連続してイオンビームを発生させることができるが、そのことは必要なことではない。例えば、その期間の間に、気体電界イオン顕微鏡がイオンビームを発生させるのに気体原子と相互作用しないときもあり得る。その期間の間、かかる中断時間は、1回又は1回より多く(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回)起こる場合がある。中断は、例えば、定期的な保守、不測の保守及び/又はシフト間での停止時間(例えば、一晩中の停止時間)による場合がある。その期間の間の中断時間の合計が、合計中断時間である。一例として、その期間の間にそれぞれ1時間の中断時間が三回ある場合には、合計中断時間は3時間である。他の例として、その期間の間に唯一度の中断時間があり、それが3時間である場合には、そのときの合計中断時間は3時間である。更なる例として、その期間の間に2回の中断時間があり、最初の中断時間が1時間で、第二の中断時間が2時間である場合には、そのときの合計中断時間は3時間である。一部の実施態様においては、この気体電界イオン源が気体原子と相互作用し、イオンビームを発生させる期間に、試料180の表面181でのイオンビーム192の電流が1分当たり10%以下(例えば、5%以下、1%以下)で変化する。
【0256】
イオン顕微鏡200は、比較的良好な分解能を有することができる。例えば、一部の実施態様においては、イオン顕微鏡200の分解能が10nm以下(例えば、9nm以下、8nm以下、7nm以下、6nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下)とすることができる。特定の実施態様においては、イオン顕微鏡200の分解能が0.05nm以上(例えば、0.1nm以上、0.2nm以上、0.25nm以上、0.5nm以上、0.75nm以上、1nm以上、2nm以上、3nm以上)とすることができる。一部の実施態様においては、イオン顕微鏡200の分解能が0.05nm〜10nm(例えば、0.1nm〜10nm、0.2nm〜10nm、0.25nm〜3nm、0.25nm〜1nm、0.1nm〜0.5nm、0.1nm〜0.2nm)とすることができる。本願において使用するように、イオンビームの分解能は、イオン顕微鏡を用いて得られる画像から正確に測定できる最小特徴部の大きさを指す。特徴部の大きさは、同様の条件下で得られる特徴部の10枚の画像から、特徴部の実際の大きさの10%以下の誤差内で且つ特徴部の実際の大きさの5%未満の測定された大きさの標準偏差で決定できる場合に正確に測定される。
【0257】
イオン顕微鏡200を用い、比較的短時間で高品質の画像を撮影することができる。例えば、イオン顕微鏡200は、0.25以上(例えば、0.5以上、0.75以上、1以上、1.5以上、2以上)の品質係数を有することができる。本願を参照するように、品質係数は、以下のように決定される。片方がケイ素(Si)で形成され、他方が銅(Cu)で形成された、試料を横切る直線の物質との境界を有する平面試料は、境界がy軸と平行に配向されるように位置している。その試料は、512画素×512画素のx−yアレイに試料の表面を分割することで画素毎に画像化される。測定中、1画素当たりの滞留時間は100nsである。試料からの二次電子の全存在量は、試料の表面上でのイオンビームの位置に応じて測定される。試料中のSiに対応する画像画素については、Si画素強度の分布からの標準偏差SD
1に加えて、平均画素強度G
1を決定する。試料中のCuに対応する画像画素については、Cu画素強度の分布からの標準偏差SD
2に加えて、平均画素強度G
2を決定する。品質係数は、以下の式に従って計算される。
【数2】
【0258】
試料180の表面181は、イオンビーム192を照射するときに比較的小さい損傷を受ける場合がある。例えば、試料180の表面181は、損傷試験に従って25nm以下(例えば、20nm以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下)の値を有することができる。本願を参照するように、損傷試験は、以下のように行われる。4平方μmの視野で原子的に平坦なケイ素(純度99.99%)試料は、10pAの試料でのイオンビーム電流及び10nm以下の試料でのイオンビームのスポットサイズを用い、試料の表面に亘ってイオンビームを画素毎にラスタ化しながら120秒間画像化される。4平方μmの視野は、ラスタ化する目的で512画素×512画素のアレイに分解される。損傷試験の値は、損傷試験の実施から得られるケイ素試料の画像化部分にエッチングする最大距離に相当する。
【0259】
イオン顕微鏡200は、比較的大きい焦点深度を有することができる。例えば、一部の実施態様においては、イオン顕微鏡200の焦点深度が5nm以上(例えば、10nm以上、100nm以上、1μm以上)及び/又は200μm以下(例えば、100μm以下、10μm以下)とすることができる。一部の実施態様においては、イオン顕微鏡200の焦点深度が200μm〜5nm(例えば、500μm〜5nm、1nm〜5nm)とすることができる。本願において使用するように、イオンビームの焦点深度は、以下に示す方法で測定される。炭素基板上に形成される島状金粒子を含む試料は(Heイオンビームのスポットサイズの測定に関して先に述べたように)、Heイオン顕微鏡に挿入され、上記したようにHeイオンビームのスポットサイズの測定を行う。z軸に沿う試料の位置を反復して調整することで、最小のHeイオンビームのスポットサイズをもたらす試料の位置を決定する。このz軸に沿う位置をz
fと示す。z
fでのHeイオンビームのスポットサイズをss
fと示す。次に、z
fに対し−z方向に沿って試料を徐々に平行移動させる。連続する漸進的な平行移動の後に(z
fを決定するのに用いた試料の同じ位置で)Heイオンビームのスポットサイズの測定を行う。測定されるHeイオンビームのスポットサイズが2ss
fであるとき、試料の平行移動を停止する。このz軸に沿った試料の位置をz
uと示す。次に、z
uに対し+z方向に沿って試料を徐々に平行移動させ、点z
fを通り抜ける。連続する漸進的な平行移動の後に(z
fを決定するのに用いた試料の同じ位置で)Heイオンビームのスポットサイズの測定を行う。測定されるHeイオンビームのスポットサイズが2ss
fであるとき、試料の平行移動を停止する。このz軸に沿う試料の位置をz
1と示す。Heイオン顕微鏡の焦点深度d
fは、d
f=|z
1−z
u|として算出される。
【0260】
一部の実施態様においては、本願に開示の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用い、例えば、二次電子放出量、散乱イオン存在量及び/又は角度及びエネルギー分解された散乱イオンの検出によって、非常に近い原子番号(Z値)を有する試料中の元素を区別することができる。例えば、特定の実施態様においては、気体電界イオン顕微鏡を用いて、1だけ異なる原子番号(Z値)を有する元素を区別することができる。
【0261】
特定の実施態様においては、本願に開示の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用い、例えば、二次電子放出量、散乱イオン存在量及び/又は角度及びエネルギー分解された散乱イオンの検出によって、非常に近い質量を有する試料中の元素を区別することができる。特定の実施態様においては、気体電界イオン顕微鏡を用いて、1原子質量単位以下(例えば、0.9原子質量単位以下、0.8原子質量単位以下、0.7原子質量単位以下、0.6原子質量単位以下、0.5原子質量単位以下、0.4原子質量単位以下、0.3原子質量単位以下、0.2原子質量単位以下、0.1原子質量単位以下)で異なる質量を有する元素を区別することができる。一部の実施態様においては、試料が異なる平均質量を有する物質(例えば、合金)で形成されるドメインを有することができる。かかる実施態様においては、例えば、気体電界イオン顕微鏡を用いて、1原子質量単位以下(例えば、0.9原子質量単位以下、0.8原子質量単位以下、0.7原子質量単位以下、0.6原子質量単位以下、0.5原子質量単位以下、0.4原子質量単位以下、0.3原子質量単位以下、0.2原子質量単位以下、0.1原子質量単位以下)だけ異なる質量を有する物質のドメインを区別することができる。
【0262】
H.光学的特徴
(i)高効率ガスの使用
一部の実施態様においては、Heガスの先端206への集中的な送出が、顕微鏡システム200内でのHeガスの利用効率を増大させることができる。一般に、イオン化していないHeガス原子はイオン光学機器130に入ることができ、イオンビーム192中のイオンエネルギーの分布幅を増大させることができる。加えて、低エネルギーのイオン化していないHeガス原子は、高エネルギーHeイオンと電荷交換相互作用に関与することができ、イオンビーム192中のイオンエネルギーの分布幅を増大させることもできる。
【0263】
従って、一部の実施態様においては、気体送出システムを設計し、より標的化した方法で気体電界イオン源120の先端186に気体(例えば、Heガス)を提供することができ、また、より効率的な方法で該システムから未使用の気体(例えば、イオン化していないHeガス)を取り除くことができる。例えば、
図21は、気体源110及び真空ポンプ734を含む気体電界イオン顕微鏡の部分概略図である。気体源110は、送出ノズル736で終端する長さq及び直径nの送出管730を含み、真空ポンプ734は、注入口732を含む。ノズル736は、先端186の頂部187から距離gに設置され、注入口732は、先端186の頂部187から距離lに設置されている。
【0264】
一部の実施態様においては、gが10mm以下(例えば、9mm以下、8mm以下、7mm以下)とすることができる。一般に、gは3mm以上(例えば、4mm以上、5mm以上、6mm以上)である。例えば、gは3mm〜10mm(例えば、4mm〜9mm、5mm〜8mm)とすることができる。
【0265】
特定の実施態様においては、lが100mm以下(例えば、90mm以下、80mm以下、70mm以下、60mm以下、50mm以下)とすることができる。一般に、lは10mm以上(例えば、20mm以上、30mm以上、40mm以上)である。例えば、lは10mm〜100mm(例えば、30mm〜100mm、40mm〜80mm)とすることができる。
【0266】
一部の実施態様においては、先端186の頂部187の位置でのHeガスの局所圧力が10
-5Torr以上(例えば、10
-4Torr以上、10
-3Torr以上、10
-2Torr以上、10
-1Torr以上、1Torr以上)である。同時に、顕微鏡システム中のHeガスの全圧力は、Heガスのバックグランウンド導入を用いるシステムに対して低減できる。例えば、顕微鏡システム200の全He圧力は、10
-4Torr以下(例えば、10
-5Torr以下、10
-6Torr以下、10
-7Torr以下、10
-8Torr以下)とすることができる。
【0267】
一部の実施態様においては、真空ポンプ734が顕微鏡システム200の特定立体角の領域内でイオン化していないHe原子を捕らえることができるように、注入口732の距離l及び断面積を選択する。例えば、先端186の頂部187に位置するHe原子については、注入口732で範囲を定めた立体角が5°以上(例えば、10°以上、15°以上、20°以上、30°以上、40°以上)である。
【0268】
一般に、送出管730の長さqの管730の直径nに対する比は、先端186に送出されるHeガス原子の軌道分布を制御するように選択できる。例えば、一部の実施態様においては、q/nの比が3以上(例えば、4以上、5以上、6以上)及び/又は10以下(例えば、9以下、8以下、7以下)とすることができる。特定の実施態様においては、q/nの比が3〜10(例えば、3〜9、4〜9、4〜8、5〜8、5〜7)とすることができる。
【0269】
一部の実施態様においては、気体送出システムが、一つを超える送出管及び送出ノズルを含むことができる。例えば、特定の実施態様においては、気体送出システムが、2個以上(例えば、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上)の気体送出管を含むことができる。複数の気体送出管のそれぞれは、相対的に先端186に向くようHeガスを送出できるように配置できる。複数の気体送出管の使用の結果として、先端186の頂部187の位置でのHeガスの局所圧力を、更に増大させることができる。一つ以上の真空ポンプを用いて、顕微鏡システム200からイオン化していないHeガスを取り除くことができる。
【0270】
一部の実施態様においては、上記システムの他の構成要素に気体送出管730を組み込むことができる。例えば、特定の実施態様においては、抽出部190及び/又はサプレッサ188における気体送出用の一つ以上の通路(例えば、2本以上の通路、4本以上の通路、6本以上の通路)によって、気体送出管730を形成することができる。一部の実施態様においては、先端186を支持する柱(例えば、柱522a/b及び552)に気体送出用の一つ以上の通路(例えば、2本以上の通路、4本以上の通路、6本以上の通路)を提供することができる。一例として、特定の実施態様においては、抽出部190が、先端186への気体送出用の通路を4本含むことができる。その通路を抽出部190の外周に沿って等間隔で放射状に配列することができ、その結果、各通路の開口部が先端186と直接向き合う。各通路の長さ対直径の比は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0271】
顕微鏡システム200の他の要素に気体送出管を組み込むことで、多くの利点を実現することができる。例えば、気体送出用に先端に近接して設置した金属管730の使用は、先端186の近傍における電場に摂動を起こさせる場合がある。気体送出管の顕微鏡システムの他の要素への組み込みは、かかる摂動を除去することができる。他の例として、先端186の近傍における空間領域は、一般に、顕微鏡システム200の作動のため、電極や他の装置で混雑している。気体送出管730をシステムの他の要素に組み込むことで、先端186の近傍での込み合いを低減することができる。
【0272】
一部の実施態様においては、送出管730によって送出されるHeガスを予冷し、顕微鏡システム200に入る際に先端186の動作温度の近くにすることができる。例えば、送出管730の一部を、先端186を冷却するのに用いる冷却剤(例えば、液体窒素)の供給容器と接触して設置することができる。この熱的接触の結果として、管730を通って移動するHeガスは、先端186を配置する室内への導入の前に先端186とほぼ同じ温度に冷却される。
【0273】
(ii)表面電荷の中性化
一般に、試料の表面にHeイオンを入射する場合、二次電子が試料から出る。二次電子の多くは試料から出て、正味の正電荷を有する表面をもたらす。試料の表面上での過剰な正電荷は、多くの望ましくない効果を引き起こす場合がある。一部の実施態様においては、正電荷によって試料の物質に損傷を与えることがある。例えば、特定の物質は、電荷感受性があり、過剰の正(又は負)電荷の存在下で激しく反応(例えば、爆発)する場合がある。
【0274】
特定の実施態様においては、試料表面の正の帯電が、イオンビームの試料との相互作用によって試料から出る二次電子を検出する検出器の能力を制限する場合がある。例えば、試料表面での正の電荷と二次電子との引力は、電子を減速する場合があり、電子が検出器に達するのを阻止する。
【0275】
一部の実施態様においては、試料表面の正の帯電が不正確なイオンビームのラスタ化を招く場合がある。試料表面での正の電荷によって形成された電場の結果としての入射イオンビームの偏向及び減速が、入射イオンのエネルギーを低減し、予測が困難なように軌道を変えるおそれがある。
【0276】
試料表面での正味の正電荷が十分に大きくなると、試料の表面は、Heイオンが試料表面に達する前にHeイオンを偏向して該試料表面から離すHeイオン用の静電鏡として作用する場合がある。
【0277】
試料表面に電子束を送出することが可能なフラッド銃を用いて、表面帯電効果を打ち消すことができる。
図22は、Heイオンビーム192が表面181に入射する際に試料180の表面181に電子ビーム842を送出するように構成されるフラッド銃840を含む気体電界イオン顕微鏡の一部を示す。一般に、電子ビーム842により所望の範囲で表面帯電効果を相殺できるように、表面181上の電子束を制御することができる。
【0278】
図22は試料180の表面181に同時に衝突するイオンビーム192及び電子ビーム842を表すが、他のアプローチを使用してもよい。例えば、表面181にHeイオンビーム192を照射するのに先立って、電子ビーム842を試料180に送出し、試料180の内層面領域に電荷層846を形成するように、フラッド銃を構成することができる(
図23)。層846は表面181より下方に平均深さmを有し、層846は表面181と垂直な方向に測定される厚さrを有する。一般に、深さm及び厚さr並びに層846の電子密度は、電子ビーム842中の電子エネルギー、表面181に対する電子ビーム842中の電子の入射角、及び試料180に送出される電子の合計線量によって制御できる。
【0279】
一部の実施態様においては、表面181に入射する場合、電子ビーム842中の電子の平均エネルギーが調整可能である。例えば、平均電子エネルギーは、500eV以上(例えば、1keV以上、2keV以上)及び/又は20keV以下(例えば、15keV以下、10keV以下)とすることができる。例えば、表面181に入射する場合、電子ビーム842中の電子の平均エネルギーは、500eV〜20keV(例えば、1keV〜15keV、2keV〜10keV)とすることができる。
【0280】
表面191に関して電子ビーム842中の電子の入射角δは、電子ビーム842の主軌道と表面181の垂線848との間の角度に相当する。一般に、δは0°以上(例えば、10°以上、20°以上)及び/又は80°以下(例えば、70°以下、60°以下)である。例えば、δは、0°〜70°(例えば、0°〜10°、40°〜60°)とすることができる。
【0281】
特定の実施態様においては、試料180に送出される合計電子電流が、10pA以上(例えば、100pA以上、1nA以上、10nA以上)及び/又は100μA以下(例えば、10μA以下、1μA以下、500nA以下、100nA以下)である。例えば、試料180に送出される合計電子電流は、10pA〜1μA(例えば、100pA〜100nA、1nA〜10nA)とすることができる。
【0282】
一部の実施態様においては、mが10nm以上(例えば、25nm以上、50nm以上、75nm以上、100nm以上)及び/又は500nm以下(例えば、400nm以下、300nm以下、200nm)である。例えば、mは10nm〜500nm(例えば、25nm〜500nm、50nm〜500nm、75nm〜400nm、100nm〜400nm)とすることができる。
【0283】
特定の実施態様においては、複数のフラッド銃を用いることができる。例えば、一部の実施態様においては、複数のフラッド銃を用い、試料180の表面181の異なる位置に電子を照射することができる。特定の実施態様においては、各フラッド銃を用いて、表面181の同一部分に電子を照射することができる。任意には、異なるフラッド銃を異なる時間に作動させることができる。例えば、一つ以上のフラッド銃を用いて、表面181にHeイオンを照射する前に表面181に電子を照射することができるが(例えば、内層面に電荷層を形成する)、一つ以上のフラッド銃を用いて、表面181がHeイオンを照射されつつ表面181に電子を照射することもできる。一部の実施態様においては、全てのフラッド銃を用いて、表面181にHeイオンを照射する前に表面181に電子を照射することができる(例えば、内層面に電荷層を形成する)一方で、特定の実施態様においては、全てのフラッド銃を用いて、表面181がHeイオンを照射されつつ表面181に電子を照射することもできる。また、他の組み合わせを用いてもよい。
【0284】
フラッド銃を用いて表面電荷の中性化を達成することができる実施態様について記載してきたが、放出された二次電子を集めてそれらを試料表面に戻し、表面での正味の正電荷を低減する集電極を用いて、表面電荷の中性化を達成することもできる。
図24を参照すると、導体854によって集電極852を試料180に接続している。試料180にHeイオンビーム192を照射すると、試料180の表面181から放出される二次電子(矢印856で表す)が集電極852に入射する。次に、電子856を導体854によって表面181に戻し、表面181での正電荷を低減する。追加の集電極852を試料180に接続し、更なる表面電荷の中性化を提供することができる。
【0285】
特定の実施態様においては、一つ以上の集電極と一つ以上のフラッド銃とを組み合わせて用いることができる。例えば、一つ以上のフラッド銃を用いて、表面181にHeイオンを照射する前に試料180の表面181に電子を照射することができ(例えば、内層面に電荷層を形成する)、また、一つ以上の集電極を用いて、表面181がHeイオンを照射されつつ表面181での帯電を中性化することができる。また、他の組み合わせも可能である。
【0286】
一部の実施態様においては、非常に低いエネルギーの電子ビーム842を試料180に送出するように、フラッド銃840を構成することができる。例えば、ビーム842中の電子は、約50eV以下の平均エネルギーを有することができる。低エネルギー電子は低い着陸エネルギーを有しており、このことは、表面181に蓄積できる負電荷の量を制限する。例えば、電子ビーム842中の平均電子エネルギーが50eVである場合において、試料180が共通の接地部に対して-50Vの電位に帯電すると、フラッド銃840からの電子は試料の表面にもはや着陸しなくなる。結果として、フラッド銃840からの低エネルギー電子のエネルギーを調整することで、試料180の表面181上の最大蓄積負電荷を制御することができる。この方法は、非導電性物質の帯電を防ぐために非導電性物質の上部に導電性物質の層を堆積することなく、非導電性物質を画像化するのに使用できる。
図25にこの方法の一例を示す。イオンビーム192が、比較的低い導電率の誘電体である試料180の表面181に入射する(例えば、試料180は金属でない)。試料マニピュレータ140によって試料180を支持しており、ここで、該試料マニピュレータ140は、顕微鏡システム200の共通の外部接地部に対して-600Vの電位にバイアスされている。マニピュレータ140に印加される電位は、試料180の表面181に電場を形成する。フラッド銃840は、衝突イオンビーム192近傍の表面181に、500eVの平均エネルギーを有する電子を含む電子ビームを送出するように構成される。最初に、マニピュレータ140に印加されるバイアスによる表面181の電場は、843a及び843b等の軌道(電子が表面182に着陸しない)に沿ったフラッド銃840からの電子の偏向を引き起こす。しかしながら、正電荷が入射Heイオンによって表面に蓄積するにつれて、試料180は正に帯電し、フラッド銃840からの電子によって受ける電場強度を低減する。試料180の表面181の電荷が、表面での有効バイアスが共通の接地部に対して-500Vに達する点に蓄積すると、例えば、343c等の軌道に続いて、フラッド銃840からの電子は表面181に着陸でき、表面上の正電荷を中性化することができる。結果として、マニピュレータ140に印加されるバイアス及びフラッド銃840によって送出される電子のエネルギーを制御することで、試料180上での正電荷の蓄積を制御することができる。従って、表面電荷の蓄積をしないで非導電性物質である試料180を画像化することができ、そうしないと、表面の帯電をもたらす電圧コントラスト効果によって望ましくない画像コントラストに至るおそれがある。電荷散逸層として機能する導電性物質の層を試料上に堆積させることなく、非導電性物質及び半導電性物質の画像を得ることができる。
【0287】
一部の実施態様においては、負の着陸エネルギーを有する試料180に電子を送出するようにフラッド銃を構成することができ、即ち、試料表面上に正電荷を欠く場合に、電子が試料181上に全く着陸しない。試料180が入射Heイオンによって表面電荷を得るとき、フラッド銃840からの電子は着陸し始め、正電荷を中性化する。結果として、試料180の表面181は、ほとんど帯電していない状態に維持される。
【0288】
一部の実施態様においては、変換面を用いて二次電子を発生させることができ、次に、該二次電子を用いて試料180の表面181に蓄積する正電荷を中性化することができる。例えば、高二次電子放出量の物質(例えば、白金)で形成される変換面を試料180に近接して配置することができる。試料180から出る高エネルギーのHeイオン及び/又は中性原子を変換面にぶつけることができ、二次電子を発生させる。発生する二次電子は、試料180上に蓄積された正の表面電荷の引力を受ける。結果として、二次電子は試料表面に着陸して、正電荷を中性化し、表面電荷による電場を低減する。このため、表面正電荷の蓄積が多いと、二次電子は試料180の表面181に強く引き付けられる。このことは、表面の帯電を低減するための自己調整機構をもたらす。
【0289】
一部の実施態様においては、イオン光学機器130の一の素子に変換板を直接取り付けて、試料180の表面電荷の中性化のために二次電子を提供することができる。例えば、
図26においては、第二レンズ226の表面に変換板845を取り付ける。フラッド銃840からの電子842は、高二次電子放出量の物質から形成される変換板に入射するように向けられている。試料180の表面181にHeイオンビーム192を入射し、時間がたつにつれて、イオンビーム192が入射する領域の表面181に正電荷が蓄積する。変換板845から発生する二次電子847は、過剰の正電荷を有する表面領域に引き付けられ、それらの領域に着陸し、過剰の正電荷を中性化する。過剰の表面電荷を除去した時点で、更に二次電子が表面181に着陸することはない。結果として、表面を準中性状態に維持することができる。
【0290】
一般に、連続作動又は間欠作動のためにフラッド銃840を構成することができる。特に、間欠作動時には、所望の速度でフラッド銃840をオンにしたりオフにすることができる。例えば、一部の実施態様においては、フラッド銃840を切り替えて、ある画素照射率にて試料180の電荷の中性化を提供することができる。試料180の表面に亘って不連続な段階でイオンビーム192をラスタ化し、試料表面の連続部分を照射することができる。各部分を照射した後、フラッド銃840を用いて照射領域の表面電荷を中性化することができる。これは、ある画素照射率での電荷の中性化に相当する。代わりに又は加えて、フラッド銃840を用いて、(例えば、試料180の不連続部分の線全体にイオンビーム192を照射した後に)あるライン走査率で及び/又は(例えば、試料180の不連続部分の全二次元領域にイオンビーム192を照射した後に)あるフレーム率にて中性化を行うことができる。
【0291】
一部の実施態様においては、フラッド銃840を用いて、試料180からの二次電子の検出の容易さを改善することができる。例えば、フラッド銃840を用いて、試料180のバルク領域内に電荷の層(例えば、電荷層846)を組み込むことができる。組み込まれた負電荷の層は、試料180の表面181に電場を誘発する。試料180と入射イオンビーム192との相互作用によって試料180から出る二次電子は、電荷層846により形成される電場によって加速されて試料180から離れ、適切に構成された検出器による二次電子の検出を比較的容易にする。
【0292】
図27A及び27Bにおいて、組み込み負電荷層の使用の一例を図式的に示す。
図27Aにおいては、イオンビーム192が試料180の表面181に入射する。多数の二次電子2012が試料180での最初の数ナノメートルの範囲内で発生する。最初に、多くの二次電子が自由電子2014として抜け出すが、これは、適切に構成される検出器によって検出することができる。しかしながら、時間がたつにつれて入射Heイオンが試料180内に埋め込まれ、試料180内で正に帯電した層2010を形成する。層2010内での正味の正電荷が増大するにつれて、次第に二次電子2012が層2010に向かって引き付けられ、自由電子2014として試料180から抜け出す二次電子2012が少なくなってくる。結果として、二次電子の検出による試料の画像化は、ますます困難になる可能性がある。
【0293】
この問題の解決策を
図27Bに示す。
図27Bに示す実施態様においては、フラッド銃840(図示せず)を用いて、試料の内部に負電荷(例えば、電子)の層2016を組み込む。組み込まれた負電荷の層は、
図23に示す層846と同様のものである。層2016の結果として、試料180で発生した二次電子2012は加速されて試料180から離れ、試料180から抜け出す発生した二次電子2014の数の増加をもたらし、その結果、試料からの検出二次電子信号を強める。事実上、層2016は、二次電子用の静電鏡として作用し、その検出能を向上させる。
【0294】
一般に、試料の分析に先立ち、フラッド銃840を用いて試料中に電子を埋め込むことができ、及び/又はフラッド銃840を用いて、試料を画像化しながら試料中に電子を埋め込むことができる。一部の実施態様においては、間隔を置いて(例えば、一定の間隔で)試料にフラッド銃840からの電子を照射することができる。このことは、例えば、帯電のレベルを比較的一定に保つのに役立つことができる。例えば、1画素当たりの滞留時間(例えば、100ns)に相当する時間周期で、試料にフラッド銃840からの電子を照射することができる。
【0295】
(iii)振動の分断
真空ポンプ、各種作動部分及びバックグラウンド音響擾乱による機械的振動は、気体電界イオン顕微鏡システム200の特定の性能パラメータ(例えば、画像分解能、試料180でのイオンビームスポットサイズ、安定性)に影響を与える場合がある。一部の実施態様においては、試料180をシステム200の他の部品から分断するように、試料マニピュレータ140を構成することができ、それによって、外部の機械的擾乱の影響を低減する。
図28は、作動装置908により支持される誘導針906を含み、該針906と作動装置908がそれぞれ試料台904の中に設置された、振動分断試料マニピュレータ140を示す。支持ディスク902は、試料台904の上に位置しており、試料180を支持する摩擦スパイダー900は、ディスクの上に設置されている。
【0296】
x−y平面において試料180を移動させるため、作動装置908は、電子制御システム170からの適した信号を受け取り、誘導針906を作動させる。誘導針906は、作動装置908からの信号に応えて、試料180及び/又はスパイダー900を突き、x−y平面内の平行移動をもたらす。
【0297】
その頂部での誘導針906の幅jは、一般にスパイダー900内における隙間910の直径bに比べてわずかに小さくなるように選択される。例えば、jは1mmとすることができ、bは1.1mmとすることができる。加えて、スパイダー900及びディスク902は、ディスク902とスパイダー900間の静止摩擦力が大きくなるように選択されるが、誘導針906を通じて作動装置908により加えられる試料180への力によって克服することができる。誘導針906は、負荷応力下で変形し、振動の試料180への伝達を低減できる機械的に適合した物質によって形成されるが、作動装置908により加えられた力を試料180に伝えるのに十分な硬さである。
【0298】
これらのシステムパラメータの結果として、試料台904の中で結合する機械的振動を、誘導針906によって部分的に吸収し及び分散することができ、その結果、スパイダー900の振動はほとんどないか、全くない。更に、誘導針906がスパイダー900に力を加える場合、スパイダー900の振動を誘発するよりはむしろ、誘導針906は、スパイダー900の側面に対して優先的に滑りが生じることになる。
【0299】
一部の実施態様においては、誘導針906が、実質的に矩形断面形状を有することができる。矩形断面形状は、誘導針906によってスパイダー900をx方向及び/又はy方向に平行移動させるので、試料180の回転及び/又はスパイダー900の回転が起こらないことを確実にするのに役立つことができる。(例えば、垂直でない角度で試料180上にイオンビーム192を照射するため)イオン光学機器130の軸132に対して試料マニピュレータ140を傾ける場合、スパイダー900及び/又はディスク902の形成に用いる物質を、それら要素間に更に高い静止摩擦力が存在するように選択することができる。代わりに又は加えて、特定の実施態様においては、スパイダー900とディスク902を磁気的に結合し、それら要素間での摩擦力を増大させることができる。磁場の結合は、磁場が局在化され、試料180又は衝突イオンビーム192を乱さないことを確実にするため、慎重に行われる場合がある。
【0300】
針906が作動しないとき、スパイダー900から誘導針906を完全に離すことができる。例えば、誘導針906がスパイダー900に力を加えてスパイダー900及び試料180をx−y平面に平行移動させた後、電子制御システム170によって針906の小さな反跳運動を生じさせることができ、誘導針906とスパイダー900の間に空間を導入する。結果として、誘導針906は、スパイダー900から完全に離れて、針906によるスパイダー900への機械的振動の結合を防ぐ。
【0301】
図29は、顕微鏡システム用の試料保持組立体1510を表す。試料保持組立体1510は、軸受部の使用を減らし、作動時の試料における低周波数の機械的振動を低減するのに役立つ。組立体1510は、試料を入れるための開口部1512を有する本体部1511を含む。本体部1511は、調整可能コネクタ1522によって腕部1518に接続される。腕部1518は、グリップ部1520を用いて試料台1514を支持する。試料台1514は、開口部1524を有する表面ディスク1516を含む。
【0302】
組立体1510は、先端186が試料台1514上の開口部1524の方向を指すようにイオン顕微鏡に接続できる。本体部1511を、硬化鋼、ステンレス鋼、リン青銅及びチタン等の適した硬質物質から形成することができる。本体部1511は、特定の応用ニーズに合うように大きさを合わせて付形することができる。一例としては、本願に開示の顕微鏡システムと共に使用するため、本体部1511の大きさ及び形状を選択することができる。作動中、開口部1512を通して組立体1510に試料を導入することができる。
【0303】
試料台1514は、調整可能コネクタ1522に沿って本体部1511に接続される腕部1518により支持されている。調整可能コネクタ1522は、腕部1518の上下移動を可能にさせる。腕部1518及び試料台1514を垂直方向に移動させることができ、特定位置に固定することができる。コネクタ1522を空気又は真空で制御することができ、その結果、腕部1518及び台1514を所望の垂直位置にしっかりと固定することができる。コネクタ1522は、任意に他の種類のコネクタを含むことができる。
【0304】
試料台1514は、グリップ部1520を用いて腕部1518に接続されている。腕部1518は内側に伸長する軸部を有することができ、その結果、試料台1514のグリップ部1520は該軸部を留めることができる。グリップ部1520を空気圧で又は真空で作動させることで、台1514を傾けることができる。グリップ部1520を制御することで、台1514を所望の位置に傾けることができる。一部の実施態様においては、所望の位置に達した後にグリップ部1520を締めることで、試料台1514を所望の傾斜位置にしっかりと固定することができる。
【0305】
更に、試料台1514は、開口部1524を有する表面ディスク1516を含む。ディスク1516上に試料を設置してもよく、試料位置制御システムを開口部1524を通して導入し、ディスク1516の平面上で試料を移動させることができる。特定の実施態様においては、ディスク1514がその中心の周りを回転して、所望のとおりにディスクの表面上に設置した試料を回転及び移動させることができる。ディスク1516は、セラミック、ガラス及び重合体を含む適切な硬質物質から形成できる。
【0306】
図30は、顕微鏡システム用の試料保持組立体を表す。
図30の試料保持組立体は、ディスク1516の表面に設置したスパイダー1600を有する
図29の試料保持組立体と同様である。スパイダー1600は、それを開口部1524の上部に配置させるために脚部を有することができる。任意に、スパイダー1600は、表面の一部に開口部を有することができる。スパイダー1600は、セラミック、ガラス及び重合体を含む適切な硬質物質から形成できる。
【0307】
顕微鏡システム200の作動時に、試料180をz方向に移動させ、傾け、x−y平面で平行移動させ、回転させることができる。試料180を傾けて、その傾斜角(例えば、イオンビーム192と試料180の表面の法線との角度)が比較的大きい場合、傾斜した試料は、顕微鏡システム200の視野全体に亘って焦点が合わないおそれがある。結果として、その条件下で得られる試料の画像は、焦点がはずれてしまい、その中心の外側で傾斜軸と垂直な領域にて不鮮明になる場合がある。
【0308】
それらは、試料180の表面に亘ってイオンビーム192を走査しながらレンズ226の焦点距離を変更することで補正できる。この補正を行うため、試料マニピュレータ140は、試料180の傾斜角情報を電子制御システム170に伝達することができる。或いは、ユーザーインターフェースを通してシステム作業者により手動で傾斜角の情報を入力することができる。電子制御システム170は、試料180の配向に基づいて第二レンズ226に印加する一連の電圧補正を決定し、傾斜した試料180の表面に亘ってイオンビーム192を走査しながらレンズ226の焦点距離を動的に変化させることができる。
【0309】
加えて、傾斜した試料の横方向次元が、平面表面での傾斜した試料の投影やイオン光学機器130への距離の差によって歪んでいる。例えば、傾斜した試料表面の横方向次元は、簡潔に、それが実際にイオンビーム192に対する試料の配向によるものであると考えられる。他の例は、画像の台形ひずみである。その効果は、矩形の特徴部を歪める結果、矩形の画像がその形状においてキーストーンであるように見えることである。
【0310】
それらは、試料180の表面に亘ってイオンビーム192を走査しながら走査偏向器219及び221の走査振幅を調整することによって補正できる。この補正を行うために、電子制御システム170は、上記したのと同じ方法で試料180の傾斜角についての情報を得ることができる。電子制御システム170は、試料180の傾きに基づいて、走査偏向器219及び221に加える走査振幅の調整を決定して、傾斜した試料180表面の歪んでいない画像のため、傾斜した試料180の表面に亘ってイオンビーム192を走査しながらイオンビームの偏向を調整することができる。或いは、これら二つの歪み効果を、歪んだ画像のデジタル操作によって補正することができる。
【0311】
(iv)イオンビーム中における中性粒子と二重荷電イオンの存在の低減
上記したように、中性粒子(例えば、He原子)は、気体電界イオン源120からのイオン化していない中性原子として顕微鏡システム200のイオン光学機器130に入ることができる。かかる中性粒子は、顕微鏡システムの性能に悪影響を与える場合がある。従って、一部の実施態様においては、イオンビーム192中の中性粒子の存在を低減することが好ましい。また、二価のHeイオン(例えば、He
2+)は、気体電界イオン源120内で、先端186の近傍におけるHe原子の二重電離によるか又はHeイオン間の衝突によって生成できる。二価のHeイオンの集束特性は一価のイオンと異なり、イオンビーム192中に存在する二価のイオンは、試料180上での大きなスポットサイズや他の望ましくない効果をもたらす場合がある。
【0312】
イオンビーム192中の中性粒子の個体数を減少させるアプローチの一つは、中性粒子がイオンビーム中に入り込む可能性を低減することを含む。かかるアプローチは、例えば、先端186に向けられた気体送出を用いて(上記記載を参照)、顕微鏡システム200内のイオン化していないHe原子の全存在を低減することを含むことができる。
【0313】
イオンビーム192中の中性粒子の個体数を減少させる他のアプローチは、イオンビーム192中に中性粒子が存在してから中性粒子をイオンビームから除去することを含む。このアプローチは、イオンを偏向するための静電レンズ素子の使用を含むことができ、イオン光学機器130内のイオンや中性のものを空間的に分離する。例えば、
図31は、偏向器220がイオン光学機器130の長手方向軸132からオフセットであり、追加の偏向器223が配置されるイオン光学機器130を示す。Heイオンビーム192は、Heイオン192a及びHe原子192bを含む。Heイオン192aとHe原子192bを分離するため、偏向器223に印加される電位を調整し、x方向にHeイオン192aの偏向を引き起こす。He原子192bは偏向器223によって影響を受けないため、偏向されない。He原子192bは、コレクタ1016によって実質的に捕まえられ、He原子192bが絞り224を通過することを阻止する。また、偏向器220及び222に印加される電位を調整する結果、Heイオン192aの軌道を長手方向軸132と再度軸合わせして、Heイオン192aの一部が絞り224を通過し、イオンビーム192として試料180の表面181に入射する。
【0314】
また、他の技術を用いて、イオンビームからの中性粒子を除去することができる。一般に、かかる技術は、中性粒子を偏向させずに、電場及び/又は磁場を用いてイオンビーム中のイオンを偏向させることを含む。一部の実施態様においては、電場と磁場の組み合わせを用いて、イオン光学機器130内にイオン偏向をもたらすエネルギー依存性のイオンの空間的分離を補うことができる。加えて、種々の非対称性イオン鏡筒の形状(例えば、曲がったイオン鏡筒)を用いて、He原子とイオンを分離することができる。
【0315】
例えば、
図32においては、イオン光学機器130の曲がった鏡筒構成を用いて、He原子、一価のHeイオン及び二価のHeイオンを分離することができる。イオンビーム192はイオン光学機器130に入って、イオン光学機器130の軸132に対して傾斜した方向に沿って伝播する。イオンビーム192は、中性He原子、He
+イオン及びHe
2+イオンを含む。電位が偏向器223に印加されてイオンビーム192中のHe
+イオンを偏向するため、偏向器223を通過した後、イオンビーム192aとしてHe
+イオンが軸132に沿って伝播する。しかしながら、中性原子は偏向器223を通過する際に偏向されない。従って、中性原子は、He
+イオンから空間的に分離され、コレクタ1016bにより捕まえられる中性原子ビーム192bを提供する。He
2+イオンは、He
+イオンより更に大きい程度で偏向され、一価のイオンと二価のイオンとを空間的に分離し、He
2+イオンのイオンビーム192cを提供する。He
2+のイオンビームは、コレクタ1016cによって捕まえられる。結果として、イオン光学機器130から抜け出るイオンビーム192aは、実質的にHe
+イオンのみを含む。
【0316】
図33は、He原子、He
+イオン及びHe
2+イオンを分離するためのイオン光学システムの他の実施態様を示す。
図33に示すイオン光学システムは、分散がなく連続の電場及び磁場を含み、該電場及び磁場は、He原子、He
+イオン及びHe
2+イオンを互いに分離するのに使用され、粒子ビームに対してプリズムのような効果がない。イオン光学システムは、三つで一組の偏向器223a、223b及び223cを含み、該偏向器は、イオン光学機器130を通してHe
+イオンを偏向して方向づけるように構成されており、その結果、実質的にHe
+イオンのみを含むイオンビーム192がイオン光学機器130から抜け出る。中性原子ビーム192bは偏向されず、各偏向器に続く位置にてコレクタ1016bにより捕まえられる。二価のHeイオンはHe
+イオンより更に偏向され、複数のHe
2+ビーム192cがコレクタ1016cによって捕まえられる。結果として、He原子、He
+イオン及びHe
2+イオンを互いに空間的に分離して、望ましくないビームの構成要素をイオン光学機器130内で遮りながらイオンビーム192としてHe
+イオンを試料180に向ける。
【0317】
一部の実施態様において、磁場の使用は、同一の電荷を有するが、気体源110により導入される気体の異なる同位体に相当するイオンビーム192中におけるイオンの軌道の空間的分離をもたらすことができる。自然発生的で優位な同位体(例えば、90%より大きい相対存在量)を有するHe等の特定の気体については、磁場による分離効果が一般的に小さい。しかしながら、自然発生的な同位体を二種以上有し、優位な同位体がない他の気体については、かかる効果が大きい場合がある。結果として、特定の実施態様においては、同位体分離器(例えば、望ましくない同位体がイオン光学機器130の長さを越えるのを防ぐのに用いるブロック)を用いることができる。一部の実施態様においては、中性原子又は二価のイオンを遮るのに使用されるコレクタ1016を用いて、イオンビーム192中の望まれていない同位体を遮ることもできる。
【0318】
粒子の種類
イオンビームの試料との相互作用は、以下に記載するように、各種相互作用によって異なる種類の粒子を表面から出すことができる。かかる粒子としては、二次電子、オージェ電子、散乱イオン、一次中性粒子、X線光子、IR光子、可視光子、UV光子、二次イオン及び二次中性粒子が挙げられる。一種以上の粒子を検出及び分析し、試料についての一種以上の異なる情報を決定することができる。このような試料についての情報の種類としては、試料表面についてのトポグラフィー情報、試料表面についての物質構成情報、試料の内層面領域についての物質構成情報、試料についての結晶情報、試料についての電圧コントラスト情報、試料の内層面領域についての電圧コントラスト情報、試料についての磁気情報、及び試料についての光学情報が挙げられる。本願で使用するように、試料の表面の用語は、深さが5nm以下までの体積を指す。
【0319】
A.二次電子
二次電子は、本願で参照されるとおり、50eV未満のエネルギーを有する試料種から放出される電子である。一般に、二次電子は、ある範囲の角度やエネルギーにて試料表面から放出される。しかしながら、最も興味のある情報は、以下に説明するように、二次電子の全存在量が試料表面に関する情報を提供できるものであるので、通常、(エネルギー分解二次電子情報又は角度分解二次電子情報とは対照的に)二次電子の全存在量である。
【0320】
電子を検出可能な一種以上の適切な検出器を用いて、二次電子を検出することができる(検出器に関する上記記載を参照)。複数の検出器を用いた場合、その検出器は全てが同一種類の検出器であってもよいし、異なる種類の検出器を用いてもよく、通常、所望の通りに構成されることができる。検出器は、試料180の表面181(イオンビームが衝突する表面)、試料180の表面183(イオンビームが衝突するところと反対側の表面)又はそれらの両方の表面から出る電子を検出するように構成されることができる(検出器の構成に関する上記記載を参照)。
【0321】
検出した二次電子の信号を用いて、試料の画像を形成することができる。一般に、試料表面の視野に亘ってイオンビームをラスタ走査し、一つ以上の検出器によって各ラスタ段階での二次電子信号(画像中の個々の画素に対応する)を測定する。通常、試料表面の視野に亘ってイオンビームをラスタ走査する際に、各検出器は試料に対する固定位置のままである。しかしながら、特定の実施態様においては、一つ以上の検出器を試料に対して移動させることができる。例えば、単一の検出器を使用する場合においては、試料に対して検出器を移動させることで、試料についての角度依存性の情報を得ることができる。
【0322】
特定の実施態様においては、二次電子の全存在量を検出することで、試料のトポグラフィーに関する情報を提供することができる。表面上の所定の位置での二次電子の全存在量は、通常、その点でのイオンビームに対する表面の傾きによって決まる。一般に、イオンビームに対する表面の傾きが高くなると(即ち、表面の法線から測定されるイオンビームの入射角が大きくなると)、二次電子の全存在量は高くなる。従って、イオンビームの試料表面上での位置に応じた二次電子の全存在量の変化を表面の傾きの変化と関連付けることができ、試料表面のトポグラフィーに関する情報を提供する。
【0323】
一部の実施態様においては、二次電子の全存在量を検出することで、試料についての物質構成情報(例えば、元素情報、化学環境情報)を得ることができる。かかる実施態様において、その情報は、主に試料の表面に関するものである。一般に、与えられた化学環境における各元素又は物質は、特定の固有二次電子放出量を有することになる。結果として、表面上の所定の位置での二次電子の全存在量は、通常、その位置に存在する物質によって決まる。従って、イオンビームの試料表面上での位置に応じた二次電子の全存在量の変化を試料表面に存在する一種若しくは複数種の元素及び/又は一種若しくは複数種の物質の変化と関連付けることができ、試料表面についての物質構成情報を提供する。特定の実施態様においては、試料中の特定物質を、試料からの二次電子放出量の量的な測定に基づいて同定することができる。例えば、Al、Si、Ti、Fe、Ni、Pt、Au等の物質は、制御条件下でHeイオンを照射する際に既知の二次電子を有する。各種物質についての既知の二次電子放出量に基づき、イオン顕微鏡(例えば、気体電界イオン顕微鏡)を較正し、研究中の試料における多種多様の物質の存在や相対存在量を同定することができる。例えば、各種物質についての二次電子放出量を表1に示す。その放出量は、Heイオンビームの法線入射で、21keVの平均イオンエネルギーにて測定された。例えば、垂直でない入射角では、表1に示す放出量を、一般にイオンビームの試料表面上での入射角の割線に対応する倍数因子によって拡大縮小する。以下に記載の対応する例において、他の実験条件を説明する。
【0325】
特定の実施態様においては、二次電子の全存在量を検出することで、電圧コントラスト情報を得ることができ、順に、試料表面の導電特性及び/又は元素の電位及び/又は物質の電位に関する情報を提供することができる。試料表面上の所定の位置での二次電子の全存在量は、通常、試料表面に存在する物質の電気特性によって決まる。一般に、導電性の低い物質は、イオンビームを照射する際に時間と共に正に帯電する傾向があり、一方、導電性の高い物質は、イオンビームを照射する際に時間と共に正に帯電する傾向が低い。従って、例えば、試料表面の所定の位置での二次電子の全存在量は、導電性が低い物質については(試料から抜け出す電子がほとんどないという結果となる大きい表面帯電によって)時間と共に減少する傾向があるが、導電性が高い試料表面の所定の位置での二次電子の全存在量は、(小さい表面帯電によって)時間がたっても二次電子の全存在量の低下をほとんど受けない傾向がある。結果として、試料表面でのイオンビーム位置に応じた二次電子の全存在量の変化をその位置での物質の導電率と関連付けることができ、試料表面についての電圧コントラスト情報を提供する。
【0326】
試料の内層面領域内に埋め込まれるHeイオンによって、内層面の電圧コントラスト効果を提供することができる。
図27A及び27Bに関連して説明したように、内層面のHeイオンは、試料から発生する二次電子が試料表面から抜け出すことを防ぐことができる。従って、試料の二次電子画像のコントラストは、入射Heイオンでの試料内層面の帯電によるものとすることができる。
【0327】
これらの技術により与えられる情報を半導体製品のイオンビーム試験に用いることができる。例えば、電圧コントラスト測定を用いて、電気装置及び/又は電気回路の部分が、その部分間での電気的接続の存在又は不在によってイオンビームを照射した場合に異なる電位となるか否か、そして、そのために該装置及び/又は回路が正確に作動しているか否かを決定することができる。
【0328】
一部の実施態様においては、二次電子の全存在量を検出することで、試料についての結晶情報を提供することができる。二次電子の全存在量は、イオンビームを試料の結晶構造と軸合わせするか否か(例えば、結晶格子を表す単位ベクトルの一つに沿って軸合わせするか否か)によって変えることができる。イオンビームを試料の結晶構造と軸合わせする場合においては、一般にイオンビーム中のイオンが試料原子との衝突(通常チャンネリングと称される)を受けずに試料中の与えられた距離に入り込む可能性が比較的高く、二次電子の全存在量が低い。一方、イオンビームを結晶構造と軸合わせしない場合においては、そのときのイオンビーム中のイオンが試料原子との衝突を受けずに与えられた距離に入り込む可能性が低くなり、二次電子の存在量が高い。従って、試料表面でのイオンビーム位置に応じた二次電子の全存在量の変化をその位置での物質の結晶情報と関連付けることができる。例えば、二次電子の全存在量が実質的に同一である試料表面の領域が存在し得る。例えば、かかる領域は、同一の結晶配向を有することができ、該領域の大きさは、(例えば、複数の配向した結晶ドメインを含む多結晶試料における)粒子の大きさ及び/又は結晶の大きさの情報を提供することができ、及び/又は与えられた化学組成(例えば、元素組成、物質組成)の物質についての二次電子の全存在量の大きさを物質の歪みによって決めることができるので、試料の歪んだ領域に関する情報(非晶質か結晶質かどうか)を提供することができる。
【0329】
特定の実施態様においては、二次電子の全存在量を検出することで、試料についての磁気情報を提供することができる。二次電子の全存在量を、試料表面に近傍の磁場の大きさによって決めることができる。一部の実施態様においては、例えば、試料表面に近傍の磁場が、試料表面での局所磁場を作り出す試料内の磁気ドメインによって変わることができる。特定の実施態様においては、静磁場が外部磁界源によって印加され、試料内の磁気ドメインは、印加した外部磁場の変化を導入する試料表面での局所磁場を作り出す。いずれにしても、試料表面での局所磁場の変化は、例えば、試料から放出される二次電子の軌道を変えることができる。二次電子の軌道の変化は、より多くの二次電子を一つ又は複数の検出器に向けるように二次電子の軌道を変えるときの二次電子の全存在量の増加に相当することができ、又は二次電子の軌道の変化は、より多くの二次電子を一つ又は複数の検出器から離れるように二次電子の軌道を変えるときの二次電子の全存在量の減少に相当することができる。
【0330】
一部の試料については、試料の二次電子の画像に現れるコントラストが、上記した機構の二つ以上によるものである場合がある。言い換えれば、特定の試料の二次電子の画像は、一部において試料表面のトポグラフィーの変化、試料表面の物質構成の変化、試料表面の結晶変化、及び/又は試料表面の磁気変化によるコントラストを含むことができる。従って、二次電子の全存在量の測定から得られる情報を、他の種類の粒子の測定から得られる情報と組み合わせて、それら機構の一つ以上からの貢献を質的に及び/又は量的に分離することが有利な場合がある。以下、この可能性について詳細に説明する。
【0331】
多種多様な種類の試料に、二次電子画像化技術を適用することができる。かかる種類の物質の一例は、例えば、マトリクス状の絶縁体によって囲まれた複数の導電体を含むことができるパターン形成ウェーハ等の半導体製品である。二次電子画像化技術を用いて、導体間での不完全な電気的接続及び/又は回路素子間での電気的短絡等の装置の欠陥を特定することができる。一般に、半導体製品についての広範囲なイオンビーム試験の用途に、二次電子画像化技術を用いることができる。任意には、このアプローチを同様にマスク修理の目的に使用することができる。
【0332】
二次電子画像化技術を使用できる試料の種類の他の例は、金属や合金である。例えば、合金等の混合物質を含有する試料の画像を用いて、試料中の各物質の表面分布を決定することができる。二次電子画像化技術を使用できる試料の種類の更なる例は、データ保存用の読み込み/書き込み構造体である。二次電子画像化技術を使用できる物質の種類の追加的な例は、生物物質や製薬物質である。
【0333】
Heイオンビームの照射により発生する二次電子を用いた試料の画像化は、SEM等の他の技術を通じて二次電子の画像化に対し多くの利点を提供することができる。例えば、試料上でのHeイオンビームのスポットサイズは、SEMからの電子ビームのスポットサイズより小さくすることができる。その小さいスポットサイズの結果として、Heイオンビームを照射する試料の領域は、SEMでの照射領域に比べて慎重に制御される。
【0334】
更に、一般にHeイオンが電子に比べて重いので、散乱現象は、試料内で電子を散乱により分散させるのと同じくらい容易にHeイオンを分散させることはない。結果として、試料表面に入射するHeイオンは、SEM中の電子より小さい相互作用の量で試料と相互作用することができる。結果として、気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)で検出される二次電子は、同様のスポットサイズを有するSEMで二次電子を生じさせる領域より小さい領域から生じることができる。このため、Heイオンビームにより発生する二次電子は、SEMで発生する二次電子に比べて、試料表面のより局所的な問い合わせ(例えば、物質特性の横方向平均化がない場合)に対応することができる。
【0335】
加えて、Heイオン源はまた、電子源に比べて大きな焦点深度を提供することができる。結果として、イオン顕微鏡(例えば、気体電界イオン顕微鏡)を用いて得られる試料の画像は、試料表面と垂直な方向に沿って測定すると、SEMでの二次電子から得られる比較画像と比べて試料の大部分を鮮明に示すことができる。
【0336】
また、電子ビームの試料との相互作用によって二次電子を表面から出すときと比較して、イオンビームの試料との相互作用によって二次電子を試料から出すときに利用できる異なる物質のより広範な二次電子放出量のために、Heイオンビームは、試料の二次電子画像について感度の高いコントラスト機構を提供することができる。一般に、例えば、半導体や金属等の通常の物質についての二次電子放出量は、入射電子ビームで0.5から2.5まで変化する。しかしながら、Heイオンビームを照射した同一の物質についての二次電子放出量は、0.5から8まで変化することができる。従って、気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用いて、二次電子画像からの異なる物質の同定を、比較できるSEMシステムより正確に行うことができる。
【0337】
B.オージェ電子
本願に参照されるように、オージェ電子は、以下に示すように発生する電子である。内殻原子内電子を取り除いて空孔を形成し、次いで外殻からの二次原子内電子によって該空孔を満たし、エネルギーが放出される。このエネルギーは、オージェ電子と呼ばれる他の電子によって放出される。一般に、オージェ電子は、ある角度及びエネルギーの範囲内で、試料表面から放出される。しかしながら、最も興味のある情報は、以下に説明するようにオージェ電子のエネルギーが試料表面に関する情報を提供できるものであるから、(角度分解されたオージェ電子の情報とは対照的に)通常、オージェ電子のエネルギーである。エネルギー分解で電子を検出することが可能な適した検出器を一つ以上用いて、オージェ電子を検出することができる(検出器の種類に関し、上記記載を参照)。複数の検出器を用いる場合、検出器の全てが同じ種類の検出器でもよいし、異なる種類の検出器を用いてもよく、通常、所望の通りに構成できる。試料180の表面181(イオンビームが衝突する表面)、試料180の表面183(イオンビームが衝突するところと反対側の表面)又はそれら両方の面から出るオージェ電子を検出するように、検出器を構成することができる(検出器の構成に関し、上記記載を参照)。検出されるオージェ電子の信号対雑音を高めるため、比較的大きい立体角のオージェ電子を集めることができる検出器を用いることが好ましい場合がある。加えて又は代わりに、試料の表面に隣接し、電子を検出器に向けることができる電子収集光学機器(例えば、静電レンズシステム)を用いることができる(例えば、オージェ電子用の検出器の有効立体角を増大させる)。
【0338】
一般に、オージェ電子のエネルギーを検出することで、試料についての物質構成情報(例えば、元素情報、化学環境情報)を得ることができる。かかる実施態様においては、その情報が、主として試料の表面に関連付けられる。一般に、与えられた化学環境における元素又は物質のそれぞれについて、該元素又は物質により放出されるオージェ電子は、特定のエネルギー又はエネルギーバンドを有することになる。結果として、表面上の所定の位置でのオージェ電子のエネルギーは、通常、その位置に存在する物質によって決まる。従って、試料の表面上でのイオンビームの位置に応じたオージェ電子のエネルギーの変化を、試料表面に存在する一つ若しくは複数の元素及び/又は一つ若しくは複数の物質の変化と関連付けることができ、試料表面についての物質構成情報を提供する。
【0339】
オージェ電子画像化技術を多種多様な種類の試料に適用することができる。かかる種類の材料の一例は、例えば、マトリクス状の絶縁体によって囲まれた複数の導電体を含むことができるパターン形成ウェーハ等の半導体製品である。任意には、このアプローチを同様にマスク修理の目的に使用することができる。オージェ電子画像化技術を使用できる試料の種類の他の例は、金属や合金である。例えば、合金等の混合物質を含有する試料の画像を用いて、試料中の各物質の表面分布を決定することができる。オージェ電子画像化技術を使用できる試料の種類の更なる例は、データ保存用の読み込み/書き込み構造体である。オージェ電子画像化技術を使用できる物質の種類の追加的な例は、生物物質や製薬物質である。
【0340】
試料とHeイオンビームとの相互作用によって表面から出るオージェ電子を用いた試料の画像化は、SEM等の他の技術を通じてオージェ電子の画像化に対し多くの利点を提供することができる。例えば、試料上でのHeイオンビームのスポットサイズは、SEMからの電子ビームのスポットサイズより小さくすることができる。その小さいスポットサイズの結果として、Heイオンビームを照射する試料の領域は、SEMでの照射領域に比べて慎重に制御される。
【0341】
更に、一般にHeイオンが電子に比べて重いので、散乱現象は、試料内で電子を散乱により分散させるのと同じくらい容易にHeイオンを分散させることはない。結果として、試料表面に入射するHeイオンは、SEM中の電子より小さい相互作用の量で試料と相互作用することができる。結果として、気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)で検出されるオージェ電子は、同様のスポットサイズを有するSEMでオージェ電子を生じさせる領域より小さい領域から生じることができる。このため、試料とHeイオンビームとの相互作用により表面から出るオージェ電子は、SEMで発生するオージェ電子に比べて、試料表面のより局所的な問い合わせ(例えば、物質特性の横方向平均化がない場合)に対応することができる。
【0342】
加えて、Heイオン源はまた、電子源に比べて大きな焦点深度を提供することができる。結果として、イオン顕微鏡(例えば、気体電界イオン顕微鏡)を用いて得られる試料の画像は、試料表面と垂直な方向に沿って測定すると、SEMでのオージェ電子から得られる比較画像と比べて試料の大部分を鮮明に示すことができる。
【0343】
電子ビームと対照的に、オージェ電子の検出についてイオンビームを使用することの他の利点は、電子ビームを用いた場合、オージェ電子が後方散乱電子のベースライン上で検出されるが、イオンビームを用いると、後方散乱電子が存在しないことである。結果として、比較的少ない数のオージェ電子を集めながら検出されるオージェ電子について比較的高い信号対雑音の比を得ることが可能な場合があり、イオンビームを用いる際に試料から比較的良質なオージェ電子スペクトルを得るのにかかる時間を短縮することができる。
【0344】
C.散乱イオン
本願を参照するように、散乱イオンは、イオンビームからのイオン(例えば、Heイオン)が試料と相互作用するときに発生し、イオン(Heイオン)のままで試料から散乱される。散乱イオンが試料の内層面領域から試料の表面に移動し、その後、試料から放出できる可能性が非常に低いので、散乱イオンは、通常、試料表面についての情報を提供する。以下、詳細に説明するように、散乱イオンを検出する場合、一つ又は複数の検出器の特定配置は、一般に、得られることが望まれる情報の種類によって決まる。
【0345】
一部の実施態様においては、検出される散乱イオンによって、試料表面についてのトポグラフィー情報を得ることができる。
図34Aは、一般に、表面の異なる領域からの散乱イオンを検出し、試料表面についてのトポグラフィー情報を決定するアプローチの実施態様を表す。特に、
図34Aは、それぞれが表面7013、7015及び7017を具える領域7012、7014及び7016を有する試料7010を示す。散乱パターン7020、7030及び7040は、イオンビームが垂直に入射する場合におけるそれぞれの表面7013、7015及び7017から散乱したイオンの角度分布を示す。
図34Aに示すように、各散乱パターン7020、7030及び7040は、コサイン型の分布である。
図34Bは、トポグラフィー効果から生じる検出器7041及び7052によって検出された散乱イオンの相対強度7042及び7052(それぞれ破線及び点線)への貢献を表す。従って、例えば、試料7010がその全表面に亘って同一の物質から形成されていると仮定すれば、検出器7041及び7050からの相対全存在量の分析結果を用いて、試料7010のトポグラフィーを決定することができる。或いは、試料7010のトポグラフィーが既知であると仮定すれば、そのときのトポグラフィーだけ(相対強度7042及び7052)による検出散乱イオンの全存在量への寄与を、検出される散乱イオンの全存在量から取り除き、他の効果(例えば、試料7010の表面に亘る物質の変化)による検出散乱イオン全体への寄与を決定することができる。表面に対して所望の通りに検出器を配置することができるが、特定の実施態様においては、
図34Aに示される種類の検出器システムについて、トポグラフィー情報が大きな散乱角で散乱したHeイオンから得られる。一例として、一部の実施態様においては、散乱イオンからのトポグラフィー情報が、イオンビームの方向に対して60°以上(例えば、65°以上、70°以上、75°以上)の角度で散乱イオンを検出することで決定される。
図34Aは二つの検出器の使用を示すが、一部の実施態様においては、単一の検出器(例えば、検出器7041又は検出器7050)を用いる。或いは、特定の実施態様においては、二つを超える(例えば、3、4、5、6、7、8の)検出器を用いることができる。一般に、複数の検出器を用いて散乱イオンを検出する場合、検出器は、試料表面に対するそれらの立体角に関して互いに等間隔にあけられている。試料表面に関し対称的に配置された二つを超える検出器(例えば、四つの検出器)の使用によって、試料表面の公称平面に関して直交方向の双方で表面の特徴部を検出することを可能にすることができる。
【0346】
図35A〜35Iは、一般に、表面の異なる領域からの散乱イオンを検出し、試料表面についてのトポグラフィー情報を決定するアプローチの様々な実施態様を表す。特に、
図35A、35D及び35Gは、それぞれ表面8053、8055、8057、8059及び8061を具える領域8052、8054、8056及び8058を有する試料8050を示す。
図35A、35D及び35Gに示すように、表面8055及び8059は、表面8053、8057及び8061に対して傾いている。散乱パターン8070、8090及び80110は、そこにイオンビームが垂直に入射する場合におけるそれぞれの表面8053、8057及び8061から散乱したイオンの角度分布を示す。
図35A、35D及び35Gに示すように、各散乱パターン8070、8090及び80110は、コサイン型の分布である。散乱パターン8080及び80100は、イオンビームが領域8054及び8058に関して垂直であるときに表面8055及び8059から散乱したイオンの角度分布を示す。
図35A、35D及び35Dに示すように、イオンビームが表面8055及び8059に垂直に入射しないので、散乱パターン8080及び80100の角度分布はコサイン型の分布ではない。
【0347】
図35B及び35Cは、散乱イオンの合計放出量と、半球形状の検出器(散乱イオンを角度分解し、散乱イオンをスペクトル分解し、又はそれらの両方を行うことが可能な場合がある)80120を用いて散乱イオンを検出する場合における検出した散乱イオンの相対存在量とを表す。
図35Cに示すように、検出器80120を用いる場合には、検出イオンの相対存在量の影効果が存在する。従って、例えば、試料8050がその全表面に亘って同一の物質で形成されていると仮定すれば、検出器80120からの相対存在量の分析結果を用いて、試料8050のトポグラフィーを決定することができる。或いは、試料8050のトポグラフィーが既知であると仮定すれば、そのときのトポグラフィーだけ(
図35Dの相対存在量)による検出散乱イオンの全存在量への寄与を、検出散乱イオンの全存在量から取り除き、他の効果(例えば、試料8050の表面全体に亘る物質の変化)による検出散乱イオン全体への寄与を決定することができる。
【0348】
図35E及び35Fは、散乱イオンについての比較的小さい受け入れ角度を有する上部検出器80130を用いて散乱イオンを検出する場合における散乱イオンの合計放出量と、検出散乱イオンの相対存在量とを表す。
図35Fに示すように、検出器80130の受け入れ角度内の散乱放出量が領域8054及び8056(
図35Eに示すように、散乱イオンの合計放出量がそれらの領域で高いにもかかわらず)で実質的に小さいので、散乱イオンの相対存在量は、領域8054及び8056で減少する。従って、例えば、試料8050がその表面全体に亘って同一の物質で形成されていると仮定すれば、検出器80130からの相対存在量の分析結果を用いて、試料8050のトポグラフィーを決定することができる。或いは、試料8050のトポグラフィーが既知であると仮定すれば、そのときのトポグラフィーだけ(
図35Dの相対存在量)による検出散乱イオンの全存在量への寄与を、検出散乱イオンの全存在量から取り除き、他の効果(例えば、試料8050の表面全体に亘る材料の変化)による検出散乱イオン全体への寄与を決定することができる。
【0349】
図35H及び35Iは、散乱イオンについての比較的大きな受け入れ角度を有する上部検出器80140を用いて散乱イオンを検出する場合における散乱イオンの合計放出量と、検出散乱イオンの相対存在量とを表す。
図35Iに示すように、検出器80140の適した受け入れ角度を選択することで、検出散乱イオンの相対存在量が、試料全体に亘って実質的に同一である。検出散乱イオンの全存在量の変化は、表面トポグラフィーの変化以外の効果(例えば、試料8050の表面全体に亘る材料の変化)によるものであろう。
【0350】
特定の実施態様においては、散乱イオンの検出を用いて、試料表面についての物質構成情報を決定することができる。かかるアプローチの一つは、散乱イオンの全存在量を測定することを含む。試料180の表面181(イオンビームが衝突する表面)から出る散乱イオンを検出するように構成される単一の検出器(例えば、半球形状の検出器)又は試料180の表面181(イオンビームがある範囲の角度及びエネルギーで試料表面と衝突する表面)から出る散乱イオンを検出するように構成される(例えば、試料表面に関して異なる立体角で配置される)複数の検出器を用いて、散乱イオンの全存在量を検出することができる。一般に、Heイオンの散乱の可能性(そのため、表面試料のトポグラフィー変化等の他の要因から影響がないと仮定すれば、散乱Heイオンの全存在量)は、おおよそHeイオンが散乱する表面原子の原子番号(Z値)の平方に比例する。従って、一例として、半導体製品における銅(原子番号29)線をケイ素(原子番号14)と区別しようと試みる場合、半導体製品の表面での銅原子からの散乱Heイオンの全存在量は、半導体製品の表面でのケイ素原子からの散乱イオンの全存在量の約4倍となる。他の例としては、半導体製品におけるタングステン(原子番号74)プラグをケイ素(原子番号14)と区別しようと試みる場合、半導体製品の表面でのタングステン原子からの散乱Heイオンの全存在量は、半導体製品の表面でのケイ素原子からの散乱イオンの全存在量の約25倍となる。更なる例として、半導体製品における金(原子番号79)領域をケイ素(原子番号14)と区別しようと試みる場合、半導体製品の表面での金原子からの散乱Heイオンの全存在量は、半導体製品の表面でのケイ素原子からの散乱イオンの全存在量の約25倍となる。追加的な例として、半導体製品におけるインジウム(原子番号49)をケイ素(原子番号14)と区別しようと試みる場合、半導体製品の表面でのインジウム原子からの散乱Heイオンの全存在量は、半導体製品の表面でのケイ素原子からの散乱イオンの全存在量の約10倍となる。
【0351】
散乱Heイオンを検出することで試料表面についての物質構成情報を決定する他のアプローチ(全存在量の検出と組み合わせて又はその代わりに用いることができる)は、エネルギー分解と角度分解により散乱Heイオンを測定することを含む。例えば、
図36に示すように、第二レンズ226は、Heイオンビーム192を試料180の表面181に集束する。Heイオン1102は表面181から散乱し、検出器1100によって検出される。検出器1100は、検出される各散乱Heイオンの角度及びエネルギーが検出器1100の受け入れ角度内での各角度εとして知られるように設計されている。散乱Heイオンのエネルギーと散乱角を測定することによって、下記に示す関係に基づき、散乱Heイオンを散乱する表面での原子の質量を算出することができる。
【数3】
式中、E
sは散乱Heイオンのエネルギーであり、E
iはHeイオンの入射エネルギーであり、M
HeはHeイオンの質量であり、θ
sは散乱角であり、M
aはHeイオンを散乱する原子の質量である。
【0352】
検出器1100は、例えば、エネルギー分解蛍光体系検出器、エネルギー分解シンチレータ系検出器、固体検出器、エネルギー分解静電プリズム系検出器、静電プリズム、エネルギー分解ET検出器、又はエネルギー分解マイクロチャンネルとすることができる。一般に、検出器1100が実質的な受け入れ角度を有することが好ましい。一部の実施態様においては、検出器1100が固定されている(例えば、環状検出器)。特定の実施態様においては、検出器1100が、ある範囲の立体角を通して掃引することができる。エネルギー分解及び角度分解した散乱Heイオンを検出するための単一の検出器を含むシステムについて説明してきたが、かかるシステムは、複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8)の検出器を含有することができる。多くの場合、複数の検出器の使用は、検出散乱イオンの大きな受け入れ角度を可能にすることができるので好ましい。
【0353】
一部の実施態様においては、散乱Heイオンの全存在量を検出することで、試料についての結晶構造を提供することができる。散乱Heイオンの全存在量は、イオンビームを試料の結晶構造と軸合わせするか否かによって変化することができる。イオンビームを試料の結晶構造と軸合わせする場合においては、一般にイオンビーム中のイオンが試料原子との衝突(通常チャンネリングと称される)を受けずに試料中の与えられた距離に入り込むことができる可能性が比較的高く、散乱Heイオンの全存在量が低い。一方、イオンビームを結晶構造と軸合わせしない場合においては、そのときのイオンビーム中のイオンが試料原子との衝突を受けずに試料の与えられた距離に入り込む可能性が低くなり、散乱Heイオンの全存在量が高い。従って、試料表面でのイオンビーム位置に応じた散乱Heイオンの全存在量の変化をその位置での物質の結晶情報と関連付けることができる。例えば、散乱Heイオンの全存在量が実質的に同一である試料表面の領域が存在し得る。例えば、かかる領域は、同一の結晶配向を有することができ、該領域の大きさは、(例えば、複数の配向した結晶ドメインを含む多結晶試料における)粒子の大きさ及び/又は結晶の大きさの情報を提供することができ、及び/又は与えられた化学組成(例えば、元素組成、物質組成)の物質についての散乱Heイオンの全存在量の大きさを物質の歪みによって決めることができるので、試料の歪んだ領域に関する情報(非晶質か結晶質かどうか)を提供することができる。
【0354】
代わりに又は追加的に、(イオンビームをラスタ化せずに)表面領域にイオンビームを照射し、次に(例えば、電子ビームを照射する試料表面からの後方散乱電子によって得られる菊池パターンと同様な)散乱Heイオンのパターンを測定することで、試料表面についての結晶情報を得ることができる。散乱Heイオンのパターンを分析し、例えば、イオンビームを照射する試料表面の位置での物質の配向、格子面間隔、及び/又は結晶の種類(例えば、体心立方、面心立方)を決定することができる。
【0355】
散乱イオン画像化技術は、多種多様な種類の試料に適用できる。かかる種類の物質の一例は、例えば、マトリクス状の絶縁体によって囲まれた複数の導電体を含むことができるパターン形成ウェーハ等の半導体製品である。散乱イオン画像化技術を用いて、導体間での不完全な電気的接続及び/又は回路素子間での電気的短絡等の装置の欠陥を特定することができる。任意には、このアプローチを同様にマスク修理の目的に使用することができる。散乱イオン画像化技術を使用できる試料の種類の他の例は、金属や合金である。例えば、合金等の混合物質を含有する試料の画像を用いて、試料中の各物質の表面分布を決定することができる。散乱イオン画像化技術を使用できる試料の種類の更なる例は、データ保存用の読み込み/書き込み構造体である。散乱イオン画像化技術を使用できる物質の種類の追加的な例は、生物物質や製薬物質である。
【0356】
一般に、通常のSEMで使用される種類の電子ビームを試料表面に照射する場合、散乱イオンが形成されず、従って、検出散乱Heイオンによって得られる結晶情報又は物質構成情報はいずれも、かかるSEMで利用できない。これは、通常のSEMに対して本願に記載される気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)の有意な利点である。
【0357】
本願で記載されるように気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用いた散乱Heイオンの測定は、通常のラザフォード後方散乱測定装置に対して多数の利点を提供することができる。入射Heイオンを試料表面に集束できるスポットサイズは、通常のラザフォード後方散乱測定装置のスポットサイズ(一般には100μmから1mm以上のスポットサイズ)に比べて非常に小さくすることができ、通常のラザフォード後方散乱測定装置で達成されるものより正確に局在される試料表面についての物質構成情報を可能にする。更に、本願に記載される気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)は、試料表面の全体に亘って画素毎でのラスタ化を可能にする一方で、ラザフォード後方散乱測定装置は、この能力を有していない。このことは、試料の種々の位置における試料表面についての物質構成情報に関連する費用及び/又は複雑性を低減することができる。
【0358】
D.一次中性粒子
本願に参照されるように、一次中性粒子は、イオンビームが試料と相互作用し、イオンビームからのイオン(例えば、Heイオン)が非荷電中性粒子(非荷電He原子)として試料から出る場合に発生する中性粒子である。散乱Heイオンと対照的に、一次He原子は、試料の内層面領域の比較的高感度なプローブである。本願で使用されるように、内層面領域は、試料表面の真下に5nmを超えて(例えば、試料表面の真下に10nm以上、試料表面の真下に25nm以上、試料表面の真下に50nm以上)且つ試料の真下に1000nm以下(例えば、試料の真下に500nm以下、試料の真下に250nm以下、試料の真下に100nm以下)の試料の領域である。一般に、イオンエネルギーが増大するにつれて、イオンビームのプローブ深度が増大する。従って、試料についてのより深い内層面情報を決定するため、高エネルギーのイオンビームを用いることができる。イオンビームエネルギー(プローブ深度)を変えて試料における複数のHe原子の画像を撮影することで、物質構成情報の深度の分析結果を得ることができる。一部の実施態様においては、トモグラフィー再構成アルゴリズム及び/又は断層撮影法を深度依存性の情報に適用して、試料の構造のトモグラフィー再構成を行うことができる。
【0359】
一般に、全存在量の検出、エネルギー分解/角度分解検出又はそれらの両方を用いて、散乱Heイオンについての対応する技術に関して上記した検出器の配置を用いて、また散乱Heイオンについて上記したものと同一の数学的関係を用いて、一次He原子の検出に基づいた物質構成情報を決定することができる。しかしながら、一般に、一次He原子に用いる一つ又は複数の検出器は、中性種を検出することができる。かかる検出器の例としては、マイクロチャンネルプレート検出器、チャンネルトロン検出器、シンチレータ/PMT検出器が挙げられる。
【0360】
一次中性粒子(例えば、He原子)技術を多種多様な種類の試料に適用することができる。かかる種類の物質の一例としては、例えば、マトリクス状の絶縁体によって囲まれた複数の導電体を含むことができるパターン形成ウェーハ等の半導体製品である。一次中性粒子技術を用いて、導体間での不完全な電気的接続及び/又は回路素子間での電気的短絡等の装置の欠陥を特定することができる。任意には、このアプローチを同様にマスク修理の目的に使用することができる。一次中性粒子画像化技術を使用できる試料の種類の他の例は、金属や合金である。例えば、合金等の混合物質を含有する試料の画像を用いて、試料中の各物質の表面分布を決定することができる。一次中性粒子画像化技術を使用できる試料の種類の更なる例は、データ保存用の読み込み/書き込み構造体である。一次中性粒子画像化技術を使用できる物質の種類の追加的な例は、生物物質や製薬物質である。
【0361】
一般に、通常のSEMで使用される種類の電子ビームを試料表面に照射する場合、一次中性粒子が形成されず、従って、検出散乱Heイオンによって得られる結晶情報又は物質構成情報はいずれも、かかるSEMで利用できない。これは、通常のSEMに対して本願に記載される気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)の有意な利点である。
【0362】
E.光子
興味のある典型的な光子としては、X線光子、UV光子、可視光子及びIR光子が挙げられる。本願を参照するように、IR光子は700nmを超えて且つ100,000nmまでの波長を有する光子(例えば、1.2×10
-5keV〜1.7×10
-3keV)であり、可視光子は400nmを超えて且つ700nmまでの波長を有する光子(例えば、1.8×10
-3keV〜3×10
-3keV)であり、UV光子は10nmを超えて且つ400nmまでの波長を有する光子(例えば、3.1×10
-3keV〜125eV)であり、X線光子は0.01nm〜10nmの波長を有する光子(例えば、125eV〜125keV)である。一般に、かかる光子は、ある範囲の角度及びエネルギー/波長で試料表面から放出される。しかしながら、以下に説明するように、光子の波長及び/又はエネルギーが試料表面に関する情報を提供できるものであるから、最も興味ある情報は、通常、(角度分解光子情報とは対照的に)光子の波長及び/又はエネルギーである。波長分解又はエネルギー分解の形式で光子を検出することが可能な一つ又は複数の適切な検出器を用いて、光子を検出することができる(検出器の種類に関して上記記載を参照)。複数の検出器を用いた場合においては、検出器の全てが同一の種類の検出器であってもよいし、異なる検出器を用いてもよく、一般に所望の通りに構成することができる。試料180の表面181(イオンビームが衝突する表面)、試料180の表面183(イオンビームが衝突するところと反対側の表面)又はそれらの両方から出る光子を検出するように、検出器を構成することができる(検出器の構成に関して上記記載を参照)。検出光子の信号対雑音を高めるため、比較的大きな立体角の光子を集めることができる検出器を用いることが好ましい。追加的に又は代わりに、上記システムは、試料の表面に近接し、(例えば、検出される光子の検出の有効な立体角を増大するため)使用できる検出器に光子を向けることができる一つ以上の光学素子(例えば、一つ以上のレンズ、一つ以上の鏡)を含むことができる。
【0363】
一般に、光子のエネルギー及び/又は波長を検出することで、試料についての物質構成情報(例えば、元素情報、化学環境情報)を得ることができる。かかる実施態様において、該情報は、主に試料の表面に関係している。一般に、与えられた化学環境における各元素又は物質について、該元素又は物質で放出される光子は、特定のエネルギー/エネルギーバンド及び特定の波長/波長バンドを有することになる。結果として、表面上の所定の位置から放出される光子のエネルギー及び波長は、通常、その位置に存在する物質によって決まる。従って、試料表面上でのイオンビームの位置に応じた光子のエネルギー又は波長の変化を試料表面に存在する一種若しくは複数種の元素及び/又は一種若しくは複数種の物質の変化と関連付けることができ、試料表面についての物質構成情報を提供する。
【0364】
代わりに又は追加的に、試料物質の脱励起を決定することによって光子を検出することで、試料についての物質構成情報を得ることができる。このことは、例えば、イオンビームをパルス化して試料にイオンビームを短時間照射し、次いで光子を検出するのにかかる時間を測定することで達成することができ、ここで、該時間は、光子を放出する試料物質の脱励起時間に関係している。一般に、与えられた化学環境での各元素又は物質は、特定の脱励起時間を有することになる。
【0365】
光子の偏光が試料における物質の結晶配向によって決まることがあるので、偏光子と組み合わせた光子の検出によって、試料についての結晶情報を得ることができる。従って、偏光子の使用によって、試料で放出される光子の偏光を決定することができ、試料の結晶配向に関する情報を提供する。
【0366】
一般に、検出光子に含まれる情報は、主に試料表面についての情報となる。しかしながら、光子が試料の内層面領域から抜け出すことができるので、検出光子は、試料の内層面領域に関する情報を含むことがある。従って、検出光子を用いて、試料の光学特性を決定することができる。例えば、イオンビーム中のイオンエネルギーを操作し、そのためにプローブ深度を操作して、検出光子の強度に関して対応する影響を決定することによって、試料の光子に対する透明性を調べることができる。イオンエネルギー(プローブ深度)に応じた検出光子の強度は、試料の光子に対する透明性に関する情報をもたらすことができる。
【0367】
多種多様な種類の試料に、光子画像化技術を適用することができる。かかる種類の物質の一例は、例えば、マトリクス状の絶縁体によって囲まれた複数の導電体を含むことができるパターン形成ウェーハ等の半導体製品である。光子画像化技術を用いて、導体間での不完全な電気的接続及び/又は回路素子間での電気的短絡等の装置の欠陥を特定することができる。任意には、このアプローチを同様にマスク修理の目的に使用することができる。光子画像化技術を使用できる試料の種類の他の例は、金属や合金である。例えば、合金等の混合物質を含有する試料の画像を用いて、試料中の各物質の表面分布を決定することができる。光子画像化技術を使用できる試料の種類の更なる例は、データ保存用の読み込み/書き込み構造体である。光子画像化技術を使用できる物質の種類の追加的な例は、生物物質や製薬物質である。
【0368】
Heイオンビームの照射で発生する光子を用いて試料を画像化することは、SEM等の他の技術によって画像化する光子に対して、多くの利点を提供することができる。例えば、試料上のHeイオンビームのスポットサイズは、SEMからの電子ビームのスポットサイズより小さくすることができる。その小さいスポットサイズの結果として、Heイオンビームを照射する試料の領域は、SEMでの照射領域に比べて慎重に制御される。
【0369】
更に、一般にHeイオンが電子に比べて重いので、散乱現象は、試料内で電子を散乱により分散させるのと同じくらい容易にHeイオンを分散させることはない。結果として、試料表面に入射するHeイオンは、SEM中の電子より小さい相互作用の量で試料と相互作用することができる。結果として、気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)で検出される光子は、同様のスポットサイズを有するSEMで光子を生じさせる領域より小さい領域から生じることができる。このため、試料とHeイオンビームとの相互作用により発生する光子は、SEMで発生する光子に比べて、試料表面のより局所的な問い合わせ(例えば、物質特性の横方向平均化がない場合)に対応することができる。
【0370】
加えて、Heイオン源はまた、電子源に比べて大きな焦点深度を提供することができる。結果として、イオン顕微鏡(例えば、気体電界イオン顕微鏡)を用いて得られる試料の画像は、試料表面と垂直な方向に沿って測定すると、SEMでの光子から得られる比較画像と比べて試料の大部分を鮮明に示すことができる。
【0371】
F.二次イオン
本願を参照するように、二次イオンは、イオンビームが試料と相互作用して帯電状態の試料から単原子種又は多原子種を取り除くときに形成されるイオンである。入射イオンビームと試料との相互作用は、二次イオンを作り出すことができる。一般に、この方法は、Heより大きな質量の希ガスイオン(Arイオン、Neイオン、Krイオン、Xeイオン)を用いる場合により効果的である。
【0372】
試料からの二次イオンの検出は、検出される粒子の質量の計算によって試料についての物質構成情報を提供することができる。一般に、この情報は、試料表面での物質に対応することになる。一部の実施態様においては、二次イオンの一種又は複数種の質量が、飛行時間と、四重極質量分析計等の質量分解検出器との組み合わせによって決定される。かかる二次イオンの検出を以下のように行うことができる。イオン光学機器中のイオン光学素子に印加される電位を変えることで、イオンビームをパルスモードで作動させる。入射イオンのパルスは試料の表面に入射する。また、検出器用の参照時間信号として、イオン光学素子の電位を切り替えてイオンビームをオンにしたりオフにする割合を決定するクロック信号が使用される(検出器に関して上記記載を参照)。このようにして、試料から検出器までの二次イオンの飛行時間を正確に決定することができる。
【0373】
検出二次イオンの飛行時間、その伝播距離(例えば、検出器と試料間の距離)、及びそのエネルギーに基づいて、粒子の質量を計算することができ、化学種(例えば、原子)の種類を同定することができる。この情報を用いて試料についての物質構成情報を決定する。
【0374】
多種多様な種類の試料に、二次イオン画像化技術を適用することができる。かかる種類の物質の一例は、例えば、マトリクス状の絶縁体によって囲まれた複数の導電体を含むことができるパターン形成ウェーハ等の半導体製品である。二次イオン画像化技術を用いて、導体間での不完全な電気的接続及び/又は回路素子間での電気的短絡等の装置の欠陥を特定することができる。任意には、このアプローチを同様にマスク修理の目的に使用することができる。二次イオン画像化技術を使用できる試料の種類の他の例は、金属や合金である。例えば、合金等の混合物質を含有する試料の画像を用いて、試料中の各物質の表面分布を決定することができる。二次イオン画像化技術を使用できる試料の種類の更なる例は、データ保存用の読み込み/書き込み構造体である。二次イオン画像化技術を使用できる物質の種類の追加的な例は、生物物質や製薬物質である。
【0375】
一般に、通常のSEMで使用される種類の電子ビームを試料表面に照射する場合、二次イオンは発生せず、従って、検出される二次イオンによって得られる物質構成情報はいずれも、かかるSEMで利用できない。これは、通常のSEMに対して本願に記載される気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)の有意な利点である。
【0376】
G.二次中性粒子
二次中性粒子は、イオンビームが試料と相互作用し、荷電していない状態の試料から単原子種又は多原子種を取り除くときに発生する中性粒子である。入射イオンビームと試料との相互作用は、二次中性粒子を作り出すことができる。一般に、この方法は、Heより大きな質量の希ガスイオン(Arイオン、Neイオン、Krイオン、Xeイオン)を用いる場合により効果的である。一般に、二次中性粒子から得られる情報にアクセスするため、検出に先立ち、(例えば、レーザーで誘起されるイオン化、電子で誘起されるイオン化によって)粒子をイオン化する。
【0377】
試料からの(イオン化後の)二次中性粒子の検出は、検出される粒子の質量の計算によって試料についての物質構成情報を提供することができる。一般に、この情報は、試料表面での物質に対応することになる。一部の実施態様においては、(イオン化後の)二次中性粒子の一種又は複数種の質量が、飛行時間と、四重極質量分析計等の質量分解検出器との組み合わせによって決定される。かかる(イオン化後の)二次中性粒子の検出を以下のように行うことができる。イオン光学機器中のイオン光学素子に印加される電位を変えることで、イオンビームをパルスモードで作動させる。入射イオンのパルスは試料の表面に入射する。また、検出器用の参照時間信号として、イオン化装置(例えば、レーザー、電子ビーム)及び/又はイオン光学素子の電位のスイッチを切り替える割合を決定するクロック信号が使用される(検出器に関して上記記載を参照)。このようにして、試料から検出器までの(イオン化後の)二次中性粒子の飛行時間を正確に決定することができる。
【0378】
検出二次イオンの飛行時間、その伝播距離(例えば、検出器と試料間の距離)、及びそのエネルギーに基づいて、粒子の質量を計算することができ、化学種(例えば、原子)の種類を同定することができる。この情報を用いて試料についての物質構成情報を決定する。
【0379】
多種多様な種類の試料に、二次中性粒子画像化技術を適用することができる。かかる種類の物質の一例は、例えば、マトリクス状の絶縁体によって囲まれた複数の導電体を含むことができるパターン形成ウェーハ等の半導体製品である。二次中性粒子画像化技術を用いて、導体間での不完全な電気的接続及び/又は回路素子間での電気的短絡等の装置の欠陥を特定することができる。任意には、このアプローチを同様にマスク修理の目的に使用することができる。二次中性粒子画像化技術を使用できる試料の種類の他の例は、金属や合金である。例えば、合金等の混合物質を含有する試料の画像を用いて、試料中の各物質の表面分布を決定することができる。二次中性粒子画像化技術を使用できる試料の種類の更なる例は、データ保存用の読み込み/書き込み構造体である。二次中性粒子画像化技術を使用できる物質の種類の追加的な例は、生物物質や製薬物質である。
【0380】
一般に、通常のSEMで使用される種類の電子ビームを試料表面に照射する場合、二次中性粒子は発生せず、従って、検出される二次中性粒子によって得られる物質構成情報はいずれも、かかるSEMで利用できない。これは、通常のSEMに対して本願に記載される気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)の有意な利点である。
【0381】
例示的な用途
A.半導体の製造
(i)概要
半導体の製造は、典型的に、集積電子回路、集積回路素子及び/又は異なるマイクロ電子デバイスを形成するため、順に堆積して処理される複数の物質の層を含む製品の準備を含む。かかる製品は、典型的に、互いに関して正確に(例えば、一般に数ナノメートル以内の規模で)配置される種々の特徴部(例えば、導電性物質で形成される回路線、非導電性物質で充填された井戸、半導電性物質で形成される領域)を含有する。与えられた特徴部の位置、大きさ(長さ、幅、深さ)、組成(化学組成)及び関連特性(導電率、結晶配向、磁気特性)は、製品の性能に大きな影響を与えることができる。例えば、場合によっては、それらのパラメータの一つ以上が適した範囲から外れると、望みどおりに機能することができないので、製品が不合格になる場合がある。結果として、一般に、半導体の製造時の各工程において非常に優れた制御を行うことが好ましく、そして、製造過程の様々な工程で半導体製品の製造を監視し、半導体製造過程の様々な段階での一つ以上の特徴部の位置、大きさ、組成及び関連特性を調べることができる手段を有することが有利となる。本願で使用するように、半導体製品の用語は、集積電子回路、集積回路素子、マイクロ電子デバイス、又は集積電子回路、集積回路素子、マイクロ電子デバイスの製造過程中に形成される製品を指す。一部の実施態様においては、半導体製品が、フラットパネルディスプレー又は光電池の一部とすることができる。
【0382】
半導体製品の領域を、異なる種類の物質(導電性、非導電性、半導電性)で形成することができる。例示的な導電性物質としては、アルミニウム、クロム、ニッケル、タンタル、チタン、タングステン、及びそれら金属の一種以上を含む合金(例えば、アルミニウム−銅合金)が挙げられる。例示的な非導電性物質としては、一種以上の金属のホウ化物、炭化物、窒化物、酸化物、リン化物、ケイ化物及び硫化物(例えば、ケイ化ニッケル、ホウ化タンタル、タンタルゲルマニウム、窒化タンタル、ケイ化タンタル、窒化タンタルケイ素及び窒化チタン)が挙げられる。例示的な半導電性物質としては、ケイ素、ゲルマニウム及びヒ化ガリウムが挙げられる。任意に、半導電性物質をドープ(p-ドープ、n-ドープ)して物質の導電率を高めることができる。
【0383】
上述したように、一般に、半導体製品の製造は、複数の物質の層を順に堆積して処理することを含む。与えられた物質層の堆積/処理における典型的な工程は、(例えば、形成される所望の特徴部を設置すべき場所を決定するため)製品を画像化すること、適した物質(例えば、導電性物質、半導電性物質、非導電性物質)を堆積すること、及び製品中の特定位置から不要な物質を除去するためにエッチングすることを含む。多くの場合、重合体フォトレジスト等のフォトレジストを堆積し/適した放射線にさらし/選択的にエッチング処理を施すことで、与えられた特徴部の位置及び大きさを制御するのに役立たせる。フォトレジストは、典型的に一つ以上の後の処理工程において除去され、一般には、最終の半導体製品が大量のフォトレジストを含有しないことが好ましい。
【0384】
本願に記載の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用い、製造過程中の様々な工程(例えば、各工程)での半導体製品を調べることができる。特に、一種類の粒子又は複数の異なる種類の粒子(上記記載を参照)を検出して分析することにより、気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用いて、半導体製品の表面についてのトポグラフィー情報、半導体製品の表面についての物質構成情報、半導体製品の内層面領域についての物質構成情報、半導体製品についての結晶情報、半導体製品の表面についての電圧コントラスト情報、試料の内層面領域についての電圧コントラスト情報、半導体製品についての磁気情報、及び/又は半導体製品についての光学情報を決定することができる。
【0385】
本願に記載のイオン顕微鏡又はイオンビームを使用することで、一般に半導体製品の製造と関連する時間、費用及び/又は複雑性を低減できる様々な異なる利点を提供することができる。本願に記載のイオン顕微鏡又はイオンビームの使用に関する例示的な利点としては、比較的高い分解能、比較的小さなスポットサイズ、比較的少量の望ましくない試料損傷、比較的少量の望ましくない物質の堆積及び/又は注入、比較的短時間での比較的高品質な画像化、比較的高い処理量が挙げられる。
【0386】
以下、半導体の製造における処理工程の特定の例について説明する。
【0387】
(ii)マスクレスリソグラフィ
半導体製品は、典型的に、フォトレジスト(例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)等の重合体フォトレジスト若しくはエポキシ系フォトレジスト、アリルジグリコールカーボネート又は感光性ガラス)の層を表面に置くこと、フォトレジストの特定領域がエッチング剤に対し耐性を示す(そして、一部の領域はエッチング剤に対し耐性を示さない)ように物質をパターン形成すること、エッチングレジストのない物質の領域をエッチングすること、適切な物質(例えば、一種以上の導電性物質、一種以上の非導電性物質、一種以上の半導電性物質)を堆積すること、任意に物質の望ましくない領域を除去することを含むリソグラフィ処理を用いて製造される。典型的に、パターン形成工程は、フォトレジストの一部の領域がエッチングに対して耐性を示し、フォトレジストの他の領域ではエッチングに対して耐性を示さないように、フォトレジストを適切な波長の放射パターンにさらすことを含む。フォトレジスト上にマスクの像を形成するか又はマスクでフォトレジストの特定領域を覆って、マスクを通して覆われていないフォトレジストの領域を照射することで、フォトレジスト上に放射パターンを形成することができる。
【0388】
しかしながら、放射線の照射の前にマスクを用いてフォトレジストの領域を覆うよりむしろ、気体原子と本願に記載の気体電界イオン源(例えば、Heイオン源)との相互作用により発生するイオンビームを用いて照射し、フォトレジストをパターン形成し、所望のエッチング耐性領域と非エッチング耐性領域を作り出すことができる。このことは、例えば、フォトレジストに亘ってイオンビームをラスタ化し、(例えば、フォトレジストへの放射線の照射が望まれている領域にてイオンビームをオンにし、フォトレジストへの放射線の照射が望まれていない領域にてイオンビームをオフにすることで)物質の所望の領域にイオンを照射することで達成できる。結果として、マスクレス処理で半導体製品を製造することができる。
【0389】
気体原子と気体電界イオン源(例えば、Heイオン源)との相互作用により発生するイオンビームを用いることで、以下に示す利点の一つ以上を提供することができる。上記したように、マスクを使用せずに処理を行うことができ、このことは、半導体製品の製造に関する時間、費用及び/又は複雑性を低減することができる。比較的大きな焦点深度のイオンビームは、比較的厚みのあるフォトレジスト材料(例えば、2μm以上の厚み、5μm以上の厚み、10μm以上の厚み、及び/又は20μm以下の厚み)をパターン形成することを可能にすることがある。更に、そのイオンビームで達成できる比較的深い侵入度のイオンは、標準的な厚さのフォトレジスト材料の高品質な処理に役立つことに加えて、比較的厚みのあるフォトレジスト材料を処理するのに役立つこともできる。加えて、イオンビームは、一般に電子ビームで達成されるものより高い分解能を有しており、高精度で小さいサイズの特徴部の製造を可能にする。更に、フォトレジストのイオンビームによるパターン形成は、フォトレジストの電子ビームによるパターン形成に比べて速くすることができる。
【0390】
(iii)イオン顕微鏡と集束イオンビームの組み合わせ
集束イオンビーム(FIB)は、通常、半導体製品の製造時に使用され、検査用の試料を得る。ガリウム(Ga)イオンが、通常、FIBに使用される。半導体製品を通した断面の画像化、回路編集、半導体製品の故障解析、透過電子顕微鏡法(TEM)用の半導体製品の試験体の用意、マスク修理等の種々の理由で、FIBを使用することができる。任意に、(例えば、化学蒸着過程におけるイオン源として)FIBを用いて、試料上に一種以上の物質を堆積させることができる。典型的に、FIBを使用し、スパッタリングによって半導体製品から物質を除去する。例えば、一部の実施態様においては、FIBを用いて半導体製品を薄く切り、その後のイオン顕微鏡による画像化のために該製品の断面を露出させる。特定の実施態様においては、FIBを用いて製品から物質をスパッタし、製品中に溝又はビアを形成する。この技術を用いて、例えば、製品表面の下にある製品の部分を露出させることができる。次に、イオン顕微鏡を用い、気体を補助に使った化学的手法によって、新しい物質を堆積したり又はFIBにより露出した既存の物質をエッチングすることができる。一部の実施態様においては、選択的スパッタリング手段としてFIBを使用し、製品上の導電性物質部分等の半導体製品の部分を取り除くこともできる。特定の実施態様においては、FIBを用いて試料の一部を切り取ることで、その部分を後に分析することができる(例えば、TEMの使用)。
【0391】
一般には、試料上にFIBを正確に設置させることが好ましい。この目的のために、本願に記載の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を使用することができる。例えば、FIB機器及び気体電界イオン顕微鏡の両方で交差ビーム手段を使用することができ、試料を移動させずに気体電界イオン顕微鏡を用いてFIBの位置を決定することができる。かかる手段の場合、気体電界イオン源を用いて試料を画像化し、望み通りFIBを正確に配置するのに使用できる情報を提供することができる。このような配置は、SEMを用いてFIBの位置を決定することに対し、多くの利点を提供することができる。一例としては、SEMの使用によって試料表面に近接した磁場を生じさせる場合があり、このことは、Gaイオンの同位体分離を起こすことになり、試料での一を超えるFIBの位置をもたらす結果となる。多くの場合、この問題は、同時というよりはむしろ順にFIBとSEMを使用するという結果になる。しかしながら、その一方で、かかる磁場の不在下において、気体電界イオン顕微鏡を作動させることができ、それにより、Gaイオンの同位体分離と関連する面倒な事態を取り除きつつ、更にFIBと気体電界イオン顕微鏡を同時に使用できるようにする。このことは、例えば、試料の厚さが比較的厳密な公差を満たすことが望ましいところで、その後の検査(例えば、TEM検査)用に試料を準備するときに好ましい場合がある。気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用いることの追加の利点は、イオンビームが電子ビームより小さな仮想源を有しているので、依然として非常に良好な分解能を維持しながら、典型的なSEMでの使用に比べて大きな作動距離を有することである。このことは、FIB機器とSEMを組み合わせた手段のために存在し得る特定の間隔制限を軽減することができる。本願に記載の気体電界イオン顕微鏡の更なる利点は、SEMが一般に試料についての内層面の情報を提供することができないのに対し、それを用いて試料についての内層面の情報を得ることができることであり、このことは、FIBを正確に配置する能力を向上させることができる。
【0392】
(iv)気体を補助に使う化学反応
気体を補助に使う化学反応は、通常、半導体の製造時に使用され、与えられた層に物質を添加し及び/又は与えられた層から物質を取り除く。例えば、気体を補助に使う化学反応は、半導体の回路編集に使用されることがあり、半導体製品に形成され損傷した回路又は間違って製造された回路を修理する。また、気体を補助に使う化学反応は、フォトリソグラフィのマスク修理に使用されることがあり、ここで、マスクに物質を添加し又はマスクから物質を取り除くことで、使用や誤った製造に起因する欠陥を修理することができる。
【0393】
上記処理は、一般に、電子を活性化ガスと相互作用させて、その後に半導体製品の表面にて化学反応に関与し、該表面に物質を添加し、該表面から物質を除去し又はそれらの両方を行うことができる反応性ガスを形成することを含む。典型的に、Gaイオンビームの試料との相互作用に起因する二次電子として電子を発生させ、及び/又は(例えば、SEMにより作り出される)電子ビームの試料との相互作用に起因する二次電子として電子を発生させる。任意に、適したポンプシステムを用いて、表面化学反応による望ましくない揮発性生成物を除去することができる。
【0394】
表面から物質を除去するのに使用できる活性化ガスの例としては、Cl
2、O
2、I
2、XeF
2、F
2、CF
4及びH
2Oが挙げられる。一例として、一部の実施態様においては、クロム、酸化クロム、窒化クロム及び/又は酸窒化クロムで形成される表面領域が、電子をCl
2及び/又はO
2と相互作用させて、その結果得られる化学種に表面領域をエッチングさせることによって、少なくとも部分的に除去できる。他の例として、特定の実施態様においては、窒化タンタルで形成される表面領域が、電子をXeF
2、F
2及び/又はCF
4と相互作用させて、その結果得られる化学種に表面領域をエッチングさせることによって、少なくとも部分的に除去できる。更なる例として、特定の実施態様においては、炭素含有物質で形成される表面領域が、電子をH
2O及び/又はO
2と相互作用させて、その結果得られる化学種に表面領域をエッチングさせることによって、少なくとも部分的に除去できる。
【0395】
表面に物質を堆積させるのに使用できる活性化ガスの例は、WF
6である(Wプラグ等、Wを堆積させる)。
【0396】
気体原子と本願に記載の気体電界イオン源(例えば、Heイオン源)との相互作用により発生するイオンビームを用いて、気体を補助に使う化学反応を行うことができる。かかる処理においては、例えば、イオンビームの試料との相互作用によって試料から出る二次電子が、化学反応に役立つように使用される電子とすることができる。かかるイオンビームの使用は、Gaイオンビームの使用に比べて幾つかの利点を提供することができる。一例としては、Heイオンビームを用いて望ましくないイオン注入を低減(例えば、除去)することができるのに対して、Gaイオンビームを用いた場合には、望ましくないGaの注入が一般的な問題となる。他の例として、気体電界イオンビーム(例えば、Heイオンビーム)は、Gaイオンビーム及び/又は入射電子ビーム(例えば、SEMにより作り出される入射電子ビーム)に対して向上した分解能を提供することができ、より正確で及び/又は制御可能な化学反応の使用を可能にすることができる。このことは、例えば、イオンと試料の特定部分との望ましくない相互作用(例えば、Gaイオンビームの輪郭が、Gaの注入によって半導体製品の性能に関する問題を起こし得る望ましくない試料領域にまで及ぶ尾部を有する場合にはGaイオンビームによって起こり得る)を低減(例えば、除去)することができる。
【0397】
(v)スパッタリング
半導体製品の製造過程においては、特定の工程の間、物質を取り除くことが望ましい場合がある。このため、イオンビームが試料からの物質をスパッタする場合に、イオンビームを用いることができる。特に、気体原子と本願に記載の気体電界イオン源との相互作用によって発生するイオンビームは、試料をスッパタするのに使用できる。Heガスイオンを用いることができるが、一般に、より重いイオン(例えば、Neガスイオン、Arガスイオン、Krガスイオン、Xeガスイオン)を使用し、物質を取り除くことが好ましい。物質除去の間、イオンビームは、除去されるべき物質が置かれた試料の領域に集束される。
【0398】
イオンビームを用いて物質を除去することの利点は、比較的制御された方法及び/又は比較的正確な方法で物質を除去できることである。追加の利点は、望ましくないイオンの注入(例えば、Gaの注入が望ましくない一般的なスパッタリングの副作用となる場合に、Gaイオンのスパッタリングを用いる際に生じることが多い)をせずにスパッタリングを達成できることである。
【0399】
(vi)空隙の検出
半導体製品の製造の間、特定の特徴部又は層中の空隙が、不注意で形成される場合がある。一部の実施態様においては、該空隙が、特徴部及び/又は装置全体の特性(例えば、電気特性、機械特性)に好ましくない影響を与える場合がある。特定の実施態様においては、後の処理工程が空隙を開ける場合があり、該空隙を、例えば、液体成分及び/又は気体成分で満たすおそれがある。これは、基底構造の腐食、粒子欠陥及び/又は周囲のウェーハ表面上の残渣欠陥をもたらすおそれがある。
【0400】
一例としては、WF
6からのWプラグの堆積の間、TiN
x保護層が、(W形成時に放出されるHFからの)腐食から隣接した誘電体(例えば、ホウ素及び蛍光体をドープしたシリコンガラス)を保護するのに一般に使用される。TiN
x層の切れ目は、深刻な空隙の形成をもたらすことがある。他の例としては、溝(例えば、比較的高いアスペクト比の溝)中の物質(例えば、誘電体)の堆積が、後の空隙の形成と共に隘路の形成をもたらすことがある。追加の例としては、浅溝分離構造の誘電体充填の間、空隙の形成が起こる場合がある。更なる例としては、物質の導電線(例えば、銅線)の形成の間、空隙を形成する場合があり、電気伝導度の望ましくない低下をもたらすことがある。一部の例では、かかる空隙が、電気伝導度が求められるところでの電気伝導度の不足を招くことがある。
【0401】
本願に記載の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用い、半導体製品等の試料についての内層面の情報を提供する能力を利用することで、空隙の形成を調べることができる。半導体製品の製造過程の間、この特性を使用し、空隙の存在及び/又は位置を決定することができる。このことは、一般に電子ビームが試料についてこの種の内層面の情報を提供しないので、電子ビームの使用を越えた明確な利点である。
【0402】
(vii)重層移動位置合わせ
重層移動位置合わせは、一般に半導体製品における与えられた層の特徴部の該半導体製品における異なる層の特徴部との位置合わせを指す。上記したように、半導体製品の形成は、一般に、多くの層の正確な形成を含む。典型的に、半導体製品は、20層を大幅に超える層を含有する。多くの場合、各層は複数の異なる特徴部を含有することができ、それぞれが高精度で望ましく設置される結果、半導体製品は正確に機能することができる。一例としては、半導体製品は、導電性線等の横方向特徴部を含有することができ、該横方向特徴部は異なる層内に存在し、ビアによって互いに接続されている。一般に、100nm(例えば、75nm、50nm、25nm、15nm、10nm、9nm、8nm、7nm、6nm、5nm、4nm、3nm、2nm、1nm)以内で相互に位置合わせした半導体製品内の特徴部を有することが好ましい。それら多くの特徴部の内の唯一つのずれが、半導体製品全体を役に立たないものにさせるおそれがある。
【0403】
重層移動位置合わせは、一般に、μmサイズの構造(超小型電子回路の特徴部のサイズよりかなり大きい)の試験構造体を用いた光学技術によって行われる。そのようなものとして、典型的には、光学試験構造体が占めるウェーハ間隙の量によって、ウェーハ上の染料内に光学試験構造体を設置することができない。例えば、試験構造体をウェーハ端の近くに設置することができるが、それらは依然としてウェーハ表面上の価値のある空隙を占めている。また、光学試験構造体は位置合わせの目的のためだけに製造されるので、光学試験構造体は費用がかかる。最後に、位置合わせ用の光学試験構造体の使用は、異なる層内における特徴部の位置合わせを決定することができる正確さに関して、制限を有する。
【0404】
本願に記載の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)が比較的高い精度で試料についての様々な種類の情報(例えば、トポグラフィー情報、表面の物質構成情報、内層面領域の物質構成情報、結晶情報、表面の電圧コントラスト情報、内層面領域の電圧コントラスト情報、磁気情報及び光学情報)を提供する能力は、装置の特徴部を正確に配置して正確な大きさにし、装置内で非常に精密であることを確実にするのを助けるために、該顕微鏡が半導体製品の製造中に有利に使用されることを可能にする。特に、Heイオン顕微鏡は、一般に光学試験構造体を使用して達成できるものに比べて高い分解能で、多重層の回路特徴部の位置合わせを可能にすることができる。更に、重層移動位置合わせは、例えば、本願に記載の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)が半導体製品等の試料の内層面特徴部を画像化することができるので、目的に合うように製造された試験構造体(例えば、光学試験構造体)を使用せずに行うことができる。従って、目的に合うように製造された試験構造体(例えば、光学試験構造体)を含むことに関連する費用及び/又は複雑性に加えて、かかる試験構造体に取り上げられるウェーハ上の無駄な隙間を回避することができる。
【0405】
(vii)限界寸法の計測
限界寸法の計測は、装置の性能に重大な影響を与えることがある半導体製品の特徴部の線寸法の測定を指す。かかる特徴部の例としては、線(例えば、導電性物質の線、半導電性物質の線、非導電性物質の線)を挙げることができる。半導体製品は、20nm以下(例えば、10nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下)の寸法を有する特徴部を一つ以上含有することができる。一部の実施態様においては、特徴部の大きさを複数回測定し、特徴部の大きさに関する統計情報を提供する。限界寸法の測定は、例えば、ウェーハ上にパターン形成された特徴部の長さの決定を伴うことが多い。検査用に製造ラインから無作為にウェーハ(それぞれのダイが半導体製品を形成する複数のダイを含有する)を選択してもよいし、製造ライン上の全てのウェーハを検査することもできる。画像化機器を用いて、比較的高い処理速度で選択した限界寸法を測定することができる。測定される限界寸法が容認できる範囲内に入っていない場合、ウェーハを廃棄することができる。特定の製造機械から作り出す複数の試料が容認できる範囲から外れた限界寸法を有する場合、その機械を操業中止とすることができ、又はその作動パラメータを変更することができる。
【0406】
本願に開示のHeイオン顕微鏡システムは、限界寸法の測定に使用できる。特に、ウェーハ領域に亘ってHeイオンビームをラスタ走査することができ、その結果得られる一つ又は複数のウェーハの画像を用いて、一つ又は複数の限界寸法を決定することができる。限界寸法の測定に関しては、Heイオン顕微鏡システムが、SEM及び他の検査システムに対して多くの利点を提供することができる。Heイオン顕微鏡の画像は、通常、比較できるSEM画像に比べて縁での吹出し(一般に、ビームとほぼ平行な傾きを有するトポグラフィー特徴での向上した放出量によって検出器の飽和点に近づく過度の信号)が少ない。低減した縁での吹出しは、電子の試料表面との相互作用の量に対して、Heイオンと試料表面間での小さな相互作用の結果である。
【0407】
加えて、入射Heイオンを、比較できる入射電子ビームより小さいスポットサイズに集束することができる。小さいビームスポットサイズは、小さい相互作用の量と組み合わせて、SEMで作り出す画像より優れた分解能を有する試料の画像と、試料の限界寸法のより精密な決定をもたらす。
【0408】
Heイオンビームの焦点深度は、SEMに比べて比較的大きい。結果として、様々な深さでの試料の特徴部の分解能は、イオンビームを用いた場合、電子ビームと比べてばらつきがない。従って、イオンビームの使用は、種々の試料深さで、電子ビームを用いて提供できるものと比べてばらつきのない優れた横方向分解能の情報を提供することができる。一例としては、イオンビームを用いることで、電子ビームで達成できるものに比べて優れた限界寸法の分析結果を達成することができる。
【0409】
更に、少なくとも一部において二次電子に基づき情報が得られる実施態様においては、電子ビームに比べて、イオンビームにより提供される比較的高い二次電子の放出量が、与えられた電流についての比較的高い信号対雑音の比をもたらすことができる。このことは、順に、試料についての十分な情報が比較的短時間で得られることを可能にすることができ、与えられた電流についての処理量を増大させる。
【0410】
限界寸法の決定のための試料の画像化を、散乱Heイオンを用いて行うことができる。このことは、高い分解能での距離測定に加えて、物質情報の追加された利点を提供する。
【0411】
限界寸法の測定のためにイオン顕微鏡システムを使用する間、フラッド銃を用いて、試料表面の過剰な帯電を防ぐことができる(上記記載を参照)。追加的に又は代わりに、非常に低いHeイオンビーム電流(例えば、100fA以下)を用いることができる。表面電荷を低減し、画像中実度を維持することに加えて、低いイオン電流の使用は、特定のレジスト材料に対するビーム誘発損傷を低減させる。
【0412】
一部の実施態様においては、最初に(例えば、試料の断面寸法を測定するため)限界寸法測定用に選択されるウェーハ試料を区分化する必要がある場合がある。このため、イオン顕微鏡にNeやAr等の重い気体を用いて、試料を薄く切るのに使用できるイオンビームを形成することができる。或いは、Ga系FIBを用いて、試料を区分化することができる。次に、顕微鏡システムからそれらの気体をパージして、Heを導入することができ、その結果、Heイオンビームで限界寸法測定が行われ、計測中の試料損傷を回避する。
【0413】
(viii)線の縁粗さ及び線の幅粗さ
線の縁粗さは、一般に半導体製品における物質の線の縁粗さを指し、線の幅粗さは、一般に半導体製品における物質の線の幅粗さを指す。これらの値を理解し、与えられた半導体製品に実際の問題又は潜在的な問題が存在するか否かを決定することが好ましい場合がある。例えば、導電性物質で形成される隣接した線が互いに外側へ膨らむ縁を有する場合、その線は互いに接触する場合があり、短絡をもたらす。線の縁粗さ及び/又は線の幅粗さの寸法を5nm以下(例えば、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0.9nm以下、0.8nm以下、0.7nm以下、0.6nm以下、0.5nm以下)の範囲内に理解することが好ましい場合がある。一部の実施態様においては、線の縁粗さ及び/又は線の縁幅を複数回測定し、特徴部の大きさに関する統計情報を提供する。加えて、線の縁粗さ等のパラメータについての製造公差は、非常に高いことがある。例えば、半導体製品特徴部の線の縁粗さを5nm以下の範囲内(例えば、4nm以下の範囲内、3nm以下の範囲内、2nm以下の範囲内、1nm以下の範囲内、0.5nm以下の範囲内、0.1nm以下の範囲内、0.05nm以下の範囲内、0.01nm以下の範囲内)に制御する必要がある場合がある。
【0414】
線の縁粗さ及び線の幅粗さを決定する場合、検査用に製造ラインから無作為でウェーハを選択してもよいし、製造ライン上の全てのウェーハを検査することもできる。画像化機器を用いて、比較的高い処理速度で線の縁粗さ及び線の幅粗さを測定することができる。測定される線の縁粗さ及び線の幅粗さが容認できる範囲内に入っていない場合、ウェーハを廃棄することがある。特定の製造機械から作り出す複数の試料が容認できる範囲から外れた線の縁粗さ及び線の幅粗さを有する場合、その機械を操業中止とすることができ、又はその作動パラメータを変更することができる。
【0415】
本願に開示の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)は、線の縁粗さ及び線の幅粗さの計測に使用できる。特に、特徴部の長さに沿ってHeイオンビームをラスタ走査することができ、得られる情報を用いて、比較的高精度の線の縁粗さ及び線の幅粗さを決定することができる。
【0416】
線の縁粗さ及び線の幅粗さの測定に関しては、Heイオン顕微鏡システムが、SEMや他の検査システムに対して多くの利点を提供することができる。Heイオン顕微鏡の画像は、通常、比較できるSEMの画像に比べて縁での吹出し(一般に、ビームとほぼ平行な傾きを有するトポグラフィー特徴での向上した放出量によって検出器の飽和点に近づく過度の信号)が少ない。低減した縁での吹出しは、電子と試料表面との相互作用の量に比べて、Heイオンと試料表面間での小さな相互作用の結果である。
【0417】
加えて、入射Heイオンを、比較できる入射電子ビームより小さいスポットサイズに集束することができる。小さいビームスポットサイズは、小さい相互作用の量と組み合わせて、SEMで作り出す画像より優れた分解能を有する試料の画像と、試料の線の縁粗さ及び線の幅粗さのより精密な決定をもたらす。
【0418】
Heイオンビームの焦点深度は、SEMに比べて比較的大きい。結果として、様々な深さでの試料特徴部の分解能は、イオンビームを用いた場合、電子ビームと比べてばらつきがない。従って、イオンビームの使用は、種々の試料深さで、電子ビームを用いて提供できるものと比べてばらつきのない優れた横方向分解能の情報を提供することができる。一例としては、イオンビームを用いることで、電子ビームで達成できるものに比べて優れた線幅の分析結果を達成することができる。
【0419】
更に、少なくとも一部において二次電子に基づき情報が得られる実施態様においては、電子ビームに比べて、イオンビームにより提供される比較的高い二次電子放出量が、与えられた電流についての比較的高い信号対雑音の比をもたらすことができる。このことは、順に、試料についての十分な情報が比較的短時間で得られることを可能にすることができ、与えられた電流についての処理量を増大させる。
【0420】
限界寸法の決定のための試料の画像化を、散乱Heイオンを用いて行うことができる。このことは、高い分解能での距離測定に加えて、物質情報の追加された利点を提供する。
【0421】
線の縁粗さ及び線の幅粗さの測定のためにイオン顕微鏡システムを使用する間、フラッド銃を用いて、試料表面の過剰な帯電を防ぐことができる(上記記載を参照)。代わりに又は追加的に、非常に低いHeイオンビーム電流(例えば、100fA以下)を用いることができる。表面電荷を低減し、画像中実度を維持することに加えて、低いイオン電流の使用は、特定のレジスト材料に対するビーム誘発損傷を低減させる。
【0422】
一部の実施態様においては、最初に(例えば、試料の断面寸法を測定するため)線の縁粗さ及び線の幅粗さの測定用に選択されるウェーハ試料を区分化する必要がある場合がある。このため、NeやAr等の重い気体が気体電界イオン源と相互作用し、試料を薄く切るのに使用できるイオンビームを発生させることができる。次に、顕微鏡システムからそれらの気体をパージして、Heを導入することができ、その結果、Heイオンビームで限界寸法測定が行われ、計測中の試料損傷を回避する。
【0423】
(ix)回路編集
先に記載したように、半導体製品の形成過程は、典型的に、所望の方法で多くの異なる物質の層を重ねることと、各層で適した処理を行うことを含む。一般に、このことは、与えられた層に物質を堆積させること及び/又は与えられた層から物質を除去することを含む。最終の半導体製品は、(例えば、所望の回路を形成するため)異なる層中に多くの異なる特徴部を含む。一般に、望みどおり機能する最終装置のため、特徴部を正確に合わせることが好ましい。位置合わせのマークが、通常、半導体製品に使用されており、与えられた層の特徴部を異なる層の特徴部と正確に合わせるのに役立つ。しかしながら、位置合わせのマークを使用することで、全製造過程に余分な工程を追加することがあり、及び/又は製造過程に他の複雑さ若しくは費用を持ち込む場合がある。更に、単なる位置合わせのマークの存在は、(例えば、動的部品の製造に)使用できない半導体製品の領域及び/又は体積として存在することを意味する。
【0424】
上記したように、イオンビームを用いて材料の内層面領域を調べることができる。この特性を用いて、表層の真下にある層の特定の特徴部の位置を決定することができ、半導体製品の異なる層の特徴部を、位置合わせのマークを使用することなく所望の通りに合わせることができる。
【0425】
本願に記載の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用い、例えば、上記した気体を補助に使う化学反応及び/又はスパッタリング法によって、(例えば、電子回路からの)物質を除去し及び/又は堆積することができる。また、イオン顕微鏡を用いてこれらの処理を行う利点は、イオンビームを用いて得られる製品を評価し、例えば、所望の物質が正確に堆積され又は除去されたかどうかを決定できることである。このことは、装置の製造に関連する費用及び/又は複雑性を低減することができ、並びに/或いは装置の製造の処理量を増大させることができる。物質の除去及び/又は追加の機能を組み合わせて、内層面回路の修理を行うことができる。内層面の欠陥を修理するには、最初に、欠陥をあらわにする深さにまで装置からの物質を取り除く。次に、その装置からの物質を追加し又は除去することで、欠陥を修理する。最後に、適切な厚みの新しい物質を加えることで、装置の上に重なる層を層毎に修理する。
【0426】
本願に記載の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)は、製造した装置の制御された非常に精密な編集のために、小さなスポットサイズ及び低いイオン電流を含む回路編集用途に対して特別な利点を提供することができる。
【0427】
(x)マスク修理
半導体製品は、典型的に、フォトレジスト(例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)等の重合体フォトレジスト若しくはエポキシ系フォトレジスト、アリルジグリコールカーボネート又は感光性ガラス)の層を表面に置くこと、フォトレジストの特定領域がエッチング剤に対し耐性を示す(そして、一部の領域はエッチング剤に対し耐性を示さない)ようにその材料をパターン形成すること、エッチングレジストのない物質の領域をエッチングすること、適切な物質(例えば、一種以上の導電性物質、一種以上の非導電性物質、一種以上の半導電性物質)を堆積すること、任意に物質の望ましくない領域を除去することを含むリソグラフィ処理を用いて製造される。典型的に、パターン形成工程は、フォトレジストの一部の領域がエッチングに対して耐性を示し、フォトレジストの他の領域ではエッチングに対して耐性を示さないように、フォトレジストを適切な波長の放射パターンにさらすことを含む。フォトレジスト上にマスクの像を形成するか又はマスクでフォトレジストの特定領域を覆って、マスクを通して覆われていないフォトレジストの領域を照射することで、フォトレジスト上に放射パターンを形成することができる。
【0428】
半導体業界において製造される集積回路及び他のマイクロ電子デバイスに使用されるフォトリソグラフィのマスクは、壊れ易く及び/又は高価な場合がある。加えて、マスクの製造処理は、時間がかかり及び/又は細心の注意を要する場合がある。一部の状況においては、一般にかかるマスクの製造中に払われる注意にもかかわらず、製造誤差がマスクの欠陥を作り出す。他の状況においては、マスクの欠陥が、取り扱いや一般的使用から生じる場合がある。欠陥のあるマスクを用いて回路又は他の装置を製造する場合、その回路又は装置は正確に作動しない場合がある。新しいマスクを製造するのに必要な時間と費用を考えると、全く新しい物質を製造することに比べて、欠陥のあるマスクを編集するほうが費用効率を高くすることができる。
【0429】
マスクの欠陥は、一般に、材料の存在すべきでないマスク領域に過剰のマスク材料、及び/又は材料が存在すべきところでのマスク材料の不在を含む。どちらの状況でも、本願に記載の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用いて、マスクを検査及び/又は修理することができる。
【0430】
一部の実施態様においては、本願に開示の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用いてマスクを検査し、欠陥が存在するかどうか、そして欠陥が存在する場合には欠陥がどこにあるのかを決定することができる。本願に開示の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)によって提供され特徴付けられる種々の利点の多くを利用し、マスクを画像化することが好ましい。
【0431】
特定の実施態様においては、マスク修理中にマスクを画像化することに加えて、修理過程の間、気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用いることができる。一例としては、気体電界イオン顕微鏡を用い、FIBに対してマスクを適切な位置に置くことができ、その結果、上記したようにFIBを用いて気体の表面化学反応処理及び/又はエッチング処理によってマスクからの物質を添加及び/又は除去することができる。他の例としては、最初にマスクを画像化し、欠陥の存在及び/又は位置を決定することに加えて、気体電界イオン顕微鏡を用い、上記したように気体の表面化学反応処理及び/又はエッチング処理によってマスクからの物質を添加及び/又は除去することができる。任意に、気体電界イオン顕微鏡を用いて特定の修理工程(物質の添加、物質の除去)を行いつつ、他の機器(例えば、FIB)に用いて他の修理工程(物質の添加、物質の除去)を行うことができる。
【0432】
(xi)欠陥検査
一般に、半導体製品の製造過程の間、該製品は潜在的な欠陥について検査される。典型的には、常に作動してウェーハが供給されている一列に並んだ手段を用いて検査が行われており、そして、それは全自動である。多くの場合、該手段を用いて、ウェーハの小さな領域で、欠陥が発生し得る領域が存在するかどうかを調べる。この検査は、欠陥の再検査に先立って行われる(以下の記載を参照)。欠陥検査の目標は、典型的に、与えられた欠陥の正確な性質を決定するのとは対照的に、欠陥が存在し得るかどうかを決定することである。欠陥検査の間、ウェーハ領域を分析し、同一ウェーハの他の領域及び/又は他のウェーハの領域に対して、特定の異常特性(例えば、電圧コントラスト特性、トポグラフィー特性、物質特性)が試料によって示されるかどうかを確かめる。典型的に、潜在的な欠陥については、ウェーハ上の座標(X、Y座標)に注意し、欠陥再検査の間、ウェーハの位置を慎重に検査する。
【0433】
本願に記載の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオンビーム)を用いて、欠陥検査の間に試料についての情報を収集することができる。かかる顕微鏡は、比較的高い処理量や高品質の欠陥検査のために使用できる。気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)によって提供される異なるコントラスト機構は、一般に光学的画像化技術を用いて観察できるものに比べて高い分解能で、異なる種類の欠陥の視覚化を可能にすることができる。
【0434】
(xii)欠陥再検査
一般に、欠陥検査中に試料が潜在的な欠陥を有しているとして注意される場合には、次にその試料に欠陥再検査を受けさせて、ここで、潜在的な欠陥を有する試料の一つ又は複数の領域を調査し、欠陥の性質を決定する。この情報に基づき、その処理の修正を行い、最終製品の欠陥の危険性を低減することができる。典型的に、欠陥検査は、欠陥再検査に比べて低速度で且つ高い倍率で行われており、一つ以上の欠陥に関する特定の情報を得るために自動化し又は手動で行うことができる。その情報を用いて、異常な結果が再検査中に得られた理由やその異常な結果により生じた欠陥の性質及び原因の理解を試みる。
【0435】
本願に記載の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用い、製造過程の様々な工程(例えば、各工程)で半導体製品を調査することができる。特に、一種類の粒子又は複数の異なる種類の粒子を検出及び分析することによって(上記記載を参照)、気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用いて、半導体製品の表面についてのトポグラフィー情報、半導体製品の表面についての物質構成情報、半導体製品の内層面領域の物質構成情報、半導体製品についての結晶情報、半導体製品の表面についての電圧コントラスト情報、半導体製品の内層面領域についての電圧コントラスト情報、半導体製品についての磁気情報、及び/又は半導体製品についての光学情報を決定することができる。Heイオン顕微鏡によって提供される異なるコントラスト機構は、SEM系技術によっては現れることのない欠陥の視覚化を可能にすることができる。
【0436】
本願に記載のイオン顕微鏡又はイオンビームを用いることで、一般に半導体製品の製造に関連する時間、費用及び/又は複雑性を低減できる多種多様な利点を提供することができる。本願に記載のイオン顕微鏡又はイオンビームの使用に関連する例示的な利点としては、比較的高い分解能、比較的小さなスポットサイズ、比較的少量の望ましくない試料損傷、比較的少量の物質堆積及び/又は注入、比較的短時間での比較的高品質な画像化、比較的高い処理量が挙げられる。
【0437】
(xiii)回路試験
半導体製品の製造中、該製品の一つ以上の特徴部の導電率及び機能性を試験することができる。この方法は、一般に、一つ又は複数の特徴部に荷電粒子を照射することと、その後に電荷が蓄積される速度で監視することとを含む。開回路は、閉回路に対して異なる速度で帯電されることになり、より詳細な検査のため、開回路を確認及び検討することを可能にする。本願に記載の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用い、イオンビームによって特徴部に電荷を印加することができ、及び/又は該気体電界イオン顕微鏡を用い、(例えば、電圧コントラスト特性を監視することで)その電荷が漏れ出たかどうかを監視することができる。任意には、フラッド銃を用いて電荷を印加することができ(上記記載を参照)、気体電界イオン顕微鏡を用いて(例えば、電圧コントラスト特性を監視することによって)その電荷が漏れ出たかどうかを監視することができる。
【0438】
B.金属及び合金の腐食
Heイオン顕微鏡を用いて、各種装置及び材料における金属の腐食を確認及び調査することができる。例えば、原子力発電所、軍事用途及び生物医学的用途に用いる金属固定具及び装置は、それらが配置された過酷な環境によって腐食を受けるおそれがある。Heイオン顕微鏡を用い、装置内の水素(H)の相対存在量に基づいてそれらの装置や他の装置の画像を作成することができ、信頼性のある腐食指示器として機能する。
【0439】
典型的に、散乱Heイオン又は原子に基づく画像を形成するには、入射Heイオンビームと対照的に、そのイオン又は原子用の検出器を試料の裏面に配置する。試料にHeイオンを照射することで、試料の内部から散乱H原子及びイオンが発生し、その散乱H原子及びイオンを検出して試料の画像を形成するのに用いることができる。次に、H存在量の画像を用いて、試料内の腐食の程度を評価することができる。Heイオンビームの小さなスポットサイズや相互作用の量は、試料を損傷させずに得られる試料の高分解能H画像をもたらすことができる。
【0440】
C.データ保存用の読み込み/書き込み構造体
ハードディスク等の磁気記憶装置に用いる読み込み/書き込みヘッドは、極めて高い公差で製造され、取り付けの前に製造欠陥について検査しなければならない。これらの装置は、しばしば非常に高いアスペクト比を有し、かかる装置の短辺は1nmと小さいことがある。Heイオン顕微鏡は、検査中にそれらの装置を画像化するのに使用する場合に多くの利点を提供する。それらの中には、小型装置の高分解能画像化をもたらすことができる小さなスポットサイズや相互作用の量、その長さに沿って高アスペクト比の装置全体における焦点の合った画像化を可能にすることができる大きな焦点深度、及び小型回路素子が正確に接続されたことを確認するのに用いる散乱Heイオン及び/又は中性原子の測定によって提供される物質情報がある。
【0441】
D.生命工学
非破壊法を用いて生物試料についての元素及び/又は化学組成情報を決定することが好ましい場合が多い。生物試料の例としては、組織、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質及び細胞膜が挙げられる。
【0442】
本願に記載の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用いて、例えば、生物試料についてのトポグラフィー情報、生物試料の表面についての物質構成情報、生物試料の内層面領域についての物質構成情報及び/又は生物試料についての結晶情報を決定することができる。例えば、気体電界イオン顕微鏡を用いて、免疫標識された細胞や細胞内の構造を画像化することができる。このように該顕微鏡を用いながら、本願に開示の特定の利点を提供することができる。
【0443】
E.医薬品
多くの場合、治療薬(例えば、小分子薬剤)は、(例えば、溶液から出てくるにつれて)結晶として形成されることになる。例えば、小分子の水和の程度に関する情報を提供することができるので、結晶化した小分子の結晶構造を決定することが好ましい場合があり、順次、小分子の生物学的利用率に関する情報を提供することができる。場合によっては、結晶情報は、小分子が実際には(結晶性と対照的に)非晶質の形態であることを示す結果となり得、小分子の生物学的利用率に影響を与えることもできる。
【0444】
追加的に又は代わりに、非破壊法を用いて生物試料についての元素及び/又は化学組成情報を決定することが好ましい場合が多い。
【0445】
本願に記載の気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)を用いて、例えば、生物試料についてのトポグラフィー情報、生物試料の表面についての物質構成情報、生物試料の内層面領域についての物質構成情報及び/又は生物試料についての結晶情報を決定することができる。このように該顕微鏡を用いながら、本願に開示の特定の利点を提供することができる。
【0446】
コンピュータハードウェア及びソフトウェア
一般に、コンピュータハードウェア若しくはソフトウェア又はそれらの組み合わせに、上記した分析方法のいずれかを組み入れることができる。本願に記載の方法や計算の後に標準的なプログラミング技術を用いて、上記分析方法をコンピュータプログラムに組み入れることができる。プログラムコードを入力データに適用して、本願に記載の機能を実行し、出力情報を発生させる。出力情報は、表示モニタ等の一つ以上の出力装置に適用される。各プログラムを高水準手続き又はオブジェクト指向プログラム言語に組み入れ、コンピュータシステムと通信することができる。しかしながら、必要に応じて該プログラムをアセンブリ言語又は機械語に組み入れることができる。いずれの場合でも、言語は、コンパイラ型言語又はインタープリタ型言語とすることができる。その上、プログラムは、そのために前もってプログラムされた専用の集積回路で作動することができる。
【0447】
一般の又は特別な目的に合うようにプログラム可能なコンピュータによって読める記録媒体又は記録装置(例えば、ROM又は磁気ディスク)がコンピュータによって読み込まれて本願に記載の手順を実行する際にコンピュータを設定して作動させるため、かかるコンピュータプログラムのそれぞれを該記録媒体又は記録装置に記録することが好ましい。また、コンピュータプログラムは、プログラム実行中、キャッシュメモリ又はメインメモリに存在することができる。また、コンピュータプログラムを用いて設定されたコンピュータ可読の記録媒体がコンピュータを特定の予め定義された方法で作動させて本願に記載の機能を実行する場合に、上記分析方法は、そのように設定されたコンピュータ可読の記録媒体として組み入れることができる。
【0448】
他の実施態様
特定の実施態様について記載してきたが、他の実施態様が可能である。
【0449】
一例としては、先の実施態様の内の一つ以上において、気体電界イオン顕微鏡と組み合わせて、SEMを使用することができる。例えば、SEMを用いて、二次電子、オージェ電子、X線光子、IR光子、可視光子及び/又はUV光子を作り出すことができる。任意には、SEMを用いて、気体を補助に使う化学反応を促進することができる。気体電界イオン顕微鏡は、本願に開示のいずれかの作動モードで構成されることができ、その結果、SEMと気体電界イオン顕微鏡は、相補的な機能を果たす。
【0450】
他の例としては、W(111)の先端について開示したが、異なるWの結晶方位を先端に用いることもできる。例えば、W(112)、W(110)又はW(100)の先端を用いてもよい。
【0451】
更なる例として、一部の実施態様においては、イオン顕微鏡(例えば、気体電界イオン顕微鏡)が、半導体業界に関連する試料(例えば、ウェーハ試料)等の試料分析のため、該顕微鏡をインラインで使用させるのに適した構成部品を含むことができる。特定の実施態様においては、例えば、標準的な大きさの半導体ウェーハのため、高速ロードロックを用いてイオン顕微鏡を自動化することができる。一部の実施態様においては、そのシステムが、イオン顕微鏡の下に高速で試料ウェーハの一部を置くことが可能なウェーハ台を含んでもよい。また、イオン顕微鏡は、計測パターンの高速ラスタ化が可能な走査システムを含んでもよい。任意に、イオン顕微鏡はまた、電荷中和機構を含み、試料の帯電を低減することができる。また、イオン顕微鏡は、作動距離の調整のため、ウェーハ高さ制御モジュールを含んでもよい。特定の実施態様においては、そのシステムが、個々のダイ(例えば、およそ50mmの長さを有する)を画像化することができるように構成され得る。
【実施例】
【0452】
以下に示す実施例は、説明に役立つものであって、制限するものとして意図していない。
【0453】
1.
単結晶W(111)(直径250μm)で形成された長さ25mmの放出線をFEIカンパニー社(ヒルズバロ、OR)から得た。該放出線を3mmの長さに整えて、取っておいた。V形加熱線を、以下のように準備した。長さ13mmの多結晶タングステン線(直径180μm)をグッドフェロウ社(デボン、PA)から得て、蒸留水中、超音波処理で15分間洗浄し、炭素残渣及び他の不純物を除去した。該線をその中間点で曲げて115度の角度を形成した。「V」の頂点に近い領域を電気化学的にエッチングして、1Nの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中、印加AC電位1Vと周波数60Hzで約15秒間溶接するための準備をした。その後、加熱線をエッチング溶液から取り出し、蒸留水で洗い流し、乾燥させた。
【0454】
V形加熱線を固定具に取り付けて、該線の末端が同一平面上のままであることを確実にした。上記放出線を加熱線のV形頂部にスポット溶接した。次に、加熱線の両端を、
図11A及び11Bに示された種類の支持基盤の二つの柱にスポット溶接した。該支持基盤をAEIコーポレーション社(アービン、CA)から得た。次に、得られた組立体を、蒸留水中、超音波で洗浄し、乾燥させた。
【0455】
支持基盤上に放出線を取り付けて、支持基盤を洗浄した後に、以下のような電気化学処理によって、放出線の端部をエッチングした。最初、レジスト材料(例えば、レブロンコーポレーション社(ニューヨーク、NY)から得られるマニキュア液)を放出線の長さ0.5mmに塗布し、該線の自由端から始めた。清浄ガラスの顕微鏡用スライドの表面に少量のレジストを置き、その線を10回レジスト溶液中に浸漬させて、各浸漬の間でレジストをわずかに乾燥させた。レジストの上部境界が円の形状であることと、該円の面が線の軸と垂直に維持されることとを確実にするように注意した。レジスト材料中に放出線端部の最後の浸漬に続いて、線を空気中で1時間乾燥させた。
【0456】
次に、レジストで被覆された放出線を取り付けた支持基盤をエッチング固定具に取り付け、ここで、該エッチング固定具は、(a)支持基盤を上下に移動させるための平行移動装置、(b)皿、及び(c)皿にまで及ぶ望ましくない化学反応を最小限に抑えるためにステンレス鋼で形成された対極を含んだ。エッチング溶液が対極と接触するレベルに、エッチング溶液で皿を充填した。エッチング固定具の皿に、約150mLの溶液が存在していた。支持基盤の配向を調整し、放出線の長手方向軸が垂直方向(例えば、平行移動装置が支持基盤の平行移動を提供する方向)とほぼ平行であることを確実にした。次に、露出した放出線がちょうどエッチング溶液に接触するまで、平行移動装置を用いて支持基盤を皿に向かって下げた。エッチング固定具に取り付けられた高い倍率のカメラによって、レジスト層やエッチング溶液表面を容易に見ることを可能にし、該溶液表面に対して放出線の正確な位置決めを可能にした。
【0457】
次に、エッチング溶液中に上記線を更に0.2mm下げた。この位置において、放出線のレジストで被覆した部分を完全にエッチング溶液中に浸漬させた。
【0458】
エッチング溶液は2.5MのNaOH水溶液150mLで構成された。湿潤を容易にするため、界面活性剤(PhotoFlo 200、イーストマンコダック社製、ロチェスター、NY)を1滴、エッチング溶液に加えた。また、エッチング処理の間、磁気攪拌機を用いてエッチング溶液を穏やかに攪拌する手段を用いた。
【0459】
支持基盤の柱と対極に外部電源を接続した。外部電源の電圧最大振幅、パルス継続時間及び波形を制御し、エッチング固定具に特定のエッチング条件を提供することができた。
【0460】
周波数60Hzでの連続ACパルスを放出線に印加して、電気化学エッチング処理を容易にした。最初に、継続時間580msで振幅10Vの100パルスを総時間5分かけて印加した。印加パルスの効果は、エッチング処理の速度を増大させることであった。溶液に浸漬しているがレジスト材料によって被覆されていない放出線部分を、エッチング除去し始めた。フォトレジスト材料の端の上にある放出線の小さな被覆されていない領域のみを溶液に浸漬させるように、放出線を配置したので、この領域における放出線の局所的なエッチングが観察された。電気化学反応が進むにつれて、この領域における線の直径が、エッチング処理によって狭くなり始めた。
【0461】
次に、外部電源のパルス継続時間を325msに調整し、この継続時間の60パルスを総時間5分かけて印加した。更に、これらのパルスは、電気化学エッチング処理を促進し、非常に小さな直径を有する放出線のエッチング領域をもたらした。
【0462】
最後に、外部電源のパルス継続時間を35msに調整し、エッチングが完了して放出線のレジストで被覆した部分がエッチング溶液中に脱落するまで、個々のパルスを放出線に印加した。次に、支持基盤をエッチング固定具から取り外し、蒸留水で洗い流し、窒素流れを受けて乾燥させた。
【0463】
次に、SEMによって放出線(依然として支持基盤時に取り付けられている)を調べて、エッチングされた先端が適した形体を有していることを検証した。5keVで作動し3nmのプローブサイズを有するAMRAY型1860SEMを用いて、放出線の先端を画像化した。手動の傾き及び回転台を具えた試料マニュピレータ上で、SEMの試料領域に支持基盤を設置した。その源の画像が幾つかの異なる観測視点と倍率から得られ、先端がほぼ正確に付形されたことを検証した。
【0464】
次に、SEM画像を用いて、先に説明されたように線の先端頂部の平均完全円錐角度、平均先端半径及び平均円錐方向の特性を明らかにした。それらの測定に用いる画像を、65,000×の倍率で且つ放出線の軸に対し直角に配向した観察軸に沿って撮影した。SEM試料マニピュレータを用いて放出線の傾きを調整し、放出線が観察軸に対して直角に配向することを確実にした。先端の円錐角度、円錐方向及び半径の平均測定を行うには、SEM試料マニピュレータを用いて、連続する画像間で先端を(放出線の軸周り)45°回転させた。これは、それぞれ異なる視点から八枚で一組の画像を与えて、その後、該画像を用いて先端の円錐角度、曲率半径及び円錐方向を決定した。
【0465】
八つの視点の画像の内の四つを
図37A〜37Dに示す。SEM画像のそれぞれをビットマップ形式で電子化し、次いでMathCADソフトウェアパッケージ(PTCインコーポレイテッド社、ニーダム、MA)によって開発されたカスタムアルゴリズムを用いて分析した。最初、ガウス畳み込みアルゴリズムを適用することで、それぞれの画像を平滑化し、画像雑音、特に画像化中に発生するSEMの振動による雑音を低減した。次に、閾値の強度値に基づいたフィルタリング工程を各画像に適用し、タングステンの先端と黒色背景との境界を強調させた。次に、先端に対応する画像画素と黒色(例えば、ゼロ強度)背景に対応する画像画素間に境界を形成する一組の非ゼロ強度の点(X、Y)として、各画像の先端の境界を決定した。先端の図の内の一つについての一組の点(X、Y)を
図38に示す。先端の八枚の斜視図のそれぞれについて、同様の組の境界点を決定した。
【0466】
与えられた境界曲線の傾きを計算するに先立って、該曲線に平滑化アルゴリズムを適用し、曲線の局所勾配が雑音や他の小さな信号変化に比較的鈍感であることを確実にした。生データ(X、Y)を適合させることからなる平滑化アルゴリズムは、四次多項式を示し、先端の形状を十分に説明することが分かった。平滑化アルゴリズムの効果は、頂部位置の両側で、この曲線の一次導関数が形状の小さな変化によって過度に影響されないことを確実にすることであった。
【0467】
平滑化工程に続いて、差分アルゴリズムを用いて各図についての境界曲線に沿った各点Xで、傾きdY/dXを計算した。
図39は、
図38に示す境界曲線のXに応じた境界曲線に沿う点にて計算した傾きのグラフを示す。
【0468】
先端の特定の図については、傾きがゼロ値を得る図に対応する境界曲線上の位置を、先端頂部であると特定して、標識X
頂部を与えた。先端頂部に最も近い、境界曲線の傾きが1の値を得る点(X、Y)に対応する境界曲線上の位置に標識X
+1を与えた。先端頂部に最も近い、境界曲線の傾きが-1の値を得る点(X、Y)に対応する境界曲線上の位置に標識X
-1を与えた。
【0469】
次に、それらの測定点を用いて先端の幾何学的パラメータを決定した。特定の図における先端の左側半径をX
+1とX
頂部間の差の絶対値に1.414を掛けて計算した。特定の図における先端の右側半径をX
-1とX
頂部間の差の絶対値に1.414を掛けて計算した。次に、左側半径の値と右側半径の値に基づき、特定の図における先端の曲率半径を左側半径の値と右側半径の値の平均として計算した。
【0470】
右側半径、左側半径及び先端の曲率半径の計算を、先端の八枚の斜視図のそれぞれについて繰り返した。次に、先端の全ての図における先端の曲率半径測定の平均として、平均先端半径を計算した。
図37A〜37Dに示す先端については、平均先端半径が62nmであると決定した。
【0471】
また、先端の左側半径と右側半径全ての標準偏差を計算し、平均先端半径の百分率として表した。
図37A〜37Dに示す先端については、偏心度が11.9%であると決定した。
【0472】
また、八枚の斜視図それぞれにおける先端の円錐角度を決定した。各図に対応する境界曲線においては、境界曲線上の左側接点と右側接点が、先に説明したようにY方向に沿って測定すると、先端頂部の左側と右側の先端頂部からそれぞれ1μmの位置にあった。次に、特定の図における先端の左側円錐角度を、左側接点での境界曲線の接線とY軸に平行で左側接点を貫通する線との間の角度として決定した。特定の図における先端の右側円錐角度を、右側接点での境界曲線の接線とY軸に平行で右側接点を貫通する線との間の角度として決定した。最後に、左側円錐角度と右側円錐角度の大きさの合計として、完全円錐角度を決定した。
【0473】
次に、先端の八枚の斜視図から先端の完全円錐角度の八つの測定の平均を計算することで、先端の平均完全円錐角度を決定した。
図37A〜37Dに示す先端については、例えば、平均完全円錐角度が34.5°であると決定した。
【0474】
先端の特定の図については、左側円錐角度と右側円錐角度の大きさの差の絶対値の半分として、円錐方向を計算した。先端の八つの図のそれぞれについて、この決定を繰り返すことで、先端の円錐方向の八つの測定を得た。次に、先端の平均円錐方向を、それら円錐方向の八つの測定の平均として計算した。
図37A〜37Bに示す先端については、平均円錐方向が2.1°であると決定した。
【0475】
平均先端半径、半径偏心度、平均円錐角度及び平均円錐方向の測定に基づいた一組の基準を用いて、与えられた先端がHeイオン顕微鏡の使用に受け入れられるかどうかを決定した。一般に、それらの基準は以下の通りであった。測定した平均円錐角度が15°〜45°であり、平均先端半径が35nm〜110nmであり、先端曲率半径の測定の標準偏差が30%未満であり、平均円錐方向が7°未満である場合には、先端が受け入れられた。最終的に、
図37A〜27Dに示す先端は各基準を満たしたので、この先端は、Heイオン顕微鏡の使用に認められた。
【0476】
先端の幾何学的特徴の検証後、特注のFIMで先端を検査した。該FIMは、先端を支持する支持組立体用の取付け領域と、先端をバイアスするための高電圧電源と、先端に近接した抽出部と、先端からのイオン放出パターンを記録するための検出器とを含んだ。
【0477】
抽出部は、先端から5mmの距離をあけて配置し、10mmの開口部を有した。抽出部を外部接地部に接地した。検出器は、組み合わせマイクロチャンネルプレート(MCP)及び画像増強管(バーレエレクトロ−オプティクスインコーポレイテッド社製、スターブリッジ、MA)を抽出部から75mmの位置に配置した。
【0478】
先端を含む支持組立体をFIMに設置し、FIM室を1×10
-8Torrのバックグラウンド圧力に排気した。冷却剤として液体窒素を用いて先端を77Kに冷却した。温度平衡の後、その源を900Kに5分間加熱し、処理中に先端上に形成された凝縮物や他の不純物を脱着させた。先端が溶接された加熱線に電流を印加することで、先端の加熱を達成した。一定のパワー能力を備える電源(Bertan型IB−30A、スペルマンハイボルテージインコーポレイテッド社製、ハウパージ、NY)を用いて電流を印加した。光高温計(パイロコーポレイション社製、ウィンザー、NJ)を用いて、温度測定を行った。
【0479】
その後、先端を再度77Kに冷却させて、FIMの抽出部を接地し、先端を該抽出部に対して+5kVにバイアスした。FIM室に、1×10
-5Torrで高純度Heガス(純度99.9999%)を導入した。先端から出るHeイオンに対応するHeイオン画像が検出器で観察されるまで、先端のバイアスを徐々に+29kVまで漸進的に増大させた。FIM放出パターンは、先端表面上の約300個の原子に相当した。そのFIMパターンに基づき、先端の単結晶組成とW(111)配向を検証した。
【0480】
次に、先端を研磨し、先端頂部に末端原子三量体を得た。FIM室のバックグラウンド圧力が1.2×10
-8Torr未満になるまで、ヘリウムガスをFIM室から排出した。次に、上記したように加熱線への電流の印加によって、先端を1500Kの温度に2分間加熱した。1×10
-5Torrの圧力で先端の近傍におけるFIM室に酸素ガスを導入した。2分後、先端の温度を1100Kに下げた。1100Kで2分後、酸素の供給を止めて、先端を約77kに冷却させた。冷却中、酸素の供給を止めてから約15分で、FIM室のバックグラウンド圧力が1.2×10
-8Torr未満になるまで、残りの酸素ガスをFIM室から排出した。
【0481】
液体窒素の温度に冷却した時点で、上記のように抽出部をバイアスし、先端を再び抽出部に対して+5kVにバイアスした。Heガスを1×10
-5Torrの圧力にてFIM室に導入し、再度、上記したようにFIMを作動させ、先端のHe放出画像を得た。先端のFIM画像が先端での約+18kVのバイアス電位にて検出器により取り込まれるまで、先端の電圧を漸進的に増大させた。
【0482】
観察したFIMパターンは、吸着原子(先端頂部で所望の三個の原子三量体構造に追加される余分の原子)を含んだ。+18kVの先端バイアス電位での電界蒸発によって、吸着原子を緩徐に除去した。電界蒸発の間、先端の画像を定期的に取り込み監視して、電界蒸発処理を中止するときを決定した。先端頂部での原子三量体の明瞭なFIM画像が観察されるまで、吸着原子を一つずつ取り除いた。また、原子三量体に加えて、三角錐の隆起が明瞭に観察された。
【0483】
更なる先端の電界蒸発によって、原子三量体を緩徐に取り除いた。+18kVを超えて先端バイアスを緩徐に増大させることで、三量体原子を一つずつ取り除き、検出器によって記録したFIM画像で観察される丸い先端をもたらした。
【0484】
更に、先端バイアス電位を+28kVまで増大させた。この処理の間、先端原子の電界蒸発を継続した。+28kVのバイアス電位では、他の原子三量体が先端頂部で得られた。第二の三量体のFIM画像を
図40に示す。第二の三量体を得た後、先端バイアス電位を下げて、FIM放出パターンの最大角度強度を達成した。このことは、+23kVの先端バイアスにて起きた。先端バイアスを調整することで、最高角度強度を決定して、FIM放出パターンにおいて選択される原子の最も大きな観察輝度を得た。先端の電位バイアスを調整しながら、三量体からのHeイオン電流を測定することで、最大角度放出強度が起きたバイアスを検証した。Heイオンビームの経路に配置したファラデーカップを用いて、Heイオン電流を測定した。
【0485】
次に、+28kVを超えて先端のバイアス電位を緩徐に増大させて、先端頂部から原子を電界蒸発することで、先端をほぼ球状の末端形状に鈍化させた。他の原子三量体が+34kVのバイアス電位の先端表面で得られるまで、電界蒸発を継続した。先端の再構築手段の再現性を検証するため、研磨処理を二回より多く繰り返して、先端頂部に新しい原子三量体を得た。二つの連続する三量体の再構築の後、ヘリウムガスの供給を止めて、印加した先端バイアスを除去し、先端を室温に温めて、緩徐にFIM室の圧力を大気圧と等しくした。ヘリウムイオン顕微鏡で使用するまでの2週間、支持組立体に取り付けられたままの先端を棚で保存した。
【0486】
図1及び
図5に示すシステムと同様なヘリウムイオン顕微鏡システムに、上記先端を含む支持組立体を設置した。システムの要素は、以下のように構成された。抽出部は、先端から1mmの位置に配置され、直径3mmの開口部を有した。イオン光学機器の第一レンズを抽出部から30mmの距離に配置した。第一レンズを通過した後、イオンは、四重極電極として構成される軸合わせ偏向器を通過した。直径20μmの開口部を有する絞りは、更にイオンの経路に沿って配置され、イオンビームの一部を選択的に遮った。イオン軌道の交差点を絞りの前50mmの距離に配置した。八重極電極として構成される非点収差補正器を絞りの後に置いて、イオンビームの非点収差を調整した。八重極電極として構成される走査偏向器を非点収差補正器の後に配置し、試料表面に亘ってイオンビームのラスタ化を可能にした。第二レンズを絞りから150mmの距離に配置し、該第二レンズを用いて試料表面にイオンビームを集束させた。第二レンズは、平頭の直角円錐として付形され、90°の完全円錐角度を有した。
【0487】
最初に、イオン顕微鏡システムを排気したので、先端領域の基底圧力は約2×10
-9Torrであった。液体窒素を用いて、先端を約80Kに冷却した。抽出部を接地させ、次いで抽出部に対して+5kVのバイアスを先端に印加した。
【0488】
加熱線に8Wの電力を印加することによって、先端が目に見えて発光するまで(約1100Kの先端温度に相当する)、先端を加熱した。発光先端から放出される光子は、イオン光学機器の長手方向軸と垂直な平面に対して45°傾斜した鏡を用いて、イオン光学機器の側面開口部から観察された。このため、該鏡は、軸合わせ偏向器の真下の位置で、イオン鏡筒内の側面開口部を通して、イオン光学機器に導入された。ほぼイオン光学機器の長手方向軸に沿って発光先端を向けるまで、先端を繰り返し傾けて移動させた。先端の上記長手方向軸との適切な軸合わせは、発光先端が円形の点源として現れるときに達成された。先端が棒状に現れた場合、先端の軸合わせを誤った。
【0489】
抽出部に対して+5kVの電位バイアスで先端を維持しながら、先端を冷却させた。先端を液体窒素温度に冷却した時点で、1×10
-5Torrの圧力にてHeガスを先端領域に導入した。上記したように、イオン顕微鏡システムはSFIMモードで作動し、先端のHeイオン放出パターンを示す画像を作り出した。画像は、原子精度で先端の形状を表した。軸合わせ電極を用いて、先端から発生するイオンビームを絞りの表面に亘ってラスタ化した。鋸歯状電圧機能を各軸合わせ偏向器に適用し、顕微鏡システムの共通の外部接地部に対して150Vの鋸歯状最大電圧機能で、10Hzのフレーム率でのラスタ化を達成した。ラスタパターンは、イオン光学機器の軸に対して横断する二つの直交方向のそれぞれにおいて256点を走査した。この画像化モードでは、非点収差補正器及び走査偏向器を使用しなかった。
【0490】
絞りを通過するイオンを検出するため、銅の試料を第二レンズの下に設置し、MCP検出器を正にバイアスして(共通の外部接地部に対して+300V)、試料と該試料に入射するHeイオン間の相互作用によって銅試料から出る二次電子を測定した。検出器を試料から10mmの距離に配置して、試料の平面と平行に配向させた。
【0491】
収集システムは、各ラスタ点での検出器の信号をサンプリングして、モニタで表示する先端のSFIM画像を作り出した。画像化を容易にするため、イオン鏡筒中の第一レンズの電位を先端バイアスの77%に設定した。次に、先端のバイアスを増大しながら、SFIM画像をほぼ一定の倍率及び強度で維持した。SFIM画像で観察する間、先端のバイアスを緩徐に増大させて、望ましくない吸着原子を排除し、その頂部に原子三量体を有する先端を作り出した。更に先端バイアス電位を増大させて、先端原子の電界蒸発を起こすことで、この三量体を取り除いた。新しい原子三量体が+23kVの印加先端電位で先端頂部に形成されるまで、電界蒸発を継続した。結果得られるこの先端のSFIM画像を
図41に示す。
【0492】
軸合わせ偏向器、非点収差補正器、走査偏向器及び第二レンズをオフの状態で(例えば、顕微鏡システムの共通の外部接地部に対してゼロ電位で)、三量体の内の一つの原子を選択し、第一レンズの強度を100V単位で調整しながら、先端を傾けて平行移動させた。顕微鏡システムをFIMモードで作動させて、検出器は、先端のFIM放出画像を集めた。第一レンズの強度を調整するときにFIM画像上の先端の中心位置が画像によって変化しないようになるまで、繰り返し先端を傾けて平行移動させた。
【0493】
次に、絞りを適切な位置に設置し、軸合わせ偏向器に印加される電位を調整して絞りでのイオンビームの位置を制御した。絞りを通して伝達するイオンビームの部分を検出器で画像化し、その検出器の画像を用いて軸合わせ偏向器を繰り返し調整した。
【0494】
走査偏向器を用いて、絞りを通して伝達するイオンビームを試料表面に亘ってラスタ化した。試料(品番02299C−AB、ストラクチャープローブインターナショナル社製、ウェストチェスター、PA)の表面上の認識できる高コントラスト特徴部(銅格子)を、第二レンズの下にあるイオンビームの経路に設置し、上記した構成を用いた検出器によって、該特徴部の二次電子画像を測定した。
【0495】
第二レンズの強度を調整し、試料表面にイオンビームを大体集束させた。該第二レンズに印加された電位バイアスは、共通の外部接地部に対して約15kVであった。検出器によって記録した試料の画像から、焦点の質を視覚的に評価した。第二レンズの強度を緩徐に調整し(1Hzの周波数及び第二レンズの作動電圧の約0.1%の振幅変調で)、特徴部の位置ずれを観察することで、イオンビームの第二レンズの軸に対する軸合わせを評価した。軸合わせ偏向器の電圧を調整することで、最終レンズのビーム軸合わせを最適化した。その軸合わせは、検出器により測定した画像の中心位置が第二レンズの強度を調整する間にほとんど変化しないときに最適化された。
【0496】
次に、第二レンズの強度を調整することによって、高い倍率で試料を画像化した結果、試料の視野は約2平方μmであった。非点収差補正器の制御を調整することで、焦点の非対称性を最小限に抑えた。全方向での縁の画像を観察し、特に縁の鮮明さを観察しながら、この制御を調整した。非点収差補正は、焦点画像の鮮明さが全ての方向で同一であるときに完了した。典型的に、非点収差補正器に、わずか30ボルトを印加し、この条件を達成した。この時点で、ヘリウムイオン顕微鏡は完全に作動できた。
【0497】
作動可能な顕微鏡を用いて、様々な試料を画像化した。二次電子を測定することで記録された試料画像を
図42及び43に示す。
【0498】
画像化条件は、広範なビーム電流(100pA〜1fA)を含んだ。幾つかの方法でビーム電流を制御した。最初に、電動の絞り機構を用いて、異なる直径の穴を具える異なる絞りを所定の位置に置いた。絞り機構は、直径が5μm〜100μの範囲の絞りを含んだ。第二に、第一レンズの焦点強度を調整し、ビーム交差をイオン光学機器の絞り平面に近づけることで、大きなイオン電流が試料に達した。反対に、第一レンズの焦点強度を調整し、絞り平面から更に該ビームを移動させることで、小さなイオン電流が絞りを通過した。第三に、先端領域でのヘリウムガスの圧力を増大又は低減し、イオンビーム電流をそれぞれ増大又は低減した。
【0499】
典型的に、ビームエネルギーは最適角度強度に選択され、典型的には、ビームエネルギーは17keV〜30keVの範囲内であった。ビームエネルギーは、時間と共に先端の形状変化に応じて変化した。
【0500】
イオン顕微鏡で調べた試料の種類に従って、使用する検出器の種類や検出器の設定を選択した。試料の二次電子の画像を測定するため、共通の外部接地部に対して約+300Vにバイアスした金属格子と共にET検出器を用いた。ET検出器内部のシンチレータを外部接地部に対して+10kVにバイアスし、内部PMTの増加を調整して、飽和せずに可能な限り大きな信号を作り出した。
【0501】
また、MCP検出器(バーレエレクトロ−オプティクス社製、スターブリッジ、MA)を用いて、試料から二次電子及び/又は散乱Heを検出した。MCP格子、正面及び背面は、それぞれが外部接地部に対してバイアスされることができた。MCPの背面をその前端に対して正にバイアスすることで、検出器の増加を達成した。典型的な増加電圧は1.5kVであった。背面に隣接したコレクタ板を背面に対して+50Vにバイアスした。コレクタ板からの検出信号は、大きな正の電圧に重ねられる小さな変動電流の形であった。二次電子の収集については、MCPの前面及び格子を+300Vにバイアスした。散乱Heの収集については、前面及び格子を-300Vにバイアスした。
【0502】
必要に応じて、各試料についての最適な画像化条件に、ラスタ速度を調整した。1画素当たりの滞留時間は、100ns〜500μsの範囲であった。短い滞留時間のため、多重走査を平均化することで、雑音を低減した。このことは、連続ライン走査や連続フレーム走査で行われた。
【0503】
図42に示す画像は、ケイ素基板上の複数のカーボンナノチューブの画像である。その画像は、ナノチューブの表面から二次電子を検出することで得られた。試料から8mm、イオンビームからの軸外15mmの距離にET検出器を配置し、試料平面に対して20°の角度に配向させた。Heイオンビーム電流は0.5pAであって、平均イオンエネルギーは21keVであった。イオンビームを1画素当たり200μsの滞留時間でラスタ走査し、全画像捕捉時間は200sであった。画像の視野は4μmであった。
【0504】
図43に示す画像は、ケイ素基板上のアルミニウム柱の画像である。その画像は、ナノチューブの表面から二次電子を検出することで得られた。上記した種類のMCP検出器は、外部接地部に対して+300Vにバイアスされた格子及び前面を具え、試料から10mmの距離に配置され、試料平面と平行に配向された。Heイオンビーム電流は0.5pAであって、平均イオンエネルギーは24keVであった。イオンビームを1画素当たり200μsの滞留時間でラスタ走査した。試料表面の視野は1μmであって、1Vの最大電圧を走査偏向器に印加することで得られた。
【0505】
ヘリウムイオン顕微鏡におけるこの先端を用いた操作は、イオン源を使用可能にするのにシステムをガス抜きする必要も全くなく、数週間に亘って継続した。三量体原子を取り除くにつれて、意図的に又は通常の使用により、先端の末端形状が
図44に示すSFIM画像に表されるように更に球状になった。そのままの位置での角錐再構築(研磨)は、必要に応じて、先端を研磨するために最初にFIMで行ったのものと同一の熱及び酸素構築処方を用いることによって行われた。一般に、各再構築処理は5分未満の時間を費やし、そうでなければ、システムはこの数週間に亘って使用可能であった。全体としては、先端は8回を越えて再構築された。先端頂部での再構築原子三量体の画像を
図45に示す。
【0506】
2.
例1に記載の手順に従い、W(111)先端を支持組立体に取り付けて、電気化学的にエッチングした。先端のSEM画像を
図46に示す。例1の手順に従い、先端の幾何学的特性決定を行った。この先端については、平均先端半径が70nmであることを決定した。先端は、例1の基準に基づいて使用が認められた。
【0507】
先端の幾何学的特性が容認できる範囲内であることを検証した後、エッチングした先端を含む源の組立体を、例1に記載のFIM中に設置した。FIMの構成は、以下に示すところを除いて、例1に記載の構成と同一であった。先端上での電位バイアスを、抽出部に対して、+21.8kVにまで緩徐に増大させた。先端原子の電界蒸発は、電位が増大するにつれて発生した。+21.8kVに達した後、先端の電位を+19.67kVに下げた。
図47に示す先端のFIM画像は、先端がこの電位で維持された状態で得られた。この画像を用いて、先端の単結晶構造や正確な配向を検証した。
【0508】
次に、先端を研磨し、その頂部に原子三量体を作り出した。ヘリウムをFIM室から排出し、4.3Aの定電流を先端に20秒間印加することで先端を加熱した。FIM鏡筒内に設置され、鏡筒軸に沿って伝搬する光を鏡筒の側面開口部に向け直すように角度をつけた傾斜鏡を用いて、先端を観察した。発光(例えば、先端から放出される光子)が肉眼で見えなかったので、先端を5分間冷却させた。次に、4.4Aの定電流を先端に20秒間印加することで、先端を加熱した。発光が肉眼で見えなかったので、先端を5分間冷却させた。次に、4.5Aの定電流を先端に20秒間印加することで、先端を加熱した。発光が肉眼で見えなかったので、先端を5分間冷却させた。次に、4.6Aの定電流を先端に20秒間印加することで、先端を加熱した。この温度で、発光が先端から明確に見えた。従って、先端の発光を誘発するのに必要な電流が4.6Aであることを確証した。次に、その源を5分間冷却させた。
【0509】
次に、先端からの電子放出電流を監視しながら、負のバイアスを印加した。先端から50pAの電子放出電流が観察されるまで、バイアスをますます負にした。この電流での先端バイアスは、-1.98kVであった。このバイアスを先端に印加したままの状態で、4.6Aの加熱電流を先端に印加した。約20秒後に先端の発光を再び観察した。先端の発光が観察された後に、先端の加熱を更に10秒延長した。その後、先端に印加されるバイアス電位と加熱電流を先端から排除し、先端を液体窒素の温度に冷却させた。
【0510】
先端が冷却された時点で、抽出部に対して+5kVの正のバイアスを先端に印加した。先端の近傍におけるFIM室に、1×10
-5Torrの圧力でHeガスを収容できた。例1に記載の通り、先端頂部のFIM画像を得た。バイアスが増大するにつれて、FIM画像はより明確に見えた。
図48に画像は、+13.92kVの先端バイアスで観察された。その画像は、原子三量体に対応する角錐の隆起や明るい中央頂部を示す。
【0511】
先端上での放出原子の一部は、緩く結合した吸着原子であり、先端原子の電界蒸発によって電場強度を増大させて取り除かれた。更に、先端バイアスを増大させ、+21.6kVへの電界蒸発によって第一の三量体及び第二の三量体を取り除いた。この電位に達した後、先端バイアスを+18.86kVに下げて、
図49に示す先端のFIM画像を記録した。
【0512】
例1において確認した基準に基づき、先端を実行可能なものと確認して、FIMから取り外した。約一月ほど後に、例1に記載のように構成されたヘリウムイオン顕微鏡中に、上記先端を取り付けた。酸素ガスを使用しなかったことを除き、例1に記載の処理において、三量体を複数回再構築し、蒸発させた。代わりに、三量体の再構築処理は、(50pAの電子放射電流を作り出すため)先端に特定の負の電位を印加しながら、同時に加熱線に印加した4.6Aの電流で先端を加熱することに頼って、20秒間の加熱線の目に見える発光をもたらした。先端は、ヘリウムイオン顕微鏡内に残ったままで、先端を使用可能にするのにシステムをガス抜きする必要もなく4週間を超える使用を提供した。この期間、上記した負に印加した電位バイアスと加熱に関する手順を用いて、先端を複数回再構築した。先端の再構築三量体のSFIM画像を
図50に示す。
【0513】
この先端を具えるHeイオン顕微鏡を用いて記録した半導体試料の画像を
図51に示す。その試料は、酸化ケイ素基板の表面に堆積したアルミニウム金属の線を含んだ。該線の物質のそれぞれの上に、未知の塗料を堆積した。
【0514】
最大振幅1Vの走査電圧を走査偏向器に導入し、試料上に10μmの視野を作り出した。例1に記載したように、第一レンズと第二レンズの電位、軸合わせ偏向器及び非点収差補正器の電位を調整して、絞りを通過するHeイオンビームの部分を制御し、試料位置でのビーム焦点の質を制御した。三次元性質や側壁の詳細を明らかにするために画像化する間、試料を傾けて回転させた。
【0515】
図51に示す画像は、試料表面からの二次電子を測定することで記録された。MCP検出器は、試料から10mmの距離に配置され、試料表面と平行に配向された。MCPの格子及び前面は、共通の外部接地部に対して+300Vにバイアスされた。Heイオンビーム電流は4pAであって、平均イオンエネルギーは21.5keVであった。全画像収集時間は30sであった。
【0516】
この先端を用いて撮影した他の半導体試料の画像を
図52に示す。その試料は、金属で形成された表面特徴部を有する多層半導体素子であった。試料の入射Heイオンとの相互作用によって試料表面からでる二次電子を測定することで、画像を記録した。150ボルトの最大走査電圧を走査偏向器に印加して、試料表面に1.35mmの視野を作り出した。
【0517】
全体を覆う視点から試料を観察した。このことは、試料表面上に多くの特徴部を示す。その画像を記録するため、共通の外部接地部に対して+300Vにバイアスされた格子及び前面を具えるMCP検出器を試料から10mmの距離に配置し、試料表面と平行に配向した。Heイオンビームは15pAであって、平均イオンエネルギーは21.5keVであった。イオンビームを1画素当たり10μsの滞留時間でラスタ走査した。
【0518】
3.
この例の先端は、例2に記載の手順を用いて準備され、ヘリウムイオン顕微鏡において軸合わせした。例1の手順に従い、先端の幾何学的特性決定を行った。先端は、例1の基準に基づいて使用が認められた。
【0519】
直接測定又は外挿測定によって、既知のビーム電流及び既知の収集時間で試料の画像を得ることを可能とした。ビーム電流は、ピコ電流計(487型、ケースレーインスツルメンツ社、クリーブランド、OH)と連結したファラデーカップを用いて慎重に監視された。また、先端領域のHe圧力は、Baynard Alpert型電離ゲージ(バリアンバキュームインコーポレイテッド社製、レキシントン、MA)を用いて慎重に監視された。Heイオン電流が低すぎて正確に測定できない状況では(例えば、約0.5pA未満)、測定Heガス圧力に基づき、外挿によってイオン電流を決定した。典型的に、Heガス圧力とHeイオン電流は互いに直線的に比例し、その直線関係は先端ごとで一貫している。
【0520】
試料は、局所的特徴部を有する金格子試料であった(品番02899G−AB、ストラクチャープローブインターナショナル社製、ウェストチェスター、PA)。入射Heイオンに応じた試料表面からの二次電子放出を測定することで、試料を画像化した。画像を記録するため、直径40mmの環状山形タイプのMCP検出器(バーレエレクトロ−オプティクス社製、スターブリッジ、MA)を試料から10mmの距離に配置し、試料表面と平行に配向した。該検出器は、約1.8ステラジアンの立体角を取り、イオンビームに対して対称であった。
図66に示すように、検出器を第二レンズの底部に直接取り付けた。MCPの前面を共通の外部接地部に対して正(+300V)にバイアスし、更に(共通の外部接地部に対して)正にバイアスした内部金属格子(+300V)が存在した。
【0521】
平均イオンエネルギーは20keVであった。試料の画像をそれぞれ1pA、0.1pA及び0.01pAのビーム電流で測定し、それぞれ
図53、54及び55に示す。全画像収集時間は、それぞれ33秒、33秒及び67秒であった。
【0522】
最初の二枚の画像(
図53及び54)については、画像サイズが1024×1024画素であった。第三の画像(
図55)については、画像サイズが512×512画素であった。各画像においては、約2Vの最大走査電圧を走査偏向器に印加し、試料表面に20μmの視野を作り出した。
【0523】
散乱ヘリウムイオン及び/又は中性原子がそれらの記録画像にほとんど寄与していないことを確認するため、格子及びMCPのバイアス電位を-50Vに変更すると、信号は観察されなかった。それらの画像の雑音量は、同一の電流、同一の画素数及び同一の全収集時間での試料のSEM画像で達するであろう雑音量より低いものとして認められた。
【0524】
4.
支持組立体において、源の基盤に取り付けた二つの柱を
図56に示すように互いに前もって曲げたことを除き、例1に記載の方法によって、先端を製造し、支持組立体に取り付けた。その屈曲は、加熱線が非常に短い長さでかかることを可能にした。加熱線は、例1に記載されるように、180μmの直径を有する多結晶タングステン線であった。曲がった柱の場合、5mmの加熱線長さを用いた。短い加熱線の長さの利点は、線の長さが低減するにつれて、線の長さの剛性が増大することであった。例1に記載した通常の方法で、放出線を固定した。
【0525】
短い加熱線の増大した剛性は、同じ力を異なる二つの先端に加えることで観察された。ここで、一方の先端は、例1に記載した種類の支持組立体に取り付けられ、他方の先端は、
図56に示す支持組立体に取り付けられた。加えた力に応じた二つの先端の偏向を比較した。例1タイプの支持基盤と比較して、曲がった柱の支持組立体は、6倍小さい量で偏向された。その結果、曲がった柱タイプの支持組立体の固有振動数は、例1の支持組立体の固有振動数より約2.5倍高かった。高い振動数の場合、実質的に固有振動数以下の振動数で励起した際に、支持基盤及び先端が一体となって(例えば、無視できるほどの位相シフトで)移動する。Heイオン顕微鏡に組み入れる場合、曲がった柱の源の組立体における先端の比較的小さな振動は、イオン顕微鏡画像が先端の振動によってビーム着陸誤差等の相当な画像欠陥を有し得る可能性を低減した。
【0526】
異なる加熱線を使用したこと以外は、例1に記載の手順に従い、先端を用意した。この例で用いる加熱線は、例1の加熱線の直径より約25%大きい直径を有した。厚みのある加熱線は、一般に線の剛性が直径の増加と共に増大するので、振動運動に準拠することが少なかった。加えて、厚みのある加熱線は、タングステン−レニウム合金(タングステン74%、レニウム26%)から形成された。合金線は、例1のタングステンの加熱線より非常に高い電気抵抗を有しており、加熱線全体の抵抗が約0.5オームであることを測定した。適したタングステン−レニウム合金線は、オメガエンジニアリング社(スタムフォード、CT)から得られた。
【0527】
厚みのある加熱線は、先端を含む支持組立体の固有振動数を約1.5kHz(例1)から約2.2kHz(この例)に増大させた。Heイオン顕微鏡に組み入れる場合、この加熱線組立体を具える源の組立体における先端の比較的低い振動は、イオン顕微鏡画像が先端の振動によってビーム着陸誤差等の相当な画像欠陥を有し得る可能性を低減した。
【0528】
6.
加熱線が熱分解炭素のブロック(MINTEQインターナショナルパイロジェニックスグループ社製、イーストン、PA)に置換されたこと以外は、例1に記載の方法で、先端を形成した。源の組立体の柱を互いに曲げて、平行で平坦な表面を有するため機械加工した。放出線を取り付けるため、柱を引き離し、その柱の間に二つの熱分解炭素ブロックを挿入した。炭素ブロックの間に放出線を設置し、次にその柱を動かせるようにした。柱によって炭素ブロックに加えられた圧縮力は、支持組立体上の適切な位置にそのブロックと放出線を保持し、支持基盤に対する放出線の相対運動を阻止した。曲がった柱、二つの炭素ブロック及び放出線を含む支持組立体の一部を
図57に示す。
【0529】
炭素ブロックと放出線が圧縮状態にあるように、熱分解炭素ブロックの大きさを選択した。適切な位置に炭素ブロックがない場合、曲がった柱の間の隙間は1.5mmであった。炭素ブロックは、二つの曲がった柱間の方向に沿って、それぞれが700μmの長さを有した。放出線は250μmの直径を有した。
【0530】
熱分解炭素ブロックは、最大電気抵抗及び最小熱伝導率のために曲がった柱に対して配向された(例えば、熱分解炭素ブロックの炭素平面が柱を連結する線とほぼ垂直に配向された状態)。支持組立体の電気抵抗が1500Kで4.94オームあることが測定され、これは、例1の支持組立体の抵抗(0.56オーム)に比べて大きかった。先端を1500Kに加熱するのに必要な電力は(例1の先端を1500Kに加熱するのに必要な約11Wに比べて)6.4Wであった。先端は、加熱線がないことによって源の基盤に対し比較的強固に保持された。支持組立体の固有振動数は3kHzより大きかった。
【0531】
ヘリウムイオン顕微鏡に組み入れる場合、この源の組立体における先端(先端の両側に熱分解炭素ブロックを加えて圧縮力により適切な位置に保持された)の比較的低い振動は、イオン顕微鏡画像が先端の振動によってビーム着陸誤差等の相当な画像欠陥を有し得る可能性を低減した。
【0532】
7.
例1に記載の手順に従って先端を準備し、例1に記載したように幾何学的先端特性の特性決定を行った。先端は、例1の基準に基づいて使用が認められた。
【0533】
例1に記載の手順を用いて、先端をFIMで研磨した。次に、Heイオン顕微鏡内に先端を配置し、構成した。以下に示す構成の変更と共に、例1に記載のようにして、顕微鏡システムを構成した。
【0534】
顕微鏡システムは、試料の入射Heイオンとの相互作用によって試料から出る二次電子を測定するように構成された。MCP検出器(例3に記載の検出器と同様に構成された)を用いて、試料画像を記録した。
【0535】
試料はスチール製で、形状が球状で、均一の組成であった。Heイオンビーム電流は1.0pAであって、平均イオンエネルギーは20keVであった。イオンビームを1画素当たり10μsの滞留時間でラスタ走査した。走査偏向器に印加された最大電位(約100V)は、試料表面で約1mmの視野をもたらした。
【0536】
試料の画像を
図58に示す。画像は、試料についての合計二次電子放出量の測定を反映する。画像は、右端にて向上した二次電子放出量を示す。向上した放出量は、試料表面近くのイオンビームの増大した経路長さに起因した。ここで、二次電子は抜け出すことができる。二次電子放出量は大体sec(α)に比例して増大することが分かった。ここで、αは、入射Heイオンビームと試料表面の法線との間の角度を表す。
【0537】
第二試料の画像を
図59A及び59Bに示す。
図59Aに示す試料についての画像化条件は、この例における第一試料に関連して説明した通りであった。
【0538】
20keVのエネルギーで、Heイオンビームを有意に分岐する前に試料中深く貫入した(約100nm)。結果として、試料画像の縁は、比較的幅が狭く明るいエッジ効果(例えば、低減した縁での吹出し)を示した。例えば、
図59Aの画像をHeイオン顕微鏡から記録した一方で、
図59Bの画像を標準的なSEMを用いて記録した。両方の画像における信号は、二次電子の測定のみから生じる。
図59Bに示すSEMの画像においては、電子ビームエネルギー2keV及びビーム電流30pAの画像化条件下で、SEMを作動させた。
【0539】
Heイオン顕微鏡画像においては、明るい縁が目に見えて狭いことが観察されており、このことは、入射電子と比較して試料表面でのHeイオンの小さな相互作用の量の結果であると考えられる。Heイオンビームは試料内に入るので、Heイオンビームは相対的に平行なままである。対照的に、SEMの電子ビームは、試料表面に直接隣接した、かなり広範な相互作用の量をもたらす。結果として、入射電子ビームによって発生する二次電子は、表面上の公称電子ビーム位置から数ナノメートルに広がる表面領域から生じる。その結果、
図59A及び59Bの画像を視覚的に比較することで分かるように、SEMの明るいエッジ効果は、実質的に幅が広い。
【0540】
これら二つの画像の明るいエッジ効果を数値比較するため、各画像における共通の縁の特徴部に亘ってライン走査を行った。その結果を、それぞれ
図59A及び59Bに対応する
図67A及び67Bに示す。ライン走査の範囲は、50画素の長さで1画素の幅であった。縁の特徴部に対応するライン走査の強度ピークは、対応するHeイオン顕微鏡画像と比べて、SEM画像の幅が40%広い半値全幅(FWHM)を有する。上記したように、Heイオン顕微鏡画像で観察される低減した縁の幅は、電子に対して、試料表面でのHeイオンの小さな相互作用の量の結果である。
【0541】
8.
例1に記載の手順に従い先端を用意し、例1に記載のように幾何学的先端特性の特性決定を行った。先端は、例1の基準に基づき、使用が認められた。
【0542】
例1に記載の手順によって、先端をFIMで研磨した。次に、Heイオン顕微鏡内に先端を配置し、構成した。以下に示す構成の変更と共に、例1に記載のようにして、顕微鏡システムを構成した。
【0543】
顕微鏡システムは、試料の入射Heイオンとの相互作用によって試料から出る二次電子を測定するように構成された。MCP検出器(例3に記載の検出器と同様に構成された)を用いて、試料画像を記録した。
【0544】
各種試料を測定し、多くの材料の二次電子放出量を量的に決定した。各試料は、一片の平坦な物質からなり、試験された。試料上に2mmの距離に、低充填率の(例えば、大部分が空間の)金属スクリーンを配置した。ピコ電流計(ケースレーインスツルメントコーポレーション社、クリーブランド、OH)を用い、各試料表面中に溝を機械加工することで各試料に組み入れたファラデーカップと連結して試料の電流を測定した。
【0545】
各試験は、各試料中のファラデーカップ上に入射するようにHeイオンビームを位置決めすることで、Heイオン電流の測定を始めた。次に、共通の外部接地部に対して可変バイアスをスクリーンに印加しながら、Heイオンビームを試料に亘ってラスタ化して、試料からの二次電子を測定した。
【0546】
Heイオンビームの焦点を意図的にぼかし(100nmのスポットサイズ)、汚染又は帯電欠陥をいずれも最小限に抑えた。スクリーンのバイアス電位を徐々に-30Vから+30Vまで調整し、各バイアス電位について二次電子電流を測定した。各測定を、22.5keVのHeイオンビームエネルギー及び13pAのビーム電流で行った。
図60のグラフは、ケイ素試料の結果を示す。
【0547】
スクリーンが負にバイアスされたグラフの左側では、試料の入射Heイオンとの相互作用によって試料から出る二次電子の全てがケイ素試料に戻った。Heイオンビーム電流と二次電子電流がほぼ等しく、その結果、自由二次電子と散乱ヘリウムイオンの極少量を作り出した。スクリーンが正にバイアスされたグラフの右側では、試料の入射Heイオンとの相互作用によって試料から出る二次電子の全てが加速されて試料から離れた。測定した試料の電流は、Heイオン電流と二次電子電流の合計であった。それらの測定に基づき、平坦なケイ素試料に入射する22.5keVのヘリウムビーム入射(法線入射)についての二次電子放出量は、およそ(44-13)/13=2.4である。
【0548】
同様な測定条件下、様々な物質について、同様な測定手順を続けた。結果を以下の表に要約した。
【0549】
【表2】
【0550】
それらの比較的大きな二次電子放出量や異なる材料についての広範な値は、二次電子の検出に基づいたHeイオン顕微鏡画像が、異なる物質を区別するのに優れた方法を提供するという一般的な観測結果を説明する。一例として、
図61は、ヘリウムイオン顕微鏡を用いて記録した、基板表面上の十字形位置合わせ部の二次電子画像である。約1.5Vの最大振幅の走査電圧を走査偏向器に導入し、試料上に15μmの視野を作り出した。MCP検出器を試料から10mmの距離に配置し、試料表面と平行に配向させた。MCPの格子及び前面を共通の外部接地部に対して+300Vにバイアスした。Heイオンビーム電流は5pAであって、平均イオンエネルギーは27keVであった。そのイオンビームを1画素当たり150μsの滞留時間でラスタ走査した。
【0551】
図61Bは、同一の特徴部について撮影したSEMの二次電子画像である。実験的に決定した、電子ビームエネルギー2keV及びビーム電流30pAの最適な画像化条件下で、SEMを作動させた。他のビーム電流、走査速度及びビームエネルギーを試したが、それらはいずれも良好なコントラストを提供しなかった。
【0552】
Heイオン顕微鏡画像は、入射電子ビームに対し、入射Heイオンビームの二次電子放出量の大きな差のために、十字形の位置合わせ部を形成する異なる物質間で優れたコントラストを示す。
図61Aにおいては、十字形の位置合わせ部の二つの物質を視覚的に容易に区別することができる。しかしながら、
図61Bにおいて質的に観察されるように、二つの物質は、SEMの入射電子ビームについて、類似の二次電子放出量を有する。
【0553】
9.
例1に記載の手順に従い先端を用意し、例1に記載のように幾何学的先端特性の特性決定を行った。先端は、例1の基準に基づいて使用が認められた。
【0554】
例1に記載の手順によって、先端をFIMで研磨した。次に、Heイオン顕微鏡内に先端を配置し、構成した。以下に示す構成の変更と共に、例1に記載のようにして、顕微鏡システムを構成した。
【0555】
顕微鏡システムは、試料の入射Heイオンとの相互作用によって試料から出る二次電子を測定するように構成された。(例3に記載された)MCP検出器を用いて、試料画像を記録した。MCPの前端の前に格子があるので、MCPの前端を共通の外部接地部に対して+100Vにバイアスした。この構成において、MCPは、正にバイアスされた試料の領域で作り出される二次電子を除き、試料の入射Heイオンとの相互作用によって試料から出る二次電子のほぼ全てを収集することが可能であった。それらの二次電子は、試料から完全に放出されてMCPによって検出される代わりに、正の電圧バイアスによって、試料に戻ってきた。
【0556】
入射イオンビームから正の電荷で到着すること及び負の電荷(二次電子)で出発することのために、試料領域を正にバイアスした。与えられたHeイオンビーム電流についての試料上での誘導電圧バイアスの大きさは、試料の周辺部分に対して、試料の露出部分の静電容量及び/又は抵抗によって決まった。それらの違いは、試料の容量特性及び/又は抵抗特性に従い、試料の異なる領域について異なる二次電子の収集をもたらした。検出した異なる二次電子収集の違いは、Heイオン顕微鏡を用いて記録した試料の画像におけるコントラストを作り出した。このようにして、二次電子画像に基づき、試料の電気特性を決定した。
【0557】
図62においては、試料の二次電子画像を示す。試料は、絶縁基板の表面上に堆積した一組のアルミニウム線を特徴とした。最大振幅3Vの走査電圧を走査偏向器に導入し、試料上に30μmの視野を作り出した。Heイオンビーム電流は5pAであって、平均イオンエネルギーは26keVであった。イオンビームを1画素当たり100μsの滞留時間でラスタ走査した。
【0558】
試料画像は、一連の周期的で明るいアルミニウム線を示す。それらの明るい線の間の隙間においては、一連の暗い線が存在する。画像中の中央の明るい線は明確な境界を示し、該境界を越えて、線が暗くなる。試料の性質に基づき、明るい線は接地部への低い抵抗経路を有しているか、接地部に対して非常に高い静電容量を有しており、その結果、明るい線は、Heイオンビームの作用によって実質的にバイアスされなかった。
【0559】
暗い線は、Heイオンビームの影響を受けて正にバイアスされ、その結果、そこで作り出された二次電子は試料に戻ってきた。この効果が暗い線の容量特性又は抵抗特性によるものであるか否かを決定するため、Heイオンビームを受け、ある期間にわたって暗い線を観察した。この効果が実際は容量特性であった場合、線は時間が経つにつれてますます暗くなった。
【0560】
中央のアルミニウム線での明から暗への移行は、例えば、線上での電気の断絶の存在を示唆することができる。下側の線の明るい部分は、上側の線の暗い部分と完全な電気接触をとることができない。
【0561】
図63は、上記した測定の構成を用いて記録した他の試料の画像を示す。試料は、ケイ素基板上に銅で形成された線及び他の特徴部を含む。最小の特徴部は、文字(「DRAIN」)の形態である。各文字の上部は明るく見えるが、各文字の底部では暗く見える観察結果から明らかなように、その特徴部の正の電位バイアスは、画像取得を通して増大した。この画像のラスタ走査は上部から底部まで進めた。結果として、試料の表面特徴部上でのバイアス機構は、主として容量性である。
【0562】
10.
例1に記載の手順に従い先端を用意し、例1に記載のように幾何学的先端特性の特性決定を行った。先端は、例1の基準に基づいて使用が認められた。
【0563】
例1に記載の手順によって、先端をFIMで研磨した。次に、Heイオン顕微鏡内に先端を配置し、構成した。以下に示す構成の変更と共に、例1に記載のようにして、顕微鏡システムを構成した。
【0564】
顕微鏡システムは、試料の入射Heイオンとの相互作用によって試料から出る二次電子を測定するように構成された。(例3に記載された)MCP検出器を用いて、試料画像を記録した。MCPの前端の前に格子があるので、MCPの前端を共通の外部接地部に対して+300Vにバイアスした。この構成において、測定信号は、ほとんど全てが二次電子から生じた。このことは、MCPの増幅率を変えずにMCPの前端を-300Vにバイアスし、測定信号をほぼゼロに減少させることを観察することによって検証された。
【0565】
最大振幅3Vの走査電圧を走査偏向器に導入し、試料上に30μmの視野を作り出した。Heイオンビーム電流は10pAであって、平均イオンエネルギーは22keVであった。そのイオンビームを1画素当たり100μsの滞留時間でラスタ走査した。
【0566】
三つの明確な層を含む試料を画像化した。最上の金属層は、銅で形成されパターン形成した線で構成された。次の層は、誘電体で構成された。底層は、銅で形成された異なるパターン形成の他の層で構成された。試料の画像を
図64に示す。画像は、底部(内層面)の金属層に対応する灰色画像の特徴部に重なった、最上の金属層のパターンを明るい白色で示す。内層面金属層は、画像においてより薄暗く且つわずかにぼやけて見える。
【0567】
測定信号は、散乱Heイオンと中性He原子の双方によって試料表面で発生する二次電子の結果であった。この評価は、MCP及びスクリーンを負にバイアスして、信号がほとんど検出されないことに注目することによって検証された。試料の入射Heイオンとの相互作用によって試料から出る二次電子は、
図64の表面金属層の画像を作り出した。内層面金属層の画像は、試料中に入り込んで中性化することになる生成Heイオンである。中性He原子は内層面の層から散乱し、それらの一部分は、それらが出て行くことで二次電子を作り出す表面に戻る。このことは、内層面の特徴部のより薄暗くぼやけた画像を説明する。
【0568】
11.
例1に記載の手順に従い先端を用意し、例1に記載のように幾何学的先端特性の特性決定を行った。先端は、例1の基準に基づいて使用が認められた。
【0569】
例1に記載の手順によって、先端をFIMで研磨した。次に、Heイオン顕微鏡内に先端を配置し、構成した。以下に示す構成の変更と共に、例1に記載のようにして、顕微鏡システムを構成した。
【0570】
顕微鏡システムは、試料の入射Heイオンとの相互作用によって試料から出る二次電子を測定するように構成された。(例3に記載された)MCP検出器を用いて、試料画像を記録した。MCPの前端の前に格子があるので、MCPの前端を共通の外部接地部に対して+300Vにバイアスした。この構成において、測定信号は、ほとんど全てが二次電子から生じた。このことは、MCPの増幅率を変えずにMCPの前端を-300Vにバイアスし、測定信号をほぼゼロに減少させることを観察することによって検証された。
【0571】
最大振幅15Vの走査電圧を走査偏向器に導入し、試料上に150μmの視野を作り出した。Heイオンビーム電流は10pAであって、平均イオンエネルギーは21.5keVであった。そのイオンビームを1画素当たり100μsの滞留時間でラスタ走査した。
【0572】
画像化した試料は、溶接した一片のタングステンで構成された。タングステンをその融点を超えて加熱し、その後に冷却したことで、結晶粒の間に急激な境界を有する明確な結晶学的ドメインを形成した。試料の入射Heイオンとの相互作用によって試料から出る二次電子を測定することで、試料を画像化した。
【0573】
試料の画像を
図65に示す。画像は、明るい粒子と暗い粒子をはっきりと示す。この背景に重ねられたものは、幾つかの粒子にかかる明るい画像特徴部である。明るい特徴部は、表面の局所的な浮き出しパターンに対応しており、このことは、本願に開示のトポグラフィー効果によって二次電子の生成を向上させる。各種結晶粒の対照的な画像強度は、入射Heイオンビームに対して結晶ドメインの相対配向によるものであった。特定の粒子のタングステン格子を、Heイオンビームが低指数の結晶学的方向とほぼ平行に入るように配向した場合、表面での散乱確率は低いので、イオンビームは粒子の深くまで入り込んだ。結果として、物質の表面での二次電子放出量は比較的低く、画像中で粒子は暗く見えた。反対に、特定の粒子のタングステン格子を、Heイオンビームが高指数の結晶学的方向に入射するように配向した場合、粒子表面での散乱確率は高かった。結果として、物質の表面での二次電子放出量は比較的高く、画像中で粒子は明るく見えた。
【0574】
12.
例1に記載の手順に従い先端を用意し、例1に記載のように幾何学的先端特性の特性決定を行った。先端は、例1の基準に基づいて使用が認められた。
【0575】
例1に記載の手順によって、先端をFIMで研磨した。次に、Heイオン顕微鏡内に先端を配置し、構成した。以下に示す構成の変更と共に、例1に記載のようにして、顕微鏡システムを構成した。
【0576】
顕微鏡システムは、入射Heイオンに応じて試料から散乱したHeイオンと中性He原子を測定するように構成された。(例3に記載された)MCP検出器を用いて、試料画像を記録した。MCPの前端の前に格子があるので、MCPの前端を共通の外部接地部に対して-100Vにバイアスした。この構成においては、負に印加された電位バイアスによって、二次電子がMCPに達しない。MCPによって測定された信号は、MCPの前面に入射する散乱Heイオン及び中性He原子から生じる。
【0577】
最大振幅15Vの走査電圧を走査偏向器に導入し、試料上に150μmの視野を作り出した。Heイオンビーム電流は10pAであって、平均イオンエネルギーは21.5keVであった。そのイオンビームを1画素当たり100μsの滞留時間でラスタ走査した。
【0578】
画像化した試料は、例11でも調べたタングステンを溶接した試料であった。これまでのように、溶接したタングステンは、粒子間に急激な境界を有する明確な結晶学的ドメインを含んだ。
【0579】
MCPに入射するHe原子とHeイオンの存在量を検出することで、試料を画像化した。この測定手順で得られた試料の画像を
図68に示す。画像は、明るい粒子と暗い粒子の両方を示す。特定の結晶粒について、該粒子のタングステン格子を、Heイオンビームが比較的低指数の結晶学的方向に沿って入射するように配向した場合、粒子表面にて散乱するHeの確率は低かった。結果として、散乱が起こる前に、イオンは粒子の深くまで入り込んだ。結果として、Heイオン(又はHeイオンが試料の電子と化合したときに生成するHe中性原子)は、試料から出てMCP検出器により検出される可能性が低い。記録した画像中で、それらの特性を有する粒子は暗く見えた。
【0580】
反対に、特定の粒子のタングステン格子を、Heイオンビームが比較的高指数の結晶学的方向に沿って入射するように配向した場合、粒子表面にて散乱するHeの確率は比較的高かった。結果として、散乱がある前にHeイオンの試料中への進入は、平均して比較的浅かった。結果として、Heイオン及び/又は中性He原子は、試料表面から出てMCP検出器により検出される可能性が比較的高かった。従って、入射Heイオンビームに関して高指数の結晶配向を有する粒子は、
図68に示す画像中で明るく見えた。
【0581】
図65に示す画像を参照して、
図68の画像のトポグラフィー情報は、その画像が二次電子よりむしろ散乱He粒子に基づいて記録されるので、大幅に低減した。特に、
図65の画像に現れる一連の明るい線は、
図68の画像から大部分が取り除かれた。トポグラフィー情報がないことは、
図68の画像を解釈することを比較的容易にすることができ、特に、
図68の測定強度を用いて試料中の結晶ドメインの結晶学的特性(相対配向等)を量的に確認することができる。
【0582】
13.
例1に記載の手順に従い先端を用意し、例1に記載のように幾何学的先端特性の特性決定を行った。先端は、例1の基準に基づいて使用が認められた。
【0583】
例1に記載の手順によって、先端をFIMで研磨した。次に、Heイオン顕微鏡内に先端を配置し、構成した。以下に示す構成の変更と共に、例1に記載のようにして、顕微鏡システムを構成した。
【0584】
顕微鏡システムは、入射Heイオンに応じて試料から散乱したHeイオンと中性He原子を測定するように構成された。電動機の軸部に検出器(小型MCP)を取り付けた。銅テープを用いてMCPの前面を覆い、MCPによるHeイオン及び/又は中性原子の測定を制限した。銅テープ中の小さな丸穴は、散乱イオン及び/又は中性原子が狭い角度範囲に含まれる場合にのみ、散乱イオン及び/又は中性原子がMCPに達することを可能にした。この例において、Heイオン及び/又は中性原子の測定は、0.01ステラジアンの立体角に制限された。銅テープとMCPの前面を共通の外部接地部に対して-100Vにバイアスしたので、二次電子がMCP検出器に入ることはなかった。
【0585】
検出器を試料から30mmの距離に配置した。電動機は、試料に対するMCPの回転により異なる角度範囲で試料表面から出るHeイオン及び/又は中性原子を検出することを可能にした。典型的に、例えば、電動機は、MCPの回転を180°まで可能にした。
【0586】
試料は、約1mmの直径の銅ボールであった。試料が電動機軸部の軸に沿って設置されるように、電動機を試料に対して配置した。銅ボールの試料は、Heイオンビームを照射する場合、試料表面の形状によって、広範な角度で散乱Heイオン及び中性He原子を提供した。即ち、試料表面に亘って入射Heイオンビームを走査することで、様々な異なる入射角(例えば、Heイオンビームと試料表面の法線との間の角度)を実現することができる。例えば、銅ボールの中心では、Heイオンビームの入射角が0°である。(Heイオンビームの視点から観察される)ボールの端では、入射角が約90°である。銅ボールの中心と端の間の中間位置では、入射角は試料の三角法から約30°である。
【0587】
試料をHeイオンビームの下に配置し、上記したように試料に対して検出器を配置した。Heイオンビーム電流は15pAであって、Heイオンビーム中の平均イオンエネルギーは25keVであった。100Vの最大電圧を走査偏向器に印加し、試料表面に1mmの視野を達成した。顕微鏡システムの第二レンズから試料までの距離(例えば、作動距離)は、75mmであった。このことは、MCPが試料に対して回転させるのに十分な空間を提供した。
【0588】
検出器を試料に対して180°の角度範囲で半球形の弧状に掃引しながら銅ボールの画像を記録することで、測定を行った。Heイオンビームは、試料表面を両側に分けるのに有効であり、銅ボールの凸面によって、検出器を配置した側から散乱Heイオン及び中性He粒子のみを検出することができた。結果として、
図69Aにおいては、試料画像の強度プロファイルが、検出器の位置に対応する左側の明るい領域で三日月形であった。散乱Heイオンや中性He粒子が検出器によって測定できない方向の試料表面から出るので、試料の右側は相対的に暗かった。
【0589】
各画像間の検出器の角度を増加することで、試料の連続画像を記録した。検出器の走査範囲にわたって、合計20枚の試料の画像を得た。特定の画像は、検出器が入射Heイオンビームを遮るように位置しているので有用な情報を与えず、Heイオンが試料表面に入射することを妨げた。
図69B及び69Cに示す画像は、それぞれが試料のほぼ真上に位置した検出器と試料の右側に位置した検出器で記録された画像に対応する。
図69Cにおいては、
図69Aで観察された強度プロファイルと類似した三日月形の強度プロファイルが観察される。
【0590】
記録画像の量的検査に基づき、試料についてのトポグラフィー情報が軸外位置の検出器で測定した画像(例えば、
図69A及び69B)から決定できることが明らかであった。それらの測定から得られる情報を試料の二次電子測定と組み合わせて、例えば、二次電子画像で観察される画像コントラストが試料の表面トポグラフィーによるものであるか又は試料の帯電若しくは物質組成等の他のコントラスト機構によるものであるかを確かめることができた。既知の位置における検出器の場合、記録画像に基づき、試料表面の隆起部をくぼみと区別することが可能であった。また、小さな検出器の受け入れ角度と各記録画像についての既知の検出器位置を用いて、画像中の表面特徴部の陰影長さを測定し、表面特徴部に対して入射Heイオンビームの既知の角度を利用することによって、量的な表面浮き出し(例えば、最高値)情報を決定することができた。
【0591】
また、試料の画像は、試料に対する検出器の配向によって、試料の特定の縁が明るいエッジ効果を示す一方で、他の縁が暗いエッジ効果を示す(例えば、
図69A参照)ことを明らかにした。この情報は、試料からのトポグラフィー情報の測定を低減するように構成される検出器のデザインに使用された。検出器のデザインは、検出角のバランスを取り、ほぼ均一なエッジ効果を提供した。結果として、銅ボール等の試料の画像は、試料の物質の違いから強度のばらつきが生じる状態で、一様に明るく見えることになった。
【0592】
試料から記録された画像データを分析し、試料表面の選択領域の強度が、検出器を走査するにつれてどのように変わるのかを決定した。強度のばらつきは、試料表面から出るHeイオン及びHe中性原子の角度分布によるものであり、この分析によって、時に放出ローブと称される角度分布の情報を提供した。
【0593】
図70Aは、ほぼ軸上の検出器で入射Heイオンビームを用いて記録された試料の画像を示し、即ち、検出器は、およそ0°の角度で散乱Heイオン及び中性He原子を測定した。長方形の囲みで示される試料表面の領域は、一連の画像で分離され、更なる分析を受けた。
図70Bに示す線図においては、厚い横線が試料表面を図式的に表し、細い垂直線が入射Heイオンビームを表す。点は、様々な検出器位置での散乱Heイオン及び中性He原子の平均測定強度を表す。点を極座標で表し、極座標の原点は、試料表面上のHeイオンビームの入射点である。与えられた点の角度位置は検出器の角度位置に対応し、原点から各点までの半径方向距離は、特定の検出器の角度位置での平均測定強度で表す。個々の試料画像は、それぞれが異なる検出器位置に対応しており、該画像を分析して
図70Bに示す角度強度データを提供した。各点は、異なる検出器位置で記録された画像に対応する。
【0594】
点の極配置は、放出ローブの線図を形成する。その線図は、(Heイオンビームが検出器によって遮断される少しの欠落点を除けば)ほぼ丸い形状であり、原点についてのコサイン型の分布に対応する。
【0595】
図71Aにおいては、試料からの散乱Heイオン及び中性原子の角度強度分布を決定するために複数の試料画像を用いて分析した試料表面の異なる領域を表示する重ね合わせた長方形の囲みと共に、試料の画像を示す。この場合において、散乱角度又は放出角度は、入射Heイオンビームに対して約40°であった。
【0596】
図71Bに示す角度放出強度の極座標は、上記
図70Bに関して記載されたように構成された。この角度でのローブの形状は、散乱/放出が優先的に入射Heイオンビームから離れる方に向かうことを示した。
【0597】
この分析は、試料表面の様々な異なる領域(様々な異なる角度に対応する)で繰り返され、銅ボール試料の角度に応じた散乱Heイオン及び中性He原子の分布の比較的完全な像を構築した。
【0598】
14.
例1に記載の手順に従い先端を用意し、例1に記載のように幾何学的先端特性の特性決定を行った。先端は、例1の基準に基づいて使用が認められた。
【0599】
例1に記載の手順によって、先端をFIMで研磨した。次に、Heイオン顕微鏡内に先端を配置し、構成した。以下に示す構成の変更と共に、例1に記載のようにして、顕微鏡システムを構成した。
【0600】
顕微鏡システムは、入射Heイオンに応じて試料から散乱したHeイオンと中性He原子を測定するように構成された。(例3に記載された)MCP検出器を用いて、試料画像を記録した。MCPの前端の前に格子があるので、MCPの前端を共通の外部接地部に対して-300Vにバイアスした。この構成においては、負に印加された電位バイアスによって、二次電子がMCPに達しない。MCPによって測定された信号は、MCPの前面に入射する散乱Heイオン及び中性He原子から生じる。試料の視点から見て、MCPは、約1.8ステラジアン以内の立体角からHeイオン及びHe原子を検出した。立体角は、
図66に示すように入射ビームに対して方位角的に対称であった。
【0601】
例13から、銅ボール試料について観察される明るいエッジ効果と暗いエッジ効果は、散乱Heイオン及び/又は中性He原子を測定することで試料を画像化するのに使用する場合において測定信号のトポグラフィー情報の量を低減し、更には試料の局所的な表面トポグラフィーの違いよりむしろ物質組成の違いを正確に反映する、検出器のデザインや構成に関する情報を提供した。
図66に示すMCP検出器について、散乱Heイオン及び中性He原子の測定に基づき形成された画像中のトポグラフィー情報の低減は、MCPが試料から約25mmの作動距離に位置している場合に観察された。
【0602】
次に、異なる物質を含む試料を画像化することができ、それらの物質は視覚的に互いを正確に区別した。四つの異なる物質(ニッケル系層、炭素塗膜、銅格子、金線)を含む試料を、Heイオン顕微鏡を用いて画像化した。Heイオンビーム電流は1.1pAであり、平均Heイオンエネルギーは18keVであった。4Vの最大電圧を走査偏向器に印加し、試料表面にて40μmの視野を実現した。合計画像収集時間は90sであった。
【0603】
得られた画像を
図72に示す。試料中の四つの異なる物質のそれぞれについて異なる強度が観察された。これは、特定の物質上に入射するHeイオンの散乱確率が物質の原子番号によって決まるという事実の結果である。
図72では、同様の原子番号を有する物質でさえ区別することができる。例えば、銅(原子番号29)は、ニッケル(原子番号28)と視覚的に区別できる。
【0604】
図73は、酸化物層がケイ素ウェーハの上にある状態で、ケイ素ウェーハの下にある銅層を含む試料の画像を示す。この例で先に記載したように、散乱Heイオン及び中性He原子の検出のために構成されたHeイオン顕微鏡システムを用いて、画像を測定した。試料は、試料表面に入射するレーザーを方向付けることで作り出された表面構造の特徴部を含む。レーザーは、下層の銅層の爆発噴火を引き起こした。画像の目視検査は、試料に存在する異なる物質に起因する画像コントラスト(例えば、画像強度のばらつき)を明らかにする。
図73の画像等の画像から、試料中の異なる物質の分布を決定することができる。
【0605】
15.
例1に記載の手順に従い先端を用意し、例1に記載のように幾何学的先端特性の特性決定を行った。先端は、例1の基準に基づいて使用が認められた。
【0606】
例1に記載の手順によって、先端をFIMで研磨した。次に、Heイオン顕微鏡内に先端を配置し、構成した。以下に示す構成の変更と共に、例1に記載のようにして、顕微鏡システムを構成した。
【0607】
顕微鏡システムは、入射Heイオンに応じて試料から放出される光子を測定するように構成された。試料の画像は、光電子増倍管(R6095型、浜松ホトニクス株式会社、豊丘、日本)によって発生した信号から構築された。光電子増倍管は、真向きの窓、相対的に高い量子効率、及び200nm〜700nmの広範なスペクトル感度を有した。1200Vまで又は出力信号が過度に飽和せずに信号チェーンの白色雑音レベルに達するまで増大できる信号利得を用いて、光電子倍増管を作動させた。光電子増倍管を試料から15mmの距離に配置して、試料と向かい合うように配向した。この構成において、該管は、約2ステラジアンの立体角の範囲を定めた。
【0608】
塩化ナトリウム(NaCl)の試料を、光電子増倍管検出器を用いて画像化した。その測定については、Heイオンビーム電流が10pAであって、平均Heイオンエネルギーは25keVであった。試料を1画素当たり500μsの滞留時間でラスタ走査した。150Vの最大電圧を走査偏向器に印加し、試料表面に1.35mmの視野を得た。
【0609】
試料の画像を
図74に示す。画像コントラスト(例えば、画像強度のばらつき)は、異なるNaCl結晶の中で明らかである。二つの異なる機構により試料中に光子を作り出すことができる。第一に、SEM画像で観察される陰極発光に類似の処理によって、光子を作り出すことができる。この機構においては、試料の原子を高位エネルギー状態に励起する。その後の脱励起処理の間、光子を放出する。入射ビームからのHeイオンが低位エネルギー状態に戻るとき、光子を放出する。
【0610】
Heイオンビームを照射し、放出光子が検出される他の試料としては、プラスチック、シンチレータ及び有機物質が挙げられる。
【0611】
16.
例1に記載の手順に従い先端を用意し、例1に記載のように幾何学的先端特性の特性決定を行った。先端は、例1の基準に基づいて使用が認められた。
【0612】
例1に記載の手順によって、先端をFIMで研磨した。次に、Heイオン顕微鏡内に先端を配置し、構成した。以下に示す構成の変更と共に、例1に記載のようにして、顕微鏡システムを構成した。
【0613】
先端を抽出部に対して+19kVにバイアスし、先端の近傍に2×10
-5Torrの圧力でHeガスを導入した。ファラデーカップが第二レンズを越えて設置され、そして、軸合わせ偏向器を用いて、先端三量体原子の一つから発生するHeイオンの全部が実質的に絞り(直径600μm、先端から370mmに位置する)を通過し、他の二つの三量体原子から発生するHeイオンの全部が実質的に絞りによって遮られるように、上記ビームを集束させた。絞りを通過した後、第一レンズによってファラデーカップ中にHeイオンビームを集束させた。この構成において、非点収差補正器、走査偏向器及び第二レンズはオフであった。
【0614】
ファラデーカップを付けたピコ電流計(487型、ケースレーインスツルメンツ社、クリーブランド、OH)を用いて、先端原子から発生する合計のHeイオン電流が300pAであることを測定した。ファラデーカップは、深さ対直径の比が約6〜1の円筒状金属カップであった。
【0615】
その後、第一レンズを止めた。先端で発生した各Heイオンは一直線に進み続けて、先端から分かれた。絞りは、ほとんどのHeイオンビームを妨害し、その小さな中央部分のみにイオン鏡筒の残りの部分を通して更に下行させた。絞りを通過するHeイオンビームの部分をファラデーカップで検出し、絞りを通過する5pAの測定Heイオン電流を得た。次に、Heイオンビームの角度強度は、絞りを通過するHeイオンビーム電流(5pA)を先端の視点からの絞りの立体角で割って計算された。先端頂部と絞りによって形成される円錐の半角は、tan
-1(0.300/370)=0.046°=8.1×10
-4ラジアンと計算された。対応する立体角は、2.1×10
-6ステラジアン(sr)と計算された。立体角に基づき、Heイオンビームの角度強度は、2.42μA/srと決定された。
【0616】
Heイオン源の輝度を、Heイオンビームの角度強度と仮想源サイズから決定した。仮想源サイズは、先端を研磨する間に記録された先端のFIM画像を調べることで推定された。この画像から、先端三量体原子に対応する個々のイオン化ディスクが重なり合っていないことは、明らかであった。更に、三量体原子が約5オングストローム離されることが、タングステンの結晶学から知られていた。従って、実際のイオン化ディスクは約3オングストロームの直径を有すると推定された。
【0617】
仮想源サイズは、一般に実際のイオン化領域より小さい。Heイオンがイオン源の電場領域(例えば、先端及び抽出部の近傍領域)を越えたら、100のHeイオンの漸近的な軌道を逆投影することによる、先に記載した一般的な手順によって、仮想源サイズを決定した。逆投影した軌道が互いに最も密集した空間領域を通過するまで、逆投影した軌道は互いに近接して移動し、その後、それらは、再度分岐した。逆投影した軌道の最も接近した間隔の円直径が仮想源サイズであると定義した。
【0618】
仮想源の直径の上限として、我々は、3オングストロームの値を用いた。顕微鏡が、単一の先端原子から発生するHeイオンビームの一部だけが絞りを通過できるように構成される場合、仮想源サイズは、かなり小さくすることができる。輝度は、角度強度を仮想源サイズの面積A(A=π(D/2)
2)で割って計算された。イオン源の輝度は、3.4×10
9A/cm
2srであった。
【0619】
還元輝度は、ビームを引き出すのに用いる電圧(例えば、先端に印加される電圧バイアス)で輝度を割って計算された。抽出部に対する先端の電圧は19kVであって、還元輝度は1.8×10
9A/m
2srVであった。
【0620】
エタンデュは、Heイオンビームの仮想源サイズとその角度発散(立体角)の積の測度である。決定した輝度を用いて、エタンデュが1.5×10
-21cm
2srであることを決定した。
【0621】
還元エタンデュは、エタンデュをHeイオンビーム電圧で掛けたものである。計算したエタンデュに基づき、(+19kVの先端バイアス電圧を用いて)還元エタンデュが2.8×10
-17cm
2srVであることを決定した。
【0622】
17.
例1に記載の手順に従い先端を用意し、例1に記載のように幾何学的先端特性の特性決定を行った。先端は、例1の基準に基づいて使用が認められた。
【0623】
例1に記載の手順によって、先端をFIMで研磨した。次に、Heイオン顕微鏡内に先端を配置し、構成した。以下に示す構成の変更と共に、例1に記載のようにして、顕微鏡システムを構成した。
【0624】
顕微鏡システムは、ET検出器を用いて二次電子を測定するように構成された。検出器を試料から垂直に(Heイオンビームと平行に)10mmの距離に配置し、試料から横方向に25mm動かし、試料に向かって傾斜させた。ETスクリーンは、共通の外部接地部に対して+300Vの電位にバイアスされた。
【0625】
Heイオンビーム電流は1pAであって、該ビーム中の平均イオンエネルギーは22keVであった。試料表面に亘り1画素当たり100μsの滞留時間でHeイオンビームをラスタ走査した。100mVの最大電圧を走査偏向器に印加し、試料表面上に1000nmの視野を得た。
【0626】
試料は、炭素基板の表面に形成される島状の金粒子を含み、ストラクチャープローブインコーポレイテッド社(ウェストチェスター、PA)で得られた。上記の測定構成によって記録した試料の画像を
図75に示す。
図75の画像に重ね合わせた長方形によって示される試料画像の領域は、Heイオン顕微鏡で観察される縁コントラストの質を調べるために選択された。長方形により指定された領域は、ほぼ垂直な金の縁を含む。その領域は、20列を含み、それぞれが57画素を有する。選択した領域の拡大図を
図76に示す。
【0627】
選択された画像領域の各列は、以下のようにして個々に分析された。最初に、雑音を低減するため、MathCADカーネル平滑化関数(PTCインコーポレイテッド社、ニーダム、MA)を用いて、バンド幅が3画素のガウス核で各列を平滑化した。
図77は、平滑化前(点)と平滑化後(曲線)での、ある一つの線(線#14)の画像強度値をプロットしたグラフを示す。縦軸は、0(黒)から255(白)まで変動する画像強度に対応する。横軸は、0(左側縁)から57(右側縁)まで変動する画素番号に対応する。
【0628】
選択した画像領域の各強度ライン走査については、左右明暗の転移の中央が、強度ライン走査の一次導関数の最小値を決めることで決定された。左右明暗の転移を有する縁については、強度ライン走査の一次導関数の最大値を決定することで、該転移の中央を見出した。
【0629】
次に、各線がちょうど21画素を含有するように整えられた。転移点、転移点の前に10画素、及び転移点の後ろに10画素のようなトリミング作業を各線で実行し続けた。整えられた各線の最初の5画素についての強度値を合わせて平均化し、その平均を100%値とみなした。整えられた各線の最後の5画素についての強度値を合わせて平均化し、その平均を0%値とみなした。次に、各ライン走査からの平滑化データを、100%値と0%値の点から見て再調整した。
図77から再調整したデータを
図78に示す。
【0630】
図78を参照して、0%値と100%値を基準にして75%値と25%値を決定した。Heイオンビームのスポットサイズは、実質的に25%値と75%値の間の横軸に沿った距離間隔として決定された。
図78のデータに基づき、スポットサイズが3.0画素であることを決定した。測定構成における既知の視野や画像中の画素数を用いて、画素サイズをナノメートルに変換した。この測定については、視野が641nmであって、該視野にわたって656画素が存在した。従って、Heイオンビームのスポットサイズが2.93nmであることを決定した。このことが、選択された画像領域における20の線のそれぞれについて繰り返され、その結果を平均化して2.44nmの平均Heイオンビームスポットサイズを得た。
【0631】
18.
例1に記載の手順に従い先端を用意し、例1に記載のように幾何学的先端特性の特性決定を行った。先端は、例1の基準に基づいて使用が認められた。
【0632】
例1に記載の手順によって、先端をFIMで研磨した。次に、Heイオン顕微鏡内に先端を配置し、構成した。以下に示す構成の変更と共に、例1に記載のようにして、顕微鏡システムを構成した。
【0633】
顕微鏡システムは、入射Heイオンに応じた試料表面から出る散乱Heイオン及び中性He原子を測定するように構成された。例3に記載のMCP検出器を試料から10mmの位置に配置した。外部接地部に対して0Vの電位バイアスをMCP格子及び前面に印加した。
【0634】
Heイオンビーム電流は1pAであって、平均Heイオンビームエネルギーは26keVであった。試料表面にわたって、1画素当たり100μsの滞留時間で、Heイオンビームをラスタ走査した。1.30Vの最大電位を走査偏向器に印加し、試料表面にて13μmの視野を得た。
【0635】
ポリシリコンで形成された表面特徴部を有するケイ素ウェーハ基板を含む試料は、Metrocalとして知られており、メトロブースト社(サンタクララ、CA)から得られた。試料を、Heイオンビームが試料表面と垂直な角度で入射するように配向した。試料を共通の外部接地部に対して+19.4kVにバイアスしたので、入射イオンビーム中のHeイオンは、6.6keVの着陸エネルギーで試料に到着した。試料とMCP検出器間での大きな電場は、二次電子が検出器に達することを妨げた。実質的に試料から出る二次電子の全部が、電場の影響を受けて試料表面に戻った。結果として、MCP検出器は、散乱Heイオン及び中性原子を測定した。検出器によって測定された中性He原子がMCPに達する時までに、該中性He原子を26keVの最大エネルギーまで加速した。
【0636】
図79は、上記した測定構成を用いて記録した試料の画像を示す。試料表面の様々な特徴部は、比較的均一で基板の強度とは異なる測定強度を有する。表面特徴部の縁の目視検査は、信号チェーンの飽和を招くことがあり且つ縁の正確な位置を見つけることを困難にすることがある、明白な明るいエッジ効果(例えば、縁吹出し)がないことを明らかにする。加えて、試料表面上での帯電欠陥の視覚的な証拠が存在しない。かかる欠陥が存在する場合、画像中に電圧コントラストとして現れることになる
【0637】
試料の表面特徴部の一つを通した水平ライン走査を
図80に示す。ライン走査の横軸は画素番号を示し、縦軸は特定画素での測定画像強度を示す。比較のために、3keVのビームエネルギー及び30pAのビーム電流でのショットキー電界放出SEM(AMRAY1860型)において同一の試料を30,000×の倍率(約13μmの視野に相当する)で画像化した。得られた画像を
図81に示し、
図80で走査したのと同一の特徴部を通した水平ライン走査を
図82に示す。
【0638】
図82のライン走査は、顕著な明るいエッジ効果を示し、画像化した表面特徴部の縁での信号チェーンは、ほとんど飽和された。表面特徴部の本体においては、SEMライン走査が比較的均一な定常状態の強度レベルを示さない。代わりに、特徴部の本体における強度レベルは、特徴部中央の小さな領域を除けばどの場所においても、低減又は増加する。最後に、SEMライン走査の非対称性は、SEMによる照射中、表面特徴部の時間依存性の帯電が起きていることを示す。対照的に、散乱Heイオンや中性He原子を検出することで記録した表面特徴部のライン走査画像は、かなり低減したエッジ効果を示し、明白な帯電欠陥がない。
【0639】
また、試料表面上にある特定の特徴部の多重測定を行うことができた。特徴部の多重測定が行われる場合、測定特徴部の寸法についての統計データを確かめることが可能であった。例えば、平均特徴部幅、特徴部幅の標準偏差、並びに/又は特徴部における第一の縁及び/若しくは第二の縁の位置の平均と標準偏差を測定した。また、フーリエ法を用いて一つ以上の特徴部の縁の位置を分析し、該縁の形状に対応する空間波長のスペクトルを決定した。
【0640】
19.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、試料表面上のFOV100μm
2に、1pAのビーム電流、20keVの平均イオンエネルギー及び試料表面上にある該FOVの0.1%のビームスポットサイズを有するHeイオンビームを照射するように構成される。
【0641】
試料からの結晶情報を測定するため、Heイオンビームを試料表面のFOV領域に亘り不連続段階でラスタ走査する。二次元検出器を用い、各段階での試料表面からの散乱Heイオンの画像を取り込む。各二次元画像は、試料表面上の特定の位置での菊池パターンに相当する。菊池パターンに基づき、この位置での試料の結晶構造、格子面間隔及び結晶配向を決定することができる。FOV中に亘って不連続段階にて菊池パターンを測定することによって、試料表面の結晶構造の完全なマップが得られる。
【0642】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、検出器は、入射Heイオンビームに応じて作り出される試料からの二次電子の合計強度を測定するように構成される。Heイオンビームを試料表面の全FOV領域に亘って不連続工程でラスタ走査し、試料表面上のHeイオンビームの位置に応じて、二次電子の合計強度を測定する。次に、測定した結晶情報を用いて、試料の結晶構造のばらつきから生じる二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、対応する試料上のHeイオンビーム位置での二次電子の補正強度によって決定される。トポグラフィー情報がその画像によって提供され、そのFOVにおける試料の表面浮き出しパターンを示す。
【0643】
20.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
【0644】
試料からの結晶情報を測定するため、Heイオンビームを試料表面のFOV領域に亘り不連続段階でラスタ走査する。検出器を用いて、試料表面上のHeイオンビームの位置に応じた散乱Heイオンの全存在量を測定する。測定した全存在量の値を用いて試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、対応する試料上のHeイオンビーム位置でのHeの測定した存在量の合計によって決定される。試料表面にて異なって配向した結晶粒は、散乱Heイオンの異なる放出量を有しており、その画像は、変動する灰色レベルとして異なって配向した結晶粒を示す。その画像の情報を用いて、試料表面での結晶粒及び粒界を確認することができる。
【0645】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、合計二次電子強度は、例19に記載の通りに測定される。次に、測定した結晶情報を用いて、試料の結晶構造のばらつきから生じる二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、対応する試料上のHeイオンビーム位置での二次電子の補正強度によって決定される。トポグラフィー情報がその画像によって提供され、そのFOVにおける試料の表面浮き出しパターンを示す。
【0646】
21.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
【0647】
試料からの結晶情報を測定するため、Heイオンビームを試料表面のFOV領域に亘り不連続段階でラスタ走査する。検出器を用いて、試料表面上のHeイオンビームの位置に応じた散乱Heイオンの全存在量を測定する。測定した全存在量の値を用いて試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、対応する試料上のHeイオンビーム位置でのHeの測定した存在量の合計によって決定される。試料表面にて異なって配向した結晶粒は、散乱Heイオンの異なる放出量を有しており、その画像は、変動する灰色レベルとして異なって配向した結晶粒を示す。画像の情報を用いて、試料表面での結晶粒及び粒界を確認することができる。試料表面上の粒界を確認したら、試料表面上のある粒子から他の粒子へHeイオンビームを走査する。Heイオンビームの各位置にて二次元検出器を用い、試料表面からの散乱Heイオンの画像を取り込む。各二次元画像は、試料表面上の特定の結晶粒についての菊池パターンに相当する。菊池パターンに基づいて、その粒子の結晶構造、格子面間隔及び結晶配向を決定することができる。FOV中に亘る各画素よりむしろ、各粒子の単一の菊池パターンを測定することによって、試料表面の結晶構造の完全なマップが短い時間で得られる。
【0648】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、合計二次電子強度は、例19に記載の通りに測定される。次に、測定した結晶情報を用いて、試料の結晶構造のばらつきから生じる二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、対応する試料上のHeイオンビーム位置での二次電子の補正強度によって決定される。トポグラフィー情報がその画像によって提供され、そのFOVにおける試料の表面浮き出しパターンを示す。
【0649】
22.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
試料からの結晶情報は、例19に記載の通りに測定される。
【0650】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、検出器は、入射Heイオンビームに応じて作り出される試料からの二次電子の合計強度を測定するように構成される。試料をHeイオンビームに対して傾けて、その結果、Heイオンビームは、試料表面と垂直でない角度で入射する。Heイオンビームを試料表面の全FOV領域に亘り不連続段階でラスタ走査し、試料表面上のHeイオンビームの位置に応じて、二次電子の合計強度を測定する。次に、測定した結晶情報を用いて、試料の結晶構造のばらつきから生じる二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、対応する試料上のHeイオンビーム位置での二次電子の補正した合計強度によって決定される。トポグラフィー情報がその画像によって提供され、そのFOVにおける試料の表面浮き出しパターンを示す。Heイオンビームに対して試料を傾けることは、そうしないとHeイオンビームが垂直な角度でのみ試料表面に入射する場合に隠されたままとなる、トポグラフィー情報を明らかにすることができる。
【0651】
任意には、次いで、Heイオンビームが試料表面に対し異なった非垂直な角度で入射するように、試料の傾きを調整することができ、Heイオンビームを試料表面の全FOV領域に亘り不連続段階でラスタ走査する。試料表面上のHeイオンビームの位置に応じて、二次電子の合計強度を測定し、そして、測定した結晶情報を用いて、試料の結晶構造のばらつきから生じる二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、Heイオンビームの第二非垂直入射角に対応する試料の第二グレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、対応する試料上のHeイオンビーム位置での二次電子の補正した合計強度によって決定される。次に、異なるHeイオンビームの入射角にて測定した二つの画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0652】
23.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
試料からの結晶情報は、例20に記載の通りに測定される。
【0653】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例22に記載の通りに測定される。測定した結晶情報を用い、イオンビームの入射角それぞれにおいて、試料の結晶構造のばらつきから生じる二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例22に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、異なるHeイオンビームの入射角にて測定した二つの画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0654】
24.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
試料からの結晶情報は、例21に記載の通りに測定される。
【0655】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例22に記載の通りに測定される。測定した結晶情報を用い、イオンビームの入射角それぞれにおいて、試料の結晶構造のばらつきから生じる二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例22に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、異なるHeイオンビームの入射角にて測定した二つの画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0656】
25.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
試料からの結晶情報は、例19に記載の通りに測定される。
【0657】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、それぞれが試料に対し異なる角度及び位置で配向された二つ以上の検出器は、入射Heイオンビームに応じて作り出される試料からの二次電子の合計強度を測定するように構成される。Heイオンビームを試料表面の全FOV領域に亘り不連続段階でラスタ走査し、各検出器によって試料表面上のHeイオンビームの位置に応じた二次電子の合計強度を測定する。測定した結晶情報を用いて、試料の結晶構造のばらつきから生じる各検出器での二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計強度の値を用いて、各画像が検出器の一つに対応する試料についての一連のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像における特定の画素での灰色レベルは、対応する試料上のHeイオンビーム位置での二次電子の補正した合計強度によって決定される。次に、複数の検出器によって測定される画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0658】
26.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
試料からの結晶情報は、例20に記載の通りに測定される。
【0659】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例25に記載の通りに測定される。測定した結晶情報を用いて、試料の結晶構造のばらつきから生じる各検出器での二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例25に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、複数の検出器によって測定される画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0660】
27.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
試料からの結晶情報は、例21に記載の通りに測定される。
【0661】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例25に記載の通りに測定される。測定した結晶情報を用いて、試料の結晶構造のばらつきから生じる各検出器での二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例25に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、複数の検出器によって測定される画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0662】
28.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
試料からの結晶情報は、例19に記載の通りに測定される。
【0663】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、Heイオンを測定するように構成された検出器が、大きな散乱角度で試料表面から散乱されるHeイオンを検出するように位置している。Heイオンビームを試料表面の全FOV領域に亘り不連続段階でラスタ走査し、検出器によって試料表面上のHeイオンビームの位置に応じたHeイオンの合計存在量を測定する。その合計存在量の値を用いて、試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、対応する試料上のHeイオンビーム位置での散乱Heイオンの合計測定存在量によって決定される。トポグラフィー情報がその画像によって提供され、そのFOVにおける試料の表面浮き出しパターンを示す。
【0664】
29.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
試料からの結晶情報は、例20に記載の通りに測定される。
試料からのトポグラフィー情報は、例28に記載の通りに測定される。
【0665】
30.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
試料からの結晶情報は、例31に記載の通りに測定される。
試料からのトポグラフィー情報は、例28に記載の通りに測定される。
【0666】
31.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
試料からの結晶情報は、例19に記載の通りに測定される。
【0667】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、Heイオンを測定するように構成された二つ以上の検出器が、大きな散乱角度で試料表面から散乱されるHeイオンを検出するように位置している。Heイオンビームを試料表面の全FOV領域に亘り不連続段階でラスタ走査し、各検出器によって試料表面上のHeイオンビームの位置に応じたHeイオンの合計存在量を測定する。その合計存在量の値を用いて、各検出器に対応する試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、対応する試料上のHeイオンビーム位置での散乱Heイオンの合計測定存在量によって決定される。次に、検出器によって測定される複数の画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0668】
32.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
試料からの結晶情報は、例20に記載の通りに測定される。
試料からのトポグラフィー情報は、例31に記載の通りに測定される。
【0669】
33.試料からのトポグラフィー情報及び結晶情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と結晶情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
試料からの結晶情報は、例21に記載の通りに測定される。
試料からのトポグラフィー情報は、例31に記載の通りに測定される。
【0670】
34.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
【0671】
試料からの物質情報を測定するため、Heイオンを測定するように構成される検出器が、試料から後方散乱したHeイオンを検出するように位置している。Heイオンビームを試料表面の全FOV領域に亘り不連続段階でラスタ走査し、試料表面上のHeイオンビームの位置に応じて、後方散乱Heイオンの合計存在量を測定する。後方散乱Heイオンの合計存在量測定を用いて、試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、対応する試料上のHeイオンビーム位置での後方散乱Heイオンの合計測定存在量によって決定される。Heイオンの散乱断面が、散乱原子の原子番号の平方によって大体決まるので、その画像の強度を用いて、試料の組成を量的に決定することができる。
【0672】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、例19に記載されるように、試料表面上でのHeイオンビームの位置に応じて、二次電子の合計強度を測定する。次に、測定した物質情報を用いて、試料中の組成のばらつきから生じる合計二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、補正した合計強度の値によって決定される。トポグラフィー情報がその画像によって提供され、そのFOVにおける試料の表面浮き出しパターンを示す。
【0673】
35.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例34に記載の通り、試料から測定できる。
【0674】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例22に記載の通りに測定される。測定した物質情報を用い、イオンビームの入射角それぞれにおいて、試料中の組成のばらつきから生じる二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例22に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、異なるHeイオンビームの入射角にて測定した二つの画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0675】
36.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例34に記載の通り、試料から測定できる。
【0676】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例25に記載の通りに測定される。測定した物質情報を用いて、試料中の組成のばらつきから生じる各検出器での二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例25に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、複数の検出器によって測定される画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0677】
37.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例34に記載の通り、試料から測定できる。
試料からのトポグラフィー情報は、例28に記載の通りに測定される。
【0678】
38.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例34に記載の通り、試料から測定できる。
試料からのトポグラフィー情報は、例31に記載の通りに測定される。
【0679】
39.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
【0680】
試料からの物質情報を測定するため、Heイオンを測定するように構成されたエネルギー角度分解検出器が、試料からのHeを検出するように位置している。Heイオンビームを試料表面の全FOV領域に亘り不連続段階でラスタ走査し、試料表面上のHeイオンビームの位置に応じて、散乱Heイオンのエネルギー及び角度を測定する。散乱Heイオンの平均角度と平均エネルギーから、散乱原子の質量を決定することができ、試料の組成を決定することができる。
【0681】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、例19に記載されるように、試料表面上でのHeイオンビームの位置に応じて、二次電子の合計強度を測定する。次に、測定した物質情報を用いて、試料中の組成のばらつきから生じる合計二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、補正した合計強度の値によって決定される。トポグラフィー情報がその画像によって提供され、そのFOVにおける試料の表面浮き出しパターンを示す。
【0682】
40.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例39に記載の通り、試料から測定できる。
【0683】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例22に記載の通りに測定される。測定した物質情報を用い、イオンビームの入射角それぞれにおいて、試料中の組成のばらつきから生じる二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例22に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、異なるHeイオンビームの入射角にて測定した二つの画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0684】
41.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例39に記載の通り、試料から測定できる。
【0685】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例25に記載の通りに測定される。測定した物質情報を用いて、試料中の組成のばらつきから生じる各検出器での二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例25に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、複数の検出器によって測定される画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0686】
42.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例39に記載の通り、試料から測定できる。
試料からのトポグラフィー情報は、例28に記載の通りに測定される。
【0687】
43.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例39に記載の通り、試料から測定できる。
試料からのトポグラフィー情報は、例31に記載の通りに測定される。
【0688】
44.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
【0689】
物質情報を測定するため、X線検出器を用いて、入射Heイオンビームに応じて試料から抜け出るX線を検出することができる。Heイオンビームを試料表面の全FOV領域に亘り不連続段階でラスタ走査し、試料表面上のHeイオンビームの位置に応じて、X線放出スペクトルを測定する。特に、X線スペクトル中の特定の放出線は特定の種類の原子であるので、測定したX線スペクトルに基づき、試料表面上の各段階での組成が決定される。
【0690】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、例19に記載されるように、試料表面上でのHeイオンビームの位置に応じて、二次電子の合計強度を測定する。次に、測定した物質情報を用いて、試料中の組成のばらつきから生じる合計二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、補正した合計強度の値によって決定される。トポグラフィー情報がその画像によって提供され、そのFOVにおける試料の表面浮き出しパターンを示す。
【0691】
45.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例44に記載の通り、試料から測定できる。
【0692】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例22に記載の通りに測定される。測定した物質情報を用い、イオンビームの入射角それぞれにおいて、試料中の組成のばらつきから生じる二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例22に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、異なるHeイオンビームの入射角にて測定した二つの画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0693】
46.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例44に記載の通り、試料から測定できる。
【0694】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例25に記載の通りに測定される。測定した物質情報を用いて、試料中の組成のばらつきから生じる各検出器での二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例25に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、複数の検出器によって測定される画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0695】
47.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例44に記載の通り、試料から測定できる。
試料からのトポグラフィー情報は、例28に記載の通りに測定される。
【0696】
48.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例44に記載の通り、試料から測定できる。
試料からのトポグラフィー情報は、例31に記載の通りに測定される。
【0697】
49.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
【0698】
物質情報を測定するため、光子検出器を用いて、入射Heイオンビームに応じて試料から抜け出る光子を検出することができる。Heイオンビームを試料表面の全FOV領域に亘り不連続段階でラスタ走査し、試料表面上のHeイオンビームの位置に応じて、光子放出スペクトルを測定する。特に、該スペクトル中の特定の放出線は、特定の種類の原子であるので、測定したスペクトルに基づき、試料表面上の各段階での組成が決定される。
【0699】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、例19に記載されるように、試料表面上でのHeイオンビームの位置に応じて、二次電子の合計強度を測定する。次に、測定した物質情報を用いて、試料中の組成のばらつきから生じる合計二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、補正した合計強度の値によって決定される。トポグラフィー情報がその画像によって提供され、そのFOVにおける試料の表面浮き出しパターンを示す。
【0700】
50.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例49に記載の通り、試料から測定できる。
【0701】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例22に記載の通りに測定される。測定した物質情報を用い、イオンビームの入射角それぞれにおいて、試料中の組成のばらつきから生じる二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例22に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、異なるHeイオンビームの入射角にて測定した二つの画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0702】
51.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例49に記載の通り、試料から測定できる。
【0703】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例25に記載の通りに測定される。測定した物質情報を用いて、試料中の組成のばらつきから生じる各検出器での二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例25に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、複数の検出器によって測定される画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0704】
52.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例49に記載の通り、試料から測定できる。
試料からのトポグラフィー情報は、例28に記載の通りに測定される。
【0705】
53.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例49に記載の通り、試料から測定できる。
試料からのトポグラフィー情報は、例31に記載の通りに測定される。
【0706】
54.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
【0707】
物質情報を測定するため、オージェ電子検出器を用いて、入射Heイオンビームに応じて試料から抜け出るオージェ電子を検出することができる。Heイオンビームを試料表面の全FOV領域に亘り不連続段階でラスタ走査し、試料表面上のHeイオンビームの位置に応じて、オージェ電子放出スペクトルを測定する。特に、該スペクトル中の特定の放出線は、特定の種類の原子であるので、測定したスペクトルに基づき、試料表面上の各段階での組成が決定される。
【0708】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、例19に記載されるように、試料表面上でのHeイオンビームの位置に応じて、二次電子の合計強度を測定する。次に、測定した物質情報を用いて、試料中の組成のばらつきから生じる合計二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、補正した合計強度の値によって決定される。トポグラフィー情報がその画像によって提供され、そのFOVにおける試料の表面浮き出しパターンを示す。
【0709】
55.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例54に記載の通り、試料から測定できる。
【0710】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例22に記載の通りに測定される。測定した物質情報を用い、イオンビームの入射角それぞれにおいて、試料中の組成のばらつきから生じる二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例22に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、異なるHeイオンビームの入射角にて測定した二つの画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0711】
56.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例54に記載の通り、試料から測定できる。
【0712】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例25に記載の通りに測定される。測定した物質情報を用いて、試料中の組成のばらつきから生じる各検出器での二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例25に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、複数の検出器によって測定される画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0713】
57.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例54に記載の通り、試料から測定できる。
試料からのトポグラフィー情報は、例28に記載の通りに測定される。
【0714】
58.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例54に記載の通り、試料から測定できる。
試料からのトポグラフィー情報は、例31に記載の通りに測定される。
【0715】
59.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
【0716】
物質情報を測定するため、TOF検出器を用いて、入射Heイオンビームに応じて試料から抜け出る二次イオン及び/又は二次原子を検出することができる。Heイオンビームを試料表面の全FOV領域に亘り不連続段階でラスタ走査し、試料表面上のHeイオンビームの位置に応じて、試料180からの二次イオン及び/又は二次原子の飛行時間を測定する。測定した該イオン/原子の飛行時間及びTOF機器中の加速電極の既知電圧に基づき、検出粒子の質量を計算することができ、更に粒子の同一性を決定することができる。
【0717】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、例19に記載されるように、試料表面上でのHeイオンビームの位置に応じて、二次電子の合計強度を測定する。次に、測定した物質情報を用いて、試料中の組成のばらつきから生じる合計二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、試料のグレースケール画像が構築され、ここで、特定の画像画素での灰色レベルは、補正した合計強度の値によって決定される。トポグラフィー情報がその画像によって提供され、そのFOVにおける試料の表面浮き出しパターンを示す。
【0718】
60.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例59に記載の通り、試料から測定できる。
【0719】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例22に記載の通りに測定される。測定した物質情報を用い、イオンビームの入射角それぞれにおいて、試料中の組成のばらつきから生じる二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例22に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、異なるHeイオンビームの入射角にて測定した二つの画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0720】
61.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例59に記載の通り、試料から測定できる。
【0721】
試料からのトポグラフィー情報を測定するため、試料からの二次電子の合計強度は、例25に記載の通りに測定される。測定した物質情報を用いて、試料中の組成のばらつきから生じる各検出器での二次電子強度測定への寄与を取り除く。補正した合計二次電子強度の値を用いて、例25に記載されるように試料のグレースケール画像を構築する。次に、複数の検出器によって測定される画像からの情報を組み合わせて用い、試料表面についての量的な三次元トポグラフィー情報を決定することができる。
【0722】
62.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例59に記載の通り、試料から測定できる。
試料からのトポグラフィー情報は、例28に記載の通りに測定される。
【0723】
63.試料からのトポグラフィー情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例59に記載の通り、試料から測定できる。
試料からのトポグラフィー情報は、例31に記載の通りに測定される。
【0724】
64.試料からの結晶情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例44に記載の通り、試料から測定できる。
結晶情報は、例19に記載の通り、試料から測定できる。
【0725】
65.試料からの結晶情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例44に記載の通り、試料から測定できる。
結晶情報は、例20に記載の通り、試料から測定できる。
【0726】
66.試料からの結晶情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例44に記載の通り、試料から測定できる。
結晶情報は、例21に記載の通り、試料から測定できる。
【0727】
67.試料からの結晶情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例49に記載の通り、試料から測定できる。
結晶情報は、例19に記載の通り、試料から測定できる。
【0728】
68.試料からの結晶情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例49に記載の通り、試料から測定できる。
結晶情報は、例20に記載の通り、試料から測定できる。
【0729】
69.試料からの結晶情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例49に記載の通り、試料から測定できる。
結晶情報は、例21に記載の通り、試料から測定できる。
【0730】
70.試料からの結晶情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例54に記載の通り、試料から測定できる。
結晶情報は、例19に記載の通り、試料から測定できる。
【0731】
71.試料からの結晶情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例54に記載の通り、試料から測定できる。
結晶情報は、例20に記載の通り、試料から測定できる。
【0732】
72.試料からの結晶情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例54に記載の通り、試料から測定できる。
結晶情報は、例21に記載の通り、試料から測定できる。
【0733】
73.試料からの結晶情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例59に記載の通り、試料から測定できる。
結晶情報は、例19に記載の通り、試料から測定できる。
【0734】
74.試料からの結晶情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例59に記載の通り、試料から測定できる。
結晶情報は、例20に記載の通り、試料から測定できる。
【0735】
75.試料からの結晶情報及び物質情報の測定
試料からのトポグラフィー情報と物質情報を測定するため、本願に記載されるように、気体電界イオン顕微鏡における試料取付け部の適切な位置に試料を固定する。気体電界イオン顕微鏡は、例19に記載の通りに構成される。
物質情報は、例59に記載の通り、試料から測定できる。
結晶情報は、例21に記載の通り、試料から測定できる。
【0736】
他の実施態様は、特許請求の範囲に属する。