特許第5656838号(P5656838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656838
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】置換イソキノリンを合成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 217/24 20060101AFI20141225BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20141225BHJP
【FI】
   C07D217/24
   !C07B61/00 300
【請求項の数】16
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2011-526112(P2011-526112)
(86)(22)【出願日】2009年8月27日
(65)【公表番号】特表2012-515711(P2012-515711A)
(43)【公表日】2012年7月12日
(86)【国際出願番号】US2009055132
(87)【国際公開番号】WO2010027889
(87)【国際公開日】20100311
【審査請求日】2012年8月3日
(31)【優先権主張番号】61/094,088
(32)【優先日】2008年9月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/547,158
(32)【優先日】2009年8月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・エイ・スプリングフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ウェンデル・ダブリュー・ダブルデイ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・ブオノ
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル・エイ・クチュリエ
(72)【発明者】
【氏名】イヴォンヌ・リアー
(72)【発明者】
【氏名】デニ・ファヴロー
(72)【発明者】
【氏名】カティア・ルヴスク
(72)【発明者】
【氏名】パーシー・サーウッド・マンチャンド
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・フリーザー
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ジェイ・コクッザ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ヒュンチョル
(72)【発明者】
【氏名】イ・サンソ
(72)【発明者】
【氏名】キム・チュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ソンハ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ・ウンヘ
【審査官】 松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/060927(WO,A1)
【文献】 国際公開第2003/015755(WO,A1)
【文献】 特開2008−105962(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/056120(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 217/24
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(I)
で示される化合物を製造するための方法であって;
(a)式(A)
【化2】
(A)
[式中、
nは、0、1、2、3、または4であり;ならびに
各Rは、独立して、アルコキシ、アルキル、アミノ、アリール、シアノ、ハロ、ハロアルコキシ、メルカプト、およびニトロから選択される]
で示される化合物を、メタノールおよび超原子価ヨウ素酸化剤の存在下において無水酸で処理し;次いで
(b)工程(a)の化合物を塩素化剤で処理すること
を含む方法。
【請求項2】
nが1であり;Rがハロである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の無水酸が、メタンスルホン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
超原子価ヨウ素酸化剤が、フェニルヨウ素ジアセテート、ビス(4-メチルベンゼンスルホナト-KO)フェニルヨウ素、ビス(2,2-ジメチルプロパノアト-KO)フェニルヨウ素、フェニルビス(トリクロロアセタト-O)ヨウ素、ビス(ベンゾアト-KO)フェニルヨウ素、フェニルビス(2,2,2,-トリフルオロアセタテオ-KO)ヨウ素、およびジクロロヨードベンゼンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
超原子価ヨウ素酸化剤が、フェニルヨウ素ジアセテートである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)の塩素化剤が、POClおよびPClから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
塩素化剤が、POClである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式(A)
【化3】
(A)
で示される化合物を製造するための方法をさらに含む請求項1に記載の方法であって;
(a)式(B)
【化4】
(B)
で示される化合物を、塩化オキサリルおよび水酸化アンモニウムで処理し;
(b)工程(a)の生成物を、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールで処理し;次いで
(c)工程(b)の生成物を塩基で処理すること
を含む方法。
【請求項9】
nが1であり;Rがハロである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(c)の塩基が、カリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-アミレート、およびカリウムヘキサメチルジシラジドから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
塩基が、カリウムtert-アミレートである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
化合物(A)を製造するための方法が連続的である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
式(F)
【化10】
(F)
[式中、Rは、アルコキシ(ここで、アルコキシはメトキシ)である]
で示される化合物を製造するための方法であって
(a)式(A)
【化11】
(A)
[式中、
nは、0、1、2、3、または4であり;ならびに
各Rは、独立して、アルコキシ、アルキル、アミノ、アリール、シアノ、ハロ、ハロアルコキシ、メルカプト、およびニトロから選択される]
で示される化合物を、メタノールおよび超原子価ヨウ素酸化剤の存在下において無水酸で処理することを含む方法。
【請求項14】
超原子価ヨウ素酸化剤が、フェニルヨウ素ジアセテート、ビス(4-メチルベンゼンスルホナト-KO)フェニルヨウ素、ビス(2,2-ジメチルプロパノアト-KO)フェニルヨウ素、フェニルビス(トリクロロアセタト-O)ヨウ素、ビス(ベンゾアト-KO)フェニルヨウ素、フェニルビス(2,2,2,-トリフルオロアセタテオ-KO)ヨウ素、およびジクロロヨードベンゼンから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
超原子価ヨウ素酸化剤が、フェニルヨウ素ジアセテートである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
nが1であり;Rがハロであり;ならびにRがアルコキシ(ここで、アルコキシがメトキシである)である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2008年9月4日に出願した米国仮出願番号第61/094,088号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、所望により置換されてもよい1−クロロ−4−メトキシイソキノリンを合成するための方法に関する。本開示はまた、この方法において有用な中間体に関する。
【背景技術】
【0003】
C型肝炎ウイルス(HCV)は、主なヒト病原体であり、世界でおよそ1億7000万人に感染しており、これはヒト免疫不全ウイルス1型に感染した数のおよそ5倍である。これらのHCV感染者の多くは、肝硬変および肝細胞癌を含む深刻な進行性肝臓疾患を発症する。
【0004】
現在、最も有効なHCV療法は、アルファ−インターフェロンおよびリバビリンを併用し、患者の40パーセントにて持続した効果をもたらしている。最近の臨床結果は、単独療法として、ペグ化アルファ−インターフェロンが修飾されていないアルファ−インターフェロンより優れていることを示す。しかしながら、ペグ化アルファ−インターフェロンおよびリバビリンの組み合わせについての試験的な治療計画を用いてさえ、患者の大半はウイルス量の持続的な減少を示さない。それゆえ、HCV感染の治療に有効な治療薬を開発するための明らかに満たされていない必要性が存在する。
【0005】
化合物(II)は、C型肝炎に対して立証された活性を有する化合物(III)の製造時における中間体である。
【化1】
【0006】
大スケールでの製造のためには、効率的でかつ費用対効果の高い化合物(II)および関連するアナログの高収率合成が必要である。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様において、本開示は、式(I)
【化2】
(I)
で示される化合物を製造するための方法であって、
(a)式(A)
【化3】
(A)
[式中、
nは、0、1、2、3、または4であり;ならびに
各Rは、独立して、アルコキシ、アルキル、アミノ、アリール、シアノ、ハロ、ハロアルコキシ、メルカプト、およびニトロから選択される]
で示される化合物を、メタノールおよび超原子価ヨウ素酸化剤の存在下において無水酸で処理し;次いで
(b)工程(a)の化合物を、塩素化剤で処理すること
を含む方法を提供する。
【0008】
第1の態様の第1の具体例において、nが1であり;Rがハロである。
【0009】
第1の態様の第2の具体例において、工程(a)の酸は、メタンスルホン酸である。
【0010】
第3の具体例において、超原子価ヨウ素酸化剤は、フェニルヨウ素ジアセテート、ビス(4-メチルベンゼンスルホナト-KO)フェニルヨウ素、ビス(2,2-ジメチルプロパノアト-KO)フェニルヨウ素、フェニルビス(トリクロロアセタト-O)ヨウ素、ビス(ベンゾアト-KO)フェニルヨウ素、フェニルビス(2,2,2,-トリフルオロアセタテオ-KO)ヨウ素、およびジクロロヨードベンゼンから選択される。第4の具体例において、超原子価ヨウ素酸化剤は、フェニルヨウ素ジアセテートである。
【0011】
第1の態様の第5の具体例において、工程(b)の塩素化剤は、POClおよびPClから選択される。第6の具体例において、塩素化剤は、POClである。
【0012】
第1の態様の第7の具体例において、前記方法は、式(A)
【化4】
(A)
で示される化合物を製造するための方法であって、
(a)式(B)
【化5】
(B)
で示される化合物を、塩化オキサリルおよび水酸化アンモニウムで処理し;
(b)工程(a)の生成物をN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールで処理し;次いで
(c)工程(b)の生成物を塩基で処理すること
を含む方法をさらに含む。
【0013】
第8の具体例において、nが1であり;Rがハロである。
【0014】
第9の具体例において、工程(c)の塩基は、カリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-アミレート、およびカリウムヘキサメチルジシラジドから選択される。第8の具体例において、塩基は、カリウムtert-ブトキシドである。
【0015】
第1の態様の第10の具体例において、化合物(A)を製造するための方法は連続的である。
【0016】
第2の態様において、本開示は、式(I)
【化6】
(I)
[式中、
nは、0、1、2、3、または4であり;ならびに
各Rは、独立して、アルコキシ、アルキル、アミノ、アリール、シアノ、ハロ、ハロアルコキシ、メルカプト、およびニトロから選択される]
で示される化合物を製造するための方法であって、
(a)式(C)
【化7】
(C)
で示される化合物を、パラジウム触媒系の存在下においてn−ブチルビニルエーテルで処理し;
(b)工程(a)の生成物を、水の存在下において強酸で処理し;
(c)工程(b)の生成物を臭素化剤で処理して式(D)
【化8】
(D)
で示される化合物を得;
(d)式(D)で示される化合物を相間移動触媒の存在下においてジホルミルアミドで処理し、次いで得られた混合物をメタノールで処理して式(E)
【化9】
(E)
で示される化合物を得;
(e)式(E)で示される化合物をメトキシル化またはメチル化条件にかけて式(F)
【化10】
(F)
で示される化合物を生成し;次いで
(f)式(F)で示される化合物を塩素化剤で処理すること
を含む方法を提供する。
【0017】
第2の態様の第1の具体例において、(a)のパラジウム触媒系は、トリ−O−トリルホスフィンおよびジイソプロピルエチルアミンを伴う酢酸パラジウム、ならびにトリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルエチルアミンを伴う酢酸パラジウムから選択される。第2の具体例において、パラジウム触媒系は、トリ−O−トリルホスフィンおよびジイソプロピルエチルアミンを伴う酢酸パラジウムである。
【0018】
第2の態様の第3の具体例において、工程(b)における強酸は、HPOである。
【0019】
第2の態様の第4の具体例において、工程(c)における臭素化剤は、臭素およびN−ブロモコハク酸イミドから選択から選択される。第5の具体例において、臭素化剤は臭素である。
【0020】
第2の態様の第6の具体例において、工程(d)の相間移動触媒は、臭化テトラブチルアンモニウムである。
【0021】
第2の態様の第7の具体例において、工程(e)における式(E)で示される化合物は、メチル化条件にかけられる。第8の具体例において、メチル化条件は、式(E)で示される化合物を、塩基の存在下において硫酸ジメチルで処理することを含む。
【0022】
第2の態様の第9の具体例において、工程(e)における式(E)で示される化合物は、メトキシル化条件にかけられる。第10の具体例において、メトキシル化条件は、式(E)で示される化合物を、ジオキサン中のメタノール塩酸で処理することを含む。第11の具体例において、メトキシル化条件は、式(E)で示される化合物を、メタノール中のメタンスルホン酸で処理することを含む。
【0023】
第2の態様の第12の具体例において、工程(f)の塩素化剤は、POClおよびPClから選択される。第13の具体例において、塩素化剤は、POClである。
【0024】
第2の態様の第14の具体例において、nが1であり;Rがハロである。
【0025】
第3の態様において、本開示は、式(F)
【化11】
(F)
で示される化合物を製造するための方法であって、
(a)式(A)
【化12】
(A)
[式中、
nは、0、1、2、3、または4であり;ならびに
各Rは、独立して、アルコキシ、アルキル、アミノ、アリール、シアノ、ハロ、ハロアルコキシ、メルカプト、およびニトロから選択される]
で示される化合物を、RXH
[式中、
Xは、S、O、およびNRから選択され;
は、アルキル、アリール、およびアリールアルキルから選択され;ならびに
は、水素およびアルキルから選択される]
および超原子価ヨウ素酸化剤の存在下において無水酸で処理すること
を含む方法を提供する。
【0026】
第1の態様の第1の具体例において、超原子価ヨウ素酸化剤は、フェニルヨウ素ジアセテート、ビス(4-メチルベンゼンスルホナト-KO)フェニルヨウ素、ビス(2,2-ジメチルプロパノアト-KO)フェニルヨウ素、フェニルビス(トリクロロアセタト-O)ヨウ素、ビス(ベンゾアト-KO)フェニルヨウ素、フェニルビス(2,2,2,-トリフルオロアセタテオ-KO)ヨウ素、およびジクロロヨードベンゼンから選択される。第2の具体例において、超原子価ヨウ素酸化剤は、フェニルヨウ素ジアセテートである。
【0027】
第1の態様の第3の具体例において、
nが1であり;
がハロであり;ならびに
がアルコキシ(ここで、アルコキシがメトキシである)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示のその他の具体例は、本明細書で開示される2つまたはそれ以上の具体例および/または態様の好適な組み合わせを含んでもよい。
【0029】
本開示のなおその他の具体例および態様は、以下に供される明細書に従って明確である。
【0030】
本開示の化合物はまた、互変異性体としても存在しており;それゆえ、本開示はまた、全ての互変異性体の形態を含む。
【0031】
本明細書で用いられるとき、以下の用語は、以下で示される意味を有する。
【0032】
本明細書で用いられるとき、用語「酸」は、反応の過程でプロトンを供与することができる試薬を意味する。酸の例は、HSO、HPO、HNO、およびHClなどの強酸ならびに酢酸および安息香酸などの弱酸を含む。
【0033】
本明細書で用いられるとき、用語「アルコキシ」は、酸素原子を介して親分子部分に結合したアルキル基を意味する。
【0034】
本明細書で用いられるとき、用語「アルキル」は、1から6個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素に由来する基を意味する。
【0035】
本明細書で用いられるとき、用語「アミノ」は、−NHを意味する。
【0036】
本明細書で用いられるとき、用語「アリール」は、フェニル基、あるいは二環縮合環系(環のうちの1つまたはその両方がフェニル基である)を意味する。二環縮合環系は、四−から六−員芳香族もしくは非芳香族炭素環に縮合したフェニル基からなる。本開示のアリール基は、その基の中のいずれか置換可能な炭素原子を介して親分子部分に結合することができる。アリール基の代表的な例は、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニル、およびテトラヒドロナフチルを含むが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書で用いられるとき、用語「アリールアルキル」は、1、2、または3個のアリール基によって置換されたアルキル基を意味する。
【0038】
本明細書で用いられるとき、用語「塩基」は、反応中に求核試薬として作用することなく、反応の過程でプロトンを受容することができる試薬を意味する。塩基の例には、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-アミレート、ナトリウムtert-アミレートなどのアルコキシ;リチウムヘキサメチルジシラジドおよびカリウムヘキサメチルジシラジドなどのジシリルアミド;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、およびジイソプロピルアミンなどの非求核性アミン;イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、およびピリミジンなどのヘテロ環式アミン;ならびにDBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン)およびDBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)などの二環式アミンが含まれる。特定の変換のために選択する塩基は、出発物質の性質、反応が行われる溶媒、および反応が行われる温度に依存する。
【0039】
本明細書で用いられるとき、用語「臭素化剤」は、分子上の特定の基を臭素原子に置き換えることができる試薬を意味する。本開示において、臭素化剤は、アルファ−ケト水素原子を臭素で置き換えてアルファ−ハロケトンを調製するために用いられる。代表的な臭素化剤には、Br、NBS、およびCBrが含まれる。
【0040】
本明細書で用いられるとき、用語「塩素化剤」は、分子上の特定の基を塩素原子で置き換えることができる試薬を意味する。本開示において、塩素化剤は、エノールヒドロキシ基を塩素原子で置き換えて塩化ビニルを調製するために用いられる。代表的な塩素化剤には、POCl、PCl、およびPClが含まれる。
【0041】
本明細書で用いられるとき、用語「シアノ」は、−CNを意味する。
【0042】
本明細書で用いられるとき、用語「ハロ」および「ハロゲン化」は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0043】
本明細書で用いられるとき、用語「ハロアルコキシ」は、酸素原子を介して親分子部分に結合したハロアルキル基を意味する。
【0044】
本明細書で用いられるとき、用語「メルカプト」は、−SHを意味する。
【0045】
本明細書で用いられるとき、用語「ニトロ」は、−NOを意味する。
【0046】
本明細書で用いられるとき、用語「パラジウム触媒系」は、パラジウム触媒および反応触媒に必要とされる必要なリガンドおよび/または塩基を意味する。代表的なパラジウム触媒系には、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム;トリ-O-トリルホスフィンおよびジイソプロピルエチルアミンを伴う酢酸パラジウム;ならびにトリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルエチルアミンを伴う酢酸パラジウムが含まれる。
【0047】
本明細書で用いられるとき、用語「相間移動触媒」は、ある相から反応が生じ得る別の相への不均一系における反応物の移動を促進する触媒を意味する。代表的な相間移動触媒には、臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、および臭化テトラブチルアンモニウムが含まれる。
【0048】
本明細書で用いられるとき、用語「メトキシル化条件」は、エノールヒドロキシ基をメトキシ基に置き換えてエノールエーテルを生成する条件を意味する。代表的なメトキシル化条件には、ジオキサン中のメタノール塩酸およびメタノール中のメタンスルホン酸が含まれる。
【0049】
本明細書で用いられるとき、用語「メチル化条件」は、ヒドロキシ基の水素をメチル基で置換する条件を意味する。代表的なメチル化条件には、塩基の存在下における硫酸ジメチルおよび塩基による脱プロトン化後のヨウ化メチル処理が含まれる。
【0050】
本明細書で用いられるとき、用語「処理する」は、ある基質を1種類またはそれ以上の試薬および/またはさらなる基質と接触させることを意味する。試薬および/またはさらなる基質は、出発基質に添加されてもよく、あるいは、出発基質は、試薬および/またはさらなる基質に添加されてもよい。
【0051】
本開示における全ての方法は、連続的な方法として実施することができる。本明細書で用いられるとき、用語「連続的な方法」は、中間体を単離することなく実施される工程を意味する。
【0052】
出発物質は、商業的供給源から得ることができ、あるいは当業者に知られている確立した文献の方法によって調製することができる。式(I)で示される化合物が、下記に示す合成において好適な反応剤および試薬の置換によって合成できることは、当業者にとって明らかである。溶媒および温度などの具体的な反応条件が異なる特性に応じて変化されて以下の合成をうまく達成できることもまた、当業者にとって明らかである。
【0053】
スキーム1
【化13】
スキーム1は、式(I)で示される化合物を合成する1つの方法を示す。式(B)で示される化合物は、塩化オキサニル、次いで水酸化アンモニウムによる処理によって式(B’)で示される化合物に変換することができる。式(B’)で示される化合物の変換は、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールによる処理、次いで塩基による処理を経て式(A)で示される化合物に変換することができる。この反応で用いられる塩基の例には、カリウムtert-アミレート、カリウムtert-ブトキシド、およびカリウムヘキサメチルジシラジドが含まれる。
【0054】
式(A)で示される化合物は、メタノール、ならびにフェニルヨウ素ジアセテート、ビス(4-メチルベンゼンスルホナト-KO)フェニルヨウ素、ビス(2,2-ジメチルプロパノアト-KO)フェニルヨウ素、フェニルビス(トリクロロアセタト-O)ヨウ素、ビス(ベンゾアト-KO)フェニルヨウ素、フェニルビス(2,2,2,-トリフルオロアセタテオ-KO)ヨウ素、ジクロロヨードベンゼンなどの超原子価ヨウ素酸化剤の存在下における無水酸による処理によって式(F)で示される化合物に変換することができる。式(F)で示される化合物は、POClまたはPClなどの塩素化剤による処理によって式(I)で示される化合物に変換されてもよい。
【0055】
スキーム2
【化14】
式(I)で示される化合物の別の合成がスキーム2で示される。式(C)で示される化合物は、パラジウム触媒系の存在下におけるn−ブチルビニルエーテルによる処理、次いで水の存在下における強酸による処理によって式(C’)で示される化合物に変換することができる。パラジウム触媒系の例には、トリ−O−トリルホスフィンおよびジイソプロピルエチルアミンを伴う酢酸パラジウム、ならびにトリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルエチルアミンを伴う酢酸パラジウムが含まれる。代表的な強酸には、HPO、HSO、およびHClが含まれる。1の具体例において、強酸は、HPOである。
【0056】
式(C’)で示される化合物は、臭素化剤による処理によって式(D)で示される化合物に変換することができる。臭素化剤の例には、臭素およびN−ブロモコハク酸イミドが含まれる。
【0057】
式(D)で示される化合物の式(E)で示される化合物への変換は、相間移動触媒の存在下におけるジホルミルアミドによる処理、次いでメタノールによる処理によって達成することができる。1の具体例において、相間移動触媒は、臭化テトラブチルアンモニウムである。
【0058】
式(E)で示される化合物は、出発物質ビニルヒドロキシドをメトキシル化またはメチル化条件のいずれかにかけることによって式(F)で示される化合物に変換することができる。メチル化条件の1つの例は、塩基の存在下における硫酸ジメチルによる式(E)で示される化合物の処理である。メトキシル化条件の例には、ジオキサン中のメタノール塩酸によるビニルヒドロキシドの処理およびメタノール中のメタンスルホン酸による処理が含まれる。
【0059】
式(F)で示される化合物の式(I)で示される化合物への変換は、上記のとおり塩素化条件を用いて達成することができる。
【0060】
実施例
以下の非限定的な例は本開示の例示である。
【実施例1】
【0061】
【化15】
【表1】
・スターラーバー、窒素注入口および温度調節器(temperature probe)を備えた500mlの三頚丸底フラスコ(フラスコA)に、以下の試薬をそれぞれ入れた:
1)5-クロロ-2-メチル安息香酸
2)MeTHF--->均一溶液
3)DMF
4)4分にわたる塩化オキサリルの添加
・室温で〜1時間反応させ、LC分析(アリコートをメタノール中でクエンチ)が出発物質の>99.5%の変換を示した。
・別のフラスコ(フラスコB)において、MeTHFおよび5N NHOHを合わせ、室温で激しく撹拌した。
・次いで、フラスコA中のわずかに混濁した反応溶液を滴下漏斗に移し、約7分かけてフラスコBに滴下した。
・添加完了後、この二相溶液をさらに10分撹拌し、フラスコBの全内容物を分液漏斗に移した。
・次に、層を分離させ、残りの有機層を1x100mlのHOで洗浄した。
・次いで、層を分け、アッセイした。
【実施例2】
【0062】
【化16】
【表2】
・5-クロロ-2-メチルベンズアミドの上記溶液を常圧でトルエンに溶媒変換させた。
・次に、得られた溶液を50℃に冷ました。
・DMF/DMAを反応溶液に入れた。
・加熱還流した。
・溶液を〜3時間還流して、全ての5-Cl-2-メチルベンズアミドを所望のアミジン中間体に変換させた。
・次いで、蒸留によりメタノール副産物を除去した。
・次に、得られた温かい均一溶液を、85℃に前もって加熱した25重量%のカリウムt-アミレート/トルエン溶液を含む分離リアクターに逆添加した。添加速度を≦12L/分の速度で維持した。
・添加完了後、アミジン中間体の変換の完了が観察されるまで、この不均一溶液の加熱を保持した。
・反応液を〜50℃に冷ました。
・メタノールを添加し、溶液を不均一のままにした。
・真空蒸留を開始し(体積の減少は2-メチル-2-ブタノールおよびトルエンの除去による)、およそ10ml/gの濃度にした。
・温度を室温に下げ、次いでn−ヘプタンを不均一溶液に添加した。
・次いで、50:50のNMP/HOの前もって調製した溶液を滴下漏斗によりすぐに添加した。
・次に、得られた二相溶液を〜10分間撹拌し、分液漏斗に移した。
・層を迅速かつ正確に分けた。
・水性NMP層を取り出し、メカニカルスターラー、窒素注入口および温度調節器を備えた1Lの三頚丸底フラスコに移した。
・撹拌しながら、酸を滴下漏斗により添加して反応液を中和し、溶液から所望の生成物を沈殿させた。
・合計100mlのHOを得られたスラリーに滴下した。
・不均一溶液を室温で1時間撹拌し、濾過した。
・得られたケーキ(cake)を、100mlの20% NMP/HO、続いて3x100ml HOで洗浄した。
・ケーキをフリット上で減圧下にて数時間乾燥させ、真空(vacuum)オーブンに移して30Hgおよび50℃で終夜乾燥を続けた。典型的な結果は、≧98% LCAP(250nm波長)で89%の単離収率を生じる。
【実施例3】
【0063】
【化17】

【表3】
オーバーヘッド撹拌機、窒素注入口、加熱マントルおよび温度調節器を備えた500mlの三頚丸底フラスコ(フラスコA)に、以下の試薬をそれぞれ入れた:
1)出発物質イソカルボスチリル
2)メタノール(10ml/g−バルク−LR)
3)メタンスルホン酸
・フラスコAを氷浴により〜0℃に冷却した。
・スターラーバー、窒素注入口、温度調節器および加熱マントルを備えた別個の250mlの三頚丸底フラスコ(フラスコB)において、酸化剤(10ml/g−バルク−LR)をメタノール中に30℃で溶解した。
・次いで、完全に均一な酸化剤溶液を滴下漏斗に移し、フラスコAの内容物を滴下し、均一溶液を得た。
・氷浴を取り外し、室温で〜1時間反応させた後、加熱還流した。
・次に、変換の完了が見られるまで還流で反応させた(3〜5時間)。
・変換の完了後、反応液の体積を常圧蒸留により減少させた(〜92mlの蒸留物を回収した)。
・次いで、反応液を室温に冷まし、得られたスラリーを終夜室温に置いた。
・翌朝、合計45mlのHOを、貧溶媒として滴下漏斗によりゆっくり滴下した。
・得られたスラリーを室温で〜1時間置いた後、濾過した。
・得られたケーキを、100mlの50:50のHO/MeOH、続いて2x100mlのHOで洗浄した。
・固形物をフリット上で減圧下にて数時間乾燥させて真空オーブンに移し、50℃および30Hgで週末の間乾燥させ続けた。典型的な結果は、≧97 LCAP(250nm波長)で75〜85%の範囲の単離収率である。
【実施例4】
【0064】
【化18】
【表4】
・スターラーバー、窒素注入口、温度調節器、加熱マントルおよび還流コンデンサー(condenser)を備えた250mlの三頚丸底フラスコ(フラスコA)に、以下の試薬をそれぞれ入れた:
1)出発物質イソカルボスチリル
2)アセトニトリル
3)POCl(添加中、30℃より低い温度を保持した)
・加熱還流を開始し、LC分析により変換を追跡した。
・スターラーバー、温度調節器、および冷却性能を備えた別個の三頚丸底フラスコ(フラスコB)中に、以下の試薬をそれぞれ入れた:
1)水−逆クエンチ
2)リン酸三カリウムN水和物
・変換の完了後、反応溶液を室温に冷ました。
・次いで、逆添加(inverse addition)の間、フラスコAの内容物を10℃より低い温度に保ちながらフラスコBに移した。
・移し終わった後、得られたスラリーを0〜10℃で30分間置いた。
・次いで、以下の溶媒を加えて抽出のワークアップを開始した:
1)テトラヒドロフラン
2)トルエン
・合わせた混合物の温度を室温まで上昇させながら、合わせた二相溶液、Vmax=〜45mL/g−バルク−LRを30分間撹拌した。
・撹拌を停止し、時間を与えて層を分離させた。
・層を取り分け、水層を捨てた。
・有機層を撹拌しながら1時間炭素処理にかけた(バルク−LRに関して〜10重量%の分量)。
・次いで、MgSO(バルク−LRに関して1:1の分量)を入れ、溶液を再び1時間撹拌した。
・次いで、固形物を濾過して取り出し、得られたケーキをテトラヒドロフラン−炭素ケーキ洗浄液(cake wash)で洗浄した。
・次に、有機層を合わせ、n−ヘプタンに溶媒変換して溶液から生成物を結晶化させた。
・n−ヘプタンへの変換後、得られたスラリーを撹拌しながら50℃に約1時間保った後、〜7℃に冷却した。
・得られた「冷」スラリーをさらに1時間撹拌させた。
・スラリーを濾過し、固形物をn−ヘプタンで洗浄した。
・典型的な結果は、77〜87%の範囲の単離収率である;≧98% LCAP(250nm波長)。
【実施例5】
【0065】
【化19】
【表5】
モニタリング用のHPLC法:
カラム Symmetry Shield RP8 3.5 μm, 4.6x150 mm
移動相A:MeOH:H2O 10:90-0.01 M NH4OAc,
移動相B:MeOH:H2O 90:10-0.01 M NH4OAc.
方法: 25 %, 10 分/100 %, 20 分/100 %, 220 nm
1.スパージャー装置を備えた10Lのリアクターに、2-ブロモ-5-クロロ安息香酸メチル(1000g;1.00当量;4.01モル;1.00kg)およびアセトニトリル(3.92kg)を入れた。該無色の溶液をアルゴンで1分あたり1リットル(LPM)にて1時間パージし、120rpmで撹拌した。
2.脱気した溶液に、トリ−O−トリルホスフィン(243.99g)を添加し、薄い懸濁液に、ジイソプロピルエチルアミン(1621.64g)およびブチルビニルエーテル(802.92g)を添加した。無色の薄い懸濁液を得た。
3.該薄い懸濁液を、アルゴンを用いて15℃にて1LPMで0.5時間スパージャーして揮発性物質の喪失を最小限にした。
4.アルゴン下において(表面上にスパージャー装置)、溶液にPd(OAc)(27.00g)を添加した。オレンジ色の薄い懸濁液を得た。
5.溶液を80〜82℃で加熱した。1時間後、反応温度は48℃であった。
6.温度が81℃に達したとき、HPLCは出発物質に対して約55相対面積パーセントを示す。
7.アルゴン下において80〜82℃で0.75時間撹拌した。変換の完了が見られた。
8.分析中、反応混合液をアルゴン下において80〜82℃でさらに0.5時間以上撹拌した。
9.35〜45℃に冷ました。
10.20−Lのエバポレーターを用いて、アセトニトリルを蒸発させて黒色の油状固形混合物にした。
11.トルエン(2.18kg)を添加し、再び蒸発させて黒色の油状固形混合物;ジイソブチルアミン臭化水素酸およびパラジウムからなる大量の高密度固形物にした。
12.トルエン(4.36kg)を添加した。
13.懸濁液を20〜25℃で14時間撹拌した。この撹拌時間は塩の完全な沈殿に好ましい。
14.固形物を濾紙上で濾過した。ケーキの大きさ:内径32cmX高さ4cm、重さを測定しなかった。
ケーキをトルエン、2X1Lで洗浄した;最後の洗浄液は淡い赤色であったが、最小量の生成物を示した。フラスコ容積の制限のため、洗浄液を油状物に濃縮し、主要な溶液に添加した。
【0066】
加水分解およびホスフィンの除去
注釈:加水分解および抽出プロセスは、最小時間で行われなければならない。
20〜25℃(HPLCシステムBを用いるRT 12.6および12.8分)で長時間置いておくと分解が見られ、収率および質に影響を与えた。
15.濾液を、5〜7℃とした22Lの三頚丸底フラスコに入れ、リン酸(3.56kg)を除々に添加する。30分かけて添加を行い、温度を15〜16℃に上昇させた。
16.15〜20℃で0.25時間撹拌した。HPLCは、反応の完了を示した(加水分解およびホスフィンの分解)。
17.下層に酸性層を分離させた。注釈:分相は20〜25℃で行われることが必要であった。低い温度では、分離に長くかかり、効率的ではなかった。
18.酸性層をトルエン、4Xトルエン(1.74kg)で抽出した。注釈:分相は20〜25℃で行われることが必要であった。低い温度では、分離に長くかかり、効率的ではなかった。注釈:この反応において、3回の抽出後の酸性層のアッセイは、所望のケトンの約10%が残存することを示した。4回目の抽出を行い、所望のケトンの8%より低くした。
2kgのランについての抽出プロセスにおける典型的なアッセイ
【表6】
19.有機層を合わせてリン酸の第2の部分(1.78kg)で洗浄し、5分間撹拌した。
20.下層の酸性層を分離させた(10分)。注釈:分相は20〜25℃で行われることが必要であった。低い温度では、分離が長くかかり、効率的ではなかった。
21.酸性層をトルエン、1Xトルエン(871.20g)で抽出した。注釈:分相は20〜25℃で行われることが必要であった。低い温度では、分離が長くかかり、効率的ではなかった。
22.トルエン層を合わせて5w/v%の炭酸カリウム(2.00kg)に添加し、5分間撹拌し、分離させた。
23.有機層を半食塩水溶液(1000g)で洗浄した。注釈:水溶液は最終pH6〜8を示す。
24.トルエン溶液をアッセイし、2-アセチル-5-クロロ安息香酸メチル(744.1g、3.50モル;87.3%収率)を得た(2つのサンプルについての平均)。
25.トルエンを蒸発させて残存する水を除去し、オレンジ色の油状物をトルエン(1.74kg)中に溶解し、濾過して残存する塩(塩化ナトリウム)を取り除いた。KF<0.2%となるまで、トルエン(1.74kg)を用いて油状物を蒸発させた。
26.トルエンで10Lの最終体積とし(KF=0.006%)、2-アセチル-5-クロロ安息香酸メチルを含む溶液(744.1g、3.50モル;87.3%収率)をさらなる処理のために移した。
2kgランについての抽出のための典型的なアッセイ
【表7】
【実施例6】
【0067】
【化20】
【表8】
・得られた溶液は、トルエン中に1000gの出発物質ケトンを含む。
注釈:
所望の生成物が反応の溶媒(トルエン)と同じHPLC保持時間を有することから、反応をGCで追跡した。
炭酸カリウムおよび半食塩水溶液は、前もって調製されるべきである。
・出発物質ケトンの溶液を20Lのリアクターに移し、トルエンの体積を調整してトルエン中で95mg/mL〜108mg/mLのケトン濃度にした。
注釈:反応濃度がより高い場合、反応中に12面積パーセントまでの環化アセトフェノン不純物(GCによりFW:180、5.35分)が生成する。反応は、不純物の生成を減らすために、特定の範囲内で行われなければならない。
・リアクターは、メカニカルスターラー、温度調節器、コンデンサー、アルゴン注入口および滴下漏斗を具備した。
注釈:
4Lの2N NaOHを含有するトラップを用いて反応中に生成されたHBrを中和した。
コンデンサーから臭素が喪失する場合には、リアクターと水酸化ナトリウムのトラップとの間に空のフラスコを設置し、NaOHがリアクター内に入り込んでいないことを確かめなければならなかった。
・リアクター中の出発物質ケトンの溶液を0℃から−3.0℃の間に冷却した。
・3℃より低い温度を保ちながら、0.9当量の臭素(676.41g)をすぐに添加した。
注釈:臭素の迅速な添加が不純物のレベルを減らす。
・−3℃から3℃の間で10分間撹拌し、GCによりモニターした。(出発物質(5.65分):18.6AP;所望の臭素(7.32分):63.7AP;二臭化不純物(8.56分):1.35AP;環化アセトフェノン不純物(5.34分):1.06AP;未知の不純物(7.21分):1.24AP)
注釈
上記の5つの化合物は、反応中に注意して観察する必要がある。残存する出発物質ケトンの量は、GCによる4APより低いべきである。反応が出発物質の1APより低く進められる場合、二臭化不純物の量が増加するであろう。
臭素を過剰に含まないことを確実にするために、試薬を少しずつ添加して二臭化不純物の高レベルでの生成を回避した。
反応中に固形物が生成することもあり得る。生成した固形物は所望の生成物である。反応液がクエンチ後に加熱されると、固形物は溶液中に溶け出す。それは、残存する出発物質ケトンの量に対するGCの結果を変化させ得る。反応混合液中の固形物に存在する二臭化不純物のレベルが3APより高く、出発物質の量が約4〜5APである場合、反応は完了したと考えるべきである。
・3℃より低い温度を保ちながら、0.2当量の臭素(150.31g)をすぐに添加した。
注釈:臭素の迅速な添加は不純物レベルを減少させた。
・−3℃から3℃の間で10分撹拌させ、GCによりモニターした(出発物質ケトン(5.65分):3.7AP;所望の臭素(7.32分):77.4AP;二臭化不純物(8.56分):2.4AP;環化アセトフェノン不純物(5.34分):2.3AP;未知の不純物(7.21分):1.0AP)。
・合計1.1当量の臭素で反応を完了させた。
【0068】
クエンチおよびワークアップ
注釈:
反応完了直後に、反応混合液は、反応混合液中に存在するHBrをクエンチするために、炭酸カリウム溶液中でクエンチされる必要がある。クエンチが迅速に行われない場合、7.2分での不純物が著しく増加する。
反応混合液が炭酸カリウム溶液に添加されることによってCOの生成が回避されなければならない。
・22L/三頚丸底フラスコ中で炭酸カリウム(649.98g)と水(3.00kg)を一緒にした溶液を調製した。
注釈:この溶液は前もって調製されなければならない。
・炭酸カリウム溶液を0〜5℃に冷却した。
注釈:溶液は、クエンチ前の時間を短縮するために前もって冷却されなければならない。
・反応混合液を減圧下で炭酸カリウム溶液に移した。
注釈:約15〜20分で移し終える。クエンチはあまり発熱性ではない。最大の温度上昇は2℃から10℃までである。固形物はリアクター中に残っていてもよく、それらはクエンチした溶液に移されることを要しない。それらは、反応混合液をリアクター中に戻したときに、温度上昇を伴って溶解する。
・クエンチした反応混合液をリアクターに戻した。
・反応混合液を20〜25℃まで加熱し、20〜25℃で30分撹拌する。GCを行い、分解されたどうか調べた。
出発物質ケトン(5.65分):3.8AP
所望の生成物(7.32分):76.6AP
二臭化不純物(8.56分):2.6AP
環化アセトフェノン不純物(5.34分):3.0AP
未知の不純物(7.21分):1.1AP
注釈:15〜25℃での18時間の撹拌後、少量のサンプルに対して分解は見られなかった。
・分相のために撹拌を停止した。
注釈:
水層中にいくつかのラグを見つけることができるが、所望の生成物は存在していない。
明確な分相を得るのに約20分かかる。
水層のpHは9である。
・水(1.50kg)を添加し、15分撹拌させた。
・分相のために撹拌を停止した。
注釈:
明確な分相を得るのに約15分かかる。水層のpHは8である。
所望の生成物は水層に存在していない。
・塩化ナトリウム(半分食塩)(1.71kg)を添加し、15分撹拌させた。
・分相のために撹拌を停止した。
注釈:良好な分相のために15分かかった。水層のpHは6〜7である。
・ワークアップ後にGC定量を行い、トルエン溶液中に存在する所望の生成物の量を調べた。
出発物質ケトン(5.65分):3.8AP
所望の生成物(7.32分):74.4AP
二臭化不純物(8.56分):2.5AP
環化アセトフェノン不純物(5.34分):2.6AP
未知の不純物(7.21分):1.1AP
注釈:存在する臭素の量:1031g
注釈:以後の工程においては、量は、前回の工程で得た所望の生成物の量に基づくものとした。
・溶液を40℃でエバポレーターにて(2mL/gX1031(所望の生成物の量)+1031(所望の生成物の量)=3093mL)に濃縮した。
注釈:濃縮の完了後、化合物をすぐに結晶化させた。
次の工程は迅速に行われる必要がある。
・所望の生成物の濃縮した溶液を20Lのリアクターに移した。
注釈:溶液を移す前にリアクターのジャケットを40℃に前もって加熱した。
・温度を28〜40℃に保ちながら、ヘプタン(5.64kg)をすぐに添加した。
注釈:
添加中に濃いオレンジ−黄色の固形物が結晶化することから、撹拌速度は速くなくてはならない。
10%体積の添加後に結晶が生じない場合には、少量の種結晶(seeds)を添加してもよい。
・スラリーを20〜25℃に冷まし、終夜撹拌させた。
注釈:固形物をリアクターの側壁に付けなかった。
・終夜撹拌後に上澄み液のGC定量を行った。
注釈:終夜撹拌後の上澄み液において約12〜14%の収率があった。
・スラリーを濾過し、ヘプタンの(上記からの臭素量に基づいて)2x1mL/gで洗浄した。
・加熱することなく減圧下で乾燥させて一定重量にした。
注釈:化合物をすぐに乾燥する。
【0069】
結果:
質量:825g(おおまかに60%の収率)。
形態:結晶性オレンジ−黄色の固形物。
HPLC:98.9AP
GC:99.6AP
【実施例7】
【0070】
【化21】
【表9】
・ジホルミルアミドナトリウムをリアクターAに入れ、1mlのアセトニトリル/g−バルクLR(KF<0.05%)および2mlのTHF/g−バルクLR(KF<0.05%)中でスラリーにした。
・スラリーを0℃に冷却した。
・別のフラスコにおいて、出発物質臭素を8mlのアセトニトリル/g−バルクLR(KF<0.05%)中に溶解し、次いでリアクターAに移した。
・0.44mlのアセトニトリル/g−バルクLR(KF<0.05%)中に溶解させた臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの澄明な溶液を、〜15分かけて反応混合液(リアクターA)に添加した。
・添加完了後、反応液を〜15℃に温めた。
注釈:最初に黄/オレンジ色であったスラリーは、反応が進むにつれてゆっくり黒くなる。
・出発物質臭素の変換が完了するまで(<0.5%LCAP)、反応液を15〜25℃で撹拌させておく。
注釈:これは通常、およそ10〜12時間かかる。
【0071】
・出発物質臭素のジホルミルアミド中間体への変換が完了したら、3mlのMeOH/g−バルクLRを〜1時間かけて表面下に添加した。
・次いで、20〜25℃で〜8〜10時間反応させた。
・中間体の変換が完了したら、反応混合液を酢酸(0.12ml/g−バルクLR)/水(10ml/g−バルクLR)溶液中に逆クエンチした。
・クエンチした反応混合液を20〜25℃で〜1時間撹拌した(最終pH=4〜5)。
・次に、スラリーを濾過した。
・次いで、ケーキを2x2mlのHO/g−バルクLRで洗浄した。
・次に、ケーキを50:50のMTBE/MeOH(2ml/g−バルクLR)溶液で〜30分間覆った後、減圧下に置いた。
・次いで、ケーキを2mlのMTBE/g−バルクLRで洗浄した。
・次に、ケーキを2x1.5mlのMTBE/g−バルクLRで洗浄した。
・固形物を窒素気流下での吸引によりフィルターポット(filter pot)上で乾燥させた。
・乾燥後、ベージュ/茶色の固形物を〜78%収率で単離した。
【実施例8】
【0072】
【化22】
【表10】
・(グリコール−冷却コンデンサー、ガス流入アダプター(gas inlet adaptor)、スターラーバーおよび加熱マントルを取り付けた)12LのRBFに、出発物質アルコール(483.6g)およびメタノール(2.68kg)を添加した。
・茶色の固形物のスラリーを、氷/水浴にて3℃に冷却した。
・メタンスルホン酸(2.38kg)を、滴下漏斗により約25分かけて添加した(非常に高い発熱性)。添加中、固形物は、一部溶解したように見え、反応混合液は赤褐色に変わった。
・反応混合液を60℃に加熱した。
・60℃で加熱し続け、反応液をHPLCによりモニターした。
・HPLC結果:
【表11】
・47時間後、反応混合液を室温に冷ました。
・滴下漏斗により逆クエンチを行うことが予定されており、残存する固形物が栓を塞ぐ可能性があるため、混合物を珪藻土(Celite(登録商標))により濾過して固形物を除去した。
・水酸化アンモニウム(3.09kg)を、22Lのフラスコ中の氷/水を用いて1.6℃に冷却した。
・反応混合液を、温度<30℃を保持しながら、滴下漏斗により水酸化アンモニウムに添加した。
【表12】
・反応フラスコを250mLのメタノールで洗い流して残存する反応混合物を除去し、その洗い流した液をクエンチ容器(quench vessel)に移した。
・得られたスラリーを室温に保った。上澄み液の定量サンプルを1時間、3時間、および5時間後に採取し、その全てが母液(mother liquor)中に残っている生成物と同じレベルおよび同じ不純物プロファイルを示した。その後、サンプルを室温に冷ました後および2時間後に採取し、結晶化が完了しているかどうかを調べる。
・スラリーをブフナー漏斗上の直径24cmのナンバー54 Whatman paperを通して濾過した。
・ケーキを5Lの水で洗浄した;各洗浄に約10分かけた。
・圧縮前のケーキ体積は、直径25cm、厚さ5.5cmで体積2700mLであった。
・ケーキがごく容易に割れやすいため、固形物を非常にゆっくり脱液した。
結晶は極めて微細であり、容易に溶媒を遊離しないケーキを形成している。
・固形物を減圧下にて40℃で乾燥させた。これは数日かかった。
・所望の生成物(466.2g;89.95%の収率)を単離した。固形物のLODは0.46%であった。HPLC APは、2.1Pの出発物質および2のその他の未知の不純物を示す97.33であった。
【実施例9】
【0073】
【化23】
・POClを、CHCN中の出発物質7-Cl-4-メトキシイソキノロン(13L/kg)溶液に25℃で添加した。(温度上昇:〜4℃)。反応液を加熱還流した。
・9時間後にHPLC(250nm)により変換を確認した:所望の生成物への変換>99%。完了していない場合、還流下で16時間反応させておいてもよい。なおも完了していない場合、0.5当量のPOClを添加してもよく、2時間後に反応液の変換について確認してもよい。
・温度を25℃に下げた。
・反応混合液を、38℃で平衡にしたKHPO(18重量%)(40L/kg)溶液にゆっくり移した。添加を最大温度:45℃で管理した。pH管理:クエンチ間に<5となれば、5L/kgのKHPOを添加した。
・添加完了後、38℃で1時間撹拌した。
・酢酸エチル:30L/kgを添加し、30分間撹拌した。
・層を分離させた:15分間放置した。この段階で:Vmax:73L/kg(有機層:43L/kg)。
・調整作業(corrective action):無機塩が存在する場合:10L/kgの水を添加した。
・調整作業:ラグ(rag)層が存在する場合:10L/kgの酢酸エチル:Vmax:83L/kgを添加した(Vmax:88L/kg、有機層:53L/kg)。
・両方の調整作業が行われた場合:Vmax:103L/kg(有機層:53L/kg)。
・水/有機層に分離させた。水層中の生成物について調べた。<3%の総収率。不足する場合、生成物が抽出されるまで、10L/kgの酢酸エチルで抽出する。有機層:43L/kg、調整した場合:53L/kgについてHPLC検定により収率を調べた。
・charcoal Darco G60中の10%重量/所望の生成物を添加した。前記チャコール物を酢酸エチル中で前もって撹拌した(5L/kg)。
・25℃で2時間撹拌した。サンプルを取って(1ml)、濾過し、色およびHPLCにより収率を確認した。溶液が澄明である場合(目測)、混合物を濾過した。澄明でない場合、10%重量を添加し、さらに2時間置いた。同じ手順を行う。澄明でない場合、10%をさらに加え、終夜置いた。
・珪藻土(Celite(登録商標))パッド上で濾過し、20L/kgの酢酸エチルで洗浄した。68L/kg<Vmax<78L/kg。
・酢酸エチルを蒸発させ、乾燥させた。
・10gスケールに対して、総収率は75%であった(選択的結晶化による単離物質;63%収率;効力(Potency);102%(HPLC:RAP>99.9))。