(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カルボン酸エステル基質がトリアセチンを含み、前記過酸素源が過酸化水素を含み、前記酵素触媒が、配列番号16および配列番号74からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の方法。
前記共溶媒が、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、N−エチル−2−ピロリジノン、イソプロパノール、エタノール、乳酸エチル、1,3−プロパンジオール、またはこれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記第1のコンパートメントからの前記第1の成分の少なくとも一部と、前記第2のコンパートメントからの前記第2の成分の少なくとも一部とを受け、それによって、該第1の成分の少なくとも一部と、該第2の成分の少なくとも一部とを含む混合物の形成を可能にする混合コンパートメントをさらに含む、請求項24に記載のシステム。
前記第1のコンパートメントからの前記第1の成分の少なくとも一部と、前記第2のコンパートメントからの該第2の成分の少なくとも一部とを受け、該第1の成分の少なくとも一部を、該第2の成分の少なくとも一部と同時に分注するためのノズルをさらに含む、請求項27に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】シートA〜Fは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、54、60、64、68、72、73、および74を含む、構造的に炭水化物エステラーゼファミリー7のメンバーであると分類されるいくつかの酵素のCLUSTALWアライメント(バージョン1.83)の結果を示す。酵素は全て、CE−7炭水化物エステラーゼのためのシグネチャーモチーフを一緒に形成する保存モチーフ(下線)を共有する(Vincentら,J.Mol.Biol.,330:593−606(2003年)および米国特許出願公開第2008/0176783号明細書(DiCosimoら)を参照)。酵素のCE−7ファミリーのメンバーをさらに特徴付けるために使用され得る付加的なモチーフは下線が引かれ、太字で示される(すなわち、LXDモチーフ)。
【
図1B】シートA〜Fは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、54、60、64、68、72、73、および74を含む、構造的に炭水化物エステラーゼファミリー7のメンバーであると分類されるいくつかの酵素のCLUSTALWアライメント(バージョン1.83)の結果を示す。酵素は全て、CE−7炭水化物エステラーゼのためのシグネチャーモチーフを一緒に形成する保存モチーフ(下線)を共有する(Vincentら,J.Mol.Biol.,330:593−606(2003年)および米国特許出願公開第2008/0176783号明細書(DiCosimoら)を参照)。酵素のCE−7ファミリーのメンバーをさらに特徴付けるために使用され得る付加的なモチーフは下線が引かれ、太字で示される(すなわち、LXDモチーフ)。
【
図1C】シートA〜Fは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、54、60、64、68、72、73、および74を含む、構造的に炭水化物エステラーゼファミリー7のメンバーであると分類されるいくつかの酵素のCLUSTALWアライメント(バージョン1.83)の結果を示す。酵素は全て、CE−7炭水化物エステラーゼのためのシグネチャーモチーフを一緒に形成する保存モチーフ(下線)を共有する(Vincentら,J.Mol.Biol.,330:593−606(2003年)および米国特許出願公開第2008/0176783号明細書(DiCosimoら)を参照)。酵素のCE−7ファミリーのメンバーをさらに特徴付けるために使用され得る付加的なモチーフは下線が引かれ、太字で示される(すなわち、LXDモチーフ)。
【
図1D】シートA〜Fは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、54、60、64、68、72、73、および74を含む、構造的に炭水化物エステラーゼファミリー7のメンバーであると分類されるいくつかの酵素のCLUSTALWアライメント(バージョン1.83)の結果を示す。酵素は全て、CE−7炭水化物エステラーゼのためのシグネチャーモチーフを一緒に形成する保存モチーフ(下線)を共有する(Vincentら,J.Mol.Biol.,330:593−606(2003年)および米国特許出願公開第2008/0176783号明細書(DiCosimoら)を参照)。酵素のCE−7ファミリーのメンバーをさらに特徴付けるために使用され得る付加的なモチーフは下線が引かれ、太字で示される(すなわち、LXDモチーフ)。
【
図1E】シートA〜Fは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、54、60、64、68、72、73、および74を含む、構造的に炭水化物エステラーゼファミリー7のメンバーであると分類されるいくつかの酵素のCLUSTALWアライメント(バージョン1.83)の結果を示す。酵素は全て、CE−7炭水化物エステラーゼのためのシグネチャーモチーフを一緒に形成する保存モチーフ(下線)を共有する(Vincentら,J.Mol.Biol.,330:593−606(2003年)および米国特許出願公開第2008/0176783号明細書(DiCosimoら)を参照)。酵素のCE−7ファミリーのメンバーをさらに特徴付けるために使用され得る付加的なモチーフは下線が引かれ、太字で示される(すなわち、LXDモチーフ)。
【
図1F】シートA〜Fは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、54、60、64、68、72、73、および74を含む、構造的に炭水化物エステラーゼファミリー7のメンバーであると分類されるいくつかの酵素のCLUSTALWアライメント(バージョン1.83)の結果を示す。酵素は全て、CE−7炭水化物エステラーゼのためのシグネチャーモチーフを一緒に形成する保存モチーフ(下線)を共有する(Vincentら,J.Mol.Biol.,330:593−606(2003年)および米国特許出願公開第2008/0176783号明細書(DiCosimoら)を参照)。酵素のCE−7ファミリーのメンバーをさらに特徴付けるために使用され得る付加的なモチーフは下線が引かれ、太字で示される(すなわち、LXDモチーフ)。
【0024】
生物学的配列の簡単な説明
以下の配列は、37C.F.R.§§1.821−1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の開示を含む特許出願の要件−配列規則(Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures−the Sequence Rules)」)に従い、世界知的所有権機関(WIPO)基準ST.25(1998年)、ならびに欧州特許条約(EPC)および特許協力条約(PCT)規則5.2および49.5(aの2)および実施細則の208項および付録Cの配列表の要件と一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データに対して使用される記号および形式は、37C.F.R.§1.822に記載される規則に従う。
【0025】
配列番号1は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954
TMからのセファロスポリンCデアセチラーゼ(cah)のコード領域の核酸配列である。
【0026】
配列番号2は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954
TMからのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0027】
配列番号3は、B.スブチリス(B.subtilis)亜種スブチリス株(subtilis str.)168からのセファロスポリンCデアセチラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0028】
配列番号4は、B.スブチリス(B.subtilis)亜種スブチリス株168からのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列であり、B.スブチリス(B.subtilis)BE1010からのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列と同一である。
【0029】
配列番号5は、B.スブチリス(B.subtilis)ATCC(登録商標)6633
TMからのセファロスポリンアセチルエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0030】
配列番号6は、B.スブチリス(B.subtilis)ATCC(登録商標)6633
TMからのセファロスポリンアセチルエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0031】
配列番号7は、B.リケニホルミス(B.licheniformis)ATCC(登録商標)14580
TMからのセファロスポリンCデアセチラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0032】
配列番号8は、B.リケニホルミス(B.licheniformis)ATCC(登録商標)14580
TMからのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0033】
配列番号9は、B.プミルス(B.pumilus)PS213からのアセチルキシランエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0034】
配列番号10は、B.プミルス(B.pumilus)PS213からのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0035】
配列番号11は、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)ATCC(登録商標)27405
TMからのアセチルキシランエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0036】
配列番号12は、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)ATCC(登録商標)27405
TMからのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0037】
配列番号13は、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのアセチルキシランエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0038】
配列番号14は、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0039】
配列番号15は、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8からのアセチルキシランエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0040】
配列番号16は、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8からのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0041】
配列番号17は、サーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)種JW/SL YS485からのアセチルキシランエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0042】
配列番号18は、サーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)種JW/SL YS485からのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0043】
配列番号19は、GENBANK(登録商標)受入番号ZP_01168674において報告されるような、バチルス(Bacillus)種NRRL B−14911からのセファロスポリンCデアセチラーゼをコードする核酸配列である。しかしながら、報告される配列は、15アミノ酸のN−末端付加を有すると思われ、他のセファロスポリンCデアセチラーゼとの配列アライメントと、他のCAH酵素の観察される長さ(通常は、318〜325アミノ酸の長さ)に対する報告される長さ(340アミノ酸)の比較とに基づいて、これは恐らく誤りである。
【0044】
配列番号20は、GENBANK(登録商標)受入番号ZP_01168674において報告されるN−末端の15のアミノ酸のない、バチルス(Bacillus)種NRRL B−14911からのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0045】
配列番号21は、バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125からのセファロスポリンCデアセチラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0046】
配列番号22は、バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125からのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0047】
配列番号23は、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)KSM−K16からのセファロスポリンCデアセチラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0048】
配列番号24は、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)KSM−K16からのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0049】
配列番号25は、pSW190にクローン化されたバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC29233
TMセファロスポリンCデアセチラーゼ(cah)遺伝子の核酸配列である。
【0050】
配列番号26は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)29233
TMセファロスポリンCデアセチラーゼ(CAH)の推定アミノ酸配列である。
【0051】
配列番号27および28は、pSW196の構築のために、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)アセチルキシランエステラーゼのコード領域(GENBANK(登録商標)U58632)をPCR増幅するために使用されるプライマーである。
【0052】
配列番号29は、プラスミドpSW196内のサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)アセチルキシランエステラーゼ遺伝子のコドン最適化型の核酸配列である。
【0053】
配列番号30は、カナマイシン耐性遺伝子(kan)の核酸配列である。
【0054】
配列番号31は、プラスミドpKD13の核酸配列である。
【0055】
配列番号32および33は、E.コリ(E.coli)MG1655においてkatGカタラーゼ遺伝子に対する相同性を有する領域に隣接したカナマイシン遺伝子をコードするPCR産物を発生させるために使用されるプライマーである。この産物は、内在性katG遺伝子を破壊するために使用した。
【0056】
配列番号34は、E.コリ(E.coli)MG1655においてkatGカタラーゼ遺伝子に対する相同性を有する領域に隣接したカナマイシン耐性遺伝子をコードするPCR産物の核酸配列である。この産物は、内在性のkatG遺伝子を破壊するために使用した。
【0057】
配列番号35は、E.コリ(E.coli)MG1655中のkatGカタラーゼ遺伝子の核酸配列である。
【0058】
配列番号36は、E.コリ(E.coli)MG1655中のKatGカタラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0059】
配列番号37は、プラスミドpKD46の核酸配列である。
【0060】
配列番号38および39は、katG遺伝子の破壊を確認するために使用されるプライマーである。
【0061】
配列番号40は、プラスミドpCP20の核酸配列である。
【0062】
配列番号41および42は、E.コリ(E.coli)MG1655においてkatEカタラーゼ遺伝子に対する相同性を有する領域に隣接したカナマイシン遺伝子をコードするPCR産物を発生させるために使用されるプライマーである。この産物は、内在性katE遺伝子を破壊するために使用した。
【0063】
配列番号43は、E.コリ(E.coli)MG1655においてkatEカタラーゼ遺伝子に対する相同性を有する領域に隣接したカナマイシン耐性遺伝子をコードするPCR産物の核酸配列である。この産物は、内在性katE遺伝子を破壊するために使用した。
【0064】
配列番号44は、E.コリ(E.coli)MG1655中のkatEカタラーゼ遺伝子の核酸配列である。
【0065】
配列番号45は、E.コリ(E.coli)MG1655中のKatEカタラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0066】
配列番号46および47は、単一ノックアウト株E.コリ(E.coli)MG1655ΔkatE、および二重ノックアウト株E.コリ(E.coli)MG1655ΔkatGΔkatE(本明細書ではE.コリ(E.coli)KLP18と称される)におけるkatE遺伝子の破壊を確認するために使用されるプライマーである。
【0067】
配列番号48は、配列番号10のアミノ酸配列をコードするバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)PS213のコドン最適化型の核酸配列である。
【0068】
配列番号49は、配列番号2のアミノ酸残基118〜299を包含する領域のアミノ酸配列である。
【0069】
配列番号50は、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)KSM−K16セファロスポリン−Cデアセチラーゼコード配列のコドン最適化型をコードするPCR産物の核酸配列である。
【0070】
配列番号51は、コドン最適化バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)KSM−K16セファロスポリン−Cデアセチラーゼのコード配列の核酸配列である。
【0071】
配列番号52は、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)アセチルキシランエステラーゼのコード配列のコドン最適化型をコードするPCR産物の核酸配列である。
【0072】
配列番号53は、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)アセチルキシランエステラーゼのコード配列のコドン最適化型の核酸配列である。
【0073】
配列番号54は、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)(GENBANK(登録商標)受入番号S41858)からのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0074】
配列番号55は、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8アセチルキシランエステラーゼのコード配列のコドン最適化型をコードするPCR産物の核酸配列である。
【0075】
配列番号56は、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8アセチルキシランエステラーゼのコード配列のコドン最適化型の核酸配列である。
【0076】
配列番号57は、サーモトガ・レティンガエ(Thermotoga lettingae)アセチルキシランエステラーゼのコード配列のコドン最適化型をコードするPCR産物の核酸配列である。
【0077】
配列番号58は、サーモトガ・レティンガエ(Thermotoga lettingae)アセチルキシランエステラーゼのコード配列のコドン最適化型をコードするPCR産物の核酸配列である。
【0078】
配列番号59は、サーモトガ・レティンガエ(Thermotoga lettingae)からのアセチルキシランエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0079】
配列番号60は、サーモトガ・レティンガエ(Thermotoga lettingae)からのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0080】
配列番号61は、サーモトガ・ペトロフィラ(Thermotoga petrophila)アセチルキシランエステラーゼのコード配列のコドン最適化型をコードするPCR産物の核酸配列である。
【0081】
配列番号62は、サーモトガ・ペトロフィラ(Thermotoga petrophila)アセチルキシランエステラーゼのコード配列のコドン最適化型をコードするPCR産物の核酸配列である。
【0082】
配列番号63は、サーモトガ・ペトロフィラ(Thermotoga petrophila)からのアセチルキシランエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0083】
配列番号64は、サーモトガ・ペトロフィラ(Thermotoga petrophila)からのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0084】
配列番号65は、サーモトガ種RQ2「RQ2(a)」アセチルキシランエステラーゼのコード配列のコドン最適化型をコードするPCR産物の核酸配列である。
【0085】
配列番号66は、サーモトガ種RQ2「RQ2(a)」アセチルキシランエステラーゼのコード配列のコドン最適化型をコードするPCR産物の核酸配列である。
【0086】
配列番号67は、本明細書において「RQ2(a)」と同定されるサーモトガ種RQ2からのアセチルキシランエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0087】
配列番号68は、本明細書において「RQ2(a)」と同定されるサーモトガ種RQ2からのアセチルキシランエステラーゼ(GENBANK(登録商標)受入番号ACB09222)の推定アミノ酸配列である。
【0088】
配列番号69は、サーモトガ種RQ2「RQ2(b)」アセチルキシランエステラーゼのコード配列のコドン最適化型をコードするPCR産物の核酸配列である。
【0089】
配列番号70は、サーモトガ種RQ2「RQ2(b)」アセチルキシランエステラーゼのコード配列のコドン最適化型をコードするPCR産物の核酸配列である。
【0090】
配列番号71は、本明細書において「RQ2(b)」と同定されるサーモトガ種RQ2からのアセチルキシランエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0091】
配列番号72は、本明細書において「RQ2(b)」と同定されるサーモトガ種RQ2からのアセチルキシランエステラーゼ(GENBANK(登録商標)受入番号ACB08860)の推定アミノ酸配列である。
【0092】
配列番号73は、共有の同時出願された同時係属中の米国特許出願代理人整理番号CL4392USNA(参照によってその全体が本明細書中に援用される)からのサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)アセチルキシランエステラーゼ変異体の推定アミノ酸配列であり、ここで、位置277におけるXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0093】
配列番号74は、共有の同時出願された同時係属中の米国特許出願代理人整理番号CL4392USNAからのサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8アセチルキシランエステラーゼ変異体の推定アミノ酸配列であり、ここで、位置277におけるXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【発明を実施するための形態】
【0094】
多成分その場(in situ)型の過酸消毒薬配合物の特定の用途では、第1の成分(酵素および酵素基質を含む)に対する第2の成分(水性過酸素源を含む)の比率は1:1〜10:1の範囲内であることが望ましいことがあり、この場合、第2の成分の10部〜1部(重量による)が第1の成分の1部(重量による)と混合されて、消毒のために有効な濃度で過酸が生成される。
【0095】
記載される問題は、多成分方法および系(すなわち、本発明との関連では、所望の反応時間の前には別々に貯蔵される少なくとも2つの反応成分を用いたペルオキシカルボン酸の生成を伴う方法および系)において、共溶媒の包含によって、ペルヒドロラーゼの基質が水中の過酸素源と有効に混合されて、例えば表面に、満足に送達され得るという発見によって解決された。本明細書において記載されるように、成分B対成分Aの比率が1:1〜10:1の範囲内になるように、触媒組成物(成分A、本明細書では「第1の」成分とも称される)へ有機溶媒を添加し、そして水性過酸素源(成分B、本明細書では「第2の」成分とも称される)から同体積の水を除去することによって、消毒に有効な濃度における過酸の生成が可能になる。有機溶媒は、好ましくは、配合物中で不活性および非反応性である。また共溶媒は、好ましくは、酵素基質(例えば、トリアセチン)と完全に混和性である。また共溶媒は、好ましくは、混合後の合わせた成分AおよびB中で、その最終濃度において可溶性である。本発明に従って、構造的に関連する酵素のCE−7炭水化物エステラーゼファミリーを多成分系中で使用して、消毒および/または漂白用途のための濃度の過酸を高効率で発生させることができ、以下に十分に記載されるように、有機溶媒を含む共溶媒は、驚くことに、酵素触媒の過加水分解活性を実質的に損失することなく水性反応配合物中の基質の溶解度を高めるために使用することができる。さらなる態様では、本発明はランドリーケア用途で使用するための方法および多成分系を含み、ここで、衣類品または織物品は、漂白、染みの除去、臭気の低減、衛生化、消毒、またはこれらの組み合わせのために適切な濃度で過酸と接触される。
【0096】
本発明は、本開示の一部を形成する添付図面、配列表、および実施例に関連して行われる以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解されるであろう。本発明は本明細書中に記載および/または表示される特定の生成物、方法、条件またはパラメータに限定されず、そして本明細書において使用される専門用語は単なる例として特定の実施形態を説明するためのものであって、請求される本発明を限定することは意図されないと理解されるべきである。
【0097】
本開示において、多数の用語および略語が使用される。他に具体的に記載されない限りは以下の定義が適用される。
【0098】
本明細書で用いられる場合、本発明の要素または成分に先行する冠詞「a」、「an」、および「the」は、要素または成分の事例(すなわち、発生)の数に関して非限定的であることが意図される。従って、「a」、「an」および「the」は1つまたは少なくとも1つを含むと解釈されるべきであり、要素または成分の単数の語形は、その数が明らかに単数形であることを意味しない限りは複数形も含む。
【0099】
本明細書で用いられる場合、「含む(comprising)」という用語は、特許請求の範囲において言及される規定の特徴、整数、ステップ、または成分の存在を意味するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、成分またはそれらの群の存在または付加を排除しない。「含む」という用語は、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」という用語によって包含される実施形態を含むことが意図される。同様に、「から本質的になる」という用語は、「からなる」という用語によって包含される実施形態を含むことが意図される。
【0100】
本明細書で用いられる場合、使用される材料または反応物の量を修正する「約」という用語は、例えば、濃縮物を製造するため、または実際に溶液を使用するために使用される典型的な測定および液体処理手順によって、これらの手順における故意でない誤差によって、組成物を製造する、または方法を実行するために使用される材料の製造、供給源、または純度の差異によって、および同類のことによって生じ得る数量の変動を指す。また「約」という用語は、特定の初期混合物から得られる組成物に対する平衡条件が異なるために異なる量も包含する。「約」という用語によって修正されるかどうかにかかわらず、特許請求の範囲は、その量と同等の量を含む。
【0101】
存在する場合、全ての範囲は包括的であり、結合可能である。例えば、「1〜5」の範囲が指定される場合、指定される範囲は、「1〜4」、「1〜3」、「1〜2」、「1〜2および4〜5」、「1〜3および5」などの範囲を含むと解釈されるべきである。
【0102】
本明細書で用いられる場合、「過酸」という用語は、ペルオキシ酸(peroxyacid)、ペルオキシカルボン酸、ペルオキシ酸(peroxy acid)、過カルボン酸およびペルオキソ酸(peroxoic acid)と同義である。
【0103】
本明細書で用いられる場合、「過酢酸」という用語は「PAA」と略され、ペルオキシ酢酸、エタンペルオキソ酸、およびCAS登録番号79−21−0の全ての他の同義語と同義である。
【0104】
本明細書で用いられる場合、「基質」、「適切な基質」、および「カルボン酸エステル基質」という用語は、具体的には:
(a)構造
[X]
mR
5
(式中、
Xは、式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6は、場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換され得るC1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、場合により、R
6は、1つまたは複数のエーテル結合を含み(R
6はC2〜C7である)、
R
5は、場合によりヒドロキシル基によって置換され得るC1〜C6線状、分枝状、または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に1つ以下のヒドロキシル基または1つ以下のエステル基を含み、場合により、R
5は、1つまたは複数のエーテル結合を含み、
mは、1からR
5中の炭素原子の数までである)
を有し、25℃において少なくとも5ppmである水中での溶解度を有する1つまたは複数のエステル、または
(b)構造
【化3】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換され得るC1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々にHまたはR
1C(O)である)
を有する1つまたは複数のグリセリド、または
(c)式
【化4】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換され得るC1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2は、C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2O)
n、または(CH
2CH(CH
3)−O)
nHであり、nは1〜10である)
の1つまたは複数のエステル、または
(d)1つまたは複数のアセチル化単糖、アセチル化二糖、もしくはアセチル化多糖、または
(e)(a)〜(d)の任意の組み合わせ
を交換可能に指す。
【0105】
前記カルボン酸エステル基質の例としては、モノアセチン、トリアセチン、モノプロピオニン、ジプロピオニン、トリプロピオニン、モノブチリン、ジブチリン、トリブチリン、グルコースペンタアセタート、キシローステトラアセタート、アセチル化キシラン、アセチル化キシラン断片、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセタート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、トリ−O−アセチル−グルカール、プロピレングリコールジアセタート、エチレングリコールジアセタートか、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,5−ペンタンジオール、1,6−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールのモノエステルもしくはジエステルか、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0106】
本明細書で用いられる場合、「モノアセチン」という用語は、グリセロールモノアセタート、グリセリンモノアセタート、およびグリセリルモノアセタートと同義である。
【0107】
本明細書で用いられる場合、「ジアセチン」という用語は、グリセロールジアセタート、グリセリンジアセタート、グリセリルジアセタート、およびCAS登録番号25395−31−7の全ての他の同義語と同義である。
【0108】
本明細書で用いられる場合、「トリアセチン」という用語は、グリセリントリアセタート、グリセロールトリアセタート、グリセリルトリアセタート、1,2,3−トリアセトキシプロパン、1,2,3−プロパントリオールトリアセタート、およびCAS登録番号102−76−1の全ての他の同義語と同義である。
【0109】
本明細書で用いられる場合、「モノブチリン」という用語は、グリセロールモノブチラート、グリセリンモノブチラート、およびグリセリルモノブチラートと同義である。
【0110】
本明細書で用いられる場合、「ジブチリン」という用語は、グリセロールジブチラートおよびグリセリルジブチラートと同義である。
【0111】
本明細書で用いられる場合、「トリブチリン」という用語は、グリセロールトリブチラート、1,2,3−トリブチリルグリセロール、およびCAS登録番号60−01−5の全ての他の同義語と同義である。
【0112】
本明細書で用いられる場合、「モノプロピオニン」という用語は、グリセロールモノプロピオナート、グリセリンモノプロピオナート、およびグリセリルモノプロピオナートと同義である。
【0113】
本明細書で用いられる場合、「ジプロピオニン」という用語は、グリセロールジプロピオナートおよびグリセリルジプロピオナートと同義である。
【0114】
本明細書で用いられる場合、「トリプロピオニン」という用語は、グリセリルトリプロピオナート、グリセロールトリプロピオナート、1,2,3−トリプロピオニルグリセロール、およびCAS登録番号139−45−7の全ての他の同義語と同義である。
【0115】
本明細書で用いられる場合、「酢酸エチル」という用語は、酢酸エーテル、アセトキシエタン、エタン酸エチル、酢酸エチルエステル、エタン酸エチルエステル、エチル酢酸エステル、およびCAS登録番号141−78−6の全ての他の同義語と同義である。
【0116】
本明細書で用いられる場合、「乳酸エチル」という用語は、乳酸エチルエステル、およびCAS登録番号97−64−3の全ての他の同義語と同義である。
【0117】
本明細書で用いられる場合、「アセチル化糖」および「アセチル化糖類」という用語は、少なくとも1つのアセチル基を含む単糖、二糖および多糖を指す。例として、グルコースペンタアセタート、キシローステトラアセタート、アセチル化キシラン、アセチル化キシラン断片、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセタート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、およびトリ−O−アセチル−グルカールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
本明細書で用いられる場合、「ヒドロカルビル」、「ヒドロカルビル基」、および「ヒドロカルビル部分」という用語は、炭素−炭素の単結合、二重結合、または三重結合および/またはエーテル結合によって結合され、それに応じて水素原子によって置換された炭素原子の直鎖、分枝状または環状配置を意味する。このようなヒドロカルビル基は、脂肪族および/または芳香族であり得る。ヒドロカルビル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、ペンチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、およびフェニルが挙げられる。好ましい実施形態では、ヒドロカルビル部分は、炭素−炭素単結合および/またはエーテル結合によって結合され、それに応じて水素原子によって置換された炭素原子の直鎖、分枝状または環状配置である。
【0119】
本明細書で用いられる場合、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,5−ペンタンジオール、1,6−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよびこれらの混合物の「モノエステル」および「ジエステル」という用語は、式RC(O)Oの少なくとも1つのエステル基を含む前記化合物を指し、ここでRは、C1〜C7線状ヒドロカルビル部分である。一実施形態では、カルボン酸エステル基質は、プロピレングリコールジアセタート(PGDA)、エチレングリコールジアセタート(EDGA)またはこれらの混合物を含む。
【0120】
本明細書で用いられる場合、「プロピレングリコールジアセタート」という用語は、1,2−ジアセトキシプロパン、プロピレンジアセタート、1,2−プロパンジオールジアセタート、およびCAS登録番号623−84−7の全ての他の同義語と同義である。
【0121】
本明細書で用いられる場合、「エチレングリコールジアセタート」という用語は、1,2−ジアセトキシエタン、エチレンジアセタート、グリコールジアセタート、およびCAS登録番号111−55−7の全ての他の同義語と同義である。
【0122】
本明細書で用いられる場合、「適切な酵素反応混合物」、「その場での過酸の発生に適した成分」、「適切な反応成分」、「適切な水性反応混合物」、および「反応混合物」という用語は、反応物および酵素触媒が接触される材料および水を指す。適切な水性反応混合物の成分が本明細書において提供されており、当業者は本方法に適した成分の変動の範囲を認識する。一実施形態では、適切な酵素反応混合物は、反応成分を混ぜ合わせると、その場で過酸を生成する。従って、反応成分は、反応成分が使用されるまで別々に保持される多成分系として提供され得る。多数の活性成分を分離し、そして混ぜ合わせるための系および手段の設計は当該技術分野において知られており、一般に、個々の反応成分の物理的な形態に依存するであろう。例えば、反応性流体を混合したときに所望の漂白剤が生成されるいくつかの漂白用途において見られるように、多数の活性流体(液体−液体)系は、通常、マルチチャンバーディスペンサーボトルまたは2相系を使用する(例えば、米国特許出願公開第2005/0139608号明細書、米国特許第5,398,846号明細書、米国特許第5,624,634号明細書、米国特許第6,391,840号明細書、欧州特許第0807156B1号明細書、米国特許出願公開第2005/0008526号明細書、およびPCT公報の国際公開第00/61713号パンフレット)。過酸を発生させるために使用される多成分系のその他の形態には、粉末(例えば、米国特許第5,116,575号明細書)、多層錠剤(例えば、米国特許第6,210,639明細書)、多数のコンパートメントを有する水溶性パケット(例えば米国特許第6,995,125号明細書)、および水を添加すると反応する固体凝集体(例えば、米国特許第6,319,888号明細書)などの、1つまたは複数の固体成分または固体−液体成分の組み合わせのために設計されたものが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0123】
多成分系では、活性要素はまず1つまたは複数のそれぞれの成分において互いに分離され、次に混ぜ合わせられて反応配合物を形成する。多成分系は、活性成分が満足に混ざり合わないこと、1つまたは複数の成分の活性の中和もしくは低下、および/または送達の要件に適合しない反応配合物の形成などの問題に直面し得る。例えば、水を含む第2の成分中に不溶性または部分的に不溶性である酵素およびこのような酵素のための基質を含む少なくとも1つの成分を包含する多成分系では、ペルオキシカルボン酸生成物を有効に生成および送達する能力を妨害する少なくとも3つの状態が起こり得る:第1に、酵素/基質要素の粘度が高すぎて、過酸素源を含む第2の要素との効率的な混合を可能にできず、ペルオキシカルボン酸の生成速度を低下させ、第2に、酵素/基質要素の粘度が高すぎて、酵素/基質要素および過酸素源の混合物を含む生成物の特定の送達モード(噴霧など)を可能にできず、第3に、水溶液中に過酸素源を含む第2の成分との混合後の酵素/基質成分中の基質の溶解速度が低すぎて、満足できるペルオキシカルボン酸の生成速度を可能にしない。これらの問題は、酵素/基質要素を含む成分に対して特定の比率の水性過酸素源を含む成分の使用が所望される状況でも明白になる。
【0124】
酵素が有機溶媒中に直接懸濁される場合か、あるいは混和性の有機/水性の単相溶媒が使用される場合に、有機溶媒が酵素の活性に有害であり得ることは当業者によく知られている。酵素の活性および構造に対する有機溶媒の影響を概説する2つの文献刊行物は、(a)上記のC.Laaneら、および(b)上記のD.A.CowanおよびA.R.Plantである。CowanおよびPlantは、当該技術では、有機相系において細胞内酵素を安定化するために2以下のlog Pを有する有機溶媒を使用することに、ほとんどまたは全く価値がないことが通常認識されていると言及しており(87頁において)、ここで、log Pは、オクタノールと水の間の物質の分配係数の対数であると定義され、P=[溶質]
オクタノール/[溶質]
水と表される。2〜4の間のlog Pを有する有機溶媒は、酵素の安定性に応じてケースバイケースで使用することができ、4よりも大きいlog Pを有するものは通常有機相系において有用である。
【0125】
CowanおよびPlantはさらに、単相の有機−水性溶媒中に溶解した酵素の直接暴露の効果は、溶媒濃度、溶媒/酵素表面基の相互作用、および溶媒/酵素水和殻の相互作用に依存すると言及している(91頁において)。溶媒が単相を生じるために水相と十分に混和性であるように、溶媒のlog Pは十分に低くなければならないので、低log Pの有機溶媒を含有する単相の有機−水性溶媒は、通常、有機溶媒濃度が低い用途を除いて酵素の安定性に対して負の効果を有する。従って、低いlog Pを有する有機溶媒は、伝統的に、役に立たない低濃度以外では酵素の安定性に有害であると考えられる。
【0126】
トリアセチンは、エタノール(log P−0.26)およびイソプロパノール(log P0.15)(CowanおよびPlant)と類似して、0.25のlog Pを有することが報告されており(Y.M.Gunningら,J.Agric.Food
Chem.48:395−399(2000年))、従って、トリアセチン中での酵素粉末の貯蔵は、log Pが2よりも小さい付加的な共溶媒(例えば、シクロヘキサノン、log P=0.94)(CowanおよびPlant)、1,2−プロパンジオール、log P=−1.41(Gunningら)、1,3−プロパンジオール、log P=−1.3(S−J.Kuoら,J.Am.Oil Chem.Soc.73:1427−1433(1996年)、ジエチレングリコールブチルエーテル、log P=0.56(N.Funasakiら,J.Phys.Chem.88:5786−5790(1984年)、トリエチレングリコール、log P=−1.75(L.Braekenら,ChemPhysChem 6:1606−1612(2005年))の使用がそうであるように、容認できない酵素活性の損失をもたらすことが予想されるであろう。CowanおよびPlantの上記の教示を適用すると、低いlog P値を有する上記の溶媒は、多成分系の酵素を含有する第1の成分中に、酵素の不活性化(第1の成分と水中に過酸素源を含む第2の成分との混合の前または後に)を伴わずに適切に含有できないことが予想されるであろう。
【0127】
しかしながら、驚くことに、約2よりも小さいlog Pを有する有機溶媒を含む共溶媒を包含させると、水中での溶解度が不十分な酵素基質の溶解を助ける働きをし、そして/あるいは所望の比率の成分AおよびBの混合を可能にするための成分Aの希釈剤としての役割を果たし得ることが発見された。言い換えると、共溶媒は、そうでなければ消費者、工業、および医療の状況において従来の(あるいは、他の点で適切な)手段によって送達され得る形態のペルオキシカルボン酸生成物を有効に生成および送達する能力を妨害する状態(例えば、酵素/基質成分の容認できないほど高い粘度、この成分と水中の過酸素源との不十分な混合)を解決することができる。
【0128】
本明細書に記載される方法および系において、約2よりも小さいlog P(ここで、log Pは、オクタノールと水の間の物質の分配係数の対数であると定義され、P=[溶質]
オクタノール/[溶質]
水と表される)を有する有機溶媒を含む共溶媒は、酵素触媒の過加水分解活性を実質的に損失することなく、水性反応配合物中に基質を可溶化し、この共溶媒は、前記酵素触媒のための基質ではない。
【0129】
いくつかの実施形態では、酵素触媒およびカルボン酸エステル基質の配合物を含む第1の成分は、場合により、無機または有機緩衝液、安定剤、防蝕剤、湿潤剤、またはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、過酸素源は、過酸化水素安定剤を含む。
【0130】
本明細書で用いられる場合、「過加水分解」という用語は、過酸を形成するための選択された基質と過酸化物との反応と定義される。通常、無機過酸化物は触媒の存在下で選択された基質と反応されて、過酸を生成する。本明細書で用いられる場合、「化学的な過加水分解」という用語は、基質(すなわち、過酸前駆体)が過酸化水素源と混ぜ合わせられる過加水分解反応を含み、ここで過酸は、酵素触媒を存在させずに形成される。
【0131】
本明細書で用いられる場合、「ペルヒドロラーゼ活性」という用語はタンパク質の単位質量(例えば、ミリグラム)、乾燥細胞重量、または固定化触媒重量あたりの触媒活性を指す。
【0132】
本明細書で用いられる場合、「酵素活性の1単位」または「活性の1単位」または「U」は、特定の温度で1分あたり1μmolの過酸生成物を生成するために必要とされるペルヒドロラーゼ活性の量と定義される。
【0133】
本明細書で用いられる場合、「酵素触媒」および「ペルヒドロラーゼ触媒」という用語は、過加水分解活性を有する酵素を含む触媒を指し、全微生物細胞、透過処理された微生物細胞、微生物細胞抽出物の1つまたは複数の細胞成分、部分精製酵素、または精製酵素の形態であり得る。また酵素触媒は化学修飾されていてもよい(例えば、ペグ化、または架橋試薬との反応による)。またペルヒドロラーゼ触媒は、当業者によく知られた方法を用いて可溶性または不溶性担体に固定化されていてもよく、例えば、「Immobilization of Enzymes and Cells」,Gordon F.Bickerstaff編、Humana Press,Totowa,NJ,USA、1997年が参照される。本明細書に記載されているように、過加水分解活性を有する本発明の酵素は全て、構造的に、酵素の炭水化物エステラーゼファミリー7(「CE−7」ファミリー)のメンバーである(Coutinho,P.M.,Henrissat,B.「Carbohydrate−active enzymes:an integrated database approach」in「Recent Advances in Carbohydrate Bioengineering」,H.J.Gilbert,G.Davies,B.HenrissatおよびB.Svensson編,(1999年)The Royal Society of Chemistry,Cambridge,3−12頁を参照)。酵素のCE−7ファミリーは、過酸素源と混ぜ合わせたときに、様々なカルボン酸エステル基質から過酸を生成するのに特に有効であることが実証されている(PCT公報の国際公開第2007/070609号パンフレット、ならびに米国特許出願公開第2008/0176299号明細書、米国特許出願公開第2008/176783号明細書、および米国特許出願公開第2009/0005590号明細書(DiCosimoら)を参照、これらはそれぞれ、参照によってその全体が本明細書中に援用される)。
【0134】
CE−7ファミリーのメンバーとしては、セファロスポリンCデアセチラーゼ(CAH、E.C.3.1.1.41)およびアセチルキシランエステラーゼ(AXE、E.C.3.1.1.72)が挙げられる。CE−7エステラーゼファミリーのメンバーは、保存されたシグネチャーモチーフを共有する(Vincentら、上記)。CE−7シグネチャーモチーフおよび/または実質的に類似の構造を含むペルヒドロラーゼは、本発明で使用するのに適している。実質的に類似の生体分子を同定するための手段は、当該技術分野においてよく知られている(例えば、配列アライメントプロトコール、核酸ハイブリダイゼーション、および/または保存シグネチャーモチーフの存在)。1つの態様では、本発明の方法および系における酵素触媒は、本明細書において提供される配列に対して少なくとも30%、好ましくは少なくとも33%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、またさらにより好ましくは少なくとも70%、またさらにより好ましくは少なくとも80%、またさらにより好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸同一性を有する実質的に類似の酵素を含む。本発明のCE−7炭水化物エステラーゼをコードする核酸分子も本明細書において提供される。さらなる実施形態では、本発明の方法および系において有用なペルヒドロラーゼ触媒は、高度にストリンジェントな条件下で本発明の核酸分子の1つにハイブリッド形成する核酸分子によってコードされる。
【0135】
本明細書で用いられる場合、「セファロスポリンCデアセチラーゼ」および「セファロスポリンCアセチルヒドロラーゼ」という用語は、セファロスポリンCおよび7−アミノセファロスポラン酸などのセファロスポリンの脱アセチル化を触媒する酵素(E.C.3.1.1.41)を指す(Mitsushimaら,(1995年)Appl.Env.Microbiol.61(6):2224−2229)。本明細書において記載されるように、有意な過加水分解活性を有するいくつかのセファロスポリンCデアセチラーゼが提供される。
【0136】
本明細書で用いられる場合、「アセチルキシランエステラーゼ」は、アセチル化キシランおよび他のアセチル化糖類の脱アセチル化を触媒する酵素(E.C.3.1.1.72、AXE)を指す。本明細書において説明されるように、有意なペルヒドロラーゼ活性を有するアセチルキシランエステラーゼとして分類されるいくつかの酵素が提供される。
【0137】
本明細書で用いられる場合、「バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954
TM」という用語は、American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))に寄託され、国際寄託受入番号ATCC(登録商標)31954
TMを有する細菌細胞を指す。バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954
TMは、2−炭素〜8−炭素アシル基を有するグリセロールエステル、特にジアセチンを加水分解することができるエステルヒドロラーゼ(「ジアセチナーゼ」)活性を有すると報告されている(米国特許第4,444,886号明細書、参照によってその全体が本明細書中に援用される)。本明細書において記載されるように、有意なペルヒドロラーゼ活性を有する酵素は、B.スブチリス(B.subtilis)ATCC(登録商標)31954
TMから単離されており、配列番号2として提供される。単離した酵素のアミノ酸配列は、GENBANK(登録商標)受入番号BAA01729.1(Mitsushimaら、上記)によって提供されるセファロスポリンCデアセチラーゼと100%のアミノ酸同一性を有する。
【0138】
本明細書で用いられる場合、「バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)BE1010」という用語は、PayneおよびJackson(J.Bacteriol.173:2278−2282(1991年))によって報告されるようなバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)の株を指す。バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)BE1010は、スブチリシンおよび中性プロテアーゼをコードする遺伝子において染色体の欠失を有するバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)亜種スブチリス株BR151(ATCC(登録商標)33677
TM)の誘導体である。本明細書において記載されるように、有意なペルヒドロラーゼ活性を有する酵素は、B.スブチリス(B.subtilis)BE1010から単離されており、配列番号4として提供される。単離した酵素のアミノ酸配列は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)亜種スブチリス株168で報告されているセファロスポリンCデアセチラーゼと100%のアミノ酸同一性を有する(Kunstら,Nature 390:249−256(1997年))。
【0139】
本明細書で用いられる場合、「バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)29233
TM」という用語は、American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))に寄託され、国際寄託受入番号ATCC(登録商標)29233
TMを有するバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)の株を指す。本明細書において記載されるように、有意なペルヒドロラーゼ活性を有する酵素は、B.スブチリス(B.subtilis)ATCC(登録商標)29233
TMから単離および配列決定されており、配列番号26として提供される。
【0140】
本明細書で用いられる場合、「クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)ATCC(登録商標)27405
TM」という用語は、American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))に寄託され、国際寄託受入番号ATCC(登録商標)27405
TMを有するクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)の株を指す。C.サーモセラム(C.thermocellum)ATCC(登録商標)27405
TMからのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号12として提供される。
【0141】
本明細書で用いられる場合、「バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)6633
TM」という用語は、American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))に寄託され、国際寄託受入番号ATCC(登録商標)6633
TMを有する細菌細胞を指す。バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)6633
TMは、セファロスポリンアセチルヒドロラーゼ活性を有することが報告されている(米国特許第6,465,233号明細書)。B.スブチリス(B.subtilis)ATCC(登録商標)6633
TMからのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号5として提供される。
【0142】
本明細書で用いられる場合、「バチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)ATCC(登録商標)14580
TM」という用語は、American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))に寄託され、国際寄託受入番号ATCC(登録商標)14580
TMを有する細菌細胞を指す。バチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)ATCC(登録商標)14580
TMは、セファロスポリンアセチルヒドロラーゼ活性を有することが報告されている(GENBANK(登録商標)YP_077621)。B.リケニホルミス(B.licheniformis)ATCC(登録商標)14580
TMからのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号8として提供される。
【0143】
本明細書で用いられる場合、「バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)PS213」という用語は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有することが報告された細菌細胞を指す(GENBANK(登録商標)AJ249957)。バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)PS213からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号10として提供される。
【0144】
本明細書で用いられる場合、「サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)」という用語は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有することが報告されたサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)の株を指す(GENBANK(登録商標)AAB70869)。サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号14として提供される。最近、配列番号14に由来する変異酵素は改善された過加水分解活性を有することが報告されており、配列番号73として提供され(「IMPROVED PERHYDROLASES FOR ENZYMATIC PERACID GENERATION」という表題の、共有の同時出願された同時係属中の米国特許出願代理人整理番号CL4392USNAを参照、参照によってその全体が本明細書中に援用される)、ここで、位置277におけるXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0145】
本明細書で用いられる場合、「サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8」という用語は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有することが報告されたサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)の株を指す(GENBANK(登録商標)NP_227893.1)。サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号16として提供される。最近、配列番号16に由来する変異酵素は改善された過加水分解活性を有することが報告されており、配列番号74として提供され(共有の同時出願された同時係属中の米国特許出願代理人整理番号CL4392USNAを参照)、ここで、位置277におけるXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0146】
本明細書で用いられる場合、「バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)KSM−K16」という用語は、セファロスポリン−Cデアセチラーゼ活性を有することが報告された細菌細胞を指す(GENBANK(登録商標)YP_175265)。バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)KSM−K16からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号24として提供される。
【0147】
本明細書で用いられる場合、「サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanearobacterium saccharolyticum)」という用語は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有することが報告された細菌株を指す(GENBANK(登録商標)S41858)。サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanearobacterium saccharolyticum)からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号54として提供される。
【0148】
本明細書で用いられる場合、「サーモトガ・レティンガエ(Thermotoga lettingae)」という用語は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有することが報告された細菌細胞を指す(GENBANK(登録商標)CP000812)。サーモトガ・レティンガエ(Thermotoga lettingae)からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素の推定アミノ酸配列は、配列番号60として提供される。
【0149】
本明細書で用いられる場合、「サーモトガ・ペトロフィラ(Thermotoga petrophila)」という用語は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有することが報告された細菌細胞を指す(GENBANK(登録商標)CP000702)。サーモトガ・レティンガエ(Thermotoga lettingae)からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素の推定アミノ酸配列は、配列番号64として提供される。
【0150】
本明細書で用いられる場合、「サーモトガ種RQ2」という用語は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有することが報告された細菌細胞を指す(GENBANK(登録商標)CP000969)。サーモトガ種RQ2から2つの異なるアセチルキシランエステラーゼが同定されており、本明細書では「RQ2(a)」(配列番号68として提供される推定アミノ酸配列)および「RQ2(b)」(配列番号72として提供される推定アミノ酸配列)と称される。
【0151】
本明細書で用いられる場合、「単離核酸分子」および「単離核酸断片」は交換可能に使用され、場合により、合成、非天然または改変ヌクレオチド塩基を含有する、一本鎖または二本鎖であるRNAまたはDNAのポリマーを指すであろう。DNAのポリマーの形態の単離核酸分子は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1つまたは複数のセグメントから構成され得る。
【0152】
「アミノ酸」という用語は、タンパク質またはポリペプチドの基本的な化学構造単位を指す。本明細書では、特定のアミノ酸を同定するために以下の略語が使用される。
【0154】
本明細書で用いられる場合、「実質的に類似の」は、1つまたは複数のヌクレオチド塩基の変化が1つまたは複数のアミノ酸の付加、置換、または欠失をもたらすが、DNA配列によってコードされるタンパク質の機能特性(すなわち、過加水分解活性)に影響を与えない核酸分子を指す。本明細書で用いられる場合、「実質的に類似の」は、本明細書において報告される配列と少なくとも30%、好ましくは少なくとも33%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、またさらにより好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有する酵素も指し、ここで、得られる酵素は、本発明の機能特性(すなわち、過加水分解活性)を保持する。「実質的に類似の」は、高度にストリンジェントな条件下で本明細書において報告される核酸分子とハイブリッド形成する核酸分子によってコードされる過加水分解活性を有する酵素も指すことができる。従って、本発明は、特定の例示的な配列よりも多くを包含することが理解される。
【0155】
例えば、所与の部位で化学的に等価なアミノ酸の生成をもたらすが、コードされるタンパク質の機能特性に影響を与えない遺伝子の改変が一般的であることは、当該技術分野ではよく知られている。本発明の目的のために、置換は、以下の5つの群:
1. 小さい脂肪族の非極性またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr(pro、Gly)、
2. 極性の負帯電残基およびそのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln、
3. 極性の正帯電残基:His、Arg、Lys、
4. 大きい脂肪族の非極性残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys)、ならびに
5. 大きい芳香族残基:Phe、Tyr、およびTrp
のうちの1の中での交換であると定義される。
【0156】
従って、疎水性アミノ酸であるアミノ酸アラニンに対するコドンは、別のあまり疎水性でない残基(グリシンなど)またはより疎水性の残基(バリン、ロイシン、またはイソロイシンなど)をコードするコドンによって置換され得る。同様に、1つの負帯電残基による別の残基(アスパラギン酸によるグルタミン酸など)の置換、あるいは1つの正帯電残基による別の残基(リジンによるアルギニンなど)の置換をもたらす変化も、機能的に等価な産物を生じることが予想され得る。多くの場合、タンパク質分子のN末端およびC末端部分の変更をもたらすヌクレオチドの変化も、タンパク質の活性を変更しないと予想されるであろう。
【0157】
提唱される改変のそれぞれは、コードされる産物の生物活性の保持の決定と同様に、当該技術分野において十分にルーチン的な技能の範囲内である。さらに、当業者は、実質的に類似の配列が本発明によって包含されることを認識する。一実施形態では、実質的に類似の配列は、高度にストリンジェントな条件(0.1×SSC、0.1%SDS、65℃、そして2×SSC、0.1%のSDS、続いて0.1×SSC、0.1%SDS、65℃による洗浄)下で本明細書において例示される配列とハイブリッド形成するその能力によって定義される。いくつかの実施形態では、本発明の方法および系は、ストリンジェント条件下で本明細書において報告される核酸分子とハイブリッド形成する単離核酸分子によってコードされるペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を含むことができる。好ましい実施形態では、本発明の方法および系は、ストリンジェント条件下で、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号29、配列番号48、配列番号51、配列番号53、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号69、配列番号70、および配列番号71からなる群から選択される核酸配列を有する核酸分子とハイブリッド形成する単離核酸分子によってコードされるペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を用いる。
【0158】
本明細書で用いられる場合、核酸分子は、適切な温度および溶液イオン強度条件下で第1の分子の一本鎖が他の分子にアニールすることができる場合に、cDNA、ゲノムDNA、またはRNAなどの別の核酸断片と「ハイブリッド形成可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件はよく知られており、Sambrook,J.およびRussell,D.,T.「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor(2001年)において例示されている。温度およびイオン強度条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。ストリンジェンシー条件を調整して、中程度に類似した分子(遠縁の生物からの相同配列など)から、高度に類似した分子(近縁の生物から機能酵素を複製する遺伝子など)までをスクリーニングすることができる。ハイブリダイゼーション後の洗浄は、通常、ストリンジェンシー条件を決定する。1つの好ましい条件セットは、6×SSC、0.5%のSDSにより室温で15分間の洗浄から始まり、次に、2×SSC、0.5%のSDSにより45℃で30分間の洗浄を繰り返し、そして次に、0.2×SSC、0.5%のSDSにより50℃で30分間の洗浄を2回繰り返すという一連の洗浄を用いる。より好ましい条件セットはより高温を用い、最終の0.2×SSC、0.5%のSDSにおける2回の30分間の洗浄の温度を60℃に上昇させたことを除いて、洗浄は上記のものと同一である。もう1つの好ましいストリンジェントハイブリダイゼーション条件セットは0.1×SSC、0.1%のSDS、65℃であり、本明細書において例示された配列を用いて2×SSC、0.1%のSDSにより洗浄され、続いて0.1×SSC、0.1%のSDS、65℃で最終洗浄が行われる。
【0159】
ハイブリダイゼーションは2つの核酸が相補的配列を含有することを必要とするが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて、塩基間のミスマッチが可能である。核酸をハイブリッド形成するために適切なストリンジェンシーは、当該技術分野において周知の変数である核酸の長さおよび相補性の程度に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が大きいほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドのためのTmの値も大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対的な安定性(より高いTmに相当する)は、以下の順:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNAで低下する。長さが100を超えるヌクレオチドのハイブリッドについては、Tmを計算するための式が誘導されている(SambrookおよびRussell、上記)。より短い核酸、すなわちオリゴヌクレオチドによるハイブリダイゼーションについては、ミスマッチの位置がより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(SambrookおよびRussell、上記)。1つの態様では、ハイブリッド形成可能な核酸の長さは、少なくとも約10ヌクレオチドである。好ましくは、ハイブリッド形成可能な核酸の最小の長さは少なくとも約15ヌクレオチドの長さであり、より好ましくは少なくとも約20ヌクレオチドの長さであり、さらにより好ましくは少なくとも30ヌクレオチドの長さであり、さらにより好ましくは少なくとも300ヌクレオチドの長さであり、最も好ましくは少なくとも800ヌクレオチドの長さである。さらに、当業者は、プローブの長さなどの因子に従って必要であれば温度および洗浄溶液の塩濃度が調整され得ることを認識するであろう。
【0160】
本明細書で用いられる場合、「同一性パーセント」という用語は、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列間、または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該技術分野において、「同一性」は、場合によっては、このような配列のストリング間のマッチによって決定されるポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」および「類似性」は、「Computational Molecular Biology」(Lesk,A.M.編)Oxford University Press,NY(1988年)、「Biocomputing:Informatics and Genome Projects」(Smith,D.W.編)Academic Press,NY(1993年)、「Computer Analysis of Sequence Data,Part I」(Griffin,A.M.,およびGriffin,H.G.編)Humana Press,NJ(1994年)、「Sequence Analysis in Molecular Biology」(von Heinje,G.編)Academic Press(1987年)、および「Sequence Analysis Primer」(Gribskov,M.およびDevereux,J.編)Stockton Press,NY(1991年)において記載される方法を含むがこれらに限定されない既知の方法によって容易に計算することができる。同一性および類似性を決定するための方法は、公的に利用可能なンピュータプログラムにおいて体系化されている。配列アライメントおよび同一性パーセントの計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイートのMegalignプログラム(DNASTAR Inc.,Madison,WI)、ベクターNTIバージョン7.0のAlignXプログラム(Informax,Inc.,Bethesda,MD)、またはEMBOSS Open Software Suite(EMBL−EBI、Riceら、Trends in Genetics 16、(6)276−277頁(2000年))を用いて実施され得る。配列の多重アライメントは、アライメントのCLUSTAL法(CLUSTALW、例えばバージョン1.83など)(HigginsおよびSharp,CABIOS,5:151−153(1989年)、Higginsら,Nucleic Acids Res.22:4673−4680(1994年)、およびChennaら,Nucleic Acids Res 31(13):3497−500(2003年)、European Bioinformatics Instituteを介してEuropean Molecular Biology Laboratoryから入手可能)をデフォルトパラメータと共に用いて実施することができる。CLUSTALWタンパク質アライメントのために適切なパラメータには、GAP存在ペナルティー=15、GAP伸長=0.2、マトリックス=Gonnet(例えば、Gonnet250)、タンパク質ENDGAP=−1、タンパク質GAPDIST=4、およびKTUPLE=1が含まれる。一実施形態では、速いまたは遅いアライメントがデフォルト設定と共に使用されるが、遅いアライメントが好ましい。あるいは、CLUSTALW法(バージョン1.83)を用いるパラメータを修正して、KTUPLE=1、GAP PENALTY=10、GAP伸長=1、マトリックス=BLOSUM(例えば、BLOSUM64)、WINDOW=5、およびTOP DIAGONALS SAVED=5も使用することができる。
【0161】
本発明の方法および系の1つの態様では、適切な単離核酸分子(本発明の単離ポリヌクレオチド)は、本明細書において報告されるアミノ酸配列と少なくとも約30%、好ましくは少なくとも33%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。本発明の適切な核酸分子は上記の相同性を有するだけでなく、通常、約300〜約340のアミノ酸、より好ましくは約310〜約330のアミノ酸、最も好ましくは約318〜約325のアミノ酸の長さを有するポリペプチドもコードする。
【0162】
本明細書で用いられる場合、「シグネチャーモチーフ」および「診断モチーフ」という用語は、定義される活性を有する酵素のファミリー間で共有される保存構造を指す。シグネチャーモチーフは、定義される基質ファミリーと類似の酵素活性を有する構造的に関連する酵素ファミリーを定義および/または同定するために使用することができる。シグネチャーモチーフは、単一の連続アミノ酸配列であっても、あるいは一緒にシグネチャーモチーフを形成する不連続の保存モチーフの集まりであってもよい。通常、保存モチーフはアミノ酸配列によって表される。本明細書において記載されるように、本発明のペルヒドロラーゼはCE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属する。この酵素ファミリーは、CE−7「シグネチャーモチーフ」の存在によって定義することができる(Vincentら、上記)。
【0163】
本明細書で用いられる場合、「コドン縮重」は、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列に影響を与えることなくヌクレオチド配列の変動を可能にする遺伝暗号の性質を指す。従って、本発明は、本発明の微生物ポリペプチドをコードするアミノ酸配列の全てまたはかなりの部分をコードするあらゆる核酸分子に関する。当業者は、所与のアミノ酸を指定するためのヌクレオチドコドンの使用において特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」をよく知っている。従って、宿主細胞における発現の改善のために遺伝子を合成する場合、そのコドン使用頻度が宿主細胞の好ましいコドン使用頻度に近くなるように遺伝子を設計することが望ましい。
【0164】
本明細書で用いられる場合、様々な宿主の形質転換のための遺伝子または核酸分子のコード領域を指すような「コドン最適化」という用語は、DNAがコードするポリペプチドを変更することなく、宿主生物の典型的なコドン使用を反映するための遺伝子または核酸分子のコード領域におけるコドンの変更を指す。
【0165】
本明細書で用いられる場合、「合成遺伝子」は、当業者に知られている手順を用いて化学的に合成されるオリゴヌクレオチド構成要素から組み立てることができる。これらの構成要素は連結およびアニールされて遺伝子セグメントを形成し、これは次に酵素的に組み立てられて遺伝子全体を構築する。DNA配列に関する場合の「化学的に合成される」は、ヌクレオチド成分がインビトロで組み立てられることを意味する。十分に確立された手順を用いて手作業でのDNAの化学合成が達成されてもよいし、あるいは多数の市販の機械の1つを用いて自動化学合成が実施されてもよい。従って、ヌクレオチド配列の最適化に基づいて、遺伝子を最適な遺伝子発現に合わせて作り、宿主細胞のコドンバイアスを反映することができる。当業者は、コドン使用が宿主によって好まれるコドンに偏っている場合に、遺伝子発現が成功する可能性を認識する。好ましいコドンの決定は、配列情報が入手可能な宿主細胞に由来する遺伝子の調査に基づくことができる。
【0166】
本明細書で用いられる場合、「遺伝子」は特定のタンパク質を発現する核酸分子を指し、コード配列の前(5’非コード配列)およびコード配列の後(3’非コード配列)の制御配列が含まれる。「天然遺伝子」は、その独自の制御配列を有する天然に見出される遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」は、天然に一緒に見出されない制御およびコード配列を含む、天然遺伝子でないあらゆる遺伝子を指す。従って、キメラ遺伝子は、異なる源に由来する制御配列およびコード配列、あるいは同じ源に由来するが天然に見出されるものとは異なった形で配列された制御配列およびコード配列を含むことができる。「内在性遺伝子」は、生物のゲノム中のその天然の位置にある天然遺伝子を指す。「外来性」遺伝子は、通常は宿主生物中に見出されないが、遺伝子導入によって宿主生物中に導入された遺伝子を指す。外来性遺伝子は、非天然生物に挿入された天然遺伝子、またはキメラ遺伝子を含むことができる。「導入遺伝子」は、形質転換手順によってゲノム内に導入された遺伝子である。
【0167】
本明細書で用いられる場合、「コード配列」は、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「適切な制御配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、内部、または下流(3’非コード配列)に位置し、転写、RNAプロセシングもしくは安定性、または関連コード配列の翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。制御配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステムループ構造を含むことができる。
【0168】
本明細書で用いられる場合、「プロモーター」は、コード配列または機能性RNAの発現を調節することができるDNA配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列に対して3’に位置する。プロモーターはその全体が天然遺伝子に由来してもよいし、あるいは天然に見出される異なるプロモーターに由来する異なる要素で構成されてもよいし、あるいはさらに合成DNAセグメントを含んでいてもよい。異なるプロモーターが、異なる発生段階において、あるいは異なる環境または生理学的条件に応答して遺伝子の発現を指示し得ることは、当業者によって理解される。ほとんどの時点で遺伝子の発現を引き起こすプロモーターは、一般に「構成的プロモーター」と呼ばれる。さらに、ほとんどの場合、制御配列の正確な境界は完全には画定されていないので、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有し得ることが認識される。
【0169】
本明細書で用いられる場合、「3’非コード配列」は、コード配列の下流に位置するDNA配列を指し、ポリアデニル化認識配列(通常は、真核生物に限定される)と、mRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を与えることができる制御シグナルをコードする他の配列とが含まれる。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸経路(通常は、真核生物に限定される)の付加に影響を与えることを特徴とする。
【0170】
本明細書で用いられる場合、「作動可能に連結された」という用語は、一方の機能が他方によって影響されるような単一の核酸分子における核酸配列の関連を指す。例えば、プロモーターは、コード配列の発現に影響することができる場合、そのコード配列と作動可能に連結されており、すなわち、そのコード配列はプロモーターの転写調節下にある。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向で制御配列に作動可能に連結され得る。
【0171】
本明細書で用いられる場合、「発現」という用語は、本明細書に記載される核酸分子に由来するセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を指す。また発現は、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指すこともできる。
【0172】
本明細書で用いられる場合、「形質転換」は、遺伝的に安定な遺伝形質をもたらす、宿主生物のゲノムへの核酸分子の転移を指す。本発明において、宿主細胞のゲノムは、染色体遺伝子および染色体外(例えば、プラスミド)遺伝子を含む。形質転換された核酸分子を含有する宿主生物は、「遺伝子導入」または「組換え」または「形質転換」生物と称される。
【0173】
本明細書で用いられる場合、「プラスミド」、「ベクター」および「カセット」という用語は、細胞の中心的な代謝の一部ではない遺伝子を保有することが多く、通常は環状二本鎖DNA分子の形態である染色体外要素を指す。このような要素は、任意の源に由来する一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの自己複製配列、ゲノム組み込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列(直鎖または環状)であってもよく、ここで、多数のヌクレオチド配列は、選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片およびDNA配列を適切な3’非翻訳配列と共に細胞内に導入することができる独特の構成に結合または組換えられている。「形質転換カセット」は、外来性遺伝子を含有し、外来性遺伝子に加えて特定の宿主細胞の形質転換を容易にする要素を有する特定のベクターを指す。「発現カセット」は、外来性遺伝子を含有し、外来性遺伝子に加えて外来性宿主におけるその遺伝子の発現の強化を可能にする要素を有する特定のベクターを指す。
【0174】
本明細書で用いられる場合、「配列分析ソフトウェア」という用語は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の分析に有用な任意のコンピュータアルゴリズムまたはソフトウェアプログラムを指す。「配列分析ソフトウェア」は市販のものでもよいし、あるいは独立して開発されてもよい。典型的な配列分析ソフトウェアには、GCGプログラム一式(Wisconsin Package Version 9.0、Genetics Computer Group(GCG),Madison,WI)、BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschulら,J.Mol.Biol.215:403−410(1990年)、およびDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228 S.Park St.Madison,WI 53715 USA)、CLUSTALW(例えば、バージョン1.83、Thompsonら,Nucleic Acids Research,22(22),4673−4680(1994年)、およびSmith−Watermanアルゴリズムを組み込んだFASTAプログラム(W.R.Pearson,Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int.Symp.](1994年)、1992年会議,111−20.編:Suhai,Sandor.Publisher:Plenum,New York,NY)、ベクターNTI(Informax,Bethesda,MD)およびSequencher v.4.05が含まれ得るがこれらに限定されない。本出願に関連して、分析のために配列分析ソフトウェアが使用される場合、他に指定されない限り、分析結果が言及されるプログラムの「デフォルト値」に基づくことは理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「デフォルト値」は、最初の初期化の際にソフトウェアと共に元々ロードされた、ソフトウェア製造業者により設定された任意の値のセットまたはパラメータセットを意味するであろう。
【0175】
本明細書で用いられる場合、「生物学的汚染物質」という用語は、1つまたは複数の不要なおよび/または病原性の生物学的実体を指し、微生物、胞子、ウィルス、プリオン、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。本方法は、生存可能な生物学的汚染物質の存在を低減および/または除去するために有用である有効な濃度の少なくとも1つの過カルボン酸を生成する。好ましい実施形態では、生物学的汚染物質は、生存可能な病原微生物である。
【0176】
本明細書で用いられる場合、「消毒する」という用語は、生物学的汚染物質を破壊する、または生物学的汚染物質の増殖を予防する過程を指す。本明細書で用いられる場合、「消毒薬」という用語は、生物学的汚染物質の破壊、中和、または増殖の阻害によって消毒する薬剤を指す。本明細書で用いられる場合、「消毒」という用語は、消毒の作用または過程を指す。通常、消毒薬は無生物体または表面を処理するために使用される。本明細書で用いられる場合、「防腐剤」という用語は、疾患を保有する生物学的汚染物質(微生物など)の増殖を阻害する化学物質を指す。本発明の方法および系の1つの態様では、生物学的汚染物質は病原微生物である。
【0177】
本明細書で用いられる場合、「衛生」という用語は、通常、健康に有害であり得る物質を除去、防止、または調節することによる、健康の回復または予防を意味する、またはこれらに関する。本明細書で用いられる場合、「衛生化する」という用語は、衛生にすることを意味する。本明細書で用いられる場合、「サニタイザー」という用語は、衛生化する薬剤を指す。本明細書で用いられる場合、「衛生化」という用語は、衛生化の作用または過程を指す。
【0178】
本明細書で用いられる場合、「抗ウィルス剤(virucide)」という用語は、ウィルスを阻害または破壊する薬剤を指し、「抗ウィルス薬(viricide)」と同義である。ウィルスを阻害または破壊する能力を示す薬剤は、「抗ウィルス」活性を有すると説明される。過酸は、抗ウィルス活性を有することができる。本発明と共に使用するのに適し得る当該技術分野で既知の典型的な代替の抗ウィルス剤としては、例えば、アルコール、エーテル、クロロホルム、ホルムアルデヒド、フェノール、ベータプロピオラクトン、ヨウ素、塩素、水銀塩、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、エチレングリコール、第4級アンモニウム化合物、酵素、および洗剤が挙げられる。
【0179】
本明細書で用いられる場合、「殺生物剤(biocide)」という用語は、微生物を不活性化または破壊する化学物質(通常は広範囲)を指す。微生物を不活性化または破壊する能力を示す化学物質は、「殺生物(biocidal)」活性を有すると説明される。過酸は、殺生物活性を有することができる。本発明における使用に適し得る当該技術分野で既知の典型的な代替の殺生物剤としては、例えば、塩素、二酸化塩素、クロロイソシアヌラート、次亜塩素酸塩、オゾン、アクロレイン、アミン、塩素化フェノール(chlorinated phenolic)、銅塩、有機硫黄化合物、および第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0180】
本明細書で用いられる場合、「最小殺生物濃度」という語句は、特定の接触時間に、標的微生物の生存可能な集団において所望の致死的で不可逆的な低減を生じ得る殺生物剤の最小濃度を指す。有効性は、処理後の生存可能な微生物の減少のlog
10によって測定することができる。1つの態様では、標的とされる生存可能な微生物の処理後の減少は、少なくとも3−logの減少、より好ましくは少なくとも4−logの減少、最も好ましくは少なくとも5−logの減少である。別の態様では、最小殺生物濃度は、生存可能な微生物細胞の少なくとも6−logの減少である。
【0181】
本明細書で用いられる場合、「有益な薬剤」という用語は、有用な利点または好ましい効果を促進または増強するものを指す。一実施形態では、消毒、衛生化、漂白、染みの除去、脱臭/臭気の低減、およびこれらの任意の組み合わせなどの所望の利益を達成するためにペルオキシカルボン酸を含む組成物などの有益な薬剤を衣類品または織物品に適用させる方法および系が提供される。
【0182】
本明細書で用いられる場合、「過酸素源」および「過酸素の源」という用語は、水溶液中にある場合に約1mM以上の濃度の過酸化水素を提供することができる化合物を指し、過酸化水素、過酸化水素付加物(例えば、尿素−過酸化水素付加物(過酸化カルバミド))、過ホウ酸塩、および過炭酸塩が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において記載されるように、水性反応配合物中の過酸素化合物によって提供される過酸化水素の濃度は、反応成分を混ぜ合わせたときに最初は少なくとも1mM以上である。一実施形態では、水性反応配合物中の過酸化水素濃度は、少なくとも10mMである。別の実施形態では、水性反応配合物中の過酸化水素濃度は、少なくとも100mMである。別の実施形態では、水性反応配合物中の過酸化水素濃度は、少なくとも200mMである。別の実施形態では、水性反応配合物中の過酸化水素濃度は、500mM以上である。さらに別の実施形態では、水性反応配合物中の過酸化水素濃度は、1000mM以上である。水性反応配合物中の酵素基質、例えばトリグリセリドに対する過酸化水素のモル比(H
2O
2:基質)は約0.002〜20でよく、好ましくは約0.1〜10、最も好ましくは約0.5〜5でよい。
【0183】
本発明で開示される方法および系のいくつかの実施形態では、酵素触媒は、CE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属する構造を有するペルヒドロラーゼを含む。他の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、構造的に、セファロスポリンCデアセチラーゼとして分類される。他の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、構造的に、アセチルキシランエステラーゼとして分類される。「酵素触媒」、「過加水分解活性を有する酵素触媒」、および「ペルヒドロラーゼ触媒」という用語は本明細書において交換可能に使用される。
【0184】
本発明の方法および系のいくつかの実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2と整列するCE−7シグネチャーモチーフを有する酵素を含み、前記CE−7シグネチャーモチーフは:
i)配列番号2のアミノ酸位置118−120におけるRGQモチーフ、
ii)配列番号2のアミノ酸位置179−183におけるGXSQGモチーフ、および
iii)配列番号2のアミノ酸位置298−299におけるHEモチーフ
を含み、また前記酵素は、配列番号2に対して少なくとも30%のアミノ酸同一性を含む。
【0185】
本発明の方法および系のその他の実施形態では、シグネチャーモチーフは、さらに、CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2に整列されるときにアミノ酸残基267−269におけるLXDモチーフであると定義される第4の保存モチーフを含む。
【0186】
本発明の方法および系の付加的な実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号54、配列番号60、配列番号64、配列番号68、配列番号72、配列番号73、および配列番号74からなる群から選択されるペルヒドロラーゼ活性を有する酵素、あるいは前記アミノ酸配列に対する1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または付加によって誘導されるペルヒドロラーゼ活性を有する実質的に類似の酵素を含むことができる。
【0187】
本発明の方法および系のその他の実施形態では、ペルヒドロラーゼ活性を有する実質的に類似の酵素は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号54、配列番号60、配列番号64、配列番号68、配列番号72、配列番号73、および配列番号74からなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸配列と、少なくとも30%、好ましくは少なくとも33%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、またさらにより好ましくは少なくとも70%、またさらにより好ましくは少なくとも80%、またさらにより好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。
【0188】
本発明の方法および系のその他の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号29、配列番号48、配列番号51、配列番号53、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号69、配列番号70、および配列番号71からなる群から選択される核酸配列とハイブリッド形成する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を有する酵素を含む。
【0189】
本発明の方法および系のその他の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、配列番号14および配列番号73(すなわち、野生型サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)およびアミノ酸残基277におけるアミノ酸置換を有するサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)変異体)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する酵素を含む。
【0190】
本発明の方法および系のその他の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、配列番号16および配列番号74(すなわち、野生型サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)およびアミノ酸残基277におけるアミノ酸置換を有するサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)変異体)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する酵素を含む。
【0191】
本発明の方法および系のその他の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、配列番号49として定義される連続シグネチャーモチーフと少なくとも30%、好ましくは少なくとも36%のアミノ酸同一性を有する酵素を含み、上記の保存モチーフ(すなわち、RGQ、GXSQG、およびHE、場合により、LXD)は保存されている。
【0192】
本発明で開示される方法および系に関して、適切なカルボン酸エステル基質は、以下の式:
[X]
mR
5
によって提供されるエステルを含み、式中、
X=式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6=場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換され得るC1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、場合により、R
6=C2〜C7の場合にR
6は1つまたは複数のエーテル結合を含み、
R
5=場合によりヒドロキシル基によって置換され得るC1〜C6線状、分枝状、または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に1つ以下のヒドロキシル基または1つ以下のエステル基を含み、場合により、R
5は1つまたは複数のエーテル結合を含み、
m=1からR
5中の炭素原子の数までであり、
前記エステルは、25℃において少なくとも5ppmである水中での溶解度を有する。
【0193】
本発明の方法および系のその他の実施形態では、適切な基質は、式:
【化5】
のエステルも含み、式中、R
1=場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換され得るC1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2=C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2−O)
nHまたは(CH
2CH(CH
3)−O)
nHおよびn=1〜10である。
【0194】
本発明の方法および系のその他の実施形態では、適切なカルボン酸エステル基質は、式:
【化6】
のグリセリドを含み、式中、R
1=場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換され得るC1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々にHまたはR
1C(O)である。
【0195】
本発明の方法および系のその他の実施形態では、R
6は場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換され得るC1〜C7線状ヒドロカルビル部分であり、場合により、1つまたは複数のエーテル結合を含む。さらに好ましい実施形態では、R
6は場合によりヒドロキシル基によって置換され得るC2〜C7線状ヒドロカルビル部分であり、そして/あるいは場合により1つまたは複数のエーテル結合を含む。
【0196】
開示される方法および系のその他の実施形態では、適切なカルボン酸エステル基質は、アセチル化単糖、二糖、および多糖からなる群から選択されるアセチル化糖類も含む。好ましい実施形態では、アセチル化糖類は、アセチル化単糖、二糖、および多糖を含む。他の実施形態では、アセチル化糖類は、アセチル化キシラン、アセチル化キシランの断片、アセチル化キシロース(キシローステトラアセタートなど)、アセチル化グルコース(グルコースペンタアセタートなど)、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセタート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、トリ−O−アセチル−D−グルカール、およびアセチル化セルロースからなる群から選択される。好ましい実施形態では、アセチル化糖類は、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセタート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、トリ−O−アセチル−D−グルカール、およびアセチル化セルロースからなる群から選択される。従って、アセチル化炭水化物は、本発明の方法および系を用いて(すなわち、過酸素源の存在下で)過カルボン酸を発生させるために適切な基質であり得る。
【0197】
本発明の方法および系の付加的な実施形態では、カルボン酸エステル基質は、モノアセチン、トリアセチン、モノプロピオニン、ジプロピオニン、トリプロピオニン、モノブチリン、ジブチリン、トリブチリン、グルコースペンタアセタート、キシローステトラアセタート、アセチル化キシラン、アセチル化キシラン断片、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセタート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、トリ−O−アセチル−グルカール、プロピレングリコールジアセタート、エチレングリコールジアセタートと、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,5−ペンタンジオール、1,6−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールのモノエステルまたはジエステルと、これらの混合物であり得る。本発明の方法および系の好ましい実施形態では、基質はトリアセチンを含む。
【0198】
好ましくは、本発明の方法および系において使用される基質は、約100mg/mL未満の水中での溶解度を有する。本発明の方法および系のいくつかの実施形態では、水性反応混合物中の基質の重量パーセントは、水中での基質の溶解限界を上回る。
【0199】
本発明で開示される方法および系のその他の実施形態では、基質は、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、3−ヒドロキシ酪酸メチル、3−ヒドロキシ酪酸エチル、2−アセチルクエン酸トリエチル、グルコースペンタアセタート、グルコノラクトン、グリセリド(モノ、ジ、およびトリグリセリド)、例えば、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノプロピオニン、ジプロピオニン(グリセリルジプロピオナート)、トリプロピオニン(1,2,3−トリプロピオニルグリセロール)、モノブチリン、ジブチリン(グリセリルジブチラート)、トリブチリン(1,2,3−トリブチリルグリセロール)、アセチル化糖類、およびこれらの混合物であり得る。
【0200】
本発明の方法および系のさらに好ましい態様では、カルボン酸エステル基質は、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノプロピオニン、ジプロピオニン、トリプロピオニン、モノブチリン、ジブチリン、トリブチリン、酢酸エチル、および乳酸エチルからなる群から選択される。さらに別の態様では、カルボン酸エステル基質は、ジアセチン、トリアセチン、酢酸エチル、および乳酸エチルからなる群から選択される。好ましい態様では、カルボン酸エステルは、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、およびこれらの混合物からなる群から選択されるグリセリドである。
【0201】
多成分型の発生系における共溶媒の使用
本発明で開示される方法および系において使用するための共溶媒は、約2よりも小さいlog Pを有する有機溶媒を含む。いくつかの実施形態では、共溶媒は、好ましくは、アルコールである。共溶媒は、好ましくは、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、N−エチル−2−ピロルジノン(pyrroldinone)、イソプロパノール、エタノール、乳酸エチル、1,3−プロパンジオール、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。本発明の方法および系のいくつかの実施形態では、共溶媒は、トリプロピレングリコールメチルエーテルを含む。
【0202】
多成分系においてペルオキシカルボン酸を生成するための本発明の方法では、多成分系は、共溶媒を含む触媒組成物を含む第1の成分と、過酸素源および水を含む第2の成分とを含むことができる。第2の成分は、過酸化水素の貯蔵寿命を延ばすために、任意的な安定剤を含んでもよい。第1の成分と第2の成分とを混ぜ合わせる前に、触媒、基質、および共溶媒を混ぜ合わせて第1の成分を形成することができる。同様に、表面を消毒するための開示される方法に関して、触媒組成物および過酸素源を混ぜ合わせるステップは、触媒組成物および共溶媒を含む第1の成分と、過酸素源および水を含む第2の成分と混ぜ合わせることを含むことができる。
【0203】
多成分系が、共溶媒を含む触媒組成物を含む第1の成分と、過酸素源および水を含む第2の成分とを含む、本発明の方法および系の実施形態では、第1の成分は、約1:1〜約1:10の重量による比率で、第2の成分と混ぜ合わせることができる。一実施形態では、第1の成分は、約1:9の重量による比率で第2の成分と混ぜ合わせられる。
【0204】
上記のような第1および第2の成分の1:1〜1:10の混合物の範囲で、第1の成分中の酵素基質(「活性化剤」)の濃度、および第1の成分に対する第2の成分の比率も、第1の成分および第2の成分の最終混合物中で基質が可溶性であるように選択される。例えば、水中のトリアセチンの溶解度は71.7g/Lであると報告されており(Seelig,Chemische Berichte;24:3466(1891年))、1,2−プロパンジオールジアセタートの溶解度は、10部の水中に1部であると報告されており(Wurtz,Annales de Chimie;55:443(1859年)、Justus Liebigs Annalen der Chemie;105:206(1858年))、そして水中のトリブチリンの溶解度は、0.015%(体積/体積)であると報告されている(Loskit,Zeitschrift fuer Physikalische Chemie,Stoechiometrie und Verwandtschaftslehre;134:137(1928年))。本発明の酵素基質に対する広範囲の溶解度を考慮すると(酵素基質は以下に記載される)、本発明の第1の成分に添加される共溶媒は、所望の比率の第1の成分および第2の成分の混合を可能にするための第1の成分中の希釈剤としてのその機能に加えて、水中での溶解度が低い酵素基質の溶解を助ける働きをすることができる。本発明の一実施形態では、基質は、少なくとも25%(重量/重量)の濃度において、結果として得られる第1の成分および第2の成分の配合物中に可溶性である。本発明の第2の実施形態では、基質は、少なくとも10%(重量/重量)の濃度において、結果として得られる第1の成分および第2の成分の配合物中に可溶性である。本発明の第3の実施形態では、基質は、少なくとも5%(重量/重量)の濃度において、結果として得られる第1の成分および第2の成分の配合物中に可溶性である。本発明の第4の実施形態では、基質は、少なくとも2%(重量/重量)の濃度において、結果として得られる第1の成分および第2の成分の配合物中に可溶性である。
【0205】
一実施形態では、共溶媒は、約20重量%〜約80重量%の量で第1の成分中に存在し得る。基質は、約10重量%〜約60重量%の量で第1の成分中に存在し得る。いくつかの実施形態では、第1の成分は、約55重量%の基質、約40重量%の共溶媒、約0.3重量%の酵素触媒、および約2.5重量%の充填剤を含み、第2の成分は、約95重量%の水、約1.5重量%の重炭酸ナトリウム、および約1重量%の過酸素源を含むことができる。他の例では、第1の成分は、約55.5重量%のトリアセチン、約41重量%のトリプロピレングリコールメチルエーテル、約0.9%の重炭酸ナトリウム、約0.3重量%の噴霧乾燥酵素粉末(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)もしくはサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ペルヒドロラーゼ、またはサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)もしくはサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)の過加水分解活性を改善する1つまたは複数の点突然変異を有する変異誘導体のペルヒドロラーゼを含む)、および約2.5重量%のヒュームドシリカを含み、第2の成分は、約96重量%の水、約0.2重量%の過酸化水素安定剤(例えば、(1−ヒドロキシエチリデン)ビスホスホン酸))、および約3.2重量%の、30%の過酸化水素を含む溶液を含むことができる。
【0206】
本発明の方法および系に関して、カルボン酸エステル基質は、酵素触媒による過加水分解の際に所望の濃度の過酸を生じるのに十分な濃度で使用され得る。カルボン酸エステルは反応配合物中に完全に可溶性でなくてもよいが、好ましくは、ペルヒドロラーゼ触媒によってエステルが対応する過酸へ転化できるようにするために十分な溶解度を有する。カルボン酸エステルは、反応配合物の約0.0005重量%〜約40重量%の濃度、好ましくは水性反応配合物の0.1重量%〜20重量%の濃度、より好ましくは水性反応配合物の0.5重量%〜10重量%の濃度で、水性反応配合物中に存在する。カルボン酸エステルの重量%は、カルボン酸エステルの溶解限界よりも大きいこともある。添加されるカルボン酸エステルの全てがすぐに水性反応配合物中に溶解しなければいけないわけではなく、全ての反応成分の初期混合の後、付加的な連続または不連続の混合は任意的である。
【0207】
本発明の方法および系において、過酸素源としては、過酸化水素、過酸化水素付加物(尿素−過酸化水素付加物(過酸化カルバミド)など)、過ホウ酸塩および過炭酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。水性反応配合物中の過酸素化合物の濃度は、0.0033重量%〜約50重量%、好ましくは0.033重量%〜約40重量%、より好ましくは0.33重量%〜約30重量%の範囲であり得る。
【0208】
本発明の方法および系の反応配合物は、約5mM〜約250mMの基質、約5mM〜約250mMの過酸素源、および約0.0001mg/mL〜約10mg/mL、好ましくは約0.01mg/mL〜約2.0mg/mLの酵素触媒を含むことができる。このような例では、基質はトリアセチンを含み、過酸素源は過酸化水素を含み、そして酵素触媒は、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)またはサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)のペルヒドロラーゼを含むことができる。別の実施形態では、酵素触媒は、配列番号73または配列番号74により定義され、アミノ酸残基位置277において野生型システインがアラニン、バリン、セリン、またはスレオニンによって置換されたサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)またはサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)の変異体を含むことができる。
【0209】
多くのペルヒドロラーゼ触媒(全細胞、透過処理された全細胞、および部分精製全細胞抽出物など)は、カタラーゼ活性を有することが報告されている(EC 1.11.1.6)。カタラーゼは、過酸化水素の酸素および水への転化を触媒する。本発明で開示される方法および系の1つの態様では、過加水分解触媒にはカタラーゼ活性がない。別の態様では、反応配合物にカタラーゼ阻害剤が添加される。カタラーゼ阻害剤の例としては、ナトリウムアジドおよび硫酸ヒドロキシルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、必要に応じてカタラーゼ阻害剤の濃度を調整することができる。カタラーゼ阻害剤の濃度は、通常、0.1mM〜約1M、好ましくは約1mM〜約50mM、より好ましくは約1mM〜約20mMの範囲である。1つの態様では、ナトリウムアジドの濃度は通常約20mM〜約60mMの範囲であり、硫酸ヒドロキシルアミンの濃度は通常約0.5mM〜約30mM、好ましくは約10mMである。
【0210】
本発明の方法および系のその他の実施形態では、酵素触媒には有意なカタラーゼ活性がないか、あるいはカタラーゼ活性を低減または除去するように操作されている。宿主細胞におけるカタラーゼ活性は、よく知られた技術(トランスポゾン変異誘発、RNAアンチセンス発現、標的化変異誘発、およびランダム変異誘発を含むがこれらに限定されない)を用いてカタラーゼ活性の原因である遺伝子の発現を破壊することによって、下方制御または除去することができる。本発明の方法および系のいくつかの実施形態では、内在性カタラーゼ活性をコードする遺伝子は、下方制御または破壊(すなわち、「ノックアウト」)される。本明細書で用いられる場合、「破壊された」遺伝子は、改変された遺伝子によってコードされるタンパク質の活性および/または機能がもう存在しない遺伝子である。遺伝子を破壊するための手段は当該技術分野においてよく知られており、対応するタンパク質の活性および/または機能が存在しなくなる限り、遺伝子への挿入、欠失または突然変異を含むことができるがこれらに限定されない。さらに好ましい実施形態では、産生宿主は、katG(配列番号35)およびkatE(配列番号44)からなる群から選択される破壊されたカタラーゼ遺伝子を含むE.コリ(E.coli)産生宿主である。他の実施形態では、産生宿主は、katg1およびkatEカタラーゼ遺伝子の両方における下方制御および/または破壊を含むE.コリ(E.coli)株である。katGおよびkatEの二重ノックアウトを含むE.コリ(E.coli)株が本明細書で提供される(E.コリ(E.coli)株KLP18)。
【0211】
本明細書において記載されるカタラーゼ陰性のE.コリ(E.coli)株KLP18は、発酵槽条件下での増殖により決定されるように、カタラーゼ陰性株UM2(E.コリ(E.coli)Genetic Stock Center #7156,イェール大学,New Haven CT)と比較して、ペルヒドロラーゼ酵素の大規模(10−L以上)産生のために優れた宿主であることが実証されている。KLP18およびUM2は両方ともカタラーゼ陰性株であるが、UM2は多数の栄養要求体を有することが知られており、従って、酵母抽出物およびペプトンで強化された培地を必要とする。発酵のために強化された培地を用いる場合でも、UM2は、不十分に、そして限られた最大細胞密度(OD)までしか増殖しなかった。対照的に、KLP18は特別な栄養要求を有さず、ミネラル培地のみにおいて、あるいは付加的な酵母抽出物を含む培地において高い細胞密度まで増殖した。
【0212】
本発明の方法および系の水性反応配合物中の触媒の濃度は触媒の特定の触媒活性に依存し、所望の反応速度を得るように選択される。過加水分解反応における触媒の重量は、通常、全反応体積の0.0001mg〜10mg/mL、好ましくは0.010mg〜2.0mg/mLの範囲である。また触媒は、当業者によく知られた方法を用いて可溶性または不溶性担体に固定化されてもよく、例えば、「Immobilization of Enzymes and Cells」Gordon F.Bickerstaff,Editor、Humana Press,Totowa,NJ,USA、1997年が参照される。固定化触媒の使用は、その後の反応における触媒の回収および再利用を可能にする。酵素触媒は、全微生物細胞、透過処理された微生物細胞、微生物細胞抽出物、部分精製もしくは精製酵素、またはこれらの混合物の形態であり得る。
【0213】
本発明の方法および系の1つの態様では、過カルボン酸エステルの化学的な過加水分解と酵素的な過加水分解との組み合わせによって発生される酸の濃度は、所望のpHにおいて漂白、衛生化または消毒のために有効な濃度の過酸を提供するのに十分である。別の態様では、本発明の方法および系は、所望の有効な濃度の過酸を生成するための酵素および酵素基質の組み合わせを提供し、ここで、添加される酵素が存在しないと、著しくより低い濃度の過酸が生成される。場合によっては、無機過酸化物と酵素基質との直接的な化学反応によって酵素基質の実質的に化学的な過加水分解が起こり得るが、所望の用途において有効な濃度の過酸を提供するために十分な濃度の過酸は発生しないことがあり、全過酸濃度の著しい増大は、反応配合物への適切なペルヒドロラーゼ触媒の添加によって達成される。
【0214】
本発明の系および方法に関連して、少なくとも1つのカルボン酸エステルの過加水分解によって発生される過酸(例えば、過酢酸)の濃度は、過加水分解反応を開始させてから10分以内、好ましくは5分以内、最も好ましくは1分以内に、少なくとも約2ppm、好ましくは少なくとも20ppm、好ましくは少なくとも100ppm、より好ましくは少なくとも約200ppmの過酸、より好ましくは少なくとも300ppm、より好ましくは少なくとも500ppm、より好ましくは少なくとも700ppm、より好ましくは少なくとも約1000ppmの過酸、最も好ましくは少なくとも2000ppmの過酸であり得る。過酸を含む生成配合物は、場合により、水または主に水で構成される溶液で希釈され、所望のより低い濃度の過酸を含む配合物を生成することができる。本発明の方法および系の1つの態様では、所望の濃度の過酸を生成するために必要とされる反応時間は、約2時間以内、好ましくは約30分以内、より好ましくは約10分以内、さらにより好ましくは約5分以内、最も好ましくは約1分以内である。表面を消毒するための本発明の方法のその他の態様では、生物学的汚染物質で汚染された硬い表面または無生物体を含む表面は、前記反応成分を混ぜ合わせてから約1分〜約168時間以内に、または約1分〜約48時間以内に、または前記反応成分を混ぜ合わせてから約1分〜2時間以内に、または本明細書中のこのようなあらゆる時間間隔で、本明細書において記載される方法に従って形成される過酸と接触される。
【0215】
反応の温度は、反応速度および酵素触媒活性の安定性の両方を調節するように選択される。反応の温度は、反応配合物の凝固点(約0℃)のすぐ上の温度から約95℃まで、好ましくは約5℃〜約75℃の範囲でよく、反応温度のより好ましい範囲は約5℃〜約55℃である。
【0216】
過酸を含有する最終反応配合物のpHは、約2〜約9、好ましくは約3〜約8、より好ましくは約5〜約8、さらにより好ましくは約6〜約8、またさらにより好ましくは約6.5〜約7.5である。別の実施形態では、反応配合物のpHは酸性(pH<7)である。反応および最終的な反応配合物のpHは、場合により、適切な緩衝液(重炭酸、クエン酸、酢酸、リン酸、ピロリン酸、メチルホスホン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、またはマレイン酸を含むが、これらに限定されない)の添加によって調節することができる。使用される場合の緩衝液の濃度は、通常、0.1mM〜1.0M、好ましくは1mM〜300mM、最も好ましくは10mM〜100mMである。
【0217】
本発明の方法および系の別の態様では、酵素的過加水分解生成物は、望ましい機能性を提供する付加的な成分を含有し得る。さらなる態様では、本発明の方法および系は、衣類品の処理のためのランドリーケア用途において使用される。付加的な成分の例としては、緩衝液、洗剤ビルダー(detergent builder)、増粘剤、乳化剤、界面活性剤、湿潤剤、防蝕剤(ベンゾトリアゾールなど)、酵素安定剤、および過酸化水素安定剤(金属イオンキレート化剤など)が挙げられるが、これらに限定されない。付加的な成分の多くは洗剤産業においてよく知られている(参照によって本明細書に援用される米国特許第5,932,532号明細書に記載されるものなど)。乳化剤の例としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンが挙げられるが、これらに限定されない。増粘剤の例としては、LAPONITE(登録商標)RD、コーンスターチ、PVP、CARBOWAX(登録商標)、CARBOPOL(登録商標)、CABOSIL(登録商標)、ポリソルベート20、PVA、およびレシチンが挙げられるが、これらに限定されない。緩衝系の例としては、リン酸ナトリウム一塩基性/リン酸ナトリウム二塩基性、スルファミン酸/トリエタノールアミン、クエン酸/トリエタノールアミン、酒石酸/トリエタノールアミン、コハク酸/トリエタノールアミン、および酢酸/トリエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤の例としては、(a)エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドのブロックコポリマー、エトキシル化またはプロポキシル化線状および分枝状第1級および第2級アルコール、ならびに脂肪族ホスフィンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、(b)第4級アンモニウム化合物、特に、3つのC1〜C2アルキル基に結合した窒素原子にC8〜C20アルキル基がさらに結合した第4級アンモニウム化合物などのカチオン性界面活性剤、(c)アルカンカルボン酸(例えば、C8〜C20脂肪酸)、アルキルホスホナート、アルカンスルホナート(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム「SDS」)、または線状もしくは分枝状アルキルベンゼンスルホネート、アルケンスルホナートなどのアニオン性界面活性剤、ならびに(d)アミノカルボン酸、アミノジカルボン酸、アルキルベタイン、およびこれらの混合物などの両性および両性イオン界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。付加的な成分は、香料、染料、過酸化水素安定剤(例えば、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(DEQUEST(登録商標)2010、Solutia Inc.,St.Louis,MO、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属キレート剤)、TURPINAL(登録商標)SL(CAS#2809−21−4)、DEQUEST(登録商標)0520、DEQUEST(登録商標)0531、酵素活性の安定剤(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))、および洗剤ビルダーを含むことができる。
【0218】
表面を消毒する本発明の方法の別の態様では、酵素的過加水分解生成物は、消毒すべき表面と接触させる前に、前もって混合されて、所望の濃度のペルオキシカルボン酸を発生させることができる。表面を消毒する本発明の方法の別の態様では、酵素的過加水分解生成物は、消毒すべき表面(硬い表面または無生物体など)と接触させる前に、所望の濃度のペルオキシカルボン酸を発生させるために前もって混合されず、その代わりに、所望の濃度の過カルボン酸を発生させるための反応配合物の成分が、消毒、衛生化、漂白、脱染、脱臭すべき(またはこれらの任意の組み合わせ)表面と接触されて、所望の濃度のペルオキシカルボン酸を発生させる。いくつかの実施形態では、反応配合物の成分は、その場所で結合または混合される。いくつかの実施形態では、反応成分は、その場所に送達または適用され、その後に混合または結合されて、所望の濃度のペルオキシカルボン酸を発生させる。
【0219】
表面を消毒する、または衣類品もしくは織物品に利益(染みの除去、臭気の低減、漂白、衛生化、および/または消毒)をもたらす本発明の方法のあらゆる実施形態において、水性反応配合物は、噴霧、注入、散布、拭取、または任意の他の適切な技術(その多数の他の例は当業者の間で認識されるであろう)によって表面に適用することができる。
【0220】
ペルヒドロラーゼ触媒を用いたその場での過酸の生成
セファロスポリンCデアセチラーゼ(E.C.3.1.1.41、系統名セファロスポリンCアセチルヒドロラーゼ、CAH)は、セファロスポリンC、7−アミノセファロスポラン酸、および7−(チオフェン−2−アセトアミド)セファロスポラン酸などのセファロスポリンに結合したアセチルエステルを加水分解する能力を有する酵素である(Abbott,B.and Fukuda,D.,Appl.Microbiol.30(3):413−419(1975年))。CAHは、炭水化物エステラーゼファミリー7と呼ばれる構造的に関連する酵素のより大きいファミリーに属する(CE−7、Coutinho,P.M.,Henrissat,B.「Carbohydrate−active enzymes:an integrated database approach」 in 「Recent Advances in Carbohydrate Bioengineering」H.J.Gilbert,G. Davies,B. HenrissatおよびB. Svensson編(1999年)The Royal Society of Chemistry,Cambridge,3−12頁を参照)。
【0221】
CE−7ファミリーは、CAHおよびアセチルキシランエステラーゼ(AXE、E.C.3.1.1.72)の両方を含む。CE−7ファミリーのメンバーは共通の構造モチーフを共有し、通常、アセチル化キシロオリゴ糖およびセファロスポリンCの両方に対してエステル加水分解活性を示すという点で非常に珍しく、このことから、CE−7ファミリーは、様々な小さい基質に対して多機能性のデアセチラーゼ活性を有する単一のタンパク質の種類を表すことが示唆される(Vincentら、上記)。Vincentらは、このファミリーのメンバー間の構造的な類似性について記載し、CE−7ファミリーの特徴を有するシグネチャー配列モチーフを定義する(「CE−7シグネチャーモチーフ」)。
【0222】
CE−7ファミリーのメンバーは、植物、真菌(例えば、セファロスポリジウム・アクレモニウム(Cephalosporidium acremonium))、酵母(例えば、ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、ロドトルラ・グルティニス(Rhodotorula glutinis))、および細菌(サーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)種、ノルカルディア・ラクタムデュランス(norcardia lactamdurans)、およびバチルス属の種々のメンバーなど)において見出される(Politinoら,Appl.Environ.Microbiol.,63(12):4807−4811(1997年)、Sakaiら,J.Ferment.Bioeng.85:53−57(1998年)、Lorenz,W.およびWiegel,J.,J.Bacteriol 179:5436−5441(1997年)、Cardozaら,Appl.Microbiol.Biotechnol.,54(3):406−412(2000年)、Mitsushimaら,supra,Abbott,B.およびFukuda,D.,Appl.Microbiol.30(3):413−419(1975年)、Vincentら,上記、Takamiら,NAR,28(21):4317−4331(2000年)、Reyら,Genome Biol.,5(10):article 77(2004年)、Degrassiら,Microbiology.,146:1585−1591(2000年)、米国特許第6,645,233号明細書、米国特許第5,281,525号明細書、米国特許第5,338,676号明細書、および国際公開第99/03984号パンフレット)。配列番号2に対して有意な相同性を有するCE−7炭水化物エステラーゼファミリーのメンバーの非包括的な一覧は、表1に提供される。
【0227】
本発明の方法および系において使用するためのペルヒドロラーゼは、好ましくは、全てCE−7炭水化物エステラーゼファミリーのメンバーである。酵素触媒は、配列番号14によって定義されるサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)ペルヒドロラーゼを含むことができる。本発明の方法および系のその他の実施形態では、酵素触媒は、配列番号16によって定義されるサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ペルヒドロラーゼを含むことができる。Vincentら(上記)によって記載されるように、ファミリーのメンバーは、このファミリーの特徴を示す共通のシグネチャーモチーフを共有する。本発明のペルヒドロラーゼのCLUSTALWアライメントは、メンバーが全てCE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属することを説明する(
図1のシートA〜F)。CE−7ペルヒドロラーゼのいくつかの間の全体的なアミノ酸同一性パーセントの比較は表2において提供される。
【0229】
全体的なアミノ酸同一性パーセントに関して変動が観察される(すなわち、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)ATCC(登録商標)27405
TMペルヒドロラーゼ、配列番号12は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954
TMペルヒドロラーゼ、配列番号2と57%のアミノ酸同一性しか共有しないが、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)ペルヒドロラーゼ(配列番号24)は、配列番号2と33%の同一性しか共有しない)が、本発明のペルヒドロラーゼ酵素のそれぞれは、CE−7シグネチャーモチーフを共有する。従って、本発明のペルヒドロラーゼ触媒は構造的にCE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属すると分類される酵素である。本発明のペルヒドロラーゼ酵素のそれぞれは、CE−7シグネチャーモチーフを含む。
【0230】
本発明の方法および系の一実施形態では、適切な過加水分解酵素は、CE−7シグネチャーモチーフの存在によって同定することができる(Vincentら、上記)。好ましい実施形態では、CE−7シグネチャーモチーフを含むペルヒドロラーゼは、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954
TMペルヒドロラーゼ(配列番号2、相対的なアミノ酸位置の番号付けのために使用される参照配列)に対して、CLUSTALWアライメントを用いて同定される。配列番号2のアミノ酸残基の番号付けにより、CE−7シグネチャーモチーフは、a)Arg118−Gly119−Gln120、b)Gly179−Xaa180−Ser181−Gln182−Gly183、およびc)His298−Glu299と定義される3つの保存モチーフを含む。従って、本発明の系および方法において使用される酵素触媒は、配列番号2に対して、Arg118−Gly119−Gln120、Gly179−Xaa180−Ser181−Gln182−Gly183、およびHis298−Glu299と定義される3つの配列モチーフを含み得る。それぞれのシグネチャーモチーフのアライメントは表3に提供される。通常、アミノ酸残基位置180のXaaは、グリシン、アラニン、プロリン、トリプトファン、またはスレオニンである。触媒トライアッド(catalytic triad)に属する3つのアミノ酸残基のうちの2つは太字である。一実施形態では、アミノ酸残基位置180のXaaは、グリシン、アラニン、プロリン、トリプトファン、およびスレオニンからなる群から選択される。
【0231】
CE−7炭水化物エステラーゼファミリー内の保存モチーフのさらなる分析は、CE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属するペルヒドロラーゼをさらに定義するために使用され得る付加的なモチーフ(配列番号2のアミノ酸位置267−269のLXD)の存在を示す。本発明の方法および系のさらなる実施形態では、上記で定義されたシグネチャーモチーフは、参照配列番号2に対してLeu267−Xaa268−Asp269と定義される第4の保存モチーフを含むことができる。アミノ酸残基位置268のXaaは、通常、イソロイシン、バリン、またはメチオニンである。第4のモチーフは、触媒トライアッドの第3のメンバーであるアスパラギン酸残基を含む(Ser181−Asp269−His298)。
【0232】
多数のよく知られているグローバルなアライメントアルゴリズムを用いて、2つ以上のアミノ酸配列(ペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を表す)を整列させ、本発明のシグネチャーモチーフの存在を決定することができる(例えば、CLUSTALWまたはNeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.,48:443−453(1970年))。整列された配列は、参照配列(配列番号2)と比較される。一実施形態では、参照アミノ酸配列(本明細書で使用される場合、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954
TMからのCAH配列(配列番号2))を用いるCLUSTALアライメント(例えば、CLUSTALW、例えばバージョン1.83))を使用して、CE−7エステラーゼファミリーに属するペルヒドロラーゼを同定する。保存アミノ酸残基の相対的な番号付けは、整列された配列内の小さい挿入または欠失(通常、5アミノ酸以下)を考慮に入れるために、参照アミノ酸配列の残基の番号付けに基づく。
【0233】
本明細書において例示されるペルヒドロラーゼ間での全体的な同一性パーセントの比較によって、配列番号2に対してわずか33%の同一性しか有さない酵素(シグネチャーモチーフを保持しながら)は有意なペルヒドロラーゼ活性を示し、構造的にCE−7炭水化物エステラーゼと分類されることが示される。本発明の方法および系のいくつかの実施形態では、本発明のペルヒドロラーゼは、本発明のシグネチャーモチーフと、配列番号2に対して少なくとも30%、好ましくは少なくとも33%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも42%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸同一性とを含む酵素を含む。
【0234】
上記のシグネチャーモチーフで構成されるCE−7酵素の例は、表3に提供される。
【0236】
あるいは、Vincentら(上記)によって同定された3つの保存モチーフ(RGQ、GXSQG、およびHE、配列番号2のアミノ酸残基118−299、任意的な第4のモチーフ、LXDも下線が引かれる)を含む連続シグネチャーモチーフ(配列番号49)は、CE−7炭水化物エステラーゼを同定するための連続シグネチャーモチーフとしても用いることができる(
図1のパネルA〜F)。従って、ペルヒドロラーゼ活性を有することが予想される適切な酵素は、配列番号49に対して少なくとも30%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも36%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、またさらにより好ましくは少なくとも70%、またさらにより好ましくは少なくとも80%、またさらにより好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸同一性も有すると同定され得る(CE−7炭水化物エステラーゼにおいて見出される4つの保存モチーフは下線が引かれる)。
RGQQSSEDTSISLHGHALGWMTKGILDKDTYYYRGVYLDAVRALEVISSFDEVDETRIGVT
GGSQGGGLTIAAAALSDIPKAAVADYPYLSNFERAIDVALEQPYLEINSFFRRNGSPETEVQAMKTLSYFDIMNLADRVKVPVLMSIG
LIDKVTPPSTVFAAYNHLETEKELKVYRYFG
HE(配列番号49).
【0237】
ペルヒドロラーゼ活性を有するいくつかのCE−7エステラーゼにする連続シグネチャー配列を用いた比較は表4に提供される。デフォルトパラメータを用いるBLASTPを使用した。
【0239】
あるいは、本発明の方法および系において使用するための1つまたは複数のペルヒドロラーゼの完全長に対するアミノ酸同一性パーセントも使用され得る。従って、ペルヒドロラーゼ活性を有する適切な酵素は、配列番号2と少なくとも30%、好ましくは少なくとも33%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、またさらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸同一性を有する。本発明の方法および系のさらなる実施形態では、適切なペルヒドロラーゼ触媒は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号54、配列番号60、配列番号64、配列番号68、配列番号72、配列番号73、および配列番号74からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、配列番号73または配列番号74のいずれかの位置277におけるアミノ酸残基は、アラニン、バリン、セリン、およびスレオニンからなる群から選択される。好ましい実施形態では、配列番号14または配列番号16と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸同一性を有するペルヒドロラーゼ活性を有する適切な酵素が使用され得る。さらに好ましい実施形態では、ペルヒドロラーゼ活性を有する適切な酵素は、配列番号14、配列番号16、配列番号73、および配列番号74からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0240】
本発明の方法および系において使用するための過加水分解活性を有する適切な炭水化物エステラーゼファミリー7(CE−7)酵素は、本発明のペルヒドロラーゼ酵素(配列番号14または16など)の1つに対する1つまたは複数の欠失、置換、および/または挿入を有する酵素を含んでいてもよい。表2に示されるように、ペルヒドロラーゼ活性を有するCE−7炭水化物エステラーゼは、わずか31%の全体的なアミノ酸同一性しか共有しない。構造的にCE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属すると分類されるペルヒドロラーゼ活性を有する付加的な酵素は、酵素が保存シグネチャーモチーフを保持する限り、それよりさらに低い同一性パーセントを有してもよい。従って、保存シグネチャーモチーフ(表3を参照)が酵素内のその相対位置において見出される限り、欠失、置換、および/または挿入の数は変動し得る。
【0241】
さらに、対応する核酸配列内で見出される構造的な類似性に従って適切な酵素を同定することは、十分に当該技術分野の技能の範囲内である。ハイブリダイゼーション技術を用いて、類似の遺伝子配列を同定することができる。従って、本発明の適切なペルヒドロラーゼ触媒は、高度にストリンジェントな条件下で、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号29、配列番号48、配列番号51、配列番号53、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号69、配列番号70、および配列番号71からなる群から選択される核酸配列を有する核酸分子とハイブリッド形成する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含む。
【0242】
最近、これらが由来する対応の野生型酵素に対して過加水分解活性が強化されたいくつかの変異CE−7酵素が同定された(参照によって本明細書に援用される、代理人整理番号CL439USNAを有する共有の同時出願された同時係属中の米国特許出願を参照)。具体的には、過加水分解活性が強化されたいくつかの変異体を生じるためにサーモトガ属からのいくつかの野生型CE−7酵素を改変した。変異体の配列は配列番号73および74として提供されており、ここで、配列番号73または配列番号74のいずれかの位置277におけるアミノ酸残基は、アラニン、バリン、セリン、およびスレオニンからなる群から選択される。
【0243】
多成分型の酵素的過酸発生系
本発明の方法および系は、炭水化物エステラーゼファミリー7に属する酵素のペルヒドロラーゼ活性を用いて水性反応条件下で工業的に有用な有効濃度の過酸をその場で生成する際に使用することができる。いくつかの実施形態では、ペルヒドロラーゼ活性を有する酵素は、構造的および機能的にセファロスポリンCデアセチラーゼ(CAH)と分類される。他の実施形態では、ペルヒドロラーゼ活性を有する酵素は、構造的および機能的にアセチルキシランエステラーゼ(AXE)と分類される。
【0244】
本発明の方法および系に従って生成される過酸は非常に反応性であり、変数(温度およびpHを含むが、これらに限定されない)に依存して、長時間にわたって濃度が低下し得る。従って、特に液体配合物については種々の反応成分を別々に保持することが望ましい場合がある。1つの態様では、過酸化水素源は、基質またはペルヒドロラーゼ触媒のいずれか、好ましくは両方から隔てられる。これは、多数のコンパートメントを有するディスペンサーの使用を含むがこれに限定されない様々な技術を用いて(米国特許第4,585,150号明細書など)、ペルヒドロラーゼ触媒と、無機過酸化物および本発明の基質とを使用時に物理的に混ぜ合わせて水性の酵素的過加水分解反応を開始させることによって達成することができる。ペルヒドロラーゼ触媒は、場合により、反応チャンバの本体内に固定化されていてもよいし、あるいは処理の標的とされる表面および/または物体と接触させる前に、過酸を含む反応生成物から分離(ろ過など)されてもよい。ペルヒドロラーゼ触媒は液体マトリックス中に存在してもよいし、あるいは固体形態(粉末または錠剤など)であってもよいし、あるいは固体マトリックス内に埋め込まれてもよく、これはその後、基質と混合されて酵素的な過加水分解反応を開始させる。さらなる態様では、ペルヒドロラーゼ触媒は溶解性または多孔質のポーチ内に含有されてもよく、これは水性基質マトリックスに添加されて、酵素的過加水分解を開始させる。付加的なさらなる態様では、酵素触媒を含む粉末はカルボン酸エステル基質(トリアセチンなど)中に懸濁され、使用時に、水中の過酸素源と混合される。いくつかの実施形態では、固定比率の二液型スプレー(Model DLS100、Take 5 Corp.,Rogue River,OR)または可変比率の二液型スプレー(Model DLS200、Take;5 Corp.)などの2つのコンパートメントの噴霧ボトルが用いられる(参照によって本明細書に援用される米国特許第5,152,461号明細書および米国特許第5,532,157号明細書)。別の実施形態では、壊すことのできるシールで隔てられた2つの別々のコンパートメントを含有する単一のボトルが用いられる。いくつかの実施形態では、2つの別々のコンパートメントの体積比は、1:1、または5:1、または10:1である。多成分型の送達系の例は、共有の同時出願された同時係属中の米国特許出願代理人整理番号CL4400USNA(参照によってその全体が本明細書に援用される)においても見出すことができる。
【0245】
本発明で開示されるペルオキシカルボン酸を生成するための系は、酵素触媒(酵素粉末など)、カルボン酸エステル基質(実質的に水を含まない)、および共溶媒を含む第1の成分と、過酸素源および水を含む第2の成分とを含むことができる。第1の成分中の過剰な水の存在は、貯蔵の不安定性を引き起こし得る。従って、「実質的に水を含まない」という語句は、第1の成分中に存在する場合に酵素の貯蔵安定性に悪影響を与えない、カルボン酸エステル基質/酵素/共溶媒を含む成分中の水の濃度を指すであろう。一実施形態では、「実質的に水を含まない」は、カルボン酸エステル基質含有成分中、2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、さらにより好ましくは250ppm未満の水を意味し得る。このような実施形態では、系は、第1の成分を貯蔵するための第1の器/容器と、第2の成分を貯蔵するための第2の器/容器とをさらにを含んでもよい。本明細書で用いられる場合、「容器」という用語は、一般的に、本発明の材料を保持および/または輸送するために適切な器、コンパートメント、ボトル、パケット、およびその他のパッキングシステムを説明するために使用され得る。本発明の系は、第1の容器からの第1の成分の少なくとも一部と、第2の容器からの第2の成分の少なくとも一部とを受け入れ、それによって、第1の成分の少なくとも一部と、第2の成分の少なくとも一部とを含む配合物の形成を可能にするための混合コンパートメントを含んでもよい。このような例では、系は、混合コンパートメントから配合物を分配するためのノズルをさらに含んでもよい。
【0246】
本発明の系のその他の実施形態では、第1および第2の器を含む系は、第1の器からの第1の成分の少なくとも一部と、第2の器からの第2の成分の少なくとも一部とを受け入れ、第1の成分の少なくとも一部を第2の成分の少なくとも一部と同時に分配するためのためのノズルをさらに含むことができる。本明細書で用いられる場合、「同時に」は、第1の成分の少なくとも一部が分配される時間の少なくとも一部の間に、第2の成分の少なくとも一部も分配されることを意味する。従って、第1の成分の一部が1秒の全期間で分配される場合、第1の成分の分配後に1秒間、および第1の成分の分配中に0.1秒間、第2の成分を分配することは第1の成分の分配と同時であったと考えられるであろう。
【0247】
過酸および過酸化水素の濃度の決定方法
本発明の方法において、反応物および生成物を分析するために様々な分析方法を使用することができ、これには、滴定、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、ガスクロマトグラフィ(GC)、質量分析(MS)、キャピラリー電気泳動法(CE)、U.Karstら(Anal.Chem.,69(17):3623−3627(1997年))によって記載される分析手順、ならびに本発明の実施例において記載されるような2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾタゾリン(ethylbenzothazoline))−6−スルホナート(ABTS)アッセイ(S.Minningら、Analytica Chimica Acta 378:293−298(1999年)および国際公開第2004/058961A1号パンフレット)が含まれるが、これらに限定されない。
【0248】
過酸の最小殺生物濃度の決定
J.Gabrielsonら(J.Microbiol.Methods 50:63−73(2002年))によって記載される方法は、過酸、または過酸化水素および酵素基質の最小殺生物濃度(MBC)を決定するために使用することができる。アッセイ法は、XTTの還元阻害に基づいており、ここで、XTT((2,3−ビス[2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル]−5−[(フェニルアミノ)カルボニル]−2H−テトラゾリウム、分子内塩、モノナトリウム塩)は、490nmまたは450nmで測定される光学濃度(OD)の変化によって微生物の呼吸活性を示す酸化還元色素である。しかしながら、消毒薬および防腐剤の活性を試験するために利用可能な様々なその他の方法が存在し、生存可能なプレートのカウント、直接的な顕微鏡のカウント、乾燥重量、濁度測定、吸光度、バイオルミネセンスなどが含まれるが、これらに限定されない(例えば、Brock,Semour S.「Disinfection,Sterilization,and Preservation」,第5版,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA,USA,2001年を参照)。
【0249】
酵素的に調製された過酸組成物の使用
本発明の方法に従って生成した、酵素触媒により発生されたペルオキシカルボン酸は、様々な硬い表面/無生物体の用途において生物学的汚染物質の濃度を低減するために使用することができ、例えば、医療機器(例えば、内視鏡)、織物(例えば、衣類、カーペット)、食品の調理用の表面、食品貯蔵および食品包装装置、食品の包装に使用される材料、鶏の孵化場および成育施設、動物の囲い、ならびに微生物および/または抗ウィルス活性を有する使用済みプロセス水の汚染除去のために使用することができる。酵素により発生されたペルオキシカルボン酸は、プリオン(例えば、特定のプロテアーゼ)を不活性化して、さらに殺生物活性を提供するように設計された配合物中で使用することができる。好ましい態様では、本発明のペルオキシカルボン酸組成物は、特に、加圧滅菌することができない医療機器および食品包装装置のための消毒剤として有用である。ペルオキシカルボン酸含有配合物は、GRASまたは食品グレード成分(酵素、酵素基質、過酸化水素、および緩衝液)を用いて調製することができるので、酵素により発生されたペルオキシカルボン酸は、動物の屠殺体、食肉、果物および野菜の汚染除去のため、または加工食品の汚染除去のためにも使用することができる。酵素により発生されたペルオキシカルボン酸は、その最終形態が粉末、液体、ゲル、フィルム、固体またはエアロゾルである製品に組み込むことができる。酵素により発生されたペルオキシカルボン酸は、有効な汚染除去をそれでも提供する濃度まで希釈されてもよい。
【0250】
有効な濃度のペルオキシカルボン酸を含む組成物は、表面または物体と、本発明の方法によって生成された生成物とを接触させることによって、生物学的汚染物質で汚染された(汚染された疑いがある)表面および/または無生物体を消毒するために使用することができる。本明細書で用いられる場合、「接触させる」は、清浄化および消毒するのに十分な時間、有効な濃度のペルオキシカルボン酸を含む消毒組成物と、生物学的汚染物質で汚染された疑いがある表面または無生物体とを接触した状態に置くことを指す。接触には、噴霧、処理、浸漬、フラッシング、注入(上または中に)、混合、混ぜ合わせ、ペインティング、コーティング、適用、添加が含まれ、そして、有効な濃度のペルオキシカルボン酸を含むペルオキシカルボン酸溶液もしくは組成物、または有効な濃度のペルオキシカルボン酸を形成する溶液もしくは組成物と、ある濃度の生物学的汚染物質で汚染された疑いがある表面または無生物体との、その他の方法による連通も含まれる。消毒薬組成物は、清浄化および消毒の両方を提供するために清浄化組成物と併用されてもよい。あるいは、単一の組成物で清浄化および消毒の両方を提供するために、配合物中に清浄化剤(例えば、界面活性剤または洗剤)が組み込まれてもよい。
【0251】
有効な濃度のペルオキシカルボン酸を含む組成物は、少なくとも1つの付加的な抗菌剤、プリオン分解プロテアーゼの組み合わせ、抗ウィルス剤、殺胞子剤、または殺生物剤を含有することもできる。これらの薬剤と、特許請求される発明によって生成されるペルオキシカルボン酸との組み合わせは生物学的汚染物質で汚染された(汚染された疑いがある)表面および/または物体を清浄化および消毒するために使用される場合に、増大したおよび/または相乗的な効果を提供することができる。適切な抗菌剤には、所望の程度の微生物防護を提供するの十分な量の、カルボン酸エステル(例えば、p−ヒドロキシアルキルベンゾアートおよびアルキルシンナマート)、スルホン酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸)、ヨウ素化合物または活性ハロゲン化合物(例えば、元素ハロゲン、ハロゲン酸化物(例えば、NaOCl、HOCl、HOBr、ClO
2)、ヨウ素、ハロゲン間化合物(interhalide)(例えば、一塩化ヨウ素、二塩化ヨウ素、三塩化ヨウ素、四塩化ヨウ素、塩化臭素、一臭化ヨウ素、または二臭化ヨウ素)、ポリハロゲン化物、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸、次亜臭素酸塩、次亜臭素酸、クロロ−およびブロモ−ヒダントイン、二酸化塩素、および亜塩素酸ナトリウム)、有機過酸化物(過酸化ベンゾイル、過酸化アルキルベンゾイル、オゾン一重項酸素発生剤、およびこれらの混合物を含む)、フェノール誘導体(o−フェニルフェノール、o−ベンジル−p−クロロフェノール、tert−アミルフェノールおよびC
1〜C
6アルキルヒドロキシベンゾアートなど)、第4級アンモニウム化合物(塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムおよびこれらの混合物など)、ならびにこのような抗菌剤の混合物が含まれる。有効な量の抗菌剤には、約0.001重量%〜約60重量%の抗菌剤、約0.01重量%〜約15重量%の抗菌剤、または約0.08重量%〜約2.5重量%の抗菌剤が含まれる。
【0252】
一つの態様では、本発明の方法によって形成されるペルオキシカルボン酸は、ある場所の上におよび/またはある場所で適用される場合に、生存可能な生物学的汚染物質(生存可能な微生物集団)の濃度を低減するために使用することができる。本明細書で用いられる場合、「場所」は、消毒または漂白に適した標的表面の一部または全てを含む。標的表面には、潜在的に生物学的汚染物質で汚染され得る全ての表面が含まれる。非限定的な例としては、食品または飲料産業において見られる装置の表面(タンク、コンベヤー、床、ドレーン、冷凍庫、装置の表面、壁、バルブ、ベルト、パイプ、ドレーン、ジョイント、割れ目、これらの組み合わせなど)、建物の表面(壁、床、および窓など)、非食品産業関連のパイプおよびドレーン(水処理施設、プールおよび温泉場、ならびに発酵タンクを含む)、病院または動物病院の表面(壁、床、ベッド、装置(内視鏡など)、病院/動物病院または他のヘルスケア環境で着用される衣類(衣類、手術着(scrub)、靴を含む)、および他の病院または動物病院の表面など)、レストランの表面、浴室の表面、トイレ、衣服および靴、家禽、ウシ、乳牛、ヤギ、ウマおよびブタなど家畜のための納屋または畜舎の表面、家禽またはエビのための孵化場、ならびに医薬品または生物医薬品の表面(例えば、医薬品または生物医薬品の製造装置、医薬品または生物医薬品の成分、医薬品または生物医薬品の賦形剤)が挙げられる。付加的な硬い表面には、牛肉、鶏肉、豚肉、野菜、果物、シーフード、そしてこれらの組み合わせなどの食品も含まれる。場所は、感染した(infected)リネンまたはその他の織物などの吸水材料を含むこともできる。また場所は、収穫された植物または植物製品(種子、球茎、塊茎、果実、および野菜を含む)、生育中の植物、特に作物用に生育中の植物(穀草類、葉野菜およびサラダ用作物、根菜、豆類、ベリー状の果実、柑橘果実および硬い果物を含む)も含む。
【0253】
硬い表面材料の非限定的な例は、金属(例えば、鋼、ステンレス鋼、クロム、チタン、鉄、銅、真鍮、アルミニウム、およびこれらの合金)、鉱物(例えばコンクリート)、ポリマーおよびプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリ(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)、ポリ(アクリロニトリル、ブタジエン)、アクリロニトリルブタジエンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、およびナイロンなどのポリアミド)である。付加的な表面としては、レンガ、タイル、セラミック、磁器、木、ビニール、リノリウム、およびカーペットが挙げられる。
【0254】
本発明の方法によって形成されるペルオキシカルボン酸は、漂白、脱染、衛生化、消毒、および脱臭を含むがこれらに限定されない利益を織物に提供するために使用されてもよい。本発明の方法によって形成されるペルオキシカルボン酸は、織物の予洗処理剤、洗濯洗剤、染み抜き剤、漂白組成物、脱臭組成物、およびすすぎ(rinsing)剤を含むが、これらに限定されないあらゆるランドリーケア製品において使用することができる。
【0255】
組換え微生物の発現
本発明の方法および系に関して、本明細書において記載される配列の遺伝子および遺伝子産物は、異種宿主細胞において、特に微生物宿主の細胞において産生され得る。遺伝子および核酸分子の発現のための好ましい異種宿主細胞は、真菌または細菌ファミリーにおいて見出すことができ、広範な温度、pH値、および溶媒耐性にわたって増殖する微生物宿主である。例えば、細菌、酵母、および糸状菌はどれも適切に本発明の核酸分子の発現の宿主となり得ると考えられる。ペルヒドロラーゼは、細胞内、細胞外、または細胞内および細胞外の両方の組み合わせにおいて発現され得るが、ここで、細胞外発現によって、発酵産物からの所望のタンパク質の回収は、細胞内発現によって産生されるタンパク質の回収方法よりも容易になる。転写、翻訳およびタンパク質生合成装置は、細胞バイオマスを発生させるために使用される細胞原料に対して不変なままであり、機能性遺伝子は構わずに発現されるであろう。宿主株の例としては、アスペルギルス属、トリコデルマ属、サッカロミセス属、ピキア属、ファフィア属、カンジダ属、ハンゼヌラ属、ヤロウィア属、クルイベロミセス属、サルモネラ属、バチルス属、アシネトバクター属、ザイモモナス属、アグロバクテリウム属、エリスロバクター属(Erythrobacter)、クロロビウム属、クロマチウム属、フラボバクテリウム属、サイトファーガ属、ロドバクター属、ロドコッカス属、ストレプトミセス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリア属、マイコバクテリウム属、ディノコッカス属、エシェリキア属、エルウィニア属、パンテア属、シュードモナス属、スフィンゴモナス属、メチロモナス属、メチロバクター属、メチロコッカス属、メチロサイナス属、メチロミクロビウム属(Methylomicrobium)、メチロシスティス属(Methylocystis)、アルカリゲネス属、シネコシスティス属、シネココッカス属、アナベナ属、チオバチルス属、メタノバクテリウム属、クレブシエラ属、およびミキソコッカス属などの細菌、真菌または酵母種が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、細菌宿主株には、クルイベロミセス属、エシェリキア属、バチルス属、およびシュードモナス属が含まれる。好ましい実施形態では、細菌宿主細胞は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)である。
【0256】
大規模の微生物の増殖および機能性遺伝子の発現は、様々な単純または複合炭水化物、有機酸、およびアルコール、またはメタンなどの飽和炭化水素、または二酸化炭素(光合成または化学独立栄養宿主の場合)、窒素、リン、硫黄、酸素、炭素または任意のきわめて微量の栄養素(小さい無機イオンを含む)の形態および量を使用し得る。増殖速度の制御は、特定の制御分子を培養物に添加するか否かによって影響され得るが、これらは通常栄養物またはエネルギー源とは考えられない。
【0257】
適切な宿主細胞の形質転換のために有用なベクターまたはカセットは当該技術分野でよく知られている。通常、ベクターまたはカセットは、関連の遺伝子の転写および翻訳を指示する配列、選択可能なマーカー、および自己複製または染色体の組込みを可能にする配列を含有する。適切なベクターは、転写開始の調節を包含する遺伝子の5’領域と、転写の終結を調節するDNA断片の3’領域とを含む。両方の調節領域が形質転換宿主細胞に相同および/または産生宿主に天然の遺伝子に由来する場合が最も好ましいが、このような調節領域はそのような由来でなくてもよい。
【0258】
所望の宿主細胞において本発明のセファロスポリンCデアセチラーゼのコード領域の発現を駆動するために有用な開始調節領域またはプロモーターは多数あり、当業者によく知られている。事実上、これらの遺伝子を駆動することができるあらゆるプロモーターが本発明に適しており、CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセス属における発現に有用)、AOX1(ピキア属における発現に有用)、ならびにlac、araB、tet、trp、lP
L、lP
R、T7、tac、およびtrc(エシェリキア・コリ(Escherichia coli)における発現に有用)、ならびにバチルス属における発現に有用なamy、apr、nprプロモーターおよび種々のファージプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0259】
終結調節領域も、好ましい宿主細胞に天然の種々の遺伝子に由来し得る。一実施形態では、終結調節領域の包含は任意である。別の実施形態では、キメラ遺伝子は、好ましい宿主細胞に由来する終結調節領域を含む。
【0260】
工業的な産生
本発明の方法および系に従って本発明のペルヒドロラーゼ触媒を産生するために様々な培養方法を適用することができる。例えば、組換え微生物宿主から過剰発現される特定の遺伝子産物の大規模の産生は、バッチおよび連続培養方法の両方によって生成することができる。
【0261】
古典的なバッチ培養法は閉鎖系であり、培地の組成は培養の開始時に設定され、培養過程中に人工的な変更を受けない。従って、培養過程の初めに、培地は所望の生物(単数または複数)を播種し、増殖または代謝活動はこの系にさらに何も添加することなく生じ得る。しかしながら、通常は、「バッチ」培養は炭素源の添加に関してバッチ式であり、多くの場合、pHおよび酸素濃度などの因子を調節する試みがなされる。バッチ系では、系の代謝産物およびバイオマス組成物は、培養が終了する時間まで絶えず変化する。バッチ培養において、細胞は、静的な誘導期を通って高増殖の対数期へ、そして最後に増殖速度が減少または停止される定常期まで緩和する。未処理の場合、定常期の細胞は最終的には死滅するであろう。いくつかの系では、対数期の細胞は、多くの場合、最終産物または中間体の産生の大部分に関与する。その他の系では、定常期または対数期後の産生を得ることができる。
【0262】
標準的なバッチ系におけるバリエーションは流加系である。流加培養過程も本発明において適切であり、培養が進行するにつれて基質が徐々に添加されることを除いて典型的なバッチ系を含む。流加系は、異化産物の抑制が細胞の代謝を阻害する傾向がある場合、そして培地中に限られた量の基質を有するのが望ましい場合に有用である。流加系における実際の基質の濃度の測定は困難であり、pH、溶解酸素および排ガス(CO
2など)の分圧などの測定可能な因子の変化に基づいて推定される。バッチおよび流加培養法は一般的であり、当該技術分野においてよく知られており、その例は、Thomas D.Brock in「Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology」,第2版,Sinauer Associates,Inc.,Sunderland,MA(1989年)、およびDeshpande,Mukund V.,Appl.Biochem.Biotechnol.,36:227−234(1992年)において見出すことができる。
【0263】
所望のペルヒドロラーゼ触媒の商業的な産生は、連続培養を用いて達成することもできる。連続培養は開放系であり、定義される培地がバイオリアクターに連続的に添加され、同時に、等量の条件培地が処理のために除去される。一般に、連続培養は、主に細胞が対数増殖期にあるときに、細胞を一定の高い液相密度に維持する。あるいは、連続培養は固定化細胞を用いて実施することもでき、ここで、炭素および栄養物は連続的に添加され、価値のある産物、副産物または老廃物は細胞塊から連続的に除去される。細胞の固定化は、天然および/または合成材料で構成される様々な固体担体を用いて実施することができる。
【0264】
連続または半連続培養によって、細胞の増殖または最終産物の濃度に影響を与える1つの因子または多数の因子の調節が可能になる。例えば、1つの方法では、炭素源または窒素レベルなどの制限栄養物が固定比率で維持され、すべての他のパラメータは調節可能にされるであろう。その他の系では、増殖に影響を与える多数の因子を連続的に変更することができ、培地の濁度によって測定される細胞濃度が一定に保持される。連続系は、定常状態の増殖条件を維持しようとするので、培地が抜き取られたことによる細胞の損失は、培養中、細胞増殖速度に対してバランスがとられなければならない。連続培養過程のための栄養物および成長因子の調節方法、ならび産物の形成速度を最大にするための技術は、工業微生物学の技術分野においてよく知られており、Brock(上記)によって様々な方法が詳述されている。
【0265】
本発明における発酵培地は、適切な炭素基質を含有しなければならない。適切な基質としては、単糖(グルコースおよびフルクトースなど)、二糖(ラクトースまたはスクロースなど)、多糖(デンプンまたはセルロースなど)、またはこれらの混合物、および再生可能な原料(チーズホエー浸透液、コーンスティープリカー、甜菜の糖蜜、および大麦の麦芽など)からの未精製混合物が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、炭素基質は、二酸化炭素、メタンまたはメタノールなどの1炭素基質であってもよい(例えば、宿主細胞がメチロトローフ微生物である場合)。同様に、種々のカンジダ種は、アラニンまたはオレイン酸を代謝するであろう(Sulterら,Arch.Microbiol.,153:485−489(1990年))。従って、本発明において用いられる炭素源は様々な種類の炭素含有基質を包含することができ、生物の選択によってのみ制限されると考えられる。
【0266】
バッチ発酵、流加発酵、または連続培養からの所望のペルヒドロラーゼ触媒の回収は、当業者に知られている方法のいずれかによって達成され得る。例えば、酵素触媒が細胞内で産生される場合、細胞ペーストは遠心分離または膜ろ過によって培地から分離され、場合により水または所望のpHの水性緩衝液で洗浄され、次に、所望のpHの水性緩衝液中の細胞ペーストの懸濁液はホモジナイズされて、所望の酵素触媒を含有する細胞抽出物を生じる。細胞抽出物は、場合により、セライトまたはシリカなどの適切なろ過助剤を通してろ過され、酵素触媒溶液から不要なタンパク質を沈殿させるための加熱処理工程の前に細胞片が除去されてもよい。次に、所望の酵素触媒を含有する溶液は、膜ろ過または遠心分離によって、沈殿した細胞片およびタンパク質から分離されてもよく、得られた部分精製酵素触媒溶液は、付加的な膜ろ過によって濃縮され、次に場合により、適切なキャリア(例えば、マルトデキストリン、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、またはこれらの混合物)と混合され、噴霧乾燥されて所望の酵素触媒を含む固体粉末を生じる。
【0267】
本出願人らは、特に、引用される全ての参考文献の内容全体を本開示に援用する。さらに、量、濃度、またはその他の値もしくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、または上限の好ましい値および下限の好ましい値の一覧のいずれかで与えられる場合、これは、範囲が別々に開示されているかどうかにかかわらず、任意の範囲の上限または好ましい値と任意の範囲の下限または好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示すると理解されるべきである。本明細書において数値の範囲が列挙される場合、他に記載されない限り、その範囲は、その両端点ならびに範囲内の全ての整数および分数を含むことが意図される。範囲を定義する場合、本発明の範囲は、列挙される特定の値に限定することは意図されない。
【実施例】
【0268】
一般的な方法
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために提供される。以下の実施例において開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者らによって発見された技術を示し、従って、その実施のために好ましいモードを構成すると考えられることは、当業者によって認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本発明の開示を考慮して、開示される特定の実施形態において多くの変化が成され、そしてそれでもなお本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができると認識すべきである。
【0269】
全ての試薬および材料は、他に指定されない限り、DIFCO Laboratories(Detroit,MI)、GIBCO/BRL(Gaithersburg,MD)、TCI America(Portland,OR)、Roche Diagnostics Corporation(Indianapolis,IN)またはSigma/Aldrich Chemical Company(St.Louis,MO)から入手した。
【0270】
本明細書における以下の略語は、以下のように、測定、技術、特性、または化合物の単位に相当する:「sec」または「s」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」または「hr」は時間を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「ppm」は100万分の1を意味し、「wt」は重量を意味し、「wt%」は重量パーセントを意味し、「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「g」は重力を意味し、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィを意味し、「ddH
2O」は蒸留および脱イオン水を意味し、「dcw」は乾燥細胞重量を意味し、「ATCC」または「ATCC(登録商標)」はAmerican Type Culture Collection(Manassas,VA)を意味し、「U」はペルヒドロラーゼ活性の単位を意味し、「rpm」は1分間の回転数を意味し、「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を意味する。
【0271】
実施例1
katGカタラーゼ破壊E.コリ(E.coli)株の構築
配列番号32および配列番号33と同定されるプライマーを用いるPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で分間1、30サイクル)によって、カナマイシン耐性遺伝子のコード領域(kan、配列番号30)をプラスミドpKD13(配列番号31)から増幅して、配列番号34と同定されるPCR産物を生じた。katG核酸配列は配列番号35として提供され、対応するアミノ酸配列は配列番号36である。E.コリ(E.coli)MG1655(ATCC(登録商標)47076
TM)を、λ−Redリコンビナーゼ遺伝子を含有する温度感受性プラスミドpKD46(配列番号37)で形質転換し(DatsenkoおよびWanner,2000年,PNAS USA 97:6640−6645)、LB−ampプレートにおいて30℃で24時間選択した。エレクトロポレーション(BioRad Gene Pulser、0.2cmキュベット、2.5kV、200W、25μF)によって、MG1655/pKD46を50〜500ngのPCR産物で形質転換し、LB−kanプレートにおいて37℃で24時間選択した。数個のコロニーをLB−kanプレート上に画線し、42℃で一晩インキュベートして、pKD46プラスミドをキュアリングした。コロニーをチェックして、kanR/ampSの表現型を確認した。PUREGENE(登録商標)DNA精製システム(Gentra Systems,Inc.,Minneapolis,MN)を用いて数個のコロニーからゲノムDNAを単離し、配列番号38および配列番号39と同定されるプライマーを用いてPCRによりチェックして、katG遺伝子の破壊を確認した。いくつかのkatG破壊株を、FLPリコンビナーゼを含有する温度感受性プラスミドpCP20(配列番号40)で形質転換し、kan遺伝子を切除するために使用し、LB−ampプレートにおいて37℃で24時間選択した。数個のコロニーをLBプレート上に画線し、42℃で一晩インキュベートして、pCP20プラスミドをキュアリングした。2つのコロニーをチェックして、kanS/ampSの表現型を確認し、MG1655KatG1およびMG1655KatG2と命名した。
【0272】
実施例2
katEカタラーゼ破壊E.コリ(E.coli)株の構築
配列番号41および配列番号42と同定されるプライマーを用いるPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によって、カナマイシン耐性遺伝子(配列番号30)をプラスミドpKD13(配列番号31)から増幅して、配列番号43と同定されるPCR産物を生じた。katE核酸配列は配列番号44として提供され、対応するアミノ酸配列は配列番号45である。E.コリ(E.coli)MG1655(ATCC(登録商標)47076
TM)を、λ−Redリコンビナーゼ遺伝子を含有する温度感受性プラスミドpKD46(配列番号37)で形質転換し、LB−ampプレートにおいて30℃で24時間選択した。エレクトロポレーション(BioRad Gene Pulser、0.2cmキュベット、2.5kV、200W、25μF)によって、MG1655/pKD46を50〜500ngのPCR産物で形質転換し、LB−kanプレートにおいて37℃で24時間選択した。数個のコロニーをLB−kanプレート上に画線し、42℃で一晩インキュベートして、pKD46プラスミドをキュアリングした。コロニーをチェックして、kanR/ampSの表現型を確認した。PUREGENE(登録商標)DNA精製システムを用いてゲノムDNAを数個のコロニーから単離し、配列番号46および配列番号47と同定されるプライマーを用いてPCRによりチェックして、katE遺伝子の破壊を確認した。いくつかのkatE破壊株を、FLPリコンビナーゼを含有する温度感受性プラスミドpCP20(配列番号40)で形質転換し、kan遺伝子を切除するために使用し、LB−ampプレートにおいて37℃で24時間選択した。数個のコロニーをLBプレート上に画線し、42℃で一晩インキュベートして、pCP20プラスミドをキュアリングした。2つのコロニーをチェックして、kanS/ampSの表現型を確認し、MG1655KatE1およびMG1655KatE2と命名した。
【0273】
実施例3
katGカタラーゼおよびkatEカタラーゼ破壊E.コリ(E.coli)株(KLP18)の構築
配列番号41および配列番号42と同定されるプライマーを用いるPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によって、カナマイシン耐性遺伝子(配列番号30)をプラスミドpKD13(配列番号31)から増幅して、配列番号43と同定されるPCR産物を生じた。E.コリ(E.coli)MG1655KatG1を、λ−Redリコンビナーゼ遺伝子を含有する温度感受性プラスミドpKD46(配列番号37)で形質転換し、LB−ampプレートにおいて30℃で24時間選択した。エレクトロポレーション(BioRad Gene Pulser、0.2cmキュベット、2.5kV、200W、25μF)によって、MG1655KatG1/pKD46を50〜500ngのPCR産物で形質転換し、LB−kanプレートにおいて37℃で24時間選択した。数個のコロニーをLB−kanプレート上に画線し、42℃で一晩インキュベートして、pKD46プラスミドをキュアリングした。コロニーをチェックして、kanR/ampSの表現型を確認した。PUREGENE(登録商標)DNA精製システムを用いてゲノムDNAを数個のコロニーから単離し、配列番号46および配列番号47と同定されるプライマーを用いてPCRによりチェックして、katE遺伝子の破壊を確認した。いくつかのkatE破壊株(ΔkatE)を、FLPリコンビナーゼを含有する温度感受性プラスミドpCP20(配列番号40)で形質転換し、kan遺伝子を切除するために使用し、LB−ampプレートにおいて37℃で24時間選択した。数個のコロニーをLBプレート上に画線し、42℃で一晩インキュベートして、pCP20プラスミドをキュアリングした。2つのコロニーをチェックして、kanS/ampSの表現型を確認し、MG1655KatG1KatE18.1およびMG1655KatG1KatE23と命名した。MG1655KatG1KatE18.1は、E.コリ(E.coli)KLP18と称される。
【0274】
実施例4
サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現
GENBANK(登録商標)(受入番号AAB70869)において報告されるようなサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのアセチルキシランエステラーゼをコードする遺伝子のコード領域を、E.コリ(E.coli)における発現に対して最適化されたコドン(DNA2.0、Menlo Park,CA)を用いて合成した。その後、配列番号27および配列番号28と同定されるプライマーを用いるPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によって、遺伝子のコード領域を増幅した。得られた核酸産物(配列番号29)をpTrcHis2−TOPO(登録商標)にサブクローニングして、SW196と同定されるプラスミドを生じた。プラスミドpSW196を用いてE.コリ(E.coli)KLP18を形質転換し、株KLP18/pSW196を生じた。KLP18/pSW196を、LB培地中、37℃で振とうさせながら、OD
600nm=0.4〜0.5まで増殖させ、この時点で、IPTGを1mMの最終濃度になるまで添加し、インキュベーションを2〜3時間続けた。細胞を遠心分離によって収集し、SDS−PAGEを実施して、全可溶性タンパク質の20〜40%でペルヒドロラーゼの発現を確認した。
【0275】
実施例5
ペルヒドロラーゼを発現するE.コリ(E.coli)KLP18形質転換体の発酵
酵母抽出物(Amberex 695、5.0g/L)、K
2HPO
4(10.0g/L)、KH
2PO
4(7.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.0g/L)、(NH
4)
2SO
4(4.0g/L)、MgSO
4七水和物(1.0g/L)およびクエン酸第二鉄アンモニウム(0.10g/L)を含有する0.5Lの種培地を2Lの振とうフラスコに入れることによって、発酵槽の種培養物を調製した。培地のpHを6.8に調整し、培地をフラスコ中で滅菌した。殺菌後の添加は、グルコース(50重量%、10.0mL)および1mLのアンピシリン(25mg/mL)保存液を含んだ。種培地に、2
0%のグリセロール中のE.コリ(E.coli)KLP18/pSW196の培養物を1mL播種し、35℃および300rpmで培養した。KH
2PO
4(3.50g/L)、FeSO
4七水和物(0.05g/L)、MgSO
4七水和物(2.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.90g/L)、酵母抽出物(Amberex 695、5.0g/L)、Biospumex 153K消泡剤(0.25mL/L、Cognis Corporation)、NaCl(1.0g/L)、CaCl
2二水和物(10g/L)、およびNIT微量元素溶液(10mL/L)を含有する35℃の8Lの培地を含む14Lの発酵槽(Braun)に、約1〜2のOD
550において、種培養物を移した。微量元素溶液は、クエン酸一水和物(10g/L)、MnSO
4水和物(2g/L)、NaCl(2g/L)、FeSO
4七水和物(0.5g/L)、ZnSO
4七水和物(0.2g/L)、CuSO
4五水和物(0.02g/L)およびNaMoO
4二水和物(0.02g/L)を含有した。殺菌後の添加は、グルコース溶液(50%w/w、80.0g)およびアンピシリン(25mg/mL)保存液(16.00mL)を含んだ。グルコース溶液(50%w/w)を流加のために使用した。グルコース濃度が0.5g/Lまで低下したときにグルコースの供給を開始し、0.31g供給/分から始まり、毎時それぞれ0.36、0.42、0.49、0.57、0.66、0.77、0.90、1.04、1.21、1.41、1.63g/分まで徐々に増大させ、その後速度を一定に保持した。培地中のグルコース濃度を監視し、濃度が0.1g/Lを超えたら、供給速度を低下または一時的に停止した。OD
550=56とOD
550=80との間で、種々の株に対する16mLのIPTG(0.5M)の添加によって誘導を開始した。溶存酸素(DO)濃度を空気飽和の25%に調節した。DOは、初めはインペラーの撹拌速度(400〜1400rpm)によって、その後通気速度(2〜10slpm)によって調節した。pHを6.8に調節した。pH調節のためにNH
4OH(29%w/w)およびH
2SO
4(20%w/v)を使用した。ヘッドの圧力は0.5バールであった。IPTG添加の16時間後に、細胞を遠心分離によって収集した。
【0276】
実施例6
噴霧乾燥サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)ペルヒドロラーゼの調製
実施例5で記載したように調製されたサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)細胞ペーストを、pH7.4の50mMのリン酸ナトリウム緩衝液中に200g湿細胞重量/Lの最終濃度で懸濁させた。12,000psi(〜82.74MPa)の入口圧力で操作されるAPV1000ホモジナイザーによって単一バスで、懸濁液中の細胞を溶解させた。得られたライセートを65℃で約30分間加熱処理し、ホモジネートを室温まで冷却し、得られた固体を遠心分離で除去した。0.1ミクロンのフィルタを用いて遠心分離からの上澄みをろ過し、30K NMWCOフィルタを用いて、得られたろ液(ペルヒドロラーゼを含有する)を34mgタンパク質/mLの最終タンパク質濃度まで濃縮した。重量によりタンパク質の濃度の約3倍の濃度になるまで、マルトデキストリンをタンパク質溶液に添加し、225℃の入口温度および76℃の乾燥器出口温度を用いて、得られた溶液を噴霧乾燥させた。得られた粉末中のタンパク質濃度は20.3重量%であり、乾燥固体含量は93.2重量%であった。
【0277】
実施例7
サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)ペルヒドロラーゼによる過酢酸生成に対する添加溶媒の効果
90.0gの脱イオン水と、0.350gのTURPINAL(登録商標)SL((1−ヒドロキシ−1−ホスホノエチル)ホスホン酸、水中60重量%、Thermphos International,Hague,Netherlands)と、水中30重量%の過酸化水素3.20gとの第1の混合物を、50%の水酸化ナトリウム水でpH7.2に調整し、混合物の最終重量を脱イオン水で100.0gに調整した。55.76gのトリアセチンと、4.20gの重炭酸ナトリウムと、2.50gのCAB−O−SIL(登録商標)M5ヒュームドシリカ(Cabot,Boston,Massachusetts)と、0.270gの噴霧乾燥サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)ペルヒドロラーゼ(実施例6)と、トリプロピレングリコールメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)TPM、Dow Chemical Corporation,Midland,MI)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)DPM)、プロピレングリコールメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)PM)、ジエチレングリコールブチルエーテル(DOWANOL(登録商標)DB)、ジプロピレングリコール(DOWANOL(登録商標)DPG)、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、N−エチル−2−ピロルジノン、イソプロパノール、エタノール、乳酸エチル、および1,3−プロパンジオールからなる群から選択される37.43gの1つの有機溶媒との第2の混合物を調製した。第2の混合物の1.0gのアリコートを急速に攪拌しながら(溶解していない固体を懸濁させるため)取り出し、これに、水中の過酸化水素およびTURPINAL(登録商標)SLの第1の混合物(pH7.2)9.00mLを25℃で攪拌しながら添加して混合し、得られた混合物は、255mMのトリアセチン、254mMの過酸化水素および0.055mgタンパク質/mLの噴霧乾燥ペルヒドロラーゼを含有した。各溶媒に対する対照反応も行い、タンパク質を添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成された過酢酸の濃度を決定した。
【0278】
Karstら(上記)によって記載される方法に従って、反応混合物中の過酢酸の濃度の決定を実施した。反応混合物のアリコート(0.040mL)を所定の時間に取り出し、水中5mMのリン酸0.960mLと混合し、希釈サンプルのpHをpH4未満に調整すると反応は直ちに終了した。得られた溶液を、12,000rpmで2分間の遠心分離により、ULTRAFREE(登録商標)MC−フィルターユニット(30,000公称分画分子量(NMWL)、Millipore Corp.,Billerica,MA、カタログ#UFC3LKT00)を用いてろ過した。得られたろ液のアリコート(0.100mL)を、0.300mLの脱イオン水を含有する1.5mLのスクリューキャップHPLCバイアル(Agilent Technologies,Palo Alto,CA、#5182−0715)に移し、次に、アセトニトリル中20mMのMTS(メチル−p−トリル−スルフィド)0.100mLを添加し、バイアルにフタを閉め、内容物を手短に混合した後、光のない状態で、約25℃で10分間のインキュベーションを行った。次に、各バイアルに、0.400mLのアセトニトリルおよび0.100mLのトリフェニルホスフィン(TPP、40mM)のアセトニトリル溶液を添加し、バイアルに再度フタを閉め、得られた溶液を混合し、光のない状態で、約25℃で30分間インキュベートした。次に、各バイアルに、0.100mLの10mMのN,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET、HPLC外部標準)を添加し、以下に記載されるように、得られた溶液をHPLCにより分析した。
【0279】
HPLC方法:
Supelco Discovery C8カラム(10cm×4.0mm、5μm)(カタログ#569422−U)w/プレカラムSupelco Supelguard Discovery C8(Sigma−Aldrich、カタログ#59590−U)、10マイクロリットルの注入体積、1.0mL/分および周囲温度におけるCH
3CN(Sigma−Aldrich、#270717)および脱イオン水による勾配法:
【0280】
【表9】
【0281】
0.5分、1分、2分、5分および10分間に上記反応で生成された過酢酸濃度は、以下の表5に記載される。
【0282】
【表10】
【0283】
トリアセチンおよび有機溶媒の混合物中での噴霧乾燥酵素の安定性を実証するために、トリアセチンと、重炭酸ナトリウムと、CAB−O−SIL(登録商標)M5(Cabot)と、噴霧乾燥サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)ペルヒドロラーゼ(実施例6)と、上記のトリプロピレングリコールメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)TPM)または1,2−プロパンジオールのいずれかとの混合物を、周囲温度で24時間貯蔵し、次に、これらの混合物のそれぞれ1.0gのアリコートを急速に攪拌しながら(溶解していない固体を懸濁させるため)取り出し、25℃で攪拌しながら、水(pH7.2)中の過酸化水素およびTURPINAL(登録商標)SLの新たに調製した(上記のように)混合物9.0mLと混合し、得られた混合物は、255mMのトリアセチンと、254mMの過酸化水素と、0.055mgタンパク質/mLの噴霧乾燥ペルヒドロラーゼとを含有した。各溶媒に対する対照反応も行い、タンパク質を添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成された過酢酸の濃度を決定した。Karstらによって記載される方法に従って、反応混合物中の過酢酸の濃度の決定を実施した(表6)。
【0284】
【表11】
【0285】
実施例8
添加溶媒の存在または不在下におけるサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)ペルヒドロラーゼによる過酢酸生成の比較
40.0gの脱イオン水と、0.1575gのTURPINAL(登録商標)SL((1−ヒドロキシ−1−ホスホノエチル)ホスホン酸、水中60重量%、Thermphos International)と、水中30重量%の過酸化水素1.44gとの第1の混合物を、50%の水酸化ナトリウム水でpH7.2に調整し、混合物の最終重量を脱イオン水で46.87gに調整した。2.78gのトリアセチンと、0.210gの重炭酸ナトリウムと、0.125gのCAB−O−SIL(登録商標)M5(Cabot)と、0.0135gの噴霧乾燥サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)ペルヒドロラーゼ(実施例6)との第2の混合物を調製し、水中の過酸化水素およびTURPINAL(登録商標)SLの第1の混合物(pH7.2)を25℃で攪拌しながら第2の混合物に添加し、得られた混合物は、255mMのトリアセチン、254mMの過酸化水素および0.055mgタンパク質/mLの噴霧乾燥ペルヒドロラーゼを含有した。Karstら(上記)によって記載される方法に従って、反応混合物中の過酢酸の濃度の決定を実施した。対照反応も行い、ペルヒドロラーゼを添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成された過酢酸の濃度を決定した。
【0286】
プロピレングリコールモノメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)PM)またはジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)DPM)のいずれか1.872gを、反応混合物中の同量の水の代わりに用いて上記の反応を繰り返した。40.0gの脱イオン水と、0.175gのTURPINAL(登録商標)SLと、水中30重量%の過酸化水素1.60gとの第1の混合物を、50%の水酸化ナトリウム水でpH7.2に調整し、混合物の最終重量を脱イオン水で50.0gに調整した。2.78gのトリアセチンと、プロピレングリコールモノメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)PM)またはジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)DPM)のいずれか1.872gと、0.210gの重炭酸ナトリウムと、0.125gのCAB−O−SIL(登録商標)M5(Cabot)と、0.0135gの噴霧乾燥サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)ペルヒドロラーゼ(実施例6)との第2の混合物を調製し、水中の過酸化水素およびTURPINAL(登録商標)SLの第1の混合物(pH7.2)45.0gを25℃で攪拌しながら第2の混合物に添加し、得られた混合物(pH6.5)は、255mMのトリアセチン、254mMの過酸化水素および0.055mgタンパク質/mLの噴霧乾燥ペルヒドロラーゼを含有した。対照反応も行い、抽出タンパク質を添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成された過酢酸の濃度を決定した。0.5分、1分、2分、5分および10分間に上記の3つの反応で生成された過酢酸濃度は、以下の表7に記載される。
【0287】
【表12】
【0288】
実施例9
攪拌反応と比較して2コンパートメント噴霧ボトルを用いたその場での過酸発生のための溶媒の使用
2000ppmのTURPINAL(登録商標)SL((1−ヒドロキシ−1−ホスホノエチル)ホスホン酸、水中60重量%、Thermphos International)を含有する0.20Mのクエン酸ナトリウム緩衝液100gと、280gの脱イオン水と、水中30重量%の過酸化水素5.20gとの第1の混合物を、50%の水酸化ナトリウム水でpH7.2に調整し、混合物の最終重量を脱イオン水で400gに調整した。83.4gのトリアセチンと、3.75gのCAB−O−SIL(登録商標)M5(Cabot)と、0.750gの噴霧乾燥サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)ペルヒドロラーゼ(実施例6)と、プロピレングリコールメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)PM)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)TPM)、ジエチレングリコールメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)DM)、プロピレングリコールn−ブチルエーテル(DOWANOL(登録商標)PNB)、プロピレングリコールn−プロピルエーテル(DOWANOL(登録商標)PnP)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(DOWANOL(登録商標)PMA)、ジプロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、および1,2−プロパンジオールから選択される単一の溶媒62.1gとを含有する第2の混合物を別個に調製した。25℃における第1の反応では、反応の最初の30〜60秒間、1.0gの第1の混合物を9.0gの第2の混合物と共に攪拌し(6.5〜6.0の反応pH)、サンプルを抜き出して、過酢酸の生成について分析し、得られた反応混合物は、255mMのトリアセチン、103mMの過酸化水素および100μgタンパク質/mLの噴霧乾燥ペルヒドロラーゼを含有した。Karstら(上記))によって記載される方法に従って、反応混合物中の過酢酸の濃度の決定(以下の表8)を実施した。対照反応も行い、ペルヒドロラーゼを添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成された過酢酸の濃度を決定した。
【0289】
上記のように調製した第1の混合物および第2の混合物を、2コンパートメント噴霧ボトル(Custom Dual−Liquid Variable−Ratio Sprayer,Model DLS 200、Take5(Rogue River、OR)により製造)の2つのコンパートメントの1つにそれぞれ別々に入れ、ボトルをセットアップして、9重量部の第1の混合物と、1重量部の第2の混合物との混合物を噴霧した。2つの混合物を12.5cm直径の結晶皿に噴霧し、得られた反応混合物(6.5〜6.0の反応pH)は、255mMのトリアセチン、100mMの過酸化水素および0.100mgタンパク質/mLの噴霧乾燥ペルヒドロラーゼを含有した。噴霧した反応混合物を所定の時間に採取し、Karstら(上記)によって記載される方法に従って、過酢酸について分析した(以下の表8)。
【0290】
【表13】
【0291】
【表14】
【0292】
実施例10
サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ペルヒドロラーゼを酵素触媒として用いたペルオキシカルボン酸の生成
サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)からのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現は、前の実施例1〜4に記載された方法に従って達成される。サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ペルヒドロラーゼを発現する細菌の形質転換体の発酵は、前の実施例5に従って実施され、噴霧乾燥サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ペルヒドロラーゼの調製は、実施例6で記載された方法を用いて達成される。サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ペルヒドロラーゼのクローニング、発現、および調製のための技術に関する付加的な情報は、米国特許出願公開第2009/0005590号明細書(参照によって本明細書中に援用される)において入手可能である。
【0293】
添加溶媒の存在および不在下におけるサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ペルヒドロラーゼによる過酢酸生成の比較を行う。40.0gの脱イオン水と、0.1575gのTURPINAL(登録商標)SL((1−ヒドロキシ−1−ホスホノエチル)ホスホン酸、水中60重量%、Thermphos International)と、水中30重量%の過酸化水素1.44gとの第1の混合物を、50%の水酸化ナトリウム水でpH7.2に調整し、混合物の最終重量を脱イオン水で46.87gに調整する。2.78gのトリアセチンと、0.210gの重炭酸ナトリウムと、0.125gのCAB−O−SIL(登録商標)M5(Cabot)と、0.0135gの噴霧乾燥サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ペルヒドロラーゼとの第2の混合物を調製し、水中の過酸化水素およびTURPINAL(登録商標)SLの第1の混合物(pH7.2)を25℃で攪拌しながら第2の混合物に添加し、得られた混合物は、255mMのトリアセチン、254mMの過酸化水素および0.055mgタンパク質/mLの噴霧乾燥ペルヒドロラーゼを含有する。Karstら(上記)によって記載される方法に従って反応混合物中の過酢酸の濃度の決定を実施する。対照反応も行い、ペルヒドロラーゼを添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成された過酢酸の濃度を決定する。
【0294】
プロピレングリコールモノメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)PM)またはジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)DPM)のいずれか1.872gを、反応混合物中の同量の水の代わりに用いて、上記の反応を繰り返す。40.0gの脱イオン水と、0.175gのTURPINAL(登録商標)SLと、水中30重量%の過酸化水素1.60gとの第1の混合物を50%の水酸化ナトリウム水でpH7.2に調整し、混合物の最終重量を脱イオン水で50.0gに調整する。2.78gのトリアセチンと、プロピレングリコールモノメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)PM)またはジプロピレングリコールモノメチルエーテル(dowanol(登録商標)DPM)のいずれか1.872gと、0.210gの重炭酸ナトリウムと、0.125gのCAB−O−SIL(登録商標)M5(Cabot)と、0.0135gの噴霧乾燥サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ペルヒドロラーゼとの第2の混合物を調製し、水中の過酸化水素およびTURPINAL(登録商標)SL第1の混合物(pH7.2)45.0gを25℃で攪拌しながら第2の混合物に添加し、得られた混合物(pH6.5)は、255mMのトリアセチン、254mMの過酸化水素および0.055mgタンパク質/mLの噴霧乾燥ペルヒドロラーゼを含有した。対照反応も行い、添加抽出タンパク質を添加しないで過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成された過酢酸の濃度を決定する。0.5分、1分、2分、5分および10分分間に上記3つの反応で生成された過酢酸濃度を測定して記録する。
【0295】
実施例11
攪拌反応と比較して、2コンパートメント噴霧装置を用い、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ペルヒドロラーゼ用いたその場での過酸発生のための溶媒の使用
2000ppmのTURPINAL(登録商標)SL((1−ヒドロキシ−1−ホスホノエチル)ホスホン酸、水中60重量%、Thermphos International)を含有する0.20Mのクエン酸ナトリウム緩衝液100gと、280gの脱イオン水と、水中30重量%の過酸化水素5.20gとの第1の混合物を50%の水酸化ナトリウム水でpH7.2に調整し、混合物の最終重量を脱イオン水で400gに調整する。83.4gのトリアセチンと、3.75gのCAB−O−SIL(登録商標)M5(Cabot)と、0.750gの噴霧乾燥サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ペルヒドロラーゼ(実施例10)と、プロピレングリコールメチルエーテル(dowanol(登録商標)PM)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(dowanol(登録商標)TPM)、ジエチレングリコールメチルエーテル(dowanol(登録商標)DM)、プロピレングリコールn−ブチルエーテル(dowanol(登録商標)PNB)、プロピレングリコールn−プロピルエーテル(dowanol(登録商標)PnP)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(dowanol(登録商標)PMA)、ジプロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、および1,2−プロパンジオールから選択される単一の溶媒62.1gとを含有する第2の混合物を別個に調製する。25℃における第1の反応では、反応の最初の30〜60秒間、1.0gの第1の混合物を9.0gの第2の混合物と共に攪拌し(6.5〜6.0の反応pH)、サンプルを抜き出して、過酢酸の生成について分析し、得られた反応混合物は、255mMのトリアセチン、103mMの過酸化水素および100μgタンパク質/mLの噴霧乾燥ペルヒドロラーゼを含有する。Karstらによって記載される方法(上記)に従って、反応混合物中の過酢酸の濃度の決定を実施する。対照反応も行い、ペルヒドロラーゼを添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成された過酢酸の濃度を決定する。
【0296】
上記のように調製した第1の混合物および第2の混合物を、2コンパートメント噴霧ボトル(Custom Dual−Liquid Variable−Ratio Sprayer,Model DLS 200、Take5(Rogue River,OR)により製造)の2つのコンパートメントの1つにそれぞれ別々に入れ、ボトルをセットアップして、9重量部の第1の混合物と、1重量部の第2の混合物との混合物を噴霧する。2つの混合物を12.5cm直径の結晶皿に噴霧し、得られた反応混合物(6.5〜6.0の反応pH)は、255mMのトリアセチン、100mMの過酸化水素および0.100mgタンパク質/mLの噴霧乾燥ペルヒドロラーゼを含有する。噴霧した反応混合物を所定の時間に採取し、Karstら(上記)によって記載される方法に従って、過酢酸について分析する。
【0297】
実施例12
例示的な2成分系
2成分その場型の過酸消毒薬配合物の一例は、以下に記載される。
【0298】
【表15】
【0299】
上記の2成分その場型の過酸消毒薬配合物について、成分Aは成分AおよびBの合わせ
た重量の約2.6重量%を構成し、成分Aに対する成分Bの重量比は約38:1である。2成分その場型の過酸消毒薬配合物のための特定の用途では、成分Aに対する成分Bの比率が1:1〜10:1の範囲内にあるのが望ましいこともあり、この場合、10部〜1部(重量による)の成分Bが1部(重量による)の成分Aと混合されて、消毒に有効な濃度の過酸を生成する。例えば、第1の用途では、固定比率の二液型スプレー(Model DLS100、Take5)または可変比率の二液型スプレー(Model DLS200、Take5)などの2コンパートメント噴霧ボトルが用いられ、ここでは、成分Aに対する成分Bの最大比率10:1が用いられる。第2の用途では、壊すことのできるシールで隔てられた2つの別々のコンパートメントを含有する単一のボトルが用いられ、ここでは、2つの別々のコンパートメントの体積比は、1:1、または5:1または10:1である。これらの用途のそれぞれにおいて、2成分型配合物は、成分Bに対する成分Aの所望の比率で混合されて、所望の反応物の濃度および生成物の最終濃度を提供することができない。
【0300】
実施例13
バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954
TMペルヒドロラーゼを用いるプロピレングリコールジアセタートまたはエチレングリコールジアセタートの過加水分解
バチルス・スブチリスからの野生型ペルヒドロラーゼを発現する形質転換体(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954
TM(KLP18/pSW194)のホモジネートを、ジチオスレイトール(1mM)を含有する0.05Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中で、細胞ペースト(20重量%の湿細胞重量)の懸濁液から調製した。粗ホモジネートを遠心分離して細胞片を除去し、清澄化細胞抽出物を生じ、これを65℃で30分間加熱処理した。得られた混合物を遠心分離し、加熱処理した上澄みを30KのMWCO(分子量カットオフ)膜において32mg/mLの全溶解固体の濃度まで濃縮し、清澄化、加熱処理した細胞抽出物のSDS−PAGEによって、ペルヒドロラーゼが少なくとも85〜90%純粋であることが示された。次に、この濃縮物に、固体1グラムあたり2.06グラムのNaH
2PO
4および1.17グラムのNa
2HPO
4を添加し、約3:1であるリン酸緩衝液対加熱処理細胞抽出タンパク質の比率(wt/wt)を生じた。この溶液を脱イオン水により30重量%に希釈し、次に、Buchi B−290実験室用噴霧乾燥器を用いて噴霧乾燥し(180℃の入口温度、70℃の出口温度)、得られた噴霧乾燥粉末は、25.5重量%のタンパク質(Bradfordタンパク質アッセイ)を含有し、94.3重量%の乾燥固体であった。
【0301】
プロピレングリコールジアセタート(PGDA)またはエチレングリコールジアセタート(EGDA)と、過酸化水素(100mM)と、噴霧乾燥E.コリ(E.coli)KLP18/pSW194(バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954
TM野生型ペルヒドロラーゼを発現する)からの加熱処理した抽出タンパク質(上記のように調製)123μg/mLとを含有する50mMの重炭酸ナトリウム緩衝液(初期pH7.2)中、23℃で反応(10mLの全体積)を行った。それぞれの反応条件に対する対照反応を行い、加熱処理した抽出タンパク質を添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成された過酢酸の濃度を決定した。1、5、および30分で反応を採取し、Karst誘導体化プロトコール(Karstら(上記))を用いて、サンプルを過酢酸について分析し、反応混合物のアリコート(0.040mL)を取り出し、水中5mMのリン酸0.960mLと混合し、希釈サンプルのpHをpH4未満に調整すると反応は直ちに終了した。得られた溶液を、12,000rpmで2分間の遠心分離により、ULTRAFREE(登録商標)MC−フィルターユニット(30,000公称分画分子量(NMWL)、Milliporeカタログ#UFC3LKT00)を用いてろ過した。得られたろ液のアリコート(0.100mL)を、0.300mLの脱イオン水を含有する1.5mLのスクリューキャップHPLCバイアル(Agilent Technologies,Palo Alto,CA、#5182−0715)に移し、次に、アセトニトリル中20mMのMTS(メチル−p−トリル−スルフィド)0.100mLを添加し、バイアルにフタを閉め、内容物を手短に混合した後、光のない状態で、約25℃で10分間のインキュベーションを行った。次に、各バイアルに、0.400mLのアセトニトリルおよび0.100mLのトリフェニルホスフィン(TPP、40mM)のアセトニトリル溶液を添加し、バイアルに再度フタを閉め、得られた溶液を混合し、光のない状態で、約25℃で30分間インキュベートした。次に、各バイアルに、0.100mLの10mMのN,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET、HPLC外部標準)を添加し、得られた溶液をHPLCにより分析した。1分、5分および30分間に生成された過酢酸濃度は、表9に記載される。
【0302】
【表16】
【0303】
実施例14
T.マリティマ(T.maritima)およびT.ネアポリタナ(T.neapolitana)野生型および変異体ペルヒドロラーゼを用いるプロピレングリコールジアセタートまたはエチレングリコールジアセタートの過加水分解
ジチオスレイトール(1mM)を含有する0.05Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中の細胞ペースト(20重量%湿細胞重量)の懸濁液を、16,000psi(〜110MPa)の作動圧力を有するFrench Pressに2回通すことによって、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)野生型ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW196)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277S変異体ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW196/C277S)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277T変異体ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW196/C277T)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)野生型ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW228)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)C277S変異体ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW228/C277S)、およびサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)C277T変異体ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW228/C277T)を発現する形質転換体の細胞抽出物を、それぞれ抽出した。溶解細胞を12,000×gで30分間遠心分離して、清澄化細胞抽出物を生じ、これを全可溶性タンパク質についてアッセイした(Bradfordアッセイ)。上澄みを75℃で20分間加熱した後、氷浴中で2分間失活させた。11,000×gで10分間の遠心分離によって、沈殿したタンパク質を除去し、得られた加熱処理した抽出タンパク質の上澄みのSDS−PAGEによって、CE−7酵素は調製物中の全タンパク質の約85〜90%を構成することが示された。加熱処理された抽出タンパク質の上澄みをドライアイス中で凍結し、使用まで−80℃で貯蔵した。
【0304】
第1の反応セット(10mLの全体積)は、プロピレングリコールジアセタート(PGDA)またはエチレングリコールジアセタート(EGDA)(100mM)と、過酸化水素(100mM)と、E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)野生型ペルヒドロラーゼ)、E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196/C277S(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277S変異体ペルヒドロラーゼ)、E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196/C277T(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277T変異体ペルヒドロラーゼ)、E.コリ(E.coli)KLP18/pSW228(サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)野生型ペルヒドロラーゼ)、E.コリ(E.coli)KLP18/pSW228/C277S(サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)C277S変異体ペルヒドロラーゼ)、およびE.コリ(E.coli)KLP18/pSW228/C277T(サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)C277T変異体ペルヒドロラーゼ)の1つからの加熱処理した抽出タンパク質(上記のように調製)25μg/mLとを含有する10mMの重炭酸ナトリウム緩衝液(初期pH8.1)中、20℃で実行した。それぞれの反応に対する対照反応を行い、抽出タンパク質を添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成された過酢酸の濃度を決定した。1、5、および30分で反応を採取し、Karst誘導体化プロトコール(Karstら(上記))およびHPLC分析法(上記)を用いてサンプルを過酢酸について分析した。1分、5分および30分間で生成された過酢酸濃度は表10に記載される。
【0305】
【表17】
【0306】
第2の反応セット(10mLの全体積)は、プロピレングリコールジアセタート(PGDA)またはエチレングリコールジアセタート(EGDA)(2mM)と、過酸化水素(10mM)と、E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)野生型ペルヒドロラーゼ)、E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196/C277S(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277S変異体ペルヒドロラーゼ)、E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196/C277T(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277T変異体ペルヒドロラーゼ)、E.コリ(E.coli)KLP18/pSW228(サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)野生型ペルヒドロラーゼ)、E.コリ(E.coli)KLP18/pSW228/C277S(サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)C277S変異体ペルヒドロラーゼ)、およびE.コリ(E.coli)KLP18/pSW228/C277T(サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)C277T変異体ペルヒドロラーゼ)の1つからの加熱処理した抽出タンパク質(上記のように調製)10μg/mLとを有する10mMの重炭酸ナトリウム緩衝液(初期pH8.1)中、20℃で実行した。それぞれの反応に対する対照反応を行い、抽出タンパク質を添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成された過酢酸の濃度を決定した。5分で反応を採取し、Karst誘導体化プロトコール(Karstら(上記))およびHPLC分析法(上記)を用いてサンプルを過酢酸について分析した。5分間で生成された過酢酸濃度は表11に記載される。
【0307】
【表18】
【0308】
実施例15
E.コリ(E.coli)KLP18におけるサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)アセチルキシランエステラーゼ変異体の発現
共有の同時出願された同時係属中の米国特許出願代理人整理番号CL4392USNAに記載されるようなアセチルキシランエステラーゼ突然変異を含むプラスミドは、アミノ酸残基位置277にAla、Val、Ser、またはThrを置き換えることによって、野生型サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)ペルヒドロラーゼ(配列番号14)から調製した(配列番号73)。プラスミドを用いて、E.コリ(E.coli)KLP18を形質転換した(実施例3)。形質転換体をLB−アンピシリン(100μg/mL)プレート上に蒔き、37℃で一晩インキュベートした。20%(v/v)のグリセロールが補充された2.5mLのLB培地を用いて細胞をプレートから収集し、得られた細胞懸濁液の1.0mLのアリコートを−80℃で凍結させた。1mLの解凍した細胞懸濁液を、KH
2PO
4(5.0g/L)、FeSO
4七水和物(0.05g/L)、MgSO
4七水和物(1.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.90g/L)、酵母抽出物(Amberex 695、5.0g/L)、Biospumex 153K消泡剤(0.25mL/L、Cognis Corporation)、NaCl(1.0g/L)、CaCl
2二水和物(0.1g/L)、およびNIT微量元素溶液(10mL/L)を含有する0.7Lの培地と共に、1LのAPPLIKON(登録商標)Bioreactor(Applikon(登録商標)Biotechnology,Foster City,CA)に移した。微量元素溶液は、クエン酸一水和物(10g/L)、MnSO
4水和物(2g/L)、NaCl(2g/L)、FeSO
4七水和物(0.5g/L)、ZnSO
4七水和物(0.2g/L)、CuSO
4五水和物(0.02g/L)およびNaMoO
4二水和物(0.02g/L)を含有した。殺菌後の添加は、グルコース溶液(50%w/w、6.5g)およびアンピシリン(25mg/mL)保存液(2.8mL)を含んだ。グルコース溶液(50%w/w)は、流加にも使用した。グルコース濃度が0.5g/L以下に低下した40分後に開始し、0.03g供給/分から始まり、毎時それぞれ0.04、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.12、および0.14g/分まで徐々に増大させ、その後速度を一定にした。培地中のグルコース濃度を監視し、濃度が0.1g/Lを超えたら、供給速度を低下または一時的に停止した。OD
550=50で、0.8mLのIPTG(0.05M)の添加によって誘導を開始した。初めは攪拌(400〜1000rpm)によって、その後は通気(0.5〜2slpm)によって溶存酸素(DO)濃度を空気飽和の25%に調節した。温度を37℃に調節し、pHを6.8に調節し、pH調節のためにNH
4OH(29%w/w)およびH
2SO
4(20%w/v)を使用した。IPTG添加の20時間後に、遠心分離(5,000×gで15分)によって細胞を収集した。E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)野生型ペルヒドロラーゼ)の細胞培養物を、実施例2に記載されるように増殖させた。
【0309】
実施例16
半精製した野生型T.ネアポリタナ(T.neapolitana)アセチルキシランエステラーゼまたはT.ネアポリタナ(T.neapolitana)変異体アセチルキシランエステラーゼを含有する細胞ライセートの調製
E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)野生型ペルヒドロラーゼ)の細胞培養物を、実施例5に記載されるように増殖させた。得られた細胞ペーストを、1.0mMのDTTを補充した50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)中に再懸濁させた(20%w/v)。再懸濁した細胞をFrench圧力セルに2回通し、95%よりも多い細胞溶解を保証した。溶解細胞を12,000×gで30分間遠心分離し、上澄みを75℃で20分間加熱した後、氷浴中で2分間失活させた。11,000×gで10分間の遠心分離によって、沈殿したタンパク質を除去した。SDS−PAGEにより、CE−7酵素は、加熱処理抽出物の上澄み中の全タンパク質の約85〜90%を構成することが示された。
【0310】
E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196/C277S(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277S変異体ペルヒドロラーゼ)、E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196/C277V(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277V変異体ペルヒドロラーゼ)、E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196/C277A(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277A変異体ペルヒドロラーゼ)、およびE.コリ(E.coli)KLP18/pSW196/C277T(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277T変異体ペルヒドロラーゼ)の細胞培養物を、実施例15に記載されるように、それぞれ増殖させた。得られた細胞ペーストを、1.0mMのDTTが補充された50mMリン酸緩衝液(pH7.0)中に再懸濁させた(20%w/v)。再懸濁した細胞をFrench圧力セルに2回通し、95%よりも多い細胞溶解を保証した。溶解細胞を12,000×gで30分間遠心分離し、上澄みを75℃で20分間加熱した後、氷浴中で2分間失活させた。11,000×gで10分間の遠心分離によって、沈殿したタンパク質を除去した。SDS−PAGEにより、CE−7酵素は、加熱処理抽出物の上澄み中の全タンパク質の約85〜90%を構成することが示された。
【0311】
実施例17
T.ネアポリタナ(T.neapolitana)アセチルキシラン野生型エステラーゼおよびC277エステラーゼ変異体の比活性および過加水分解/加水分解比
反応(40mLの全体積)は、トリアセチン(100mM)と、過酸化水素(100mM)と、以下のアセチルキシランエステラーゼ変異体:T.ネアポリタナ(T.neapolitana)C277S変異体ペルヒドロラーゼ(E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196/C277Sからの0.010mg/mLの加熱処理した全抽出タンパク質)、T.ネアポリタナ(T.neapolitana)C277T変異体ペルヒドロラーゼ(E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196/C277T)からの0.010mg/mLの加熱処理した全抽出タンパク質、T.ネアポリタナ(T.neapolitana)C277A変異体ペルヒドロラーゼ(E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196/C277Aからの0.0125mg/mLの加熱処理した全抽出タンパク質)、およびT.ネアポリタナ(T.neapolitana)C277V変異体ペルヒドロラーゼ(E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196/C277Vからの0.0125mg/mLの加熱処理した全抽出タンパク質)(実施例16に記載されるように調製)のうちの1つとを含有するリン酸緩衝液(50mM、pH7.2)中、25℃で実行した。反応物および酵素を最初に混合するために、反応の最初の30秒間だけ反応を攪拌した。
【0312】
反応は、直前で記載したものと同一条件下で、E.コリ(E.coli)KLP18/pSW196(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)野生型アセチルキシランエステラーゼを発現する(実施例1))から単離した0.050mg/mLの加熱処理した全抽出タンパク質を用いても実行し、ここで、加熱処理した抽出物の上澄みは、実施例16の手順に従って調製した。
【0313】
上記の反応混合物のそれぞれから、各反応の最初の1分後、その後2分毎に15分間、2つのサンプルを同時に抜き出した。ここで、2つのサンプルの1つは過酢酸について分析し、第2のサンプルは、トリアセチンの酵素的な加水分解と、その後のメチル−p−トリルスルフィド(MTS、以下を参照)との反応によるサンプル中の過酢酸の酢酸への転化との両方から生成される全酢酸について分析した。
【0314】
Karstら(上記)によって記載される方法の変形を用いて、反応混合物中の過酢酸の生成速度の測定を実施した。反応混合物のサンプル(0.040mL)を所定の時間に取り出し、すぐに水中5mMのリン酸0.960mLと混合し、希釈サンプルのpHをpH4未満に調整することによって反応を終了させた。得られた溶液を、12,000rpmで2分間の遠心分離により、ULTRAFREE(登録商標)MC−フィルターユニット(30,000公称分画分子量(NMWL)、Millipore Corp.,Billerica,MA、カタログ#UFC3LKT00)を用いてろ過した。得られたろ液のアリコート(0.100mL)を、0.300mLの脱イオン水を含有する1.5mLのスクリューキャップHPLCバイアル(Agilent Technologies,Palo Alto,CA、#5182−0715)に移し、次に、アセトニトリル中20mMのMTS(メチル−p−トリルスルフィド)0.100mLを添加し、バイアルにフタを閉め、内容物を手短に混合した後、光のない状態で、約25℃で10分間インキュベーションを行った。次にバイアルに、0.400mLのアセトニトリルおよび0.100mLのトリフェニルホスフィン(TPP、40mM)のアセトニトリル溶液を添加し、得られた溶液を混合し、光のない状態で、約25℃で30分間インキュベートした。次にバイアルに、0.100mLの10mMのN,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET、HPLC外部標準)を添加し、HPLCによって、得られた溶液をMTSO(メチル−p−トリルスルフィド)について分析し、化学量論的な酸化生成物が、MTSと過酢酸との反応によって生成された。抽出タンパク質またはトリアセチンを添加させずに対照反応を行い、過酢酸の生成速度を背景のMTS酸化に対して補正するために、過酸化水素によるアッセイ混合物中のMTSの酸化の速度を決定した。HPLC法:Supelco Supelguard Discovery C8プレカラム(Sigma−Aldrich、カタログ#59590−U)を備えたSupelco Discovery C8カラム(10cm×4.0mm、5μm)(カタログ#569422−U)、10マイクロリットルの注入体積、1.0mL/分および周囲温度におけるCH
3CN(Sigma−Aldrich、カタログ#270717)および脱イオン水による勾配法(表4)。
【0315】
【表19】
【0316】
反応においてペルヒドロラーゼに触媒される酢酸の生成速度の決定のために、反応混合物のサンプル(0.900mL)を所定の時間に取り出し、すぐに、0.040mLの0.75MのH
3PO
4を含有する1.5mLの微量遠心管に添加し、得られた溶液を手短に混合して、pH3.0〜4.0で反応を終了させた。次に、50mMのリン酸緩衝液pH(7.2)中の10mg/mLのアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)カタラーゼ(Sigma−Aldrich、C3515)の溶液0.020mLを管に添加し、得られた溶液を混合し、周囲温度で15分間反応させ、未反応の過酸化水素を不均化させて水および酸素にした。次に、0.040mLの0.75MのH
3PO
4を管に添加し、得られた溶液を混合し、12,000rpmで2分間の遠心分離により、ULTRAFREE(登録商標)MC−フィルターユニット(30,000公称分画分子量(NMWL)、Millipore Corp.、カタログ#UFC3LKT00)を用いてろ過した。得られたろ液のアリコート(0.100mL)をアセトニトリル中20mMのMTS(メチル−p−トリルスルフィド)0.150mLと混合し、得られた溶液を、光のない状態で、約25℃で10分間インキュベートした。フレームイオン化検出器(FID)およびDB−FFAPカラム(長さ:15m、ID:0.530mm、膜厚:1.00μm)を備えたガスクロマトグラフ(GC)を用いて、トリアセチンの酵素的加水分解と、MTSとの反応による過酢酸の酢酸への転化との両方によって生成されるサンプル中の酢酸の濃度を決定した。それぞれの速度決定に対して新たな注入ポートライナーを用いて(全部で8個のサンプル分析)、時間と共にリン酸が注入ポートライナーに蓄積するのを回避した。
【0317】
サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)アセチルキシランエステラーゼ変異体は、トリアセチンの過加水分解に対して、野生型エステラーゼよりも著しく高い比活性を有した(表13)。T.ネアポリタナ(T.neapolitana)アセチルキシランエステラーゼ変異体の過加水分解/加水分解比は、PAAの生成速度(過加水分解速度)をトリアセチンの酢酸への加水分解速度(加水分解速度)で割ることによって決定した(PAAおよび酢酸の両方からのアッセイ法において全酢酸生成速度から計算し、過酢酸生成速度に対して補正した)。T.ネアポリタナ(T.neapolitana)アセチルキシランエステラーゼ変異体のP/H比は、T.ネアポリタナ(T.neapolitana)野生型アセチルキシランエステラーゼのP/H比とほぼ同等であるか、あるいはそれよりも大きかった(表13)。
【0318】
【表20】
【0319】
実施例18
E.コリ(E.coli)KLP18におけるサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)アセチルキシランエステラーゼ変異体の発現
共有の同時出願された同時係属中の米国特許出願代理人整理番号CL4392USNAに記載されるようなアセチルキシランエステラーゼ突然変異を含むプラスミドは、アミノ酸残基位置277にAla、Val、Ser、またはThrを置き換えることによって、野生型サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(配列番号16)から調製した(配列番号74)。プラスミドを用いてE.コリ(E.coli)KLP18を形質転換した(実施例3)。形質転換体を、LB培地中37℃で振とうさせながら、OD
600nm=0.4〜0.5まで増殖させ、この時点で、IPTGを1mMの最終濃度まで添加し、インキュベーションを2〜3時間続けた。遠心分離によって細胞を収集し、SDS−PAGEを実施して、全可溶性タンパク質の20〜40%におけるアセチルキシランエステラーゼの発現を確認した。
【0320】
実施例19
半精製したT.マリティマ(T.maritima)アセチルキシランエステラーゼ変異体を含有する細胞ライセートの調製
実施例15に記載されるものと同様の発酵プロトコールを用いて、細胞培養物(実施例16で記載したように調製した)を1Lのスケール(Applikon)で増殖させた。5,000×gで15分間の遠心分離によって細胞を収集し、次に、1.0mMのDTTを補充した50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)中に再懸濁した(20%w/v)。再懸濁した細胞をFrench圧力セルに2回通し、95%よりも多い細胞溶解を保証した。溶解細胞を12,000×gで30分間遠心分離し、上澄みを75℃で20分間加熱した後、氷浴中で2分間失活させた。11,000×gで10分間の遠心分離によって、沈殿したタンパク質を除去した。SDS−PAGEにより、CE−7酵素は、調製物中の全タンパク質の約85〜90%を構成することが示された。
【0321】
実施例20
T.マリティマ(T.maritima)アセチルキシラン野生型エステラーゼおよびC277エステラーゼ変異体の比活性および過加水分解/加水分解比
反応(40mLの全体積)は、トリアセチン(100mM)と、過酸化水素(100mM)と、以下のアセチルキシランエステラーゼ変異体:T.マリティマ(T.maritima)C277S変異体ペルヒドロラーゼ(E.コリ(E.coli)KLP18/pSW228/C277Sからの0.010mg/mLの加熱処理した全抽出タンパク質)、T.マリティマ(T.maritima)C277T変異体ペルヒドロラーゼ(E.コリ(E.coli)KLP18/pSW228/C277Tからの0.010mg/mLの加熱処理した全抽出タンパク質)、T.マリティマ(T.maritima)C277A変異体ペルヒドロラーゼ(E.コリ(E.coli)KLP18/pSW228/C277Aからの0.0125mg/mLの加熱処理した全抽出タンパク質)、およびT.マリティマ(T.maritima)C277V変異体ペルヒドロラーゼ(E.コリ(E.coli)KLP18/pSW228/C277Vからの0.0125mg/mLの加熱処理した全抽出タンパク質)(実施例19に記載されるように調製)のうちの1つとを含有するリン酸緩衝液(50mM、pH7.2)中、25℃で実行した。反応物および酵素を最初に混合するために、反応の最初の30秒間だけ反応を攪拌した。
【0322】
反応は、直前で記載したものと同一条件下で、E.コリ(E.coli)KLP18/pSW228(サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)野生型アセチルキシランエステラーゼを発現する)から単離した0.050mg/mLの加熱処理した全抽出タンパク質を用いても実行し、ここで、加熱処理した抽出物の上澄みは、実施例19の手順に従って調製した。
【0323】
上記の反応混合物のそれぞれから、各反応の最初の1分後、その後は2分毎に15分間、2つのサンプルを同時に抜き出した。ここで、2つのサンプルの1つは、Karstら(上記)によって記載される方法の変形を用いて過酢酸について分析し、第2のサンプルは、トリアセチンの酵素的加水分解と、その後のメチル−p−トリルスルフィド(MTS)との反応によるサンプル中の過酢酸の酢酸への転化との両方から生成される全酢酸について分析した。
【0324】
サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)アセチルキシランエステラーゼ変異体は、トリアセチンの過加水分解に対して、野生型エステラーゼよりも著しく高い比活性を有した(表14)。T.マリティマ(T.maritima)アセチルキシランエステラーゼ変異体の過加水分解/加水分解比は、PAAの生成速度(過加水分解速度)をトリアセチンの酢酸への加水分解速度(加水分解速度)で割ることによって決定した(PAAおよび酢酸の両方からのアッセイ法において全酢酸生成速度から計算し、過酢酸生成速度に対して補正した)。T.マリティマ(T.maritima)アセチルキシランエステラーゼ変異体のP/H比は、T.ネアポリタナ(T.neapolitana)野生型アセチルキシランエステラーゼのP/H比とほぼ同等であるか、あるいはそれよりも大きかった(表14)。
【0325】
【表21】
【0326】
実施例21
ペルヒドロラーゼを用いる過酢酸の生成
トリアセチン(2mM)、過酸化水素(10mM)、および0.1μg/mL〜2.0μg/mLの加熱処理した細胞抽出タンパク質(上記のように調製、加熱処理は85℃で20分間実施した)を含有する反応(100mLの全体積)を、10mMの重炭酸ナトリウム緩衝液(初期pH8.1)中、20℃で実行した。Karstら(上記)によって記載される方法に従って、反応混合物中の過酢酸の濃度の決定を実施した。1分、5分、20分、40分および60分で生成した過酢酸濃度は、表15に記載される。
【0327】
【表22】
【0328】
実施例22
ペルヒドロラーゼを用いる過酢酸の生成
トリアセチン(20mM)、過酸化水素(10mM)、および0.1μg/mL〜2.0μg/mLの加熱処理した細胞抽出タンパク質(上記のように調製、加熱処理は85℃で20分間実施した)を含有する反応(100mLの全体積)を、10mMの重炭酸ナトリウム緩衝液(初期pH8.1)中、20℃で実行した。Karstら(上記)によって記載される方法に従って、反応混合物中の過酢酸の濃度の決定を実施した。1分、5分、20分、40分および60分で生成した過酢酸濃度は、表16に記載される。
【0329】
【表23】
【0330】
実施例23
ペルヒドロラーゼを用いる過酢酸の生成
トリアセチン(100mM)、過酸化水素(100mM)、および10μg/mL〜50μg/mLの加熱処理したT.ネアポリタナ(T.neapolitana)またはT.マリティマ(T.maritima)野生型またはC277変異体ペルヒドロラーゼ(上記のように調製した、加熱処理した細胞抽出タンパク質として、加熱処理は75℃で20分間実施した)を含有するリン酸緩衝液(50mM、pH7.2)中、反応(40mLの全体積)を25℃で実行した。反応物および酵素を最初に混合するために、反応の最初の30秒間だけ反応を攪拌した。Karstら(上記)によって記載される方法に従って、反応混合物中の過酢酸の濃度の決定を実施した。1分、5分、および30分で生成した過酢酸濃度は、表17に記載される。
【0331】
【表24】
【0332】
実施例24
ペルヒドロラーゼを用いる過酢酸の生成
トリアセチン(100mMまたは150mM)、過酸化水素(100mM、250mMまたは420mM)、および加熱処理したT.ネアポリタナ(T.neapolitana)またはT.マリティマ(T.maritima)野生型、C277SまたはC277T変異体ペルヒドロラーゼを含有する重炭酸ナトリウム緩衝液(1mM、初期pH6.0)中、反応(10mLの全体積)を25℃で実行した。420mMの過酸化水素を用いて実行した反応は、さらに、500ppmのTURPINAL(登録商標)SLを含有した。反応物および酵素を最初に混合するために、反応の最初の30秒間だけ反応を攪拌した。Karstら(上記)によって記載される方法に従って、反応混合物中の過酢酸の濃度の決定を実施した。1分、5分、および30分で生成した過酢酸濃度は、表18に記載される。
【0333】
【表25】