(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656850
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】発光ダイオードチップ
(51)【国際特許分類】
H01L 33/36 20100101AFI20141225BHJP
H01L 33/20 20100101ALI20141225BHJP
【FI】
H01L33/00 200
H01L33/00 170
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-533531(P2011-533531)
(86)(22)【出願日】2009年10月16日
(65)【公表番号】特表2012-507156(P2012-507156A)
(43)【公表日】2012年3月22日
(86)【国際出願番号】DE2009001436
(87)【国際公開番号】WO2010048921
(87)【国際公開日】20100506
【審査請求日】2012年10月12日
(31)【優先権主張番号】102008054218.0
(32)【優先日】2008年10月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ブリック
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲン ルクナー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ザバティール
【審査官】
北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−234506(JP,A)
【文献】
特開2003−133588(JP,A)
【文献】
特開2004−095479(JP,A)
【文献】
特開平11−340576(JP,A)
【文献】
特開2004−047988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
B60Q 1/00 − 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体積層体と第1の電気的な接続層を含んでおり、
前記半導体積層体は電磁ビームの生成に適した活性層を有し、
前記第1の電気的な接続層は、複数のコンタクト面を備えた半導体積層体に接触し導電的にコンタクト形成する、発光ダイオードチップにおいて、
前記半導体積層体において不均一な電流密度分布が、半導体積層体の主要延在面に沿ったコンタクト面の面密度の不均一な分布によって得られ、
それによって、前記半導体積層体又は発光ダイオードチップの主要出射面の第1の領域が、前記半導体積層体又は発光ダイオードチップの主要出射面の少なくとも1つの第2の領域よりも少なくとも3倍高い照射強度又は照明強度を有し、
前記主要出射面は平面図で見て長い区間の形態を有し、かつ以下の特徴、すなわち、
(i)前記主要出射面が、中央において前記主要出射面の長手区間と垂直に交差する境界線を備えた2つの半部に想定的に分割され、平面図で見て前記2つの半部のうちの一方の領域における複数のコンタクト面の総数又は総面積は、他方の領域のものよりも少なくとも15%大きい特徴、及び
(ii)前記主要出射面が、全長の1/3の箇所と2/3の箇所において前記主要出射面の長手区間と垂直に交差する複数の境界線を備えた3つの1/3領域に想定的に分割され、平面図で見て中央に位置する1/3領域における複数のコンタクト面の総数又は総面積は、外側に位置する2つの1/3領域のものよりも少なくとも30%大きい特徴、及び
(iii)前記主要出射面の幅は、所定の箇所または領域において少なくとも局所的な最小値を有しており、前記所定の箇所又は領域には、前記主要出射面の長手区間に沿って両方向に向かってその幅が拡大し続ける区間が続いている特徴、
のうちの少なくとも1つを含む、
あるいは、
前記主要出射面は平面図で見て2つの縁部区間を有し、かつ以下の特徴、すなわち、
(iv)前記2つの縁部区間は専ら155°乃至175°の間の角度を形成する特徴、及び
(v)前記主要出射面の第1の領域が前記2つの縁部区間の1つに当接するか又は前記2つの縁部区間の1つから最大で50μmの距離だけ離間している特徴、
のうちの少なくとも1つを含む、
ように構成されていることを特徴とする発光ダイオードチップ。
【請求項2】
前記主要出射面の第1の領域の照射強度又は照明強度は、第2の領域よりも少なくとも5倍高い、請求項1記載の発光ダイオードチップ。
【請求項3】
前記第1の電気的な接続層は、少なくとも10個のコンタクト面を有している、請求項1または2記載の発光ダイオードチップ。
【請求項4】
前記不均一な電流密度分布は、半導体積層体内の非対称な電流密度分布であり、該非対称な電流密度分布は、半導体積層体の主要延在面に沿ったコンタクト面の面密度の非対称な分布によって設定される、請求項1から3いずれか1項記載の発光ダイオードチップ。
【請求項5】
前記主要出射面の第1の領域の照射強度又は照明強度は、第2の領域よりも少なくとも10倍高い、請求項1から4いずれか1項記載の発光ダイオードチップ。
【請求項6】
前記第1の電気的な接続層は、少なくとも25個のコンタクト面を有している、請求項1から5いずれか1項記載の発光ダイオードチップ。
【請求項7】
前記第1の電気的な接続層は、少なくとも50個のコンタクト面を有している、請求項1から6いずれか1項記載の発光ダイオードチップ。
【請求項8】
前記第1の電気的な接続層が、前記主要出射面とは反対側にある当該半導体積層体の裏側に配設されている、請求項1から7いずれか1項記載の発光ダイオードチップ。
【請求項9】
第2の電気的な接続層が設けられており、前記第1及び第2の電気的な接続層は、半導体積層体の相互に対向している側に配設されている、請求項1から8いずれか1項記載の発光ダイオードチップ。
【請求項10】
第2の電気的な接続層が設けられており、該第2の電気的な接続層は、半導体積層体の裏側にも配設され、横方向において前記第1の電気的な接続層に重畳し、さらに前記第1の電気的な接続層に対して電気的に絶縁されており、前記第1の電気的な接続層の少なくとも1つの部分領域が、裏側から活性層の貫通孔部を通って前記主要出射面への方向に延在している、請求項1から8いずれか1項記載の発光ダイオードチップ。
【請求項11】
発光ダイオードチップから放射される円錐状ビームが、自動車のロービーム用の放射密度分布に相応する放射密度分布を有している、請求項1から10いずれか1項記載の発光ダイオードチップ。
【請求項12】
前記主要出射面は、平面図で見て非対称な形態を有している、請求項1から11いずれか1項記載の発光ダイオードチップ。
【請求項13】
平面図で見て中央に位置する1/3領域における複数のコンタクト面の総数又は総面積は、外側の2つの1/3領域のものよりも少なくとも65%大きい、請求項1から12いずれか1項記載の発光ダイオードチップ。
【請求項14】
半導体積層体の前記主要出射面が、複数の構造化ユニットを備えた構造化部分を有しており、前記構造化部分は、第1の横方向延在部と、該第1の横方向延在部に対して直角方向に向いた第2の横方向延在部及び/又は垂直方向延在部を有しており、それらは、電磁ビームの最大放射の波長の0.2倍以上から電磁ビームの最大放射の波長の5倍以下の値を有している、請求項1から13いずれか1項記載の発光ダイオードチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードチップに関している。
【背景技術】
【0002】
本発明は独国特許出願公開第10 2008 054 218.0号明細書の優先権を主張するものであり、ここではその開示内容が含まれる。
【0003】
発光ダイオードチップは半導体積層体と第1の電気的な接続層を含んでおり、前記半導体積層体は電磁ビームの生成に適した活性層を有し、前記第1の電気的な接続層は、半導体積層体に接触し導電的なコンタクトを形成している。前記第1の電気的な接続層は、特に複数のコンタクト面を備えた半導体積層体に接触してコンタクト形成している。
【0004】
高出力の発光ダイオードチップが公知であるが、このチップは、その他の既知の発光ダイオードチップに比べて特に高い電流密度で動作し、特に高いビーム出力の放射が可能である。
【0005】
さらに例えば、発光手段として発光ダイオードチップを有している投光器も公知である。この種の投光器に対する例として自動車用の前照灯が挙げられる。
【0006】
高出力の発光ダイオードチップでは基本的に、電流がその作動中に全半導体積層体に亘って可及的に均等に分配され、半導体積層体に注入される。発光ダイオードチップをできるだけ高効率に構成するためには、総合的にできるだけ高い電流密度で作動させる必要がある。但し別の観点からは、局所的に高い電流密度はできるだけ避けたほうがよい。なぜなら、このことは発光ダイオードチップの半導体積層体の機能にマイナスに働くからである。半導体積層体の全活性ゾーンに亘って電流密度が均質に分散されれば、全ての活性ゾーンが最適に活用でき、発光ダイオードチップが可及的に高効率に構成される。
【0007】
本発明の課題は、技術的に簡単なやり方で種々異なる分野の投光器、特に自動車用のヘッドライトを実現できる、発光ダイオードチップを提供することにある。
【0008】
ここではまず、その第1の電気的な接続層が半導体積層体の多数のコンタクト面と接触し導電的にコンタクト形成する。発光ダイオードチップでは、半導体積層体において不均一な電流密度分布又は電流分布が半導体積層体の主要延在面に沿ったコンタクト面の面密度の不均一な分布によって所期のように設定される。
【0009】
つまり従来の発光ダイオードチップとは異なって、可及的に均質な電流分布若しくは電流密度分布に最適化するのではなく、不均一な電流分布を所期のように設定するのである。このことは例えば発光ダイオードチップの照射特性、例えば発光された円錐ビーム内のビーム密度分布を、特定の適用分野毎にさらに良好に最適化する手段を提供している。
【0010】
不均一な電流密度分布又は電流分布は、有利な実施形態によって特に次のように設定される。すなわち、半導体積層体又は発光ダイオードチップの主要出射面の第1の領域が、半導体積層体又は発光ダイオードチップの主要出射面の少なくとも1つの第2の領域の少なくとも3倍の高さの特定照射強度(単位:W/m
2)又は特定照明強度(単位:lm/m
2)を有するように設定される。
【0011】
主要出射面の照明強度は例えば主要出射面に亘って走査し、照明強度の二次元的な空間分解能が得られるような検出器を用いて測定されてもよい。付加的に若しくは代替的に照明強度は、発光密度またはビーム密度が異なる角度のもとで測定され照明強度若しくは照射強度に積分される照明密度検出カメラ又はビーム密度検出カメラを用いて求められてもよい。
【0012】
この測定は、主要出射面の直ぐ近くで行われ得る。代替的にチップ出射面の結像についても、チップ出射面に対して比較的大きな間隔を空けて測定し、それによって主要出射面の照射強度又は照明強度を求めてもよい。
【0013】
発光ダイオードチップの有利な実施形態によれば、主要出射面の第1の領域の照射強度又は照明強度が第2の領域よりも少なくとも5倍高いか又は少なくとも10倍高い。
【0014】
主要出射面は発光ダイオードチップのメイン照射方向に向いた表側の面であり、この面を介して当接する媒体における電磁ビームの出力結合が可能となる。この主要出射面は、メイン照射方向で見て活性層に後置接続される。ビーム不透過層若しくは50%以上のビーム吸収層によって覆われている一部の平面は主要出射面として計数されない。そのような層の一例として例えばボンディングパッドが挙げられる。このボンディングパッドは、半導体積層体のメイン照射側に配設されている。この種のボンディングパッドによって覆われた、半導体積層体又は発光ダイオードチップのメイン照射方向に向いた面領域は、主要出射面として計数されない。
【0015】
半導体積層体の主要出射面は、半導体積層体自体の主要照射方向に向いた表側の、主要照射方向でみて活性層に続く面に相応している。この面は、特に半導体層の外面によって形成されてもよいし、それを有していてもよい。それに対して発光ダイオードチップの主要出射面の少なくとも一部は、半導体積層体の構成要素ではない材料によって形成されていてもよい。
【0016】
発光ダイオードチップの別の有利な実施形態によれば、半導体積層体の主要出射面に発光変換材料が被着される。この発光変換材料は、活性層によって放射される電磁ビームによって励起され、変更された放射スペクトルの電磁ビームに変換される少なくとも1つの蛍光体を有する。半導体積層体の主要出射面がこの種の発光変換材料によって覆われ、メイン照射方向で発光変換材料に後置接続されるさらなる材料を発光ダイオードチップが何も有さないならば、発光ダイオードチップの主要出射面の少なくとも一部は、発光変換材料のメイン照射方向に向いた面によって形成される。
【0017】
発光ダイオードチップの主要出射面の少なくとも一部は、基本的には任意のビーム透過性材料(これは半導体積層体材料ではない)によって形成されていてもよい。
【0018】
本願明細書並びに特許請求の範囲において用いられている主要出射面とは、半導体積層体の主要出射面、発光ダイオードチップの主要出射面、あるいは半導体積層体と発光ダイオードチップの主要出射面を指していることを理解されたい。
【0019】
コンタクト面は有利には相互に離間されて設けられている。しかしながら代替的に複数のコンタクト面又は複数のコンタクト面のうちのいくつかを互いに一体的に構成することも可能である。例えば複数の比較的大きなコンタクト面を、半導体積層体に当接している比較的薄いコンタクトウエブを用いて相互に接続させることも可能である。但しここではそのような比較的薄いコンタクトウエブを介すことにより有利には比較的大きなコンタクト面よりも格段に少ない電流を半導体積層体に流すことができる。例えばいくつかのコンタクトウエブ又はコンタクト接続部材を介すことにより、総電流の10%以下の電流、有利には5%以下の電流、特に有利には2%以下の電流を半導体積層体に注入できる。
【0020】
発光ダイオードチップの構成によれば、第1のコンタクト層は少なくとも10個、有利には少なくとも25個、特に有利には少なくとも50個のコンタクト面を有している。既に前述したように、これらのコンタクト面の少なくとも大半は、相互に離間して配置されている。しかしながらそれらの一部若しくは全部を相互に接続されることも可能である。例えば比較的広い面積の複数のコンタクト面を比較狭い面積の接続部材、例えば接続ウエブを用いて接続させるようにしてもよい。また相応に意図したように不均一な電流密度分布を、半導体積層体内のコンタクト面の面密度の不均一な分散によって実現することも可能である。
【0021】
有利な実施例によれば、前記不均一な電流分布は、半導体積層体内の非対称な電流分布である。このことは、例えば半導体積層体の主要延在面に沿ったコンタクト面の面密度の非対称な分布によって所期のように設定される。このような技術的手段を用いれば、半体積層体内で非対称な電流分布も技術的に容易にかつ所期のように実現することができる。
【0022】
発光ダイオードチップのさらに別の実施形態によれば、半導体積層体又は発光ダイオードチップの主要出射面が平面図で見て長い延在区間の形態を有する。この「平面図で見て」との概念は、半導体積層体又は主要出射面の主要延在面に対して垂直な角度方向で主要出射面を見た場合を想定したものと理解されたい。
【0023】
長い区間の形態部分は所定の長さを有しており、ここでの長さとは主要出射面の主要延在方向に沿った延長線であることを理解されたい。発光ダイオードチップの別の実施例によれば、前記所定の長さは、専ら2mm〜10mmの間の値の長さを有する。有利には前記長さは3mm以上、特に有利には4mm以上である。半導体積層体に亘って分散された複数のコンタクト面が用いられることにより、発光ダイオードチップはそのサイズの中で良好にスケーリングされ得る。
【0024】
長く延在している主要出射面は所定の幅を有しており、ここでの幅とは平面図で見て主要出射面の長手方向に対して垂直な方向の延長線と理解されたい。この幅は有利な実施例によれば、0.5mm以上でかつ2mm以下である。特に有利にはこの幅は少なくとも1mmである。
【0025】
主要出射面の長さと幅の比率は、4:1、有利には5:1、または6:1以上である。
【0026】
発光半導体チップの別の実施形態によれば、主要出射面が平面図で見て長い区間の形態を有しており、前記主要出射面が、2つの半部に想定的に分割されている。この2つの半部は、境界線によって分離されており、この境界線は中央において当該主要出射面の長手区間と垂直に交差している。前述の長い区間とは、長く延びた主要出射面の所定の長さに相応している。この実施例では、前記2つの半部のうちの一方の領域における平面図で見た場合の複数のコンタクト面の総数又は総面積が、他方の半部領域におけるものよりも少なくとも15%、有利には少なくとも20%大きい。
【0027】
発光ダイオードチップの別の実施形態によれば、前記主要出射面が平面図で見て長い区間の形態を有しており、前記主要出射面が3つの1/3領域に想定的に分割されている。これらの分割領域は複数の境界線を有しており、これらの境界線は主要出射面の長手区間と垂直に交差している。第1の境界線は、長手区間の全長の1/3の箇所で当該主要出射面の長手区間と垂直に交差し、第2の境界線は長手区間の全長の2/3の箇所において当該主要出射面の長手区間と垂直に交差している。当該実施形態では、平面図で見た場合の中央に位置する1/3領域における複数のコンタクト面の総数又は総面積が、外側の2つの1/3領域におけるものよりも少なくとも30%、有利には少なくとも45%、特に有利には65%大きい。
【0028】
本発明の別の有利な実施例によれば、主要出射面は、平面図で見て非対称な形態を有している。
【0029】
半導体積層体又は発光ダイオードチップの主要出射面は別の有利な実施形態によれば、平面図で見て、主要出射面の外側において専ら155°〜175°の間の角度を形成するような縁部を有する2つの区間を有している。
【0030】
さらに別の実施例によれば、主要出射面の第1の領域が、縁部を有する2つの区間に当接するか、当該2つの区間に対して所定の間隔を有している。この間隔は最大で、主要出射面の最大幅の20%の値である。
【0031】
電流密度と相応の照射密度に関しては、縁部を有する2つの区間の少なくとも一方の近くにおいて、主要出射面のホットスポットが存在している。このホットスポットは、例えば前記2つの区間の少なくとも1つに直接的に接している。代替的にこのホットスポットは縁部を有する2つの区間の少なくとも1つに対して所定の間隔を有しており、この間隔は、最大で主要出射面の最大幅の20%の値である。例えばこの間隔は、30μm、50μm、100μm、または200μmである。
【0032】
主要出射面が長い区間の形態を有している実施例において、さらに別の実施形態によれば、主要出射面の幅は、所定の箇所または領域において、少なくとも局所的な最小値を有している。それにより当該箇所又は領域には、主要出射面の長手区間に沿って両方向に向かってその幅が拡大し続ける区間が続く。所定の箇所又は領域における最小値とは、例えば主要出射面の幅の大まかな最小値であってもよい。
【0033】
少なくとも1つのさらなる実施形態によれば、第1の電気的な接続層は、主要出射面とは反対側にある当該半導体積層体の裏側に配設されている。この実施形態の構成によれば、第2の電気的な接続層が存在しており、該第2の電気的な接続層も半導体積層体の裏側に配設されている。前記第2の電気的な接続層は、横方向において第1の電気的な接続層に重畳しており、さらに該第1の電気的な接続層に対して電気的に絶縁されている。
【0034】
「第1又は第2の電気的な接続層が裏側に配設されている」とは、半導体積層体のこれらの接続層の少なくとも一部が、主要出射面から見た方向で裏側の方へ続いていることを意味している。但し第1又は第2の電気的な接続層の必ずしも全てが裏側に配設されなければならないことを意味するものではない。それどころか例えば第1の電気的な接続層の1つの部分領域が裏側から活性層を貫通する孔部を通って表側の方へ延在することも可能である。
【0035】
さらに別の有利な実施形態によれば、前記第1の電気的な接続層の少なくとも1つの部分領域が、裏側から活性層の孔部を通って主要出射面の方向へ延在している。ここでは特に第1の電気的な接続層の複数の部分領域が存在していてもよい。それらはそれぞれ活性層の固有の孔部を通って主要出射面の方向へ延在し得る。少なくとも1つの部分領域は半導体積層体に接触し、第1の電気的な接続層の複数のコンタクト面の少なくとも1つ若しくは全てを形成している。
【0036】
第1の電気的な接続層の1つの部分領域が、裏側から活性層の孔部を通って主要出射面の方向へ延在している場合には、有利には第1の電気的な接続層の複数のコンタクト面がそれぞれ孔部に設けられる。
【0037】
有利には活性層に複数の孔部が設けられ、該孔部を貫通して第1の電気的な接続層の1つの部分領域が裏側から主要出射面の方向へ延在する。特に有利には、第1の電気的な接続層の複数のコンタクト面の各々が固有の孔部に対応付けられている。
【0038】
別の代替的な実施形態によれば、第2の電気的な接続層が設けられており、第1及び第2の電気的な接続層が半導体積層体の相互に対向する側に設けられている。第2の電気的な接続層が主要出射面の側に設けられている場合には、第1の電気的な接続層は、半導体積層体の対抗する裏側に設けられる。第1の電気的な接続層が主要出射面の側に設けられている場合には、第2の電気的な接続層は、半導体積層体の対抗する裏側に設けられる。
【0039】
発光ダイオードチップのさらに別の有利な実施形態によれば、半導体積層体の主要出射面が、活性層から放射されるビームの拡散と出力結合の制御に適した構造化部分を有している。有利にはこの構造化部分は、第1の横方向延在部と、該第1の横方向延在部に対して直角方向に向いた第2の横方向延在部及び/又は垂直方向延在部を有しており、それらは、電磁ビームの最大放射の波長の0.2倍以上から電磁ビームの最大放射の波長の5倍以下の値を有している。有利には前記第1の横方向延在部も第2の横方向延在部も垂直方向延在部も、複数の構造化ユニットの少なくとも1つのグループからなり、それらはそれぞれ電磁ビームの最大放射の波長の0.2倍以上から電磁ビームの最大放射の波長の5倍以下の値を有している。
【0040】
本発明の有利な実施形態によれば、発光ダイオードチップがその作動中に、自動車のロービーム用の照射密度分布に相応する、照射密度分布を有する円錐状ビームを放射する。この照射密度分布は、特に投光用光学系を用いるだけで円錐状ビームが所望の空間角度に照射されるようにする必要があり、自動車用のロービーム特定条件が実現されるものでなければならない。この場合の投光用光学系とは、照射密度分布にほとんど影響を与えないか、極僅かしか影響しないものであり、それによって特定条件が容易に実現できる。
【0041】
前記発光ダイオードチップは、有利な実施例よれば、製造中に半導体積層体が成長される成長基板、例えばエピタキシャル成長基板から開放されている。そのような成長基板は、少なくとも大半が半導体積層体から離されるか、完全に離される。
【0042】
付加的に若しくは代替的に前記発光ダイオードチップはその裏側に支持体基板を有している。この支持体基板は、成長基板ではなく、半導体積層体の形成された後でこれと接続される支持体である。第1の電気的な接続層と場合により第2の電気的な接続層は、特に半導体積層体と支持体基板の間に配設されていてもよい。
【0043】
(主に平面図から見た)主要出射面の形態に関する様々な特徴及び実施形態は、それ自体が既に本発明をなしており、コンタクト面の面密度の不均一な分散による不均一な電流密度分布の所期の設定に依存することなく実現できるものである。
【0044】
以下の明細書では発光ダイオードチップのさらに別の利点、有利な実施形態及び改善形態を図面に基づいて説明する実施例を通じて明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の第1実施例による発光ダイオードチップの主要出射面の平面図
【
図2】本発明の第2実施例による発光ダイオードチップの主要出射面の平面図
【
図3】様々な放射強度領域を有する第1実施例の主要出射面の平面図
【
図4】結像光学系を備えた発光ダイオードチップ装置の側面図
【
図5】
図4の結像光学系から放射された円錐ビームの例示的なビーム強度分布を示した断面図
【
図6】本発明の第3実施例による発光ダイオードチップの一部の側面図
【
図7】本発明の第4実施例による発光ダイオードチップの一部の側面図
【
図8】本発明の第5実施例による発光ダイオードチップの一部の側面図
【
図9】本発明の第6実施例による発光ダイオードチップの主要出射面の平面図
【
図10】本発明の第7実施例による発光ダイオードチップの主要出射面の平面図
【
図11】本発明の第8実施例による発光ダイオードチップの主要出射面の平面
【
図12】本発明の第9実施例による発光ダイオードチップの主要出射面の平面
【
図13】本発明の第10実施例による発光ダイオードチップの主要出射面の平面
【実施例】
【0046】
前記実施例及び図面において、同じ構成要素または同じ機能の構成要素にはそれぞれ同じ符号が付されている。また前記図面中の構成要素とこれらの構成要素の実際のサイズ比は必ずしも縮尺通りではない。それどころかいくつかの詳細図においては、よりよい理解のために実際よりも拡大した描写となっている。
【0047】
図1には本発明による発光ダイオードチップの主要出射面(主要出力結合面)3が平面図において概略的に示されている。当該平面図に示されているここでの発光ダイオードチップは、長く延在した非対称の形態を有している。この発光ダイオードチップの形態は、例えば、矩形状から出発してその長手側に切欠部70を備えたものであってもよい。この切欠部70は、例えば三角形の形状若しくは三角形に類似した形状を有し得る。この「三角形に類似した形状」とは、ここでは当該切欠部の形態が、必ずしも厳密に数学的な三角形の定義に相当するものを指したものではなく、そのような定義からある程度外れたものも含むことを意味したものである。そのようなある程度外れたものの例としては、丸みを帯びた角を有したものや、厳密に直線状ではない側面輪郭を有したものなどが挙げられる。
【0048】
図1に示されている実施例では、この三角形が二等辺三角形ではない。しかしながら代替的な実施形態においては、この三角形は二等辺三角形でも可能である。そのようなケースでは、発光ダイオードチップの形態または主要出射面3の形態は、平面図において鏡対称な形態を有し得る。
【0049】
図2に示されている実施例では、平面図に示されている発光ダイオードチップの主要出射面3が
図1に基づいて説明した実施例と同じような形態を有している。唯前記
図1に描写されている実施例との違いは、
図2に示されている発光ダイオードチップが切欠部70を有していないことである。その代わりにこの平面図においては、前記第1実施例における切欠部70が示されていた箇所に、ボンディングパッド26が形成されている。それによりここでの発光ダイオードチップは、その平面図から総合的に見て前記主要出射面3とは異なる形態を有している。例えばこの発光ダイオードチップは矩形の形状若しくは矩形の形状に類似した形状を有し得る。
【0050】
前記ボンディングパッド26は、メイン照射方向に向いている発光ダイオードチップの主要面に配置され得る。それはブラインド若しくは絞りとして機能し得る。前記ボンディングパッドは、当該発光ダイオードチップの活性層から生成され当該ボンディングバッドに当接する電磁ビームの少なくとも大半を遮蔽し得る。有利にはこの遮蔽率は、当該ボンディングパッドに当接する電磁ビームの70%以上、または80%以上、あるいは90%以上であり得る。前記ボンディングパッド26は、例えば、活性層において生成された電磁ビームに対して、実質的に完全に不透過な特性を有するものであってもよい。
【0051】
図1に示されている実施例に関連して、発光ダイオードチップは、切欠部70の代わりに、例えば
図1に示された切欠部70の形態に相応するように成形された半導体積層体部分を有していてもよい。この半導体積層体部分は、活性層を全く有していないか、その活性層が発光ダイオードチップの残りの部分から電気的に分離されたものであってもよい。またそのような後者のケースにおいては、活性型の主要出射面3が、平面図全体でみた発光ダイオードチップとは異なる形態を有するものであってもよい。但しそこではメイン照射方向に向いている面のうち、僅かなビームが出射され、横方向で活性層の一部と重ならない部分は、主要出射面3の一部とは見なされない。
【0052】
図1及び
図2には、発光ダイオードチップの第1の電気的な接続層の複数のコンタクト面21の位置がそれぞれ描写されている。これらのコンタクト面21は、発光ダイオードチップの半導体積層体の、メイン照射方向に向いた表側に配設され得る。代替的に前記コンタクト面21は、発光ダイオードチップの半導体積層体の、メイン照射方向とは反対側である裏側に配設されていてもよい。さらに別の代替例によれば、前記コンタクト面21は、前記表側と裏側の間の垂直方向で発光ダイオードチップの半導体積層体内に設けられていてもよい。これらの種々異なる実施形態は、以下の明細書で
図6,
図7,
図8に基づいて詳細に説明する。
【0053】
図1及び
図2に描写されている発光ダイオードチップは、どちらも例示的に、72個のコンタクト面21を第1の電気的なコンタクト層に有している。もちろんそれ以上の数のコンタクト面21も可能であり、例えば少なくとも75個のコンタクト面21、少なくとも80個のコンタクト面21、あるいは少なくとも90個のコンタクト面21も可能である。また代替的に、より少ない数のコンタクト面21も可能である。例えば専ら50個〜70個の間の数のコンタクト面21であってもよい。
【0054】
コンタクト面21は、例えば全て同じ大きさである。しかしながら代替的にチップは第1の電気的なコンタクト層において異なる大きさのコンタクト面21を有していてもよい。特に前記コンタクト面21の半導体積層体の主要延在面若しくは主要延在方向に沿った面密度は少なくとも部分的に、異なる大きさのコンタクト面によって設定されていてもよい。付加的に又は代替的に前記面密度は半導体積層体の主要延在方向に沿ったコンタクト面の数の変更によって設定され得る。
【0055】
前記コンタクト面21は、当該実施例においてはその全てが互いに離間している。しかしながら本願明細書の冒頭にも述べたように、このことは必ずしも強いられるものではない。そのため例えば比較的大きなコンタクト面を小面積のコンタクト面接続部を用いて相互に接続することも可能である。そのようなケースでは比較的大きなコンタクト面部分のそれぞれがコンタクト面21として見なされる。このようなケースでは、少なくとも部分的にコンタクト面接続部材を用いて相互に接続されているコンタクト面領域とも称すことが可能である。
【0056】
さらに
図1には、前記主要出射面3を2つの半部に分割している境界線が波線によって表されている。この境界線は主要出射面3の長さ区間4に沿って垂直方向に延在しており、主要出射面3の中央においてこれと直角に交差している。前記長さ区間4はその主要延在線方向で主要出射面3又は発光ダイオードチップの伸張領域全体に亘って延在している。
【0057】
そのように設定された2つの半部の場合に、
図1中の平面図において、例えば左方半部が39個の同じ大きさのコンタクト面を有し、それに対して右方半部は、例えば32個の同じ大きさのコンタクト面を有しているものとする。境界線は、そのどちらの半部にも所属しないコンタクト面21を通って延在する。それにより、左方半部におけるコンタクト面の数は右方半部よりも20%以上多い。仮にコンタクト面が全て同じ大きさであるのならば、左方半部におけるコンタクト面21の合計面積は右方半部よりも20%以上大きくなる。それによって既にコンタクト面の、半導体積層体の主要延在面方向に沿った面密度の不均一な分散が生じている。
【0058】
図2では、2つの波線が示されており、これらの波線は、主要出射面3を1/3ずつの領域に区分する境界線、すなわち3つの区分に分割する境界線を表している。これらの境界線はそれぞれ長手区間1と垂直に交差している。一方の境界線は、長手区間1の全長の1/3のところで当該長手区間1と交差しており、もう一方の境界線は、2/3のところで当該長手区間1と交差している。
【0059】
3つに分割された、全領域の1/3に相応する中央の1/3領域には33個のコンタクト面21が含まれている。また全領域の1/3に相応する左方外側の1/3領域には19個のコンタクト面21が含まれており、全領域の1/3に相応する右方外側の1/3領域には20個のコンタクト面21が含まれている。それにより、中央の1/3領域には、その両側にある1/3領域に比べて、60%以上多くのコンタクト面21が配設されている。仮にそれらのコンタクト面が全て同じ大きさであるのならば、中央の1/3領域のコンタクト面を全て加算した大きさは、その両側に存在するそれぞれ1/3領域のコンタクト面を合算したものよりも相応に大きくなる。
【0060】
ここでは、前述のコンタクト面21が必ずしも主要出射面3の上側に配設される必要がないことも理解されたい。それどころか前記コンタクト面21の細分化やそれぞれの数、加算された面積は、平面図で見て主要出射面3のそれぞれの領域に存在するコンタクト面21、例えば主要出射面3の下側に存在するコンタクト面21にも関連している。つまり前記複数のコンタクト面21は、
図1中の一方の半部の領域又は他方の半部の領域に存在するか、又は(
図2中の)主要出射面3の1/3領域中に存在し得る。
【0061】
図2中、主要出射面3の中央の1/3領域をさらに半分にするならば、この2つの半部20の一方の領域と他方の半部12の領域にコンタクト面21が存在する。それに伴って中央の1/3領域の一方の半部には、主要出射面3の中央の1/3領域の他方の半部におけるよりも60%以上のコンタクト面21が配設され得る。
【0062】
主要出射面3は当該平面図においてその幅が最小の箇所4を有している。この最小幅の箇所4には、主要出射面3の長手区間1に沿って両方向に向かってその幅が増加している部分が続いている。
【0063】
両端部若しくは相互に対向する両縁部において、主要出射面3は例えば最大幅2を有する。このことは主要出射面3の幅、すなわち最大延在部が、主要出射面3の主要延在方向に対して直角方向にあることを意味する。
【0064】
主要出射面3の縁部は2つの部分38,39を有している。この2つの部分38,39は主要出射面3の外側において例えば約165°の角度40を形成している。換言すれば、前記2つの部分38,39は相互に約15°傾斜している。
【0065】
このように成形された主要出射面3を備えた発光ダイオードチップは、特に自動車の前照灯のための照明手段に適している。この種の前照灯のロービーム光に対する基準として、照射される前照光の上方領域に鮮明な明暗の境界線が設けられる。例えばこの明暗の境界線は、第1の部分において道路に対してほぼ水平方向に延在し、さらに第2の部分において水平方向に対して約15°の角度のもとで道路縁石に向けてやや上方へ延在していてもよい。
【0066】
前記主要出射面3の縁部の2つの部分38,39は、例えばそれぞれ直線状に実施されてもよい。但しこのことは必ずしも必須の条件ではない。例えば、前記部分の少なくとも一方が少なくとも部分的に僅かに湾曲していてもよいし、あるいは任意の別の経過を有するように、例えば直線から僅かにずれた経過を有するように構成されていてもよい。そのようなケースでは、2つの部分38,39の主要延在線の間で、当該部分38,39によって形成される角度40が測定される。
【0067】
有利には前記2つの部分38,39の間の移行部が鋭角な折曲部を有している。しかしながらこのことも必須の条件ではなく、必ずしも全てのケースで必要とされるわけではない。例えば前記折曲部はある程度丸みを帯びたものであってもよいし、その他の成形された縁部区間を、前記部分38,39の間の移行部として有していてもよい。特に、そのような移行部分における主要出射面3の幅、あるいはそのような移行部分の一部における主要出射面3の幅は、その最小値であってもよいし、少なくとも1つの極小値であってもよい。
【0068】
図3には、主要出射面において、異なったレベルの照射強度ないし照明強度を有している複数の領域が描写されている。これらの領域で示されている境界線は、同じ照明強度又は同じ照射強度を有するラインに沿って延在している。ここでの主要出射面と複数のコンタクト面は、前記
図1及び
図2に基づいて描写した実施例に基づいて形成されている。
【0069】
主要出射面3の第1の領域33は、最大照射強度ないし最大照明強度を有している。その他の領域3,35,36,37については、この第1の領域33から離れれば離れるほど、その照射強度ないし照明強度は弱くなる。第1の領域33の照射強度は、例えば最も外側の領域37に比べて少なくとも6倍大きいか、又は8倍大きい。
【0070】
図3においては、発光ダイオードチップの主要出射面が著しく不均一な放射輝度ないし照度分布を生じていることが明らかに識別できる。この不均一な放射輝度ないし照度分布は、コンタクト面の面密度の不均一な分散とそれに伴う半導体積層体中の不均一な電流密度分布によって実現される。
【0071】
この種の発光ダイオードチップは、技術的に簡単な方式で自動車のロービーム用前照灯として実現可能である。特にこの種の前照灯用に設定される放射輝度分布または照度分布は、基本的には結像光学系を用いた主要出射面3の簡単な結像処理によって実現が可能である。これについては
図4が参照される。この
図4では、発光ダイオードチップ101と結像光学系50が側面図にて概略的に示されている。
【0072】
例えば十分に均質な円錐状の前照光が非常に多くの不均一な放射輝度分布ないし照度分布を伴って光学系から発光されるように成形することのできる高価な特殊な光学系は省くことができる。もちろん放射輝度分布を制御できる光学系が用いられてもよい。しかしながらこの種の光学系は実質的に容易に改善して製造することが可能である。なぜなら少なくとも1つの粗い放射輝度分布は、既に発光ダイオードチップの設計仕様によって実現することができるからである。
【0073】
基本的には、
図1〜
図3に示されている発光ダイオードチップは、図に示されている形態と構造が、2つの横側縁部(すなわち当該平面図においてチップの主要出射面の幅方向に沿って延在している側縁部)の一方において映される"鏡対称"に構成されていてもよい。
【0074】
図5には、
図4の結像光学系50から放射される円錐ビームのメイン照射方向に対して直角方向に延在する平面上で得られる放射強度又は照明強度が示されている。この図からわかることは、鮮明な明暗境界線が上側において実現されていることである。さらにこの明暗境界線は、他の部分に対して若しくは水平方向に対して約15°だけ傾斜している部分を有している。
【0075】
図5には、
図3に示されている領域にほぼ相応する領域が示されている。第1の領域33は、最大の放射強度又は照明強度を有している。この第1の領域33から離れれば離れるほどそこで測定される放射強度又は照明強度は低くなる。
【0076】
図6に示されている例示的な発光ダイオードチップの概略的な側方断面図には、半導体積層体10が含まれている。この半導体積層体10は、活性層11と、p導電型にドープされた半導体層13と、n導電型にドープされた半導体層12を含んでいる。半導体積層体10の各層11,12,13は、特に複数の部分層から合成され得る。それらは特に異なる材料組成も有し得る。
【0077】
半導体積層体は例えばIII/IV族化合物半導体材料を有し得る。このIII/IV族化合物半導体材料は、例えばB,Al,Ga,InなどのIII族の主要グループからの少なくとも1つの元素と、例えばN,P,AsなどのV族の主要グループからの1つの元素を有し得る。特にIII/IV族化合物半導体材料の概念には、III族の主要グループからの少なくとも1つの元素とV族の主要グループからの少なくとも1つの元素を含み得る、二元性化合物、三元性化合物、四元性化合物のグループ、例えば窒化物ないし燐化物化合物半導体を含み得る。そのような二元、三元、四元化合物はさらに例えば1つ若しくは複数のドーパントと付加的な成分を有し得る。
【0078】
活性層11は有利には、pn接合部、二重ヘテロ構造、電磁ビーム生成のための単一量子井戸構造(SQW)又は特に有利には、多重量子井戸構造(MQW)を含み得る。ここでの量子井戸構造の表記は、量子化の次元に関する意味合いを発展させるものではない。それによりこの表記には、とりわけ量子井戸、量子線、量子点、及びこれらの構造のあらゆる組合わせが含まれる。例えばMQW構造に対する例は当業者には公知である。
【0079】
発光ダイオードチップは例えば薄膜発光ダイオードチップである。特にこの薄膜発光ダイオードチップは、その裏側に支持体基板を有している。ある構成によれば、第1及び第2の電気的な接続層は、半導体積層体と支持体基板との間でまばらに配設されてもよい。
【0080】
薄膜発光ダイオードチップは少なくとも1つの以下の有利な特徴を有している。詳細には、
特にエピタキシャル積層体などの半導体積層体の、特に支持体基板のような支持体要素に向いている主要面において、反射層が被着若しくは形成されており、それが半導体積層体内で生成された電磁ビームの少なくとも一部を反射させており、
薄膜発光ダイオードチップが支持体要素を有しており、該支持体要素は、半導体積層体がエピタキシャル成長された成長基板ではなく、後から半導体積層体に固定された別個の支持体要素であり、
前記半導体積層体は、20μm以下の厚み、特に10μm以下の厚みを有しており、
前記半導体積層体は、成長基板から開放されている。ここでの「成長基板から開放されている」とは、場合によって成長のために使用される成長基板が、半導体積層体から離れているか又は少なくとも大幅に薄膜化されていることを意味しており、この薄さは、エピタキシャル積層体に対して若しくはエピタキシャル積層体と共に単独では方持ち梁ではない。従って大幅に薄膜化された成長基板の残留する残りの部分は、特に成長基板のそのような機能には適していない。さらに、前記半導体積層体は、少なくとも1つの平面を有した少なくとも1つの半導体層を含んでおり、前記少なくとも1つの平面は、混合構造を有しており、該混合構造は理想的にはエルゴード分布に近似した光分布が半導体積層体で生じるものであり、つまり、可及的にエルゴード理論に基づいた確立密度の散乱特性を有している。
【0081】
前記薄膜発光ダイオードチップは、良好な近似においては、ランバート発光面、すなわち均等拡散面としての発光面であり、それ故例えば自動車のヘッドライトなどの投光器系への適用に特に向いている。
【0082】
半導体積層体10は、
図6に示されている実施例では、主要放射方向に向いた表側に主要出射面31を有している。半導体積層体のこの表側とは反対側の裏側には、第1の電気的なコンタクト層20と第2の電気的なコンタクト層25が設けられている。この第1の電気的なコンタクト層20と第2の電気的なコンタクト層25は、例えば絶縁層23によって、相互に電気的に絶縁されている。
【0083】
第1の電気的な接続層20と第2の電気的な接続層25は、横方向で相互に重なっている。
図6に示されている実施例では、絶縁層23もこれらの電気的な接続層20,25と横方向で重なっている。ここでの横方向とは、前記半導体積層体の主要延在面に並行な方向である。
【0084】
前記半導体積層体10はその裏側に、活性層11を貫通して延在している孔部を有している。この孔部は例えば切欠部の形態で形成されている。第1の電気的な接続層20の部分領域22は、裏側から前記活性層の孔部を貫通して主要出射面の方向へ延在している。この部分領域22の孔部においては、n導電型にドープされた半導体層12が少なくとも1つの接続面21と接触している。
【0085】
例えば発光ダイオードチップの全ての接続面21はこのような形態で形成可能である。すなわち、第1の電気的な接続層20の各接続面21が部分領域22によって形成され、該部分領域22は半導体積層体の裏側から活性層の孔部を通って主要出射面の方向へ延在し、半導体積層体10の1つの層と接触している。この部分領域22は、前記活性層11とp導電型にドープされた半導体層13に対しては例えば絶縁層23によって電気的に絶縁されている。
【0086】
前記孔部は例えば円筒形、長円形、直方体形、円錐形、円錐台形、ピラミッド形、ピラミッド台形などの形状を有する凹部の形態に形成されていてもよい。また代替的にこの凹部は、長く延びた形態の溝ないしトレンチとして形成されていてもよい。有利にはこのトレンチは、実質的に平らな底面を有している。1つの構成例によれば、このトレンチの断面は、底面から開口部に向けて拡大している。このような凹部ないし切欠部は例えばエッチング処理によって生成される。
【0087】
前記切欠部の断面は換言すれば開口部から底面に向けて先細に形成されている。それに応じて前記第1の電気的な接続層20の部分領域22も当該半導体積層体の裏側から前記接続面21の方向へ向けて先細になっている。裏側の領域では、前記部分領域22が例えば横方向へ伸長した拡張部分220を有しており、この拡張部分220は、専ら1μm〜40μmの間の長さの領域からなっている。例えばこの横方向の拡張部分ないし延在部分220の長さは、5μm、10μm、15μm、25μm、または35μmであってもよい。前記接続面21の相応に横方向に延在した部分は、半導体積層体裏側の領域における前記部分領域22の横方向延在部分の長さに比べて例えば専ら10%〜50%短いものであってもよい。
【0088】
半導体積層体10の主要出射面31は、複数の構造化ユニット30を備えた構造化部分からなっている。これらの構造化ユニット30は、例えば第1の横方向延在部と、該第1の横方向延在部に対して直角方向に延びる第2の横方向延在部と、垂直な延在部を有している。それらはそれぞれ専ら0.1μm〜2.5μmの間の範囲にある。但しこれらの構造化ユニットは例えば半導体積層体10からの電磁ビームの出力を制御するのに適したものであるならば、異なる大きさで異なって成形されていてもよい。
【0089】
半導体積層体10の主要出射面31には発光変換層60が被着される。この発光変換層60は、活性層11において生成された電磁ビームの少なくとも一部を、波長領域の変更された電磁ビームに変換するのに適している少なくとも1つの蛍光体を有している。半導体積層体10とは反対側に向いている、発光変換層60の外方面32は、例えば当該発光ダイオードチップの主要出射面32を形成している。
【0090】
この発光ダイオードチップの主要出射面32と前記半導体積層体10の主要出射面31は、例えば平面図で見て共に同じ形態を有していてもよい。また、発光ダイオードチップの主要出射面32全体が、半導体積層体10に被着されている材料の外面によって、例えば発光変換層60の外面によって形成されていてもよい。しかしながら代替的に、主要出射面の一部のみをそのような材料で形成し、その他の部分は、例えば半導体積層体10の主要出射面31の露出された領域で形成することも可能である。
【0091】
前記発光変換層60にはLEDへの使用で知られている全ての蛍光体が適している。例えばそのような蛍光体及び蛍光混合体としては、例えば、
クロロシリケート、
オルトシリケート、スルフィド、チオメタル、バナジン酸塩、
アルミン酸塩、オキシド、ハロりん酸塩、
窒化物、シオン(Sione)、サイアロン(Sialone)、
希土類元素のガーネット、Cerのドープされたイットリウムアルミニウムガーネット、アルカリ土類元素などが挙げられる。
【0092】
半導体積層体10から放射される電磁ビームは、前記構造化ユニット30と発光変換層60とによって散乱する。それにより、第1の電気的な接続層20の部分領域22の上方に存在し、当接する主要出射面32の領域に比べてほとんど遜色のない若しくは極僅かしか暗くならない領域が出現するようになる。
【0093】
前記半導体積層体は、例えば、専ら3μm〜5μmの間の値範囲からなる高さ100を有している。発光変換層60は、例えば、専ら15μm〜30μmの間の値範囲の厚さ61を有している。
【0094】
図7に示されている実施例では、第1の電気的な接続層20が、活性層11を貫通する孔部を通って延在する部分領域は何も有していない。その代わりに第1の電気的な接続層20の電気的な接続面21が、例えば半導体積層体10の裏側に設けられている。この電気的な接続面21は、例えば半導体積層体10のp導電型にドープされた半導体層13と接触しコンタクト形成する。
【0095】
複数の電気的な接続面21は、例えば電気的な絶縁層23を用いて形成される。この電気的な絶縁層23は、電気的な接続面21が設けられている複数の領域を有する。第1の電気的な接続層の部分領域201は、それぞれ切欠部内へ延在し、半導体積層体10における電気的な接続面21を形成している。
【0096】
電気的な絶縁材料の例として例えば二酸化ケイ素が挙げられる。電気的な接続面は例えば一般に使われている材料を有している。付加的に若しくは代替的に、電気的な接続面は、透過的でかつ導電性の酸化物(透明導電酸化物、TCO)、例えばインジウムスズ酸化物を有していてもよい。
【0097】
電気的な絶縁層23の開口部は、例えば専ら1μm〜40μmの間、特に専ら1μm〜20μmの間の横方向拡張部220を有している。電気的な接続面21の相応の横方向拡張部は、電気的な絶縁層23の開口部の横方向拡張部220とほぼ同じ大きさである。
【0098】
図7に示されている実施例では、第2の電気的な接続層が半導体積層体10の表側に配設されていてもよい。但しこのことは図には示されていない。
【0099】
図8に示されている実施例では、第1の電気的な接続層20が、発光ダイオードチップの半導体積層体10の表側に配設されている。この第1の電気的な接続層20は、第1の部分層203を有し、この第1の部分層203は、活性層11から放出された電磁ビームに対して透過的である。第1の部分層203は、例えば当接するn導電型にドープされた半導体層12と電気的なコンタクトを全く形成しないか若しくは比較的低い導電性での電気的なコンタクトしか形成しない。第1の部分層203は、例えばインジウムスズ酸化物などのようなTCOを有している。
【0100】
第1の電気的な接続層20と半導体積層体10との間の良好な導電性の電気的なコンタクトが第1の電気的な接続層20の第2の部分層202を用いて形成される。この第2の部分層202は、例えば第1の部分層203と半導体積層体10の間に設けられる。第2の部分層202が半導体積層体10に接触している箇所には、電気的なコンタクト面21が形成される。第2の部分層202は、例えばn導電型にドープされた半導体層122に接触する。
【0101】
半導体チップは有利には複数のこの種の第2の部分層202を有する。この第2の部分層202は、例えば非常に薄い金属層によって形成されている。これは例えば数ナノメータ、例えば2nm、4nm、5nmの厚さであってもよい。
【0102】
代替的に、電気的なコンタクト面21が、第1の電気的な接続層20のこの種の第2の部分層202の支援なしで形成されてもよい。このことは例えばコンタクト形成すべき半導体積層体10表面の相応の調合によって行われてもよい。例えば半導体表面は、電気的なコンタクト面21の形成が望ましくない領域においては次のように形成される。すなわちビーム透過性の第1の電気的な接続層20の第1の部分層203と半導体材料の間の、非常に低い導電性若しくは非導電性の電気的コンタクトが形成される。電気的なコンタクト面が望まれる領域においては、半導体表面が比較的平坦にされる。それによりビーム透過性の第1の電気的な接続層20の第1の部分層203と半導体材料との間の良好な導電性のコンタクトが形成される。
【0103】
図8に示されている実施例の構成によれば、第1の電気的な接続層20がビーム遮蔽部として用いられるボンディングパッド26を有する。そのようなボンディングパッド26を有している発光ダイオードチップの実施形態は、先行の
図2に基づく説明で述べてきた。このボンディングパッド26は例えば第1の電気的接続層20の第1のビーム透過性部分層203と導電的に接続されている。
【0104】
第2の電気的な接続層25は、
図8に示されている実施例では、半導体積層体10の裏側に配設されている。
【0105】
図9から
図13には、異なって成形された主要出射面3を有する発光半導体チップの5つの異なる実施例が示されている。
図9から
図12に示されている発光ダイオードチップは、少なくとも1つの切欠部70によって矩形形状とは異なった長い区間の形態を有するそれぞれ1つの主要出射面3を有している。切欠部70は、例えば三角形状の形態又は三角形に類似の形態を有し得る。但し以下の明細書では簡素化の理由から "三角形状の切欠部"という表現のみを利用するものとする。
【0106】
図9及び
図10に示されている実施例では、切欠部70は例えば発光ダイオードチップの全長部分1に亘って延在している。三角形状の切欠部70の2つの脚部はそれぞれ主要出射面3の側縁を形成している。
【0107】
図9に示されている実施例では、これらの脚部はほぼ同じ大きさである。
図10から
図12の実施例においては、この脚部の長さが大きく異なるっている。例えば三角形状の切欠部70の脚部の一方の長さは、他方の脚部の長さに比べて専ら2倍〜5倍の違いがある。
【0108】
図10に示されている実施例では、切欠部70の一方の脚部の長さは例えば他方の脚部の長さの倍ある。
図11及び
図12に示されている実施例では、三角形状の切欠部70の一方の脚部は他方の脚部の長さの例えば4倍ある。
【0109】
図11に示されている発光ダイオードチップの実施例は、三角形状の切欠部70だけでなく、それよりも格段に小さな矩形状とは異なる第2の切欠部と共にもたらされる主要出射面を有している。例えばこれらの切欠部は相互に接しており、前記主要出射面はこれらの切欠部の間に点状の領域5を有している。この領域において主要出射面は最大幅2を有している。主要出射面の幅は、最大幅を有している当該点状領域から出発して両方向で、長さ区間1に沿って減少する。
【0110】
図13による実施例では、主要出射面3の形態は、平面図において三角形状の切欠部によってではなく、四角形の切欠部70によって厳密な矩形形態とは異なっている。長く延在する主要出射面3の幅は、一方の側で最小となり、他方の側までの経過において一定に維持されている。例えば主要出射面3の長さ部分1の専ら40%〜60%の間の値に相当する領域においては、傾斜形態を有し、そこでは幅が経過に伴って増加している。
【0111】
図13に示されている実施例において主要出射面3の形態が厳密な矩形形状とは異なる要因となっている四角形の切欠部70は、
図9〜
図12に示されている実施例の三角形状の切欠部70よりも明らかに大きい。すなわち、
図9から
図12に描写されている発光ダイオードチップの製造のもとでは、通常は、
図13に示されている実施例よりも明らかに多くの半導体積層体ウエハの活性層が活用され得る。
【0112】
代替的に
図9から
図13による実施例のもとでの発光ダイオードチップは、切欠部領域70において切欠部を有する代わりに、ボンディングパッドによって覆われた半導体積層体部分を有していてもよい。このボンディングパッドはこのケースでは遮蔽部として機能する。その場合主要出射面3が主要面を区切る。
【0113】
本発明は、複数の実施例に基づく説明によってこれらの実施例に限定されるものではない。それどころか本発明にはあらゆる新たな特徴、並びにそれらの特徴のあらゆる組合わせが含まれている。このことは特に複数の特徴のあらゆる組合わせが特許請求の範囲には含まれていることを意味する。このことはそれらの特徴又はその組合わせ自体が特許請求の範囲若しくは実施例に詳細に説明されていなかったとしても有効であることを最後に述べておく。