特許第5656963号(P5656963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カヤバ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5656963-ウェーブワッシャ 図000002
  • 特許5656963-ウェーブワッシャ 図000003
  • 特許5656963-ウェーブワッシャ 図000004
  • 特許5656963-ウェーブワッシャ 図000005
  • 特許5656963-ウェーブワッシャ 図000006
  • 特許5656963-ウェーブワッシャ 図000007
  • 特許5656963-ウェーブワッシャ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656963
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】ウェーブワッシャ
(51)【国際特許分類】
   F16B 43/00 20060101AFI20141225BHJP
   F16B 39/24 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   F16B43/00 A
   F16B39/24 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-255161(P2012-255161)
(22)【出願日】2012年11月21日
(65)【公開番号】特開2014-101958(P2014-101958A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2013年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】宝積 宣至
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−141415(JP,A)
【文献】 実開昭63−086412(JP,U)
【文献】 特開2000−303806(JP,A)
【文献】 実開昭58−031422(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00 − 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波板状のウェーブワッシャであって、
複数の山部及び谷部を周方向に交互に有するリング状のワッシャ本体と、
前記ワッシャ本体の外周端から径方向に突出する複数の突片と、を有し、
前記突片はワッシャ本体に連接する根本部に対して径方向に延びる先端部が折曲部を介して折り曲げられ、
前記折曲部における外側面が収容部の内壁に当接可能に形成され
前記突片は前記ワッシャ本体の前記谷部から突出して前記山部が突出する方向に折り曲げられ、
前記根本部に対する前記先端部の軸方向の高さが前記谷部に対する前記山部の軸方向の高さより小さく設定されることを特徴とするウェーブワッシャ。
【請求項2】
前記根本部の中心線と前記先端部の中心線との間の挟み角度は90°以下に設定されることを特徴とする請求項1に記載のウェーブワッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材間に介装されるウェーブワッシャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、周方向に湾曲したリング状のワッシャ本体と、ワッシャ本体の内周端から内側に突出してガイド部となる3個の突片と、を備えるウェーブワッシャが開示されている。
【0003】
上記のウェーブワッシャは、収容部(固定物)と被固定物との間に介装された状態で、3個の突片が被固定物の軸部に当接することによって、軸部と同軸上に位置決めされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−291622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のウェーブワッシャにあっては、鋼材からなるバネ板をプレス加工により打ち抜いて形成される際に、ワッシャ本体の外周端(切断部)にバリが生じるため、このバリによって収容部の内壁が摩耗することがあった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、収容部の摩耗を抑制できるウェーブワッシャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、波板状のウェーブワッシャであって、複数の山部及び谷部を周方向に交互に有するリング状のワッシャ本体と、ワッシャ本体の外周端から径方向に突出する複数の突片と、を有し、突片はワッシャ本体に連接する根本部に対して径方向に延びる先端部が折曲部を介して折り曲げられ、折曲部における外側面が収容部の内壁に当接可能に形成され、突片はワッシャ本体の谷部から突出して山部が突出する方向に折り曲げられ、根本部に対する先端部の軸方向の高さが谷部に対する山部の軸方向の高さより小さく設定されるものとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ウェーブワッシャは、バリがない折曲部の外側面が収容部の内壁に当接して径方向の位置決めが行われ、突片によってワッシャ本体の外周端が収容部の内壁から離される。このため、プレス加工時にワッシャ本体の外周端に生じたバリによって収容部の内壁が摩耗することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るウェーブワッシャの斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るウェーブワッシャの平面図である。
図3】本発明の実施形態に係るウェーブワッシャの側面図である。
図4A】本発明の実施形態に係るウェーブワッシャ突片の断面図である。
図4B】本発明の実施形態に係るウェーブワッシャ突片の断面図である。
図4C】本発明の実施形態に係るウェーブワッシャ突片の断面図である。
図5】本発明の実施形態に係るウェーブワッシャが収容部に介装された状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1〜3に示すように、ウェーブワッシャ1は、波板状のバネ材であり、後述するように収容部と被固定物との間に圧縮して介装され、被固定物にバネ力を付勢するものである。
【0012】
ウェーブワッシャ1は、リング状のワッシャ本体10を有する。ワッシャ本体10は、中心軸Oと同心に形成される内周端11及び外周端12を有するとともに、軸方向の上面14及び底面13を有する。なお、「軸方向」は、ウェーブワッシャ1の中心軸Oが延在する方向を意味する。
【0013】
ウェーブワッシャ1は、上述した構成に限らず、多角形の内周端及び外周端を有する形状としてもよい。
【0014】
ワッシャ本体10は、3つの山部18と3つの谷部17を周方向に交互に有する波板状に形成される。なお、「周方向」は、ウェーブワッシャ1の中心軸O回りの方向を意味する。
【0015】
ワッシャ本体10は、上述した構成に限らず、2つ以上の山部18及び谷部17を有する形状としてもよい。
【0016】
ウェーブワッシャ1は、ワッシャ本体10の外周端12から径方向に突出する3つの突片20を有する。3つの突片20は、ワッシャ本体10の谷部17に設けられ、ワッシャ本体10の外周端12から径方向に突出している。なお、「径方向」は、ウェーブワッシャ1の中心軸Oを中心とする放射方向を意味する。
【0017】
突片20の個数は、谷部17と同数で形成される構成に限らず、谷部17の個数より増減してもよい。
【0018】
ウェーブワッシャ1は、鋼材等からなる板材をプレス加工により打ち抜いて形成される。このプレス加工によって打ち抜かれた平板状のウェーブワッシャ1は、ワッシャ本体10と一体の突片20を有する。突片20は、ワッシャ本体10から中心軸Oと直交する径方向に延びている。突片20は、ワッシャ本体10と一体の平板状をしている。
【0019】
ウェーブワッシャ1の製造時には、板材をプレス加工により打ち抜いた後に、突片20の中程が折り曲げられる。突片20は、ワッシャ本体10の外周端12に連接する根本部21と、根本部21から折り曲げられる折曲部22と、折曲部22から先端24へと径方向に延びる先端部23と、を有する。
【0020】
突片20は、折曲部22にて山部18が突出する方向に折り曲げられる。これにより、突片20は、図3において、軸方向上側に突出し、ワッシャ本体10の軸方向下側には突出しない。
【0021】
図4Aは、図2においてA−A線に沿うウェーブワッシャ1の断面図である。根本部21は、谷部17と略同一平面上に突出する。先端部23は、根本部21と平行に延びる。根本部21の中心線W1に対する先端部23の中心線W2が折れ曲がる挟み角度は0°となる。なお、厚さ方向の中心線W1、W2は、根本部21、先端部23を厚さ方向に二等分する線である。
【0022】
突片20は、折曲部22における外側面26が、ウェーブワッシャ1の最外周に位置して、収容部の内壁に当接可能に形成される。折曲部22における外側面26は、ワッシャ本体10の底面13から連続する面によって形成される。
【0023】
図4Aに示す実施形態では、根本部21と先端部23の間に間隙29が設けられるように折曲部22が折り曲げられる。これにより、軸方向の荷重によって先端部23が根本部21に近づくように折曲部22が弾性変形するようになっている。
【0024】
なお、上述した構成に限らず、根本部21と先端部23が互いに当接するように折曲部22が折り曲げられる構成としてもよい。
【0025】
ワッシャ本体10の底面13に対する突片20の先端部23の端面28の軸方向の距離が、根本部21に対する先端部23の軸方向の高さH1となる。
【0026】
なお、突片20は、上述した構成に限らず、図4B図4Cに示すように形成してもよい。
【0027】
図4Bに示す実施形態では、根本部21と先端部23が90°より小さい挟み角度θを持つように折曲部22が折り曲げられる。突片20は、折曲部22における外側面26が、ウェーブワッシャ1の最外周に位置して、収容部の内壁に当接可能に形成される。折曲部22の折り曲げ角度を小さくすることで、折り曲げ工程を簡易にできる。
【0028】
この場合には、ワッシャ本体10の底面13に対する突片20の先端24の軸方向の距離が、根本部21に対する先端部23の軸方向の高さH1となる。
【0029】
図4Cに示す実施形態では、根本部21と先端部23が90°の挟み角度θを持つように折曲部22が折り曲げられる。突片20は、折曲部22における外側面26及び先端部23の端面28が、ウェーブワッシャ1の最外周に位置して、収容部の内壁に当接可能に形成される。
【0030】
この場合にも、ワッシャ本体10の底面13に対する突片20の先端24の軸方向の距離が、根本部21に対する先端部23の軸方向の高さH1となる。
【0031】
ウェーブワッシャ1は、プレス加工により突片20が折り曲げられた後に、平板状のワッシャ本体10がプレス加工により波板状に曲げられ、山部18及び谷部17が形成される。
【0032】
図5は、ウェーブワッシャ1が介装される例として、電動モータの軸受け部を示す側面図である。ウェーブワッシャ1は、モータハウジング(収容部)2とベアリング(被固定物)3との間に圧縮して介装され、バネ力をベアリング3に付勢してベアリング3を保持する。ベアリング3は、電動モータの回転シャフト4を回転自在に支持するものである。
【0033】
ウェーブワッシャ1は、突片20の根本部21の端面25及びワッシャ本体10の谷部17における底面13がモータハウジング2の底面2Aに当接する一方、ワッシャ本体10の山部18における上面14がベアリング3に当接する。
【0034】
ウェーブワッシャ1は、ワッシャ本体10の軸方向の高さH2が、突片20の軸方向の高さH1より大きくなっている。ワッシャ本体10の高さH2は、谷部17に対する山部18の軸方向の距離である。突片20の高さH1は、前述したように根本部21に対する先端部23の軸方向の距離である。これにより、ウェーブワッシャ1がモータハウジング2とベアリング3との間で圧縮された状態で、突片20がベアリング3に当接することが回避され、ワッシャ本体10がモータハウジング2とベアリング3との間で圧縮されてベアリング3に所定のバネ力を付勢する。
【0035】
ウェーブワッシャ1は、各突片20に設けられる折曲部22の外側面26がモータハウジング2の内壁2Bに当接することによって径方向の位置決めが行われ、モータハウジング2と同軸上に配置される。
【0036】
ウェーブワッシャ1が打ち抜かれるプレス加工時に、ワッシャ本体10の内周端11及び外周端12、突片20の切断面には、バリが生じることがある。一方、折曲部22の外側面26は、切断面ではなく、底面13と連続な面から形成されているため、バリがない。
【0037】
従来の電動モータの軸受け部にあっては、モータハウジング(収容部)がアルミ材によって形成される場合に、ウェーブワッシャのバリによってモータハウジングが摩耗、損傷することを抑制するために、モータハウジングのウェーブワッシャに当接する内壁を硬度の高い例えば鉄材によって形成する必要があった。
【0038】
これに対して、ウェーブワッシャ1が介装される電動モータの軸受け部にあっては、バリのない折曲部22の外側面26がモータハウジング2の内壁2Bに当接するため、バリによってモータハウジング2の内壁2Bが摩耗、損傷することが抑制される。このため、モータハウジング2は、その内壁2Bを硬度の高い金属からなる別部材によって形成する必要がなく、構造の簡素化が図れる。
【0039】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0040】
〔1〕波板状のウェーブワッシャ1であって、複数の山部18及び谷部17を周方向に交互に有するリング状のワッシャ本体10と、ワッシャ本体10の外周端12から径方向に突出する複数の突片20と、を有し、突片20はワッシャ本体10に連接する根本部21に対して径方向に延びる先端部23が折曲部22を介して折り曲げられ、折曲部22における外側面26が収容部(モータハウジング2)の内壁2Bに当接可能に形成されるものとした。
【0041】
上記構成により、ウェーブワッシャ1は、バリがない折曲部22の外側面26が収容部の内壁2Bに当接して径方向の位置決めが行われ、ワッシャ本体10の外周端12が収容部の内壁2Bから離される。これにより、プレス加工時にワッシャ本体10の外周端12に生じたバリによって収容部の内壁2Bが摩耗することを抑制できる。
【0042】
〔2〕突片20はワッシャ本体10の谷部17から突出して山部18が突出する方向に折り曲げられ、根本部21に対する先端部23の軸方向の高さH1は谷部17に対する山部18の軸方向の高さH2より小さく設定されるものとした。
【0043】
上記構成により、ワッシャ本体10が被固定物によって軸方向に圧縮されるときに、突片20が軸方向に圧縮されることが回避され、ウェーブワッシャ1のバネ機能が損なわれない。
【0044】
〔3〕根本部21の中心線W1と先端部23の中心線W2との間の挟み角度θは90°以下に設定されるものとした。
【0045】
上記構成により、バリが生じない折曲部22の外側面26または先端部23の端面28が収容部の内壁2Bに当接するため、突片20の先端24に生じたバリによって収容部の内壁2Bが摩耗することを抑制できる。
【0046】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のウェーブワッシャは、電動モータの軸受け部に限らず、他の機械、設備、構造物にも利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 ウェーブワッシャ
2 モータハウジング(収容部)
10 ワッシャ本体
12 外周端
17 山部
18 谷部
20 突片
21 根本部
22 折曲部
23 先端部
24 先端
26 外側面
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5