(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上部が開口し被染物および染液を収容可能な染色用容器と、搬送経路に沿って複数の前記染色用容器を間欠的に搬送可能な搬送手段と、前記搬送経路の途中に設けられた複数の処理ステーションとからなり、
前記複数の処理ステーションは、染液を調合して被染物が収容された前記染色用容器に調合した染液を供給する染液調合処理ステーションと、
前記染液調合処理ステーションの下流側に位置し、被染物および染液が収容された前記染色用容器を回転させることにより被染物を染色する染色処理ステーションと、
前記染色処理ステーションの下流側に位置し、前記染色用容器に収容された被染物を回収した後、前記染色用容器を洗浄する回収洗浄処理ステーションとを少なくとも含み、
前記搬送手段により、前記染色用容器が各処理ステーション間を移動することにより、被染物を染色するようにした自動染色システム。
前記染液調合処理ステーションの上流側に位置し、積み重ねられた複数の被染物から所定数の被染物をピックアップして前記染色用容器内に投入する被染物投入処理ステーションをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の自動染色システム。
前記回収洗浄処理ステーションにて洗浄された前記染色用容器が、搬送手段によって前記被染物投入処理ステーションに搬送されて、前記搬送経路を前記染色用容器が循環することを特徴とする請求項2に記載の自動染色システム。
前記染液調合処理ステーションでは、複数種類の染液の調合が可能であって、搬送される前記染色用容器毎に、異なる種類の染液を供給可能であることを特徴とする請求項1に記載の自動染色システム。
前記染色処理ステーションと前記回収洗浄処理ステーションとの間に位置し、染色後の被染物を少なくとも柔軟剤を含む1種以上の処理液にて処理する後処理ステーションをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の自動染色システム。
前記後処理ステーションは、染色後の被染物に対して、それぞれ異なる種類の処理液にて処理を行う複数の処理工程を含み、各処理工程には、被染物を水洗いまたは湯洗いするための前処理装置と、被染物に対して前記処理液による処理を行うための後処理装置とがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項5に記載の自動染色システム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施例である自動染色システムの概略を示すものである。図示例の自動染色システムは、例えば靴下や下着などの被染物の収容が可能な上部に開口を有する染色用容器Pと、被染物および染色用容器Pに対して種々の処理を行う複数の処理ステーションA〜Eと、搬送経路に沿って処理ステーション間を走行して、染色用容器Pを各処理ステーションに移動させる搬送手段Tとから構成されている。
【0018】
搬送手段Tは、例えばベルトコンベアやローラコンベアなどの搬送装置が複数連なって構成されており、搬送経路の途中に各処理ステーションA〜Eが設けられている。この搬送手段Tが、染色用容器Pを載置して、各処理ステーションA〜Eのうち、まず最上流に位置する処理ステーションAに搬送し、処理ステーションAで所定の作業が行われた染色用容器Pを受け取ると、この染色用容器Pを搬送経路に沿って下流側の処理ステーションB〜Eに向けて順次搬送して、染色用容器Pを染色の1サイクルを構成する各処理ステーションA〜Eを自動的に巡回させることにより、染色用容器Pに収容された被染物が染色されるようになっている。また、染色用容器Pは、搬送手段Tにより、最下流に位置する処理ステーションEから再び最上流に位置する処理ステーションAに搬送されて、搬送経路を循環するにようになっている。なお、これら一連の作業は、予め定められたプログラムに従ってコンピュータなどの制御部7によって遠隔操作されている。
【0019】
処理ステーションは、本実施例では、(1)積み重ねられた複数の被染物から所定枚数(本実施例では、1枚)の被染物をピックアップして染色用容器P内に投入する被染物投入処理ステーションAと、(2)被染物投入処理ステーションAの下流側に設けられ、染液を調合して被染物が収容された染色用容器Pに調合した染液を供給する染液調合処理ステーションBと、(3)染液調合処理ステーションBの下流側に設けられ、被染物および染液が収容された染色用容器Pを回転させることにより被染物を染色する染色処理ステーションCと、(4)染色処理ステーションCの下流側に設けられ、染色後の被染物に対して、それぞれ処理液を供給して、中和処理、洗浄処理、フィックス処理、柔軟処理などの後処理を行う後処理ステーションDと、(5)後処理ステーションDの下流側に設けられ、染色用容器Pに収容された被染物および処理液を回収した後、染色用容器Pを洗浄する回収洗浄処理ステーションEと、を含んでいる。
【0020】
なお、染色用容器Pを受け付けて所定の作業を行う処理ステーションとしては、上記の各処理ステーションA〜Eの他に、必要に応じて、洗浄後の染色用容器Pを乾燥させる乾燥処理ステーションや、空の染色用容器Pを保管する保管処理ステーションなど、種々の処理ステーションを搬送経路に設けることができる。この場合、前記乾燥処理ステーションは、回収洗浄処理ステーションEの下流側に設けることができる。また、前記保管処理ステーションは、回収洗浄処理ステーションE(または前記乾燥処理ステーション)と被染物投入処理ステーションAとの間に設けることができる。この保管処理ステーションは、多数の染色用容器Pを収納可能であり、洗浄または乾燥後の染色用容器Pを回収して一時保管した後、再び被染物投入処理ステーションAに供給する。
【0021】
次に、各処理ステーションA〜Eについて詳細に説明する。被染物投入処理ステーションAには、パレット(図示せず)に積み重ねられた状態で保持されている複数の被染物を一枚ずつピックアップして染色用容器Pに投入可能なピックアップ装置1が設けられている。
【0022】
このピックアップ装置1は、
図2〜
図4に示すように、支持体10と、支持体10に昇降自在に設けられた可動部材11と、可動部材11の下降できる下限を規定するストッパ12と、一対の挟着板13をそれぞれ開閉可能に回動させる把持手段14と、一対の挟着板13を挟むように配置され、各挟着板13を内側の平滑面に滑り接触させる一対の気密板15と、負圧を発生させる吸引手段16とを備えている。
【0023】
支持体10は、積み重ねられた複数の被染物Mの上方に位置決めされるフレームであり、2つのガイドスリーブ100が固定されている。可動部材11は、ガイドスリーブ100に挿通したスライドバー101の下端に取り付けられている。被染物Mは、平らに広げられた状態でパレット(図示せず)などに積層されている。ストッパ12は、2つのスライドバー101の上端に横架材102を架け渡し、横架材102から垂下した棒体103を支持体10の上面に突き当てるものである。支持体10に取り付けた近接センサ104および横架材102に固定した被検出片105については、詳細は後述する。
【0024】
把持手段14は、可動部材11に固定したステム106にピン107で接合したエアシリンダ108と、エアシリンダ108のピストンロッド109にピン110で接合したクランク111と、一対の挟着板13がそれぞれ連結された2本の回転軸112,113とを備える。クランク111は、ピストンロッド109が下方へ前進する動作を回転軸112に回転力として入力する。この回転力は、回転軸112,113に取付けたギア114を介して回転軸113に伝達されるので、一対の挟着板13はそれぞれの下縁部13Aが開く向きに回動する。反対に、ピストンロッド109が上方へ後退すると、一対の挟着板13はそれぞれの下縁部13Aが閉じる向きに回動する。
【0025】
気密板15は、可動部材11に固定された側面板115に、アクリル樹脂製の透明板116を接合したものである。側面板115は、回転軸112,113の軸受の役割も果たしている。吸引手段16は、一対の挟着板13および一対の気密板15の内側の空隙に負圧を発生させるものである。例えば、下端部と上端部を有する短管の内部に、その下端部から上端部へ向けて凍れる圧搾空気を供給することにより、短管の下端部に負圧を発生させるサクションノズルを適用してもよい。この場合、短管の下端部を可動部材11の下面に開放する。あるいは、エアブロワの吸気口を上記の空隙に接続してもよい。
【0026】
また、ピックアップ装置1は、
図3に示すように、支持体10を被染物Mに対して昇降させる昇降手段117を備えている。昇降手段117は、支持体10に連結したタイミングベルト118を、モータ119によるタイミングプーリ120の回転に従わせて鉛直方向に走行させるものである。ガイドレール121に係合するスライダ122を支持体10に連結することで、支持体10はガイドレール121に沿って鉛直方向に案内されるようになっている。これら把持手段14および昇降手段117は、制御部7によって作動が制御される。
【0027】
次に、上記構成を備えるピックアップ装置1の作動について説明する。ここで、支持体10は、積み重ねられた複数の被染物Mの上方で待機し、各挟着板13は、最も上にある一枚目の被染物Mよりも高い位置で、それぞれ下縁部13Aが開いた状態で保持されている。また、吸引手段16は負圧を発生している。
【0028】
なお、被染物Mが投入される染色用容器Pは、詳細は後述するが、回収洗浄処理ステーションEにおいて洗浄された染色用容器Pが再利用される。回収洗浄処理ステーションEにて洗浄された染色用容器Pは、下部が開口した上下反転した状態で搬送手段Tにより、被染物投入処理ステーションAの近傍位置に順次搬送される。そして、染色用容器Pは、ロボットハンドなどの図示しない移送装置により、上下反転させられて上部が開口した状態で、ピックアップ装置1による被染物Mの投入が可能な搬送手段T上の所定領域に載置されるようになっている。
【0029】
まず、昇降手段117が支持体10を下降させ、各挟着板13の下縁部13Aを最も上に位置する被染物Mに突き当てる。これにより、一対の挟着板13が、可動部材11、把持手段15、および一対の気密板15とともに相対的に押し上げられるので、横架材102が支持体10に対して上昇する。近接センサ104は、その検出エリアから被検出片105が上方へ逸れたことを検出し検出信号を送出する。
【0030】
制御部7は、近接センサ104の検出信号に基づき昇降手段117を停止させる。このとき、被染物Mは、吸引手段16の負圧によって上方へ吸引され、
図5(a)に示すように、各挟着板13のそれぞれの下線部13Aの間で、被染物Mが盛り上がるよう変形する。また、吸引手段16の負圧は、1枚目の被染物Mをその下にある2枚目の被染物Mから引き離す力として被染物Mに作用する。
【0031】
図5(b)に示すように、把持手段15が各挟着板13をそれぞれの下縁部13Aが閉じる向きに回動させ、
図5(c)に示すように、最も上にある1枚目の被染物Mを各挟着板13の間に挟み込ませる。続いて、昇降手段117によって支持体10を上昇させることにより、最も上にある1枚目の被染物Mがパレット(図示せず)から取り出されて、染色用容器Pに投入することができる。被染物Mが投入された染色用容器Pは、搬送手段Tにより、次工程である染液調合処理ステーションBまで搬送される。
【0032】
上記した構成のピックアップ装置1によれば、被染物Mの盛り上がった部位を一対の挟着板13の間に進入させた状態で、各挟着板13の下縁部13Aがそれぞれ閉じられるので、ただ単に平らに広げられた被染物Mを一対の挟着板13の間に挟む場合と比較して、被染物Mの広い範囲を各挟着板13の間に挟み込める。よって、昇降手段117により支持体10を上昇させるときに、1枚目の被染物Mが各挟着板13から不用意に脱落し難いという利点があり、被染物Mの厚み、弾性、通気性、または表面の性状に関わらず、積層された複数の被染物Mの中から、最も上にある被染物Mを1枚だけ確実に取り出すことが可能である。
【0033】
また、把持手段15が、各挟着板13をそれぞれの下縁部13Aが閉じる向きに回動させるときに、最も上にある一枚目の被染物Mは、各挟着板13の下縁部13Aから
図5(c)に記した矢印t方向の摩擦力を受け、その下にある2枚目の被染物Mに対して滑りを生じる。このため、1枚目と2枚目の被染物Mの起毛が絡み合うなどしていても、両者を容易に引き離すことができ、よって、昇降手段117により支持体10を上昇させるときに、最も上にある被染物Mを1枚だけ確実に取り出すことが可能である。
【0034】
図1に戻って、次工程の染液調合処理ステーションBには、複数種類の染液を調合可能であって、この調合した染液を、被染物が収容された染色用容器Pに供給する染液調合装置2が設けられている。この染液調合装置2は、
図6および
図7に示すように、液供給装置20、調合用容器21、攪拌装置22、容器移送装置23、退避装置24および洗浄装置25を備えており、これらは枠体26に支持されている。
【0035】
液供給装置20は、染液をそれぞれ供給する複数の分注器200を備えている。各分注器200は、それぞれ染液や助剤などを貯留するタンクに接続されており、ピストン201の後退によりシリンダ202内に染液などを充填した後、ピストン201の押圧により調合用容器21に向けて吐出可能に構成されている。分注器200は、複数(本実施例では、2つ)にグループ分けされており、各グループに対応して設けられた傾動板203の上面に、シリンダ202の長手方向が水平となるように並列配置されている。
【0036】
傾動板203は、枠体26に水平に延びるように固定された支持棒27に、ヒンジを介して取り付けられている。ヒンジの回転軸は、各シリンダ202の軸線と直交するように水平方向に延びており、各シリンダ202が上下(
図6の矢示B方向)に傾動可能となるように、各傾動板203が個別に傾動自在に支持されている。各傾動板203の傾動は、手動で行うことも可能であり、あるいは、エアシリンダなどの作動により自動で行うことも可能である。
【0037】
複数の分注器200は、グループ毎にピストン201の後端が連結部材204の突出部204aに連結されている。連結部材204は、傾動板203上のガイドレール203aに沿って、ピストン201の進退方向に往復動可能に支持されており、連結されたピストン201を同じ距離だけ一体的に移動することができる。連結部材204の駆動制御は、ステッピングモータなどの制御用モータ205により高精度に行われる。
【0038】
シリンダ202は、各グループ内で少なくとも2種類の口径を有しており、本実施例においては大径のシリンダ202Aと、小径のシリンダ202Bの2種類をそれぞれ所定数組み合わせて構成されている。口径が異なるシリンダ202A,202Bの組み合わせパターンは、グループ毎に相違することが好ましく、本実施例においては、2つのグループのうち、一方のグループが2つの大径シリンダ202Aと6つの小径シリンダ202Bから構成され、他方のグループが1つの大径シリンダ202Aと8つの小径シリンダ202Bから構成されている。
【0039】
調合用容器21には、液供給装置20から染液などが供給される。
図8および
図9は、調合用容器21の拡大斜視図である。
図8および
図9は、それぞれ
図6の矢示C方向およびD方向から見た状態を示している。調合用容器21は、容器本体206の開口上部が蓋体207により覆われて構成されており、蓋体207には供給ブロック208が取り付けられている。供給ブロック208は、液供給装置20の各分注器200から染液などを供給する配管(図示せず)の先端がそれぞれ接続される複数の開口208aを有しており、蓋体207の切欠部207aを介して容器本体206に染液などを供給することができる。
【0040】
容器本体206の下部は、下方に向けて先細りとなるようにテーパ状に形成されており、下端部に排出部206aが形成されている。排出部206aは、ロッド206bの下端に取り付けられた栓206cにより密閉可能であり、エアシリンダ206dによるロッド206bの上下動により、排出部206aを開閉することができる。
【0041】
攪拌装置22は、蓋体207の上面に設けられた駆動モータ209と、容器本体206の内部で回転可能となるように駆動モータ209に連結された回転棒210と、回転棒210の下端に設けられた回転羽根211とを備えており、容器本体206に供給された染液などを回転羽根211の回転により攪拌混合することができる。回転棒210は、容器本体206の軸線を通るロッド206bと平行になるように、ロッド206bの近傍に配置されている。
【0042】
容器移送装置23は、上記被染物投入処理ステーションAから染色用容器Pを調合用容器21に向けて(
図6の矢示E方向)搬送する搬送手段Tの搬送終端部近傍に設けられた載置台28上に染色用容器Pを押し出すプッシャ212により構成されている。載置台28の上面には、染色用容器Pの重量を検出する重量計28aが設けられている。重量計28は、染液を含む染色用容器Pの全体重量を検出して、検出量に応じた信号を出力可能であればよく、例えば、圧電素子や、ひずみゲージ式、静電容量式の重量センサなどを使用することができる。
【0043】
退避装置24は、調合用容器21を水平方向(
図8の矢示F方向)に移動可能となるように支持するガイドレール213と、調合用容器21をガイドレール213に沿って駆動するエアシリンダなどのアクチュエータ214とを備えており、調合用容器21を、
図8に示す洗浄液回収トレイ216の直上である洗浄位置と、
図6に示す載置台28の直上である液供給位置との間で往復動させることができる。ガイドレール213およびアクチュエータ214は、枠体26に取り付けられている。
【0044】
洗浄装置25は、
図8および
図9に示すように、蓋体207に設けられた噴射ノズル215を備えており、洗浄液タンク(図示せず)から配管(図示せず)を介して噴射ノズル215に洗浄液を供給することで、調合用容器21の内面全体に洗浄液を噴射することができる。噴射ノズル215は、本実施例では攪拌装置22の回転棒210を挟んで両側に2つ配置されている。
【0045】
次に、上記構成を備える染液調合装置2の作動を説明する。液供給装置2の各分注器200は、
図10に示すように、染液や助剤などを貯留するタンク29に上流側配管200aを介して接続されており、上流側配管200aには上流側バルブ200bが設けられている。また、各分注器200の吐出側には、染液などを調合用容器21に供給するための下流側配管200cが設けられており、下流側配管200cには下流側バルブ200dが設けられている。
【0046】
まず、
図10(a)に示すように、上流側バルブ200bを開いて下流側バルブ200dを閉じた状態で、ピストン201を後退させることにより、シリンダ202内に染液などが吸引され、分注器200に染液などが充填される。ついで、
図10(b)に示すように、上流側バルブ200bを閉じて下流側バルブ200dを開いた状態で、ピストン201を前進させることにより、染液などが吐出される。そして、
図10(c)に示すように、ピストン201の前進中に上流側バルブ200bを開いて下流側バルブ200dを閉じると、シリンダ202内に残留する染液などはタンク29に戻される。各分注器200のピストン201は、グループ毎に連結部材204により連結されて制御用モータ205により一体的に定速駆動されるため、染液などの吐出中における各分注器200の上流側バルブ200bおよび下流側バルブ200dの切り替えタイミングを制御することにより、下流側バルブ200dが開いている間のピストン201の移動量(
図10(c)の長さL)に相当する量の染液などが各分注器200から吐出され、分注器200毎に予め設定された量を吐出することができる。
【0047】
また、本実施例のように、各グループのシリンダ202が、少なくとも2種類の口径を有することにより、各分注器200の吐出量を、上述したバルブの切り替えタイミングだけでなく、シリンダ202の口径選択によっても調整することができるので、吐出量の選択幅を拡げることができる。
【0048】
分注器200のグループ分けは、必要な調合染液の種類に対応させることができ、グループ毎に染液などの種類や吐出量を予め設定しておくことで、多種多様な染液の調合を迅速に精度良く行うことができる。
【0049】
こうして、調合用容器21には染液などの供給が行われる。染色用容器Pは、靴下や下着などの被染物Mが上記被染物投入処理ステーションAにて収容されると、搬送手段Tにより染液調合処理ステーションBまで搬送された後、容器移送装置23にて載置台28上に移送される。調合用容器21に供給された染液などは、載置台28の直上である液供給位置において、攪拌装置22の作動により攪拌された後、容器本体206の排出部206aの開放により染色用容器Pに供給される。染色用容器Pへの調合染液の供給量は、載置台28に設けられた重量計28aの検出により、適正か否かを判別することができる。このように、染液を調合用容器21で調合した後に染色用容器Pに供給することにより、染色用容器P内の被染物Mに調合前の原液が直接付着するおそれがなく、染色の色ムラなどを確実に防止することができる。
【0050】
染色用容器Pに調合染液が供給されると、染色用容器Pは、次工程である染色処理ステーションCに搬送される一方、調合用容器21は、退避装置24の作動により洗浄位置に移動する。洗浄位置においては、噴射ノズル215から調合用容器21内に洗浄液が噴射され、調合用容器21の洗浄が行われる。噴射された洗浄液は、容器本体206の排出部206aから排出され、洗浄液回収トレイ216を経て回収される。この後、調合用容器21を退避装置24の作動により再び液供給位置に移動することで、次の染液の調合を開始することができる。こうして、上記被染物投入処理ステーションAから搬送手段Tにより順次搬送される染色用容器Pに対して、多種多様な調合染液を迅速に効率よく供給することができる。また、染色用容器P毎に、異なる色の染液を供給することもでき、後述する染色処理ステーションCにおいて、被染物を多彩に染色することができる。
【0051】
傾動板203は、シリンダ202の軸線が水平となるように各分注器200を支持することが可能であるが、シリンダ202の先端側(吐出側)を上方に傾けることにより、
図11(a)に示すように、シリンダ202内にエアaが混入した場合に、下流側配管200cの近傍にエアaを集めることができる。したがって、上流側バルブ200bを閉じて下流側バルブ200dを開いた状態で、ピストン201を前進させることにより、下流側配管200cから染液などとともにエアaを容易に排出することができる。
【0052】
一方、
図11(b)に示すように、シリンダ202の先端側を下方に傾けると、シリンダ202内の液lを上流側配管200aの近傍に集めることができる。したがって、シリンダ202内の液交換が必要な場合には、ピストン201の前進により上流側配管200aを介して全ての液を容易にタンク29に戻すことができるので、交換作業を迅速に行うことができる。
【0053】
傾動板203を上下に傾動させる手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、
図11(a),(b)に示すように、傾動板203において、ヒンジ203bを介して支持棒27に取り付けられた縁部と反対側の縁部にエアシリンダ203cを設け、エアシリンダ203cのロッド203dの先端を上方から枠体26に当接させて傾動板203を支持するように構成することで、ロッド203dの進退によって傾動板203を上下に傾動させることができる。
【0054】
図1に戻って、次工程の染色処理ステーションCには、被染物および染液が収容された染色用容器Pを回転させて被染物を染色する染色装置3が設けられている。この染色装置3は、
図12に示すように、染色用容器Pを個別に回転させて被染物を染色可能な複数の回転染色装置30と、各回転染色装置30に対して染色用容器Pを搬送する容器搬送装置31とを備えている。各回転染色装置30は、本実施例においては水平方向(X方向)に並列配置された3つを1つのユニットとして、各ユニットが上下方向(Z方向)に4段に設けられることで、マトリクス状に配置されている。
【0055】
図13は、
図12に示す回転染色装置30の1つのユニットを矢示A方向に見た斜視図であり、
図14および
図15は、それぞれ
図13のB−B断面図、および、C−C断面図である。各回転染色装置30は、それぞれ上部に開口を有する染色用容器Pを搭載可能に構成されており、
図13〜
図15に示すように、それぞれ回転台300、押圧装置301および傾倒装置314を備えている。
図13は、染色用容器Pを略水平(
図12のY方向)に傾倒した後の状態を示している。
【0056】
回転台300は、円板状に形成されており、取付フレーム32に軸受装置33を介して回転自在に支持されている。
【0057】
押圧装置301は、取付フレーム32に取り付けられたエアシリンダなどの押圧用シリンダ302と、この押圧用シリンダ302のロッド302aの先端に連結板303を介して一端側が取り付けられた伝達シャフト304と、伝達シャフト304の他端側に取り付けられた板状の押圧体305とを備えている。押圧用シリンダ302および伝達シャフト304は、回転台300の回転軸と略平行に配置されており、押圧体305は回転台300と対向するように配置されている。
図15に示すように、押圧体305には、固定軸306が固定されている。
【0058】
固定軸306は、軸線に沿って中空部306aが形成されており、回転台300の回転軸と軸線が一致するように押圧体305を貫通して設けられている。中空部306aの回転台300に面した一端側には圧力開放管307が接続されており、中空部306aの他端側は連通口306bを介して外部と連通している。圧力開放管307は、
図15に示す染色用容器Pの傾倒状態で上方に延びるように配置されている。また、中空部306aには、他端側から熱電対308が挿入されており、熱電対308は、測温部308aが中空部306aの一端側を経て下方に延びるように配置されている。なお、固定軸306に対する熱電対308の挿入部には、染色用容器P内の染液が漏出しないように液密に封止されている。圧力開放管307および熱電対308は、後述する蓋体309に設けられたプレート309aにより覆われており、染色中に被染物Mが圧力開放管307や熱電対308に引っ掛かることが防止される。
【0059】
また、押圧装置301は、染色用容器Pの開口を密閉する蓋体309を備えており、蓋体309の表面中央には軸受装置310が固定されている。押圧体305の回転軸306は、軸受装置310を介して蓋体309の中央に形成された開口に挿通されており、蓋体309を回転可能に支持している。軸受装置310は、環状のケース310a内に転がり軸受310bが収容されて構成されており、押圧体305が軸受装置310のケース310aに接して蓋体309を押圧することにより、蓋体309が染色用容器Pの周縁に密着する。
図17に拡大図で示すように、押圧体305と軸受310bとの間にはワッシャ312が介在されており、押圧体305に矢示方向に作用する押圧力により、ワッシャ312、軸受310bおよびケース310aを介して蓋体309が押圧される。固定軸306の一端側には環状のパッキン313が外嵌されており、このパッキン313により固定軸306と蓋体309との間が液密にシールされる。
【0060】
押圧装置301の構成は、染色用容器Pを蓋体309により密閉して染色用容器Pおよび蓋体309を回転可能に挟持するものであればよく、例えば、コ字状フレームの対向面の一方に回転台300を回転可能に支持し、他方に駆動シリンダを介して押圧体305を進退可能に支持する構成であってもよい。染色用容器Pや蓋体309など染液と接触する部位は、ステンレス材など耐腐食性の材質からなることが好ましい。
【0061】
傾倒装置314は、支持フレーム315に取り付けられたエアシリンダなどの傾倒用シリンダ316を備えており、傾倒用シリンダ316のロッド316aの先端が取付フレーム32に固定されている。取付フレーム32は支持フレーム315に対して回転可能となるように回転軸311により支持されており、傾倒用シリンダ316のロッド316aを進退させることにより取付フレーム32が回動して、染色用容器Pの姿勢を
図16に示す起立状態と
図15に示す傾倒状態との間で変化させることができる。
【0062】
また、回転染色装置30は、回転台300に装着された染色用容器Pを回転させる回転駆動装置317を備えている。回転駆動装置317は、支持フレーム315に取り付けられた駆動プーリ318および従動プーリ319と、これら駆動プーリ318および従動プーリ319に巻き掛けられた無端状の駆動ベルト320とを備えている。駆動ベルト320には、支持フレーム315に取り付けられたテンションローラ321により張力が付与されている。駆動プーリ318は、駆動モータ322の回転軸に連結されており、駆動ベルト320を一方向に回転駆動する。従動プーリ319は、外周面に沿って溝部319aが形成されている。駆動ベルト320は、染色用容器Pをそれぞれ傾倒させることにより、従動プーリ319の溝部319aにおいて下面側が回転台300の外周縁と接するように配置されており、回転台300を摩擦によって回転駆動する。
【0063】
本実施例においては、3つの回転染色装置30における染色用容器Pの回転駆動を1つの回転駆動装置317により行うことで、構成のコンパクト化を図っているが、回転染色装置30毎に回転駆動装置317を設けてもよい。
【0064】
また、回転染色装置30は、傾倒状態の染色用容器Pの軸線に沿って延びるように回転台300の左右両側に配置された遠赤外線ヒータなどの加熱ヒータ34をそれぞれ備えている。加熱ヒータ34は、染色用容器Pを効率良く加熱できるように反射板34aで覆われており、ステー(図示せず)を介して支持フレーム315に取り付けられている。
【0065】
さらに、回転染色装置30は、
図15においてのみ図示するように、傾倒状態の染色用容器Pの側面に冷却水を供給する冷却水ノズル35を備えている。冷却水ノズル35は、不図示の冷却水タンクからポンプおよび流路内に配設された電磁弁の作動により染色用容器Pの側面に冷却水を供給することができるように、傾倒する染色用容器Pと干渉しない近傍位置で支持フレーム315に固定されている。冷却水ノズル35の先端には、冷却水ノズル35の軸線を挟んで両側から斜め下方に向けて冷却水を噴射する2つの冷却水噴出孔35a,35aが形成されており、染色用容器Pの軸線に沿って広範囲に冷却水を供給することができる。
【0066】
容器搬送装置31は、
図12および
図18に示すように、複数の垂直コラム323および複数の水平ビーム324からなる支持フレーム325と、支持フレーム325に左右方向(X方向)に移動可能に支持された水平移動体326と、水平移動体326に上下方向(Z方向)に昇降可能に設けられた昇降体327と、昇降体327に前後方向(Y方向)に進退可能に設けられたチャック部材328とを備えている。支持フレーム325は、左右方向(X方向)に延びる一対のガイドレール329,329が、垂直コラム323の下端に連結された水平ビーム324上に設けられている。
【0067】
水平移動体326は、上側ブロック330および下側ブロック331が上下方向(Z方向)に延びる一対のガイドロッド332,332により連結されて構成されており、下側ブロック331の両側下部が一対のガイドレール329,329に係合している。
【0068】
昇降体327は、
図19(a)に拡大図で示すように、左右(X方向)両側に配置された一対のブラケット333,333が、上下(Z方向)に配置された一対のステー334a,334a、および、前後(Y方向)に配置された一対の連結板334b,334bにより連結されて構成されており、一対のブラケット333,333の対向する内面側に、チャック部材328を案内するガイド部材335,335がそれぞれ設けられている。また、各ブラケット333,333の外面側には、ガイドロッド332,332が挿通される挿通ブロック336,336が固定されている。
【0069】
チャック部材328は、同じく
図19(a)に示すように、上下に配置された板状の一対のベース部材337,337の両側部に、2つの回転軸338,338がそれぞれ回転可能に介在されている。各回転軸338,338には、把持爪339,339の端部が結合されており、回転軸338,338の回動と共に把持爪339,339が回動して、把持爪339,339の開閉が行われる。また各回転軸338,338には、板状のレバー部材340,340の一端側が連結されており、レバー部材340,340の他端側同士は、レバー部材340,340に回転可能に設けられた突部340a,340a(
図19(b)参照)が、ブロック状の結合具341に形成された溝部341a,341aに係合している。溝部341a,341aは、レバー部材340,340の長手方向に沿って延びており、チャック部材328の開閉時に突部340a,340aが溝部341a,341aに沿って移動可能に形成されている。
【0070】
また、容器搬送装置31は、
図18に示すように、水平移動体326、昇降体327およびチャック部材328を、それぞれX方向、Z方向およびY方向に駆動する水平駆動装置342、昇降駆動装置343および進退駆動装置344を備えており、さらに、チャック部材328を開閉するチャック開閉装置(図示せず)を備えている。
【0071】
水平駆動装置342は、同じ高さ位置に配置されるタイミングプーリ342a,342bを対として備えており、この一対のタイミングプーリ342a,342bは、支持フレーム325の上部および下部の水平ビーム324にそれぞれ取り付けられている。一対のタイミングプーリ342a,342b間には、無端状のタイミングベルト342cが左右方向(X方向)に沿って懸架されており、上下のタイミングベルト342c,342cには、水平移動体326の上側ブロック330および下側ブロック331がそれぞれ固定されている。また、上下にそれぞれ配置された一対のタイミングプーリの一方同士342a,342aは、連結軸342dによって一体的に回転するように連結されており、上側のタイミングプーリ342aは、サーボモータ342eの出力軸に設けられたタイミングプーリ342fとの間に、別のタイミングベルト342gが巻き掛けられている。水平駆動装置342は、このような構成を備えることにより、サーボモータ342eの作動によって上下のタイミングベルト342c,342cが同期して駆動され、水平移動体326が一対のガイドレール329,329に沿ってX方向に移動する。
【0072】
昇降駆動装置343は、水平移動体326の上側ブロック330および下側ブロック331に、それぞれタイミングプーリ343a,343bを対として備えており、この一対のタイミングプーリ343a,343bは、水平移動体326の左右方向(X方向)に沿った両側にそれぞれ設けられている。一対のタイミングプーリ343a,343b間には、無端状のタイミングベルト343cが上下方向(Z方向)に沿って懸架されており、左右のタイミングベルト343c,343cには、昇降体327の両側のブラケット333,333がそれぞれ固定されている(
図19参照)。また、一対のタイミングプーリの上側同士343a,343aは、連結軸343dによって一体的に回転するように連結されており、一方のタイミングプーリ343aは、サーボモータ343eの出力軸に設けられたタイミングプーリ343fとの間に、別のタイミングベルト343gが巻き掛けられている。昇降駆動装置343は、このような構成を備えることにより、サーボモータ343eの作動によって左右のタイミングベルト343c,343cが同期して駆動され、昇降体327が一対のガイドロッド332,332に沿ってZ方向に移動する。
【0073】
進退駆動装置344は、
図20に斜め下方から見た図で示すように、一対のブラケット333,333間の前後に配置された一対の連結板334b,334bの間に固定された、ロッドレスシリンダから構成されている。進退駆動装置344の内部には、ピストンおよびマグネット(図示せず)が収容されており、両端のエア導入部から圧縮空気を選択的に導入することにより、ピストンおよびマグネットが前後(Y方向)に移動し、チャック部材328の後方側に備えるマグネットを吸着してチャック部材328を連動させることができる。進退駆動装置344は、このような構成により、チャック部材328を前後方向に駆動することができる。
【0074】
チャック開閉装置は、
図19および
図20では図示を省略したエアシリンダにより構成されており、このエアシリンダのロッドを結合具341に結合させることにより、結合具341を前後(Y方向)に進退させることができる。チャック開閉装置は、チャック部材328を
図19(a)に示す状態から、
図19(b)に示すように前後方向(Y方向)に進出させた後、結合具341を更に前方に駆動することで、把持爪339,339を開放し、チャック部材328に把持されていた染色用容器Pを回転染色装置30に載置することができる。また、回転染色装置30における染色終了後は、これと逆の動作を行うことで、回転染色装置30上の染色用容器Pを再び把持することができる。
【0075】
このように、水平駆動装置342、昇降駆動装置343および進退駆動装置344は、互いに直交する3軸(X軸、Z軸及びY軸)方向に沿ってチャック部材328を駆動する3軸駆動手段として機能する。これら水平駆動装置342、昇降駆動装置343および進退駆動装置344は、チャック開閉装置や回転染色装置30とともに制御部7によって作動が制御される。
【0076】
また、染色装置3は、
図12に示すように、容器搬送装置31による染色用容器Pの搬送が可能な領域内に、搬入セクションS1、中間セクションS2および搬出セクションS3をそれぞれ備えている。搬入セクションS1および中間セクションS2は、上下方向に隣接して配置されており、この搬入セクションS1および中間セクションS2には、染色用容器Pが載置される重量計345a,345bがそれぞれ設けられている。重量計345a,345bは、被染物Mおよび染液を含む染色用容器Pの全体重量を検出して、検出量に応じた信号を出力可能であればよく、例えば、圧電素子や、ひずみゲージ式、静電容量式の重量センサなどを使用することができる。
【0077】
本実施例では、上述した染液調合装置2の載置台28(
図6に示す)が搬入セクションS1を兼ねており、染色用容器Pは、載置台28上にて調合用容器21から調合された染液が供給されると、容器搬送装置31によって、載置台28から回転染色装置30まで順次搬送されるようになっている。なお、必ずしもこのような構成をとる必要はなく、載置台28上にて調合染液が供給された染色用容器Pを、搬送手段Tによって載置台28から染色装置3の搬入セクションS1の近傍位置まで順次搬送した後、プッシャ(図示せず)などにより搬入セクションS1の重量計345a上に載置するような構成にしてもよい。
【0078】
一方、搬出セクションS3には、搬送手段Tが連設されており、被染物Mの染色が終了した染色用容器Pは、搬送手段Tにより、被染物Mに対して中和や洗浄などの後処理を行う後処理ステーションDに向けて搬送される。
【0079】
また、染色装置3は、芒硝やソーダ灰などの染色助剤を添加する添加装置をさらに備えており、添加装置の供給ノズル346が中間セクションS2の上方に配置されて、染色用容器Pの上部の開口から染色助剤を添加することができるように構成されている。
【0080】
次に、上記構成を備える染色装置3の作動を説明する。上記染液調合処理ステーションBにおいて、被染物Mに適した染液や助剤が注入された染色用容器Pは、重量計345a(本実施例では、載置台28に設けられた重量計28a)により、被染物Mおよび染液を含む染色用容器Pの全体重量が適正か否かが判別される。
【0081】
制御部7は、重量計345a(重量計28a)の検出信号が入力されると、予め設定された重量値との比較により染液などが適量収容されているか否かを判定し、判定結果が不合格の場合には、アラーム音などを出力して動作を一時停止する。判定結果が合格の場合、制御部7は、水平駆動装置342および昇降駆動装置343を作動させ、チャック部材328を搬入セクションS1(本実施例では、載置台28)に移動させる。そして、進退駆動装置344の作動によりチャック部材328で染色用容器Pを把持した後、停止状態にある回転染色装置30を検出していずれかを選択し、その回転染色装置30に搬送する。
【0082】
水平駆動装置342および昇降駆動装置343の作動による水平移動体326および昇降体327の移動速度は、搬入セクションS1のX−Z面における座標位置と、目的地となる回転染色装置3のX−Z面における座標位置とに基づいて、それぞれ個別に設定することができ、水平移動体326および昇降体327を同時に作動させることで、チャック部材328を回転染色装置30まで直線的に移動させることができる。
【0083】
回転染色装置30は、非使用状態においては、押圧装置301および傾倒装置314の作動により、回転台300が水平な状態で、回転台300と蓋体309との間隔が予め拡げられている。染色用容器Pを回転染色装置30まで搬送したチャック部材328は、進退駆動装置344の作動によって、染色用容器Pを回転台300と蓋体309との間に挿入した後、前記チャック開閉装置の作動により把持爪339,339の先端部を互いに拡げることで、染色用容器Pを回転台300上に載置する。
【0084】
回転染色装置30は、回転台300に染色用容器Pが搭載されたことを、図示しないセンサなどにより検知すると、押圧装置301を作動させて、蓋体309を染色用容器Pに対して上方から押圧する。これにより染色用容器Pは蓋体309により密閉され、染色用容器Pおよび蓋体309は、回転台300と押圧体305との間に回転可能に挟持される。この後、傾倒装置314を作動させて、
図15に示すように染色用容器Pを傾倒させる。本実施例においては、染色用容器Pを軸線が略水平となるように傾倒させているが、斜め上方または斜め下方に傾斜するように染色用容器Pを傾倒させてもよい。染色用容器Pの傾倒状態では、圧力開放管307が染色用容器P内で上方に延びており、圧力開放管307の開口端が染液の液面よりも上方に露出して、染色用容器Pの内部空間が染色用容器Pの外部と連通されている。一方、熱電対308は染色用容器P内で下方に延びており、染液の温度を測定する。
【0085】
染色用容器Pが傾倒状態になると、加熱ヒータ34により染色用容器P内が加熱されるとともに、回転台300の外周縁が駆動ベルト320に当接し、回転台300が回転を開始する。このように、回転駆動装置317は、駆動ベルト320により染色用容器Pの傾倒動作と連動して各染色用容器Pを自動的に回転駆動することができるとともに、複数の回転台300を個別に回転駆動することができる。
【0086】
こうして、染色用容器Pが蓋体309とともに回転して、
図15に破線で示すように、収容された被染物Mが染液Lにより染色される。染液Lの貯留量は、通常は傾倒状態の染色用容器Pの軸線よりも液面が若干下方に位置するように設定される。圧力開放管307は、染色用容器Pの回転中も常に上方を向いており、染色用容器Pの内部温度の上昇に伴う内圧上昇を開放する。
【0087】
染液の温度は、熱電対308の測定に基づき加熱装置の出力を制御することにより、予め設定された温度制御パターンに沿って制御することができる。本実施例においては、加熱ヒータ34の他に、染色用容器Pの外表面に冷却水を散布する冷却装置を備えているため、染色中に染液の温度低下が必要な場合に設定温度に迅速に移行することができ、PID制御など公知の制御手法を用いて所望の温度制御パターンに沿った染色が可能である。例えば、緩やかな温度低下が必要な場合は加熱ヒータ34の出力制御で対応可能である一方、温度低下を急激に行う場合には、加熱ヒータ34の出力抑制とともに、冷却水ノズル35から冷却水を供給する。冷却水の流量は本実施例では一定としているが、目標温度に応じて流量制御するようにしてもよい。
【0088】
こうして、所定時間の経過により被染物Mの染色が終了した後は、傾倒装置314を再び作動させて、染色用容器Pを
図16に示す起立状態に戻した後、押圧装置301を作動させて蓋体309を上昇させ、染色用容器Pの密閉状態を開放する。制御部7は、このような作動に伴い、水平駆動装置342および昇降駆動装置343の作動によりチャック部材328を回転染色装置3まで移動させ、進退駆動装置344および前記チャック開閉装置の作動により染色用容器Pを再び把持した後、搬出セクションS3まで移動させる。そして、搬出セクションS3において搬送手段T上に染色用容器Pを載置し、中和や洗浄などの後処理を行う後処理ステーションDに向けて染色用容器Pを搬送する。
【0089】
回転染色装置30は、染色用容器Pが取り出されたことを、図示しないセンサなどにより検出すると、非使用状態であることを示す信号を制御部7に出力し、新たな染色用容器Pを受け入れ可能な状態になる。
【0090】
上記した構成の染色装置3によれば、被染物Mを染色可能な複数の回転染色装置30に対して、容器搬送装置31が、回転台300と蓋体309との間に染色用容器Pを水平方向に挿入するように構成されているので、各回転染色装置30は、受け入れた染色用容器P内の被染物Mの染色を迅速に開始することができ、上記染液調合処理ステーションBから搬送手段Tにより順次搬送される染色用容器Pに対して、被染物Mの染色を迅速に効率良く行うことが可能である。
【0091】
また、染色用容器Pに収容された被染物Mの生地の種類や被染物Mの枚数、あるいは染液の種類などに応じて、制御部7からの指令によって、回転染色装置30毎に染色温度、染色時間などを任意に変えることで、多種多様な染色条件で染色することができるので、多品種少量(小ロット)型の染色にフレキシブルに対応することができる。さらに、各回転染色装置30における染色時間が異なることで、ある回転染色装置30に投入した染色用容器Pより後に他の回転染色装置30に投入した染色用容器Pの方が、先に染色処理が終わる場合がある。この場合には、後から回転染色装置30に投入した染色用容器Pを先に次工程の後処理ステーションDに搬送する必要があるが、その場合には、制御部7が、回転染色装置30への染色用容器Pの投入順序とは無関係に、いずれかの回転染色装置30で染色が終了し次第、染色用容器Pを順次搬出セクションS3まで移動させて後処理ステーションDに向けて搬送するとともに、新たな染色用容器Pを投入して次の染色を開始するようにすることで、生産リードタイムの短縮を図ることが可能である。
【0092】
また、本実施例のように、チャック部材328を、水平駆動装置342、昇降駆動装置343および進退駆動装置344により3軸駆動できるように構成することで、多数の回転染色装置30が配置される場合においても、各回転染色装置30に対する染色用容器Pの搬送を迅速・容易に行うことが可能である。
【0093】
なお、上記した説明では、搬入セクションS1に搬入された染色用容器Pを、容器搬送装置31により搬送していずれかの回転染色装置30に投入し、被染物Mの染色後に、容器搬送装置31により搬出セクションS3まで搬送するようにしているが、例えば、綿やキュプラなどのセルロース繊維からなる被染物Mに濃色を染色する場合には、回転染色装置30における被染物Mの染色後に、容器搬送装置31により中間セクションS2に搬送し、一時的に仮置きするようにしてもよい。中間セクションS2においては、染色用容器Pの上方に配置された添加装置の供給ノズル346からソーダ灰などを添加することができ、所定量が添加されたことを重量計345bにより検出すると、制御部7は、停止状態にある回転染色装置30に染色用容器Pを再度搬送し、所定時間の染色処理を続行した後、容器搬送装置31により染色用容器Pを搬出セクションS3まで搬送する。このように、本実施例の染色装置3は、被染物Mの染色途中に染色助剤の添加が必要になる場合においても、迅速な対応が可能である。
【0094】
また、回転染色装置30の構成は、本実施例のものに限定されず、開口が蓋体により予め密閉された容器内の被染物Mを染色するものであってもよい。例えば
図21に示すように、回転染色装置36は、開口が蓋体347により閉じられた染色用容器Pを軸線が水平な状態で搭載する回転自在な複数の支持ローラ348と、染色用容器Pの上方において上下動自在に支持されモータ(図示せず)により回転駆動される駆動ローラ349と、染色用容器Pの天面および底面にそれぞれ当接して染色用容器Pを回転可能に挟持する一対のストッパ350,351とを備え、容器2の天面に当接する一方のストッパ350が染色用容器Pの軸線に沿って進退可能な構成にすることができる。
【0095】
この回転染色装置36は、被染物Mおよび染液Lが収容された染色用容器Pを予め蓋体347により密閉して容器搬送装置(図示せず)により搬送し、支持ローラ348上に搭載すると、これをセンサ(図示せず)により検知して、一方のストッパ350を進出させて他方のストッパ351との間に染色用容器Pを挟持するとともに、駆動ローラ349を降下させて染色用容器Pの胴部に当接させ、回転駆動力を伝達する。こうして、染色用容器Pが蓋体347により密閉された状態で回転し、被染物Mの染色が行われる。
【0096】
図1に戻って、次工程の後処理ステーションDは、上記染色処理ステーションCにて染色処理が施された染色用容器Pを搬送手段Tから受け取り、染色後の被染物に対して、中和処理、洗浄処理、フィックス処理、柔軟処理などの各処理を行う。この後処理ステーションDにおける各処理工程D1〜D4には、いずれも、水洗いや湯洗いなどの前処理を行うための前処理装置4a〜4dと、各種処理液による処理を行うための後処理装置6a〜6dとが設けられており、各処理工程D1〜D4は搬送手段Tにより連結されている。
【0097】
なお、後処理ステーションDの各処理工程で用いられる水、湯、および各種処理液は、それぞれタンク(図示せず)に所定量が蓄えられており、ポンプ(図示せず)により給液ノズル415a〜415d,416a〜416d(
図28に示す)を介して各処理工程の染色用容器Pに供給されるようになっている。また、ポンプと給液ノズルとの間の管路には、流量計(図示せず)が設置されており、制御部7により流量が常時、監視され、制御部7からの指令信号により必要量が供給されるようになっている。
【0098】
搬送手段Tにより上記染色処理ステーションCから搬送された染色用容器Pには、まず、中和処理が施される。この中和処理工程D1では、前処理装置4aにより、染色された被染物に対して水洗いを行った後、後処理装置6aにより、被染物に付着した染液のアルカリを薄い酢酸で中和する。
【0099】
水洗いを行う前処理装置4aは、
図22〜
図26に示すように、図外の搬送手段Tにより搬送される染色用容器Pを受け取って反転可能に支持する容器支持装置40と、容器支持装置40の下方に設けられ、染色用容器Pから排出される廃液(染液、および、後処理に用いられた水(湯)や各種処理液)を受ける水桶41と、容器支持装置40および水桶41を支持するとともに、枠体44内に水平方向に回転可能に設けられた回転枠42と、容器支持装置40に支持された染色用容器Pを搬送手段Tに向けて押し出す押圧装置43とを備えている。
【0100】
回転枠42は、モータ45を駆動源とする駆動装置46によって、回転可能に支持されている。モータ45は、枠体44上に配設されている。水桶41は、上部が開口した箱状のもので、詳細は後述するが、
図23に示すように、倒立状態となった染色用容器Pの直下に位置するように配置されており、倒立状態の染色用容器Pから落下する廃液を受け取る。この水桶41は、回転枠42の側板42A,42Bおよび底板42Cにより支持されており、
図24に示すように、回転枠42とともに水平方向に回転可能となっている。
【0101】
容器支持装置40は、一端部に駆動ギア401が装着された駆動軸400と、駆動軸400に固定された載置台402と、載置台402の上方に載置台402に平行に設けられた押え板403と、押え板403と載置台402とを連結する一対の連結棒404,404とを備えている。駆動軸400は、その両端が、回転枠42の側板42A,42Bに固定された左右一対のブラケット405A,405Bにより回転可能に支持されており、ブラケット405Aから突き出る駆動軸400の一方の端部に駆動ギア401が取り付けられている。
【0102】
載置台402は、左右一対の側壁板402A,402Bと、側壁板402A,402Bの間に並設された複数の転動ローラ403Cとからなり、転動ローラ403Cが染色用容器Pの底面と接触して転動することにより、染色用容器Pが搬送手段Tから載置台402上に載置される。なお、染色用容器Pが載置台402上に載置されたとき、2本の連結棒404が染色用容器Pの側面を受け止めることで、染色用容器Pが載置台402上から脱落するのが防止される。
【0103】
押え板403は、2本の連結棒404,404の上端に取り付けられており、載置台402と押え板403とで染色用容器Pを上下から挟持することが可能となっている。押え板403の板面には、複数の通水孔403aが全面にわたって設けられており、後述するように、載置台402と押え板403とで挟持された染色用容器Pが上下反転して倒立状態となったとき、染色用容器P内に収容された処理液だけを通水孔403aを介して水桶41に排出することが可能となっている。
【0104】
駆動ギア401は、ブラケット405Aに軸406を介して回転可能に取り付けられた従動ギア407と噛み合っており、従動ギア407が
図22に示す矢印X方向に回転すると、駆動ギア401を介して駆動軸400が
図22に示す矢印Y方向に回転して、押え板403と載置台402とによって挟持された染色用容器Pが、
図22に示す状態から、
図23に示すように、上下反転するように構成されている。
【0105】
軸406には、さらにレバー408の一端部が固定されており、レバー408は、従動ギア407と一体に回転する。レバー408の他端部には、エアシリンダなどの容器反転用シリンダ409のロッド409aが揺動自由に取り付けられている。容器反転用シリンダ409は、回転枠42の一方の側壁板42Aに揺動自由に取り付けられており、ロッド409aの進退によって、レバー408が軸406を中心に回転することで、駆動軸400を回転させることができる。
【0106】
押圧装置43は、両端が回転枠42の側壁板42A,42Bに回転可能に支持された回転軸410と、一端部が回転軸410に連結されるとともに他端部に一対の押圧ローラ411a,411bを有する側面視L字型の押圧部材412と、回転枠42の他方の側壁板42Bに揺動自在に支持された容器押圧用シリンダ413とを備えている。回転軸410には、レバー414の一端部が固定されており、容器押圧用シリンダ413のロッド413aの先端がレバー414の他端部に揺動自在に取り付けられている。
図25に示す状態から、ロッド413aが後退することにより、
図26に示すように、押圧部材412が回転枠42の側壁板間42A,42Bを通過して押圧ローラ411a,411bが染色用容器Pの側面を押圧し、染色用容器Pを搬送手段Tに押し出す。
【0107】
次に、上記構成を備える前処理装置4aの作動について、
図27および
図28を適宜参照しながら説明する。
図27(a)に示すように、上記染色処理ステーションCにて染色処理が行われた後の染色用容器Pは、搬送手段Tにより前処理装置4aまで搬送され、容器支持装置40の押え板403および載置台402により上下から挟持される(
図22参照)。次に、
図27(b)に示すように、容器支持装置40を駆動軸400を中心に回転させることで、染色用容器Pを上下反転させて、染色用容器P内に収容された染液だけを水桶41に排出する(
図23参照)。
【0108】
染液の排出後は、
図27(c)に示すように、染色用容器Pが倒立した状態で、駆動装置46の作動によって、回転枠42を回転させることにより、容器保持装置40および水桶41を旋回させて、染色用容器Pを、次に染色用容器Pを搬送すべき搬送手段Tの方に向ける(
図24参照)。そして、
図28(a)に示すように、容器支持装置40を駆動軸400を中心に上記とは逆の方向に回転させることで、染色用容器Pを立ち上がらせて起立状態にする(
図25参照)。そして、染色用容器Pの内部に水を供給可能な給水ノズル415aにより、染色用容器P内に上方から水を噴射した後、容器支持装置40を回転させて染色用容器Pを上下反転させることで、染色用容器P内に収容された水だけを水桶41に排出する。
【0109】
水の排出後は、容器支持装置40を上記とは逆の方向に回転させて、染色用容器Pを再び上部が開口した起立状態とする。この水の供給・排出を数回繰り返すことにより、被染物Mに対して水洗いを行う。水洗い終了後は、
図28(b)に示すように、染色用容器Pの内部に酢酸を供給可能な給液ノズル416aにより、染色用容器P内に上方から酢酸を供給した後、
図28(c)に示すように、押圧装置43の押圧部材412の作動によって、染色用容器Pを搬送手段T上に押し出す(
図26参照)。これにより、染色用容器Pは、搬送手段Tによって、次の酢酸による中和処理を行うための後処理装置6aまで搬送される。
【0110】
酢酸が収容された染色用容器Pは、搬送手段Tによって搬送され、図示しない位置検出センサの検出により、後処理装置6aの直下位置で停止する。後処理装置6aは、
図29に示すように、中空筒状の外筒部材60、外筒部材60の内部に軸方向に往復動可能かつ回動可能に設けられた丸軸状の軸部材61、外筒部材60の一端側に設けられたフランジ部材62、軸部材61の一端側に設けられた染色用容器Pを把持可能な複数の把持部材63、左右一対のスライダロッド64,64などで構成されている。
【0111】
外筒部材60は、両端が開放された円筒体であり、軸方向に往復動可能かつ回動可能に設けられている。この外筒部材60は、モータ600を駆動源とする駆動機構65により回転駆動される。駆動機構65は、駆動源となるモータ600と、モータ600の回転軸に連結された駆動プーリ601と、外筒部材60に取り付けられた従動プーリ602と、これらプーリ間に掛け渡された伝動ベルト603とにより構成される。モータ600の作動によって駆動プーリ601が回転し、その回転が伝動ベルト603を介して従動プーリ602に伝えられることにより、外筒部材60が回転する。
【0112】
外筒部材60の一端部には、固定部材604を介してフランジ部材62が固定されており、フランジ部材62は、外筒部材60と一体に往復動かつ回動するように設けられている。このフランジ部材62には、側面視L字型の把持部材63がそれぞれ自在継手605を介して複数連結されている。各把持部材63は、直角部を支点として、一端部および他端部が回動する。各把持部材63の一端部には、把手爪具606が取り付けられている一方、各把持部材63の他端部は、軸部材61の一端部に揺動可能に取り付けられている。軸部材61が外筒部材60の内部で軸方向に往復動することにより、各把持部材63が開閉動作し、一端部の把手爪具606で染色用容器Pを把持することが可能となっている。また、フランジ部材62が外筒部材60と一体に回動することにより、各把持部材63および軸部材61が回動して染色用容器Pが回動可能となっている。
【0113】
外筒部材60は、その一端側が支持枠材66に固着されたスライダ607に往復動自在に嵌挿支持されている。外筒部材60を挟んだ左右の対向位置には、2本のスライドロッド64,64が外筒部材60と平行に設けられている。各スライダロッド64は、その一端部が金属板608により連結されているとともに、他端部がスライダ607により連結されている。支持枠材66の2枚の底板608,608には、内部に図示しないボールベアリングを備えたスライダブロック609が2つずつ設けられており、各スライダロッド64は、各スライダブロック609に往復動自在に嵌挿支持されることで、外筒部材60に対して精度良く平行状態を保っている。
【0114】
外筒部材60は、連結部材610により、各スライダロッド64と連結されて一体化されており、各スライダロッド64によって案内(ガイド)された状態で往復動作する。連結部材610には、この連結部材610を往復動させるアクチュエータとしての第1シリンダ機構611が連結されており、この第1シリンダ機構611の作動により、外筒部材60が軸方向に往復動する。
【0115】
軸部材61は、外筒部材60の両端から突出しており、その一端部には各把持部材63が取り付けられている一方、他端部には、この軸部材61を往復動させるアクチュエータとしての第2シリンダ機構(図示せず)が連結されている。
【0116】
支持枠材66の各側板612,612には、その上部位置および下部位置に、上軸613および下軸614がそれぞれ回動自在に支持されている。各軸613,614の両端は、各側板612から突き出て、それぞれ左右一対の上レバー部材615および下レバー部材616に回動可能に取り付けられている。上レバー部材615は、両端が枠体67に回転可能に支持された回転軸617に、その基端部が連結されている。一方、下レバー部材616は、基端部が軸受け(図示せず)を介して枠体67に回動可能に取り付けられている。
【0117】
下軸614には、エアシリンダなどの姿勢変化用シリンダ68のロッド68aが揺動自由に2つ取り付けられている。姿勢変化用シリンダ68は、枠体67に揺動自由に取り付けられており、ロッド68aの進退によって、支持枠材66の側板612が上軸613を中心に回転することで、後処理装置6aの姿勢を変化させて、染色用容器Pが斜め上方に傾斜するように染色用容器Pを傾倒させることが可能となっている。
【0118】
次に、上記構成を備える後処理装置6aの作動について説明する。なお、後処理装置6aは、平時は、姿勢変化用シリンダ68のロッド68aが後退していて、2本のスライダロッド64および外筒部材60が搬送手段Tの搬送面に対して垂直な姿勢に保持されている。水洗いが行われた後、酢酸が収容された染色用容器Pが搬送手段Tにより後処理装置6aまで搬送されると、第1のシリンダ機構611の作動により、外筒部材60を各スライダロッド64に沿って下降させることで、各把持部材63を染色用容器Pの上縁部近傍に位置させる。
【0119】
そして、第2のシリンダ機構(図示せず)の作動により、軸部材61を外筒部材60に対して上昇させることで、各把持部材63を閉動作させて、各把手爪具606により染色用容器Pの上縁部を掴む。その後、各把手爪具606により染色用容器Pを把持した状態で、第1のシリンダ機構611を作動させて、外筒部材60を各スライダロッド64に沿って上昇させることで、染色用容器Pを搬送手段Tから持ち上げる。
【0120】
次に、各姿勢変化用シリンダ68のロッド68aを伸長させて、
図29に示すように、染色用容器Pを傾倒させる。そして、駆動機構65の作動により、外筒部材60を回転させて、染色用容器Pを回転させることで、収容された被染物が酢酸により中和処理される。なお、この際、染色用容器Pを、所望の温度に調温された水槽内で回転させたり、外表面に調温された水を散布しながら回転させたりすることで、所望の温度制御が可能となる。
【0121】
所定時間の経過により被染物Mの中和処理が終了した後は、染色用容器Pの回転を止めた後、各姿勢変化用シリンダ68のロッド68aを後退させて、染色用容器Pを起立状態に戻した後、第1のシリンダ機構611を作動させて、外筒部材60を各スライダロッド64に沿って下降させることで、染色用容器Pを搬送手段Tの搬送面上に載置する。そして、第2のシリンダ機構(図示せず)を作動させて、軸部材61を外筒部材60に対して下降させることで、各把持部材63を開動作させて、各把手爪具606による染色用容器Pの把持を解除する。そして、搬送手段Tを作動させて、次の洗浄処理を行う洗浄処理工程D2に向けて染色用容器Pを搬送することで、新たな染色用容器Pを受け入れ可能な状態になる。
【0122】
なお、本実施例では、中和を行う後処理装置6aとして、
図29に示す構成のものを採用しているが、必ずしもこれに限られるものではなく、染色用容器Pを回転させることで染色用容器P内の被染物を中和するものであれば、上述した染色処理ステーションCに設けられている回転染色装置30と同様の構成のものなど、如何なる構成のものも採用することができる。
【0123】
図1に戻って、中和処理工程D1により中和処理が施された染色用容器Pには、次に、洗浄処理が施される。この洗浄処理工程D2では、前処理装置4bにより、被染物に対して湯洗いを行った後、後処理装置6bにより、被染物に付着した余分な染液を洗浄液によって洗い落とす。
【0124】
湯洗いを行う前処理装置4bは、上記した中和処理工程における前処理装置4a(
図22〜
図26に示す)と同様の構成のものであるので、ここでは対応する構成について同一の符号を用いることで説明を省略する。
【0125】
中和処理が行われた後の染色用容器Pが、搬送手段Tにより、容器支持装置40に搬送されると(
図22参照)、容器支持装置40は、容器反転用シリンダ409の作動により、染色用容器Pを上下反転させて、染色用容器P内に収容された酢酸だけを水桶41に排出する(
図23参照)。そして、駆動装置46の作動により、回転枠42を回転させることにより、容器保持装置40および水桶41を旋回させる(
図24参照)。その後、容器支持装置40により、染色用容器Pを立ち上がらせて再び起立状態にし(
図25参照)、給水ノズル415b(
図28(a)に示す)から70℃程度の湯を染色用容器Pの内部に供給する。そして、再び、染色用容器Pを上下反転させることで、染色用容器P内に収容された湯だけを水桶41に排出し、湯の排出後は、染色用容器Pを再び起立状態とする。この湯の供給・排出を数回繰り返すことにより、被染物に対して湯洗いを行う。
【0126】
湯洗い終了後は、染色用容器Pの内部に洗浄液を供給可能な給液ノズル416b(
図28(b)に示す)により、染色用容器P内に上方から洗浄液を供給した後、押圧装置43の作動によって、染色用容器Pを搬送手段T上に押し出す(
図26参照)。これにより、洗浄液が収容された染色用容器Pは、搬送手段Tにより、次の洗浄液による洗浄を行うための後処理装置6bまで搬送される。
【0127】
洗浄を行う後処理装置6bは、本実施例では、上述した染色処理ステーションCに設けられている回転染色装置30と同様の構成のものが採用されている。この後処理装置6bの細部の構成は、
図13〜
図17の回転染色装置30と同じであるため、ここでは対応する構成について同一の符号を用いることで説明を省略する。
【0128】
搬送手段Tによって搬送される染色用容器Pが、図示しない位置検出センサの検出により所定の位置で停止すると、ロボットハンド(図示せず)により回転台300の上面に搭載される(
図16参照)。なお、回転台300と蓋体309との間は、押圧装置301および傾倒装置314の作動により、その間隔が予め拡げられている。また、駆動装置317の作動により、駆動ベルト320は回転している。
【0129】
回転台300に染色用容器Pが搭載されると、押圧装置301の作動により、蓋体309により染色用容器Pを密閉して、染色用容器Pおよび蓋体309を、回転台300と押圧体305とで回転可能に挟持する。その後、傾倒装置314の作動により、染色用容器Pを傾倒させると同時に、駆動ベルト320の作動により、回転台300を回転させて、染色用容器Pを回転させつつ、被染物Mを洗浄液により洗浄する(
図15参照)。なお、洗浄中の洗浄液の温度は、熱電対308の測定に基づき加熱ヒータ34の出力を制御することにより、制御することができる。
【0130】
所定時間の経過により被染物Mの洗浄処理が終了した後は、傾倒装置314を再び作動させて、染色用容器Pを起立状態に戻した後、押圧装置301の作動により蓋体309を上昇させて、染色用容器Pの密閉状態を開放する(
図16参照)。そして、回転台300上の染色用容器Pをロボットハンド(図示せず)などにより搬送手段T上に再び載置する。これにより、染色用容器Pは、搬送手段Tによって、次のフィックス処理工程に搬送される。
【0131】
なお、本実施例では、洗浄を行う後処理装置6bとして、上述した染色処理ステーションCに設けられている回転染色装置30と同様の構成のものを採用しているが、必ずしもこれに限られるものではなく、染色用容器Pを回転させることで染色用容器P内の被染物を洗浄するものであれば、上述した
図29に示す構成のものなど、如何なる構成のものも採用することができる。
【0132】
図1に戻って、洗浄処理工程D2により中和処理が施された染色用容器Pには、次に、フィックス処理が施される。このフィックス処理工程D3では、被染物に対して、前処理装置4cにより、湯洗いを行った後、後処理装置6cにより、タンニン酸系化合物、芳香族スルホン酸縮合物、多価フェノ−ル誘導体などのフィックス剤を含むフィックス処理液中に染色後の被染物を浸漬させることで、被染物に対する染液の固着をはかる。
【0133】
湯洗いを行う前処理装置4cおよびフィックス処理を行う後処理装置6cは、本実施例では、上述した中和処理工程における前処理装置4a(
図22〜
図26に示す)および後処理装置6a(
図29に示す)と同様の構成のものであるので、ここでは対応する構成について同一の符号を用いることで説明を省略する。
【0134】
洗浄処理が行われた後の染色用容器Pが、搬送手段Tにより、容器支持装置40に搬送されると(
図22参照)、容器支持装置40は、容器反転用シリンダ409の作動により、染色用容器Pを上下反転させて、染色用容器P内に収容された洗浄液だけを水桶41に排出する(
図23参照)。そして、駆動装置46の作動により、回転枠42を回転させることにより、容器保持装置40および水桶41を旋回させる(
図24参照)。その後、容器支持装置40により、染色用容器Pを立ち上がらせて再び起立状態にし(
図25参照)、給水ノズル415c(
図28(a)に示す)から70℃程度の湯を染色用容器Pの内部に供給する。そして、再び、染色用容器Pを上下反転させることで、染色用容器P内に収容された湯だけを水桶41に排出し、湯の排出後は、染色用容器Pを再び起立状態とする。この湯の供給・排出を数回繰り返すことにより、被染物に対して湯洗いを行う。
【0135】
湯洗い終了後は、染色用容器Pの内部に洗浄液を供給可能な給液ノズル416c(
図28(b)に示す)により、染色用容器P内に上方からフィックス処理液を供給した後、押圧装置43の作動によって、染色用容器Pを搬送手段T上に押し出す(
図26参照)。これにより、フィックス処理液が収容された染色用容器Pは、搬送手段Tにより、次のフィックス処理液によるフィックス処理を行うための後処理装置6cまで搬送される。
【0136】
搬送手段Tによって搬送された染色用容器Pは、図示しない位置検出センサの検出により、後処理装置6cの直下位置で停止する。後処理装置6cまで搬送されると、第1のシリンダ機構611の作動により、各把持部材63を染色用容器Pの上縁部近傍に位置させた後、第2のシリンダ機構(図示せず)の作動により、各把持部材63を閉動作させることで、各把手爪具606により染色用容器Pの上縁部を掴む。そして、各把手爪具606により染色用容器Pを把持した状態で、第1のシリンダ機構611を作動させることで、染色用容器Pを搬送手段Tから持ち上げる。
【0137】
次に、各姿勢変化用シリンダ68のロッド68aを伸長させて、染色用容器Pを傾倒させる(
図29参照)。そして、駆動機構65の作動により、外筒部材60を回転させて、染色用容器Pを回転させることで、収容された被染物をフィックス処理液により処理する。なお、この際、染色用容器Pを、所望の温度に調温された水槽内で回転させたり、外表面に調温された水を散布しながら回転させたりすることで、所望の温度制御が可能である。
【0138】
所定時間の経過により被染物のフィックス処理が終了した後は、染色用容器Pの回転を止めた後、各姿勢変化用シリンダ68のロッド68aを後退させて、染色用容器Pを起立状態に戻した後、第1のシリンダ機構611を作動させて、染色用容器Pを搬送手段Tの搬送面上に載置する。そして、第2のシリンダ機構(図示せず)を作動させて、各把持部材63を開動作させることで、各把手爪具606による染色用容器Pの把持を解除する。そして、搬送手段Tを作動させて、次の柔軟処理を行う柔軟処理工程D4に向けて染色用容器Pを搬送することで、新たな染色用容器Pを受け入れ可能な状態になる。
【0139】
なお、本実施例では、このフィックス処理液によるフィックス処理工程D3を搬送経路の途中に連続して設け、洗浄液による洗浄処理後、染色用容器Pに対してフィックス処理を2度行った後、染色用容器Pを柔軟処理工程D4に搬送するように構成しているが、必ずしもこれに限られるものではなく、搬送経路の途中にフィックス処理工程D3を1回だけ、あるいは、2回以上設けるようにしても構わない。
【0140】
また、本実施例では、フィックス処理を行う後処理装置6cとして、
図29に示す構成のものを採用しているが、必ずしもこれに限られるものではなく、染色用容器Pを回転させることで染色用容器P内の被染物をフィックス処理するものであれば、上述した染色処理ステーションCに設けられている回転染色装置30と同様の構成のものなど、如何なる構成のものも採用することができる。
【0141】
図1に戻って、フィックス処理工程D3によりフィックス処理が施された染色用容器Pには、次に、柔軟処理が施される。この柔軟処理工程D4では、被染物に対して、前処理装置4dにより、湯洗いを行った後、後処理装置6dにより、柔軟剤を含む柔軟処理液中に染色後の被染物を浸漬させることで、得られる被染物に対して柔軟性、弾力性などを付与する。
【0142】
湯洗いを行う前処理装置4dおよび柔軟処理を行う後処理装置6dは、本実施例では、上述した中和処理工程における前処理装置4a(
図22〜
図26に示す)および後処理装置6a(
図29に示す)と同様の構成のものであるので、ここでは対応する構成について同一の符号を用いることで説明を省略する。
【0143】
フィックス処理が行われた後の染色用容器Pが、搬送手段Tにより、容器支持装置40に搬送されると(
図22参照)、容器支持装置40は、容器反転用シリンダ409の作動により、染色用容器Pを上下反転させて、染色用容器P内に収容されたフィックス処理液だけを水桶41に排出する(
図23参照)。そして、駆動装置46の作動により、回転枠42を回転させることにより、容器保持装置40および水桶41を旋回させる(
図24参照)。その後、容器支持装置40により、染色用容器Pを立ち上がらせて再び起立状態にし(
図25参照)、給水ノズル415d(
図28(a)に示す)から70℃程度の湯を染色用容器Pの内部に供給する。そして、再び、染色用容器Pを上下反転させることで、染色用容器P内に収容された湯だけを水桶41に排出し、湯の排出後は、染色用容器Pを再び起立状態とする。この湯の供給・排出を数回繰り返すことにより、被染物に対して湯洗いを行う。
【0144】
湯洗い終了後は、染色用容器Pの内部に洗浄液を供給可能な給液ノズル416d(
図28に示す)により、染色用容器P内に上方から、調合された柔軟処理液を供給した後、押圧装置43の作動によって、染色用容器Pを搬送手段T上に押し出す(
図26参照)。これにより、柔軟処理液が収容された染色用容器Pは、搬送手段Tにより、次の柔軟処理液による柔軟処理を行うための後処理装置6dまで搬送される。
【0145】
搬送手段Tによって搬送された染色用容器Pは、図示しない位置検出センサの検出により、後処理装置6dの直下位置で停止する。染色用容器Pが後処理装置6dまで搬送されると、第1のシリンダ機構611の作動により、各把持部材63を染色用容器Pの上縁部近傍に位置させた後、第2のシリンダ機構(図示せず)の作動により、各把持部材63を閉動作させることで、各把手爪具606により染色用容器Pの上縁部を掴む。そして、この状態で、第1のシリンダ機構611を作動させることにより、染色用容器Pを搬送手段Tから持ち上げる。
【0146】
次に、各姿勢変化用シリンダ68のロッド68aを伸長させて、染色用容器Pを傾倒させる(
図29参照)。そして、駆動機構65の作動により、外筒部材60を回転させて、染色用容器Pを回転させることで、収容された被染物を柔軟処理液により柔軟処理する。なお、この際、染色用容器Pを、所望の温度に調温された水槽内で回転させたり、外表面に調温された水を散布しながら回転させたりすることで、所望の温度制御が可能である。
【0147】
所定時間の経過により被染物Mの柔軟処理が終了した後は、染色用容器Pの回転を止めた後、各姿勢変化用シリンダ68のロッド68aを後退させて、染色用容器Pを起立状態に戻した後、第1のシリンダ機構611を作動させて、染色用容器Pを搬送手段Tの搬送面上に載置する。そして、第2のシリンダ機構(図示せず)を作動させて、各把持部材63を開動作させることで、各把手爪具606による染色用容器Pの把持を解除する。そして、搬送手段Tを作動させることで、染色用容器Pが次工程である回収洗浄処理ステーションEまで搬送される一方、新たな染色用容器Pを受け入れ可能な状態になる。
【0148】
なお、本実施例では、柔軟処理を行う後処理装置6dとして、
図29に示す構成のものを採用しているが、必ずしもこれに限られるものではなく、染色用容器Pを回転させることで染色用容器P内の被染物を柔軟処理するものであれば、上述した染色処理ステーションCに設けられている回転染色装置30と同様の構成のものなど、如何なる構成のものも採用することができる。
【0149】
上記のとおり、本実施例の後処理ステーションDによれば、中和処理工程D1、洗浄処理工程D2、フィックス処理工程D3、柔軟処理工程D4、および各処理工程D1〜D4の前工程の水洗・湯洗工程が搬送手段Tにより連結されているので、搬送手段Tによって、染色処理ステーションCから後処理ステーションDに順次搬送される染色用容器Pに対して、多種多様な後処理の一連の工程を停止させることなく連続的に行うことができ、作業の効率化を図ることが可能である。
【0150】
なお、上述した中和処理工程D1、洗浄処理工程D2、フィックス処理工程D3、柔軟処理工程D4のうち、被染物の種類によっていずれかの処理工程を実施しない場合には、搬送手段Tにより当該処理工程をスルーさせて、必要な処理工程だけを実施させるようにしてもよい。
【0151】
図1に戻って、次工程の回収洗浄処理ステーションEには、上記後処理ステーションDにて後処理が施された染色用容器Pを受け取り、染色後の被染物を回収した後、染色用容器Pの洗浄を行う回収洗浄装置5が設けられている。この回収洗浄装置5は、
図30に示すように、搬送手段Tにより上記後処理ステーションDから搬送された染色用容器Pを上下反転させる容器反転装置50と、上下反転した染色用容器Pから落下する被染物および処理液を受ける回収装置51と、被染物および処理液を回収後の染色用容器Pを洗浄する洗浄装置52と、染色用容器Pを洗浄装置52に押圧搬送する押圧搬送装置53とを備えており、これらは枠体54内に設けられている。
【0152】
図31は、
図30に示す容器反転装置50を矢示A方向に見た拡大斜視図である。
図31に示すように、容器反転装置50は、枠体54に水平方向に延びるように設けられた一対のラック500a,500bと、両端部にピニオン501a,501bを有する回転軸502と、回転軸502に固定された2つの挟持部材503a,503bとを備えている。各挟持部材503a,503bは、L字状の保持ブラケット504a,504bの上端に支持棒505a,505bを取り付けて側面視コ字状に形成されており、染色用容器Pの上下を挟持することができる。保持ブラケット504a,504bの間には、染色用容器Pの底面と接触して転動することにより染色用容器Pを受け入れる複数の転動ローラ506が設けられている。
【0153】
一対のラック500a,500bは、ピニオン501a,501bとそれぞれ噛合しており、回転軸502が矢示B方向の移動により回転すると、
図32に示すように、回転軸502に固定された挟持部材503a,503bが回転して、挟持部材503a,503bに挟持された染色用容器Pが上下反転するように構成されている。また、回転軸502の両端には、ラック500a,500bと平行となるように枠体54に取り付けられたレール部材507a,507bにより案内されるスライダ508a,508bが取り付けられている。各スライダ508a,508bは、エアシリンダなどの容器反転用シリンダ509a,509bのロッド510a,510bが取り付けられており、ロッド510a,510bの進退によって回転軸502を移動することができる。
【0154】
図33は、
図30に示す回収装置51を矢示C方向に見た拡大斜視図である。
図33に示すように、本実施例の回収装置51は、被染物および処理液を収容可能な受器511と、受器511の下部を支持する回動軸512と、受器511が回動軸512まわりに揺動するように回動軸512を回動自在に支持する軸受部材513a,513bとを備えている。受器511の底部は、周縁から中央に向けて下方に傾斜する一対の傾斜面511a,511bを備えており、一対の傾斜面511a,511bの間には、回動軸512の軸線に沿って延びる溝状の排出部511cが形成されている。一対の傾斜面511a,511bの両側は、側板511d,511eにより覆われている。
【0155】
受器511は、
図34に示すように、倒立状態となった染色用容器Pの直下に位置するように配置されており、染色用容器Pから落下する被染物および処理液を受け取る。排出部511cの下方には、処理液回収器(図示せず)が配置されており、受器511に収容されて排出部511cから流出する処理液を回収することが可能となっている。
【0156】
回動軸512には、2つのレバー514a,514bが割締めを介して固定されており、枠体54に支持された受台傾斜用シリンダ515a,515bの各ロッドの先端が、それぞれレバー514a,514bの先端と係合している。一方の受台傾斜用シリンダ515aのロッドが進出すると、回動軸512の回転により、
図35に示すように受器511が傾斜して被染物が一方の傾斜面511aに沿って落下し、下方に配置された被染物回収器(図示せず)に回収される。これに対し、他方の受台傾斜用シリンダ515bのロッドが進出すると、回動軸512は上記と反対方向に回転することにより、受器511は被染物が他方の傾斜面511bに沿って落下するように傾斜して、被染物が不良品回収器(図示せず)に回収される。このように、動作する受台傾斜用シリンダ515a,515bの選択により、受器511の傾動方向を変化させて被染物の落下方向を振り分けることができ、良品と不良品とを分離して回収することができるようになっている。
【0157】
押圧搬送装置53は、
図32に示すように、回転自在に支持された押圧ローラ516a,516bを有する押圧部材517が、枠体54に支持された容器搬送用シリンダ518のロッド518aにブラケット519を介して取り付けられており、
図32に示す状態からロッド518aが矢示B方向に後退することにより、押圧部材517が2つの挟持部材503a,503bの間を通過して押圧ローラ516a,516bが染色用容器Pの側面と接触し、染色用容器Pを洗浄装置52に搬送する。
【0158】
図36は、
図30に示す洗浄装置52を矢示A方向に見た拡大斜視図である。
図36に示すように、洗浄装置52は、染色用容器Pを倒立状態で搬送するローラコンベア520と、ローラコンベア520のローラ間の隙間を介して上方に突出するように上下動自在に支持され洗浄液を噴射する内部洗浄ノズル521と、染色用容器Pに対して上方から洗浄液を噴射する外部洗浄ノズル522と、ローラコンベア520の隙間を介して上方に突出するように上下動自在に支持されエアを噴射するエアノズル523とを備えている。
【0159】
内部洗浄ノズル521、外部洗浄ノズル522およびエアノズル523は、ローラコンベア520の搬送方向上流側から下流側に向けて順次配置されており、内部洗浄ノズル521およびエアノズル523の直上位置で染色用容器Pをそれぞれ停止させることができるように、染色用容器Pの搬送位置を検出するための光ファイバセンサなどの位置検出センサ(図示せず)が配置されている。
【0160】
洗浄装置52の入口には、シリンダ524aにより上下動自在に支持されたシャッタ524bが設けられており、押圧搬送装置53の作動により染色用容器Pが通過した後、
図37に示すようにシリンダ524aの作動によりシャッタ524bを下降させることで、洗浄液が回収装置51に飛散するのを抑制することが可能となっている。染色用容器Pは、
図37に示す内部洗浄ノズル521の直上位置から、ローラコンベア520の作動により矢示B方向に搬送され、
図38に示すようにエアノズル523の直上位置まで移動する。
【0161】
また、洗浄装置52は、
図38に示す状態から、
図39に示すようにローラコンベア520のローラ間の隙間を通過して上昇する支持ブラケット525a,525bを備えている。支持ブラケット525a,525bは、エアノズル523を挟んで搬送方向両側に配置されており、エアノズル523とは独立して上下動可能となるように、駆動プーリ526aと従動プーリ526bとの間に懸架された無端状のベルト526cに取り付けられている。
【0162】
また、支持ブラケット525a,525bには、染色用容器Pの開口近傍の外周面と当接するように水平面に沿って回転自在に設けられた複数の水平ローラ527a,527bと、染色用容器Pの開口縁と当接するように垂直面に沿って回転自在に設けられた複数の垂直ローラ528a,528bとがそれぞれ設けられている。また、支持ブラケット525a,525bとともに上下動するように支持されてモータ(図示せず)により垂直面に沿って回転駆動される駆動ローラ529が設けられている。染色用容器Pは、水平ローラ527a,527bおよび垂直ローラ528a,528bにより支持されて、ローラコンベア520の搬送面から持ち上げられた状態で、回転駆動される駆動ローラ529が染色用容器Pの開口縁と当接して、染色用容器Pを軸心周りに回転する。
【0163】
次に、上記構成を備える染色用容器の回収洗浄装置5の作動について、
図40および
図41に示す概略側面図を適宜参照しながら説明する。
図40(a)に示すように、上記後処理ステーションDまでにおいて、染色工程が行われた後の染色用容器Pは、上部が開口した状態で搬送手段Tにより容器反転装置50に搬送され、挟持部材503a(503b)により上下が挟持される。
【0164】
容器反転装置50は、
図40(b)に示すように、染色用容器Pを上下反転させて、被染物Mおよび処理液Lを回収装置51の受器511に収容する。収容された処理液Lは、受器511の排出部511cから外部へ流出し、処理液回収器(図示せず)に回収される。本実施例においては、容器反転装置50がラック・ピニオン機構により染色用容器Pを矢示B方向に水平搬送しながら上下反転できるように構成しているので、反転中の染色用容器Pが他の構成要素と干渉し難くなりスムーズな反転を促すことができるとともに、染色用容器Pが反転しながら後述する押圧部材517を乗り越えることができるので、染色用容器Pを簡易な構成により洗浄装置52に搬送可能とすることができる。ただし、容器反転装置50の回転軸502をモータなどにより回転可能に構成することで、染色用容器Pを水平搬送せずに上下反転するようにしてもよい。
【0165】
処理液Lの回収後は、
図40(c)に示すように、押圧搬送装置53の押圧部材517および洗浄装置52のローラコンベア520の作動によって、染色用容器Pを上下反転した状態で搬送し、位置検出センサ530aの検出により内部洗浄ノズル521の直上位置で停止する。また、これと同時に、回収装置51の受器511を傾斜させて、被染物Mを被染物回収器531に落下させる。一方、上述の染液調合処理ステーションや染色処理ステーションなどの前工程において、染液の測定重量が規定外であるなど、外部の装置から染色不良の信号を受信した場合には、受器511を
図40(c)とは反対方向に傾斜させ、不良品回収器(図示せず)に落下させる。このように、回収装置51により良品および不良品を振り分けて回収することで、前工程や後工程を含めた一連の工程を停止させることなく不良品を排除することができる。
【0166】
本実施例においては、受器511の底部が、周縁から中央に向けて下方に傾斜する一対の傾斜面511a,511bを備え、排出部511cが一対の傾斜面511a,511bの間に溝状に形成されているので、排出部511cからの処理液Lの排出を促すことができるとともに、一対の傾斜面511a,511bのそれぞれに沿って被染物Mを落下させて、振り分けを効率良く行うことができる。ただし、受器511の形状は本実施例のものに限定されず、染液Lの排出部511cを有するとともに、傾斜により被染物Mを落下させることが可能な任意の形状とすることができる。また、受器511は、遠心脱水等により処理液Lを排出可能な脱水機構を備えるものであってもよく、この場合も脱水後に受器511を傾斜させて、被染物Mを回収することができる。
【0167】
洗浄装置52において染色用容器Pが停止した後は、
図41(a)に示すように、ローラコンベア520の搬送面の下方から上方に向けて内部洗浄ノズル521を上昇させ、染色用容器Pの内部から洗浄液を放射状に噴射し、染色用容器Pの内壁面を洗浄する。内部洗浄の終了後は、内部洗浄ノズル521を下降させてローラコンベア520を再び作動させる。染色用容器Pには、搬送途中で外部洗浄ノズル522により上方から洗浄液が噴射され、染色用容器Pの外壁面が洗浄される。そして、
図41(b)に示すように、位置検出センサ530bの検出によりエアノズル523の直上位置で染色用容器Pが停止する。
【0168】
次に、
図41(c)に示すように、ローラコンベア520の搬送面の下方から上方に向けてエアノズル523を上昇させ、染色用容器Pの内部においてエアの噴射を開始した後、駆動ローラ529を駆動しながら、この駆動ローラ529などを支持する支持ブラケット(図示せず)を上昇させる。これにより、染色用容器Pが回転しながら上昇し、染色用容器Pの内壁面全体にエアを吹き付けて、付着している水滴を飛ばすことができる。染色用容器Pを上昇させる代わりにエアノズル523を上下動させて、染色用容器Pの内壁面の水滴を除去するようにしてもよい。
【0169】
また、
図41(c)に示すように、染色用容器Pの内部からエアを噴射するエアノズル523とは別に、染色用容器Pの外壁面にエアを噴射する別のエアノズル523Aを設けてもよい。水滴が除去された染色用容器Pは、プッシャ(図示せず)などにより、下部が開口した上下反転した状態で搬送手段Tに送られ、搬送手段Tによって再び被染物投入処理ステーションAに搬送されて、再利用される。
【0170】
このように、上記した構成の回収洗浄装置5によれば、収容された被染物Mおよび処理液の回収と並行して染色用容器Pの洗浄を行うことができるので、作業効率を高めることが可能である。
【0171】
なお、この回収洗浄処理ステーションEにおいては、上記した被染物の回収や染色用容器Pの洗浄を行う回収洗浄装置5のみならず、回収された被染物を被染物回収器531(または受器511)より受け取って脱水する脱水装置(図示せず)、脱水後の被染物を前記脱水装置より受け取って乾燥する乾燥装置(図示せず)、および、乾燥後の被染物を前記乾燥装置より受け取って回収する受取装置(図示せず)を、回収洗浄装置5の回収装置51に隣接して設けるようにしてもよい。これにより、前工程から次々と搬送される染色用容器P内の染色後の被染物に対して、被染物の回収から脱水および乾燥まで、一連の作業を自動的に効率よく行うことができる。
【0172】
また、本実施例では、上下反転する染色用容器Pより被染物および処理液を受け取る回収装置51として、染色用容器Pの直下位置に、被染物および処理液を収容可能な受器511を設けているが、受器511の代わりに、脱水装置(図示せず)を設け、脱水装置が染色用容器Pから落下する被染物および処理液を直接受け取るように構成してもよい。脱水装置は、図示は省略するが、上部に開口を有する有底筒状の脱水器と、脱水器を内部に収容可能な処理液回収ケースとを備えており、脱水器の側面または底面に形成された複数の通液孔から、脱水器に収容された処理液が処理液回収ケースに排出されるように構成されているのが好ましい。また、脱水器は、処理液回収ケース内で回転可能に設けられており、遠心脱水により脱水器に収容された被染物が脱水されるようになっている。なお、被染物の脱水後は、処理液回収ケースとともに脱水器を傾斜などさせることにより、脱水後の被染物が脱水装置から回収されて、乾燥装置に搬送される。この変形実施例では、染色用容器P内の染色後の被染物の回収および脱水が、1つの装置により行われるので、装置全体の構造の簡易化と小型化とを実現することができる。
【0173】
以上のように、本発明の自動染色システムでは、被染物Mの染色用容器Pへの供給、染液の調合や調合された染液の染色用容器Pへの供給、被染物Mの染色、染色終了後の被染物Mの後処理、染色用容器Pからの被染物Mの取り出しや処理液の回収、さらには染色用容器Pの洗浄など、染色の1サイクルを構成する各処理工程を搬送手段Tにより連結し、染色用容器Pが搬送手段Tによって各処理工程を連続的に移動するように構成したことにより、染色に必要な一連の処理工程が自動的に実行されて、被染物Mの染色が行われるようになっているので、多様な染色を、煩雑な作業を必要とせずに、迅速にかつ効率良く行うことが可能である。