(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656993
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】ミクロフィブリル化セルロースの製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 11/16 20060101AFI20141225BHJP
【FI】
D21H11/16
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-519096(P2012-519096)
(86)(22)【出願日】2010年7月2日
(65)【公表番号】特表2012-533001(P2012-533001A)
(43)【公表日】2012年12月20日
(86)【国際出願番号】IB2010053044
(87)【国際公開番号】WO2011004301
(87)【国際公開日】20110113
【審査請求日】2013年1月21日
(31)【優先権主張番号】0950535-5
(32)【優先日】2009年7月7日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓
(74)【代理人】
【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100124969
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100088926
【弁理士】
【氏名又は名称】長沼 暉夫
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン、イスト
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク、カイ
(72)【発明者】
【氏名】ベビライネン、マリアンナ
(72)【発明者】
【氏名】カムププーリ、タイナ
(72)【発明者】
【氏名】ノウシアイネン、ペルッティ
【審査官】
中尾 奈穂子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−169497(JP,A)
【文献】
特開平07−189156(JP,A)
【文献】
特表2009−526140(JP,A)
【文献】
特開2010−216021(JP,A)
【文献】
特表2012−533000(JP,A)
【文献】
特表2012−532952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
C08B 1/00−37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースファイバーを処理する方法であって、
−ファイバーを第一酵素処理において0.01−250nkat/gの酵素活性を有する酵素で予備処理すること、
−第一酵素処理で得られたファイバーを第一機械的処理において機械的に予備処理すること、
−第一機械的処理で得られたファイバーに再度酵素を添加して、第二酵素処理において50〜300nkat/gの酵素活性を有する酵素で該ファイバーを処理すること、次いで、
−第二酵素処理において得られたファイバーを第二機械的処理において機械的に処理し、ミクロフィブリル化セルロースを生成すること、
を含む方法であって、
かつ第二酵素処理期間中の酵素の活性が第一酵素処理期間中の酵素の活性より高い、上記方法。
【請求項2】
第一酵素処理期間中の酵素が0.5〜50nkat/gの活性を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ファイバーを細断またはリファイニングによって機械的に処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ファイバーを総重量で2〜40%のコンシステンシイで機械的に処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ファイバーを第一機械的処理工程において総重量で15〜40%のコンシステンシイで機械的に予備処理することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ファイバーを第二機械的処理工程において総重量で15〜40%のコンシステンシイで機械的に処理することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
pHが第一および/または第二機械的工程中、9以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第一および/または第二酵素処理期間中に使用される酵素がヘミセルロースに作用する酵素、又はセルロースに作用する酵素であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ヘミセルロースに作用する酵素がキシラナーゼまたはマンナナーゼであり、前記セルロースに作用する酵素がセルラーゼである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ファイバーがクラフトパルプのファイバーであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明はセルロースファイバーを処理することによるミクロフィブリル化セルロースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
セルロースファイバーはセルロースポリマー、すなわちセルロース鎖から形成されている多成分構造体である。当技術で知られているリグニン、ペントサンおよびその他の成分がまた、存在することがある。ファイバー中のセルロース鎖は相互に付着し、基本フィブリルを形成する。数個の基本フィブリルは相互に結合し、ミクロフィブリルを形成し、数個のミクロフィブリルは凝集体を形成する。セルロース鎖、基本フィブリルおよびミクロフィブリル間の結合は水素結合である。
【0003】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)(これはまた、ナノセルロースとしても知られている)は木材セルロースファイバーから製造される物質であって、個々のミクロフィブリルは相互に部分的にまたは全体的に分離している。MFCは通常、非常に細く(〜20nm)、および長さは多くの場合、100nm〜1μmである。
【0004】
MFCは多くの相違する方法によって製造することができる。ミクロフィブリルが形成されるようにセルロースファイバーを機械的に処理することができる。しかしながら、この方法は、例えばファイバーの細断または精製に非常にエネルギーを消費する方法であり、従って多くの場合に使用されない。
【0005】
細菌を用いるナノセルロースまたはミクロフィブリル化セルロースの製造はもう一つの手段である。上記方法に対して、この方法は木材ファイバーとは別の原材料から出発する生合成法である。しかしながら、この方法は非常に高価な方法であって、また時間を消費する。
【0006】
ファイバーを分解または溶解する種々の化学物質を用いることによりセルロースからミクロフィブリルを製造することもできる。しかしながら、この方法は生成されるフィブリルの長さの制御が困難であり、これらのファイバーは多くの場合に、短すぎる。
【0007】
MFCを製造する例の一つはWO2007091942に記載されている。WO2007091942に記載の方法では、MFCは酵素の添加を組合わせた精製を用いることによって製造される。
【0008】
従来技術に従う技術が付随する共通の問題の一つは、製造条件が規模の拡大または高品質が要求される大規模工業用途にとって好ましくないことにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、ミクロフィブリル化セルロースの改良された製造方法が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明の目的は改善されており、またエネルギー効率の良い様相でミクロフィブリル化セルロースを製造する方法を提供することにある。
【0011】
本発明のもう一つの目的は高いコンシステンシイを有するミクロフィブリル化セルロースを製造することにある。
【0012】
これらの目的およびその他の利益が特許請求の範囲請求項1に従う方法によって達成される。特許請求の範囲請求項1に記載されているように、酵素処理を機械的処理と交互に行うことによって、非常にエネルギー効率の良い様相でミクロフィブリル化セルロースを製造することができる。さらにまた、生成されるMFCのコンシステンシイを増加することができ、これにより取り扱い、計量、乾燥または分配の観点で別の使用者に明瞭な利益が提供される。これは特許請求の範囲独立項および従属項に定義されている方法の態様によって達成される。
【0013】
本発明はセルロースファイバーの処理方法に関し、この方法はファイバーを第一酵素処理において酵素で予備処理し、引続いてファイバーを第一機械的処理において機械的に予備処理することを含む。その後、ファイバーを第二酵素処理において酵素で処理し、次いでファイバーを第二機械的処理において機械的に処理することによりミクロフィブリル化セルロースを製造することを含む方法である。この方法によって、改善されており、およびエネルギー効率の良い様相でMFCを製造することができる。
【0014】
第一酵素処理期間中の酵素の活性は0.01〜250nkat/gであることができるが、第一酵素処理の酵素活性は低いと好ましく、好ましくは0.05〜50nkat/gであり、および第二酵素処理期間中の酵素の活性は高いと好ましく、好ましくは50〜300nkat/gである。
【0015】
第一機械的処理および第二機械的処理は好ましくは、ファイバーの細断または精製によって行う。第一機械的処理は引続く酵素による処理に先立ちファイバー構造を開放する。この方法で、第二酵素処理はさらに効果的および選択性にされ、これにより第二機械的処理が改善され、従ってまたMFCの生成が改善される。
【0016】
ファイバーは好ましくは、総重量で2〜40%のコンシステンシイにおいて機械的に処理する。ファイバーは好ましくは、総重量で15〜40%の高いコンシステンシイにおいて第一機械的処理により機械的に予備処理する。高いコンシステンシイにおけるファイバーの機械的予備処理は細末の量を減少する。従って、ファイバーは好ましくは、総重量で15〜40%の高いコンシステンシイにおいて第二機械的処理により機械的に処理する。
【0017】
第一機械的処理および/または第二機械的処理期間中のpHは好ましくは、9以上である。機械的処理期間中のpHが増加すると、必要なエネルギーが減少されることが示された。
【0018】
第一酵素処理および/または第二酵素処理期間に使用される酵素は好ましくは、ヘミセルロースに作用する酵素、例えばキシラナーゼまたはマンナナーゼであり、あるいはセルロースに作用する酵素、例えばセルラーゼである。本発明の方法に使用される酵素はセルロースファイバーを分解し、およびファイバーのアクセシビリティおよび活性を増大し、従ってミクロフィブリル化セルロースの製造を増加させる。
【0019】
セルロースファイバーは好ましくは、クラフトパルプのファイバーである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(詳細な説明)
本発明は改善されており、およびエネルギー効率の良い様相でミクロフィブリル化セルロースを製造する方法に関する。さらにまた、本発明は高いコンシステンシイを有するMFCの製造を可能にする。
【0021】
第一酵素処理、引続く第一機械的処理および第二酵素処理の組合せはファイバー構造を改善された様相で活性化し、および開放することが示された。さらにまた、処理されたファイバーの第二機械的処理を行い、ミクロフィブリル化セルロースを製造することができることが示された。この方法によって、制御されており、および価格効率の良い様相でMFCを製造することができ、また高いコンシステンシイを有するMFCを製造することができる。
【0022】
セルロースファイバーの第一酵素処理、引続く好ましくは高いコンシステンシイにおける第一機械的処理はファイバーの切断を増強するが、他方で細末の生成は少ないままであることが示された。第一機械的処理後、細末の量は最低に維持されると好ましい。これは第二酵素処理で添加される酵素は先ず、細末を分解し、その後にファイバーを分解するからである。すなわち、細末の量が少ないと、第二酵素処理の効率は増大される。
【0023】
第一酵素処理および第二酵素処理は、酵素によりセルロースファイバーを分解し、MFCの生成を改善するために行なう。酵素はファイバーの第一層を分解し、従ってファイバーのアクセシビリティを増大させる。これにより酵素はファイバー構造に浸透することができ、フィブリル間に受け入れられる。酵素処理によって、機械的処理の継続時間を減少することができる。セルロースファイバーの機械的処理はファイバーの強度を格別に減少することができ、従ってこのような処理の長さをできるだけ減少させることから有利である。機械的処理の継続時間を減少することができ、また機械的処理をさらに穏かな様相で行うことができることから、両方の機械的処理に先立ちファイバーを酵素により処理することによって、ファイバー強度の全ての不必要な減少を回避することができる。
【0024】
第一および第二処理に使用される酵素はセルロースファイバーを分解する全ての木材分解性酵素であることができる。セルラーゼの使用は好ましいが、その他の酵素、例えばヘミセルロースを分解する酵素、例えばキシラナーゼおよびマンナナーゼもまた、使用することができる。2回の酵素処理には同一または相違する酵素を使用することができる。酵素は多くの場合、酵素調製品であることができ、この酵素調製品はその中の主要酵素以外に少量の別種の酵素活性物質を含有することができる。
【0025】
酵素は約4〜5%の濃度を有するスラリーの形態であるファイバーに添加する。酵素は第一および/または第二処理の開始時点で、または全反応時間中のどちらかの時点で攪拌しながら添加する。
【0026】
酵素による処理に使用される温度は30〜85℃であることができる。しかしながら、温度は使用される酵素に依存し、特定の酵素の最適作業温度ならびにその他の処理パラメーター、例えば時間およびpHに依存する。セルラーゼが使用される場合、処理中の温度はほぼ50℃であることができる。
【0027】
第一酵素処理および第二酵素処理はそれぞれ、30分〜5時間にわたり継続することができる。必要な時間は処理されるセルロースファイバーおよび酵素の活性ならびに処理の温度に依存する。
【0028】
酵素処理は温度またはpHを高めることによって酵素を変性して終了することができる。酵素による処理期間中、pHは好ましくは、4〜6である。
【0029】
第一処理期間中の酵素の活性は0.01〜250nkat/g、好ましくは0.05〜50nkat/gであることができる。第一酵素処理の目標はファイバーの上部表面を弱めるか、または分解するのみである。従って、この酵素の活性は好ましくは、ファイバーがあまり分解されすぎないほど低くする。第二酵素処理中の酵素の活性は好ましくは、50〜300nkat/gである。上記したように、第二酵素処理はファイバーの第一層を分解するために行われる、すなわち上部表面のみを分解するためではない。従って、第二酵素処理期間中の酵素の活性は第一酵素処理期間中よりも高くする必要がある。
【0030】
第一酵素処理後、セルロースファイバーは第一機械的処理において機械的に予備処理する。ファイバーは好ましくは、細断または精製し、ファイバーの比表面積を増加する。この方法で、第二酵素処理の作用が促進され、また改善される。この細断または精製は総重量で2〜40%の高いコンシステンシイにおいて行うことができる。しかしながら、高いコンシステンシイ、好ましくは総重量の15〜40%、または総重量の10〜20%のコンシステンシイは多くの場合に好適である。低いコンシステンシイ、例えば総重量の2〜6%のコンシステンシイまたは中程度のコンシステンシイ、例えば総重量の10〜20%のコンシステンシイもまた使用することができる。
【0031】
第一機械的処理後、例えば処理されたファイバーの分別によって細末を分離することができ、長い方のファイバーは第二の酵素処理および機械的処理でさらに処理することができる。
【0032】
第一機械的処理は好ましくは、総重量の15〜40%のコンシステンシイで行う。第一酵素処理において全く低い酵素活性でセルロースファイバーを処理し、次いで高いコンシステンシイにおいて機械的処理に付すと、ファイバー切断を増加することができる。すなわち、別の機械的処理に比較して、細末の量を最低に維持しながら減少されたファイバー長さを有するファイバーを生成することができる。大量の細末が酵素処理中に存在すると、酵素は先ず、これらを分解し、酵素処理の標的であるファイバーを分解しない。従って、第一の酵素処理および機械的処理は第二酵素処理の効率を高め、また第二機械的処理の効率およびMFCの生成を高める。さらにまた、ファイバー長さを減少することによって、高いコンシステンシイにおける機械的処理期間中の作業量が増加する。機械的処理中のコンシステンシイを増加することができることによって、細末の生成は少なくさえされ、またファイバー表面を酵素に対し開放し、浸透性にする内部フィブリル化が改善される。
【0033】
精製および細断以外に、ファイバーを軟化し、また引続く処理に先立ち、ファイバーをさらに活性および反応性にするために別の機械的予備処理、例えば叩解、水蒸気への露呈、脱フィブリル化、均質化、超音波処理、乾式カッティングまたはその他の公知の機械的ファイバー処理を使用することもできる。
【0034】
第一機械的処理後、酵素は約4〜5%の濃度を有するスラリーの形態であるファイバーにもう一度添加する。酵素は第二酵素処理の開始時点または全反応期間中のどちらかの時点で攪拌しながら添加する。酵素による第二の処理はファイバーのアクセシビリティおよび活性を増加し、引続くMFCを形成するための機械的処理を改善する。
【0035】
ファイバーはその後、第二機械的処理において機械的に処理しミクロフィブリル化セルロースを生成する。このような処理中の時間および温度は処理されるファイバーならびに先行の処理に依存して変わり、所望のファイバー長さを有するファイバーが得られるように制御する。第二機械的処理は、精製装置(refiner)、デフィブレーター(defibrator)、叩解機、摩擦グラインダー、高せん断フィブリレーター(fibrilator)(例えば、キャビトロンローター/スターター装置)、ディスパージャー(disperger)、ホモゲナイザー(例えば、微細流動化機(microfluidizer))またはその他の公知の機械的ファイバー処理装置によって行うことができる。通常、微細流動化機における処理中のファイバーのコンシステンシイはあまり高過ぎないようにすることができる。しかしながら、ファイバーは高いコンシステンシイにおいて狭い毛細管内で高圧に曝されると、ファイバーに対し高い機械的衝撃がまたもたらされる。従って、ファイバーは特許請求の範囲請求項1に記載の方法に従い微細流動化機で高いコンシステンシイにおいて処理することができる。
【0036】
機械的処理期間中のファイバーのコンシステンシイは好ましくは、総重量で2〜40%である。第二機械的処理期間中、高いコンシステンシイ、好ましくは総重量で15〜40%のコンシステンシイを有すると好ましい。これにより、生成されたMFCは総重量で15%以上、または好ましくは総重量で15〜40%、さらに好ましくは総重量で15〜25%の高いコンシステンシイを有する。この方法で、MFCを非常に濃厚な形態で使用者に移送することができる。必要に応じて、水または化学物質を添加し、生成されたMFCを膨潤させることができ、これにより全部のミクロフィブリルを水または化学物質中に分離することができる。MFCが膨潤し、生成されたMFCの精製装置、シュレッダーまたはその他の機械的処理装置からの分離が困難になることがあることから、第二機械的処理期間中の水の添加は回避すべきである。
【0037】
第一および/または第二機械的処理期間中のpHは好ましくは、9以上であり、さらに好ましくは10以上である。機械的処理期間中のpHが増加するほど、機械的処理の効率は増加し、従って必要なエネルギーが減少されることが示された。
【0038】
特許請求の範囲請求項1に従う方法の期間中におけるファイバー対ファイバー摩擦またはファイバーの膨潤を変える化学物質を添加することもできる。摩擦を減じる化学物質は、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプンまたは種々のポリマー、例えばポリアクリルアミド(PAM)または表面活性剤であることができる。摩擦を増加する化学物質は充填剤、例えばタルク、炭酸カルシウム、カオリンまたは二酸化チタンなどであることができる。ファイバーの膨潤を増加または減少させる化学物質は、例えば水酸化ナトリウム、その他のpH変更化学物質、種々の塩類または帯電ポリマーであることができる。これらの化学物質は好ましくは、第二酵素処理後であって、第二機械的処理前に添加する。しかしながら、化学物質は第一機械的処理前、または第一機械的処理期間中に添加することもできる。例えば、ポリマーを添加するもう一つの理由はフィブリルを安定化することにある。
【0039】
本発明に従う方法に使用されるセルロースファイバーは好ましくは、クラフトパルプのファイバー、すなわちクラフト法に従い処理されているクラフトパルプのファイバーである。クラフトパルプ中のファイバーの第一壁は多くの場合、フィブリル形成からファイバーを護ることが示されている。従って、第一壁を除去する必要がある。ファイバーの第一壁はファイバーの予備処理を強化することによって除去することができる。すなわち、増強した精製、好ましくは高コンシステンシイ精製(high consistency refining)は非常に効果的であることが示された。また、ヘミセルロースに作用する酵素を、単独で、または精製、好ましくは高コンシステンシイ精製と組合せて使用することができる。特許請求の範囲請求項1に記載されている酵素による予備処理、機械的予備処理、酵素処理および機械的処理の組合せは、セルロースファイバーの第一壁を除去しようとする場合、非常に効果的であることが示された。しかしながら、その他の化学的パルプ、機械的パルプまたは化学−機械的パルプ、例えばスルフィットパルプもまた、使用することができる。ファイバーはまた、漂白されていてもよく、または未漂白であることもできる。薄いファイバー壁を有するファイバーを使用すると好ましい。
【0040】
セルロースファイバーは硬木および/または軟木ファイバーであることができる。スルフィットパルプおよびパインクラフトパルプは本発明に従い処理すると、ユーカリおよびカバクラフトパルプに比較し、さらに細かいフラクションに変形される。従って、軟木クラフトパルプを本発明に従う方法で処理すると好ましい。
【0041】
生成されるMFCは非常に良好な結合性物性を有する。すなわち、ガラス、アルミニウム、紙または木材などの種々の材料に良好に結合する。従って、このMFCはフィルムの形成に使用することができる。生成されるMFCのもう一つの利点は相違する材料間、例えば生体障壁(biobarrier)とファイバー基材基体との間のプライマー剤として使用することができる点にある。
【0042】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)はしばしばまた、ナノセルロースと称される。フィブリル化されており、表面上にミクロフィブリルを有するファイバーおよびスラリーの水相に分離して、存在するミクロフィブリルはMFCの定義内に包含される。