特許第5656994号(P5656994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5656994通信ネットワークにおけるアドミッション制御および/または経路選択をサポートする方法および通信ネットワーク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656994
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】通信ネットワークにおけるアドミッション制御および/または経路選択をサポートする方法および通信ネットワーク
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/04 20090101AFI20141225BHJP
   H04W 40/12 20090101ALI20141225BHJP
【FI】
   H04W40/04
   H04W40/12
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-519934(P2012-519934)
(86)(22)【出願日】2010年7月15日
(65)【公表番号】特表2012-533247(P2012-533247A)
(43)【公表日】2012年12月20日
(86)【国際出願番号】EP2010004318
(87)【国際公開番号】WO2011006661
(87)【国際公開日】20110120
【審査請求日】2012年1月12日
(31)【優先権主張番号】09009223.0
(32)【優先日】2009年7月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508342183
【氏名又は名称】エヌイーシー ヨーロッパ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NEC EUROPE LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】512009632
【氏名又は名称】ウニベルシダ カルロス III デ マドリッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(72)【発明者】
【氏名】ダルスキー、フランク
(72)【発明者】
【氏名】ペレツ コスタ、ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】デ マルカ、ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】バンチャス、アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】デ ラ オリヴァ、アントニオ
【審査官】 古市 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/084051(WO,A1)
【文献】 特開2006−020302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークにおけるアドミッション制御および/または経路選択をサポートする方法において、前記ネットワークは、複数のネットワークノード間に確立された、相異なるリンクテクノロジのものでもよい複数の無線通信リンクを有し、
前記ネットワークの前記通信リンクを通信リンクのグループすなわちリンクグループに分割するステップと、
各リンクグループに対して、該リンクグループの性能および/または品質を観測および/または測定するように構成された対応するリンクグループコントローラを割り当てるステップと、
前記観測および/または測定に基づいて、それぞれのリンクグループの容量およびそれぞれのリンクグループの各通信リンクを使用するためのコストに対するメトリックの推定値を計算するステップと、
前記推定値に基づいてアドミッション制御および/または経路選択の決定を行うように構成された少なくとも1つのリソース管理エンティティへ前記推定値を送信するステップと
を備え
前記リンクグループは、各リンクグループ内の通信リンクが少なくとも1つの共通の通信リソースの容量を共有するように構成され、
前記リンクグループは、相異なるリンクグループからの通信リンクの依存性が所定しきい値を下回るように構成される
ことを特徴とする、通信ネットワークにおけるアドミッション制御および/または経路選択をサポートする方法。
【請求項2】
前記通信リンクのそれぞれが、一方向性のポイントツーポイント通信リンクとしてモデル化されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記リンクグループコントローラが、対応するリンクグループに対して、それぞれのプロトコル関連のオーバーヘッドを差し引いたリンクグループの正味の容量を反映する有効容量を割り当てることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
リンクグループの前記有効容量が、線型化および最大化の技術を適用することによって計算されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記リンクグループコントローラが、対応するリンクグループの各リンクに対して、該リンク上で送信するのに必要な容量消費を反映するリンクコストを割り当てることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記リンクコストが、それぞれのリンクの関連する信号送信効率を考慮することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記リンクコストが、それぞれのリンク上の送信に対する関連する運用コストおよび/または電力消費および/または干渉を考慮することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
リンクグループの容量および該リンクグループの各通信リンクを使用するためのコストに対するメトリックの前記推定値が、長期的な期待値としては、容量を過大評価よりもむしろ過小評価し、コストに対してはその逆で、計算されることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
リンクグループの容量および該リンクグループの各通信リンクを使用するためのコストに対するメトリックの前記推定値が、相異なるサービスクラスに対して別々に計算されることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
リンクグループの前記容量および該リンクグループの各通信リンクを使用するためのコストが、帯域幅リソースまたはエネルギーリソースに関する特定の通信リソースに関連づけられることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
リンクグループの容量および該リンクグループの各通信リンクを使用するためのコストに対するメトリックの前記推定値が、要求時にのみ前記リンクグループコントローラから前記少なくとも1つのリソース管理エンティティへ送信されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのリソース管理エンティティが、前記リンクグループコントローラから受信される情報に基づいて、アドミッション制御および/または経路選択の決定のテストを事前に実行することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
アドミッション制御および/または経路選択をサポートする機能を有する通信ネットワークにおいて、該ネットワークは、複数のネットワークノード間に確立された、相異なるリンクテクノロジのものでもよい複数の無線通信リンクを有し、
該ネットワークの前記通信リンクが通信リンクのグループすなわちリンクグループに分割され、
各リンクグループに対して、対応するリンクグループコントローラが割り当てられ、該リンクグループコントローラは、該リンクグループの性能および/または品質を観測および/または測定するように構成されるとともに、さらに、前記観測および/または測定に基づいて、該リンクグループの容量および該リンクグループの各通信リンクを使用するためのコストに対するメトリックの推定値を計算するように構成され、
該通信ネットワークは、前記推定値に基づいてアドミッション制御および/または経路選択の決定を行うように構成された少なくとも1つのリソース管理エンティティをさらに有し、
前記リンクグループは、各リンクグループ内の通信リンクが少なくとも1つの共通の通信リソースの容量を共有するように構成され、
前記リンクグループは、相異なるリンクグループからの通信リンクの依存性が所定しきい値を下回るように構成される
ことを特徴とする通信ネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークにおけるアドミッション制御および/または経路選択をサポートする方法に関する。前記ネットワークは、複数のネットワークノード間に確立された、相異なるリンクテクノロジのものでもよい複数の無線通信リンクを有する。
【0002】
また、本発明は、アドミッション制御および/または経路選択をサポートする機能を有する通信ネットワークに関する。該ネットワークは、複数のネットワークノード間に確立された、相異なるリンクテクノロジのものでもよい複数の無線通信リンクを有する。
【背景技術】
【0003】
無線リンクまたは全ネットワーク上の通信にサービス品質を提供することは、利用可能な通信リソースに対する慎重な制御を必要とする。これに関する2つの重要なプロセスとして、アドミッション制御、すなわち、ある無線リンク上で新たな通信を受け付けるかどうかを決定することと、経路選択(あるいはルーティング)、すなわち、新規受付または進行中の通信に対して、リンクまたはネットワークによってサポートされる通信量を最大化する等の所定の目標を最適化しつつ、通信に要求されるサービス品質制約を満たすような、ネットワークを通る無線リンクの系列を選択すること、が挙げられる。
【0004】
これらのプロセスは、それぞれの関連するリンクの残存容量に関する情報とともに、残存容量のうち受付またはルーティングされるべき通信によって使用される部分(その通信の「コスト」)に関する情報を必要とする。残存容量は通常、最初の容量を知り、過去に各関連リンクに受け付けられた(または各関連リンクを通じてルーティングされた)、または各関連リンクを通じてルーティングされたすべての通信のコストを差し引くことによって計算することができる。
【0005】
有線ネットワークでは、リンク容量は一定であるか、または制御された形で変化し、通常は、複数のリンク間で共有されない。すなわち、有線ネットワークにおけるリンクは「ポイントツーポイント」型である。このため、アドミッション制御テストまたは経路選択を実行するエンティティ(これは通常、リソース管理エンティティ(Resource Management Entity, RME)である)は、リンクのステータスをごくまれに更新すればよく、主として、過去に受付/ルーティングされた通信に関する知識に基づいて決定をすることができる。これは、RMEの実現が集中的か分散的かにかかわらず有利である。
【0006】
しかし、無線リンクは異なる。というのは、無線リンクはブロードキャスト媒体を使用するため、1つの送信が同時に複数の受信機によって受信される可能性があるからである。したがって、リンクは通常、「ポイントツーマルチポイント」型である。また、複数の送信機が、重畳する周波数帯で送信を行う可能性もあり、これにより相互干渉を引き起こし、利用可能な有効容量に影響を及ぼす。最後に、無線リンクの容量は、データの送信に現在使用されている変調および符号化にも依存する。変動するチャネル条件に送信機が適応するのに応じて、変調・符号化は時間とともに変化するため、結果としてリンク容量は非常に不安定となる。
【0007】
無線リンク間でのリソースの共有、リンク間の干渉、および変調・符号化の適応のため、RMEに対して、そのタスクに必要な現在の情報を提供することはより困難となる。現在のリンク状態に関する情報は、リンク自身で、例えばリンクグループコントローラ(Link Group Controller, LGC)によって測定または観測することができるだけであり、その情報はRMEによって知られる必要がある。RMEは、ネットワーク内外のどこかに集中配置されても、分散配置されてもよい。原理的には、その情報を交換する方法には3つのアプローチがある。
【0008】
1.リンク状態に関する情報は、リンク状態が変化するたびにLGCからRMEへプッシュされる。しかし、これは高いシグナリングコストを招く可能性がある。
【0009】
2.リンク状態に関する情報は、アドミッション制御または経路選択のプロセスを実行する必要が生じるたびに、RMEによってそれぞれのLGCからプルされる。この場合もシグナリングコストは高いが、前のアプローチよりは低い。というのは、アドミッション制御または経路選択によって影響を受けるリンクを有するLGCのみに問合せをすればよいからである。しかし、LGCに問合せをすることは時間がかかり、RMEのタスクを遅延させる。
【0010】
3.RMEが、リンクの容量のモデルと、過去および新規の通信のコスト(そのパラメータはまれにしか更新されない)とに基づいて、利用可能なリソースを追跡する。
【0011】
最後のアプローチは前二者よりも有利であるが、異なる無線テクノロジは、何が無線リンク容量を構成するか、およびそれがどのように共有されるかについて、異なる概念を有する非常に異なる媒体アクセスメカニズムを使用することが問題である。例えば、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)における決定論的なOFDMA(直交周波数分割多元接続)に対して、WiFiにおける確率的なCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)という相違がある。最新技術のアドミッション制御および経路選択は、上記のアプローチのいずれかを使用するが、与えられた無線テクノロジにきわめて特化している。したがって、従来の解決法は、任意の無線テクノロジに対して再利用可能な一般的解決法を提供しておらず、1つのネットワーク内に複数の無線テクノロジを含む異種混在環境には不適切でもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、頭書のような通信ネットワークにおけるアドミッション制御および/または経路選択をサポートする方法において、比較的実施の簡単なメカニズムを使用することにより、ポイントツーポイントおよびポイントツーマルチポイントの無線リンクのリソースの共有、干渉、およびレート適応が効率的に考慮されるような改良およびさらなる展開を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、上記の目的は、請求項1の構成を備えた方法によって達成される。この請求項に記載の通り、本方法は、
前記ネットワークの前記通信リンクを通信リンクのグループすなわちリンクグループに分割するステップと、
各リンクグループに対して、該リンクグループの性能および/または品質を観測および/または測定するように構成された対応するリンクグループコントローラを割り当てるステップと、
前記観測および/または測定に基づいて、それぞれのリンクグループの容量およびそれぞれのリンクグループの各通信リンクを使用するためのコストに対するメトリックの推定値を計算するステップと、
前記推定値に基づいてアドミッション制御および/または経路選択の決定を行うように構成された少なくとも1つのリソース管理エンティティへ前記推定値を送信するステップと
を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、上記の目的は、独立請求項16の構成を備えた通信ネットワークによって達成される。この請求項に記載の通り、本通信ネットワークは、以下のことを特徴とする。すなわち、該ネットワークの前記通信リンクが通信リンクのグループすなわちリンクグループに分割され、
各リンクグループに対して、対応するリンクグループコントローラが割り当てられ、該リンクグループコントローラは、該リンクグループの性能および/または品質を観測および/または測定するように構成されるとともに、さらに、前記観測および/または測定に基づいて、該リンクグループの容量および該リンクグループの各通信リンクを使用するためのコストに対するメトリックの推定値を計算するように構成され、
該通信ネットワークは、前記推定値に基づいてアドミッション制御および/または経路選択の決定を行うように構成された少なくとも1つのリソース管理エンティティをさらに有する。
【0015】
本発明によって初めて認識されたこととして、アドミッション制御および経路選択の決定をサポートするためのモデルベースのアプローチは、以下のような特性を有するリンクのグループに分割された通信リンクのネットワークにおいて効率的に実現することができる。その特性は、各リンクはただ1つのそのようなグループに属し、相異なるリンクグループのリンク間の干渉は、リソース管理の目的にとっては、例えば空間または周波数多重化の結果として無視できる、という特性である。各リンクグループは、対応するリンクグループコントローラ(LGC)を有し、LGCは、前記通信リンクのグループの、テクノロジ固有のものでもよい性能メトリックを観測および/または測定する。
【0016】
LGCは、前記観測または測定に基づいて、それぞれのリンクグループの容量と、該リンクグループ内の各リンクを使用するための「コスト」に対するメトリックの推定値を計算する。また、LGCとの間でシグナリングメッセージを交換し、前記アドミッション制御および/または経路選択のプロセスを実行する1つ以上のリソース管理エンティティ(RME)が存在する。推定値に対して計算プロセスを適応させることによって、推定されたメトリックを、テクノロジ非依存の形式(OFDMAおよびCSMA/CAのように多様な無線テクノロジにわたる)、さらには媒体非依存の形式(有線媒体も含む)で提供することができる。すなわち、テクノロジ固有の性能メトリックを、テクノロジ非依存の性能メトリックにマッピングすることができる。結果として、本発明によれば、任意の有線または無線テクノロジにも、2つまたはそれより多くの相異なるリンクテクノロジを含む異種混在環境にも適用可能な、一般的なアドミッション制御および/または経路選択のメカニズムが提供される。本発明のモデルベースの性質により、全体的なシグナリングオーバーヘッドは低いことが保証される。
【0017】
好ましい実施形態によれば、リンクグループは、各リンクグループ内の通信リンクが少なくとも1つの共通の通信リソースの容量を共有するように構成される。これにより、リンクグループを、共有される通信リソースすなわち帯域幅を再分割し当該リンクグループの通信リンクに割り当てることが可能な凸被覆とみなすことができる。
【0018】
同時に、リンクグループは、相異なるリンクグループからの通信リンクの依存性が所定しきい値を下回るように構成されてもよい。これは、相異なるリンクグループからのリンクが相互に十分に独立であること、すなわち、それらの間の干渉が無視でき、あるグループからのリンクを使用することが、別のグループの容量に実質的に影響しないことを意味する。この実施態様が有利であるのは、アドミッション制御および経路選択に関して、各リンクグループについて、他のリンクグループに依存あるいは影響せずに、個別に決定を行うことができるからである。例えば、FDD(周波数分割二重)またはTDD(時分割二重)システムにおいて、基地局とその加入者局との間のアップリンクおよびダウンリンクは通常、相異なるリンクグループに割り当てられる。これに対して、アップリンクおよびダウンリンクのリソースをアップリンクとダウンリンクとの間で動的に割り当てることができる場合(例えば、純粋なTDMA(時分割多元接続)やポーリングベースのシステム)、それらのアップリンクおよびダウンリンクは同じリンクグループに割り当てられることになる。
【0019】
モデルおよび必要な計算をできるだけ小規模に保つため、各通信リンクは、一方向性のポイントツーポイント通信リンクとしてモデル化されるようにしてもよい。これは、双方向リンクが2つの一方向リンクとしてモデル化され、1:nポイントツーマルチポイントリンクが、代わりに、n個のポイントツーポイントリンクとしてモデル化されることを意味する。
【0020】
好ましい実施形態によれば、モデルは、リンクグループコントローラが、対応するリンクグループに対して、有効容量(以下、Cで表す)を割り当てるように実現される。有効容量Cは、それぞれのプロトコル関連のオーバーヘッド(例えば、フレームヘッダ、フレーム間スペースやガードスペース等)を差し引いた、リンクグループの「正味の」容量を反映する。有利な点として、これは従来のアクセス制御や経路選択における容量の通常の尺度のように「ビット毎秒」や「シンボル毎秒」で測定されるのではなく、スケジューリングユニット毎秒[SU・s−1]で測定される。スケジューリングユニットは、与えられたテクノロジでスケジューリングされることが可能な最小のデータ送信単位として定義される。例えば、WiMAXのOFDMAシステムでは、これはシンボルの「バースト」に相当し、タイムスロット化システムではタイムスロットに相当し、802.11のPCF(Point Coordination Function)ベースのシステムではTXOP(Transmission Opportunity, 送信機会)に相当する、などとなる。この測定単位で容量関連の情報を交換することにより、リンクグループコントローラおよびリソース管理エンティティは、(潜在的な)リソース割当の粒度についても相互に暗黙的に通知する。さもなければ、この情報は、リソース管理エンティティにおけるリンクグループコントローラの登録時に、シグナリングメッセージに明示的に含めて交換する必要がある。そうしないと、この情報は、アドミッション制御および経路計算の目的では無視されるが、その場合、リソース割当不良の可能性が増大する。
【0021】
特に、非協調的な媒体アクセスの場合、送信機間の媒体アクセス時のコンテンションの効果により、送信機に割当可能な容量領域が線型でないことを考慮することが重要である。計算量を低減するため、線型化および最大化の技術を適用することにより、リンクグループの有効容量を計算することが有利となる。この場合、線型化は、関連するすべての送信機間で比例公平性(プロポーショナルフェアネス)も実現されるように実行してもよい。別法として、容量領域の元の非線型境界を、階段関数や区分的一次関数列のような他の何らかの関数によって記述または近似することも実現可能である。
【0022】
さらに別の好ましい実施形態によれば、モデルは、リンクグループコントローラが、対応するリンクグループの各リンクに対して、当該リンク上での送信に必要な容量消費を反映するリンクコストを割り当てるように実現される。有効容量に対して選択された単位に従い、リンクグループのリンクL(L∈G)に割り当てられるリンクコストc(L)は、スケジューリングユニット毎ビット[SU・b−1]で測定してもよい。その場合、このコストの解釈は、与えられたリンク上で1ビットの情報を送信するために消費することが必要なスケジューリングユニットの個数となる。
【0023】
リンクコストは、アドミッション制御決定に関連性があると考えられる任意の情報(例えば、オーバーヘッドや他の入力)またはその組合せを含んでもよい。特に、リンクコストは、当該リンクの関連する信号送信効率、例えば、選択された変調・符号化方式の効率や、現在の無線リンク品質の結果として予想される再送のオーバーヘッドを考慮してもよい。別法として、またはこれに加えて、リンクコストは、事業者の関連する運用コスト(例えば、一部のリンクはリースされたもので支払は従量制という場合)および/または電力消費(例えば、一部のリンクによる送信は他よりもネットワークの電力消費が大きくなる場合)および/または当該リンク上の送信の干渉バジェット(例えば、一部のリンクによる送信により、隣接リンクの利用可能容量が低下する場合)を考慮してもよい。
【0024】
有利な態様として、リンクグループの容量および当該リンクグループの各通信リンクを使用するためのコストに対するメトリックの推定値は、長期的な期待値としては、控えめに(すなわち、容量を過大評価よりもむしろ過小評価し、コストに対してはその逆で)計算される。これにより、リソース管理エンティティ(RME)は、これらのメトリックに基づいて決定を行うことができる。すなわち、メトリックは十分に正確かつ安定となるため、後でリソース割当は失敗しにくい。
【0025】
高いフレキシビリティおよび包括的な適用機会を提供するため、リンクグループの容量および当該リンクグループの各通信リンクを使用するためのコストに対するメトリックの推定値は、相異なるサービス品質クラスに対して別々に計算されるようにしてもよい。サービスクラス要求の高い通信(例えば、より低い転送レイテンシや、より低い損失確率)の場合、追加的オーバーヘッド(例えば、スケジューリングや、より強固な変調・符号化のため)が、そのサービスクラスに対するリンクコストに割り当てられることになる。
【0026】
好ましい実施形態において、リンクグループの容量および当該リンクグループの各通信リンクを使用するためのコストは、特定の通信リソース、特に帯域幅リソースに関連づけられる。別法として、パラメータは、エネルギーリソースに関連づけられてもよい。例えば、エネルギーリソースを考えると、バッテリ駆動ノードのエネルギー容量や無線インタフェースのエネルギー消費はリンクグループ容量として考慮され、与えられたリンク品質およびサービスクラスでの与えられた受信機に必要な送信エネルギーはリンクコストパラメータとして考慮されてもよい。
【0027】
RMEに対して確実に通知を行うため、リンクグループの容量および当該リンクグループの各通信リンクを使用するためのコストに対するメトリックの推定値は、リンクグループコントローラからRMEへ周期的に送信されるようにしてもよい。別法として、シグナリングオーバーヘッドを低減するため、通知は、要求時のみに(すなわち、出版/購読(publish/subscribe)型で)実行されてもよい。例えば、リンクグループコントローラは、当該リンクの品質の変動により、過去の推定がもはや正確でなくなるたびに、リンクコスト推定値の更新を提供してもよい。
【0028】
好ましい実施形態によれば、RMEは、リンクグループコントローラから受信した情報に基づいて、アドミッション制御および/または経路選択の決定のテストを事前に実行するようにしてもよい。すなわち、RMEは、提供された情報を用いて、アドミッション制御や経路選択の決定がネットワーク内の残存容量にどのような影響を及ぼすかを事前にリモートでテストすることができる。
【0029】
本発明を好ましい態様で実施するにはいくつもの可能性がある。このためには、一方で請求項1および16に従属する諸請求項を参照しつつ、他方で図面により例示された本発明の好ましい実施形態についての以下の説明を参照されたい。図面を用いて本発明の好ましい実施形態を説明する際には、本発明の教示による好ましい実施形態一般およびその変形例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1a】協調型媒体アクセスの場合の容量領域を模式的に例示する図である。
図1b】非協調型媒体アクセスの場合の容量領域を模式的に例示する図である。
図2図1bの非協調型媒体アクセスに対する容量領域の線型化を模式的に例示する図である。
図3】本発明の一実施形態による、複数の物理リンクを有する無線通信ネットワークを例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
協調型媒体アクセス方式を使用する無線テクノロジに対するリンクグループの有効容量は、QoSサービスに割り当てることができる利用可能リソースと、リソース量を変化させる可能性のある種々の要因とを考慮することによって求めることができる。例えば、WiMAXのようなOFDMAシステムの場合、利用可能リソース量は、提案されるモデルにおけるスケジューリングユニットに直接マッピングすることが可能な利用可能スロット数に基づいて計算することができる。しかし、利用可能スロットの有効総数は、さまざまな変動を受ける可能性がある。本発明においては、これらの変動が、それぞれのリンクグループに関連づけられたリンクグループコントローラによって常時または周期的に測定または観測される。その結果が、少なくとも1つのリソース管理エンティティに報告される。リソース管理エンティティは、その結果に基づいて、アドミッション制御および/または経路選択の決定を行うことを担当する。
【0032】
上記の変動はさまざまなパラメータに依存し得る。そのうち最も重要ないくつかを以下に列挙して説明する。
【0033】
・パッキングアルゴリズム:ダウンリンク方向(すなわち、基地局BSから移動局MSへの送信)で、相異なるパッキング方法の結果として、データ送信に使用可能でないスロット数が異なり、パッキングされるバーストのサイズに依存してフレーム単位で変動する。
【0034】
・パディング:ダウンリンク方向で送信されるフレームは、矩形形状に収める必要がある。送信されるビット数および使用される現在の変調・符号化方式に依存して、パディングによる使用不能スロット数は相違し、これもフレーム単位で変動する。
【0035】
・変調・符号化方式(modulation and coding scheme, MCS):BSとそれに対応するMSとの間の送信に使用されるMCSは、フレーム単位で変動する可能性がある。
【0036】
・干渉:受信される干渉の量が変動すると、BSおよび/またはMSによって使用されるMCSが変化することがある。
【0037】
・シグナリングオーバーヘッド:WiMAX標準におけるシグナリング目的の詳細事項により、シグナリングされるバースト数が線型に増大しても、使用不能スロット数は線型に増大しないことがある。
【0038】
図1aは、協調型媒体アクセス方式に関し、送信機が2つのみ(レートはRおよびR)の場合における容量領域を例示している。例示した実施形態において、有効容量はy切片に対応し、曲線の傾きはリンクコストの比によって決定される。曲線の下の斜線領域は、2つの送信機間で実現可能なレート割当に対応し、曲線自体は、実現可能な最大値を表す。
【0039】
次に、例えばWiFiの(E)DCF(Enhanced Distributed Coordination Function)ベースの媒体アクセスのような、非協調型媒体アクセス方式の場合を考える。この場合、有効容量は、とりわけ、送信機の個数と、送信機がデータを送信しようとするレートとに依存する。図1bは、WiFiの(E)DCFベースの媒体アクセス方式に対する容量領域を例示している。
【0040】
図1bから分かるように、送信機間の媒体アクセス時のコンテンションの効果により、容量領域の境界となる曲線は線型でない。
【0041】
好ましい実施態様において、(E)DCFのような非協調型媒体アクセス方式に対する有効容量は以下のように求めることができる。
【0042】
最初のステップとして、与えられたリンクグループに対する容量領域が、次のように送信機のCSMA/CAパラメータを設定することによって最大化される。
・各送信機iに対して、CWmin,i=CWmax,i=CW
・AIFS=DIFS
・TXOP=一定
ただし、略称は次の一般的意味を有する。
CW=コンテンションウィンドウ(Contention Window)
AIFS=調停フレーム間スペース(Arbitration Interframe Space)
DIFS=分散協調機能フレーム間スペース(Distributed Coordination Function Interframe Space)
TXOP=送信機会(Transmission Opportunity)
【0043】
次のステップで、以下の計算を実行することにより、CWの最適な設定を求めることができる。
【0044】
まず、送信機iがバックオフスロット時間に送信を行う確率τを次のように求める。
【数1】
【0045】
τどうしの関係は次の通りである。
【数2】

ただし、Rは、送信機iの送信レートを表す。レートは、1つのτの近似的な関数として次のように表すことができる。
【数3】
【0046】
レートを最大化するため、導関数をとり、τについて解く。
【数4】
【0047】
この式から対応するCWを計算することができる。
【0048】
次に、容量領域に対する元の非線型曲線への接線を求めることによって、容量領域を線型化する。複数の接点が求まる可能性がある。ただし、好ましい実施態様では、関連する送信機間で比例公平性を保証する接点を選択する。このような線型化プロセスの例示的な結果を図2に示す。
【0049】
上記のような容量領域の線型化とは別に、容量領域の元の非線型境界を、階段関数や区分的一次関数列のような他の何らかの関数で記述または近似することも実現可能である。ただし、この代替的記述は、リンクグループ容量およびリンクコストを記述するために、より多くのパラメータ値を有するモデルを必要とする。
【0050】
図3は、本発明の一実施形態による無線ネットワークの一例を模式的に示している。論理的な一方向性ポイントツーポイントリンクによって表される物理リンクがリンクグループへとグループ化される。各リンクグループはLGCによって制御される。LGCは、集中配置されたRMEにリンクグループパラメータを報告する。好ましい実施態様による図3に例示したネットワークでは、媒体非依存のアドミッション制御および/または経路選択が以下で説明するように実行される。
【0051】
システムの動作中、LGCは、対応するリンクグループ内のリンクの性能および品質を周期的に測定(すなわち能動的)および/または観測(すなわち受動的)する。LGCの機能は通常、媒体へのアクセスをスケジューリングすることを担当する装置(例えば、WiMAXシステムでは基地局、PCFやHCCA(HCF (Hybrid Coordination Function) Controlled Channel Access)ベースのWiFiシステムではアクセスポイント)に配置されるが、必ずしもその必要はない。ただし、DCFベースのWiFiのような分散型媒体アクセス方式では、LGCも分散配置される可能性がある。
【0052】
次に、LGCは、当該リンクグループの容量と、当該グループ内の各リンクに対するコストの両方に対するメトリックを計算する。これらのメトリックに対する値は、長期間にわたって十分に正確な推定を提供するように決定される。すなわち、それらの値は、瞬時値を記述するのではなく、LGCがRMEに対して保証しようとする長期的な期待値とみなすことができる。推定は、例えば指数関数的またはスライディングウィンドウ平均、回帰モデル、履歴データ等に基づくことができる。また、推定は通常、控えめな側で行われる。すなわち、容量を過大評価するよりもむしろ過小評価する(コストに対してはその逆)。
【0053】
次に、LGCは、制御対象のリンクグループ、これらのリンクグループに含まれるリンク、リンクグループの容量、およびリンクコストに関する情報を、関連するRMEに提供する。情報の提供は、RMEの位置に応じて、シグナリングメッセージを送信することによって、または、メソッドコール(ファンクションコールとも呼ばれる、統合プログラムインタフェースによる呼出し)を通じて行われる。この情報は、基礎となるリンクテクノロジがネイティブマルチキャストをサポートするか(すなわち、1回の送信で複数の受信機へ送信することができる)、それとも、マルチキャストをエミュレートしなければならないか(すなわち、マルチキャストグループ内の各受信機へ1つずつユニキャスト送信を行う)を示すフラグをさらに含んでもよい。
【0054】
LGCがこの情報をRMEに周期的に、または要求時のみに提供することにより、シグナリングオーバーヘッドを低減することができる。例えば、LGCは、当該リンクの品質の変動により、過去の推定がもはや正確でなくなるたびに、リンクコスト推定値の更新を提供してもよい。他の情報、例えば、リンクグループがネイティブマルチキャストをサポートするかどうかは、一度だけ提供すればよい。
【0055】
次に、RMEは、提供された情報を用いて、アドミッション制御や経路選択の決定がネットワーク内の残存容量にどのような影響を及ぼすかを事前にリモートでテストすることができる。
【0056】
例えば、アドミッション制御によってネットワークにすでに受け付けられた通信フローの集合をFとし、リンクグループGのうち、与えられた送信のそれぞれの宛先受信機に到達するためにフローf∈Fが使用することを必要とするリンクの部分集合をG(G⊆G)とする。したがって、Gは、それらの受信機へ向かうマルチキャスト送信をモデル化する。注意すべき重要な点であるが、このモデルでは、ユニキャスト送信はマルチキャスト送信においてGの濃度(cardinality)を1とした特別の場合とみなすことができる。最後に、フローfのトラフィック需要をビット毎秒[b/s]で測ったものをrとする。
【0057】
特定のアドミッション制御割当を仮定すれば、特定の受信機の集合へのフローの有効コストceff(f)を計算することができ、それは、基礎となる物理テクノロジがネイティブマルチキャストをサポートするかどうか、あるいは、マルチキャストを各受信機への別々のユニキャスト送信によってエミュレートしなければならないかどうかに依存する。
【数5】
【0058】
すると、リンクグループGの残存容量C(G)は次のように計算できる。
【数6】

そして、リンクLに対する残留レートr(L)は次のようになる。
【数7】
【0059】
最後に、RMEは、LGCにシグナリングを返信することができる。このシグナリングでは、ネットワークに受け付けられて当該LGCによって制御されるリンクグループのリンクを通じてルーティングされる与えられた通信または通信のクラスに、リソースのどの部分が割り当てられるべきかを通知する。
【0060】
上記の説明および添付図面の記載に基づいて、当業者は本発明の多くの変形例および他の実施形態に想到し得るであろう。したがって、本発明は、開示した具体的実施形態に限定されるものではなく、変形例および他の実施形態も、添付の特許請求の範囲内に含まれるものと解すべきである。本明細書では特定の用語を用いているが、それらは総称的・説明的意味でのみ用いられており、限定を目的としたものではない。
図1a
図1b
図2
図3