特許第5656999号(P5656999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5656999回転再生式熱交換器のための熱伝逹要素及びバスケット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656999
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】回転再生式熱交換器のための熱伝逹要素及びバスケット
(51)【国際特許分類】
   F28D 19/04 20060101AFI20141225BHJP
   F28F 3/04 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   F28D19/04 B
   F28F3/04 B
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-525572(P2012-525572)
(86)(22)【出願日】2010年7月9日
(65)【公表番号】特表2013-502557(P2013-502557A)
(43)【公表日】2013年1月24日
(86)【国際出願番号】US2010041477
(87)【国際公開番号】WO2011022131
(87)【国際公開日】20110224
【審査請求日】2013年6月28日
(31)【優先権主張番号】12/543,648
(32)【優先日】2009年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503416353
【氏名又は名称】アルストム テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】シーバルド ジェームス ディー
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−516866(JP,A)
【文献】 実開昭54−085547(JP,U)
【文献】 特開平03−168595(JP,A)
【文献】 特開平01−273996(JP,A)
【文献】 特表2000−505187(JP,A)
【文献】 実開昭57−154874(JP,U)
【文献】 特開昭46−003389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 19/04
F28F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転再生式熱交換器(1)のための熱伝達要素(100)において、
積み重ねられたときに互いに平行でありかつ2つの隣接する熱伝達要素(100)間に通路(170)を形成するような形状とされている複数のひだ(150)であって、各々が前記熱伝達要素(100)の対向する両側から外向きに延びているたぶ(151)を包含すると共に頂部−頂部高さHnを有している、複数のひだ(150)と、
前記ひだ(150)間で互いに平行に延びている第1の複数の波状部(165)であって、各々が前記熱伝達要素(100)の対向する両側から外向きに延びているたぶ(161)を包含すると共に頂部−頂部高さHu1を有している、第1の複数の波状部(165)と、
前記ひだ(150)間で互いに平行に延びている、第1の複数の波状部(165)に隣接し且つ第1の複数の波状部(165)と互い違いの第2の複数の波状部(185)であって、各々が前記熱伝達要素(100)の対向する両側から外向きに延びているたぶ(181)を包含すると共に頂部−頂部高さHu2を有し、前記Hu2が前記Hu1よりも小さい、第2の複数の波状部(185)と、
を包含し、
熱伝達要素(100)が積み重ねられたときに、熱伝達要素(100)の各ひだ(150)は、隣接する熱伝達要素(100)の隣接する2つのひだ(150)間のほぼ中央に位置するように配置される、熱伝達要素。
【請求項2】
前記Huが前記Hnよりも小さい、請求項1記載の熱伝達要素。
【請求項3】
前記Hu2/前記Hu1の比が0.2よりも大きいが0.8よりも小さい、請求項1記載の熱伝達要素。
【請求項4】
前記Hu2/前記Hnの比が0.06よりも大きいが0.72よりも小さい、請求項3記載の熱伝達要素。
【請求項5】
前記Hu1/前記Hnの比が0.30よりも大きいが0.9よりも小さい、請求項4記載の熱伝達要素。
【請求項6】
前記第1の複数の波状部(165)が幅Wu1を有すると共に、前記第2の複数の波状部(185)が幅Wu2を有し、前記Wu1が前記Wu2と等しくない、請求項1記載の熱伝達要素。
【請求項7】
前記Wu2/前記Wu1の比が0.2よりも大きいが1.2よりも小さい、請求項6記載の熱伝達要素。
【請求項8】
更に、前記ひだ(150)間に形成されて前記ひだ(150)と平行に延びている平坦部を包含している、請求項1記載の熱伝達要素。
【請求項9】
回転再生式熱交換器(1)のための熱伝達要素(100)において、
積み重ねられたときに互いに平行でありかつ2つの隣接する熱伝達要素(100)間に通路(170)を形成するような形状とされている複数のひだ(150)であって、各々が前記熱伝達要素(100)の対向する両側から外向きに延びているたぶ(151)を包含している、複数のひだ(150)と、
前記ひだ(150)間に形成されている第1の複数の波状部(165)であって、各々が互いに平行に延びていると共に幅Wu1を有している、第1の複数の波状部(165)と、
前記ひだ(150)間に形成されている、第1の複数の波状部(165)に隣接し且つ第1の複数の波状部(165)と互い違いの第2の複数の波状部(185)であって、各々が互いに平行に延びていると共に幅Wu2を有し、前記Wu1が前記Wu2と等しくない、第2の複数の波状部(185)と、
を包含し、
熱伝達要素(100)が積み重ねられたときに、熱伝達要素(100)の各ひだ(150)は、隣接する熱伝達要素(100)の隣接する2つのひだ(150)間のほぼ中央に位置するように配置される、熱伝達要素。
【請求項10】
前記第1の複数の波状部(165)が高さHu1を有すると共に、前記第2の複数の波状部(185)が高さHu2を有し、前記Hu1が前記Hu2と等しくない、請求項9記載の熱伝達要素。
【請求項11】
前記ひだ(150)が頂部−頂部高さHnを有し、前記Hu1が前記Hnよりも小さい、請求項10記載の熱伝達要素。
【請求項12】
前記Hu2/前記Hu1の比が0.2よりも大きいが0.8よりも小さい、請求項10記載の熱伝達要素。
【請求項13】
前記Hu2/前記Hnの比が0.06よりも大きいが0.72よりも小さい、請求項12記載の熱伝達要素。
【請求項14】
前記Hu1/前記Hnの比が0.30よりも大きいが0.9よりも小さい、請求項13記載の熱伝達要素。
【請求項15】
回転再生式熱交換器(1)のためのバスケット(40)において、
複数の熱伝達要素(100)であって、間隔を置いた関係で積重され、これにより各隣接する2つの熱伝達要素(100)間に熱交換流体がこれらの各隣接する2つの熱伝達要素(100)間を流れるための通路(170)を形成している、複数の熱伝達要素(100)を包含し、
これらの熱伝達要素(100)の各々が、
積み重ねられたときに互いに平行でありかつ2つの隣接する熱伝達要素(100)間に前記通路(170)を形成するような形状とされている複数のひだ(150)であって、各々が前記熱伝達要素(100)の対向する両側から外向きに延びているたぶ(151)を包含すると共に頂部−頂部高さHnを有している、複数のひだ(150)と、
前記ひだ(150)間で互いに平行に延びている第1の複数の波状部(165)であって、各々が前記熱伝達要素(100)の対向する両側から外向きに延びているたぶ(161)を包含すると共に頂部−頂部高さHu1を有している、第1の複数の波状部(165)と、
前記ひだ(150)間で互いに平行に延びている、第1の複数の波状部(165)に隣接し且つ第1の複数の波状部(165)と互い違いの第2の複数の波状部(185)であって、各々が前記熱伝達要素(100)の対向する両側から外向きに延びているたぶ(181)を包含すると共に頂部−頂部高さHu2を有し、前記Hu2が前記Hu1及び前記Hnよりもそれぞれ小さい、第2の複数の波状部(185)と、
を包含しており
熱伝達要素(100)が積み重ねられたときに、熱伝達要素(100)の各ひだ(150)は、隣接する熱伝達要素(100)の隣接する2つのひだ(150)間のほぼ中央に位置するように配置される、バスケット。
【請求項16】
前記Hu2/前記Hu1の比が0.20よりも大きいが0.80よりも小さい、請求項15記載の回転再生式熱交換器のためのバスケット。
【請求項17】
前記Hu1/前記Hnの比が0.3よりも大きいが0.9よりも小さい、請求項16記載の回転再生式熱交換器のためのバスケット。
【請求項18】
前記第1の複数の波状部(165)が幅Wu1を有すると共に、前記第2の複数の波状部(185)が幅Wu2を有し、前記Wu1が前記Wu2と等しくない、請求項15記載の回転再生式熱交換器のためのバスケット。
【請求項19】
前記Wu2/前記Wu1の比が0.2よりも大きいが1.2よりも小さい、請求項18記載の回転再生式熱交換器のためのバスケット。
【請求項20】
前記熱伝達要素(100)が、更に、前記ひだ(150)間に形成されて前記ひだ(150)と平行に延びている平坦区域を有している、請求項15記載の回転再生式熱交換器のためのバスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転再生式熱交換器において用いられている型式の熱伝逹要素及びバスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
回転再生式熱交換器は、炉を出る煙道ガスから炉に入来する燃焼用空気へ熱を伝達するために一般的に用いられている。従来の回転再生式熱交換器、例えば、図1に符号1で示されている回転再生式熱交換器は、ハウジング14内に設けられているロータ12を有する。ハウジング14は、高温の煙道ガス36を熱交換器1を通して流すための煙道ガス入口ダクト20及び煙道ガス出口ダクト22を有する。ハウジング14は、更に、燃焼用空気38を熱交換器1を通して流すための空気入口ダクト24及び空気出口ダクト26を有する。ロータ16は複数の半径方向仕切板16又は隔壁を有し、これらの仕切板16は熱伝達要素のバスケット(フレーム)40を支持するためにそれらの間に区画室17を形成する。回転再生式熱交換器1は上下のセクタ板28により空気用セクタと煙道ガス用セクタとに分割され、これらのセクタ板28はロータ12の上面及び下面に隣接してハウジング14を横切って延びている。
【0003】
図2は、内部に積重した少数の熱伝達要素10を収容する要素バスケット40の一例を示す平面図である。3枚のみの熱伝達要素10が示されているけれども、要素バスケット40は典型的に多数の熱伝達要素10でもって充填されるものであることを認識されよう。図2に見ることができるように、熱伝達要素10は、要素バスケット40内に互いに間隔を置いた関係で接近して積重されて、熱伝達要素10間に空気又は煙道ガスの流れのための通路70を形成する。
【0004】
図1及び図2を参照するに、高温の煙道ガス36の流れは、熱交換器1の煙道ガス用セクタを通過するように向けられ、それからロータ12の連続する回転によって熱伝達要素10に熱を伝達する。熱伝達要素10は、それから、熱交換器1の空気用セクタにまで軸線18のまわりを回転させられる。この空気用セクタにおいて、燃焼用空気38の流れは熱伝達要素10を横切るように向けられ、これにより加熱される。他の型式の回転再生式熱交換器においては、熱伝達要素10が固定され、ハウジング14の空気及びガス入口及び出口部分が回転する。
【0005】
図3は、積重した関係の従来の3枚の熱伝達要素10の一部分を示す。また、図4は従来の1枚の熱伝達要素10の断面を示す。典型的に、熱伝達要素10は、ひとつ又はそれ以上のひだ50及び波状部65を有する形状に作られている鋼板である。
【0006】
ひだ50は、一般的には等しく離れた間隔を置いて熱伝達要素10から外向きに延びている。これらのひだ50は、熱伝達要素10が図3に示されるように積重されたときに、各隣接する2枚の熱伝達要素10間の間隔を維持し、したがって各隣接する2枚の熱伝達要素10間に空気又は煙道ガスのための通路70の両側部を形成する。典型的に、これらのひだ50は図1のロータ12を通過する流体流れに関して所定の角度(例えば、90°)で延びている。
【0007】
ひだ50に加えて、熱伝達要素10は、典型的に、図3に“A”を付けた矢印により示されている熱交換流体の流れに対して鋭角Auで各隣接する2つのひだ50間に延びている一連の波状部65を形成するようにコルゲートされている。これらの波状部65は、高さHuを有して、通路70を通して流れる空気又は煙道ガスの乱流を増大せしめる作用をなし、これにより熱境界層を崩壊せしめる。これらの熱境界層は、崩壊されないと、熱伝達要素10の表面に隣接する流体媒体(空気又は煙道ガス)の一部分に存在するであろう。崩壊しない液体境界層の存在は、流体と熱伝達要素10との間の熱伝達を妨げやすい。熱伝達要素10の波状部65は、流れラインに対して斜めに延びる。この方法において、波状部65は熱伝達要素10と流体媒体との間の熱伝達を改善せしめる。更に、熱伝達要素10は、そのひだ50と平行であってかつひだ50に全体が接触している平坦部分(図示せず)を包含することができる。熱伝達要素10の他の例として、米国特許第2,596,642号、第2,940,736号、第4,396,058号、第4,744,410号、第4,553,458号及び第5,836,379号明細書が参照される。
【0008】
以上述べた熱伝達要素は良好な熱伝達率を提供するけれども、その結果はひだと波状部との間の特別な設計及び寸法関係に広く依存して変わるものである。例えば、波状部は熱伝達の多大な増大を提供する一方、これらの波状部はまた熱交換器(例えば、図1の熱交換器1)にわたって圧力降下を増大せしめるものである。理想的には、熱伝達要素の波状部は熱伝達要素に隣接する流体媒体の一部分に比較的大きな乱流を生じせしめ、これに対してひだは熱伝達要素に隣接していない流体媒体(すなわち、通路の中心部に近い流体)が小さな乱流、それ故流れに対しての非常に小さい抵抗を受けるような寸法とされることである。しかしながら、波状部から最適なレベルの乱流を得ることは困難なものである。なぜなら、熱伝達及び圧力損失は波状部によって生じられる乱流の大きさに比例する傾向があるからである。熱伝達を生じせしめる波状設計は、また、圧力損失を生じせしめ、逆に、圧力損失を小さくせしめる形状はまた熱伝達をも小さくせしめる。
【0009】
熱伝達要素の設計は、更に、容易に清浄可能である表面形状を提供しなければならない。熱伝達要素を清浄にするために、スートブロワを用いることが一般的である。これらのスートブロワは、積重した熱伝達要素間の通路を通して高圧の空気又は蒸気の吹き付けを行い、これにより熱伝達要素の表面から微粒子堆積物を取り除いて運び去り、熱伝達要素の表面をかなり清浄にする。スートブローイングを行うために、熱伝達要素を次のような形状、すなわち、これらの熱伝達要素がバスケット内において積重されたときに、通路が熱伝達要素間に通視線を提供するために十分に開口し、スートブロワのジェットが清浄のために熱伝達要素又は板間を通過することができるようにする形状にすることは有益なことである。幾つかの熱伝達要素はこのような開口通路を提供することができず、これらの熱伝達要素は、良好な熱伝達及び圧力降下特性を有するけれども、従来のスートブロワによって非常に良く清浄されない。このような開口通路は、また、熱交換要素を去る赤外線の量を測定するセンサの使用を行うことができるようにする。赤外線センサは“ホットスポット”の存在を検出するために用いることができ、“ホットスポット”は一般にバスケット(例えば、図2のバスケット40)内の発火の前兆として認められる。一般に“ホットスポット検出器”として知られている、このようなセンサは発火の開始及び成長を防止するのに有益である。開口通路を有することができない熱伝達要素は、赤外線が熱伝達要素から去るのを妨げ、それ故ホットスポット検出器によって検出されるのを妨げる。
【0010】
したがって、一定量の熱伝達に対して減少した圧力損失を提供し、また、スートブロワにより容易に清浄可能であってかつホットスポット検出器と適合可能な、回転再生式熱交換器の熱伝逹要素が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一態様によれば、
回転再生式熱交換器のための熱伝達要素において、
互いに平行でありかつ2つの隣接する熱伝達要素間に通路を形成するような形状とされている複数のひだであって、各々が前記熱伝達要素の対向する両側から外向きに延びているたぶを包含すると共に頂部−頂部高さHnを有している、複数のひだと、
前記ひだ間で互いに平行に延びている第1の複数の波状部であって、各々が前記熱伝達要素の対向する両側から外向きに延びているたぶを包含すると共に頂部−頂部高さHu1を有している、第1の複数の波状部と、
前記ひだ間で互いに平行に延びている第2の複数の波状部であって、各々が前記熱伝達要素の対向する両側から外向きに延びているたぶを包含すると共に頂部−頂部高さHu2を有し、前記Hu2が前記Hu1よりも小さい、第2の複数の波状部と、
を包含する熱伝達要素が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、
回転再生式熱交換器のための熱伝達要素において、
互いに平行でありかつ2つの隣接する熱伝達要素間に通路を形成するような形状とされている複数のひだであって、各々が前記熱伝達要素の対向する両側から外向きに延びているたぶを包含している、複数のひだと、
前記ひだ間に形成されている第1の複数の波状部であって、各々が互いに平行に延びていると共に幅Wu1を有している、第1の複数の波状部と、
前記ひだに形成されている第2の複数の波状部であって、各々が互いに平行に延びていると共に幅Wu2を有し、前記Wu1が前記Wu2と等しくない、第2の複数の波状部と、
を包含する熱伝達要素が提供される。
【0013】
本発明の更に他の態様によれば、
回転再生式熱交換器のためのバスケットにおいて、
複数の熱伝達要素であって、間隔を置いた関係で積重され、これにより各隣接する2つの熱伝達要素間に熱交換流体がこれらの各隣接する2つの熱伝達要素間を流れるための通路を形成している、複数の熱伝達要素を包含し、
これらの熱伝達要素の各々が、
互いに平行でありかつ2つの隣接する熱伝達要素間に通路を形成するような形状とされている複数のひだであって、各々が前記熱伝達要素の対向する両側から外向きに延びているたぶを包含すると共に頂部−頂部高さHnを有している、複数のひだと、
前記ひだ間で互いに平行に延びている第1の複数の波状部であって、各々が前記熱伝達要素の対向する両側から外向きに延びているたぶを包含すると共に頂部−頂部高さHu1を有している、第1の複数の波状部と、
前記ひだ間で互いに平行に延びている第2の複数の波状部であって、各々が前記熱伝達要素の対向する両側から外向きに延びているたぶを包含すると共に頂部−頂部高さHu2を有し、前記Hu2が前記Hu1及び前記Hnよりもそれぞれ小さい、第2の複数の波状部と、
を包含している、バスケットが提供される。
【0014】
本発明の要旨は、特に、特許請求の範囲に明確に記載されている。本発明の上述した及び他の特徴及び利点は、添付図面と関連して述べられる下記の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】先行技術の回転再生式熱交換器を、一部分を切断して示す斜視図である。
図2】少数の熱伝達要素を収容する、先行技術の要素バスケットの平面図である。
図3】積重した状態の、先行技術の3枚の熱伝達要素の一部分の斜視図である。
図4】先行技術の1枚の熱伝達要素の一部分の断面図である。
図5】本発明の一実施形態による熱伝達要素の一部分の断面図である。
図6】本発明の一実施形態による熱伝達要素の一部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図5及び図6は、本発明の一実施形態による熱伝達要素100の一部分を示す。熱伝達要素100は、図1の回転再生式熱交換器1の従来の熱伝達要素10の代りに用いることができる。例えば、熱伝達要素100は、図1に示されている型式の回転再生式熱交換器1に用いるために、図3に示されるように積重し、そして図2に示されるようにバスケット40内に挿入することができる。
【0017】
以下、図5及び図6を参照して本発明を詳細に説明する。熱伝達要素100は、所望する形状に圧延又は鍛造することができる薄い金属板から形成される。熱伝達要素100は互いに間隔を置いている一連のひだ150を有し、これらのひだ150は“A”を付けた矢印により示されているように熱伝達要素100を通る熱交換流体の流れ方向に対してほぼ平行にして長手方向に延びている。これらのひだ150は、複数の熱伝達要素100が積重されたときに各隣接する2枚の熱伝達要素100間に所定の離れた間隔を維持せしめて、流れ通路170を形成する。各ひだ150は、2つのたぶ151を包含し、一方のたぶ151は熱伝達要素100の表面から一方の側へ外向きに突出し、また他方のタブ151は熱交換要素100の表面から反対側の他方の側へ外向きに突出する。各たぶ151は、熱伝達要素100から正反対の方向へ外向きに向けられたひだ150の頂部153を有するU形溝の形とすることができる。ひだ150の頂部153は、隣接する他の熱伝達要素100に接触して、熱伝達要素100間の間隔を維持せしめる。また、図3に示される従来の熱伝達要素10と同様に、熱伝達要素100は、各熱伝達要素のひだが最大支持のために隣接する他の熱伝達要素100のひだ150間のほぼ中央に位置するように配置することができる。図示していないけれども、熱伝達要素100はひだ150と平行に延びる平坦区域を包含することができ、この平坦区域上に隣接する他の熱伝達要素100のひだ150を載せることができる。各ひだ150の2つのたぶ151間の頂部−頂部高さは、“Hn”で示されている。
【0018】
各熱交換要素100のひだ150間には、2つの異なる高さを有する第1の波状部165及び第2の波状部185が形成されている。
【0019】
第1の波状部165及び第2の波状部185は、それぞれ、複数の波状部165,185から成っている。熱交換要素100の一部分のみが示されているけれども、各熱交換要素100は、幾つかのひだ150と、各一対のひだ150間に形成されている第1の複数の波状部165及び第2の複数の波状部185とを包含することができる。
【0020】
各波状部165は、ひだ150間の他の波状部165と平行にして延びている。各波状部165は2つのたぶ161を包含し、一方のたぶ161は熱伝達要素100の表面から一方の側へ外向きに延び、また他方のたぶ161は熱交換要素100の表面から反対側の他方の側へ外向きに延びている。各たぶ161は、熱伝達要素100から正反対の方向へ外向きに延びている。各たぶ161は、熱伝達要素100から正反対の方向へ外向きに向けられた通路の頂部163を有するU形通路の形とすることができる。各波状部165は、2つの頂部163間の頂部−頂部高さHu1を有する。
【0021】
各波状部185は、ひだ150間の他の波状部185と平行にして延びている。各波状部185は2つのたぶ181を包含し、一方のたぶ181は熱伝達要素100の表面から一方の側へ外向きに延び、また他方のたぶ181は熱伝達要素100の反対側の他方の側へ外向きに延びている。各たぶ181は、熱伝達要素100の正反対の方向へ外向きに向けられた通路の頂部183を有するU形通路の形とすることができる。各波状部185は、2つの頂部183間の頂部−頂部高さHu2を有する。
【0022】
本発明の一態様において、Hu1及びHu2は異なる高さである。Hu1/Hnの比は、臨界パラメータである。なぜなら、この比は2つの隣接する熱伝達要素100間の開口区域の高さを限定し、この開口区域の高さは流体が通過して流れるための通路170を形成するからである。
【0023】
図示した実施形態において、Hu2はHu1よりも小さく、かつHu1及びHu2の両方はHnよりも小さい。好適には、Hu2/Hu1の比は0.20よりも大きいが0.80よりも小さい。より好適には、Hu2/Hu1の比は0.35よりも大きいが0.65よりも小さい。Hu2/Hnの比は、好適には、0.30よりも大きいが0.90よりも小さい。Hu2/Hu1の比が0.20よりも下であるときには、波状部が小さくなって、乱流を生じせしめる効果を小さくし、効率を小さくせしめる。
【0024】
Hu2/Hu1の比が0.80よりも大きいときには、第1及び第2の波状部の高さはほとんど等しく、先行技術よりも優れる改善は最小である。
【0025】
Hu1/Hnの比及びHu2/Hu1の比が選択されると、Hu2/Hnの比は決定される。
【0026】
本発明の他の態様において、Wu1及びWu2によって示されているように、各波状部165のそれぞれの幅は各波状部185のそれぞれの幅と異ならせることができる。好適には、Wu2/Wu1の比は0.20よりも大きいが1.20よりも小さい。より好適には、Wu2/Wu1の比は0.5よりも大きいが1.10よりも小さい。Wu1及びWu2の選択は、主として、Hu1及びHu2のために用いられた値に依存して、決められる。本発明の好適な実施形態の総目的のひとつは、熱伝達要素の表面の近くに最適な量の乱流を生じせしめることである。これは、2種類の波状部の両方の、断面において見たときの形状がその目的にしたがって設計される必要があり、各波状部の形状がその高さ対その幅の比によって多分に決定されることを意味する。更に、波状部の幅の選択は、また、熱伝達要素によって提供される表面積の量に影響を与えるものであり、表面積はまた流体と熱伝達要素との間の熱伝達の量に強い影響を与えるものである。
【0027】
本発明と対比して、図4に示されるように、従来の熱伝達要素10の波状部65はすべて同じ高さHuであり、またすべて同じ幅Wuである。風洞テストは、驚いたことに、従来の均一な波状部65を本発明の波状部165及び185に置換することにより、熱伝達及び流体流れを同一の割合に維持しながら、圧力損失を著しく減少(約14%)せしめることができることを示した。これは、オペレータに対してコスト節約を与えるものである。なぜなら、空気及び煙道ガスが回転再生式熱交換器を通して流れるときの空気及び煙道ガスの圧力損失を減少せしめることは、空気及び煙道ガスを熱交換器に通して流すように付勢せしめるのに用いられるファンにより消費される電力を減少せしめるからである。
【0028】
理論によって束縛されるのは望まないけれども、熱伝達媒体が熱伝達要素100間を流れるときに熱伝達媒体が出会う波状部165及び185の高さ及び/又は幅の差は、熱伝達要素100の表面に隣接する流体境界層に、より多くの乱流を生じせしめ、熱伝達要素100の表面から更に遠く離れている通路の開口区域には少ない乱流を生じせしめるものと考えている。流体境界層に乱流が加えられることは、流体と熱伝達要素100との間の熱伝達率を増大せしめる。熱伝達要素100の表面から離れている乱流が減少することは、流体が通路170を通して流れるときの圧力損失を減少せしめるのに役立つ。2種類の波状部の高さHu1及びHu2を調節することにより、伝達される全体の熱が同じ量であるときには、流体の圧力損失を減少せしめることができる。
【0029】
本発明の熱伝達要素100の優れた熱伝達及び圧力降下性能は、また、従来の均一の波状部65を有する熱交換要素10と比較したときに、等しい量の熱伝達をなおも維持しながら、波状部165と熱伝達流体の一次流れ方向との間の角度を多少減少せしめることができる利点を有する。これは、また、波状部185と熱伝達流体の一次流れ方向との間の角度にも言えることである。
【0030】
これは、波状部165及び185がスートブロワのジェットと良好に整列されるので、スートブロワのジェットにより良好に清浄することを可能にする。更に、波状部の角度を減少せしめることは熱伝達要素100間に良好な通視線を提供するので、本発明は赤外線(ホットスポット)検出器と適合することができる。
【0031】
以上本発明を種々の例示的な実施形態でもって詳述してきたけれども、当業者にとっては、本発明の範囲から逸脱することなしに、種々の変形を行うことができると共に、種々の等価物をその要素に代えることができることを理解されよう。更に、多くの変形が、本発明の本質的な範囲を逸脱することなしに、本発明の教示に対して特定の形態を工夫するために行うことができるものである。したがって、本発明は、本発明を実施するように意図した最良の形態として述べた特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は特許請求の範囲の記載の範囲内にあるすべての実施形態を包含するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6