特許第5657008号(P5657008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5657008光ビームを二つの異なる方向へ偏向するための装置と方法、ならびに、走査型顕微鏡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5657008
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】光ビームを二つの異なる方向へ偏向するための装置と方法、ならびに、走査型顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/12 20060101AFI20141225BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20141225BHJP
   G02B 26/08 20060101ALN20141225BHJP
【FI】
   G02B21/12
   G02B26/10 C
   !G02B26/08 E
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-534598(P2012-534598)
(86)(22)【出願日】2010年8月27日
(65)【公表番号】特表2013-508759(P2013-508759A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2010062532
(87)【国際公開番号】WO2011047911
(87)【国際公開日】20110428
【審査請求日】2013年7月2日
(31)【優先権主張番号】102009050340.4
(32)【優先日】2009年10月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500178876
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムス ツェーエムエス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】フェーラー ディルク・オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ベーム インゴ
【審査官】 原田 英信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−090977(JP,A)
【文献】 特開2003−167211(JP,A)
【文献】 特開2003−043385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00−21/00
G02B 21/06−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの光ビームを二つの異なる方向へ偏向するための装置(20)であって、
一つの鏡(22)と、
第一回転作動要素(24)と、
第二回転作動要素(26)と、
第一バネ要素(28)と、及び、
第二バネ要素(30)とを備えており、
前記第一回転作動要素(24)は、第一作動信号に基いて第一軸(54)の周りを回転し、
前記第二回転作動要素(26)は、前記第一軸(54)に沿って前記第一回転作動要素(24)と向かい合わせに配置され、且つ、第二作動信号に基いて第一軸(54)の周りを回転し、
前記第一バネ要素(28)は、前記第一回転作動要素(24)と、及び、規定した第一距離だけ第一軸(54)からずれて停止位置の前記鏡(22)と結合され、
前記第二バネ要素(30)は、前記第二回転作動要素(26)及び前記鏡(22)と結合されることで
前記第一作動信号及び前記第二作動信号が同じ形であり且つ互いに位相がずれていない場合は、前記鏡(22)が前記第一軸(54)の周りで回転され、また、前記第一作動信号及び前記第二作動信号が同じ形でない及び/又は互いに位相偏移を有している場合は、前記鏡(22)が、前記第一軸とは異なる前記第二軸の周りで回転される、
装置。
【請求項2】
第二回転作動要素(26)は、規定した第二距離だけ第一軸(54)からずれて鏡(22)と結合される、請求項1に記載の装置(20)。
【請求項3】
第一バネ要素(28)が第一接触点(29)で鏡(22)と結合され、
第二バネ要素(30)が第二接触点(31)で鏡(22)と結合され、
第一軸(54)上の第一接触点(29)の突起点(35)が、第一軸(54)上の第二接触点(31)の突起点(37)に対し規定した第三距離(P1)を有している、請求項1又は2に記載の装置(20)。
【請求項4】
第一バネ要素(28)が第一接触点(29)で鏡(22)と結合され、
第二バネ要素(30)が第二接触点(31)で鏡(22)と結合され、
鏡(22)の停止位置において、一つの面が、第一軸(54)と、鏡(22)の中心における法線とにまたがり、及び、
前記二つの接触点(29、31)が前記面について同じ側に存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置(20)。
【請求項5】
第一、及び/又は、第二バネ要素(28、30)が、装着部(32)を介して鏡(22)に取り付けられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置(20)。
【請求項6】
第一軸(54)が、鏡(22)の停止位置において、鏡(22)、及び/又は、装着部(32)を横切る、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置(20)。
【請求項7】
第一バネ要素(28)は、第一回転作動要素(24)と結合される領域において第一軸(54)と垂直又は概ね垂直であり、且つ、鏡(22)又は装着部(32)と結合される領域において第一軸(54)と平行又は概ね平行であり、及び/又は、
第二バネ要素(30)は、第二回転作動要素(26)と結合される領域において第一軸(54)と垂直又は概ね垂直であり、且つ、鏡(22)又は装着部(32)と結合される領域において第一軸(54)と平行又は概ね平行である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置(20)。
【請求項8】
第三バネ要素(36)と、及び/又は、第四バネ要素(34)を備えており、
前記第三バネ要素(36)は、第一回転作動要素(24)と、及び、規定した第四距離だけ第一軸(54)からずれて鏡(22)と結合され、
前記第四バネ要素(34)は、第二回転作動要素(26)と、及び、規定した第五距離だけ第一軸(54)からずれて鏡(22)と結合された、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置(20)。
【請求項9】
第一軸(54)について同心円状に形成され、且つ、それぞれが回転作動要素(24、26)の、又は、回転作動要素(24、26)のホルダ(44、46)の少なくとも一部を半径方向に取り囲む、二つの凹部を有しており、及び、
第二軸(56)に沿って配置されたピボット軸受(38、40)をそれぞれ介して鏡(22)の装着部(32)に結合された、一つの外部ガイド要素(42)を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置(20)。
【請求項10】
第三、及び/又は、第四バネ要素(36、34)が、ピボット軸受(38、40)のうち一つを介して鏡(22)の装着部(32)に結合される、請求項9に記載の装置(20)。
【請求項11】
第三作動信号に基いて第一及び第二回転作動要素(24、26)を、したがって、鏡(22)を、鏡(22)の停止位置において第一軸(54)と垂直又は概ね垂直な第三軸(57)の周りに回転させる、第三回転作動要素(50)を備えた、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置(20)。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の、一つの光ビームを偏向するための装置(20)を備えた走査型顕微鏡。
【請求項13】
一つの光ビームを二つの異なる方向へ偏向するための方法であって、
前記光ビームが一つの鏡(22)に向けられ、
前記鏡(22)が、第一作動信号に基いて、第一軸(54)の周りを回転する第一回転作動要素(24)を作動することによって、且つ、第二作動信号に基いて、第一軸(54)の周りを回転する第二作動要素(26)を作動することによって、第一軸(54)の周りを回転され、前記二つの作動信号は、同じ形であって、互いに位相偏移を有しておらず、及び、
前記二つの作動信号が互いに同じ形でなく、及び/又は、位相偏移を有している場合には、前記鏡(22)が、前記第一軸(54)とは異なる第二軸の周りを回転する、方法。
【請求項14】
二つの作動信号のうち少なくとも一つが変化する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの光ビームを二つの異なる方向へ偏向するための装置に関連している。本発明はまた、前記光ビームを二つの異なる方向へ偏向するための装置を備えた走査型顕微鏡と、一つの光ビームを二つの異なる方向へ偏向する方法に関連している。
【背景技術】
【0002】
走査型顕微鏡の場合、照明光ビームは、検査すべき試料の一領域に、例えば多数の鏡を介して、及び、集束光学系を用いて集束される。前記検査すべき領域から出る検出光は、検出器で検出される。作動要素が鏡を振動しながら傾けるために用いられて、照明光ビームの偏向をもたらし、そうして照明光ビームで試料を走査することができる。ここで、照明光ビームの焦点が、引き続いて検査すべき隣接領域に向けられるように、照明光ビームを偏向する。前記過程において捕捉された画像データが保存され、画像生成ユニットによって組合わされて、全ての検査領域の全体画像を形成する。
【0003】
特許文献1は、走査型顕微鏡において光ビームを偏向するための装置を開示している。前記装置は、第一軸の周りを回転可能なユニットを有しており、且つ、互いに静止している二つの反射表面を備えている。第一の回転可能なユニットは、光ビームを受け取り、前記第一回転軸に対して垂直な第二軸の周りを回転可能な第三反射表面にそれを送る。前記装置は、少なくとも3つの鏡と少なくとも3つの回転作動要素とを備えており、そのうちの一つは、その停止位置の周りで振動する。
【0004】
特許文献2は、互いに実質的に垂直な二つの軸に沿って試料を走査するための光学装置を開示している。前記光学装置は3つの鏡を備えており、そのうち二つは第一振動回転作動要素に結合され、もう一つは第二振動回転作動要素に結合される。
【0005】
このように、公知の走査装置は二つ以上の鏡と少なくとも二つの作動要素とを有している。多数の鏡の結果、走査装置はあまり小型にならず、製造コストが高い、というのも、複数の鏡は互いに調和、つまり、調整しなければならないからである。さらに、鏡が傾けられた場合、多数の鏡は、鏡の停止位置における基準ビーム路に対してずれたビームを結果として生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE 102 09 322 A1
【特許文献2】DE 196 54 210 C2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、一つの鏡だけを必要とし、特に小型で費用効果良く製造又は実施することができる、一つの光ビームを二つの異なる方向へ偏向するための装置と方法、ならびに、走査型顕微鏡を発展することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、独立請求項の特徴構成によって解決される。有利な展開は従属請求項中に特定している。
【0009】
第一態様にしたがうと、本発明は、一つの光ビームを二つの異なる方向へ偏向するための装置に関連している。前記装置は、第一回転作動要素に結合された一つの鏡を備えている。前記第一回転作動要素は、第一作動信号に基いて第一軸の周りを回転する。前記第一回転作動要素に加え、第二回転作動要素に対する備えもされる。本発明は、前記第二回転作動要素が、前記第一軸に沿って前記第一回転作動要素と向かい合わせに配置され、且つ、第二作動信号に基いて第一軸の周りを回転すること、及び、前記第一回転作動要素が、予め決められた(規定の)第一距離だけ第一軸からずれて、第一バネ要素を介して前記鏡に結合されること、及び、前記第二回転作動要素は前記鏡に第二バネ要素を介して結合されること、の効果によって特徴づけられる。
【0010】
前記複数の回転作動要素を作動することにより、前記回転作動要素の、第一軸の周りの回転を開始する。これがバネ要素の弾性変形をもたらし、次に鏡上に力を伝達する。二つの回転作動要素の、同じ形の作動、及び、位相偏移(位相ずれ、フェースシフト)の無い作動の場合には、二つの回転作動要素を第一軸に沿って配置することにより、トルクを鏡に作用させ、当該トルクは第一軸に対して平行であり、専ら第一軸周りの鏡の回転をもたらす。
【0011】
したがって、以下の文章では、位相偏移の無い作動と、位相偏移の無い作動信号とは、同じ形の同一作動信号である場合に、作動又は作動信号が専ら第一軸周りの鏡の回転をもたらすということを明確に意味すると理解される。回転作動要素の設計及び配置によっては、これは、180°の位相飛躍をもたらす構成部品の干渉を要求するかもしれない。
【0012】
第一バネ要素を第一軸からずらして鏡に結合することによって、前記複数回転作動要素の非同一形式の、及び/又は、位相のずれた作動の場合には、トルクを発生し、当該トルクは少なくとも部分的に第一軸と非平行であり、したがって、第一軸からずれた第二軸の周りを前記鏡が回転するように当該鏡に作用する。特に前記バネ要素は第一軸から外れて前記鏡に結合され、且つ、前記回転作動要素は、第二軸が第一軸と垂直になるように作動され得る。
【0013】
さて、光ビームが鏡に向けられると、光ビームによって作り出され、且つ、前記鏡によって偏向された光点が、第一軸の周りに鏡を傾けることによって第一方向へ偏向され、及び、第二軸の周りに鏡を傾けることによって第二方向へ偏向され、より詳細には、前記第二方向は、前記第二軸が第一軸と垂直である場合には、第一方向と垂直である。それから、二つの回転作動要素のうち少なくとも一つがその停止位置の周りで振動するように、二つの回転作動要素のうち一つが、又は、両回転作動要素が作動される場合には、光点も、例えば第一方向に往復運動する。光学的に走査された直線領域は、このように、回転作動要素の適切な作動のもとで第二方向へ位置を変えることができ、その結果、全部で、二次元領域を光学的に走査することができる。回転作動要素の適切な作動のもとでは、光点は、例えば次に蛇行した又はz形状をした領域を光学的に走査することができ、特に、蛇行して又はz状に試料を走査することができる。
【0014】
光ビームを、より詳細には、それによって作り出された光点を異なる二つの方向、例えば、直交する方向へ偏向するための、公知の走査装置と比較して、少なくとも二つの鏡を省くことができるのです。その結果、装置は、特に小さく小型で、且つ、費用効率良く製造することができる、というのも、当該走査装置は、さらに少ない構成部品を備え、且つ、複数の鏡を互いに調和することも、互いに調整することも必要無いからである。光ビームが後者の回転中心において鏡表面上に入射する場合、鏡が傾けられるても鏡上の光ビームの位置はさらに変化せず、その結果、例えばポリゴンミラースキャナ(多鏡スキャナ)におけるようなビームオフセットが存在しない。
【0015】
作動信号が同じ形であるということは、作動信号の振幅と周波数が同一であることを意味する。例として、作動信号はこの場合、正弦波、鋸歯、矩形、又は、ステップ様であってもよい。また、異なる形状の複数の信号を重ねることも可能である。二つの作動信号が互いに位相がずれているということは、第一の作動信号と第二の作動信号の間に位相偏移が存在することを意味する。前記(二つの)作動要素が前記第一軸の周りを回転する回転方向とは、両作動要素が第一軸について同じ方向に回転する場合に、両者が同じ回転方向を有することを意味する。したがって、回転方向とは、固定された外部基準システムと関係している。規定の第一距離は、少なくともゼロより大きい。
【0016】
有利な形態において、第二回転作動要素も、規定の第二距離だけ第一軸からずれた鏡に結合され、その結果、第二バネ要素上のねじり応力が減少する。代わりに、又は、それに加えて、第一バネ要素を第一接触点で鏡と結合し、第二バネ要素を第二接触点で鏡と結合し、その際、第一軸上の第一接触点の突起点(突起部)は、第一軸上の第二接触点の突起点に対し規定の第三距離だけ有している。代わりに、又は、それに加えて、前記接触点は、第一軸と、鏡の停止位置における鏡の中心の(を通る)法線にまたがる面について、同じ側に存在するように配置される。前記接触点が第一軸について互いに間隔をあけられていることと、前記接触点が前記面の一方の側に存在していることは、個々に、又は、組み合わせて、第二軸が第一軸に正確に垂直であることをもたらす。これはまた、光ビームが互いに実質的に垂直に偏向される前記二つの方向を与える。
【0017】
別の有利な形態では、第一回転作動要素に結合され、且つ、軸から規定の第四距離だけずれて鏡に結合された第三バネ要素と、及び/又は、第二回転作動要素に結合され、且つ、第一軸から規定の第五距離だけずれて鏡に結合された第四バネ要素とを、前記装置が備えている。前記二つの追加のバネ要素は、特に正確な鏡の動きをもたらす、というのも、それらは保持及びガイド機能を備えているからである。この効果は、光ビーム、より詳しくは、光点が非常に正確に偏向され得るということである。
【0018】
第一軸と同軸に(同心円状に)形成され、且つ、それぞれが回転作動要素の、又は、回転作動要素のホルダの少なくとも一部を半径方向に取り囲む、二つの凹部を有する外部ガイド要素が配置されるのが好ましい。前記外部ガイド要素は、第二軸に沿って配置されたそれぞれ一つのピボット軸受を介して鏡の装着部へ結合される。前記外部ガイド要素は、鏡の動きを特に正確にガイドする可能性、したがって、光ビームを特に正確に二つの異なる方向へ偏向する可能性を与える。
【0019】
第三作動信号に基いて、第一及び第二回転作動要素を回転させ、よって、前記二つの回転作動要素に保持された鏡も第三軸の周りを回転させる、第三回転作動要素を配置することにより、前記鏡を、鏡の停止位置において第一軸と垂直な第三軸の周りに回転させることが可能となる。これは、蛇行形状に加えていかなる走査パターンも得る可能性と、及び/又は、複雑な形状をした領域を正確に走査する可能性を与える。特に、全走査領域が回転され得る。走査領域が回転され得る公知の走査装置と比べて、このように五つまでの鏡を省くことが可能となる。
【0020】
第二態様にしたがうと、本発明は、光ビームを、より詳細には照明光ビームを偏向するために、当該光ビームを偏向するための装置を備えた走査型顕微鏡によって特徴づけられる。
【0021】
第三態様にしたがうと、本発明は、回転作動要素からの二つの作動信号であって、同じ形であり、互いに位相偏移を有していない二つの作動信号によって、光ビームが第一方向に偏向されるということ、及び、前記二つの作動信号が同じ形でなく、及び/又は、互いに位相偏移を有する場合には、第二軸の周りを鏡が回転するということによって、特徴づけられる。
【0022】
本発明の実施形態は、概略図に基いて以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】光ビームを偏向するための装置の、第一実施形態の図である。
図2】光ビームを偏向するための装置の、第二実施形態の図である。
図3】光ビームを偏向するための装置の、第三実施形態の図である。
図4】光ビームを偏向するための装置の、第四実施形態の図である。
図5】光ビームを偏向するための装置の、第五実施形態の図である。
図6】光ビームを偏向するための装置の、第六実施形態の図である。
図7】光ビームを偏向するための装置を備えた、走査型顕微鏡の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
同一設計又は機能を備えた要素は、図全体にわたって同一の参照符号で示されている。
【0025】
図1は、一つの光ビームを二つの異なる方向へ偏向するための装置20の第一実施形態を表しており、第一バネ要素28を介して第一回転作動要素24に結合され、且つ、第二バネ要素30を介して第二回転作動要素26に結合された、鏡22を備えて構成される。前記第一回転作動要素24は、第一バネ要素28及び第一装着部32を介して前記鏡22に結合される。鏡22について、前記第二回転作動要素26は、第一回転作動要素24と向かい合わせに配置され、且つ、第二バネ要素30と前記装着部32を介して鏡22に結合される。さらに、第三バネ要素36と第四バネ要素34も配置される。これらは、第一回転作動要素24と第二回転作動要素26を、それぞれ第一ピボット軸受38を介して第二装着部33に結合する。前記第一ピボット軸受38は、前記第二装着部33と外部ガイド要素42との間の可動接合部である。第二ピボット軸受40が、前記第一ピボット軸受38と向かい合わせに配置される。前記第二ピボット軸受40は、前記第一装着部32と外部ガイド要素42との間の可動接合部である。
【0026】
前記二つの回転作動要素24、26は、支持体48に結合された第一回転作動要素24のホルダ44と、及び、支持体48に結合された第二回転作動要素26のホルダ46とを介して結合される。前記支持体48は、第三回転作動要素50を介して、装置20の台座52に結合される。
【0027】
それぞれ第一及び第二作動信号により、前記二つの回転作動要素24、26は、第一両方向矢印D1と第二両方向矢印D2にしたがい、上記回転作動要素24、26の停止位置の周りを往復して振動する、その際、前記第一軸54が振動運動の回転軸となる。回転作動要素24、26の停止位置とは、作動していない場合の回転作動要素24、26の位置にあたる。回転作動要素24、26が停止位置にある場合、鏡22も停止位置に存在する。鏡22の停止位置において、鏡22の鏡表面は、第一軸54と第二軸56にまたがる第一面と平行である。第二軸56は、第一軸54と垂直であり、且つ、二つのピボット軸受38、40によって規定された回転軸にあたる。
【0028】
第一回転作動要素24は、第一及び第三バネ要素28、36を介して、第一軸54から規定の第一距離だけずれて鏡22に結合される。第二回転作動要素26は、第二及び第四バネ要素26、34を介して、第一軸54から規定の第二距離だけずれて鏡22に結合される。前記第一距離は第二距離と同じである。前記第一バネ要素28は、第一接触点29で第一装着部32と結合し、且つ、前記第二バネ要素30は、第二接触点31で第一装着部32と結合する。第一突起点35は、第一接触点29を突き出て、鏡22の停止位置における第一軸54上に現れる。第二突起点37は、第二接触点31を突き出て、鏡22の停止位置における第一軸54上に現れる。前記二つの突起点35、37は、第一軸54上で、規定の第三距離P1だけ間隔があけられている。第一軸54と、鏡22の中心を通るそれに垂直な法線とにまたがるのは一つの面である。前記面について、前記二つの接触点29、31は同じ側に位置する。第一軸54は、鏡22の停止位置において鏡22を横切る。
【0029】
第一バネ要素28が第一回転作動要素24に結合する領域において、前記第一バネ要素28は、第一軸54に対し殆んど垂直である。第一バネ要素28が第一装着部32に結合する領域において、前記第一バネ要素28は、第一軸54に対し殆んど平行である。第二バネ要素30が第二回転作動要素26に結合する領域において、前記第二バネ要素30は第一軸54に対し殆んど垂直であり、且つ、第二バネ要素30が第一装着部32に結合する領域において、前記第二バネ要素30は第一軸54に対し殆んど平行である。バネ要素28、30、34、36は、それぞれ弓形状であり、且つ、鏡22に対し同心円状に配置される。
【0030】
第一軸54に対し同心円状に形成され、且つ、それぞれ半径方向において回転作動要素24、26のホルダ44、46の一部を取り囲む二つの凹部(図示せず)を、外部ガイド要素42が備えている。よって、鏡22はジンバルに取り付けられる。
【0031】
ピボット軸受38、40を球体として例示している。バネ要素28、30、34、36はワイヤーバネで形成される。二つの回転作動要素24、26は、例えば、電気測定原理に基いて作動させる、ねじれ作動要素である。
【0032】
光ビームを偏向するために、前記光ビームは鏡22の中心に向けられる。回転作動要素24、26を回転することにより、バネ要素28、30、34、36の弾性変形をもたらす。これは、鏡22上に力を作用させる。さて、第一及び第二作動信号に基いて第一及び第二回転作動要素24、26をそれぞれ、前記軸54について同じ回転方向となるように作動させた場合には、それらは同じ振動の形を有する、より詳細には、前記二つの作動信号は同じ形であり、且つ、互いに位相がずれておらず、次に、鏡22に作用するトルクが生じ、そのトルクベクトルは第一軸54と平行である。その結果、鏡22だけが第一軸54の周り、及び、その停止位置の周りで振動する。これは、第一方向への光ビームの偏向をもたらす。二つの回転作動要素24、26が、第一軸54について反対の回転方向となるように、前記二つの回転作動要素24、26を作動させた場合、より詳細には、二つの作動信号が同じ形であるが互いに180°だけ位相がずれている場合には、鏡22に作用するトルクを生じ、そのトルクベクトルは第一軸54に垂直、且つ、第二軸56に平行である。その結果、鏡22は、第三両方向矢印D3にしたがい第二軸56の周りを回転する。これは、第一軸54に垂直な第二方向への光ビームの偏向をもたらす。第三作動要素50を作動することにより、回転作動要素24、26を備えた支持体48の回転と、第三軸57周りの鏡22の回転とをもたらす。支持体48の回転は、走査可能な全ての表面の回転、したがって全走査領域の回転を導く。
【0033】
鏡22が第一及び第二軸54、56の周りで同時に傾くように、二つの作動信号を互いに調整することにより、光ビームによる、規定表面の光学走査が達成可能となり、第一及び第二方向への光ビームの偏向をもたらす。このために、前記(二つの)作動信号は同じ形ではなく、及び/又は、互いに固定の位相偏移又は可変位相偏移を有することも可能である。振幅、周波数、及び、位相偏移の選択により、非常に異なる走査バターンを、より詳細には、蛇行、z−形状、又は、多重z−形状走査パターンを実現することが、したがって可能になる。
【0034】
このように、光ビームを偏向するための公知の走査装置と比較して、一つの鏡22と、二つの回転作動要素24、26だけが必要であり、費用効果の良い、小型の装置20が可能となる、というのは、より少ない数の鏡が必要だからである。また、多数の鏡を互いに位置合せしなければならない多鏡スキャナの場合に必要とされる、著しい調整作業量が省略される。光ビームが鏡22の回転中心に衝突する場合には、多鏡スキャナの場合に生じる位相偏移も存在しない。
【0035】
次の図2〜6では、光ビームを二つの方向へ偏向するための装置20の例示的な実施形態を図示しており、図1に係る実施例と比較して、様々な構造部品が配置されていない。
【0036】
第一実施形態と比較して、図2に示した第二実施形態は、第三、第四バネ要素34、36も、外部ガイド要素42も備えていない。ここでは、第一及び第二バネ要素28、30は特に安定した設計である。したがって、第一実施形態と比較して更なる構成部品を省略可能であり、その結果、製造費用を更に減じることができる。また、鏡はより自由に動くことができる、というのも、第二軸56は二つのピボット軸受38、40によって固定されているのではなく、それどころか、二つのバネ要素28、30を介して鏡22上に伝達されたトルクから出ているからである。第二実施形態の他の機能は第一実施形態のものと同一であり、特に、二つの作動信号が同じ形であり、且つ、位相が同じである場合には、鏡22はその停止位置の周りにおいて第一軸54の周りで振動し、二つの作動信号が同じ形であり、且つ、互いに180°の位相偏移を有している場合には、それは第二軸56の周りで振動する。また、二つの作動信号を適切に重ね合わせることに基いた光ビームの偏向により、走査領域を光学的に走査することができる。
【0037】
第一実施形態と比較して、図3に表された第三実施形態は、外部ガイド要素42を有していない。第三及び第四バネ要素36、34は、第一ピボット軸受38を介してそれぞれ第一及び第二装着部32、33に結合される。第二軸56は、第一ピボット軸受38によって第一ピボット軸受38の領域内に固定されるが、第一装着部32の範囲内における作動により、鏡22の停止位置における第二軸56に対して傾くことができる。したがって、鏡22は、第一実施形態よりも第三実施形態においてより運動の自由を有し、且つ、第一実施形態と比較して、外部ガイド要素を省略することができる。また、鏡22は、第二実施形態よりも第三実施形態においてより運動の自由を有していないが、光ビームは第二実施形態よりもより正確に偏向され得る。回転作動要素24、26の作動に係る第三実施形態の機能は、上記実施形態のものと同じである。
【0038】
第一実施形態と比較して、図4に表した第四実施形態は、第三、第四バネ要素36、34を備えていない。鏡22は、第一実施形態と同じ程度の運動の自由を有している、というのは、第一及び第二軸54、56が、回転作動要素24、26と、二つのピボット軸受38、40とで固定されているからである。第一実施形態と比較して、第三及び第四バネ要素36、34を省略した結果、回転作動要素24、26上の抗力がより少なくなっている。回転作動要素24、26の作動に係る第四実施形態の機能は、上記実施形態のものと同じである。
【0039】
第一実施形態と比較して、図5に表した第五実施形態では、第二回転作動要素26は、第一軸54の延長線内において鏡22と結合されており、前記第五実施形態は、第三又は第四バネ要素36、34を備えておらず、外部ガイド要素42も有していない。よって、第一実施形態と比較してこの実施形態においては費用が削減されている、というのは、より少ない構成部品が配置されているからである。第一及び第二回転作動要素24、26が違う形で、又は、位相偏移して作動される場合には、鏡22は、図5に表した第二軸56から外れた一つの軸の周りを回転する。前記二つの回転作動要素が同じ形で、且つ、同じ位相で作動される場合には、鏡22は第一軸54の周りを回転する。回転作動要素24、26の作動に係る第五実施形態の機能は、上記実施形態のものと実質的に同じであり、光ビームを正確に偏向するために、前記作動により、鏡22の実際の回転軸は第二軸56から外れても良いということが考えられる。
【0040】
図6に表した第六実施形態では、第一軸54と、鏡22の停止位置における鏡22中央の法線とにまたがる面について、第一バネ要素28と反対側にある第二装着部33に、第二バネ要素30が結合される。この実施形態ではまた、鏡22の実際の回転軸は、回転作動要素24、26の停止位置の周りにおける往復振動運動中の二つの回転作動要素24、26の位置により、第一軸54に対してもはや正確に垂直でなくとも良い。特に、実際の回転軸の位置は、回転作動要素24、26の作動により変化しても良い。このことは、走査パターンが正確に蛇行、z−形状、又は、多重z−形状でないことを導くかもしれない。しかしながら、このずれは、二つの回転作動要素24、26を作動する電気信号において、偏向された光ビームを使って規定表面の光学走査が依然として可能であると考えられ得る。
【0041】
代わりに、全ての実施形態を第一及び第二装着部32、33無しで設計することも可能である。この場合、バネ要素28、30、34、36は、例えば、鏡に直接結合される。また、前記二つの装着部32、33が一体設計であることも可能である。球形ピボット軸受38、40のうち一つ又は両方の代わりとして、第二軸56を鏡22の実際の回転軸として固定し、且つ、第二軸56の周りでの鏡22の回転を可能にする、他の軸受が配置されても良い。
【0042】
図7は、光源62、例えばレーザと、検出器60と、及び、光ビームを二つの異なる方向へ偏向するための装置20とを備えた走査型顕微鏡を表す。走査型顕微鏡は、共焦点走査型顕微鏡として例示されている。前記光源62は、照明光ビーム64を放出する。前記照明光ビーム64は、第一開口(絞り、アパーチャ)66において集束されて、次に例えば二色性鏡(ダイクロイックミラー)を備えた主ビームスプリッタ68を介して、装置20へ向けられる。前記装置20は、走査光学系70と筒状光学系72とを介して、照明光ビーム64を試料76に集束する集束光学系74上に、前記照明光ビーム64をガイドする。前記試料76から発出する検出光78は、主ビームスプリッタ68まで、照明光ビーム64のビーム路を逆方向に進行する。後者(主ビームスプリッタ)は、検出光ビーム78と照明光ビーム64とを分離する。検出光ビーム78は、第二開口80を介して検出器60に入射する。
【0043】
上述したように二つの回転作動要素24、26を作動することにより、試料76は、装置20によって偏向された照明光ビーム64によって光学的にさっと通り抜けられる、よって走査される。特に、二つの回転作動要素24、26は、照明光ビーム64によって生じた光点が、例えば200本の多数の隣り合う線に沿って試料76上の二次元領域にわたって通過するように、よって、試料76の二次元領域を光学走査するように、その停止位置の周りで振動しながら作動される。前記二次元領域は走査領域とも呼ばれる。二つの回転作動要素24、26の各々がその停止位置から出て回転する最大回転角度は、例えば、+4°から+12°の間、及び/又は、−4°から−12°の間の範囲であれば良い。回転作動要素24、26のうち一つ又は両方がその停止位置の周りで振動する周波数は、例えば、500と1500Hzの間に存在すれば良い。ワイヤーバネの代わりに、バネ要素28、30、34、36の一つ以上がバネ鋼で形成されても良い。また、二つの回転作動要素24、26のうち一つ、又は、両回転作動要素24、26が、電気測定原理に基いて動く、振動しない要素として形成されても良い。
【0044】
本発明は、明細書に記載した実施例に制限されない。原則的に、第一軸54と平行なトルクに加え、第一軸54と平行でないトルクが鏡22に作用することも可能であり、その結果、光ビームが第一方向と平行でないが前記第一軸54と垂直である必要も無い第二方向へ偏向され得るというような具合に、バネ要素28、30、34、36の少なくとも一つが第一軸54について軸からずれて鏡22に結合されるという、様々な実施形態の上位概念が、特に実施可能である。さらに、光ビームを二つの異なる方向へ偏向するための装置20は、走査型顕微鏡の代わりに、レーザー彫刻用に、レーザー複写機、又は、レーザースキャナ内で用いることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
20 光ビームを偏向するための装置
22 鏡
24 第一回転作動要素
26 第二回転作動要素
28 第一バネ要素
29 第一接触点
30 第二バネ要素
31 第二接触点
32 第一装着部
33 第二装着部
34 第四バネ要素
35 第一突起点
36 第三バネ要素
37 第二突起点
38 第一ピボット軸受
40 第二ピボット軸受
42 外部ガイド要素
44 第一回転作動要素のホルダ
46 第二回転作動要素のホルダ
48 支持体
50 第三回転作動要素
52 台座
54 第一軸
56 第二軸
57 第三軸
60 検出器
62 光源
64 照明光ビーム
66 第一開口
68 主ビームスプリッタ
70 走査光学系
72 筒状光学系
74 集束光学系
76 試料
78 検出光ビーム
80 第二開口
P1 第三距離
D1 第一両方向矢印
D2 第二両方向矢印
D3 第三両方向矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7