特許第5657051号(P5657051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス アクチエンゲゼルシヤフトの特許一覧

特許5657051自動位置保持船の電力システム用の障害保護システム
<>
  • 特許5657051-自動位置保持船の電力システム用の障害保護システム 図000004
  • 特許5657051-自動位置保持船の電力システム用の障害保護システム 図000005
  • 特許5657051-自動位置保持船の電力システム用の障害保護システム 図000006
  • 特許5657051-自動位置保持船の電力システム用の障害保護システム 図000007
  • 特許5657051-自動位置保持船の電力システム用の障害保護システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5657051
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】自動位置保持船の電力システム用の障害保護システム
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/28 20060101AFI20141225BHJP
   H02H 7/22 20060101ALI20141225BHJP
   H02H 7/26 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   H02H3/28 A
   H02H7/22 A
   H02H7/26 M
   H02H3/28 R
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-86640(P2013-86640)
(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公開番号】特開2013-223424(P2013-223424A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2013年4月17日
(31)【優先権主張番号】12164471.0
(32)【優先日】2012年4月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ルーネ ビ. アナスン
(72)【発明者】
【氏名】スヴェイン ブリュスタズ
(72)【発明者】
【氏名】インゲ ハウカース
(72)【発明者】
【氏名】グンナー ケーニヒ
(72)【発明者】
【氏名】ダミル ラダン
(72)【発明者】
【氏名】スティー オーラウ セテムスデール
【審査官】 早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−135764(JP,A)
【文献】 特開2008−167647(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0158753(US,A1)
【文献】 特開2001−346326(JP,A)
【文献】 特開2007−006673(JP,A)
【文献】 特開2007−318951(JP,A)
【文献】 特開昭57−088826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H1/00−3/07
H02H3/26−3/52
H02H7/06−7/097
H02H7/22−7/30
H02P9/00
B63B1/00−69/00
B63J1/00−99/00
B63H1/00−25/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動位置保持船の電力システム(10)用の障害保護システムであって、前記電力システム(10)は、
3つ以上のバス・サブセクション(16)を有する配電バス(15)と、
前記バス・サブセクション(16)をリング構造に接続するバスタイ(17)を含む電気接続と、
前記電気接続を切断するために、前記バス・サブセクション(16)の間に接続された第1のブレーカ(41)と、
を具え、
前記障害保護システムは、前記バス・サブセクション(16)少なくとも一つに対して、ジェネレータ・ブレーカ(45)と、一つ以上のフィーダ・ブレーカ(43、44、45)と、前記第1のブレーカ(41)と、第2のブレーカ(42)とを含むブレーカ(41、42、43、44、45、45’)と、保護リレー(71、72、73、83)と、通信リンクと、を具え、
前記ジェネレータ・ブレーカ(45)は、ジェネレータ(21)を前記バス・サブセクション(16)に連結するためのものであり、
前記一つ以上のフィーダ・ブレーカ(43、44、45)は、一つ以上負荷(30)を前記バス・サブセクション(16)に連結するためのものであり、
前記第1のブレーカ(41)を介して、前記バス・サブセクション(16)の第1端部は、前記バスタイ(17)に接続され、前記バスタイ(17)は、前記リング構造内の他のバス・サブセクション(16)に対する電気接続を提供し、前記第1のブレーカ(41)は、バスタイ・ブレーカであり、
前記第2のブレーカ(42)は、前記バス・サブセクション(16)の第2端部を前記リング構造内のさらなるバス・サブセクション(16)に連結するためのものであり、
前記保護リレー(71、72、73、83)は、前記ブレーカ(41、42、43、44、45、45’)を動作するために、前記ブレーカ(41、42、43、44、45、45’)に連結され、
前記通信リンクは、前記保護リレー(71、72、73、83)間に設けられ、前記保護リレー(71、72、73、83)は、前記通信リンクを介して情報を交換するように構成されており、
前記保護リレー(71、72、73、83)は、少なくともジェネレータ保護ゾーン(61)と、バスタイ保護ゾーン(63)と、バス・サブセクション保護ゾーン(62)と、を提供するように構成され、
前記ジェネレータ保護ゾーン(61)は、前記ジェネレータ・ブレーカ(45)および前記ジェネレータ(21)を含み、前記ジェネレータ・ブレーカ(45)に連結された前記保護リレーは、差動の保護を前記ジェネレータ(21)に提供するように構成され、
前記バスタイ保護ゾーン(63)は、前記バスタイ・ブレーカ(41)と、前記バスタイ(17)と、前記バスタイ(17)が他のバス・サブセクション(16)に連結されるさらなるバスタイ・ブレーカ(41)と、を含み、前記バスタイ・ブレーカ(41)に連結される前記保護リレー(73、83)は、差動の保護を前記バスタイ(17)に提供するように構成され、
前記バス・サブセクション保護ゾーン(62)は、前記バス・サブセクション(16)と、前記バス・サブセクション(16)に連結される前記ブレーカ(41、42、43、44、45、45’)と、を含み、前記ブレーカ(41、42、43、44、45、45’)に連結される前記保護リレーは、差動の保護を前記バス・サブセクション(16)に提供するように構成されている、
ことを特徴とする障害保護システム。
【請求項2】
前記バス・サブセクション(16)の前記第2端部の前記電気接続は、バスカプラによって提供され、
前記第2のブレーカは、バスカプラ・ブレーカ(42)であり、
前記保護リレーは、バスカプラ保護ゾーン(64)を提供するようにさらに構成され、
前記バスカプラ保護ゾーン(64)は、前記バスカプラと、前記バスカプラ・ブレーカ(42)と、を含み、
前記バスカプラ・ブレーカ(42)に連結される前記保護リレーは、差動の保護を前記バスカプラに提供するように構成されている、
請求項1に記載の障害保護システム。
【請求項3】
前記差動の保護を提供するために、
前記保護ゾーン(61、62、63、64)のそれぞれ内の前記ブレーカ(41、42、43、44、45、45’)に連結される前記保護リレーは、前記保護ゾーンに入出する電流を測定し、前記測定された電流に基づいて、および/または、それぞれの通信リンクを介して受信した情報に基づいて、前記保護ゾーン内に障害が存在するか否かを決定するように構成されている、
請求項1または2に記載の障害保護システム。
【請求項4】
少なくとも、前記第1のブレーカ(41)および前記第2のブレーカ(42)に連結される前記保護リレー(71、72)は、方向性保護を少なくとも前記バスタイ(17)および/または前記バス・サブセクション(16)に提供するように構成されている、
請求項1〜3のいずれかに記載の障害保護システム。
【請求項5】
前記保護リレー(71、72)の測定点の電流方向が、前記バス・サブセクション(16)の方を示している場合、
または、
前記第1のブレーカ(41)または前記第2のブレーカ(42)が開放され、前記バス・サブセクション(16)それぞれの他端の電流方向が、前記バス・サブセクション(16)の方を示している場合、
または、
前記第1のブレーカ(41)または前記第2のブレーカ(42)の電流および電圧が、所定の閾値未満であり、前記バス・サブセクション(16)それぞれの他端の電流方向が、前記バス・サブセクション(16)の方を示している場合、
前記ジェネレータ・ブレーカ(45)と、前記第1のブレーカ(41)と、前記第2のブレーカ(42)と、に連結される前記保護リレー(71、72)は、前記ジェネレータ・ブレーカ(45)と、前記第1のブレーカ(41)と、前記第2のブレーカ(42)と、をトリップするように構成されている、
請求項4に記載の障害保護システム。
【請求項6】
前記一つ以上のフィーダ・ブレーカ(43、44、45)に連結される前記保護リレーは、方向性過電流保護を提供し、
前記保護リレーが、閾値を上回る前記負荷の方向の電流を検出すると、ブロッキング信号は、上流のブレーカ(41、42、45)である前記ジェネレータ・ブレーカ(45)と、前記第1のブレーカ(41)と、前記第2のブレーカ(42)と、に連結される前記保護リレーに供給され、前記保護リレーが、前記上流のブレーカ(41、42、45)をトリッピングするのを妨害し、前記保護リレーが連結される前記一つ以上のフィーダ・ブレーカ(43、44、45)のそれぞれは、障害検出後、所定のトリッピング時間t3の間トリップされる、
請求項4または5に記載の障害保護システム。
【請求項7】
前記保護リレーは、前記差動の保護を用いて、障害検出後、第1のトリッピング時間t1の間、前記保護リレーに連結される前記ブレーカをトリップするように構成されるとともに、前記方向性保護を用いて、障害検出後、第2のトリッピング時間t2の間、前記保護リレーに連結される前記ブレーカをトリップするように構成され、
前記第1のトリッピング時間t1は、前記第2のトリッピング時間t2より短い、
請求項4〜6のいずれかに記載の障害保護システム。
【請求項8】
前記一つ以上のフィーダ・ブレーカ(43、44、45)に連結される前記保護リレーは、過電流保護を提供し、
前記保護リレーのそれぞれが、所定の閾値を上回る前記フィーダ内の電流を検出すると、前記保護リレーが連結される前記一つ以上のフィーダ・ブレーカ(43、44、45)のそれぞれはトリップされる、
請求項1〜7のいずれかに記載の障害保護システム。
【請求項9】
前記一つ以上のフィーダ・ブレーカ(43、44、45)に連結される前記保護リレーは、方向性過電流保護を提供し、
前記保護リレーが、前記閾値を上回る前記負荷の方向の電流を検出すると、前記保護リレーが連結される前記一つ以上のフィーダ・ブレーカ(43、44、45)のそれぞれは、障害検出後、所定のトリッピング時間t3の間トリップされ、
前記保護リレーが、他の閾値を上回る逆方向の電流を検出すると、前記保護リレーが連結される前記一つ以上のフィーダ・ブレーカ(43、44、45)のそれぞれは、前記トリッピング時間t3より長い所定のトリッピング時間t4の間トリップされる、
請求項8に記載の障害保護システム。
【請求項10】
ブレーカ故障検出システムをさらに具え、
前記ブレーカ故障検出システムは、前記ブレーカに連結される前記リレーが、障害のためトリップ命令を送出した後、前記ブレーカが前記電気接続を切断するのに失敗するか否かを検出するように構成され、この種の失敗を検出すると、前記一つ以上の他のブレーカをトリップし、障害を除去するように構成される、
請求項1〜9のいずれかに記載の障害保護システム。
【請求項11】
前記ブレーカ故障検出システムは、前記ブレーカ内の電流を検出することによって、または、前記ブレーカの状態を検出することによって、前記ブレーカの前記失敗を検出するように構成されている、
請求項10に記載の障害保護システム。
【請求項12】
前記バスタイ(17)一端の前記第1のブレーカ(41)が故障する場合、前記バスタイ(17)の他端のバスタイ・ブレーカ(41)をトリップすることによって、
または、
前記バスカプラ・ブレーカ(42)が故障する場合、前記バスカプラに接続された前記バス・サブセクションの各々の他端でブレーカをトリップすることによって、
または、
前記ジェネレータ・ブレーカ(45)またはフィーダ・ブレーカが故障する場合、同一バス・サブセクションに接続される全ての他のブレーカをトリップすることによって、
前記ブレーカ故障検出システムは、前記障害を除去するように構成されている、
請求項10または11に記載の障害保護システム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の自動位置保持船の電力システム(10)であって、障害検出システムを具える電力システム(10)。
【請求項14】
自動位置保持船の電力システム(10)用の障害保護システムを動作する方法であって、前記障害保護システムは、請求項1〜12のいずれかに従って構成され、前記方法は、
前記それぞれの保護ゾーンに含まれる前記ブレーカに連結される前記保護リレーによって、前記保護ゾーンの1つ内の障害の発生を検出するステップと、
前記障害が発生した前記保護ゾーン内の前記ブレーカをトリップするステップと、
を含む方法。
【請求項15】
前記障害が所定のトリッピング時間t1の後除去されない場合、前記保護リレー内で提供される方向性ロジックを用いて、前記電気接続の1つ内または前記バス・サブセクション内の障害の存在を検出するステップと、
前記電気接続または前記バス・サブセクションに接続される前記ブレーカをトリップするステップと、
をさらに含む請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動位置保持船の電力システム用の障害保護システム、自動位置保持船の電力システム、および、この種の電力システムの障害検出システムを動作する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流動的な船、例えば半潜水艦、掘削船、浮遊式生産貯蔵出荷(FPSO)船等は、自動船位保持装置を備えることができる。この種の自動位置保持船は、電動プロペラ、すなわち電気スラスタを使用し、油およびガス掘削作業、位置保持、アンカリング、ポート操縦等の間、位置を保つことができる。油濁、死亡、衝突等の危険が増加した特定の種類の作業に対して、これらの危険を最小にするために、船の位置を確実に保たなければならない。それゆえ、自動位置保持船のスラスタに電力を供給する電力システムの完全性およびフェイルセーフの動作は、特に重要である。
【0003】
船は、異なるクラス、例えばDP2(自動位置保持2)、DP3等に分類可能である。掘削作業や他の船の接近のような危険性が高い動作は、例えば、特定の船のクラスに対する特定の動作モードを必要としうる。コンポーネントの障害が自動位置保持船の電力システムの完全な停電につながらないようにするために、この種の危険性が高い動作モードでは、電力システムをいくつかの部分、例えば2つから4つに分割する必要がある。電力システムの各部分は別々のエンジン・ルームに存在し、エンジン・ルームは防火かつ防水の壁によって分離される。この種の危険性が高い動作の間、電力システムの部分は、例えば、バスタイと称される電線により提供される接続を開放することによって電気的に絶縁される。接続されたジェネレータを有する1つ以上のエンジンは、接続された負荷、例えばスラスタの電気モーターに電力を供給するために、電力システム・セクションごとに動作しなければならない。したがって、3つのセクションのみを有するシステムでは、3つ、4つ、あるいはそれ以上のエンジンは常に動作し、セクション数の増加に伴いその数は増加する。
【0004】
エンジンは通常、比較的低い出力で動作し、低い動作範囲のこれらのエンジンの特定の燃料消費は一般的に高い。したがって、この種の電力システムの燃料消費は、電力システムのセクションが電気的に接続され、そのため、例えば、2つのジェネレータのみを、各々高い負荷で動作する必要がある動作モードと比較して高い。
【0005】
増加した燃料消費および二酸化炭素の排出の他に、低下した負荷で並列に複数のエンジンを動かすと、結果として、燃焼室に煤煙が蓄積し、ジェネレータ設定のための操作時間が増加し、保守費用が増加しうる。エンジンが常に動作するので、停電の危険も増加する。
【0006】
相互接続された電力システム・セクションを有する(すなわち接続されたバスタイを有する)この種のシステムを動作することは、通常、不可能である。なぜなら、通常、障害、例えば、短絡またはジェネレータ障害は、結果として、船の電力システムの全体の停電につながるためである。この種の停電は、結果として、有害となりうる船の位置の不明や、石油流出や、死亡につながりうる。これは、例えば、電力システム内の障害の伝播によって生じるので、バスタイが接続されていると、電力システムの1つのセクションの障害は、電力システムの他のセクションのコンポーネント、例えばジェネレータおよびスラスタのトリッピングを引き起こす。この結果、船の大部分のスラスタは動作不能になり、船が操縦性を失うことがありうる。
【0007】
それゆえ、自動位置保持船のこの種の電力システムを改善するとともに、この種の電力システムの障害伝播を減少あるいは除去することが望ましい。電力システムの大部分が、障害発生時に動作可能なままであることが望ましい。また、燃料消費を減少させるとともにジェネレータを駆動するエンジンの効率的を高めた動作を達成することが望ましい。電力システムの完全性および安全動作を損なうことなく、リスクの高い動作中、この種の燃料効率の高い動作を維持することも望ましい。
【0008】
したがって、自動位置保持船の電力システムの耐障害性および完全性を改善し、特に、この種のシステムの障害伝播を減少または防止する必要がある。
【0009】
この必要は、独立請求項の特徴によって満足する。従属請求項は、本発明の実施形態を記載する。
【0010】
本発明の一実施形態は、自動位置保持船の電力システム用の障害保護システムを提供し、電力システムは3つ以上のバス・サブセクションを有する配電バスと、バス・サブセクションをリング構造に接続するバスタイを含む電気接続と、電気接続を断つためにバス・サブセクションの間に接続されたブレーカと、を含む。障害保護システムは、バス・サブセクションの少なくとも一つに対して、ジェネレータ・ブレーカと、一つ以上のフィーダ・ブレーカと、第1のブレーカと、第2のブレーカと、保護リレーと、通信リンクと、を具え、ジェネレータ・ブレーカは、ジェネレータをバス・サブセクションに連結するためのものであり、一つ以上のフィーダ・ブレーカは、一つ以上負荷をバス・サブセクションに連結するためのものであり、第1のブレーカを介して、バス・サブセクションの第1端部は、バスタイに接続され、バスタイは、リング構造内の他のバス・サブセクションに対する電気接続を提供し、第1のブレーカは、バスタイ・ブレーカであり、第2のブレーカは、バス・サブセクションの第2端部をリング構造内のさらなるバス・サブセクションに連結するためのものであり、保護リレーは、ブレーカを動作するために、ブレーカに連結され、通信リンクは、保護リレー間に設けられ、保護リレーは、通信リンクを介して情報を交換するように構成されている。保護リレーは、少なくともジェネレータ保護ゾーンと、バスタイ保護ゾーンと、バス・サブセクション保護ゾーンと、を提供するように構成され、ジェネレータ保護ゾーンは、ジェネレータ・ブレーカおよびジェネレータを含み、ジェネレータ・ブレーカに連結された保護リレーは、差動の保護をジェネレータに提供するように構成され、バスタイ保護ゾーンは、バスタイ・ブレーカと、バスタイと、バスタイが他のバス・サブセクションに連結されるさらなるバスタイ・ブレーカと、を含み、バスタイ・ブレーカに連結される保護リレーは、差動の保護をバスタイに提供するように構成され、バス・サブセクション保護ゾーンは、バス・サブセクションと、バス・サブセクションに連結されるブレーカと、を含み、これらのブレーカに連結される保護リレーは、差動の保護をバス・サブセクションに提供するように構成されている。
【0011】
したがって、障害が、異なるゾーンのために提供される差動の保護によって検出される場合、保護リレーは、それぞれのゾーン内でブレーカをトリガーし、迅速かつ効率的に障害を分離および除去することができる。あるゾーン内の1つまたは複数のブレーカがトリガーされるので、他のゾーンは大部分影響を受けず、動作を継続することができる。障害位置は自動的に検出され、電力システムの全サブセクションのトリッピングは防止可能である。例えば、ジェネレータ保護ゾーンがトリップされても、同一バス・サブセクションに連結されたスラスタの形態の負荷は動作を継続することができ、隣接したバス・サブセクションから、例えばバスタイを介して電力を供給されることができる。
【0012】
一実施形態では、各ブレーカは、この各ブレーカを動作するように構成される保護リレーに連結され、関連付けられている。
【0013】
一実施形態では、負荷の少なくとも1つはスラスタ・ドライブであり、それぞれのフィーダ・ブレーカはスラスタ・ドライブ・ブレーカである。スラスタ・ドライブは、スラスタ・ドライブ変圧器を介してバス・サブセクションに接続され、スラスタ・ドライブ・ブレーカは、スラスタ・ドライブ変圧器とバス・サブセクションとの間に連結される。各バス・サブセクションはジェネレータおよびスラスタ・ドライブに連結可能であり、バス・サブセクションがリング構造の残りのバス・サブセクションから分離されても、スラスタ・ドライブは動作可能である。
【0014】
バス・サブセクションの第2端部の電気接続は、バスカプラによって提供され、第2のブレーカは、バスカプラ・ブレーカである。保護リレーは、バスカプラ保護ゾーンを提供するようにさらに構成され、バスカプラ保護ゾーンは、バスカプラと、バスカプラ・ブレーカと、を含み、バスカプラ・ブレーカに連結される保護リレーは、差動の保護をバスカプラに提供するように構成されている。2つの隣接したバス・サブセクションは、例えばバスカプラによって接続され、バス・セクションを形成することができる。バス・セクションは、2つ、3つあるいはそれ以上のバス・サブセクションから形成される。電力システムは、複数の、例えば3つ、4つ、5つまたはそれ以上バス・セクションを具え、これらはバスタイによってリング構造に接続されうる。バス・セクションは、船の異なる部屋に設けられ、防火壁によって分離可能である。したがって、例えば火事によって、完全なバス・セクションの停電が起ったとしても、電力システムは動作を継続することができる。
【0015】
差動の保護を提供するために、保護ゾーンのそれぞれ内のブレーカに連結される保護リレーは、保護ゾーンに入出する電流を測定するとともに、測定された電流に基づいて、および/または、それぞれの通信リンクを介して受信した情報に基づいて、保護ゾーン内に障害が存在するか否かを決定するように構成されている。障害が保護ゾーン内に存在しない場合、保護ゾーンに出入りする電流は等しくなければならない。保護ゾーン内の各保護リレーは、関連するブレーカを流れる電流を測定するように構成可能である。通信リンクを介して、電流に関する情報は交換され、保護ゾーン内の障害の存在は、高速かつ効率的に決定可能である。例えば、リレーは、保護ゾーンごとに設けられ、保護ゾーンは、保護ゾーン内の他のリレー(存在する場合)から情報を受信するプログラム可能なロジックを具え、障害状態が存在するか否かを評価する。このような場合、それは、ゾーン内の他の保護リレーにトリガー信号を送信し、関連するブレーカをトリガーすることができる。電流測定は、変流器(CT)を用いた保護リレーによって実行可能である。
【0016】
少なくとも、第1のブレーカおよび第2のブレーカに連結される保護リレーは、方向性保護を少なくともバスタイおよび/またはバス・サブセクションに提供するように構成されている。したがって、差動の保護が失敗する、または、トリガーしない場合に備えて、バックアップを設けることができる。方向性保護によって、電力システムの特定の構成および一般の動作モードが考慮され、トリッピングは、障害を除去するのに必要なブレーカに限定可能であり、すなわち、高度な選択性が可能になる。したがって、障害の影響を受けない電力システムの他のコンポーネントは、動作可能なままである。
【0017】
対応するリレーは、例えば方向性ロジックを具えることができ、方向性ロジックは、関連するブレーカを流れる電流の方向を決定することができる。ブレーカの両側の電圧は、この目的のために考慮され、電圧差は、例えば電流方向を決定するために測定可能である。
【0018】
方向性保護を提供している保護リレーは、関連するブレーカを流れる電流方向を検出するように構成可能であり、電流方向、自身/他のブレーカ状態および/またはエネルギーフローに依存して、関連するブレーカをトリップするように構成可能である。それぞれのリレーは、(関連するブレーカを流れる)電流が閾値を上回る場合、トリップするように構成され、ブレーカをトリップするための時間遅延は、電流方向に依存しうる。それぞれの保護リレーは、電流方向および関連するブレーカ状態に関する情報を、通信リンクを介して交換するように構成可能である。
【0019】
a)これらのリレーの測定点の電流方向が、バス・サブセクションの方を示している場合、または、b)第1のブレーカまたは第2のブレーカが開放され、バス・サブセクションそれぞれの他端の電流方向が、バス・サブセクションの方を示している場合、または、c)第1のブレーカまたは第2のブレーカの電流および電圧が、所定の閾値未満であり、バス・サブセクションそれぞれの他端の電流方向が、バス・サブセクションの方を示している場合、ジェネレータ・ブレーカと、第1のブレーカと、第2のブレーカと、に連結される保護リレーは、これらのブレーカをトリップするように構成されている。上述したように、それぞれの保護リレーによっても検出される電流は、トリッピングのための閾値を上回る必要がある。
【0020】
例えば、第2のブレーカ、例えばバスカプラ・ブレーカに連結されるリレーは、マスター・リレーとすることができ、この第2のブレーカを介して接続される2つのバス・サブセクションの各々のためのトリップロジックを具えることができる。それぞれのバス・サブセクションの他のリレーにより提供される情報に応じて、マスター・リレーは、トリップ命令を送出し、一方または他方のバス・サブセクションのブレーカをトリップすることができる。
【0021】
第2のブレーカに連結される保護リレー(マスター・リレー)は、例えば、第1のブレーカ(第1のバス・サブセクションのバスタイ・ブレーカ)に連結される保護リレーと通信可能であり、第2のバス・サブセクションの他端でバスタイ・ブレーカに連結される対応する保護リレーと通信可能であり、マスター・リレーは、第1のバス・サブセクションのための方向性トリップロジックが障害を検出すると、第2のブレーカ、第1のブレーカおよびジェネレータ・ブレーカをトリップするための信号を送出するように構成されている。
【0022】
一つ以上のフィーダ・ブレーカに連結される保護リレーは、方向性過電流保護を提供し、保護リレーが、閾値を上回る負荷の方向の電流を検出すると、ブロッキング信号は、上流のブレーカに連結される保護リレーに供給され、保護リレーが、これらのブレーカをトリッピングするのを妨害し、フィーダ・ブレーカのそれぞれは、障害検出後、所定のトリッピング時間t3の間トリップされる。ブレーカのトリッピングは最低限に保たれ、電力システムは最大のコンポーネントを用いて動作を継続することができる。例えばこの種のブロッキング信号は、通信を介して上流の保護リレーに、フィーダ・ブレーカの保護リレーによって送信可能である。
【0023】
例えば、フィーダ・ブレーカ保護リレーは、ブロッキング信号をバスカプラ・ブレーカに送信することができ、バスカプラ・ブレーカは、マスター・ブレーカとすることができ、バス・サブセクション全体のトリッピングを防止し、または、バス・サブセクションの上流のブレーカに連結されるリレーの技術とすることができる。上流とは、電流源への方向、すなわちジェネレータまたは他のバス・サブセクションへの方向である。特に、これらは、フィーダ・ブレーカ以外のバス・サブセクションに連結されるブレーカとすることができる。
【0024】
ブロッキング信号を受信する場合であっても、上流の保護リレーは所定時間後に関連するブレーカをトリップするように構成可能であり、その結果、フィーダ・ブレーカが障害を除去できない場合、上流のブレーカは方向性保護によってトリップされる。この遅延は、もちろん、フィーダ・ブレーカがトリップされるt3より長い。
【0025】
いくつかの実施形態では、t3は、200ms以下とすることができる。いくつかの構成において、負荷は、低電圧(LV)配電システムを具えることができる。LV配電システムのためのフィーダ・ブレーカに連結される保護リレーは、より長い時間内で、例えばt3<500ms、例えば300ms<t3<500msで、このブレーカをトリップするように構成可能である。このように、下流のコンシューマは、トリップのための時間、それゆえ、障害を除去するための時間を十分有するので、残りのLV配電配システムはバス・サブセクションに対する接続を維持することができる。基本的なコンシューマの損失は、防止可能である。
【0026】
一実施形態では、保護リレーは、差動の保護を用いて、障害検出後、第1のトリッピング時間t1の間、保護リレーに連結されるブレーカをトリップするように構成されるとともに、方向性保護を用いて、障害検出後、第2のトリッピング時間t2の間、保護リレーに連結されるブレーカをトリップするように構成され、第1のトリッピング時間t1は、第2のトリッピング時間t2より短い。方向性保護は、バスタイ、バスカプラおよびバス・サブセクションのためのバックアップとして提供可能である。t1およびt2は、例えば、約20ms〜約200msとすることができる。時間t1は100msより短く、時間t2は150msより短くすることができる。
【0027】
一実施形態では、一つ以上のフィーダ・ブレーカに連結される保護リレーは、過電流保護を提供し、保護リレーのそれぞれが、所定の閾値を上回るフィーダ内の電流を検出すると、フィーダ・ブレーカはトリップされる。したがって、障害が負荷の下流にある場合、バス・サブセクションに連結されるコンポーネントをさらにトリップすることなく、急速かつ効率的に障害を除去することができる。
【0028】
一つ以上のフィーダ・ブレーカに連結される保護リレーは、方向性過電流保護を提供する。このような保護リレーが、閾値を上回る負荷の方向の電流を検出すると、フィーダ・ブレーカのそれぞれは、障害検出後、所定のトリッピング時間t3の間トリップされ、保護リレーが、他の閾値を上回る逆方向の電流を検出すると、フィーダ・ブレーカのそれぞれは、トリッピング時間t3より長い所定のトリッピング時間t4の間トリップされる。従って、第2の場合、システムによって、負荷をトリップすることなく、他の位置で障害を除去することができる。例えば、ジェネレータ内の障害は、負荷フィーダ内の逆電流を引き起こす場合がある。フィーダ・ブレーカの遅延されたトリッピングは、ジェネレータをトリップすることによって、負荷をトリップすることなく障害を除去することができる。したがって、負荷には、他のバス・サブセクションを介して他のジェネレータから電力が供給されるので、動作を継続することができる。これは、スラスタ・ドライブの形態の負荷に対して特に有益である。なぜなら、スラスタは動作を継続し、船はその位置を保つことができるためである。
【0029】
時間t3は、200msより短くすることができ、150msより短くすることが好ましい。逆方向の電流をトリップするための時間t4は、約150msと約400msの間とすることができ、約250msと350msの間とすることが好ましい。
【0030】
保護リレーは、差動の保護をt1内で、バス・サブセクションの方向性保護(フィーダ・ブレーカ保護リレーからブロッキングを伴う)をt2(t1<t2)内で、負荷(フィーダ・ブレーカ)の過電流保護をt3(t1<t3)内で、逆方向の電流を有する負荷の過電流保護をt4(t3<t4)内で、バスタイの方向性保護をt1より長い時間、例えばt4と類似の時間で、トリップするように構成可能である。
【0031】
一実施形態では、障害保護システムは、ブレーカ故障検出システムをさらに具え、ブレーカ故障検出システムは、ブレーカに連結される保護リレーが、障害のためトリップ命令を送出した後、ブレーカが電気接続を切断するのに失敗するか否かを検出するように構成され、この種の失敗を検出すると、一つ以上の他のブレーカをトリップし、障害を除去するように構成される。ブレーカ故障検出システムの機能は、「ブレーカ故障保護」と称することができる。ブレーカ故障が存在する場合であっても、障害は除去され、電力システムの完全な停電は防止可能である。
【0032】
ブレーカ故障検出システムは、ブレーカ内の電流を検出することによって、または、ブレーカの状態を検出することによって、ブレーカの失敗を検出するように構成されている。ブレーカの状態は、例えばブレーカを開閉する要素の位置を検出することによって、ブレーカの開閉を検出することを意味する。トリップ命令がブレーカのために送出されたという情報は、関連する保護リレーからの通信によって得られ、または、ブレーカ故障保護機能は、それぞれのブレーカと関連する保護リレーに直接集積されうる。
【0033】
ブレーカ故障検出システムは、以下の状況で、障害を除去するように構成可能である。すなわち、バスタイの一端に接続された第1のブレーカが故障する場合、バスタイの他端に接続されたバスタイ・ブレーカをトリップすることによって、障害を除去する。バスカプラ・ブレーカが故障する場合、そのバスカプラに接続された複数のバス・サブセクションの各々の他端でブレーカをトリップすることによって、障害を除去する。ジェネレータ・ブレーカまたは負荷ブレーカが故障する場合、同一バス・サブセクションに接続される全ての他のブレーカをトリップすることによって、障害を除去する。ブレーカ故障検出のためのトリッピング時間はt1およびt2を上回るように調整可能であり、それぞれの最大のブレーカ動作時間と、例えばブレーカのための電流検出要素のドロップアウト時間と、を足した時間を上回る時間に調節されることが好ましい。したがって、ブレーカ故障保護が偶然に誘発されることはなくなる。
【0034】
一実施形態では、障害保護システムは、上述した実施形態のいずれかに従って構成される電力システムのバス・サブセクションごとに存在する。
【0035】
本発明の他の実施形態は、自動位置保持船の電力システムを提供することにある。電力システムは、上述した構成のいずれかにおける障害保護システムを具える。電力システムは、上述した実施形態または後述する実施形態のいずれかに従って構成可能である。この種の電力システムは、障害に対して強化された完全性を提供する。特に、単一の障害は電力システムの完全な停電には至らず、障害の影響を受けないコンポーネントは電力システムに接続され続ける。この種の電力システムは、例えばDP2またはDP3動作モードのような危険性が高い動作中でさえ、閉リング構造で、すなわち、バスタイ・ブレーカが閉じた状態で動作する。
【0036】
本発明の他の実施形態は、自動位置保持船の電力システム用の障害保護システムを動作する方法を提供する。障害保護システムは、上述した構成のいずれかに従って構成される。方法は、それぞれの保護ゾーンに含まれるブレーカに連結される保護リレーによって、保護ゾーンの1つ内の障害の発生を検出するステップと、障害が発生した保護ゾーン内のブレーカをトリップするステップと、を含む。この方法では、障害保護システムに関して上述したものと類似の利点が達成可能である。
【0037】
一実施形態では、方法は、障害が所定のトリッピング時間t1の後除去されない場合、保護リレー内で提供される方向性ロジックを用いて、電気接続の1つ内またはバス・サブセクション内の障害の存在を検出するステップと、電気接続またはバス・サブセクションに接続されるブレーカをトリップするステップと、をさらに含む。したがって、障害がゾーンの差動の保護によって検出または除去されない場合であっても、方向性保護は、バックアップとして機能し、障害を除去する。
【0038】
他の実施態様では、方法はバス・サブセクションに接続されたフィーダ内の電流の大きさおよび方向を検出するステップと、電流の大きさが閾値を上回り、電流が下流方向である場合、時間t3内で対応するフィーダ・ブレーカをトリップするステップと、を含むことができる。このような場合、方法は、上流のブレーカのトリッピングをブロックするステップをさらに含むことができる。
【0039】
方法は、フィーダ・ブレーカを流れる電流が逆(上流)方向の場合、時間t4(t3<t4)内でフィーダ・ブレーカをトリップするステップをさらに含むことができる。
【0040】
この方法では、ブレーカの故障を検出し、故障したブレーカがバスタイまたはバスカプラ・ブレーカの場合、隣接したバスタイまたはバスカプラ・ブレーカをトリップし、故障したブレーカがジェネレータまたはフィーダ・ブレーカの場合、バス・サブセクションに接続されたすべてのブレーカをトリップする。ブレーカが故障しても、障害はこのように効率的に分離可能である。
【0041】
方法の実施形態は、障害保護システムまたは上述した任意の構成の電力システムにおいて実行可能である。さらに、障害保護システムまたは自動位置保持船の電力システムに関して上述した任意の方法ステップを、方法の実施形態の一部とすることができる。
【0042】
上述した、あるいは、後述する本発明の実施形態の特徴は、特に言及しない限り、互いに結合可能である。
【0043】
本発明の上述した、および、他の特徴および効果は、添付の図面を参照して説明する以下の詳細な説明からさらに明らかになる。図面において、同様の参照符号は同様の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の一実施形態に係る障害保護システムを含む自動位置保持船の電力システムの概略図である。
図2図1の障害保護システムおよび電力システムの保護ゾーンをさらに詳細に示しているブロック図である。
図3図1の電力システムの1つのセクションのための関連するブレーカを動作する保護リレーを示しているブロック図である
図4】本発明の実施形態で使用される保護リレーにおいて実行可能な方向性保護のためのロジックを示しているフロー図である。
図5】本発明の一実施形態に係る方法を示しているフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳述する。実施形態の以下の説明が単に例示目的で与えられ、限定的にとらえるべきではないことを理解されたい。
【0046】
図面が単なる概略図であり、図面の要素が互いに必ずしも一定の比率であるというわけではない点に留意する必要がある。むしろ、さまざまな要素の表現は、それらの機能および一般の目的が当業者にとって明らかになるように選択される。図示され、かつ、以下に説明されている物理的または機能的なユニットの連結が必ずしも連結の直接的な接続ではなく、連結の間接的な接続、すなわち、ヒューズ、ブレーカ、トランス等のような1つ以上の追加の介在要素を介した接続または連結でもよいということを理解されたい。異なる実施形態に関して図示され、かつ、以下に説明されている物理的または機能的なユニットが必ずしも物理的に別々のユニットとして実装される必要があるわけではないということを当業者は認識するであろう。1つ以上の物理的または機能的なブロックまたはユニットは、共通の回路、チップ、回路要素またはユニットにおいて実装可能であり、一方、図示される他の物理的または機能的なブロックまたはユニットは、別々の回路、チップ、回路要素またはユニットにおいて実装可能である。
【0047】
図1は、本発明の実施形態に係る自動位置保持船の電力システム10を示す。図1の例では、電力システム10は3つの電力システム・セクション12に分割され、異なる電力システム・セクションのエンジンは自動位置保持船の異なるエンジン・ルームに配置される。エンジン・ルームは、防火かつ防水の壁14によって分離される。
【0048】
電力システム10は、各々ジェネレータ21を具える電源20と、同一の配電バス15に連結された負荷30、51、52と、を具える。負荷はスラスタ・ドライブ30を構成し、スラスタ・ドライブ30の各々は、供給されたAC電圧の周波数をドライブが動作されるべき周波数に変換するための可変周波数ドライブ32と、スラスタのプロペラを回転させる電気モーター31と、を含む。例えば掘削ドライブを含むことができるさらなる負荷は、電気接続51によって配電バス15に接続されている。さらに、より少ない負荷を供給している低電圧配電システムは、電気接続52を介して配電バス15に接続されている。
【0049】
各電力システム・セクション12は、配電バス15のセクションを具える。バス・セクションは、バスタイ17を介して接続されている。図1の例では、配電バス15は、防火かつ防水の壁14によって分離される3つのセクションを具える。他の構成では、電力システムの区分に応じてさらなるセクション、例えば、4以上のセクションが提供可能である。バス・セクションは、バスタイ17を介してリング構造に接続されている。図1では、これは、配電バス15の左端を配電バス15の右端に接続する上部のバスタイ17によって示されている。バスタイ・ブレーカ41は、バスタイ・ケーブルの各先端に設けられている。バスタイ・ブレーカ41によって、配電バス15のバス・セクションを電気的に分離することができる。障害が電力システム10の1つのセクションで生じた場合、障害は電力システム10の他のセクションに伝播することはありえない。従来のシステムでは、バスタイ・ブレーカ41は、危険性が高い動作の間、開放されたままである。
【0050】
電力システム10の各セクション12において、少なくとも1つのジェネレータ21が動作している必要があるということが、直ちに明確になる。各ジェネレータは比較的低い負荷で動作するため、電源20の非効率的な動作につながり、それゆえ、燃料消費の増加につながる。
【0051】
図1の実施形態では、バス・セクションは、バスカプラ・ブレーカ42によってバス・サブセクション16にさらに分離可能である。図1の例では、このように、電力システム10は、6つの電力システム・サブセクション11に分割可能である。障害が特定の電力システム・サブセクション11で発生した場合、この電力システム・サブセクションを残りの電力システム10から電気的に絶縁することが可能になる。したがって、このような場合、1つのスラスタ・ドライブ30のみが失われるが、従来のシステムでは、電力システム・セクション12が障害のため動作不能になると、少なくとも2つのスラスタ・ドライブ30が失われる。
【0052】
危険性が高い動作は、例えばDP2またはDP3クラスの動作モードにおいて、電力システム10の特に高い完全性および動作上の安全性を要求するので、あらゆる状況において、船の位置の損失は防止される。これは、どんな障害が発生しても、電力システム10が完全に停電し、その結果としてスラスタ・ドライブが動作不能になり、船がその位置を失うということが生じてはならないということを意味する。この目的のため、従来のシステムでは、電力システム・セクション12は完全に電気的に絶縁され、その結果、1つのセクションの電力システムが故障しても、他は動作可能なままであるので、船が残りのスラスタによってその位置を確実に保つことができる。
【0053】
従来のシステムとは対照的に、本実施形態による電力システム10は、危険性が高い動作の間、バスタイ・ブレーカ41を閉じ続けるように構成される。また、バスカプラ・ブレーカ42も閉じる。電力システム10は、本発明の一実施形態に係る障害保護システムを具え、これによって、危険性が高い動作に必要とされる電力システム10の高い完全性および動作上の安全性が確実に達成される。
【0054】
本実施形態の障害保護システムの目的は、迅速かつ効率的に障害を分離し、障害が電力システム10内で伝播するのを防止するとともに、他の任意のコンポーネントに影響を及ぼすのを防止することである。以下、電力システム10のサブセクション11に対して説明する。障害保護システムが残りの電力システム・サブセクションのために対応して構成可能であるということを理解されたい。また、図1の電力システムは3つのセクションを有し、各々は、バスカプラ・ブレーカ42を介して2つのサブセクションに分離可能である。他の実施態様では、電力システム10は、セクションごとに異なる数のセクションまたはサブセクションを有してもよい。また、電力システムは、バスタイ17を介してリングに接続されるサブセクションのみを具えることができ、すなわち、同一セクション内のさらなる分離を有さない(換言すれば、セクション当たりの1つのサブセクションのみを有する)。
【0055】
図1において、障害保護システムは、ジェネレータ21およびジェネレータ・ブレーカ45を含むジェネレータ保護ゾーン61を具える。障害保護システムは、第1のブレーカ41(バスタイ・ブレーカ)を含むバスタイ保護ゾーン63をさらに具え、第1のブレーカ41は、バス・サブセクション16の第1端部と、バスタイ17と、に接続されている。バスタイ17の他端は、さらなるバスタイ・ブレーカ41を介して、隣接する電力システム・セクションのバス・サブセクション16に接続されている。さらなるバスタイ・ブレーカ41およびバスタイ17は、バスタイ保護ゾーン63にも含まれる。
【0056】
障害保護システムは、バス・サブセクション保護ゾーン62をさらに含み、バス・サブセクション保護ゾーン62は、バス・サブセクション16と、第1のブレーカ41と、バス・サブセクション16の第2端部に連結される第2のブレーカ42と、ジェネレータ・ブレーカ45と、バス・サブセクション16に連結される一つ以上のフィーダ・ブレーカ(本例ではスラスタ・ドライブ・ブレーカ43)と、掘削ドライブ・ブレーカ44と、を具える。バス・サブセクション16が隣接したバス・サブセクションにバスカプラを介して連結される場合、第2のブレーカ42は、(本実施形態のような)バスカプラ・ブレーカとすることができ、あるいは、バス・サブセクション16が隣接したバス・サブセクションにバスタイを介して連結される場合(例えば電力システム・セクションの中の分割が存在しないときに)、第2のブレーカ42は、バスタイ・ブレーカとすることができる。
【0057】
障害保護システムは、バスカプラ保護ゾーン64をさらに含むことができ、バスカプラ保護ゾーン64は、バスカプラ(図1では明確に強調されていない)およびバスカプラ・ブレーカ42を含む。
【0058】
障害保護システムは、差動の保護を保護ゾーンの各々に提供するように構成される。差動の保護は、保護されるコンポーネントの両側の電流、すなわち保護ゾーンに流入する電流または流出する電流が比較されるように構成可能である。実施形態は、例えば変流器(CT)を用いて、それぞれの電気接続の電流を測定する一つ以上の保護リレーを使用することができる。最も単純な構成では、電流リレーは、コンポーネントの両側に、例えばジェネレータ巻線の前後に位置する2つのCTの二次巻線と並列に接続可能である。保護されるコンポーネントの両側の電流が等しい場合、二次巻線を流れる電流も等しく、したがって、電流は、電流リレーを流れない。例えば変流器が保護ゾーン内に位置するとき、CT巻線比率を用いて、予想される電流の違いを一致させることができる。
【0059】
図1では、類似のコンポーネントのいくつかだけに参照番号を付して、より明確かつ広範囲の表現を維持していることに留意されたい。しかし、特定のコンポーネントのために与えられる説明が同一種類の類似のコンポーネントにも適用されることを理解されたい。
【0060】
図1の保護ゾーンは、図2にさらに詳細に示される。障害保護システムは、例えば、ブレーカ45をトリップすることができるジェネレータ保護ゾーン61のための1つの保護リレーを含むことができる。保護リレーのCTは3つのジェネレータ巻線の両側の電流を測定することができ、電流の違いが検出される場合、リレーはジェネレータ・ブレーカ45をトリガーすることができる。
【0061】
同様に、バスタイ保護ゾーン63のための保護リレーは、バスタイ・ケーブル17の両側の電流を測定することができる。電流の違いが、例えばバスタイ・ケーブル17の機械的損傷により検出される場合、保護リレーは、保護ゾーン63内のブレーカ41の一方または両方をトリップすることができる。また、個別の保護リレーを、各ブレーカに対して設けることもできる。
【0062】
バス・サブセクション保護ゾーン62において、保護ゾーンに流入および流出する全電流は、それぞれの保護リレーによってモニタされる。これらは、バスタイ17およびバスカプラを流れる電流と、ジェネレータ21により供給される電流と、フィーダ接続を介した負荷に対する電流と、を含む。複数の保護リレーが、この種の保護ゾーンの差動の保護に含まれるので、リレーは互いに通信するように構成される。通信はシリアル通信を介して発生可能であり、特にIEC61850通信を使用して発生可能である。1つのリレーは、マスター・リレーとして作用することができ、障害の発生を決定するためのロジックを具えることができ、すなわち、電流のアンバランスの発生を決定することができる。1つのリレーは、保護ゾーンの他のリレーにトリップ信号を送信し、関連するブレーカをトリップすることができる。
【0063】
バスカプラ保護ゾーン64のための差動の保護は、対応して動作する。
【0064】
バスタイ17、バス・サブセクション16またはバスカプラで発生する障害は、本発明でなければ、ジェネレータまたは負荷内の従来の過電流保護を誘発しないものであるが、識別され、保護ゾーン内の全ブレーカを開放することによって、高速かつ効率的に除去可能である。電力システム10の他の領域は、接続および動作を継続する。
【0065】
例えばスラスタ・ドライブ30、掘削ドライブ51、低電圧(LV)配電システム52等の負荷のために、フィーダ・ブレーカ43、44、45が提供される。それぞれの保護ゾーンは、スラスタ変圧器34、スラスタ・ドライブ30およびスラスタ・ブレーカ43を含むスラスタ保護ゾーン65と、それぞれの掘削ドライブおよび掘削ブレーカ44のためのフィーダ51を含む掘削フィーダ保護ゾーン66と、LV配電システムおよび配電変圧器(図1参照)用のフィーダ52を含む対応するLV配電フィーダ保護ゾーン(図示せず)と、例えばスラスタ・ユーティリティおよびジェネレータ21を駆動しているエンジン用のエンジン・ユーティリティ用のフィーダ38、39を含む補助負荷保護ゾーン67と、を含む。これらは、スラスタ変圧器34の第4の巻線36(すなわち、図示のような第3の二次巻線)から、電力を供給可能である。このように、ユーティリティが追加の変圧器を必要としないため、空間および重量の削減を達成することができる。また、それらが同一電力システム・サブセクション11のジェネレータから電力を供給可能なため、電力システム・サブセクション11は分離して動作可能である。
【0066】
上述した保護ゾーン65〜67は、例えば定限時過電流曲線を使用して、短絡および過電流保護を提供する。関連する保護リレーは、この種の過電流状態を検出すると、それぞれのブレーカをトリガーし、その結果、負荷は残りの電力システム10から分離される。この種の保護は、負荷に対しては十分である。なぜなら、それぞれのブレーカの下流の短絡は、通常、ブレーカを流れる電流が過剰となり、保護リレーによって検出されるためである。
【0067】
ゾーン61〜64のための差動の保護は、比較的高速に、例えば100ms未満以内に反応することができる。また、ゾーン65〜67のための過電流保護は、高速に、例えば140ms以内に反応することができる。いくつかの負荷に対して、ブレーカのトリッピングは遅延可能であり、下流の負荷をトリップすることができる。この種の遅延は、LV保護システムのために使用可能である。それが変圧器を介してそれぞれのバス・サブセクションに連結されるので、LV配電システムの下流の短絡は、変圧器の2次側に直接影響するが、変圧器の1次側の障害ほど、配電バス上の電圧安定性に対する影響は深刻ではない。障害が二次巻線36に直接影響を及ぼす補助負荷保護ゾーン67にも同一のことがあてはまる。いずれの場合においても、複数のより少ない負荷が下流に接続されるので、それぞれのブレーカをトリップすることによって、例えばジェネレータまたはスラスタ潤滑油ポンプ等の基本的負荷は動作不能になりうる。これらのブレーカを、例えば500msまたは450msの遅延をもってトリップするように障害保護システムを構成することによって、障害が発生したコンポーネントは、トリップのための十分な時間を有するので、LV配電システム全体またはそれぞれのユーティリティ・スイッチボードを切断する必要なく、障害を除去することができる。
【0068】
バックアップとして、例えば、主要な差動の保護が失敗するまたはブレーカをトリップしない場合に備えて、障害保護システムは方向性保護を含むことができる。方向性保護は、バス・サブセクション、特にそれぞれのバスバーにおいて、バスタイおよびバスカプラのために提供可能である。
【0069】
方向性保護の目的のため、それぞれの保護リレーは、障害状態の存在を判断し、それに応えて関連するブレーカのためのトリップ命令を送出する方向性ロジックを具えることができる。保護リレーは、この目的のために電流の方向および大きさを、例えば関連するブレーカの両側で電圧を測定することによって測定することができる。
【0070】
リレーはマスタースレーブ構成で動作可能であり、マスター・リレーは他のリレーから情報を受信し、障害状態を決定した後、他のリレーにトリップ命令を送出する。リレーの間で通信、例えばIEC61850通信を介して送信される情報は、電流の方向、関連するブレーカの状態およびエネルギーフローすなわち関連するブレーカがエネルギーを与えられるか否かを含む。
【0071】
図3および図4は、障害保護システムの方向性保護の可能な実施形態の例を示す。図3は、広範囲の表現のために図1の電力システム10の選択された要素だけを示す。バスカプラ・ブレーカ42と関連する保護リレー71は、マスター・リレーとして動作する。保護リレー71は、2つのバス・サブセクション16の両端のバスタイ方向性保護リレー72と通信する。参照番号82は、隣接した電力システム・セクション内の類似のバスタイ方向性保護がリレーを示す。方向性保護リレー71、72、82ごとに、基準電流方向が示される(順方向またはが逆方向の矢印を参照)。保護リレーは、電流の方向を検出できる上、保護リレーに接続されているブレーカの状態を検出するように構成される。各リレーは、特定の電力システム設定および動作モードの所定の電流方向に従って、保護関数パラメータによってパラメータ化される。マスター・リレー71は、左右両方のバス・セクションための方向性保護トリップロジックを具える。ロジックは、それぞれのバス・サブセクション内の障害発生時に、バスタイ・ブレーカ41、バスカプラ・ブレーカ42およびジェネレータ・ブレーカ45をトリップするように構成され、障害が発生したバス・サブセクションに直接接続されているすべてのブレーカをトリップするように構成可能である。
【0072】
マスター・リレー71がトリップ命令を送出する条件は、以下のとおりである。
(1)測定点(すなわちCTを有するリレー)からのすべての水平方向矢印は、バス・サブセクション(バスバー)を示している。
(2)バス・サブセクションの一方側で、ブレーカが開放されているが、バス・サブセクションの他方側の電流方向(矢印)は、バス・サブセクションの方を指している。
(3)バス・サブセクションの一方側で、ブレーカが通電を断たれる(例えば電流I<公称値の10%かつ電圧V<公称値の20%)が、バス・サブセクションの他方側の電流方向(矢印)は、バス・サブセクションの方を指している。これらの場合、バス・サブセクションの障害は、フィーダの下流の障害とみなすことができる(以下参照)。
【0073】
図4は、図3の左手のバス・サブセクション16のためのそれぞれのロジックを示す。図4の上部の決定は、保護リレー72(スレーブ)によって行われ、マスター保護リレー71に通信され、マスター保護リレー71は図の下部の測定を行い、判定ロジックを実施する。
【0074】
リレー72では、3相の電流方向が逆方向、すなわちバス・サブセクション16の方を指すか否かが判断され、報告される。ブレーカ41が開放しているか否か、または、電流の供給が絶たれているか否か(I<制限およびV<制限)も報告される。リレー71では、ブレーカ42の電流が順方向であるか(すなわちバス・サブセクションの方を指すか)、ブレーカ42の状態、および、ブレーカに電流が供給されているか否かが判断される。
【0075】
図4のフロー図から分かるように、トリップ信号を送出するための上述された条件は、保護リレーのロジックで反映される。例えば、リレー72が、決定された条件(逆電流、ブレーカの開放または電流供給なし)の1つをリレー71に報告し、リレー71が、順方向の電流を測定すると、トリップ信号は送出される。リレー71は、ブレーカ41、42、45を開放するためのトリップ信号を送出する。図3にも、トリップ信号は、(両方のバス・サブセクション16のための)破線の矢印で示される。
【0076】
類似のロジックは、図3の右手のバス・サブセクション16のための保護リレー71および図3の右手の保護リレー72において実施される。但し、リレー71のロジックの第1の条件は、逆方向(順方向ではない)の電流である。保護リレー71、72は、例えばシーメンス7SJ64リレーとすることができ、リレー71は、マスターとして作用し、両方の隣接するバス・サブセクションのための方向性保護ロジックを有する。
【0077】
保護リレー73、83は、例えばバスタイ17の差動の保護を実行することができる。リレー73、83は、例えばシーメンス7SD80リレーとすることができ、線形差動保護位相(87L)、3I0線形差動保護(87NL)および地絡差動保護(87NsL)を提供することができる。図示されているように、通信リンクはリレー73、83間に設けられ、リレー73、83は、それぞれ、バスタイ17の左側および右側にある関連するブレーカ41に連結され、これらのブレーカ41をトリップすることができる。
【0078】
バスタイ・ブレーカおよびバスカプラ・ブレーカを動作するための保護ロジックは、本願明細書において水平保護ロジックとも称される。さらに、方向性保護は、電力システムのさらなるコンポーネント、例えばバスタイおよびバスカプラのための障害保護システムにおいて提供可能である。それは、上述した通りに実施可能である。
【0079】
フィーダ・ブレーカ、例えばブレーカ43、44、45に関連する保護リレーは、方向性ロジックを備えることができる。特に、これらの保護リレーは、関連するブレーカを通る電流の方向に依存して異なるトリッピング挙動を有することができる。フィーダ(またはフィーダ・ブレーカ)を流れる電流が、下流方向、すなわち負荷の方向である場合、電流が閾値を上回ると、リレーは、第1のより短い時間t3でブレーカをトリップすることができる。この場合、過電流を引き起こしている障害がフィーダ側の下流にあるとリレーによって仮定することができるので、できるだけ高速にブレーカをトリップしなければならない。可能な例外は、上述したように、例えばLV配電フィーダに関するものである。
【0080】
同時に、保護リレーは、それぞれのバス・サブセクションの上流ブレーカに連結される保護リレーに、特にバスタイ・ブレーカ41、バスカプラ・ブレーカ42およびジェネレータ・ブレーカ45の保護リレーに、ブロッキング信号を送信するように構成される。
バス・サブセクション上の障害がないので、バス・サブセクションの差動の保護がトリガーされないにもかかわらず、(例えばバス・サブセクションの一方側の電流方向がバス・サブセクションの方へ指すため)方向性保護はトリガーされうる。ブロッキング信号は、関連する保護リレーによってこれらのブレーカのトリッピングを防止する。なぜなら、障害は、フィーダ・ブレーカをトリップすることによって分離可能であり、除去可能なためである。したがって、バス・サブセクションおよびそれに連結されるさらなるコンポーネントは、動作を継続することができる。
【0081】
一方、フィーダ・ブレーカの保護リレーが、所定の閾値を上回る逆の上流方向の電流、すなわちバス・サブセクション16の方向の電流を検出する場合、より長い時間t4(t3<t4)でフィーダ・ブレーカをトリップする。この手段の目的は、他の保護機能が障害を除去する可能性を得るということである(例えばジェネレータ保護)。障害が除去され、電流がt4の満了前に通常の大きさに戻ると、フィーダ・ブレーカはトリップせず、接続された負荷は動作を継続することができる。これによって、スラスタ・ドライブの損失を防止することができ、したがって、自動位置保持船の動作上の安全性は増加する。この場合、障害が上流に位置し、上流のブレーカ(または他のフィーダ・ブレーカ)によって除去される必要があるならば、保護リレーは、他のリレーにブロッキング信号を送信しない。
【0082】
時間t3は、例えば、約50ms〜約200msとすることがきる。時間t3は、約200ms〜約400msとすることができる。これらの値が電力システム10および障害保護システムの特定の構成に従って選択可能であるということを認識されたい。この種の方向性保護機能が障害保護システムの他のブレーカのために、例えばバスタイ・ブレーカのために含まれうることに留意されたい。このバスタイ・ブレーカは、閾値を上回る電流が、バスタイの方向へ流れ、バスタイのための方向性保護を提供する場合、t3内でトリップすることができる。
【0083】
障害保護システムは、ブレーカ故障検出システムをさらに具えることができる。このシステムは、関連する保護リレーによってブレーカのために実施可能である。保護リレーは、連結されるブレーカのためのトリップ命令を送出すると、ブレーカが実際に電気接続を切断するか否かをモニタすることができる。障害が発生した回路内を、電流が依然流れているか否かを調べることによって、例えば、電流がブレーカ全体に流れているか否かを調べることによって、ブレーカ故障を判断することができる。ブレーカ位置表示を使用して、ブレーカが開放されているか否かを決定することもできる。
【0084】
ブレーカ故障が検出されると、保護リレーは、それぞれの通信リンクを介して隣接するブレーカの保護リレーにトリップ命令を送出する。例えば、フィーダ・ブレーカまたはジェネレータ・ブレーカの故障が検出されると、関連する保護リレーは、それぞれのバス・サブセクションに直接接続されているすべてのブレーカの保護リレーにトリップ命令を送信するので、バス・サブセクションのすべてのブレーカは開放される。このように、障害の伝播を防止することができる。さらなる例として、バスタイまたはバスカプラ・ブレーカの故障が検出されると、関連する保護リレーは、故障したブレーカの左右にある隣のブレーカの保護リレーにトリップ命令を送信することができる。図1の例では、バスカプラ・ブレーカ42が故障すると、隣接するバス・サブセクションのバスタイ・ブレーカのためのトリップ信号が送信される。バスタイ・ブレーカ41が故障すると、バスタイの他端のさらなるバスタイ・ブレーカのためのトリップ信号と、隣接するバスカプラ・ブレーカに対するトリップ信号と、が送信される。
【0085】
故障保護のトリッピングは、例えば時間t5だけ遅延されうる。時間t5は、故障したブレーカの最大のブレーカ動作時間と、電流の流れをモニタしている要素のドロップアウト時間と、これらの時間の許容度を考慮に入れている安全域と、の合計とすることができる。それゆえ、ブレーカ故障保護を早まってトリッピングするのを防止することができる。
【0086】
さらなるバックアップとして、従来の短絡および過電流保護は、例えば、定限時過電流曲線を使用して、障害保護システムにおいて提供可能である。このバックアップ保護は、例えば、バスタイ・ブレーカ41、バスカプラ・ブレーカ42およびジェネレータ・ブレーカ45のために実施可能である。このバックアップ保護はバス・サブセクションのためにさらに実施可能である、すなわち、バス・サブセクションの電流が所定時間の間に閾値を上回ると、バス・サブセクションのブレーカは開放可能である。
【0087】
以下の表1は、それぞれのコンポーネントのために機能するメイン保護機能およびバックアップ保護機能を有する障害保護システムの可能な構成をまとめたものである。
【0088】
【表1】
【0089】
メイン保護機能が最初にトリップし、システムが強化された実施可能性を維持する、すなわちコンポーネントの不要なトリッピングを防止することを確認するために、表2は、トリッピング時間(または遅延)がそれぞれの保護機能をトリップするために使用可能であることを示す。
【0090】
【表2】
【0091】
表2の(1)と記録された行に関して、下流のコンシューマのトリッピングは遅延されたトリッピング時間によって可能になり、LV配電システム全体のトリッピングを防止するという上述した例外を意味する。これは、表2の(2)と記録された行にも類似しており、この場合、より長い遅延は下流のユーティリティ/補助のトリッピングを可能にするために選択される。オプションは、これらの負荷の1つにおける障害が電力システム10の安定性に与える影響に従って選択可能であり、すなわち、安定性が損なわれる場合、より短いトリッピング時間または遅延が選択されなければならない。
【0092】
図5は、本発明の一実施形態による障害保護システムを動作する方法の模式的な概要を示すフロー図である。この方法は、図1図4および上述した説明の電力システムおよび障害保護システムにて実行可能である。上述したステップは、図5に明確に示されないが方法の一部とすることができる点に留意されたい。
【0093】
ステップ101において、電力システム10は、バスタイ・ブレーカを閉じた状態で、DP3動作モードで動作する。3つの電力システム・セクション12のために2つのジェネレータを動作させれば十分であり、ジェネレータをより効果的な方式で動作可能であるので、燃料消費および二酸化炭素の排出を減らすことができる。
【0094】
ステップ102において、障害が発生する。差動の保護は最速に(表2参照)反応するように構成可能であるので、ステップ103において、差動の保護が障害を検出するか否かを調べる。ステップ103において「はい」の場合、それぞれの保護ゾーン内のブレーカをトリップする(ステップ104)。「いいえ」の場合、方向性保護(ステップ105)またはフィーダの過電流保護(ステップ106)は、障害を検出することができる。フィーダ・ブレーカの保護リレーが、(所定の閾値を上回る電流を検出することによって)障害を検出する場合、方向性ロジックは、障害がフィーダの下流にあるか否かを調べる(ステップ107)。ステップ107において「はい」の場合、フィーダ・ブレーカを、例えば時間t3の間トリップする。また、ブロッキング信号を、上流のブレーカの保護リレーに送信する(ステップ109)。
【0095】
ステップ107の判定が「いいえ」の場合、すなわち、フィーダ・ブレーカを流れる逆電流を検出する場合、フィーダ・ブレーカを直ちにはトリップせず、トリッピングを遅延し、他の保護機能、例えばステップ110の方向性保護のトリッピングを許容する。方向性ロジックが障害を検出する場合(ステップ105)、それぞれの保護リレー、例えばマスター・リレーがトリップ命令を送出し、ロジックに従って適切なブレーカをトリップする(ステップ110)。ブロッキング信号をフィーダ保護リレーから受信する場合、トリップ命令を送出しない。ステップ108またはステップ110において、障害を除去する。
【0096】
それぞれのトリップ命令を送出後、障害が依然存在する場合(ステップ111)、ステップ112において、ブレーカ故障保護を、表2に示すような特定の遅延をもって実行する。上述したように、ブレーカが故障したとき、故障したブレーカの左右のブレーカに、または、同一バス・サブセクション内の全てのブレーカに、トリップ命令を送出するか否か出すかを、ブレーカ故障保護は決定する(ステップ113)。
【0097】
障害除去後、動作は、残りのブレーカを閉じた状態で継続する(ステップ114)。この種の手順を使用して、障害に影響を受けない大部分のコンポーネントは、電力システム10に接続されたまま、動作を継続することができる。動作中のジェネレータが障害のため電力システムから分離されると、ステップ115において、追加のジェネレータが開始可能であり、すなわち、その関連する原動機、例えばガスタービンまたはディーゼルエンジンが開始する。
【0098】
方法がさらなるステップ、例えば、表1を用いて上述したバックアップ過電流保護等を含むことができる点を認識されたい。
【0099】
本願明細書において特定の実施形態が開示されているが、本発明の範囲内において、各種変更および修正を行うことができる。本実施形態はあらゆる点で例示的かつ非制限的であるとみなされるべきであり、添付の請求の範囲の意味および同等範囲に含まれるすべての変更は、本願明細書に包含されることを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5