(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施の形態にかかる磁石式搬送装置1を説明する図であって、磁石式搬送装置1の全体構成を説明する側面図である。なお、この
図1では、上レール3と下レール4のサイドカバー34、44の一部を切り欠いて示しており、上レール3のサイドカバー33、34の間と、下レール4のサイドカバー43、44の間に位置するローラ31、41や磁石6の側面を示している。
図2は、実施の形態にかかる磁石式搬送装置1の断面図であり、(a)は、
図1におけるA−A断面図であり、(b)は、
図1におけるB−B断面図である。
図3は、実施の形態にかかる磁石式搬送装置1におけるワークWの搬送原理を説明する図であり、(a)は、側面図であり、(b)は、(a)における領域Aを拡大して断面で示した図であり、(c)は、(a)における領域Bを拡大して断面で示した図であり、(d)は、(a)における領域Cを拡大してその一部を断面で示した図である。
【0010】
図1に示すように、実施の形態にかかる磁石式搬送装置1は、上レール3と下レール4とを上下に重ねた搬送レール2と、下レール4の下側に配置された磁石6と、磁石6を搬送レール2の長手方向に進退移動させる駆動機構5と、を備えて構成される。
この磁石式搬送装置1では、駆動機構5により磁石6を移動させると、下レール4のローラ41が磁石6の磁力で回転して、このローラ41に接触する上レール3のローラ31を回転させるようになっており、磁石6を、搬送レール2におけるワークの搬送方向(図中左方向)に移動させることで、上レール3に載置されたワークWが、回転するローラ31により、搬送方向に移動させられるようになっている。
【0011】
図2の(a)に示すように、上レール3は、円筒形状のローラ31と、ローラ31を回転可能に支持する回転軸32と、回転軸32の一端および他端を支持するサイドカバー33、34と、備えて構成される。
サイドカバー33、34は、ワークWの搬送方向に所定長さを有する板状の部材であり、これらサイドカバー33、34の間では、回転軸32に支持されたローラ31が、サイドカバー33、34の長手方向に沿って、等間隔で複数設けられている。
この状態において、各ローラ31の回転軸32は、ワークWの搬送方向に対して直交する方向に揃えられており、回転軸32の各々は、搬送方向側から見て共通の軸線X1上に位置している。
【0012】
ローラ31は、その下側の外周面31aを、サイドカバー33、34の下端33a、34aよりも下側に配置させ、上側の外周面31bを、サイドカバー33、34の上端33b、34bよりも下側に配置させた状態で設けられている。
【0013】
実施の形態では、ローラ31の上側の外周面31bが、ワークWの載置面となっており、ローラ31に載置されたワークWの側方に、サイドカバー33、34の上端33b、34b側が位置することで、搬送方向側に移動するワークWが、上レール3の両側から落下しないようにされている。
【0014】
上記したように、上レール3のローラ31は、このローラ31が接触する下レール4のローラ41により回転させられるようになっている。そのため、ローラ31は、下レール4のローラ41に対する摩擦が大きい材料で形成されており、ローラ31が、ローラ41の回転で確実に回転させられるようになっている。
【0015】
下レール4は、円筒形状のローラ41と、ローラ41を回転可能に支持する回転軸42と、回転軸42の一端および他端を支持するサイドカバー43、44と、備えて構成される。
サイドカバー43、44は、ワークWの搬送方向に所定長さを有する板状の部材であり、これらサイドカバー43、44の間では、回転軸42に支持されたローラ41が、サイドカバー43、44の長手方向に沿って、等間隔で複数設けられている。
この状態において、各ローラ41の回転軸42は、ワークWの搬送方向に対して直交する方向に揃えられており、回転軸42の各々は、搬送方向側から見て、共通の軸線X2上に位置している。
【0016】
ローラ41は、その上側の外周面41bを、サイドカバー43、44の上端43b、44bよりも上側に配置させ、下側の外周面41aを、サイドカバー43、44の下端43a、44aよりも上側に配置させた状態で設けられている。
【0017】
ローラ41は、鉄などの磁性体(磁石6の磁力に引きつけられる材料)で形成されており、磁石6がワークWの搬送方向に移動した際に、移動する磁石6の磁力により、回転させられるようになっている。
【0018】
実施の形態にかかる磁石式搬送装置1では、上レール3と下レール4とを上下に重ねて搬送レール2を構成している。
この状態において上レール3と下レール4は、互いのローラ(ローラ31とローラ41)を接触させた状態で設けられており、
図1に示すように、搬送レール2の長手方向(ワークWの搬送方向)において、ローラ31とローラ41は交互に位置している。
【0019】
そのため、搬送レール2の長手方向における両端に位置するローラを除き、ローラ31は、その下側に位置するふたつのローラ41に接触し、ローラ41は、その上側に位置するふたつのローラ31に接触している。
よって、下レール4のローラ41の回転で、当該ローラ41の上側に位置するふたつのローラ31が回転するようになっている。
【0020】
図2の(a)、(b)に示すように、サイドカバー43、44の下端43a、44aには、板状のガイドレール431、441が、互いに対向する向きで設けられている。
サイドカバー43のガイドレール431と、サイドカバー44のガイドレール441は、それぞれサイドカバー44、43側に延出して、所定長さLで形成されており、その上面431b、441bは、後記する磁石6に設けたガイド輪66の転動面となっている。
【0021】
図3に示すように、下レール4の下方には、ワークWの搬送方向に磁石6を移動させる駆動機構5が設けられている。
駆動機構5は、空気圧を利用してムービングブロック56を移動させる構成のロッドレスシリンダを採用しており、下レール4の下方を、ワークWの搬送方向に沿って直線状に延びるガイド軸51と、ガイド軸51の長手方向に進退移動可能に設けられたムービングブロック56と、を有している。
【0022】
ガイド軸51は、長手方向の一端(先端)および他端(基端)が封止部材52、53で封止された円筒形状の部材であり、封止部材53側の基端部には、連結部材55が取り付けられている。
連結部材55は、ガイド軸51の直交方向に延びており、ガイド軸51の延長線上(軸線Xa)から径方向外側にオフセットした位置が、下レール4に設けた支持軸45で回動可能に支持されている。
そのため、磁石式搬送装置1においてガイド軸51は、ローラ31、41の回転軸(軸線X1、X2)に対して平行な回動軸X3(軸線)周りの周方向に回動可能に設けられており、封止部材52が設けられた先端側が、上下方向に移動するようになっている。
【0023】
封止部材52、53には、圧縮空気の給排口52a、53aが径方向に開口して設けられており、ガイド軸51内を長手方向に延びる内側空間511への圧縮空気の給排が、これら給排口52a、53aを介して行われるようになっている。
ガイド軸51の内側空間511内には、磁石からなる円柱形状のプランジャ54が設けられている。
このプランジャ54は、内側空間511の内径D2と整合する外径を有しており、内側空間511の長手方向に進退移動可能となっている。
【0024】
実施の形態では、図中右側の給排口53aからガイド軸51内に圧縮空気が供給されると、プランジャ54が、当該プランジャ54の給排口53a側の面54aに作用する空気圧により、給排口52a側(図中左側)に移動し、図中左側の給排口52aから圧縮空気が供給されると、プランジャ54の給排口52a側の面54bに作用する空気圧により、プランジャ54が給排口53a側(図中右側)に移動するようになっている。
【0025】
ガイド軸51は、長手方向の全長に亘って同一の外径D1で形成されており、このガイド軸51には、ムービングブロック56が外挿して取り付けられている。
ムービングブロック56は、その中央部に形成された挿通孔57に、ガイド軸51を挿通させて設けられており、ガイド軸51の長手方向に進退移動可能に設けられている。
ガイド軸51の両端に取り付けられた封止部材52、53は、長手方向に移動するムービングブロック56のストッパを兼ねており、ガイド軸51においてムービングブロック56は、封止部材52、53の間で進退移動するようになっている。
【0026】
ムービングブロック56は、鉄などの磁性材料(ガイド軸51内のプランジャ54(磁石)の磁力に引き付けられる材料)で形成されており、プランジャ54がガイド軸51内を移動すると、移動するプランジャ54の磁力により引っ張られて、プランジャ54と同方向に移動するようになっている。
【0027】
図2の(a)に示すように、ガイド軸51の長手方向から見て、ムービングブロック56の下レール4側の上面56aは、下レール4のローラ41の下側の外周面41aに対して平行な平坦面となっており、この上面56aに磁石6が取り付けられている。
そのため、ムービングブロック56が、ガイド軸51の長手方向に移動すると、磁石6もまた、ムービングブロック56と同方向に移動するようになっている。
【0028】
図2の(b)に示すように、ガイド軸51の長手方向から見て磁石6は、サイドカバー43、43の離間距離L1や、ローラ31、41の幅Wxよりも小さい幅W1を有しており、その両側部には、ガイド輪66、66が設けられている。
ガイド輪66、56は、磁石6の側面6bから幅方向に離れた位置に設けられており、磁石6の長手方向(図中左右方向)に間隔をあけてふたつ設けられている(
図1参照)。そのため、磁石6には、合計4つのガイド輪66が設けられている。
【0029】
図3に示すように、磁石式搬送装置1では、ワークWを搬送方向に移動させる際には、上レール3と下レール4のローラ31、41を回転させるために、ワークWの搬送方向(図中左側)に磁石6を移動させるようになっており、この磁石6の移動は、駆動機構5のムービングブロック56を、ガイド軸51に沿ってワークの搬送方向(図中左側)に移動させることで行われる。
ここで、ガイド軸51は、ワークの搬送方向における上流側(図中右側)が、下レール4のサイドカバー43、44で片持ち支持されている。そのため、ワークWの搬送方向に移動させるために、ムービングブロック56(磁石6)を図中左側に移動させると、ガイド軸51には、当該ガイド軸51を回動軸X3周りに回動させて、その先端側(封止部材52側)を下レール4から離れる下方に移動させようする力が、ムービングブロック56および磁石6の質量と、これらの回動軸X3からの離間距離に応じた大きさで、作用するようになっている。
【0030】
実施の形態では、ワークWを搬送している途中で、ガイド軸51が回動軸X3周りに回動しないようにするために、下レール4のサイドカバー43、44に、ガイドレール431、441が設けられており、ガイド軸51が回動軸X3周りに回動して、その先端側を図中下方向に移動させようとすると、磁石6に設けたガイド輪66が、ガイドレール431、441に接触することで、ガイド軸51の回動軸X3周りの回動が阻止されるようになっている。
【0031】
ここで、ガイドレール431、441は、サイドカバー43、44の長手方向における一端側のワークWの搬送開始位置(初期位置)と、他端側の搬送終了位置を避けた範囲に、所定長さLで形成されている(
図1参照)。そのため、磁石6が、ガイド軸51の先端側の搬送終了位置に達した時点で、ガイド軸51の回動軸X3周りの回動が許容されて、磁石6が下レール4(ローラ41)から下方に離れるようになっている。
【0032】
以下、磁石式搬送装置1の動作を、
図3および
図4を参照して説明する。
図4は、磁石式搬送装置1の動作を説明する図であり、(a)は、磁石6が、ワークWの搬送開始位置(初期位置)に配置された状態を示す図であり、(b)は、磁石6が、ワークWの搬送終了位置(ワークWの搬送を終了する位置)に到達した後を示す図であり、(c)は、磁石6を、初期位置に向けて移動させている途上の状態を示す図である。
【0033】
磁石式搬送装置1でワークWを搬送する際には、磁石6を、ワークWの搬送開始位置(初期位置)に配置した状態で、搬送レール2(上レール3)にワークWが載置される(
図4の(a)参照)。
【0034】
この状態において、ガイド軸51の一端側の給排口53a(
図3の(c)参照)から内側空間511内に圧縮空気が供給されると、プランジャ54は、空気圧により押されて、内側空間511内を給排口52a側(
図3の(d)において左側、矢印A1参照)に移動する。
そうすると、ガイド軸51に外挿されたムービングブロック56が、プランジャ54(磁石)の磁力により引っ張られて、プランジャ54と同方向に移動するので、ムービングブロック56に取り付けられた磁石6もまた、ワークWの搬送終了位置に向けて移動することになる(図中矢印A2参照)。
【0035】
そして、この際に、磁石6の上側に位置する下レール4の鉄製のローラ41が、移動する磁石6の磁力により引っ張られて、図中矢印A3で示す方向(図中、時計回り方向)に回転することになる。
【0036】
ここで、下レール4のローラ41は、上レール3のローラ31に接触して設けられており、ローラ31は、下レール4のローラ41との摩擦抵抗の大きい材料(例えば鉄)で形成されているので、ローラ31は、回転するローラ41により、図中矢印A4で示す方向(図中、反時計回り方向)に回転させられることになる。
このローラ31の回転方向は、上レール3に載置されたワークWを、搬送方向における下流側(搬送終了位置側、矢印A5参照)に移動させる方向の回転であるので、回転するローラ31に載置されたワークWには、搬送終了位置に向けて移動させられることになる。
【0037】
ここで、回転するローラ41、31の位置は、搬送終了位置に向けて移動する磁石6に追従して変化するので、上レール3に載置されたワークWは、磁石6(ムービングブロック56)と共に、ワークWの搬送終了位置に向けて移動することになる。
【0038】
この際、磁石6を支持するガイド軸51は、その先端の封止部材52側(搬送終了位置側)が、上下方向に移動可能となっており、磁石6が図中左側の搬送終了位置に向けて移動すると、ガイド軸51には、当該ガイド軸51を回動軸X3周りに回動させて、その先端側(封止部材52側)を下レール4から離れる下方に移動させようする力が、ムービングブロック56および磁石6の質量と、これらの回動軸X3からの離間距離に応じた大きさで、作用するようになっている。
【0039】
実施の形態では、ワークWを搬送している途中で、ガイド軸51が回動軸X3周りに回動しないようにするために、下レール4のサイドカバー43、44に、ガイドレール431、441が設けられており、ガイド軸51が回動軸X3周りに回動して、その先端側を図下方向に移動させようとすると、磁石6に設けたガイド輪66が、ガイドレール431、441に接触することで、ガイド軸51が回動軸X3周りの回動が阻止されるようになっている。
【0040】
ここで、下レール4においてガイドレール431、441は、ワークWの搬送方向における上流側のワークWの搬送開始位置(初期位置)と、下流側の搬送終了位置を避けた範囲に設けられている。そのため、磁石6が、ガイド軸51の先端側の搬送終了位置に到達するまでの間は、ガイド軸51の回動軸X3周りの回動が阻止されるようになっている。
そして、磁石6がワークの搬送終了位置に到達すると、その時点で磁石6に設けたガイド輪66が、ガイドレール431、441から外れるので、ガイド軸51は、回動軸X3周りに回動して、磁石6が位置する先端側を、下レール4のローラ41から離間させる方向である下方に移動させるようになっている(
図4の(b)参照)。
【0041】
そして、磁石6が下レール4から離れる方向に移動すると、搬送終了位置にあるローラ41、31の回転が、磁石6の磁力で規制されていない状態となるので、上レール3上の搬送終了位置まで運ばれたワークWを、ローラ31を回転させつつ、搬送レール2の先端側に引き寄せて、搬送レール2(上レール3)から取り出すことができるようになる。
よって、搬送終了位置まで運ばれたワークWの搬送レール2からの取り出し作業を支障なく行えることになる。
【0042】
実施の形態では、搬送レール2(下レール4)の下方に、ストッパ70が設けられており、ガイド軸51が、回動軸X3周りに回動して、封止部材52が設けられた先端側を、ローラ41から離間させる方向である下方に移動させると、ガイド軸51の先端側に移動したムービングブロック56が、ストッパ70の下側の平坦部71に当接した時点で、ガイド軸51の回動が止まるようになっている。
【0043】
この状態においてガイド軸51は、封止部材52が設けられた先端から、回動軸X3側の基端に向かうにつれて、下レール4(ローラ41)との離間距離が小さくなる角度位置で保持されている。
【0044】
そのため、この状態から、ガイド軸51の他端側の給排口52a(
図3の(b)参照)から内側空間511内に圧縮空気(駆動流体)が供給されると、プランジャ54は、空気圧により押されて、内側空間511内を給排口53a側(
図4の(b)において右側)に移動することになる。
【0045】
そうすると、ガイド軸51に外挿されたムービングブロック56が、プランジャ54(磁石)の磁力により引っ張られて、プランジャ54と同方向に移動するので、ムービングブロック56に取り付けられた磁石6もまた、図中右側のワークWの搬送開始位置(初期位置)に向けて移動することになる。
【0046】
そうすると、磁石6が搬送開始位置に近づくにつれて、磁石6と下レール4の鉄製のローラ41との離間距離が小さくなり、磁石6が搬送開始位置の近傍に達した時点で、磁石6が、当該磁石6の磁力によりローラ41側に引き寄せられるので、磁石6を支持するガイド軸51が回動軸X3周りに回動することになる。
そして、最終的に磁石6が
図4の(a)に示す搬送開始位置まで戻された時点で、磁石6を支持するガイド軸51が、下レール4に対して水平に配置された初期状態まで、戻されることになる。
【0047】
実施の形態では、回動軸X3の近傍に、ストッパ70の上側の平坦部72が位置しており、磁石6が搬送開始位置まで戻った際に、磁石6が取り付けられたムービングブロック56が、この平坦部72に乗り上げることで、ガイド軸51が、下レール4に対して水平に配置された初期状態で保持されるようになっている。
【0048】
さらに、下側の平坦部71と上側の平坦部72との間に、ワークWの搬送方向にける上流側に向かうに連れて下レール4との離間距離が小さくなる向きの傾斜部73が設けられている。そのため、磁石6を搬送開始位置に向けて移動させている途中で、磁石6を支持するムービングブロック56が、傾斜部73を摺動するようになり、この傾斜部73を摺動するムービングブロック56が搬送開始位置に近づくに連れて、ガイド軸51を回動軸X3周りに回動させるので、ガイド軸51の下レール4に対して水平に配置された初期状態までの復帰が、傾斜部73によりアシストされるようになっている。
【0049】
このように、圧縮空気によりプランジャ54をガイド軸51の長手方向(ワークWの搬送方向)に進退移動するだけで、搬送レール2に載置されたワークWを、搬送方向開始位置から搬送終了位置に向けて移動させることができる。
そして、この磁石式搬送装置1のローラ31、41は、従来のコンベア装置のようなモータが内蔵されたローラではなく、レールにおいて単純に回転可能に支持させたローラ(フリーローラ)であるので、従来よりも安価に提供できる簡単な構成の搬送装置となる。
【0050】
以上の通り、実施の形態では、ワークW(被搬送物)の搬送方向で複数のローラ31、41が回転可能に設けられた上レール3および下レール4を、互いのローラ31、41を接触させた状態で上下に重ねて構成される搬送レール2と、
搬送レール2の下側に配置されて、駆動機構5(駆動手段)により、搬送方向に進退移動可能とされた磁石6と、を備え、
磁石6側に位置する下レール4のローラ41を少なくとも磁性体(鉄)で構成し、下レール4のローラ41を搬送方向に移動する磁石6の磁力で回転させ、回転する下レール4のローラ41により、上レール3のローラ31を回転させて、下レール4に載置されたワークWを搬送方向に移動させる構成の磁石式搬送装置1とした。
【0051】
このように構成すると、磁石6を移動させると、磁石6の磁力により、下レール4のローラ41が回転して、この下レール4のローラ41が接触する上レール3のローラ31が回転する。
この際、磁石6の移動方向を搬送レール2におけるワークWの搬送方向にすると、上レール3のローラ31の回転方向は、ワークWを搬送方向に移動させる方向の回転であり、回転する上レール3のローラ31の位置は、磁石6の移動に伴って、ワークWの搬送方向に順次移り変わるので、上レール3のローラ31に載置されたワークWは、搬送方向に移動することになる。
この磁石式搬送装置1のローラ31、41は、従来のコンベア装置のようなモータが内蔵されたローラではなく、レールにおいて単純に回転可能に支持させたローラ(フリーローラ)であるので、従来よりも簡単な構成の搬送装置となる。よって、搬送装置を、より安価に提供できるようになる。
【0052】
磁石6は、下レール4の下側をワークWの搬送方向に延びるガイド軸51(ガイド)に設けられたムービングブロック56に支持されて、進退移動可能とされており、
ガイド軸51は、搬送方向における上流側(搬送開始位置側)に位置する一端が、ローラ31、41の回転軸X1、X2に対して平行な回動軸X3周りに回動可能とされて、封止部材52が設けられた他端側(搬送終了位置側)を回動軸X3周りの周方向に移動可能としており、
下レール4には、磁石6のガイド輪66が当接して、下レール4から磁石6を離す方向へのガイド軸51の回動を阻止するガイドレール431、441(阻止部)が設けられており、このガイドレール431、441は、ワークWの搬送方向における上流側の搬送開始位置から、下流側の磁石6が搬送終了位置に達する直前までの範囲に設けられている構成とした。
【0053】
ワークWを搬送方向に移動させるために、磁石6をガイド軸51の他端側の搬送終了位置に向けて移動させると、ガイド軸51には、当該ガイド軸51を回動軸X3周りに回動させて、その先端側(封止部材52側)を下レール4から離れる下方に移動させようする力が、ムービングブロック56および磁石6の質量と、これらの回動軸X3からの離間距離に応じた大きさで、作用するようになっている。
上記のように構成すると、搬送方向におけるガイドレール431、441が設けられている範囲では、ガイド軸51が回動軸X3周りに回動して、ガイド軸51で支持された磁石6を下レール4から離間させる方向の下方に移動させようとしても、磁石6のガイド輪66が、ガイドレール431、441に接触することで、ガイド軸51の回動が阻止されるようになっている。
そのため、ワークWの搬送方向における上流側の搬送開始位置から、下流側の搬送終了位置に向けて移動する磁石6は、下レール4のローラ41を上流側から順番に回転させることになる。よって、この下レール4のローラ41の回転に伴って、上レール3のローラ31もまた、上流側から順番に回転させられるので、ローラ31に載置されたワークWが搬送方向における下流側の搬送終了位置に向けて移動することになる。
【0054】
そして、磁石6がワークWの搬送終了位置に達すると、磁石6のガイド輪66がガイドレール431、441から外れることで、ガイド軸51が、回動軸X3周りに回動して、当該ガイド軸51で支持された磁石6を下レール4から離間させる方向に移動させることになる。
ここで、ガイド軸51が下レール4に対して平行に配置されて、磁石6が下レール4の下側で保持されているときには、磁石6の上側に位置するローラ41、31の回転が、磁石6の磁力で規制されている。そのため、ワークWの搬送終了位置に到達した磁石6を、下レール4の下側にそのまま配置していると、搬送終了位置にあるローラ41、31の回転が規制されるので、搬送終了位置まで移動したワークWの搬送レール2からの取り出し作業の行いやすさに、支障を生ずる虞がある。
【0055】
上記のように構成することで、磁石6がワークの搬送終了位置に到達すると、ガイド軸51の回動規制が解除されて、磁石6が下レール4から離れる方向に移動するので、搬送終了位置にあるローラ41、31の回転が規制されていない状態となる。
そうすると、上レール3上の搬送終了位置にまで運ばれたワークWを、ローラ31を回転させつつ搬送レール2の先端側に引き寄せて、搬送レール2(上レール3)から取り出すことができるようになるので、搬送終了位置にまで運ばれたワークWの搬送レール2からの取り出し作業を支障なく行うことができるようになる。
また、ワークWが、磁石により引き寄せられる材料(例えば、鉄などの磁性体)から構成されていても、搬送終了位置に到達したワークWを、搬送レール2から支障なく取り出すことができる。
【0056】
ガイド軸51の回動軸X3を、下レール4の下側に配置すると共に、
下レール4の下方に、下レール4から磁石6を離す方向に回動したガイド軸51を、
封止部材52が設けられた先端から回動軸X3側の基端に向かうにつれて下レール4との離間距離が小さくなる所定位置で保持するストッパ70(下側の平坦部71)を設けた構成とした。
【0057】
このように構成すると、ガイド軸51で支持させた磁石6を、当該ガイド軸51の基端端側(回動軸X3側)に向けて移動させると、下レール4の磁性体(鉄)からなるローラ41と磁石6との離間距離が小さくなる。
そうすると、磁石6がガイド軸51の基端側に達すると、磁石6が当該磁石6の磁力によりローラ41側の上方に引き付けられて、ガイド軸51が、磁石6をローラ41に近づける方向(図中時計回り方向)に回動して、ガイド軸51を、下レール4に対して水平に配置させた初期位置に復帰させることができるようになる。
【0058】
これにより、ガイド軸51で支持させた磁石6を、当該ガイド軸51の長手方向で進退移動させるだけで、搬送レール2に載置されたワークW搬送作業を繰り返し実行することができるようになる。
【0059】
さらに、駆動機構5(駆動手段)は、ガイド軸51内をその一端側(封止部材52側)から他端側(封止部材53側)まで延びる内側空間511(中空部)内に設けられたプランジャ54を有しており、プランジャ54を磁石で構成すると共に、プランジャ54を、ガイド軸51の一端側の給排口53aから内側空間511内に圧縮空気(駆動流体)が供給されると他端側(ワークWの搬送方向における下流側)に移動し、他端側の給排口52aから内側空間511内に圧縮空気(駆動流体)が供給されると一端側(ワークWの搬送方向における上流側)に移動するようにした。
【0060】
このように構成すると、圧縮空気の供給口を変えるだけで、プランジャ54を移動させて、この移動するプランジャ54により磁石6をガイド軸51の長手方向に移動させることができる。
よって、圧縮空気の供給口を切り替えるという単純な構成で、磁石6を移動させることができ、移動する磁石6により搬送レール2のローラ31、41を回転させて、搬送レール2に載置されたワークWを、搬送することができる。
【0061】
前記した実施の形態では、下レール4のローラ41が鉄である場合を例示したが、磁石6により引き寄せられる磁性体であれば、他の材料で構成しても良い。さらに、上レール3のローラ31が鉄である場合を例示したが、下レール4のローラ41の回転に追従して回転できるという条件のもと、例えば樹脂材料のような、他の材料で構成しても良い、
【0062】
さらに、磁石で構成されたプランジャ54で、ムービングブロック56を移動させる場合を例示したが、ムービングブロック56を省略して、プランジャ54で磁石6を直接移動させるように構成しても良い。この場合においてプランジャ54は、必ずしも磁石である必要がなく、例えば鉄のように磁石6により引き寄せられる材料で構成されていれば、プランジャ54の移動に連動して磁石6を移動させることができるようになる。