(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無機結合剤は、セメント、ポートランドセメント、複合セメント、ポゾラン成分を含有するセメント及び高炉セメントの系列から選択される少なくとも1種の水硬性結合剤を包含する、請求項1に記載の混合物。
フルオルオルガニル置換珪素化合物は、トリデカフルオル−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン及び/又はトリデカフルオル−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシランである、請求項5に記載の混合物。
フルオルオルガニル置換珪素化合物は水溶性ポリマー中に封入されていて、水溶性ポリマー及び珪素化合物は、水中に分散可能でかつ/又は再分散可能である粒子を形成し、この際、水溶性ポリマーは、多糖類、多糖類エーテル、タンパク質、ビニル重合体、ホルムアルデヒド縮合体及びアルキレンオキシド重合体の系列から選択されている、請求項1から7までのいずれか1項に記載の混合物。
液状のフルオルオルガニルアルコキシ置換珪素化合物は、水溶性ポリマー中に封入されていて、平均滴度10nm〜10μmを有し、かつ本質的に加水分解されていない、請求項1から8までのいずれか1項に記載の混合物。
フルオルオルガニル置換珪素化合物は、トリデカフルオル−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン及び/又はトリデカフルオル−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシランである、請求項18に記載の粉末。
硬化した混合物において疎水化及び疎油化特性を得るために、水溶性ポリマー中に封入されているフルオルオルガニル置換珪素化合物を、セメント2〜60質量%、少なくとも1種の添加物質30〜90質量%、フルオルオルガニル置換珪素化合物0.001〜8質量%及び場合により更なる助剤を含有する水硬可能な混合物中で用いる使用であって、前記フルオルオルガニル置換珪素化合物は、フルオルオルガニル置換シラン及びフルオルオルガニル置換シロキサン及びフルオルオルガニル置換シリコーン及びその混合物の系列から選択される、前記使用。
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化可能な混合物、水中で再分散可能な粉末、その混合物及び粉末の製法、硬化可能な混合物における粉末の使用及び硬化可能な混合物の使用に関し、この際、硬化した混合物は"イージークリーン(easy-to-clean)"特性を有する。
【0002】
本発明による水中で再分散可能な粉末は、これ以降、水溶性ポリマー中に封入又は被包されかつ乾燥されているフルオルオルガニル置換珪素化合物として表示され、前記及び後記では、短く粉末としても挙げられる。
【0003】
硬化可能な混合物、例えば、水硬性材料、例えば、セメント系材料は、多数の重要な場所の現代建築、即ち、例えば、車道、歩道又はテラス用、全ての種類のジョイント及び表面被覆用のコンクリート舗装、例えば、プラスターの製造に使用される。外範囲及び内範囲で、極めて様々な物質による、例えば、交通排気及び工業排気、殊に煤、花粉、草汚染、油、殊にエンジン油、化粧品、飲料残渣及び食料残渣、殊にコーラ、コーヒー、赤ワイン又はケチャップによる、及び微生物、例えば、海藻又はキノコの増殖による、そのような硬化混合物の表面の汚染は、美的観点から大きな問題である。従って、硬化した混合物、殊に水硬性材料の装備は、汚染拒絶性[以降で、"イージークリーン(easy-to-clean)"("清浄し易い")又はETCとも挙げられる]を有するそのような用途で所望される。
【0004】
汚染拒絶性とは、表面の特性が、水性の物質も油性の物質も材料中へ浸入することを阻止し、かつその表面からこれらの物質を除去することを容易にすることが解される。更に、汚染拒絶表面上で、染料、ラッカー、粉塵も、しかし又極めて様々な物質、例えば、苔及び藻の付着物も容易に清浄除去されるべきである。汚染性の試験は、DIN EN ISO 10545-14により行われ得る。従って、そのような"イージー・トゥー・クリーン"特性を有する材料は、撥水性、要するに疎水性であるばかりでなく、撥油性、要するに疎油性を有するべきである。
【0005】
"イージー・トゥー・クリーン"特性は、既成の硬化した表面を様々な材料で後処理することによって生成されることは知られている。即ち、特に、EP0838467は、表面熱処理のために、弗素含有のシラン又はシラン系の使用を示している。表面の後処理のためのそのような系の欠点は、一方で、そのような物質又は材料を製造した後の、もう1つの工程段階の必要性であり、他方で、そのような被覆が風化及び摩擦によって損耗されるので、被覆の耐久性がしばしば低いことである。
【0006】
更に、水硬性材料、殊にセメント系材料は、物質変性剤の添加によって改善されることが知られている。即ち、EP0913370は、そのような材料の撥水性(疎水性)の達成のための、シラン含有水性エマルジョンの使用を示している。この説明は、残念ながら、所望の"イージー・トゥー・クリーン"表面に言及していない。更に、弗素で官能化された珪素化合物は述べられていない。
【0007】
US5650004から、プールの密閉用に使用されるセメント系プラスター混合物が公知である。プラスター混合物の撥水性及び改善された耐久性は、シラン変性化粉末及びポゾラン充填剤の添加によって達成される。このプラスター混合物の欠点は、確かに持続的に撥水性は達成され得て、要するに水性の汚染も拒絶され得るが、前記の意における汚染拒絶性は達成されないことである。更に、弗素含有珪素化合物も挙げられていない。
【0008】
DE10346082から、その特殊な混合物が微細構造を変化させる、複雑な水硬性混合物が公知である。それによって、条件的に汚染を拒絶する表面を有する耐摩耗性材料が得られる。弗素を含有する珪素化合物は述べられていない。
【0009】
EP1445242から、汚染拒絶性を有する、外壁用の非セメント系プラスター又は被覆が公知である。汚染拒絶性は、汚染粒子が孔隙中に侵入しかつ定着し得ないように、微小粗面を減少させることによって達成される。この際、珪酸カリウムをベースとする非セメント系プラスター混合物がそのものとして変性化されることが欠点である。更に、弗素含有珪素化合物は記載されていない。
【0010】
EP1262464は、セメント含有のモルタル粉末を記載し、この際、モルタル粉末の少なくとも1成分、例えば、セメント粉末又は石英粒子がその表面上で弗素化学化合物、例えば、シランで処理されている。弗素化学化合物で被覆されたこのモルタル成分の製造は複雑であり、かつ特に、セメント含有混合物と水、有機溶剤及び弗素化学化合物との反応、それに続く乾燥及び均一化を包含する。予備処理されたモルタル粉末は、それが水と混合され、塗布されかつ硬化した後に、撥水性及び撥油性を示す。そのようなモルタル粉末の少なくとも1成分は、弗素化学化合物で予備処理されているので、そのようなモルタルは、水との攪拌の際に既に、疎水性、即ち撥水性を示し、このことは極めて悪い湿潤を生じさせる。
【0011】
公知技術水準から判明されるように、殊に無機の支持体表面は、"イージー・トゥー・クリーン"特性を有するフルオルオルガニル置換珪素化合物の追加的な表面塗布によって装備され得て、このことは付加的な操作段階を必要とする。その場合には、そうして処理された支持体表面の損傷が、例えば、摩擦による機械的負荷で生じる場合に、支持体の表面が取り去られると共に"イージー・トゥー・クリーン"特性も消失する。
【0012】
従って、本発明には、硬化可能な混合物を製造するという課題があり、この際、硬化した混合物は、できるだけ少ない操作段階で製造可能である。更に、硬化した混合物及び殊にその表面は、十分に良好な汚染拒絶性を有するべきであり、この際、そのような"イージー・トゥー・クリーン"特性は、殊に表面が損傷した後も、できるだけ耐久を保つべきである。
【0013】
この課題は、本発明により、特許請求の特徴に相応して解明される。
【0014】
ところで、驚異的にも、少なくとも1種のフルオルオルガニル置換珪素化合物、殊にフルオルオルガニル置換シラン及び/又はフルオルオルガニル置換シロキサンを、硬化可能な混合物に、例えば、水硬性混合物に、殊にそうでなければ慣例のコンクリート混合物又はモルタルに添加することによって、それから製造される硬化した、場合によって水硬性であってよい材料の、慣例的な、それによって耐久性の"イージー・トゥー・クリーン"特性が達成され得ることが判明した。
【0015】
従って、本発明の目的は、
少なくとも1種の無機結合剤、
水溶性ポリマー中に封入されている少なくとも1種のフルオルオルガニル置換珪素化合物を包含する粉末(この際、フルオルオルガニル置換珪素化合物の量は、本混合物に対して、0.001〜8質量%になる)、及び
任意の更なる添加物質
を含有する、硬化した混合物において"イージー・トゥー・クリーン"特性を得るために好適な硬化可能な混合物である。
【0016】
使用される成分に関する量表示は、他の記載のない限り、各々の混合物中に存在する成分の合計に関連し、質量%で表示され、更に、合計で100質量%になる。本発明の範囲では、硬化可能な混合物とは、硬化可能な配合物も解される。
【0017】
驚異的にも、本発明による混合物は、フルオルオルガニル置換珪素化合物の極少量で既に、卓越した"イージー・トゥー・クリーン"特性を有することが認められた。この際に使用される粉末、従って、フルオルオルガニル置換珪素化合物は、硬化可能な混合物の全体中に均一に分配され、従って、完全な後硬化の物質は、疎水性にも疎油性にもされる。このことは、表面が、例えば、磨耗によって又は亀裂によって損傷される場合に特に重要である。更に、顕著な疎水性及び疎油性にも拘らず、本発明による混合物は、極めて様々な支持体上への良好な接着性を有することが判明し、このことは、当業者の予想に反している。
【0018】
シランは、しばしば、調製物への液化作用を有する。少なくとも1種のフルオルオルガニル置換珪素化合物を包含する粉末を含有する本発明による硬化可能な混合物の利点は、意外にも、生強度が不利に影響されないことである。従って、水を混合された硬化可能な混合物の降伏応力は、フルオルオルガニル置換珪素化合物の使用によって、全く影響を受けない又は僅かにしか影響を受けない。
【0019】
また本発明の目的は、水溶性ポリマー中に封入されている少なくとも1種のフルオルオルガニル置換珪素化合物を包含する少なくとも1種の粉末と、硬化可能な混合物の少なくとも1成分との混合段階を包含する、本発明による硬化可能な混合物の製法である。混合物の硬化後に、混合物は、全物質中で、かつ表面上でばかりでなく全部が、有利な"イージー・トゥー・クリーン"特性を有する。
【0020】
フルオルオルガニル置換珪素化合物は、一方で、公知の方法及び材料を用いて、液体中で分散して安定した混合物に成り得ることが驚異的である。従って、場合により、極小の、例えば、明らかに2μm(容量平均)以下の粒度を有し得る、本発明の範囲で分散液とも称されるエマルジョンを得ることができる。他方で、液体中で分散されたフルオルオルガニル置換珪素化合物の、硬化可能な混合物中での安定化は、硬化可能な混合物の他の成分と混合するためには十分に安定しているが、分解するには十分に不安定であり、従って、硬化した混合物において所望の"イージー・トゥー・クリーン"特性を達成するために、フルオルオルガニル置換珪素化合物は加水分解し、かつ引き続いて更に反応する、例えば、凝縮することができることは予想され得なかった。
【0021】
ところで、硬化した混合物において所望の"イージー・トゥー・クリーン"特性を得るために、極めて様々な複雑な過程及び反応が適時に経過しなければならない。即ち、一方で、フルオルオルガニル置換珪素化合物は、硬化可能な混合物の全マトリックス中で均一に分配されていなければならないことが考えられる。珪素化合物が液体中で分散していて、かつそれがこの形で供給される場合には、分散液は、それが直ちに又は後にばかりでなく、適時に塗布され、かつ珪素化合物、殊に加水分解可能な珪素化合物、例えば、アルコキシ基含有珪素化合物を遊離させるほど安定しているべきである。更に、フルオルオルガニル置換珪素化合物が、粉末の形で、殊に水中で再分散された粉末として存在し、かつこれがこの形で供給される場合には、個々の分散液粒子は、前記の過程が適時に経過する前に、有利に再分散し得る。硬化した混合物において所望の"イージー・トゥー・クリーン"特性を達成するために、当業者は、理論に基づくことなく、この過程の全体が適切な順序で過程し、かつ硬化可能な混合物の硬化及びそれと結びついた混合物の硬直が開始する前に、実際に終結していなければならないと予想した。当然、この複雑な過程の経過の際に、制御介入することは不可能である。
【0022】
即ち、当業者にとって、フルオルオルガニル置換珪素化合物が極少量で既に、卓越した"イージー・トゥー・クリーン"特性を示すように、この様々な過程の反応速度論が最適に行われることは驚異的であった。しかもこのことは、フルオルオルガニル置換珪素化合物の材料特性、例えば、界面張力が、弗素置換に基づいて、実際に他の珪素化合物と異なっているだけに一層驚異的であった。
【0023】
更に、例えば、殊に、例えば、水硬性結合剤をベースとする水性硬化可能な混合物で、例えば、水性セメント系で生じる高いイオン性及びアルカリ性は、そのような分散液の安定性に強い影響を及ぼす。それにも拘らず、卓越した"イージー・トゥー・クリーン"特性は、硬化した混合物の表面ばかりでなく、混合物自体の内部にも得られる。
【0024】
また、硬化した混合物において"イージー・トゥー・クリーン"特性を得るために、 セメント2〜60質量%、有利に6〜25質量%、特に有利に10〜20質量%、極めて特に有利に18質量%、少なくとも1種の添加物質30〜90質量%、有利に50〜90質量%、特に有利に65〜85質量%、極めて特に有利に70〜80質量%、フルオルオルガニル置換珪素化合物0.001〜8質量%、有利に0.01〜6質量%、特に有利に0.02〜5質量%、極めて特に有利に0.05〜2質量%、及び場合により更なる助剤を含有する水硬可能な混合物において、水溶性ポリマー中に封入されているフルオルオルガニル置換珪素化合物の使用が請求される。前記の質量%の表示は、各々本混合物に対応している。
【0025】
水溶性ポリマー中に封入されているフルオルオルガニル置換珪素化合物は、有利に粉末の形で存在し、従って、有利に粉末として硬化可能な混合物中で使用される。粉末が水中で再分散可能である場合には、水性エマルジョンを生じさせる相応する再分散水も、硬化可能な混合物の成分として使用され得る。その限りでは、これは粉末を製造する際の中間生成物でもある。粉末が、例えば、水性エマルジョン又は分散水の乾燥によって得られる場合には、更に、相応するエマルジョン又は分散液は、硬化可能な混合物の成分として直接使用することも可能である。そのようなエマルジョン又は分散液は、通例、水性ポリマー及びその中に封入されたフルオルオルガニル置換珪素化合物が、粒子又は小滴を形成する場合に得られる。そのような粒子は、有利に水中で乳化可能、分散可能及び/又は再分散可能である。中間生成物、それから製造される本発明による粉末、又は水中で再分散された粉末の再分散物が、硬化可能な混合物中で、又は前記混合物の製法で使用されるかどうかに無関係で、硬化した混合物において、同様に有利な"イージー・トゥー・クリーン"特性が得られる。
【0026】
硬化可能な、殊に水硬可能な混合物中での粉末の使用は、驚異的にも、否定的な特性を示さない。粉末は必須調合を調整しなくても、公知の調合で使用され得る。即ち、例えば、湿潤性、加工性、同一稠硬性を得るための水の需要及び水和性は変化しないままであり、又はそれはむしろ更に改善される。
【0027】
また本発明の目的は、水中で再分散可能な粉末及びその使用であり、この粉末は、水溶性ポリマー中に分配されている、1種以上の有機性又はフルオルオルガニル置換の珪素化合物を有する水溶性ポリマーを包含し、混合物、方法及び硬化可能な混合物の使用で使用され得て、かつ硬化した混合物において"イージー・トゥー・クリーン"特性を得るために好適であり、この際、少なくとも1種の有機珪素化合物は、全部又は部分的に弗素化されている。
【0028】
更に、本発明による粉末の製法も請求され、この際、
水、
少なくとも1種の水溶性ポリマー、
少なくとも1種の水に不溶性のフルオルオルガニル置換珪素化合物及び
場合により更なる添加物
を、pH4〜9、有利に4.5〜8.5、殊に5〜8で混合して中間生成物とし、引き続いて乾燥させ、この際、乾燥は有利に噴霧乾燥によって行われる。
【0029】
冒頭に述べた課題は、特に驚異的な及び特に有利な方法で、支持体又は建築材料に求められる、永久的又は一貫した"イージー・トゥー・クリーン"特性を生成させるために、フルオルオルガニル置換珪素化合物を含有する本発明による粉末を、既に乾燥建築用組成物中に、又は硬化可能な建築用混合物の調合の際に、殊に水の添加前に、均一に装入させる場合に解明され得る。即ち、本発明により使用されるフルオルオルガニル置換珪素化合物は、有利に流動性の形で、かつ貯蔵安定性で、適用まで貯蔵され得て、更に、例えば、袋詰めの際に、輸送の際に、秤量の際に及び配量の際に、簡単かつ問題なく取り扱われ得る。殊に、フルオルオルガニル置換珪素化合物を含有する小滴が水溶性ポリマーによって被包されている又は封入されているので、それによって本発明により使用されるフルオルオルガニル置換珪素化合物は、加水分解が開始する前も保護されている。即ち、これは、その特別な作用を、硬化可能な混合物、例えば、建築材料混合物、殊に水硬性混合物、有利にセメント含有混合物、例えば、コンクリート混合物中で、均一分配成分として、調合水との相互作用及び優勢なアルカリ性pH値で展開し、この際、使用されたフルオルオルガニルアルコキシ置換珪素化合物の加水分解及び存在する建築材料混合物の成分との反応がここで起きる。そうして得られる硬化した材料は、有利な方法で、所望の物質変性化、殊に良好な物質疎水性化及び物質疎油性化を有し、それによって一貫した又は永久的、及び殊に均一な"イージー・トゥー・クリーン"特性が達成される。
【0030】
本発明による粉末は、意外にも、公知の方法及び材料で製造され得る。粉末、即ち、フルオルオルガニル置換珪素化合物を含有する粉末の特別な利点は、それで特に均一な乾燥混合物及び特に均一な混合物の調製物が工場で製造され得て、これを現場で水と混合させるだけでよいことである。この実施態様によって製造され、硬化した混合物は、同様に有利な"イージー・トゥー・クリーン"特性を有する。
【0031】
更に、本発明による粉末は、良好なブロック安定性及び貯蔵安定性を特徴とし、即ち、フルオルオルガニル置換珪素化合物は十分に被包され、従って、それは粉末の製造の際も、その貯蔵の際も、蒸発せず、粉末は流動性のままである。更に、粉末は、殊に硬化可能な混合物の部分として、水との混合の際に卓越した湿潤性及び後続の良好な加工性を示し、即ち、疎水性及び疎油性は、混合物の硬化後に初めて示される。アルコキシ基を有するモノマー化合物、例えば、フルオルアルキルアルコキシシランを使用する場合には、本発明による粉末中の前記の珪素化合物は、典型的には加水分解されずにモノマー形で存在し、即ち、珪素化合物に存在するアルコキシ基の10%以下、殊に5%以下が加水分解されている。このことは、反応基、殊にアルコキシ基が、本発明による粉末の製造及び貯蔵及び硬化可能な混合物とのその混合の際に(混合物の製造の際に、更に水抜きで作業する限り)保持されたままであることを可能にする。その後に、水の供給及び混合後に、アルコキシ基は加水分解され、この際、次の継続反応により所望の有利な特性が達成される。
【0032】
本発明による硬化可能な混合物は、殊にコンクリート関連混合物及びモルタルを包含する。当業者には、コンクリート関連混合物とは、乾燥コンクリート混合物、水と調合させたコンクリート及び硬化したコンクリートが解され、これらは一緒にコンクリートとして後記で表示される。コンクリートは、直径3mm以上〜64mmの添加物質を含有する。モルタルは、直径0.005〜5mm、殊に0.01〜3mmの充填物質とも称される添加物質を含有する。モルタルは、乾燥モルタル、ペースト状モルタル及び2種以上の成分を有するモルタルとして存在し得る。殊に、全成分が固形で、有利に粉末として存在する場合に、しばしば乾燥モルタルが有利である。この場合は、乾燥モルタルを工場で予備混合させ、この際、これにその後に現場で更に水だけを混合させ、かつ適用させるべきである。ペースト状モルタルは、水硬性結合剤が存在していない場合、及び必要な水分も既に含有している完全に予備混合された系が所望されている場合に有利である。2種以上の成分を有するモルタルとは、一方で、例えば、全ての粉末状の成分を含有する固体成分、及び1種以上の液状及び/又は粘稠状の成分を含む系が解される。液状成分は、通例、液状の調合成分を含有する水性ペーストを含有する。
【0033】
このように挙げた本発明による混合物中の添加物質は、例えば、EN 206-1:2000による岩粒であってよい。殊に、添加物質は、骨材、砂、砂利、砕石、斑岩、石英粉、石灰粉及び岩粉又はその混合物、しかし又フライアッシュ、マイクロシリカ及びその他の珪酸塩系添加物質又はその混合物であってよい。この際、砂は、例えば、珪砂又は川砂であってよい。砂利、砕石、砕砂、斑岩、石英粉、石灰粉及び岩粉又はその混合物が特に有利である。即ち、本発明による混合物は、有利に、DIN 1045-2により示された、有利に最大粒8〜63mm、特に有利に8mm、16mm、32mm又は63mmを有する添加物、殊に最大粒32mmを有する添加物を含有することができる。1種以上の添加物質が、最大粒32mmの骨材及び/又は最大粒5mmの砂であることが特に有利である。
【0034】
本発明による混合物は、通例、簡単で経済的な方法で、請求による成分を一緒に加えて混合させることによって製造され得る。典型的には、本発明による混合物に水を加え、混合機中で混合させることができる。
【0035】
即ち、一般に、本主請求項による成分の混合によって、先ず硬化可能な混合物を有利に製造することができる。次いでこの混合物を適用の際に、請求による量の水と一緒に加える場合には、この混合物に、場合により良好に十分に混合させながら又は当業者に自体公知の装置又は容器中で、既に前記した更なる成分を加え、そうして得られる混合物又は組成物又はそうして製造された塊状物を所望の形にし、かつ水硬又は硬化させる。
【0036】
無機結合剤は、有利に少なくともa)水硬性結合剤、殊にセメント、b)潜伏水硬性結合剤、殊に酸性高炉スラグ、ポゾラン及び/又はメタカオリン、及び/又はc)空気及び水の影響下に反応し、殊に水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを含有する、非水硬性結合剤を包含する。
【0037】
水硬性結合剤a)として、セメント、殊にポートランドセメント、ポートランド複合セメント、高炉セメント、カルシウムスルホアルミネートセメント、ポゾランセメント、即ち、ポゾラン成分を有するセメント、複合セメント、例えば、EN 196 CEM I,II,III,IV及びVによる複合セメント及び/又はアルミナセメントが有利であり、またアルミネートセメントも挙げられる。
【0038】
潜伏水硬性結合剤b)として、ポゾラン、例えば、メタカオリン、カルシウムメタシリケート及び/又は火山性スラグ、火山性凝灰岩、トラス、フライアッシュ、高炉スラグ、空冷スラグ、燃焼頁岩、珪藻土、モウラー、籾殻灰、高熱製造珪酸、マイクロシリカ及び/又はシリカダクトを使用することができ、これらは、カルシウム給源、例えば、水酸化カルシウム及び/又はセメントと一緒に水硬的に反応する。
【0039】
空気及び水の影響下に反応する非水硬性結合剤c)として、殊にα−半水和物及び/又はβ−半水和物の形の硫酸カルシウム及び/又は無水石膏及び大抵は水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの形の石灰が使用される。
【0040】
無機結合剤として、セメント、ポートランドセメント、複合セメント、ポゾラン成分を有するセメント及び高炉セメントの系列、及び殊に純粋にポートランドセメントをベースとする系列又はポートランドセメント、アルミナセメント及び硫酸カルシウムを含む混合物から選択される少なくとも1種の水硬性結合剤が有利であり、この際、2つの系列において、場合により更に潜伏水硬性及び/又は非水硬性結合剤を添加することができる。
【0041】
有利な無機結合剤は、水硬性結合剤であり、この際、セメント、殊にポートランドセメント、複合セメント、高炉セメント、かつカルシウムスルホアルミネートセメントが極めて特に有利である。
【0042】
本発明の有利な1実施態様で、珪素化合物として、フルオルオルガニル置換珪素化合物だけが使用される。他の有利な1実施態様で、フルオルオルガニル置換珪素化合物を、非置換の珪素化合物、又は弗素ではない、弗素と異なった1種以上の置換基を有する珪素化合物と一緒に使用する。非限定例は、アミノアルキルアルコキシシラン又はアルキルアルコキシシラン、例えば、オクチルトリエトキシシランである。この際、各々の混合比率を調整することができ、この際、所望の"イージー・トゥー・クリーン"特性は、調合及び適用に適合した量のフルオルオルガニル置換珪素化合物を用いて初めて達成されることに注目すべきである。
【0043】
本発明によるフルオルオルガニル置換珪素化合物は、
(i)一般式I、II、III、IV及び/又はVから誘導され、かつ連鎖状、環状、架橋結合及び/又は立体架橋結合の構造を形成する架橋結合の構造要素を有し得る化合物であり、この際、少なくとも1種の理想形の構造は、一般式I:
【化1】
に相応し、この際、式Iにおいて、構造要素は、一般式II、III、IV及び/又はVのアルコキシシランから誘導されていて、かつ
Aは、一般式II:
【化2】
[この際、式II中、fは、0〜6の整数であり、ここでf=0の場合には、g=0であり、かつf>0の場合には、g=1であり、hは、0〜6の整数であり、x=0又は1であり、m=0又は1であり、かつn=0又は1であり、ここで、n+m=0又は2であり、かつR
7は、1〜16個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環状の二価のアルキル基である]から誘導される、構造要素中のアミノアルキル基H
2N(CH
2)
f(NH)
g(CH
2)
h(NH)
m(R
7)
n−に相応し、
Bは、一般式III:
【化3】
[この際、式III及び/又はVI中、R
4は、1〜9個のC原子を有するモノ弗素化、オリゴ弗素化又はペル弗素化のアルキル基又はモノ弗素化、オリゴ弗素化又はペル弗素化のアリール基を表わし、Yは、CH
2基、O基又はS基を表わし、R
3は、1〜8個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環状のアルキル基又はアリール基を表わし、k=0、1又は2であり、かつy=0又は1であり、有利にR
4=F
3C(CF
2)
r−であり、ここでr=0〜18であり、有利にr=5であり、ここでYはCH
2基又はO基であり、かつ有利にk=1であり、ここでY=−CH
2−である]から誘導される、構造要素中のフルオルアルキル基R
4−Y−(CH
2)k−に相応し、
Cは、一般式IV:
【化4】
[この際、式IV中、R
5は、1〜4個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基、殊にメチルであり、かつu=0又は1である]から誘導される、構造要素中のアルキル基R
5−に相応し、
Dは、一般式V:
【化5】
[この際、前記式中のR
6は、1〜8個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環状のアルキル基を表わす]から誘導される、構造要素中のアルキル基R
6−に相応し、かつ
式II、III、IV、V及び/又はVI中のR
1は、相互に無関係で、1〜8個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環状のアルキル基又はアリール基を表わし、有利にR
1は、独立してメチル、エチル又はプロピルを表わし、ここで前記式中のR
2、R
3及び/又はR
5は、独立して、1〜4個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基、有利に相互に無関係でメチル又はエチルに相応し、かつ
式(I)中、HXは、酸であり、この際、Xは、無機又は有機の酸残基であり、ここでx、y及びuは、相互に無関係で0又は1であり、かつa、b、c、d及びeは、相互に無関係で、整数であり、ここでa≧0、b≧0、c≧0、d≧0、e≧0及び(a+b+c+d)≧2、有利に(a+b+c+d)≧4、特に有利に(a+b+c+d)≧10であり、ここでXは、例えば、クロリド、ニトレート、ホルミエート又はアセテートを包含し、又は
(ii)そのオルガノシロキサンが、前記の一般式II、III、IV及びVの少なくとも2種のアルコキシシランから、有利に式II及びIIIからのモル比1:≦3.5で誘導される共縮合物又はブロック共縮合物又はその混合物であり、又はここで、式II、III、IV及びVのアルコキシシランのモルでa、b、c及びdは、モル比0.1≦[a/b+c+d]、殊に0.25≦[a/b+c+d]≦6000、有利に1≦[a/b+c+d]≦3であり、ここでa>0、b>0、c≧0及びd≧0であることを伴う化合物であり、又は
(iii)一般式VI:
【化6】
[式中、R
4、Y、R
1、R
3、k及びyは、前記の意味を有する]のモノマーのフルオルオルガニル置換珪素化合物、及び/又は多数の一般式VIのモノマー化合物の混合物である。
【0044】
フルオルオルガニル置換珪素化合物が、フルオルオルガニル置換シラン及びフルオルオルガニル置換シロキサン及びフルオルオルガニル置換シリコーン又はその混合物の系列から選択されている硬化可能な混合物が有利であり、殊に、珪素化合物がフルオルアルキル置換シロキサン又はモノマーのフルオルアルキル置換シラン、殊にフルオルアルキル置換でかつアルコキシ基又はヒドロキシ基を有するシロキサン又はモノマーのフルオルアルキル置換アルコキシシラン、又はその混合物の系列から選択されている硬化可能な混合物が極めて特に有利である。有利な1実施態様で、本発明による混合物は、フルオルオルガニル置換珪素化合物として、式(VII):
【化7】
[式中、各々のRは、相互に無関係で、メチル、エチル、n−プロピル及びi−プロピルからなる群から選択されていて、xは、0〜16の値を有する整数であり、y=0又は1であり、かつz=0又は1であり、有利にy=1であり、かつ極めて特に有利にY=1であり、z=0であり、かつx=4,6、8又は10である]のフルオルアルキルアルコキシシランを含有する。
【0045】
式(VII)のフルオルアルキルアルコキシシランの有利な、しかし非限定の例は、トリデカフルオル−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン及び/又はトリデカフルオル−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシランである。
【0046】
本発明により使用されるフルオルオルガニル置換珪素化合物は、全例的に水に不溶性であり、即ち、珪素化合物の0.1質量%以下、有利に0.01質量%以下が、水中20℃及びpH5で溶解し、かつ有利にフルオルオルガニル置換シラン及びフルオルオルガニル置換シロキサン又はその混合物の系列から選択されている。殊に、これは、有利にモノマーのフルオルアルキル置換シラン及びフルオルアルキル置換シロキサン又はその混合物の系列から選択されている。フルオルアルキル置換シランの1例は、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオルオクチル−トリエトキシシランである。
【0047】
特に有利なフルオルオルガニル置換珪素化合物は、フルオルオルガニル置換シラン及びフルオルオルガニル置換シロキサン、殊にフルオルアルキル置換モノシラン及びフルオルアルキル置換モノシロキサン又はその混合物の系列から選択される。混合物とは、特に、フルオルオルガニル置換珪素化合物と他のフルオル非置換の珪素化合物とを含む混合物、殊に、式(VII)のフルオルオルガニル置換珪素化合物及びC
1〜C
16−アルキルアルコキシシランを含む混合物が解され、この際、アルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基及びアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基及びヘキサデシル基が有利である。フルオル非置換の珪素化合物との混合物を使用する場合には、フルオルオルガニル置換珪素化合物の割合は、使用される珪素化合物の全量に対して、有利に少なくとも25質量%、殊に少なくとも50質量%、及び極めて特に有利に少なくとも75質量%になる。
【0048】
粉末中に、中間生成物中に及び/又は再分散によって得られるエマルジョン中に含有されているフルオルオルガニル置換珪素化合物は、好適な溶剤、例えば、塩化メチレン(CH
2Cl
2)での抽出によって、粉末、中間生成物又はエマルジョンから分離され、かつその量が数量的に測定され得る。得られた溶液を、引き続いて、GC/MSにより及び/又はNMRにより検査することができ、この際、そうして加水分解されたアルコキシ基を測定することができる。NMR分光法には、殊に
29Si−NMR及び
19F−NMRが好適である。場合により、
1H−NMR又は
13C−NMR分光法を使用することもできる。これらの方法は当業者に公知である。
【0049】
フルオルオルガニル置換珪素化合物が、硬化した混合物中に存在する場合には、これを、例えば、EP0741293A2に記載されている方法を使用して分析することができる。
【0050】
好適な水溶性ポリマーは、高分子化合物、即ち、20個以上のモノマー単位を有するポリマーが有利である。このポリマーは、室温で通常は固体として存在する。
【0051】
好適な水溶性ポリマーは、バイオポリマー、例えば、場合により化学的に変性されているタンパク質及び多糖類、合成の高分子オリゴマー、即ち、4〜19個又はそれ以上のモノマー単位のオリゴマー、及び非イオン性又は弱イオン性重合体である。1種のポリマー又はポリマー混合物だけを使用することができる。ポリマーがほんの僅少な割合のカルボキシル基を有する、又は完全に非イオン性である場合がしばしば有利である。
【0052】
有利に使用可能なバイオポリマーは多糖類であり、かつその誘導体は冷水溶性の多糖類及び多糖類エーテル、例えば、セルロースエーテル、澱粉エーテル(アミロース及び/又はアミロペクチン及び/又はその誘導体)、グアーエーテル及び/又はデキストリンである。合成の多糖類、例えば、陰イオン性、非イオン性又は陽イオン性のヘテロ多糖類、殊にキサンタンガム又はウェランガム(Wellan Gum)を使用することもできる。多糖類は例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、メチル基、エチル基、プロピル基、スルフェート基、ホスフェート基及び/又は長鎖のアルキル基で化学的に変性されていてよいが、変性されていなくてもよい。更なる天然の安定化系は、アルギネート、ペプチド及び/又はタンパク質、例えば、ゼラチン、カゼイン及び/又は大豆タンパク質である。デキストリン、澱粉、澱粉エーテル、カゼイン、大豆タンパク質、ゼラチン、ヒドロキシアルキルセルロース及び/又はアルキルヒドロキシアルキルセルロースが極めて特に有利である。
【0053】
しばしば保護コロイドの概念でも公知の好適な合成の水溶性ポリマーは、ビニル重合体、ホルムアルデヒド縮合体及びアルキレンオキシド重合体である。これらは、単独で又は他の合成及び/又は天然ポリマーと組み合わせて使用することができる。
【0054】
ビニル重合体の非限定例は、質量平均分子量Mw2000〜400000を有する1種以上のポリビニルピロリドン及び/又はポリビニルアセタール、有利に約70〜100モル%、殊に約80〜98モル%の加水分解度及び4%の水溶液中で有利に1〜50mPas、殊に約3〜40mPasのヘップラー粘度(DIN 53015により20℃で測定された)を有する、完全鹸化又は部分鹸化された及び/又はアミノ基、カルボン酸残基及び/又はアルキル基で変性されたポリビニルアルコール、及びスチロールマレイン酸共重合体及び/又はビニルエーテルマレイン酸共重合体である。ホルムアルデヒド縮合体の非限定例は、メラミンホルムアルデヒドスルフォネート及びナフタリンホルムアルデヒドスルホネートである。アルキレンオキシド重合体の非限定例は、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドのホモ重合体、例えば、そのブロック共重合体である。
【0055】
合成の安定化系、殊に部分鹸化された、場合により変性化されたポリビニルアルコールが極めて特に有利であり、この際、1種以上のポリビニルアルコールを、場合により少量の好適な乳化剤と一緒に使用することができる。有利な合成安定化系は、殊に、80〜98モル%の加水分解度及び4%の水溶液として1〜50mPasのヘップラー粘度を有する、変性化及び/又は非変性化のポリビニルアルコール及び/又はポリビニルピロリドンである。
【0056】
本発明による混合物において、数種の水溶性ポリマーを、場合により1種以上の乳化剤と組み合わせて使用することも可能である。好適な乳化剤は当業者に公知である。例えば、1種以上の天然化合物と1種以上の合成化合物との組合せ、又は1種以上の天然又は合成化合物の組合せを使用することができる。
【0057】
そのために、例えば、好適な乳化剤及び/又は分散液を、乾燥によって、本発明による水に再分散可能な粉末に変換させる。粉末という概念は、本発明の意において、当然顆粒及び薄片も表わす。本発明による粉末は、有利に細流性であり、水中で再分散する。これは自発的に又は簡単な攪拌によって行われ、この際、本来の粒度及び滴度は、少なくとも殆ど再び達成される。エマルジョン、分散液、例えば、再分散液も水中で安定していて、即ち、数週間後も、むしろ数ヶ月後も、通例、粒子の砕解又は沈殿又は沈降は生じない。
【0058】
EP−A−1982964に、支持体の腐食に対する保護のために、水溶性ポリマー及び有機珪素化合物の混合物の使用が記載されていることが注目される。有機珪素化合物として、多数のシラン、シロキサン及び異なった有機珪素化合物の混合物を使用することができる。特に、フルオルアルキル官能性アルコキシシランを使用することができることも記載されている。更に、水溶性ポリマー及びSi−O−Si化合物をベースとする又はアルキルアルコキシシロキサンの特異的オリゴマー混合物をベースとする少なくとも1種の有機珪素化合物を含有する水に分散可能でかつ再分散可能な混合物が記載されている。"イージー・トゥー・クリーン"適用のための前記混合物の使用は、まだ示唆されてはいない。更に、殊に、例中に記載された実施態様は、汚染を拒絶する建築材料を得るには好適ではない。
【0059】
有利な1実施態様で、先ず、中間生成物をフルオルオルガニル置換珪素化合物の水性分散液の形で製造し、この際、分散剤として、水溶性ポリマー、殊に合成ポリマー、例えば、ポリビニルアルコールが使用される。そのために、先行して水溶性ポリマーを水中に溶かし、引き続いて、フルオルオルガニル置換珪素化合物を、例えば、分散によって混合させ、この際、助剤とも称される更なる添加剤を、場合により添加することもできる。そのような方法は当業者に公知である。引き続いて、中間生成物を乾燥させ、この場合には、乾燥の前、その間及び/又はその後に、更なる添加剤、例えば、充填剤を場合により添加混合させることができる。その後に、自由に流動し、かつ従って、細流性で水に再分散可能な粉末、要するに、卓越した湿潤性及び水中での再分散性を特徴とする本発明による粉末が得られる。そうして被包されたフルオルオルガニル置換珪素化合物は、中間生成物でも粉末でも、優れた貯蔵性を有する。それにもかかわらず、フルオルオルガニル置換珪素化合物は、アルカリ性環境で、有利に無機結合剤の硬化の際に、有利な"イージー・トゥー・クリーン"特性を得るために、速やかに十分に加水分解する。
【0060】
エマルジョン及び分散液、同様に乳化する及び分散するという概念は、本発明の範囲において、同義語としても使用される。
【0061】
本発明による粉末中のフルオルオルガニル置換珪素化合物の割合は、粉末に対して、通例約2.5質量%〜90質量%、有利に約5質量%〜80質量%、特に有利に約5質量%〜70質量%、殊に約10質量%〜60質量%になる。
【0062】
乾燥は、有利に噴霧乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、ローラー乾燥、顆粒化又は速乾により行なわれ、この際、噴霧乾燥が特に有利である。噴霧は、例えば、噴霧ホイール、一成分又は多成分用ノズルにより行なわれる。乾燥の間及び/又はその後に、更なる助剤、例えば、抗遮断剤及び/又は充填剤を添加することができる。非限定例は、珪酸アルミニウム、コロイド状の二酸化珪素ゲル、高熱製造二酸化珪素、粉砕粘土、パーライト、ベーミキュライト、軽晶石、タルク、セメント、白亜粉、カルシウム/マグネシウム混合炭酸塩及び/又は珪藻土である。
【0063】
必要な場合には、乾燥に好適な粘度を得るために、水性分散液、即ち、中間生成物を水で更に希釈することができる。乾燥温度は、安全性の配慮から、約250℃、殊に約200℃を超えるべきではない。十分に有効な乾燥を目差すために、約110℃以上、殊に約120℃以上の温度が有利である。ガス流の出口温度は、通例約40℃〜100℃、殊に約50℃〜90℃である。
【0064】
有利な1実施態様で、本発明による粉末は、フルオルオルガニル置換珪素化合物として、式(VII):
【化8】
[式中、各々のRは、相互に無関係で、メチル、エチル、n−プロピル及びi−プロピルからなる群から選択され、xは、0〜16の値の整数であり、y=0又は1であり、かつz=0又は1であり、有利にy=1であり、かつ極めて特に有利にy=1であり、z=0であり、かつx=4、6、8又は10である]のフルオルアルキルアルコキシシランである。
【0065】
この実施態様に有利な、しかし非限定的な、式(VII)のフルオルアルキルアルコキシシランの例は、トリデカフルオル−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン及び/又はトリデカフルオル−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシランである。
【0066】
フルオルオルガニル置換珪素化合物を、公知方法で、水溶性ポリマーを用いて液体中で分散させる場合には、各々使用される珪素化合物対水溶性ポリマーの質量比は、例えば、約95:5〜5:95、有利に約85:15〜15:85、殊に約70:30〜30:70、及び極めて特に有利に約60:40〜40:60であってよい。
【0067】
前記のフルオルオルガニル置換珪素化合物は、細流性で粉末状の形で存在し、かつ水中に分散可能である場合が特に有利である。その場合には、この物質は特に良好にかつ均一に、本発明による混合物中に加入混合され得ることが示された。
【0068】
本発明の範囲では、細流性とは、そのような材料が自由に流動することが解される。細流性は、ISO 4342と一致するDr. Pfrengle(例えば、Karg-Industrietechnikによって提供される)による細流性試験機で測定され得る。即ち、一定量の粉末を一定の孔を通してやや粗い表面上に振り撒く。得られる円錐形の高さの測定によって、嵩角度を参照表に基づいて測定することができる。嵩角度が低ければ低いほど、細流性は一層良好である。細流性粉末については、5°〜70°、殊に5°〜60°の嵩角度が有利である。
【0069】
本発明による1実施態様で、フルオルオルガニル置換珪素化合物は水溶性ポリマー中に封入され、この際、水溶性ポリマー及び珪素化合物は、水中で分散可能及び/又は再分散可能である粒子を形成する。水溶性ポリマーは、有利に多糖類、多糖類エーテル、タンパク質、ビニル重合体、ホルムアルデヒド縮合体及びアルキレンオキシド重合体の系列から選択される。
【0070】
本発明による粉末において及び相応する本発明による硬化可能な(乾燥)混合物において、室温で有利に液状で存在しかつ水溶性ポリマー中で封入されていて、かつこの際、小滴の形で存在していてよい、フルオルオルガニルアルコキシ置換の珪素化合物は、平均滴度10μmまで、有利に10nm〜10μm、特に有利に20nm〜5μm、殊に50nm〜2μmを有し得る。
【0071】
更に、フルオルオルガニルアルコキシ置換の珪素化合物は、実際に加水分解していない、即ち、珪素に結合したアルコキシ基の10%以下、殊に5%以下が加水分解している。粉末中の滴度は顕微鏡により、有利に電子顕微鏡により測定され、平均直径として挙げられる。
【0072】
本発明による粉末の平均粒度は、乾燥法に応じて、典型的には約20μm〜約5mm、殊に約50μm〜約2mmである。本発明による粉末が噴霧乾燥によって製造される場合には、粒度は、通例500μm以下、有利に300μm以下である。得られる粉末は、通例、水中で自発的に、又は軽く攪拌することによって再分散し、この際、有利に、再び本来の粒度が生じる。
【0073】
粒度、微粒度及び/又は滴度の測定は、慣例の測定法で行なわれ得て、この際、光回析が分散液についても粉末についても特に有利である。これらの方法は当業者に公知である。粒度は容積平均として挙げられる。
【0074】
有利な1実施態様で、本発明により使用される珪素化合物は、実際には非加水分解形で存在する。フルオルオルガニルアルコキシ置換の珪素化合物の加水分解は、本発明による適用において、殊に、アルカリ性pH値で、例えば、セメント混合物と水との混合後に行われる。
【0075】
本発明による混合物は、常用の添加剤、殊に、例えば、前記の添加物質、又は充填剤、及び補助物質とも称される、助剤を含有することができる。
【0076】
好適な補助物質は、無機又は有機酸、緩衝物質、防カビ剤、殺菌剤、殺藻剤、殺微生物剤、付臭剤、腐食防止剤、例えば、アルキルアンモニウムベンゾエート、アミノアルコール、グルコン酸及び/又はそのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、保存剤、流動助剤、疎水化剤、例えば、脂肪酸及びその塩及びエステル、脂肪アルコール、シラン、気孔形成剤、湿潤剤、消泡剤、乳化剤、被膜化助剤、凝結促進剤及び凝固促進剤、凝結遅延剤、粘稠剤、分散剤、流動調整添加剤、例えば、セメント液化剤、ポリカルボキシレート、ポリカルボキシレートエーテル、ポリアクリルアミド及び/又は増粘剤、保水剤、セルロース繊維及びセルロースエーテル、澱粉エーテル、グアーエーテル、風化、沈降及び/又は洗出の減少のための添加剤、収縮減少助剤、顔料から選択され、かつ混合物が粉末状である場合に、粉末塊状化を減少させるための助剤が含まれている。
【0077】
更なる好適な添加剤、殊に充填剤は、例えば、しかし排他的ではなく、石英系及び/又は炭酸塩系の砂及び/又は細粉、例えば、石英砂及び/又は石灰岩細粉、炭酸塩、珪酸塩、積層珪酸塩、沈降珪酸、軽質充填剤、例えば、ガラス又はポリマーを含むマイクロバルーン、例えば、ポリスチロール球、アルミノ珪酸塩、酸化珪素、酸化珪素アルミニウム、珪酸カルシウム水和物、二酸化珪素、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム水和物、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カルシウム水和物、珪酸マグネシウム鉄アルミニウム、メタ珪酸カルシウム及び/又は火山性スラグ、ポゾラン、例えば、メタカオリン、潜伏水硬性成分、珪酸塩系添加剤、例えば、マイクロシリカ、フライアッシュ、焼成(Flamm)珪酸、沈降珪酸、ゼオライト、結晶珪酸、シリカゾル、カオリン、雲母、珪藻土、珪藻土、タルク、珪灰石又は粘土であり、又は相応するマイクロシリカ、フライアッシュ、焼成珪酸、沈降珪酸、ゼオライト、結晶珪酸、シリカゾル、カオリン、雲母、珪藻土、珪藻土、タルク、珪灰石又は粘土を含む混合物、又は少なくとも1種の高熱製造珪酸又は少なくとも1種の沈降珪酸の水性分散液、又は高熱製造珪酸及び沈降珪酸を含む混合物である。
【0078】
本発明により使用されるフルオルオルガニル置換の珪素化合物を、中間生成物として又は再分散物として使用する場合には、有利にセメント結合混合物の全混合物を算定するために、各々水性混合物中の活性物質の割合だけが、本発明によるフルオルオルガニルアルコキシ置換の珪素化合物として考慮される。この水性調製物の水分含量は、有利に、必要な水の添加量を算定する際に考慮される。
【0079】
本発明による混合物は、有利にa)少なくとも1種の水硬性結合剤、殊にセメント2〜60質量%、b)少なくとも1種の添加物質30〜90質量%、c)少なくとも1種のフルオルオルガニル置換珪素化合物0.001〜8質量%及び場合によりd)更なる成分0〜40質量%を含有し、この際、各々使用される成分は合計して100質量%となり、かつ成分c)は、粉末として、粉末の製造のための中間生成物として又は水中に分散された粉末として存在する。
【0080】
本発明により硬化可能な混合物は、殊にコンクリート及びモルタルを包含する。
【0081】
硬化を可能にするために、典型的には更に水が本発明による硬化混合物中に含有されていて、又はこれに添加される。この際、水の量は、有利に1〜50質量%になる。コンクリートについては、混合物に対して、有利に水1〜20質量%、殊に2〜18質量%が添加され、モルタルについては、有利に水15〜45質量%、殊に17〜40質量%が添加され、この際、各々使用される成分は、使用される水を含めて、合計して100質量%になる。
【0082】
コンクリート用の本発明による混合物は、有利に、
a
1)少なくとも1種の水硬性結合剤、殊にセメント6〜25質量%、有利に10〜20質量%、殊に12〜18質量%、
b
1)少なくとも1種の添加物質50〜90質量%、有利に65〜85質量%、殊に70〜80質量%、
c
1)水溶性ポリマー中に封入されていて、かつそれから得られる粉末の又は水中で再分散された粉末の中間生成物の形で存在する、少なくとも1種のフルオルオルガニル置換珪素化合物0.001〜8質量%、有利に0.003〜5質量%、有利に0.005〜4質量%、殊に0.01〜3質量%、極めて特に有利に0.05〜2質量%、及び
場合により、更なる成分0〜40質量%を含有し、この際、各々使用される成分は合計して100質量%になる。
【0083】
混合物成分の具体的選択に応じて、各々の例で、a
1)、b
1)及びc
1)に挙げられた一般的な制限量が守られることは所定のことである。
【0084】
更に、コンクリート混合物の形の本発明による水硬混合物は、有利に更なる成分として、付加的にd
1)液化剤0.01〜2質量%、有利に0.05〜0.5質量%、及び/又は少なくとも1種の更なる助剤0.01〜10質量%、有利に0.01〜3質量%、殊に0.01〜1質量%を包含することができ、この際、各々使用される成分は合計して100質量%になる。
【0085】
液化剤は、全ての慣用の流動助剤、殊にポリカルボキシレートエーテル(PCEs)及び/又はポリメチルメタクリレート及びリグニンスルホネート又はナフタリンホルムアルデヒドスルホネートであってよい。
【0086】
本発明による水硬性混合物は、更なる助剤又は補助物質、例えば、分散助剤及び湿潤助剤、例えば、シリコネート又はアルキルホスホネート、消泡剤、例えば、トリアルキルホスフェート、気孔形成剤、例えば、鹸化樹脂酸、遅延剤及び促進剤、例えば、ホルミエート、及び/又は減水剤を含有することができる。
【0087】
本発明による混合物中のそのように挙げた添加物質は、例えば、EN 206-1:2000による岩粒であってよい。殊に、添加物質は、骨材、砂、砂利、砕石、斑岩、石英粉、石灰粉及び岩粉又はその混合物、しかしまたフライアッシュ、マイクロシリカ及び他の珪酸塩系添加物質又はその混合物であってよい。この際、砂は、例えば、石英砂又は川砂であってよい。砂利、砕石、砕砂、斑岩、石英粉、石灰粉及び岩粉又はその混合物が有利である。即ち、本発明による混合物は、有利に最大粒8〜63mm、特に有利に8mm、16mm、32mm又は63mmを有する添加物、殊に、DIN 1045-2に示された、最大粒32mmを有する添加物を含有する。1種以上の添加物質が、最大粒32mmを有する骨材及び/又は最大粒5mmを有する砂である場合が特に有利である。
【0088】
モルタル用の混合物は、結合剤の種類、殊に無機結合剤の種類及びモルタルが最適とされる適用に依存する。前記混合物は当業者に公知である。
【0089】
水硬性モルタル、殊に乾燥モルタル用の混合物は、有利に
a
2)少なくとも1種の水硬性結合剤、殊にセメント10〜50質量%、有利に15〜40質量%、
b
2)少なくとも1種の添加物質又は充填剤20〜90質量%、有利に40〜85質量%、
c
2)水溶性ポリマー中に封入されている及びそれから得られる粉末又は水中で再分散された粉末の中間生成物の形で存在している、少なくとも1種のフルオルオルガニル置換珪素化合物0.001〜8質量%、有利に0.003〜5質量%、有利に0.005〜4質量%、殊に0.01〜3質量%、極めて特に有利に0.05〜2質量%、及び
場合により、更なる成分0〜40質量%を含有し、この際、各々使用される成分は合計して100質量%になる。
【0090】
更に、モルタルの形、殊に乾燥モルタルの形の本発明による水硬性混合物は、有利に、更なる成分として、付加的にセルロースエーテル及び/又はセルロース繊維0.001〜3%、水に不溶性の被膜形成重合体をベースとする分散粉末0.1〜40%及び更なる助剤10%までを包含し、この際、各々使用される成分は合計して100質量%になる。
【0091】
そのような分散粉末は、通例、水中で再分散可能であり、かつ通例、少なくとも1種の水に不溶性の被膜形成重合体を含む水性分散液の乾燥によって得られる。そのような水性分散液は、典型的には、乳化重合及び/又は懸濁重合により得られる。
【0092】
そのような重合体は、有利に、ビニルアセテート、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアセテートビニルフェルサテート、エチレンビニルアセテート(メタ)アクリレート、エチレンビニルアセテートビニルクロリド、ビニルアセテートビニルフェルサテート、ビニルアセテートビニルフェルサテート(メタ)アクリレート、ビニルフェルサテート(メタ)アクリレート、純(メタ)アクリレート、スチロールアクリレート及び/又はスチロールブタジエンをベースとする単独重合体又は共重合体であり、かつ場合により、更なる官能性モノマー30質量%までを含有することができる。そのような重合体は、当業者に公知である。最低被膜形成温度(MFT)は、DIN 53787により測定することができ、かつ室温での適用に、典型的には20℃以下、有利に10℃以下、殊に5℃以下であり、この際、水性系では、MFTの下限は、水の凍結によって約0℃である。これらの重合体は、乳化剤及び/又は水溶性ポリマーで、公知方法で安定化される。水性分散液は、通例、溶剤を含まない。水中で再分散可能なポリマーは、典型的には、有利に水溶性ポリマーで安定化されている水性分散液の乾燥によって、殊に噴霧乾燥によって製造される。それは水と接触して、自発的に又は場合により軽く攪拌することによって再分散する。水性分散液又は水中で再分散可能な粉末が、無機結合剤を含まなくてもよい好適な調製物の一部である場合には、それは可塑性の硬化混合物を形成し得る。そのような、しかし、フルオルオルガニル置換珪素化合物を含まず、かつ所望の"イージー・トゥー・クリーン"特性は得られない混合物は、当業者に公知である。
【0093】
本発明によるモルタルは、水と攪拌した後に、全ての公知の表面上に塗布することができる。非限定の有利な例は、コンクリート、レンガ、木材、プラスター、石膏、スクリード、レベリング物質、フィラー、石膏ボード、セメントファイバーボード、膨張ポリスチロールボード又は押出ポリスチロールボード、乾燥建築素材及び/又はタイル、殊にグラウト用のタイルのエッジが挙げられる。
【0094】
1実施態様で、本発明による硬化可能な混合物は、有利に水硬性混合物として、コンクリート工業で使用され、この際、これは、常用の強制混合機中で混合される。
【0095】
この際、セメント及び固体の添加剤を予備混合させ、場合により液状の非水性成分を同様にセメントと予備混合させ、水性の調製物、例えば、本発明により使用される、フルオルオルガニル置換珪素化合物の水性分散液、エマルジョン又は再分散液を調合水と一緒にこれに添加するように有利に行われ得る。粉末状の調製物は、調合水中で予備分散させることが有利である。付加的に供給される水の量は、w/z値とも称される、所望の水−セメントファクターの調整で有利に考慮され得る。本発明による混合物の加工性は、非変性化混合物に比較して有利に不変である。
【0096】
しかし、本発明による硬化可能な混合物、例えば、水硬性混合物の固体混合物を強制混合機中に前以て装入させ、一定量の水を1回で添加又は少量づつ添加させ、かつ混合させることもできる。選択的に、水を前以て装入させ、かつ予備混合させた固体混合物、例えば、乾燥モルタルを供給させ、かつ常用の混合機で攪拌させることができる。そのような混合法は当業者に公知である。
【0097】
そうして得られる本発明による硬化可能な混合物、例えば、水硬性混合物に、次いで、当業者に自体公知の成形及び硬化を施すことができ、その表面は、有利に、本発明の意において、摩擦しても、ほんの僅少な汚染傾向("イージー・トゥー・クリーン"特性)を示すだけである。
【0098】
有利な水硬性混合物のそのような本発明による固体混合物は、例えば、殊にコンクリート混合物については、セメント[記号a
1による成分]、添加物質[記号b
1による成分]及び水溶性ポリマーで封入されたフルオルオルガニル置換珪素化合物[記号c
1による成分]を、混合容器中で一緒に加え、混合させ、必要に応じて輸送容器に詰め、かつ使用のために準備することによって得ることができる。更に、そのような固体混合物に、任意に液化剤[記号d
1による成分]及び/又は更なる助剤[記号e
1による成分]を、これらの成分が粉末状又は細流状である限り、添加混合させることができる。これらのd
1)又はe
1)による成分が液状である場合には、当業者に公知の方法で、これらを粉末状に、有利に細流状の形に変えて、本発明による混合物に添加混合させることができる。
【0099】
そのような本発明による固体混合物(短く混合物とも称される)の適用のために、これを混合機、例えば、コンクリートミキサー中で調合水と自体公知の方法で混合させ、引き続いて使用することができる。
【0100】
更に、そうして得られる本発明による水硬混合物に、当業者に自体公知の成形及び硬化を施すことができ、その表面は、有利に、本発明の意において、摩擦しても、ほんの僅少な汚染傾向("イージー・トゥー・クリーン"特性)を示すだけである。
【0101】
従って、本発明の目的は、本発明による水硬性混合物の使用下に得られる材料、殊に建築部材、コンクリート製品又は成形体でもある。
【0102】
更に、本発明の目的は、本発明による水硬性混合物を、材料、殊に建築部材、コンクリート製品又は成形体の製造のために使用することであり、この際、その表面は、摩擦しても、ほんの僅少な汚染傾向("イージー・トゥー・クリーン"特性)を示すだけである。
【0103】
同様に本発明の目的は、殊に前記で詳しく記載したように、水硬性混合物、殊にコンクリート用には、有利にセメント6〜25質量%、少なくとも1種の添加物質50〜90質量%、及び少なくとも1種のフルオルオルガニル置換珪素化合物0.001〜8質量%及び任意に水1〜20質量%及び/又は液化剤0.01〜2質量%及び/又は少なくとも1種の更なる助剤0.01〜1質量%を含有し、かつ乾燥モルタル用には、有利にセメント10〜50質量%、少なくとも1種の添加物質又は充填剤20〜90質量%、及び少なくとも1種のフルオルオルガニル置換珪素化合物0.001〜8質量%、及び場合により更なる成分0〜40質量%を含有する混合物の物質変性化のために、フルオルオルガニル置換珪素化合物を使用することであり、この際、各々使用される成分は合計して100質量%になり、この際、フルオルオルガニル置換珪素化合物は、水溶性ポリマー中で封入されていて、かつ粉末、その製造のための中間生成物又は水中で再分散された粉末の形で存在する。
【0104】
即ち、本発明による水硬性混合物は、有利に建築の範囲で、殊に材料の製造のために、コンクリート舗石用に、又はデザインコンクリート(Vorsatzbeton)として、殊に舗石用のデザイン舗装で使用され得て、この際、そのような材料は、有利に"イージー・トゥー・クリーン"特性を特徴とする。
【0105】
セメント結合材料の製造者、殊にコンクリートブロックの製造者にとって、水硬性、殊にセメント結合性の材料を持続的に変性させること、及び摩擦の影響及び風化の影響にもかかわらず、表面の"イージー・トゥー・クリーン"特性を保証することが、今日まで大きな関心事であったことは確かである。
【0106】
モルタル、殊に乾燥モルタルの形の本発明による硬化可能な混合物は、接合モルタル、補修モルタル、粉顔料、接着パテ、プラスター、殊に仕上げプラスター及び石膏プラスター及び/又は石灰プラスター及び/又はセメントプラスター、レベリングモルタル、フィラー、工業床材、接着剤、シーリング、完全断熱モルタル、タイル接着剤、プライマーとして、及び/又は石油ボーリング、天然ガスボーリング及び/又は地熱ボーリング用のセメント系材料として有利に使用され得る。
【0107】
本発明による混合物の製造及び使用によって、水硬性材料の、新規に達成されて摩擦及び風化にもかかわらず持続的な"イージー・トゥー・クリーン"特性に基づき、洗浄コスト及び保守コストが、洗浄サイクルが延長されたことによって明らかに減少され得る。そのような物質変性化は、殊に製造工場の継続操業で有利に行なわれ、かつ材料を既に完成防備して引き渡すことができる。建築現場の付加的な必要経費は省略される。
【0108】
本発明による物質は、使用現場で製造されかつ有利に使用され得る。
【0109】
本発明を、次の例につき詳説するが、本発明の目的を限定するものではない。他の記載のない限り、試験は23℃の温度及び50%の相対湿度で実施された。
【0110】
実施例
使用粉末の製造
例1:
粉末1(比較例;P1)の製造
n−オクチルトリエトキシシラン(製造社Evonik Degussa)39gを、鹸化度88モル%及び4%の溶液としてヘップラー粘度4mPasを有するポリビニルアルコールの25質量%の水溶液560g中で、プロペラ攪拌器を用いて1000Upmで15分間分散させ、引き続いて、水で固体含量20質量%に希釈した。この混合物を二成分ノズル付の実験室用噴霧塔上で、圧縮空気を用いて、入口温度135℃で噴霧させ、かつ乾燥させた。抗凝固剤として、完成粉末に対して、高温製造珪酸0.5質量%及び商慣習の炭酸塩10質量%を添加した。自由流動性、粘着耐性及び水に良好に再分散可能な白色粉末を取得し、この際、噴霧塔中に重大な汚染は認められなかった。
【0111】
例2:
粉末2(P2)の製造
粉末1の製法を繰り返し、この際、シランとして、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオルオクチルトリエトキシシラン(Dynasylan
(R) F 8261)を使用した。抗凝固剤として、完成粉末に対して、高温製造珪酸0.5質量%及び商慣習の炭酸塩10質量%を添加した。良好な収率で、自由流動性、粘着耐性及び水に良好に再分散可能な白色粉末を取得し、この際、噴霧塔中に重大な汚染は認められなかった。取得粉末は、指の間の摩擦ですら粘着しなかった。このことから、取得粉末は使用された珪素化合物を被包形で含有することが推論される。
【0112】
例3:
粉末3(比較例;VP3)の製造
粉末1の製法を繰り返し、この際、n−オクチルトリエトキシシラン(製造社Evonik Degussa)100gを、25質量%のポリビニルアルコール水溶液320g中で分散させた。抗凝固剤として、完成粉末に対して、高温製造珪酸0.6質量%及び商慣習の炭酸塩9.4質量%を添加した。良好な収率で、自由流動性、粘着耐性及び水に良好に再分散可能な白色粉末を取得し、この際、噴霧塔中に重大な汚染は認められなかった。
【0113】
例4:
粉末4(P4)の製造
粉末3の製法を繰り返し、この際、n−オクチルトリエトキシシラン(製造社Evonik Degussa)75g及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオルオクチルトリエトキシシラン(Dynasylan
(R) F 8261)25gを、25質量%のポリビニルアルコール水溶液400g中で分散させた。良好な収率で、自由流動性、粘着耐性及び水に良好に再分散可能な白色粉末を取得し、この際、噴霧塔中に重大な汚染は認められなかった。取得粉末は、指の間の摩擦ですら粘着しなかった。このことから、取得粉末は使用された珪素化合物を被包形で含有することが推論される。
【0114】
例5:
粉末5(P5)の製造
粉末4の製法を繰り返し、この際、n−オクチルトリエトキシシラン(製造社Evonik Degussa)50g及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオルオクチルトリエトキシシラン(Dynasylan
(R) F 8261)50gを、ポリビニルアルコール溶液中で分散させた。良好な収率で、自由流動性、粘着耐性及び水に良好に再分散可能な白色粉末を取得し、この際、噴霧塔中に重大な汚染は認められなかった。取得粉末は、指の間の摩擦ですら粘着しなかった。このことから、取得粉末は使用された珪素化合物を被包形で含有することが推論される。
【0115】
例6:
粉末6(P6)の製造
粉末4の製法を繰り返し、この際、n−オクチルトリエトキシシラン(製造社Evonik Degussa)25g及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオルオクチルトリエトキシシラン(Dynasylan
(R) F 8261)75gを、ポリビニルアルコール溶液中で分散させた。良好な収率で、自由流動性、粘着耐性及び水に良好に再分散可能な白色粉末を取得し、この際、噴霧塔中に重大な汚染は認められなかった。取得粉末は、指の間の摩擦ですら粘着しなかった。このことから、取得粉末は使用された珪素化合物を被包形で含有することが推論される。
【0116】
例7:
粉末7(P7)の製造
粉末4の製法を繰り返し、この際、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオルオクチルトリエトキシシラン(Dynasylan
(R) F 8261)100gを、ポリビニルアルコール溶液中で分散させた。良好な収率で、自由流動性、粘着耐性及び水に良好に再分散可能な白色粉末を取得し、この際、噴霧塔中に重大な汚染は認められなかった。取得粉末は、指の間の摩擦ですら粘着しなかった。このことから、取得粉末は使用された珪素化合物を被包形で含有することが推論される。
【0117】
例8:
粉末P7中の珪素化合物量の測定
粉末(P7)の2試料を、ジクロルメタンで還流下に抽出した。秤入量及び抽出時間を表1に挙げる。引き続いて濾過させ、回転蒸発器でCH
2Cl
2相から溶剤を除去した。秤出量を同様に表1に挙げる。
【0118】
表1:粉末P7中の使用珪素化合物の量的分析
【表1】
【0119】
残渣から、各々、
1H−NMR及び
29Si−NMRスペクトルを採用した。
1H−NMR及び
29Si−NMRスペクトルは、トリデカフルオルオクチルトリエトキシシランが、更に加水分解されないモノマーシランとして存在することを示す。オリゴマー成分は、認められなかった。ポリビニルアルコールは検出され得なかった。
【0120】
表1からの結果は、使用された珪素化合物の全量が、噴霧乾燥により、水中で再分散可能な粉末に変化され得て、かつトリデカフルオルオクチルトリエトキシシランが粉末中で殆ど完全にモノマーとして存在することを示す。更に、使用された珪素化合物量は、完全にジクロルメタンにより抽出され、量的に測定され得る。
【0121】
モルタル検体の製造
例9〜16についての一般的製法
使用モルタル検体を、Firma Quick-Mixの商慣習のユニバーサルモルタル(DIN V 18580によるモルタル群II、DIN V 18550によるモルタル群PII)から調製した。そのために、各々モルタル約100gを水約24mlと十分に攪拌した。例中に各々挙げた添加剤を、各々調合水中で予備分散させた。生じた混合物を、PEケース中に充填し、25℃で24時間乾燥させ、引き続き、ケースから出し、更に28日間25℃で硬化させた。汚染特性を、DIN EN ISO 10545-14により測定し、その試験を正確に後記する。
【0122】
質量%の表示は、各々、完全な乾燥混合物の質量に対応する。
【0123】
例9:(比較例)
モルタル検体を前記のように製造した。この際、添加剤を使用しなかった。
【0124】
例10:
モルタル検体を前記のように製造した。粉末7 2質量%を、添加前に調合水中で分散させた。
【0125】
例11:
モルタル検体を前記のように製造した。粉末7 5質量%を、添加前に調合水中で分散させた。
【0126】
例12:(比較例)
モルタル検体を前記のように製造した。オクチルトリエトキシシラン50質量%を含有するo/wエマルジョン2質量%を、添加前に調合水中で分散させた。
【0127】
"イージー・トゥー・クリーン"特性の評価(例9〜12)
硬化したモルタル検体の表面上(ケース側上ではない)に、汚染試薬のコーヒー(ブラック、加糖、冷たい)、コーラ、赤ワイン及びオリーブ油の各々1滴(約0.5ml)を塗布した。25℃で1時間の作用時間後に、表面を柔らかいタオルで拭き取り、完全脱塩水を3分間注ぎ付けた。最後に、水を柔らかいタオルで拭き取り、表面の汚染を乾燥後に視覚的に評価した。この際、5は、汚染が見えないことを意味し、4は、汚染がやや見えることを意味し、3は、汚染が見えることを意味し、2は、汚染が明らかに見えることを意味し、かつ1は、汚染が強く見えることを意味する。良好な"イージー・トゥー・クリーン"特性とは、非処理の比較検体に対して明らかな改善が達成される場合だけ言及され得る。極めて良好な"イージー・トゥー・クリーン"特性とは、3種の水性汚染試薬(コーヒー、コーラ、赤ワイン)が各々4又は5を達成し、かつ同時にオリーブ油が非処理の比較検体に対して明らかな改善を達成する場合に言及され得る。表2に、汚染試験の結果を挙げる。
【0128】
表2:汚染試験の結果
【表2】
【0129】
前記の定義により、例10及び11からの本発明による混合物を用いて、極めて良好な"イージー・トゥー・クリーン"特性を達成することは明らかである。更に、本発明による粉末を含有するモルタルは、極めて良好なモルタル加工性及び混合物の高められた均一性を特徴とする。それに対して、排他的に弗素不含のアルキルシランを含有し、それによってモルタル表面は疎水性を呈するが疎油性ではない比較混合物12は、コーヒー又は赤ワインでの水性汚染ですら、添加剤を含まない比較混合物9に対して、清浄性の改善を示さない。
【0130】
完全断熱剤モルタル配合物での疎水化試験
ポートランドセメントCEM I 42.5R 34部、平均粒度0.20mmの石英砂(石英砂F34)60.8部、消石灰3.0部、メチルヒドロキシエチルセルロース0.2部及び水に不溶性のエチレン/ビニルアセテートコポリマー(Elotex FX2320)をベースとする被膜形成性で水に再分散可能な分散粉末2部を含む基本配合物を製造した。この配合物に、表3に挙げた粉末0.2部を加えた。この予備配合物200gを、引き続いて、乾燥配合物100質量%に対して、水22質量部と共に、6mmのプロペラ攪拌器を用いて950Upmの速度で60秒間攪拌した。3分間の熟成時間後に、モルタルを手でもう一度短時間攪拌し、20質量%までの吸水性を有するセメントファイバーボード上に、ステンシルで3mm厚の線条を引いた。標準大気(23℃/50% r.F.)で24時間静置させた後に、線条の上半分をコランダム石で約1mm削除した。引き続いて、線条の両側半分上に、各々水1滴を記載した量で塗布し、かつ水滴が完全に吸収されるまでの時間を測定した。
【0131】
表3:水1滴(約0.2ml)が接合モルタルによって完全に吸収されるまでの時間(分)を測定した。
【表3】
【0132】
添加物抜きのモルタルの、削除されたモルタル表面は水滴を直ちに吸収するが、非削除のモルタル表面はほんの少し疎水性である。しかし、疎水化粉末(P1)を使用する場合には、表面を疎水化するために、ほんの少量しか必要とされない。当然、この効果は表面に限る。従って、これが損傷される、例えば、削除される場合には、疎水化作用は大幅に低下する。しかし、本発明による粉末が使用される場合には、水滴がモルタル中で吸収されるまで二倍長くかかるばかりでなく、卓越した物質疎水化であると推論されるほど、削除された表面も殆ど良好な疎水化を示す。この顕著な疎水性及び疎油性によって、水性混合物も油性混合物も丸く弾かれ、モルタル層中には浸入しない。場合により、それは、汚染を残さずに問題なく完全に下地上で吸収され得る。
【0133】
この結果は、再びフルオルオルガニル置換珪素化合物20質量%以下を含有する極めて少量の粉末が使用されただけに、なお一層驚くべきことである。更に、硬化したモルタルは、下地に対する良好な接着、良好な凝集を示し、かつ重大な硬化性の変化を示さない。
【0134】
グラウトモルタル配合物での疎油化試験
ポートランドセメントCEM I 52.5R 40部、アルミナ溶融セメント(Ternal RG)3部、平均粒度0.20mmの石英砂(石英砂F34)53.3部、酒石酸0.1部、セルロース繊維1部、二酸化チタン(Kronos 2190)1部及び水に不溶性のエチレン/ビニルアセテートコポリマー(Elotex MP2100)をベースとする被膜形成性で水に再分散可能な分散粉末2部を含む基本配合物を製造した。この配合物に、表4に挙げた粉末0.2部を加えた。この予備配合物200gを、引き続いて、乾燥配合物100質量%に対して、水22質量部と共に、6mmのプロペラ攪拌器を用いて950Upmの速度で60秒間攪拌した。3分間の熟成時間後に、モルタルを手でもう一度短時間攪拌し、20質量%までの吸水性を有するセメントファイバーボード上に、ステンシルで各々2本の3mm厚の線条を引いた。標準大気(23℃/50% r.F.)で7日間静置させた後に、オリーブ油各1滴(約0.2ml)を塗布し、かつ水滴が完全に吸収されるまでの時間を測定した。
【0135】
表4:使用された粉末に依存する、オリーブ油1滴(約0.2ml)が、硬化した非削除モルタル表面によって完全に吸収されるまでの時間(分)。
【表4】
a)分散珪素化合物の全量でのフルオルオルガニル置換珪素化合物("F−シラン")の割合
【0136】
疎油化粉末抜きで、オリーブ油1滴は、硬化したモルタルによって数分間内で既に完全に吸収される。モルタル中での疎水化添加剤の使用は、水滴の吸収をほんの少し遅らせる作用を有する。しかし、フルオルオルガニル置換珪素化合物を次第に多く粉末に添加していく場合には、疎油化及び従って汚染を拒絶する特性も急速に強くなる。それによって得られる所望に値する"イージー・トゥー・クリーン"特性は、本発明による粉末の割合を高めることによって更に改善され得る。更に、硬化したモルタルは、下地に対する良好な接着、良好な凝集を示し、かつ重大な硬化性の変化を示さない。
【0137】
グラウトモルタル配合物の表面での接触角測定
グラウトモルタル配合物を前記のように製造し、EN 12808-5により8×4×4の大きさの柱状体を製造し、しかしこの際、型枠オイルは使用しなかった。1日間後に、柱状体を離型させ、標準大気(23℃/50% r.F.)で合計28日間静置させた後に、水及びオリーブ油の接触角を、柱状体表面上への滴下2分間後に測定した。接触角を光学的に、接触角装置Fa. KruessのTyp DSA100 のカメラで測定した。評価は、装置内臓の滴輪郭分析ソフトウエアDSA1 v1.90を用いて、方法"接線法(Tangenten-Verfahren)1"で、又は方法"弓形法"を用いて30°以下の接触角で行なわれた。
【0138】
表5:滴下(水又はオリーブ油約20μl)2分間後に測定した、グラウトモルタル配合物の表面での接触角測定。モルタルの表面が疎水性又は疎油性であればあるほど、各々の滴の接触角はより大きくなる。
【表5】
a)PVOHは、粉末P1〜P7の製造の際に使用されたポリビニルアルコールを表わす。0.16%の使用量は、0.4%粉末P7を用いた例で添加されたポリビニルアルコール量に相応する。
【0139】
表5の値から、添加物抜きのモルタル表面は疎水性でも疎油性でもない、即ち、水もオリーブ油も極めて良好に湿潤し、このことは液体の急速な吸収を強く助長させることを印象的に示す。水溶性ポリマーとして、例えば、粉末P7中に含有されているポリビニルアルコールを使用する場合には、このモルタル特性は僅かしか変化しない。n−オクチルトリエトキシシランが水溶性ポリマー中に被包され、かつ乾燥形で粉末として使用される(VP3)場合には、水滴の接触角は確かに強く上昇するが、このことは良好な疎水性と推論される。しかし、オリーブ油滴は相変わらず、高められた使用量でも、比較的良好に湿潤する。しかし、フルオルオルガニル置換珪素化合物約0.1質量%の量にしか相応しない、本発明による粉末P7 02質量%だけを使用する場合には、驚異的にも、既にモルタル表面は極めて良好な疎油性を示す。このことは、粉末の量を上昇させることで更になお改善され得る(これは、粉末中に存在する親水性ポリビニルアルコールの高い割合にも拘らず!)。