(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5657103
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】炭素体、炭素体の製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C01B 31/02 20060101AFI20141225BHJP
C04B 35/52 20060101ALI20141225BHJP
C25C 3/08 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
C01B31/02 101A
C04B35/52 A
C25C3/08
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-512860(P2013-512860)
(86)(22)【出願日】2011年5月31日
(65)【公表番号】特表2013-533194(P2013-533194A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2011058887
(87)【国際公開番号】WO2011151302
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2012年12月12日
(31)【優先権主張番号】102010029538.8
(32)【優先日】2010年5月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512298708
【氏名又は名称】エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】SGL Carbon SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム フロース
(72)【発明者】
【氏名】フランク ヒルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤヌシュ トマラ
【審査官】
田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−517919(JP,A)
【文献】
特開平02−026818(JP,A)
【文献】
特開昭56−073612(JP,A)
【文献】
特開昭59−217672(JP,A)
【文献】
特開2005−336017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00−31/36
C04B 35/52−35/536
C25C 1/00−7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともコークスを含有する混合物の焼成によって製造されている炭素体であって、前記コークスが、該コークスの2800℃での熱処理の後の、平均層間隔c/2から計算される、MaireとMehringによる黒鉛化度0.50以下を有し、かつ前記コークスの粒度が、0.5mmを上回ることを特徴とする前記炭素体。
【請求項2】
前記コークスが、球状の形態を有することを特徴とする、請求項1に記載の炭素体。
【請求項3】
前記コークスが、乾燥混合物に対して、高くても25質量%の量で含まれていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の炭素体。
【請求項4】
前記コークスが、タマネギの皮状の構造を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の炭素体。
【請求項5】
前記コークスが、20〜40m2/gのBET表面積を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の炭素体。
【請求項6】
カソードブロック又は炉壁レンガであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の炭素体。
【請求項7】
カソードブロックが、黒鉛化カソードブロックであることを特徴とする、請求項6に記載の炭素体。
【請求項8】
無煙炭、黒鉛及びコークスもしくはそれらの混合物、石油もしくは石炭をベースとするバインダーの群から選択される少なくとも1種のバインダー並びに合成樹脂をベースとするバインダー及び上述のバインダーの混合物を混合する工程と、前記工程で得られた混合物を予め決められた形状に成形する工程と、成形された混合物を焼成する工程とを含む、炭素体の製造方法において、前記コークスが、該コークスの2800℃での熱処理の後の、平均層間隔c/2から計算される、MaireとMehringによる黒鉛化度0.50以下を有し、かつ前記コークスの粒度が、0.5mmを上回ることを特徴とする前記製造方法。
【請求項9】
さらに、焼成された成形体を黒鉛化する工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記コークスが、球状の形態を有することを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記の球状の形態を有するコークスが、乾燥混合物に対して、高くても25質量%の量で添加されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記の球状の形態を有するコークスが、タマネギの皮状の構造を有することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記の球状の形態を有するコークスが、20〜40m2/gのBET表面積を有することを特徴とする、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の炭素体または請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法により製造された該炭素体を、機械、化学装置、熱交換器における部材として、高温部材用のライニングとして又は電極として用いる使用。
【請求項15】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の炭素体または請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法により製造された該炭素体を、アルミニウムの製造のための電気分解セル中のカソードブロックとして、製鉄のための高炉における炉壁レンガとして、シリコンの炭素熱的製造に際しての電極として、高炉のためのライニングとして、成形工具として、溶融るつぼ及び保温るつぼのためのライニングとして、又はアルミニウム、チタン、シリコン、鉄、鉄合金、リン、ガラスもしくはセメントの製造のための鋳造用樋及び流出用樋のためのライニングとして、フッ素の製造のためのアノードとして、マグネシウム、ナトリウムもしくはリチウムの製造のためのアノードとして、クロロアルカリ電気分解でのアノードとして、加熱管もしくは加熱リングとして、プレート型加熱エレメントとして、非鉄金属溶融物用のガス抜き管もしくはガス分配システムとして、パッキングとして、ダイヤモンド工具として、高電圧スイッチ用のノズルとして、ペブルベッド炉用の黒鉛減速球として、連続鋳造、ダイカスト、遠心鋳造もしくは鉄輪鋳造の分野での鋳造型として、ガラス金属封じとろう付け接合による半導体封じ込めの製造に際してのハンダもしくはガラス溶融型として、管束型熱交換器として、管板として、プレート型熱交換器として、塔として、保護管、シーブトレイ、トンネルキャップトレイ、泡鐘トレイ、液体分配器、多孔形リアクター、ポンプ又は破裂板として用いる使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素体、炭素体の製造方法並びにその使用に関する。
【0002】
炭素体は、しばしば侵食的な化学薬品及び高温に曝される化学産業における部材として使用される。この部材に課される要求は高く、寿命は制限されている。
【0003】
非黒鉛炭素及び黒鉛からなるカソードは、例えばアルミニウム電気分解セルの底部ライニングとして使用される。これらの材料は、非常に良好な導電性を、高温安定性及び化学的耐久性と結びつけている。特に黒鉛化されたカソードは、その優れた導電性に基づき高い電流強度の現代のセルのために適している。しかし、前記カソードは、例えば無煙炭ベースのカソードよりも激しい作業中の損耗を示す。その磨り減りは、高い電流密度が占めるカソード端部に集中し、こうしてW形状の断面の形成がもたらされる。機械的な影響が相当の役割を担う。それというのも、融解したアルミニウム層は、カソードブロック表面上で、高い磁界に基づき絶え間なく動いて存在するからである。それに加えて、電気分解浴の成分による化学的な攻撃が引き起こされる。両方の種類の腐食は、カソードブロックの、ひいては電気分解セルの寿命を制限する。
【0004】
この問題を回避すべきカソードは、FR2821365に記載されている。該カソードは、2400℃超の温度での処理後でもナトリウムに対して反応性であるカーボン産物を有する。ナトリウムは、典型的には電気分解浴に添加される氷晶石に由来するものである。
【0005】
炉壁レンガ(Hochofenstein)は、同様に非黒鉛炭素又は黒鉛から製造される。製鉄のための高炉での技術的な問題は、好ましくは高炉の湯出し領域における炉壁レンガの腐食である。特にここでは、液状の銑鉄は、化学的かつ機械的に、黒鉛ライニング及びカーボンライニングを過度に攻撃する。
【0006】
従って、炭素体が化学的な及び機械的な腐食によって攻撃されるため、その寿命が短くなるという問題がある。
【0007】
従って、本発明の課題は、高い寿命を有する炭素体を提供することである。
【0008】
本発明によれば、前記課題は、請求項1に記載の炭素体並びに請求項10に記載の方法によって解決される。
【0009】
本発明によれば、少なくともコークスを含有する混合物の焼成によって製造される炭素体が提供され、その際、そのコークスは、黒鉛化能が低いコークスである。
【0010】
低い黒鉛化能を有するコークスは、製造プロセスにおける高温、例えば3000℃までの高温に曝した後にも高い硬度及び摩擦抵抗を有する。低い黒鉛化能を有するコークスの添加によって、炭素体の表面の摩擦抵抗は、本発明のような黒鉛化しづらいコークスの添加を伴わない従来の炭素体に比べて高められる。低い黒鉛化能を有するコークスは、特に、高い摩擦抵抗を生じさせるための剤として作用する。
【0011】
好ましくは、黒鉛化能が低いコークスは、従来の炭素体に比べて、炭素体のより高いかさ密度をもたらす。
【0012】
該コークスは、球体の形状を有するコークスであることが好ましい。そのほぼ球状の形態によって、該コークスは、炭素体の成形に際して材料の流動性を高める。該炭素体は、それによって好ましくは、従来の炭素体よりも高いかさ密度を有する。該炭素体は、それによって更に好ましくは、高い耐摩耗性を有する。
【0013】
本発明により低い黒鉛化能を有するコークスに加えて、該炭素体は、好ましくは無煙炭、黒鉛及び/又は従来のコークス、例えば石油コークスもしくはコールタールピッチコークス、少なくとも1種のバインダー、例えば石油もしくは石炭をベースとするバインダー、例えばタール、石油ピッチ、コールタールピッチ、ビチューメン又はフェノール樹脂もしくはフラン樹脂の群からの少なくとも1種のバインダー及び任意に添加剤、例えば炭素繊維を用いて製造されている。上述の出発材料は、種々の粒度を有してよい。上述の出発材料からの、例えばカソードブロック又は炉壁レンガなどの従来の炭素体のための配合は、公知である。従来の石油コークス及び/又はコールタールピッチコークスを含有する炭素体の場合には、好ましくは少なくとも部分的に、その石油コークス及び/又はコールタールピッチコークスは、黒鉛化能が低いコークスによって置き換えられる。
【0014】
好ましい一実施形態においては、黒鉛化しづらいコークスの2800℃での熱処理の後の、平均層面間隔(Schichtebenenabstand)c/2から計算される、MaireとMehringによる黒鉛化度は、最大で0.5であるか又はそれ未満である。3000℃までの温度での炭素体の黒鉛化の間に、コークスは、黒鉛構造を形成しないか、又は非常に僅かな黒鉛構造しか形成せず、それによってその摩擦抵抗並びにその高い硬度を保つ。
【0015】
更なる好ましい一実施形態においては、前記の黒鉛化能が低いコークスの粒度は、0.2mmを上回り、好ましくは0.5mmを上回る。炭素体が予め決められた導電性を有するべき場合には、その黒鉛化能が低いコークスは、乾燥混合物に対して、高くても25質量%の量で、炭素体中に含まれている。好ましくは、該コークスは、乾燥混合物に対して、10〜20質量%の量で、炭素体中に含まれている。
【0016】
黒鉛化能が低いコークスは、その球形の形状に基づき成形助剤であり、それによって従来の炭素体に比べてより高い炭素体のかさ密度を達成できる。前記コークスは、好ましい一実施形態においては、球状ないしやや楕円形の形態を有する。更に、前記コークスは、タマネギの皮状の構造を有し、それは、その低い黒鉛化能と呼応する。本発明の範囲においては、表現"タマネギの皮状の構造"とは、球状形態ないし楕円状形態の内側層を含み、前記層が完全にもしくは部分的に少なくとも1つの中間層及び外側層によって覆われている多層構造を指す。特に好ましくは、高いかさ密度及び高い摩擦抵抗を生じさせるための剤は、低い黒鉛化能と、高い硬度と、球状でタマネギの皮状の構造をとる構造とを有するコークスである。
【0017】
球状ないし楕円形状の形態を有するコークスは、好ましくは1〜10の長さ/直径比を、より好ましくは1〜5の長さ/直径比を、更に好ましくは1〜3の長さ/直径比を有する。コークスの形態が、球状の構造により近づくほど、材料の流動性と炭素体の機械的特性はより良好になる。
【0018】
特に好ましくは、本発明により使用されるコークスは、黒鉛化しづらい、ないし黒鉛化しえず、高い等方性であり、硬質であり、かつ多孔性が低く、かつ例えば10〜40m
2/gの範囲の、好ましくは20〜30m
2/gの範囲の低い比表面積を有する。X線回折によって測定できるコークスの平均層間隔d
002は、好ましくは0.340〜0.344nm(それは、0.0〜0.5の、MaireとMehringによる黒鉛化度に相当する)であるが、2800℃での熱処理後に0.339nm以上である。見掛けの積層高さL
cは、好ましくは2800℃での熱処理後に20nmを下回る。
【0019】
この低い黒鉛化能を有するコークスの特別な一代表物は、不飽和炭化水素、特にアセチレンの製造に際して副生成物として生ずるコークスである。本発明により使用される低い黒鉛化能を有するコークスは、特に原油留分から又はスチームクラッカー残留物から得られ、それらは不飽和炭化水素(アセチレン)の合成における反応ガスの急冷に際して使用され、その際、急冷油/煤混合物は、約500℃に加熱されるコーカーに排出される。急冷油の揮発性成分は、コーカー中で蒸発し、その底部からコークスを取り出すことができる。このようにして、細粒状のタマネギの皮状の構造のコークスが得られ、該コークスは、上記の特性に加えて高純度であり、かつ灰含分及び無機物質含分が僅かであるかないしそれらの含分を有さない。該コークスは、少なくとも96質量%の炭素含有率を有し、かつ高くても0.05質量%の、好ましくは高くても0.01質量%の灰含分を有することが好ましい。
【0020】
かかるコークスが副生成物として生ずるアセチレンの製造方法は、例えばDE2947005A1に記載されている。その際、上記特徴付けられた低い黒鉛化能を有するコークスは急冷油から製造される。本発明によれば、石油コークスを有する炭素体の従来の組成において、特に該石油コークスは、本発明による炭素体を形成するために、低い黒鉛化能を有するコークスによって少なくとも部分的に置き換えられている。
【0021】
好ましくは、前記の低い黒鉛化能を有するコークスは、高純度であり、かつ灰含分及び無機物質含分が僅かであるかないしそれらの含分を有さない。しかし、前記の低い黒鉛化能を有するコークスは、高い灰含分及び無機物質含分を有してもよいし、純度がより低くてもよい。コークスの純度は、使用される急冷油の純度に依存する。通常は、コークスは、高い炭素含有率を有し、かつ非黒鉛状態にある固体であり、それは、少なくとも部分的に炭化プロセスの間に液体もしくは液晶の状態を経た有機材料の熱分解によって製造される。おそらく、煤粒子は、円滑な液相(メソ相)の形成を妨げて、コークスに高い硬度と低い黒鉛化能を与えると思われる。従って、ガス急冷法から得られたコークスは、2200℃を上回る温度での熱処理によって僅かにしか黒鉛化可能であるにすぎない。2800℃での熱処理後に、X線回折干渉d
002から算出された平均層間隔c/2は、0.34nmもしくはそれを上回り、c方向の微結晶サイズL
cは、20nm未満であり、かつ微結晶サイズLa
110は、50nm未満、好ましくは40nm未満である。特に好ましくは、本発明により使用されるコークスは、高い硬度と、低い黒鉛化能を有し、2800℃での熱処理後の平均層間隔c/2は、0.34nmを上回るか又はそれに等しい。
【0022】
一般には、そのように製造されたコークスは、数マイクロメートルないし数ミリメートルの球状の粒子で生ずる。本発明により使用される低い黒鉛化能を有するコークスは、好ましくは0.2mmを上回る、より好ましくは0.5mmを上回る粒度を有する。好ましい粒度は、例えばコークスの篩別及び好適な分別によって得ることができる。好ましい一実施形態においては、球状の形態を有するコークスは、20〜40m
2/gのBET表面積を有する。その多孔率は、非常に低い。
【0023】
タマネギの皮状の構造を有するコークスは、更に少なくとも1種の添加剤をその構造において有してよい。そのための一例は、アセチレン合成に際して必ず生ずる煤粒子の導入である。
【0024】
アセチレン製造に由来するコークスに加えて又は該コークスの代わりに、Fluid/Flexiコークス化法(Exxon Mobil)からのコークスを、本発明によれば低い黒鉛化能を有するコークスとして使用してもよい。Fluidコークス化法から得られるコークスは、同様に低い黒鉛化能を有する。更に、前記コークスは、同様に球形のないし楕円形状の形態を有し、かつタマネギの皮状の構造をとる。アセチレンの製造に際して副生成物として生ずる上記のコークスと比較して、前記コークスは、より高い灰含分を有する。先になされたX線構造的な記載は、同様にそれにも当てはまる。
【0025】
それに加えて又はその代わりに、"遅延コークス化(delayed-coking)法"からの、いわゆるショットコークス(ドイツ語ではSchrotkoksと翻訳できる)を、本発明の範囲においては、球状の形態を有するコークスとして使用することもできる。先になされたX線構造的な記載の限界は、この場合にいくらかより良好な黒鉛化能に基づき変更できる。2800℃での熱処理後に、平均層面間隔は、0.338nmを上回り、かつc方向の微結晶サイズは、30nm未満であるべきである。黒鉛化された炭素体の摩擦抵抗は、上記の別形コークスのそれには全く及ばない。しかしながら、このショットコークスの球状の形態に基づいて、同様に、材料の改善された流動性が得られ、そして高いかさ密度の炭素体が得られる。
【0026】
好ましくは、炭素体は、カソードブロックである。使用される原材料もしくは製造法に応じて、カソードブロックは、非晶質カソードブロックと、黒鉛化カソードブロックと、黒鉛型カソードブロックとの間で区別される。好ましい一実施形態においては、炭素体は、黒鉛化カソードブロックである。該炭素体は、その高い摩擦抵抗、硬度及び導電性に基づきカソードブロックとして適している。
【0027】
選択的な一実施形態においては、該炭素体は、好ましくは黒鉛化された炉壁レンガである。本発明による炭素体は、炉壁レンガの、特に製鉄のための高炉のライニングとして用いられる炉壁レンガの熱的かつ機械的な負荷に差し支えない。かかるレンガには、高炉で溶融された鉄はほとんど侵入しないので、該レンガの僅かな損耗しか生じない。
【0028】
本発明による炭素体の製造方法は、無煙炭、黒鉛又は従来のコークス、例えば石油コークスもしくはコールタールピッチコークス又はそれらの混合物、少なくとも1種の石油もしくは石炭をベースとするバインダー及び任意に少なくとも1種の合成樹脂をベースとするバインダー及び任意に上述のバインダーの混合物並びに任意に更なる添加剤及び高いかさ密度を生じさせるための少なくとも1種の剤を混合する工程と、その際、前記の高いかさ密度を生じさせるための剤は球状の形態を有するコークスであり、該混合物を予め決められた形状に成形する工程と、成形された混合物を焼成する工程と、任意に、焼成された混合物を黒鉛化する工程とを含む。
【0029】
本発明による方法では、タール、ピッチ、ビチューメン又はフェノール樹脂もしくはフラン樹脂などの石油又は石炭をベースとするバインダーの群からの少なくとも1種のバインダーが使用される。
【0030】
添加剤は、例えばカーボンナノファイバー又は炭素繊維であってよい。
【0031】
本発明による方法においては、該炭素体の製造のために使用される出発物質は、1もしくは複数のその都度所望の粒度で使用される。場合により、出発物質は、その使用前に篩別される。全ての予め決められた出発物質は、場合により温度作用下で混合され、場合により混練される。引き続き得られた混合物を成形し、圧縮する。前記の成形と圧縮は、例えば押出、加圧又は振動成形によって、すなわち低圧下での揺り動かしによって行うことができる。次いで、その成形体が焼成される。引き続き、炭素体は、任意に黒鉛化に供することができる。次いで、該炭素体は、所望の最終形状の規模にまで加工することができる。
【0032】
焼成温度は、引き続いての黒鉛化工程を伴わない実施形態においては、好ましくは1100〜1500℃である。炭素体が黒鉛化に供される場合には、焼成温度は、好ましくは700〜1100℃の範囲にあり、かつ黒鉛化の温度は、2000〜3000℃の範囲にある。黒鉛化の前又はその後に、該炭素体は、含浸され、再び焼成されてよい。黒鉛化は、好ましくはアチソン式黒鉛化法に従って、より好ましくは縦方向黒鉛化法(LWG法又はキャストナー法)に従って行われる。
【0033】
好ましくは、本発明による方法においては、低い黒鉛化能を有するコークスとして、不飽和炭化水素、特にアセチレンの合成において反応ガスの急冷に際して使用される急冷油から得られるコークス(いわゆるアセチレンコークス)が使用される。該コークスは、少なくとも96質量%の炭素含有率を有し、かつ高くても0.05質量%の、好ましくは高くても0.01質量%の灰含分を有することが好ましい。アセチレン合成からのコークスの一代替物は、Fluid/Flexiコークス化法からの回転楕円形状のコークスである。アセチレン合成からのコークスの更なる一代替物は、遅延コークス化法からのショットコークスである。2つの最初に挙げられたコークス種は、黒鉛化しづらい硬質のコークスであり、そのために先になされたX線構造的な記載が当てはまる。
【0034】
アセチレンの製造に際して副生成物として得られる低い黒鉛化能を有するコークス、例えばDE2947005A1に開示されている上記方法で得られるようなコークスは、本発明による方法で使用できる。選択的に、該コークスは、その使用前に本発明による方法において熱により前処理してよい。前記の熱的な前処理は、か焼、すなわちコークスを、700〜1600℃の、好ましくは1000〜1500℃の、より好ましくは1100〜1300℃の範囲の温度で、場合により還元性の雰囲気下で熱処理することを含む。かかる処理は、特に水、揮発性の可燃性物質、例えば炭化水素、例えばメタン、一酸化炭素もしくは水素などの物質の気化をもたらす。
【0035】
好ましい一実施形態においては、コークスの2800℃での熱処理の後の、平均層間隔c/2から計算される、MaireとMehringによる黒鉛化度0.5以下を有する球状の形態を有するコークスが、本発明による方法で使用される。球状の形態を有し、かつ低い黒鉛化能を有するコークスは、高いかさ密度と、高い摩擦抵抗を生じさせるための剤である。
【0036】
球状の形態を有する使用されるコークスの量は、乾燥混合物に対して、好ましくは高くても25質量%、より好ましくは10〜20質量%である。好ましくは、球状の形態を有し、0.2mmを上回る粒度、より好ましくは0.5mmを上回る粒度を有するコークスが使用される。
【0037】
本発明による炭素体は、広い範囲で使用することができる。特にその高いかさ密度と、高い摩擦抵抗と、高い耐摩耗性と、化学的不活性と、その高い耐熱性とに基づき、前記コークスは、例えばプロセス工学の分野において、機械、化学装置又は熱交換器における部材として使用される。更に、本発明による炭素体は、その上記の特性に基づいて、電極として、又は比較的侵食性の条件下で、例えば侵食性の化学物質もしくは高温への曝露下で製造される物質の製造に際しての部材のライニングとして使用される。
【0038】
好ましい一実施形態においては、本発明による炭素体は、アルミニウムの製造のための電気分解セル中のカソードブロックとして使用される。従来のカソードブロック配合における従来の石油コークス又はコールタールピッチコークスの一部を、特定のほぼ球状の硬質で黒鉛化しづらいコークスによって置き換えることによって、従来のカソードブロックに比して高いかさ密度を有するカソードブロックが得られる。更に、カソードブロック表面の摩擦抵抗は、従来のカソードブロック表面に比して高められている。より高いかさ密度及びより高い摩擦抵抗によって、かかるカソードは、アルミニウムの製造のための電気分解の間の、化学的な負荷、特に機械的な負荷に基づく腐食に良好に耐えることができる。
【0039】
選択的に、該炭素体は、好ましくは製鉄のための高炉における炉壁レンガとして使用される。従来の炉壁レンガと比してより高いかさ密度とより高い摩擦抵抗に基づき、本発明による炭素体は、炉壁レンガとして、機械的な負荷に、かつ熱的な摩耗に耐える。本発明による炭素体は、特に製鉄のための高炉の出銑領域(Abstichbereich)で使用するために適している。
【0040】
もう一つの好ましい実施形態においては、本発明による炭素体は、炭素熱還元法における電極として使用される。例えば、本発明による炭素体は、二酸化ケイ素がシリコンへと還元される、シリコンの炭素熱的製造に際して使用される。
【0041】
更に、本発明による炭素体は、好ましくは、電熱的還元法における電極として又は高炉のためのライニングとして、例えばアルミニウム、チタン、シリコン、鉄、鉄合金、リン、ガラスもしくはセメントの製造のための高炉のためのライニングとして、並びに上述の分野における成形工具としてもしくは溶融るつぼ及び保温るつぼのための並びに鋳造用樋及び流出用樋のためのライニングとして使用される。
【0042】
本発明による炭素体は、更に、種々の物質の電気分解的な製造におけるアノードとして使用することができる。そのための例は、特に六フッ化ウランの製造のためのフッ素の製造のためのアノード、マグネシウム、ナトリウム、リチウムの製造(融解電気分解)のためのアノード又はクロロアルカリ電気分解でのアノードである。
【0043】
本発明による炭素体の更なる使用のための例は、加熱管もしくは加熱リング、プレート型加熱エレメント、非鉄金属溶融物用のガス抜き管もしくはガス分配システム、パッキング、ダイヤモンド工具、高電圧スイッチ用のノズル、ペブルベッド炉用の黒鉛減速球(Graphitblindkugel)、連続鋳造、ダイカスト、遠心鋳造もしくは鉄輪鋳造の分野での部材、例えば鋳造型、ハンダもしくはガラス溶融型、例えばガラス金属封じとろう付け接合による半導体封じ込めの製造に際してのものである。
【0044】
本発明による炭素体は、更に、プロセス工学の分野で使用される。本発明による炭素体は、熱交換器の部材として、例えば管束型熱交換器、管板、プレート型熱交換器又はパッキングとして使用できる。更に、本発明による炭素体は、塔として、例えば酸の合成に際しての、例えばHCl合成に際しての塔として、保護管、シーブトレイ、トンネルキャップトレイ(Tunnelboden)、泡鐘トレイ(Glockenboden)、液体分配器、多孔形リアクター(Porenreaktor)、ポンプ又は破裂板(Berstscheibe)として使用できる。