(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、オゾン浄化体としての二酸化マンガン等の金属酸化物は高価である。そのため、今後、DORシステムを広く普及していくためには、これに替わり得る新規なオゾン浄化体を開発する必要がある。また、オゾン浄化体を担持させる車両構成部品は、通常、オゾン浄化を目的として製造されるものではない。そのため、DORシステムの普及のためには、このような車両構成部品を分解等することなく、工業的に安価にオゾン浄化体を担持させる方法についても開発する必要がある。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものである。即ち、新規なオゾン浄化体を車両構成部品に担持させたDORシステム、および、このDORシステムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、車両用大気浄化装置であって、
車両の走行時に大気の流路が形成される箇所に配置された車両構成部品と、
前記車両構成部品の表面に形成されたオゾン浄化体であって、標準電極電位の異なる二種類以上の金属からなるオゾン浄化触媒を含むオゾン浄化体と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記オゾン浄化体が、オゾン浄化機能を有するオゾン浄化物質を更に含むことを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記オゾン浄化物質が、前記オゾン浄化触媒を担持可能な多孔質体であることを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、第3の発明において、
前記オゾン浄化物質は活性炭であり、
前記活性炭の粒子表面が、前記オゾン浄化触媒で被覆されていることを特徴とする。
【0011】
また、第5の発明は、第1乃至第4何れか1つの発明において、
前記車両構成部品はラジエータであり、
前記オゾン浄化体は、前記ラジエータの表面に単層膜として形成されたものであることを特徴とする。
【0012】
また、第6の発明は、第1乃至第5何れか1つの発明において、
前記オゾン浄化触媒は、
Co、Ni、Cu、Fe、Sn、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、RuおよびOsからなる群から選択される少なくとも1つの金属を主成分とする第1触媒成分と、
前記第1触媒成分に担持され、前記第1触媒成分の主成分に使用する金属よりも標準電極電位の高い金属を主成分とする第2触媒成分と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
また、第7の発明は、上記の目的を達成するため、第1乃至第6何れか1つの車両用大気浄化装置の製造方法であって、
無電解めっき法を用いて、標準電極電位の異なる二種類以上の金属からなるオゾン浄化触媒を含むオゾン浄化体を調製する工程と、
前記オゾン浄化体をスラリー化し、スプレー法を用いて車両構成部品の表面に塗布する工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、標準電極電位の異なる二種類以上の金属からなるオゾン浄化触媒を含むので、この金属間に生じた電位差を利用して、大気中のオゾンを浄化できる。
【0015】
第2の発明によれば、上記オゾン浄化触媒に加えて、オゾン浄化物質によって大気中のオゾンを浄化できる。
【0016】
第3の発明によれば、多孔質体の上記オゾン浄化物質によって、上記オゾン浄化触媒を多く担持可能となるので、オゾン浄化体によるオゾン浄化効率を向上できる。
【0017】
第4の発明によれば、活性炭の粒子表面をオゾン浄化触媒で被覆しているので、大気中のオゾンを、オゾン浄化触媒、活性炭粒子の順番で接触させることが可能となる。そのため、活性炭によるオゾン分解反応に先駆けて、オゾン浄化触媒によるオゾン分解反応を確実に開始できる。また、オゾン浄化触媒は、活性酸素を浄化する機能をも有するので、活性炭粒子をオゾン浄化触媒で被覆すれば、活性炭によるオゾン分解反応で生成した活性酸素を、その生成箇所の近傍に位置するオゾン浄化触媒において速やかに浄化することも可能となる。従って、オゾン浄化体の機能劣化を良好に抑制できる。
【0018】
第5の発明によれば、上記オゾン浄化体がラジエータの表面に単層膜として形成されることで、例えば活性炭層とオゾン浄化触媒層との複層膜で形成される場合に比べて薄層化が可能となる。従って、ラジエータの表面にオゾン浄化体を形成することによる冷却機能の低下を最小限に留めることが可能となる。
【0019】
第6の発明によれば、第2触媒成分の主成分を、第1触媒成分の主成分に使用する金属よりも標準電極電位の高い金属とすることができるので、第1触媒成分と第2触媒成分に生じた電位差を利用して、オゾン分解反応を進行できる。
【0020】
第7の発明によれば、第1乃至第6の車両用大気浄化装置を製造する際に、車両構成部品を分解等することなく、工業的に安価にオゾン浄化体を担持させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[車両用大気浄化装置の構成]
以下、
図1乃至
図10を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態の大気浄化装置を搭載した車両の構成を示す概略図である。車両10は、動力装置としての内燃機関12を備えている。内燃機関12から排出される排気ガスには、HCやNOxが含まれている。オゾンはHCやNOxを反応物として光化学反応により生成される。そのため、内燃機関12を備える車両10に大気浄化装置を搭載し、車両10の走行中に大気中のオゾンを浄化することで、車両10が環境に与える影響を低減することができる。
【0023】
車両10において、内燃機関12の前方には、内燃機関12に循環させる冷却水を冷却するラジエータ14が配置されている。ラジエータ14の前方には、エアコンのコンデンサ16が取り付けられている。
図1に矢印で示すように、車両10の走行時には、車両10のフロント面のバンパーグリル18から大気が取り込まれ、取り込まれた大気が、コンデンサ16、ラジエータ14をこの順に通過して後方へ排出される。
【0024】
次に、
図2を参照しながら、ラジエータ14の詳細な構成について説明する。
図2は、ラジエータ14のコア部の断面模式図である。
図2に示すように、ラジエータ14のコア部は、基材20上に、オゾン浄化体層22がコーティングされることで構成されている。基材20は、熱伝導性に優れるアルミニウム合金等から構成され、冷却水の熱を基材20側からオゾン浄化体層22側に向かって伝達する。オゾン浄化体層22は、オゾンを浄化する機能を有する触媒(以下、「オゾン浄化触媒」と称す。)と活性炭とから構成されるオゾン浄化体と、このオゾン浄化体と基材20とを接着するためのバインダーとから構成されている。
【0025】
[オゾン浄化体]
図2のオゾン浄化体層22を構成する活性炭は、二酸化マンガン等の金属酸化物に匹敵するオゾン浄化性能を有し、かつ、安価に入手が可能であるため、オゾン浄化用の金属酸化物の代替品として有望視されているものである。また、活性炭は、ラジエータの通水温度域(通常80℃〜100℃)や、ハイブリッド用ラジエータの通水温度域(通常50℃〜70℃)のみならず、常温(25℃)域においてもオゾンを浄化できるので、約80℃以上の高い浄化温度を必要とする上記金属酸化物に比して有用である。
【0026】
しかしながら、活性炭をオゾン浄化体に用いる場合、そのオゾン浄化機能が劣化し易いという問題がある。
図3は、オゾン浄化耐久試験の結果を示すデータである。
図3の横軸は耐久距離(キロマイル)を、縦軸は初期状態(耐久距離0キロマイル時)におけるオゾン浄化率を基準とした相対値を、それぞれ示す。
図3中に示す各データは、サイズおよび比表面積が同等の2つの活性炭を準備し、この2つの活性炭の前方から後方に向けて一定濃度のオゾン含有ガスを異なる速度(風速1m/sおよび風速10m/s)で通過させた際に、活性炭後方のオゾン濃度をそれぞれ測定することにより得たものである。
【0027】
図3に示すように、活性炭のオゾン浄化率は、耐久距離が長くなるに連れて低下する。また、
図3に示すように、活性炭のオゾン浄化率の低下度合いは、通過させるオゾン含有ガスの風速によって変化する。具体的に、オゾン含有ガスを風速1m/sで通過させた場合は、オゾン浄化率が約30キロマイルで初期状態の半分まで低下するが、オゾン含有ガスを風速10m/sで通過させた場合は、約50キロマイル付近でようやく初期状態の半分程度まで低下する。つまり、高速(風速10m/s)で通過させた場合の方が、低速(風速1m/s)で通過させた場合に比して、オゾン浄化率の低下度合いが小さくなる。
【0028】
図4は、ラジエータを通過させるガスの風速と、そのガスがラジエータに接触する確率(以下、「ガス接触確率」と称す。)との関係を示したグラフである。このグラフは、アルミハニカム式のラジエータのモデルに対して、Gormley−Kennedyの拡散理論式を適用することにより算出したものである。
図4に示すように、風速が1m/s付近ではガス接触確率が約100%であり、風速が10m/s付近ではガス接触確率が約10%となる。つまり、ガス接触確率は、風速が遅い場合は高く、風速が速くなるにつれて緩やかに低下する。
【0029】
図3、4のグラフから、活性炭のオゾン浄化率とガス接触確率との間には相関があることが分かる。即ち、
図4のグラフから、風速が遅いほどガス接触確率が高く、風速が速いほどガス接触確率が低くなることが分かる。また、
図3のグラフから、風速が遅いほどオゾン浄化率の低下度合いが大きく、風速が速いほどオゾン浄化率の低下度合いが小さくなることが分かる。従って、
図3、4のグラフから、ガス接触確率が高ければ活性炭のオゾン浄化率の低下度合いが大きくなり、ガス接触確率が低ければ活性炭のオゾン浄化率の低下度合いが小さくなることが分かる。
【0030】
本発明者らは、活性炭のオゾン浄化率とガス接触確率との間に上述した相関があるのは、活性炭のオゾン分解メカニズムと、活性炭の内部構造の経時変化とに起因すると推察している。先ず、活性炭のオゾン分解メカニズムについて説明する。活性炭は、表面から内部に向かって無数に形成された細孔を有し、この細孔内にオゾン分子が入り込んだ際に活性炭から電子を供与され、オゾン分解反応の活性化エネルギーが下がった結果、オゾンが酸素及び活性酸素に変換される。活性炭のオゾン分解反応は、具体的に、下記式(1)および式(2)の反応として表される。
O
3→O
3− ・・・(1)
O
3−→O
2+O
− ・・・(2)
【0031】
次に、活性炭の内部構造の経時変化について説明する。活性炭のオゾン分解反応により生じた活性酸素(O
−)は、活性炭の酸化剤として作用する。この活性酸素は強力な酸化力を有しているため、活性酸素が活性炭の細孔内に入り込んだ場合には、活性炭が酸化されてしまう。そのため、活性炭のオゾン浄化機能が消失する可能性がある。活性酸素による活性炭の酸化反応は、具体的に、下記式(3)および式(4)の反応として表される。
C+O→CO ・・・(3)
C+2O→CO
2 ・・・(4)
【0032】
そこで、本実施形態においては、オゾン浄化体層22にオゾン浄化触媒を用いている。オゾン浄化触媒は、活性炭同様にオゾン浄化機能を有する。オゾン浄化触媒によるオゾン分解反応は、具体的に、下記式(5)および式(6)の反応として表される。
O
3→O
3− ・・・(5)
O
3−→O
2+O
− ・・・(6)
上記式(5)、(6)の反応は、上記式(1)、(2)と同一の反応である。従って、上記オゾン浄化触媒を活性炭と併用すれば、活性炭へのガス接触確率を相対的に低下しつつ、上記式(5)や(6)の反応を利用したオゾン浄化が可能となる。
【0033】
加えて、上述したオゾン浄化触媒は、活性炭のオゾン分解反応により生じた活性酸素を酸素に変換する機能をも有する。オゾン浄化触媒による活性酸素の変換反応は、具体的に、下記式(7)の反応として表される。
O
−+O
3−→2O
2 ・・・(7)
上記式(7)の反応は、上記式(5)、(6)の反応のみならず上記式(1)、(2)の反応により生じたO
3−やO
−を利用できる。従って、上記オゾン浄化触媒を活性炭と併用すれば、活性酸素による活性炭の酸化反応(上記式(3)、式(4)の反応)を抑制できる。
【0034】
図5(A)は、
図2のオゾン浄化体層22を構成するオゾン浄化体の粒子を模式的に示した図である。
図5(A)に示す粒子は、活性炭粒子24(平均粒子径:0.02〜100μm、望ましくは0.1〜10μm)を核とし、その外殻にオゾン浄化触媒層26(層厚:0.1〜50μm)が粉体めっき(無電解めっき)法により形成されたコア−外殻構造となっている。また、オゾン浄化触媒層26は、活性炭粒子24の周囲を覆うように配置された第1触媒成分26aと、第1触媒成分26aの表面に担持された第2触媒成分26bとから構成されている。
【0035】
ここで、第1触媒成分26aまたは第2触媒成分26bの主成分には、Co、Ni、Cu、Fe、Sn、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、RuおよびOsからなる群から選択される少なくとも1つの金属が使用される。ここで、「主成分」としたのは、第1触媒成分26aまたは第2触媒成分26bが、上述した金属以外の他の成分を含んでいてもよいことを意味している。また、第1触媒成分26aと第2触媒成分26bとの間には、電位差が生じるような金属の組み合わせが選択される。これは、電位差を利用してオゾンを還元するためである。効率的なオゾン還元のためには、第2触媒成分26bを構成する金属の標準電極電位を、第1触媒成分26aのそれよりも貴とすることが望ましく、0.3V以上貴とすることがより望ましい。
【0036】
図5(B)は、
図5(A)の粒子の表面近傍の断面拡大図である。
図5(B)に矢印で示すように、オゾン浄化触媒層26を活性炭粒子24の表面に形成すれば、大気中に含まれるオゾンを、オゾン浄化触媒層26、活性炭粒子24の順番で拡散させることができる。従って、活性炭によるオゾン分解反応に先駆けて、オゾン浄化触媒によるオゾン分解反応を開始できるので、活性炭へのガス接触確率の相対的な低下をより一層図ることが可能となる。また、活性炭によるオゾン分解反応で生成した活性酸素を、その生成箇所の近傍に位置するオゾン浄化触媒において速やかに反応させて浄化することも可能となる。従って、活性炭のオゾン浄化機能の劣化を良好に抑制できる。
【0037】
次に、
図6乃至
図8を参照しながら、上述したラジエータ14のコア部の構成による効果について説明する。
図6は、
図2のコア部との比較用のコア部の断面模式図である。
図6に示すラジエータ28のコア部は、基材30上に、活性炭層32がコーティングされ、活性炭層32にオゾン浄化触媒粒子34が分散担持されることで構成されている。つまり、
図6のコア部は、基材30上に、活性炭層32およびオゾン浄化触媒粒子34の層が形成された二層コーティング構造となっている。そのため、オゾン浄化触媒粒子34の層の分だけ、全体の層厚が増大することになる。そうすると、冷却水の熱の伝達に時間を要することになるので、内燃機関の冷却効率の悪化に繋がる可能性が高い。
【0038】
また、
図7(A)は、
図6のラジエータ28のコア部の一部拡大図である。
図7(A)に示すように、
図6のコア部は、活性炭層32にオゾン浄化触媒粒子34が分散担持された構造をとる。また、
図7(B)は、
図7(A)の活性炭層32の表面近傍の断面拡大図である。
図7(B)に示すように、活性炭層32の表面およびその細孔内にはオゾン浄化触媒粒子34が担持されている。そのため、オゾン浄化触媒粒子34の機能により、活性酸素による活性炭の酸化反応(上記式(3)、式(4)の反応)の進行を抑制できる。しかしながら、この機能が発揮されるためには、オゾンや活性酸素が速やかに反応可能な箇所にオゾン浄化触媒粒子34が担持されている必要がある。そのため、オゾン浄化触媒粒子34の分散状態が不十分な場合には、局所的に活性炭層32が酸化劣化したり、或いは、オゾン浄化にムラが生じてしまう可能性がある。
【0039】
また、
図8は、オゾン浄化耐久試験の結果を示す図である。
図8の横軸は耐久距離(キロマイル)を、縦軸は初期状態(耐久距離0キロマイル時)におけるオゾン浄化率を基準とした相対値を、それぞれ示す。
図8中に示すデータは、オゾン浄化触媒粒子を分散担持させた活性炭(
図7(A)参照)と、非担持の活性炭とを準備し(サイズおよび比表面積は同等)、この2つの活性炭の前方から後方に向けて一定濃度のオゾン含有ガスを異なる速度(風速1m/sおよび風速10m/s)で通過させた際に、活性炭後方のオゾン濃度をそれぞれ測定することにより得たものである。
【0040】
図8中には、オゾン浄化触媒粒子を分散担持させた活性炭のデータの他に、このデータとの比較用に
図3のデータを示している。なお、
図3のデータは、上記オゾン浄化触媒粒子を分散担持させた活性炭の初期状態におけるオゾン浄化率を基準とした相対値として示す。
図8(A)は風速1m/sで通過させた際のデータであり、
図8(B)は風速10m/sで通過させた際のデータである。
図8(A)によれば、オゾン浄化触媒粒子を分散担持させた活性炭は、非担持のものに比べてオゾン浄化率の低下が抑制されることが分かる。つまり、
図8(A)のデータは、オゾンがオゾン浄化触媒粒子において浄化されたこと裏付けるものであるといえる。一方、
図8(B)によれば、オゾン浄化率の低下度合いが、担持・非担持に関わらずほぼ等しくなったことが分かる。つまり、
図8(B)のデータは、風速が速い環境下では、オゾン浄化触媒における反応(上記式(5)〜式(7)の反応)が十分に活用できていない可能性が示された。
【0041】
この点、
図5に示したように、オゾン浄化触媒層26を活性炭粒子24表面に形成すれば、大気中に含まれるオゾンを、必ずオゾン浄化触媒層26に接触させることができる。また、活性炭によるオゾン分解反応で生成した活性酸素を、その生成箇所の近傍に位置するオゾン浄化触媒において速やかに反応させて浄化することも可能となる。従って、オゾン浄化触媒における反応を促進可能となるので、風速が速い環境下においても、オゾン浄化体の長寿命化を図ることが可能となる。
【0042】
[車両用大気浄化装置の製造方法]
次に、
図9および
図10を参照しながら、本実施形態の大気浄化装置の製造方法を説明する。
図9は、
図1のラジエータ14の製造フロー図である。
図9に示すように、
図1のラジエータ14は、(1)粉体メッキ処理工程および(2)コーティング工程を経ることにより製造される。
【0043】
(1)粉体メッキ処理工程は、無電解めっき法を用いて、活性炭粒子24の表面にオゾン浄化触媒層26を形成する工程である。具体的には、先ず、活性炭粒子24をPdコロイド粒子等で活性化処理した上で第1メッキ液(例えばCoメッキ液)に浸漬し、活性炭粒子24の表面を第1触媒成分26aで被覆する。次いで、得られた被覆粒子を第2メッキ液(例えばAgメッキ液)に浸漬し、その表面に第2触媒成分26bを担持させる。これにより、
図9に示すようなオゾン浄化体の粒子を得る。
【0044】
(2)コーティング工程は、スプレー法を用いて、新品のラジエータのコア部にオゾン浄化体層22をコーティングする工程である。具体的には、先ず、上記(1)の工程により得られたオゾン浄化体の粒子をバインダー中に分散させてスラリー化する。次いで、スプレー36を用いて、上記スラリーを新品のラジエータのコア部にコーティングする。最後に、バインダーを乾燥除去してラジエータ14を得る。
【0045】
図10に、
図9の比較用としての従来のラジエータの製造フロー図を示す。昨今のラジエータの流通実態を考慮すれば、ラジエータの製造時にオゾン浄化体層を形成することは現実的ではない。また、コスト面を考慮すると、ラジエータへのオゾン浄化体層の形成は、新品のラジエータを分解等するのではなく、直接的に行うことが望ましい。ここで、オゾン浄化体層の形成は、新品のラジエータを直接、無電解メッキすることで可能である。しかしながら、一般的なラジエータには、フィンやチューブといったラジエータ構成品を接合する目的でフラックスが使用されており、このフラックスが無電解メッキ時の層形成を阻害してしまう。そのため、従来は、フラックスを化学研磨して除去する工程((1)フラックス除去工程)が必要であり、生産性の悪化に繋がるという問題があった。
【0046】
また、従来は、この前処理の後に、ラジエータをベーマイト処理し((2)ベーマイト処理工程)、無電解メッキ液に浸漬する((3)無電解メッキ工程)ことでオゾン浄化体層を形成する。そのため、上記化学研磨工程を含め、薬品を使用した化学処理が連続する。従って、生産工数が増大し手間がかかるという問題があった。
【0047】
この点、
図9に示した製造フローによれば、上記化学研磨工程が不要であり、同時に、無電解メッキ処理を材料調製の段階で完了できる。従って、生産工数の低減を図ることが可能であると共に、生産性の悪化を抑制可能となる。また、
図9に示した製造フローによれば、スプレー法を用いるので、オゾン浄化体の粒子が均一分散した所望の層厚のオゾン浄化体層22が形成されたラジエータ14を製造可能となる。
【0048】
[変形例]
ところで、上記実施形態においては、活性炭粒子24の周囲を覆うようにオゾン浄化触媒層26を形成した。しかしながら、オゾン浄化触媒層26は、全ての活性炭粒子24の周囲に形成されていなくてよいし、活性炭粒子24の全周囲に形成されていなくてもよい。即ち、一部の活性炭粒子24の周囲に、オゾン浄化触媒層26の非被覆箇所が存在していてもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、オゾン浄化体に活性炭を用いたが、このオゾン浄化体の構成について、次の3つの変形が可能である。
第1に、活性炭の代わりにゼオライトを用いてもよい。ゼオライトは、活性炭同様の高い比表面積を有するので、その表面に第1触媒成分26aや第2触媒成分26bを多く担持することが可能である。また、ゼオライトは、活性炭には劣るもののオゾン浄化機能を有する。そのため、その表面にオゾン浄化触媒層26を形成すれば、本実施形態同様、風速が速い環境下においても、オゾン浄化体の長寿命化を図ることが可能となる
。なお、ゼオライトは活性炭と同時に用いてもよい。
第2に、活性炭の代わりに、酸化鉄、チタニア、アルミナやシリカを用いてもよい。酸化鉄、チタニア、アルミナやシリカは、比表面積は低いものの活性炭と同等のオゾン浄化性能を有する。そのため、酸化鉄等を活性炭の代わりに用いた場合であっても、それによるオゾン浄化が期待できる。なお、酸化鉄等は活性炭と同時に用いてもよい。
第3に、活性炭を用いずに、オゾン浄化触媒のみからオゾン浄化体を構成してもよい。オゾン浄化触媒は単独でもオゾン浄化機能を有するので、それによるオゾン浄化が期待できる。なお、オゾン浄化触媒のみを用いる場合、オゾン浄化体の粒子は、第1触媒成分26aを核として、その表面に第2触媒成分26bが担持された構造となる。