(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5657191
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】ベシクル及びそれを含有する皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/68 20060101AFI20141225BHJP
A61K 8/14 20060101ALI20141225BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20141225BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20141225BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20141225BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20141225BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20141225BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20141225BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20141225BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
A61K8/68
A61K8/14
A61K8/365
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/44
A61K8/55
A61K8/64
A61Q19/00
A61Q19/08
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2007-161120(P2007-161120)
(22)【出願日】2007年6月19日
(65)【公開番号】特開2009-1502(P2009-1502A)
(43)【公開日】2009年1月8日
【審査請求日】2010年5月24日
【審判番号】不服2013-6566(P2013-6566/J1)
【審判請求日】2013年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 秀貴
(72)【発明者】
【氏名】杉山 拓道
(72)【発明者】
【氏名】畑野 利江
(72)【発明者】
【氏名】今村 仁
(72)【発明者】
【氏名】福田 泰博
【合議体】
【審判長】
松浦 新司
【審判官】
関 美祝
【審判官】
小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−335651(JP,A)
【文献】
特開2006−290894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジン及び/又はその塩
を総量で1〜10質量%と、2)セラミド及び/又はその
誘導体から選択される1種乃至は2種以上
を総量で1〜10質量%と、3)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルから選択される1種乃至は2種以上
を総量で5〜30質量%と、4)ウルソール酸、ウルソール酸誘導体及びこれらの塩から選択される1種乃至は2種以上
を総量で0.1〜30質量%とを含有
し、
前記セラミドは、下記式1〜7で表されるセラミド・タイプI〜VIIであり、
前記セラミドの誘導体は下記式8又は9で表される化合物であり、
前記ウルソール酸の誘導体は、ウルソール酸の炭素数1〜20の炭化水素基エステル又はウルソール酸のリン酸エステルであるベシクル。
【化1】
(R1アルキル基乃至はアルケニル基を表し、R2はリノレオイルオキシアルキル基を表す。)
【化2】
(R1、R2はそれぞれ独立に、アルキル基乃至はアルケニル基を表す。)
【化3】
(R1、R2はそれぞれ独立に、アルキル基を表す。)
【化4】
(R1アルキル基を表し、R2はリノレオイルオキシアルキル基を表す。)
【化5】
(R1、R2はそれぞれ独立にアルキル基を表す。)
【化6】
(R1、R2はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R3は水素原子乃至はアルキル基を表す。)
【化7】
(R1、R2はそれぞれ独立にアルキル基を表す。)
【化8】
(但し、式中R1は炭素数10〜26の炭化水素基を表し、R2は炭素数9〜25の炭化水素基を表し、Xは−(CH2)n−で表される基において、nが2〜6のものを表す。)
【化9】
(式中、R1'及びR2'は同一又は異なって炭素数1〜40のヒドロキシル化されていてもよい炭化水素基を示し、R3は炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基又は単
結合を示し、R4は水素原子、炭素数1〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基又は
2,3−ジヒドロキシプロピルオキシ基を示す。ただし、R3が単結合のときはR4は水素原子である。)
【請求項2】
前記α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンにおけるアシル基は、ラウロイル基であることを特徴とする、請求項1に記載のベシクル。
【請求項3】
前記セラミド及び/又はその誘導体は、セラミド・タイプII又はセラミド・タイプIIIであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のベシクル。
【請求項4】
前記グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルから選択される1種乃至は2種以上は、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンモノイソステアレート、デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンモノイソステアレート、デカグリセリンペンタオレート及びデカグリセリンペンタイソステアレートから選択される1種乃至は2種以上である、請求項1〜3何れか1項に記載のベシクル。
【請求項5】
請求項1〜4何れか1項に記載のベシクルを0.1〜10質量%含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に含有せしめるのに好適なベシクル、及び、該ベシクルを含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ウルソール酸はトリテルペン酸の一種であり、抗酸化作用、抗炎症作用、メラニン産生抑制作用など、化粧料として好適な作用を多種有することが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4を参照)。しかしながら、化粧料成分との相溶性の課題から、時として、製剤形の種類によっては、長期保存において不溶物を析出する場合などが存した。この様な状況に鑑みて、化粧料原料との相溶性を向上させる目的で、リン酸エステル等の誘導体へ導く技術も検討され、その様な誘導体化で溶解性は向上したが(例えば、特許文献5を参照)、残念ながら、充分とは言えないのが現状であった。
【0003】
ウルソール酸の製剤配合性の向上手段の内、製剤側のアプローチとしては、例えば、特殊な形態のリポソーム、特に、ペンタデセルニ基を有するセラミドとともに作成したリポソームを利用する技術が開発されている(例えば、特許文献6、特許文献7を参照)が、特殊なセラミドを用いた、特殊なリポソームであるため、汎用性についての課題が存した。即ち、ウルソール酸を含有する皮膚外用剤に於いて、製剤配合性と汎用性とを向上せしめる技術が望まれていたと言える。
【0004】
【特許文献1】特開平08−165231号公報
【特許文献2】特開平08−208424号公報
【特許文献3】再表01/072265号公報
【特許文献4】特開平11−12122号公報
【特許文献5】WO06/132033
【特許文献6】特開2006−335651号公報
【特許文献7】特表2003−508486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、ウルソール酸乃至はその誘導体を含有する皮膚外用剤に於いて、製剤配合性と汎用性とを向上せしめる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、ウルソール酸乃至はその誘導体を含有する皮膚外用剤に於いて、製剤配合性と汎用性とを向上せしめる技術を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、1)α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジン及び/又はその塩と、2)セラミド及び/又はその類縁体
から選択される1種乃至は2種以上と、3)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルから選択される1種乃至は2種以上と、4)ウルソール酸、ウルソール酸誘導体及びこれらの塩から選択される1種乃至は2種以上とを用いて、ベシクルを形成せしめ、これを皮膚外用剤に含有させることにより、ウルソール酸乃至はその誘導体の製剤安定性を顕著に向上せしめることを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
<1>1)α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジン及び/又はその塩と、2)セラミド及び/又はその類縁体
から選択される1種乃至は2種以上と、3)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルから選択される1種乃至は2種以上と、4)ウルソール酸、ウルソール酸誘導体及びこれらの塩から選択される1種乃至は2種以上とを含有するベシクル。
<2>前記α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンにおけるアシル基は、ラウロイル基であることを特徴とする、<1>に記載のベシクル。
<3>前記セラミド及び/又はその誘導体は、セラミド・タイプII又はセラミド・タイプIIIであることを特徴とする、<1>又は<2>に記載のベシクル。
<4>前記グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルから選択される1種乃至は2種以上は、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンモノイソステアレート、デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンモノイソステアレート、デカグリセリンペンタオレート及びデカグリセリンペンタイソステアレートから選択される1種乃至は2種以上である、<1>〜<3>何れか1項に記載のベシクル。
<5>前記ウルソール酸の誘導体が、ウルソール酸の炭素数1〜20の炭化水素エステル又はウルソール酸のリン酸エステルであることを特徴とする、<1>〜<4>何れか1項に記載のベシクル。
<
6><1>〜<5>何れか1項に記載のベシクルを含有する形態で、1)α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジン及び/又はその塩と、2)セ
ラミド及び/又はその類縁体
から選択される1種乃至は2種以上と、3)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルから選択される1種乃至は2種以上と、4)ウルソール酸、ウルソール酸誘導体及びこれらの塩から選択される1種乃至は2種以上とを含有することを特徴とす
る皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ウルソール酸乃至はその誘導体を含有する皮膚外用剤に於いて、製剤配合性と汎用性とを向上せしめる技術を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)本発明のベシクルの必須成分であるα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジン
本発明の皮膚外用剤は、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンを必須成分として含有する。かかる成分はフリー体を含有することもできるし、塩の形で含有することもできる。これらの塩としては、皮膚外用剤で使用されるものであれば、特段の限定無く使用でき、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノエタノールアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。アシル基は炭素数10〜30のものであることを特徴とする。この様なアシル基としては、直鎖であっても、分岐構造を有していても、環状構造を有していても良く、飽和脂肪族であっても、不飽和脂肪族であっても良い。アシル基の具体例としては、例えば、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、イソステアロイル基、オレオイル基、リノロイル基等が例示でき、これらの中ではラウロイル基が特に好ましい。又、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンは2つのアシル基を有することになるが、かかる2つのアシル基としては、同じであっても、異なっていても良い。α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンは例えば、次のような手順で製造することができる。即ち、グルタミン酸をトリエチルアミンなどのアルカリの存在下、アシルクロリドと反応させてN−アシルグルタミン酸を得る。しかる後に、モル比2:1でリジンと、DCC等のペプチド合成試薬の存在下縮合させることにより、製造することができる。斯くして得られた反応生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどで精製することができる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの溶出溶媒としては、クロロホルム−メタノール混液系が好ましく例示できる。かかるα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンの構造を式1に示す。又、かかる成分の塩としては、皮膚外用剤で使用されるものであれば、特段の限定無く使用でき、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノエタノールアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。
【0009】
【化1】
式1(但し、式中R
1、R
2はそれぞれ独立に炭素数10〜30のアシル基を表す。)
【0010】
前記のような方法によってα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンを製造し用いることもできるが、ジα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンには既に市販されているものが存し、かかる市販品を購入し利用することもできる。この様な市販品としては、「ペリセアL−30」(旭化成株式会社製;α,ε−ビス(γ−N−ラウロイルグルタミル)リジン)が好適に例示できる。斯くして得られたα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンは、二分子膜を形成しやすい特性を有し、この作用により、後記の他の必須成分とともに安定性に優れるベシクルを形成する。かかるベシクルは表皮の細胞の膜構造と近似した物性を有するため、皮膚透過性に優れる。加えて脂質二重膜間に有効成分を保持する作用に優れる。これは該脂質二重膜自身に両親媒性が存するためである。又、この様な作用を発揮するためには、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンから選択される1種乃至は2種以上を総量で、ベシクル全量に対し、最低量で1質量%、より好ましくは5質量%、上限値として50質量%、より好ましくは10質量%含有することが好ましい。かかる成分が多すぎても、少なすぎても安定なベシクルが形成しない場合が存するためである。
【0011】
(2)本発明のベシクルの必須成分であるセラミド
本発明のベシクルは
、セラミドを必須成分として含有することを特徴とする。セラミドとしては、通常タイプ1〜タイプ7の7タイプが存することが知られており、それらのいずれもが利用できるが、その中では特にタイプ2が好ましく、N−ステアロイルジヒドロキシスフィンゴシンが特に好ましい。この様なセラミドには市販品が存し、かかる市販品を購入し、利用することが出来る。この様な市販品のうち、
好ましいものとしては、タイプ1である、N-(27-オクタデカノイルオキシ-ヘプタコサノイル-)-フィトスフィンゴシンを成分とする、「Ceramide I」(コスモファーム社製)、タイプ2であるN−ステアロイ
ルジヒドロキシスフィンゴシンを成分とする、「セラミドTIC−001」(高砂香料工業株式会社製)、タイプ3であるN-ステアロイルフィトスフィンゴシンを成分とする「Ceramide III」(コスモファーム社製)、タイプ3であるN-リノレオイルフィトスフィンゴシンを成分とする「Ceramide IIIA」(コスモファーム社製)、タイプ3であるN-オレオイルフィトスフィンゴシンを成分とする「Ceramide IIIB」(コスモファーム社製)、タイプ6であるN-2-ヒドロキシステアロイルフィトスフィンゴシンを成分とする、「Ceramide VI」(コスモファーム社製)等が好ましく例示できる。これらは唯一種を含有することも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る
。本発明のベシクルでは、かかる成分は前記α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンのつくるベシクル構造を強化する作用を有する。かかる効果を奏するためには、ベシクル全量に対し、最低量で1質量%、より好ましくは5質量%、上限値として50質量%、より好ましくは10質量%含有することが好ましい。かかる成分が多すぎても、前記効果を奏さない場合が存する。
【0012】
【化2】
セラミドタイプ1
(R
1アルキル基乃至はアルケニル基を表し、R
2はリノレオイルオキシアルキル基を表す。)
セラミドタイプ2
(R
1、R
2はそれぞれ独立に、アルキル基乃至はアルケニル基を表す。)
【0013】
【化3】
セラミドタイプ3
(R
1、R
2はそれぞれ独立に、アルキル基を表す。)
【0014】
【化4】
セラミドタイプ4
(R
1アルキル基を表し、R
2はリノレオイルオキシアルキル基を表す。)
【0015】
【化5】
セラミドタイプ5
(R
1、R
2はそれぞれ独立にアルキル基を表す。)
【0016】
【化6】
セラミドタイプ6
(R
1、R
2はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R
3は水素原子乃至はアルキル基を表す。)
【0017】
【化7】
セラミドタイプ7
(R
1、R
2はそれぞれ独立にアルキル基を表す。)
【0018】
本発明のベシクルにおいては、前記セラミド以外に、セラミドと近似の構造を有する成分も、セラミドの誘導体として含有することが出来る。かかるセラミド誘導体としては、例えば、スフィンゴシン、スフィンゴミエリン、スフィンゴシルホスホリルコリンや特開昭62−228048号、特開昭63−216812号、特開昭63−227513号、特開昭64−29347号、特開昭64−31752号、特開平8−319263号などに記載のセラミド類似構造物質等が好適に例示できる。前記セラミド類似構造物質としては、具体的には、次に示す式2に表される成分や式3に表される成分が好ましく例示できる。
【0019】
【化8】
式2
(但し、式中R
1は炭素数10〜26の炭化水素基を表し、R
2は炭素数9〜25の炭化水素基を表し、Xは−(CH
2)n−で表される基において、nが2〜6のものを表す。)
【0020】
【化9】
式3
(式中、R
1’及びR
2’は同一又は異なって炭素数1〜40のヒドロキシル化されていてもよい炭化水素基を示し、R
3は炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基又は単結合を示し、R
4は水素原子、炭素数1〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基又は2,3−ジヒドロキシプロピルオキシ基を示す。ただし、R
3が単結合のときはR
4は水素原子である。)
【0021】
この様な式2或いは式3に表される成分は前記特許文献の内容に従って製造することが出来る。
【0022】
(3)本発明のベシクルの必須成分であるポリグリセリンの脂肪酸エステル乃至はピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステル
本発明のベシクルは、必須成分として、ポリグリセリンの脂肪酸エステル乃至はピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルを含有する。前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリンにおけるグリセリンの重合度は2〜20が好ましく、2〜10がより好ましい。又、脂肪酸残基としては、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、ベヘン酸残基、イソステアリン酸残基、オレイン酸残基、リノール酸残基、リノレイン酸残基などが好適に例示でき、オレイン酸残基、ステアリン酸残基乃至はイソステアリン酸残基が特に好ましい。かかるポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、一分子あたりの脂肪酸残基の数は、遊離の水酸基の数より多い形態が好ましく、具体例を挙げれば、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、ジグリセリンモノラウリン酸エステル、ジグリセリンモノステアリン酸エステル、ジグリセリンモノイソステアリン酸エステル、トリグリセリンジラウリン酸エステル、トリグリセリンジステアリン酸エステル、トリグリセリンジオレイン酸エステル、トリグリセリンジイソステアリン酸エステル、ペンタグリセリントリラウリン酸エステル、ペンタグリセリントリステアリン酸エステル、ペンタグリセリントリオレイン酸エステル、ペンタグリセリントリイソステアリン酸エステル、ヘプタグリセリンテトララウリン酸エステル、ヘプタグリセリンテトラステアリン酸エステル、ヘプタグリセリンテトラオレイン酸エステル、ヘプタグリセリンテトライソステアリン酸エステル、デカグリセリンペンタラウリン酸エステル、デカグリセリンペンタステアリン酸エステル、デカグリセリンペンタオレイン酸エステル、デカグリセリンペンタイソステアリン酸エステル等が取り分け好適に例示できる。勿論、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノイソステアリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル等の水酸基の数が多いものも効果を奏するので使用可能である。同様の効果を奏する成分としては、例えば、ピログルタミン酸グリセリンステアリン酸エステル、ピログルタミン酸グリセリンオレイン酸エステル等のピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。かかる成分も本発明のベシクルでは使用可能である。
【0023】
本発明では、セラミド類、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンは、前記ポリグリセリンの脂肪酸エステル乃至はピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルの存在下、初めて安定なベシクルを形成する。この様な安定なベシクルを形成するためには、ポリグリセリンの脂肪酸エステル乃至はピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルは総量で、ベシクル全量に対して5〜30質量%含有することが好ましく、10〜25質量%含有することがより好ましい。又、かかるポリグリセリンの脂肪酸エステル乃至はピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルの質量の総和と前記α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンの質量の総和の比は、5:1〜1:1が好ましく、4:1〜2:1がより好ましい。この2者の相互作用により、脂質二重相の配向が整えられる。この様に整えられた二重膜においては、かかる二重膜間に有効成分を保持することが出来る。かかる有効成分としては、次に示す、ウルソール酸、ウルソール酸の誘導体及びこれらの塩から選択されるものが好適に例示できる。勿論、ウルソール酸やその誘導体以外の、化粧料等の皮膚外用剤で使用される、有効成分を、ウルソール酸類に加えて含有することも出来る。
【0024】
(4)本発明のベシクルの必須成分であるウルソール酸類
本発明のベシクルは、ウルソール酸、ウルソール酸誘導体及びこれらの塩から選択される1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする。前記ウルソール酸の誘導体としては、例えば、ウルソール酸の炭素数1〜20の炭化水素
基エステル又はウルソール酸のリン酸エステル等が好適に例示できる。前記炭素数1〜20の炭化水素
基エステルとしては、
メチルエステル、エチルエステル、ヘキシルエステル、シクロヘキシルエステル、オクチルエステル、イソオクチルエステル、ラウリルエステル、セチルエステル、ステアリルエステル、イソステアリルエステル、オレイルエステル等の脂肪族エステル、ベンジルエステル、フェネチルエステル等の芳香環を有する炭化水素基エステル等が好適に例示できる。かかる成分は常法に従って、ウルソール酸より誘導できる。炭化水素
基エステルであれば、ウルソール酸を水素化ナトリウムなどでナトリウム塩と為し、これにアルコールに塩化チオニルなどを作用させて得られる、ハロゲン化炭化水素を加えて反応させればよい。反応は室温乃至は還流条件で、1〜12時間行えばよい。リン酸エステルはジメチル−N,N−ジエチルホスホロアミデートをウルソール酸に反応させ、ウルソール酸メチルホスフェートと為し、これをブロモトリメチルシランなどで脱メチル化反応させれば得られる。この様な成分は、アルカリと反応させて塩を形成せしめ、塩の形で含有することも出来る。これらの塩としては、皮膚外用剤で使用されるものであれば、特段の限定無く使用でき、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノエタノールアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。かかる成分は、ベシクル中に0.1〜30質量%含有されることが好ましく、より好ましくは、1〜10質量%である。
【0025】
(5)本発明のベシクル
本発明のベシクルは前記必須成分を含有することを特徴とする。本発明のベシクルは前記の成分以外にも、皮膚に対して好ましい作用を奏する有効成分をウルソール酸類とともに含有することが出来る。前記有効成分の具体的な例示としては、例えば、キンポゲ科オウレン属植物の抽出物、ミカン科ダイダイ属植物の抽出物、紅藻類の抽出物、ドクダミ科ドクダミ属の植物の抽出物、シソ科ローズマリーの抽出物、カバノキ科シラカバの抽出物、セイヨウノコギリソウ等のキク科ノコギリソウ属の植物の抽出物、フトトモ科チョウジ属の植物の抽出物、セイヨウオトギリソウなどのオトギリソウ科オトギリソウ属の植物の抽出物、セリ科ツボクサ属の植物の抽出物、クルミ科コウキの抽出物、ユリ科ジャノヒゲ属の植物の抽出物、大豆蛋白加水分解物、絹蛋白加水分解物、海洋性コラーゲン加水分解物等の天然蛋白加水分解物乃至はそのアシル化物、オレアノール酸乃至はその誘導体、ベツリン、ベツリン酸乃至はその誘導体、パンテティンスルホン酸乃至はその誘導体、グリチルレチン酸乃至はその誘導体、ハイドロキノン乃至はその配糖体、エスクリン、エスクレチン、グラブリジン、メトキシサリチル酸、トラネキサム酸乃至はその誘導体、アスコルビン酸乃至はその誘導体、L−カルニチン等が挙げられる。かかる有効成分は、例えば、キンポゲ科オウレン属植物の抽出物、ミカン科ダイダイ属植物の抽出物、紅藻類の抽出物、ドクダミ科ドクダミ属の植物の抽出物であれば、表皮のカルシウムイオン濃度勾配を調整し、皮膚バリア機能を強化する作用が存する。ローズマリー抽出物であれば、エラスチン分解抑制作用が存することが知られている。シラカバの抽出物であれば、メイラード反応抑制作用、不均一性改善作用などが存することが知られている。ノコギリソウ、ジャノヒゲの抽出物にはメラノサイトのデンドライト伸長抑制作用が知られている。チョウジの抽出物或いはオイゲノール、オレアノール酸、ベツリン酸、ベツリンなどのトリテルペン類であれば、真皮コラーゲン線維束再構築作用が存することが知られている。蛋白加水分解物であれば、エラスターゼ阻害作用が存することが知られている。パンテティンスルホン酸乃至はその誘導体、グリチルレチン酸乃至はその誘導体には炎症因子を抑制する作用が知られている。ハイドロキノン乃至はその配糖体、エスクリン、エスクレチン、グラブリジン、メトキシサリチル酸、トラネキサム酸乃至はその誘導体、アスコルビン酸乃至はその誘導体であれば、活性酸素を消去し、真皮内に酸化ストレスが負荷されるのを抑制する作用を存することが知られている。本発明のベシクルにおけるこれらの有効成分の含有量は、それぞれ前記作用が発現する充分量であれば良く、例えば、それぞれが、ベシクル全量に対して0.1〜30質量%が好ましく例示でき、1〜10質量%がより好ましい。
【0026】
本発明のベシクルには、前記必須成分、好ましい成分以外に、通常ベシクルや皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、イソプレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、コレステロール、カンペステロール、シトステロール、スチグマスタノールなどの環状アルコール、レシチン、水添レシチン、水酸化レシチン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルグリセロールなどのリン脂質、オレイン酸、カプリン酸、カプリル酸、ステアリン酸などの脂肪酸、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコール、メチルパラベン、エチルパラベン、等が好ましく例示できる。これらの内、特に含有することが好ましいものとしては、環状アルコール、特に、カンペステロール、シトステロール、スチグマスタノールなどの植物ステロール(フィトステロール)、多価アルコール、分けても、グリセリンが例示できる。フィトステロールの含有量は、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンに対して、2:1〜1:2であることが好ましく、前記必須成分である多価アルコールは、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンの含有量の5〜15倍であることが好ましい。本発明のベシクルは、かかる必須成分、好ましい成分、任意成分を常法に従って操作することにより、ベシクル分散組成物として製造することが出来る。
【0027】
(6)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、前記ベシクルを含有することを特徴とする。かかるベシクルを含有することにより、有効成分を真皮に送達し、又、ベシクルの構成要素であるα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンが真皮に働き、真皮の性状を改善することが出来る。この様な効果を奏するためにはベシクルは皮膚外用剤全量に対して、0.1〜10質量%含有することが好ましく、より好ましくは、0.5〜5質量%である。これは少なすぎるとα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンを含めた有効成分が効果発現に充分な送達量に達しない場合が存し、多すぎても効果が頭打ちになり、処方の自由度を損なう場合が存するからである。
【0028】
本発明の皮膚外用剤としては、通常皮膚に外用で投与されるものであれば特段の限定無く適用することが出来、医薬部外品を包含する化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨等が好ましく例示できる。これらの中で特に好ましいものは、化粧料である。これは化粧料に於いては、真皮到達性が望まれて、且つ、該真皮到達が為されにくい有効成分が多いためである。かかる化粧料としては、例えば、化粧水などのローション、乳液、エッセンス、クリーム、パック化粧料、洗顔化粧料、クレンジング化粧料等が好ましく例示できる。更にその剤形としては、化粧料の領域で知られているものであれば特段の限定はなく、ローション製剤、水中油乳化製剤、油中水乳化製剤、複合エマルション乳化製剤等に好ましく適用できる。
【0029】
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボカド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性
剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類
、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類
、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類
、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類
、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類
、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤
、アントラニル酸系紫外線吸収剤
、サリチル酸系紫外線吸収剤
、桂皮酸系紫外線吸収剤
、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤
、糖系紫外線吸収剤
、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類
、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類
、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB
6塩酸塩、ビタミンB
6トリパルミテート、ビタミンB
6ジオクタノエート、ビタミンB
2又はその誘導体、ビタミンB
12、ビタミンB
15又はその誘導体等のビタミンB類
、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等
、フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0030】
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分と任意成分とを常法に従って処理することにより製造することが出来る。
【0031】
以下に、実施例を挙げて、本発明について、更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0032】
以下に示す処方に従って、本発明のベシクルの分散液1を作成した。即ち、イ、ロの成分をそれぞれ70℃に加熱し、一様に溶解せしめ、攪拌下イに徐々にロを加え、ベシクル分散液を得た。このものを一部取りだし、秤量した後、遠心分離し、上清を捨て、水で2回同様に洗浄し、水分を乾燥により除去し、秤量し、ベシクル分散液におけるベシクルの含有質量を算出したところ、9.3質量%であった。又、同様の手順で、「ペリセアL−30」をレシチンに置換した比較例1、「セラミドTIC−001」を「ペリセアL−30」に置換した比較例2、ジグリセリンモノオレートをポリオキシエチレン(2)オレイン酸エステルに置換した比較例3も同様に処置した。偏光顕微鏡での観察結果では、比較例1、比較例2、比較例3は何れも偏光の存在は認められず、ベシクル分散系を形成しないことがわかった。
【0033】
【表1】
【実施例2】
【0034】
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である、化粧料を製造した。即ち、下記に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である乳液を作製した。即ち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分を80℃に加熱した。(A)の混合物に(B)の混合物を加えて撹拌して乳化させ、更に(C)を加えて中和し、その後35℃にまで撹拌、冷却し、乳液1を作製した。同様に操作して、ベシクル分散液1を比較例1に換えた比較例4、比較例2に換えた比較例5、比較例3に換えた比較例6、及びベシクルとしてではなく乳液1と同じ成分を含有する皮膚外用剤である乳液2(表3)も作成した。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
<試験例1>
乳液1、乳液2、比較例4、比較例5及び比較例6を−10℃〜40℃のエージングボックス(−10℃で24時間保持→24時間かけて40℃に昇温→40℃で24時間保持→24時間かけて−10℃に降温を1サイクルとする温度変動保存庫)に6ヶ月保存し、20℃に戻して、不溶物の析出を調べた。不溶物の析出は検体20mgをスライドグラスに取り、これにもう一枚スライドグラスを重ねて、スライドグラス全体に検体が広がるように圧迫し、透明塊乃至は不透明塊として認識できるものの数を計数した。1検体あたり、5枚のサンプルを作成し、この平均を取った。結果を表4に示す。これより、本発明のベシクルを含有する形態のものが析出抑制効果に優れることが分かった。
【0038】
【表4】
【0039】
<試験例2>
乳液1、乳液2、比較例4、比較例5及び比較例6を検体として、予め、1%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を24時間閉塞貼付して、経表皮水分損失(TEWL)を亢進させ
、ここに検体を6時間閉塞貼附し、絆創膏除去後30分おいて、「テヴァメータ」(インテグラル社製)を用いて、TEWLを計測した。尚、コントロールは水を貼附した。結果を表5に示す。これより、ベシクル分散系にすることにより
、よりすぐれたTEWL抑制効果が認められることが分かる。又、ベシクルを形成していなくても、「ペリセアL−30」、「セラミドTIC−001」、「ジグリセリンモノオレート」を含有する系ではこれらの成分により、ウルソール酸の真皮到達性が向上し、TEWLが改善することも分かった。又、「ペリセアL−30」自身にもTEWLを抑制する作用があることが確認された。
【0040】
【表5】
【実施例3】
【0041】
実施例1と同様に下記の処方に従って、本発明のベシクル分散液2を作成し、これを含有する乳液3を製造した。ベシクル分散液2は偏光顕微鏡観察で脂質二重膜の存在を認めた。乳液3は試験例1の評価でも析出物は認めず、試験例2の評価では、コントロールのTEWL34に対して、TEWLが13であった。
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【実施例4】
【0044】
<参考例>
ウルソール酸(48.1g、0.105mol)、ジメチル−N,N−ジエチルホスホロアミデート(Dimethyl N,N−diethylphosphoramidate;34.82g、0.211mol)、乾燥テトラヒドロフラン(1250ml)の混合物を35℃に加温して澄明溶液としたのち、内温27℃で1−H テトラゾール(44.25g、0.632mol)を一度に加え、室温(22℃)で1時間かき混ぜた。ジメチルホスファイトの生成をTLCで確認後、反応液をアセトン・ドライアイスで冷却、−20℃で70% t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液(84mL、0.607mol)を滴下した。冷浴を除き徐々に室温に戻し、TLCでジメチルホスファイトの消失とジメチルホスフェートの生成を確認したのち、0℃で10% 亜硫酸水素ナトリウム水溶液(300ml)で反応を停止した。反応液に酢酸エチル(1250mL)を加え有機層を分離した。有機層を10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(100ml×3)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(200ml×3)、飽和食塩水で順次洗浄したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層にシリカゲル(400mL)を加え、減圧下に濃縮乾固した。シリカゲル(400mL)を
ヘキサンで充填し、前記の吸着シリカゲルをヘキサンでcharge後、ヘキサン/酢酸エチル(2:1)で展開した。単一組成の画分を濃縮して標記化合物の35gをゲル状粉末として得た。このものは、NMRで酢酸エチルと洗いこみに用いたジクロロメタンの吸収が認められた。またわずかに不純物を含む画分として6gを得た。この様に合成した、ウルソール酸−3−メチルホスフェート(Ursolic acid 3−methylphospate;35g 62mmol)を乾燥ジクロロメタン(350ml)に溶解し、アルゴン気流下、ブロモトリメチルシラン(25mL、186mmol)を加え、室温で1時間反応させた。TLC確認後減圧下に濃縮し、残留部を再度乾燥したトルエンに溶解濃縮(200ml×2)して、過剰のブロモトリメチルシランを完全に除去した。濃縮物の95%メタノール(300mL)を加えて溶解し、室温で1時間かき混ぜると結晶が析出した。そのまま減圧下に濃縮した後、無水リン酸上50℃で、一夜減圧乾燥に付し、ウルソール酸リン酸エステルの23.5gを得た。
1H−NMR(ppm):5.23(m、1H)、3.87(m、1H)、2.20(d、1H)、2.05〜1.25(m、25H)、1.12(s、3H)、1.02(s、3H)、0.99(s、3H)、0.97(d、3H)、0.87(d、3H)、0.85(s、3H)
Mass:535(M
+)
IR(cm
-1):2948、1694、1456、1378、1028、661、566
【0045】
実施例1と同様に下記の処方に従って、本発明のベシクル分散液3を作成し、これを含有する乳液4を製造した。ベシクル分散液3は偏光顕微鏡観察で脂質二重膜の存在を認めた。乳液4は試験例1の評価でも析出物は認めず、試験例2の評価では、コントロールのTEWL34に対して、TEWLが14であった。
【0046】
【表8】
【0047】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、化粧料などの皮膚外用剤に応用できる。