特許第5657369号(P5657369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5657369
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/04 20060101AFI20141225BHJP
【FI】
   B60Q1/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-278757(P2010-278757)
(22)【出願日】2010年12月15日
(65)【公開番号】特開2012-126226(P2012-126226A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】大束 英雄
【審査官】 柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−218211(JP,A)
【文献】 特開2010−153402(JP,A)
【文献】 特開2008−100612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が平面状に配列された光源アレイと、
前記光源アレイから出射された光を車両前方に投影する投影レンズと、
を備え、前記複数の発光素子が個別の領域を照明してなる配光パターンを車両前方に形成する車両用前照灯において、
前記複数の発光素子は、
遠方を照明するものほど小さい発光面積となるように配列されており、
前記配光パターン中の消失点に対応する前記光源アレイの中心点から放射状に延びる複数の放射分割線と、前記中心点を通る鉛直線に平行であって当該鉛直線から離れるほど間隔が長くなる複数の鉛直分割線と、に沿って配列されていることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
複数の発光素子が平面状に配列された光源アレイと、
前記光源アレイから出射された光を車両前方に投影する投影レンズと、
を備え、前記複数の発光素子が個別の領域を照明してなる配光パターンを車両前方に形成する車両用前照灯において、
前記複数の発光素子は、
遠方を照明するものほど小さい発光面積となるように配列されており、
前記配光パターン中の消失点に対応する前記光源アレイの中心点を通る水平線に平行であって均等間隔の複数の水平分割線と、前記中心点を通る鉛直線に平行であって当該鉛直線から離れるほど間隔が長くなる複数の鉛直分割線と、に沿って配列されていることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項3】
複数の発光素子が平面状に配列された光源アレイと、
前記光源アレイから出射された光を車両前方に投影する投影レンズと、
を備え、前記複数の発光素子が個別の領域を照明してなる配光パターンを車両前方に形成する車両用前照灯において、
前記複数の発光素子は、
遠方を照明するものほど小さい発光面積となるように配列されており、
前記配光パターンのうちの下側を照明する前記光源アレイの一方の半部では、前記配光パターン中の消失点に対応する前記光源アレイの中心点から放射状に延びる複数の放射分割線と、前記中心点を通る鉛直線に平行であって当該鉛直線から離れるほど間隔が長くなる複数の鉛直分割線と、に沿って配列され、
前記配光パターンのうちの上側を照明する前記光源アレイの他方の半部では、前記中心点を通る水平線に平行であって均等間隔の複数の水平分割線と、前記複数の鉛直分割線と、に沿って配列されていることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項4】
前記投影レンズは、近方へ光を出射する左右両側の部分ほど当該光を左右方向の外側へ大きく屈折させるように、左右方向に沿って異なる屈折率で前記光源アレイから出射された光を投影することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ヘッドライトなどの車両用前照灯として、例えば特許文献1,2に記載のように、複数の発光素子が配列された光源を有するものが知られている。この種の車両用前照灯では、同じ発光面積の複数の発光素子が縦横の各方向に沿ってマトリクス状に配列されており、各発光素子が配光パターン中の個別の領域を照明するように構成されている。
【0003】
ところが、このような車両用前照灯では、同じ発光面積の複数の発光素子をマトリクス状に配列させているために、車道に沿って前方に延びる領域を適切に照明することができない。
具体的には、例えば、配光パターンとしてロービームを形成しているときに、車道に沿った車両左側の車道外側線や車両右側の車道中央線を強調して照明したいといった場合、図12に示すように、複数の発光素子100,…のうち、ロービームを形成するための発光素子100aを発光させつつ、そのなかの車道外側線や車道中央線を照らす発光素子100bをより強く発光させることとなる。しかし、この発光態様では、車道外側線や車道中央線を照らす発光素子100bが、その照射領域の車両からの距離に依らず同一の発光面積であり、且つ遠方に向かって配列されていないために、図13に示すように、全体として段付き状に照明されてしまい、車道外側線や車道中央線に沿って滑らかに前方を照明することができない。
【0004】
この点、例えば特許文献3に記載の技術では、紫外線を受けて発光する蛍光体を車道外側線や車道中央線等に混入し、車両に搭載した紫外線出力装置から紫外線を照射することによって、車道外側線や車道中央線等の視認性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−40528号公報
【特許文献2】特開2009−224191号公報
【特許文献3】特開2000−27128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3に記載の技術では、車両用前照灯だけでは上記問題を解決できず、車道外側線や車道中央線等に蛍光体を混入させるというインフラ側の整備が必要となるため、実現に伴う困難性が極めて大きい。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、車道に沿って前方に延びる領域を適切に照明することのできる車両用前照灯の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
複数の発光素子が平面状に配列された光源アレイと、
前記光源アレイから出射された光を車両前方に投影する投影レンズと、
を備え、前記複数の発光素子が個別の領域を照明してなる配光パターンを車両前方に形成する車両用前照灯において、
前記複数の発光素子は、
遠方を照明するものほど小さい発光面積となるように配列されており、
前記配光パターン中の消失点に対応する前記光源アレイの中心点から放射状に延びる複数の放射分割線と、前記中心点を通る鉛直線に平行であって当該鉛直線から離れるほど間隔が長くなる複数の鉛直分割線と、に沿って配列されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は
複数の発光素子が平面状に配列された光源アレイと、
前記光源アレイから出射された光を車両前方に投影する投影レンズと、
を備え、前記複数の発光素子が個別の領域を照明してなる配光パターンを車両前方に形成する車両用前照灯において、
前記複数の発光素子は、
遠方を照明するものほど小さい発光面積となるように配列されており、
前記配光パターン中の消失点に対応する前記光源アレイの中心点を通る水平線に平行であって均等間隔の複数の水平分割線と、前記中心点を通る鉛直線に平行であって当該鉛直線から離れるほど間隔が長くなる複数の鉛直分割線と、に沿って配列されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は
複数の発光素子が平面状に配列された光源アレイと、
前記光源アレイから出射された光を車両前方に投影する投影レンズと、
を備え、前記複数の発光素子が個別の領域を照明してなる配光パターンを車両前方に形成する車両用前照灯において、
前記複数の発光素子は、
遠方を照明するものほど小さい発光面積となるように配列されており、
前記配光パターンのうちの下側を照明する前記光源アレイの一方の半部では、前記配光パターン中の消失点に対応する前記光源アレイの中心点から放射状に延びる複数の放射分割線と、前記中心点を通る鉛直線に平行であって当該鉛直線から離れるほど間隔が長くなる複数の鉛直分割線と、に沿って配列され、
前記配光パターンのうちの上側を照明する前記光源アレイの他方の半部では、前記中心点を通る水平線に平行であって均等間隔の複数の水平分割線と、前記複数の鉛直分割線と、に沿って配列されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用前照灯において、
前記投影レンズは、近方へ光を出射する左右両側の部分ほど当該光を左右方向の外側へ大きく屈折させるように、左右方向に沿って異なる屈折率で前記光源アレイから出射された光を投影することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の発光素子が遠方を照明するものほど小さい発光面積となるように配列されているか、或いは、投影レンズが近方へ光を出射する左右両側の部分ほど当該光を左右方向の外側へ大きく屈折させるように左右方向に沿って異なる屈折率で光を投影するので、同じ発光面積の複数の発光素子がマトリクス状に配列されていた従来の車両用前照灯と異なり、照明範囲が小さくなる遠方を照らす発光素子が小さく発光するとともに、照明範囲が大きくなる近方を照らす発光素子が大きく発光する。したがって、車両からの距離に対応した照明範囲となるよう各発光素子を発光させることができ、車道に沿って前方に延びる領域を適切に照明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態における車両用前照灯の側面図である。
図2】第1の実施形態における光源アレイの正面図である。
図3】第1の実施形態における発光素子の発光状態を説明するための図である。
図4】第1の実施形態における車両用前照灯によって車道外側線や車道中央線が照明された状態を示す図である。
図5】第1の実施形態の変形例における光源アレイの正面図である。
図6】第2の実施形態における光源アレイの正面図である。
図7】第2の実施形態における発光素子の発光状態を説明するための図である。
図8】第2の実施形態の変形例における光源アレイの正面図である。
図9】第3の実施形態における光源アレイの正面図である。
図10】第3の実施形態における発光素子の発光状態を説明するための図である。
図11】第3の実施形態の変形例における光源アレイの正面図である。
図12】従来の車両用前照灯での発光素子の発光状態を説明するための図である。
図13】従来の車両用前照灯によって車道外側線や車道中央線が照明された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態における車両用前照灯10の側面図であり、図2は、車両用前照灯10が備える光源アレイ2の正面図である。
図1に示すように、車両用前照灯10は、光源アレイ2と、投影レンズ3とを備えている。
【0017】
このうち、光源アレイ2は、基板4に後面を支持された状態で、前後方向に直交するように立設されている。この光源アレイ2の前面には、図2に示すように、複数の発光素子21,…が平面状に配列されている。発光素子21,…は、光源アレイ2前面の中心点Oから上下左右に放射状に延びる複数の放射状分割線2a,…と、中心点Oを通る上下方向の鉛直線に平行であって当該鉛直線から離れるほど間隔が長くなる複数の鉛直分割線2b,…とで画成された複数の画成領域に配設されている。つまり、発光素子21,…は、放射状分割線2a,…及び鉛直分割線2b,…に沿って、遠方を照明する中央側のものほど小さい発光面積となるように配列されている。
【0018】
一方、投影レンズ3は、図1に示すように、その光軸Ax上に光源アレイ2の中心点Oが位置するように光源アレイ2の前方に配設されており、光源アレイ2(発光素子21,…)から出射された光を車両前方に反転投影する。この投影レンズ3により、発光素子21,…が個別の領域を照明してなる配光パターンが車両前方に形成される。
【0019】
次に、車両用前照灯10の発光態様について説明する。
図3は、車両用前照灯10がロービームを形成しつつ車道外側線や車道中央線を特に強く照明した場合における発光素子21,…の発光状態を説明するための図であり、図4は、車両用前照灯10によって車道外側線や車道中央線が照明された状態を示す図である。なお、図4では、ロービームによる照明領域のうち、車道外側線や車道中央線を除く領域の図示を省略している。
【0020】
車両用前照灯10では、例えば配光パターンとしてロービームを形成しているときに、図示しない撮像手段によって車両左側の車道外側線や車両右側の車道中央線が白線として検知されると、図3に示すように、ロービームを形成するために発光している発光素子21,…のうち、車道外側線や車道中央線を照明する発光素子21a,…が、車道外側線や車道中央線に沿って中心点Oから放射状に延びるように特に強く発光する。
すると、中心点Oに対応する配光パターン中の消失点に向かって、車両からの距離に応じた照明範囲で車道外側線や車道中央線が照明される結果、図4に示すように、車道外側線や車道中央線に沿った直線状の領域が特に強く照明される。こうして、車道外側線や車道中央線の視認性を向上させて、より安全性に優れた運転視界を得ることができる。
【0021】
以上の車両用前照灯10によれば、発光素子21,…が遠方を照明するものほど小さい発光面積となるように配列されているので、同じ発光面積の複数の発光素子がマトリクス状に配列されていた従来の車両用前照灯と異なり、照明範囲が小さくなる遠方を照らす発光素子21が小さく発光するとともに、照明範囲が大きくなる近方を照らす発光素子21が大きく発光する。したがって、車両からの距離に対応した照明範囲となるよう各発光素子21を発光させることができ、車道に沿って前方に延びる領域を適切に照明することができる。すなわち、従来の車両用前照灯に比べて発光素子数を増やすことなく、車両からの距離に対応させた適切な照明を実現することができる。
【0022】
また、発光素子21,…が放射状分割線2a,…に沿って放射状に配列されているので、前後方向(遠近方向)に沿って照明範囲を変えることなく、車道に沿って前方に延びる領域をより適切に照明することができる。
【0023】
また、発光素子21,…が鉛直分割線2b,…に沿って配列されているので、地面から垂直に立っている建築物や人,街路灯といったほぼ全ての照明対象物を適切に照明することができる。
【0024】
[第1実施形態の変形例]
続いて、上記第1の実施形態の変形例について説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図1に示すように、本変形例における車両用前照灯10Aは、上記第1の実施形態における光源アレイ2及び投影レンズ3に代えて、光源アレイ2A及び投影レンズ3Aを備えている。
【0025】
図5は、光源アレイ2Aの正面図である。
この図に示すように、光源アレイ2Aの前面には、複数の発光素子21A,…が平面状に配列されている。発光素子21A,…は、光源アレイ2A前面の中心点Oから上下左右に放射状に延びる複数の放射状分割線2a,…と、中心点Oを通る上下方向の鉛直線に平行であって均等間隔の複数の鉛直分割線2c,…とで画成された複数の画成領域に配設されている。つまり、発光素子21A,…は、放射状分割線2a,…及び鉛直分割線2c,…に沿って配列されている。
【0026】
投影レンズ3Aは、その光軸Ax上に光源アレイ2Aの中心点Oが位置するように光源アレイ2Aの前方に配設されており、光源アレイ2A(発光素子21A,…)から出射された光を車両前方に反転投影する。また、投影レンズ3Aは、近方へ光を出射する左右両側の部分ほど当該光を左右方向の外側へ大きく屈折させ、遠方へ光を出射する中央側の部分ほど当該光を左右方向へ小さく屈折させるように、左右方向に沿って異なる屈折率で光を投影する。この投影レンズ3Aにより、発光素子21A,…が個別の領域を照明してなる配光パターンが車両前方に形成される。
【0027】
以上の構成を具備する車両用前照灯10Aでは、放射状分割線2a,…及び鉛直分割線2c,…に沿って配列された発光素子21A,…からの光が、近方へ光を出射する左右両側の部分ほど当該光を左右方向の外側へ大きく屈折させる投影レンズ3Aを通じて車両前方に投影される。そのため、上記第1の実施形態における車両用前照灯10と同様に、車両からの距離に応じた照明範囲で車道外側線や車道中央線を照明することができ、図4に示すように、車道外側線や車道中央線に沿った直線状の領域を特に強く照明することができる。
【0028】
以上の車両用前照灯10Aによれば、上記第1の実施形態における車両用前照灯10と同様の効果を奏することができる。
【0029】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図1に示すように、第2の実施形態における車両用前照灯11は、上記第1の実施形態の車両用前照灯10における光源アレイ2に代えて、光源アレイ5を備えている。
【0030】
図6は、光源アレイ5の正面図である。
この図に示すように、光源アレイ5の前面には、複数の発光素子51,…が平面状に配列されている。発光素子51,…は、光源アレイ5前面の中心点Oを通る左右方向の水平線に平行であって均等間隔の複数の水平分割線5a,…と、中心点Oを通る上下方向の鉛直線に平行であって当該鉛直線から離れるほど間隔が長くなる複数の鉛直分割線5b,…とで画成された複数の画成領域に配設されている。つまり、発光素子51,…は、水平分割線5a,…及び鉛直分割線5b,…に沿って、遠方を照明する中央側のものほど小さい発光面積となるように配列されている。
【0031】
次に、車両用前照灯11の発光態様について説明する。
図7は、車両用前照灯11がロービームを形成しつつ車道外側線や車道中央線を特に強く照明した場合における発光素子51,…の発光状態を説明するための図である。
【0032】
車両用前照灯11では、例えば配光パターンとしてロービームを形成しているときに、図示しない撮像手段によって車両左側の車道外側線や車両右側の車道中央線が白線として検知されると、図7に示すように、ロービームを形成するために発光している発光素子51,…のうち、車道外側線や車道中央線を照明する発光素子51a,…が、車道外側線や車道中央線に沿って中心点Oから延びるように特に強く発光する。
すると、中心点Oに対応する配光パターン中の消失点に向かって、車両からの距離に応じた照明範囲で車道外側線や車道中央線が照明される結果、車道外側線や車道中央線に沿った略直線状の領域が特に強く照明される。こうして、車道外側線や車道中央線の視認性を向上させて、より安全性に優れた運転視界を得ることができる。
【0033】
以上の車両用前照灯11によれば、発光素子21,…が遠方を照明するものほど小さい発光面積となるように配列されているので、同じ発光面積の複数の発光素子がマトリクス状に配列されていた従来の車両用前照灯と異なり、照明範囲が小さくなる遠方を照らす発光素子51が小さく発光するとともに、照明範囲が大きくなる近方を照らす発光素子51が大きく発光する。したがって、車両からの距離に対応した照明範囲となるよう各発光素子51を発光させることができ、車道に沿って前方に延びる領域を適切に照明することができる。すなわち、従来の車両用前照灯に比べて発光素子数を増やすことなく、車両からの距離に対応させた適切な照明を実現することができる。
【0034】
また、発光素子51,…が水平分割線5a,…に沿って配列されているので、ロービーム上縁の自車線側(左側)のカットオフラインを水平に形成することができる。
【0035】
また、発光素子51,…が鉛直分割線5b,…に沿って配列されているので、地面から垂直に立っている建築物や人,街路灯といったほぼ全ての照明対象物を適切に照明することができる。
【0036】
[第2実施形態の変形例]
続いて、上記第2の実施形態の変形例について説明する。なお、上記第2の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図1に示すように、本変形例における車両用前照灯11Aは、上記第2の実施形態における光源アレイ5及び投影レンズ3に代えて、光源アレイ5A及び投影レンズ3Aを備えている。このうち、投影レンズ3Aは、上記第1の実施形態の変形例におけるものと同様のものである。
【0037】
図8は、光源アレイ5Aの正面図である。
この図に示すように、光源アレイ5Aの前面には、複数の発光素子51A,…が平面状に配列されている。発光素子51A,…は、光源アレイ5A前面の中心点Oを通る左右方向の水平線に平行であって均等間隔の複数の水平分割線5a,…と、中心点Oを通る上下方向の鉛直線に平行であって均等間隔の複数の鉛直分割線5c,…とで画成された複数の画成領域に配設されている。つまり、発光素子51A,…は、水平分割線5a,…及び鉛直分割線5c,…に沿ってマトリクス状に配列されている。
【0038】
以上の構成を具備する車両用前照灯11Aでは、水平分割線5a,…及び鉛直分割線5c,…に沿って配列された発光素子51A,…からの光が、近方へ光を出射する左右両側の部分ほど当該光を左右方向の外側へ大きく屈折させる投影レンズ3Aを通じて車両前方に投影される。そのため、上記第2の実施形態における車両用前照灯11と同様に、車両からの距離に応じた照明範囲で車道外側線や車道中央線を照明することができ、車道外側線や車道中央線に沿った略直線状の領域を特に強く照明することができる。
【0039】
以上の車両用前照灯11Aによれば、上記第2の実施形態における車両用前照灯11と同様の効果を奏することができる。
【0040】
[第3実施形態]
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図1に示すように、第3の実施形態における車両用前照灯12は、上記第1の実施形態の車両用前照灯10における光源アレイ2に代えて、光源アレイ6を備えている。
【0041】
図9は、光源アレイ6の正面図である。
この図に示すように、光源アレイ6の前面には、複数の発光素子61,…が平面状に配列されている。発光素子61,…は、光源アレイ6の上半部では上記第1の実施形態における発光素子21,…と同様に配列され、光源アレイ6の下半部では上記第2の実施形態における発光素子51,…と同様に配列されている。具体的には、光源アレイ6の上半部では、発光素子61,…は、光源アレイ6前面の中心点Oから上下左右に放射状に延びる複数の放射状分割線6a,…と、中心点Oを通る上下方向の鉛直線に平行であって当該鉛直線から離れるほど間隔が長くなる複数の鉛直分割線6b,…とで画成された複数の画成領域に配設されている。一方、光源アレイ6の下半部では、発光素子61,…は、中心点Oを通る左右方向の水平線に平行であって均等間隔の複数の水平分割線6c,…と、複数の鉛直分割線6b,…とで画成された複数の画成領域に配設されている。つまり、発光素子61,…は、光源アレイ6の上半部では放射状分割線6a,…及び鉛直分割線6b,…に沿って、光源アレイ6の下半部では水平分割線6c,…及び鉛直分割線6b,…に沿って、遠方を照明する中央側のものほど小さい発光面積となるように配列されている。
【0042】
次に、車両用前照灯12の発光態様について説明する。
図10は、車両用前照灯12がロービームを形成しつつ車道外側線や車道中央線を特に強く照明した場合における発光素子61,…の発光状態を説明するための図である。なお、図10は、投影レンズ3を通じて上下及び左右に反転された発光素子61,…の発光状態を示しており、つまり、光源アレイ6の上半部にある発光素子61,…が配光パターンの下側を照明し、光源アレイ6の下半部にある発光素子61,…が配光パターンの上側を照明している状態を示している。
【0043】
車両用前照灯12では、例えば配光パターンとしてロービームを形成しているときに、図示しない撮像手段によって車両左側の車道外側線や車両右側の車道中央線が白線として検知されると、図10に示すように、ロービームを形成するために発光している発光素子61,…のうち、車道外側線や車道中央線を照明する発光素子61a,…が、車道外側線や車道中央線に沿って中心点Oから放射状に延びるように特に強く発光する。
すると、中心点Oに対応する配光パターン中の消失点に向かって、車両からの距離に応じた照明範囲で車道外側線や車道中央線が照明される結果、図4に示すように、車道外側線や車道中央線に沿った直線状の領域が特に強く照明される。こうして、車道外側線や車道中央線の視認性を向上させて、より安全性に優れた運転視界を得ることができる。
【0044】
以上の車両用前照灯12によれば、上記第1の実施形態における車両用前照灯10と同様の効果を奏するのは勿論のこと、光源アレイ6の下半部において発光素子61,…が水平分割線6c,…に沿って配列されているので、上記第2の実施形態における車両用前照灯11と同様に、ロービーム上縁の自車線側(左側)のカットオフラインを水平に形成することができる。
【0045】
[第3実施形態の変形例]
続いて、上記第3の実施形態の変形例について説明する。なお、上記第3の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図1に示すように、本変形例における車両用前照灯12Aは、上記第3の実施形態における光源アレイ6及び投影レンズ3に代えて、光源アレイ6A及び投影レンズ3Aを備えている。このうち、投影レンズ3Aは、上記第1の実施形態の変形例におけるものと同様のものである。
【0046】
図11は、光源アレイ6Aの正面図である。
この図に示すように、光源アレイ6Aの前面には、複数の発光素子61A,…が平面状に配列されている。発光素子61A,…は、光源アレイ6Aの上半部では、光源アレイ6A前面の中心点Oから上下左右に放射状に延びる複数の放射状分割線6a,…と、中心点Oを通る上下方向の鉛直線に平行であって均等間隔の複数の鉛直分割線6d,…とで画成された複数の画成領域に配設されており、光源アレイ6Aの下半部では、中心点Oを通る左右方向の水平線に平行であって均等間隔の複数の水平分割線6c,…と、複数の鉛直分割線6d,…とで画成された複数の画成領域に配設されている。つまり、発光素子61A,…は、光源アレイ6Aの上半部では放射状分割線6a,…及び鉛直分割線6d,…に沿って、光源アレイ6Aの下半部では水平分割線6c,…及び鉛直分割線6d,…に沿って配列されている。
【0047】
以上の構成を具備する車両用前照灯12Aでは、光源アレイ6Aの上半部において放射状分割線6a,…及び鉛直分割線6d,…に沿って配列された発光素子61A,…からの光が、近方へ光を出射する左右両側の部分ほど当該光を左右方向の外側へ大きく屈折させる投影レンズ3Aを通じて上下及び左右に反転されつつ車両前方に投影される。そのため、上記第3の実施形態における車両用前照灯12と同様に、車両からの距離に応じた照明範囲で照明範囲で車道外側線や車道中央線を照明することができ、車道外側線や車道中央線に沿った直線状の領域を特に強く照明することができる。
【0048】
以上の車両用前照灯12Aによれば、上記第3の実施形態における車両用前照灯12と同様の効果を奏することができる。
【0049】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した第1〜第3の実施形態及びその変形例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0050】
例えば、上記第1〜第3の実施形態及びその変形例では、車両左側の車道外側線や車両右側の車道中央線を特に強く照明することとしたが、強調して照明する対象は、車道に沿って前方に延びているものであれば車道外側線や車道中央線でなくともよく、車線境界線,路肩,歩道,ガードレール,ポール,道路鋲などであってもよい。これらは、何れも撮像手段によって検知可能なものである。
【0051】
また、遠方を照明するものほど小さい発光面積となるように配列した発光素子21,51,61か、或いは、近方へ光を出射する左右両側の部分ほど当該光を左右方向の外側へ大きく屈折させるように光を投影する投影レンズ3Aを用いることによって、車道に沿った領域を適切に照明することとしたが、例えば、発光素子21,51,61の配列と同様のカットが反射面に形成されたリフレクタを用いてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10,10A,11,11A,12,12A 車両用前照灯
2,2A,5,5A,6,6A 光源アレイ
21,21A,51,51A,61,61A 発光素子
3,3A 投影レンズ
2a,6a 放射状分割線
2b,5b,6b 鉛直分割線
2c,5c,6d 鉛直分割線(均等間隔の鉛直分割線)
5a,6c 水平分割線
Ax 光軸
O 中心点(光源アレイの中心点)
図1
図2
図3
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図5
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図13