特許第5657466号(P5657466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5657466インサート成形品の製造方法及びインサートナット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5657466
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】インサート成形品の製造方法及びインサートナット
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20141225BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B29C45/26
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-101024(P2011-101024)
(22)【出願日】2011年4月28日
(65)【公開番号】特開2012-232430(P2012-232430A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2013年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松川 将三
(72)【発明者】
【氏名】大志万 博章
【審査官】 越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5496924(JP,B2)
【文献】 特開2007−038441(JP,A)
【文献】 特開2005−295628(JP,A)
【文献】 特開2005−288763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型のキャビティの成形面に設けられるピン部材にインサートナットを嵌合により支持した状態で型閉じし、前記キャビティに樹脂を射出、充填することによりインサートナットがインサート成形されたインサート成形品を成形するインサート成形品の製造方法であって、
前記インサートナットは、ねじ孔部の先端部にねじ孔部の内径と同径又は小径のストレート孔部を有し、
前記ピン部材は、前記インサートナットを嵌合により支持し、かつ、前記ストレート孔部にほとんど隙間なく嵌合可能なピン軸部を有し、
前記ストレート孔部は、前記インサートナットを前記ピン部材のピン軸部に嵌合した際に該ピン軸部の先端部に嵌合されることによって閉鎖される構成とし、
前記ピン部材のピン軸部に前記インサートナットを嵌合により支持した状態で、前記インサートナットの先端面及び前記ピン部材のピン軸部の先端面が樹脂で覆われるようにインサート成形を行うことにより、前記インサートナットの先端側の開口端面が樹脂で閉塞されたインサート成形品を成形する
ことを特徴とするインサート成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のインサート成形品の製造方法であって、
前記ピン部材に前記インサートナットが正逆両向きで嵌合可能に構成され、
前記ピン部材に前記インサートナットを正逆両向きで嵌合した状態で前記金型が型閉じ可能に構成されている
ことを特徴とするインサート成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインサート成形品の製造方法に用いられるインサートナットであって、
前記インサートナットの両開口端部を異なる形状に形成したことを特徴とするインサートナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形品の製造方法、インサートナット及びインサート成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
インサート成形品の製造方法としては、例えば特許文献1(以下、従来例という)に記載されたものがある。従来例は、金型のキャビティの成形面に設けられるピン部材にインサートナットを嵌合により支持した状態で型閉じし、キャビティに樹脂(溶融樹脂)を射出、充填することによりインサートナットがインサート成形されたインサート成形品を成形する。インサートナットは全長に亘るねじ孔部を有し、ねじ孔部の開口端面が樹脂で閉塞されるようにインサート成形を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−47773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例によると、ピン部材とインサートナットのねじ孔部(詳しくは谷間)との間に螺旋状の隙間が形成される。このため、インサートナットの先端側(ピン部材の先端側に対応する側)の開口端面が樹脂で閉塞されるようにインサート成形を行う際に、ピン部材の先端側から、ピン部材とインサートナットのねじ孔部との隙間に樹脂(溶融樹脂)が流入するという、いわゆる樹脂の回り込みが発生するという問題があった。このような樹脂の回り込みは、インサートナットに対するボルトの締付不良を招くことになるためその対策が望まれる。
本発明が解決しようとする課題は、インサートナットの先端側の開口端面が樹脂で閉塞されるようにインサート成形を行う際におけるピン部材とインサートナットのねじ孔部との隙間への樹脂の回り込みを防止することのできるインサート成形品の製造方法、インサートナット及びインサート成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、金型のキャビティの成形面に設けられるピン部材にインサートナットを嵌合により支持した状態で型閉じし、前記キャビティに樹脂を射出、充填することによりインサートナットがインサート成形されたインサート成形品を成形するインサート成形品の製造方法であって、前記インサートナットは、先端部にねじ孔部の内径と同径又は小径のストレート孔部を有し、前記ストレート孔部は、前記インサートナットを前記ピン部材に嵌合した際に該ピン部材の先端部に嵌合され、前記インサートナットの先端側の開口端面が樹脂で閉塞されるように前記インサート成形を行うことを特徴とする。このように構成すると、ピン部材にインサートナットを嵌合した際に、ピン部材の先端部に、ねじ孔部の内径と同径又は小径のストレート孔部が嵌合される。このため、ピン部材とインサートナットのねじ孔部との隙間の先端側開口が、インサートナットのストレート孔部を有する先端部によって閉鎖される。したがって、インサートナットの先端側の開口端面が樹脂で閉塞されるようにインサート成形を行う際におけるピン部材とインサートナットのねじ孔部との隙間への樹脂の回り込みを防止することができる。このことは、インサートナットに対するボルトの締付不良の防止に有効である。
【0006】
第2の発明は、第1の発明において、前記ピン部材に前記インサートナットが正逆両向きで嵌合可能に構成され、前記ピン部材に前記インサートナットを正逆両向きで嵌合した状態で前記金型が型閉じ可能に構成されている。このように構成すると、誤って、ピン部材にインサートナットを逆向きで嵌合した状態でも、金型を型閉じすることができる。このため、インサートナットの誤組付けによる金型の破損を防止することができる。
【0007】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記インサートナットの両開口端部を異なる形状に形成している。このように構成すると、インサートナットの向きをテーパ面の目視や感触等で確認することができる。このため、ピン部材に対するインサートナットの誤組付けを防止することができる。
【0008】
第4の発明のインサート成形品は、第1又は2の発明により製造される。このように構成すると、インサートナットの先端側の開口端面が樹脂で閉塞されるようにインサート成形を行う際におけるピン部材とインサートナットのねじ孔部との隙間への樹脂の回り込みを防止することができ、インサートナットに対するボルトの締付不良を防止することのできるインサート成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態にかかる金型の要部を示す側断面図である。
図2】インサート成形品の要部を示す側断面図である。
図3】インサートナットを示す正面図である。
図4】インサートナットを一部破断して示す側面図である。
図5】インサートナットを示す背面図である。
図6】インサートナットの誤組付け状態の金型の要部を示す側断面図である。
図7】インサートナットが誤組付けされたインサート成形品の要部を示す側断面図である。
図8】インテークマニホールドを示す正面図である。
図9】インテークマニホールドを分解して示す側面図である。
図10】スロットルボデー用取付フランジに対する締結フランジの締結構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
[一実施形態]
本実施形態は、樹脂製のインテークマニホールドの一構成部材であるインサート成形品に適用したものであるから、インテークマニホールドの概要を説明した後、インサート成形品の製造方法について説明する。
【0011】
インテークマニホールドの概要から説明する。本実施形態では、直列4気筒エンジンに使用されるインテークマニホールドを例示する。図8はインテークマニホールドを示す正面図、図9はインテークマニホールドを分解して示す側面図である。
図8に示すように、インテークマニホールド10は、前後方向に4分割された4個のピース11〜14(図9参照)を振動溶着等の結合手段を介して結合することにより構成されている。すなわち、図9に示すように、インテークマニホールド10は、中央部に位置する第1ピース11と、第1ピース11の前側(図9において右側)に結合される第2ピース12と、第1ピース11の後側(図9において左側)に結合される第3ピース13と、第3ピース13の後側に結合される第4ピース14とを備えている。なお、各ピース11〜14は、それぞれ射出成形により所定の形状に形成された樹脂成形品である。また、図示を省略するが、第1ピース11と第2ピース12との結合によって、両ピース11,12の間に左右方向に並ぶ4本の独立吸気通路が形成される。また、第1ピース11と第3ピース13との結合によって、両ピース11,13の間に4本の独立吸気通路に連通するサージタンクが形成される。また、第3ピース13と第4ピース14との結合によって、両ピース13,14の間にサージタンクに連通するレゾネータが形成される。
【0012】
図9に示すように、前記第1ピース11の上端部の後側には、各独立吸気通路の吸気導出口を有する気筒側取付フランジ16が形成されている。気筒側取付フランジ16は、エンジンのシリンダヘッド(図示省略)に対して締結により取付可能となっている。また、図8に示すように、第1ピース11の左端部の前側には、サージタンクに連通する吸気導入口18を有するスロットルボデー用取付フランジ17が形成されている。図10に示すように、スロットルボデー用取付フランジ17には、スロットル装置のスロットルボデー20の締結フランジ22が締結により取付可能となっている。なお図示しないが、スロットル装置は、スロットルボデー20に、吸入空気量を制御するスロットルバルブを備えている。
【0013】
前記インテークマニホールド10は、前記気筒側取付フランジ16をエンジンのシリンダヘッド(図示省略)に締結するとともに、前記スロットルボデー用取付フランジ17にスロットルボデー20の締結フランジ22(図10参照)を締結することによって使用される。また、インテークマニホールド10には、各種センサが搭載されるとともにEGR管等の各種配管が接続される。また、エンジンの運転時において、エンジンに吸入される空気は、スロットル装置からインテークマニホールド10のサージタンク及び各独立吸気通路を通って、エンジンの各気筒に供給される。
【0014】
次に、前記第1ピース11のスロットルボデー用取付フランジ17に対する前記スロットルボデー20の締結フランジ22の締結構造について説明する。図10はスロットルボデー用取付フランジに対する締結フランジの締結構造を示す断面図である。
図8に示すように、第1ピース11のスロットルボデー用取付フランジ(以下、「取付フランジ」という)17には、周方向に所定の間隔で配置された所定数(図8では4個を示す)のインサートナット40が配置されている。なお、説明の都合上、取付フランジ17におけるインサートナット40の開口端面側の端部(図10において左端部)を基端部といい、インサートナット40の取付フランジ(樹脂部)17による閉鎖端面側の端部(図10において右端部)を先端部という。
【0015】
図10に示すように、前記インサートナット40の基端側の開口端面40aは、前記取付フランジ17のスロットルボデー取付面17aと同一平面状をなしている。また、スロットルボデー20の締結フランジ22には、取付フランジ17のインサートナット40に対応するボルト挿通孔23が形成されている。そして、取付ボルト25(詳しくはねじ軸部)が締結フランジ22のボルト挿通孔23を通してインサートナット40にねじ付けにより締着されている。なお、第1ピース11は本明細書でいう「インサート成形品」に相当する。また、スロットルボデー20は本明細書でいう「締結部品」に相当する。また、取付ボルト25に代え、インサートナット40にスタッドボルトを締着し、そのスタッドボルトに締結フランジ22のボルト挿通孔23を挿通した状態で該スタッドボルトにナットを締着することによって、スロットルボデー20を取付フランジ17に締結することも可能である。
【0016】
次に、前記インテークマニホールド10の第1ピース(以下、「インサート成形品」という)11の製造にかかる金型について説明する。図1は金型の要部を示す側断面図、図2はインサート成形品の要部を示す側断面図である。なお、説明の都合上、金型及び金型の関連する部材については、図1において右側を前側、左側を後側として説明を行う。また、図1及び図2ではインサートナットの周辺部が部分的に示されている。
【0017】
まず、インサート成形品11の製造方法に係る金型について説明する。図1に示すように、金型30は、固定型32と、固定型32の後側(図1において左側)に配置されかつ固定型32に対して進退移動可能(図1において左右方向へ移動)に設けられた可動型34とを備えている。固定型32に対する可動型34の型閉じ(型締め)により両型32,34の間にインサート成形品11を成形するキャビティ36が形成される。可動型34の成形面34aは、インサート成形品11の取付フランジ17のスロットルボデー取付面17a(図2参照)に対応している。また、固定型32の成形面32aは、インサート成形品11の取付フランジ17のスロットルボデー取付面17aを除いた残りの外形形状に対応する凹溝状に形成されている。また、キャビティ36に樹脂すなわち溶融樹脂を射出、充填することにより、インサート成形品11が形成される。また、インサート成形品11の取付フランジ17にはインサートナット40がインサート成形される(図2参照)。また、図1に示すように、可動型34の成形面34aには、ピン部材50が固定状に設けられている。ピン部材50は、インサートナット40を嵌合により支持する。なお、説明の都合上、ピン部材50については後で説明する。
【0018】
次に、インサートナット40について説明する。図3はインサートナットを示す正面図、図4は同じく一部破断して示す側面図、図5は同じく背面図である。
図4に示すように、インサートナット40は、例えば鉄製で、中空円筒状のナット本体41を主体としている。ナット本体41の外周面には、ローレット加工を施すことにより綾目状(斜めに交差する網目状)のローレット部42が形成されている。また、ナット本体41の基端部(図4において左端部)には、外周に円環状に張り出すフランジ部43が形成されている。
【0019】
前記ナット本体41の内周面にはねじ孔部44が形成されている(図5参照)。ねじ孔部44は、インサートナット40の基端側(図4において左側)から先端側(同、右側)に延びている。また、ナット本体41の先端部の内周面には、ストレート孔部45が同心状に形成されている(図3参照)。ストレート孔部45は、ねじ孔部44の内径(内径、ねじ山の径)と同径で形成されている。ナット本体41の内周面におけるねじ孔部44とストレート孔部45との間は、不完全ねじ部46となっている。なお、ストレート孔部45は、ねじ孔部44の内径(内径、ねじ山の径)より小径で形成してもよい。
【0020】
前記インサートナット40の基端側(図4において左端部)の開口面には第1テーパ面47が面取り状に形成されている。また、インサートナット40の先端側(図4において右端部)の開口面には、第1テーパ面47と向きの異なる第2テーパ面48が面取り状に形成されている。また、両テーパ面47,48は、同一のテーパ角で形成されている。また、両テーパ面47,48は、同一の最小径で形成されている。また、第1テーパ面47は、第2テーパ面48の軸方向長さよりも所定量長い軸方向長さで形成されており、第2テーパ面48の最大径よりも大きい最大径で形成されている。これにより、インサートナット40の両開口端部が異なる形状に形成されている。また、ねじ孔部44は、第1テーパ面47の最大径よりも小さく、かつ、第2テーパ面48の最大径よりも大きい谷径で形成されている。
【0021】
次に、前記可動型34に設けられてインサートナット40を支持するピン部材50について説明する(図1参照)。
図1に示すように、ピン部材50は、例えば金属製で、円柱状の頭部51とストレート軸状のピン軸部52とを同軸上に有する頭付きピン状に形成されている。ピン軸部52は、前記インサートナット40を嵌合することにより支持する。また、ピン軸部52は、インサートナット40の軸方向長さ(全長)と同じ又は略等しい軸方向長さで形成されている。また、ピン軸部52は、インサートナット40のストレート孔部45にほとんど隙間なく嵌合可能な外径で形成されている。また、ピン軸部52の基端部には、テーパ面53が形成されている。テーパ面53は、インサートナット40の第1テーパ面47に対応している。
【0022】
前記可動型34の成形面34aには、有底円筒状の取付凹部35が形成されている。取付凹部35は、ピン部材50の頭部51をほとんど隙間なく嵌合可能に形成されている。そして、ピン部材50は、取付凹部35にピン部材50の頭部51を嵌着することによって可動型34に対して固定状に取付けられている。この状態において、頭部51の前端面(図1において右端面)は可動型34の成形面34aと同一平面状をなしている。
【0023】
次に、前記金型30を用いたインサート成形品11の製造方法について説明する。型開き状態における可動型34のピン部材50のピン軸部52にインサートナット40を嵌合することにより支持する(図1参照)。このとき、ピン軸部52にインサートナット40のストレート孔部45がほとんど隙間なく嵌合される。また、ピン軸部52のテーパ面53にインサートナット40の第1テーパ面47が当接される。また、ピン部材50の頭部51の前端面(図1において右端面)にインサートナット40の基端面(図1において左端面)が当接される。これによって、ピン軸部52にインサートナット40が同軸上に支持される。このときのインサートナット40の向きは正向きである。また、この状態では、ピン部材50のピン軸部52とインサートナット40のねじ孔部44との間の隙間の先端側開口が、インサートナット40のストレート孔部45を有する先端部によって閉鎖される。なお、例えば、インサートナット40が鉄製等の磁性体製である場合には、可動型34側に磁石を設け、その磁石にインサートナット40を吸着させることによって、ピン部材50の頭部51とインサートナット40との対向端面を密着させ、両者間への溶融樹脂の流入を防止するとよい。
【0024】
続いて、図1に示すように、固定型32に対して可動型34を前進させて型閉じした後、金型30のキャビティ36内に溶融樹脂を射出、充填する。その後、溶融樹脂を冷却、固化させた後、型開きをする。その後、樹脂部すなわち取付フランジ17にインサートナット40が一体化されたインサート成形品11(図2参照)を取り出せばよい。
【0025】
ところで、型開き状態における可動型34のピン部材50のピン軸部52にインサートナット40を嵌合する際、誤って、ピン部材50にインサートナット40が逆向きで嵌合される場合がある。図6はインサートナットの誤組付け状態の金型の要部を示す側断面図、図7がインサートナットが誤組付けされたインサート成形品の要部を示す側断面図である。
【0026】
図6に示すように、ピン部材50のピン軸部52にインサートナット40が正逆両向きで嵌合された場合、ピン軸部52のテーパ面53にインサートナット40の第2テーパ面48が当接するものの、ピン部材50の頭部51の前端面(図6において右端面)に対してインサートナット40の先端面(図6において左端面)が離れた位置関係をなすことになる。
【0027】
また、ピン部材50のピン軸部52にインサートナット40を逆向きで嵌合した状態でも、固定型32に対して可動型34を型閉じ可能に構成されている(図6参照)。すなわち、ピン部材50のピン軸部52にインサートナット40を逆向きで嵌合した状態で、固定型32に対して可動型34を型閉じしても、固定型32の成形面32aに対してインサートナット40の基端面(図6において右端面)が離れた位置関係を保つことで干渉しないように構成されている。
【0028】
この場合も、金型30のキャビティ36内に溶融樹脂を射出、充填し、溶融樹脂を冷却、固化させた後、型開きをすることにより、取付フランジ17にインサートナット40が一体化されたインサート成形品11(図7参照)が得られる。
【0029】
前記したインサート成形品11の製造方法によると、ピン部材50のピン軸部52にインサートナット40を嵌合した際に、ピン部材50のピン軸部52の先端部に、ねじ孔部44の内径と同径の内径のストレート孔部45が嵌合される(図1参照)。このため、ピン部材50のピン軸部52とインサートナット40のねじ孔部44との間の隙間の先端側開口が、インサートナット40のストレート孔部45を有する先端部によって閉鎖される。したがって、インサートナット40の先端側の開口端面が樹脂で閉塞されるようにインサート成形を行う際におけるピン部材50のピン軸部52とインサートナット40のねじ孔部44との間の隙間への樹脂の回り込みを防止することができる。このことは、インサートナット40に対する取付ボルト25の締付不良の防止に有効である。
【0030】
また、インサートナット40がインサート成形されることにより、インサートナット40を樹脂に熱圧入する場合と比べて、コストを低減することができる。また、樹脂に対するインサートナット40の密着性が高いので、締結に際して高い回転トルクが加わるスロットルボデー用取付フランジ17に適している。
【0031】
また、ピン部材50にインサートナット40が正逆両向きで嵌合可能に構成され、ピン部材50にインサートナット40を正逆両向きで嵌合した状態で金型30が型閉じ可能に構成されている(図6参照)。したがって、誤って、ピン部材50にインサートナット40を逆向きで嵌合した状態でも、金型30の固定型32と可動型34を型閉じすることができる。このため、インサートナット40の誤組付けによる金型30の固定型32及び可動型34の破損を防止することができる。
【0032】
また、前記インサートナット40によると、両開口端部にテーパ面47,48を形成することにより、両開口端部を異なる形状に形成している。したがって、インサートナット40の向きをテーパ面47,48の目視や感触等で確認することができる。このため、ピン部材50に対するインサートナット40の誤組付けを防止することができる。
【0033】
また、インサートナット40(図4参照)の中空部が貫通孔状をなしているため、袋ナット状のインサートナットと比べて、ナット本体41の内周面の表面処理(例えば、金属製のインサートナット場合の防錆のためのめっき処理)を容易に行うことができる。また、インサートナット40に対してストレート孔部45を残してねじ孔部44を加工するため、加工工数が少なくて済む。
【0034】
また、前記インサート成形品11(図2参照)によると、前記インサート成形品11の製造方法により製造される。したがって、インサートナット40の先端側の開口端面が樹脂で閉塞されるようにインサート成形を行う際におけるピン部材50のピン軸部52とインサートナット40のねじ孔部44との間の隙間への樹脂の回り込みを防止することができ、インサートナット40に対する取付ボルト25(図10参照)の締付不良を防止することのできるインサート成形品11を得ることができる。
【0035】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明のインサート成形品11の製造方法は、インテークマニホールド10の第1ピース11に限らず、その他のピース12,13,14あるいはデリバリパイプ(燃料分配管)あるいはその他の各種のインサート成形品の製造方法として適用することができる。また、ピン部材50は、可動型34に代えて固定型32に設けてもよい。また、インサートナット40のフランジ部43は、必要に応じて設けられるものであり、省略してもよい。また、インサートナット40の両開口端部を異なる形状とするには、前記実施形態の両テーパ面47,48を異なる最大径で形成する他、両テーパ面47,48を異なるテーパ角で形成したり、第2テーパ面48を省略したりすること等が考えられる。
【符号の説明】
【0036】
10…インテークマニホールド
11…インサート成形品(第1ピース)
17…取付フランジ(樹脂部)
30…金型
32…固定型
32a…成形面
34…可動型
34a…成形面
36…キャビティ
40…インサートナット
44…ねじ孔部
45…ストレート孔部
47…第1テーパ面
48…第2テーパ面
50…ピン部材
51…頭部
52…ピン軸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10