特許第5657568号(P5657568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5657568
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】補助操縦機構を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20141225BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20141225BHJP
   H02P 29/00 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   H02P5/00 W
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-545651(P2011-545651)
(86)(22)【出願日】2009年12月3日
(65)【公表番号】特表2012-515106(P2012-515106A)
(43)【公表日】2012年7月5日
(86)【国際出願番号】EP2009066299
(87)【国際公開番号】WO2010081592
(87)【国際公開日】20100722
【審査請求日】2012年7月19日
(31)【優先権主張番号】102009000165.4
(32)【優先日】2009年1月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500396654
【氏名又は名称】ツェットエフ、レンクジステメ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ZF LENKSYSTEME GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100096895
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 淳平
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】アルヌルフ、ハイリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン、グリュナー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル、シュプリンツル
【審査官】 柳元 八大
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−171519(JP,A)
【文献】 特開2004−129421(JP,A)
【文献】 特開2002−059855(JP,A)
【文献】 特開平11−332002(JP,A)
【文献】 特開2003−335251(JP,A)
【文献】 特開2008−094383(JP,A)
【文献】 特表2004−511395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補助操縦機構(10)を動作するための方法であって、
電気処理ユニットによって、モータートルクが計算され、
適切なモーターコントローラーによって、モータートルクが調整され、
計算されたモータートルクの信頼性チェックが実施され、
検出されたステアリングトルクに応じてモータートルクを制限するためのモータートルク制限曲線(30)が、予め準備されており、
モータートルク制限曲線(30)は、モータートルクの上限に関する上側のモータートルク制限曲線(30)と、モータートルクの下限に関する下側のモータートルク制限曲線(30)と、を含み、
計算されたモータートルクが上側のモータートルク制限曲線(30)よりも大きい場合、上側のモータートルク制限曲線(30)よりも上の部分について、モータートルクが積分され、
モータートルクが下側のモータートルク制限曲線(30)よりも小さい場合、下側のモータートルク制限曲線(30)よりも下の部分についてのモータートルクの積分の減算が、実行され、
前記信頼性チェックにおいて、モータートルクの積分が閾値に達すると、上側のモータートルク制限曲線(30)または下側のモータートルク制限曲線(30)によってモータートルクが制限される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
限の拡張が、
モーター(18)が発電動作状態にあって、且つ、定められた回転速度よりもモーター回転数が高い、という状況の下で生じることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上側の制限あるいは下側の制限の拡張が、対応する適切な回転方向の際にのみ生じることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上側の制限あるいは下側の制限の拡張が、定められたモータートルク以上の際のみ生じることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
モータートルク制限曲線(30)は、試験走行によって算出されたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
特に請求項1乃至のいずれかに記載の方法を実行するための自動車の補助操縦機構であって、
ステアリングトルクへの自在な影響の実現のために予め定められた追加トルクを導入するための電気モーター(18)と、
実際のステアリングトルクの検出のための装置と、
モーター(18)の電気量の検出のための装置と、
ローター位置の検出のための装置と、
モーター(18)の制御のための電子工学的な制御ユニット(20)であって、所望の作動トルクがステアリングハンドルにおいて現れる目標トルクを計算する上で適切なものとなっている制御ユニットと、を備え、
電子制御ユニット(20)は、目標動作トルクと実際の動作トルクとの間の偏差が目標モータートルクの算出によって最小化されるよう、設計されており、モータートルクは、適切なモーター制御によって調整され得ることを特徴とする補助操縦機構。
【請求項7】
マイクロプロセッサーをさらに備え、
前記マイクロプロセッサーは、安全性計算機と通信することを特徴とする請求項に記載の補助操縦機構。
【請求項8】
特に請求項またはに記載の補助操縦機構で用いられる制御ユニットであって、
前記制御ユニットは、電気モーター(18)の制御のために用いられるとともに、所望の動作トルクがステアリングハンドル(12)において現れるよう目標モータートルクを計算する上で適切なものとなっており、
前記制御ユニットは、目標動作トルクと実際の動作トルクとの間の偏差が目標モータートルクの算出によって最小化されるよう設計されており、モータートルクは、適切なモーターコントローラーによって調整され得ることを特徴とする前記制御ユニット。
【請求項9】
プログラムコード手段を有するコンピュータプログラムであって、
前記プログラムコード手段は、コンピュータプログラムがコンピュータまたは対応する処理ユニットにおいて実行される時、請求項1乃至のいずれかに記載の方法における全てのステップを実行するためのものであることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
プログラムコード手段を有するコンピュータプログラムプロダクトであって、
前記プログラムコード手段は、コンピュータが読み取り可能なデータ記憶媒体に記憶されており、
プログラムコード手段は、コンピュータプログラムがコンピュータまたは対応する処理ユニットにおいて実行される時、請求項1乃至のいずれかに記載の方法における全てのステップを実行するためのものであることを特徴とするコンピュータプログラムプロダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助操縦機構を動作するための方法、補助操縦機構ならびにコンピュータプログラム、および前記方法の実施のためのコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
補助操縦機構(Hilfslenkungen)すなわちパワーステアリング機構(Servolenkungen)は、操縦されている状態にある自動車のステアリングホイールの動作のための力の低減が、入れ替えあるいは走行の際に達成される必要がある時、用いられる。電気的あるいは電気機械的補助操縦機構(EPS:電気的補助操縦機構)において、様々な構成部品に応じて機能的に、EPSモーターのための目標モータートルクが、算出され、そしてモーターの電流制御によって調整される。
【0003】
コンピュータによって指示され、高度な処理能力を有する安全性計算機(Sicherheitsrechner)を有する制御ユニットを備えた補助操縦機構が用いられ得る、ということが知られている。上記安全性計算機は、ウォッチドッグとも呼ばれている。コンピュータの信頼性チェック(Plausibilisierung)のため、いわゆる3レベルコンセプトが有効であることが実証されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンピュータのミスの検出のため、基本的なステアリング機能が、経時的かつ機能的に様々に算出され、そして、結果が比較される。その際、場合によっては、存在しているミスが、安全を最重要視すべき分野での走行状況を導かない、ということに到達することが求められている。
【発明を解決するための手段】
【0005】
示される方法は、補助操縦機構を動作するために用いられる方法であり、この場合、電気処理ユニットによってモータートルクが計算され、また、適切なモーターコントローラーによってモータートルクが調整される。計算されたモータートルクの信頼性チェックが、3レベルコンセプトの枠組の中で実施される。さらに、本質的に安全なモータートルク制限曲線が、実際のトルクに依存して、例えば実際のステアリングトルクすなわちドライバートルクに依存して適用される。その際、モータートルク制限曲線よりも上の部分について、積分され、モータートルク制限曲線よりも下の部分についての積分の減算が、実行される。レベル1においては、目標モータートルクが第1積分閾値によって制限され、レベル2においては、制限の監視が行われる。
【0006】
前記方法の実施形態において、監視制限の拡張(Aufweitung)が、モーターが発電動作状態にあって、且つ、定められた回転速度よりもモーター回転数が高い、という状況の下で生じる、ということが予定されている。
【0007】
ここで、レベル2において予め定められた閾値を超過する際、補助操縦機構が安全な状態へ移行され得る。このことは、システムがシャットダウンされることを意味している。
【0008】
実施形態において、上側の制限あるいは下側の制限の拡張は、対応する適切な回転方向の際にのみ生じる。このため、上側の制限あるいは下側の制限の拡張は、定められたモータートルク以上の際のみ生じる。
【0009】
ここで、モータートルク制限曲線は自動車に依存しており、適用は、試験走行によって算出される必要がある。この目的は、全ての動作状態がモータートルク制限曲線の内側で本質的に安全になっているということ、すなわち、一般的なドライバーにとって制御可能なままでありつつけるということである。
【0010】
自動車の提案する補助操縦機構は、とりわけ、上述の方法の実施のために用いられるものであり、この補助操縦機構は、
ステアリングトルクへの自在な影響の実現のために予め定められた追加トルクを導入するための電気モーターと、
実際のステアリングトルクの検出のための装置と、
モーターの電気量の検出のための装置と、
ローター位置の検出のための装置と、
モーターの制御のための電子工学的な制御ユニットであって、所望の作動トルクがステアリングハンドルにおいて現れる目標モータートルクを計算する上で適切なものとなっている制御ユニットと、を備えている。その際、目標動作トルクと実際の動作トルクとの間の偏差は、目標モータートルクの算出によって最小化され得る。モータートルクは、適切なモーター制御によって、例えば、電流制御によって調整され得る。
【0011】
補助操縦機構は、マイクロプロセッサーをさらに備えており、マイクロプロセッサーは、安全性計算機と通信する。
【0012】
さらに、制御ユニットが説明される。制御ユニットは、とりわけ、上述のタイプの補助操縦機構で用いられるために設計されており、また、電気モーターの制御のために用いられる。この制御ユニットは、所望の動作トルクがステアリングハンドルにおいて現れるよう目標モータートルクを計算する上で適切なものとなっている。その際、目標動作トルクと実際の動作トルクとの間の偏差は、例えば、適切な目標モータートルクの算出によって最小化され、このモータートルクは、適切なモーターコントローラーによって調整され得る。
【0013】
提案されている方法に関して、少なくとも上述の実施形態のいくつかにおいて、安全に関して致命的なミス制御(Fehlansteuerung)、例えば、マイクロプロセッサーのコンピュータエラーによって引き起こされるミス制御が、十分に迅速に認識され得る。これによって、安全に関して致命的な影響が自動車および同乗者のために生じるよりも前に、ステアリングシステムが安全な状態に移行され得る。提案される機能は、安全コンセプトが存在しているEPSシステムへ、処理ユニットを埋め込ませる。
【0014】
監視は、特に、ステアリングトルクおよびモータートルクの組み合わせの観察によって生じる。任意には、ステアリングトルクあるいはトーションバートルク(Drehstabmoment)の代わりに、ドライバートルク、すなわち、ドライバーがステアリングホイールにおいて感知するトルクも利用され得る。このトルクは、ステアリングトルク(トーションバートルク)から算出され、また、ステアリングホイールのトルク慣性影響が補償される。その際、機能的な道筋(レベル1)において、許容しうる組み合わせの上で制限が生じ、これによって、高いロバスト性が保証されている。さらに、これらのコンセプトにより、個々の機能性の監視が不要になるよう補助操縦機構の全てのシステム機能が監視される。これによって、安全性の証明が単純化される。
【0015】
コンピュータプログラムはプログラムコード手段を有しており、このプログラムコード手段は、コンピュータプログラムがコンピュータまたは対応する処理ユニットにおいて実行される時、上述の方法における全てのステップを実行するためのものである。
【0016】
コンピュータプログラムプロダクトは、プログラムコード手段を有しており、プログラムコード手段は、コンピュータが読み取り可能なデータ記憶媒体に記憶されている。
【0017】
コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能なデータ記憶媒体、例えばフロッピーディスク、CD、DVD、ハードディスク、USBメモリースティックあるいは同等のものに記憶されていてもよく、あるいはコンピュータプログラムプロダクトとしてインターネットサーバーに記憶されていてもよい。ここで、コンピュータプログラムは、制御ユニットの記憶素子にダビングされてもよい。
【0018】
本発明の更なる利点および形態は、記述および添付の図面から明らかになる。
【0019】
上述の、および以下に述べる例示的な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、示される組み合わせだけではなくその他の組み合わせあるいは単独のものでも利用可能となっている。
【0020】
本発明は、図による実施例に基づいて図解的に表されており、また、以下に図を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明による補助操縦機構の構造を示している。
図2図2は、本発明による方法の明確化のため、モータートルク制限曲線の推移をグラフにより示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1において、全体として参照符号10で示される補助操縦機構が表されている。図は、ステアリングハンドル12と、連結された2つの車輪16を有する前輪軸14と、電気モーター18と、制御ユニット20と、を示している。
【0023】
図2のグラフにおいて、モータートルク制限曲線30の推移が表されている。ここで、横座標32に実際のステアリングトルクが割り当てられ、縦座標34にモータートルクが割り当てられている。
【0024】
モータートルクが斜線を引かれた領域に達すると、制限曲線30よりも上の部分が積分される。積分(integrator)が、調整可能な閾値Aに達すると、レベル1においてモータートルクが制限曲線30で制限される。例えば、コンピュータミスのためにレベル1における制限が正確に行われないようなことがあれば、多様性のある安全なアルゴリズムがレベル2において閾値Bの際にこのことを認識し、そして、システムのスイッチを切ることができる。ここで、Bの絶対値はAの絶対値よりも大きくなっている。
図1
図2