(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5657592
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】歯科用治療機器
(51)【国際特許分類】
A61C 1/08 20060101AFI20141225BHJP
A61C 1/12 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
A61C1/08 Z
A61C1/12
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-54266(P2012-54266)
(22)【出願日】2012年3月12日
(65)【公開番号】特開2013-184032(P2013-184032A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150671
【氏名又は名称】株式会社長田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100153110
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100079843
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 明近
(72)【発明者】
【氏名】加古 真祥
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭61−036253(JP,Y2)
【文献】
特許第4274999(JP,B2)
【文献】
特許第4004488(JP,B2)
【文献】
特開2000−079128(JP,A)
【文献】
特開2013−192952(JP,A)
【文献】
特開2006−102513(JP,A)
【文献】
特許第4955663(JP,B2)
【文献】
特許第4328254(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/08
A61C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面全体に圧力又は温度を感知するセンサが多数配設された複数の歯科治療用ハンドピースと、個々の前記歯科治療用ハンドピースを持った時に検出される圧力又は温度の基準分布パターンが記録されている記憶部と、該記憶部に記録された前記基準分布パターンと前記歯科治療用ハンドピースを術者が持った時に前記多数のセンサによって検出される圧力又は温度の分布パターンとを照合比較する照合比較部とを有し、前記照合比較により、術者が持っている歯科治療用ハンドピースを複数の前記歯科治療用ハンドピースの中から判定するようにしたことを特徴とする歯科用治療機器。
【請求項2】
表面全体に圧力又は温度を感知するセンサが多数配設された歯科治療用ハンドピースと、前記歯科治療用ハンドピースを持った時に検出される圧力又は温度の基準分布パターンが記録されている記憶部と、該記憶部に記録された前記基準分布パターンと前記歯科治療用ハンドピースを術者が持った時に前記多数のセンサによって検出される圧力又は温度の分布パターンとを照合比較する照合比較部とを有し、前記照合比較により、術者が持っている歯科治療用ハンドピースの状態を判定するようにしたことを特徴とする歯科用治療機器。
【請求項3】
前記基準分布パターンは、前記歯科治療用ハンドピースの持ち方に対応した複数の基準分布パターンであることを特徴とする請求項1または2に記載の歯科用治療機器。
【請求項4】
前記基準分布パターンとして、治療開始直前の基準分布パターンを有し、術者が前記歯科治療用ハンドピースを持った時に検出される分布パターンが前記治療開始直前の基準パターンと一致した時に、当該歯科治療用ハンドピースを駆動可能とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の歯科用治療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用治療機器、より詳細には、歯科治療に当って、現に術者が手に持っているハンドピースを認識し、更には、治療開始直前(歯科治療時)のハンドピースの持ち方を検出し、治療開始直前になって初めて当該ハンドピースを駆動可能状態にし、それ以前での準備作業中での駆動を不能にし、もって、より安全に準備作業を行うことができるようにした歯科用治療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、本発明が適用される歯科治療ユニットの一例を示す全体構成図で、図中、10は歯科治療ユニットで、該ユニット10は、治療椅子1、ワークテーブル2、スピットン3、給排ボックス4、インスツルメントホルダ5、フットスイッチ6、アシスタントインスツルメントホルダ7等から成り、インスツルメントホルダ5には、歯科治療において使用する種々のインスツルメント(ハンドピース)8が収納されており、これらハンドピース8はそれぞれケーブル9を介してユニット本体10に連結されている。歯科治療に当り、患者は椅子1に座り、頭を安頭台に固定して治療を受ける。治療中、術者は治療椅子1を上下動,倒起動,傾斜動等させて、患者を治療しやすい姿勢にして治療を行う。
【0003】
上述のごとき歯科治療ユニットにおいて、インスツルメント(ハンドピース)ホルダ5には、周知のように、エアータービン、マイクロエンジン、シリンジ等種々の歯科治療用ハンドピース8が搭載され、必要とされるハンドピース8が該インスツルメントホルダ5から引き出されて使用されるが、その際、引き出されたハンドピースをインスツルメントホルダ5に設けられた光センサ、圧力センサ等を用いて検出し、当該引き出されたハンドピースに関する動力源等を選択し、該ハンドピースを使用(駆動)可能状態にすることが行われている。
【0004】
しかし、上記従来技術は、インスツルメント(ハンドピース)を収納するインスツルメントホルダを備えた機器でないと利用することができず、また、インスツルメントホルダを備えた機器であっても、ハンドピースをインスツルメントホルダに確実に戻さない限り、ハンドピースの選択が変更されることがない等の問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、特に、術者が現に手に持っているハンドピースが何であるかを該ハンドピースの持ち方を検出することによって認識し、更には、ハンドピースの持ち方が治療開始直前の持ち方(=治療中の持ち方)であることを検出した時に、該ハンドピースの駆動源を駆動可能状態にするようにした歯科用治療機器を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、
歯科用治療機器であって、表面全体に圧力又は温度を感知するセンサが多数配設された
複数の歯科治療用ハンドピースと、
個々の前記歯科治療用ハンドピースを持った時に検出される圧力又は温度の基準分布パターンが記録されている記憶部と、該記憶部に記録された前記基準分布パターンと
前記歯科治療用ハンドピースを術者が持った時に前記多数のセンサによって検出される圧力又は温度の分布パターンとを照合比較する照合比較部とを有し、前記照合比較により、術者が持っている
歯科治療用ハンドピースを
複数の前記歯科治療用ハンドピースの中から判定するようにしたことを特徴としたものである。
【0007】
請求項2の発明は、
歯科用治療機器であって、表面全体に圧力又は温度を感知するセンサが多数配設された歯科治療用ハンドピースと、前記歯科治療用ハンドピースを持った時に検出される圧力又は温度の基準分布パターンが記録されている記憶部と、該記憶部に記録された前記基準分布パターンと前記歯科治療用ハンドピースを術者が持った時に前記多数のセンサによって検出される圧力又は温度の分布パターンとを照合比較する照合比較部とを有し、前記照合比較により、術者が持っている歯科治療用ハンドピースの状態を判定するようにしたことを特徴としたものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1
または2に記載の発明において、
前記基準分布パターンは、前記歯科治療用ハンドピースの持ち方に対応した複数の基準分布パターンであることを特徴としたものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1
から3のいずれか1に記載の発明において、
前記基準分布パターンとして、治療開始直前の基準分布パターンを有し、術者が前記歯科治療用ハンドピースを持った時に検出される分布パターンが前記治療開始直前の基準パターンと一致した時に、当該歯科治療用ハンドピースを駆動可能とすることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
術者が歯科治療用ハンドピースを持った際に検出される圧力や温度の分布パターンと、予め記憶されている基準分布パターンとの照合比較を行うことにより、術者が現在どのハンドピースを持っているか認識、判定することができる。
基準分布パターンを複数記憶させることで、例えば、術者が使用(診療)中である状態や、術者が準備中である状態など、当該ハンドピースの現状態を認識することが可能となる。
術者がハンドピースを持っただけで、当該ハンドピースが駆動可能状態にされるのではなく、これから治療しようという持ち方をしたときに、つまり、歯科治療中の持ち方をしたときに、当該ハンドピースが選択され(駆動可能状態にされ)、準備動作をしている間は選択されることがなく、従って、準備作業中のハンドピースに思いがけない動作をさせることがなく安全に準備作業を行うことができる。
ハンドピースを必ずしもインスツルメントホルダに載置する必要がなく、例えば、インスツルメントホルダを備えない歯科用治療器を構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例を説明するための要部構成図である。
【
図2】本発明が適用される歯科治療ユニットの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明による歯科用治療機器の一実施例を説明するための要部構成図で、図中20は本発明の実施に使用される歯科治療用ハンドピースの概略(一部断面)図で、このハンドピース20は、
図2に示した各ハンドピース8に対応し、該ハンドピース20は表面全体に圧力や温度を検出するセンサ21を多数有し、歯科治療に当って、術者が該ハンドピース20を持った時に、該多数のセンサによって検出される圧力や温度から該ハンドピース20に加わる圧力の分布パターンや温度の分布パターンを検出する。
【0013】
前記圧力或いは温度を検出する多数のセンサ21は、周知の小型の圧力センサ或いは温度センサを多数用いて構成することができるが、例えば、幅が1mm、厚さが0.1mm未満の線状体内に最も狭い部分で2mmピッチで圧力センサが多数並んでいる線状圧力センサ(2011/06/06 12:55 河合基伸=日経エレクトロニクス参照)を用い、この線状の圧力センサを多数本ハンドピースの表面に該ハンドピースの軸方向に貼設することによって、より容易に構成することができる。また、前記圧力センサに代ってサーミスタ等の温度センサを多数用いて、前記圧力センサの場合と同様に、ハンドピースの表面全体に温度センサを配設するようにしてもよい。
【0014】
図1において、10’は歯科治療ユニット本体で、前記ハンドピース20はケーブル9を介して該歯科治療ユニット本体10’に接続されており、前記多数のセンサ21の出力も該ケーブル9内を通してユニット本体10’に接続されている。ユニット本体10’には、各ハンドピース20に対して、歯科治療に先立って、術者が当該ハンドピース20を手に持った時から治療開始に到るまでの該ハンドピースの持ち方の変化を基準圧力分布パターン或いは基準温度分布パターンとして予め記憶(登録)されたデータベース11を有する。圧力分布パターン或いは温度分布パターンは、それぞれ配設位置の異なる多数の圧力センサ或いは温度センサからの出力信号をケーブル9内に設けられた信号線S
1を通してユニット本体10’のデータブロック12に送り、該データブロック12にて、各センサの配線位置に対応した位置信号として表示することによって得られる。このようにして得られた圧力或いは温度分布パターンを、歯科治療に先立って、データベース11に予め登録、記憶しておく。
【0015】
実際の歯科治療に当って、術者が該ハンドピース20を手に持った時に前述のごとくに前記データブロック12により検出される圧力分布パターン或いは温度分布パターンを前記データベース11に予め記憶されている基準圧力分布パターン或いは基準温度分布パターンとを、照合比較部13で順次照合比較し、術者が現在手に持っているハンドピースを認識(特定)するとともに、そのハンドピースが、現在、どのような状態であるか、すなわち、まだ、治療開始準備中であるか、治療開始可能状態であるかを判定する。
【0016】
そして、この検出された圧力分布パターン或いは温度分布パターンがデータベース11に記録されている基準圧力分布パターン或いは基準温度分布パターンの治療開始(治療パターン)と一致した時に、該ハンドピースが治療開始可能状態であると判定し、その判定結果に基いてハンドピース駆動回路14を駆動可能状態とし、当該ハンドピースに供給する電気回路、水回路、エアー回路D等を駆動可能状態とする。その後、術者は、ハンドピース20を操作し、その操作指令信号を信号線S
2を通してハンドピース駆動回路14に伝達し、該ハンドピースを駆動する。
【符号の説明】
【0017】
10’…歯科治療ユニット本体、11…データベース、12…データブロック、13…照合比較部、14…ハンドピース駆動回路、20…本発明によるハンドピース、8…従来のハンドピース、21…圧力又は温度センサ。