(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
なお、後述するように、本願では、流路形成凹部94と水用弁孔82との重なり領域が考慮される。この重なり領域とは、流路形成凹部94の下面開口線94Lで囲まれた領域と、水用弁孔82の上面開口線82Lで囲まれた領域とが重なった領域を意味する。換言すれば、流路形成凹部94と水用弁孔82との重なり領域とは、流路形成凹部94と水用弁孔82との境界面において水が流通可能な開口面積である。
【0017】
流路形成凹部94と湯用弁孔80との重なり領域についても同様である。すなわち、流路形成凹部94と湯用弁孔80との重なり領域とは、下面開口線94Lで囲まれた領域と、上面開口線80Lで囲まれた領域とが重なった領域を意味する。換言すれば、流路形成凹部94と湯用弁孔80との重なり領域とは、流路形成凹部94と湯用弁孔80との境界面において湯が流通可能な開口面積である。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る湯水混合栓10の斜視図である。
図2は、湯水混合栓10の上部の正面図である。
図3は、湯水混合栓10の上部の側面図である。湯水混合栓10は、本体12、ハンドル14、吐出部16、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22を有する。本体12の一部は、外カバー13で覆われている。吐出部16は、ヘッド24を有する。ヘッド24では、シャワー吐出と通常吐出との切り替えが可能である。湯水混合栓10は、例えば、キッチン、洗面台等で使用される。
【0019】
ハンドル14の上下動により、吐出量が調整される(
図3の矢印M参照)。本実施形態では、ハンドル14を上側に動かすほど、吐出量が増加する。逆に、ハンドル14を下側に動かすほど吐出量が増加してもよい。また、ハンドル14の左右回動により、湯と水との混合割合が変化する。ハンドル14の左右回動により、吐水の温度調整が可能である。
【0020】
図4は、
図2のF4−F4線に沿った断面図である。湯水混合栓10は、その内部に、レバー組立体40を有する。レバー組立体40は、外カバー13の内部に配置されている。ハンドル14は、ネジ30によって、レバー46に固定されている。
【0021】
図5は、レバー組立体40の斜視図である。
図6は、レバー軸に対して垂直な断面に沿ったレバー組立体40の断面図である。
図7は、レバー軸に沿ったレバー組立体40の断面図である。
図8は、レバー組立体40の分解斜視図である。レバー組立体40は、単独で取り扱い可能である。湯水混合栓10において、レバー組立体40は交換可能である。
【0022】
図8等が示すように、レバー組立体40は、ハウジング42、回動体44、レバー46、レバー軸48、旋回クリック用弾性部材50、旋回クリック用球体52、軸保持体54、前後クリック用球体56、前後クリック用弾性部材58、可動弁体60、固定弁体62、パッキン64、パッキン65、Oリング66及びベース体68を有する。
【0023】
ベース体68は、湯導入口70、水導入口72及び吐出口74を有する。ベース体68の下部には、これら湯導入口70、水導入口72及び吐出口74のそれぞれに対応した開口が設けられており、これらの開口のそれぞれに、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22が接続されている。
【0024】
固定弁体62は、ベース体68の上側に固定される。ベース体68には、固定弁体62を固定するための係合凸部76と、ハウジング42を固定するための係合凸部77とが設けられている。固定弁体62には、係合凸部76と係合する係合凹部78が設けられている。
【0025】
固定弁体62は、湯用弁孔80、水用弁孔82及び吐出弁孔84を有する。湯用弁孔80は、ベース体68の湯導入口70に接続されている。パッキン64により、この接続の水密状態が保持されている。水用弁孔82は、ベース体68の水導入口72に接続されている。パッキン64により、この接続の水密状態が保持されている。吐出弁孔84は、ベース体68の吐出口74に接続されている。パッキン65により、この接続の水密状態が保持されている。
【0026】
湯用弁孔80は、レバー左右回動に伴う流路形成凹部94の移動方向に略沿うように曲がって延在している。水用弁孔82は、レバー左右回動に伴う流路形成凹部94の移動方向に略沿うように曲がって延在している。
【0027】
可動弁体60は、上側部材86と、下側部材88とを有する。上側部材86は、下側部材88に固定されている。この固定は、凸部90と凹部92との係合によって達成されている。本実施形態では、上側部材86と下側部材88とが互いに別部材である。別部材とすることで、上側部材86と下側部材88とのそれぞれにおいて、最適な材質及び製法が選択されうる。可動弁体60は全体として一体成形されていてもよい。
【0028】
図8では示されていないが、下側部材88の下面には、流路形成凹部94が設けられている(
図6及び
図7参照)。なお、下側部材88の上面には、レバー46の下端95との干渉を避けるための凹部96が設けられている(
図8参照)。
【0029】
固定弁体62の上面には、平滑面PL1が設けられている(
図8参照)。上記孔82、84及び80が存在していない部分に、平滑面PL1が形成されている。一方、下側部材88(可動弁体60)の下面には、平滑面PL2が設けられている。流路形成凹部94が形成されていない部分に、平滑面PL2が設けられている。平滑面PL1と平滑面PL2との面接触により、水密状態が確保されている。
【0030】
なお、
図8が示すように、パッキン64はパイプ状であるが、
図7においては、断面位置の関係で、パッキン64が中実であるかのように図示されている。また、
図4及び
図6では、レバー軸48及び弾性部材50の記載が省略されている。
【0031】
上側部材86の上面には、レバー46の下端95と係合するレバー係合凹部98が設けられている。レバー46の下端95は、このレバー係合凹部98に挿入されている。レバー46の動きに連動して、可動弁体60が固定弁体62の上を摺動する。
【0032】
なお、レバー46とレバー係合凹部98との係合は、直接的であってもよいし、間接的であってもよい。例えば、レバー46とレバー係合凹部98との間に他の部材が介在していてもよい。
【0033】
上側部材86の上面には、回動体44の裏面と係合しうる係合凸部99が設けられている。この係合凸部99の上面に、弾性部材配置部101が設けられている。この弾性部材配置部101は、前後クリック用弾性部材58と略同一形状の凹部である。この弾性部材配置部101に、弾性部材58(板バネ)が収容されている。
【0034】
レバー46は、軸孔100を有する。この軸孔100に、レバー軸48が挿通されている。レバー軸48はパイプ状であり、中空部を有する。このレバー軸48の内部に、旋回クリック用弾性部材50が挿通されている。弾性部材50はコイルバネである。レバー軸48の長手方向長さと、弾性部材50の長手方向長さL1とは、略同一である。レバー軸48の両端のそれぞれに、旋回クリック用球体52が配置されている。レバー軸48の中空部の開口部に、球体52が配置されている。同時に、弾性部材50の両端のそれぞれに、球体52が配置されている。なお、弾性部材50の長手方向長さL1は、レバー組立体が組み立てされた状態での弾性部材50の両端部間の長手方向長さであり、後述の弾性部材200の長手方向長さL2についても同様である。弾性部材50の自然長は、長さL1よりも長い。弾性部材200の自然長は、長さL2よりも長い。長さL1及び長さL2については、後述される。
【0035】
回動体44は、基部102と上部104とを有する。上部104は、レバー挿入孔106と、軸孔108とを有する。基部102は、球体用貫通孔110を有する。この貫通孔110は長孔である。基部102は、可動弁体60(の上側部材86)に、スライド可能に取り付けられている。
【0036】
上部104は、軸保持体54をスライド挿入するための挿入部112と、スライド溝113とを有する。挿入部112は、上部104の側面の、対向する2箇所の位置に設けられている。
【0037】
レバー46がレバー挿入孔106に挿入されると、このレバー46の軸孔100と、回動体44の軸孔108とが同軸で配置される。これら軸孔100及び軸孔108に、レバー軸48が挿入される。更にこのレバー軸の内部に、弾性部材50が挿入される。レバー軸48の挿入により、レバー46が、前後回動可能な状態で、回動体44に固定される。レバー挿入孔106の寸法は、レバー46の前後回動を許容しうるように設定されている。なお本願では、レバー軸48を回転軸とするレバー46の回動が、「前後回動」とも称される。
【0038】
ハウジング42は、小径円筒部120と、大径円筒部122と、連結部124とを有する。連結部124は、ハウジング42の半径方向に延在している。小径円筒部120は、上方開口126を有する。大径円筒部122は、下方開口128を有する。
【0039】
大径円筒部122は、係合孔130を有する。この係合孔130が、ベース体68の係合凸部77と係合している。この係合により、ハウジング42は、ベース体68に固定されている。
【0040】
回動体44の上部104の円周面部の外径は、小径円筒部120の内径に略等しい。回動体44の上部104は、小径円筒部120に回転可能な状態で保持されている。この回転では、上部104の外周面105と、小径円筒部120の内周面121とが摺動する。なお、軸保持体54が挿入部112に嵌められると、この軸保持体54の外面133は、上部104の円周面部と略同一の円周面を形成する。よって軸保持体54は、回動体44の回転を阻害しない。
【0041】
大径円筒部122は、回動体44の基部102、可動弁体60及び固定弁体62を収容している。
【0042】
図9(a)から(h)は、軸保持体54を示す。
図9(a)は、上面図である。
図9(b)は、内側から見た平面図である。
図9(c)は、側面図である。
図9(d)は、外側から見た平面図である。
図9(e)は、底面図である。
図9(f)は、
図9(d)のf−f線に沿った断面図である。
図9(g)は、
図9(d)のg−g線に沿った断面図である。
図9(h)は斜視図である。
【0043】
軸保持体54は、レバー軸保持部134、球保持部136、レール138、球突出用開口140、及び切り欠き142を有する。レール138がスライド溝113に挿入されることで、軸保持体54が回動体44の挿入部112に取り付けられる。軸保持体54が挿入部112に取り付けられた状態が、取付状態とも称される。この取付状態において、レバー軸保持部134は、レバー軸48の端部を保持する。この取付状態において、球保持部136は、球体52を保持する。球体52は、凸部170(後述)との係合の有無に関わらず、弾性部材50によって常に付勢されている。球体52は、弾性部材50によって外側に押圧されている。球体52は、弾性部材50によって球保持部136に押しつけられている。
図9(f)及び
図9(g)が示すように、球体52の一部は、開口140から突出している。この突出が、旋回クリック機構の発現を可能とする。開口140の直径は、球体52よりも小さくされる。また、開口140の直径は、旋回クリック機構の発現が可能となるような球体52の突出量を考慮して、設定される。
【0044】
軸保持体54は用いられなくても良い。軸保持体54に相当する部分が、回動体44の一部であってもよい。また、軸保持体54が1つであってもよい。即ち、2つの軸保持体54のうちの一方に相当する部分が、回動体44の一部であってもよい。ただし、軸保持体54を設けることで、回動体44へのレバー46の組み付けが容易となる。この組み付けは、次の工程を含む。
(工程a):弾性部材50が挿入されたレバー軸48を軸孔100及び軸孔108に挿入する。又は、レバー軸48を軸孔100及び軸孔108に挿入し、このレバー軸48に弾性部材50を挿入する。
(工程b):上記工程aの後、レバー軸48(弾性部材50)の両端のそれぞれに球体52を配置する。
(工程c):上記工程bの後、2つの軸保持体54を挿入部112のそれぞれに挿入する。
【0045】
上記工程bにおいては、例えばグリースを用いて、2つの球体52を、弾性部材50の両端に仮止めする。その後は、上記工程cがなされればよい。この組み付けでは、上記工程bが示すように、弾性部材50の両端に直接球体52を配置することができる。 軸保持体54が用いられることで、組立の容易性が達成されている。
【0046】
前述したように、軸保持体54は切り欠き142を有する。この切り欠き142により、上記工程cにおける球体52の脱落が抑制される。即ち、工程bにおける球体52の配置が、工程cにおいて維持されやすい。よって、組立の容易性が更に向上する。
【0047】
図10は、ハウジング42を下から見た底面図である。よって、この
図10には、連結部124の下面125が図示されている。連結部124の下面125は、クリック発現部146と、クリック無発現部148とを有する。更に、下面125は、第1ストッパー150と第2ストッパー152とを有する。
【0048】
回動体44の基部102は、連結部124の下面125に当接している。回動体44が回転すると、基部102が下面125を摺動する。第1ストッパー150及び第2ストッパー152は、回動体44の回転範囲を規制している。
【0049】
図11は、
図10のF11−F11線に沿った断面図である。
図11は、クリック機構発現部146の断面図である。なお
図11は、通常の使用状態(
図8)とは上下が逆である。即ち
図11では、連結部124の下面125が上側とされている。
【0050】
クリック機構発現部146は、複数の溝154を有する。クリック機構発現部146は、複数の突条156を有する。これらの溝154及び突条156は、円周に沿って延在している。溝154は、凹部の一例である。突条156は、凸部の一例である。
【0051】
図12は、前後クリック用球体56が存在している位置におけるレバー組立体40の断面図である。 前後クリック用弾性部材58は、板バネである。この弾性部材58は、上側部材86の弾性部材配置部101に配置されている。その弾性部材58の中央部の上側に、前後クリック用球体56が載せられている。球体56は、突条156との係合により、下側に変位しうる。この変位が生じた場合、球体56は、弾性部材58によって上側に付勢される。弾性部材配置部101は、この弾性部材58の中央部が下方に弾性変形することを許容するスペース160を有する。
【0052】
図13(a)は、上側部材86の平面図である。
図13(b)は、上側部材86に弾性部材58が載置された状態の平面図である。
図13(c)は、上側部材86に弾性部材58及び前後クリック用球体56が載置された状態の平面図である。
図13(d)は、
図13(c)の構成に回動体44が載置された状態の平面図である。
図13(a)が示すように、弾性部材配置部101は、前述したスペース160と、弾性部材載置面162と、球保持部164とを有する。弾性部材載置面162は、弾性部材58の両端部を下方から支持する。載置面162の周囲には段差があるので、弾性部材58の位置ズレは生じない。球体56は、弾性部材58に載せられつつ、球保持部164によって保持されている。この球保持部164により、球体56の位置ズレは生じない。
図12及び
図13(d)が示すように、回動体44が載せられた状態において、球体56は、回動体44の貫通孔110から、上方に突出している。即ち、球体56の一部は、回動体44の上面よりも突出した上方突出部である。この上方突出部が連結部124の下面125に当接する。この下面125は、この上方突出部と当接しうる当接面である。この上方に突出した球体56がクリック機構発現部146上を移動することでクリック機構が発現する。
【0053】
なお、上側部材86の上面には、長孔状等の複数の凹部166が形成されている。これら凹部166は、可動弁体60の軽量化に寄与する。
【0054】
図15は、レバー軸48の中心軸線に沿ったレバー組立体40の断面図である。小径円筒部120の内周面121には、球体摺動面168が設けられている。この球体摺動面168は、球体52と当接しうる当接面である。球体摺動面168が設けられている周方向範囲は、レバー46の左右回動可能範囲に対応している。この球体摺動面168には、クリック発現用の凸部170が設けられている。旋回クリック用球体52は、弾性部材50によって、常に、球体摺動面168に押しつけられている。
【0055】
[レバーの前後回動に伴う各部の動き]
前述したように、吐出量の調整では、ハンドル14が上下に動かされる(
図3の矢印M参照)。このハンドル14の動きにより、レバー46の前後回動が生じる。この前後回動に連動して、レバー46の下端95が回動する。この下端95とレバー係合凹部98との係合により、可動弁体60が動かされる。可動弁体60は、固定弁体62の上を直線に沿って摺動する。この摺動の間、平滑面PL1と平滑面PL2との面接触は維持される。同時に可動弁体60は、回動体44に対しても摺動する。
【0056】
可動弁体60の移動方向は、回動体44によって規制されている。この規制により、レバーの前後回動のみによっては湯水の混合割合が変化しない。本実施形態では、複数の移動方向規制機構が採用されている。移動方向規制機構は、回動体44と可動弁体60(上側部材86)との係合である。
【0057】
この移動方向規制機構には、回動体44が関与している。
図14(a)は回動体44の平面図である。
図14(b)は回動体44の側面図である。
図14(c)は回動体44の底面図である。
図14(d)は、
図14(a)のd−d線に沿った断面図である。
図14(c)が示すように、回動体44(の基部102)の裏面には、スライド溝Gvが設けられている。このスライド溝Gvは、底面Gv1と、2つの側面Gv2とを有している。底面Gv1の中央に、貫通孔110が設けられている。このスライド溝Gvに、係合凸部99が嵌められている。
【0058】
第1の移動方向規制機構は、上側部材86の係合凸部99と、回動体44のスライド溝Gvとの係合である。より詳細には、係合凸部99の側面174(
図13(a)から(c)参照)が、スライド溝Gvの側面Gv2と摺動する。このスライドの方向は、係合凸部99の側面174に沿った直線方向D1である。係合凸部99は、弾性部材配置部101、弾性部材載置面162、球保持部164等を有しつつ、移動方向の規制にも寄与している。また、上方に突出した係合凸部99の上に弾性部材58及び球体56が載置されることで、弾性部材58及び球体56の位置が高くなる。よって、球体56を基部102の上面よりも上側に突出させるのが容易とされている。このように係合凸部99は、移動方向の規制及び前後クリック機構の発現に寄与している。
【0059】
なお、上述の通り、前述した貫通孔110は、上記スライド溝Gvの底面Gv1に設けられている。即ちスライド溝Gvの形成された部分は、そのスライド溝Gvの深さの分だけ薄くされており、この薄肉部分に貫通孔110が設けられている。よって、貫通孔110の上下方向長さが短くされており、上記上側突出部の形成が容易とされている。
【0060】
第2の移動方向規制機構は、上側部材86の側面180(
図13(a)及び
図8参照)と、回動体44の基部102に設けられた下方凸部182(
図8参照)との係合である。この下方凸部182は、側面183を有している(後述の
図25参照)。この側面183が、上側部材86の側面180と摺動する。この係合による移動方向も、前述した直線方向D1である。側面180と、前述した側面174とは、平行である。
【0061】
このように、同一の移動方向D1に対して複数の移動方向規制機構が設けられることで、移動方向がより確実に制御されている。
【0062】
なお、前述したように貫通孔110は長孔であるが、この長孔の長手方向は、直線方向D1である(
図13(d)参照)。貫通孔110の幅及び深さは一定である。この貫通孔110内において、球体56は方向D1(貫通孔110の長手方向)に沿って動く。この動きによって球体56の位置が変化しても、球体56の突出高さは変わらない。
【0063】
[レバーの左右回動(旋回)に伴う各部の動き]
前述したように、温度の調整では、ハンドル14が旋回される(後述の
図19参照)。このハンドル14の旋回により、レバー46も旋回する。この旋回が左右回動である。レバー46の下端95とレバー係合凹部98との係合により、可動弁体60が回転する。可動弁体60は、固定弁体62に対して回転する。この回転中において、平滑面PL1と平滑面PL2との面接触は維持される。この回転により、面積比r1(後述)が変化し、吐水の温度が調整される。
【0064】
レバー左右回動の角度範囲は制約されている。前述したように、連結部124の下面125には、第1ストッパー150及び第2ストッパー152が設けられている(
図10参照)。一方、回動体44の基部102は、半径方向外側に突出する外側延在部109を有する(
図13(d)及び
図8参照)。この外側延在部109には、前述した貫通孔110が設けられている。レバー左右回動に伴い、この外側延在部109は、第1ストッパー150から第2ストッパー152までの範囲で円周方向に移動する。即ち、外側延在部109は、左右位置Rx1からRy1までの範囲で円周方向に移動する(
図10参照)。この移動において、この外側延在部109の周方向中心位置の移動範囲は、左右位置Rx2からRy2までである。この左右位置Rx2からRy2までの角度範囲Rfが、レバー46の左右回動角度範囲である。角度範囲Rfは、前後クリック用球体56の移動範囲でもある。
【0065】
このように、外側延在部109とストッパー150、152との係合が、第1の左右回動範囲規制機構である。更に、第2の左右回動範囲規制機構が設けられている。
図8及び
図14(d)が示すように、回動体44の基部102には、第2外側延在部111が設けられている。この第2外側延在部111は、左右位置Rx3からRy3までの範囲で円周方向に移動する(
図10参照)。
【0066】
これら2つの左右回動範囲規制機構は連動している。外側延在部109が第1ストッパー150に当接しているとき、第2外側延在部111は第2ストッパー152に当接している。外側延在部109が第2ストッパー152に当接しているとき、第2外側延在部111は第1ストッパー150に当接している。2つの左右回動範囲規制機構により、レバー46を限界まで左右回動したときの衝撃力が分散し、耐久性が向上する。
【0067】
以上のような構造のレバー組立体40は、旋回クリック機構と、前後クリック機構とを有する。旋回クリック機構とは、レバー46の左右回動に伴うクリック感を発現する機構である。前後クリック機構とは、レバー46の前後回動に伴うクリック感を発現する機構である。
【0068】
[左右回動操作でのクリック感α]
左右回動操作でのクリック感は、旋回クリック機構によって生じる。本願では、このクリック感が、単にクリック感αとも称される。
図15から17が示すように、このクリック感αは、旋回クリック用球体52と凸部170との係合又は係合解除によって生じる。
図16は、
図15と同様の断面図であり、球体52が凸部170と係合している状態を示す。
図17は、
図15と同様の断面図であり、球体52と凸部170との係合が解除された状態を示す。レバー46の左右回動により、
図15の状態から、
図16の係合状態に移行し、更に
図17の係合解除状態に移行する。
図16に示される係合状態によって弾性部材50が圧縮されるとともに、左右回動時の抵抗力が増加する。この抵抗力の増加に起因する感覚も、クリック感αの一例である。また、係合解除の瞬間に、振動が発生する。この振動は、典型的なクリック感αを生じさせる。また、この係合解除の瞬間に、音が発生する。この音も、クリック感αの一例である。
【0069】
[前後回動操作でのクリック感β]
前後回動操作でのクリック感は、前後クリック機構によって生じる。本願では、このクリック感が、単にクリック感βとも称される。
図12は、球体56と溝154とが係合した状態を示す。このクリック感βは、球体56と溝154との係合又は係合解除によって生じる。また、このクリック感βは、球体56と突条156との係合又は係合解除によって生じる。レバー46の前後回動により、球体56はクリック機構発現部146上を半径方向に移動する。この移動により、球体56と第1の溝154との係合が解除され、更に移動すると、球体56と第2の溝154とが係合する。これらの係合により、振動が生じうる。この振動がクリック感βを生じさせる。これらの係合により、レバー前後回動時の抵抗力が変化する。この抵抗力の変化に起因する感覚も、クリック感βの一例である。また、この係合の瞬間に、音が発生する。この音も、クリック感βの一例である。また、球体56と突条156との係合により、レバー前後回動時の抵抗力が増加する。この抵抗力の増加に起因する感覚も、クリック感βの一例である。
【0070】
図18は、
図15から17に示される実施形態の変形例である。この実施形態では、弾性部材50に代えて、2つの弾性部材200が用いられている。これらの弾性部材200は、コイルバネである。コイルバネ200の長手方向長さは、コイルバネ50の長手方向長さよりも短い。更に、
図18の実施形態は、中間部材202を有する。中間部材202は、円柱状の部材である。中間部材202の材質は、ステンレス鋼である。中間部材202は、スペーサーの役割を果たす。中間部材202により、2つのコイルバネ200の間隔が設定される。中間部材202により、コイルバネ200の圧縮度合いが調整されうる。
【0071】
中間部材202は、レバー軸48に固定されていない。中間部材202は、レバー軸48に固定されていてもよい。
【0072】
図19は、ハンドル14の左右回動について説明するための平面図である。ハンドル14は、左限界MLから右限界MRまで左右回動可能である。ハンドル14の左右回動可能範囲RFは、前述した
図10の角度範囲Rfに対応している。範囲RFの角度θfは、範囲Rfの角度θfに等しい。
図19の実施形態では、この左右回動可能範囲RFの中心左右位置C1が、ハンドル14の正面位置FRに一致している。この中心左右位置C1は、
図10の中心左右位置c1に対応している。
図19の実施形態では、ハンドル14の左右回動範囲は、正面位置に対して左右対称である。ハンドル14の左右回動範囲は、正面位置FRに対して左右対称でなくてもよい。
【0073】
図19において、両矢印RT1は湯が混合されない角度範囲を示す。また、両矢印RT2は、湯と水とが混合されるか、又は、水が無混合(湯が100%)の角度範囲を示す。本実施形態では、角度範囲RT1と角度範囲RT2との境界位置K1が、正面位置FRよりも左側に位置している。よって、レバー左右位置が正面位置FRからずれている場合でも、水のみが吐出されうる。このため、意図しない湯の混合が抑制され、省エネルギーに寄与しうる。本願において、この境界位置K1は、水吐出境界位置とも称される。
【0074】
図19において両矢印θkで示されるのは、正面位置FRと水吐出境界位置K1との間の角度である。省エネルギーの観点から、角度θkは、1度以上が好ましく、3度以上がより好ましく、5度以上が更に好ましい。水から湯水混合水への切替の操作性を高める観点から、角度θkは、20度以下が好ましく、15度以下がより好ましく、10度以下が更に好ましい。本実施形態では、この角度θkは5度とされた。
【0075】
境界位置K1の左右位置(角度θk)は、例えば、角度θx(後述)によって調整される。もちろん、角度θkは、各弁孔及び流路形成凹部の位置、形状等によって調整されてもよい。
【0076】
レバー左右位置(ハンドル14の左右位置)が正面位置FRにあるとき、水のみが吐出される。すなわち、レバー左右位置が正面位置FRにあるとき、湯が混合されない。レバー左右位置が正面位置FRにあるとき、水の割合が100%である。
【0077】
図19が示すように、角度範囲RT1は、使用者から見て、境界位置K1よりも右側(低温側)である。この角度範囲RT1は、
図10の角度範囲Rt1に対応している。範囲RT1の角度θ1は、範囲Rt1の角度θ1に等しい。レバー左右位置が角度範囲RT1にあるとき、湯が混合されない。すなわち、レバー左右位置が角度範囲RT1にあるとき、水の割合が100%である。
【0078】
図19が示すように、角度範囲RT2は、使用者から見て、水吐出境界位置K1よりも左側である。この角度範囲RT2は、
図10の角度範囲Rt2に対応している。範囲RT2の角度θ2は、範囲Rt2の角度θ2に等しい。レバー左右位置が角度範囲RT2にあるとき、湯と水とが混合されるか、又は、水が無混合(湯が100%)である。即ち、レバー左右位置が角度範囲RT2にあるとき、水の割合が0%以上100%未満である。
【0079】
この
図19の実施形態では、ハンドル14の左右回動可能範囲RFが正面位置FRに対して左右対称とされたが、左右非対称とされてもよい。例えば、正面位置FRと右限界MRとの角度が40度とされ、正面位置FRと左限界MLとの角度が60度とされてもよい。
【0080】
角度範囲RT2が小さすぎると、湯水混合比率を調節できるハンドル14の角度範囲が狭くなりすぎて、湯水混合比率の変化が急激となりうる。この観点から、範囲RT2の角度θ2は、40度以上が好ましく、50度以上がより好ましく、55度以上が特に好ましい。角度範囲RT2が大きすぎると、湯水混合比率を調節できるハンドル14の角度範囲が広くなりすぎて、操作性が低下する。この観点から、範囲RT2の角度θ2は、100度以下が好ましく、90度以下がより好ましく、70度以下が特に好ましい。
【0081】
角度範囲RT1の角度θ1は0度とすることもできる。しかし、通常の湯水混合栓では、角度θ1が0度とはされていないため、θ1を0度とすると、使用者がハンドル14を正面位置FRよりも右側に過度に操作してしまうことがある。この過度な操作の繰り返しは、湯水混合栓に過度な負担を与え、湯水混合栓の耐久性に悪影響を与える場合がある。この観点から、範囲RT1の角度θ1は、10度以上が好ましく、20度以上がより好ましく、30度以上が特に好ましい。角度θ1が過大である場合、水の割合が100%である範囲が広くなりすぎて、操作性が低下する。この観点から、範囲RT1の角度θ1は、70度以下が好ましく、60度以下がより好ましく、50度以下が特に好ましい。
【0082】
角度範囲RT1と角度範囲RT2との角度比(θ1/θ2)が小さすぎると、角度θ1が小さくなりすぎたり、角度θ2が大きくなりすぎたりして、前述の問題が生じやすくなる。この観点から、角度比(θ1/θ2)は、0.2以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.6以上が特に好ましい。また、角度比(θ1/θ2)が大きすぎると、角度θ1が大きくなりすぎたり、角度θ2が小さくなりすぎたりして、前述の問題が生じやすくなる。この観点から、角度比(θ1/θ2)は、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下が特に好ましい。
【0083】
図19の実施形態では、角度範囲RT1が、使用者から水吐出境界位置K1よりも右側とされており、水吐出境界位置K1よりも右側で水の割合が100%とされている。更に、角度範囲RT2が、使用者から見て水吐出境界位置K1よりも左側とされており、水吐出境界位置K1よりも左側で水の割合が0%以上100%未満とされている。これらの構成が逆にされてもよい。即ち、角度範囲RT1が、使用者から見て水吐出境界位置K1よりも左側とされており、水吐出境界位置K1よりも左側で水の割合が100%とされ、且つ、角度範囲RT2が、使用者から見て水吐出境界位置K1よりも右側とされており、水吐出境界位置K1よりも右側で水の割合が0%以上100%未満とすることもできる。この場合でも、角度θ1、角度θ2及び/又は角度比(θ1/θ2)に関する前述の数値規定の全てが適用されうる。
【0084】
なお、レバー左右位置は、レバー46の周位置であり、ハンドル14の周位置と同義である。角度範囲RT1は、湯が混合されないレバー左右位置である。角度範囲RT2は、湯が混合されるレバー左右位置である。「湯が混合される」とは、湯が100%である場合を含む。
【0085】
図10が示すように、角度範囲Rt2の全域に、クリック機構発現部146が設けられている。よって、レバー左右位置が角度範囲RT2にあるとき、前後クリック機構が働く。一方、角度範囲Rt1の全域には、クリック機構発現部146が設けられていない。角度範囲Rt1の全域は、クリック無発現部148である。よって、レバー左右位置が角度範囲RT1にあるとき、前後クリック機構は働かない。
【0086】
従って、本実施形態では、湯が混合されないレバー左右位置では、前後回動操作においてクリック感βが発現しない。また、湯が混合されるレバー左右位置において、前後回動操作でクリック感βが発現する。よって、前後回動操作を行えば、クリック感βの有無によって、湯が混合されているか否かが判別される。
【0087】
湯が混合されているか否かの判別は、レバー左右回動に伴うクリック感αによっても達成されうる。レバー46の左右回動動作中に、水吐出境界位置K1においてクリック感αが発現するのが好ましい。このクリック感αにより、湯が混合されているか否かの切替が判別される。この場合、クリック感βと、このクリック感αとにより、湯が混合されているか否かの判別がより一層確実になされうる。これは省エネルギーに寄与する。
【0088】
図20(a)は、固定弁体62の平面図である。
図20(a)は、固定弁体62を上側からみた図である。
図20(b)は、固定弁体62の底面図である。
図20(b)は、固定弁体62を下側からみた図である。
【0089】
図20(a)が示すように、湯用弁孔80は、曲がった長孔である。湯用弁孔80は、上面開口線80Lを有する。この上面開口線80Lは、平滑面PL1における湯用弁孔80の輪郭線である。
図20(a)が示すように、水用弁孔82は、曲がった長孔である。水用弁孔82は、上面開口線82Lを有する。この上面開口線82Lは、平滑面PL1における水用弁孔82の輪郭線である。
【0090】
図20(b)が示すように、湯用弁孔80は、下面開口線80sを有している。水用弁孔82は、下面開口線82sを有している。吐出弁孔84は、下面開口線84sを有している。
【0091】
図20(a)が示すように、湯用弁孔80の上面開口線80L及び水用弁孔82の上面開口線82Lは、左右非対称に形成されている。即ち、
図20(a)の平面視において、ある直線を軸として図形を反転させると上面開口線80Lと上面開口線82Lとが重なるような対称軸は存在しない。例えば、レバー前後方向中心ラインLcに関して、上面開口線80Lと上面開口線82Lとは対称性を有さない。上方から見た平面視において、レバー前後方向中心ラインLcは、レバー46が正面位置FRにあるときのレバー46の中心線に一致する(
図19参照)。
【0092】
湯水の切り替え機能の自由度を高める手法の一つは、流路形成凹部94と、湯用弁孔80及び水用弁孔82との位置関係を多様に設計することである。上述した左右対称の構成に限定されないことで、湯用弁孔80及び水用弁孔82の設計自由度が向上する。よって、大きなコスト上昇を招くことなく、多様な湯水切り替え機能が実現されうる。
【0093】
図21(a)は、可動弁体60の下側部材88の平面図である。
図21(a)は下側部材88を上方から見た図である。
図21(b)は、下側部材88の底面図である。
図21(b)は下側部材88を下方から見た図である。
図21(c)は、
図21(b)のc−c線に沿った断面図である。
図21(d)は、
図21(b)のd−d線に沿った断面図である。
【0094】
流路形成凹部94は、下面開口線94Lを有する。この下面開口線94Lは、単に開口線とも称される。開口線94Lは、平滑面PL2における流路形成凹部94の開口形状である。
【0095】
[定義]
本願における用語が、以下の如く定義される。
(a)左右位置B
水のみが吐出されるレバー左右位置から湯吐出側に上記レバーを左右回動させるとき、流路形成凹部94と湯用弁孔80との重なり(重なりGとする)が開始されるレバー左右位置が左右位置Bとされる。なお、上記重なりGが開始されるレバー左右位置が、レバー前後位置によって相違する場合、あらゆるレバー前後位置のなかで最初に上記重なりGが生じるレバー左右位置が、左右位置Bとされる。
(b)前後位置A
上記左右位置Bに設定された状態で、止水状態から吐出側に上記レバーが前後回動されるとき、流路形成凹部94と水用弁孔82との重なりが開始されるレバー前後位置が前後位置Aとされる。
(c)点Pa
上記レバーが上記前後位置A且つ上記左右位置Bにあるとき、流路形成凹部94の下面開口線94L上の点のうち、水用弁孔82の上面開口線82Lに重なっている点がPaとされる。なお、上記レバーが上記前後位置A且つ上記左右位置Bにあるとき、下面開口線94Lと上面開口線82Lとの重なりが線である場合、この線の中点が点Paとされる。
(d)点A1
レバー46が上記前後位置A且つ上記左右位置Bにあるとき、上記点Paに接している固定弁体62上の点がA1とされる。
(e)点A2
上記左右位置Bに設定された状態で、レバー前後位置が最大吐出位置にあるとき、上記点Paに接している固定弁体62上の点がA2とされる。
(f)点A3
上記点A1と上記点A2との中点である固定弁体62上の点がA3とされる。
(g)前後位置C
上記点Paが上記点A3と重なるときのレバー前後位置が前後位置Cとされる。
(h)軌跡ラインR1
上記前後位置Cに設定された状態で、レバー46を左右回動させたとき、この左右回動に伴い移動する上記点Paの軌跡が軌跡ラインR1とされる。
(i)領域S
上記左右位置Bに設定された状態で、上記レバーを全範囲で前後回動させたとき、流路形成凹部94と重なりうる水用弁孔82の重なり領域が領域Sとされる。
(J)面積S1、S2
上記領域Sのうち、上記軌跡ラインR1よりも吐出減少側の面積がS1とされ、上記軌跡ラインR1よりも吐出増加側の面積がS2とされる。
(k)吐出増減方向
レバー左右位置が固定された条件下における上記点Paの軌跡が、吐出増減方向とされる。吐出増減方向は、レバー左右位置によって相違する。吐出増減方向は直線方向となる。
(l)吐出増加側、吐出減少側
上記吐出増減方向に基づき、吐出増加側及び吐出減少側が決定される。
(m)水用弁孔の流通可能面積W1
レバーの左右回動の全範囲及び前後回動の全範囲を考慮して、いずれかの状態において流路形成凹部94と重なりうる水用弁孔82の総面積がW1である。
(n)湯用弁孔の流通可能面積H1
レバーの左右回動の全範囲及び前後回動の全範囲を考慮して、いずれかの状態において流路形成凹部94と重なりうる湯用弁孔80の総面積がH1とされる。
(o)水用弁孔の全体面積W2
水用弁孔82の面積がW2とされる。この面積W2は、上面開口線82Lで囲まれた領域Yの面積である(後述の
図26(a)参照)。
(p)湯用弁孔の全体面積H2
湯用弁孔80の面積がH2とされる。この面積H2は、上面開口線80Lで囲まれた領域Xの面積である(後述の
図26(a)参照)。
(q)面積Q1、面積Q2
上記面積W1のうち、軌跡ラインR1よりも吐出減少側の面積がQ1とされる。上記面積W1のうち、軌跡ラインR1よりも吐出増加側の面積がQ2とされる。
【0096】
図22及び
図23は、固定弁体62の上面と、可動弁体60(下側部材88)の下面との重なり状態を示す図である。
図22及び
図23では、可動弁体60で隠される部分も含め、固定弁体62が実線で描かれている。
図22及び
図23では、可動弁体60(下側部材88)の下面線が破線で描かれている。
図22及び
図23では、上面開口線80L及び上面開口線82Lと下面開口線94Lとの重なり状態が示されている。
【0097】
図22における上側の図は、次の状態B1を示す。
[状態B1]:レバー左右位置が上記左右位置Bであり、レバー前後位置が上記前後位置Aである。
【0098】
図22における下側の図は、次の状態B2を示す。
[状態B2]:レバー左右位置が上記左右位置Bであり、レバー前後位置が最大吐出位置である。
【0099】
上述の通り、状態B1において点Pa及び点A1が決定される。点Paは下面開口線94L上の点である。本実施形態では、点Paは凸状部m1(後述)に位置する。点A1は、固定弁体62上の点である。点A1は、上面開口線82L上の点である。
【0100】
上述の通り、状態B2において点A2が決定される。点A2は、状態B2において、点Paと重なっている。点A2は、固定弁体62上の点である。点A2は、平滑面PL1上の点である。
【0101】
上述の通り、点A3は、点A1と点A2とを結ぶ線分の中点である。点A3は、固定弁体62上の点である。点A3は、平滑面PL1上の点である。
【0102】
図23における左側の図は、次の状態ML1を示す。
[状態ML1]:レバー左右位置が左限界ML(湯側限界ML)であり、レバー前後位置が最大吐出位置である。
【0103】
図23における中央の図は、次の状態FR1を示す。
[状態FR1]:レバー左右位置が正面位置FRであり、レバー前後位置が最大吐出位置である。
【0104】
図23における右側の図は、次の状態MR1を示す。
[状態MR1]:レバー左右位置が右限界MR(水側限界MR)であり、レバー前後位置が最大吐出位置である。
【0105】
状態ML1では、流路形成凹部94は、水用弁孔82とは重なっていない。流路形成凹部94は、湯用弁孔80とのみ重なっている。状態ML1では、湯のみ(湯100%)が吐出される。状態FR1では、流路形成凹部94は、湯用弁孔80とは重なっていない。流路形成凹部94は、水用弁孔82とのみ重なっている。状態FR1では、水のみ(水100%)が吐出される。本実施形態では、レバー前後位置に関わらず、レバー左右位置が正面位置FRにあるとき、水のみが吐出される。状態MR1では、流路形成凹部94は、湯用弁孔80とは重なっていない。流路形成凹部94は、水用弁孔82とのみ重なっている。状態MR1では、水のみ(水100%)が吐出される。
【0106】
図23の状態ML1において、流路形成凹部94と湯用弁孔80との重なり領域XZがハッチングで示されている。
図23の状態FR1において、流路形成凹部94と水用弁孔82との重なり領域YZがハッチングで示されている。
図23の状態MR1において、流路形成凹部94と水用弁孔82との重なり領域YZがハッチングで示されている。領域XZは、上面開口線80Lで囲まれた領域Xと、下面開口線94Lで囲まれた領域Zとが重なっている領域である。領域YZは、上面開口線82Lで囲まれた領域Yと、下面開口線94Lで囲まれた領域Zとが重なっている領域である。
【0107】
[湯水の流れ]
湯は、湯導入部(湯導入管18及び湯導入口70)を経由して、湯用弁孔80に至る。水は、水導入部(水導入管20及び水導入口72)を経由して、水用弁孔82に至る。
【0108】
湯用弁孔80に到達した湯は、流路形成凹部94に流入する。この流入は、上記領域XZにより生ずる。可動弁体60の摺動により、領域XZの面積は変化する。領域XZが存在しない場合、湯は流路形成凹部94に流入しない。領域XZが存在しない場合とは、可動弁体60(下側部材88)の下面を構成する平滑面PL2によって湯用弁孔80が完全に塞がれていることを意味する。平滑面PL2によって湯用弁孔80が完全に塞がれている状態の例は、
図23における状態FR1及び状態MR1である。
【0109】
水用弁孔82に到達した水は、流路形成凹部94に流入する。この流入は、上記領域YZにより生ずる。可動弁体60の摺動により、領域YZの面積は変化する。領域YZが存在しない場合、水は流路形成凹部94に流入しない。領域YZが存在しない場合とは、可動弁体60(下側部材88)の下面を構成する平滑面PL2によって水用弁孔82が完全に塞がれていることを意味する。平滑面PL2によって水用弁孔82が完全に塞がれている状態の例は、
図23における状態ML1である。
【0110】
流路形成凹部94に到達した湯及び/又は水は、吐出弁孔84、吐出口74及び吐出管22を経由して、吐出部16に至る。
【0111】
湯と水との混合割合は、上記領域XZと上記領域YZとの面積比r1に依存する。ハンドル14(レバー46)の左右回動によって、可動弁体60が回転する。この可動弁体60の回転によって、面積比r1が変化する。この変化によって、水温が調整される。
【0112】
吐出量は、上記領域XZと上記領域YZとの面積合計Saに依存する。ハンドル14の上下動によって、レバー46が前後回動し、可動弁体60が直線方向D1方向に移動する。この可動弁体60の移動によって、面積合計Saが変化する。この変化によって、吐出量が調整される。面積合計Saがゼロである場合、吐出がストップする。面積合計Saがゼロである場合とは、平滑面PL2によって湯用弁孔80及び水用弁孔82が完全に塞がれていることを意味する。前述の前後位置Aは、吐出量がゼロの状態と、吐出が開始される状態との境界である(
図22の状態B1参照)。
【0113】
図23の状態FR1が示すように、レバーの前後位置に関わらず、レバー左右位置が正面位置FRにあるとき、湯は混合されない。即ちこの場合、水が100%である。よって、加熱装置(給湯器)は作動しない。一般に、湯水混合栓の使用者は、レバー46を正面位置FRに合わせて使用する傾向にある。よって、湯水混合栓10では、無駄な湯の混合が抑制され、省エネルギーが達成される。
【0114】
図24(a)は、下面開口線94Lの形状を示す平面図である。この下面開口線94Lは、ストレート状部分ST1を有する。このストレート状部分ST1は、直線方向D1に平行である。ストレート状部分ST1は、湯用弁孔80側に配置されている。吐出量が最大である状態において、水のみが吐出される状態から湯が混合される状態へと移行するとき、下面開口線94Lのうち、上面開口線80Lに最初に重なるのが、このストレート状部分ST1である。このようなストレート状部分ST1の配置は、レバー左右位置が正面位置FRにあるときにおいて湯の混合を防ぐのに寄与している。
【0115】
図24(b)、(c)及び(d)は、下面開口線94Lの変形例である。
図24(c)のように、ストレート状部分ST1が設けられなくても良い。また、
図24(d)のように、湯用弁孔80側及び水用弁孔82側の両方にストレート状部分ST1が設けられても良い。
【0116】
なお、ストレート状部分ST1は、直線方向D1に略平行であるのが好ましい。略平行とは、±5度の誤差角度を許容する主旨である。この誤差角度は、好ましくは±3度であり、更に好ましくは、上記実施形態の如く、ストレート状部分ST1と直線方向D1とは平行とされる。なお、ストレート状部分ST1が直線でない場合、ストレート状部分ST1の両端を結ぶ直線によって、上記誤差角度及び上記平行が判定される。
【0117】
直線方向D1に沿ったストレート状部分ST1が設けられることで、正面位置FRにおける前後回動の全範囲において、湯の混合が効果的に防止される。よって、使用者の意図に反して湯が混合されることが抑制され、省エネルギーが達成されうる。また、特殊な弁孔形状によって湯の混合を避ける必要が無くなるので、弁孔の設計自由度が向上する。
【0118】
図25(a)から(d)は、レバー46の前後回動に伴う各部分の動きを示す図である。
図25(a)及び(c)が示すように、前後方向D2に対して直線方向D1は傾斜している。この傾斜を実現させている構成が、前述した移動方向規制機構である。
【0119】
前後方向D2は、上側から見た平面視におけるレバー46の前後回動方向である。前後方向D2は、レバー46の前後回動の中心軸線(レバー軸48の中心軸線)に対して垂直な方向である。レバー46の前後回動の中心軸線に対して垂直な平面と平滑面PL2との交線Lm(図示しない)を考えたとき、前後方向D2はこの交線Lmに平行である。
【0120】
直線方向D1は、レバー前後回動に伴う可動弁体60の移動方向である。よって、レバー前後回動により、流路形成凹部94(下面開口線94L)は、直線方向D1に沿って移動する。
【0121】
図25(a)及び(b)は、吐水状態におけるレバー組立体40の断面図である。
図25(a)は上側部材86の上面に沿った断面図であり、
図25(b)はレバー46の軸孔100の垂直方向に沿った断面図である。
図25(c)及び(d)は、止水状態におけるレバー組立体40の断面図である。
図25(c)は上側部材86の上面に沿った断面図であり、
図25(d)はレバー46の軸孔100の垂直方向に沿った断面図である。
図25(b)及び(d)において、軸孔100の内部の部材の記載は省略されている。
【0122】
図25(a)及び
図25(c)が示すように、レバー46の下端部(ハッチング部分)とレバー係合凹部98との間には、隙間Gpが設けられている。前述したように、レバー46の前後回動によって、レバー46の下端部の移動方向は前後方向D2であるが、可動弁体60(上側部材86)の移動方向は直線方向D1である。隙間Gpは、可動弁体60が直線方向D1に沿って移動することを許容する。隙間Gpの存在により、直線方向D1と前後方向D2とが相違するにも関わらず、レバー46の下端部が可動弁体60の移動を阻害しない。
【0123】
図25(a)に示されるように、吐出量が最大の状態においては、隙間Gpは、湯水混合栓10の使用者側から見てレバー46の右側に位置し、この場合、レバー46の左側には、隙間Gpは実質的に存在しない。 一方、
図25(c)に示されるように、止水状態においては、隙間Gpは、湯水混合栓10の使用者側から見てレバー46の左側に位置し、この場合、レバー46の右側には、隙間Gpは実質的に存在しない。これらの構成により、隙間Gpの寸法が最小限とされている。なお、図示しないが、最大吐水と止水との中間状態においては、隙間Gpは、湯水混合栓10の使用者側から見て、レバー46の右側と左側とに存在する。
図25(a)において符号G1で示されるのは、レバー46の右側の隙間距離である。
図25(c)において符号G2で示されるのは、レバー46の左側の隙間距離である。[G1+G2]は、レバー46の上下方向の位置に関わらず、一定である。
【0124】
レバー係合凹部98は、第一側面98aと第二側面98bとを有する(
図13(a)、
図25(b)及び
図25(d)参照)。第一側面98aは、平面である。第二側面98bは、平面である。
【0125】
レバー46の下端部は、第一曲面Rs1と、第二曲面Rs2とを有する。第一曲面Rs1及び第二曲面Rs2は、凸曲面である。
【0126】
レバー46の前後回動において、第一曲面Rs1は第一側面98aに接触している。この接触(接触1とする)は、線接触である。レバー46が吐出側に回動されるとき、第一曲面Rs1が第一側面98aを押し、可動弁体60が移動する。レバーの前後回動の位置によって、線接触の位置は上下方向に移動するが、線接触は、レバーの前後回動位置に関わらず、維持される。
【0127】
レバー46の前後回動において、第二曲面Rs2は第二側面98bに接触している。この接触(接触2とする)は、線接触である。レバー46が止水側に回動されるとき、第二曲面Rs2が第二側面98bを押し、可動弁体60が移動する。レバーの前後回動の位置によって、線接触の位置は上下方向に移動するが、線接触は、レバーの前後回動位置に関わらず、維持される。
【0128】
前述したように、レバーの前後回動操作に伴い接触位置が移動するが、第一曲面Rs1及び第二曲面Rs2は、この接触位置の移動に伴う摩擦抵抗を低減させる。よって、円滑なレバー操作が実現される。
【0129】
レバー46の回転軸に対して垂直な平面による断面において、第一曲面Rs1の断面線は円弧(円弧1とする)であり、この円弧1の半径をr1とする。レバー46の回転軸に対して垂直な平面による断面において、第二曲面Rs2の断面線は円弧(円弧2とする)であり、この円弧2の半径をr2とする。半径r1は半径r2に等しい。円弧1の中心と円弧2の中心とは同一である。即ち、円弧1と円弧2とは同一円周上にある。
【0130】
図25(d)において両矢印d1で示されるのは、円弧1と円弧2とを含む円の直径である。
図25(a)において両矢印d3で示されるのは、第一側面98aと第二側面98bとの間の距離である。レバーの前後回動操作における遊び及びガタツキを抑制する観点から、差(d3−d1)は、0.2mm以下が好ましく、0.1mm以下がより好ましく、0.05mm以下が特に好ましい。寸法精度を緩和する観点から、差(d3−d1)は、0mm以上が好ましく、0.01mm以上がより好ましく、0.02mm以上が特に好ましい。
【0131】
第一曲面Rs1と第二曲面Rs2とは、いずれも、同一の円筒面(以下、仮想円筒面という)の一部である。この仮想円筒面の中心軸線Czは、前後方向D2に対して垂直である。この中心軸線Czは、レバー46の前後回動の中心軸線に平行である。可動弁体60が直線方向D1に沿って移動しても、第一側面98a及び第二側面98bは、常に、この仮想円筒面に接触している。即ち、直線方向D1と前後方向D2とが相違しているにも関わらず、第一側面98aと第一曲面Rs1との接触は維持されている。同様に、直線方向D1と前後方向D2とが相違しているにも関わらず、第二側面98bと第二曲面Rs2との接触は維持されている。しかも、これらの接触は、常に、線接触である。従って、直線方向D1と前後方向D2との相違が実現されつつ、レバー係合凹部98とレバー46の下端部との安定的な接触が、レバーの前後回動範囲の全体に亘って、維持されている。また、接触の形態が線接触であるから、摩擦抵抗が抑制されている。また、これらの線接触の線の方向は、側面98a、98bと曲面Rs1、Rs2との相対移動方向に沿っている。よって摩擦抵抗が抑制されている。これらの構成により、レバー46の前後回動操作は、円滑且つ安定的である。
【0132】
可動弁体60は、前後方向D2とは異なる直線方向D1に移動するため、第一曲面Rs1と第一側面98aとの間で、水平方向の摺動が生じる。第一曲面Rs1の形状は、この摺動に伴う摩擦抵抗を低減させ、円滑なレバー操作を実現する。同様に、第二曲面Rs2と第二側面98bとの間で、水平方向の摺動が生じる。第二曲面Rs2の形状は、この摺動に伴う摩擦抵抗を低減させ、円滑なレバー操作を実現する。
【0133】
なお、凹部96(
図8参照)の深さは、レバー46の前後回動の全範囲において、レバー46の下端と可動弁体60(上側部材86)とが接触しないように設定されている。これは、レバー46の前後回動操作を円滑としている。
【0134】
図25(d)において両矢印d2で示されているのは、レバー46の軸孔100の前方端と第二側面98bとの距離である。この距離d2は、第二側面98bに対して垂直な方向に沿って測定される。この距離d2は、上記直径d1と略等しい。(d1−d2)の差の絶対値は0.05mm以内に設定されている。即ち、d2=d1±0.05mmである。この寸法関係は、レバー46の下端部及び可動弁体60の小型化に寄与している。レバー46の前後回動の全範囲に関し、軸孔100の水平方向位置は、第一側面98aと第二側面98bとの間に収まっている。
【0135】
従来の湯水混合栓では、この前後方向D2と直線方向D1とが平行である。これに対して、湯水混合栓10では、前後方向D2が直線方向D1に対して平行ではない。
図25において両矢印θxで示されるのは、直線方向D1と前後方向D2との成す角度である。
【0136】
仮に、従来のごとく、可動弁体60が前後方向D2に移動する場合、
図23の状態FR1において、領域XZが生じてしまう。すなわち、レバー46が正面位置FRにあるとき、湯が混合されてしまう。しかし、本実施形態では、直線方向D1が、前後方向D2に対して傾斜している。しかも、この傾斜の方向は、レバー左右位置が正面位置FRである場合において、流路形成凹部94と湯用弁孔80との重なりを避けるような方向である。よって、レバー左右位置が正面位置FRである場合において、レバー46を吐出方向に回動させても、領域YZのみが生じ、領域XZは生じない。
【0137】
このように、本実施形態では、直線方向D1を前後方向D2と相違させることで、領域XZの発生を制御している。このため、弁孔形状の制約を少なくすることができ、弁孔形状の設計自由度が向上する。この設計自由度の向上により、湯水混合比率とレバー左右回動操作との関係の設定において、自由度が向上する。また、吐出量とレバー前後回動操作との関係の設定において、自由度が向上する。
【0138】
正面位置FRにおいて湯の混合を防ぎ、且つ各弁孔の設計自由度を高める観点から、上記角度θx参照)は、5度以上が好ましく、10度以上がより好ましく、20度以上が特に好ましい。レバー46の前後回動操作を円滑とする観点から、角度θxは、45度以下が好ましく、40度以下がより好ましく、35度以下が特に好ましい。本実施形態では、角度θxは30度である。
【0139】
一般に、湯用弁孔80に供給される湯の供給圧は、水用弁孔82に供給される水の供給圧よりも低い。これは、湯が給湯装置を経由していることに起因する。湯用弁孔80側にストレート状部分ST1を設けることで、湯側への左右回動において、少ない左右回動角度で領域XZが増加しやすい。特に、水のみが吐出している状態から湯が混合される状態に切り替わる際に、湯の混合割合が増加しやすい。よって、湯が混合されるレバー左右位置にあるにも関わらず吐水温度が上がりにくいという事態が抑制されうる。このため、温度調節が容易な湯水混合栓10が実現されうる。
【0140】
直線方向D1と平行な向きにおける流路形成凹部94の長さがLfとされる。本願において、ストレート状部分ST1とは、曲率半径が長さLfの2倍以上である線によって形成されている部分を意味する。ストレート状部分ST1において、曲率半径が変化していてもよい。製造及び設計の容易性の観点から、ストレート状部分ST1は、曲率半径が長さLfの3倍以上である線によって形成されているのが好ましく、最も好ましいストレート状部分ST1の形状は、直線である。なお、ストレート状部分ST1の曲率半径は、20mm以上、更には25mm以上とすることもでき、例えば28mmとすることができる。
【0141】
図20(a)が示すように、湯用弁孔80の上面開口線80Lは、ストレート状部分ST2を有する。このストレート状部分ST2は、左右位置Bにおける直線方向D1に対して平行である。
図22が示すように、左右位置Bにおいて、ストレート状部分ST1とストレート状部分ST2とが重なる。
【0142】
ストレート状部分ST1及びストレート状部分ST2により、正面位置FRにおける湯の混合が確実に防止されている。また、ストレート状部分ST1及びストレート状部分ST2により、レバー46を左右位置Bから湯側に回動したとき、湯の混合割合を増加させることができる。すなわち、レバー46を左右位置Bから湯側に回動したとき、レバーの左右回動角度の変化量に対する領域XYの増加率を高めることができる。よって、水のみと吐出から湯水混合状態への切り替え時に、吐水温度を円滑に上昇させることができる。
【0143】
図26(a)は、固定弁体62の一部拡大図である。
図26(a)では、水用弁孔82の面積W2がハッチングで示されている。
図26(a)では、湯用弁孔80の面積H2がハッチングで示されている。
【0144】
図26(b)流路形成凹部94の下面開口線94Lの拡大図である。流路形成凹部94は、複数の凸状部m1を有する。下面開口線94Lで囲まれた領域Zの面積がMZとされる(
図21(b)参照)。この面積MZのうち、凸状部m1の面積がM1とされ、それ以外の部分(主部)の面積がM2とされる。凸状部m1が複数である場合、面積M1は、これら複数の凸状部m1の合計面積である。面積M1と面積M2との境界は直線によって区画される。
【0145】
あらゆるレバー左右位置において、止水状態から吐水状態へ移行するときに最初に水又は湯が流通するのは、凸状部m1である。この凸状部m1は、止水状態から吐出状態に移行する際に、湯又は水の流路形成凹部94への急激な流入や急激な遮断を緩和しうる。凸状部m1は、ウォーターハンマーの抑制に寄与する。
【0146】
M1/MZが過小である場合、ウォーターハンマーの抑制効果が減少する。また面積M1が過度に小さい場合、可動弁体60の製造コストが上昇しうる。これらの観点から、M1/MZは、0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.015以上がより好ましい。M1/MZが過大である場合、凸状部m1への流量が増加し、ウォーターハンマーの抑制効果が減少しうる。この観点から、M1/MZは、0.03以下が好ましく、0.025以下がより好ましく、0.02以下がより好ましい。本実施形態では、M1/MZは0.017とされた。
【0147】
湯水混合割合の調整性を高める観点から、面積MZは、100mm
2以上が好ましく、110mm
2以上がより好ましく、115mm
2以上がより好ましい。面積MZが過大である場合、湯水混合栓が大型化しうる。この観点から、面積MZは、150mm
2以下が好ましく、130mm
2以下がより好ましく、120mm
2以下がより好ましい。本実施形態では、面積MZは118mm
2とされた。
【0148】
凸状部m1の数は1以上がよく、好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。凸状部m1の数が多い方が、あらゆるレバー左右位置で凸状部m1の効果(ウォーターハンマーの抑制等)が発揮されやすい。なお、凸状部m1の数が多すぎると、可動弁体60の製造コストが上昇しやすい。この観点から、凸状部m1の数は、6以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0149】
図27には、上述の面積S1及び面積S2が図示されている。面積S1及び面積S2のそれぞれがハッチングで示されている。面積S1の領域と面積S2の領域とを合わせた領域が、領域Sである。更に
図27には、上述の軌跡ラインR1が2点鎖線で示されている。本実施形態では、軌跡ラインR1は円弧である。なお面積S2はゼロであってもよい。
【0150】
図28は、
図27で示された領域Sの拡大図である。この
図28を参照して、水用弁孔82の主開口と細開口との区画が説明される。
【0151】
水用弁孔82は、主開口N1と、細開口T1とを有する。細開口T1は、主開口N1から湯用弁孔80側に延在している。換言すれば、細開口T1の存在により、水用弁孔82と湯用弁孔80との距離が近づく。主開口N1は、略三日月形である。
【0152】
細開口T1は、軌跡ラインR1よりも吐出減少側のみに存在する。
図28が示すように、軌跡ラインR1と上面開口線82Lとの交点Prが存在する。吐出増減方向直線Lrのうち、交点Prを通る直線Lr1が一点鎖線で示されている。この直線Lr1が、細開口T1と主開口N1との境界線である。
【0153】
点Prに上記点Paが重なるようにレバー左右位置及びレバー前後位置をセットし、この状態から、レバー左右位置を変えることなく、レバー46を前後回動させる。この前後回動における点Paの軌跡が、直線Lr1である。
【0154】
水用弁孔82は、極細開口T2を有する。極細開口T2は、水用弁孔82において最も湯用弁孔80側に位置し、且つ、軌跡ラインR1よりも吐出減少側にのみ存在する。本実施形態では、細開口T1が、極細開口T2を有する(
図28参照)。
【0155】
極細開口T2の幅Wtは、直線Lr1の横断幅Wmの70%以下である。横断幅Wmは、点Prと点Psとの距離である(
図28参照)。点Psは、直線Lr1と上面開口線82Lとの交点であって、点Pr以外の点である。本願においては、幅Wt、幅Wm及び幅Wxをはじめ、湯用弁孔80及び水用弁孔82の上面開口幅は、吐出増減方向に沿って測定される。
【0156】
水用弁孔82は、幅細部T3を有する。幅細部T3は、水用弁孔82において最も湯用弁孔80側に位置し、且つ、軌跡ラインR1よりも吐出減少側にのみ存在する。幅細部T3とは、その開口幅Wxが1.5mm以下の部分である。本実施形態では、細開口T1が、幅細部T3を有する(
図28参照)。
【0157】
細開口T1は、有底部Tbを有する(
図20(a)参照)。水用弁孔82の上面開口のうち、平滑面PL1の垂直方向に貫通していない部分が、有底部Tbである。
図20(a)の上面視において、有底部Tbは、上面開口線82Lと下面開口線82sとで囲まれる部分である。図示しないが、有底部Tbにおける底面は斜面となっている。この斜面は、湯側にいくほど上側とされている。
【0158】
この有底部Tbにより、湯水混合状態への切り替えにおいて、水の混合量が抑制される。水の混合量を抑制するためには、有底部Tbに代えて、開口幅がより狭い貫通孔を設けることも考えられる。しかしこの場合、開口幅が過小であるため、水の吐出が安定的に得られない恐れがある。有底部Tbにより、少量の水が安定的に吐出されうる。よって、安定的な水温調節が得られる。また、細い貫通孔を形成する場合、固定弁体62の製造コストが高くなることがある。これらの観点から、有底部Tbが設けられるのが好ましい。また、有底部Tbの底面の斜面により、水の急激な流入や急激な遮断が抑制されるため、ウォーターハンマーが抑制されうる。
【0159】
細開口T1を設けた効果を高める観点から、細開口T1の長さLt1は、3.0mm以上が好ましく、4.0mm以上がより好ましく、4.5mm以上がより好ましい。面積W2が過小となるのを防止する観点から、長さLt1は、7.0mm以下が好ましく、5.5mm以下がより好ましく、5.0mm以下がより好ましい。本実施形態では、長さLt1は4.7mmとされた。
【0160】
極細開口T2を設けた効果を高める観点から、極細開口T2の長さLt2は、1.5mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、2.5mm以上がより好ましい。面積W2が過小となるのを防止する観点から、長さLt2は、5.0mm以下が好ましく、3.5mm以下がより好ましく、3.0mm以下がより好ましい。本実施形態では、長さLt2は2.8mmとされた。
【0161】
幅細部T3を設けた効果を高める観点から、幅細部T3の長さLt3は、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2.2mm以上がより好ましい。面積W2が過小となるのを防止する観点から、長さLt3は、4.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、2.8mm以下がより好ましい。本実施形態では、長さLt3は2.5mmとされた。
【0162】
なお、長さLt1,Lt2及びLt3は、次のようにして決定される。あらゆるレバー左右位置において吐出増減方向直線Lrが考慮され、この直線Lrのそれぞれについて、上面開口線82Lとの2つの交点が決定される。
図28の直線Lr1を例にとれば、この2つの交点は、点Ps及び点Prである。これら2つの交点の中点MPが決定される。あらゆるレバー左右位置いおいてこの中点MPが定まる。この中点MPの集合である中点集合線が決定される。長さLt1,Lt2及びLt3は、この中点集合線の長さとされる。
【0163】
通常、水用弁孔82における水の供給圧(水圧)が、湯用弁孔80における湯の供給圧(湯圧)よりも大きい。この供給圧の差が、本願においてW−H圧差とも称される。これは湯が給湯器等の加熱装置を経由して供給されていることに起因する。
【0164】
湯水切り替え位置近傍における水用弁孔82の開口面積が大きい場合、次のような現象(現象Aとする)が生じうる。吐出量が大きい状態で、左右位置Bから湯水混合状態に切り替えると、W−H圧差に起因して、水の圧力によって湯の流入量が意図よりも少なくなりやすい。湯の流入量が少ない場合、給湯装置が作動せず、結果的に湯が流入しない。よって、水温が上がりにくく、使用者が意図した水温を得ることが困難となりうる。よって、この吐出量が大きい状態を考慮すると、湯水切り替え位置近傍における水用弁孔82の開口面積は小さいほうがよい。
【0165】
一方、湯水切り替え位置近傍における水用弁孔82の開口面積が小さい場合、次のような現象(現象Bとする)が生じうる。吐出量が小さい状態で、左右位置Bから湯水混合状態に切り替えると、左右位置Bにおける吐出量が過度に少なくなりうる。また、この場合、湯用弁孔80と水用弁孔82との離間距離が増加しやすいため、レバー46を水側に大きく回動させないと水が流通しないことがある。よって、この吐出量が小さい状態を考慮すると、湯水切り替え位置近傍における水用弁孔82の開口面積は大きいほうがよい。
【0166】
主開口N1の湯側に細開口T1、極細開口T2及び/又は幅細部T3を設けることにより、上記現象A及び現象Bの両者が効果的に抑制されうる。すなわち、吐出量が大きい状態における現象Aと、吐出量が小さい状態における現象Bとが効果的に抑制されうる。
【0167】
[面積S1(mm
2)]
面積S1が小さい場合、吐出量が小さい状態において水の吐出量が過小となりうる。また面積S1が小さい場合、流路形成凹部94及び水用弁孔82の形状によっては、湯用弁孔80と水用弁孔82との離間距離が過大となりうる。この場合、レバーを吐出側に大きく前後回動させないと水が充分に吐出されない場合がある。これらの観点から、面積S1は、5.0mm
2以上が好ましく、7.0mm
2以上がより好ましく、9.0mm
2以上がより好ましい。面積S1が過大である場合、湯水混合栓が大型化しうる。この観点から、面積S1は、15.0mm
2以下が好ましく、13.0mm
2以下がより好ましく、12.0mm
2以下がより好ましい。本実施形態では、面積S1は9.4mm
2とされた。
【0168】
[面積S2(mm
2)]
面積S2はゼロでもよい。ただし、面積S2をゼロより大きくすることにより、次の状態E1から次のレバー回動E2を行う際に、水量の増加率を緩やかにすることができる。
(E1)レバー左右位置が左右位置Bであり、且つ、レバー前後位置が、吐水量が少ないか又は中程度である状態。
(E2)レバー46を吐出側に前後回動させ且つ水側に左右回動させる回動
この観点から、面積S2は、0.2mm
2以上が好ましく、0.5mm
2以上がより好ましい。面積S2が過大である場合、面積S1が面積S2より大きいことに起因する上述の効果が減少する。また面積S2が過大である場合、湯水混合栓が大型化しうる。これらの観点から、面積S2は、6.0mm
2以下が好ましく、3.0mm
2以下がより好ましく、1.0mm
2以下がより好ましい。本実施形態では、面積S2は0.6mm
2とされた。
【0169】
[S1/S2]
S1/S2が過小である場合、面積S1が面積S2より大きいことに起因する上述の効果が減少する。この観点から、S1/S2は、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、13以上がより好ましい。S1/S2が過大である場合、面積S1が過大となったり、面積S2が過小となったりしやすい。これらの観点から、S1/S2は25以下が好ましく、20以下がより好ましく、18以下がより好ましい。
【0170】
図29(a)、(b)及び(c)は、面積Q1及び面積Q2を計算するための図である。
図29(a)では、面積Qa、面積Qb及び面積Qcがハッチングで示されている。
図29(b)では、面積Qdがハッチングで示されている。
図29(c)では、面積Qeがハッチングで示されている。これら
図29(a)、(b)及び(c)では、左右回動の各局面における水用弁孔82と流路形成凹部94との重なり領域が示されている。
図29(b)で示される面積Qdは、レバー左右位置が右限界MRであり且つレバー上下位置が最大吐出位置にあるときの重なり領域である。レバー左右回動及びレバー前後回動の全範囲を考慮すると、流路形成凹部94と重なりうる水用弁孔82の面積としては、面積Qdの他に、面積Qa、面積Qb及び面積Qcがある。よって、面積W1は次の通りである。なお、面積Qeは、面積Qdの一部である。
W1=Qa+Qb+Qc+Qd
【0171】
この面積W1のうち、軌跡ラインR1よりも吐出減少側にあるのが、面積Qa及び面積Qeである。よって、面積Q1及びQ2は、以下の通りである。
Q1=Qa+Qe
Q2=(Qb+Qc+Qd)−Qe
【0172】
[面積Q1]
面積Q1が小さい場合、次の状態E3において、水の吐出量が不足しやすい。
(E3)レバー左右位置が水のみを吐出する位置であり、レバー前後位置が少量から中量の吐出量の位置である。
この観点から、面積Q1は、14.0mm
2以上が好ましく、16.0mm
2以上がより好ましく、19.0mm
2以上がより好ましい。面積Q1が過大である場合、湯水混合栓が大型化しうる。この観点から、面積Q1は、30.0mm
2以下が好ましく、25.0mm
2以下がより好ましく、22.0mm
2以下がより好ましい。本実施形態では、面積Q1は20.3mm
2とされた。
【0173】
[面積Q2]
面積Q2が小さい場合、次の状態E4において、水の吐出量が不足しやすい。
(E4)レバー左右位置が水のみを吐出する位置であり、レバー前後位置が中量から大量の吐出量の位置である。
この観点から、面積Q2は、7.0mm
2以上が好ましく、10.0mm
2以上がより好ましく、12.0mm
2以上がより好ましい。面積Q2が過大である場合、湯水混合栓が大型化しうる。また面積Q2が過大である場合、面積S1及びS2を上述の範囲とすることが難しくなる。また面積Q2が過大である場合、各弁孔の構成が複雑化しうる。これらの観点から、面積Q2は、20.0mm
2以下が好ましく、15.0mm
2以下がより好ましく、13.0mm
2以下がより好ましい。本実施形態では、面積Q2は12.8mm
2とされた。
【0174】
[Q1/Q2]
Q1/Q2が過小である場合、Q1が過小となったり、Q2が過大となったりしやすい。これらの観点から、Q1/Q2は、1.1以上が好ましく、1.3以上がより好ましく、1.5以上がより好ましい。Q1/Q2が過大である場合、Q1が過大となったり、Q2が過小となったりしやすい。これらの観点から、Q1/Q2は、1.9以下が好ましく、1.7以下がより好ましく、1.6以下がより好ましい。本実施形態では、Q1/Q2は1.58とされた。
【0175】
[面積W1]
水の吐出量の不足を防止する観点から、上記面積W1は、25.0mm
2以上が好ましく、30.0mm
2以上がより好ましく、32.0mm
2以上がより好ましい。面積W1が過大である場合、湯水混合栓が大型化しうる。この観点から、面積W1は、40.0mm
2以下が好ましく、37.0mm
2以下がより好ましく、34.0mm
2以下がより好ましい。本実施形態では、面積W1は33.15mm
2とされた。
【0176】
[面積H1]
湯の吐出量の不足を防止する観点から、上記面積H1は、25.0mm
2以上が好ましく、30.0mm
2以上がより好ましく、32.0mm
2以上がより好ましい。面積H1が過大である場合、湯水混合栓が大型化しうる。この観点から、面積H1は、40.0mm
2以下が好ましく、37.0mm
2以下がより好ましく、34.0mm
2以下がより好ましい。本実施形態では、面積H1は33.28mm
2とされた。
【0177】
[W1/H1]
W1/H1が過小である場合、湯水が混合する左右回動範囲が狭くなりやすい。温度調節性を高める観点から、W1/H1は、0.8以上が好ましく、0.9以上がより好ましく、0.95以上がより好ましい。W1/H1が過大である場合、湯水が混合する左右回動範囲が狭くなりやすい。温度調節性を高める観点から、W1/H1は1.15以下が好ましく、1.1以下がより好ましく、1.05以下がより好ましい。本実施形態では、W1/H1は1.0とされた。
【0178】
[面積W2]
水の吐出量の不足を防止する観点から、面積W2は、25.0mm
2以上が好ましく、30.0mm
2以上がより好ましく、35.0mm
2以上がより好ましい。面積W2が過大である場合、湯水混合栓が大型化しうる。この観点から、面積W2は、45.0mm
2以下が好ましく、42.0mm
2以下がより好ましく、40.0mm
2以下がより好ましい。本実施形態では、面積W2は38.0mm
2とされた。
【0179】
[面積H2]
湯の吐出量の不足を防止する観点から、面積H2は、25.0mm
2以上が好ましく、30.0mm
2以上がより好ましく、35.0mm
2以上がより好ましい。面積H2が過大である場合、湯水混合栓が大型化しうる。この観点から、面積H2は、45.0mm
2以下が好ましく、42.0mm
2以下がより好ましく、40.0mm
2以下がより好ましい。本実施形態では、面積H2は38.5mm
2とされた。
【0180】
[W2/H2]
W2/H2が過小である場合、湯圧と水圧との差に起因する可動弁体60の傾斜が発生しやすい。この観点から、W2/H2は、0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.9以上がより好ましい。W2/H2が過大である場合、湯圧と水圧との差に起因する可動弁体60の傾斜が発生しやすい。この観点から、W2/H2は、1.5以下が好ましく、1.2以下がより好ましく、1.1以下がより好ましい。本実施形態では、W2/H2は1.0とされた。
【0181】
[クリック機構の効果]
上記実施形態では、球体52及び球体56が用いられている。これらの球体52、56は、回転可能な状態で支持されている。これらの球体52、56が回転することで、摩耗及び傷が抑制される。よって、使用に伴う経時劣化が抑制され、クリック機構の耐久性が高まる。また、摩耗及び傷が抑制されるので、使用に伴うクリック感α、βの変動が少ない。信頼性の高いクリック機構が実現される。
【0182】
旋回クリック機構では、弾性部材として、コイルバネ50、200が用いられている。繰り返しの変形によっても、コイルバネの弾性係数は変化しにくい。コイルバネの使用により、使用に伴う経時劣化が抑制される。よって、クリック機構の耐久性が高まる。また、使用に伴うクリック感αの変動は少ない。信頼性の高いクリック機構が実現される。
【0183】
また、コイルバネ50、200は、円滑に変形されやすく、また、大きな変形量が確保されうる。このため、心地よく且つスムースなクリック感αが実現される。
【0184】
旋回クリック機構では、球体52と、この球体52を支持するコイルバネ50、200とが用いられているので、部材の寸法誤差又は組立誤差によって生じるクリック感αのバラツキが抑制される。
【0185】
前後クリック機構では、球体56と、この球体56を支持するバネ部材とが用いられている。よって、部材の寸法誤差又は組立誤差によって生じうるクリック感βのバラツキは、抑制される。また、板バネ58に球体56を載せたシンプルな構成であるため、製造誤差及び使用中の不具合抑制され、クリック感βのバラツキが抑制される。
【0186】
上述の通り、可動弁体60(下側部材88)の下面には平滑面PL2が形成され、固定弁体62の上面には平滑面PL1が形成されている。これら平滑な平面同士の面接触により、水漏れが防止されている。これら平滑な平面同士が面接触しているため、面圧が分散されやすく、摺動による「摩耗」は生じにくい。仮に、この摩耗が生じた場合、摩耗量の分だけ、可動弁体60の位置が下がる。即ち、この摩耗が生じた場合、可動弁体60(上側部材86)の上に配置されている板バネ58及び球体56が、ハウジング42に対して、相対的に下方へと移動する。この移動により、球体56とハウジング42との隙間距離が変化する。この隙間距離の変化により、クリック感βは変化する。しかし実際には上記の通り、摩耗が生じにくいため、球体56の上下方向位置の変位は起こりにくい。よって、使用に伴うクリック感βの変動は少ない(効果a)。
【0187】
上述の通り、可動弁体60と固定弁体62との間では、平滑な平面同士が面接触しているため、面圧が分散されやすい。よって、摺動による「偏摩耗」は生じにくい。仮に、この偏摩耗が生じた場合、可動弁体60が傾斜する。即ち、この偏摩耗が生じた場合、可動弁体60(上側部材86)の上に配置されている球体56の移動方向が傾斜する。そうすると、前後回動に伴う球体56の移動中に、球体56とハウジング42との隙間距離が変化する。この隙間距離の変化により、クリック感βは変化する。しかし実際には上記の通り、偏摩耗が生じにくいため、球体56の移動方向の傾斜は起こりにくい。よって、使用に伴うクリック感βの変動は少ない(効果b)。
【0188】
これらの効果a及び効果bが実現したのは、可動弁体60の上側に弾性部材58及び球体56を配置し、この球体56を、ハウジング42の下面に当接させたからである。本実施形態では、可動弁体60と固定弁体62とを水密状態で隙間無く面接触させるという構成を利用して、クリック感βの変動を抑制することができる。
【0189】
上述した通り、上記実施形態では、レバー左右位置の相違に起因して、前後回動操作における操作感が相違する。上記実施形態では、この操作感の相違が、クリック感βの有無とされている。クリック感βの有無は、判別しやすい。上記実施形態では、クリック感βの有無によって、湯が混合されているか否かが容易に判別される。
【0190】
湯が混合されているか否かは、吐水の温度のみからは判別しにくいことがある。例えば、湯の混合割合が少ない場合、水が100%の場合と比較して、温度がそれほど高くならない。よってこの場合、吐水の温度のみからは湯の混合に気がつかないことがある。また、湯の混合割合が高い場合であっても、給湯器等からの加熱装置で加温された湯が蛇口に至るまでの間、吐水の温度が上がらない場合がある。この場合も、吐水の温度のみからは湯の混合に気がつかないことがある。また、レバー左右位置によっても、湯が混合されているか否かが正確に判別できない場合がある。このような場合、使用者の意図に反して、湯が混合されることがある。即ち使用者は湯が混合されていない(水が100%の)吐水を使用しているつもりであるにも関わらず、実際には湯が混合されていることがある。この場合、エネルギーが無駄となる。上記実施形態では、クリック感βの有無によって、湯が混合されているか否かが容易に判別される。よって、エネルギーの無駄が抑制される。
【0191】
このように、上記実施形態では、レバー左右位置の相違に起因して、レバーの回動操作における操作感を相違させることができる(効果c)。この効果cが生じた理由は、前後クリック機構を、部材Xと固定部材Zとの係合によって実現したからである。
【0192】
ここで、部材X、Y及びZの分類が説明される。レバー組立体40を構成する部材は、次の3つに分類されうる。
(1)部材X:レバーの左右回動操作に連動して回転し、且つ、レバーの前後回動操作に連動して移動する部材。
(2)部材Y:レバーの左右回動操作に連動して旋回するが、レバーの前後回動操作によっては移動しない部材。
(3)固定部材Z:レバーのいかなる操作に対しても動かない部材。
【0193】
上記(1)の部材Xとして、可動弁体60(上側部材86及び下側部材88)が挙げられる。上記(2)の部材Yとして、回動体44が挙げられる。上記(3)の固定部材Zとして、ハウジング42、固定弁体62及びベース体68が挙げられる。
【0194】
レバー46の前後回動を可動弁体60の直線移動に変えるため、回動体44は、レバー46の前後回動の際に動いてはならない。一方、レバー46の左右回動を可動弁体60に伝達するため、回動体44は、レバー46の左右回動によって回転しなければならない。したがって、部材Yとしての回動体44は必須である。したがって、この回動体44(部材Y)が、部材X(可動弁体60)の上側に存在することになる。即ち、回動体44(部材Y)が、部材X(可動弁体60)と部材Z(ハウジング42)の下面との間に介在することになる。よって部材Xと部材Zとを係合させることは難しい。このため、従来技術では、前後クリック機構は、レバーと回動体(部材Y)との係合により達成されていた(前述の、特許第2779792号公報参照)。この場合、レバー46を左右回動すると、回動体44も一緒に旋回する。レバー46と回動体44との相対関係は、左右回動に関わらず、常に同じである。よって、前後回動に伴うクリック感は、レバー左右位置に関わらず、一定である。従来技術では、レバー左右位置によってクリック感を相違させることはできなかった。
【0195】
これに対して本実施形態では、部材Y(回動体44)の介在にも関わらず、部材X(可動弁体60)と部材Z(ハウジング42)との係合が達成された。この係合により、クリック感βを発現するクリック機構が実現された。この構成によって、レバー左右位置によってクリック感βを相違させることが可能となり、上記効果cが達成されている。
【0196】
本実施形態では、ハウジング42の下面(連結部124の下面125)の仕様を変えることによって、クリック感が生じる角度範囲は自由に設計されうる。例えば、クリック機構発現部146の位置を変えることによって、前後回動操作でのクリック感が発現するレバー左右位置を自在に変更することができる(
図10参照)。また、クリック感の仕様も自在に設計されうる。例えば、溝154又は突条156の数、間隔、形状、高さ等を変えることで、様々なクリック感が得られうる。クリック感の創出にハウジング42の下面を用いたことで、クリック感の設計自由度は高められている。
【0197】
クリック感の有無は、使用者にとって、区別しやすい。この観点から、操作感の相違の好ましい態様は、クリック感の有無である。クリック感の有無の設定として、以下が例示される。以下の設定1は、前述した実施形態での設定である。以下では、湯と水との混合割合が百分率(%)で示される。
[設定1]:水の混合割合が100%であるレバー左右位置では、クリック感βが生じない。水の混合割合が100%未満であるレバー左右位置では、クリック感βが生じる。
[設定2]:水の混合割合が100%であるレバー左右位置では、クリック感βが生ずる。水の混合割合が100%未満であるレバー左右位置では、クリック感βが生じない。
【0198】
操作感の相違として、クリック感βの有無ではなく、クリック感βの相違が採用されてもよい。クリック感βの相違の設定として、以下が例示される。
[設定3]:水の混合割合が100%であるレバー左右位置と、水の混合割合が100%未満であるレバー左右位置とで、クリック感βが相違する。
【0199】
この設定3では、例えば、クリック感βが2種類である。もちろん、クリック感βが3種類以上であってもよく、その一例は次の設定4である。
[設定4]:水の混合割合が100%であるレバー左右位置では第1のクリック感βが生じ、水の混合割合がWa%以上100%未満であるレバー左右位置では第2のクリック感βが生じ、水の混合割合がWa%未満であるレバー左右位置では第3のクリック感βが生じる。
【0200】
上記混合割合Wa%は、例えば、人体が直接触れると危険な水温となるような割合に設定されてもよい。この場合、熱いお湯が吐出されるか否かがクリック感によって感知されうる。これは、熱いお湯による事故(やけど等)の防止に役立ちうる。
【0201】
クリック感の有無と、クリック感の相違とが組み合わされてもよく、その一例は次の設定5である。
[設定5]:水の混合割合が100%であるレバー左右位置ではクリック感βが生じず、水の混合割合がWa%以上100%未満であるレバー左右位置では第1のクリック感βが生じ、水の混合割合がWa%未満であるレバー左右位置では第2のクリック感βが生じる。
【0202】
クリック感βをどのように相違させるかは、限定されない。相違させうるクリック感βの仕様として、以下が例示される。
[仕様1]:吐出ストップ位置から最大吐出位置までレバーを回動させたときのクリック感βの発生回数N
[仕様2]:クリック感βの発生時におけるレバーの前後回動操作の抵抗感
[仕様3]:クリック感βの発生時における音
【0203】
仕様1に関する一例では、あるレバー左右位置では回数Nが3以下とされ、別のレバー左右位置では回数Nが4以上とされる。仕様2に関する一例では、あるレバー左右位置では上記抵抗感が比較的小さく、別のレバー左右位置では上記抵抗感が比較的大きい。仕様3に関する一例は、あるレバー左右位置では上記音の周波数が比較的高く、別のレバー左右位置では上記音の周波数が比較的低い。
【0204】
なお、仕様2の抵抗感とは、レバーを前後回動させるために必要な回転モーメントと同義である。
【0205】
上記設定1から5及び上記仕様1から3は、連結部124の下面125の形状を変更するだけで容易に実現されうる。レバー組立体40では、クリック感の設計自由度が高い。
【0206】
レバー左右位置に起因して、クリック感以外の操作感が相違していてもよい。この操作感の一例として、クリック感βが発生していない局面におけるレバーの前後回動操作の抵抗感が挙げられる。
【0207】
繰り返しの使用により、クリック機構は繰り返し働く。クリック感が発生するときに生じうる振動は通常は微細であるが、繰り返しの使用では、この振動が、レバー組立体40に負荷を与えうる。特に、レバー軸48、軸孔100等の回動軸保持部分には負荷がかかりやすい。
【0208】
図7及び
図8が示すように、本実施形態では、旋回クリック機構における弾性部材(コイルバネ)50がレバー軸48の内部に配置されている。弾性部材50の長手方向はレバー軸48の長手方向に等しい。弾性部材50の伸縮方向は、レバー軸48の長手方向に沿っている。弾性部材50の中心軸線が、レバー軸48の中心軸線に等しい。これらの構成は、旋回クリックにおける振動の影響を低下させうる。この構成では、旋回クリックにおける振動が、レバー軸48に略沿って生じる。弾性部材50及び球体52に作用する力は、レバー軸48の内部において作用し、且つ、レバー軸48に沿った方向である。以上より、レバー軸48に対して垂直方向に作用する負荷は生じにくく、回動軸保持部分への負荷が少ない(効果d)。よって、繰り返しの使用によるレバー46のガタ付きが抑制され、レバー組立体40の耐久性が向上しうる。
【0209】
球体52は、レバー軸48の両端部のうちの一方側のみに配置されてもよい。しかし、本実施形態では、
図7及び
図15が示すように、球体52は、レバー軸48(弾性部材50)の両端部に配置されている。よって、これら2つの球体52から発生する振動が互いに相殺しうる。よって、上記回動軸保持部分への負担が軽減されうる。
図16が示すように、上記実施形態では、第1の球体52が凸部170と係合しているとき、第2の球体52も凸部170と係合している。この場合、弾性部材50に作用する応力が互いに相殺しうる。この構成により、上記効果dが高められている。
【0210】
上記実施形態では、旋回クリック感を奏するための球体52が複数設けられているため、上記クリック感αの設計自由度が向上する。
図16のように、2つの球体52を同時に凸部170に係合させることで、クリック感を増大させることができる。2つの球体52を同時に凸部170に係合させるか、又は、1つの球体52のみを凸部170に係合させるかが、選択されうる。この選択により、クリック感の強さを設計することができる。また、例えば2回のクリック感αを生じさせる場合、第1の球体52に1回目のクリック感αを分担させ、第2の球体52に2回目のクリック感αを分担させることもできる。クリック感αの発生を2つの球体52で分担することで、球体52の耐久性が向上しうる。
【0211】
弾性部材50又は弾性部材58に球体を保持させるという構成により、クリック感の設計自由度は高い。弾性部材50、58の弾性係数を変えるだけで、クリック感の調整が容易に達成されうる。
【0212】
球体52,56の直径を変化させると、当接面側への球体の突出量が変化しうる。クリック機構の発現に球体52、56を利用することで、球体の直径を変えるだけでも、クリック感の変更が達成されうる。よって、クリック感の調整は容易である。
【0213】
図18の実施形態では、クリック感αの設計自由度が更に高められている。この実施形態では、コイルバネ200を変更しなくても、中間部材202の長さを変更するだけで、クリック感αを設計することができる。したがって、クリック感αを容易に設定することができる。中間部材202の採用により、コイルバネ200が短くされうる。この短さは、クリック感αの設計を容易としうる。
【0214】
前述したように、中間部材202はレバー軸48に固定されていない。よって、第1のコイルバネ200に作用する応力と、第2のコイルバネ200に作用する応力とが均等となるように、中間部材202は移動しうる。この移動により、第1の球体52によって奏されるクリック感αと、第2の球体52によって奏されるクリック感αとが均等化される。よって、クリック感αのバラツキが抑制される。
【0215】
なお、上記実施形態では、ハウジング42は全体として一体成形されている。ハウジング42は、別個に成形された部材が組み合わされていても良い。上記固定部材Zに属し、且つ、球体52又は球体56に当接しうる部材は、ハウジングに該当する。
【0216】
図15において両矢印L1で示されているのは、球体52が凸部170に係合していない状態における弾性部材50の長手方向長さである。上部104の直径が小さすぎると、湯水混合栓10に必要な機能が実現できないことがある。この観点から、長さL1は、15mm以上が好ましく、17mm以上がより好ましい。また、過度に大型化された湯水混合栓10では、商品価値が低下する。この観点から、長さL1は、30mm以下が好ましく、25mm以下がより好ましい。
図15の実施形態では、長さL1は19mmとされた。
【0217】
図18において両矢印L2で示されているのは、球体52が凸部170に係合していない状態における弾性部材200の長手方向長さである。スムースなクリック感αを得る観点から、上記長さL1に対する長さL2の割合は、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましい。クリック感αの設計を容易とする観点から、上記長さL1に対する長さL2の割合は、45%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、35%以下が更に好ましい。
図18の実施形態では、長さL2の割合は、
図15の実施形態の長さL1に対して、30%とされた。
【0218】
明確なクリック感αを得る観点から、凸部170(
図15参照)の高さHaは、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。高さHaが過大である場合、ハウジング42又は回動体44の厚みが薄くなりすぎて耐久性が低下しうる。この観点から、高さHaは、1.0mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.4mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、凸部170の高さHaは0.3mmとされた。
【0219】
明確なクリック感βを得る観点から、凸部156の高さHbは、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。高さHbが過大である場合、ハウジング42又は回動体44の厚みが薄くなりすぎて耐久性が低下しうる。この観点から、高さHbは、1.0mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.4mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、凸部156の高さHbは0.3mmとされた。
【0220】
組立容易性の観点、及び、明確なクリック感αを得る観点から、球体52の直径Daは、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が更に好ましい。直径Daが過大である場合、レバー軸48の直径が過大となったり、レバー組立体40が過度に大型化することがある。また、この大型化を避けるために、ハウジング42等が過度に薄くされうる。これらの観点から、直径Daは5.0mm以下が好ましく、4.0mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、球体52の直径Daは3.0mmとされた。
【0221】
組立容易性の観点、及び、明確なクリック感βを得る観点から、球体56の直径Dbは、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が更に好ましい。直径Dbが過大である場合、上側突出部の高さを確保するための貫通孔110の幅が過大となる。また、直径Dbが過大である場合、この球体56に係合しうる溝154の幅も大きくされるが、この場合、限られたスペースの下面125に、必要な数の溝154を設けることが難しくなることがある。これらの観点から、直径Dbは5.0mm以下が好ましく、4.0mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、球体56の直径Dbは3.0mmとされた。
【0222】
[材質]
ハウジングの材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。クリック機構が発現する際に発生する音は、心地よく且つ聞き取りやすいのが好ましい。ハウジングの材質は、この音に影響する。良好な音を得る観点、耐久性、耐錆性、及び衛生面を考慮すると、ハウジングの材質として、ステンレス合金及び繊維強化樹脂が好ましい。上記実施形態では、ガラス繊維強化PPS樹脂が用いられた。PPS樹脂とはポリフェニレンスルフィド樹脂である。
【0223】
回動体の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。また摺動面の材質は摩擦力を変動させるため、レバーの操作性に影響する。操作性及び不快音回避の観点から、回動体の材質としては、樹脂が好ましく、強化繊維を含まない樹脂がより好ましい。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOM樹脂が用いられた。POM樹脂とは、ポリアセタール樹脂である。
【0224】
上記軸保持体の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。また摺動面の材質は摩擦力を変動させるため、レバーの操作性に影響する。操作性及び不快音回避の観点から、軸保持体の材質としては、樹脂が好ましく、強化繊維を含まない樹脂がより好ましい。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOM樹脂が用いられた。
【0225】
上記球体の材質として、樹脂及び金属が例示される。クリック機構の音及び耐久性の観点から、金属が特に好ましい。上記実施形態ではステンレス合金が用いられた。
【0226】
左右回動操作時のクリック機構に用いられる上記弾性体として、ゴム及びコイルバネが例示される。繰り返しの使用による劣化を抑制する観点、及び、クリック感の調整の自由度の観点から、コイルバネが好ましい。このコイルバネの材質としては、バネ鋼材が好ましい。上記実施形態では、バネ鋼材のコイルバネが用いられた。
【0227】
前後回動操作時のクリック機構に用いられる上記弾性体として、ゴム、板バネ及びコイルバネが例示される。上下方向のスペースを抑制する観点から、板バネが好ましい。上記実施形態では、バネ鋼材の板バネが用いられた。
【0228】
上記レバー軸の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。水による腐食を抑制する観点から、ステンレス合金及び樹脂が好ましい。上記実施形態では、ステンレス合金が用いられた。
【0229】
可動弁体の上側部材の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。不快音回避の観点から、上側部材の材質としては、樹脂が好ましい。また、この上側部材を樹脂とすることで、可動弁体全体としての製造コストが抑制される。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOM樹脂が用いられた。
【0230】
可動弁体の下側部材の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)、金属及びセラミックが例示される。固定弁体との摺動における耐摩耗性の観点から、セラミックが好ましい。このセラミックは、水に対する腐食性、強度及び耐久性の観点からも好ましい。上記実施形態では、セラミックが用いられた。可動弁体の下面がセラミックで構成されることで、上記効果a及び効果bは一層向上する。
【0231】
固定弁体の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)、金属及びセラミックが例示される。可動弁体(下側部材)との摺動における耐摩耗性の観点から、セラミックが好ましい。このセラミックは、水に対する腐食性、強度及び耐久性の観点からも好ましい。上記実施形態では、セラミックが用いられた。固定弁体の上面がセラミックで構成されることで、上記効果a及び効果bは一層向上する。
【0232】
パッキン及びOリングの材質として、樹脂及びゴム材(加硫ゴム)が例示される。伸縮性により、組立性を向上し、製造誤差(寸法誤差等)が緩和されうる。これらの観点から、ゴム材が好ましい。上記実施形態では、ゴム材が用いられた。
【0233】
ベース体の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)及び金属が例示される。不快音回避及び強度の観点から、繊維強化樹脂が好ましく、ガラス繊維強化樹脂がより好ましい。上記実施形態では、ガラス繊維強化PPS樹脂が用いられた。
【0234】
上記の各部材の材質として樹脂が用いられる場合、POM樹脂及びPPS樹脂が好ましい。POM樹脂は、長時間の使用、及び広い温度範囲での使用において、機械的特性(引張強度等)の経時変化が少ない。また、POM樹脂は、繰り返しの応力負荷に対する耐疲労性に優れる。更にPOM樹脂では、吸水による寸法変化が小さい。PPS樹脂は、強度及び剛性に優れ、耐摩耗性にも優れる。更にPPS樹脂は、成形時の収縮率が小さく、高い寸法精度を達成しうる。これらの特性を更に高めるために、上記樹脂は、ガラス繊維等の短繊維で強化されるのも好ましい。
【0235】
本願には、請求項(独立形式請求項を含む)に係る発明とは異なる他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
【0236】
上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成をそなえなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。