特許第5657757号(P5657757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5657757
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】プロピレン系樹脂組成物からなる成形体
(51)【国際特許分類】
   H01B 3/44 20060101AFI20141225BHJP
   H01B 3/00 20060101ALI20141225BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20141225BHJP
   H01B 7/17 20060101ALI20141225BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20141225BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20141225BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20141225BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20141225BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20141225BHJP
   H01B 7/295 20060101ALN20141225BHJP
【FI】
   H01B3/44 G
   H01B3/44 P
   H01B3/00 A
   H01B7/02 Z
   H01B7/18 H
   C08L23/10
   C08K3/22
   C08K3/26
   C08L23/08
   C08L53/02
   !H01B7/34 B
【請求項の数】6
【全頁数】145
(21)【出願番号】特願2013-166160(P2013-166160)
(22)【出願日】2013年8月9日
(62)【分割の表示】特願2012-180936(P2012-180936)の分割
【原出願日】2005年11月25日
(65)【公開番号】特開2013-234334(P2013-234334A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2013年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2004-341316(P2004-341316)
(32)【優先日】2004年11月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2004-343171(P2004-343171)
(32)【優先日】2004年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-61577(P2005-61577)
(32)【優先日】2005年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-88109(P2005-88109)
(32)【優先日】2005年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-91468(P2005-91468)
(32)【優先日】2005年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-105471(P2005-105471)
(32)【優先日】2005年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-105470(P2005-105470)
(32)【優先日】2005年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-153415(P2005-153415)
(32)【優先日】2005年5月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-155238(P2005-155238)
(32)【優先日】2005年5月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-232605(P2005-232605)
(32)【優先日】2005年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-276777(P2005-276777)
(32)【優先日】2005年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-276776(P2005-276776)
(32)【優先日】2005年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-276778(P2005-276778)
(32)【優先日】2005年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-304839(P2005-304839)
(32)【優先日】2005年10月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-304838(P2005-304838)
(32)【優先日】2005年10月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-304837(P2005-304837)
(32)【優先日】2005年10月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2005-318593(P2005-318593)
(32)【優先日】2005年11月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】保谷 裕
(72)【発明者】
【氏名】野田 公憲
(72)【発明者】
【氏名】井上 則英
(72)【発明者】
【氏名】上原 完
(72)【発明者】
【氏名】志波 英治
(72)【発明者】
【氏名】山口 昌賢
(72)【発明者】
【氏名】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】山下 明
【審査官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−197027(JP,A)
【文献】 特開2002−212378(JP,A)
【文献】 特開2002−140939(JP,A)
【文献】 特開2003−257255(JP,A)
【文献】 特開2000−095903(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/087775(WO,A1)
【文献】 特開2002−140941(JP,A)
【文献】 特開2000−198893(JP,A)
【文献】 特開平06−263937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 3/00
H01B 7/00
C08L 23/00
C08L 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
示差走査熱量計(DSC)で測定される融点が120〜170℃であるプロピレン系重合体(A6)を0〜80重量%、
示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が120℃未満であるプロピレン系重合体(B6)を5〜85重量%、
エチレン系エラストマー(C6−1)およびスチレン系エラストマー(C6−2)から選ばれる1種以上のエラストマー(C6)を合計0〜40重量%、および、
無機系充填剤(D6)を15〜80重量%含む(ここで、(A6)、(B6)、(C6)および(D6)成分の合計量は100重量%である。)プロピレン系樹脂組成物(X6)からなり、
電線の絶縁体または電線シースである
ことを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記無機系充填剤(D6)が、金属水酸化物、金属炭酸塩および金属酸化物から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記プロピレン系樹脂組成物(X6)が、プロピレン系重合体(A6)、プロピレン系重合体(B6)、エチレン系エラストマー(C6−1)およびスチレン系エラストマー(C6−2)から選ばれる1種以上のエラストマー(C6)および無機系充填剤(D6)の合計100重量部に対して、オイル(E6)を0.1〜20重量部含むことを特徴とする請求項1または2に記載の成形体。
【請求項4】
前記プロピレン系樹脂組成物(X6)が、プロピレン系重合体(A6)、プロピレン系重合体(B6)、エチレン系エラストマー(C6−1)およびスチレン系エラストマー(C6−2)から選ばれる1種以上のエラストマー(C6)および無機系充填剤(D6)の合計100重量部に対して、極性基を有するビニル化合物のグラフト量がグラフト変性重合体の重量を100重量%とした場合に0.01〜10重量%であるグラフト変性重合体(F6)を、0.1〜30重量部含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成形体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の成形体を有することを特徴とする電線。
【請求項6】
自動車用電線または機器用電線であることを特徴とする請求項5に記載の電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系樹脂組成物およびその用途に関する。
より詳しくは、本発明(第1の発明)は、熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物からなる部分を少なくとも一部に有する成形品、および熱可塑性樹脂組成物からなる部分を少なくとも一部に有する各種物品に関する。さらに詳しくは、本発明は、優れた機械的性質を示し、かつ常温でのゴム弾性・圧縮永久歪に優れるだけでなく、高温でのゴム弾性・圧縮永久歪にも優れる熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物からなる部分を少なくとも一部に有する成形品、および熱可塑性樹脂組成物からなる部分を少なくとも一部に有する各種物品に関する。
【0002】
また、より詳しくは、本発明(第2の発明)は、特定のプロピレン・α-オレフィン共重合体からなる熱可塑性樹脂組成物、該熱可塑性樹脂組成物の架橋物、それらからなる成形体に関する。さらに詳しくは、本発明は、柔軟性と耐傷付き性・耐白化性とのバランスに優れる成形品が得られるとともに、低温での成形加工が可能な熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物の架橋物、それらからなる成形体に関する。
【0003】
また、より詳しくは、本発明(第3の発明)は、プロピレン系重合体組成物、および該組成物からなるフィルム、シート、ブロー成形体、射出成形体、チューブおよびキャップライナーなどの成形体に関する。
【0004】
また、より詳しくは、本発明(第4の発明)は、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる延伸フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、高い熱収縮率を有しながら室温での自然収縮が少なく、さらに透明性、フィルムの柔軟性、耐衝撃性および機械特性に優れ、かつ自然収縮性が少ない熱収縮フィルムに関する。
【0005】
また、より詳しくは、本発明(第5の発明)は、ポリオレフィン系化粧シートに関する。さらに詳しくは、本発明は、柔軟性、耐傷付き性、耐磨耗性、延伸時の耐白化性、折り曲げ時の耐白化性、耐折れしわ性、耐熱性、耐水性、耐圧縮歪性および機械的強度に優れたポリオレフィン系化粧シートに関する。
【0006】
また、より詳しくは、本発明(第6の発明)は、プロピレン系樹脂組成物、および該組成物から得られる成形体に関する。さらに詳しくは、本発明は、無機系充填剤を高い割合で含み、かつ、柔軟性、機械強度、破断点伸び、耐熱性、耐傷付き性、耐白化性および難燃性に優れたプロピレン系樹脂組成物、および該組成物を用いた成形体に関する。
【0007】
また、より詳しくは、本発明(第7の発明)は、発泡体用材料、発泡体および該発泡体の用途に関する。さらに詳しくは、本発明は、低比重で圧縮永久歪(CS)が小さく、引裂強度特性、低反発性および耐傷付性に優れた発泡体を提供し得る組成物、発泡体および該発泡体の用途に関する。
【0008】
また、より詳しくは、本発明(第8の発明)は、金属、ガラスなどの無機材料、およびそのほか各種プラスチック材料に対して高い接着力を示すとともに、柔軟性、透明性、ゴム弾性および耐傷付き性に優れる積層体を得られる軟質ポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
【0009】
また、より詳しくは、本発明(第9の発明)は、ガラスおよびプラスチックなどの板状物またはシート状物からなる表裏面材間に太陽電池を封止するためのシートに関する。
【0010】
また、より詳しくは、本発明(第10の発明)は、各種電気電子素子、特に太陽電池を封止するのに適した電気電子素子用封止シート、該封止シートの各種用途(太陽電池用封止シート、太陽電池モジュール、発電設備など)に関する。
【背景技術】
【0011】
種々の用途に用いるために、種々の樹脂組成物が開発されている。後述するように、用途によってはプロピレン系樹脂組成物が用いられているが、それぞれの用途において必要とされる特性に関しては、さらなる改善が求められている。
【0012】
例えば、自動車部品、工業機械部品、電気・電子部品、建材、キャップライナーに用いられるゴム弾性を必要とする部品または部位、およびシートには、従来から種々の材料が用いられている。このような材料には、例えば加硫ゴムがある。通常加硫ゴムは、ゴムを架橋剤、架橋助剤、添加剤および副資材などと混練して未加硫のゴム配合物を調製した後、加熱して加硫する工程を経て製造されるため、工程が煩雑でコスト高になるという問題点がある。また、加硫ゴムは熱硬化型のゴムであるためリサイクルが不可能である。
【0013】
一方、加硫工程を必要としない、ゴム類似の性能を有する素材として、塩化ビニル樹脂がある。しかし、塩化ビニル樹脂は加硫ゴムに比べてゴム弾性に劣るため、その用途は限られている。また近年では、焼却が困難であるなどの理由から、これに代わる素材の開発が求められている。
【0014】
また、高温で可塑化されてプラスチックと同様に成形でき、常温ではゴム弾性を有する高分子材料として熱可塑性エラストマーが知られている。リサイクル可能なオレフィン系熱可塑性エラストマーとして、ポリプロピレンとエチレン・α-オレフィン共重合体との動的架橋物が知られている。しかしこの場合も、架橋剤および架橋助剤が必要なためコスト高になるという問題点がある。
【0015】
このような問題点を解決するために、特許文献1では、エチレンを主成分とするオレフィン系エラストマーを主成分としたポリエチレン系樹脂組成物およびその用途が提案されている。しかしながら、ポリエチレンを主成分とするため耐熱性は充分ではなかった。
これに対して、近年、プロピレン系重合体を用いた組成物が検討されている(特許文献2参照)。
【0016】
しかしながら、特許文献2の組成物は、機械的性質・オイルの充填性などの点でまだ向上の余地があった。また、特許文献2では、高温でのゴム弾性・圧縮永久歪については言及されていない。
【0017】
一方、上述したように、高温で可塑化されてプラスチックと同様に成形でき、常温ではゴム弾性を有する高分子材料として熱可塑性エラストマーが知られている。例えば、ポリプロピレンとエチレン・α-オレフィン共重合体との動的架橋物のほかにも、ポリプロピレンとスチレン系エラストマーとの組成物が挙げられる(特許文献3参照)。この材料は良好な強度、柔軟性および耐熱性を有しておりキャップライナーなどに良好に使用することができる。
【0018】
一方で、さらなる柔軟性の改良が可能なために、ポリプロピレンと、エチレン・α-オレフィン共重合体とを用いたオレフィン系熱可塑性エラストマーが用いられている(特許文献4参照)。
【0019】
しかしながら、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーは、柔軟性および耐傷付き性のバランスが充分ではなく、柔軟性を実現させると、耐傷付き性および耐白化性が低下するという問題があった。以上が第1、第2の発明の技術背景である。
【0020】
また、ポリプロピレンを主成分とした樹脂組成物は、その優れた耐熱性、透明性および良好な成形性から、電気・電子機器部品、工業資材、家具、文房具、日用・雑貨用品、容器・包装用品、玩具、レジャー用品および医療用品など幅広い用途に用いられている。一方で、ポリプロピレンを主成分とした樹脂組成物の柔軟性および耐衝撃性を改良するために様々な柔軟材料を添加する技術が知られている。
【0021】
例えば、特許文献5には、ポリプロピレン系樹脂と、特定のプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーとからなる組成物は、透明性に優れ、例えばストレッチフィルムとして用いられることが記載されている。
【0022】
特許文献6には、ポリプロピレンと、プロピレンが20重量%を超え80重量%以下、エチレンが10重量%を超え45重量%以下、α−オレフィンが10重量%を超え45重量%以下である特定のα−オレフィンの共重合体エラストマーとの組成物が記載されている。
【0023】
特許文献7には、ポリプロピレンと、特定のプロピレン・ブテン・エチレン共重合体との組成物が記載され、工業用シュリンクフィルム、業務用ラップフィルムに用いられることが記載されている。
特許文献8には、例えば、非晶性プロピレン・ブテンランダム共重合体と結晶性プロピレン重合体とからなる組成物が、耐折曲げ白化性に優れ、成形体、クリアボックスなどに使用できることが記載されている。
【0024】
特許文献9には、スチレン系エラストマーとポリプロピレンとを主成分とする組成物から得られ、より優れた耐白化性および透明性を有するシートが記載されている。
一方、ポリプロピレンを、例えばストレッチフィルムなどの透明性が要求される用途に用いる場合には、延伸時および高温条件に置かれた後も透明性の維持が要求される場合がある。
【0025】
しかしながら、特許文献5、6の組成物は、耐白化性(延伸時・熱処理時)が充分ではなかった。また、特許文献7、8の組成物は、強度が弱く、実用化にはまだ問題があった。
特許文献9に記載されたスチレン系エラストマーを用いた組成物は、耐白化性、柔軟性および透明性は良好であるが、一般的にスチレン系エラストマーはポリプロピレンと相溶しない。このため、使用条件によっては成形体の白化が発生する場合がある。また、スチレン系エラストマーを含む組成物は、室温でのゴム弾性は良好であるが、高温では良好なゴム弾性が得られない。以上が第3の発明の技術背景である。
【0026】
また、熱収縮フィルムに広く利用されている材質としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂などが知られている。しかし、これらの樹脂に関しては廃棄時の副生成物による環境および人体への悪影響が懸念されているため、今日ではポリオレフィンを用いた熱収縮フィルムの開発が進められている。これまでのポリオレフィン系樹脂による熱収縮フィルムは、塩化ビニル系樹脂によるものに比べ、機械強度、低温での熱収縮率などが劣っている。特に、このフィルムを飲料用ペットボトルの熱収縮ラベルとして用いる場合には、スチームなどを用いた熱収縮トンネル内で、ペットボトルとともにこのフィルムの収縮加工を行うことが多く、従って、より低温で高い収縮率を示す熱収縮フィルムが求められている。
【0027】
さらに、ペットボトルのリサイクル時において、ペット樹脂本体とラベル樹脂との分別には、ペット樹脂本体とともにラベルを粉砕し、これらの水に対する浮力差を利用した液比重分離法が用いられる。例えば、ポリスチレン系樹脂の比重はおよそ1.03〜1.06であり、これは比重が1.3〜1.5であるペット系樹脂とともに水に沈む。従って、このように比重が1以上である樹脂を用いたラベルでは、上記方法によるペット系樹脂との分別が困難である。このため、比重が1より小さい、ポリオレフィンを用いた低温収縮性熱収縮フィルムの実現が望まれている。
【0028】
これに対して、例えば、特許文献10には、結晶性ポリプロピレンおよびプロピレン・1-ブテンランダム共重合体からなる熱収縮フィルムが開示されている。このようなフィルムは高い熱収縮率を示しかつ透明性にも優れているが、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体(または10モル%以下の他のα-オレフィンを含んでもよい。)は耐衝撃性に劣るため、これを用いたフィルムの柔軟性および耐衝撃性も不充分であった。
【0029】
また、特許文献11には、プロピレンおよび炭素数2〜20のα-オレフィンからなり、DSCで測定した融点範囲が40〜115℃にあるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体と石油樹脂とを用いた熱収縮フィルムが開示されている。このフィルムは、特許文献10のフィルムよりも高い熱収縮率を有しているが、フィルムの柔軟性および耐衝撃性が不充分であった。
【0030】
一方、特許文献12には、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(プロピレン-エチレンランダム共重合体)を主成分とするフィルムを中間層に用いた熱収縮フィルムが開示されている。
【0031】
このプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体は、プロピレンと共重合されるコモノマー(エチレンまたはα-オレフィン)の量が2〜7モル%のものであり、このようなプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(プロピレン-エチレンランダム共重合体)単体では充分な熱収縮率が得られず、さらにフィルムの耐衝撃性も劣っている。
【0032】
特許文献12においては、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(プロピレン-エチレンランダム共重合体)に直鎖状低密度ポリエチレンおよびエチレン系ゴム成分を添加する技術も開示されている。これにより熱収縮率およびフィルムの耐衝撃性は改良されるが、このときフィルムの透明性が低下する問題点がある。
【0033】
特許文献13には、ポリプロピレン20〜50重量部と、プロピレン・ブテン・エチレン共重合体80〜50重量部とからなる組成物が、ストレッチフィルムなどに用いられることが記載されている。しかし、フィルムの延伸、および熱収縮フィルムへの使用については記載されていない。以上が第4の発明の技術背景である。
【0034】
また、従来、建材・家電製品・自動車の内装材および外装材などにおいて、表面化粧または表面保護に使用されるシートとしては、耐傷つき性、折り曲げ時の耐白化性、耐折れしわ性、透明性などのバランスに優れる塩化ビニル樹脂を主成分とするフィルムが利用されてきた。
しかしながら、上述のように、このようなフィルムは焼却が困難であるなどの問題があり、環境への負荷の少ないポリオレフィン系材料を中心に開発が進められている。
【0035】
例えば、特許文献14には、ポリプロピレン系フィルムを主な構成層とする化粧シートが開示されている。特許文献15では、オレフィン系熱可塑性エラストマーを主な構成層とする化粧シートが開示されている。
【0036】
しかしながら、特許文献14で提案されているポリプロピレンフィルムを構成層とする化粧シートの場合は、ポリプロピレンの結晶化度および融点が高いため、柔軟性の低下のほか、折り曲げ加工の際に、折り曲げ面に亀裂が入ったり、白化が発生したりするなどの問題点があった。また、特許文献15で提案されているオレフィン系熱可塑性エラストマーを構成層とする化粧シートの場合は、柔軟性に優れ、折り曲げ面の亀裂および白化は起りにくいが、透明性および機械的強度が不充分であるなどの問題点があった。
【0037】
このような問題点を解決するために、特許文献16には、特定の非晶性ポリオレフィンと結晶性ポリプロピレンとを特定割合で含有する樹脂組成物からなる層を使用した化粧シートが提案されている。
しかしながら、この化粧シートは折り曲げ面の亀裂および白化は改良できるものの、充分な機械的強度、耐傷つき性および耐熱性を備えていなかった。
【0038】
一方、特許文献17では、ポリエステル系フィルムを表面保護層として用いる化粧シートが提案されている。
ポリエステル系フィルムを表面保護層として用いることで機械的強度および耐傷つき性は大幅に向上するが、このような極性基を分子鎖中に有する材料は耐水性(耐水蒸気透過性)に劣るという問題があった。以上が第5の発明の技術背景である。
【0039】
また、ポリプロピレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂(ポリエチレン系エラストマー)よりも耐熱性、機械強度および耐傷付き性に優れた材料であり、その成形品は幅広い用途に用いられている。一般のポリプロピレンおよび無機系充填剤から得られる成形品も、耐熱性および機械強度に優れるが、その反面、柔軟性および耐衝撃性が劣っている。このため、柔軟性および耐衝撃性のような特性が必要とされる用途には、主にポリエチレン系樹脂が用いられていた。しかしながら、ポリエチレン系樹脂から得られる成形品は耐傷付き性に劣るという問題点があった。
【0040】
一方、ポリプロピレン系樹脂と無機系充填剤(難燃剤)とからなる成形体としては、耐傷付き性が要求される電線またはワイヤーハーネスが知られている。また、特許文献18には、特定のプロピレン重合体を用いた自動車用絶縁電線が開示されている。しかしながら、特許文献18に用いられる成形体は、柔軟性、耐衝撃性に優れているが、耐傷付き性が不充分であった。以上が第6の発明の技術背景である。
【0041】
また、低比重すなわち軽量であり、柔軟で、機械強度の高い樹脂材料として、架橋発泡体は、建築内外装材、内装材・ドアグラスラン等の自動車部品、包装材料、日用品などに広く用いられている。これは、軽量化のために樹脂を発泡させただけでは、機械強度の低下を招くが、樹脂の架橋反応により分子鎖を結合させることで、機械強度の低下を抑制しつつ、発泡による軽量化が達成できるためである。
【0042】
また、履き物および履き物用部品、例えばスポーツシューズなどの靴底(主にミッドソール)にも、樹脂の架橋発泡体が使用されている。これは、軽量で、長期間の使用による変形が小さいとともに、過酷な使用条件に耐え得る機械強度、着地時の衝撃を吸収する低反発性および耐傷付性を有する材料が求められているためである。
【0043】
従来、靴底用には、エチレン・酢酸ビニル共重合体の架橋発泡体が広く使用されている。しかしながら、このエチレン・酢酸ビニル共重合体組成物を用いて成形される架橋発泡体は、比重が高く、圧縮永久歪みが大きい。このため、靴底に用いた場合は、重く、長期の使用により靴底が圧縮されて機械強度が失われ、磨耗性が大きいという問題がある。
【0044】
これに対して、特許文献19、20には、それぞれ、エチレン・α-オレフィン共重合体を用いた架橋発泡体、エチレン・酢酸ビニル共重合体とエチレン・α-オレフィン共重合体との混合物を用いた架橋発泡体が記載されている。しかしながら、これらでは、低比重性および圧縮永久歪み性が改良されるものの、充分な性能が得られていない。
【0045】
また、オレフィン系ゴムを動的架橋して得られる材料として熱可塑性エラストマーが知られている(特許文献21参照)。しかしながら、特許文献21は発泡については記載がなく、また、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、高発泡させて比重の低い発泡体を得ることが難しい材料であるため、上記のような用途に用いるには適当な材料であるとはいえない。
【0046】
このように、低比重で圧縮永久歪(CS)が小さく、しかも引裂強度特性、低反発性および耐傷付性に優れた発泡体を得ることは困難であった。以上が第7の発明の背景技術である。
【0047】
また、軟質ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムおよびシートは、軟質ポリエチレン系樹脂と比較して良好な耐熱性、柔軟性および機械強度を有しているため、自動車部品、建材用途、食品用途などへの展開が期待されている。これらの分野では、アルミ、銅、鉄、ステンレス等の金属、ガラスなどの無機材料、そのほか各種プラスチック材料と積層させて使用する用途が多く、各種材料との良好な接着性が求められている。特に、金属などの無機材料との接着力を発現する軟質ポリプロピレン系樹脂が所望されてきた。
【0048】
また、ポリプロピレン系樹脂は、有機過酸化物などを用いて極性モノマーをグラフトさせることが困難であり、このような処理を行うと分子量が大きく低下するため、耐熱性および機械物性が大きく低下する。
【0049】
特許文献22には、ポリプロピレンに有機ケイ素化合物を配合して金属などに対する接着強度を向上させる技術が記載されている。しかしながら、このようにして得られる積層構造体は、透明性、柔軟性およびゴム弾性などに劣り、使用できる用途にも限りがあった。また、このような技術により従来の未変性ポリプロピレン材料よりも優れた接着力が得られる。しかしながら、同技術におけるポリプロピレン樹脂は結晶性が高く、これを剥離させる際に剥離応力の集中が起こるため剥離が容易となる場合がある。以上が第8の発明の背景技術である。
【0050】
また、従来、ガラス、プラスチック等の板状物またはシート状物からなる表裏面材間に太陽電池を封止するためのシート(太陽電池封止用シート)として、有機過酸化物を含有したエチレン・酢酸ビニル共重合体(本明細書において、EVAともいう。)は、樹脂特性として、柔軟で透明性が高く、また、適切な耐候安定剤、接着促進剤などの添加剤を配合することで長期的耐久性が得られるため、一般的に使用されてきている。
【0051】
しかしながら、EVAは融点が低く、太陽電池モジュールが使用される環境温度では、熱変形を起こすなど耐熱性に問題がある。このため、有機過酸化物の配合によって、架橋構造を形成させることで耐熱性を発現させている。
【0052】
太陽電池封止用シートの作製には、ポリオレフィンを成形できる公知のシート成形法が用いられるが、上述の有機過酸化物を配合すると、有機過酸化物の分解を防止するため、低温での成形を余儀なくされ、高速生産性が阻害されるという問題があった。
【0053】
また、(ガラス、プラスチック)/(太陽電池封止用シート)/(太陽電池セル)/(太陽電池封止用シート)/(バックシート)構成を有する太陽電池モジュールの作製工程においては、真空熱ラミネートによる仮接着工程、および高温オーブンによる架橋工程の二工程が一般的に行われる。こうした有機過酸化物による架橋工程には数十分を有するために、架橋工程の時間短縮および廃止が強く求められている。
【0054】
また、長期間使用の際には、EVA材料の分解ガス(酢酸ガス)またはEVA自体が有する酢酸ビニル基が、太陽電池素子に悪影響を与えて発電効率が低下するという懸念がある。
【0055】
これに対して、エチレン・α-オレフィン共重合体を用いた太陽電池封止シートが提案されている(特許文献23参照)。これらの材料により太陽電池素子への悪影響は低減されると考えられるが、これらの材料は耐熱性および柔軟性のバランスが充分ではない。また、非架橋では良好な耐熱性を発現しないため、架橋工程の省略は困難であった。以上が第9の発明の背景技術である。
【0056】
また、近年の電気電子素子の発達は著しく、社会、産業、生活のあらゆる場面で電気電子素子が広く用いられている。一般に電気電子素子は、湿分、酸化性物質などの影響を受け受けやすいため、その安定動作および長寿命の実現には、これを封止することが広く行われている。
【0057】
今日、各種の素材が、電気電子素子を封止するために製造、供給されているが、中でも有機高分子を用いた封止シートは、比較的広い面積をカバーできること、使用が簡単であることなどから極めて有用である。また、透明性の確保が比較的容易であり、光を利用する電気電子素子、特に太陽電池を封止するため、特に好適に用いられている。
【0058】
太陽電池は、建物の屋根部分などの屋外で使用する場合が多いため、太陽電池を封止した太陽電池モジュールの形で使用することが一般的である。太陽電池モジュールは、通常、多結晶シリコンなどにより形成された太陽電池素子を、軟質透明樹脂からなる太陽電池封止材で挟み積層し、さらに表裏両面を太陽電池モジュール用保護シートでカバーした構造になっている。すなわち、典型的な太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール用保護シート(表面保護シート)/太陽電池用封止シート/太陽電池素子/太陽電池用封止シート/太陽電池モジュール用保護シート(裏面保護シート)という積層構造になっている。この結果、太陽電池モジュールは、耐候性を有し、建物の屋根部分などの屋外での使用にも適する。
【0059】
従来、太陽電池用封止シートを構成する材料(太陽電池封止材)としては、透明性および柔軟性などから、上述のように、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)が広く用いられていた(例えば、特許文献24参照)。EVAを太陽電池封止材に使用する場合、充分な耐熱性を付与するために一般的に架橋処理が行われるが、この架橋処理には1〜2時間程度の比較的長時間を要するため、太陽電池モジュールの生産速度および生産効率を低下させる原因となっていた。また、EVAが分解して発生する酢酸ガスなどの成分が、太陽電池素子に影響を与える可能性が懸念されていた。
【0060】
上記の技術的課題を解決するための方策の1つとして、非架橋の樹脂からなる太陽電池用封止シートを用いることが提案されている(例えば、特許文献25参照)。しかし、太陽電池の生産性、耐環境性および寿命に対する要求がさらに高いレベルに達するにつれ、特許文献25に具体的に提案されるEAA、EMAAなどの樹脂を用いた場合よりもさらに高いレベルで透明性、耐熱性および柔軟性を同時に満足させることが必要であった。この様な要求に応えることは、太陽電池以外の電気電子素子用の封止シートとしての使用においても極めて有用である。
【0061】
また、封止シートを太陽電池モジュールなどの用途において使用する場合、ガラスなどと積層して使用する場合が多く、ガラスなどとの接着性は実用上重要である。一部の従来の封止シートは、ガラスなどとの接着性が不充分な場合があり、その改良が強く望まれていた。以上が第10の発明の技術背景である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2002-088164号公報
【特許文献2】特開平8-302093号公報
【特許文献3】特開平07-076360号公報
【特許文献4】特開平11-349753号公報
【特許文献5】特開平08−302093号公報
【特許文献6】特開平08−113681号公報
【特許文献7】特開2002−348417号公報
【特許文献8】特開2005−47944号公報
【特許文献9】特開08−269271号公報
【特許文献10】特開平9-278909号公報
【特許文献11】特開2003-306587号公報
【特許文献12】特開2002-234115号公報
【特許文献13】特開平8-302093号公報
【特許文献14】特開平6−198830号公報
【特許文献15】特開平6−16832号公報
【特許文献16】特開2000−281807号公報
【特許文献17】特開平10−258488号公報
【特許文献18】特開2003-313377号公報
【特許文献19】特表平9-501447号公報
【特許文献20】特開平11-206406号公報
【特許文献21】特開2001-171439号公報
【特許文献22】特開2003-201375号公報
【特許文献23】特開2000-91611号公報
【特許文献24】特開平8-283696号公報
【特許文献25】特開2001-068703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0063】
本発明の目的は、種々の用途に好適に用いられるプロピレン系樹脂組成物およびその用途を提供することにある。
第一の発明の目的は、上記の点を改良することであって、優れた機械的性質を示すとともに、常温でのゴム弾性・圧縮永久歪に優れるだけでなく、高温でのゴム弾性・圧縮永久歪にも優れる樹脂組成物、該組成物を用いて得られる成形体、およびその用途を提供することにある。
【0064】
第二の発明の目的は、柔軟性および耐傷付き性のバランスに優れるとともに、耐白化性も良好である熱可塑性樹脂組成物、該熱可塑性樹脂組成物を架橋して得られる架橋物、ならびに柔軟性および耐傷つき性のバランスに優れるとともに、耐白化性も良好である成形体を提供することにある。
【0065】
第三の発明の目的は、上記の課題を解決することであって、機械強度、透明性および耐白化性(延伸時・熱処理時)に特に優れるとともに、耐衝撃性、耐傷付き性、柔軟性、透明性、伸縮性、室温および高温でのゴム弾性にも優れるプロピレン系重合体組成物、ならびに該組成物からなる成形体を提供することにある。
【0066】
第四の発明の目的は、優れた収縮特性(高い熱収縮率を有しながら室温での自然収縮率が低減された特性。)を有するとともに、フィルムの透明性、柔軟性、伸縮性および耐衝撃性に優れたフィルム、ならびに該フィルムを用いた熱収縮フィルムを得ることにある。また上記フィルムおよび熱収縮フィルムに好適に用いられる樹脂組成物を提供することにある。
【0067】
第五の発明の目的は、柔軟性、耐傷付き性、耐磨耗性、延伸時の耐白化性、折り曲げ時の耐白化性、耐折れしわ性、耐熱性、耐水性、耐圧縮歪性および機械的強度に優れたポリオレフィン系化粧シートを提供することにある。
【0068】
第六の発明の目的は、無機系充填剤を高い割合で含み、かつ、柔軟性、機械強度、破断点伸び、耐熱性、耐傷付き性、耐白化性および難燃性に優れたプロピレン系樹脂組成物を提供することにある。また、第六の発明の目的は、柔軟性、機械強度、破断点伸び、耐熱性、耐白化性および難燃性に優れるとともに、特に耐傷付き性に優れたプロピレン系樹脂組成物を得ることができる製造方法、また、該組成物の製造に好適に用いられるプロピレン系重合体組成物を提供することにある。また、第六の発明の目的は、上記組成物からなる成形体、ならびに該組成物を用いてなる絶縁体および/またはシースを有する電線を提供することにある。
【0069】
第七の発明の目的は、低比重で圧縮永久歪(CS)が小さく、しかも引裂強度特性、低反発性および耐傷付性に優れた発泡体が得られる、発泡体用材料、ならびに該材料から得られた発泡体を提供することにある。
【0070】
第八の発明の目的は、本発明は、金属、ガラスなどの無機材料、およびそのほか各種プラスチック材料に対して高い接着力を示すとともに、柔軟性、透明性、ゴム弾性、および耐傷付き性に優れた積層体が得られる軟質ポリプロピレン系樹脂組成物を提供することにある。
【0071】
第九の発明の目的は、上記の問題点を解決するために、これらの分野において新規の軟質プロピレン系材料を用いて太陽電池封止用シートを提供することにある。具体的には、材料由来の分解ガスを発生しないため、太陽電池素子への悪影響がなく、さらに、非架橋でも良好な機械強度、太陽電池封止性、透明性、耐候性および耐熱性を有する太陽電池封止用シートを提供することにある。
【0072】
第十の発明の目的は、上記の課題を解決し、太陽電池をはじめとする各種の電気電子素子の保護に好適であり、優れた透明性、耐熱性および柔軟性を備えた電気電子素子用封止シートを提供することにある。また、第十の発明の目的は、この優れた電気電子素子用封止シートに、実用上重要な優れた接着性をも付与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0073】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、第一の発明に係る熱可塑性樹脂組成物(X1)は、
以下の(A1)、(B1)、(C1)および必要に応じて(D1)を含むことを特徴とする。
(A1)アイソタクティックポリプロピレン1〜90重量%
(B1)プロピレン由来の構成単位を45〜89モル%、エチレン由来の構成単位を10〜25モル%、および必要に応じて炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位(a1)を0〜30モル%の量含むプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体9〜98重量%
(C1)スチレン系エラストマー1〜80重量%
(D1)密度が0.850〜0.910g/cm3の範囲にあるエチレン・α-オレフィン共重合体0〜70重量%
(ここで、(A1)+(B1)+(C1)+(D1)=100重量%である。)
【0074】
第一の発明に係る熱可塑性樹脂組成物(X1)は、さらに(E1)軟化剤を(A1)+(B1)+(C1)+(D1)の合計100重量部に対し1〜400重量部含むことが好ましい。
【0075】
第一の発明の成形体は、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有することを特徴とする。
第一の発明の成形体は、フィルムまたはシートであることが好ましい。
第一の発明の成形体は、モノフィラメント、繊維、または不織布であることが好ましい。
【0076】
第一の発明の自動車の内装部品または外装部品は、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有することを特徴とする。
第一の発明の家電部品は、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有することを特徴とする。
第一の発明の土木または建材部品は、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有することを特徴とする。
【0077】
第一の発明の包装用シートまたはキャップライナーは、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有することを特徴とする。
第一の発明のキャップは、上記キャップライナーを有することを特徴とする。
第一の発明の包装容器は、上記キャップを有することを特徴とする。
第一の発明のガスケットは、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有することを特徴とする。
【0078】
第一の発明の日用雑貨は、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有することを特徴とする。
第一の発明の化粧シートは、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有することを特徴とする。
【0079】
第二の発明に係る熱可塑性樹脂組成物(X2)は、
以下の(A2)、(B2)、(C2)、(D2)および(E2)を含んでなることを特徴とする。
(B2)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が100℃以下であるかまたは融点を有しないプロピレン・α-オレフィン共重合体5〜95重量%
(C2)スチレン系エラストマー5〜95重量%
(A2)アイソタクティックポリプロピレン0〜90重量%
(D2)密度が0.850〜0.910g/cm3の範囲にあるエチレン・α-オレフィン共重合体0〜70重量%
(ここで、(A2)+(B2)+(C2)+(D2)=100重量%である。)
(E2)軟化剤を(A2)+(B2)+(C2)+(D2)の合計100重量部に対し0〜400重量部。
【0080】
第二の発明に係る熱可塑性樹脂組成物(X2)は、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)が、プロピレンと少なくとも1種の炭素数4〜20のα-オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
【0081】
第二の発明に係る熱可塑性樹脂組成物(X2)は、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)が、プロピレンと1-ブテンとの共重合体であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された分子量分布(Mw/Mn)の値が3以下であることが好ましい。
【0082】
第二の発明に係る熱可塑性樹脂組成物(X2)は、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)が、メタロセン触媒により重合されることが好ましい。
第二の発明の熱可塑性樹脂組成物(X2)の架橋物は、熱可塑性樹脂組成物(X2)を架橋して得られることを特徴とする。
第二の発明の成形体は、熱可塑性樹脂組成物(X2)からなることを特徴とする。
【0083】
第二の発明の成形体は、上記架橋物からなることを特徴とする。
第二の発明の成形体は、上記成形体を、さらに架橋して得られるものであることを特徴とする。
【0084】
第三の発明に係るプロピレン系重合体組成物(X3)は、
(A3)プロピレン由来の構成単位を90モル%以上含み、23℃のノルマルデカンに不溶であり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜10dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体 10〜98重量%と、
(B3)以下の要件(b1)〜(b5)をすべて満たす軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体 2〜90重量%とを含んでなることを特徴とする。
【0085】
(b1)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜10dl/gの範囲にある。
(b2)示差走査熱量分析(DSC)で求められる融点が100℃未満または融点が観測されない。
(b3)プロピレン由来の構成単位を60〜75モル%、エチレン由来の構成単位を10〜14.5モル%、および炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10.5〜30モル%有する(ここで、プロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位および炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位の合計は100モル%である。)。
【0086】
(b4)13C−NMRで測定されるトリアドタクティシティ(mm分率)が85〜97.5%。
(b5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された分子量分布(Mw/Mn)の値が1.0〜3.0の範囲にある。
第三の発明に係るプロピレン系重合体組成物(X3)は、(A3)プロピレン系重合体の示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が110〜170℃の範囲にあることが好ましい。
【0087】
第三の発明に係るプロピレン系重合体組成物(X3)は、さらに(C3)エチレン系重合体またはスチレン系重合体から選ばれ、ショアーA硬度が95以下および/またはショアーD硬度が60以下の範囲にある少なくとも1つ以上の重合体を含み、(A3)プロピレン系重合体と(B3)軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体との合計100重量部に対し、(C3)成分の合計が1重量部〜40重量部の範囲にあることが好ましい。
【0088】
第三の発明に係るプロピレン系重合体組成物(X3)は、(A3)プロピレン系重合体、(B3)軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体および下記プロピレン系重合体組成物(X3−1)についてそれぞれ測定した、パルスNMR(ソリッドエコー法、プロトン観測)による磁化強度の1000μsまでの横緩和による減衰強度が、t(観測時間)500〜1000(μs)のすべての範囲において以下の関係式3−1を満たすことが好ましい。
【0089】
M(t)A×(1−fB)+M(t)B×fB−M(t)X-1≧0.02 …3−1
M(t)A:プロピレン系重合体組成物(X3)に用いたプロピレン系重合体(A3)を測定したときの時刻tにおける減衰強度
M(t)B:プロピレン系重合体組成物(X3)に用いた軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)を測定したときの時刻tにおける減衰強度
M(t)X-1:プロピレン系重合体組成物(X3)中に存在する重合体(A3)および共重合体(B3)の割合と同じ重量比となるように、プロピレン系重合体(X3)に用いたプロピレン系重合体(A3)を含むポリプロピレンと、プロピレン系重合体組成物(X3)に用いた軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)とを溶融混練して得られるプロピレン系重合体組成物(X3−1)を測定したときの時刻tにおける減衰強度
B:プロピレン系重合体組成物(X3)中に存在する軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)の、プロピレン系重合体(A3)および軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)の合計に対する重量比(0.02≦fB≦0.90)
(ここで、t(観測時間)は500〜1000(μs)であり、M(t)A、M(t)BおよびM(t)X-1はそれぞれ0〜1に規格化(減衰強度の最大値を1とする)されている。)。
【0090】
第三の発明の成形体は、プロピレン系重合体組成物(X3)からなることを特徴とする。
第三の発明の成形体は、フィルム、シート、ブロー成形体、射出成形体およびチューブのいずれかであることが好ましい。
第三の発明のキャップライナーは、プロピレン系重合体組成物(X3)からなる層を少なくとも1層有することを特徴とする。
【0091】
第三の発明の食品包装用ラップフィルムは、プロピレン系重合体組成物(X3)からなる層を少なくとも1層有することを特徴とする。
第三の発明の食品包装用ラップフィルムは、プロピレン系重合体組成物(X3)からなる層を少なくとも1層と、エチレン単独重合体またはエチレン単位を70モル%以上含有するエチレン共重合体からなる層を少なくとも1層とを有する積層体からなることが好ましい。
【0092】
第四の発明に係る単層または多層構成のフィルムは、
以下の(A4)および(B4)を含んでなる樹脂組成物(X4)からなる層を少なくとも一層有し、該層が少なくとも一軸ないしは二軸方向へ延伸されていることを特徴とする。
(A4)アイソタクティックポリプロピレン10〜97重量%
(B4)プロピレン由来の構成単位を40〜85モル%、エチレン由来の構成単位を5〜30モル%、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位(a4)を5〜30モル%有し、かつ示差走査熱量計で観測される融点が100℃未満または融点が観測されないプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体3〜90重量%(ここで、(A4)および(B4)の合計は100重量%とする)。
【0093】
第四の発明に係る単層または多層構成のフィルムは、樹脂組成物(X4)が、(A4)+(B4)の合計100重量部に対し、(C4)環球法により測定される軟化点が50℃〜160℃の範囲にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量が300〜1400の範囲にある炭化水素樹脂を3〜70重量部の割合で含むことが好ましい。
【0094】
第四の発明の熱収縮フィルムは、上記フィルムからなることを特徴とする。
第四の発明に係る樹脂組成物(X4)は、
(A4)アイソタクティックポリプロピレン10〜97重量%と
(B4)プロピレン由来の構成単位を40〜85モル%、エチレン由来の構成単位を5〜30モル%、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位(a4)を5〜30モル%有し、かつ示差走査熱量計で観測される融点が100℃未満または融点が観測されないプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体3〜90重量%(ここで、(A4)と(B4)の合計は100重量%とする)と、
(A4)+(B4)の合計100重量部に対し、
(C4)環球法により測定される軟化点が50℃〜160℃の範囲にあり、GPCで測定した数平均分子量が300〜1400の範囲にある炭化水素樹脂3〜70重量部とを含んでなることを特徴とする。
【0095】
第五の発明に係るポリオレフィン系化粧シートは、
アイソタクティックポリプロピレン(A5)と、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が120℃未満または融点が観測されない、プロピレン系重合体(B5)とを含有してなり、
(A5)と(B5)との合計を100重量部とした場合に、(A5)を10〜99重量部、(B5)を1〜90重量部の割合で含有する、プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層を構成層の少なくとも一層として含むことを特徴とする。
【0096】
第五の発明に係るポリオレフィン系化粧シートは、プロピレン系重合体組成物(X5)が、(A5)と(B5)との合計100重量部に対し、プロピレン系重合体(B5)以外であって、ショアーA硬度が95以下および/またはショアーD硬度が60以下の範囲にある少なくとも1種の軟質重合体(C5)を、1〜80重量部の量で含有することが好ましい。
【0097】
第五の発明に係るポリオレフィン系化粧シートは、プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層が、保護層として用いられることが好ましい。
第五の発明に係るポリオレフィン系化粧シートは、さらに、上記プロピレン系重合体組成物(X5)以外のポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を構成層の少なくとも一層として含むことが好ましい。
【0098】
第五の発明に係るポリオレフィン系化粧シートは、プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層と、プロピレン系重合体組成物(X5)以外のポリオレフィン系樹脂組成物からなる層とが接着剤を介さずに積層されてなることが好ましい。
【0099】
第六の発明に係るプロピレン系樹脂組成物(X6)は、
示差走査熱量計(DSC)で測定される融点が120〜170℃であるプロピレン系重合体(A6)を0〜80重量%、
示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が120℃未満または融点が観測されない、プロピレン系重合体(B6)を5〜85重量%、
エチレン系エラストマー(C6−1)およびスチレン系エラストマー(C6−2)から選ばれる1種以上のエラストマー(C6)を合計0〜40重量%、および、
無機系充填剤(D6)を15〜80重量%含む(ここで、(A6)、(B6)、(C6)および(D6)成分の合計量は100重量%である。)ことを特徴とする。
【0100】
第六の発明に係るプロピレン系樹脂組成物(X6)は、プロピレン系重合体(B6)が、下記(a)および(b)を満たすプロピレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-1)であることが好ましい。
(a)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された分子量分布(Mw/Mn)の値が1〜3であり、
(b)融点Tm(℃)と、13C-NMRスペクトル測定にて求められるコモノマー構成単位の含量M(モル%)とが、
146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
の関係式を満たす(ただし、Tmは120℃未満である。)。
【0101】
第六の発明に係るプロピレン系樹脂組成物(X6)は、プロピレン系重合体(B6)が、下記(m)および(n)を満たすプロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-2)であることが好ましい。
(m)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された分子量分布(Mw/Mn)の値が1〜3であり、
(n)プロピレン由来の構成単位を40〜85モル%、エチレン由来の構成単位を5〜30モル%、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位を5〜30モル%含む(ここで、プロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位の合計は100モル%である。)。
【0102】
第六の発明に係るプロピレン系樹脂組成物(X6)は、無機系充填剤(D6)が、金属水酸化物、金属炭酸塩および金属酸化物から選ばれる1種以上であることが好ましい。
第六の発明に係るプロピレン系樹脂組成物(X6)は、プロピレン系重合体(A6)、プロピレン系重合体(B6)、エチレン系エラストマー(C6−1)およびスチレン系エラストマー(C6−2)から選ばれる1種以上のエラストマー(C6)および無機系充填剤(D6)の合計100重量部に対して、オイル(E6)を0.1〜20重量部含むことが好ましい。
【0103】
第六の発明に係るプロピレン系樹脂組成物(X6)は、プロピレン系重合体(A6)、プロピレン系重合体(B6)、エチレン系エラストマー(C6−1)およびスチレン系エラストマー(C6−2)から選ばれる1種以上のエラストマー(C6)および無機系充填剤(D6)の合計100重量部に対して、極性基を有するビニル化合物のグラフト量がグラフト変性重合体の重量を100重量%とした場合に0.01〜10重量%である、グラフト変性重合体(F6)を0.1〜30重量部含むことが好ましい。
【0104】
第六の発明に係るプロピレン系樹脂組成物(X6)の製造方法は、プロピレン系樹脂組成物(X6)を製造するにあたり、プロピレン系重合体(B6)と、グラフト変性重合体(F6)とを溶融混練してプロピレン系重合体組成物(G6)を製造し、該プロピレン系重合体組成物(G6)と無機系充填剤(D6)と、必要に応じて用いられるプロピレン系重合体(A6)と、必要に応じて用いられる、エチレン系エラストマー(C6−1)およびスチレン系エラストマー(C6−2)から選ばれる1種以上のエラストマー(C6)とを含む成分を溶融混練することを特徴とする。
【0105】
第六の発明のプロピレン系樹脂組成物(X6)は、上記製造方法で得られることを特徴とする。
第六の発明に係るプロピレン系重合体組成物(G'6)は、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が120℃未満または融点が観測されない、プロピレン系重合体(B6)99〜14重量部と、
極性基を有するビニル化合物のグラフト量がグラフト変性重合体の重量を100重量%とした場合に0.01〜10重量%である、グラフト変性重合体(F6)1〜86重量部とからなることを特徴とする。
【0106】
第六の発明に係るプロピレン系重合体組成物(G'6)は、プロピレン系重合体(B6)が99〜50重量部であり、グラフト変性重合体(F6)が1〜50重量部であることが好ましい。
第六の発明の成形体は、プロピレン系樹脂組成物(X6)からなることを特徴とする。
第六の発明の成形体は、電線の絶縁体または電線シースであることをが好ましい。
【0107】
第六の発明の電線は、プロピレン系樹脂組成物(X6)を用いてなる絶縁体、および/または、プロピレン系樹脂組成物(X6)を用いてなるシースを有することを特徴とする。
第六の発明の電線は、自動車用電線または機器用電線であることが好ましい。
【0108】
第七の発明に係る発泡体用材料(X7)は、
示差走査熱量計で観測される融点が100℃未満であるか、または融点が観測されないプロピレン系重合体(B7)を含むことを特徴とする。
【0109】
第七の発明に係る発泡体用材料(X7)は、プロピレンと少なくとも一種のプロピレンを除く炭素数2〜20のα-オレフィンとの共重合体であって、示差走査熱量計で観測される融点が100℃未満であるか、または融点が観測されないプロピレン系重合体(B7)を含むことが好ましい。
【0110】
第七の発明に係る発泡体用材料(X7)は、プロピレン系重合体(B7)30〜100重量部と、示差走査熱量計で観測される融点が100℃以上のプロピレン系重合体(A7)0〜70重量部(ここで、(B7)および(A7)の合計を100重量部である。)とを含む組成物であることが好ましい。
【0111】
第七の発明に係る発泡体用材料(X7)は、プロピレン系重合体(B7)、および必要に応じて用いられるプロピレン系重合体(A7)の合計100重量部に対し、エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)を1〜1900重量部、および/またはエチレン・極性モノマー共重合体(D7)を1〜1900重量部含む組成物であることが好ましい。
【0112】
第七の発明に係る発泡体用材料(X7)は、プロピレン系重合体(B7)が、プロピレン由来の構成単位を45〜92モル%、エチレン由来の構成単位を5〜25モル%、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位を3〜30モル%含む(ここで、プロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とする。)プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B7-1)であることが好ましい。
【0113】
第七の発明に係る発泡体用材料(X7)は、さらに発泡剤(E7)を含むことが好ましい。
第七の発明に係る発泡体用材料(X7)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)が、エチレン・1-ブテン共重合体であることが好ましい。
第七の発明の発泡体は、発泡体用材料(X7)から得られることを特徴とする。
【0114】
第七の発明の発泡体は、発泡体用材料(X7)を熱処理または放射線照射処理して得られることが好ましい。
第七の発明の発泡体は、発泡体用材料(X7)を金型内に挿入した状態で熱処理を行って得られることが好ましい。
第七の発明の発泡体は、上記発泡体を二次圧縮して得られることが好ましい。
【0115】
第七の発明の発泡体は、上記発泡体のゲル含量が70%以上、比重が0.6以下であることが好ましい。
第七の発明の積層体は、上記発泡体からなる層と、ポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革および人工皮革からなる群から選ばれる少なくとも一種の素材からなる層とを有することを特徴とする。
【0116】
第七の発明の履き物は、上記発泡体または上記積層体からなることを特徴とする。
第七の発明の履き物用部品は、上記発泡体または上記記載の積層体からなることを特徴とする。
第七の発明の履き物用部品は、ミッドソール、インナーソールまたはソールであることが好ましい。
【0117】
第八の発明に係る樹脂組成物(X8)は、
示差走査熱量計で観測される融点が100℃以上のプロピレン系重合体(A8)を0〜90重量%、および
プロピレンと少なくとも一種のプロピレンを除く炭素数2〜20のα-オレフィンとの共重合体であって、ショアーA硬度が30〜80であり、かつ示差走査熱量計で観測される融点が100℃未満または融点が観測されない軟質プロピレン系共重合体(B8)10〜100重量%を含む熱可塑性樹脂組成物((A8)および(B8)の合計量)100重量部に対して、
カップリング剤(Y8)を0.1〜10重量部、有機過酸化物(Z8)を0〜5重量部含むことを特徴とする。
【0118】
第八の発明の積層体は、樹脂組成物(X8)を含む少なくとも1層[a]と、層[a]の片面または両面に金属、無機化合物および極性プラスチック材料から選ばれる材料を含む層[b]とを含むことを特徴とする。
【0119】
第九の発明に係る太陽電池封止用シートは、
示差走査熱量計で観測される融点が100℃以上のプロピレン系重合体(A9)0〜70重量%、およびプロピレンと少なくとも一種のプロピレンを除く炭素数2〜20のα-オレフィンとの共重合体であって、ショアーA硬度が30〜80であり、かつ示差走査熱量計で観測される融点が100℃未満または融点が観測されない軟質プロピレン系共重合体(B9)30〜100重量%からなる熱可塑性樹脂組成物(X9)を含むことを特徴とする。
【0120】
第九の発明に係る太陽電池封止用シートは、軟質プロピレン系共重合体(B9)が以下のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B9-1)であることが好ましい。
(B9-1)プロピレン由来の構成単位を45〜92モル%、エチレン由来の構成単位を5〜25モル%、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位を3〜30モル%含み、かつ示差走査熱量計で観測される融点が100℃未満または融点が観測されない。
【0121】
第九の発明に係る太陽電池封止用シートは、熱可塑性樹脂組成物(X9)100重量部に対してカップリング剤(Y9)を0.1〜5重量部配合してなることが好ましい。
第九の発明に係る太陽電池封止用シートは、非架橋であることが好ましい。
第九の発明に係る太陽電池封止用シートは、厚み1mmのシートで測定した内部ヘイズが1.0%〜10%であることが好ましい。
【0122】
第十の発明に係る電気電子素子用封止シ-トは、
ショアーA硬度が50〜90であり、エチレン含量が60〜95mol%であるエチレン系共重合体からなる層(I−10)、および、示差走査熱量計で観測した融点が100℃以上であるプロピレン系重合体(A10)0〜90重量部と、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4〜20のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィンとの共重合体であって、ショアーA硬度が30〜80であり示差走査熱量計で観測した融点が100℃未満であるか融点が観測されないプロピレン系共重合体(B10)10〜100重量部((A10)と(B10)との合計は100重量部)とからなる熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)を有することを特徴とする。
【0123】
第十の発明に係る電気電子素子用封止シ-トは、層(I−10)が、さらに、上記エチレン系共重合体100重量部に対して、シランカップリング剤0.1〜5重量部、有機過酸化物0〜5重量部、および、耐候安定剤0〜5重量部を有するものであることが好ましい。
第十の発明に係る電気電子素子用封止シートは、上記エチレン系共重合体が、エチレンのほかに、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、およびオクテン-1よりなる群から選ばれるの少なくとも1種のモノマーを用いて得られた共重合体であることが好ましい。
【0124】
第十の発明に係る電気電子素子用封止シートは、熱可塑性樹脂組成物(X10)の23℃で測定した圧縮永久歪が5〜35%であり、70℃で測定した圧縮永久歪が50〜70%であることが好ましい。
【0125】
第十の発明に係る電気電子素子用封止シートは、上記エチレン系共重合体からなる層(I−10)と熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)とが直接積層されていることが好ましい。
【0126】
第十の発明の太陽電池用封止シートは、上記電気電子素子用封止シートからなることを特徴とする。
第十の発明の太陽電池モジュールは、上記太陽電池用封止シートを用いて作製されたことを特徴とする。
第十の発明の太陽電池モジュールは、さらに、ガラスまたはポリエステル樹脂からなる層を有する太陽電池モジュールであって、上記太陽電池用封止シートが、層(I−10)において、上記ガラスまたはポリエステル樹脂からなる層と接合されていることが好ましい。
【0127】
第十の発明の太陽電池モジュールは、さらに、シリコン系の太陽電池素子を有する太陽電池モジュールであって、上記太陽電池用封止シートが、層(II−10)において、前記太陽電池素子と接合されていることが好ましい。
第十の発明の発電設備は、上記太陽電池モジュールを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0128】
本発明によれば、種々の用途に好適に用いられるプロピレン系樹脂組成物およびその用途が得られる。
第一の発明の熱可塑性樹脂組成物は、優れた機械的性質を示すとともに、常温でのゴム弾性・圧縮永久歪に優れるだけでなく、高温でのゴム弾性・圧縮永久歪にも優れる。また、軟化剤を含む場合には、特に高温においても、外観保持性と、ゴム弾性・圧縮永久歪とのバランスに優れる。第一の発明の成形体は、上記熱可塑性樹脂組成物からなる部分を少なくとも一部に有するため、優れた機械的性質を示すとともに、常温でのゴム弾性・圧縮永久歪に優れるだけでなく、高温でのゴム弾性・圧縮永久歪にも優れる。また、軟化剤を含む場合には、特に高温においても、外観保持性と、ゴム弾性・圧縮永久歪とのバランスに優れる。第一の発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記性質を有するため、種々の用途に好適に用いられる。
【0129】
第二の発明の熱可塑性樹脂組成物およびその架橋物からなる成形品は、柔軟性および耐傷付き性のバランスに優れるとともに、耐白化性も良好である。このため、これらは、自動車の内装部品、自動車外装部品、家電部品、土木・建材部品、包装用シート、キャップライナー、ガスケット、日用雑貨などの各種成形体として良好な性能を発現することができる。
【0130】
第三の発明のプロピレン系重合体組成物によれば、機械強度、透明性および耐白化性(延伸時・熱処理時)に特に優れるとともに、耐衝撃性、耐傷付き性、柔軟性、透明性、伸縮性、室温および高温でのゴム弾性にも優れる成形体を提供することができる。上記組成物からなる成形体は、耐衝撃性、耐傷付き性、柔軟性、透明性、伸縮性、室温および高温でのゴム弾性にも優れる。
【0131】
第四の発明のフィルムは、透明性、柔軟性、伸縮性、耐衝撃性および延伸性(低温延伸)に優れており、特に優れた収縮特性(高い熱収縮率を有しながら室温での自然収縮率が低減された特性。)を有する。第四の発明のフィルムによれば、高性能な熱収縮フィルムが得られる。また、第四の発明の樹脂組成物によれば、透明性、柔軟性、伸縮性、耐衝撃性および延伸性(低温延伸)に優れており、特に優れた収縮特性を有するフィルムおよび熱収縮フィルムを得ることができる。
【0132】
第五の発明のポリオレフィン系化粧シートは、柔軟性、耐傷付き性、耐磨耗性、延伸時の耐白化性、折り曲げ時の耐白化性、耐折れしわ性、耐熱性、耐水性、耐圧縮歪性および機械的強度(破断点強度)に優れるとともに、焼却時のダイオキシンの発生および可塑剤使用による人体への影響などの問題を防ぐことができる。
【0133】
第六の発明のプロピレン系樹脂組成物は、無機系充填剤を高い割合で含み、かつ、良好な柔軟性とともに、優れた機械強度、破断点伸びおよび耐傷付き性を有する。第六の発明のプロピレン系樹脂組成物中にオイルが含まれている場合には、特に耐傷つき性および耐低温脆化性に優れる。また、第六の発明のプロピレン系樹脂組成物中にグラフト変性重合体が含まれている場合には、特に耐傷つき性に優れる。また、第六の発明に係るプロピレン系樹脂組成物の製造方法によれば、柔軟性、機械強度、破断点伸びおよび難燃性に優れるとともに、特に耐傷付き性に優れたプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。また、第六の発明のプロピレン系重合体組成物によれば、上記プロピレン系樹脂組成物の製造に好適に用いられ、特に耐傷つき性に優れた該組成物を得ることができる。さらに、第六の発明のプロピレン系樹脂組成物は、無機系充填剤を高い割合で含むことから、難燃性に優れた成形体、特に電線などに好適に利用できる。
【0134】
第七の発明の発泡体用材料によれば、低比重で圧縮永久歪(CS)が小さく、しかも引裂強度特性、低反発性および耐傷付性に優れた発泡体が得られる。また、第七の発明の発泡体は、低比重で圧縮永久歪(CS)が小さく、しかも引裂強度特性、低反発性および耐傷付性に優れている。また、第七の発明の発泡体は、積層体としても用いることができる。第七の発明の発泡体および積層体は、低比重で圧縮永久歪(CS)が小さく、しかも引裂強度特性、低反発性および耐傷付性に優れているため、履き物および履き物用部品として好適に用いられる。
【0135】
第八の発明の樹脂組成物は、金属、ガラスなどの無機材料、およびそのほか各種プラスチック材料に対して良好な熱接着力を示すとともに、幅広い温度における剥離強度に優れる。また、第八の発明の樹脂組成物から得られる積層体は、柔軟性、耐熱性、透明性、耐傷付き性、ゴム弾性、および機械強度にも優れるため各種用途に好適に使用できる。
【0136】
第九の発明の太陽電池封止用シートは、材料由来の分解ガスを発生することがないため、太陽電池素子への悪影響がなく、良好な耐熱性、機械強度、柔軟性(太陽電池封止性)および透明性を有する。また、材料の架橋工程を必要としないため、シート成形時および太陽電池モジュール製造工程時間が大きく短縮できるとともに、使用後の太陽電池のリサイクルも容易となる。
【0137】
第十の発明によれば、優れた透明性、耐熱性および柔軟性を有するとともに、ガラスなどとの接着性に優れた電気電子素子用封止シートを提供することができる。このような電気電子素子用封止シートは、屋外での使用に特に好適であり、太陽電池素子の封止などの用途において、実用上高い価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0138】
図1図3−1は、実施例3−1で作製したサンプルの減衰強度を示す図である。
図2図3−2は、実施例3−2で作製したサンプルの減衰強度を示す図である。
図3図3−3は、比較例3−1で作製したサンプルの減衰強度を示す図である。
図4図3−4は、比較例3−2で作製したサンプルの減衰強度を示す図である。
図5図3−5は、比較例3−3で作製したサンプルの減衰強度を示す図である。
図6図5−1は、第五の発明のポリオレフィン系化粧シートを用いた化粧板の一例であって、化粧シートにプロピレン系重合体組成物(X5)からなる層が含まれている例を示している。
図7図5−2は、第五の発明のポリオレフィン系化粧シートを用いた化粧板の一例であって、化粧板がプロピレン系重合体組成物(X5)からなる層と、プロピレン系重合体組成物(X5)以外のポリオレフィン系樹脂組成物からなる層との積層構造を含む場合の例を示している。
図8図9−1は、太陽電池封止用シートを適用する形態の一例である。
図9図10−1は、第十の発明の好ましい実施形態である太陽電池モジュールの一例の構造を簡略に示す断面図である。層(II−10)である32、42間で封止が行われる。
【発明を実施するための形態】
【0139】
1.第一の発明
以下、第一の発明について詳細に説明する。
〈アイソタクティックポリプロピレン(A1)〉
第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)は、NMR法により測定したアイソタクティックペンタッド分率が0.9以上、好ましくは0.95以上のポリプロピレンである。
【0140】
アイソタクティックペンタッド分率(mmmm)は、先行公報(特開2003-147135号公報)に記載されている方法で測定、計算される。
アイソタクティックポリプロピレン(A1)としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと、少なくとも1種のプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられるが、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα-オレフィンが好ましい。
【0141】
これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
これらのα-オレフィンから導かれる構成単位は、ポリプロピレン中に35モル%以下、好ましくは30モル%以下の割合で含まれていてもよい。
【0142】
アイソタクティックポリプロピレン(A1)は、ASTM D 1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0143】
また、必要に応じて複数のアイソタクティックポリプロピレン(A1)を併用することができ、例えば、融点や剛性の異なる2種類以上の成分を用いることもできる。
また、アイソタクティックポリプロピレン(A1)としては、耐熱性に優れるホモポリプロピレン(通常プロピレン以外の共重合成分が3mol%以下である公知のもの)、耐熱性および柔軟性のバランスに優れるブロックポリプロピレン(通常3〜30wt%のノルマルデカン溶出ゴム成分を有する公知のもの)、さらには、柔軟性および透明性のバランスに優れるランダムポリプロピレン(通常DSCにより測定される融点が110℃〜150℃の範囲にある公知のもの)が、目的の物性を得るために選択してまたは併用して用いることができる。
【0144】
このようなアイソタクティックポリプロピレン(A1)は、例えば、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物および電子供与体からなるチーグラー触媒系、またはメタロセン化合物を触媒の一成分として用いたメタロセン触媒系で、プロピレンを重合、またはプロピレンと他のα―オレフィンとを共重合することにより製造できる。
【0145】
〈プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)〉
第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(B1)は、プロピレン由来の構成単位を45〜89モル%、好ましくは52〜85モル%、より好ましくは60〜80モル%、エチレン由来の構成単位を10〜25モル%、好ましくは10〜23モル%、より好ましくは12〜23モル%、および必要に応じて炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位(a1)を0〜30モル%、好ましくは、0〜25モル%、より好ましくは、0〜20モル%の量含んでいる。また、炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位(a1)が必須となる場合には、プロピレン由来の構成単位を好ましくは45〜89モル%、より好ましくは52〜85モル%、さらに好ましくは60〜80モル%、エチレン由来の構成単位を好ましくは10〜25モル%、より好ましくは10〜23モル%、さらに好ましくは12〜23モル%、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位(a1)を好ましくは1〜30モル%、より好ましくは3〜25モル%、さらに好ましくは5〜20モル%の量含んでいる。
【0146】
プロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位および必要に応じて炭素数4〜20のα-オレフィン構成単位を上記の量で含有するプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)は、アイソタクティックポリプロピレン(A1)との相溶性が良好となり、得られるプロピレン系重合体組成物は、充分な透明性、柔軟性、耐熱性および耐傷付性を発揮できる傾向にある。
【0147】
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にあることが望ましい。極限粘度[η]が上記範囲にあると、プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(B1)は、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、低温特性および耐動的疲労性などの特性に優れる。
【0148】
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)は、JIS K6301に準拠して、JIS3号ダンベルを用い、スパン間:30mm、引っ張り速度:30mm/minで23℃にて測定した、100%歪での応力(M100)が通常4MPa以下、好ましくは3MPa以下、さらに好ましくは2MPa以下である。100%歪での応力が上記範囲にあると、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)は、柔軟性、透明性およびゴム弾性に優れる。
【0149】
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)は、X線回折で測定した結晶化度が通常20%以下、好ましくは0〜15%である。
また、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)は単一のガラス転移温度Tgを有し、かつ示差走査熱量計(DSC)によって測定したTgが、通常-10℃以下、好ましくは-15℃以下であることが望ましい。Tgが上記範囲にあると、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)は、耐寒性および低温特性に優れる。
【0150】
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において融点(Tm、℃)が存在する場合には、通常、融解熱量ΔHが30J/g以下であり、かつC3(プロピレン)含量(mol%)とΔH(J/g)との関係において以下の関係式が成り立つ。ここで、C3含量とは、C13−NMRスペクトルの解析によって決定されるプロピレン由来の構成単位の割合を意味する。
ΔH<345Ln(C3含量mol%)-1492、
ただしこの場合、76≦C3含量(mol%)≦90
【0151】
プロピレン含量(モル%)と融解熱量ΔH(J/g)とが上記関係を満たすようなプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(B1)は、重合の条件を適宜設定して、共重合体の結晶性を低下させることにより、得ることができる。例えば、触媒を適宜選択することによって、結晶性を低下させることが可能であり、この結果、同一のプロピレン含量であっても、融解熱量ΔHが低下し、プロピレン含量(モル%)と融解熱量ΔH(J/g)とが上記関係を満たすプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(B1)を得ることができる。結晶性を低下させるために好ましい触媒の一例を、実施例において開示した。
【0152】
また、重合温度、重合圧力を適宜設定することによって、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(B1)の結晶性を調整することもできる。例えば、重合温度を高く設定することで、得られる共重合体の結晶性を低下させることが可能であり、重合圧力を低く設定することでも、得られる共重合体の結晶性を低下させることが可能である。この結果、同一のプロピレン含量であっても、融解熱量ΔHが低下し、プロピレン含量(モル%)と融解熱量ΔH(J/g)とが上記関係を満たすプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(B1)を得ることができる。
【0153】
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)の値は好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)は、示差走査熱量計(DSC)で観測される融点が通常100℃未満、好ましくは融点が観測されない。融点が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。測定条件は、第1の発明の実施例記載のとおりである。
【0154】
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)は、13C−NMRで測定され
るトリアドタクティシティ(mm分率)が好ましくは85%以上、より好ましくは85〜97.5%以下、さらに好ましくは87〜97%、特に好ましくは90〜97%の範囲にある。mm分率が上記範囲にあると、特に柔軟性および機械強度のバランスに優れるため、第一の発明に好適である。mm分率は、国際公開第2004−087775号パンフレットの21頁7行目〜26頁6行目に記載された方法を用いて測定できる。
【0155】
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)は、その一部が極性モノマーによりグラフト変性されていてもよい。この極性モノマーとしては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸またはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニルなどが挙げられる。
【0156】
変性プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体は、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)に、極性モノマーをグラフト重合させることにより得られる。プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)に、上記極性モノマーをグラフト重合させる際には、極性モノマーは、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部の量で使用される。このグラフト重合は、通常ラジカル開始剤の存在下に行なわれる。
【0157】
ラジカル開始剤としては、有機過酸化物またはアゾ化合物などを用いることができる。ラジカル開始剤は、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)および極性モノマーとそのまま混合して使用することもできるが、少量の有機溶媒に溶解してから使用することもできる。この有機溶媒としては、ラジカル開始剤を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定されない。
【0158】
また、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)に極性モノマーをグラフト重合させる際には、還元性物質を用いてもよい。還元性物質を用いると、極性モノマーのグラフト量を向上できる。
【0159】
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)の極性モノマーによるグラフト変性は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)を有機溶媒に溶解し、次いで極性モノマーおよびラジカル開始剤などを溶液に加え、70〜200℃、好ましくは80〜190℃の温度で、0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間反応させる方法が挙げられる。
【0160】
また、押出機などを用いて、無溶媒で、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)と極性モノマーとを反応させて、変性プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体を製造することもできる。この反応は、通常プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)の融点以上、具体的には120〜250℃の温度で、通常0.5〜10分間行われることが望ましい。
【0161】
このようにして得られる変性プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体の変性量(極性モノマーのグラフト量)は通常0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜30重量%、より好ましくは0.2〜10重量%であることが望ましい。
【0162】
第一の発明のプロピレン系重合体組成物に上記の変性プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体が含まれると、他の樹脂との接着性および相溶性に優れ、また、該プロピレン系重合体組成物から得られた成形体表面の濡れ性が改良される場合がある。
【0163】
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)は、アイソタクティックポリプロピレン(A1)製造用のメタロセン触媒を用いて(A1)と同様に製造できるが、これに限定されない。例えば国際公開2004/087775号パンフレット記載のものを用いることができる。
【0164】
〈スチレン系エラストマー(C1)〉
第一の発明に用いられるスチレン系エラストマー(C1)としては、特に制限はないが、中でもスチレン・ジエン系熱可塑性エラストマーを例示することができる。特に、その中でもブロック共重合体エラストマー、ランダム共重合体エラストマーが好ましい。ここでスチレン系成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレンおよびこれらの混合物などを例示でき、ジエン系成分としては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエンおよびこれらの混合物などを例示できる。
【0165】
スチレン系エラストマー(C1)の代表例としては、ポリブタジエンブロックセグメントと、スチレン系化合物(スチレンを含む。以下において同じ)・ブタジエン共重合体ブロックセグメントとからなる水添ジエン系重合体;ポリイソプレンブロックセグメントと、スチレン系化合物・イソプレン共重合体ブロックセグメントとからなる水添ジエン系重合体;スチレン系化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体;スチレン系化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物;およびスチレン系化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体の水素添加物などが挙げられる。
【0166】
スチレン系熱可塑性エラストマー中の上記スチレン系成分の含有量は特に制限されないが、5〜40重量%の範囲であれば、特に柔軟性およびゴム弾性の点で好ましい。
スチレン系エラストマー(C1)は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、スチレン系エラストマー(C1)は市販のものを用いることができる。
【0167】
〈エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(D1)〉
第一の発明に必要に応じて用いられるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(D1)は、エチレンと、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜10のα-オレフィンとの共重合体を意味するが、下記特徴を有するものが好ましく使用できる。
(a)密度(ASTM 1505 23℃)が0.850〜0.910g/cm3、好ましくは0.860〜0.905g/cm3、より好ましくは0.865〜0.895g/cm3
(b)190℃、荷重2.16kgで測定されるMFRが0.1〜150g/10分、好ましくは0.3〜100g/10分
このようなエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(D1)を用いると、軟化剤の良好な保持性が発現するため好ましい。
【0168】
エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(D1)の製造方法は特に制限されないが、ラジカル重合触媒、フィリップス触媒、チーグラー・ナッタ触媒、またはメタロセン触媒を用いて、エチレンとα-オレフィンとを共重合して製造できる。特にメタロセン触媒を用いて製造された共重合体は通常分子量分布(Mw/Mn)が3以下であり、第一の発明に好ましく利用できる。
【0169】
エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(D1)は、X線回折法により測定される結晶化度が通常40%以下、好ましくは0〜39%、より好ましくは0〜35%である。コモノマーとして使用される炭素数3〜20のα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンが挙げられ、これらを単独で、または2種以上の組み合わせて用いてもよく、中でもプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましい。また、必要に応じて他のコノモマー、例えば、1,6-ヘキサジエン、1,8-オクタジエン等のジエン類、シクロペンテン等の環状オレフィン類などを少量含有してもよく、共重合体中のα-オレフィン含量としては、通常3〜50モル%、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは5〜25モル%であることが望ましい。
【0170】
その分子構造は、直鎖状であってもよく、長鎖または短鎖の側鎖を有する分岐状であってもよい。また、複数の異なるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(D1)を混合して使用することも可能である。
【0171】
エチレン・αオレフィン共重合体(D1)は、バナジウム系触媒、チタン系触媒またはメタロセン系触媒などを用いる従来公知の方法により製造することができ、例えば、特開平10-212382号公報に記載されている方法が挙げられる。
【0172】
〈軟化剤(E1)〉
第一の発明に必要に応じて用いられる軟化剤(E1)としては、パラフィンオイル、シリコンオイル等の種々のオイルが用いられるが、特にパラフィンオイルが好適に用いられる。上記オイルとしては、40℃での動粘度が20〜800cst(センチストークス)、好ましくは40〜600cst、また、流動度が0〜-40℃、好ましくは0〜-30℃、さらに、引火点(COC法)が200〜400℃、好ましくは250〜350℃のものが好適である。
【0173】
第一の発明で好ましく使用されるオイルの1種であるナフテン系プロセスオイルは、一般にゴム加工において、軟化効果、配合剤分散効果および潤滑効果などを得るために混入される石油系軟化剤であって、ナフテン系炭化水素を30〜45重量%含有するものである。このようなプロセスオイルを配合すると、樹脂組成物の成形時の溶融流動性および成形品の柔軟性を一層改善することができ、しかも成形品の表面にブリードによるべたつきが現れにくくなる。第一の発明においては、ナフテン系プロセスオイルの中でも芳香族系炭化水素の含有量が10重量%以下であるものを使用する。これを用いると成形品の表面にブリードを生じにくくなる。
【0174】
〈熱可塑性樹脂組成物(X1)〉
第一の発明の熱可塑性樹脂組成物(X1)は、(A1)、(B1)、(C1)および必要に応じて(D1)を含むことを特徴としている;
(A1)アイソタクティックポリプロピレン1〜90重量%
(B1)プロピレン由来の構成単位を45〜89モル%、エチレン由来の構成単位を10〜25モル%、および必要に応じて炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位(a1)を0〜30モル%の量含むプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体9〜98重量%
(C1)スチレン系エラストマー1〜80重量%
(D1)密度が0.850〜0.910g/cm3の範囲にあるエチレン・α-オレフィン共重合体0〜70重量%
(ここで、(A1)+(B1)+(C1)+(D1)の合計は100重量%である。)。
【0175】
ここで(A1)成分の含有量は、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは10〜75重量%である。(B1)成分の含有量は、好ましくは5〜92重量%、より好ましくは10〜75重量%である。また、(C1)成分の含有量は、好ましくは3〜75重量%、より好ましくは5〜65重量%である。また、(D1)成分の含有量は、好ましくは0〜65重量%、より好ましくは0〜60重量%である。
【0176】
また、(D1)成分が必須成分として含まれる場合には、各成分の量比は以下のようになる。すなわち、(A1)成分の配合量は、好ましくは1〜89重量%、より好ましくは5〜80重量%、さらに好ましくは10〜75重量%である。(B1)成分の配合量は、好ましくは9〜97重量%、より好ましくは5〜90重量%、さらに好ましくは10〜75重量%である。(C1)成分の配合量は、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは3〜75重量%、さらに好ましくは5〜65重量%である。また(D1)成分の配合量は、好ましくは1〜70重量%、より好ましくは2〜65重量%、さらに好ましくは5〜60重量%である。
【0177】
また、熱可塑性樹脂組成物(X1)においては、(A1)、(B1)、(C1)および必要に応じて(D1)成分の合計100重量部に対して、1〜400重量部、好ましくは1〜200重量部、より好ましくは1〜150重量部の軟化剤(E1)を含有することが好ましい。
【0178】
さらに、熱可塑性樹脂組成物(X1)には、第一の発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂、他のゴム、無機充填剤などを配合することができ、また、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤などの添加剤を配合することができる。熱可塑性樹脂組成物(X1)においては、上記他の樹脂、他のゴム、無機充填剤、添加剤等の添加量は、第一の発明の目的を損なわない範囲であれば特に限定されないが、アイソタクティックポリプロピレン(A1)、プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(B1)、スチレン系エラストマー(C1)、必要に応じて用いられるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(D1)、および必要に応じて用いられる軟化剤(E1)の合計が、例えば、組成物全体の60〜100重量%、好ましくは80重量%〜100重量%となるように含まれている態様を例示することができる。残部は、上記したような他の樹脂、ゴム、添加剤、無機充填剤などである。
【0179】
熱可塑性樹脂組成物(X1)は、公知の混練機(一軸ないしは2軸押出機、バンバリー混練機、ロール、カレンダーなど)を用いて得ることができるが、好ましくは一軸ないしは2軸押出機など、連続的に押出し混練が可能な成形機を用いて得られる。
【0180】
第一の発明の目的においては良好なリサイクル性を得るために非架橋であることが望ましいが、必要に応じて架橋することも可能である。この場合、公知の架橋剤ないしは架橋助剤等により動的に架橋する方法、または架橋剤ないしは架橋助剤等を熱可塑性樹脂組成物(X1)とともに混練し、これらを成形後に加熱または電子線等の照射をして、後架橋させる方法も可能である。
【0181】
〈熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有する成形体〉
第一の発明に係る熱可塑性樹脂組成物(X1)は、例えば、シート、未延伸または延伸フィルム、フィラメント、他の種々形状の成形体に成形して利用することができる。また、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有する成形体は、成形体全体が熱可塑性樹脂組成物(X1)のみからなっていてもよく、また他の材料との複合体であって、その一部に熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を有するものであってもよい。例えば、第一の発明に係る上記成形体は多層積層体であってもよい。この場合、少なくともその一層が熱可塑性樹脂組成物(X1)を含有してなる層であって、例えば、多層フィルム、多層シート、多層容器、多層チューブ、水系塗料の一構成成分として含まれる多層塗膜積層体などが挙げられる。
【0182】
上記成形体としては、具体的には、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の熱成形方法により得られる成形体が挙げられる。以下に数例を挙げて成形体を説明する。
【0183】
第一の発明に係る成形体としては、例えば押出成形体である場合、その形状および製品種類は特に限定されないが、例えばシート、フィルム(未延伸)、パイプ、ホース、電線被覆、チューブなどが挙げられ、特にシート(例えば表皮材など)、フィルム、チューブ、カテーテル、モノフィラメント、不織布などが好ましい。
【0184】
熱可塑性樹脂組成物(X1)を押出成形する際には、従来公知の押出装置および成形条件を採用することができ、例えば、単軸スクリュー押出機、混練押出機、ラム押出機、ギヤ押出機などを用いて、溶融した熱可塑性樹脂組成物(X1)を特定のダイスなどから押出すことにより所望の形状に成形することができる。
延伸フィルムは、上記のような押出シートまたは押出フィルム(未延伸)を、例えばテンター法(縦横延伸、横縦延伸)、同時二軸延伸法、一軸延伸法などの公知の延伸方法により延伸して得ることができる。
【0185】
シートまたは未延伸フィルムを延伸する際の延伸倍率は、二軸延伸の場合には通常20〜70倍程度、また、一軸延伸の場合には通常2〜10倍程度である。延伸によって、厚み5〜200μm程度の延伸フィルムを得ることが望ましい。
また、フィルム状成形体として、インフレーションフィルムを製造することもできる。インフレーション成形時にはドローダウンを生じにくい。
【0186】
上記のような熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有するシートおよびフィルム成形体は、帯電しにくく、引張弾性率などの剛性、耐熱性、伸縮性、耐衝撃性、耐老化性、透明性、透視性、光沢、剛性、防湿性およびガスバリヤー性に優れており、包装用フィルムなどとして幅広く用いることができる。この場合、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなるシートおよびフィルム成形体は多層成形体であってもよく、熱可塑性樹脂組成物(X1)を少なくとも一層含有している多層積層体として用いられる。
【0187】
また、フィラメント成形体は、例えば、溶融した熱可塑性樹脂組成物(X1)を、紡糸口金を通して押出すことにより製造することができる。このようにして得られたフィラメントを、さらに延伸してもよい。この延伸は、フィラメントの少なくとも一軸方向が分子配向する程度に行えばよく、通常5〜10倍程度の倍率で行うことが望ましい。熱可塑性樹脂組成物(X1)からなるフィラメントは帯電しにくく、また透明性、剛性、耐熱性、耐衝撃性および伸縮性に優れている。また不織布の製造方法としては具体的にはスパンボンド法、メルトブロン法、が挙げられ、得られた不織布は帯電しにくく剛性、耐熱性、耐衝撃性および伸縮性に優れている。
【0188】
射出成形体は、従来公知の射出成形装置を用いて公知の条件を採用して、熱可塑性樹脂組成物(X1)を種々の形状に射出成形して製造することができる。熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる射出成形体は帯電しにくく、透明性、剛性、耐熱性、耐衝撃性、表面光沢、耐薬品性、耐磨耗性などに優れており、自動車内装用トリム材、自動車用外装材、家電製品のハウジング、容器などに幅広く用いることができる。
【0189】
ブロー成形体は、従来公知のブロー成形装置を用いて公知の条件を採用して熱可塑性樹脂組成物(X1)をブロー成形することにより製造することができる。この場合、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有するブロー成形体は多層成形体であってもよく、熱可塑性樹脂組成物(X1)を少なくとも一層含有している。
【0190】
例えば、押出ブロー成形では、熱可塑性樹脂組成物(X1)を樹脂温度100℃〜300℃の溶融状態でダイより押出してチューブ状パリソンを形成し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、樹脂温度130℃〜300℃で金型に着装することにより中空成形体を製造することができる。延伸(ブロー)倍率は、横方向に1.5〜5倍程度であることが望ましい。
【0191】
また、射出ブロー成形では、熱可塑性樹脂組成物(X1)を樹脂温度100℃〜300℃でパリソン金型に射出してパリソンを成形し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、樹脂温度120℃〜300℃で金型に着装することにより、中空成形体を製造することができる。延伸(ブロー)倍率は、縦方向に1.1〜1.8倍、横方向に1.3〜2.5倍であるであることが望ましい。
【0192】
熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有するブロー成形体は、透明性、柔軟性、耐熱性および耐衝撃性に優れるとともに防湿性にも優れている。
プレス成形体としてはモールドスタンピング成形体が挙げられ、例えば、基材と表皮材とを同時にプレス成形して両者を複合一体化成形(モールドスタンピング成形)する際の基材を、第一の発明に係るプロピレン組成物で形成することができる。
【0193】
このようなモールドスタンピング成形体としては、具体的には、ドアートリム、リアーパッケージトリム、シートバックガーニッシュ、インストルメントパネルなどの自動車用内装材が挙げられる。
【0194】
熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有するプレス成形体は帯電しにくく、柔軟性、耐熱性、透明性、耐衝撃性、耐老化性、表面光沢、耐薬品性、耐磨耗性などに優れている。
【0195】
第一の発明においては、特に熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有する成形体が、フィルムまたはシート;モノフィラメント、繊維または不織布であることが1つの態様である。これらは伸縮材として有用である。
【0196】
熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有する成形体は、硬さなどの機械特性に優れ、また、常温でのゴム弾性・圧縮永久歪に優れるだけでなく、高温でのゴム弾性・圧縮永久歪にも優れ、透明性および耐傷つき性にも優れる。また、軟化剤を含む場合には、特に高温においても、外観保持性とゴム弾性・圧縮永久歪とのバランスに優れる。また、リサイクルが容易で、しかも低コストで得られる。従って、熱可塑性樹脂組成物(X1)は、自動車内装用部品、自動車外装用部品、家電部品、土木または建材部品、包装用シート、キャップライナー、ガスケット、日用雑貨に好適に用いられる。特に高温でもゴム弾性の要求される自動車の内装部品および外装部品に好適に用いられる。
【0197】
熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有する自動車内装部品としては、例えば、ドアトリム・ガスケットなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有する自動車外装部品としてはバンパーなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有する家電部品としては、パッキンなどが挙げられる。
【0198】
熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有する土木または建材部品としては、防水シート、床材などが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有する包装用シートとしては、単層または多層のものが挙げられ、少なくとも一層に第一の発明の樹脂組成物が使用されていればよい。
【0199】
熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有するキャップライナーとしては、飲料水キャップのライナーなどが挙げられる。キャップライナーの製造方法としては、熱可塑性樹脂組成物(X1)から、シート成形機などによりシートを作製し、打ち抜く方法を挙げることができる。
【0200】
また、第一の発明のキャップライナーを有するキャップの作製方法としては、例えば、1)キャップの内側天面にキャップライナーを接着剤で貼り付ける方法、2)キャップライナーを溶融または半溶融させた状態で、キャップ内側天面に接着させるシート打ち抜き法、3)押出機などで第一の発明のキャップライナーを構成する原材料を溶融混練した後、原材料組成物を溶融状態でキャップ内側天面に切り出し、キャップライナー形状に型押するインシェルモールド法などを挙げることができる。第一の発明のキャップライナーは、キャップの素材にはこだわらず、樹脂製キャップ、金属製キャップに装着が可能である。
【0201】
第一の発明のキャップライナーを有するキャップは、ミネラルウォーター、茶系飲料、炭酸飲料、スポーツ飲料、果汁入り飲料、乳飲料のような飲料製品、焼き肉のタレ、醤油、ソース、マヨネーズ、ケチャップのような食料製品などの包装容器に備え付けて使用できる。
熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有する日用雑貨としてはグリップなどが挙げられる。
【0202】
熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有する自動車内装用部品、自動車外装用部品、家電部品、土木または建材部品、包装用シート、キャップライナー、ガスケット、日用雑貨においては、その全体が熱可塑性樹脂組成物(X1)物のみからなっていてもよく、また他の材料との複合体であって、その一部に熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を有するものであってもよい。
【0203】
また、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる部分を少なくとも一部に有する化粧シートは、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる層を少なくとも一層有している。以下化粧シートについて説明する。
第一の発明の化粧シートは、例えば、合板、鋼板、アルミ板、パーティクルボード、MDF(中質繊維板)、無機物ボード(石膏ボード等)、コンクリート壁、樹脂製ボード、発泡体、断熱体などからなる基材の表面に、接着剤またはそのほか方法で貼り合わせて、公知の化粧板に用いられる。第一の発明の化粧シートには、建材保護シート、例えば、床、壁、天井そのほか部分の表層に用いるためのシートも含まれる。化粧シート、建材保護シートともに、絵柄・印刷などの意匠性の付与および表面保護を目的とするものである。
【0204】
第一の発明の化粧シートの代表的な例として、例えば、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる層を、化粧シートの構成層の少なくとも一層に用いたものを挙げることができる。熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる層が二層以上用いられていてもよく、その場合には二層以上の層が全く同じ成分を含んでいてもよく、それぞれの層が互いに異なった成分を含んでいてもよい。
【0205】
第一の発明の化粧シートとしては、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる層以外に、意匠性を出すための印刷層および絵柄層、表面コート層、艶調整層、隠蔽層(被着体表面が透けて見えることを防止する層であって、基材としての役割を果たすこともある)、さらにはこれらの層を接着させるための接着層など、公知の化粧シートの構成層を含んでいてもよい。
【0206】
第一の発明に係る化粧シートの構成の態様は特に限定されないが、例えば、[a]熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる層と、[b]印刷層、絵柄層および隠蔽層から選ばれる少なくとも1種の層と、必要に応じて[c]表面コート層および艶調製層から選ばれる少なくとも1種の層とが含まれている構成が挙げられる。
【0207】
また、別の態様としては、[d]隠蔽層と、[a]熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる層と、[b]印刷層および絵柄層から選ばれる少なくとも一層の層と、必要に応じて[c]表面コート層および艶調製層から選ばれる少なくとも一層とが含まれている構成が挙げられる。
【0208】
熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる層は、耐傷つき性、耐磨耗性、折り曲げ時の耐白化性、耐折れしわ性、耐熱性および透明性に優れるため、これを印刷層または絵柄層を保護するための保護層(印刷層または絵柄層を保護するための表層として用いることを意味し、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる層の上に、第一の発明の目的を損なわない範囲で、表面コート層および艶調整層など公知の処理を行うことが可能である。)として好適に用いることができる。このような構成を有する化粧シートは特に好適である。
【0209】
また、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる層は柔軟性および耐水性にも優れるため、他の成分からなる層と組み合せたときの一層として好適に用いることも可能である。このとき、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる層は、公知の接着剤または公知の接着剤と同じ効果を果たす接着剤を用いずに接着させることが可能である。具体的には、公知の熱ラミ法、押出ラミネーション・サンドイッチラミネーション法、共押出法など、熱融着により充分な接着強度を発現することが可能である。
【0210】
従って、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる層は、熱可塑性樹脂組成物(X1)以外のポリオレフィン系樹脂、すなわち熱可塑性樹脂組成物(X1)の範囲に含まれないポリオレフィン系樹脂からなる層(公知の接着性ポリオレフィン樹脂層も含む。)と組み合わせた化粧シートとして好適に利用できる。
熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる層の厚みとしては特に制限はないが、通常5〜2000μmである。
【0211】
また、第一の発明の化粧シートまたは建材保護シートには、公知のエンボス加工、シボ加工、ワイピング処理等が行われていてもよい。
第一の発明の化粧シートまたは建材保護シートは、熱可塑性樹脂組成物(X1)からなる層の裏面が、熱可塑性樹脂組成物(X1)以外のポリオレフィン系樹脂からなる層と接着剤を介さずに積層された状態でも好適に用いられる。この時、熱可塑性樹脂組成物(X1)以外のポリオレフィン系樹脂とは、熱可塑性樹脂組成物(X1)以外のもの、すなわち熱可塑性樹脂組成物(X1)の範囲に含まれないものであれば特に制限なく用いられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリα-オレフィン、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・極性ビニルモノマー共重合体、これらの混合樹脂組成物などである。
【0212】
さらに、上記オレフィン系樹脂には、これらに加えて、無機充填材、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤などの添加剤が、第一の発明の目的を損なわない範囲で含まれていてもよい。なお、接着剤を介さず積層された状態とは直接熱融着され積層された状態をいう。
【0213】
第一の発明の化粧シートまたは建材保護シートの製造法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
第一の発明の化粧シートまたは建材保護シートの用途としては特に限定されず、テレビキャビネット、ステレオスピーカーボックス、ビデオキャビネット、各種収納家具、ユニット家具等の家電製品および家具製品;ドア、ドア枠、窓枠、廻縁、巾木、開口枠等の住宅部材;厨房、収納家具扉等の家具部材;床材、天井材、壁紙等の建材商品;自動車内装材;文具;オフィス用品などに好適に使用できる。
【0214】
2.第二の発明
以下、第二の発明について詳細に説明する。
〈アイソタクティックポリプロピレン(A2)〉
第二の発明に必要に応じて用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A2)としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと、少なくとも1種のプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンの具体例としては、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
【0215】
これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
これらのα-オレフィンから導かれる構成単位は、ポリプロピレン中に20モル%以下、好ましくは15モル%以下の割合で含まれていてもよい。
また、アイソタクティックポリプロピレン(A2)は、示差走査熱量計(DSC)で観測される融点が通常100〜170℃(100℃を除く。)、好ましくは105〜170℃、より好ましくは110〜165℃の範囲にあることが望ましい。
【0216】
また、必要に応じて複数のアイソタクティックポリプロピレン(A2)を併用することができ、例えば、融点や剛性の異なる2種類以上の成分を用いることもできる。
アイソタクティックポリプロピレン(A2)は、アイソタクティックペンタッド分率(mmmm)およびMFRについては、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様の特性を有することが好ましい。
【0217】
また、アイソタクティックポリプロピレン(A2)としては、第一の発明に用いられるポリプロピレンと同様の、耐熱性に優れるホモポリプロピレン、耐熱性および柔軟性のバランスに優れるブロックポリプロピレン、柔軟性および透明性のバランスに優れるランダムポリプロピレンが、目的の物性を得るために選択してまたは併用して用いることが可能である。
【0218】
このようなアイソタクティックポリプロピレン(A2)は、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様の方法で製造することができる。
【0219】
〈プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)〉
第二の発明に用いられるプロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)としては、プロピレンとエチレンとの共重合体、またはプロピレンと少なくとも一種の炭素数4〜20のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。炭素数4〜20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。好ましくは、プロピレンと少なくとも1種の炭素数4〜20のα-オレフィンとの共重合体であり、より好ましくは、プロピレンと1-ブテンとの共重合体である。
【0220】
プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)は、示差走査熱量計(DSC)で観測される融点が100℃以下であるか、または融点が観測されず、好ましくは融点が30〜90℃の範囲にあり、より好ましくは40〜85℃の範囲にある。ここで、融点が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。測定条件は、第2の発明の実施例記載のとおりである。
【0221】
また、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)の値は1〜3であることが好ましく、より好ましくは1.5〜2.5である。
プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)は、融点Tm(℃)と13C-NMRスペクトル測定にて求められるコモノマー構成単位含量M(モル%)とが下記の関係式を満たすことが好ましい。
【0222】
146exp(-0.022M)≧Tm≧125exp(-0.032M)
Mには特に制限はなく、上記式を満たすものであれば第二の発明に使用することができるが、Mは通常5〜45の範囲にある。
【0223】
プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)は、ASTM D 1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(本明細書において、MFR(230℃)ともいう。)が通常0.1〜40(g/10分)、好ましくは0.5〜20(g/10分)の範囲にある。
【0224】
プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)のトリアドタクティシティ(mm分率)については、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)と同様の特性を有することが好ましく、これにより得られる効果も同じである。
【0225】
すなわち、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)は、13C−NMRで測定されるトリアドタクティシティ(mm分率)が好ましくは85%以上、より好ましくは85〜97.5%以下、さらに好ましくは87〜97%、特に好ましくは90〜97%の範囲にある。トリアドタクティシティ(mm分率)がこの範囲にあると、特に柔軟性と機械強度のバランスに優れるため、本発明に好適である。mm分率は、国際公開2004−087775号パンフレットの21頁7行目〜26頁6行目までに記載された方法を用いて測定できる。
【0226】
プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)は、公知のものであり、例えば国際公開第2004/087775号パンフレットに記載の方法で製造することができる。プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)は、は、メタロセン触媒により製造されたものであることが好ましい。
【0227】
また、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)は、プロピレン由来の構成単位を45〜89モル%、エチレン由来の構成単位を10〜25モル%、および炭素数4から20のα-オレフィン由来の構成単位を0〜30モル%の量含むプロピレン・エチレン・炭素数4-20のα-オレフィン共重合体ではないことが好ましい。
【0228】
〈スチレン系エラストマー(C2)〉
スチレン系エラストマー(C2)については、第一の発明に用いられるスチレン系エラストマー(C1)と同様である。その種類、スチレン含有量も(C1)と同様である。
【0229】
〈エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(D2)〉
エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(D2)の製造方法は特に制限されないが、バナジウム系触媒、チタン系触媒またはメタロセン系触媒などを用いる従来公知の方法が用いられる。特にメタロセン触媒を用いて製造された共重合体は通常分子量分布(Mw/Mn)の値が3以下であり、第二の発明に好ましく利用できる。
【0230】
エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(D2)は、上記製造方法以外については、第一の発明に用いられるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(D1)と同様である。
【0231】
〈軟化剤(E2)〉
軟化剤(E2)については、第一の発明に用いられる軟化剤(E1)と同様である。
〈熱可塑性樹脂組成物(X2)〉
第二の発明の熱可塑性樹脂組成物(X2)は、(A2)、(B2)、(C2)、(D2)および(E2)を含んでなる;
(B2)示差走査熱量計(DSC)で観測される融点が100℃以下であるか、または融点が観測されないプロピレン・α-オレフィン共重合体5〜95重量%
(C2)スチレン系エラストマー5〜95重量%
(A2)アイソタクティックポリプロピレン0〜90重量%
(D2)密度が0.850〜0.910g/cm3の範囲にあるエチレン・α-オレフィン共重合体0〜70重量%
(ここで、(A2)+(B2)+(C2)+(D2)=100重量%である。)
(E2)軟化剤を(A2)+(B2)+(C2)+(D2)の合計100重量部に対し0〜400重量部。
【0232】
ここで、(B2)成分の含有量は、好ましくは5〜85重量%、より好ましくは10〜75重量%である。また、(C2)成分の含有量は、好ましくは15〜95重量%、より好ましくは25〜90重量%である。また、(A2)成分の含有量は、好ましくは0〜80重量%、より好ましくは0〜65重量%である。また(D2)成分の含有量は、好ましくは0〜65重量%、より好ましくは0〜60重量%である。
【0233】
また、(A2)成分を必須成分として有する場合は、(B2)成分の含有量は、5〜94重量%、好ましくは5〜83重量%、より好ましくは10〜72重量%である。また(C2)成分の含有量は、5〜95重量%、好ましくは15〜95重量%、より好ましくは25〜90重量%である。また(A2)成分の含有量は、1〜90重量%、好ましくは2〜80重量%、より好ましくは3〜65重量%である。また(D2)成分の含有量は、0〜70重量%、好ましくは0〜65重量%、より好ましくは0〜60重量%である。
【0234】
また、熱可塑性樹脂組成物(X2)においては、(A2)、(B2)、(C2)および(D2)の合計100重量部に対して、0〜400重量部、好ましくは0〜200重量部、より好ましくは0〜150重量部の軟化剤(E2)を含有することが可能である。(E2)成分を含有する場合には、含有量の下限に制限はないが、例えば、(A2)、(B2)、(C2)および(D2)の合計100重量部に対して、1重量部以上である。
【0235】
例えば、アイソタクティックポリプロピレン(A2)を必須成分として有する場合であって、後述するような日用雑貨、表皮材(合成皮革)、キャップライナー、自動車内装材、パッキン、ガスケット、防水シートなどの用途に用いる場合には、(B2)成分を5〜50重量%、好ましくは15〜50重量%、より好ましくは20〜45重量%、(C2)成分を5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜75重量%、(A2)成分を5〜45重量%、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは5〜35重量%、(D2)成分を0〜50重量%、好ましくは0〜40重量%、より好ましくは0〜30重量%の量で含んでいてもよい。また、この場合、任意成分として軟化剤(E2)を含んでいてもよく、(E2)成分を含む場合には、(A2)、(B2)、(C2)および(D2)の合計100重量部に対して1〜400重量部、好ましくは1〜350重量部、より好ましくは1〜300重量部である。この場合、特に柔軟性と耐傷付き性・耐白化性とのバランスのバランスに優れる。さらに、低温混練性にも優れる。
【0236】
また、例えば、アイソタクティックポリプロピレン(A2)を必須成分として有する場合であって、後述するような家電部品、自動車外装材、包装用シート、モノフィラメントなどの用途に用いる場合には、(B2)成分を5〜45重量%、好ましくは5〜35重量%、より好ましくは5〜30重量%、(C2)成分を5〜45重量%、好ましくは5〜35重量%、より好ましくは5〜30重量%、(A2)成分を50〜90重量%、好ましくは60〜90重量%、より好ましくは65〜90重量%、(D2)成分を0〜30重量%、好ましくは0〜25重量%、より好ましくは0〜20重量%の量で含んでいてもよい。また、この場合、任意成分として軟化剤(E2)を含んでいてもよく、(E2)成分を含む場合には(A2)、(B2)、(C2)および(D2)の合計100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは1〜70重量部、より好ましくは1〜50重量部である。この場合、特に引っ張り弾性率などの機械特性、透明性、耐衝撃性および耐白化性のバランスに優れる。
【0237】
さらに、熱可塑性樹脂組成物(X2)には、第二の発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂、他のゴム、無機充填剤などを配合することができ、また、第一の発明の場合と同様な添加剤を配合することができる。上記他の樹脂、他のゴム、無機充填剤、添加剤等の添加量は、第二の発明の目的を損なわない範囲であれば特に限定されないが、第一の発明の場合と同様な態様を例示することができる。
【0238】
すなわち、さらに、熱可塑性樹脂組成物(X2)には、第二の発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂、他のゴム、無機充填剤などを配合することができ、また、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等、結晶核剤などの添加剤を配合することができる。熱可塑性樹脂組成物(X2)においては、上記他の樹脂、他のゴム、無機充填剤、添加剤等の添加量は第二の発明の目的を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではないされるものではないが、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)とスチレン系(C2)と、必要に応じて用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A2)と、必要に応じて用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(D2)と、必要に応じて用いられる軟化剤(E2)との合計が、例えば、組成物全体の60〜100重量%、好ましくは80重量%〜100重量%となるように含まれている態様を例示することができる。残部は上記したような他の樹脂、ゴム、添加剤、無機充填剤などである。
【0239】
熱可塑性樹脂組成物(X2)は、第一の発明の場合と同様に、公知の混練機を用いて得られ、好ましい方法も同じである。
また、熱可塑性樹脂組成物(X2)は、必要に応じて架橋することも可能である。本発明の架橋物は、公知の架橋剤ないしは架橋助剤等により動的に架橋する方法、あるいは、熱可塑性樹脂組成物(X2)を単味で成形後、または熱可塑性樹脂組成物(X2)と架橋剤、架橋助剤等とを混練したものを成形後、加熱または電子線等を照射させて後架橋させることによっても製造することができる。
【0240】
特に動的架橋において、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B2)は低融点材料であることから低温での成形が可能であり、熱可塑性樹脂組成物(X2)を動的架橋させる際の架橋条件の幅が広いため好ましい。
【0241】
〈熱可塑性樹脂組成物(X2)およびその架橋物からなる成形体〉
熱可塑性樹脂組成物(X2)およびその架橋物は、例えば、シート、未延伸または延伸フィルム、フィラメント、他の種々形状の成形体に成形して利用することができる。また熱可塑性樹脂組成物(X2)またはその架橋物からなる成形体は、全体が本発明の熱可塑性樹脂組成物(X2)またはその架橋物から構成されていてもよく、熱可塑性樹脂組成物(X2)またはその架橋物で構成される部分を少なくとも一部に有していてもよい。例えば、積層フィルムの様に、樹脂組成の異なる他の熱可塑性樹脂組成物との複合体、また、他の材料との複合体であって、その一部に本発明の熱可塑性樹脂組成物(X2)またはその架橋物からなる部分を有するものであってもよい。
【0242】
上記成形体としては、具体的には、第一の発明の場合と同様の公知の熱成形方法により得られる成形体が挙げられる。以下に数例挙げて成形体を説明する。
上記成形体が例えば押出成形体である場合、その形状および製品種類は特に限定されないが、例えば、第一の発明の場合と同様のものが挙げられ、好ましいものも同じである。例えば、シート、フィルム(未延伸)、パイプ、ホース、電線被覆、チューブなどが挙げられ、特にシート(例えば表皮材など)、フィルム、チューブ、カテーテル、モノフィラメント、不織布などが好ましい。
【0243】
熱可塑性樹脂組成物(X2)またはその架橋物を押出成形する方法は、第一の発明の場合と同様である。
延伸フィルムは、第一の発明の場合と同様にして得ることができる。
シートまたは未延伸フィルムを延伸する際の延伸倍率および得られる延伸フィルムの厚みは、第一の発明の場合と同様である。
【0244】
また、フィルム状成形体として、インフレーションフィルムを製造することもできる。インフレーション成形時にはドローダウンを生じにくい。
上記のよう熱可塑性樹脂組成物(X2)またはその架橋物からなるシートおよびフィルム成形体は、柔軟性、強度、耐熱性、伸縮性、耐衝撃性、耐老化性、透明性、透視性、光沢、剛性、防湿性およびガスバリヤー性に優れており、包装用フィルムなどとして幅広く用いることができる。
【0245】
また、フィラメント成形体は、第一の発明の場合と同様して得られ、延伸についても第一の発明の場合と同様である。熱可塑性樹脂組成物(X2)またはその架橋物からなるフィラメントは、透明性、柔軟性、強度、耐熱性、耐衝撃性、および伸縮性に優れている。
また不織布は具体的にはスパンボンド法、メルトブロン法が挙げられ、得られた不織布は、柔軟性、強度、耐熱性および耐衝撃性、伸縮性に優れている。
【0246】
射出成形体は、第一の発明の場合と同様して製造することができる。熱可塑性樹脂組成物(X2)またはその架橋物からなる射出成形体は、柔軟性、透明性、強度、耐熱性、耐衝撃性、表面光沢、耐薬品性、耐磨耗性などに優れており、自動車内装用トリム材、自動車用外装材、家電製品のハウジング、容器などに幅広く用いることができる。
ブロー成形体は、第一の発明の場合と同様して製造することができる。この場合、熱可塑性樹脂組成物(X2)またはその架橋物からなるブロー成形体は多層成形体であってもよく、熱可塑性樹脂組成物(X2)を少なくとも一層含有している。
【0247】
押出ブロー成形および射出ブロー成形については、第一の発明の場合と同様である。
熱可塑性樹脂組成物(X2)またはその架橋物からなるブロー成形体は、透明性、柔軟性、耐熱性および耐衝撃性に優れるとともに防湿性にも優れている。
プレス成形体についても、第一の発明の場合と同様であり、モールドスタンピング成形体の具体例としても、第一の発明の場合と同様のものが挙げられる。
【0248】
熱可塑性樹脂組成物(X2)またはその架橋物からなるプレス成形体は、柔軟性、耐熱性、透明性、耐衝撃性、耐老化性、表面光沢、耐薬品性、耐磨耗性などに優れている。
熱可塑性樹脂組成物(X2)またはその架橋物からなる成形体は、硬さなどの機械特性に優れ、常温でのゴム弾性・圧縮永久歪に優れるだけでなく、高温でのゴム弾性・圧縮永久歪にも優れる。また、透明性、耐傷つき性にも優れる。また、軟化剤(E2)を含む場合には、特に高温においても、外観保持性と、ゴム弾性・圧縮永久歪とのバランスに優れる。また、リサイクルが容易で、しかも低コストで得られる。従って、熱可塑性樹脂組成物(X2)またはその架橋物は、自動車内装用部品、自動車外装用部品、家電部品、土木または建材部品、包装用シート、キャップライナー、ガスケット、日用雑貨に好適に用いられる。特に高温でもゴム弾性の要求される自動車の内装部品または外装部品で好適に用いられる。
【0249】
熱可塑性樹脂組成物(X2)またはその架橋物からなる自動車内装部品、自動車外装部品、家電部品、土木または建材部品、包装用シート、キャップライナーおよび日用雑貨の具体例としては、第一の発明の場合と同様のものが挙げられる。
上記キャップライナーの製造方法としては、第二の発明の熱可塑性樹脂組成物から、シート成形機等によりシートを作製し、打ち抜く方法を挙げることができる。
【0250】
また、上記キャップライナーを有するキャップの作製方法、ならびに、該キャップライナーおよび該キャップライナーを有するキャップの用途については、第一の発明の場合と同様である。
【0251】
なお、熱可塑性樹脂組成物(X2)の架橋物からなる成形体は、熱可塑性樹脂組成物(X2)の架橋物を成形して製造してもよく、熱可塑性樹脂組成物(X2)を単味で成形後、または熱可塑性樹脂組成物(X2)と架橋剤ないしは架橋助剤等とを混練したものを成形後、加熱または電子線等を照射させて後架橋させることによっても製造することができる。
【0252】
3.第三の発明
以下、第三の発明について詳細に説明する。
〈プロピレン系重合体(A3)〉
第三の発明に用いられるプロピレン系重合体(A3)は、プロピレン単位を90モル%以上含み、23℃のノルマルデカンに不溶であり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜10dl/gの範囲にあるか、またはASTM D 1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜50g/10分の範囲にある。
【0253】
プロピレン系重合体(A3)としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと、少なくとも1種のプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンの具体例としては、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
【0254】
これらのα−オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよい。
これらのα−オレフィンから導かれる構成単位は、プロピレン系重合体(A3)中に10モル%以下、好ましくは7モル%以下の割合で含まれていてもよい。
また、必要に応じて複数のプロピレン系重合体(A3)を併用することができ、例えば融点や剛性の異なる2種類以上の成分を用いることもできる。
【0255】
プロピレン系重合体(A3)は、23℃のノルマルデカンに不溶である。ノルマルデカンに不溶であるとは以下のようにして確認できる。
試料5gをノルマルデカン300mLに完全に145℃で溶解させて1時間保持する。得られた溶液を室温(23℃)で1時間放置し、これをさらに回転子で1時間撹拌する。その後、325メッシュのスクリーンで濾過した後のろ液に、ろ液の約3倍の容積のアセトンを加えて、溶解しているポリマー成分を析出させる。再度325メッシュのスクリーンでろ過して得られるポリマー成分をノルマルデカン可溶成分とする。
【0256】
第三の発明では、ノルマルデカンに可溶でない成分をノルマルデカン不溶成分とする。このノルマルデカン不溶成分をプロピレン系重合体(A3)とし、ノルマルデカン可溶成分は、例えば、後述するそのほか添加してもよい成分の一部または全部、または軟質成分(C3)に該当する。
第三の発明の組成物(X3)を調製する際には、ノルマルデカンに不溶なプロピレン系重合体(A3)と、ノルマルデカンに可溶な成分とを共に含む、ランダムPP、ブロックPPのようなポリプロピレンを用いてもよい。上記ランダムPPおよびブロックPPにおいては、ノルマルデカン可溶成分は、通常30wt%以下の量で含まれていてもよい。この場合には、磁化強度の測定時には、PPの磁化強度の減衰強度に、PP中のノルマルデカン不溶成分量を乗じたものを、(A3)成分の磁化強度の減衰強度として取り扱うことができる。この際fBは、(B3)成分の量と、PP中の(A3)成分の量、すなわちPP中のノルマルデカン不溶成分の量とから計算するものとする。
【0257】
プロピレン系共重合体(A3)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜10dl/g、好ましくは1.2〜5.0dl/gの範囲にあるか、またはASTM D 1238 に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜50g/10分、好ましくは0.3〜30g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0258】
プロピレン系重合体(A3)の示差走査熱量計で観測される融点は通常100℃以上、好ましくは110〜170℃、より好ましくは110〜150℃である。
プロピレン系重合体(A3)はアイソタクチック構造、シンジオタクチック構造のどちらも用いることができるがアイソタクチック構造の方が耐熱性などの点で好ましい。
【0259】
また、プロピレン系重合体組成物(X3)に、23℃のデカンに不溶であるプロピレン系重合体(A3)を含有させるにあたっては、耐熱性に優れるホモポリプロピレンそれ自体を使用してもよく、23℃のデカンに不溶であるプロピレン系重合体(A3)を含むホモポリプロピレンを用いてもよい。また、耐熱性および柔軟性のバランスに優れるブロックポリプロピレン(通常3〜30wt%のノルマルデカン溶出ゴム成分を有する公知のもの)も、23℃のデカンに不溶であるプロピレン系重合体(A3)を含んでいれば用いることができる。さらに、柔軟性および透明性のバランスに優れるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)を除く。)も、23℃のデカンに不溶であるプロピレン系重合体(A3)を含んでいれば用いることができる。
【0260】
このようなプロピレン系重合体(A3)を含むポリプロピレンとしては特に制限はないが、23℃のデカンに不溶な成分を通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは87重量%以上含んでいる。
このようなプロピレン系重合体(A3)を含むポリプロピレンとしては特に制限はないが、示差走査熱量計(DSC)により測定される融解ピークが通常100℃以上、好ましくは110℃〜150℃の範囲であることが望ましい。
このようなプロピレン系重合体(A3)を含むポリプロピレンは、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様の方法で製造することができる。
【0261】
〈軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)〉
第三の発明に用いられる軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)は、以下の要件(b3−1)〜(b3−5)をすべて満たす。
【0262】
(b3−1)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にある。
(b3−2)示差走査熱量計(DSC)で観測される融点が100℃未満、好ましくは60℃以下であるかまたは融点が観測されない。ここで、融点が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。測定条件は、第3の発明の実施例記載のとおりである。
【0263】
(b3−3)プロピレン由来の構成単位を60〜75モル%、好ましくは56〜73モル%、エチレン由来の構成単位を10〜14.5モル%、好ましくは12〜14モル%、および炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10.5〜30モル%、好ましくは15〜25有する。α−オレフィンとしては、1−ブテンが特に好ましい。
【0264】
(b3−4)13C−NMRで測定されるトリアドタクティシティ(mm分率)が85〜97.5%以下、好ましくは87〜97%、さらに好ましくは90〜97%の範囲にある。mm分率がこの範囲にあると、特に柔軟性および機械強度のバランスに優れるため、第三の発明に好適である。mm分率は、国際公開第2004−087775号パンフレットの21頁7行目〜26頁6行目に記載された方法を用いて測定できる。
【0265】
(b3−5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)の値は1.0〜3.0の範囲であり、好ましくは2.5以下である。分子量分布が上記範囲にある場合は、軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)が均一な構造を有するポリマー鎖によって構成されていることを意味する。このように均一なポリマー鎖から構成される軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)を使用することで、分子量分布が広い軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と比較して、高温(100℃〜)で熱処理した際の成形体の白化がより抑えられる。
【0266】
軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)は、付加的に独立して以下の特性を有するものが好ましい。
軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)は、100%歪での応力(M100)、結晶化度、ガラス転移温度Tgについては、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)と同様の特性を有することが好ましく、これらの特性によって得られる効果も同様である。
【0267】
また、軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において融点(Tm、℃)が存在する場合には、通常、融解熱量ΔHが30J/g以下であり、かつC3含量(mol%)と融解熱量ΔH(J/g)との関係においても、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)の場合と同様の関係式が成り立つ。
【0268】
また、軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)は、ショアーA硬度が通常30〜80、好ましくは35〜70である。
また、軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)は、ASTM D 1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜50g/10分、好ましくは0.05〜40g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0269】
このような軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)を用いることで、プロピレン系重合体(A3)の種類によらず、優れた耐白化性、耐傷付き性、透明性、柔軟性、耐熱性および伸縮性を発現するプロピレン系重合体組成物(X3)が得られ、第三の発明に好適である。
軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)は、例えば、国際公開第2004/87775号パンフレットに記載の方法で得ることができる。
【0270】
〈プロピレン系重合体組成物(X3)〉
第三の発明のプロピレン系重合体組成物(X3)は、プロピレン系重合体(A3)を10〜98重量%、好ましくは20〜95重量%、より好ましくは50〜93重量%、軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)を2〜90重量%、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは7〜50重量%含んでなることを特徴としている(ここで、(A3)および(B3)の合計を100重量%とする)。
【0271】
プロピレン系重合体組成物(X3)は、プロピレン系重合体(A3)、軟質プロピレン・α−オレフィン共重合体(B3)、および下記プロピレン系重合体組成物(X3−1)についてそれぞれ測定した、パルスNMR(ソリッドエコー法、プロトン観測)による磁化強度の1000μsまでの横緩和による減衰強度が、t(観測時間)500〜1000(μs)のすべての範囲において、以下の関係式(3−1)を満たすことが好ましい態様である;
M(t)A×(1−fB)+M(t)B×fB−M(t)X-1≧0.02 …3−1
M(t)A:プロピレン系重合体組成物(X3)に用いたプロピレン系重合体(A3)を測定したときの時刻tにおける減衰強度
M(t)B:プロピレン系重合体組成物(X3)に用いた軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)を測定したときの時刻tにおける減衰強度
M(t)X-1:プロピレン系重合体組成物(X3)中に存在する重合体(A3)および共重合体(B3)の割合と同じ重量比となるように、プロピレン系重合体(X3)に用いたプロピレン系重合体(A3)を含むポリプロピレンと、プロピレン系重合体組成物(X3)に用いた軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)とを溶融混練して得られるプロピレン系重合体組成物(X3−1)を測定したときの時刻tにおける減衰強度
B:プロピレン系重合体組成物(X3)中に存在する軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)の、プロピレン系重合体(A3)および軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)の合計に対する重量比(0.02≦fB≦0.90)
ここで、t(観測時間)は500〜1000(μs)であり、M(t)A、M(t)BおよびM(t)X-1はそれぞれ0〜1に規格化(減衰強度の最大値を1とする。)されている。
【0272】
なお、組成物(X3−1)は以下のようにして調製する。プロピレン系重合体組成物(X3)中に存在する重合体(A3)および共重合体(B3)の割合と同じ重量比となるように、プロピレン系重合体(X3)に用いたプロピレン系重合体(A3)を含むポリプロピレンと、プロピレン系重合体組成物(X3)に用いた軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)とを溶融混練して得られる。ここで、プロピレン系重合体(A3)を含むポリプロピレンとは、プロピレン系重合体(A3)のみからなっていてもよく、上記のように、プロピレン系重合体(A3)以外であって、例えば、23℃のデカンに可溶な成分を、ポリプロピレンの30重量%以上の量で含んでいてもよい。
【0273】
上記組成物は、160℃〜300℃の範囲で公知の溶融混練機を用いれば得られるが、具体的には、ラボプラストミル(例えば(株)東洋精機製作所)を用い、原料を容積の70%以上投入し、160℃〜250℃、30rpm〜100rpmで3min以上混練した後、空冷にて冷却して得る方法が挙げられる。
以下、パルスNMR測定法および減衰曲線の定義について説明する。
【0274】
第三の発明における減衰曲線M(t)は、一般にスピン−スピン緩和とよばれるものであり、観測時間t(0〜1000μs)に対する磁化強度Mの関係であり、以下のパルスNMR測定条件で得られる。
試料準備条件: 約0.5gのサンプルを10φのガラス管に入れて測定する。
測定周波数: プロトン共鳴周波数 25MHz
測定手法: ソリッドエコー(solid echo)法
90°パルス 2.0μs、 待ち時間 4s、 積算回数 8回
観測温度: 100℃
減衰曲線M(t)に関しては、核磁気共鳴の基礎と原理, (1987), 258p, 共立出版, 北丸竜三;Kubo, R. and Tomita, K. :J. Phys. Soc. Jpn., 9(1954), 888に詳細な記述がある。
【0275】
減衰曲線M(t)は、その最高強度をもとに規格化するため、0〜1の範囲の値をとる。
上記式の範囲を満たすと好ましい組成物(X3)が得られる理由は定かではないが、本発明者らは以下のように考えている。M(t)は、ポリマー分子鎖の運動性を表す指標であり、プロピレン系重合体(A3)と軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)とが分子レベルで相互作用していないプロピレン系重合体組成物においては、式3−1は、ほぼ以下の関係となる。
M(t)A×(1−fB)+M(t)B×fB=M(t)X-1…3−1−2
【0276】
プロピレン系重合体(A3)と軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)とが分子レベルで相互作用する場合には、プロピレン系重合体組成物中の成分(A3)および(B3)の分子運動性が変化する。特に、非晶性の高い軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)の分子運動が束縛を受ける場合には、プロピレン系重合体組成物の減衰は早くなるために、式3−1のような関係が見られる。
【0277】
このようなプロピレン系重合体組成物の場合は、該組成物からなる成形体に変形や衝撃を加えても、プロピレン系重合体(A3)と軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)との間での剥離・破壊が起こらないため、柔軟でありながら、良好な耐白化性、耐傷付き性、耐熱性および伸縮性が発現すると考えられる。また、結晶性を示すプロピレン系重合体(A3)と非晶性の軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)とが良好に相溶しているため、該組成物からなる成形体を高温で保持(アニーリング)した際に、結晶成分がアニーリングにより成長して成形体が白化することを防止できると考えられる。
【0278】
第三の発明においては、組成物(X3−1)は、以下の式3−1−3を満たすことがより好ましく、式3−1−4を満たすことがさらに好ましい。
{M(t)A×(1−fB)+M(t)B×fB}−M(t)X-1>0.04 …3−1−3
{M(t)A×(1−fB)+M(t)B×fB}−M(t)X-1>0.05 …3−1−4
ここで、t=500〜1000(μs)である。
【0279】
プロピレン系重合体組成物(X3)が、上記条件に加えて、さらに以下の式3−2の特性を有する場合は、成形品の柔軟性および強度のバランスに優れるため第三の発明に好適である。また、以下の式3−2−2を満たすことがより好ましく、式3−2−3を満たすことがさらに好ましい。
TSX-1≧−35fB+TS0…3−2
TSX-1≧−30fB+TS0…3−2−2
TSX-1≧−25fB+TS0…3−2−3
TSX-1:プロピレン系重合体(A3)と上記軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)とを、プロピレン系重合体組成物(X3)中に存在する割合と同じ重量比で溶融混練して得られるプロピレン系重合体組成物(X3−1)の破断点強度
TS0:プロピレン系重合体組成物(X3)に用いたプロピレン系重合体(A3)の破断点強度
B:軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)の組成比(0.02≦fB≦0.90)
【0280】
これらの関係は、例えば、下記条件で得られた2mmtプレスシートサンプルを用いて、JIS K 7113−2に準拠して、得られた試験片を200mm/minの引張速度で試験して求められる。
プレス成形条件:
加熱時間: 5〜7min
加熱温度: 190〜250℃
加熱時圧力: 0.1MPa以上
冷却速度: 200℃/5min以上(5分間で室温まで冷却)
【0281】
第三の発明のプロピレン系重合体組成物(X3)が、上記条件に加えて、さらに以下の式3−3の特性を有する場合は、成形体の耐白化性および復元性に優れるため好ましい。また、以下の式3−3−2を満たすことがより好ましく、式3−3−3を満たすことがさらに好ましい。
EL(YS)≧EL(YS)0+fB×15 …式3−3
EL(YS)≧EL(YS)0+fB×17 …式3−3−2
EL(YS)≧EL(YS)0+fB×20 …式3−3−3
EL(YS):引張試験において、プロピレン系重合体(A3)と軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)とを、プロピレン系重合体組成物(X3)中に存在する割合と同じ重量比で溶融混練して得られるプロピレン系重合体組成物(X3−1)が降伏点応力を示すときの伸び(降伏点伸び)
EL(YS)0:引張試験において、プロピレン系重合体組成物(X3)に用いたプロピレン系重合体(A3)が降伏点応力を示すときの伸び(降伏点伸び)
B:軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)の組成比(0.02≦fB≦0.90)
【0282】
これらの関係は、例えば、下記条件で得られた2mmtプレスシートサンプルを用いて、JIS K 7113−2に準拠して、得られた試験片を200mm/minの引張速度で試験して求められる。
プレス成形条件:
加熱時間: 5〜7min
加熱温度: 190〜250℃
加熱時圧力: 0.1MPa以上
冷却速度: 200℃/5min以上(5分間で室温まで冷却)
【0283】
なお、プロピレン系重合体組成物が降伏点を示さない際にも上記式3−3を示すと考える。
プロピレン系重合体組成物(X3)は、第一の発明の場合と同様に、公知の混練機を用いて得られ、好ましい方法も同じである。
【0284】
〈エチレン系重合体およびスチレン系重合体(C3)〉
第三の発明のプロピレン系重合体組成物(X3)には、エチレン系重合体およびスチレン系重合体から選ばれ、ショアーA硬度が95以下および/またはショアーD硬度が60以下の範囲にある少なくとも1種以上の重合体(軟質成分)をさらに添加してもよい。ここで、ショアーA硬度およびショアーD硬度は、2mmtのプレスシートを、プレス加工温度190℃で作製して、常温まで冷却し、次いで23℃で3日間保持した後に測定する。なお、ショアーA硬度が20以上のものであることがより好ましい。
【0285】
エチレン系重合体またはスチレン系重合体の具体例としては、スチレン系エラストマー、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられるが、以下で説明するスチレン系エラストマー(C3−1)、エチレン・α−オレフィン共重合体(C3−2)が好ましく用いられる。
【0286】
スチレン系エラストマー(C3−1)の具体例としては、ポリブタジエンブロックセグメントと、スチレン系化合物(スチレンを含む。以下において同じ)・ブタジエン共重合体ブロックセグメントとからなる水添ジエン系重合体;ポリイソプレンブロックセグメントと、スチレン系化合物・イソプレン共重合体ブロックセグメントとからなる水添ジエン系重合体;スチレン系化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体;スチレン系化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物;およびスチレン系化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体の水素添加物などが挙げられ、公知のものが制限なく使用できる。このようなスチレン系エラストマー(C3−1)は、1種または2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0287】
また、スチレン系エラストマー(C3−1)は油展されたものであってもよい。例えば、40℃での動粘度が20〜800cst(センチストークス)、好ましくは40〜600cst、また、流動度が0〜−40℃、好ましくは0〜−30℃、さらに、引火点(COC法)が200〜400℃、好ましくは250〜350℃の公知のパラフィンオイルは、スチレン系エラストマー(C3−1)に取り込まれる。このため、このようなパラフィンオイルを配合することで成形体の柔軟性を大きく向上できる。上記パラフィンオイルの配合量は、油展前のスチレン系エラストマー(C3−1)100重量部に対して10〜150重量部が好ましい。この場合は油展前のスチレン系エラストマー(C3−1)とオイルとをあわせて、スチレン系エラストマーであるとする。なお、さらに別途プロピレン系重合体組成物(X3)にはオイルを添加することもできるが、この場合のオイルも重合体(C3)を構成するオイルであるとする。
【0288】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C3−2)は、エチレンと炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜10までのα−オレフィン共重合させたものを意味するが、下記特徴を有するものが好ましく使用できる。
(a)密度(ASTM 1505 23℃)が0.850〜0.910g/cm3、好ましくは0.860〜0.905g/cm3、より好ましくは0.865〜0.895g/cm3の範囲にある。
(b)190℃、荷重2.16kgで測定されるMFRが0.1〜150g/10分、好ましくは0.3〜100g/10分の範囲にある。
【0289】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体は、X線回折法により測定される結晶化度が通常40%以下、好ましくは0〜39%、さらに好ましくは0〜35%である。
コモノマーとして使用される炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンが挙げられ、これらを単独で、または2種以上の組み合わせが可能であり、中でもプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。また、必要に応じて他のコモノマー、例えば1,6−ヘキサジエン、1,8−オクタジエン等のジエン類や、シクロペンテン等の環状オレフィン類等を少量含有してもよく、共重合体中のα−オレフィン含量としては、通常3〜50モル%、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは5〜25モル%である。
【0290】
その分子構造は、直鎖状であってもよいし、長鎖または短鎖の側鎖を有する分岐状であってもよい。また、複数の異なるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体を混合して使用することも可能である。
【0291】
このようなエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C3−2)を得る方法については特に制限はないが、バナジウム系触媒、チタン系触媒またはメタロセン系触媒などを用いる従来公知の方法により製造する法が挙げられる。特にメタロセン触媒を用いて製造された共重合体は通常分子量分布(Mw/Mn)が3以下であり、第三の発明に好ましく利用できる。
【0292】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C3−2)は、油展されたものであってもよい。例えば、上記と同様の公知のパラフィンオイルは、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C3−2)に取り込まれるため、これを配合することで成形体の柔軟性を大きく向上できる。パラフィンオイルの配合量は、油添前のエチレン・α−オレフィン共重合体(C3−2)100重量部に対して10〜150重量部が好ましい。この場合は油展前のエチレン・α−オレフィン共重合体(C3−2)とオイルとをあわせて、エチレン・α−オレフィン共重合体(C3−2)であるとする。なお、さらに別途プロピレン系重合体組成物(X3)にはオイルを添加することもできるが、この場合のオイルも重合体(C3)を構成するオイルであるとする。
【0293】
エチレン系重合体およびスチレン系重合体から選ばれる1種以上の重合体(C3)を使用する場合には、特にその量に制限はないが、プロピレン系重合体(A3)およびプロピレン・α−オレフィン共重合体(B3)の合計100重量部に対して、エチレン系重合体およびスチレン系重合体から選ばれる1つ以上の重合体(C3)の合計が通常1〜40重量部、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部である。このような重合体(C3)を添加することで、成形体の耐衝撃性が向上するため好ましい。
【0294】
プロピレン系重合体組成物(X3)には、第三の発明の目的を損なわない範囲で、(A3)、(B3)および(C3)以外の樹脂、(A3)、(B3)および(C3)以外のゴム、公知の粘着付与材のほか、第一の発明において例示した添加剤を配合することがでる。これらの添加量は、第三の発明の目的を損なわない範囲内であれば制限はないが、例えば、プロピレン系重合体(A3)、および軟質プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B3)および必要に応じて用いられるエチレン系重合体およびスチレン系重合体から選ばれる1つ以上の重合体(C3)の合計100重量部に対し、40重量部以下、さらには20重量部以下の量である態様を挙げることができる。
【0295】
特に、公知の顔料を添加して着色する用途に使用する際には、良好な耐白化性を有する成形体が得られる第三の発明のプロピレン系重合体組成物(X3)が好適である。
第三の発明の成形体は、プロピレン系重合体組成物(X3)を原料とし、ブロー成形法、射出成形法、押出成形法、インフレーション成形法などの公知の成形方法によって得られる。第三の発明に係る成形品の具体例としては、ブロー成形品、射出成形品、押出成形品(フィルム、シート)、インフレーション成形品、チューブなどが挙げられ、さらに具体的には、輸液ボトル、食品用カップ、食品用ボトル、シャンプー等のサニタリー用ボトル、化粧品用ボトル、チューブ等の容器;食品包装用フィルム、電子部品包装用フィルム、そのほか包装用のシートまたはフィルム等のシートまたはフィルム;キャップ、家電製品のハウジング、自動車部品、日曜雑貨品、文具用品などが挙げられる。
【0296】
これらの中では、ブロー成形または射出成形により得られる容器、射出成形により得られる成形品、押出成形より得られるシート、フィルムまたはチューブ、あるいはインフレーション成形により得られるシートまたはフィルムなどが好ましい。
第三の発明に係る成形体の好ましい例として、さらに食品包装用ラップフィルム(ラップフィルム状食品包装材)が挙げられる。
【0297】
上記食品包装用ラップフィルムは、第三の発明の成形体から形成される層を少なくとも一層有する単層または多層フィルムである。
多層化することで第三の発明における効果以外の特性、例えば、カット性、粘着性などの他の特性を付与することもできる。プロピレン系重合体組成物(X3)から形成される層以外の層を形成する樹脂成分としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ナイロン、ポリ4−メチル1−ペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、好ましくはエチレン単独重合体、エチレン単位を70モル%以上含有するエチレン共重合体である。
【0298】
第三の発明に係る食品包装用フィルムの厚みは、特に制限されないが、フィルム強度、柔軟性、透明性の観点から、通常5〜50μm、好ましくは8〜30μmである。
第三の発明に係るフィルムの製造方法では、通常のポリオレフィンのフィルム成形に使用される単層または多層T−ダイ成形機、あるいはインフレ成形機が用いられる。
【0299】
第三の発明の食品包装用ラップフィルムには、粘着性や防曇性を調整するために、公知の、粘着付与剤、界面活性剤を添加してもよい。粘着付与剤としては、ポリブテンやオレフィン系オリゴマー等の炭化水素液状物、流動パラフィン、脂肪系石油樹脂、脂環系石油樹脂などを挙げることができる。界面活性剤としては、モノグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0300】
また、第三の発明の食品包装用ラップフィルムにおいては、少なくともプロピレン系重合体組成物(X3)を用いた層が、一軸または二軸方向に延伸されていると、上記性質を有したまま、腰が強く、降伏点のないフィルムとできる。降伏点がないことは、例えば、フィルムを伸ばしながら容器などを覆った場合に、充分な応力および張りを持っており、ラップフィルムとして好ましいことを意味する。延伸倍率としては特に制限はないが、例えば、一軸延伸の場合、1.2〜5.0倍、好ましくは1.5〜3.5倍延伸されていることが望ましい。また、二軸延伸の場合、縦方向に1.2〜5.0倍、好ましくは1.5〜3.5倍延伸され、横方向に1.2〜5.0倍、好ましくは1.5〜3.5倍延伸されていることが望ましい。
【0301】
プロピレン系重合体組成物(X3)を用いた食品包装用ラップフィルムは、優れた耐熱性、透明性、耐白化性を有する。
第三の発明に係る成形体の好ましい例として、さらにキャップライナーが挙げられる。キャップライナーは、プロピレン系重合体組成物(X3)からなる層を少なくとも一層有する。
【0302】
4.第四の発明
以下、第四の発明について詳細に説明する。
〈アイソタクティックポリプロピレン(A4)〉
第四の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A4)としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと少なくとも1種のプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとの共重合体を挙げることができる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンの具体例としては、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
【0303】
これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
これらのα-オレフィンから導かれる構成単位は、プロピレンを含む全モノマー中に10モル%以下、好ましくは7モル%以下の割合で含まれていてもよい。
【0304】
アイソタクティックポリプロピレン(A4)は、アイソタクティックペンタッド分率(mmmm)およびメルトフローレート(MFR)については、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様の特性を有することが好ましい。
また、必要に応じて複数のアイソタクティックポリプロピレン(A4)を併用することができ、例えば融点や剛性の異なる2種類以上の成分を用いることもできる。
【0305】
また、アイソタクティックポリプロピレン(A4)としては、耐熱性に優れるホモポリプロピレン(通常プロピレン以外の共重合成分が3mol%以下である公知のもの)、耐熱性と柔軟性のバランスに優れるブロックポリプロピレン(通常3〜30wt%のノルマルデカン溶出ゴム成分を有する公知のもの)、さらには、柔軟性と透明性のバランスに優れるランダムポリプロピレン(通常示差走査熱量計DSCにより測定される融解ピークが100℃以上、好ましくは115℃〜160℃の範囲にある公知のもの)が、目的の物性を得るために選択してまたは併用して用いることができる。
このようなアイソタクティックポリプロピレン(A4)は、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様に製造することができる。
【0306】
〈プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B4)〉
第四の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B4)は、少なくとも一種のプロピレンを除く炭素数2〜20のα-オレフィンとの共重合体であって、かつ示差走査熱量計DSCで観測される融点が100℃未満、好ましくは融点が観測されないものである。融点が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。測定条件は、第四の発明の実施例記載のとおりである。
【0307】
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B4)は、プロピレン由来の構成単位(成分)を40〜85モル%、好ましくは58〜80モル%、より好ましくは58〜74モル%、エチレン由来の構成単位(成分)を5〜30モル%、好ましくは10〜14.5モル%、より好ましくは11〜14.5モル%、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位を5〜30モル%、好ましくは10〜27.5モル%、より好ましくは15〜27.5モル%の量含んでいる。
【0308】
プロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位、および必要に応じて炭素数4〜20のα-オレフィン構成単位を上記の量で含有するプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B4)はアイソタクティックポリプロピレン(A4)との相溶性が良好となり、得られるプロピレン系重合体組成物は、充分な透明性、柔軟性、耐熱性、耐傷付性を発揮する傾向がある。
【0309】
また、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B4)は、プロピレン、エチレンおよび炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位が好ましい範囲にあると、柔軟性、耐熱性および耐傷つき性のバランスがより良好になる。より詳しくは、エチレン含量がより好ましい範囲にあると、延伸フィルムの透明性および耐衝撃性が良好であり、また、α-オレフィン含量がより好ましい範囲にあると延伸フィルムの透明性および耐衝撃性に加え、さらに柔軟性も良好となるため第四の発明において好適に使用できる。
【0310】
また炭素数4〜20のα-オレフィンのうち、第四の発明においては特に1-ブテンが好ましい。
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B4)は、極限粘度[η]、結晶化度、ガラス転移温度Tg、分子量分布(Mw/Mn)、トリアドタクティシティ(mm分率)については、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)と同様の特性を有することが好ましく、これらの特性によって得られる効果も同様である。
【0311】
例えばプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B4)のGPCにより測定された分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は4.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。
【0312】
また、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B4)は、13C−NMRで測定されるトリアドタクティシティ(mm分率)が好ましくは85%以上、より好ましくは85〜97.5%以下、さらに好ましくは87〜97%、特に好ましくは90〜97%の範囲にある。トリアドタクティシティ(mm分率)がこの範囲にあると、特に柔軟性と機械強度のバランスに優れるため、第四の発明に好適である。mm分率は、国際公開2004−087775号パンフレットの21頁7行目〜26頁6行目までに記載された方法を用いて測定することができる。
【0313】
また、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B4)は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において融点(Tm、℃)が存在する場合には、通常、融解熱量ΔHが30J/g以下であり、かつC3含量(mol%)と融解熱量ΔH(J/g)との関係においても、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)の場合と同様の関係式が成り立つ。
【0314】
第四の発明においては、融点が観測されないプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B4)がより好ましい。
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B4)は、その一部が極性モノマーによりグラフト変性されていてもよい。この極性モノマーとしては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸あるいはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニルなどが挙げられる。
【0315】
〈樹脂組成物(X4)〉
第四の発明のフィルムは、(A4)および(B4)を含んでなる樹脂組成物(X4)からなる層を少なくとも一層有し、該層が少なくとも一軸ないしは二軸方向へ延伸されている、単層または多層構成のフィルムである。第四の発明に用いられる樹脂組成物(X4)は、以下の(A4)および(B4)からなる;
(A4)アイソタクティックポリプロピレン10〜97重量%、好ましくは50〜95重量%、より好ましくは55〜95重量%
(B4)プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体3〜90重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは5〜45重量%。
【0316】
(A4)および(B4)の配合量が上記範囲にないと、延伸フィルムの成形が困難になるとともに、フィルムの伸縮性が発現するとともにフィルムの腰が大きく低下する傾向にある。
【0317】
また、第四の発明に係るフィルムの熱収縮率を向上させるために、環球法(ASTM-D36)により測定される軟化点が50℃〜160℃の範囲にあり、GPCで測定した数平均分子量が300〜1400の範囲にある炭化水素樹脂(C4)を添加できる。このような炭化水素樹脂(C4)の具体的な例としては、公知の石油樹脂(肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、またはそれらの水素添加物等)、ロジン、ロジンエステル、テルペン樹脂、またはそれらの水素添加物が挙げられる。
【0318】
炭化水素樹脂(C4)の添加量は、(A4)および(B4)からなる樹脂組成物(X4)100重量部に対して、好ましくは3〜70重量部、より好ましくは5〜50重量部である。この範囲であればフィルムの耐衝撃性が低下することが少ない。
【0319】
また、第四の発明に係るフィルムの耐衝撃性をより向上させるために、公知のエチレン・α-オレフィンランダム共重合体を添加してもよい。このエチレン・α-オレフィンランダム共重合体は、密度およびMFRについては、第一の発明に用いられるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(D1)と同様の特性を有することが好ましい。
【0320】
このようなエチレン・α-オレフィンランダム共重合体の製造法については特に制限はないが、ラジカル重合触媒、フィリップス触媒、チーグラー・ナッタ触媒、またはメタロセン触媒を用いて、エチレンとα-オレフィンとを共重合して製造できる。特にメタロセン触媒を用いて製造された共重合体は通常分子量分布(Mw/Mn)が3以下であり、第四の発明に好ましく利用できる。
【0321】
エチレン・α-オレフィンランダム共重合体の添加量は、(A4)および(B4)を含んでなる樹脂組成物(X4)100重量部に対し、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは3〜20重量部である。フィルムの透明性を重視する場合は、20重量部以下であることが好ましい。
【0322】
さらに、樹脂組成物(X4)には、第四の発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂、他のゴム、無機充填剤などのほか、第一の発明と同様な添加剤を配合することができる。熱可塑性樹脂組成物(X4)においては、上記他の樹脂、他のゴム、無機充填剤、添加剤等の添加量は、第四の発明の目的を損なわない範囲であれば特に限定されないが、アイソタクティックポリプロピレン(A4)、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B4)、必要に応じて用いられる炭化水素樹脂(C4)およびエチレン・α-オレフィンランダム共重合体の合計が、組成物全体の60〜100重量%、好ましくは80重量%〜100重量%となるように含まれている態様を例示することができる。
【0323】
〈フィルム〉
第四の発明のフィルムは、アイソタクティックポリプロピレン(A4)、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B4)、および必要に応じて用いられる炭化水素樹脂(C4)を含んでなる樹脂組成物(X4)からなる層を少なくとも一層有し、該層が少なくとも一軸または二軸方向へ延伸されている。上記層の製造方法としては、従来通常行われているポリオレフィン樹脂フィルムの成形・延伸方法が適用可能である。例えば、インフレーション成形法やT-ダイ成形法など公知の成形方法によって製膜したものを加熱ロール/テンターにより40℃から180℃、好ましくは60℃から160℃以下の範囲で一軸または二軸に延伸して得る方法をあげることができる。またチューブラー法による同時二軸延伸法も可能である。
【0324】
延伸倍率は特に制限されないが、通常1.5倍以上、好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜8倍である。例えば、一軸方向に通常1.5倍以上、好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜8倍延伸された一軸延伸フィルム;縦方向に通常1.5倍以上、好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜8倍延伸され、横方向に通常1.5倍以上、好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜8倍延伸された二軸延伸フィルムを挙げることができる。このようにして得られた、延伸されたフィルムの厚さは、通常10〜400μmである。第四の発明ではこの延伸されたフィルムを、樹脂組成物(X4)からなる層として使用することができる。
【0325】
第四の発明のフィルムが多層構成をなす場合には、片面あるいは両面に他のフィルムが積層された形態を挙げることができる。積層するフィルムとしては特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、環状ポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のポリオレフィンフィルム、スチレン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ナイロン6、ナイロン6・6等のポリアミドフィルム、さらにエチレン・ビニルアルコール共重合体フィルムなどが挙げられる。接着性ポリオレフィンとガスバリヤー性樹脂との積層体としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレンとエチレン・ビニルアルコール共重合体との積層体が挙げられる。他のフィルムとしては、特に制限はないが、一軸方向または二軸方向に延伸されたものであることが好ましい。
【0326】
このような多層構成のフィルムにおける上記他のフィルムは、例えば、樹脂組成物(X4)からなる延伸前のフィルムと貼り合わせた後、同時に延伸していてもよく、または単層構成の延伸された第四の発明に係るフィルムを成形後に、他のフィルムと貼り合わせてもよい。
【0327】
第四の発明のフィルムは、例えば、以下の(A4)、(B4)、および必要に応じて炭化水素樹脂(C4)を含んでなる樹脂組成物(X4)からなる層を少なくとも一層有する単層または多層構成のフィルム(延伸前のフィルム)をまず製造し、上記延伸方法により延伸することもできる;
(A4)アイソタクティックポリプロピレン10〜97重量%
(B4)プロピレン由来の構成単位を40〜85モル%、エチレン由来の構成単位を5〜30モル%、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位(a4)を5〜30モル%含み、かつ示差走査熱量計で観測される融点が100℃未満または融点が観測されないプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体3〜90重量%(ここで、(A4)および(B4)の合計は100重量%とする)。
【0328】
〈用途〉
第四の発明のフィルムは、例えば、熱収縮包装用の包装材料、熱収縮ラベル等に好適に用いることができる。
【0329】
5.第五の発明
以下、第五の発明について具体的に説明する。
〈アイソタクティックポリプロピレン(A5)〉
第五の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A5)としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンの少なくとも1種との共重合体を挙げることができる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンの具体例としては、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
【0330】
これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
これらのα-オレフィンから導かれる構成単位は、アイソタクティックポリプロピレン(A5)の全構成単位中に35モル%以下、好ましくは30モル%以下の割合で含まれていてもよい。
【0331】
アイソタクティックポリプロピレン(A5)の示差走査熱量計(DSC)で測定される融点は、120℃以上、好ましくは120〜170℃、より好ましくは130〜160℃である。
また、必要に応じて複数のアイソタクティックポリプロピレン(A5)を併用することができ、例えば、融点や剛性の異なる2種類以上の成分を用いることもできる。
【0332】
アイソタクティックポリプロピレン(A5)は、アイソタクティックペンタッド分率(mmmm)およびメルトフローレート(MFR)については、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様の特性を有することが好ましい。
このようなアイソタクティックポリプロピレン(A5)は、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様の方法で製造することができる。
【0333】
〈プロピレン系重合体(B5)〉
第五の発明に用いられるプロピレン系重合体(B5)としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンとプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンの少なくとも1種との共重合体を挙げることができる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜2のα-オレフィンとしては、アイソタクティックポリプロピレン(A5)の場合と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0334】
これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
プロピレン系重合体(B5)は、プロピレン由来の構成単位を通常40〜100モル%、好ましくは40〜99モル%、より好ましくは40〜92モル%、さらに好ましくは50〜90モル%含み、コモノマーとして用いられる炭素数2〜20のα-オレフィン(ただしプロピレンを除く。)由来の構成単位を通常0〜60モル%、好ましくは1〜60モル%、より好ましくは8〜60モル%、さらに好ましくは10〜50モル%含む(ここで、プロピレンと炭素数2〜20のα-オレフィンとの合計は100モル%である。)。
【0335】
プロピレン系重合体(B5)においては、メルトフローレート(MFR、ASTM D 1238、230℃、2.16kg荷重下)が通常0.1〜50(g/10分)である。
また、プロピレン系重合体(B5)は、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が120℃未満であるか、または融点が観測されず、好ましくは、融点が100℃以下であるか、または融点が観測されない。ここで、融点が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。測定条件は第5の発明の実施例記載のとおりである。
【0336】
プロピレン系重合体(B5)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にある。
プロピレン系重合体(B5)の製造方法は特に制限されないが、オレフィンを、アイソタクチック構造またはシンジオタクチック構造で立体規則性重合できる公知の触媒、例えば、固体状チタン成分および有機金属化合物を主成分とする触媒、またはメタロセン化合物を触媒の一成分として用いたメタロセン触媒の存在下で、プロピレンを重合して、またはプロピレンと他のα-オレフィンとを共重合して製造できる。また、オレフィンをアタクチック構造で重合できる公知の触媒を用いて、プロピレンを重合して、またはプロピレンと他のα-オレフィンとを共重合して製造される。好ましくは、後述のように、メタロセン触媒の存在下、プロピレンと炭素数2〜20のα-オレフィン(ただしプロピレンを除く。)とを共重合させることにより得られる。
【0337】
上記のような特徴を有するプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(B5)としては、以下のように、プロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B5−1)が好適に用いられる。
以下、プロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B5−1)について詳しく説明する。
【0338】
プロピレン・エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B5−1)は、プロピレン由来の構成単位を55〜85モル%、好ましくは61〜82モル%、より好ましくは66〜75モル%、エチレン由来の構成単位を5〜15モル%、好ましくは8〜14モル%、より好ましくは10〜14モル%、および炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位(a5)を0〜30モル%、好ましくは10〜25モル%、より好ましくは15〜20モル%含んでいる。ここで、プロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位および炭素数4〜20のα−オレフィンの構成単位の合計は100モル%である。
【0339】
プロピレン、エチレン、および必要に応じて炭素数4〜20のα−オレフィン成分を上記の量で含有するプロピレン・エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B5−1)は、アイソタクティックポリプロピレン(A5)との相溶性が良好となり、得られるプロピレン系重合体組成物(X5)は、充分な透明性、機械(破断点)強度、柔軟性、耐熱性、耐傷付き性および耐圧縮歪性を発揮できる傾向がある。
【0340】
例えば、プロピレン・エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B5−1)を用いれば、プロピレン系重合体組成物(X5)の引張試験における降伏点応力(YS)を示す際の伸び(降伏点伸び)は大きく向上する。これにより、第五の発明に係るシートの折り曲げ適性(折り曲げ時の耐白化性、耐折れしわ性)が大きく向上する。
【0341】
さらに、プロピレン・エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B5−1)を用いたプロピレン系重合体組成物(X5)は良好な耐圧縮歪性を有する。これにより、第五の発明に係るシートの折り曲げ時または圧縮時に発生する永久歪が抑えられる。
【0342】
プロピレン・エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B5−1)は、極限粘度[η]、100%歪での応力(M100)、結晶化度、ガラス転移温度Tgについては、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)と同様の特性を有することが好ましく、これらの特性によって得られる効果も同様である。
【0343】
また、プロピレン・エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B5−1)は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において融点(Tm、℃)が存在する場合には、通常、融解熱量ΔHが30J/g以下であり、かつC3含量(mol%)と融解熱量ΔH(J/g)との関係においても、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)の場合と同様の関係式が成り立つ。
【0344】
プロピレン・エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B5−1)において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)の値は通常1.5〜4.0、好ましくは1.5〜3.0、より好ましくは1.5〜2.5であることが望ましい。
【0345】
また、第五の発明においては、13C−NMRで測定されるトリアドタクティシティ(mm分率)が通常85〜97.5%以下、好ましくは87〜97%、より好ましくは90〜97%である。mm分率がこの範囲にあると、特に高温での圧縮永久歪、および強度に優れるため、第五の発明に好適である。mm分率は、国際公開第2004/087775号パンフレットの21頁7行目〜26頁6行目に記載された方法を用いて測定することができる。
【0346】
プロピレン・エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B5−1)は、アイソタクティックポリプロピレン(A5)製造用のメタロセン触媒を用いて同様に製造しても、また、他のメタロセン触媒を用いて製造してもよいが、これに限定されるものではない。
【0347】
〈軟質重合体(C5)〉
第五の発明に必要に応じて用いられる軟質重合体(C5)は、プロピレン系重合体(B5)以外であって、ショアーA硬度が95以下および/またはショアーD硬度が60以下の範囲にある少なくとも1種の軟質重合体である。ここで、ショアーA硬度は、JIS K6301に準拠して測定され、ショアーD硬度は、ASTM D−2240に準拠して測定される。
【0348】
なお、軟質重合体(C5)としては、エチレン由来の構成単位が、全構成単位に対して60モル%を超える、好ましくは61モル%以上、より好ましくは61〜99モル%含む共重合体が好ましい。
【0349】
軟質重合体(C5)の具体例としては、スチレン系エラストマー、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられるが、以下で説明するスチレン系エラストマー(C5−1)およびエチレン・α−オレフィン共重合体(C5−2)が好ましく用いられる。
【0350】
スチレン系エラストマー(C5−1)の具体例としては、第三の発明に用いられるスチレン系エラストマー(C3−1)と同様なものが挙げられ、公知のものが制限なく使用できる。このようなスチレン系エラストマー(C5−1)は、1種または2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0351】
また、第三の発明でも述べたような特性を有する公知のパラフィンオイルは、スチレン系エラストマー(C5−1)に取り込まれる。このため、このようなパラフィンオイルを配合することで成形体の柔軟性を大きく向上できる。上記パラフィンオイルの配合量は、スチレン系エラストマー(C5−1)100重量部に対して10〜150重量部が好ましい。
【0352】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C5−2)は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン、好ましくは炭素数3〜10のα−オレフィンとを共重合させたものを意味し、密度およびMFRのほか、結晶化度については、第三の発明に用いられるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C3−2)と同様な特性を有することが好ましい。
【0353】
コモノマーとして使用される炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、第三の発明に用いられるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C3−2)と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。これらを単独で、または2種以上の組み合わせて用いてもよい。
【0354】
共重合体(C5−2)中のα−オレフィン含量としては、例えば、通常3モル%以上40モル%未満、好ましくは3〜39モル%、より好ましくは5〜30モル%、さらに好ましくは5〜25モル%である。
【0355】
また、必要に応じて他のコノモマー、例えば、1,6−ヘキサジエン、1,8−オクタジエン等のジエン類や、シクロペンテン等の環状オレフィン類などを少量含有してもよい。
共重合体(C5−2)の分子構造は、直鎖状であってもよく、長鎖または短鎖の側鎖を有する分岐状であってもよい。また、複数の異なるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体を混合して使用することも可能である。
【0356】
このようなエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C5−2)を得る方法については特に制限はないが、第三の発明に用いられるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C3−2)と同様の方法が挙げられる。特に、メタロセン触媒を用いて製造された共重合体は分子量分布(Mw/Mn)が通常3以下であり、第五の発明に好ましく利用できる。
【0357】
〈プロピレン系樹脂組成物(X5)〉
第五の発明に係るプロピレン系樹脂組成物(X5)は、アイソタクティックポリプロピレン(A5)と、プロピレン系重合体(B5)とを含んでなる。
【0358】
また、プロピレン系樹脂組成物(X5)は、軟質重合体(C5)を含んでいてもよく、また、必要に応じて後述する無機充填剤および添加剤などを含んでいてもよい。
プロピレン系重合体組成物(X5)において、(A5)および(B5)の合計を100重量部とした場合に、アイソタクティックポリプロピレン(A5)は10〜99重量部、好ましくは15〜98重量部、より好ましくは60〜95重量部の割合で用いられる。この範囲にあると、シートの耐熱性および成形性が優れており好ましい。
【0359】
また、プロピレン系重合体組成物(X5)において、(A5)および(B5)の合計を100重量部とした場合に、プロピレン系共重合体(B5)は1〜90重量部、好ましくは2〜85重量部、より好ましくは5〜40重量部の割合で用いられる。この範囲にあると、柔軟性、機械的強度、耐傷つき性、透明性および耐熱性が向上するとともに、折り曲げ時の耐白化性および耐折れしわ性に優れるため好ましい。
【0360】
プロピレン系樹脂組成物(X5)は、(A5)および(B5)の合計100重量部に対し、必要に応じて用いられる軟質重合体(C5)を通常1〜80重量部、好ましくは5〜70重量部の量で含有することが望ましい。軟質重合体(C5)を上記の量で含有すると、柔軟性、表面硬度および耐衝撃性に優れるとともに、特に耐低温衝撃強度に優れた成形体を調製できる組成物が得られる。
【0361】
プロピレン系樹脂組成物(X5)は、さらに必要に応じて、他の樹脂、他のゴム、無機充填剤、添加剤などを、第五の発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。
第五の発明に用いられる無機充填剤は、例えば、タルク、クレー、炭酸カルシウム、マイカ、けい酸塩類、炭酸塩類、ガラス繊維などが挙げられる。これらの中では、タルク、炭酸カルシウムが好ましく、特にタルクが好ましい。タルクは平均粒径が1〜5μm、好ましくは1〜3μmのものが望ましい。無機充填剤は1種単独で使用しても、2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0362】
さらに、第五の発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等、結晶核剤などの添加剤を配合してもよい。
【0363】
上記他の樹脂、他のゴム、無機充填剤、添加剤などの添加量は、第五の発明の目的を損なわない範囲であれば特に限定されないが、アイソタクティックポリプロピレン(A5)、プロピレン系重合体(B5)、および必要に応じて添加される軟質重合体(C5)の合計が、例えば、上記組成物全体の60重量%以上、好ましくは80重量%〜100重量%となるように含まれている態様を例示することができる。残部は、上記のような他の樹脂、他のゴム、無機充填剤、添加剤などである。
【0364】
プロピレン系重合体組成物(X5)は、各成分を上記のような範囲で用いて、種々公知の方法、例えば、多段重合法、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー等で混合する方法、または、混合に次いで、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練後、造粒または粉砕する方法を採用して製造することができる。
【0365】
また、プロピレン系重合体(B5)に対して、少量のアイソタクティックポリプロピレン(A5)を添加してあらかじめペレットを製造し、さらにアイソタクティックポリプロピレン(A5)を添加して、プロピレン系重合体組成物(X5)としてもよい。この場合、軟質重合体(C5)のほか、他の樹脂、他のゴム、無機充填剤、添加剤などは、あらかじめペレット化する際に配合してもよく、また、ペレット化後に、さらにアイソタクティックポリプロピレン(A5)を添加する際にこれらを配合してもよい。
【0366】
なお、プロピレン系重合体組成物(X5)が、上記スチレン系エラストマーを含まない場合であって、軟化剤を含む場合は、軟化剤の量は特に制限はないが、アイソタクティックポリプロピレン(A5)、プロピレン系重合体(B5)、および必要に応じて添加される軟質重合体(C5)の合計100重量部に対して、15重量部以下、好ましくは10重量部であることが好ましく、または軟化剤を含まない態様も好ましい。
【0367】
〈ポリオレフィン系化粧シート〉
第五の発明のポリオレフィン系化粧シートは、例えば、合板、鋼板、アルミ板、パーティクルボード、MDF(中質繊維板)、無機物ボード(石膏ボード等)、コンクリート壁、樹脂製ボード、発泡体、断熱体などからなる被着体の表面に、接着剤あるいはその他の方法で貼り合わせて、公知の化粧板に用いられる。第五の発明のポリオレフィン系化粧シートには、建材保護シート、例えば、床、壁、天井その他の部分の表層に用いるためのシートも含まれる。化粧シート、建材保護シートともに、絵柄・印刷などの意匠性の付与および表面保護を目的とするものである。
【0368】
第五の発明のポリオレフィン系化粧シートの代表的な例として、例えば、図5−1に示す様に、プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層を、ポリオレフィン系化粧シートの構成層の少なくとも一層に含むものを挙げることができる。プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層が二層以上用いられていてもよく、その場合には、二層以上の層が全く同じ成分を含んでいてもよく、それぞれの層が互いに異なった成分を含んでいてもよい。
【0369】
第五の発明のポリオレフィン系化粧シートには、プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層以外に、意匠性を出すための印刷層および絵柄層、表面コート層、艶調整層、隠蔽層(被着体表面が透けて見えることを防止する層であって、基材としての役割を果たすこともある。)、さらにはこれらの層を接着させるための接着層など、公知の化粧シートの構成層を含んでいてもよい。
【0370】
第五の発明に係る化粧シートの構成の態様は特に限定されないが、第一の発明で示したような構成が挙げられる。
すなわち、第五の発明に係る化粧シートの構成の態様は特に限定されないが、例えば、[a]プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層と、[b]印刷層、絵柄層および隠蔽層から選ばれる少なくとも1種の層とを有し、必要に応じて[c]表面コート層および艶調製層から選ばれる少なくとも1種の層が含まれている構成が挙げられる。
【0371】
また、別の態様としては、[d]隠蔽層と、[a]プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層と、[b]印刷層および絵柄層から選ばれる少なくとも1層の層と、必要に応じて[c]表面コート層および艶調製層から選ばれる少なくとも1層が含まれている構成が挙げられる。
【0372】
また、プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層は、破断点強度、耐傷つき性、耐磨耗性、折り曲げ時の耐白化性、耐折れしわ性、耐熱性、透明性に優れるため、これを印刷層または絵柄層を保護するための保護層(印刷層または絵柄層を保護するための表層として用いることを意味し、プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層の上に、第五の発明の目的を損なわない範囲で、表面コート層および艶調整層など公知の処理を行うことが可能である。)として好適に用いることができる。このような構成を有するポリオレフィン系化粧シートは特に好適である。
【0373】
また、プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層は、柔軟性、耐水性にも優れるため、他の成分からなる層と組み合わせたときの一層として好適に用いられる。このとき、プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層は、公知の接着剤あるいは公知の接着剤と同じ効果を果たす接着剤を用いずに接着させることが可能である。具体的には、公知の熱ラミ法、押出ラミネーション・サンドイッチラミネーション法、共押出法など、熱融着により充分な接着強度を発現することが可能である。
【0374】
従って、図5−2のように、プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層は、プロピレン系樹脂組成物(X5)以外のポリオレフィン系樹脂組成物、すなわちプロピレン系樹脂組成物(X5)の範囲に含まれないポリオレフィン系樹脂組成物からなる層(公知の接着性ポリオレフィン樹脂層も含む。)と組み合わせてポリオレフィン系化粧シートに好適に利用できる。すなわち、第五の発明のポリオレフィン系化粧シートは、さらに、プロピレン系重合体組成物(X5)以外のポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を構成層の少なくとも一層として含むことが好ましい。
【0375】
第五の発明のポリオレフィン系化粧シートは、折り曲げ時の耐折れしわ性が良好である。特に、プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層と、プロピレン系重合体組成物(X5)以外のポリオレフィン系樹脂組成物からなる層とが積層されている場合には、耐折れしわ性が良好である。
【0376】
上記ポリオレフィン系化粧シートにおいては、プロピレン重合体組成物(X5)からなる層の裏面と、プロピレン系重合体組成物(X5)以外のポリオレフィン系樹脂組成物からなる層とが接着剤を介さずに積層された状態でも好適に用いられる。なお、接着剤を介さず積層された状態とは直接熱融着され積層された状態をいう。
【0377】
上記プロピレン系重合体組成物(X5)以外のポリオレフィン系樹脂組成物としては、プロピレン系重合体組成物(X5)以外のもの、すなわちプロピレン系重合体組成物(X5)の範囲に含まれないポリオレフィン系樹脂組成物であれば特に制限なく用いられる。上記ポリオレフィン系樹脂組成物としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリα−オレフィン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・極性ビニルモノマー共重合体、これらを2種以上混合した樹脂組成物などが挙げられる。
【0378】
さらに、上記ポリオレフィン系樹脂組成物は、これらに加えて、無機充填材、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤などの添加剤を、第五の発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。
プロピレン系重合体組成物(X5)からなる層の厚みとしては特に制限はないが、通常5〜2000μmである。
【0379】
また、第五の発明のポリオレフィン系化粧シートには、公知のエンボス加工やシボ加工、ワイピング処理などが行われていてもよい。
第五の発明のポリオレフィン系化粧シートの製造法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
上記ポリオレフィン系化粧シートの用途は特に限定されず、第一の発明の場合と同様の用途に好適に使用できる。
【0380】
すなわち、上記ポリオレフィン系化粧シートの用途は特に限定されず、テレビキャビネット、ステレオスピーカーボックス、ビデオキャビネット、各種収納家具、ユニット家具等の家電製品や家具製品;ドア、ドア枠、窓枠、廻縁、巾木、開口枠等の住宅部材、厨房、収納家具扉等の家具部材;床材、天井材、壁紙等の建材商品;自動車内装材;文具;オフィス用品などに好適に使用できる。
【0381】
6.第六の発明
以下、第六の発明について具体的に説明する。
〈プロピレン系重合体(A6)〉
第六の発明に用いられるプロピレン系重合体(A6)としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンの少なくとも1種との共重合体を挙げることができる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとしては、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
【0382】
これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
これらのα-オレフィンから導かれる構成単位は、プロピレン系重合体(A6)の全構成単位中に35モル%以下、好ましくは30モル%以下の割合で含まれていてもよい。
【0383】
プロピレン系重合体(A6)は、ASTM D 1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が通常0.01〜1000g/10分であり、好ましくは0.05〜100g/10分であり、より好ましくは0.1〜50g/10分の範囲にある。
【0384】
プロピレン系重合体(A6)は、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点が通常120℃以上、好ましくは120〜170℃、より好ましくは125〜165℃である。
プロピレン系重合体(A6)は、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造のどちらを有していてもよいが、耐熱性などの点でアイソタクチック構造を有することが好ましい。
【0385】
また、必要に応じて複数のプロピレン系重合体(A6)を併用することができ、例えば、融点や剛性の異なる2種類以上の成分を用いることもできる。
また、プロピレン系重合体(A6)としては、耐熱性に優れるホモポリプロピレン(通常プロピレン以外の共重合成分が3モル%以下である公知のもの)、耐熱性と耐衝撃性とのバランスに優れるブロックポリプロピレン(通常3〜30wt%のノルマルデカン溶出ゴム成分を有する公知のもの)、さらには、柔軟性と透明性とのバランスに優れるランダムポリプロピレン(通常示差走査熱量計(DSC)により測定される融解ピークが120℃以上、好ましくは125℃〜150℃の範囲にある公知のもの)を、目的の物性を得るために選択してまたは併用して用いることができる。
【0386】
このようなプロピレン系共重合体(A6)は、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様の方法で製造することができる。
【0387】
〈プロピレン系重合体(B6)〉
第六の発明に用いられるプロピレン系重合体(B6)としては、プロピレン単独重合体、または、プロピレンと、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンの少なくとも1種との共重合体を挙げることができる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとしては、プロピレン系重合体(A6)と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
【0388】
これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
プロピレン系重合体(B6)は、プロピレン由来の構成単位を、通常40〜100モル%、好ましくは40〜99モル%、より好ましくは40〜92モル%、さらに好ましくは50〜90モル%含み、コモノマーとして用いられる炭素数2〜20のα-オレフィン(ただしプロピレンを除く。)由来の構成単位を、通常0〜60モル%、好ましくは1〜60モル%、より好ましくは8〜60モル%、さらに好ましくは10〜50モル%含む(ここで、プロピレンと炭素数2〜20のα-オレフィンとの合計は100モル%である)。
【0389】
プロピレン系重合体(B6)においては、メルトフローレート(MFR、ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)が通常0.1〜50(g/10分)である。
また、プロピレン系重合体(B6)は、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が120℃未満であるか、または融点が観測されず、好ましくは、融点が100℃以下であるか、または融点が観測されない。ここで、融点が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。測定条件は、第6の発明の実施例記載のとおりである。
【0390】
プロピレン系重合体(B6)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にある。
プロピレン系重合体(B6)のトリアドタクティシティ(mm分率)については、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)と同様の特性を有することが好ましく、これにより得られる効果も同じである。
【0391】
すなわち、プロピレン系重合体(B6)は、13C−NMRで測定されるトリアドタクティシティ(mm分率)が好ましくは85%以上、より好ましくは85〜97.5%以下、さらに好ましくは87〜97%、特に好ましくは90〜97%の範囲にある。トリアドタクティシティ(mm分率)がこの範囲にあると、特に柔軟性と機械強度のバランスに優れるため、第六の発明に好適である。mm分率は、国際公開2004−087775号パンフレットの21頁7行目〜26頁6行目までに記載された方法を用いて測定できる。
【0392】
プロピレン系重合体(B6)の製造方法としては特に制限されないが、第五の発明に用いられるプロピレン系重合体(B5)と同様の製造方法が挙げられる。
上記のような特徴を有するプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(B6)の具体例としては、以下のように、プロピレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-1)およびプロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-2)を挙げることができる。
【0393】
プロピレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-1)を用いることで、ポリプロピレン結晶成分との相溶性が発現し、機械強度、破断点伸び、耐傷付き性、耐白化性により優れたプロピレン系樹脂組成物が得られる。
【0394】
また、プロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-2)も、プロピレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-1)と同様に、ポリプロピレン結晶成分との相溶性を有しており、このプロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-2)を用いることで、柔軟性、耐傷付き性、耐白化性により優れたプロピレン系樹脂組成物が得られる。
【0395】
以下に、第六の発明に好適に用いられるプロピレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-1)およびプロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-2)について詳しく説明する。
【0396】
[プロピレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-1)]
第六の発明に好ましく用いられるプロピレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-1)は、下記(a)および(b)を満たす。
(a)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された分子量分布(Mw/Mn)の値が1〜3であり、
(b)融点Tm(℃)と、13C-NMRスペクトル測定にて求められるコモノマー構成単位の含量M(モル%)とが、
146exp(-0.022M)≧Tm≧125exp(-0.032M)
の関係式を満たす(ただし、Tmは120℃未満、好ましくは100℃未満である。)。
【0397】
プロピレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-1)の融点Tmは、DSCにより以下のように測定される。測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温して200℃で5分間保持したのち、10℃/分で−150℃まで降温し、次いで10℃/分で200℃まで昇温する際に観察される吸熱ピークの温度が、融点Tmである。この融点Tmは、通常120℃未満、好ましくは100℃以下、より好ましくは40〜95℃の範囲、さらに好ましくは50〜90℃の範囲である。融点Tmがこの範囲にあれば、特に柔軟性と強度とのバランスに優れた成形体が得られる。また、成形品表面のべたつきが抑えられるため、第六の発明の組成物を用いてなる成形体は施工がしやすい利点を有する。
【0398】
プロピレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-1)においては、さらに、
(c)X線回折で測定した結晶化度が好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下であることが望ましい。
【0399】
プロピレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-1)において、炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位の含量は、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは10〜35モル%である。特に、炭素数4〜20のα-オレフィンとしては、1−ブテンが好ましく用いられる。
【0400】
このようなプロピレン系重合体(B6-1)は、第三の発明に用いられる軟質プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(B3)と同様の方法で製造することができる。例えば国際公開2004/087775号パンフレット記載の方法を用いて製造できる。
【0401】
[プロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-2)]
第六の発明に好ましく用いられるプロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-2)は、下記(m)および(n)を満たす。
(m)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された分子量分布(Mw/Mn)の値が1〜3であり、
(n)プロピレン由来の構成単位を40〜85モル%、エチレン由来の構成単位を5〜30モル%、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位を5〜30モル%含む(ここで、プロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位の合計は100モル%である。また、エチレン由来の構成単位、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位の合計は60〜15モル%であることが好ましい。)。
【0402】
プロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-2)においては、さらに、好ましくは下記(o)および(p)の少なくとも1つ以上、より好ましくは両方を満たすことが望ましい。
(o)ショアーA硬度が30〜80、好ましくは35〜60である。
(p)X線回折で測定した結晶化度が20%以下、好ましくは10%以下である。
【0403】
また、プロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-2)のDSCで測定した融点Tmは、好ましくは50℃以下であるか、または融点が観測されないことが望ましい。融点が観測されないことがより好ましい。融点の測定は、上記共重合体(B6−1)と同じ方法で測定できる。
【0404】
プロピレン成分およびその他のコモノマー成分量について、さらに詳しくは、プロピレン由来の構成単位を、好ましくは60〜82モル%、より好ましくは61〜75モル%、エチレン由来の構成単位を、好ましくは8〜15モル%、より好ましくは10〜14モル%、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位を、好ましくは10〜25モル%、より好ましくは15〜25モル%の量含むことが望ましい。特に、炭素数4〜20のα-オレフィンとしては、1−ブテンが好ましく用いられる。
【0405】
このようなプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(B6-2)は、第三の発明に用いられる軟質プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(B3)と同様の方法で製造することができる。例えば国際公開2004/087775号パンフレット記載の方法を用いて製造できる。
【0406】
第六の発明においては、プロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-2)を用いることで、柔軟性がより向上し、低温脆化性にも優れた成形体が得られる。この成形体が、例えば電線である場合には、低温にさらされても、電線被覆が割れにくい利点を有する。
【0407】
〈エラストマー(C6)〉
第六の発明に用いられるエラストマー(C6)は、エチレン由来の構成単位を、全構成単位に対して61モル%以上有するエチレン系エラストマー(C6−1)、およびスチレン由来の構成単位を、全構成単位に対して5〜70重量%有するスチレン系エラストマー(C6−2)から選ばれる1種以上のエラストマーである。
【0408】
エラストマー(C6)としては、ショアーA硬度が30〜90の範囲にあれば特に制限はなく、例えば、スチレン・ブタジエンゴムおよびその水素化物、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。
【0409】
エチレン系エラストマー(C6−1)としては、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C6−1−1)が好ましく用いられる。エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C6−1−1)は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン、好ましくは炭素数3〜10のα−オレフィンとを共重合させたものを意味し、密度およびMFRのほか、結晶化度については、第三の発明に用いられるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C3−2)と同様な特性を有することが好ましい。
【0410】
コモノマーとして使用される炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、第三の発明に用いられるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C3−2)と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。これらを単独で、または2種以上の組み合わせて用いてもよい。
共重合体(C6−1−1)中のα−オレフィン含量としては、例えば、通常3〜39モル%、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは5〜25モル%である。
【0411】
また、必要に応じて他のコノモマー、例えば、1,6−ヘキサジエン、1,8−オクタジエン等のジエン類や、シクロペンテン等の環状オレフィン類などを少量含有してもよい。
共重合体(C6−1−1)の分子構造は、直鎖状であってもよく、長鎖または短鎖の側鎖を有する分岐状であってもよい。
【0412】
また、複数の異なるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C6−1−1)を混合して使用することも可能である。
【0413】
このようなエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C6−1−1)を得る方法については特に制限はないが、第三の発明に用いられるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C3−2)と同様の方法が挙げられる。特に、メタロセン触媒を用いて製造された共重合体は分子量分布(Mw/Mn)が通常3以下であり、第六の発明に好ましく利用できる。
【0414】
スチレン系エラストマー(C6−2)の具体例としては、第三の発明に用いられるスチレン系エラストマー(C3−1)と同様なものが挙げられ、公知のものが制限なく使用できる。このようなスチレン系エラストマー(C6−2)は、1種または2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
また、第六の発明においては、エチレン系エラストマー(C6−1)とスチレン系エラストマー(C6−2)とを併用して用いてもよい。
【0415】
〈無機系充填剤(D6)〉
第六の発明に用いる無機系充填剤(D6)としては、特に制限はなく、例えば、金属化合物;ガラス、セラミック、タルク、マイカ等の無機化合物などが幅広く用いられる。これらのうちで、金属水酸化物、金属炭酸塩(炭酸化物)、金属酸化物が好ましく用いられる。無機系充填剤(D6)は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0416】
無機系充填剤(D6)の平均粒径としては、通常0.1〜20μm、好ましくは0.5〜15μmである。ここで、平均粒子径はレーザー法により求めた値である。
また、無機系充填剤(D6)は、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、有機シランなどにより表面処理されたものであってもよく、上記平均粒子径を有する微粒子が凝集体を形成したものであってもよい。
【0417】
〈オイル(E6)〉
第六の発明に用いられるオイル(E6)としては、パラフィンオイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル、シリコンオイルなどの種々のオイルが挙げられる。これらのうちで、パラフィンオイル、ナフテン系オイルが好適に用いられる。
【0418】
オイル(E6)としては、特に制限はないが、40℃での動粘度は、通常20〜800cst(センチストークス)であり、好ましくは40〜600cstであることが望ましい。さらに、オイル(E6)の流動度は、通常0〜−40℃、好ましくは0〜−30℃であり、引火点(COC法)は、通常200〜400℃、好ましくは250〜350℃であることが望ましい。オイル(E6)を用いることで、第六の発明のプロピレン系樹脂組成物は、特に優れた低温脆化性などの低温特性、耐傷つき性を発現できる。
【0419】
第六の発明に好適に用いられるナフテン系プロセスオイルは、一般にゴム加工において、軟化効果、配合剤分散効果、潤滑効果、低温特性の改善などを得るために混入される石油系軟化剤であって、ナフテン系炭化水素を30〜45重量%含有する。このようなプロセスオイルを配合すると、樹脂組成物の成形時の溶融流動性、成形品の柔軟性、低温特性を一層改善することができ、さらに、成形品の表面にブリードによるべたつきを抑える効果が得られる。第六の発明においては、ナフテン系プロセスオイルの中でも、芳香族系炭化水素の含有量が10重量%以下であるものが好適に用いられる。理由は明らかでないが、このようなオイルを用いると、成形品の表面にブリードが生じにくい。
【0420】
〈グラフト変性重合体(F6)〉
グラフト変性重合体(F6)の原料に用いられる重合体としては、例えば、1種以上のα-オレフィンの重合体、スチレン系ブロック共重合体などが挙げられ、特にエチレン系重合体、プロピレン系重合体、スチレン系ブロック共重合体などが好ましく挙げられる。上記α-オレフィンとしては、炭素数2〜20のα-オレフィンを例示することができる。
【0421】
上記エチレン系重合体としては、ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体が好ましい。上記エチレン・α-オレフィン共重合体の中でも、エチレンと炭素数3〜10のα-オレフィンとの共重合体が好ましい。この炭素数3〜10のα-オレフィンとしては、具体的に、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちで、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンの少なくとも1種を用いることが特に好ましい。
【0422】
上記エチレン系共重合体中の各構成単位の含量は、エチレンから誘導される構成単位の含量が75〜95モル%であり、炭素数3〜10のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種の化合物から誘導される構成単位の含量が5〜20モル%であることが好ましい。
【0423】
上記エチレン・α-オレフィン共重合体は、
(i)密度が0.855〜0.910g/cm3、好ましくは0.857〜0.890g/cm3であり、
(ii)メルトフローレート(MFR、190℃、2.16kg荷重下)が0.1〜100g/10分、好ましくは、0.1〜20g/10分の範囲にあり、
(iii)GPC法により評価される分子量分布の指数(Mw/Mn)が1.5〜3.5、好ましくは1.5〜3.0、より好ましくは1.8〜2.5の範囲にあり、
(iv)13C-NMRスペクトルおよび下記式から求められるB値が0.9〜1.5、好ましくは1.0〜1.2であることが望ましい。
【0424】
B値=[POE]/(2・[PE][PO])
(式中、[PE]は、共重合体中のエチレンから誘導される構成単位の含有モル分率であり、[PO]は、共重合体中のα-オレフィンから誘導される構成単位の含有モル分率であり、[POE]は、共重合体中の全ダイアド(dyad)連鎖に対するエチレン・α-オレフィン連鎖数の割合である。)
【0425】
そのほか、上記エチレン・α-オレフィン共重合体は、成分(A6)に用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体と同様の特徴を有することが好ましい。共重合体のコモノマー種、密度、分子量などは成分(A6)と同じであっても異なっていてもよい。
【0426】
第六の発明に用いられるグラフト変性重合体は、例えば、α-オレフィン重合体、スチレン系ブロック共重合体などを、極性基を有するビニル化合物でグラフト変性して得られる。上記ビニル化合物としては、酸、酸無水物、エステル、アルコール、エポキシ、エーテル等の酸素含有基を有するビニル化合物、イソシアネート、アミド等の窒素含有基を有するビニル化合物、ビニルシラン等のケイ素含有基を有するビニル化合物などが挙げられる。
【0427】
この中でも、酸素含有基を有するビニル化合物が好ましく、具体的には、不飽和エポキシ単量体、不飽和カルボン酸およびその誘導体などが好ましい。
上記不飽和エポキシ単量体としては、不飽和グリシジルエーテル、不飽和グリシジルエステル(例えば、グリシジルメタクリレート)などが挙げられる。
上記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸TM(エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)などが挙げられる。
【0428】
また、上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、上記不飽和カルボン酸の酸ハライド化合物、アミド化合物、イミド化合物、酸無水物、およびエステル化合物などを挙げることができる。具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートなどが挙げられる。
【0429】
これらの中では、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物がより好ましく、特にマレイン酸、ナジック酸TMおよびこれらの酸無水物が特に好ましく用いられる。
なお、上記未変性のエチレン系共重合体にグラフトされる不飽和カルボン酸またはその誘導体のグラフト位置は特に制限されず、このエチレン系重合体の任意の炭素原子に不飽和カルボン酸またはその誘導体が結合していればよい。
【0430】
上記のようなグラフト変性重合体(F6)は、従来公知の種々の方法、例えば、次のような方法を用いて調製できる。
(1)上記未変性重合体を押出機などで溶融させて、不飽和カルボン酸などを添加してグラフト共重合させる方法。
(2)上記未変性重合体を溶媒に溶解させて、不飽和カルボン酸などを添加してグラフト共重合させる方法。
【0431】
いずれの方法も、上記不飽和カルボン酸などのグラフトモノマーを効率よくグラフト共重合させるために、ラジカル開始剤の存在下でグラフト反応を行うことが好ましい。
上記ラジカル開始剤として、例えば、有機ペルオキシド、アゾ化合物などが使用される。
上記有機ペルオキシドとしては、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシドなどが挙げられ、上記アゾ化合物としては、アゾビスイソブチルニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどが挙げられる。
【0432】
このようなラジカル開始剤としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシドが好ましく用いられる。
【0433】
これらのラジカル開始剤は、未変性重合体100重量部に対して、通常は0.001〜1重量部、好ましくは0.003〜0.5重量部、さらに好ましくは0.05〜0.3重量部の量で用いられる。
上記のようなラジカル開始剤を用いたグラフト反応、あるいは、ラジカル開始剤を使用しないで行うグラフト反応における反応温度は、通常60〜350℃、好ましくは150〜300℃の範囲に設定される。
【0434】
このようにして得られるグラフト変性重合体(F6)中の極性基を有するビニル化合物のグラフト量は、グラフト変性重合体の重量を100重量%とした場合に、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。第六の発明においては、上記のようなグラフト変性重合体(F6)を用いることで、特に、無機系充填剤と、プロピレン系重合体、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体およびエラストマーとの相互作用が強化され、引張強度と耐傷付き性とのバランスに優れた成形体が得られる。
【0435】
〈プロピレン系樹脂組成物(X6)および成形体〉
第六の発明のプロピレン系樹脂組成物(X6)は、プロピレン系重合体(A6)を0〜80重量%、プロピレン系重合体(B6)を5〜85重量%、エラストマー(C6)を0〜40重量%、および無機系充填剤(D6)15〜80重量%を含む(ここで、(A6)、(B6)、(C6)および(D6)成分の合計量は100重量%である。)。
【0436】
プロピレン系重合体(B6)として、プロピレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-1)を用いる場合には、プロピレン系樹脂組成物(X6)は、プロピレン系重合体(A6)を0〜80重量%、好ましくは0〜70重量%、より好ましくは0〜60重量%、さらに好ましくは0〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%、プロピレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-1)を5〜85重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは15〜60重量%、特に好ましくは25〜55重量%、エラストマー(C6)を0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%、および、無機系充填剤(D6)を15〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは30〜60重量%、特に好ましくは35〜60重量%含むことが望ましい(ここで、(A6)、(B6)、(C6)および(D6)成分の合計量は100重量%である。)。
【0437】
また、プロピレン系重合体(B6)として、プロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-2)を用いる場合には、プロピレン系樹脂組成物(X6)は、プロピレン系重合体(A6)を0〜80重量%、好ましくは0〜70重量%、より好ましくは0〜60重量%、さらに好ましくは0〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体(B6-2)を5〜85重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは15〜50重量%、特に好ましくは20〜50重量%、エラストマー(C6)を0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%、および、無機系充填剤(D6)を15〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは30〜60重量%、特に好ましくは35〜60重量%含むことが望ましい(ここで、(A6)、(B6)、(C6)および(D6)成分の合計量は100重量%である。)。
【0438】
第六の発明に用いられるオイル(E6)の配合量は、(A6)、(B6)、(C6)および(D6)成分の合計量100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜8重量部である。オイル(E6)の配合量がこの範囲にあると、低温特性改善効果が顕著であり、成形品の表面にオイルが滲み出る可能性も少ないため好ましい。
【0439】
さらに、グラフト変性重合体(F6)を用いる場合であって、プロピレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-1)を用いる場合には、プロピレン系樹脂組成物(X6)は、プロピレン系重合体(A6)を0〜80重量%、好ましくは0〜70重量%、より好ましくは0〜60重量%、さらに好ましくは0〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%、プロピレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-1)を5〜85重量%、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは5〜65重量%、さらに好ましくは5〜55重量%、特に好ましくは5〜45重量%、エラストマー(C6)を0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜25重量%、さらに好ましくは0〜20重量%、特に好ましくは0〜15重量%、および、無機系充填剤(D6)を15〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは30〜60重量%、特に好ましくは35〜60重量%含むことが望ましい(ここで、(A6)、(B6)、(C6)および(D6)成分の合計量は100重量%である。)。また、この場合に、グラフト変性重合体(F6)の配合量は、(A6)、(B6)、(C6)および(D6)成分の合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜8重量部である。グラフト変性重合体(F6)の配合量がこの範囲にあると、耐傷付き性改善効果が顕著であり、組成物の流動性に優れるため好ましい。
【0440】
また、グラフト変性重合体(F6)を用いる場合であって、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(B6)としてプロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-2)を用いる場合には、プロピレン系樹脂組成物(X6)は、プロピレン系重合体(A6)を0〜80重量%、好ましくは0〜70重量%、より好ましくは0〜60重量%、さらに好ましくは0〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%、プロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィンランダム共重合体(B6-2)を5〜85重量%、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは5〜65重量%、さらに好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは5〜40重量%、エラストマー(C6)を0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜25重量%、さらに好ましくは0〜20重量%、特に好ましくは0〜15重量%、および、無機系充填剤(D6)を15〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは30〜60重量%、特に好ましくは35〜60重量%含むことが望ましい(ここで、(A6)、(B6)、(C6)および(D6)成分の合計量は100重量%である。)。また、この場合に、グラフト変性重合体(F6)の配合量は、(A6)、(B6)、(C6)および(D6)成分の合計量100重量部に対して、通常0.1〜30重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.1〜8重量部である。グラフト変性重合体(F6)の配合量がこの範囲にあると、耐傷付き性改善効果が顕著であり、組成物の流動性に優れるため好ましい。
【0441】
また、プロピレン系樹脂組成物(X6)には、第六の発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、他の合成樹脂、他のゴム、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、結晶核剤、顔料、塩酸吸収剤、銅害防止剤等の添加物などを含んでいてもよい。このような他の合成樹脂、他のゴム、添加物などの添加量は、第六の発明の目的を損なわない範囲であれば特に限定されないが、例えば、プロピレン系組成物(X6)全体において、(A6)、(B6)、(C6)および(D6)成分の合計が60〜100重量%、好ましくは80重量%〜100重量%となるように含まれている態様が好ましい。残部は、上記の他の合成樹脂、他のゴム、添加物、オイル(E6)、グラフト変性重合体(F6)などである。
【0442】
<プロピレン系樹脂組成物(X6)の製造方法>
第六の発明のプロピレン系樹脂組成物(X6)は従来公知の方法を用いて、製造することができる。例えば、上記したような各成分を溶融混練することで製造することができる。
【0443】
また、プロピレン系樹脂組成物(X6)にグラフト変性重合体(F6)が含まれる場合、プロピレン系重合体(B6)と、グラフト変性重合体(F6)とを溶融混練してプロピレン系重合体組成物(G6)を製造し、該プロピレン系重合体組成物(G6)と、無機系充填剤(D6)と、必要に応じて用いられるプロピレン系重合体(A6)と、必要に応じて用いられる、エチレン系エラストマー(C6−1)およびスチレン系エラストマー(C6−2)から選ばれる1種以上のエラストマー(C6)とを含む成分を溶融混練することが、他の物性を維持したまま、さらに耐傷つき性を向上させることができるため好ましい。
【0444】
なお(B6)または(F6)の一部は、予め溶融混練されることなく、(A6)成分などと同様にプロピレン系重合体組成物(G6)(溶融混練物)とは別に供給されてもよいが、(B6)および(F6)のすべてが、予めプロピレン系重合体組成物(G6)(溶融混練物)となる工程を経た後、供給されることが最も効果が高い。
【0445】
<プロピレン系重合体組成物(G'6)>
第六の発明のプロピレン系重合体組成物(G'6)は、プロピレン系重合体(B6)とグラフト変性重合体(F6)とからなる。(B6)は99〜14重量部、(F6)は1〜86重量部((B6)と(F6)との合計を100重量部とする)であり、(B6)が99〜50重量部、(F6)が1〜50重量部であることが特に好ましい。プロピレン系重合体組成物(G'6)を、プロピレン系樹脂組成物(X6)の製造に用いる場合、(B6)および(F6)の量比は、該プロピレン系樹脂組成物(X6)における(B6)および(F6)の存在比に応じて変えることができる。プロピレンプロピレン系重合体組成物(G'6)は、例えば(B6)および(F6)を溶融混練することにより製造することができる。
【0446】
〈成形体〉
第六の発明の成形体は、上記のようなプロピレン系樹脂組成物(X6)からなる。プロピレン系樹脂組成物(X6)を用いて、従来公知の溶融成形法によって、種々の形状の成形体が得られる。従来公知の溶融成形法としては、例えば、押出成形、回転成形、カレンダー成形、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形、粉末成形、ブロー成形、真空成形などが挙げられる。上記成形体は、他の材料からなる成形体との複合体、例えば、積層体などであってもよい。
【0447】
上記成形体は、例えば、電線の絶縁体、電線シースなどの電線被覆の用途に好適に使用できる。また、この電線の絶縁体、電線シースなどの被覆層は、従来公知の方法、例えば、押出成形などの方法により電線の周囲に形成される。
【0448】
第六の発明の電線は、上記のようなプロピレン系樹脂組成物(X6)を用いてなる絶縁体、および/または、上記のようなプロピレン系樹脂組成物(X6)を用いてなるシースを有する。特に、上記電線は、自動車用電線(自動車電線)および機器用電線(機器電線)であることが好ましい。
また、プロピレン系樹脂組成物(X6)は、建材などにも好適に用いられる。
【0449】
7.第七の発明
以下、第七の発明について詳細に説明する。第七の発明の発泡体用材料(X7)は、プロピレン系重合体(B7)を含むことを特徴とする。
【0450】
〈プロピレン系重合体(A7)〉
第七の発明に必要に応じて用いられるプロピレン系重合体(A7)としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと、少なくとも1種のプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとの共重合体を挙げることができる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとしては、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
【0451】
これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
これらのα-オレフィンから導かれる構成単位は、ポリプロピレン中に35モル%以下、好ましくは30モル%以下の割合で含んでいてもよい。ここで、プロピレン由来の構成単位とプロピレン以外のα-オレフィン由来の構成単位との合計は、100モル%である。
【0452】
プロピレン系重合体(A7)は、ASTM D 1238 に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分の範囲にあることが望ましい。
プロピレン系重合体(A7)の示差走査熱量計で観測される融点は100℃以上、好ましくは100〜160℃、より好ましくは110〜150℃である。
【0453】
プロピレン系重合体(A7)はアイソタクチック構造、シンジオタクチック構造のどちらも用いることができるがアイソタクチック構造の方が耐熱性などの点で好ましい。
また必要に応じて複数のプロピレン系重合体(A7)を併用することができ、例えば融点や剛性の異なる2種類以上の成分を用いることもできる。
【0454】
またプロピレン系重合体(A7)としては、耐熱性に優れるホモポリプロピレン(通常プロピレン以外の共重合成分が3mol%以下である公知のもの)、耐熱性と柔軟性のバランスに優れるブロックポリプロピレン(通常3〜30wt%のノルマルデカン溶出ゴム成分を有する公知のもの)、さらには、柔軟性と透明性のバランスに優れるランダムポリプロピレン(通常示差走査熱量計DSCにより測定される融解ピークが100℃以上、好ましくは110℃〜150℃の範囲にある公知のもの)が、目的の物性を得るために選択してまたは併用して用いることができる。
【0455】
このようなプロピレン系重合体(A7)は、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様の方法で製造することができる。
第七の発明の発泡体用材料(X7)は、(A7)成分を含んでいると、特に耐傷付性および圧縮永久歪に優れている。
【0456】
〈プロピレン系重合体(B7)〉
第七の発明に用いられるプロピレン系重合体(B7)としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンの少なくとも1種との共重合体を挙げることができる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとしては、プロピレン系重合体(A7)と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
【0457】
これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
プロピレン系重合体(B7)は、プロピレン由来の構成単位を、通常40〜100モル%、好ましくは40〜99モル%、より好ましくは40〜92モル%、さらに好ましくは50〜90モル%含み、コモノマーとして用いられる炭素数2〜20のα-オレフィン(ただしプロピレンを除く。)由来の構成単位を、通常0〜60モル%、好ましくは1〜60モル%、より好ましくは8〜60モル%、さらに好ましくは10〜50モル%含む(ここで、プロピレンと炭素数2〜20のα-オレフィンとの合計は100モル%である)。
【0458】
プロピレン系重合体(B7)は、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が120℃未満であるか、または融点が観測されず、好ましくは、融点が100℃以下であるか、または融点が観測されない。ここで、融点が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。測定条件は第7の発明の実施例記載のとおりである。
【0459】
プロピレン系重合体(B7)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にある。
プロピレン系重合体(B7)のトリアドタクティシティ(mm分率)は、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)と同様の特性を有することが好ましく、これにより得られる効果も同じである。
【0460】
すなわち、プロピレン系重合体(B7)は、13C−NMRで測定されるトリアドタクティシティ(mm分率)が好ましくは85%以上、より好ましくは85〜97.5%以下、さらに好ましくは87〜97%、特に好ましくは90〜97%の範囲にある。トリアドタクティシティ(mm分率)がこの範囲にあると、特に柔軟性と機械強度のバランスに優れるため、第七の発明に好適である。mm分率は、国際公開2004−087775号パンフレットの21頁7行目〜26頁6行目までに記載された方法を用いて測定できる。
【0461】
プロピレン系重合体(B7)の製造方法としては特に制限されないが、第五の発明に用いられるプロピレン系重合体(B5)と同様の製造方法が挙げられる。
プロピレン系重合体(B7)は、付加的に独立して以下の特性を有するものが好ましい。
プロピレン系重合体(B7)のショアーA硬度は、好ましくは30〜80、より好ましくは35〜70である。
【0462】
さらに、プロピレン系重合体(B7)は、JIS K6301に準拠して、JIS3号ダンベルを用い、スパン間:30mm、引っ張り速度:30mm/minで23℃にて測定した、100%歪での応力(M100)が通常4MPa以下、好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下である。プロピレン系重合体がこのような範囲にあると柔軟性、ゴム弾性に優れる。
【0463】
プロピレン系重合体(B7)は、結晶化度、ガラス転移温度Tg、分子量分布(Mw/Mn)については、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)と同様の特性を有することが好ましく、これらの特性によって得られる効果も同じである。
【0464】
例えば、プロピレン系重合体(B7)のGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は4.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。
【0465】
プロピレン系重合体(B7)は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において融点(Tm、℃)が存在する場合には、通常、融解熱量ΔHが30J/g以下であり、かつC3含量(mol%)と融解熱量ΔH(J/g)との関係においても、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)の場合と同様の関係式が成り立つ。
【0466】
軟質プロピレン系重合体(B7)の好ましい具体例として、以下のプロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィン共重合体(B7−1)を挙げることができる。このようなプロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィン共重合体(B7−1)を用いることで、柔軟性と圧縮永久歪・機械強度が良好な架橋発泡体となる。
【0467】
プロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα-オレフィン共重合体(B7−1)は、プロピレン由来の構成単位を45〜92モル%、好ましくは56〜90モル%、より好ましくは61〜86モル%、エチレン由来の構成単位を5〜25モル%、好ましくは5〜14モル%、より好ましくは8〜14モル%、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位を3〜30モル%、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは6〜25モル%の量含んでいる。ここでプロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。炭素数4〜20のα-オレフィンに関しては、1-ブテンが特に好ましい。
【0468】
このような量でプロピレン、エチレンおよび炭素数4〜20のα-オレフィン構成単位を含有するプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B7−1)は、プロピレン系重合体(A7)を含む場合には、(A7)との相溶性が良好であるので、その結果、特に架橋発泡体は、良好な圧縮永久歪、耐傷付性を発揮する。
【0469】
また、プロピレン、エチレンおよび炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位が上記好ましい範囲にあると、柔軟性と圧縮永久歪、耐傷つき性のバランスがより良好な発泡体を得ることができる材料が得られる。また、第七の発明の発泡体材料(X7)に(B7)成分が含まれていると、発泡体に低反発性を付与することができる。
【0470】
〈エチレン・α- オレフィン共重合体(C7)〉
第七の発明に必要に応じて用いられるエチレン・α- オレフィン共重合体(C7)は、エチレンと炭素原子数3〜20のα-オレフィンとからなる、非晶性または低結晶性のランダムまたはブロック共重合体であり、密度(ASTM D 1505)が通常0.857g/cm3以上0.910g/cm3以下、好ましくは0.860〜0.905g/cm3、さらに好ましくは0.880〜0.905g/cm3であり、また、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃、荷重2.16Kg)が通常0.1〜40g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分である。
【0471】
上記炭素原子数3〜20のα-オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。これらのうちでも、炭素原子数3〜10のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましい。これらのα-オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0472】
また、エチレン・α- オレフィン共重合体(C7)は、エチレンから導かれる単位を75〜95モル%の量で、炭素原子数3〜20のα-オレフィンから導かれる単位を5〜25モル%の量で含有していることが望ましい。ここで、エチレンおよびα-オレフィンの合計量は100モル%である。
また、エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)は、これらの単位のほかに、第七の発明の目的を損なわない範囲で、他の重合性モノマーから導かれる単位を含有していてもよい。
【0473】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)としては、具体的には、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体などが挙げられる。これらの内でも、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体などが好ましく用いられ、特にエチレン・1-ブテン共重合体が好ましく用いられる。これらの共重合体は、ランダムまたはブロック共重合体であるが、特にランダム共重合体であることが好ましい。
【0474】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)は、X線回折法により測定される結晶化度が通常40%以下、好ましくは10〜30%である。
また、このエチレン・α-オレフィン共重合体(C7)は、ゲルパーミーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)の値が1.5〜3.0、好ましくは1.7〜2.5の範囲にあることが望ましい。分子量分布(Mw/Mn)の値が上記範囲にあるエチレン・α-オレフィン共重合体(C7)を用いると、圧縮永久歪み性および賦形性に優れる発泡体を調製できる発泡体用材料(X7)が得られる。上記のようなエチレン・α-オレフィン共重合体(C7)は、通常エラストマーとしての性質を示す。
【0475】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)は、ASTM D 1238に準拠して、190℃、荷重10kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR10)と荷重2.16kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR2)との比(MFR10/MFR2)が、下式
MFR10/MFR2≧6.0
好ましくは
7≦MFR10/MFR2≦15
の関係を満たし、かつ、分子量分布(Mw/Mn)の値とMFR10/MFR2とが、下式
Mw/Mn+5.0<MFR10/MFR2
の関係を満たしていることが望ましい。これにより、高発泡倍率すなわち低比重で、かつ、高弾性で圧縮永久歪み性および賦形性に優れる発泡体(非架橋発泡体、架橋発泡体)を調製できる発泡体用材料(X7)が得られる。
【0476】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)は、13C-NMRスペクトルにおけるTααに対するTαβの強度比(Tαβ/Tαα)が0.5以下、好ましくは0.4以下であることが望ましい。
【0477】
ここで、TααおよびTαβは、炭素数3以上のα-オレフィンから誘導される構成単位中のCH2のピーク強度であり、下記に示すように第3級炭素に対する位置が異なる2種類のCH2を意味している。
【0478】
【化1】
【0479】
Tαβ/Tααは、下記のようにして求められる。エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)の13C-NMRスペクトルを、例えば、NMR測定装置(JEOL-GX270、日本電子(株)製)を用いて測定する。測定は、試料濃度が5重量%になるように調整されたヘキサクロロブタジエン/d6-ベンゼン=2/1(体積比)の混合溶液を用いて、67.8MHz、25℃、d6-ベンゼン(128ppm)基準で行う。測定された13C-NMRスペクトルを、リンデマンアダムスの提案(AnalysisChemistry43, p1245(1971))、J.C.Randall (Review Macromolecular Chemistry Physics,C29, 201(1989))に従って解析してTαβ/Tααを求める。
【0480】
また、エチレン・α- オレフィン共重合体(C7)は、13C-NMRスペクトルおよび下記一般式(7−1)から求められるB値が0.9〜1.5、好ましくは0.95〜1.2であることが望ましい。
【0481】
B値=[POE]/(2・[PE][PO]) …(7−1)
(式中、[PE]は共重合体中のエチレンから誘導される構成単位の含有モル分率であり、[PO]は共重合体中のα-オレフィンから誘導される構成単位の含有モル分率であり、[POE]は共重合体中の全ダイアド(dyad)連鎖に対するエチレン・α-オレフィン連鎖数の割合である。)
【0482】
このB値は、エチレン・α-オレフィン共重合体中のエチレンと炭素数3〜20のα-オレフィンとの分布状態を表す指標であり、J.C.Randall(Macromolecules, 15, 353(1982))、J.Ray (Macromolecules, 10, 773(1977))らの報告に基づいて求められる。
【0483】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)のB値は、通常10mmφの試料管中で約200mgのエチレン・α-オレフィン共重合体を1mLのヘキサクロロブタジエンに均一に溶解させた試料の13C-NMRスペクトルを、測定温度120℃、測定周波数25.05MHz、スペクトル幅1500Hz、パルス繰返し時間4.2sec.、パルス幅6μsec.の条件下で測定して決定される。
【0484】
B値が大きいほど、エチレンまたはα-オレフィン共重合体のブロック的連鎖が短くなり、エチレンおよびα-オレフィンの分布が一様であり、共重合ゴムの組成分布が狭いことを示している。なお、B値が1.0よりも小さくなるほどエチレン・α-オレフィン共重合体の組成分布は広くなり、取扱性が悪化するなどの悪い点がある。
【0485】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)は、バナジウム系触媒、チタン系触媒またはメタロセン系触媒などを用いる従来公知の方法により製造できる。特に、特開昭62-121709号公報などに記載された溶液重合法が好ましい。
【0486】
エチレン・α- オレフィン共重合体(C7)を用いる場合には、プロピレン系重合体(B7)および必要に応じて用いられるプロピレン系重合体(A7)の合計100重量部に対して、1〜1900重量部、好ましくは5〜1000重量部、より好ましくは5〜500重量部の割合で用いられる。このような量で(C7)成分を含有していると、特に低比重で、圧縮永久歪の小さい発泡体が得られる。この傾向は特に架橋発泡体の製造に使用した場合に顕著である。
【0487】
〈エチレン・極性モノマー共重合体(D7)〉
第七の発明に必要に応じて使用されるエチレン・極性モノマー共重合体(D7)の極性モノマーとしては、不飽和カルボン酸、その塩、そのエステル、そのアミド、ビニルエステル、一酸化炭素などを例示することができる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸;これら不飽和カルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価金属の塩;これら不飽和カルボン酸のマグネシウム、カルシウム、亜鉛などの多価金属の塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;一酸化炭素;二酸化硫黄などの一種または二種以上を例示することができる。
【0488】
エチレン・極性モノマー共重合体(D7)として、より具体的には、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体;該エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部または全部が上記金属で中和されたアイオノマー;エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・アクリル酸nブチル共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体;エチレン・アクリル酸イソブチル・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸nブチル・メタクリル酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸エステル・不飽和カルボン酸共重合体;該エチレン・不飽和カルボン酸エステル・不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部または全部が上記金属で中和されたアイオノマー;エチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体などを例示することができる。
【0489】
これらの中では、特に、エチレンと、不飽和カルボン酸、その塩、そのエステルおよび酢酸ビニルから選ばれる極性モノマーとの共重合体が好ましく、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体のアイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体がより好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体がさらに好ましい。
【0490】
エチレン・極性モノマー共重合体(D7)としては、極性モノマーの種類によっても異なるが、極性モノマー含量が1〜50重量%、好ましくは5〜45重量%である。このようなエチレン・極性モノマー共重合体(D7)としては、成形加工性、機械的強度などを考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.05〜500g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分であることが望ましい。
【0491】
エチレンと、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、ビニルエステルなどとの共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合により得ることができる。また、エチレンと不飽和カルボン酸の金属塩との共重合体(アイオノマー)は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体と相当する金属化合物とを反応させることによって得られる。
【0492】
エチレン・極性モノマー共重合体(D7)がエチレン・酢酸ビニル共重合体の場合、エチレン・酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量は、10〜30重量%、好ましくは15〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%である。
【0493】
また、このエチレン・酢酸ビニル共重合体(D7)は、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238、190℃、荷重2.16kg)が0.1〜50g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、より好ましくは0.5〜5g/10分である。
【0494】
エチレン・極性モノマー共重合体(D7)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)を用いる場合には、プロピレン系重合体(B7)および必要に応じて用いられるプロピレン系重合体(A7)の合計100重量部に対して、1〜1900重量部、好ましくは5〜1000重量部、より好ましくは5〜500重量部の割合で用いられる。
【0495】
エチレン・極性モノマー共重合体(D7)がエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体である場合、上記の割合で用いると、ポリウレタン、ゴム、皮革などからなる他の層と接着性に優れる架橋発泡体を提供できるエラストマー組成物が得られる。また、エチレン・極性モノマー共重合体(D7)を上記の割合で用いると、得られた発泡体層はポリウレタン、ゴム、皮革などからなる他の層と接着性に優れ、積層体としても好ましい。
【0496】
〈発泡体用材料(X7)〉
第七の発明の発泡体用材料(X7)は、プロピレン系重合体(B7)を含んでいればよいが、必要に応じてプロピレン系重合体(A7)を含有していてもよい。発泡体用材料(X7)はプロピレン系重合体(B7)が30〜100重量部と、示差走査熱量計で観測される融点が100℃以上のプロピレン系重合体(A7)0〜70重量部(ここで、(A7)および(B7)の合計は100重量部である。)とを含む組成物であることが好ましい。より好ましくはプロピレン系重合体(B7)30〜99重量部、およびプロピレン系共重合体1〜70重量部(A7)である。さらに好ましくはプロピレン系重合体(B7)が50〜95重量部、およびプロピレン系重合体(A7)が5〜50重量部、特に好ましくはプロピレン系重合体(B7)が70〜90重量部、およびプロピレン系重合体(A7)が10〜30重量部である。
【0497】
また第七の発明の発泡体用材料(X7)は、プロピレン系重合体(B7)、および必要に応じて用いられるプロピレン系重合体(A7)の合計100重量部に対し、エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)を1〜1900重量部、および/またはエチレン・極性モノマー共重合体(D7)を1〜1900重量部含む組成物であることが好ましい。上記組成物としては例えば、
(i)プロピレン系重合体(B7)、および必要に応じて用いられるプロピレン系重合体(A7)の合計100重量部に対し、エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)を1〜1900重量部含む組成物、
(ii)プロピレン系重合体(B7)、および必要に応じて用いられるプロピレン系重合体(A7)の合計100重量部に対し、エチレン・極性モノマー共重合体(D7)を1〜1900重量部含む組成物、
(iii)プロピレン系重合体(B7)、および必要に応じて用いられるプロピレン系重合体(A7)の合計100重量部に対し、エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)を1〜1900重量部、およびエチレン・極性モノマー共重合体(D7)を1〜1900重量部含む組成物などが挙げられる。
【0498】
より好ましい態様の例としては、上記組成物(i)において、エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)を5〜1000重量部含むもの、上記組成物(iii)において、エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)を5〜1000重量部含むもの、および上記組成物(iii)において、エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)を5〜1000重量部、およびエチレン・極性モノマー共重合体(D7)を5〜1000重量部含むものなどが挙げられる。
【0499】
〈発泡剤(E7)〉
第七の発明に必要に応じて用いられる発泡剤(E7)としては、化学発泡剤、具体的には、アゾジカルボンアミド(ADCA)、1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、ジメチル-2,2'-アゾビスブチレート、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチル-プロピオンアミジン]等のアゾ化合物;N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体;p-トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物;トリヒドラジノトリアジンなどの有機系熱分解型発泡剤、さらには、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の重炭酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩;亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩、水素化合物などの無機系熱分解型発泡剤が挙げられる。中でも、アゾジカルボンアミド(ADCA)、炭酸水素ナトリウムが特に好ましい。
【0500】
また、第七の発明においては、物理発泡剤(発泡時に化学反応を必ずしも伴わない発泡剤)、例えば、メタノール、エタノール、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の各種脂肪族炭化水素類;ジクロルエタン、ジクロルメタン、四塩化炭素等の各種塩化炭化水素類;フロン等の各種フッ化塩化炭化水素類などの有機系物理発泡剤、さらには、空気、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水などの無機系物理発泡剤も、発泡剤(E7)として用いることができる。これらの中で、蒸気にする必要がなく、安価で、環境汚染、発火の可能性が極めて少ない二酸化炭素、窒素、アルゴンが最も優れている。
【0501】
上記物理発泡剤は、発泡剤の分解残さがないため、組成物の架橋発泡時における金型汚れを防止することができる。しかも、物理発泡剤は、粉状ではないので、混練性に優れている。また、この物理発泡剤を用いると、得られる架橋発泡体の異臭(ADCA分解時に生成するアンモニア臭など)を防止することができる。
また、第七の発明においては、臭気、金型汚れなどの悪影響を生じない範囲で、上記のような化学発泡剤を併用することができる。
【0502】
物理発泡剤の貯蔵方法としては、小規模な生産であれば、二酸化炭素、窒素などをボンベに入った状態で使用し、射出成形機および押出成形機などに減圧弁を通して供給してもよく、また、ポンプなどにより昇圧し、射出成形機および押出成形機などに供給してもよい。
また、大規模に発泡製品を製造する設備であれば、液化二酸化炭素、液化窒素などの貯蔵タンクを設置し、熱交換機を通し、気化して、配管により、減圧弁により射出成形機および押出成形機などに供給する。
【0503】
また、液状の物理発泡剤の場合、貯蔵圧力としては、0.13〜100MPaの範囲が好ましい。圧力が低すぎると、減圧して射出成形機および押出成形機などに注入できない場合がある。また、圧力が高すぎると、貯蔵設備の耐圧強度を高くする必要から、設備が大型化、複雑化する場合がある。なお、ここで定義する貯蔵圧力とは、気化して減圧弁に供給する圧力をいう。
【0504】
発泡剤(E7)として化学発泡剤を用いる場合、化学発泡剤は、プロピレン系重合体(A7)、プロピレン系重合体(B7)、エチレン・α- オレフィン共重合体(C7)およびエチレン・極性モノマー共重合体(D7)の合計量100重量部に対して、通常1〜40重量部、好ましくは2〜20重量部の割合で用いられる。ただし、(B7)以外の成分は任意成分であるため、(A7)、(C7)および(D7)成分のうち1つ以上が0重量部となることがあり得る。ただし、化学発泡剤の使用量は、使用する発泡剤の種類・グレードにより発生ガス量が異なるため、目的の発泡倍率により適宜増減され得る。
【0505】
また、発泡剤(E7)として物理発泡剤を用いる場合、物理発泡剤の添加量は、所望の発泡倍率に応じて適宜決定される。
第七の発明においては、必要に応じて、発泡剤(E7)とともに発泡助剤を使用してもよい。発泡助剤は、発泡剤(E7)の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの作用をする。このような発泡助剤としては、酸化亜鉛(ZnO)、ステアリン酸亜鉛、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、しゅう酸等の有機酸、尿素またはその誘導体などが挙げられる。
【0506】
〈有機ペルオキシド(F7)〉
第七の発明に必要に応じて架橋剤として用いられる有機ペルオキシド(F7)としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ-t- ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。
【0507】
第七の発明においては、有機ペルオキシド(F7)は、プロピレン系重合体(A7)、プロピレン系重合体(B7)、エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)およびエチレン・極性モノマー共重合体(D7)の合計量100重量部に対して、通常0.1〜1.5重量部、好ましくは0.2〜1.0重量部の割合で用いられる。ただし、(B7)以外の成分は任意成分であるため、(A7)、(C7)および(D7)成分のうち1つ以上が0重量部となることがあり得る。有機ペルオキシド(F7)を上記の割合で用いると、適度な架橋構造を有する架橋発泡体を得ることができる。また、有機ペルオキシド(F7)を架橋助剤(G7)とともに、上記のような割合で用いると、より適度な架橋構造を有する架橋発泡体を得ることができる。
【0508】
〈架橋助剤(G7)〉
第七の発明に必要に応じて用いられる架橋助剤(G7)としては、具体的には、硫黄、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N-4-ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-N,N'-m-フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤;あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。また、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーなどが挙げられる。中でも、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0509】
第七の発明においては、架橋助剤(G7)は、架橋助剤(G7)と有機ペルオキシド(F7)との重量比[(F7)/(G7)]が1/30〜20/1、好ましくは1/20〜10/1となる量で用いることが望ましい。
【0510】
〈発泡体用材料(X7)の調製〉
第七の発明に係る発泡体用材料(X7)は、未架橋かつ未発泡状態の材料であり、溶融状態であってもよいし、また、冷却固化したペレットまたはシートであってもよい。
【0511】
上記発泡体用材料(X7)のペレットは、例えば、以下のように調整できる。まず、プロピレンと少なくとも一種のプロピレンを除く炭素数2〜20のα-オレフィンとの共重合体であって、かつ示差走査熱量計で観測される融点が100℃未満または融点が観測されないプロピレン系重合体(B7)、示差走査熱量計で観測される融点が100℃以上のプロピレン系重合体(A7)、エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)、エチレン・極性モノマー共重合体(D7)、発泡剤(E7)、有機ペルオキシド(F7)、必要に応じて架橋助剤(G7)、および発泡助剤から選ばれる必要な成分を、上述した割合でヘンシェルミキサーなどで混合しする。次いで、バンバリーミキサー、ロール、押出機などの混練機で、発泡剤(E7)および/または有機ペルオキシド(F7)が分解しない温度にて溶融可塑化し、均一に混合分散させて、造粒機により調製される。
【0512】
この発泡体用材料(X7)中に、上記のような成分のほかに、必要に応じて、フィラー、耐熱安定剤、耐候安定剤、難燃剤、塩酸吸収剤、顔料などの各種添加剤を、第七の発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0513】
また、上記発泡体用材料(X7)のシート(未架橋かつ未発泡状態の発泡性シート)は、例えば、上記のようにして得られた組成物のペレットを押出機またはカレンダー成形機を用いて調製できる。また、上記組成物の各成分をブラベンダーなどで混練した後、カレンダーロールでシート状に成形する方法、プレス成形機でシート化する方法、または、押出機を用いて混練した後Tダイまたは環状ダイを通してシート化する方法などにより調製することができる。
【0514】
〈発泡体〉
第七の発明に係る発泡体は、上記のような発泡体用材料(X7)を発泡または架橋発泡することにより得られる。通常は130〜200℃、30〜300kgf/cm2、10〜90分の条件下で発泡または架橋発泡することにより得られる。ただし、(架橋)発泡時間については、金型の厚さに依存するため、この範囲を超えて適宜増減され得る。
【0515】
また、第七の発明に係る発泡体または架橋発泡体は、上記条件下で発泡または架橋発泡された成形体を、130〜200℃、30〜300kgf/cm2、5〜60分、圧縮比1.1〜3、好ましくは1.3〜2の条件下で、圧縮成形して得られる発泡体であってもよい。
これらの発泡体または架橋発泡体は、比重(JIS K7222)が通常0.6以下、好ましくは0.03〜0.4、より好ましくは0.03〜0.25、さらに好ましくは0.05〜0.25であり、表面硬度(アスカーC硬度)が通常20〜80、好ましくは30〜65の範囲にある。架橋発泡体としては、ゲル分率が70%以上であることが望ましく、通常は70〜95%である。
【0516】
このような物性を有する、第七の発明に係る架橋発泡体は、圧縮永久歪みが小さく、引裂強度が高く、制振性および耐傷付性に優れている。
なお、上記ゲル分率(ゲル含量;キシレン不溶解分)は、次のようにして測定される。架橋発泡体の試料を秤量して細かく裁断し、次いで得られた細片を、密閉容器中にp−キシレンと共に入れ、常圧下で3時間p-キシレンを還流させる。具体的には1.5gのサンプル(検体)を100ccのp−キシレン(140℃)に溶解させ、これを3時間還流させる。その後、325メッシュで未溶解物を分離する。
【0517】
次に、この試料(未溶解物)を絶乾させる。この乾燥残渣の重量からポリマー成分以外のキシレン不溶性成分(たとえばフィラー、充填剤、顔料等)の重量を減じた値を、「補正された最終重量(Y)」とする。
一方、試料の重量からポリマー成分以外のキシレン可溶性成分(例えば、安定剤など)の重量およびポリマー成分以外のキシレン不溶性成分(例えば、フィラー、充填剤、顔料など)の重量を減じた値を、「補正された初期重量(X)」とする。
【0518】
ここに、ゲル含量(キシレン不溶解分)は、次式により求められる。
ゲル含量[重量%]=([補正された最終重量(Y)]÷[補正された初期重量(X)])×100
【0519】
〈発泡体の調製〉
第七の発明に係る発泡体(非架橋または架橋発泡体)は、例えば以下のような方法により調製することができる。
【0520】
第七の発明に係る発泡体用材料(X7)のシートは、例えば、発泡体用材料(X7)の調製の項で述べた混合物から、カレンダー成形機、プレス成形機、Tダイ押出機を用いて得ることができる。このシート成形時においては、発泡剤(E7)および有機ペルオキシド(F7)の分解温度以下でシート成形する必要があり、具体的には、発泡体用材料(X7)の溶融状態での温度が100〜130℃となる条件に設定してシート成形することが好ましい。
【0521】
上記方法によってシート化された発泡体用材料(X7)は、130〜200℃に保持された金型に、金型の容積に対して1.0〜1.2の範囲に裁断して、金型内に挿入する。金型の型締め圧力30〜300kgf/cm2、保持時間10〜90分の条件下で、一次発泡体(非架橋または架橋発泡体)を作製する。ただし、保持時間については、金型の厚さに依存するため、この範囲を超えて適宜増減され得る。
【0522】
上記発泡体用金型は、その形状は特に制限はされないが、通常シートが得られるような形状を有している金型が用いられる。この金型は、溶融樹脂および発泡剤分解時に発生するガスが抜けないように、完全に密閉された構造とする必要がある。また、型枠としては、内面にテーパーが付いている型枠が樹脂の離型性の面から好ましい。
上記方法により得られた一次発泡体を、圧縮成形により所定の形状を付与する(二次発泡体の製造)。このときの圧縮成形条件は、金型温度が130〜200℃、型締め圧力が30〜300kgf/cm2、圧縮時間が5〜60分、圧縮比が1.1〜3.0の範囲である。
【0523】
また、電離性放射線照射による架橋方法により架橋発泡体を得るには、まず、プロピレンと少なくとも一種のプロピレンを除く炭素数2〜20のα-オレフィンとの共重合体であり、かつ示差走査熱量計で観測される融点が100℃未満または融点が観測されない軟質プロピレン系重合体(B7)、示差走査熱量計で観測される融点が100℃以上のプロピレン系重合体(A7)、エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)、エチレン・極性モノマー共重合体(D7)のうち必要な成分と、発泡剤(E7)として有機系熱分解型発泡剤と、他の添加剤とを、有機系熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度で溶融混練し、得られた混練物を例えばシート状に成形し、発泡性シートを得る。
【0524】
次いで、得られた発泡性シートに電離性放射線を所定量照射して架橋させた後、得られた発泡性の架橋シートを有機系熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させることによって、架橋発泡シートを得ることができる。
電離性放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線などが用いられる。このうちコバルト-60のγ線、電子線が好ましく用いられる。
【0525】
発泡体の製品形状としては、例えば、シート状、厚物ボード状、ネット状、型物などが挙げられる。
上記のようにして得られた架橋発泡体(一次発泡体)から、上述した二次発泡体の製造方法と同様にして、上記物性を有する二次架橋発泡体を調製することができる。
【0526】
〈積層体〉
第七の発明に係る積層体は、上記のような発泡体(非架橋または架橋発泡体)からなる層と、ポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革および人工皮革からなる群から選ばれる少なくとも一種の素材からなる層とを有する。
【0527】
上記のポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革および人工皮革は、特に制限はなく、従来公知のポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革、人工皮革を用いることができる。このような積層体は、特に履き物および履き物用部品の用途に好適である。
【0528】
〈履き物および履き物用部品〉
第七の発明に係る履き物および履き物用部品(履き物部品)は、上記のような発泡体(非架橋または架橋発泡体)または積層体からなる。上記履き物用部品としては、例えば、靴底、靴のミッドソール、インナーソール、ソール、サンダルなどが挙げられる。
【0529】
8.第八の発明
以下、第八の発明について詳細に説明する。
〈プロピレン系重合体(A8)〉
第八の発明に用いられるプロピレン系重合体(A8)としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと、少なくとも1種のプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとの共重合体を挙げることができる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンの具体例としては、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
【0530】
これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
これらのα-オレフィンから導かれる構成単位は、ポリプロピレン中に35モル%以下、好ましくは30モル%以下の割合で含まれていてもよい。
プロピレン系共重合体(A8)は、ASTM D 1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0531】
プロピレン系重合体(A8)の示差走査熱量計で観測される融点は100℃以上、好ましくは100〜160℃、より好ましくは110〜150℃である。
プロピレン系重合体(A8)はアイソタクチック構造、シンジオタクチック構造のどちらも用いることができるが、アイソタクチック構造の方が耐熱性などの点で好ましい。
また、必要に応じて複数のプロピレン系重合体(A8)を併用することができ、例えば融点や剛性の異なるの2種類以上の成分を用いることもできる。
【0532】
また、プロピレン系重合体(A8)としては、耐熱性に優れるホモポリプロピレン(通常プロピレン以外の共重合成分が3mol%以下である公知のもの)、耐熱性と柔軟性のバランスに優れるブロックポリプロピレン(通常3〜30wt%のノルマルデカン溶出ゴム成分を有する公知のもの)、さらには、柔軟性と透明性のバランスに優れるランダムポリプロピレン(通常示差走査熱量計DSCにより測定される融解ピークが100℃以上、好ましくは110℃〜150℃の範囲にある公知のもの)が、目的の物性を得るために選択してまたは併用して用いることができる。
【0533】
このようなプロピレン系重合体(A8)は、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様の方法で製造することができる。
【0534】
〈軟質プロピレン系共重合体(B8)〉
第八の発明に用いられる軟質プロピレン系共重合体(B8)は、プロピレンと少なくとも1種のプロピレンを除く炭素数2〜20のα-オレフィンとの共重合体であって、ショアーA硬度が30〜80、好ましくは35〜70であり、かつ示差走査熱量計DSCで観測される融点が100℃未満または融点が観測されない。ここで、融点が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。測定条件は、実施例記載のとおりである。
【0535】
軟質プロピレン系共重合体(B8)において、コモノマーとして用いられるα-オレフィンはエチレンおよび/または炭素数4〜20のα-オレフィンが好ましい。
軟質プロピレン系共重合体(B8)は、プロピレン由来の単位を45〜92モル%、好ましくは56〜90モル%含み、コモノマーとして用いられるα-オレフィン由来の単位を8〜55モル%、好ましくは10〜44モル%含むことが好ましい。
【0536】
軟質プロピレン系共重合体(B8)は、ASTM D 1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜50g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0537】
軟質プロピレン系共重合体(B8)の製造方法は特に制限されないが、オレフィンをアイソタクチックまたはシンジオタクチック構造で立体規則性重合することのできる公知の触媒、例えば、固体状チタン成分と有機金属化合物を主成分とする触媒、またはメタロセン化合物を触媒の一成分として用いたメタロセン触媒の存在下で、プロピレンを重合して、またはプロピレンと他のα-オレフィンとを共重合して製造できる。好ましくは、後述のように、メタロセン触媒の存在下、プロピレン、エチレンおよび炭素数4〜20のα-オレフィンを共重合させることにより得られる。
【0538】
軟質プロピレン系共重合体(B8)は、付加的に独立して以下の特性を有するものが好ましい。
軟質プロピレン系共重合体(B8)は、トリアドタクティシティ(mm分率)、100%歪での応力、結晶化度、ガラス転移温度Tg、分子量分布(Mw/Mn)については、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)と同様の特性を有することが好ましく、これらの特性によって得られる効果も同様である。
【0539】
例えば、軟質プロピレン系共重合体(B8)は、13C−NMRで測定されるトリアドタクティシティ(mm分率)が好ましくは85%以上、より好ましくは85〜97.5%以下、さらに好ましくは87〜97%、特に好ましくは90〜97%の範囲にある。トリアドタクティシティ(mm分率)がこの範囲にあると、特に柔軟性と機械強度のバランスに優れるため、本発明に好適である。mm分率は、国際公開2004−087775号パンフレットの21頁7行目から26頁6行目までに記載された方法を用いて測定することができる。
【0540】
また、例えば軟質プロピレン系共重合体(B8)のGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は4.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。
【0541】
また、軟質プロピレン系共重合体(B8)は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において融点(Tm、℃)が存在する場合には、通常、融解熱量ΔHが30J/g以下であり、かつC3含量(mol%)と融解熱量ΔH(J/g)との関係においても、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)の場合と同様の関係式が成り立つ。
【0542】
軟質プロピレン系共重合体(B8)の好ましい具体例として、以下のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B8-1)を挙げることができる。このようなプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B8-1)を用いることで、柔軟性、耐熱性、機械強度および透明性が得られるため好適に用いることができる。
【0543】
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B8-1)は、プロピレン由来の構成単位を45〜92モル%、好ましくは56〜90モル%、より好ましくは61〜86モル%、エチレン由来の構成単位を5〜25モル%、好ましくは5〜14モル%、より好ましくは8〜14モル%、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位を3〜30モル%、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは6〜25モル%の量含んでいる。α-オレフィンに関しては、1-ブテンが特に好ましい。
【0544】
プロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位を上記の量で含有するプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B8−1)は、プロピレン系重合体(A8)との相溶性が良好となり、充分な透明性、柔軟性、耐熱性および耐傷付性を発揮する。
また、プロピレン、エチレンおよび炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位が上記の範囲にあると、柔軟性、耐熱性および耐傷つき性のバランスがより良好な材料が得られる。
【0545】
〈カップリング剤(Y8)〉
第八の発明に用いらるカップリング剤(Y8)としては、第八の発明に用いられる樹脂組成物(X8)を含む層と、極性基含有樹脂または金属などの無機化合物を50重量%以上の量で含む他の層との接着性を向上できるものであれば、特に制限なく用いられるが、シラン系、チタネート系、クロム系の各カップリング剤が好ましく用いられ、特にシラン系のカップリング剤(シランカップリング剤)が好適に用いられる。
【0546】
上記シランカップリング剤としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、具体的には、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリプロポキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシーエトキシシラン)、γ-グリシドキシプロピルートリピルトリーメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0547】
〈有機過酸化物(Z8)〉
第八の発明に必要に応じて用いらる有機過酸化物(Z8)としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、具体的には、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-アミル-パーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソノナノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ジ(ブチルパ-オキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパ-オキシ)プチレート、メチルエチルケトンパ-オキサイド、エチル3,3-ジ(t-ブチルパ-オキシ)ブチレート、ジクミルパ-オキサイド、t-ブチルクミルパ-オキサイド、ジ-t-ブチルパ-オキサイド、1,1,3,3-テトララメチルブチルハイドロパ-オキサイド、アセチルアセトンパ-オキサイドなどが挙げられる。
【0548】
さらに、第八の発明では、必要に応じて以下の助剤を使用することも可能である。助剤の例としては、具体的には、硫黄、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N-4-ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-N,N'-m-フェニレンジマレイミド等のペルオキシ助剤;ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)などが好ましい。また、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマーなどが挙げられる。中でも、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0549】
第八の発明においては、上記のような助剤は、助剤と有機化酸化物との重量比[(助剤)/(有機過酸化物)]が1/30〜20/1、好ましくは1/20〜10/1となる量で用いることが望ましい。
【0550】
樹脂組成物(X8)においては、架橋されていてもよいが非架橋が好ましい。ここで、非架橋とは、組成物に含まれる全有機物中の沸騰キシレン不溶分含量が0.1重量%以下であることを意味する。具体的には1.5gのサンプル(検体)を100ccのパラキシレン(140℃)に溶解させ、これを3時間還流した後、325メッシュで未溶解物を分離する。上記未溶解物の乾燥残渣の重量からポリマー成分以外のキシレン不溶性成分(例えば、フィラー、充填剤、顔料など)の重量を減じた値を、「補正された最終重量(Y)」とする。
【0551】
一方、試料の重量からポリマー成分以外のキシレン不溶性成分(例えば、フィラー、充填剤、顔料など)の重量を減じた値を、「補正された初期重量(X)」とする。
ここに、沸騰キシレン不溶分は、次式により求められる。
沸騰キシレン不溶分含量[重量%]=([補正された最終重量(Y)]÷[補正された初期重量(X)])×100
【0552】
〈樹脂組成物(X8)〉
第八の発明に用いられる樹脂組成物(X8)は、プロピレン系重合体(A8)、軟質プロピレン系共重合体(B8)およびカップリング剤(Y8)を含み、その混合割合は、(A8)が0〜90重量%、好ましくは10〜70重量%であり、(B8)が10〜100重量%、好ましくは30〜90重量%(ここで、(A8)および(B8)の合計量は100重量%)である。さらに、(A8)および(B8)からなる組成物((A8)および(B8)の合計量)100重量部に対し、カップリング剤(Y8)を0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部含み、(A8)および(B8)を含む組成物((A8)および(B8)の合計量)100重量部に対して、有機過酸化物(Z8)を0〜5重量部、好ましくは0〜3重量部含むことが望ましい。有機過酸化物(Z8)を含有する場合には、その量は好ましくは(A8)および(B8)を含む組成物((A8)および(B8)の合計量)100重量部に対して、0.001重量部以上、5重量部以下、より好ましくは0.01重量部以上3重量部以下である。
【0553】
第八の発明においては、有機過酸化物(Z8)を使用しなくても接着力は発現するが、用途に応じて上記の範囲内で使用すれば、接着力が向上する場合がある。有機過酸化物(Z8)が上記範囲よりも多いと、プロピレン系重合体(A8)と軟質プロピレン系共重合体(B8)とからなる樹脂成分の分子量が低下する場合がある。
【0554】
樹脂組成物(X8)の特徴は、上記のような特定の軟質プロピレン系共重合体(B8)を構成成分として使用することにある。軟質プロピレン系共重合体(B8)を用いることで、組成物の柔軟性、耐熱性および透明性のバランスが向上するとともに、幅広い温度範囲において各種材料に対する高い接着力および高い剥離強度を示す。
【0555】
樹脂組成物(X8)は、該組成物の性能を損なわない範囲で、必要に応じて他の合成樹脂、他のゴム、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、結晶核剤、顔料、塩酸吸収剤などの添加物、無機フィラーなどを含んでいてもよい。
また、各成分および必要に応じて各種添加剤を、例えば、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、タンブラーミキサーなどの混合機でブレンドした後、一軸または二軸の押出機を用いてペレット状として、公知の成形機に供することも可能であるが、該成分をブレンドした状態で、シート成形機、射出成形機などの公知の成形機に供することも可能である。
【0556】
樹脂組成物(X8)は、耐熱性(TMA)が100℃以上、好ましくは110〜130℃である。樹脂組成物(X8)は、破断点強度が8〜25MPa、好ましくは10〜25MPaであり、引張弾性率が5〜50MPa、好ましくは10〜35MPaである。
樹脂組成物(X8)は、付加的に独立して以下の特性を有するものが好ましい。なお、下記特性はそれぞれ独立して示してもよいが、同時に示すとより好ましい。
【0557】
(i)トーションモードでの動的粘弾性測定(10rad/s)において、−25℃〜25℃の範囲に損失正接(tanδ)のヒ゜ークを有し、かつその値が0.5以上であり、
(ii)上記動的粘弾性測定から得られる貯蔵弾性率G(20℃)とG'(100℃)との比(G'(20℃)/G'(100℃))が5以下であり、
(iii)チャック間30mm、引っ張り速度30mm/minで100%歪みを与え、10分間保持した後に、除荷10分後の残留歪みが20%以下である。
【0558】
上記(i)において、−25℃〜25℃の範囲で、損失正接tanδは0.5以上であり、好ましくは0.5〜2.5の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.6〜2の範囲にあるとこが望ましい。tanδが0.5以下であると、柔軟性が充分発現できない傾向にあり、また、柔軟性を有していても耐傷つき性に劣る傾向にある。
【0559】
上記(ii)において、貯蔵弾性率G(20℃)とG'(100℃)との比(G'(20℃)/G'(100℃))が5以下であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3.5以下であることが望ましい。G'(20℃)/G'(100℃)が5を越えると、表面にベタ感などが生じ、ハンドリングが悪化したり、充分な耐熱性を発現できない傾向にある。
【0560】
上記(iii)において、長さ50mm、幅5mmの形状を有する厚さ1mmtのダンベル片を標線間30mm、引っ張り速度30mm/minで100%歪みを与え、10分間保持した後に除荷10分後の残留歪みは20%以下であり、好ましくは18%以下、より好ましくは16%以下であることが望ましい。残留歪みが20%を越えると、ゴム弾性が低下する傾向にあり、伸縮性および復元性が要求される用途には展開できない場合がある。
【0561】
このような樹脂組成物(X8)からなる成形物は、厚み1mmで測定したときの内部ヘイズが25%以下、好ましくは20%以下であることが望ましい。
このような樹脂組成物(X8)からなる成形物は、JIS 6301に準拠して測定した引っ張り弾性率(YM)が100MPa以下、好ましくは80MPa以下であることが望ましい。
【0562】
また、樹脂組成物(X8)は、メルトフローレート(ASTM D 1238、230度、荷重2.16kg)が通常0.0001〜1000g/10分、好ましくは0.0001〜900g/10分、より好ましくは0.0001〜800g/10分であり、135℃のデカヒドロナフタレン中で測定される極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/g、より好ましくは0.1〜10dl/gである。
【0563】
樹脂組成物(X8)は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において、100℃以上に融点(Tm、℃)の最大ピークが存在し、その融解熱量が5〜40J/gの範囲にあることが好ましく、5〜35J/gの範囲にあることがより好ましい。
樹脂組成物(X8)の最高吸熱ピーク(融点)は130℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上である。
【0564】
また、樹脂組成物(X8)のメルトテンション(MT)は、通常0.5〜10g、好ましくは1〜10gである。MTがこの範囲にあると、フィルム、シート、チューブ成形性などの成形性に優れている。なお、このメルトテンション(MT)は、メルトテンションテスター((株)東洋精機製作所製)により、測定温度200℃、押出速度15mm/分の条件下で押し出されるストランドを、一定速度(10m/分)で引き取る際にフィラメントにかかる張力として求められる。
【0565】
〈積層体〉
樹脂組成物(X8)を含む層[a]と、各種材料(基材)を含む層[b]とを積層させることで様々な用途へ適用可能な積層体が得られる。
【0566】
上記積層体の製造方法としては特に制限されない。例えば、上記積層体は、上記のシート成形機、射出成形機などの公知の成形機により加工した樹脂組成物(X8)を、各種基材と加熱ロール、真空成形などにより熱接着させて得られる。また、各種基材上に樹脂組成物(X8)を溶融押出しして、積層体を得てもよい。なお、第八の発明の効果が損なわれない範囲で、樹脂組成物(X8)からなる成形体と各種基材層との間に接着層を設けてもよいが、第八の発明においては、このような接着層を設けなくとも、充分な接着強度が得られる。上記接着層を不要とすることて、第八の発明係る積層体の柔軟性、ゴム弾性および透明性が良好となり、また製造工程も簡略化できる。
【0567】
第八の発明に係る積層体の基材としては極性材料が用いられ、具体的には、金属(アルミ、銅、ステンレス、鉄、そのほか公知のもの)、無機化合物(ガラスなど、そのほか公知のもの)、極性プラスチック(AS(アクリロニトリル-スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド-イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、そのほか公知の極性材料)などである。
【0568】
第八の発明の積層体は、自動車材料用途、電気・電子部品材料用途、建材(壁装窓材)用途、日用品(文具)、物流、土木、建築資材、食品包装用途などに用いられる。
【0569】
9.第九の発明
以下、第九の発明について詳細に説明する。
〈プロピレン系重合体(A9)〉
第九の発明に用いられるプロピレン系共重合体(A9)については、第八の発明に用いられるプロピレン系共重合体(A8)と同様である。
【0570】
すなわち、第九の発明で用いられるプロピレン系共重合体(A9)としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと、少なくとも1種のプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとの共重合体を挙げることができる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられるが、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα-オレフィンが好ましい。
【0571】
これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
これらのα-オレフィンから導かれる構成単位は、ポリプロピレン中に35モル%以下、好ましくは30モル%以下の割合で含まれていてもよい。
プロピレン系重合体(A9)は、ASTM D 1238に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0572】
プロピレン系重合体(A9)の示差走査熱量計で観測される融点は100℃以上、好ましくは100〜160℃、より好ましくは110〜150℃である。
プロピレン系重合体(A9)はアイソタクチック構造、シンジオタクチック構造のどちらも用いることができるがアイソタクチック構造の方が耐熱性などの点で好ましい。
また、必要に応じて複数のプロピレン系重合体(A9)を併用することができ、例えば融点や剛性の異なるの2種類以上の成分を用いることもできる。
【0573】
また、プロピレン系重合体(A9)としては、耐熱性に優れるホモポリプロピレン(通常プロピレン以外の共重合成分が3mol%以下である公知のもの)、耐熱性と柔軟性のバランスに優れるブロックポリプロピレン(通常3〜30wt%のノルマルデカン溶出ゴム成分を有する公知のもの)、さらには柔軟性と透明性のバランスに優れるランダムポリプロピレン(通常示差走査熱量計DSCにより測定される融解ピークが100℃以上、好ましくは110℃〜150℃の範囲にある公知のもの)が、目的の物性を得るために選択して、または併用して用いることができる。
【0574】
このようなプロピレン系重合体(A9)は、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様に、例えば、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物および電子供与体からなるチーグラー触媒系、またはメタロセン化合物を触媒の一成分として用いたメタロセン触媒系で、プロピレンを重合して、またはプロピレンと他のα―オレフィンとを共重合して製造できる。
【0575】
〈軟質プロピレン系共重合体(B9)〉
第九の発明に用いられる軟質プロピレン系共重合体(B9)は、プロピレンと少なくとも1種のプロピレンを除く炭素数2〜20のα-オレフィンとの共重合体であって、ショアーA硬度が30〜80、好ましくは35〜70であり、かつ示差走査熱量計DSCで観測される融点が100℃未満または融点が観測されない。ここで、融点が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。測定条件は、第9の発明の実施例記載のとおりである。
【0576】
軟質プロピレン系共重合体(B9)において、コモノマーとして用いられるα-オレフィンはエチレンおよびまたは炭素数4〜20のα-オレフィンが好ましい。
軟質プロピレン系共重合体(B9)は、プロピレン由来の単位を45〜92モル%、好ましくは56〜90モル%含み、コモノマーとして用いられるα-オレフィン由来の単位を8〜55モル%、好ましくは10〜44モル%含む。
【0577】
軟質プロピレン系共重合体(B9)は、ASTM D 1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜50g/10分の範囲にあることが望ましい。
軟質プロピレン系共重合体(B9)の製造方法は特に制限されないが、第八の発明に用いられる軟質プロピレン系重合体(B8)と同様の製造方法が挙げられる。
【0578】
すなわち、オレフィンをアイソタクチックまたはシンジオタクチック構造で立体規則性重合することのできる公知の触媒、例えば固体状チタン成分と有機金属化合物を主成分とする触媒、またはメタロセン化合物を触媒の一成分として用いたメタロセン触媒の存在下で、プロピレンを重合、またはプロピレンと他のα-オレフィンを共重合させることによって製造することができる。好ましくは、後述のように、メタロセン触媒の存在下、プロピレン、エチレンおよび炭素数4〜20のα-オレフィンを共重合させることにより得られる。
【0579】
軟質プロピレン系共重合体(B9)は、付加的に独立して以下の特性を有するものが好ましい。
軟質プロピレン系共重合体(B9)は、トリアドタクティシティ(mm分率)、100%歪での応力、結晶化度、ガラス転移温度Tg、分子量分布(Mw/Mn)については、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)と同様の特性を有することが好ましく、これらの特性によって得られる効果も同様である。
【0580】
例えば、軟質プロピレン系共重合体(B9)は、13C−NMRで測定されるトリアドタクティシティ(mm分率)が好ましくは85%以上、より好ましくは85〜97.5%以下、さらに好ましくは87〜97%、特に好ましくは90〜97%の範囲にある。トリアドタクティシティ(mm分率)がこの範囲にあると、特に柔軟性と機械強度のバランスに優れるため、本発明に好適である。mm分率は、国際公開2004−087775号パンフレットの21頁7行目〜26頁6行目までに記載された方法を用いて測定することができる。
【0581】
さらに、軟質プロピレン系共重合体(B9)は、JIS K6301に準拠して、JIS3号ダンベルを用い、スパン間:30mm、引っ張り速度:30mm/minで、23℃にて測定した、100%歪での応力(M100)が通常4MPa以下、好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下である。軟質プロピレン系共重合体がこのような範囲にあると柔軟性、透明性、ゴム弾性に優れる。
【0582】
軟質プロピレン系共重合体(B9)は、X線回折で測定した結晶化度が通常20%以下、好ましくは0〜15%である。また本発明における軟質プロピレン系共重合体は単一のガラス転移温度を有し、かつ示差走査熱量計(DSC)によって測定したガラス転移温度Tgが、通常-10℃以下、好ましくは-15℃以下の範囲にあることが望ましい。軟質プロピレン系共重合体(B9)のガラス転移温度Tgが前記範囲内にあると、耐寒性、低温特性に優れる。
【0583】
軟質プロピレン系共重合体(B9)のGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は4.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。
また、軟質プロピレン系共重合体(B9)は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において融点(Tm、℃)が存在する場合には、通常、融解熱量ΔHが30J/g以下であり、かつC3含量(mol%)と融解熱量ΔH(J/g)の関係において以下の関係式が成り立つ。
ΔH<345Ln(C3含量mol%)-1492、
ただしこの場合、76≦C3含量(mol%)≦90
【0584】
軟質プロピレン系共重合体(B9)の好ましい具体例として、以下のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B9-1)を挙げることができる。このようなプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B9-1)を用いることで、柔軟性、耐熱性、機械強度、太陽電池封止性および透明性が良好な太陽電池封止用シートとなる。ここで、太陽電池封止性とは、良好な柔軟性により、太陽電池素子を充填する際の素子の割れ率を低減できることをいう。
【0585】
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B9-1)は、プロピレン由来の構成単位を45〜92モル%、好ましくは56〜90モル%、より好ましくは61〜86モル%、エチレン由来の構成単位を5〜25モル%、好ましくは5〜14モル%、より好ましくは8〜14モル%、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位を3〜30モル%、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは6〜25モル%の量含んでいる。α-オレフィンに関しては、1-ブテンが特に好ましい。
【0586】
プロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位を上記の量で含有するプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B9−1)は、プロピレン系重合体(A9)との相溶性が良好となり、得られる太陽電池封止用シートは、充分な透明性、柔軟性、耐熱性および耐傷付性を発揮する。
【0587】
〈太陽電池封止用シートに用いられる熱可塑性樹脂組成物、および太陽電池封止用シート〉
第九の発明の太陽電池封止用シートは、下記(A9)および(B9)が下記配合量からなる熱可塑性樹脂組成物(X9)から形成される太陽電池封止シート(シート状太陽電池封止材ともいう。)である。
(A9)プロピレン系重合体が0〜70重量部、好ましくは10〜50重量部
(B9)軟質プロピレン系共重合体が30〜100重量部、好ましくは50〜90重量部
ここで、(A9)および(B9)の合計量は100重量部である。
【0588】
上記のように、(A9)および(B9)が好ましい範囲にあると、シートの成形性が良好であるとともに、得られる太陽電池封止用シートの耐熱性、透明性および柔軟性が良好となり、第九の発明に好適である。
【0589】
また、第九の発明の太陽電池封止用シートにおいては、上記(A9)および(B9)に、ガラス、プラスチックなどに対する接着促進剤としてカップリング剤(Y9)を配合することが可能である。カップリング剤(Y9)は、樹脂組成物(X9)を含む層と、極性基含有樹脂または金属などの無機化合物を50重量%以上の量で含む他の層との接着性を向上できるものであれば、特に制限なく用いられるが、シラン系、チタネート系、クロム系の各カップリング剤が好ましく用いられ、特にシラン系のカップリング剤(シランカップリング剤)が好適に用いられる。
【0590】
上記シランカップリング剤としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、具体的には、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシーエトキシシラン)、γ-グリシドキシプロピルートリピルトリーメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物(X9)((A9)および(B9)の合計量)100重量部に対して、上記シランカップリング剤を0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部含むことが望ましい。
【0591】
また、上記カップリング剤は、有機過酸化物(Z9)を用いて、熱可塑性樹脂組成物(X9)にグラフト反応させてもよい。この場合、熱可塑性樹脂組成物(X9)((A9)および(B9)の合計量)100重量部に対して、上記シランカップリング剤を0.1〜5重量部程度含むことが望ましい。シラングラフト化された熱可塑性樹脂組成物(X9)を用いても、ガラス、プラスチックに対して、シランカップリング剤ブレンドと同等以上の接着性が得られる。有機過酸化物を用いる場合、有機過酸化物(Z9)は熱可塑性樹脂組成物(X9)((A9)および(B9)の合計量)100重量部に対して好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜3重量部である。
【0592】
有機過酸化物(Z9)としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、具体的には、第八の発明に用いられる有機過酸化物(Z8)と同様のものが挙げられる。
すなわち有機過酸化物(Z9)としては、具体的には、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-アミル-パーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソノナノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ジ(ブチルパ-オキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパ-オキシ)プチレート、メチルエチルケトンパ-オキサイド、エチル3,3-ジ(t-ブチルパ-オキシ)ブチレート、ジクミルパ-オキサイド、t-ブチルクミルパ-オキサイド、ジ-t-ブチルパ-オキサイド、1,1,3,3-テトララメチルブチルハイドロパ-オキサイド、アセチルアセトンパ-オキサイドなどが挙げられる。
【0593】
さらに、第九の発明では、必要に応じて以下の助剤を使用することも可能である。助剤の例としては、具体的には、第八の発明の場合と同様のものが好適に用いられる。
すなわち、助剤としては、具体的には、硫黄、p-キノンジオキシム、p,p'- ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N-4- ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-N,N'-m-フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ助剤;あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。また、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーなどが挙げられる。中でも、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0594】
第九の発明においては、上記のような助剤は、助剤と有機過酸化物との重量比[(助剤)/(有機過酸化物)]が1/30〜20/1、好ましくは1/20〜10/1となる量で用いることが望ましい。
第九の発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物(X9)は、架橋されていてもよいが非架橋が好ましい。ここで、非架橋とはシートに含まれる全有機物中の沸騰キシレン不溶分含量が0.1重量%以下であることを意味する。具体的には、沸騰キシレン不溶分は、第八の発明の場合と同様に求められる。
【0595】
すなわち、具体的には1.5gのサンプル(検体)を100ccのパラキシレン(140℃)に溶解させ、これを3時間還流した後、325メッシュで未溶解物を分離する。上記未溶解物の乾燥残渣の重量からポリマー成分以外のキシレン不溶性成分(例えば、フィラー、充填剤、顔料など)の重量を減じた値を、「補正された最終重量(Y)」とする。
一方、試料の重量からポリマー成分以外のキシレン不溶性成分(例えば、フィラー、充填剤、顔料など)の重量を減じた値を、「補正された初期重量(X)」とする。
【0596】
ここに、沸騰キシレン不溶分は、次式により求められる。
沸騰キシレン不溶分含量[重量%]=([補正された最終重量(Y)]÷[補正された初期重量(X)])×100
また、第九の発明の太陽電池封止用シートには、その他の各種添加剤が配合される。このような添加剤としては、例えば、太陽光中の紫外線による劣化を防ぐための紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0597】
上記紫外線吸収剤としては、具体的には、2-ヒドロキシ-4メトキシベンゾフェノン、2-2-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-N-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアリゾール系;フェニルサルチレート、p-オクチルフェニルサルチレート等のサリチル酸エステル系の化合物が用いられる。
【0598】
上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系の化合物が使用される。
また、上記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、ホスファイト系の化合物が使用される。
第九の発明のシートは、熱可塑性樹脂組成物(X9)からなる厚さ0.1mm〜3mmのシートから得られる。この厚み以下であると、ラミネート工程において、ガラス、太陽電池セルの破損する場合がある。また、この厚み以上であると、光線透過率が低下し、光発電量が低下する場合がある。
【0599】
第九の発明に係る太陽電池封止用シートの成形方法としては特に制限はないが、公知の押出し成形(キャスト成形、押出しシート成形、インフレーション成形、射出成形など)、圧縮成形、カレンダー成形などが挙げられる。また、上記シートにはエンボス加工を施すことが可能であり、エンボス加工によりシートの表面を装飾することで、シート同士のブロッキングを防止し、さらに、エンボスが、ラミネート時のガラス、太陽電池セルに対するクッションとなって、これらの破損を防止するため好ましい。
【0600】
第九の発明の太陽電池封止用シートを構成する樹脂組成物(X9)は、厚み1mmのプレスシートを作製して測定したときの内部へイズが好ましくは1.0%〜10%、より好ましくは1.5%〜7%の範囲にある。
また、第九の発明の太陽電池封止用シートは、内部ヘイズが好ましくは1.0%〜10%、より好ましくは1.5%〜7%の範囲にある。なお、この場合には厚みにかかわらず太陽電池封止用シートについて内部へイズを測定する。
【0601】
樹脂組成物(X9)は、厚み1mmのプレスシートを作製して測定した光線透過率(トランス)が88%以上、好ましくは90%以上である。
また、第九の発明の太陽電池封止用シートは、その光線透過率(トランス)が好ましくは88%以上、好ましくは90%以上である。なお、この場合には厚みにかかわらず太陽電池封止用シートについて光線透過率を測定する。
【0602】
樹脂組成物(X9)は、厚み2mmのプレスシートを作製して測定した耐熱性(TMA)が好ましくは80℃以上、より好ましくは90〜130℃である。
樹脂組成物(X9)は、破断点強度が好ましくは8〜25MPa、より好ましくは10〜25MPaであり、引張弾性率が好ましくは5〜50MPa、より好ましくは10〜35MPa、より好ましくは10〜30MPaである。
【0603】
第九の発明の太陽電池封止用シートまたは太陽電池封止用シートを構成する樹脂組成物(X9)は、付加的に独立して以下の特性を有するものが好ましい。なお、下記特性はそれぞれ独立して示してもよいが、同時に示すとより好ましい。
(i)トーションモードでの動的粘弾性測定(10rad/s)において、−25℃〜25℃の範囲に損失正接(tanδ)のピークを有し、かつその値が0.5以上であり、
(ii)上記動的粘弾性測定から得られる貯蔵弾性率G(20℃)とG'(100℃)との比(G'(20℃)/G'(100℃))が5以下であり、
(iii)チャック間30mm、引っ張り速度30mm/minで100%歪みを与え、10分間保持した後に、除荷10分後の残留歪みが20%以下である。
【0604】
上記(i)において、−25℃〜25℃の範囲で、損失正接tanδは0.5以上であり、好ましくは0.5〜2.5の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.6〜2の範囲にあるとが望ましい。tanδが0.5以下であると、柔軟性が充分発現できない傾向にあり、また、柔軟性を有していても耐傷つき性に劣る傾向にある。
【0605】
上記(ii)において、貯蔵弾性率G(20℃)とG'(100℃)との比(G'(20℃)/G'(100℃))が5以下であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3.5以下であることが望ましい。G'(20℃)/G'(100℃)が5を越えると、表面にベタ感などが生じ、ハンドリングが悪化したり、充分な耐熱性を発現できない傾向にある。
【0606】
上記(iii)において、長さ50mm、幅5mmの形状を有する厚さ1mmtのダンベル片を標線間30mm、引っ張り速度30mm/minで100%歪みを与え、10分間保持した後に除荷10分後の残留歪みは20%以下であり、好ましくは18%以下、より好ましくは16%以下であることが望ましい。残留歪みが20%を越えると、ゴム弾性が低下する傾向にあり、成形性が劣る場合がある。
【0607】
また、樹脂組成物(X9)は、メルトフローレート、極限粘度[η]、融点(Tm、℃)およびその融解熱量については、第八の発明に用いられる樹脂組成物(X8)と同様の特性を有することが好ましい。
【0608】
すなわち、樹脂組成物(X9)は、メルトフローレート(ASTM D 1238、230度、荷重2.16kg)が通常0.0001〜1000g/10分、好ましくは0.0001〜900g/10分、より好ましくは0.0001〜800g/10分であり、135℃のデカヒドロナフタレン中で測定される極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/g、より好ましくは0.1〜10dl/gである。
【0609】
樹脂組成物(X9)は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において、100℃以上に融点(Tm、℃)の最大ピークが存在し、その融解熱量が5〜40J/gの範囲にあることが好ましく、5〜35J/gの範囲にあることがより好ましい。
樹脂組成物(X9)の最高吸熱ピーク(融点)は100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上である。
【0610】
また、樹脂組成物(X9)のメルトテンション(MT)は通常0.5〜10g、好ましくは1〜10gであり、この場合は、太陽電池封止用シートの成形性に優れる。なお、このメルトテンション(MT)は、メルトテンションテスター((株)東洋精機製作所製)により、測定温度200℃、押出速度15mm/分の条件下で押し出されるストランドを、一定速度(10m/分)で引き取る際にフィラメントにかかる張力として求められる。
【0611】
熱可塑性樹脂組成物(X9)には、第九の発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂、他のゴム、無機充填剤などを配合することができる。
第九の発明の太陽電池封止用シートを、太陽電池素子の片面および/または両面に積層し、さらに必要に応じてこれら太陽電池封止用シートの外面に表面保護層を積層することにより、太陽電池として利用できる。太陽電池封止用シートを適用する形態の一例を図9−1に示す。
【0612】
太陽電池を成形する方法としては特に制限はなく、例えば、表面保護層、太陽電池素子、第九の発明の太陽電池封止用シートを順次積層し、これらを真空吸引などにより加熱圧着させる方法が挙げられる。
【0613】
上記表面保護層としては特に制限はなく、太陽電池および太陽電池封止用シートからなる層の保護が可能となり、太陽電池としての目的を損なわないものであれば公知の材料が使用できる。上記表面保護層に用いられる材料の具体的な例としては、ガラスをはじめ、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル-スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド-イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられ、これらの樹脂を複数用いることも可能である。また、ガス・水分のバリヤー性を向上させるために、無機酸化物などを蒸着した無機/有機複合フィルムも好ましく利用できる。
【0614】
上記表面保護層と第九の発明の太陽電池封止用シート層との間、または複数の上記表面保護層間との接着力を向上させるために、公知の接着剤および接着性樹脂層を設けることも可能である。また、太陽電池を実施する形態により、上記表面保護層の片面が遮光性・光反射性を有していてもよい。
【0615】
また第9の発明の応用として、第9の発明の太陽電池封止シートを用いて作製された太陽電池モジュール、該太陽電池モジュールを有する発電設備が挙げられる。太陽電池モジュールの構成、発電設備の構成については、後述する第10の発明における太陽電池モジュールの構成、および発電設備の構成において第10の発明における太陽電池封止シートを、第9の発明の太陽電池封止シートに置き換えた構成を挙げることができる。太陽電池モジュールに用いられる太陽電池封止シート以外の構成要素、例えば太陽電池モジュール用表面保護シート、太陽電池モジュール用裏面保護シート、太陽電池素子としても後述する第10の発明におけるものと同様のものを用いることができる。
【0616】
10.第十の発明
以下、第十の発明について詳細に説明する。
第十の発明は、ショアーA硬度が50〜90であり、エチレン含量が60〜95mol%であるエチレン系共重合体からなる層(I−10)、および、示差走査熱量計で観測した融点が100℃以上であるプロピレン系重合体(A10)0〜90重量部と、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4〜20のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィンとの共重合体であって、ショアーA硬度が30〜80であり、示差走査熱量計で観測した融点が100℃未満であるか、または融点が観測されないプロピレン系共重合体(B10)10〜100重量部((A10)と(B10)との合計は100重量部)とからなる熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)を有する、電気電子素子用封止シ-トである。
【0617】
以下、第十の発明について詳細に説明する。
〈エチレン系共重合体からなる層(I−10)〉
[エチレン系共重合体]
第十の発明に用いられる層(I−10)に用いられるエチレン系共重合体は、エチレンと少なくとも1種のエチレン以外のモノマーとを共重合して得られる共重合体であって、ショアーA硬度が50〜90であり、エチレン由来の構成単位を60〜95mol%含む。
【0618】
ショアーA硬度が上記範囲にあると、太陽電池セルを封入する際にセルの割れを防止できるため好ましい。ショアーA硬度は、好ましくは55〜88、より好ましくは60〜85である。ショアーA硬度は、JIS K 6301の規定に従い測定することができる。
エチレン含有量が上記範囲にあると、ショアーA硬度を上記範囲とすることが容易なため好ましい。エチレン含有量は、好ましくは65〜92mol%、より好ましくは70〜90mol%である。エチレン含有量は、13C-NMRのスペクトルの解析により各モノマーの量比を定量化することで求められる。
【0619】
層(I−10)に用いられるエチレン系共重合体は、上記の硬度およびエチレン含量の条件を満たしていればよく、エチレン以外のモノマーの種類には特に制限はない。従って、エチレンと共重合が可能である各種のモノマーを適宜使用することができるが、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、およびオクテン-1からなる少なくとも1種類のモノマーを用いることが望ましい。これらのモノマーは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種類以上を用いる場合の組合せについても、特に制限はない。
【0620】
中でも、酢酸ビニル、プロピレンおよび/または1-ブテンが共重合成分であると、透明性、柔軟性などに優れたエチレン系共重合体が得られるため好ましい。従って、上記エチレン系共重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、または、エチレン-ブテン共重合体であることが特に望ましい。
【0621】
[エチレン-酢酸ビニル共重合体]
第十の発明に好ましく用いられるエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)は、酢酸ビニル(VA)由来の構成単位を5〜40wt%、好ましくは10〜35wt%含むことが望ましい。VAの含有率がこの範囲にあると、樹脂の耐候性、柔軟性、透明性、機械的性質、成膜性などのバランスが優れる。
【0622】
上記エチレン-酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR2.16)(ASTM D 1238に従い、190℃、荷重2.16kgで測定)は0.1〜50g/10min、好ましくは1〜30g/10minの範囲内であることが望ましい。
層(I−10)においては、1種類のエチレン-酢酸ビニル共重合体のみを用いてもよく、組成、分子量などの異なる2種類以上のエチレン-酢酸ビニル共重合体を用いてもよい。
【0623】
[エチレン-プロピレン共重合体またはエチレン-ブテン共重合体]
第十の発明において好ましく用いられるエチレン-プロピレン共重合体またはエチレン-ブテン共重合体は、エチレンとプロピレンおよび/またはブテンとの共重合体であり、通常、非結晶性ないし低結晶性のランダム共重合体である。
【0624】
このエチレン-プロピレン共重合体またはエチレン-ブテン共重合体のメルトフローレート(MFR2.16)(ASTM D 1238に従い、190℃、荷重2.16kgで測定)は0.1g/10分〜50g/10分、好ましくは1g/10分〜30g/10分、より好ましくは5g/10分〜25g/10分であることが望ましい。メルトフローレートがこの範囲内であれば、柔軟性およびシート生産性に優れた電気電子素子用封止シートが得られる。
【0625】
このエチレン-プロピレン共重合体またはエチレン-ブテン共重合体の密度(ASTM D 1505に準拠して測定)は、通常855〜905kg/m3、好ましくは857〜895kg/m3、より好ましくは858〜890kg/m3である。この密度範囲は、上述の好ましい諸特性が得られるエチレン含有量にほぼ対応している。
【0626】
このエチレン-プロピレン共重合体またはエチレン-ブテン共重合体は、温度190℃、荷重10kgで測定されたメルトフローレート(MFR10)(ASTM D 1238に従い測定)と、MFR2.16との比(MFR10/MFR2.16)が5〜12であることが好ましい。
【0627】
また、このエチレン-プロピレン共重合体またはエチレン-ブテン共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)の値が1.5〜3.0、好ましくは1.8〜2.5の範囲内にあることが望ましい。分子量分布(Mw/Mn)の値が上記範囲内にある共重合体を用いると、成形後のシートのべた付きが少なくなる。
【0628】
このエチレン-プロピレン共重合体またはエチレン-ブテン共重合体は、X線回折法により測定される結晶化度が通常40%以下、好ましくは10〜30%である。
上記のようなエチレン-プロピレン共重合体またはエチレン-ブテン共重合体は、チタン系触媒、バナジウム系触媒またはメタロセン系触媒(例えば国際公開第97/10295号パンフレットに記載されているメタロセン系触媒)などを用いる従来公知の方法により製造することができる。
【0629】
[シランカップリング剤(Y10)]
第十の発明においては、層(I−10)は、さらに、上記エチレン系共重合体100重量部に対して、シランカップリング剤(Y10)を0.1〜5重量部、有機過酸化物(Z10)を0〜5重量部、および、耐候安定剤を0〜5重量部有することが望ましい。
【0630】
カップリング剤(Y10)は、通常ガラス、プラスチックなどに対する接着性を向上させることを主たる目的として配合される。
カップリング剤(Y10)としては、第十の発明の層(I−10)と、ガラス、ポリエステル樹脂などの他の層との接着性を向上できるものであれば特に制限されないが、シラン系、チタネート系、クロム系の各カップリング剤が好ましく用いられる。特にシラン系のカップリング剤(シランカップリング剤)が好適に用いられる。シランカップリング剤については公知のものが使用でき、特に制限はないが、具体的には、第九の発明に用いられるシランカップリング剤と同様のものが挙げられる。
【0631】
シランカップリング剤は、エチレン系共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部配合することが好ましい。カップリング剤の配合量が上記範囲にあると、接着性を充分に改善できるとともに、フィルムの透明性、柔軟性などに悪影響を与えないため好ましい。
【0632】
[ラジカル開始剤]
また、シランカップリング剤に代表されるカップリング剤は、ラジカル開始剤を用いることにより、上記エチレン系共重合体とグラフト反応して、ガラスとのより強固な接着力を発現することが可能となる。第十の発明で好ましく用いられるラジカル開始剤は、上記エチレン系共重合体をカップリング剤でグラフトすることが可能なものであればよく、その種類には特に制限はない。中でも、有機過酸化物(Z10)は、ラジカル開始剤として特に好ましい。
【0633】
この場合、有機過酸化物(Z10)は、上記エチレン系共重合体100重量部に対して0〜5重量部の量含まれることが好ましい。有機過酸化物(Z10)が含まれる場合には上記エチレン系共重合体100重量部に対して好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜3重量部である。
有機過酸化物(Z10)としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、好ましい具体例としては、第八の発明に用いられる有機過酸化物(Z8)と同様のものが挙げられる。
【0634】
[耐候安定剤]
層(I−10)は、さらに各種の耐候安定剤を含有することがきる。上記耐候安定剤の配合量は、上記エチレン系共重合体100重量部に対して0〜5重量部であることが好ましい。耐候安定剤を含む場合、上記エチレン系共重合体100重量部に対して例えば0.01〜5重量部であることが好ましい。耐候性安定剤の配合量が上記範囲にあると、耐候安定性を向上する効果を充分に確保でき、かつ、層(I−10)の透明性およびガラスとの接着性の低下を防ぐことができる。
【0635】
上記耐候性安定剤としては、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などから選ばれる1種または2種以上の化合物を使用することができる。
上記紫外線吸収剤、上記光安定剤および上記酸化防止剤としては、具体的には、第九の発明に用いられる化合物が挙げられる。
【0636】
[その他の成分]
層(I−10)は、以上詳述した成分以外の各種成分を、第十の発明の目的を損なわない範囲において、適宜含有することができる。例えば、上記エチレン系共重合体以外の各種ポリオレフィン、ポリオレフィン以外の各種樹脂および/または各種ゴム、可塑剤、充填剤、顔料、染料、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤および分散剤などから選ばれる1種類または2種類以上の添加剤を適宜含有することができる。
【0637】
[層(I−10)の構成および成形方法]
層(I−10)の厚みは通常10μm〜1000μm、好ましくは20〜600μmである。厚みがこの範囲内であると、充分なガラスとの接着強度を有するとともに、充分な光線透過率を確保することにより高い光発電量を得ることができる。
【0638】
層(I−10)の成形方法としては特に制限されないが、公知の押出し成形(キャスト成形、押出しシート成形、インフレーション成形、射出成形など)、圧縮成形、カレンダー成形などを採用することが可能である。第十の発明においては、キャスト成形機、押出しシート成形機、インフレーション成形機、射出成形機などの公知の溶融押出機を用いて、後述の熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)と共押出して積層体を得る方法、または、あらかじめ成形された熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)上に層(I−10)を溶融または加熱ラミネートして積層体を得る方法が好ましい。
【0639】
層(I−10)を構成する組成物は、厚み0.5mmの試料で測定したときの内部ヘイズが0.1%〜15%、好ましくは0.1%〜10%の範囲にあることが望ましい。
【0640】
〈熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)〉
[熱可塑性樹脂組成物(X10)]
第十の発明に用いられる層(II−10)は、下記に詳述するプロピレン系重合体(A10)およびプロピレン系共重合体(B10)が下記量で配合された熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる。
【0641】
すなわち、熱可塑性樹脂組成物(X10)は、プロピレン系重合体(A10)が0〜90重量部、好ましくは0〜70重量部、より好ましくは10〜50重量部と、プロピレン系共重合体(B10)が10〜100重量部、好ましくは30〜100重量部、より好ましくは50〜90重量部とからなる。ここで、(A10)および(B10)の合計量は100重量部である。なお、層(II−10)に用いられる熱可塑性樹脂組成物(X10)は、第十の発明の目的を損なわない範囲で、上記(A10)および(B10)以外の成分、例えば(A10)および(B10)以外の樹脂、ゴム、無機充填剤などを含有することができる。
【0642】
上記(A10)および(B10)の配合量が上記の範囲にあると、シートの成形性が良好であるとともに、得られる太陽電池封止用シートの耐熱性、透明性、柔軟性などが良好とる。
熱可塑性樹脂組成物(X10)は、23℃で測定した圧縮永久歪が5〜35%であり、70℃で測定した圧縮永久歪が50〜70%であることが望ましい。圧縮永久歪が上記範囲にあると、常温から高温の幅広い条件においてシートの変形を防止することが可能となり、太陽電池の発電効率の低下を防ぐことができる。特に70℃で測定された圧縮永久歪が上記範囲にあることは、太陽電池におけるガラスの自重などの長期間にわたる負荷に対してシートの変形を抑えることができるため特に重要である。
【0643】
23℃で測定した圧縮永久歪は、より好ましくは5〜30%であり、さらに好ましくは5〜25%である。70℃で測定した圧縮永久歪は、より好ましくは50〜68%であり、さらに好ましくは50〜66%である。圧縮永久歪の測定は、JIS K 6301に従って、以下のように測定することができる。
【0644】
すなわち、厚さ2mmのプレスシートを6枚重ねて25%圧縮し、所定の温度(23℃、または70℃)で24時間保持した後解放し、試験後厚みを測定する。この結果より、下式に従って、24時間保持後の残留歪(圧縮永久歪)を算出する。
残留歪(%)=100×(試験前厚み-試験後厚み)/(試験前厚み-圧縮時の厚み)
【0645】
熱可塑性樹脂組成物(X10)のショアーA硬度は通常55〜92、好ましくは60〜80の範囲である。ショアーA硬度がこの範囲にあると太陽電池セルを封入する際にセルの割れを防止できるとともに、柔軟性を有した太陽電池が得られ、変形および衝撃に対して太陽電池セルを保護することができる。
【0646】
[プロピレン系重合体(A10)]
第十の発明に用いられるプロピレン系共重合体(A10)としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと、少なくとも1種のプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとの共重合体を挙げることができる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとしては、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
【0647】
これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
これらのα-オレフィンから導かれる構成単位は、ポリプロピレン中に通常35モル%以下、好ましくは30モル%以下の割合で含まれていてもよい。
プロピレン系重合体(A10)は、ASTM D 1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0648】
プロピレン系重合体(A10)の示差走査熱量計で観測される融点は100℃以上であり、好ましくは100〜160℃、より好ましくは110〜150℃である。
プロピレン系重合体(A10)はアイソタクチック構造、シンジオタクチック構造のどちらも用いることができるがアイソタクチック構造の方が耐熱性などの点で好ましい。
また必要に応じて複数のプロピレン系重合体(A10)を併用することができ、例えば融点や剛性の異なる2種類以上の成分を用いることもできる。
【0649】
また、プロピレン系重合体(A10)としては、耐熱性に優れるホモポリプロピレン(通常プロピレン以外の共重合成分が3mol%以下である公知のもの)、耐熱性と柔軟性のバランスに優れるブロックポリプロピレン(通常3〜30wt%のノルマルデカン溶出ゴム成分を有する公知のもの)、さらには、柔軟性と透明性のバランスに優れるランダムポリプロピレン(通常示差走査熱量計DSCにより測定される融解ピークが100℃以上、好ましくは110℃〜150℃の範囲にある公知のもの)が、目的の物性を得るために選択してまたは併用して用いることが可能である。
【0650】
このようなプロピレン系重合体(A10)は、第一の発明に用いられるアイソタクティックポリプロピレン(A1)と同様の方法で製造することができる。
【0651】
[プロピレン系共重合体(B10)]
第十の発明に用いられるプロピレン系共重合体(B10)は、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4〜20のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィンとの共重合体であってショアーA硬度が30〜80、好ましくは35〜70であり、かつ示差走査熱量計DSCで観測される融点が100℃未満または融点が観測されない。ここで、融点が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。測定条件は、第10の発明の実施例記載のとおりである。
【0652】
プロピレン系共重合体(B10)において、コモノマーとして用いられるα-オレフィンはエチレンおよび/または炭素数4〜20のα-オレフィンが好ましい。
プロピレン系共重合体(B10)は、プロピレン由来の単位を45〜92モル%、好ましくは56〜90モル%含み、コモノマーとして用いられるα-オレフィン由来の単位を8〜55モル%、好ましくは10〜44モル%含む。
【0653】
プロピレン系共重合体(B10)は、ASTM D 1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜50g/10分の範囲にあることが望ましい。
プロピレン系共重合体(B10)の製造方法は特に制限されないが、第八の発明に用いられる軟質プロピレン系重合体(B8)と同様の製造方法が挙げられる。
【0654】
プロピレン系共重合体(B10)は、付加的に独立して以下の特性を有するものが好ましい。
プロピレン系共重合体(B10)は、トリアドタクティシティ(mm分率)、100%歪での応力、結晶化度、ガラス転移温度Tg、分子量分布(Mw/Mn)については、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)と同様の特性を有することが好ましく、これらの特性によって得られる効果も同様である。
【0655】
例えば、プロピレン系共重合体(B10)は、13C−NMRで測定されるトリアドタクティシティ(mm分率)が好ましくは85%以上、より好ましくは85〜97.5%以下、さらに好ましくは87〜97%、特に好ましくは90〜97%の範囲にある。トリアドタクティシティ(mm分率)がこの範囲にあると、特に柔軟性と機械強度のバランスに優れるため、第十の発明に好適である。mm分率は、国際公開2004−087775号パンフレットの21頁7行目〜26頁6行目までに記載された方法を用いて測定できる。
【0656】
また、例えばプロピレン系共重合体(B10)のGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は4.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。
【0657】
また、プロピレン系共重合体(B10)は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において融点(Tm、℃)が存在する場合には、通常、融解熱量ΔHが30J/g以下であり、かつC3含量(mol%)と融解熱量ΔH(J/g)との関係においても、第一の発明に用いられるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)の場合と同様の関係式が成り立つ。
【0658】
プロピレン系共重合体(B10)の好ましい具体例として、以下のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B10-1)を挙げることができる。このようなプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B10-1)を用いることで、柔軟性、耐熱性、機械強度、素子封止性および透明性が良好な電気電子素子用シートとなる。ここで、素子封止性とは、良好な柔軟性により、電気電子素子を充填する際の素子の割れ率を低減できることをいう。
【0659】
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B10-1)は、プロピレン由来の構成単位を45〜92モル%、好ましくは56〜90モル%、より好ましくは61〜86モル%、エチレン由来の構成単位を5〜25モル%、好ましくは5〜14モル%、より好ましくは8〜14モル%、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位を3〜30モル%、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは6〜25モル%の量含んでいる。α-オレフィンに関しては、1-ブテンが特に好ましい。
【0660】
プロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位を上記の量で含有するプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(B9−1)は、プロピレン系重合体(A10)との相溶性が良好となり、得られる太陽電池用封止シートは、充分な透明性、柔軟性、耐熱性および耐傷付性を発揮する。
【0661】
[その他の成分]
第十の発明に用いられる層(II−10)は、第十の発明の目的を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂組成物(X10)以外の成分を適宜含有することができる。
【0662】
例えば、層(I−10)に添加することができる各種添加剤(シランカップリング剤に代表される各種カップリング剤、有機化酸化物および/または耐候安定剤)を適宜含有してもよく、上記エチレン系共重合体以外の各種ポリオレフィン、ポリオレフィン以外の各種樹脂および/またはゴム、可塑剤、充填剤、顔料、染料、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤および分散剤などから選ばれる1種類または2種類以上の添加剤を適宜含有することができる。
【0663】
[層(II−10)の構成および成形方法]
層(II−10)の厚みは通常0.1mm〜5mm、好ましくは0.1〜1mmである。厚みがこの範囲内であると、ラミネート工程における、ガラスおよび太陽電池セルの破損が抑制できるとともに、充分な光線透過率を確保することにより高い光発電量を得ることができる。
【0664】
層(II−10)の成形方法としては特に制限はないが、公知の押出し成形(キャスト成形、押出しシート成形、インフレーション成形、射出成形など)、圧縮成形、カレンダー成形などが挙げられる。また、上記シートにはエンボス加工を施すことが可能であり、エンボス加工によりシートの表面を装飾することで、シート同士のブロッキングを防止し、さらに、エンボスが、ラミネート時の太陽電池素子などに対するクッションとなって、これらの破損を防止するため好ましい。
【0665】
層(II−10)を構成する組成物は、厚み0.5mmの試料で測定したときの内部ヘイズが0.1%〜15%、好ましくは0.1%〜10%の範囲にあることが望ましい。
【0666】
〈電気電子素子用封止シート〉
第十の発明の電気電子素子用封止シートは、上記エチレン系共重合体からなる層(I−10)を少なくとも1層と、熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)を少なくとも1層とを有していればよい電気電子素子封止シート(シート状電気電子素子封止材ともいう。)である。
【0667】
従って、層(I−10)の層数は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。構造を単純にしてコストを下げる観点、および、光を利用する素子を封止する際に層間での界面反射を極力小さくして光を有効に活用する観点などからは、1層であることが好ましい。
また、層(II−10)の層数も、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。層(I−10)の場合と同様な観点から、1層であることが好ましい。
【0668】
層(I−10)と層(II−10)との積層方法としては特に制限はないが、上述のようにキャスト成形機、押出しシート成形機、インフレーション成形機、射出成形機などの公知の溶融押出機を用いて、層(II−10)と共押出して積層体を得る方法、または、あらかじめ成形された熱可塑性樹脂組成物(X10)からなる層(II−10)上に層(I−10)を溶融または加熱ラミネートして積層体を得る方法が好ましい。
【0669】
第十の発明の電気電子素子用封止シートは、層(I−10)および層(II−10)以外の層(本明細書において、「その他の層」ともいう。)を有していてもよく、その他の層を有さず、層(I−10)および層(II−10)のみで構成されていてもよい。
【0670】
その他の層としては、目的で分類するならば、表面または裏面保護のためのハードコート層、接着層、反射防止層、ガスバリア層、防汚層などを設けることができる。材質で分類するならば、紫外線硬化性樹脂からなる層、熱硬化性樹脂からなる層、ポリオレフィン樹脂からなる層、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂からなる層、フッ素含有樹脂からなる層などを設けることができる。
【0671】
層(I−10)および層(II−10)と、その他の層との位置関係には特に制限はなく、発明の目的との関係で好ましい層構成が適宜選択される。すなわち、その他の層は、層(I−10)と層(II−10)との間に設けられてもよく、電気電子素子用封止シートの最外層に設けられてもよく、それ以外の箇所に設けられてもよい。その他の層の層数に特に制限はなく、任意の数のその他の層を設けることができるし、その他の層を設けなくともよい。
【0672】
構造を単純にしてコストを下げる観点、および、光を利用する素子を封止する際に層間での界面反射を極力小さくし光を有効に活用する観点などからは、その他の層を設けず、層(I−10)および層(II−10)をそれぞれ1層のみ設け、これらを直接接合することが特に好ましい。
【0673】
第十の発明に係る電気電子素子用封止シートの作製は、複数の層を積層することによって行われる。その際の積層方法は特に限定されないが、例えば、適当な接着剤(例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(例えば、三井化学社製のアドマー、三菱化学社製のモディック等)、不飽和ポリオレフィン等の低(非)結晶性軟質重合体、エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸3元共重合体(例えば、住化シーディエフ化学製のボンダイン等)等のアクリル系接着剤、エチレン/酢酸ビニル系共重合体、またはこれらを含む接着性樹脂組成物など)を用いたドライラミネート法またはヒートラミネート法などにより積層することができる。接着剤としては、120°C〜150°C程度の耐熱性があるものが好ましく使用され、ポリエステル系またはポリウレタン系接着剤などが好適に用いられる。また、両層の接着性を改良するために、例えば、シラン系カップリング処理、チタン系カップリング処理、コロナ処理、プラズマ処理等を用いてもよい。
【0674】
また、第十の発明の電気電子素子用封止シートは、内部ヘイズが好ましくは0.1%〜15%、より好ましくは0.1%〜10%の範囲にあることが望ましい。なお、この際には、厚みにかかわらず封止シートについて内部ヘイズを測定する。
【0675】
また、光線透過率(トランス)が好ましくは86%以上、より好ましくは88%以上であることが望ましい。上記光線透過率をみたすものは、発電効率の低下が少なく、第十の発明において好適に使用できる。
【0676】
[太陽電池用封止シート]
第十の発明の電気電子素子用封止シートは、耐熱性、透明性および柔軟性に優れるため、強い光を利用する電気電子素子、特に、太陽電池用の封止シート(太陽電池封止シート、シート状太陽電池封止材)としての利用に適している。太陽電池封止シートとして使用する場合は、上記電気電子素子用封止シートをそのまま使用してもよく、他の層をさらに追加するなどの加工を行ってから使用してもよい。
【0677】
[太陽電池モジュール]
太陽電池モジュールは、通常、多結晶シリコンなどにより形成された太陽電池素子を太陽電池用封止シートで挟み積層し、さらに表裏両面を保護シートでカバーした構造になっている。すなわち、典型的な太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール用保護シート(表面保護シート)/太陽電池用封止シート/太陽電池素子/太陽電池用封止シート/太陽電池モジュール用保護シート(裏面保護シート)という構成である。もっとも、第十の発明の好ましい実施態様の1つである太陽電池モジュールは、上記の構成には限定されず、第十の発明の目的を損なわない範囲で、上記以外の層を適宜設けることができる。典型的には、接着層、衝撃吸収層、コーティング層、反射防止層、裏面再反射層、光拡散層などを設けることができるが、これらに限定されない。これらの層を設ける位置には特に限定はなく、そのような層を設ける目的およびそのような層の特性を考慮して、適切な位置に設けることができる。
【0678】
[太陽電池モジュール用表面保護シート]
上記太陽電池モジュールに用いられる太陽電池モジュール用表面保護シートには特に制限はないが、太陽電池モジュールの最表層に位置するため、耐候性、撥水性、耐汚染性、機械強度をはじめ、太陽電池モジュールの屋外暴露における長期信頼性を確保するための性能を具備することが好ましい。また、太陽光を有効に活用するために、光学ロスが小さく、透明性の高いシートであることが好ましい。
【0679】
上記太陽電池モジュール用表面保護シートの材料としては、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等からなる樹脂フィルム、ガラス基板などが挙げられる。
樹脂フィルムとしては、透明性、強度、コストなどの点で優れたポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレート樹脂が好適に用いられる。
【0680】
また、特に耐侯性のよいフッ素樹脂も好適に用いられる。具体的には、四フッ化エチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)がある。耐候性の観点ではポリフッ化ビニリデン樹脂が優れているが、耐候性および機械的強度の両立では四フッ化エチレン-エチレン共重合体が優れている。また、上記封止材樹脂との接着性の改良のために、コロナ処理、プラズマ処理を表面フィルムに行うことが望ましい。また、機械的強度向上のために延伸処理が施してあるフィルムを用いることも可能である。
【0681】
太陽電池モジュール用表面保護シートとしてガラスを用いる場合には、波長350〜1400nmの光の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。上記ガラス基板としては赤外部の吸収の少ない白板ガラスを使用するのが一般的であるが、青板ガラスであっても厚さが3mm以下であれば太陽電池モジュールの出力特性への影響は少ない。また、ガラス基板の機械的強度を高めるために熱処理により強化ガラスを得ることができるが、熱処理無しのフロート板ガラスを用いてもよい。また、ガラス基板の受光面側に反射を抑えるために反射防止のコーティングをしてもよい。
【0682】
上述のように、ポリエステル樹脂およびガラスは、表面保護シートとして優れた特性を有しているが、その一方で接着が比較的困難なことで知られている。第十の発明の太陽電池用封止シートの層(I−10)は、接着性に優れた特定のエチレン系共重合体からなり、かつ、好ましくはシランカップリング剤を含有しているため、ポリエステル樹脂およびガラスとの接着性に優れている。従って、第十の発明の太陽電池モジュールにおいては、上記太陽電池用封止シートが、その層(I−10)において表面保護シートと接合されていることが望ましい。
【0683】
[太陽電池モジュール用裏面保護シート]
上記太陽電池モジュールに用いられる太陽電池モジュール用裏面保護シートには特に制限はないが、太陽電池モジュールの最表層に位置するため、上述の表面保護シートと同様に、耐候性、機械強度などの諸特性が求められる。従って、表面保護シートと同様の材質で太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成してもよい。すなわち、ポリエステル樹脂およびガラスを好ましく用いることができる。
【0684】
第十の発明の太陽電池用封止シートの層(I−10)は、接着性に優れた特定のエチレン系共重合体からなり、かつ、好ましくはシランカップリング剤を含有しているため、ポリエステル樹脂およびガラスとの接着性に優れている。従って、第十の発明太陽電池モジュールにおいては、上記太陽電池用封止シートが、その層(I−10)において裏面保護シートと接合されていることが望ましい。
【0685】
また、裏面保護シートは、太陽光の通過を前提としないため、表面保護シートで求められていた透明性は必ずしも要求されない。そこで、太陽電池モジュールの機械的強度を増すために、または、温度変化による歪みおよび反りを防止するために、補強板を張り付けてもよい。例えば、鋼板、プラスチック板、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)板を好ましく使用することができる。
【0686】
[太陽電池素子]
第十の発明の太陽電池素子は、半導体の光起電力効果を利用して発電できるものであれば特に制限はなく、例えば、シリコン(単結晶系、多結晶系、非結晶(アモルファス)系)太陽電池、化合物半導体(3-5族、2-6族、そのほか)太陽電池、湿式太陽電池、有機半導体太陽電池などを用いることができる。この中では発電性能とコストとのバランスなどの観点から、多結晶シリコン太陽電池が好ましい。
【0687】
シリコンおよび化合物半導体ともに、太陽素子として優れた特性を有しているが、外部からの応力、衝撃などにより破損しやすいことで知られている。第十の発明の太陽電池用封止シートの層(II−10)は、柔軟性に優れた特定の熱可塑性樹脂組成物(X10)からなるため、太陽電池素子への応力および衝撃などを吸収して、太陽電池素子の破損を防ぐ効果が大きい。従って、上記太陽電池モジュールにおいては、第十の発明の太陽電池用封止シートが、その層(II−10)において太陽電池素子と接合されていることが望ましい。
【0688】
また、層(II−10)が熱可塑性樹脂組成物(X10)からなるため、一旦太陽電池モジュールを作製した後であっても、比較的容易に太陽電池素子を取り出すことが可能であり、リサイクル性に優れている点でも好ましい。
【0689】
[発電設備]
第十の発明の好ましい実施態様である太陽電池モジュールは、生産性、発電効率、寿命などに優れている。このため、この様な太陽電池モジュールを用いた発電設備は、コスト、発電効率、寿命等に優れ、実用上高い価値を有する。
【0690】
上記発電設備は、家屋の屋根に設置する、キャンプなどアウトドア向けの移動電源として利用する、自動車バッテリーの補助電源として利用するなど、屋外、屋内を問わず長期間の使用に好適である。
【0691】
[実施例]
以下に本実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〈第一の発明〉
以下、実施例および比較例で評価に用いた(i)原料の製造方法および物性、(ii)サンプル作製方法、(iii)試験方法を示す。
【0692】
(i)原料の製造方法および物性
(a)プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体(PEBR)の合成
充分に窒素置換した2000mLの重合装置に、乾燥ヘキサン833mL、1-ブテン100gおよびトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を40℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.76MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.8MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.001mmolおよびアルミニウム換算で0.3mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温40℃、系内圧力を0.8MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、メタノール20mLを添加し重合を停止した。脱圧後、メタノール2L中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは36.4gであり、極限粘度[η]が1.81dl/g、ガラス転移温度Tgが−29℃であり、エチレン含量は17モル%、ブテン含量は7モル%であり、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)の値は2.1であった。mm値は90%であった。また、DSC測定による融解熱量は明瞭な融解ピークは確認できなかった(ΔH:0.5J/g未満)。本PEBRの基本物性を表1−1に示す。
【0693】
(b)そのほか原料の物性
本評価に用いたそのほか原料の、ホモポリプロピレン(hPP)、ランダムポリプロピレン(rPP)、エチレン・ブテンランダム共重合体(EBR)、スチレン・エチレン・ブテンスチレン共重合体(SEBS)、低密度ポリエチレン(LDPE)の基本物性を表1−1に示す。なお、本評価では出光興産社製 パラフィンオイルPW-90(40℃での動粘度:95.5 cst)を軟化剤として用いた。
【0694】
【表1-1】
【0695】
なお、表中、hPP、rPPのアイソタクティックペンタッド分率(mmmm)はいずれも0.95以上であった。
【0696】
1.融点およびガラス転移温度
DSCの発熱・吸熱曲線を求め、昇温時の最大融解ピーク位置の温度をTm、−100℃〜0℃の間の吸熱曲線で観測される2次転移点をTgとした。測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温して200℃で5分間保持したのち、10℃/分で−150℃まで降温し、次いで10℃/分で昇温する際の発熱・吸熱曲線より求めた。
【0697】
2.密度
190℃、2.16kg荷重におけるMFR測定後のストランドを、120℃で1時間熱処理し、1時間かけて室温まで徐冷したのち、密度勾配管法により測定した。
3.MFR
ASTM D-1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重におけるMFRを測定した。
4.コモノマー(C2、C3、C4)含量
13C-NMRスペクトルの解析により求めた。
5.分子量分布(Mw/Mn)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、オルトジクロロベンゼン溶媒で、140℃で測定した。
【0698】
(ii)サンプル作製方法
表1−2に記載する配合比の原料を、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて混練し、これをプレス成形機にて厚さ2mmのシートとした(加熱190℃×7min、冷却15℃×4min(冷却速度約−40℃/min)。
【0699】
(iii)物性試験項目
1.圧縮永久歪測定
JIS K6301に準拠し、25%圧縮し、2mmtプレスシートを6枚重ね合わせて、23℃、50℃、70℃×24時間後の残留歪み(下式)を評価した。
残留歪=100×試験後歪(試験前厚み-試験後厚み)/歪(試験前厚み-圧縮時の厚み)
2.機械物性
JIS K7113-2に準拠し、2mmtプレスシートにて降伏点応力(YS)、破断点強度(TS)、破断点伸び(チャック間、EL)、ヤング率(YM)を測定した。
3.硬度
ASTM-D2240に準拠し、2mmtプレスシートを二枚重ね合わせてショアーA硬度を評価した。
4.オイル充填性評価方法
成形したサンプルを70℃のオーブン中で14日間放置し、表面のオイルブリード状態を目視にて評価した。
【0700】
[実施例1−1〜1−8、比較例1−1〜1−5、参考例1−1]
表1−2、1−3に記載の配合比からなるサンプルシートの機械物性、硬度および圧縮永久歪特性を、表1−2、1−3に示す。また、オイル充填性評価の結果を表1−4に示す。
【0701】
【表1-2】
【0702】
【表1-3】
【0703】
【表1-4】
【0704】
〈第二の発明〉
(i)以下に本実施例および比較例に用いた原料の物性を示す。
(1)プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(PBR):プロピレン・1-ブテン共重合体(ブテン含量=27mol%、Tm=73℃、MFR(230℃)=7g/10min、Mw/Mn=2.1)を使用した。mm値は91%であった。なお、この共重合体は、国際公開第2004/087775号パンフレットに記載のメタロセン触媒を用いて製造した。
【0705】
(2)スチレン系エラストマー(SEBS):旭化成(株)製のSEBS(タフテックH1062)を用いた。
(3)アイソタクティックポリプロピレン(rPP):プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(Tm=140℃、MFR(230℃)=7g/10min、mmmm=0.96、Mw/Mn=4.8)を使用した。
(4)エチレン・α-オレフィン共重合体(EBR):エチレン・1ーブテン共重合体(密度870kg/m3、Tm=53℃、MFR(230℃)=7g/10min、Mw/Mn=2.1)を使用した。
(5)軟化剤(OIL):出光興産社製パラフィンオイルPW-90(40℃での動粘度:95.5cst)を使用した。
【0706】
なお、上記物性値は以下の方法で測定したものである。
(1)融点
DSCの発熱・吸熱曲線を求め、昇温時の最大融解ピーク位置の温度をTm、とした。測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温して200℃で5分間保持したのち、10℃/分で-150℃まで降温し次いで10℃/分で昇温する際の発熱・吸熱曲線より求めた。
(2)コモノマー(C2、C3、C4)含量
13C-NMRスペクトルの解析により求めた。
(3)MFR
ASTM D-1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重におけるMFRを測定した。
【0707】
(4)分子量分布(Mw/Mn)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、オルトジクロロベンゼン溶媒で、140℃で測定した。
(5)密度
密度はASTM D1505記載の方法に従い測定した。
【0708】
(ii−1)サンプル作製方法
表2−1、2−2に記載する配合比の原料をラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて混練し、これをプレス成形機にて厚さ2mmのシートとした(加熱190℃×7min、冷却15℃×4min(冷却速度約-40℃/min)。
【0709】
(iii−1)評価方法、評価項目
(1)柔軟性(YM)
JIS K7113-2に準拠し、2mmtプレスシートにてヤング率(YM)を測定した。
(2)耐磨耗性(Δグロス)
東洋精機製、学振摩耗試験機を用いて、45R、SUS製の摩耗圧子470gの先端を綿帆布#10に覆い、これにより、23℃、往復回数100回、往復速度33回/min、ストローク100mmで試料を摩耗させ、その前後のグロス保持率ΔGlossを以下のようにして求めた。
Gloss保持率=摩耗後のGloss/摩耗前のGloss×100
値が大きいほど良好な耐磨耗性を有することを表す。
【0710】
(3)耐白化性試験
試験片を左右対称となるように180℃折り曲げ、これに半径5cm、重さ10kgの円筒状の重りを1時間乗せた後の白化の度合いを目視にて、評価した。
○:白化なし、△:僅かに白化、×著しく白化
(4)低温混練性
ラボプラストミルを用いて、150〜160℃で混練(5min、40回転)したときの混練可否を評価した。
○:混練可能、×:混練不能(未溶融部分が確認される)、−:未評価
【0711】
[実施例2−1〜2−5]
表2−1に記載の配合比からなる(ii−1)で得られたサンプルを用い、上記(1)〜(3)の評価を行った結果を同じく表2−1に示す。
【0712】
[比較例2−1、2−2]
表2−2に記載の配合比からなる(ii−1)で得られたサンプルを用い、上記(1)〜(3)の評価を行った結果を同じく表2−2に示す(上記(4)の評価は実施例2−4および比較例2−1のみ行った。)。
【0713】
【表2-1】
【0714】
【表2-2】
【0715】
上記の評価から、従来の技術であるポリプロピレンおよびエチレン・α-オレフィン共重合体からなる組成物に比べ、第二の発明の熱可塑性樹脂組成物(X2)から得られる成形体は、柔軟性と耐傷付き性・耐白化性とのバランスに優れることが確認された。また、熱可塑性樹脂組成物(X2)は低い温度で混練可能であり、熱可塑性樹脂組成物(X2)を成形加工する際の成形条件(動的架橋含む。)が広くなる。
【0716】
(ii−2)サンプル作製方法
表2−3に記載の樹脂組成物を押出機(40mmφ)によって混練し、得られたペレットを下記の条件で射出成形機により溶融加工してサンプルを得た。
設定温度:H3/H2/H1/NH=180/200/210/210℃
金型温度:40℃
射出圧力:1000/800kgf/cm2(角板)、400/280kgf/cm2(スペシメン)
成形サイクル:1次/2次/冷却=10/10/30sec
【0717】
(iii−2)評価方法、評価項目
(1)破断点強度、破断点伸び、引張り弾性率
ASTM D638に準拠し、ASTM−IV射出スペシメン、23℃、引張り速度50mm/minで測定した。
(2)全ヘイズ
射出角板(110×110×3(厚さ)mm)を用いて測定した。
(3)落球白化試験
287gの鋼球を、80cmの高さから、内径55mmの円筒状治具の上に乗せて保持された射出角板(110×110×3(厚さ)mm)上に落下させた。このときに白化した鋼球直撃部の色相L(L値=正反射光除去法)の変化値を評価した(ΔLが小さいほど耐白化性に優れる。)。
ΔL=L(試験後)−L(試験前)
【0718】
(4)耐衝撃性
アイゾット衝撃強度をASTM D785に準拠して測定した。
測定温度=0℃、試験スペシメン:12.7(幅)×64(長さ)×3.2mm(厚さ)
(5)耐ブロッキング性
射出角板(110×110×3(厚さ)mm)を2枚重ね合わせてテープで固定し、これに5kgの荷重をかけて室温で1週間放置した。この後、角板を剥離させたときに感じられたべた付きを下記の基準で評価した。
○:べた付きが感じられない、△:わずかにべた付きが感じられる、×:顕著なべた付きが感じられる
【0719】
[実施例2−6、比較例2−3〜2−5、参考例2−1、2−2]
(ii−2)で得られたサンプルを用い、上記(1)〜(5)の評価を行った結果を表2−3に示す。
【0720】
【表2-3】
【0721】
表2−3から分かるように、第二の発明の組成物(実施例2−6)は、特に引っ張り弾性率、透明性、耐衝撃性、耐白化性のバランスに優れる。
【0722】
〈第三の発明〉
〈1〉パルスNMR(ソリッドエコー法、プロトン観測)による磁化強度の1000μsまでの横緩和による減衰強度の測定
本実施例に用いた原材料は以下のとおりである。
(A3−1)アイソタクティックポリプロピレン(rPP)
プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体(Mw/Mn=4.8、MFR(230℃)=7g/10min、Tm=140℃、mm=97%、ノルマルデカン不溶成分量=98wt%、ノルマルデカン不溶成分のTm=140℃、ノルマルデカン不溶成分のプロピレン含量=98mol%、ノルマルデカン不溶成分の極限粘度[η]=1.9dl/g)を使用した。
(B3)プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(PBER)
エチレン含量=14.0モル%、1−ブテン含量=19モル%、MFR=7g/10min、[η]=2.0、融点=観測されず(ΔH:0.5J/g未満)、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、ショアーA硬度=45、mm=92%を使用した。
(国際公開2004/87775号パンフレットに記載の方法で製造した)
【0723】
具体的には以下の方法で製造した。すなわち充分に窒素置換した2000mLの重合装置に、917mLの乾燥ヘキサン、1−ブテン85gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を65℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.77MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.78MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温65℃、系内圧力を0.78MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mLのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、60.4gであった。
【0724】
(b3−1)軟質プロピレン共重合体(PER)
エクソンモービル社製VISTAMAXX(VM1100:Tm=159℃、エチレン含量=20モル%、mm=93%、ショアーA硬度=66)を使用した。
(b3−2)非晶性PP
融点が観測されず、1−ブテン含量=3モル%、mm=11%、MFR=3g/10minである非晶性プロピレン・1−ブテン共重合体85wt%と、融点=160℃のアイソタクティックホモポリプロピレン15wt%とを溶融混練して得られた組成物を用いた(組成物のショアーA硬度=61)。
(C3)スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)
旭化成(株)製のタフテックH1062(Tm=観測されず、ショアーA硬度=67)を使用した。
(D3)エチレン・1−ブテン共重合体(EBR)
密度=870kg/m3、融点=53℃、MFR(230℃)=7.2g/10min、Mw/Mn=2.1、ショアーA硬度=71
【0725】
上記原材料の物性は以下の方法で測定された値である。
(1)融点(Tm)
DSCの発熱・吸熱曲線を求め、昇温時の最大融解ピーク位置の温度をTmとした。測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温して200℃で5分間保持したのち、20℃/分で−150℃まで降温し、次いで20℃/分で昇温する際の発熱・吸熱曲線より求めた。
(2)コモノマー(C2、C3、C4)含量、mm分率
13C−NMRスペクトルの解析により求めた。
(3)MFR
ASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重におけるMFRを測定した。
【0726】
(4)分子量分布(Mw/Mn)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、オルトジクロロベンゼン溶媒で、140℃で測定した。
(5)ショアーA硬度
JIS K6301に準拠して、ショアーA硬度を測定した。
(6)密度
密度はASTM D1505記載の方法に従い測定した。
(7)ノルマルデカン不溶成分量
本文中に記載の方法でノルマルデカン抽出試験を実施し、以下の式から求めた。
ノルマルデカン不溶成分量(wt%)=100−ノルマルデカン可溶成分量(wt%)
【0727】
[実施例3−1]
rPP(A3−1)80wt%、PBER(B3)20wt%からなる重合体組成物(すなわち、ノルマルデカン不溶なプロピレン系重合体(A3)成分が78.4wt%、PBER(B3)が20wt%であり、(A3)および(B3)の合計を100wt%とした場合、(A3)成分が79.7wt%、(B3)成分が20.3wt%となり、fB=0.203である。)を、ラボプラストミル((株)東洋精機製作所)にて、190℃、5min(40rpm、原料投入量は容積の75%)で混練して得た。
【0728】
このようにして得られた組成物からプレス成形機にて厚さ2mmtのシートを作製した(加熱190℃×7min、冷却15℃×4min、冷却速度約−40℃/min)。このシートから切り出したサンプルを用いて、本文中に記載された方法で測定したパルスNMR(ソリッドエコー法、プロトン観測、100℃測定)による磁化強度の1000μsまでの横緩和による減衰強度M(t)C1(これはM(t)X-1に該当する)を図3−1に示す。
【0729】
また、rPP(A3−1)およびPBER(B3)それぞれ単体を測定して得られた減衰強度から、本文中の式3−1−2を用い、かつrPP(A3−1)のノルマルデカン不溶部の割合が98wt%であることおよびfBが0.203であることを考慮して計算した合成減衰強度M(t)CAL1をあわせて図3−1に示す。また、観測時間t=500、1000でのM(t)CAL−M(t)Cの値の差(ΔM(500)、ΔM(1000))を表3−1に示す(以下の実施例3−2、比較例3−1〜3−3も同様に解析した。)。
【0730】
[実施例3−2]
rPP(A3−1)50wt%、PBER(B3)50wt%(すなわち、ノルマルデカン不溶なプロピレン系重合体(A3)成分が49wt%、PBER(B3)が50wt%であり、(A3)および(B3)の合計を100wt%とした場合、(A3)成分が49.5wt%、(B3)成分が50.5wt%、fB=0.505である。)に変更した以外は、実施例3−1と同じ方法で減衰強度M(t)C2を測定した。この結果を図3−2に示す。また、rPP(A3)およびPBER(B3)それぞれ単体を測定して得られた減衰強度から、本文中の式3−1−2を用い、かつrPP(A3−1)のノルマルデカン不溶部の割合が98wt%であることおよびfBが0.505であることを考慮して計算した合成減衰強度M(t)CAL2をあわせて図3−2に示す。
【0731】
[比較例3−1]
rPP(A3−1)50wt%、PER(b3−1)50wt%に変更した以外は、実施例3−1と同じ方法で減衰強度M(t)C3測定した。この結果を図3−3に示す。また、rPP(A3−1)およびPER(b3−1)それぞれ単体を測定して得られた減衰強度から、本文中の式3−1−2を用い、かつrPP(A3−1)のノルマルデカン不溶部の割合が98wt%であることおよびfBが0.505であることを考慮して計算した合成減衰強度M(t)CAL3をあわせて図3−3に示す。
【0732】
[比較例3−2]
rPP(A3−1)50wt%、SEBS(C3)50wt%と変更した以外は、実施例3−1と同じ方法で減衰強度M(t)C5を測定した。この結果を図3−4に示す。また、rPP(A3)およびSEBS(C3)それぞれ単体を測定して得られた減衰強度から、本文中の式3−1−2を用い、かつrPP(A3−1)のノルマルデカン不溶部の割合が98wt%であることおよびfBが0.505であることを考慮して計算した合成減衰強度M(t)CAL5をあわせて図3−4に示す。
【0733】
[比較例3−3]
rPP(A3−1)50wt%、EBR(D3)50wt%とした以外は全て実施例3−1と同じ方法で減衰強度M(t)C6を測定した。この結果を図3−5に示す。また、rPP(A3)およびEBR(D3)それぞれ単体を測定して得られた減衰強度から、本文中の式3−1−2の関係を用い、かつrPP(A3−1)のノルマルデカン不溶部の割合が98wt%であることおよびfBが0.505であることを考慮して計算した合成減衰強度M(t)CAL6をあわせて図3−5に示す。
【0734】
【表3-1】
【0735】
第三の発明のPBER(B3)を用いた組成物は、観測時間t=500〜1000の範囲で全て式3−1を満たす。
〈2〉機械物性、耐傷付き性および透明性の評価
【0736】
[実施例3−11、3−12、比較例3−11〜3−16]
比較対照のrPP(A3−1)単体および表3−2に記載した組成からなる重合体組成物を用いて、実施例3−1と同じ条件で溶融混練・プレス成形して2mmtシートを得た。このサンプルについて、機械物性、耐傷付き性、透明性および耐白化性(熱処理)の評価を実施した。
【0737】
物性評価方法:
(i)機械物性
JIS K7113−2に準拠し、2mm厚みのプレスシートにて降伏点応力(YS)、降伏点伸びEL(YS)、破断点強度(TS)、破断点伸びEL(TS)、ヤング率(YM)を測定した。
(ii)耐傷付き性(グロス保持率)
東洋精機製、学振摩耗試験機を用いて、45R、SUS製の摩耗圧子470gの先端を綿帆布#10に覆い、これにより、23℃、往復回数100回、往復速度33回/min、ストローク100mmで試料を摩耗させ、その前後のグロス保持率を以下のようにして求めた。
グロス保持率=(摩耗後のGloss)/(摩耗前のGloss)×100
【0738】
(iii)透明性(内部ヘイズ)
日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH−20D」を用いた。2mm厚みのシートサンプルをシクロヘキサノール中にて測定し、下式により計算した。
内部ヘイズ(%)=100×(拡散透過光量)/(全透過光量)
(iv)耐白化性(耐熱白化)
熱風乾燥機にて120℃×3分、160℃×3分熱処理した際、シートの白化の有無を目視で確認した。
A:白化の発生がない、B:わずかに白化が発生する、C:明確に白化が発生する
【0739】
【表3-2】
【0740】
第三の発明のPBER(B3)を用いたプロピレン系重合体組成物は、本文中の式3−2および式3−3を満たしており、他の軟質ポリプロピレン材料(b3−1)、(b3−2)および従来のエラストマー(C3)、(D3)と比較し、優れた柔軟性、透明性、機械強度、耐傷付き性および耐白化性(耐熱白化)を示す。
〈3〉シート成形体、ラッピングフィルム
〈3−1〉シート耐白化性評価
【0741】
[実施例3−21〜3−26、比較例3−21〜3−30]
PBER(B3)、PER(b3−1)、非晶性PP(b3−2)、SEBS(C3)、EBR(D3)、rPP(A3−1)および下記(A3−2)アイソタクチックブロックポリプロピレン(bPP)を用いて500μmのシートを成形して耐白化性を評価した(表3−3−1、3−3−2)。
(A3−2)アイソタクチックブロックポリプロピレン(bPP)
Tm=158℃、MFR(230℃)=1.3g/10min、mm=97%、ノルマルデカン不溶成分量=89wt%、ノルマルデカン不溶部のTm=158℃、ノルマルデカン不溶成分のプロピレン含量=99モル%、ノルマルデカン不溶成分の極限粘度[η]=2.3dl/gを使用した。
【0742】
シート成形方法:
表3−3−1、3−3−2に記載された組成からなる原料を、60mmφ押出シート成形機を用いて溶融混練して500μmのシートを得た。
耐白化試験評価方法:
得られたシートからJIS K6301−2の引張り試験ダンベルを採取し、これを5mm、10mm伸張させたときの色相変化(L値)を評価した。
ΔL=L値(伸張後)−L値(伸張前)
【0743】
【表3-3-1】
【0744】
【表3-3-2】
【0745】
第三の発明のPBER(B3)を用いたプロピレン系重合体組成物からなる成形体は優れた耐白化性を有する。
〈3−2〉キャップライナー、ラップフィルム評価
【0746】
[実施例3−31、3−32、比較例3−31〜3−38]
PBER(B3)、PER(b3−1)、非晶性PP(b3−2)、SEBS(C3)、EBR(D3)およびrPP(A3−1)を用いてキャップライナー性能を比較した(表3−4−1)。また、フィルムを成形してラップフィルム性能を評価した(表3−4−2)。表3−4−1、3−4−2において、各成分の単位は重量部である。
【0747】
キャップライナー評価方法:
表3−4−1からなる組成の重合体組成物を実施例3−1と同様の方法で混練して得られたペレットからプレス成形機にて厚さ0.3mmtおよび2mmtのシートを作製した(加熱190℃×7min、冷却15℃×4min、冷却速度約−40℃/min)。
【0748】
伸縮特性評価:
0.3mmtシートから短冊状のフィルム片を切り出し、引張り試験機にて引張り速度20mm/minで150%(45mm(伸張後チャック間長さ)/30mm(伸張前チャック間長さ)×100)伸長し、その後応力を取り除き、この応力が0となるときの長さから残留歪を評価した。
残留歪=(100×(応力が0となったときのチャック間長さ)/30)−100
【0749】
圧縮特性評価:
JIS K 6301に従って、厚さ2mmのプレスシートを6枚重ねて25%圧縮し、所定の温度(23℃および70℃)で24時間保持した後解放し、試験後厚みを測定した。この結果より、下式に従って24時間保持後の歪(圧縮永久歪)を算出した。
圧縮永久歪=100×(試験前厚み−試験後厚み)/(試験前厚み−圧縮時の厚み)
【0750】
ラップフィルム評価方法:
表3−4−2からなる組成のフィルムを内層(20μm)とし、この層の両面にLLDPE(密度=915kg/m3、MFR(230)℃=7.2g/10min)からなる層(5μm)を設けた多層フィルムを、3種3層キャスト成形機にて得た。
得られたフィルムを上記の残留歪評価と同様に150%伸張させた際、フィルムの白化の有無を目視で評価した。
○:白化なし、△:わずかに白化が見られる、×:白化が見られる
さらに、上記の150%伸張(1.5倍延伸)されたフィルムから得られたJIS K6781に準拠したダンベルを用いて200m/minで引っ張り試験を行い、降伏点の有無について評価した。
【0751】
【表3-4】
【0752】
第三の発明のPBER(B3)を用いたプロピレン系重合体組成物からなるフィルムは優れた伸縮性を有し、また耐白化を示す。
【0753】
〈第四の発明〉
[原材料]
(a)アイソタクティックポリプロピレン(iPP)
エチレン含量=4.2モル%、MFR=2.7g/10min、融点=135℃,mmmm値=0.96
(b)プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(PEBR)
エチレン含量=14.0モル%、1-ブテン含量=20モル%、MFR=8.5g/10min、融点=観測されず(ΔH:0.5J/g未満)、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、mm値=92%
(国際公開2004/87775号パンフレットに記載の方法で製造した)
【0754】
具体的には以下のように製造した。すなわち、充分に窒素置換した2000mLの重合装置に、917mLの乾燥ヘキサン、1−ブテン90gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を65℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.77MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.79MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温65℃、系内圧力を0.79MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mLのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、60.4gであった。
(c)石油樹脂(荒川化学社製 P-125)
Mn=820、環球法により測定される軟化点=125℃
(d)プロピレン・1-ブテン共重合体(PBR)
1-ブテン含量=27モル%、MFR=7.1g/10min、融点=73℃、分子量分布(Mw/Mn)=2.1
(e)エチレン・1-ブテン共重合体(EBR)
密度=870kg/m3、融点=53℃、MFR(230℃)=7.0g/10min、Mw/Mn=2.1
【0755】
なお、上記原材料の物性値は下記方法にて測定されたものである。
(1)コモノマー(エチレン、1-ブテン)含量
13C-NMRスペクトルの解析により求めた。
(2)MFR
ASTM D-1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重におけるMFRを測定した。
(3)融点
DSCの発熱・吸熱曲線を求め、昇温時の最大融解ピーク位置の温度をTmとした。測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温して200℃で5分間保持したのち、10℃/分で−150℃まで降温し次いで10℃/分で昇温する際の発熱・吸熱曲線より求めた。
(4)分子量分布(Mw/Mn)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、オルトジクロロベンゼン溶媒で、140℃で測定した。
(5)密度
密度はASTM D1505記載の方法に従い測定した。
(6)炭化水素樹脂のMn
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定した。
(7)炭化水素樹脂の軟化点
環球法(ASTM-D36)により測定した。
【0756】
[実施例4−1〜4−3、参考例4−1、比較例4−2]
延伸フィルムの作製方法:
表4−1に記載の樹脂組成物を押出機(40mmφ)によって混練し、得られたペレットをキャストフィルム成形機によって230℃で押出しながら、250μm厚の単層フィルムを作製した。表4−1において、各成分の単位は重量部である。
【0757】
このフィルムから9cm角のシートを切り出し、卓上2軸延伸試験機を用いて5倍(キャストフィルム流れ方向=MD方向)×1倍(TD方向)に延伸した。
延伸温度は80℃、予熱時間は90秒、延伸速度は10m/minで行った。延伸後のフィルムはすぐに空冷により冷却した。
【0758】
【表4-1】
【0759】
得られた延伸フィルムについて下記物性を評価した。
1.熱収縮率
延伸フィルムを10mm×100mm(延伸方向)にスリットした試験サンプルを80℃および90℃の温水中に10秒間浸し、この熱処理前後のフィルム寸法差から式(1)によって熱収縮率を求めた。
【0760】
【数1】
【0761】
2.透明性
日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH-20D」にて内部ヘイズ(%)を測定した。
3.フィルムインパクト(F.I.)
東洋精機製フィルムインパクトテスターを使用し、フィルムサイズ100mm×100mm、衝撃頭球面形状 0.5インチφ、測定温度-10℃にて行った。
4.フィルム強度
JIS K 6781に準拠して引っ張り試験を行い、破断点強度(TS)を測定した(引張り方向はフィルム延伸方向と同一、引張り試験速度200mm/min)
【0762】
【表4-2】
【0763】
上記結果から、第四の発明のフィルムは高い熱収縮率を有すると共に、透明性およびフィルムの耐衝撃性に優れていることがわかる。
【0764】
〈第五の発明〉
以下、実施例および比較例で評価した試験方法を示す。
(i)各成分の物性の測定方法
(1)融点(Tm)、結晶化温度(Tc)およびガラス転移温度(Tg)
DSCの発熱・吸熱曲線を求め、降温時の最大発熱ピーク位置の温度をTc、昇温時の最大融解ピーク位置の温度をTm、また−100℃〜0℃の間の吸熱曲線で観測される2次転移点をTgとした。
【0765】
上記の値は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温して200℃で5分間保持したのち、20℃/分で−150℃まで降温し、次いで20℃/分で昇温する際の発熱・吸熱曲線より求めた。
【0766】
(2)メルトフローレート(MFR)
ASTM D 1238に準拠し、230℃で2.16kg荷重下において測定した。
(3)コモノマー(エチレン、プロピレン、1−ブテン)含量およびmmmm(立体規則性、ペンタッドアイソタクティシティ)
13C−NMRスペクトルの解析により求めた。
(4)mm分率
国際公開2004/87775号パンフレットに記載の方法で測定した。
(5)分子量分布(Mw/Mn)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって、オルトジクロロベンゼン溶媒を用いて、140℃で測定した。
(6)密度
ASTM D1505に記載の方法に従って測定した。
(7)ショアーA硬度
JIS K6301に準拠して、以下の条件で測定した。
プレス成形機により2mmtのシートを作製した。このシートについて、A型測定機を用いて、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。
【0767】
(ii)各成分の物性
(A5−1)アイソタクティックポリプロピレン1(rPP)
PPターポリマー(プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体)(Tm=140℃、MFR(230℃)=7g/10min、mmmm=96%、Mw/Mn=4.8)を使用した。
(A5−2)アイソタクティックブロックポリプロピレン2(bPP)
プロピレン・エチレンブロック共重合体(Tm=158℃、MFR(230℃)=1.3g/10min、mmmm=96%、ゴム含有量(ノルマルデカン抽出量)=11wt%、エチレン含量=10モル%)を使用した。
(B5−1)プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(PBER)
プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(エチレン含量=14.0モル%、1−ブテン含量=19モル%、MFR(230℃)=7g/10min、Tm=観測されず(ΔH:0.5J/g未満)、Mw/Mn=2.0、ショアーA硬度=45、mm=92%)を使用した。
【0768】
具体的には以下のように製造した。すなわち充分に窒素置換した2000mLの重合装置に、917mLの乾燥ヘキサン、1−ブテン85gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を65℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.77MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.78MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温65℃、系内圧力を0.78MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mLのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、60.4gであった。
【0769】
(B5−2)非晶性PP
融点=観測されない、1−ブテン含量=3モル%、mm=11%、MFR=3g/10minである非晶性プロピレン・1−ブテン共重合体85wt%と、融点=160℃のアイソタクティックホモポリプロピレン15wt%を溶融混練して得られた組成物を用いた(組成物のショアーA硬度=61)。
【0770】
(C5)軟質重合体
エチレン・1−ブテン共重合体(EBR;密度=870kg/m3、Tm=53℃、MFR(230℃)=7.2g/10min、Mw/Mn=2.1、ショアーA硬度=71)を使用した。
【0771】
(iii)実施例5−1〜5−4、比較例5−1、5−2の評価項目
(1)透明性
日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH−2000」を用い、シクロヘキサノール中で、シートの拡散透過光量および全透過光量を測定し、下記式により内部ヘイズを計算した。
内部ヘイズ=100×(拡散透過光量)/(全透過光量)
【0772】
(2)耐傷つき性
学振摩耗試験機(東洋精機(株)製)、および先端を綿帆布#10で覆った45R、SUS製の摩耗圧子470gを用いた。この摩耗圧子により、23℃で、往復回数100回、往復速度33回/min、ストローク100mmの条件下で試料を摩耗させた。摩耗前後のグロス保持率(ΔGloss)を以下のようにして求めた。この値が大きいほど耐傷付き性に優れる。
グロス保持率=100×摩耗後グロス/摩耗前グロス
【0773】
(3)耐熱性
ビカット軟化温度(JIS K 7206)にて評価した。なお、本試験においては、表5−1に記載の配合からなる樹脂組成物を、2mmtプレスシート(190℃加熱、加圧、チラーにて冷却、冷却速度約−40℃/min)に再成形して評価した。
【0774】
(4)機械物性
JIS K6301に準拠して、JIS3号ダンベルを用い、スパン間:30mm、引っ張り速度:30mm/minで、23℃にて測定し、降伏点(YS)、降伏点伸び(EL at YS)、破断点強度(TS)、破断点伸び(EL)、ヤング率(YM)を求めた。
【0775】
(5)圧縮永久歪測定(CS 23℃、70℃)
JIS K6301に準拠して、2mmtプレスシートを6枚重ね合わせて、25%圧縮した。23℃および70℃で24時間後の永久歪みを、下記式により評価した。この値が小さいほど耐圧縮歪性に優れる。
永久歪=100×試験後歪(試験前厚み−試験後厚み)/歪(試験前厚み−圧縮時の厚み)を評価した。
【0776】
[実施例5−1]
表5−1に記載の配合からなる組成物を、一軸押出機(40mmφ)によって溶融混練した。得られたペレットからプレス成形機にて厚さ2mmtのシートを作製した(加熱190℃×7min、冷却15℃×4min、冷却速度約−40℃/min)。得られたシートについて、上記評価項目(1)〜(5)の結果を表5−1に示す。
【0777】
[実施例5−2〜5−4、比較例5−1、5−2]
表5―1に記載の配合からなる組成物に変更したほかは、実施例5−1と同様にして評価を行った。
【0778】
【表5-1】
【0779】
(iv)実施例5−11、5−12、比較例5−21、5−22の評価項目
(6)機械物性
ASTM 4に準拠したサンプル片を用いて、引張速度50mm/minの条件で、降伏点(YS)、降伏点伸び(EL at YS)、破断点強度(TS)、破断点伸び(EL)、ヤング率(YM)を求めた(サンプルの引っ張り方向=MD(成形)方向)。
【0780】
(7)耐延伸白化性
得られたシートから、JIS K6301−2の引張り試験ダンベルを採取し、これを5mmまたは10mm伸張させたときの色相変化(L値=正反射光除去法)を、下記式により評価した(サンプルの引っ張り方向=MD(成形)方向)。この値が小さいほど耐延伸白化性に優れる。
ΔL=L値(伸張後)−L値(伸張前)
【0781】
(8)耐折り曲げ白化性
得られたシートをおよそ90°折り曲げた際の白化の有無、および折り曲げ後のしわ発生の有無を評価した。
白化の有無: ○:白化無し(曲げた後元に戻せば白化が回復する。)
×:白化発生(曲げた後元に戻しても白化が残る。)
【0782】
(9)耐折れしわ性
被着体(200μmポリエチレンシート=LLDPE(密度=900kg/m3))に、得られたシートをヒートシール(190℃、0.2MPa、3sec)して作製したサンプルを、90℃折り曲げて外観を評価した。
○:曲げた後のしわが発生しない。
×:しわ(シートの剥離を含む。)が発生する。
【0783】
[実施例5−11]
表5−2に記載の配合からなる組成物を、シート成形機を用いて500μmシートに成形した(230℃)。得られたシートについて、上記評価項目(6)〜(9)の結果を表5−2に示す。
【0784】
[実施例5−12、比較例5−21、5−22]
表5−2に記載の配合からなる組成物に変更したほかは、実施例5−11と同様にして評価を行った。
【0785】
【表5-2】
【0786】
〈第六の発明〉
(i)成分(A6)〜(F6)
(A6)プロピレン系重合体
(A6-1)アイソタクティックランダムポリプロピレン(rPP)
プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(Tm=140℃、MFR(230℃)=7g/10min、mmmm=0.96、Mw/Mn=4.8)を使用した。
【0787】
(A6-2)アイソタクティックブロックポリプロピレン(bPP)
プロピレン・エチレンブロック共重合体(Tm=160℃、MFR(230℃)=23g/10min、エチレン含量9重量%、n-デカン可溶分量12%)を使用した。
(B6)プロピレン系重合体
(B6-1)プロピレン・1-ブテン共重合体(PBR)
プロピレン・1-ブテン共重合体(MFR=7g/10min、Tm=75℃、1-ブテン含量26モル%、Mw/Mn=2.1、結晶化度(WAXD法)=28%、mm値=90%)を使用した。
(国際公開2004/87775号パンフレットに記載の方法で製造した。)
【0788】
(B6-2)プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(PBER)
プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(MFR=8.5g/10min、Tm=観測されず(ΔH:0.5J/g未満)、エチレン含量=14モル%、1-ブテン含量=20モル%、Mw/Mn=2.0、ショアーA硬度=38、結晶化度(WAXD法)=5%以下、mm値=92%)を使用した。(国際公開2004/87775号パンフレットに記載の方法で製造した。)具体的には以下のように製造した。すなわち充分に窒素置換した2000mLの重合装置に、917mLの乾燥ヘキサン、1−ブテン90gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を65℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.77MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.79MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温65℃、系内圧力を0.79MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mLのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、60.4gであった。
【0789】
(C6)エラストマー
(C6-1)スチレン系エラストマー(SEBS)
クレイトンポリマーのSEBS(商品名、G1650)を使用した。
(C6-2)エチレン・1-ブテン共重合体(EBR)
エチレン・1-ブテン共重合体(密度=870kg/m3、Tm=53℃、MFR(230℃)=7.0g/10min、Mw/Mn=2.1)を使用した。
【0790】
(D6)無機系充填剤
水酸化マグネシウム(Mg(OH)2、商品名、キスマ5P、協和化学(株)製)を使用した。
(E6)オイル
パラフィンオイル(商品名、PW-90、出光興産社製、40℃での動粘度=90cst)を使用した。
【0791】
(F6)グラフト変性重合体
以下のエチレン・1-ブテン共重合体(F6−1)を用いて、無水マレイン酸グラフト変性エチレン・1-ブテン共重合体(F6−2)を製造した。
【0792】
【表6-1】
【0793】
メタロセン触媒を用いて製造した、表6−1に記載の性状を有するエチレン・1-ブテン共重合体(F6−1)10kgと、無水マレイン酸50gおよびジ-tert-ブチルペルオキシド3gをアセトン50gに溶解した溶液とをヘンシェルミキサー中でブレンドした。
次いで、得られたブレンド物を、スクリュー径40mm、L/D=26の1軸押出機のホッパーより投入し、樹脂温度260℃、押出量6kg/時間でストランド状に押し出した。次いで、水冷した後、ペレタイズして、無水マレイン酸グラフト変性エチレン・1-ブテン共重合体(F6−2)を得た。
【0794】
得られたグラフト変性エチレン・1-ブテン共重合体(F6−2)から、未反応の無水マレイン酸をアセトンで抽出後、この共重合体中における無水マレイン酸グラフト量を測定した結果、グラフト量は0.43重量%であった。
(G6)プロピレン系重合体組成物((G'6)プロピレン系重合体組成物に該当する)
プロピレン系重合体(B6)のプロピレン・1-ブテン共重合体(PBR)(B6-1)と上記無水マレイン酸グラフト変性エチレン・1-ブテン共重合体(F6−2)を表6−2の配合からなる組成物をラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて190℃で混練し、製造した。
【0795】
【表6-2】
【0796】
(ii)各成分の物性値の測定方法
上記各成分の物性値は下記のように測定した。
(1)コモノマー(エチレン、1-ブテン)含量およびmmmm(立体規則性、ペンタッドアイソタクティシティ)
13C-NMRスペクトルの解析により求めた。
【0797】
(2)メルトフローレート(MFR)
ASTM D-1238に準拠し、190℃または230℃で2.16kg荷重下で測定した。
(3)融点(Tm)
DSCの発熱・吸熱曲線を求め、昇温時のΔHが1J/g以上の融解ピークの頂点の位置の温度をTmとした。
【0798】
測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温して200℃で5分間保持したのち、10℃/分で−150℃まで降温し、次いで10℃/分で200℃まで昇温する際の発熱・吸熱曲線より求めた。
(4)分子量分布(Mw/Mn)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって、オルトジクロロベンゼン溶媒を用いて、140℃で測定した。
【0799】
(5)密度
ASTM D1505に記載の方法に従って測定した。
(6)結晶化度
測定装置としてRINT2500(リガク社製)を用い、X線源としてCuKαを用いて測定した広角X線プロファイルの解析により求めた。
【0800】
(7)ショアーA硬度
JIS K6301に準拠して、以下の条件で測定した。
プレス成形機によりシートを作製した。このシートについて、A型測定器を用いて、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。
【0801】
(iii)実施例6−1、6−2、比較例6−1、6−2、参考例6−1、6−2の評価項目
(1)破断点強度(TS)、破断点伸び(EL)、柔軟性(YM)
JIS K7113-2に準拠し、2mmtプレスシートにて、破断点強度(TS)、破断点伸び(EL)、引張弾性率(YM)を測定した。
(2)耐傷付き性(グロス保持率評価)
学振摩耗試験機(東洋精機(株)製)、および先端を綿帆布#10で覆った45R、SUS製の摩耗圧子470gを用いた。この摩耗圧子により、23℃で、往復回数100回、往復速度33回/min、ストローク100mmの条件下で、厚さ2mmの試験片を摩耗させた。摩耗前後のグロスから、グロス保持率を以下のようにして求めた。この値が大きいほど耐傷付き性に優れる。
グロス保持率=100×摩耗後グロス/摩耗前グロス
【0802】
[実施例6−1]
表6−3の配合からなる組成物をラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて混練した。プレス成形機によって、これを厚さ2mmのシートに成形した(加熱:190℃×7min、冷却:15℃×4min、冷却速度約:−40℃/min)。このシートについて、上記評価項目(1)、(2)の結果を表6−3に示す。
【0803】
[実施例6−2、比較例6−1、6−2、参考例6−1、6−2]
表6−3の配合からなる組成物に変更したほかは、実施例6−1と同様にして評価を行った。
【0804】
なお、参考例6−1に用いた組成物は、樹脂成分は実施例6−1と同じであり、Mg(OH)2を含まず、参考例6−2に用いた組成物は、樹脂成分は比較例6−1と同じであり、Mg(OH)2を含まない。
【0805】
【表6-3】
【0806】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、比較例に用いたエチレン系樹脂組成物と比較して、無機系充填剤(水酸化マグネシウム)を配合した際に、破断点強度および破断点伸びおよび耐傷付き性に優れる。さらに引張弾性率の上昇も少ないことから、柔軟性とのバランスにも優れている。
【0807】
(iv)実施例6−3〜5、比較例6−3の評価項目
(3)破断点強度(TS)、破断点伸び(EL)
JIS K6301-3に準拠し、2mmtプレスシートにて、破断点強度(TS)、破断点伸び(EL)を測定した。
(4)耐傷付き性(テーバー摩耗)
JIS K7204に準拠するテーバー摩耗試験機を用いて、摩耗輪(CS-17)、回転速度60rpm、試験回数1000回、荷重1000gにて評価した。試験前後のサンプルの重量変化から摩耗損失量(mg)を測定した。
(5)低温脆化温度(Btp)
ASTM D746に準拠して測定した。
(6)D硬度(HD-D)
ASTM D2240に準じて測定した。
【0808】
[実施例6−3]
表6−4の配合からなる原料をラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて混練した。プレス成形機によって、これを厚さ2mmのシートに成形した(加熱:190℃×7min、冷却:15℃×4min、冷却速度約:−40℃/min)。このシートについて上記評価項目(3)〜(6)の結果を表6−4に示す。
【0809】
[実施例6−4、5、比較例6−3]
表6−4の配合からなる原料に変更したほかは、実施例6−3と同様にして評価を行った。
【0810】
【表6-4】
【0811】
第六の発明のプロピレン系樹脂組成物は、比較例に用いたポリプロピレン(bPP)とエラストマーとからなる従来の組成物と比較して、特に優れた破断点伸び(EL)および耐傷付き性(摩耗損失量)を示す。特に、実施例6−5に示すように(B6-2)プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(PBER)を用いることで、柔軟性が向上するとともに、低温脆化性にも優れることが確認された。
【0812】
[実施例6−6]
表6−5の配合からなる原料に変更したほかは、実施例6−3と同様にして評価を行った。
【0813】
【表6-5】
【0814】
実施例6−6に示すように、さらにオイルを用いることで、第六の発明のプロピレン系樹脂組成物は、特に優れた低温脆化性、耐傷つき性を有することが確認された。
【0815】
[実施例6−7]
表6−6の配合からなる原料に変更したほかは、実施例6−3と同様にして評価を行った。
【0816】
【表6-6】
【0817】
実施例6−7に示すように、さらにグラフト変性重合体を用いることで、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、特に優れた耐傷付き性を有することが確認された。
【0818】
[実施例6−8]
表6−7の配合からなる原料に変更したほかは、実施例6−3と同様にして評価を行った。
【0819】
【表6-7】
【0820】
実施例6−8に示すように溶融混練物(プロピレン系重合体組成物)を用いることで、第六の発明のプロピレン系樹脂組成物は、さらに優れた耐傷付き性を有することが確認された。
【0821】
〈第七の発明〉
(i)実施例および比較例で用いたプロピレン系重合体(A7)、プロピレン系重合体(B7)、エチレン・α-オレフィン共重合体(C7)およびエチレン・極性モノマー共重合体(D7)の性質は以下のようにして測定した。
(1)密度
密度は、ASTM D1505に従い、23℃にて求めた。
(2)MFR
MFRは、ASTM D1238に従い、所定の温度で測定した。230℃,2.16kg荷重での測定値をMFR(230℃)とし、190℃,2.16kg荷重での測定値をMFR2とし、190℃,10kg荷重での測定値をMFR10とした。
(3)B値、Tαβ強度比
13C-NMRにより求めた。
(4)分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、オルトジクロロベンゼン溶媒、140℃にて求めた。
(5)エチレン含量およびプロピレン含量
13C-NMRにより求めた。
(6)融点
示差走査熱量計(DSC)により求めた。すなわちDSCにより発熱・吸熱曲線を求め、昇温時の最大融解ピーク位置の温度をTm、とした。測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温して200℃で5分間保持したのち、10℃/分で-150℃まで降温し次いで10℃/分で昇温する際の発熱・吸熱曲線より求めた。
【0822】
(ii)以下に、本発明で用いた(A7)、(B7)、(C7)および(D7)成分の性質を示す。
(1)プロピレン系重合体(B7−1):プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(PEBR)
エチレン含量=14.0モル%、1-ブテン含量=20モル%、MFR(230℃)=8.5g/10min、融点=観測されず(ΔH:0.5J/g未満)、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、mm値=92%
【0823】
なお、本発明に用いるプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体は、例えば国際公開2004/87775号の実施例1e〜5eに準じた方法で製造した。具体的には以下のように製造した。すなわち充分に窒素置換した2000mLの重合装置に、917mLの乾燥ヘキサン、1−ブテン90gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を65℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.77MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.79MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温65℃、系内圧力を0.79MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mLのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、60.4gであった。
【0824】
プロピレン系重合体(B7−2):プロピレン・1-ブテン共重合体(PBR)
1-ブテン含量=4モル%、MFR(230℃)=3.0g/10min、融点=観測されず、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、ショアーA硬度=61、mm値=15%
(2)プロピレン系重合体(A7):アイソタクティックポリプロピレン(iPP)
エチレン含量=2.0モル%、1-ブテン含量=1.5モル%、MFR(230℃)=7g/10min、融点=140℃
(3)エチレン・α- オレフィン共重合体(C7):エチレン・1-ブテン共重合体(EBR)
【0825】
以下の製造例1に従って合成した。
[製造例7−1]
[触媒溶液の調製]
トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートを18.4mgとり、トルエンを5mL加えて溶解させ、濃度が0.004mM/mLのトルエン溶液を調製した。[ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン]チタンジクロライドを1.8mgとり、トルエンを5mL加えて溶解させ、濃度が0.001mM/mLのトルエン溶液を調製した。重合開始時においてはトリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液を0.38mL、[ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン]チタンジクロライドのトルエン溶液を0.38mLとり、さらに希釈用のトルエンを4.24mL加えて、トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートがB換算で0.002mM/Lに、[ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン]チタンジクロリドがTi換算で0.0005mM/Lとなるトルエン溶液を5mL調製した。
【0826】
[エチレン・1-ブテン共重合体(C7)の調製]
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でヘプタン750mLを挿入した。このオートクレーブに、攪拌翼を回し、かつ氷冷しながら1-ブテン10g、水素120mLを挿入した。次にオートクレーブを100℃まで加熱し、更に、全圧が0.6MPaとなるようにエチレンで加圧した。オートクレーブの内圧が0.6MPaになった所で、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)の1.0mM/mLヘキサン溶液1.0mLを窒素で圧入した。続いて、上記の如く調製した触媒溶液5mLを、窒素でオートクレーブに圧入し重合を開始した。その後、5分間、オートクレーブを内温100℃になるように温度調製し、かつ圧力が0.6MPaとなるように直接的にエチレンの供給を行った。重合開始5分後、オートクレーブにポンプでメタノール5mLを挿入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液に3リットルのメタノールを攪拌しながら注いだ。得られた溶媒を含む重合体を130℃、13時間、600torrで乾燥して10gのエチレン・ブテン共重合体(C7)を得た。得られたエチレン・1-ブテン共重合体(C7)の性状を表7−1に示す。
【0827】
【表7-1】
【0828】
(4)エチレン・極性モノマー共重合体(D7):エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)
EV460(三井・デュポンポリケミカル株式会社)
酢酸ビニル含量=19重量%
密度(ASTM D1505,23℃)=0.94g/cm3
メルトフローレート(MFR2(190℃))(ASTM D1238、荷重2.16kg、190℃)=2.5g/10分
【0829】
(iii)架橋発泡体の物性評価は以下のようにして行った。
(1)比重
比重は、JIS K7222に従って測定した。
(2)圧縮永久歪み
JIS K6301に従って、50℃×6時間、圧縮量50%の条件で圧縮永久歪み試験を行い、圧縮永久歪み(CS)を求めた。
(3)引裂強度
BS5131-2.6に従って、引張速度10mm/分の条件で引裂強度試験を行い、引裂強度を求めた。
(4)アスカーC硬度
アスカーC硬度は、JIS K7312-1996付属書2記載の「スプリング硬さ試験タイプC試験方法」に従って測定した。
【0830】
(5)反発弾性
反発弾性は、50cm(=L0)の高さより15gの鉄球を落下させた時の、鉄球の跳ね上がり高さ(=L)を23℃および40℃にて測定し、反発弾性を以下の式を用いて求めた。
反発弾性(%)=L/L0×100
(6)磨耗性
磨耗性は、JIS K6264に従って、荷重6lb,角度15℃,全回転数3000回転、回転速度35rpmの条件でアクロン磨耗試験を行い、試験片の重量変化を求めた。
【0831】
(7)積層体の接着強度
(7−1)二次架橋発泡体の処理
まず、二次架橋発泡体表面を、界面活性剤を使用して水洗し、室温で1時間乾燥させた。次に、この二次架橋発泡体を、メチルシクロヘキサン中に3分間浸漬させ、その後60℃のオーブン中で3分間乾燥させた。
続いて、UV硬化型プライマー〔大東樹脂(株)製、GE258H1〕を薄く刷毛塗りし、60℃のオーブン中で3分間乾燥させた後、80W/cmの高圧水銀灯3灯を通過方向に垂直に設置した照射装置〔日本電池(株)製、EPSH-600-3S型、UV照射装置〕を用い、光源下15cmの位置において、コンベアースピードを10m/分の速度で移動させUV光を照射させた。
【0832】
その後、補助プライマー〔大東樹脂(株)製のプライマーGE6001Lに、硬化剤GE366Sを5重量%添加したもの〕を薄く刷毛塗りし、60℃のオーブン中で3分間乾燥させた。
続いて、接着剤〔大東樹脂(株)製の接着剤98Hに、硬化剤GE348を4重量%添加したもの〕を薄く刷毛塗りし、60℃のオーブン中で5分間乾燥させた。
最後に上記接着剤を塗布した二次架橋発泡体と、以下の処理を施したポリウレタン(PU)合皮シートを貼り合せ、20kg/cm2で10秒間圧着した。
【0833】
(7−2)PU合皮シートの処理
PU合皮シートの表面をメチルエチルケトンを用いて洗浄し、室温で1時間乾燥させた。次に、補助プライマー〔大東樹脂(株)製のプライマーGE6001Lに、硬化剤GE366Sを5重量%添加したもの〕を薄く刷毛塗りし、60℃のオーブン中で3分間乾燥させた。続いて、接着剤〔大東樹脂(株)製の接着剤98Hに、硬化剤GE348を4重量%添加したもの〕を薄く刷毛塗りし、60℃のオーブン中で5分間乾燥させた。
【0834】
(7−3)剥離試験
上記圧着シートの24時間後の接着強度を、以下の要領で評価した。
すなわち、圧着シートを1cm幅に裁断し、その端部を剥離した後、端部を200mm/分の速度で180°方向に引張り、剥離強度を測定した。なお、サンプル数は5個で、表7−2に示す接着強度は平均値である。また、そのときの剥離状態を肉眼で観察した。
【0835】
[実施例7−1]
プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(B7−1)80重量部、アイソタクティックポリプロピレン(A7)20重量部、ならびに(B7−1)+(A7)の合計100重量部に対してエチレン・1-ブテン共重合体(C7)を100重量部加え、さらに、(B7−1)、(A7)、(C7)の合計100重量部に対して、酸化亜鉛3.0重量部、ジクミルペルオキシド(DCP)0.7重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)[商品名 M-60(TAIC含有量60%)、日本化成(株)製]0.2重量部(すなわちTAIC含量としては0.12重量部である)、1,2-ポリブタジエン0.4重量部、アゾジカルボンアミド3.5重量部からなる混合物を、設定温度100℃のニーダーにて10分間混練した。次いで、ロールによりロール表面温度100℃で10分間混練した後、シート状に成形した。
【0836】
得られたシートは、プレス金型に充填し、150kg/cm2、155℃、30分の条件で、加圧、加熱し、一次架橋発泡体を得た。このプレス金型のサイズは、厚み15mm、縦150mm、横200mmであった。
次いで、この一次架橋発泡体を、150kg/cm2、155℃の条件で10分間圧縮成形を行い、二次架橋発泡体を得た。得られた二次架橋発泡体のサイズは、厚み15mm、縦160mm、250mmであった。
【0837】
次いで、この二次架橋発泡体の比重、圧縮永久歪み、引裂強度、アスカーC硬度、反発弾性、耐摩耗性を上記方法に従って測定した。また、発泡体およびポリウレタン(PU)合皮シートからなる積層体の接着強度を上記方法に従って測定するとともに、そのときの剥離状態を肉眼で観察した。その結果を表7−2に示す。
【0838】
[実施例7−2]
実施例7−1において、エチレン・1-ブテン共重合体(C7)を100重量部から200重量部に変更し、さらに、(B7−1)、(A7)、(C7)の合計100重量部に対して、酸化亜鉛3.0重量部、ジクミルペルオキシド(DCP)0.7重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)[商品名 M-60(TAIC含有量60%)、日本化成(株)製]0.2重量部(すなわちTAIC含量としては0.12重量部である)、1,2-ポリブタジエン0.4重量部、アゾジカルボンアミド3.7重量部を含む混合物に変更した以外は、実施例7−1と同様にして二次架橋発泡体を調製し、物性測定を行った。その結果を表7−2に示す。
【0839】
[実施例7−3]
実施例7−1において、エチレン・1-ブテン共重合体(C7)100重量部からエチレン・1-ブテン共重合体(C7)100重量部およびエチレン・酢酸ビニル共重合体(D7)100重量部に変更し、さらに、(A7−1)、(B7)、(C7)、(D7)の合計100重量部に対して、酸化亜鉛3.0重量部、ジクミルペルオキシド(DCP)0.7重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)[商品名 M-60(TAIC含有量60%)、日本化成(株)製]0.2重量部(すなわちTAIC含量としては0.12重量部である)、1,2-ポリブタジエン0.4重量部、アゾジカルボンアミド3.7重量部を含む混合物に変更した以外は、実施例7−1と同様にして二次架橋発泡体を調製し、物性測定を行った。その結果を表7−2に示す。
【0840】
[実施例7−4]
実施例7−1のプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(B7−1)をプロピレン・1-ブテン共重合体(B7−2)に変更し、さらに、(B7−2)、(A7)、(C7)の合計100重量部に対して、酸化亜鉛3.0重量部、ジクミルペルオキシド(DCP)0.7重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)[商品名 M-60(TAIC含有量60%)、日本化成(株)製]0.2重量部(すなわちTAIC含量としては0.12重量部である)、1,2-ポリブタジエン0.4重量部、アゾジカルボンアミド3.7重量部を含む混合物に変更した以外は、実施例7−1と同様にして二次架橋発泡体を調製し、物性測定を行った。その結果を表7−2に示す。
【0841】
[比較例7−1]
実施例7−1において、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(B7−1)80重量部から0重量部に変更し、アイソタクティックポリプロピレン(A7)20重量部から0重量部に変更し、さらに、エチレン・1-ブテン共重合体(C7)100重量部に対して、酸化亜鉛3.0重量部、ジクミルペルオキシド(DCP)0.7重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)[商品名 M-60(TAIC含有量60%)、日本化成(株)製]0.2重量部(すなわちTAIC含量としては0.12重量部である)、1,2-ポリブタジエン0.4重量部、アゾジカルボンアミド4.0重量部を含む混合物に変更した以外は、実施例7−1と同様にして二次架橋発泡体を調製し、物性測定を行った。その結果を表7−2に示す。
【0842】
[比較例7−2]
比較例7−1において、エチレン・1-ブテン共重合体(C7)100重量部からエチレン・酢酸ビニル共重合体(D7)100重量部に変更した以外は、比較例7−1と同様にして二次架橋発泡体を調製し、物性測定を行った。その結果を表7−2に示す。
【0843】
【表7-2】
【0844】
〈第八の発明〉
[原材料]
(A8)アイソタクティックポリプロピレン(rPP):
プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(Tm=140℃、MFR(230℃)=7g/10min、mmmm=0.96、Mw/Mn=4.8)を使用した。
(B8)プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(PEBR)
エチレン含量=14.0モル%、1-ブテン含量=20モル%、MFR=8.5g/10min、融点=観測されず(ΔH:0.5J/g未満)、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、ショアーA硬度=38、mm値=92%。
(国際公開2004/87775号パンフレットに記載の方法で製造した。)
具体的には以下のように製造した。すなわち充分に窒素置換した2000mLの重合装置に、917mLの乾燥ヘキサン、1−ブテン90gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を65℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.77MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.79MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温65℃、系内圧力を0.79MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mLのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、60.4gであった。
【0845】
(Y8)シランカップリング剤(VTMOS)
ビニルトリメトキシシラン、東レ・ダウコーニング製
(D8)エチレン・1-ブテン共重合体(EBR)
密度=870kg/m3、融点=53℃、MFR(230℃)=7.0g/10min、Mw/Mn=2.1。
【0846】
なお、上記原材料の物性値は下記方法にて測定されたものである。
(1)コモノマー(エチレン、1-ブテン)含量、mmmm(立体規則性:ペンタッドアイソタクティシティ)
13C-NMRスペクトルの解析により求めた。
(2)MFR
ASTM D-1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重におけるMFRを測定した。
(3)融点
DSCの発熱・吸熱曲線を求め、昇温時の最大融解ピーク位置の温度をTm、とした。測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温して200℃で5分間保持したのち、10℃/分で-150℃まで降温し次いで10℃/分で昇温する際の発熱・吸熱曲線より求めた。
(4)分子量分布(Mw/Mn)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、オルトジクロロベンゼン溶媒で、140℃で測定した。
(5)密度
密度はASTM D1505記載の方法に従い測定した。
【0847】
[評価項目]
・ 破断点強度、柔軟性
JIS K7113-2に準拠し、2mm厚みのプレスシートにて破断点強度(TS)、ヤング率(YM)を測定した。
・ 透明性(ヘイズ)(内部ヘイズ)
日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH-2000」を用い、シクロヘキサノール溶液中で測定した。1.0mm厚みのシートサンプルを用い、下式により計算した。
ヘイズ(%)=100×(拡散透過光量)/(全透過光量)
・ 耐熱性(TMA)
JIS K7196に準拠し、2mm厚みのシートサンプルを用いて、昇温速度5℃/minで1.8mmφの平面圧子に2Kgf/cm2の圧力をかけ、TMA曲線より針進入温度(℃)を求めた。
・ ガラス、PETとの接着強度
0.6mm厚みのシートサンプルを用いて、ガラス板(4mm厚)およびPETフィルム(東レ(株)製ルミラー、100μm厚)に加熱圧着(200℃、5min)させたときの剥離強度(−10℃冷却後、室温)を評価した。
○:強度に接着し剥離困難、△:接着しているが剥離可能、×:接着せず
・ ショア-A硬度
硬度硬度は、JIS K6301に準拠して、ショアーA硬度を測定した。(測定条件)プレス成形機によりシートを作製し、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。
【0848】
[実施例8−1]
アイソタクティックポリプロピレン(A8)(rPP)20重量部、およびプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(B8)(PEBR)80重量部に対し、シランカップリング剤(Y8)1.5部を配合し、ラボプラストミルにて混練(190℃、5min)した。プレス成形機を用いて、得られた樹脂組成物をシートサンプル(0.6mm、2mm厚)に成形し、上記項目を評価した。
【0849】
[比較例8−1]
アイソタクティックポリプロピレン(A8)(rPP)100重量部に対し、シランカップリング剤(Y8)1.5部を配合した。得られた樹脂組成物を、実施例8−1と同様の方法で評価した。
【0850】
[比較例8−2]
エチレン・1-ブテン共重合体(D8)(EBR)100重量部に対し、シランカップリング剤(Y8)1.5部を配合した。得られた樹脂組成物を、実施例8−1と同様の方法で評価した。
【0851】
【表8-1】
【0852】
〈第九の発明〉
[評価項目]
・ ヘイズ(内部ヘイズ)
日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH-2000」を用い、シクロヘキサノール溶液中で測定した。1.0mm厚みのシートサンプルを用い、下式により計算した。
ヘイズ(%)=100×(拡散透過光量)/(全透過光量)
・ 光線透過率(トランス)
1.0mm厚みのシートサンプルにて測定し、下式により計算した。
トランス(%)=100×(全透過光量)/(入射光量)
・ 耐熱性(TMA)
JIS K7196に準拠し、2mm厚みのシートサンプルを用いて、昇温速度5℃/minで1.8mmφの平面圧子に2Kgf/cm2の圧力をかけ、TMA曲線より針進入温度(℃)を求めた。
・ 機械物性(破断点強度、引張弾性率)JIS K7113-2に準拠し、2mm厚みのプレスシートにて破断点強度(TS)、ヤング率(YM)を測定した。
・ ガラスとの接着強度
0.6mm厚みのシートサンプルを用いて、ガラス板にプレス成形機を用いて加熱圧着(150℃、10min、0.2MPa)させたときの接着強度を引っ張り試験機により評価した(剥離速度300mm/min、剥離幅(サンプルの幅)1.5cm、Tピール法)。
・ ショア-A硬度
硬度硬度は、JIS K6301に準拠して、ショアーA硬度を測定した。(測定条件)
プレス成形機によりシートを作製し、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。
【0853】
[第九の発明に用いた原材料]
(A9)アイソタクティックポリプロピレン(iPP)
エチレン含量=3.0モル%、1-ブテン含量=1.0モル%、MFR(230℃)=7g/10min、融点=140℃
(B9)プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(PEBR)
エチレン含量=14.0モル%、1-ブテン含量=20モル%、MFR(230℃)=8.5g/10min、融点=観測されず(ΔH:0.5J/g未満)、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、ショアーA硬度=37、mm値=92%。
【0854】
なお、本発明に用いるプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体は、例えば国際公開2004/87775号の実施例1e〜5eと同様の方法で得ることができる。
本実施例においては具体的には、第8の発明の実施例に用いた(B8)プロピレン・ブテン・エチレン共重合体の製造方法に準じて製造した。
(C9)エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)
密度=950kg/m3、酢酸ビニル含量=28wt%、MFR(190℃)=15g/10min、融点=71℃
(D9)エチレン・1-ブテン共重合体(EBR)
密度=870kg/m3、融点=53℃、MFR(230℃)=7.0g/10min、Mw/Mn=2.1
(Y9)シランカップリング剤(VTMOS)
ビニルトリメトキシシラン、東レ・ダウコーニング製
(Z9)有機化酸化物(PH25B)
ジアルキル型過酸化物(パーヘキサ25B(日本油脂製))
(Z9−2)助剤(TAIC)
トリアリルイソシアヌレート(TAIC)[商品名 M-60(TAIC含有量60%)、日本化成(株)製]0.2重量部(すなわちTAIC含量としては0.12重量部)
【0855】
[上記原料の物性測定方法]
(1)コモノマー(エチレン、1-ブテン)含量
13C-NMRスペクトルの解析により求めた。
(2)MFR
ASTM D-1238に準拠し、190℃または230℃、2.16kg荷重におけるMFRを測定した。
(3)融点
DSCの発熱・吸熱曲線を求め、昇温時の最大融解ピーク位置の温度をTm、とした。測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温して200℃で5分間保持したのち、10℃/分で-150℃まで降温し次いで10℃/分で昇温する際の発熱・吸熱曲線より求めた。
(4)分子量分布(Mw/Mn)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、オルトジクロロベンゼン溶媒で、140℃で測定した。
(5)密度
密度はASTM D1505記載の方法に従い測定した。
【0856】
[実施例9−1]
表9−1からなる樹脂組成物を一軸押出機により溶融混錬(押出し温度220℃)した原料を用い、プレス成形機を用いてシートサンプル(0.6mm、1mm、2mm厚)を成形した(加熱温度190℃、加熱時間5min、冷却速度-40℃/min)。この太陽電池封止用シートサンプルについて上記物性を評価した結果を表9−1に示す。
【0857】
[実施例9−2]
実施例9−1と同様の方法で、表9−1からなる樹脂組成物(PH25Bを添加)を用いて太陽電池封止用シートサンプルを作成した。このサンプルについて上記物性を評価した結果を表9−1に示す。
【0858】
[実施例9−3]
実施例9−1と同様の方法で、表9−1からなる樹脂組成物(PH25B、TAICを添加)を用いて太陽電池封止用シートサンプルを作成した。このサンプルについて上記物性を評価した結果を表9−1に示す。
【0859】
[比較例9−1]
実施例9−1と同様の方法で表9−1からなる樹脂組成物を用いて太陽電池封止用シートサンプルを作製して、上記物性を評価した結果を表9−1に示す。
【0860】
[比較例9−2]
実施例9−1と同様の方法で表9−1からなる樹脂組成物を用いて太陽電池封止用シートサンプルを作製して、上記物性を評価した結果を表9−1に示す。
【0861】
【表9-1】
【0862】
〈第十の発明〉
[測定方法]
以下の実施例および比較例においては、電気電子素子用封止シートの特性を以下の測定方法に従って評価した。
・ 柔軟性
実施例におけるJIS K6301に準拠して、ショアーA硬度を測定した(実施例についてはシートの層(II−10)を形成する組成物を、比較例については単層シートを形成する組成物を、190℃で加熱後約40℃/minで冷却して得られた2mm厚みのプレスシートを用いて測定した。)。
・ 透明性(内部ヘイズ)
日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH-2000」を用い、シクロヘキサノール溶液中でシートの拡散透過光量および全透過光量を測定し、下式により内部ヘイズを計算した。
内部ヘイズ(%)=100×(拡散透過光量)/(全透過光量)
【0863】
・ 透明性(光線透過率)
フィルム表面の凹凸による影響を除去するために、PET(東レ(株)製 ルミラー)で保護しながら160℃で加熱加圧(160℃、2気圧、10min)後、空冷で放置した後、PETフィルムを剥がしてサンプル(厚み0.4mm)を得た。得られたサンプルを、日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH-2000」を用いて、下式により光線透過率を測定した。
光線透過率(%)=100×(全透過光量)/(入射光量)
・ 耐熱性(TMA)
JIS K7196に準拠して、実施例についてはシートの層(II−10)に対して、比較例については単層シートに対して、昇温速度5℃/minで1.8mmφの平面圧子に2Kgf/cm2の圧力をかけ、TMA曲線を測定し、これより針進入温度(℃)を求めた。
・ ガラスとの接着強度、外観
実施例についてはシートの層(I−10)を、比較例については単層シートを、ガラス板(4mm厚)に加熱圧着(条件1:150℃、2気圧、10min、条件2:160℃、2気圧、10min)させたときの剥離強度(室温)を評価した。結果を以下の基準に従い分類した。
A:強度に接着し剥離困難
B:接着しているが剥離可能
C:接着せず
・ 圧縮永久歪
JIS K6301に従い、厚み2mmtプレスシートを6枚重ね合わせて25%圧縮し、所定の温度(23℃、または70℃)で24時間保持した後解放し、試験後厚みを測定した。この結果より、下式に従って残留歪み(圧縮永久歪)を算出した。
残留歪(%)=100×(試験前厚み-試験後厚み)/(試験前厚み-圧縮時の厚み)
【0864】
[原材料]
以下の実施例および比較例において、サンプルの作製に使用した樹脂の種類、物性などは、以下のとおりである。
(A10)アイソタクティックポリプロピレン(rPP):
融点(Tm)=140℃、
メルトフローレート(MFR)(230℃)=7g/10min、
アイソタクティックペンタッド分率(mmmm)=0.96、
分子量分布(Mw/Mn)=4.8、エチレン含量=2.0モル%、1-ブテン含量=1.5モル%のプロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体を使用した。
(B10)プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(PEBR)
国際公開2004/87775号パンフレットの実施例に記載と同様の方法で製造した、
エチレン含量=14.0モル%、1-ブテン含量=20モル%、
メルトフローレート(MFR)(230℃)=8.5g/10min、
融点(Tm)=観測されず(ΔH:0.5J/g未満)、
mm値=92%、
分子量分布(Mw/Mn)=2.0、
ショアーA硬度=38のプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体を使用した。
【0865】
具体的には以下のように製造した。すなわち、充分に窒素置換した2000mLの重合装置に、917mLの乾燥ヘキサン、1−ブテン90gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を65℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.77MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.79MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温65℃、系内圧力を0.79MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mLのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、60.4gであった。
【0866】
(C10)エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)
エチレン含量=89mol%(FT-IR法)、
ショアーA硬度=79
メルトフローレート(MFR)(190℃)=15g/10minのエチレン-酢酸ビニル共重合体を使用した。
(D10)エチレン・1-ブテン共重合体(EBR)
メルトフローレート(MFR)(190℃)=15g/10min、
密度=870kg/m3
エチレン含量=85mol%、
ショアA硬度=72のエチレン・1-ブテンランダム共重合体を使用した。
(E10)エチレン・メタクリル酸共重合体(E(M)AA)
メタクリル酸含量=12wt%(FT-IR法)、
メルトフローレート(MFR)(190℃)=14g/10minのエチレン-メタクリル酸共重合体を使用した。
(Y10)シランカップリング剤
東レ・ダウコーニング製の3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを使用した。
(Z10)過酸化物
アルケマ吉富株式会社のDCP(ジクミルパーオキサイド)を使用した。
【0867】
[上記原料の物性測定方法]
(1)コモノマー(エチレン、1-ブテン)含量
13C-NMRスペクトルの解析により求めた。
(2)MFR
ASTM D-1238に準拠し、190℃または230℃、2.16kg荷重におけるMFRを測定した。
(3)融点
DSCの発熱・吸熱曲線を求め、昇温時の最大融解ピーク位置の温度をTm、とした。測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温して200℃で5分間保持したのち、10℃/分で-150℃まで降温し次いで10℃/分で昇温する際の発熱・吸熱曲線より求めた。
(4)分子量分布(Mw/Mn)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、オルトジクロロベンゼン溶媒で、140℃で測定した。
(5)密度
密度はASTM D1505記載の方法に従い測定した。
(6) ショア-A硬度
硬度硬度は、JIS K6301に準拠して、ショアーA硬度を測定した。(測定条件)プレス成形機によりシートを作製し、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。
【0868】
[実施例10−1]
アイソタクティックポリプロピレン(A10)(rPP)20重量部と、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(B10)(PEBR)80重量部とからなる熱可塑性組成物(23℃での圧縮永久歪:20%、70℃での圧縮永久歪:61%)を用いて層(II−10)を構成し(厚さ:300μm、押出し温度:190℃)、エチレン酢酸ビニル共重合体(C10)(EVA)100重量部、シランカップリング剤(Y10)1.5重量部、および過酸化物(Z10)1.0重量部を用いて層(I−10)を構成し(厚さ:100μm、押出し温度:120℃)、これらからなる多層シート(電気電子素子用封止シート)を得た。
得られたシートにつき、上記の測定を行った。結果を表10−1に示す。
【0869】
[実施例10−2]
アイソタクティックポリプロピレン(A10)(rPP)20重量部と、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(B10)(PEBR)80重量部とからなる熱可塑性組成物(23℃での圧縮永久歪:20%、70℃での圧縮永久歪:61%)を用いて層(II−10)を構成し(厚さ:300μm、押出し温度:190℃)、エチレン・1-ブテン共重合体(D10)(EBR)100重量部、シランカップリング剤(Y10)1.5重量部部、および過酸化物(Z10)1.0重量部を用いて層(I−10)を構成し(厚さ:100μm、押出し温度130℃)、これらからなる多層シート(電気電子素子用封止シート)を得た。
得られたシートにつき、上記の測定を行った。結果を表10−1に示す。
【0870】
[比較例10−1]
エチレン-酢酸ビニル共重合体(C10)(EVA)100重量部からなる単層シート(厚さ:400μm、押出し温度130℃)を得た。
得られたシートにつき、上記の測定を行った。結果を表10−1に示す。
【0871】
[比較例10−2]
エチレン・メタクリル酸共重合体(E10)(E(M)AA)100重量部からなる単層シート(厚さ:400μm、押出し温度130℃)を得た。
得られたシートにつき、上記の測定を行った。結果を表10−1に示す。
【0872】
[参考例10−3]
アイソタクティックポリプロピレン(A10)(rPP)20重量部および、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(B10)(PEBR)80重量部(合計100重量部)、シランカップリング剤(Y10)1.5重量部、および過酸化物(Z10)0.03部からなる単層シート(厚さ:400μm、押出し温度190℃、23℃での圧縮永久歪:24%、70℃での圧縮永久歪:66%)を得た。
得られたシートにつき、上記の測定を実施した。結果を表10−1に示す。
【0873】
【表10-1】
【産業上の利用可能性】
【0874】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、機械物性に優れるとともに、ゴム弾性すなわち圧縮永久歪特性に優れる。特に、圧縮永久歪の温度依存性が小さく、高温でもゴム弾性を保持していることから、自動車の内装部品・外装部品、土木・建材部品、家電部品、キャップライナー、ガスケット、日用雑貨(グリップ)などに好適に用いることができる。
【0875】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物および架橋物は、柔軟性および耐傷付き性・耐白化性のバランスに優れ、また低温混練可能であることから、自動車の内装部品・外装部品、土木・建材部品、家電部品、キャップライナー、ガスケット、日用雑貨(グリップ)などに好適に用いることができる。
【0876】
また、本発明のプロピレン系重合体組成物は、耐白化性、耐衝撃性、耐傷付き性、柔軟性、透明性、機械強度および伸縮性に優れ、この重合体組成物からなる成形体はブロー成形品、射出成形品、押出成形品(フィルム、シート)、インフレーション成形品、チューブなど産業上幅広く利用できる。
【0877】
また、本発明のフィルムは、高い熱収縮率を有すると共に、柔軟性、透明性、耐衝撃性および伸縮性に優れているため、熱収縮フィルム等に好適に使用することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高い熱収縮率を有すると共に、柔軟性、透明性、耐衝撃性および伸縮性に優れたフィルムの製造に好適に用いられる。
【0878】
また、本発明のポリオレフィン系化粧シートは、柔軟性、耐傷付き性、耐磨耗性、機械的強度(破断点強度)、耐熱性、延伸時の耐白化性、折り曲げ時の耐白化性、耐折れしわ性、耐水性および耐圧縮歪性に優れているため、用途としては特に限定されず、テレビキャビネット、ステレオスピーカーボックス、ビデオキャビネット、各種収納家具、ユニット家具等の家電製品・家具製品、ドア、ドア枠、窓枠、廻縁、巾木、開口枠等の住宅部材、厨房、収納家具扉等の家具部材、床材、天井材、壁紙等の建材商品、自動車内装材、家電品、文具、オフィス用品などの用途に好適に使用できる。
【0879】
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、無機系充填剤を高い割合で含み、かつ、良好な柔軟性とともに、優れた機械強度、破断点伸びおよび耐傷付き性を有する。さらに、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、無機系充填剤を高い割合で含むことから、難燃性を有した成形体、例えば、電線、建材などに幅広く利用できる。
【0880】
また、本発明の発明の発泡体用材料(X7)から、低比重で圧縮永久歪(CS)が小さく、しかも引裂強度特性、低反発性および耐傷付性に優れた発泡体を得ることができ、履き物または履き物用部品に使用することができる。履き物用部品としては、例えば、靴底、靴のミッドソール、インナーソール、ソール、サンダルなどが挙げられる。
【0881】
また、本発明の樹脂組成物は、金属、ガラスなどの無機材料、およびそのほか各種プラスチック材料に対して良好な熱接着力を示すとともに、幅広い温度における剥離強度に優れる。また、本発明の樹脂組成物は、柔軟性、耐熱性、透明性および機械強度にも優れるため各種材料として好適に使用できる。
【0882】
また、本発明の太陽電池封止用シートは、非架橋でも優れた耐熱性を有する。本発明の太陽電池封止用シートを用いることで、太陽電池モジュール生産時の架橋工程の省略が可能となるとともに、太陽電池のリサイクルも容易となる。
【符号の説明】
【0883】
1: 太陽電池モジュール用保護シート(表面保護シート)
2: 太陽電池モジュール用護シート(裏面保護シート)
3: 太陽電池用封止シート
4: 太陽電池用封止シート
31: 層(I−10)
41: 層(I−10)
32: 層(II−10)
42: 層(II−10)
5: 太陽電池素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9