特許第5657776号(P5657776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティドの特許一覧

特許5657776耐火物、ガラスオーバーフロー成形ブロック、およびガラス体の製造方法
<>
  • 特許5657776-耐火物、ガラスオーバーフロー成形ブロック、およびガラス体の製造方法 図000008
  • 特許5657776-耐火物、ガラスオーバーフロー成形ブロック、およびガラス体の製造方法 図000009
  • 特許5657776-耐火物、ガラスオーバーフロー成形ブロック、およびガラス体の製造方法 図000010
  • 特許5657776-耐火物、ガラスオーバーフロー成形ブロック、およびガラス体の製造方法 図000011
  • 特許5657776-耐火物、ガラスオーバーフロー成形ブロック、およびガラス体の製造方法 図000012
  • 特許5657776-耐火物、ガラスオーバーフロー成形ブロック、およびガラス体の製造方法 図000013
  • 特許5657776-耐火物、ガラスオーバーフロー成形ブロック、およびガラス体の製造方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5657776
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】耐火物、ガラスオーバーフロー成形ブロック、およびガラス体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/101 20060101AFI20141225BHJP
   C03B 5/43 20060101ALI20141225BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   C04B35/10 F
   C03B5/43
   C03B17/06
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-505218(P2013-505218)
(86)(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公表番号】特表2013-525241(P2013-525241A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】US2012028633
(87)【国際公開番号】WO2012125507
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2012年6月20日
(31)【優先権主張番号】61/451,748
(32)【優先日】2011年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593150863
【氏名又は名称】サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・チッティ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・エル・カズマークザック
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−504088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/101
C03B 5/43
C03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス体の成形に用いられる耐火物であって、少なくとも80質量%のAlと、5質量%以下のTaとを含み、且つ、TiO、CaO、SiO、Fe、NaOまたはこれらの任意の組み合わせの含量を、質量%で表わすと、0.5質量%以下である耐火物。
【請求項2】
ガラス体の成形に用いられる耐火物であって、少なくとも90質量%のAlと、5質量%以下のTaとを含み、且つ、TiO、CaO、SiO、Fe、NaOまたはこれらの任意の組み合わせの含量を、質量%で表わすと、0.5質量%以下であり、前記耐火物が、少なくとも2.0のアスペクト比を有する前記耐火物の粒子のパーセンテージが、30%以下、少なくとも2.0のアスペクト比を有する前記粒子が占めるパーセンテージ面積が、30%以下ということを含む特性を有する耐火物。
【請求項3】
前記耐火物が、ガラスオーバーフロー成形ブロックを有する請求項1または2に記載の耐火物。
【請求項4】
ーパントの量は、平均粒子サイズが、焼結操作中、300%を超えて増大しないようにするのに十分なものである請求項1または2に記載の耐火物。
【請求項5】
前記クリープ率が、1.0×10−5μm/(μm×hr)以下である請求項1または2に記載の耐火物。
【請求項6】
前記耐火物の粒子のアスペクト比のD10値が、1.2以下、前記アスペクト比のD50値が、1.6以下、前記アスペクト比のD90値が、2.7以下、あるいはこれらの任意の組み合わせである請求項1または2に記載の耐火物。
【請求項7】
前記耐火物の粒子サイズのD10値が、40μm以下、前記粒子サイズのD50値が、60μm以下、前記粒子サイズのD90値が、90μm以下、あるいはこれらの任意の組み合わせである請求項1または2に記載の耐火物。
【請求項8】
前記耐火物が、カルシウム、ケイ素、チタン、鉄、ナトリウムまたはこれらの任意の組み合わせを実質的に含まない請求項1または2に記載の耐火物。
【請求項9】
少なくとも80質量%のAl、およびTaを含むある量の第1のドーパントを含み、且つ、TiO、CaO、SiO、Fe、NaOまたはこれらの任意の組み合わせの含量を、質量%で表わすと、0.5質量%以下のガラスオーバーフロートラフを含む耐火物を提供するステップと、Al−Si−Mg酸化物を含むガラス材料を、前記ガラスオーバーフロートラフへ、前記ガラスオーバーフロートラフの縁を超えて流して、ガラス接触領域を画定するステップと、前記ガラス材料を流すとき、MgAlの層をガラス接触領域に沿って成形するステップと、を含むガラス体の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ガラスオーバーフロートラフおよびガラスオーバーフロー成形ブロックを含む耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化マグネシウムを含有するアルカリアルミノ−シリケートガラスは、機械的性能がより重要な用途に用いられている。これらのガラスは、液体ガラスが、ジルコン材料でできたガラスオーバーフロー成形ブロックの縁を超えて流れて、ガラスオーバーフロー成形ブロックの下部で溶融して、シートを成形するフュージョンドロープロセスを用いて成形することができる。ジルコン(ZrSiO)は、ZrOとSiOに解離する。SiO含量が多いと、ガラスへ溶解する際、気泡の形成へとつながる恐れがある。ZrOは、ZrO固体塊を界面で作る可能性があり、それは、ガラス成形欠陥へ放出され得る。従って、ガラスオーバーフロー成形ブロックは、ジルコン材料がガラスオーバーフロー成形ブロックの本体から摩滅するため、寿命が短く、一方、製造されるガラスは、その特性に悪影響を及ぼす望ましくない元素で汚染される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、添付の図面を参照することにより、より良く理解され、数多くの特徴および利点が当業者に明らかとなるであろう。
【0004】
異なる図面における同じ参照符号の使用は、同様または同一の項目を示している。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】耐火物の特定の実施形態を示す図である。
図2】ガラスオーバーフロートラフの特定の実施形態を示す図である。
図3】ガラスオーバーフロートラフの様々な断面透視図の特定の組を示す図である。
図4】ガラスオーバーフロートラフからの特定のガラスシートの成形を示す図である。
図5】ガラス製造中のガラスオーバーフロートラフの断面セットアップを示す図である。
図6】試料1の断面部分のSEM画像である。
図7】比較試料2の断面部分のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図面と組み合わせた以下の説明は、本明細書に開示された教示の理解を補助するためのものである。以下の議論は、教示の具体的な遂行および実施に焦点を合わせる。この焦点は、教示の説明を補助するためのものであって、教示の範囲または適用性を限定するとは解釈されないものとする。
【0007】
本明細書で用いる「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、「持つ」、「持っている」またはその他変形の用語は、非排他的な包括を包含することとする。例えば、特徴のリストを含むプロセス、方法、物品または装置は、それらの特徴に必ずしも限定されず、明示的にリストされていない、またはかかるプロセス、方法、物品または装置に固有の他の特徴も含んでよい。さらに、明示的にそれには反するとした場合を除き、「または」は、包括的なまたはであり、排他的なまたはでない。例えば、条件AまたはBを満足するのは次のうちのいずれかである。Aが真(または存在する)でBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)でBが真(または存在する)、およびAとBの両方が真(または存在する)。
【0008】
単数形(「a」または「an」)の使用は、本明細書に記載した要素および成分を記載するために使用される。これは、単に便宜上のために、かつ本発明の一般的な意味を与えるために使用される。この説明は、1つまたは少なくとも1つを含めるように読まれるべきであり、他の意味であることが明白でない限り、単数形には複数形も含まれる。例えば、単一のデバイスが本明細書で記載されているときは、単一のデバイスの代わりに、2つ以上のデバイスを用いてもよい。同様に、2つ以上のデバイスが本明細書で記載されているときは、その1つのデバイスを単一のデバイスに代えてもよい。
【0009】
粒子を参照するとき、「アスペクト比」という用語は、粒子の直径または他の幅により除算される粒子の最長寸法を意味するものとする。
【0010】
値を参照するときの「平均」と言う用語は、平均、幾何平均または中央値を意味するものとする。
【0011】
元素周期表の列に対応する族番号は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,81st Edition(2000−2001)にある「新表記法」規約を用いている。
【0012】
別に定義しない限り、本明細書で用いる科学技術用語は全て、本発明の属する当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。材料、方法および実施例は、例示のためのみであり、限定しようとするものではない。本明細書に記載されていない範囲の具体的な材料および処理作用に関する多くの詳細は従来のものであり、耐火物として用いるセラミック材料について、テキストブックおよびその他出典に出ているであろう。
【0013】
本明細書に記載した実施形態によれば、アルミナ系耐火物を成形することができ、アルミニウム、ケイ素およびマグネシウムを含むガラス(「Al−Si−Mgガラス」)を成形するのにより良好に調整された1つ以上の特性を有する。特に、本明細書に記載したアルミナ系耐火物は、前述のジルコンから成形された耐火物に比べ、アルカリアルミノ−シリケートガラスとより適合性がある。このように、アルカリアルミノ−シリケートガラスを成形するのにジルコン系耐火物を用いる際に見られる欠陥の多くは、本明細書に記載したアルミナ系耐火物により克服される。
【0014】
一組の実施形態において、耐火物の焼結中等加熱中のとき、または耐火物が使用中のとき、例えば、耐火物がガラスシート成形時にガラスオーバーフロー成形ブロックを有するとき等に、粒子サイズをより良好に制御することができる。例えば、アスペクト比は比較的低くなり得、特定の実施形態においては、粒子は実質的に等軸であり得る。他の実施例において、焼結中の粒子サイズの増大は、比較的低く保たれ得る。耐火物内における粒子サイズの制御および粒子の特定のアスペクト比の達成は、大きな粒子、より矩形の粒子またはその両方を有する耐火物よりも、耐火物とガラスとの間により安定な界面を与えることができる。耐火物中のより小さな粒子と、耐火物とガラスとの間のより安定な界面は、ガラスにおける欠陥の減少および耐火物を用いることのできる期間の増大に寄与し得る。耐火物はまた、クリープ率が少ないため、耐火物、特に、ガラスオーバーフロー成形ブロックを、耐火物の交換が必要となるまで、長い期間にわたって使用することが可能となり得る。
【0015】
本明細書を読めば、当業者であれば、特性の全てが全ての実施形態において必要ではなく、特性の説明は、本明細書に記載した概念を例示し、限定しないことを意味することが分かるであろう。
【0016】
耐火物は、少なくとも10重量%(以降、「wt%」)のAlを含有する焼結セラミック材料とすることができる。焼結セラミック材料は、少なくとも約50wt%、約60wt%、約70wt%、約80wt%、約85wt%、約90wt%、約93wt%、約95wt%、約97wt%、約98wt%、約99wt%またはさらに約99.5wt%のAlを有することができる。
【0017】
耐火物は、特定のドーパントをさらに含むことができ、ドーパントは、希土類元素、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)の酸化物またはこれらの任意の組み合わせを有する。本明細書で用いる「希土類元素」には、 スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)またはランタノイドのいずれか(ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジミウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu))が含まれる。例えば、特定のドーパントは、Ta、Nb、Nb、ZrO、HfO、Y、Sc、Yb、Pr、Sm、Gd、La、CeO、Dyまたはこれらの任意の組み合わせとすることができる。あるいは、前述の元素のいずれかを、金属酸化物でなく、ホウ化物、炭化物、ハロゲン化物、リン酸塩等として添加してもよい。
【0018】
耐火物は、焼結剤等の他のドーパントを含むことができる。特定の実施例において、焼結剤は、気孔率を減じるのを補助することができる。焼結剤の一例としては、Ta、Nb、Nb、TiO、Fe、MnO、CuO、その他好適な焼結剤またはこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。特定の実施形態において、Ta、NbまたはNb等の前述した特定のドーパントが、焼結剤としても作用し得るときは、別個の焼結剤は用いない。
【0019】
一実施形態において、耐火物は、実質的にゼロまたは非常に低い含量のTi、Ca、Si、Fe、Naまたはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。Ti、Ca、Si、FeまたはNaは、Alの粒子サイズを大きくし過ぎる可能性がある。TiO、CaO、SiO、Fe、NaOまたはこれらの任意の組み合わせのwt%で表わすと、含量は、約0.5wt%以下であってもよい。他の実施形態において、含量は、約0.09wt%以下、約0.05wt%以下または約0.009wt%以下であってもよい。カルシウム、シリコンまたは鉄が、Al等の出発材料中に望ましくない不純物として存在する可能性があるが、TiO、CaO、SiO、Fe、NaOは、耐火物の対応のグリーン体を成形する前、粉末と組み合わせるとき、別個の成分として添加しなくてもよい。他の実施形態において、必要な粒子サイズ、形状およびアスペクト比が達成できるのであれば、Ti、Ca、Si、Fe、Naまたはこれらの任意の組み合わせを添加して、恩恵を与えてもよい。
【0020】
一実施形態において、特定のドーパントを含む任意のドーパントの量は、少なくとも約0.02wt%、少なくとも約0.11wt%、少なくとも約0.2wt%、少なくとも約0.5wt%、少なくとも約0.7,wt%、少なくとも約0.9wt%、少なくとも約1.0wt%または少なくとも約1.1wt%とすることができる。他の実施形態において、量は、約5wt%以下、約4wt%以下、約3wt%以下、約2wt%以下または約1.5wt%以下としてもよい。
【0021】
さらなる実施形態において、希土類元素、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)またはこれらの任意の組み合わせを含む特定のドーパントに関して、かかる特定のドーパントの量は、Alの平均粒子サイズを、焼結中、必要な量を超えて増大しないようにするのに十分となるように選択することができる。特定の実施形態において、特定のドーパントの量は、焼結中の粒子成長が、約500%以下、約400%以下、約300%以下、約200%以下または約100%以下となるような量で存在してもよい。
【0022】
焼結セラミック材料において、Alは、約90μm以下の平均粒子サイズを有する粒子の形態にあってもよい。粒子サイズは、研磨片の観察および多数の単一粒子(無作為に選択した少なくとも100粒子)の長さ(最大寸法)と幅(最小寸法)の想定から推定する。平均粒子サイズは、幅、長さまたはこれらの組み合わせ、例えば、平均幅および平均長さの平均(すなわち、(平均幅+平均長さ)/2)を用いて求めることができる。
【0023】
平均幅または平均長さに関して、個々の粒子についてのサイズ情報を得るために記載した同じ技術を用いて、粒子のサイズの中央値についての情報を得ることができる。粒子の長さについての中央値は、約60μm以下、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下または約20μm以下であってもよい。
【0024】
このように、平均粒子サイズは、平均幅、平均長さ、幅または長さに対応する中央値等を基準とすることができる。明らかに、粒子サイズを比べるとき、試料の長さを、他の試料または先行技術の組成物の長さと比べ、試料の幅を、他の試料または先行技術の組成物の幅と比べ、試料の粒子の中央値を、他の試料または先行技術の組成物の粒子の中央値と比べる。一実施形態において、平均粒子サイズは、約30μm以下であり、他の実施形態において、平均粒子サイズは、約20μm以下であり、さらなる実施形態において、平均粒子サイズは、約15μm以下である。一実施形態において、平均粒子サイズは、少なくとも約1μm、他の実施形態において、平均粒子サイズは、少なくとも約2μm、さらなる実施形態において、平均粒子サイズは、少なくとも約5μmである。
【0025】
他の実施形態において、サイズ分布は、平均長さおよび幅に関して前述したとおり、粒子について集めたデータから求めることができる。本明細書で用いるD10値は、10パーセンタイルを表わし、D50値は、50パーセンタイルを表わし、D90値は、90パーセンタイルを表わす。このように、D50は、中央値に対応する。長さを、粒子サイズの基準として用いる実施形態において、粒子の粒子サイズのD10値は、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約15μm以下または約11μm以下である。他の実施形態において、D50値は、約60μm以下、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下または約20μm以下である。さらなる実施形態において、D90値は、約90μm以下、約70μm以下、約50μm以下、約40μm以下または約35μm以下である。D10、D50およびD90値は、少なくとも約1μmである。
【0026】
焼結セラミック材料内の粒子サイズの分布は、単一モードまたは2、3、4等の多重モードを有することができる。一実施形態において、焼結セラミック材料は、平均粒子サイズの二峰性分布を有することができる。特定の実施形態において、モードの1つは、他のモードの平均粒子サイズの約50%未満、約40%未満または約30%未満である平均粒子サイズを有することができる。
【0027】
さらなる実施形態において、アスペクト比は、平均長さおよび幅に関して前述した粒子について集めたデータから求めることができる。アスペクト比は、平均幅で除算した平均長さとすることができる。アスペクト比の中央値に関しては、中央値は、約1.6未満、約1.55以下、約1.50以下または約1.45以下である。
【0028】
耐火物の粒子の平均アスペクト比は、焼結セラミック材料内で約4.0を超えないであろう。他の実施形態において、平均アスペクト比は、約3.0以下、約2.5以下、約2.2以下、約2.0以下または約1.5以下である。
【0029】
一実施形態において、分布データを用いることができる。アスペクト比のD10値は、1.2未満、約1.16以下、約1.14以下または約1.12以下である。他の実施形態において、アスペクト比のD50値は、1.6未満、約1.55以下、約1.50以下または約1.45以下である。さらなる実施形態において、アスペクト比のD90値は、約2.7以下、約2.3以下、約2.0以下または約1.8以下である。D10、D50およびD90値は、少なくとも1.0である。
【0030】
アスペクト比に関して粒子を分類する他のやり方は、少なくとも2.0のアスペクト比を有する粒子のパーセンテージを求めるものである。一実施形態において、少なくとも2.0のアスペクト比を有する粒子のパーセンテージは、約30%以下、約20%以下、約9%以下または約5%以下である。あるいは、分類は、少なくとも2.0のアスペクト比を有する粒子が占めるパーセンテージ面積を基準とすることができる。一実施形態において、少なくとも2.0のアスペクト比を有する粒子が占める面積のパーセンテージは、約35%以下、約25%以下、約15%以下または約5%以下または約3%以下である。
【0031】
粒子サイズの分布データ(例えば、粒子の長さ)、アスペクト比またはその両方を基準として、本明細書に記載した概念に従って作製された耐火物は、粒子サイズおよびアスペクト比の極めて狭い分布を有する。
【0032】
特定の実施形態において、耐火物の密度および気孔率は、ASTM C20−00標準試験方法(改訂2005)を用いて求めることができる。一実施形態において、密度は、少なくとも約3.3g/cc、少なくとも約3.5g/cc、少なくとも約3.6g/ccまたは少なくとも約3.65g/ccとすることができる。他の実施形態において、密度は、約3.9g/cc以下、約3.8g/cc以下または3.7g/cc以下であってもよい。気孔率は、パーセンテージとして表わされる。一実施形態において、耐火ブロックの気孔率は、約11%以下である。他の実施形態において、気孔率は、約9%以下、約7%以下、約5%以下である。他の実施形態において、気孔率は、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.3%、少なくとも約1.1%、少なくとも約2.0%または少なくとも約3.0%である。
【0033】
耐火物は、前述した金属酸化物を用いて成形することができる。一実施形態において、出発材料は、金属酸化物の粉末を含むことができる。Al粉末は、平均粒子サイズが約100μm以下の粒子の形態とすることができる。一実施形態において、平均粒子サイズは、約30μm以下、他の実施形態において、平均粒子サイズは、約20μm以下、さらなる実施形態において、平均粒子サイズは、約15μm以下である。一実施形態において、平均粒子サイズは、少なくとも約0.5μm、他の実施形態において、平均粒子サイズは、少なくとも約1.0μm、さらなる実施形態において、平均粒子サイズは、少なくとも約5.0μmである。
【0034】
特定の実施形態において、異なる粒子サイズを有するAl粉末の組み合わせを用いることができる。異なる粒子サイズのAl粉末の数は、2、3、4以上とすることができる。より特定の実施形態において、2つの異なる粒子サイズを有するAl粉末を用いる。特定の実施形態において、Al粉末の1つは、他のAl粉末の平均粒子サイズの約50%未満、約40%未満または約30%未満である平均粒子サイズを有することができる。例えば、Al粉末の1つが、2μmの公称粒子サイズを有することができ、他のAl粉末は、10μmの公称粒子サイズを有することができる。異なる粒子サイズのAl粉末は、任意の比率で混合することができる。例えば、2つの異なる粒子サイズを有するAl粉末は、約1:99、約2:98、約3:97、約10:90、約20:80、約50:50、約80:20、約90:10、約97:3、約98:2または約99:1の比率で混合することができる。同様に、3つ以上の異なるサイズを有するAl粉末の混合物を、特定の用途について、必要性または要望に適合する比率で調製することができる。
【0035】
他の出発材料は、希土類元素、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)の酸化物またはこれらの任意の組み合わせを含む粉末を挙げることができる。このような酸化物は、耐火物に関して記載してある。ドーパント出発材料は、任意の酸化状態酸化物、例えば、M2+、M3+、M4+、M5+またはこれらの任意の組み合わせ(式中、Mは、希土類元素、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、マグネシウム(Mg)、ZrまたはHfである)を有してもよい。ドーパントは、酸化物、ホウ化物、炭化物、ハロゲン化物、リン酸塩またはこれらの任意の組み合わせとして添加することができる。一実施形態において、粉末は、約30μm以下の平均粒子サイズを有する粒子の形態とすることができ、他の実施形態において、平均粒子サイズは、約20μm以下、さらなる実施形態において、平均粒子サイズは、約15μm以下である。一実施形態において、平均粒子サイズは、少なくとも約0.1μm、他の実施形態において、平均粒子サイズは、少なくとも約0.5μm、さらなる実施形態において、平均粒子サイズは、少なくとも約1μmである。
【0036】
用いることのできる追加の材料としては、バインダー、溶剤、分散剤、増粘剤、解膠剤、その他好適な成分またはこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。一実施形態において、追加の材料は、非金属化合物を含むことができる。他の実施形態において、追加の材料は、有機化合物、水等を含むことができる。
【0037】
粉末および追加の材料を組み合わせて成形し、グリーン体を所望の形状に成形する。成形は、スリップキャスティング、単軸プレス成形、静水圧プレス成形、ゲルキャスティング、ビブロキャスティングまたはこれらの任意の組み合わせ等の技術を用いて実施することができる。形状は、直線、円柱、球、楕円またはほぼあらゆるその他形状とすることができる。特定において、本体は、後に機械加工すると、ガラスオーバーフロー成形ブロックを成形することのできるブランクと呼ばれる直線ブロック形状とすることができる。他の実施形態において、グリーン体は、任意のさらなる機械処理の程度を減じるために、最終耐火物により近く適合させるやり方で構築することができる。例えば、耐火物が、ガラスオーバーフロー成形ブロックを有するときは、グリーン体の形状は、後の機械加工および廃棄されるであろうセラミック材料の量を減じるために、ガラスオーバーフロー成形ブロックにより似たものとするとよい。より具体的には、グリーン体は、テーパ部分近くに直線部分を有していてもよい。直線部分およびガラスオーバーフロートラフが成形されるであろう領域に対応する。他の実施形態において、テーパ部分に近接するガラスオーバーフロートラフを有するように、グリーン体を成形してもよい。
【0038】
グリーン体を成形した後、グリーン体をオーブン、ヒーター、炉等で加熱して、焼結セラミック材料を含む耐火物を成形する。加熱プロセスは、水分、溶剤またはその他揮発性成分を蒸発する、有機材料を気化する、またはこれらの任意の組み合わせである初期加熱を含むことができる。初期加熱は、約100℃〜約300℃の範囲の温度で、約10時間〜約200時間の範囲の時間にわたって実施することができる。初期加熱後、焼結を、約1400℃〜1700℃の範囲の温度で、約10時間〜約100時間の範囲の時間にわたって行って、耐火物を成形することができる。
【0039】
耐火物の形状は、概して、グリーン体の形状に対応している。したがって、耐火物は、グリーン体に関して前述した任意の形状を有していてもよい。焼結中、収縮がある程度生じる可能性があり、耐火物は、グリーン体より小さくなる可能性がある。図1に示す実施形態において、耐火物100は、長さ(l)、幅(w)および高さ(h)を有する直線形状を有する耐火ブロック102とすることができる。一実施形態において、寸法l、wまたはhのいずれも、少なくとも約0.02m、少なくとも約0.05m、少なくとも約0.11m、少なくとも約0.5m、少なくとも約1.1m、少なくとも約2.0m、少なくとも約4.0m以上とすることができる。図1に示す実施形態において、耐火ブロック102は、ガラスオーバーフロー成形ブロックを成形することのできるブランクとすることができる。
【0040】
耐火物を機械加工すると、異なる形状、より平滑な表面またはその両方を作製することができる。耐火ブロック102を機械加工すると、図2に示すようなガラスオーバーフロー成形ブロック200を成形することができる。ガラスオーバーフロー成形ブロック200は、耐火物でもあり、ガラスオーバーフロートラフ部分202およびテーパ部分204を含む本体を有する。ガラスオーバーフロートラフ部分202は、ガラスオーバーフロー成形ブロック200の長さに沿って減少する幅を有するトラフを含む。図3は、テーパ部分204の例示の形状の断面図を含む。より具体的には、テーパ部分は、くさび形2042、凹形2044または凸形2046を含むことができる。特定の用途について、必要性または要望に適合するために、他の形状を用いてもよい。
【0041】
耐火物は、特に注目すべき1つ以上の特性を有することができる。かかる特性としては、クリープ抵抗、気孔率、粒子サイズおよび粒子のアスペクト比を挙げることができる。気孔率、粒子サイズおよび粒子のアスペクト比は、前述したとおりである。
【0042】
曲げクリープ率は、耐火物に、所定の温度で所定の期間にわたって所定の機械的応力を課したときに、耐火物の長さに直交する方向における耐火物のたわみ率の尺度である。特定の実施形態において、クリープ率は、内側支持体を40mm離して、外側支持体間の距離を80mmとした4点曲げ装置を用いて測定される。試験材料の8×9×100mm表面アース棒を下部支持体に配置し、2MPaの応力を上部固定具から加えた。試験を1275℃の温度で50時間行う。時間の関数としての棒のたわみを、全試験中に記録し、棒の変形を計算する。特定の実施形態において、Hollenbergモデルを用いて、「Calculation of Stresses and Strains in Four Point Bending Creep Tests」G.W.Hollenbergら著、J.Am.Ceram.Soc.,Vol.54,N°6,p196−199(1971)に記載されているとおり、棒のたわみから棒の変形を計算することができる。クリープ率は、浸漬中の変形の誘導から求められ、μm/(μm×hr)で表わされる。一実施形態において、クリープ率は、約1.0×10−5μm/(μm×hr)以下、約5.0×10−6μm/(μm×hr)以下、約3.0×10−6μm/(μm×hr)以下または約2.0×10−6μm/(μm×hr)以下である。
【0043】
ガラスオーバーフロー成形ブロックの形態にある耐火物は、溶融プロセスによりガラスシートを成形するのに有用であり得る。図4および5は、それぞれ、ガラスシート302の成形中のガラスオーバーフロー成形ブロックの斜視図および断面図を含む。ガラスオーバーフロー成形ブロックは、約1050℃〜約1300℃の範囲の温度まで加熱される。ガラスオーバーフロー成形ブロックは、前述した、ガラスオーバーフロートラフ部分202とテーパ部分204を含む。図示した実施形態において、ガラスオーバーフロー成形ブロックはまた、形成されるガラスシート302の幅を一般的に画定する端部ガード206も含む。ガラスオーバーフロー成形ブロックは、溶融ガラス組成物を受ける入口ポート208をさらに含む。ガラスオーバーフロートラフ部分202内のトラフは、トラフが充填されるまで、溶融ガラス組成物を受ける。その後、溶融ガラス組成物は、ガラスオーバーフロートラフ部分202の対向する縁を超えて流れる。すると、溶融ガラス組成物は、ガラスオーバーフロートラフ部分202およびテーパ部分204の対向する外側表面に沿って流れる。ガラスオーバーフロートラフ部分202の反対のテーパ部分204の端部で、対向する外側表面に沿った溶融ガラス組成物は、一緒に溶融して、ガラスシート302を成形する。他の実施形態において、他のタイプのガラス体を成形してもよい。
【0044】
一実施形態において、ガラスシート302は、少なくとも約20μm、少なくとも約30μmまたは少なくとも約50μmの厚さを有することができる。他の実施形態において、ガラスシート302は、約5mm以下、約3mm以下または約1.1mm以下の厚さを有していてもよい。幅に関して、この方法によれば、ガラスシート302を任意の所望の幅とするように端部ガード206を設定することができる。例えば、ガラスシート302は、少なくとも約0.5m、少なくとも約1.1m、少なくとも約2.0m、少なくとも約4.0m以上であることができる。
【0045】
特定の実施形態において、溶融ガラス組成物は、Al−Mg−Siガラスを含む。さらに特定の実施形態において、溶融ガラス組成物は、アルカリAl−Mg−Siガラスに関して記載したものと実質的に同じである。図5を参照すると、ガラス成形プロセス中、溶融ガラス組成物からのMgは、ガラスオーバーフロー成形ブロックの本体304の表面に沿って、層306を成形することができる。層は、Mg−Al酸化物を含むことができる。より特定的な実施形態において、層は、MgAlを含むことができ、式中、z=x+1.5yである。他のより特定的な実施形態において、層306は、Mg−Alスピネルを含む。
【0046】
ガラスオーバーフロー成形ブロックを用いてガラスを成形する前に、本体304は、Alを含むことができ、別個の相またはMg−Al酸化物の層は含まない。溶融ガラス組成物が流れて、ガラスシート302を成形するにつれて、本体304の部分は、溶融ガラス組成物と接触して、ガラス接触領域を画定する。層306は、溶融ガラス組成物が、ガラス接触領域に沿って流れるとき、本体304のガラス接触領域に沿って成形される。Mg−Al酸化物を含む層306は、本体304(例えば、Al)から溶融ガラス組成物へ移動する材料の量を減じる拡散バリアとして機能し得る。層306の初期成形後、ガラスシート302は、ガラスオーバーフロー成形ブロックの寿命にわたってより一貫した組成を有することができ、ガラスオーバーフロー成形ブロックの気孔率は、層306が成形されない場合と比べて、減じるであろう。
【0047】
さらに、層306を最初に成形すると、ガラスオーバーフロー成形ブロックの耐用寿命にわたって実質的に同じ温度のままとすることができる。温度が大幅に変化しないため、層306が破砕または剥離する可能性は実質的に減る。従って、本体304および層306内の材料の熱膨張係数の差は、本明細書に記載した実施形態については、大きな設計上の懸案事項ではない。
【0048】
かかる実施形態を、ガラスオーバーフロー成形ブロックを、オーブン、炉またはその他同様の装置に設置する前に、ガラスオーバーフロー成形ブロックの全露出面に沿ってMg−Alスピネル層でコートされたアルミナ含有本体(以降、「プレコートガラスオーバーフロー成形ブロック」)と比べてみる。プレコートガラスオーバーフロー成形ブロックの本体および層は、異なる組成を有している。プレコートガラスオーバーフロー成形ブロックを設置したら、プレコートガラスオーバーフロー成形ブロックの温度を、略室温(例えば、20℃〜25℃)からガラス成形について前述したとおりの温度まで上げる。プレコートガラスオーバーフロー成形ブロックの外側に沿った層は、プレコートガラスオーバーフロー成形ブロックが露出される広い温度範囲のために、破砕または剥離する可能性が非常に高い。このように、層の一部が溶融ガラス組成物へ裂ける、またはその他悪影響が生じる可能性がある。
【0049】
多くの異なる態様および実施形態が可能である。これらの態様および実施形態のいくつかは本明細書に記載されている。本明細書を読めば、当業者であれば、これらの態様および実施形態が例示のためのみであり、本発明の範囲を限定しないことが分かるであろう。
【0050】
第1の態様において、耐火物は、ガラス体の成形に用いることができる。耐火物は、少なくとも10wt%のAlを含むことができ、第1のドーパントは、希土類元素、Ta、Nb、Hfの酸化物またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0051】
第1の態様の実施形態において、耐火物は、平均粒子サイズが、焼結操作中、500%を超えて増大しないような十分な量の第1のドーパントを含み、約4.0以下の平均アスペクト比を有する粒子、アルミナ含有粒子のアスペクト比のD10値は約1.2以下であり、アルミナ含有粒子のアスペクト比のD50値は約1.6以下であり、アルミナ含有粒子のアスペクト比のD90値が約2.7以下の粒子、少なくとも2.0のアスペクト比を有する粒子のパーセンテージは約30%以下であり、少なくとも2.0のアスペクト比を有する粒子が占めるパーセンテージ面積は約35%以下であり、約90μm以下の平均粒子サイズ、粒子の粒子サイズのD10値は約40μm以下であり、粒子の粒子サイズのD50値は約60μm以下であり、粒子の粒子サイズのD90値は約90μm以下であり、2MPaの圧力および1275℃の温度で測定される約1.0×10−5μm/(μm×hr)以下のクリープ率またはこれらの任意の組み合わせの特性を有する。
【0052】
第2の態様において、耐火物は、ガラス体を成形するのに用いることができる。耐火物は、少なくとも10重量%のAlを含むことができる。耐火物は、平均粒子サイズが、焼結操作中、500%を超えて増大しないような十分な量の第1のドーパントを含み、約4.0以下の平均アスペクト比を有する粒子、アルミナ含有粒子のアスペクト比のD10値は約1.2以下であり、アルミナ含有粒子のアスペクト比のD50値は約1.6以下であり、アルミナ含有粒子のアスペクト比のD90値は約2.7以下であり、少なくとも2.0のアスペクト比を有する粒子のパーセンテージは約30%以下であり、少なくとも2.0のアスペクト比を有する粒子が占めるパーセンテージ面積は約35%以下であり、約90μm以下の平均粒子サイズ、粒子の粒子サイズのD10値は約40μm以下であり、粒子の粒子サイズのD50値は約60μm以下であり、粒子の粒子サイズのD90値は約90μm以下であり、2MPaの圧力および1275℃の温度で測定される約1.0×10−5μm/(μm×hr)以下のクリープ率またはこれらの任意の組み合わせの特性を有する。
【0053】
第3の態様において、ガラス体を成形する方法は、ガラスオーバーフロートラフを含む耐火物を提供することを含むことができる。耐火物は、少なくとも10重量%のAlを含むことができ、ある量の第1のドーパントは、希土類元素、Ta、Nb、Hfの酸化物またはこれらの任意の組み合わせを含む。この方法は、Al−Si−Mg酸化物を含むガラス材料を、ガラスオーバーフロートラフへ、ガラスオーバーフロートラフの縁を超えて流して、ガラス接触領域を画定することも含むことができる。この方法は、ガラス材料を流すとき、MgAlの層をガラス接触領域に沿って成形することをさらに含むことができる。
【0054】
第3の態様の実施形態において、ガラス体は、ガラスシートの形態にある。特定の実施形態において、ガラスシートは、少なくとも約20μm、少なくとも約30μmまたは少なくとも約50μmの厚さを有する。他の特定の実施形態において、ガラスシートは、約5mm以下、約3mm以下または約1.1mm以下の厚さを有する。さらに他の実施形態において、ガラスシートは、少なくとも約0.2m、少なくとも約0.5m、少なくとも約0.7m、少なくとも約1.1m、少なくとも約2.0m、少なくともまたは少なくとも約2.8mの幅を有する。さらなる実施形態において、ガラス体は、アルカリガラスを含む。
【0055】
第4の態様において、耐火物を成形する方法は、少なくとも10重量%のAlを含む本体を作製することを含むことができ、ある量の第1のドーパントは、希土類元素、Ta、Nb、Hfの酸化物またはこれらの任意の組み合わせを含む。この方法はまた、耐火物を成形するために、本体を焼結することも含むことができる。
【0056】
第4の態様の実施形態において、この方法は、耐火物を、ガラスオーバーフロー成形ブロックへと成形することをさらに含む。他の実施形態において、本体は、ガラスオーバーフロー成形ブロックの形状を有する。
【0057】
本明細書に記載した実施形態または態様のいずれかの特定の実施形態において、第1のドーパントは、Ta、Nb、ZrO、HfO、MgO、Y、Sc、Yb、Pr、Sm、Gd、La、CeO、Dyまたはこれらの任意の組み合わせである。他の実施形態において、Alは、少なくとも80重量%、90重量%または95重量%の量で存在する。さらに他の実施形態において、耐火物または方法は、焼結剤を含む第2のドーパントをさらに含む。特定の実施形態において、第1のドーパントは、Zr、Hf、Mg、Y、Sc、Yb、P、Sm、Gd、La、Ce、Dyまたはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0058】
本明細書に記載した実施形態または態様のいずれかの特定の実施形態において、第1のドーパントの量は、平均粒子サイズが、焼結操作中、約500%を超えて、約400%を超えて、約300%を超えて、約200%を超えて、または約100%を超えて増大しないようにするのに十分なものである。他の特定の実施形態において、クリープ率は、約1.0×10−5μm/(μm×hr)以下、約5.0×10−6μm/(μm×hr)以下、約3.0×10−6μm/(μm×hr)以下または約2.0×10−6μm/(μm×hr)以下である。
【0059】
本明細書に記載した実施形態または態様のいずれかの特定の他の実施形態において、平均アスペクト比は、約3.0以下、約2.5以下、約2.2以下または約2.0以下である。さらなる特定の実施形態において、アスペクト比のD10値は、約1.2以下、約1.16以下、約1.14以下または約1.12以下であり、アスペクト比のD50値は、約1.6以下、約1.55以下、約1.50以下または約1.45以下であり、アスペクト比のD90値は、約2.7以下、約2.3以下、約2.0以下または約1.8以下あるいはこれらの任意の組み合わせである。さらに特定の実施形態において、少なくとも2.0のアスペクト比を有する粒子のパーセンテージは、約30%以下、約20%以下、約9%以下または約5%以下であり、少なくとも2.0のアスペクト比を有する粒子が占めるパーセンテージ面積は、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約15%以下、約5%以下または約3%以下あるいはこれらの任意の組み合わせである。
【0060】
本明細書に記載した実施形態または態様のいずれかの特定の実施形態において、第1のドーパントの重量基準の量は、約5wt%以下、約4wt%以下、約3wt%以下、約2wt%以下または約1.5wt%以下である。さらに他の特定の実施形態において、第1のドーパントの重量基準の量は、少なくとも約0.02wt%、少なくとも約0.11wt%、少なくとも約0.2wt%または少なくとも約0.5wt%である。さらに他の特定の実施形態において、耐火物または方法は、焼結剤であり、第1のドーパントとは異なる第2のドーパントをさらに含む。さらなる特定の実施形態において、第1のドーパントは、Ta、Nbまたはこれらの任意の組み合わせである。さらに特定の実施形態において、耐火物は、カルシウム、ケイ素、チタン、鉄、ナトリウムまたはこれらの任意の組み合わせを実質的に含まない。
【0061】
さらに特定の実施形態において、耐火物は、TiO、CaO、SiO、Fe、NaOまたはこれらの任意の組み合わせを、約0.5wt%以下、約0.09wt%以下、約0.05wt%以下または約0.009wt%以下の濃度で含む。
【0062】
本明細書に記載した実施形態または態様のいずれかの特定の実施形態において、耐火物は、少なくとも約3.3g/cc、少なくとも約3.5g/cc、少なくとも約3.6g/ccまたは少なくとも約3.65g/ccの密度を有する。他の特定の実施形態において、耐火物は、約3.9g/cc以下、約3.8g/cc以下または約3.7g/cc以下の密度を有する。さらに他の特定の実施形態において、耐火物は、少なくとも約0.1%、少なくとも約1.1%、少なくとも約2.0%または少なくとも約3.0%の気孔率を有する。さらなる実施形態において、耐火物は、約9.0vol%以下、約7.0vol%以下または約5.0vol%以下の気孔率を有する。
【0063】
本明細書に記載した実施形態または態様のいずれかの特定の実施形態において、粒子サイズのD10値は、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約15μm以下または約11μm以下であり、粒子サイズのD50値は、約60μm以下、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下または約20μm以下であり、粒子サイズのD90値は、約90μm以下、約70μm以下、約50μm以下、約40μm以下または約35μm以下あるいはこれらの任意の組み合わせである。他の特定の実施形態において、耐火物は、約90μm以下、約30μm以下、約20μm以下または約15μm以下の平均粒子サイズを有する。さらに他の特定の実施形態において、耐火物は、複数のモードを有するサイズ分布の粒子を含み、第1のモードは、少なくとも約0.5μm、少なくとも約1.0μmまたは少なくとも約5.0μmの第1の平均粒子サイズを有する第1の組の粒子を含む。さらに特定の実施形態において、サイズ分布は、約20μm以下、約15μm以下または約12μm以下の第2の平均粒子サイズを有する第2の組の粒子を含む第2のモードを有する。さらに他の特定の実施形態において、耐火物は、少なくとも95重量%のAlを含み、第1のドーパントは、Ta、Nb、HfOまたはこれらの任意の組み合わせを、約0.2≦x≦約5重量%、約0.5≦x≦約4重量%、約0.8≦x≦2.5重量%、約1≦x≦約2重量%で、かつ約2.0以下の平均アスペクト比を有する粒子サイズで含む。
【0064】
本明細書に記載した実施形態または態様のいずれかのさらに特定の実施形態において、耐火物は外側層を持たない。さらなる特定の実施形態において、耐火物は、ガラスオーバーフロートラフ部分を有する。さらに特定の実施形態において、耐火物は、ガラスオーバーフロー成形ブロックを有する。より特定的な実施形態においてガラスオーバーフロー成形ブロックは、ガラスオーバーフロー成形ブロックの下部からテーパをなす形状の断面を有する。他のさらに特定の実施形態において、ガラスオーバーフロー成形ブロックは、くさび形状断面を有する。さらに他のより特定的な実施形態において、ガラス体を成形するためのガラスオーバーフロー成形ブロック使用後、耐火物は、ガラスオーバーフロー成形ブロックの本体の上にMg−Al酸化物を含む層を含む。さらにより特定的な実施形態において、層は、MgAlから実質的になり、式中、z=x+1.5yである。層は、Mg−Alスピネルから実質的になってもよい。本明細書に記載した実施形態または態様のいずれかの特定の実施形態において、耐火物は、少なくとも約0.5m、約1.1m、少なくとも約2.0mまたは少なくとも約4.0mの長さを有する。
【0065】
(実施例)
本明細書に記載した概念を、請求項に記載した本発明の範囲を限定しない以下の実施例においてさらに説明していく。この実施例の項の数値は、便宜上、近似または四捨五入してある場合がある。
【0066】
様々な異なる焼結セラミック材料を含む耐火物は、以下のプロセスおよび以下の原材料を用いて作製される。アルミナ粉末は、1〜15ミクロンのD50値および99.8%を超える純度を有し、アルミナ粉末中のTiO、Fe、CaOおよびSiOを組み合わせた合計含量は、0.05wt%未満である。ある試料の成形において、異なる粒子サイズを有するアルミナ粉末を組み合わせる。例えば、約2ミクロン〜約4ミクロンの範囲のD10値、約6ミクロン〜約9ミクロンの範囲のD50値および約42ミクロン〜44ミクロンの範囲のD90値を有する第1のアルミナ粉末、約0.75ミクロン〜約2ミクロンの範囲のD10値、約1ミクロン〜約3ミクロンの範囲のD50値および約3.5ミクロン〜約5ミクロンの範囲のD90値を有する第2のアルミナ粉末、ならびに約0.75ミクロン〜約2ミクロンの範囲のD10値、約2.5ミクロン〜4.5ミクロンの範囲のD50値および約9ミクロン〜約11ミクロンの範囲のD90値を有する第3のアルミナ粉末を組み合わせて、特定の試料を成形する。
【0067】
アルミナ粉末は、TiO(純度99%、2.5ミクロンのD50値)、Ta(純度99.9%、1ミクロンのD50値)、Nb(純度99.9%、約1ミクロンのD50値)等のドーパントと組み合わせて用いる。シリカ(純度少なくとも98%および1ミクロン未満のD50値のアモルファスシリカ)またはムライト(純度0.5%未満および45ミクロン以下のD50値の溶融ムライト)の添加は、いくかの試料においてなされる。必要または所望であれば、他のドーパントを添加することができる。表1には、試料のいくつかの組成が含まれ、それらは全て原則的にアルミナを含有している。微量の不純物が存在する場合があるが、記録はしていない。というのは、かかる不純物は、典型的に、かかる試料の性能に大きく影響しないからである。
【0068】
第1の工程において、アルミナ粉末およびドーパントを、解膠剤および水と混合して、粉末のスラリーを形成する。原材料の混合物をスプレー乾燥して、バッチを成形し、これを静水圧プレス成形によりグリーン体(100×100×150mm)へと成形する。スラリーは、そのまま用いることもでき、スリップキャスティング、ビブロキャスティングまたはその他キャスティング技術を用いてグリーン体を形成する。原材料はまた、乾燥混合して、単方向プレス成形、ラミングまたはその他成形技術等他の成形技術を用いてブロックへと成形することもできる。最後の工程において、グリーン体は、少なくとも1400℃、1700℃までの温度で焼成して、高密度耐火ブロックを作製する。
【0069】
【表1】
【0070】
試料を切断し、断面画像を、走査型電子顕微鏡(「SEM」)により得た。試料を試験して、密度および気孔率を求める。密度および気孔率は、前述した方法を用いて求められる。
【0071】
【表2】
【0072】
図6および7は、試料1および比較試料2の走査型電子顕微鏡(「SEM」)画像を含む。試料作製中、粒子がいくつか、かかる粒子の十分な機械的支持がなく、研磨工程中の高レベルの剪断応力のために表面から引き出される可能性がある。失われた粒子を考慮に入れたとしても、試料1は明らかに気孔率が低い。SEM画像によれば、試料1と比較試料2は別個の相を含んでいることが分かる。試料1および比較試料2の大半はアルミナ相を有している。図6を参照すると、試料1の他の相はTaを含んでおり、色は薄い灰色(ほとんど白)である。図6の領域62は、Ta含有相を含む部分を示している。Ta含有相は、Fe、Ti、Ca、Naを含み、それらは全て別個に添加されたものでなく、出発材料中の不純物として存在している。従って、タンタルは不純物ゲッターになり得る。図7を参照すると、比較試料2の他の相はTiを含み、アルミナ相に比べて、やや薄い灰色(ほとんど白)である。図7の領域72は、Ti含有相を含む部分を示している。
【0073】
粒子サイズおよび分布についての特定のデータを、試料1および比較試料2の2つの異なる部分についてデータセット1およびデータセット2として表3に示す。データは、粒子サイズを求めるのに関して前述した技術を用いて得られた。
【0074】
【表3】
【0075】
粒子の長さおよび幅は、比較試料2に比べて、試料1は小さい。概して、試料1の粒子の長さは、比較試料2の対応の長さパラメータの約1/4であり、試料1の粒子の幅は、比較試料2の対応の幅パラメータの約1/3である。さらに、試料1の粒子の長さ分布およびアスペクト比は、比較試料2よりも大幅に狭い。2.0以上のアスペクト比を有する粒子のパーセンテージは、試料1については4.7%以下であり、2.0以上のアスペクト比を有する粒子のパーセンテージは、比較試料2については少なくとも33.3%である。同様に、2.0以上のアスペクト比を有する粒子が占める面積のパーセンテージは、試料1については2.4%以下であり、2.0以上のアスペクト比を有する粒子のパーセンテージは、比較試料2については少なくとも39.7%である。さらに、試料1のデータセット1および2のデータは、比較試料2についてのデータセット1および2よりも互いに近い。このように、試料1の特性は、試料全体により均一であり、比較試料2の特性はより多様なものである。
【0076】
さらなる試料は、前述したプロセスを用いて成形される。試料3、4、5および6ならびに比較試料5は、約2.0〜約2.6ミクロンの範囲のD10値、約4.8ミクロン〜約6.1ミクロンの範囲のD50値および約25.5〜約27.5ミクロンの範囲のD90値を有する混合物から成形される。アルミナ粉末の混合物は、約99.5wt%〜約99.9wt%の範囲のアルミナを含み、残りはFe、TiO、NaO、SiO等の不純物である。試料3は、約0.5wt%の純度約99.9%のTaを与えることにより成形され、試料4は、約0.9wt%の純度約99.9%のTaを与えることにより成形され、試料5は、約1.1wt%の純度約99.9%のTaを与えることにより成形され、試料6は、約1wt%の純度約99.9%のTaを与えることにより成形される。さらに、比較試料5は、約0.2wt%の純度約99%のTiOから形成される。さらに、比較試料6は、約0.1ミクロン〜約0.4ミクロンの間のD10値、約1.3ミクロン〜約2.1ミクロンの間のD50値および約5.1ミクロン〜約6.4ミクロンの範囲のD90値を有する約99wt%のアルミナ粉末および約1wt%のMgO粉末から成形される。比較試料7は、約0.3ミクロン〜約1.1ミクロンの範囲のD50値および約2.1ミクロン〜約3.2ミクロンの範囲のD90を有する約100%アルミナ粉末から成形される。
【0077】
表4は、試料3、4、5および6ならびに比較試料5、6および7の組成を含む。微量の不純物が存在する場合があるが、記録はしていない。というのは、かかる不純物は、典型的に、かかる試料の性能に大きく影響しないからである。
【0078】
【表4】
【0079】
さらに、表5は、試料3、4、5および6ならびに比較試料5、6および7についての密度、気孔率およびクリープ率を含む。密度、気孔率およびクリープ率は、前述した方法を用いて求められる。
【0080】
【表5】
【0081】
さらに、表6は、試料3、4、5および6ならびに比較試料5、6および7についての粒子サイズおよび分布を含む。粒子サイズおよび分布は、前述した方法を用い、コンピュータプログラムを用いて、粒子の寸法を表わすラインを測定することにより求められる。
【0082】
【表6】
【0083】
試料3、4、5および6の粒子サイズおよび分布を、比較試料5、6および7のものと比べると、試料3、4、5および6の平均アスペクト比は、比較試料5、6および7のものより低い。さらに、2.0以上のアスペクト比を有する粒子の%面積は、比較試料5、6および7とは対照的に、試料3、4、5および6についてより小さい。このように、試料3、4、5および6の粒子は、比較試料5、6および7の粒子よりもより等軸である。さらに、粒子の成長は、試料3、4、5および6においてより制限されている。特に、試料3、4、5および6の出発材料のD50値は、約4.8〜6.1ミクロンの範囲であり、それらの試料は、10ミクロン未満の長さのD50値を有している。このように、試料3、4、5および6についての粒子成長は110%未満である。比較試料6および7については、出発材料は、1.3〜2.1ミクロンおよび0.3〜1.1ミクロンの範囲のD50値をそれぞれ有していた。試料のD50値は、比較試料6については7.9および比較試料7については6.3であり、比較試料6および7の粒子において少なくとも300%〜800%の成長を表わしている。
【0084】
概要または実施例で上述した活動の全てが必要ではなく、特定の活動の一部は必要でないこともあり、1つ以上のさらなる活動を、記載したものに加えて行ってもよいことに留意する。さらに、活動を挙げた順番は、必ずしも実施する順番ではない。
【0085】
利益、その他利点および問題解決策について、特定の実施形態に関して上述してきた。しかしながら、利益、利点、問題解決策、および何らかの利益、利点または解決策が得られる、またはそれらをより明白にするであろう何らかの特徴は、請求項のいずれかまたは全ての重要な、必要な、または必須の特徴とは解釈されない。
【0086】
本明細書に記載した実施形態の明細および図示は、様々な実施形態の構造の一般的な理解を与えることを意図している。明細および図示は、本明細書に記載した構造または方法を用いる装置およびシステムの構成要素および特徴の全ての網羅的かつ包括的な記載としての役割を果たすことを意図していない。別個の実施形態はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよく、逆に、簡潔にするために、単一の実施形態に関して記載した様々な特徴はまた、別個に、または何らかのサブコンビネーションで提供されてもよい。さらに、範囲で示された値を参照する場合、その範囲内のあらゆる値が含まれる。多くの他の実施形態は、本明細書を読めば当業者には明白であろう。他の実施形態を開示から用いて、誘導し、構造上の代替、論理的な代替またはその他変更を、開示の範囲から逸脱することなく行ってもよい。従って、開示は限定的でなくむしろ例示的と見なすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7