(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3の層は、前記第1および第2の層によって表示されることができない少なくとも1つの光学的状態を表示することが可能である、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
前記黄色色素を含有する前記層は、前記シアンおよびマゼンタ色素を含有する前記層よりも少数のグレーレベルを有するように配設されている、請求項3に記載の電気光学ディスプレイ。
それを通して観察者が前記ディスプレイを視認する画面を有し、前記画面に最も近い2つの電気光学層は、いずれか一方の順序で、シアンおよび黄色色素を含有する、請求項3に記載の電気光学ディスプレイ。
前記電気光学材料の層のうちの少なくとも1つは、流体中に分散させられ、前記層への電場の印加時に前記流体を通って移動することが可能である、複数の荷電色素粒子を含む電気泳動材料を含む、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
前記層のうちの少なくとも1つの中の荷電粒子は、色素粒子が実質的に各ピクセルの領域全体を占有する第1の光学的状態と、前記色素粒子が各ピクセルの領域の少ない割合のみを占有する第2の光学的状態との間で移動可能である、請求項6に記載の電気光学ディスプレイ。
前記第1および第2の層のそれぞれの中の前記荷電粒子は、前記色素粒子が実質的に各ピクセルの領域全体を占有する第1の光学的状態と、前記色素粒子が各ピクセルの領域の少ない割合のみを占有する第2の光学的状態との間で移動可能である、請求項8に記載の電気光学ディスプレイ。
前記第2の電気光学層から遠隔にある前記第1の電気光学層の表面に、またはそれに隣接して、画面を有し、前記第3の電気光学層は、流体中に配置され、前記第3の電気光学層への電場の印加時に前記流体を通って移動することが可能である、異なる色の第1および第2の種類の粒子を含み、前記第1および第2の種類の粒子は、異なる電気泳動移動度を有する、請求項9に記載の電気光学ディスプレイ。
前記第1および第2の電気光学層の中の前記粒子は、いずれか一方の順序で、黄色およびシアンであり、前記第3の電気光学層の中の前記第2の種類の粒子は、マゼンタである、請求項15に記載の電気光学ディスプレイ。
【背景技術】
【0002】
材料またはディスプレイに適用されるような「電気光学」という用語は、画像技術におけるその従来の意味で、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する材料であって、材料への電場の印加によって、その第1の表示状態からその第2の表示状態に変化させられる材料を指すために、本明細書で使用される。光学特性は、典型的には、人間の眼に知覚可能な色である。
【0003】
「グレー状態」という用語は、画像技術におけるその従来の意味で、ピクセルの2つの極限光学的状態の中間にある状態を指すために、本明細書で使用され、これら2つの極限状態の間の黒・白遷移を必ずしも暗示するとは限らない。例えば、以下で参照される、E Inkの特許および公開された出願のうちのいくつかは、中間の「グレー状態」が実際には薄い青色になるように、極限状態が白色および藍色である、電気泳動ディスプレイを説明する。「黒色」および「白色」という用語は、ディスプレイの2つの極限光学的状態を指すために、以降で使用されてもよく、厳密に黒色および白色ではない極限光学的状態、例えば、前述の白色および藍色状態を通常含むものとして、理解されるべきである。「モノクロ」という用語は、介在するグレー状態がない、それらの2つの極限光学的状態にピクセルを駆動するのみである、駆動スキームを表すために、以降で使用されてもよい。
【0004】
「双安定」および「双安定性」という用語は、当技術分野におけるそれらの従来の意味で、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備える、ディスプレイであって、第1または第2の表示状態のうちのいずれか一方を呈するように、有限持続時間のアドレス指定パルスを用いて、所与の要素が駆動されてから、アドレス指定パルスが終了した後に、表示要素の状態を変化させるために必要とされるアドレス指定パルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、その状態が続くようなディスプレイを指すために、本明細書で使用される。特許文献1では、グレースケール対応のいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、それらの極限の黒色および白色状態においてだけではなく、それらの中間グレー状態においても、安定しており、同じことが、いくつかの他の種類の電気光学ディスプレイにも当てはまることが示されている。この種類のディスプレイは、適正には、双安定よりもむしろ「多安定」と呼ばれるが、便宜上、「双安定」という用語が、双安定および多安定ディスプレイの両方を対象とするために、本明細書で使用されてもよい。
【0005】
いくつかの種類の電気光学ディスプレイが知られており、例えば、以下である。
(a)例えば、米国特許第5,808,783号、第5,777,782号、第5,760,761号、第6,054,071号、第6,055,091号、第6,097,531号、第6,128,124号、第6,137,467号、および第6,147,791号で説明されているような、回転2色部材型、
(b)エレクトロクロミック媒体、例えば、半導電金属酸化物から少なくとも部分的に形成される電極と、電極に付着した可逆色変化が可能な複数の色素分子とを備える、ナノクロミック膜の形態であるエレクトロクロミック媒体。例えば、O’Regan, B., et al, Nature 1991, 353, 737、およびWood, D., Information Display, 18(3), 24 (March 2002)を参照されたい。また、Bach, U., et al, Adv. Mater., 2002, 14(11), 845も参照されたい。
(c)Philipsによって開発され、Hayes, R.A., et al, ”Video−Speed Electronic Paper Based on Electro wetting”, Nature, 425, 383−385 (2003)で説明されている、エレクトロウェッティングディスプレイ。米国特許第7,420,549号では、そのようなエレクトロウェッティングディスプレイを双安定にできることが示されている。
【0006】
複数の荷電粒子が電場の影響を受けて流体を通って移動する、粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、長年にわたって熱心な研究および開発の主題になっている。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較した時に、良好な輝度およびコントラスト、広い視角、状態の双安定性、および低い電力消費という属性を有することができる。それでもなお、これらのディスプレイの長期的画質に関する問題が、それらの広範な用途を妨げてきた。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈降する傾向があり、これらのディスプレイの不十分な耐用年数をもたらす。
【0007】
上述のように、電気泳動媒体は、流体の存在を必要とする。ほとんどの従来技術の電気泳動媒体では、この流体は液体であるが、ガス状流体を使用して、電気泳動媒体を生産することができる。例えば、Kitamura, T., et al, ”Electrical toner movement for electronic paper−like display”, IDW Japan, 2001, Paper HCSl−1, and Yamaguchi, Y., et al, ”Toner display using insulative particles charged triboelectrically”, IDW Japan, 2001, Paper AMD4−4)を参照されたい。また、米国特許第7,321,459号および第7,236,291号も参照されたい。そのようなガスベースの電気泳動媒体は、例えば、媒体が垂直面に配置される場合の兆候において、粒子沈降を可能にする配向で媒体が使用される時に、そのような沈降による、液体ベースの電気泳動媒体と同じ種類の問題の影響を受けやすいように思われる。実際に、液体と比較してガス状懸濁流体の低い粘度が、電気泳動粒子のより急速な沈降を可能にするため、粒子沈降は、液体ベースの媒体よりもガスベースの電気泳動媒体において深刻な問題であるように思われる。
【0008】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡されたもの、またはその名称における、多数の特許および出願は、カプセル化電気泳動および他の電気光学媒体で使用される種々の技術を説明している。そのようなカプセル化媒体は、多数の小さいカプセルを備え、そのそれぞれ自体は、流体媒体中に電気泳動的可動粒子を含有する内相と、内相を囲繞するカプセル壁とを備える。典型的には、カプセル自体は、2つの電極間に位置付けられたコヒーレント層を形成するように、ポリマー接着剤内に保持される。これらの特許および出願に説明される技術は、以下を含む。
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加剤。例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号を参照されたい。
(b)カプセル、結合剤、およびカプセル化過程。例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号を参照されたい。
(c)電気光学材料を含有する膜およびサブアセンブリ。例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号を参照されたい。
(d)ディスプレイで使用される、バックプレーン、接着剤層、ならびに他の補助層および方法。例えば、米国特許第7,116,318号および第7,535,624号を参照されたい。
(e)色形成および色調整。例えば、米国特許第6,017,584、第6,664,944号、第6,864,875号、第7,075,502号、第7,167,155号、第7,667,684号、および第7,791,789号、ならびに米国特許出願公報第2004/0263947号、第2007/0109219号、第2007/0223079号、第2008/0023332号、第2008/0043318号、第2008/0048970号、第2008/0211764号、第2009/0004442号、第2009/0225398号、第2009/0237776号、第2010/0103502号、第2010/0156780号、および第2010/0225995号を参照されたい。
(f)ディスプレイを駆動するための方法。例えば、米国特許第7,012,600号および第7,453,445号を参照されたい。
(g)ディスプレイの用途。例えば、米国特許第7,312,784号、および米国特許出願公報第2006/0279527号を参照されたい。
【0009】
前述の特許および出願の多くは、カプセル化電気泳動媒体内の離散マイクロカプセルを囲繞する壁を、連続相と置換することができ、したがって、電気泳動媒体が、電気泳動流体の複数の離散液滴と、ポリマー材料の連続相とを備える、いわゆるポリマー分散電気泳動ディスプレイを生産し、たとえいずれの離散カプセル膜も、各個別液滴と関連付けられなくても、そのようなポリマー分散電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の離散液滴が、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされてもよいことを認識する。例えば、米国特許第6,866,760号を参照されたい。したがって、本願の目的で、そのようなポリマー分散電気泳動媒体は、カプセル化電気泳動媒体の亜種として見なされる。
【0010】
関連種類の電気泳動ディスプレイは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されないが、代わりに、担体媒体、典型的には、ポリマーフィルム内に形成される、複数の空洞内で保持される。例えば、両方ともSipix Imaging, Inc.に譲渡された、米国特許第6,672,921号および第6,788,449号を参照されたい。以降で、「微小空洞電気泳動ディスプレイ」という用語は、カプセル化(ポリマー分散を含む)およびマイクロセル電気泳動ディスプレイの両方を対象とするために使用されてもよい。
【0011】
電気泳動媒体は、(例えば、多くの電気泳動媒体では、粒子がディスプレイを通る可視光の透過を実質的に阻止するため)しばしば不透明であり、反射性モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、1つの表示状態が実質的に不透明であり、1つの表示状態が光透過性である、いわゆる「シャッタモード」で動作するよう作製することができる。例えば、米国特許第5,872,552号、第6,130,774号、第6,144,361号、第6,172,798号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。電気泳動ディスプレイと同様であるが、電場強度の変動に依存する、誘電泳動ディスプレイは、同様のモードで動作することができる。米国特許第4,418,346号を参照されたい。シャッタモードで動作する、電気泳動媒体は、フルカラーディスプレイのための多層構造において有用であってもよい。そのような構造では、ディスプレイの画面に隣接する少なくとも1つの層が、画面からより遠隔にある第2の層を露出または遮蔽するように、シャッタモードで動作する。
【0012】
現在、全てのディスプレイにおいて色の需要が増加している。カラーテレビ、カラーコンピュータディスプレイ、ならびに携帯電話および他の携帯用電子デバイス上のカラーディスプレイに慣れ親しんでいるユーザは、ディスプレイが、それらのほとんどが依然として単色で印刷される、印刷された本の体裁を再現することを目標としている、電子ブックリーダ等のアプリケーションでさえも、モノクロ画面を、視覚的魅力において何かが欠けていると見なす場合がある。
【0013】
従来の印刷では、高品質のフルカラー画像は、下にある白紙から視聴者に反射される前に、各サブ画像を通して光がフィルタにかけられるような方法で重層される(すなわち、1つより多くの色がページの任意の点に存在することができる)、典型的にはシアン、マゼンタ、および黄色(「CMY」)である、3つの減法混色の原色(黒が「CMYK」系に4原色として含まれてもよい)のそれぞれで、サブ画像を提供することによって形成される。(したがって、いわゆる「4原色」CMYK系は、実際に5色系であり、インクも何も存在しない場所で白色が現れるという事実から容易に理解されるように、下にある紙の白色が色形成系の一部である。)この3つまたは4つの重層サブ画像の配設では、印刷された紙のいずれの領域も不必要に光を吸収せず、したがって、最大輝度の画像が得られる。
【0014】
従来技術の電気泳動および同様の電気光学ディスプレイは、典型的には、反射(光散乱)色素の使用に依存してきた。相当量の光がそのような色素の層を通過しないため、異なる色のサブ画像を重層することが可能ではなく、カラーディスプレイでは、色のパレットをレンダリングするために「カラー領域共有」を用いる必要がある。例えば、ディスプレイの複数の異なるサブ領域には、異なる色、例えば、赤、緑、および青を表示することが可能な電気泳動媒体が提供されてもよい。(異なる色のサブ画像の重層がないため、この種類のディスプレイは、典型的には、減法3原色よりもむしろ加法混色の原色を使用することに留意されたい。)代替として、モノクロ媒体を使用することができ、特定のピクセルが特定の原色を反映することができるように、色フィルタを提供することができる。しかしながら、いずれか一方のアプローチは、ディスプレイの領域のほんの一部が各原色の反射に利用可能であり、それは、利用可能な画像の輝度に悪影響を及ぼすという問題を抱えている。よって、カラー反射型ディスプレイの輝度を向上させるために、ディスプレイの任意のピクセルにおいて任意の所望の色を表示することができるディスプレイを提供すること、および、それにより、視聴者に反射される光の量を最大限化することが望ましい。
【0015】
多層の積層電気光学ディスプレイが、従来技術において公知である。そのようなディスプレイでは、周辺光が、従来のカラー印刷と類似した方式で、3つの減法混色の原色のそれぞれでサブ画像を通過する。米国特許第6,727,873号は、切り替え可能なセルの3つの層が反射背景上に配置される、積層電気泳動ディスプレイを説明している。色素が横方向に移動させられる、同様のディスプレイが公知であり、(例えば、国際出願公報第WO 2008/065605号参照)、または微小空洞中の色素は、垂直および横移動の組み合わせを使用して移動させられる。そのようなディスプレイの論評については、J. Heikenfeld, P., et al, Journal of the SID, 19(2), 2011, pp. 129−156を参照されたい。これらの従来技術のディスプレイでは、各層の各ピクセルは、ピクセルごとに色素粒子を集中または分散させるよう、独立して駆動されることが可能でなければならない。これは、別個の3対の電極を必要とし、そのそれぞれは、典型的には、薄膜トランジスタのマトリクスを有するアクティブマトリクスバックプレーンと、対向する連続対電極とを備える。アクティブマトリクスバックプレーンのうちの2つは、各対電極がそうならなければならないように、可能な限り透明でなければならない。このアプローチは、電極のそのような複雑な配設を製造する高い費用といういくつかの不利点を抱え、特に、ディスプレイの白色状態が、そのような透明電極のいくつかの層を光が通過することを要求するため、現在の技術では、十分透明なバックプレーンを提供することが困難であるという事実に悩まされており、実践では、電極における光損失は、ディスプレイによって生成される画像の輝度に重大な悪影響を及ぼす。
【0016】
画像技術の当業者は、フルカラー画像をレンダリングするために、各原色の独立アドレス指定を提供する必要があることを知っている。これは、頂点が、白、3つの減法混色の原色(黄色、マゼンタ、およびシアン)、加法混色の原色(赤、緑、および青)、および黒に対応する、「カラーキューブ」を示す、添付図面のうちの
図1で図式的に図示されている。矢印によって示されるように、カラーキューブの内側または表面上の任意の点を、3つの(直交)座標軸、すなわち、白・黄色軸、白・マゼンタ軸、および白・シアン軸に沿った距離によって画定することができる。これらの距離は、ゼロ(すなわち、白)から約2(対応する加法混色の原色のスペクトル領域の光の対応する99%吸収)に及ぶ、減法混色の原色における異なる光学密度に対応する。ディスプレイの全色域をレンダリングするために必要とされる、離散的にアドレス指定した独立状態の数は、黄色状態の数+マゼンタ状態の数+シアン状態の数である。しかしながら、レンダリングすることができる色の数は、これら3つの数の積である。したがって、例えば、2つの黄色状態(人間の視覚系は、その不在が黄色の減法混色の原色に対応する、青色光の空間的変動に対して比較的鈍感であるため)、ならびにマゼンタおよびシアンのそれぞれの2
4=16の状態をレンダリングするように、ディスプレイが選択されてもよい。ディスプレイを駆動する波形は、合計で34の異なる状態をレンダリングするように要求されるが、2
9=512の異なる色をアドレス指定できるようになる。
【0017】
一側面では、本発明は、電気泳動または同様の電気光学材料の2つ以上の層を独立してアドレス指定するために、1対の電極が使用される、カラーディスプレイを提供する。そのようなカラーディスプレイは、1対または1組の電極(例えば、1組の電極は、アクティブマトリクスバックプレーンおよび単一の連続対電極となり得る)を使用して、1つよりも多くの原色の独立した、または少なくとも部分的に独立したアドレス指定を提供することができる。電気泳動または同様の材料の層のうちの少なくとも1つは、(上記で定義されるような)シャッタモードで動作してもよい。
【0018】
シャッタモード電気泳動ディスプレイは、可変透過(「VT」)窓を含む、光変調器として使用することができる。光変調器は、電気光学媒体の潜在的に重要な市場を表す。VT窓として使用されることが可能なVT媒体が、実証されており、特許文献で説明されている。例えば、米国特許第7,327,511号、ならびに米国出願公報第2006/0038772号、第2007/0146310号、および第2008/0130092号を参照されたい。しかしながら、そのようなVT媒体には、ある問題が残っている。第1に、同じ中間許容レベルの画像安定性(すなわち、安定した透過)およびヘイズで達成することが困難である。現在まで、許容レベルまでヘイズを低減するために、典型的には電気泳動媒体で使用される流体の屈折率に十分近い(または、上記で論議されるように、典型的には流体を包囲するポリマー相の屈折率に十分近い)屈折率を有する、黒色素は識別されていない。
【0019】
従来技術のVT電気泳動媒体(およびエレクトロクロミック媒体等の同様の電気光学媒体)に関連する別の問題は、それらが色相を変化させることができない、言い換えれば、そのような媒体によって表示されることが可能な色が、それらの終点色の間の線の上に位置し(本願の目的のために「色」としてみなされる透明状態)、媒体が、色域容量を持たないことである。例えば、前述の米国特許第7,327,511号、ならびに米国特許出願公報第2006/0038772号、第2007/0146310号、および第2008/0130092号で説明されている、VT媒体から得られる色が、黒から透明に変化する一方で、エレクトロクロミック媒体は、典型的には、青紫から透明に変化する。(VT媒体における色の提供は、以下で詳細に論議されるように、VT窓を装備した室内の光が変化させられることを可能にする、または多層ディスプレイの中の1つの層としてのVTの使用を可能にするのに有用であってもよい。)いずれの種類の媒体も、色フィルタアレイの追加、および典型的にはパッシブあるいはアクティブマトリクスバックプレーンを使用した、マルチピクセル駆動方法の使用なしで付加的な色を生成することはできない。そのようなバックプレーンは、VT媒体を通る光透過を必然的に低減し、単一のピクセルVTディスプレイで使用される単純な電極よりもはるかに高価である。
【0020】
したがって、依然として、低いヘイズと組み合わせて市販のVTディスプレイで望ましい高い画像安定性を提供することができる、VT媒体の必要性がある。また、依然として、かなりの色域を提供することができるVT媒体の必要性もある。一側面では、本発明は、これらの問題の両方に対する解決策を提供しようとする。
【発明を実施するための形態】
【0035】
既述のように、一側面では、本発明は、そのそれぞれが、流体中に分散させられ、層への電場の印加時に流体を通って移動することが可能である、複数の荷電粒子を含む、少なくとも電気光学材料の第1および第2の層を備える、電気光学ディスプレイを提供する。電気泳動材料の第1の層は、第2の層によって表示することができない、少なくとも1つの光学的状態を表示することが可能である。ディスプレイはさらに、第1および第2の層の一側面上に配置される第1の電極と、第1および第2の層を間にして第1の電極とは反対側に配置される第2の電極とを備え、第1および第2の層の間には電極がない。典型的には、電気泳動ディスプレイはさらに、流体中に分散させられ、層への電場の印加時に流体を通って移動することが可能である、複数の荷電粒子を含む、電気光学材料の第3の層を備える。第3の層は、第1および第2の層によって表示することができない、少なくとも1つの光学的状態を表示することが可能である。第2の電極は、第1、第2、および第3の層を間にして第1の電極とは反対側に配置され、第2および第3の層の間には電極がなく、1対(または組)の電極は、少なくとも部分的に相互から独立して、3つ全ての層を制御するために使用される。
【0036】
本発明の背後の基本概念はおそらく、添付図面の
図12Aに示されるもの等の3層ディスプレイを考慮することによって、最も容易に理解される。画面(それを通して観察者がディスプレイを視認する表面)に最も近い電気光学層は、色がピクセルの領域全体にわたって存在する、「分散」または「非シャッタ」状態、および色がピクセルの領域の大部分に不在であり、(たとえあったとしても)ピクセルの領域の少ない割合のみに存在する、「集中」または「シャッタ」光学的状態といった、2つの異なる光学的状態を有する。第2の電気光学層(観察者によって見られると、第1の電気光学層の後ろに位置する)は、第1の層と同様に動作するが、異なる色を使用する。
【0037】
そのような3層ディスプレイの第3の電気光学層(観察者から遠隔にある層)は、第3の色を使用して、第1および第2の電気光学層と同じ方式で動作してもよく、第1、第2、および第3の色は通常、1組の減法混色の原色を形成するように選択される。第3の層がこのように作用する場合、3つの電気光学層を通過した光を、再びこれらの層を通して観察者へ反射するように、反射体がディスプレイの後ろに位置付けられる。しかしながら、より一般的には、第3の電気光学層は、2つの色のうちのいずれか1つ、すなわち、第3の減法混色の原色または白を表示することができるように、選択され、第3の電気光学層は、例えば、前述のE Inkの特許および出願の多くで説明されるもの等の従来の二重粒子電気泳動層であってもよい。
【0038】
ディスプレイの3つの電気光学層は、1組の電極の間に配置され、3つの電気光学層が、少なくとも部分的に相互から独立して駆動されることを可能にするために、適切なディスプレイコントローラが使用される。第1および第2の電気光学層がシャッタモード電気泳動層であり、第3の電気光学層が二重粒子電気泳動層である、本発明のディスプレイの好ましい形態では、直流駆動方法を使用して、第3の層を駆動することができる一方で、第1および第2の層は、以下で詳細に説明されるように、異なるシャッタリング駆動方法によって駆動される。
【0039】
以降では、便宜上、光を選択的に吸収する材料は、「色素」と呼ばれ、その用語は、光を選択的に吸収することが可能な染料、フォトニック結晶等を含むと解釈されるべきである。3つの減法混色の原色色素を使用して、フルカラー画像を提供することを目的としている、本発明の実施形態では、光は、典型的には、視聴者へと戻って反射される前に、少なくとも2つの色素を通して選択的にフィルタにかけられる。第3の色素は、以下でより詳細に説明されるように、透明または反射性であってもよい。したがって、本発明で使用される色素のうちの少なくとも2つが、光透過性であり、実質的に後方散乱しない必要がある。したがって、例えば、マゼンタ色素は、緑色光を吸収することを目的としているが、青色および赤色光を下位層まで通さなければならない。緑色光が吸収されることを目的としていない領域では、色素が光路に存在しないことが必要である。光路からの色素のそのような除去が達成されてもよい、1つの方法は、ピクセル領域の(わずかな)一部分のみで色素を集中させ、したがって、その包括力を低減することである。マゼンタ色が所望される時に、最大量の光が吸収されることを可能にするように、色素は、ピクセル領域全体にわたって拡散される。その面積包括力を低減するように、色素を空間的に集中させる過程は、色素を「シャッタすること」と呼ばれる。
【0040】
以下で詳細に説明されるように、印加された電場に応じて色素をシャッタするために、多数の方法を使用することができる。既述のように、本発明のディスプレイは、ロールツーロール過程で被覆されてもよい、マイクロカプセルから形成された電気光学層を利用してもよい。代替として、電気光学層は、当技術分野で公知であるようなマイクロセル、マイクロカップ、またはウェルを使用してもよい。本発明は、以降で、マイクロカプセルを使用した電気光学層に関して主に説明されるが、電気光学ディスプレイの当業者であれば、説明されるマイクロカプセルベースの構造を、色素含有相を空間的に分離するための他の方法に適合させるのに困難がないと考えられる。
【0041】
既述のように、本発明は、複数の色素が1組の電極によって制御される、電気光学ディスプレイを対象とする。1つまたは複数の電気光学層が1組の電極の間に存在するかどうかにかかわらず、これらの電極の間に存在する電場は実質的に同じであるため、色素が同じまたは異なる電気光学層の中の電極の間に存在するかどうかにかかわらず、1組の電極によって生成される電場への種々の色素の反応は、ほとんどの場合、実質的に同じであると理解されるであろう。したがって、種々の色素が同じまたは異なる電気光学層に存在するかどうかに応じて、本発明の種々の実施形態を生成することができる。本発明は、各電気光学層(1つを除く)が単一の色素のみを含有する、本発明の実施形態を参照して主に説明されるが、使用される正確な駆動方法に応じて、全ての色素が単一の層に含有されてもよく、または2つの色素が1つの層に含有され、第3の色素が異なる層に含有されてもよく、色素をシャッタするために使用される手段は、異なる層の中で異なる。3つの色素がカプセルの単一の層に存在する、本発明の1つのディスプレイの説明が、以下で挙げられる。
【0042】
色素をシャッタするためのある「幾何学的」方法は、場合によっては、マイクロカプセルの被覆層の自己集合に依存する。よって、そのような被覆層の予備論議が望ましい。前述のE Ink特許および出願の多くで、特に、米国特許第6,067,185号、第6,392,785号、第7,109,968号、および第7,391,555号に論議されるように、実践では、不連続相が、少なくとも1つの色素と、通常は電荷制御剤を加えた流体(典型的には、低極性で、実質的に水と混ざらない炭化水素)とを含む、電気泳動内相の液滴を含む、乳剤を形成することによって調製される。乳剤の連続相は、ポリマーの水溶液、典型的には、ゼラチンを含む。ポリマー材料は、例えば、随意で、例えば、アルデヒドと架橋結合されてもよい、薄いカプセル壁を形成するように、ゼラチンおよび第2のポリマー、典型的には、アカシアのコアセルベートの形成によって、液滴の表面上に堆積させられる。結果として生じた変形可能なマイクロカプセルは、直径が約20〜100μmの球体である。そのようなマイクロカプセルは、制御された被覆率で平面上に被覆された時に、カプセルの単層を本質的に形成する。この単層が乾燥させられた時に、カプセルは、垂直に(すなわち、それらが被覆される表面と垂直に)収縮し、偏球を形成するように横方向に拡張する傾向がある。最終的に、カプセルが横方向に拡張するにつれて、それらの側壁が相互と接触し、カプセルは、形状が発泡体中のセルによって形成されるものと同様である、多面体角柱に変形する。理想的には、カプセルの単一の層は、投影で見た側壁が、
図2Aに(理想形態で)示されるように120度の角度で交わる、「ハニカム」(二次元六方格子)を形成する。(実践では、マイクロカプセルは、サイズがいくらか変化し、乾燥単一マイクロカプセル層の顕微鏡写真は、典型的には、
図2Bに図示されるものと同様であるが、4〜8個が隣接する各マイクロカプセルを伴うハニカムを示す。以下で現れる理由により、本発明のディスプレイの中の色素のシャッタリングは、
図2Bの理想ハニカムからのそのような逸脱によって大きく影響されない。)また、
図2Aに示されるように、典型的には、カプセルが被覆される平面的な基質と接触しているカプセルの面が、平面に一致する一方で、各カプセルの露出面は、湾曲した「ドーム」形状を採用する。
【0043】
マイクロカプセルの第2の層が第1の層の上に被覆される時に、表面エネルギーの最小限化につながる表面張力は、
図2Cで概略的に図示されるような泡状の幾何学形状への第1の層の中のカプセルのドーム形上面の変形を引き起こす傾向がある。この幾何学形状では、第1の層の中の各カプセルの上部分は、錐体部分が実質的に平坦であり、介在する縁が実質的に真っ直ぐな線であり、そのうちの4本が、109.5度の4面体角で各頂点において交わる、実質的に錐体状の形状を有する。発泡体の幾何学形状の詳細な説明については、例えば、 ”Foams: Theory, Measurements, and Applications”, R. K. Prud’homme and S. A. Khan, eds., Marcel Dekker, Inc., 1996を参照されたい。古典的に、単分散発泡体の中の各セルの形状は、14面を伴う半規則的固体(本質的には切頂8面体)である。第1および第2の層の錐体部分が、第2の層における各錐体部の最低頂点とともに嵌合し、第2の層における3つの錐体部の間の陥凹の中へ充填するように、第2の層の中の各カプセルの下部分も、実質的に錐体状の形状を有することに留意されたい。以下で説明されるように、カプセルのそのような二重層の錐体部は、一種類の色素シャッタリングで重要である。カプセルの第3の層が第2の層を覆って被覆される場合、第2および第3の層の間の界面は、第1および第2の層の間の界面と同じ種類の相互貫入錐体部を見せると理解されるであろう。
【0044】
図3A−3Eは、本発明のディスプレイで採用されてもよい、色素シャッタリングの種々の形態を図示する。
図3Aは、コンセートレータ電極102を使用するディスプレイのシャッタ光学的状態を図示する。そのようなコンセートレータ電極は、適切な電圧がコンセートレータ電極に印加された時に、色素がコンセートレータ電極に引き付けられ、したがって、各ピクセルの領域のごくわずかのみを占有し、すなわち、色素がシャッタされるように、各ピクセルの領域のごくわずかのみを占有する小型電極である。
【0045】
コンセートレータ電極は、ディスプレイがアドレス指定されるパターン化電極、印刷またはリソグラフィ方法によって基板上にパターン化されてもよい、銀または金等の伝導性材料の格子、または誘電材料のパターンで覆われている連続導体であってもよい。コンセートレータ電極はまた、薄膜トランジスタのアレイと関連付けられる、個別にアドレス可能な電極であってもよい。代替として、直接電気的にアドレス指定されない、離散的な孤立伝導性粒子は、ディスプレイ内の1つまたは複数の層に組み込まれてもよい。
【0046】
図3Bは、
図2Cおよび2Dに図示される種類の二重カプセル層の第1の層の中の幾何学的/カプセル壁色素シャッタリングを図示する。カプセルの第1の層の(図示されるような)上部の錐体形態により、色素粒子が電極104に向かって引き付けられるように、電極104および106に印加される電位が配設される時に、第1の層の中のカプセルの上部の錐体形態は、色素に、各錐体部の最上頂点の周囲の領域のみを占有する色素パック108を形成させ、したがって、各ピクセルの領域の小部分のみを占有する、すなわち、色素はシャッタされる。
【0047】
幾何学的/カプセル壁シャッタリングは、壁材料がそれらの内相よりも導電性である、カプセルの1つよりも多くの層の使用によって、自然に達成することができる。例えば、ゼラチンカプセル壁は、典型的には、約10
−7S/mの伝導度を有する(しかしこの値はカプセル壁を備えるポリマー材料の水和度に強く依存している)。電気泳動内相は、典型的には、約10
−8S/mである、これよりもはるかに小さい伝導度を有する。したがって、カプセルの1つの層のカプセル壁は、カプセルの第2の層に対するコンセートレータ「電極」の役割を果たすことができる。加えて、上記で説明されるように、カプセルによって採用されてもよい錐体形状によって、幾何学的シャッタが提供されてもよい。必要であれば、幾何学的シャッタは、例えば、米国特許第6,130,774号および第6,172,798号で説明されるようなV字形溝の中へのカプセルのテンプレート被覆によって達成されてもよい。幾何学的シャッタはまた、フォトリソグラフィまたはエンボス加工方法、あるいは当技術分野で周知である他の方法を使用して、加工されてもよい。
【0048】
図3Dおよび3Eは、
図2Cおよび2Dに図示される種類の二重カプセル層の第2の層の中の幾何学的シャッタリングの使用を図示する。
図3Dに示されるように、色素粒子が電極104に向かって引き付けられるように、電極104および106に印加される電位が配設される時に、カプセルの第2の層の上部分のドーム形状により、色素は、ドーム形部分の領域全体、したがって、ピクセル領域全体にわたって広がり、シャッタされない。他方で、色素粒子が電極106に向かって引き付けられるように、電極104および106に印加される電位が配設される時に、カプセルの第2の層の下部分の錐体形態は、色素に、各錐体部の最下頂点に隣接して小さい色素パック110を形成させ、したがって、各ピクセルの領域のごくわずかのみを占有し、すなわち、色素がシャッタされる。
【0049】
図3Cは、側壁シャッタリングを図示する。この形態のシャッタリングでは、シャッタ状態で、色素は、カプセルの側壁に隣接して色素112を形成するように、電極の面と平行に横方向に移動させられる。
【0050】
異方性粒子の使用、例えば、ディスプレイと垂直または平行な主軸を伴って配向されてもよい針またはプレート、あるいは色が変化する色素、あるいはゲルの膨張および非膨張、あるいは当技術分野で公知である他の同様の方法等のシャッタするための他の方法もまた、本発明のディスプレイで使用されてもよい。
【0051】
上記の
図3A、3B、3D、および3Eの論議から容易に分かるように、コンセートレータ電極または幾何学的/カプセル壁シャッタリングを使用した色素シャッタリングは、色素移動が印加された電場の方向にある、ディスプレイの直流アドレス指定で達成されてもよい。側壁シャッタリングは、交流を用いてディスプレイをアドレス指定することによって達成されてもよく、その場合、カプセルの内部の中の色素が、カプセルの周囲の赤道「地帯」に堆積させられるように、以下でより詳細に説明されるように、正味の色素移動は、印加された電場と垂直な方向にあってもよい。
【0052】
本発明のディスプレイは明らかに、色素が実質的にピクセルの領域全体を占有する、そのシャッタ状態からその非シャッタ状態に色素を分散させるためのいくつかの方法を必要とする。コンセートレータ電極または幾何学的/カプセル壁シャッタリングと併せて使用するために特に好まれる、そのような色素分散のための1つの方法は、印加された電場と垂直に色素を移動させるために使用されている、DCアドレス指定および荷電カプセル壁の組み合わせの使用を図示する、
図4で概略的に図示されている。
図4に示されるカプセルでは、色素の装填は、非常に小さい領域の中へ集中させられてもよいように(
図4のカプセルの下錐体部の最低頂点として示される)、非常に低い(カプセルの体積の約1%)。電場の印加時に、色素は通常、この頂点から対向頂点へ(すなわち、
図4に図示されるように垂直に上向きに)移動し、そこで再び、カプセルの上錐体部の最上頂点に隣接する非常に小さい領域で集中させられる。色素粒子とカプセル壁との間に引力を提供することによって、垂直成分(すなわち、図に図示されるように水平な成分)が、粒子に印加される電気力に追加されてもよく、よって、粒子は、それらのシャッタ位置で占有する小さい領域から横方向に広がる。必要な引力は、静電気であってもよい。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、色素粒子およびカプセル壁は、反対極性の電荷を持つことが好ましい。(明白に、本発明のこの側面は、概して、両方の極性の電荷を持つ粒子を含有するカプセルに適用することができず、例えば、米国特許第6,870,661号で説明されるように、1つだけの種類の粒子を含有するカプセル、または同じ極性の二重粒子カプセルに最適である。)例えば、ゼラチン/アカシアがカプセル壁を形成するために使用され、Solsperse 17000(Lubrizolから入手可能である)等の帯電剤が使用される場合、カプセル壁は負の電荷を獲得してもよく、同じ帯電剤で正の電荷を獲得する色素が好まれる。色素粒子とカプセル壁との間に引力を提供してもよい、他の方法は、凝集剤、特に、枯渇凝集剤の使用を含む。そのようなカプセル・壁引力を使用することの結果は、色素がDCパルスのいずれか一方の極限で本質的に見えなくなるが、(カプセルの最上部における)1つの集中状態から(カプセルの底部における)別の集中状態へ、またはその逆の遷移中に見えるようになることである。色素は、約30〜50Hzの間の周波数を有するACで駆動し、DCオフセットをAC駆動に印加することによって、単純DC駆動において過渡状態となる状態に陥ってもよい。
【0053】
本発明は、反対極性の電荷を持つカプセル壁を伴う移動性の荷電色素の使用に限定されないが、反対極性の電荷を持つ任意の固定表面を伴うそのような色素の使用にまで及ぶ。固定表面は、印加された電場の中で色素の移動を制約する。色素を含有する媒体および表面は、カプセル化される必要がない。
【0054】
上記で説明されるシャッタリング機構は、
図3Dおよび3Eに関して既述のように、印加された電場と平行にカプセル内で粒子移動を引き起こすように、DCアドレス指定を使用した色素の従来の切替と組み合わせられてもよい。この場合、幾何学的/カプセル壁シャッタリングが起こらないことが望ましくてもよく、溝または隙間の中に集中させることができるよりも多くの色素をカプセルに組み込むことによって、これを確実にすることができる。そのような従来の電気泳動切替は、前述のE Ink特許および出願で説明されるように、染色流体を通って移動する単一の色素、同じまたは反対電荷の二重色素、または複数の色素および染色流体の組み合わせを伴ってもよい。
【0055】
全ての種類のシャッタリング方法は、電気泳動媒体に存在し得る色素粒子の体積率に制限を課する傾向がある。光の少なくとも約85パーセントが、単一の通過でシャッタされた色素の層を通して透過される、すなわち、色素が光の約15パーセント以上を吸収するべきではないことが望ましく、これは、本発明のディスプレイで通常起こるような、シャッタ層を通る二重通過について、約70パーセントの反射効率に対応する。
図5A、5B、および5Cは、いくつかの理想シャッタリング方法を使用した、色素粒子の充填の3つの異なる可能な形態を理想形態で図示する。以下の簡易分析では、(とりわけ)全反射、空洞の後ろのランバート反射体によるものを除いた散乱、および界面反射による光損失は無視される。
図5Aの色素は、壁がディスプレイの面と垂直である、空洞の側壁上に堆積させられる。色素が全ての入射光を吸収し、光が一度空洞を通過し、均等拡散様式で反射され、次いで、二度目に空洞を通過すると仮定して、吸収される光の割合は、(1−α)
2であり、式中、αは、空洞内の色素の体積率である。
図5Bでは、色素は、(
図5A−5Cで水平であると仮定される)ディスプレイの画面と平行に空洞の一面上で半円筒に収集される。色素収集の形態は、典型的には、いずれの幾何学的シャッタリングもない場合に、コンセートレータ電極における収集に適切となる。
図5Cは、球状形態の中への色素の集中を示す。
【0056】
図6は、空洞内の色素の体積率の関数として、
図5A、5Bおよび5Cに示される各シャッタリング幾何学形状の推定二重通過透過効率を示すグラフである。70パーセントの二重通過効率が容認可能であると仮定して、
図6は、これが、半円筒色素幾何学形状(
図5B)には、多くても約1重量パーセントの色素を必要とし、球状色素幾何学形状(
図5C)には、多くても約5重量パーセントの色素を必要とすることを示す。これらの低い許容色素集中(「装填」)を考慮して、シャッタリングに使用される色素は、最小限の装填で使用することができるように、最大可能減衰係数を有することが好ましい。
【0057】
シャッタされた色素へのそのような体積率制限はまた、そのような色素の好ましい粒径に制約も課す。90パーセントの面積被覆率のために、粒子の約2つの単層同等物が必要とされるように、表面上にランダムに配設される粒子は、規則正しい密集単層よりも低い効率で、その表面を覆う。加えて、50,000L/モル/cmの減衰係数、1.5の比重、および500の分子量を有する、典型的な染料について、70nmの厚さの完全充填層が、1という光学密度(すなわち、光の90パーセント吸収)に必要とされる。したがって、そのような染料について、色素粒子の直径は、この厚さの約半分以下であることが好ましい。実践では、約100nm未満の直径の色素粒径が、コンセートレータ電極および幾何学的/カプセル壁シャッタリングに好ましい。この方法が、上記で説明されるように、同じ程度のシャッタリングについて色素の大量装填を可能にするため、より大きい粒子が側壁シャッタリングを使用して隠されてもよい。
【0058】
色素が別個の層の中でシャッタされる位置が相互の上に横たわらない(すなわち、色素が、カプセルの複数の層を有するディスプレイの中の異なる層に位置する場合のように、位置合わせされない)場合、付加的な光学的損失が起こる場合がある。色素の吸収スペクトルが重複する場合、両方の色素によって吸収される、いくらかの光は、第1の層の中の第1のシャッタされた色素によって、ピクセルの1つの領域中で、第2の層の中の第2のシャッタされた色素によって、同じピクセルの別の領域中で吸収されてもよい。この問題は、2つの色素によって吸収される波長がないように、シャッタリング色素におけるスペクトル重複を除去することによって、回避することができる。したがって、2つの色素がシャッタされ、第3の色素が従来の電気泳動によって切り替えられる時に、ディスプレイでは、2つのシャッタされた色素が黄色およびシアン(その吸収スペクトルが両方とも緑色光を通すように設計されており、したがって、有意に重複しない)であることが好ましい。
【0059】
上述のように、ACアドレス指定が、色素をシャッタするために使用されてもよい。誘導電荷電気浸透および電気泳動、ならびに誘電泳動および粒子連鎖等の誘導双極子効果を含む、多種多様な現象が、ACアドレス指定が採用された時に起こる。どの挙動が起こるかは、以降でより詳細に説明されるように、印加される電場強度および周波数、ならびにカプセル内相の中の構成要素の特性の影響を受ける。
【0060】
図7Aは、電荷制御剤(CCA)を含有する溶媒によって包囲される球状色素粒子を通る概略的断面を示す。CCAは、典型的には、以降では「頭部基」と呼ばれる、イオン基を含む界面活性剤様分子である。正または負のイオン頭部基のうちの少なくとも1つは、好ましくは、以降では「尾部基」と呼ばれる、無極性鎖(典型的には炭化水素鎖)に付着される。CCAが内相の中で逆ミセルを形成し、帯電逆ミセルのごく少数が内相で電気伝導度につながると考えられる。CCAはまた、色素粒子の表面上に、およびカプセルの内壁上に吸着すると考えられる。集合的に、CCAおよび逆ミセルは、電気泳動媒体の内相において(粒子およびカプセル壁上の)全ての表面の帯電を仲介する。
【0061】
その表面上に固定化電荷を伴う粒子は、周辺流体中で、反対電荷の電気二重層を設定すると考えられる。CCAのイオン頭部基は、粒子表面上の荷電基とイオン対合されてもよく、固定化荷電種のシュテルン層を形成する。この層の外側には、CCAの荷電ミセル凝集体を含む、拡散層がある。従来のDC電気泳動では、滑りが拡散層内で起こり、粒子が流体に対して移動するように、印加された電場は、力を固定表面電荷に及ぼし、反対の力を移動性の対電荷に及ぼす。滑り面における電位は、ゼータ電位として知られている。
【0062】
誘導電荷電気浸透(以降では「ICEO」と略称されるが、「AC電気浸透」として知られている)は、同様の現象であるが、固定表面電荷よりもむしろ誘導電荷に応答して起こる。それは、V. A. Murtsovkin, Colloid J., 58, 341−349 (1996)、およびH. Morganと同僚らによる一連の論文(例えば、, J. Colloid Interface Sci., 217, 420−422 (1999) and Phys. Rev. E, 61, 4011−4018 (2000)を参照)で説明されており、つい最近ではSquiresおよびBazant (J. Fluid Mech., 509, 217−252 (2004)によって詳細に論評されている。ICEOでは、外部から印加された電場は、表面の近傍で分極を誘導し、同時に、結果として生じる電気浸透流を駆動する。これは、印加された電場の強度において非線形ではない流速を生じる。印加された電場の存在下で、誘導双極子が設定されてもよく(
図7A参照)、その大きさは、粒子体積、ならびに伝導度、誘電率、サイズ、および形状を含む表面特性に依存する。この誘導双極子は順に、反対電荷の対応二重層を設定する流体中でイオン種(おそらくミセル)の流れを引き起こす(
図7B)。次いで、流体が極から引き出され、赤道で放出されるように、電気浸透流が駆動される(
図7C)。流体の流れの方向は、印加された電場の極性にかかわらず同じであり、したがって、流れは、印加されたAC電位によって駆動することができる。均一電場の中の球状粒子の場合、(流れが対称であるため)いずれの粒子移動も結果として生じない。しかしながら、実践では、色素粒子は、完全には球対称ではなく、粒子のカオス的移動を誘導する、移動相の噴流が設定されてもよい。
【0063】
Bazantは、以下のように、二重層の確立のための帯電時間を推定した(
図7B)。
【0065】
電場の中の伝導性円筒について、λ
DはDebye長であり、aは粒子半径であり、Dは移動相の中の電荷担体の拡散定数である。色素粒子は、典型的には、誘電材料から成るが、シュテルン層内の電気伝導は、(特に吸着水の存在下で)陽子ホッピングを含む、いくつかの機構を通して起こってもよく、したがって、伝導度の仮定は、本文脈では不合理ではない。以下の論議は、本ディスプレイで生じてもよい機構のうちのいくつかの定性的で発見的な像を提供するために含まれ、決して本発明の範囲を限定しない。
【0066】
上記の方程式(1)は、粒子が大きくなるにつれて、帯電時間が長くなることを示す。次いで、最大誘導電荷電気浸透速度は、以下のように推定される。
【0068】
式中、Eは印加された電場の大きさであり、ωは角周波数であり、ηは移動相の粘度である。周波数が増加するにつれて、最大誘導電荷電気浸透速度が減少することが分かる。ω
2τ
c2>>1である、高い周波数では、誘導電荷電気浸透速度が、(二重層を帯電させる時間がないため)非常に低くなり、流体中の電荷担体による誘導双極子のスクリーニングが低減される。そのような周波数では、連鎖につながる粒子・粒子相互作用、または誘電泳動移動度につながる電場勾配との相互作用が起こってもよい。したがって、増加する周波数とともにAC電場を印加することは、上記で説明されるように、低い周波数で電気浸透流を引き起こしてもよいが、周波数が増加させられるにつれて、粒子・粒子相互作用および誘電泳動が優勢になってもよい。結果は、例えば、誘導双極子凝集によって、全ての粒子が集中することであってもよい。それらは、電気浸透駆動周波数で、流れの静止点が位置してもよい領域中に(すなわち、球状カプセル内の粒子の場合、赤道周囲の輪の中に)集中する可能性が高い。粒子集中が起こる周波数は(理想的な場合)、印加された電場に比例し、また、以下の式であるため、粒径にも反比例して依存する。
【0070】
本発明者らは、ディスプレイが比較的低いAC周波数(典型的には30〜100Hzの範囲内)でアドレス指定された時に、カプセル化色素粒子が高速移動を示し、カプセルの中で均一に分布させられることを観察した。より高い周波数では、色素粒子の移動は、減速し、カプセル壁において集まり、透明性(シャッタリング)につながってもよい。しかしながら、周波数が比較的低い値から比較的高い値まで急に増加させられた場合、粒子が壁において流れの静止点に到達する時間がない場合があり、粒子は、固定化されるが、シャッタされなくなる。したがって、最適なシャッタリングのために、周波数が一定の電圧で低い値から高い値へ傾斜させられること、または電圧が一定の周波数で高い値から低い値へ傾斜させられること、あるいはこれら2つの傾斜の何らかの組み合わせが好ましい。
【0071】
ICEO移動から静止状態への遷移が起こる周波数は、印加された電圧に関係し(場合によっては比例し)、サイズ、形状、および伝導度等の粒子特性、ならびに粘度、伝導度、および誘電率等の流体特性に依存する。したがって、色素は、ディスプレイを駆動するために使用されるACの周波数を変化させることによって、選択的に、かつ独立してアドレス指定されてもよい。例えば、第1のカプセルの中の第1の色素が、大きいサイズを有し、高粘度の流体に組み込まれてもよい一方で、第2のカプセル層の中の第2の色素は、小さいサイズを有し、低粘度の流体に組み込まれてもよい。最低アドレス指定周波数ω
1では、電気浸透移動によって、両方の色素が分布および拡散させられる。より高いアドレス指定周波数ω
2では、第1の色素がシャッタされてもよい一方で、第2の色素は、依然として移動している。さらに高い周波数ω
3では、両方の色素がシャッタされてもよい。周波数が急にω
1からω
3に切り替えられた(またはω
3よりもわずかに低い周波数に切り替えられ、次いで、ω
3まで増加させられた)場合、第1の色素がシャッタする時間がなくてもよいが、第2の色素がシャッタする時間はあってもよい。したがって、一定の電圧を使用し、アドレス指定の周波数のみを変化させて、同じ波形で各色を駆動させながら、異なる色にアクセスすることが可能である。周波数を一定に保ち、電圧を変化させることによって、同じ効果が得られてもよく、そのようなスキームは、2つよりも多くの色に拡張されてもよいことが明らかになるであろう。以下の実施例1−3は、異なる周波数の交流電圧を使用して、単一のカプセル層の中の1つよりも多くの色にアドレス指定することを説明する。(当然ながら、異なる粒子についてICEO移動から静止状態への遷移が起こる周波数が、粒子特性のみによって制御される時、上記で説明されるように、各色素に対する別個の環境を提供するよりもむしろ、共通カプセルに1つよりも多くの色の粒子を組み込むことが可能であることが明白となるであろう。)
共通波形で全ての色素を駆動しながら、複数の色素をシャッタするための別の方法は、その一方が着色され(第2の色素であり)、その他方が白色である、2つの逆帯電した色素を含有する、カプセルの第2の層がその上で被覆される、グリッド電極等のコンセートレータ電極を持つ基質上に被覆される、第1の色素を含有するマイクロカプセルの第1の層を有する、本発明の2層ディスプレイを概略的断面図で示す、
図8A−8Dに図示されている。(
図8A−8Dに示されるディスプレイは、図示されるように、下から見られることを目的としていると留意されたい。)(色1、色2、色1プラス色2、および色なしという4つの可能な極限状態への)2つの色のアドレス指定は、第1の層の中のシャッタリングのタイミングと第2の層の中の垂直切替のタイミングとの間の差を利用することによって達成される。
図8A−8Dは、ディスプレイの4つの異なる状態を図示する。
図8Aでは、第1の色素802は、コンセートレータ電極804へシャッタされ、第2の色素806は、白色色素808の前で可視的である。
図8Bでは、ディスプレイが、白色背景に対して第1および第2の色素802および806をともに示すように、色素802が、第1の層にわたって均一に拡散される一方で、第2の層は、
図8Aと同じ状態である。
図8Cでは、ディスプレイが白色色素を示すように、第2の色素806は、白色色素808の後ろに隠され、第1の色素は、カプセルの第1の層の上錐体部の最上頂点で集中させられることによってシャッタされる。
図8Dでは、ディスプレイが白色背景に対して第1の色素を示すように、第1の色素802が、カプセルの第1の層の上面にわたって均一に拡散される一方で、第2の層
図8Cと同じ状態である。この種類のディスプレイは、以下の実施例4で詳細に説明される。
【0072】
図8A−8Dの2つのカプセル層の必要な独立制御は、2種類のカプセル間の切替速度の差を活用することによって達成されてもよい。印加された電圧が閾値を下回ると、カプセル内で色素移動が起こらないように、例えば、カプセル内の流体が降伏応力を示す場合、そのような速度の差は、印加された電圧と非線形となり得る。したがって、例えば、上記の
図8A−8Dに示されるカプセルの第1の層が、V1という切替の電圧閾値を有し、カプセルの第2の層が、V2という電圧閾値を有し、V2>V1である場合、第2の層をV2よりも大きい電圧でアドレス指定することができ(また、第1の層も切り替える)、その後、第1の層を、(第2の層に影響を及ぼすことなく)V1とV2との間の電圧で切り替えることができる。そのようなスキームは、3つの電圧閾値を有するカプセルの3つの層に拡張することができる。
【0073】
必要な電圧閾値は、種々の方法で提供されてもよい。上述のように、マイクロカプセルの内相は、降伏応力を有してもよい。クーロン閾値を生成するように、シャッタリング色素への反対電荷の粒子がカプセルに追加されてもよい。これらの反対電荷の粒子は、着色色素による光の吸収に影響を及ぼさず、ディスプレイの全体的外観に影響を及ぼさないように、実質的に非散乱および非吸収であってもよく、単にカプセルの内部の切替挙動を変調するように組み込まれる。
【0074】
独立してカプセル層をアドレス指定する別の技法は、カプセルの1つの層を多安定にすること(すなわち、流体中に分散されたポリマーを提供することによって達成されてもよいように、この層に画像ヒステリシスを与えること、米国特許第7,170,670号参照)、およびヒステリシスを示さず、活発にアドレス指定されていない時はデフォルト状態に戻る第2の層を作製することである。
図9Aおよび9Bは、La*b*色空間のa*/b*面上のそれらの投影に関して、そのようなディスプレイの色の変化を図示する。
図9Aの矢印iは、
図8A−8Dのカプセルの第1の層で起こり得るような、シアンから白への切り替えを表す。いずれか一方の極性の電場が印加された時に、色素は分散状態からシャッタし、そのように形成される画像が安定していないと仮定される場合、電場が除去された時に、シャッタされた色素は再分散し、デフォルトシアン状態が再形成される。矢印(ii)は、
図8A−8Dに示されるカプセルの第2の層で起こり得るような、白から黄色への切り替えを表す。この切り替えは、電場の方向が逆転されるまで最終状態が安定しているように、ヒステリシスなものである。
【0075】
図9Bは、第1および第2の層の中のカプセルの切替速度が同じである時に、どのようにして4つの着色状態をこのディスプレイで達成できるかを図示する。矢印(1)は、カプセルの第1の層が(デフォルトシアン状態から)白に駆動され、第2の層が白から黄色に駆動されるように、電場の印加によって駆動されているディスプレイを示す。矢印(2)は、駆動電場がゼロまで低減されるにつれて、第2の層が黄色状態にとどまるが、第1の層がデフォルトのシアンになり、緑である、黄色とシアンの組み合わせをもたらすことを示す。矢印(3)は、次いで、ディスプレイが反対極性の電場で駆動されるにつれて、第1の層が再び白に駆動される一方で、第2の層は黄色から白に駆動されることを示す。結果は、白色画像である。最終的に、矢印(4)は、電場が逆極性駆動からゼロまで低減されるにつれて、第2の層が白のままである一方で、第1の層がシアンに戻り、シアン画像をもたらすことを示す。特定の電圧における駆動時間を変化させること(パルス幅変調)によって、または駆動電圧を変化させることによって、異なるレベルの色が獲得されてもよい。
【0076】
2つの層の切替速度が同じでない場合、より大きい色域が達成されてもよい。
図10Aおよび10Bは、それぞれ、
図9Aおよび9Bと同様の投影であるが、シアンシャッタリング層が白色/黄色層よりも高速であるが、黄色層の切替なしでシアンを完全にシャッタすることができるほど高速ではない時に起こる、色の変化を示す。白色/黄色層がヒステリシス画像安定性を示す一方で、シアンシャッタは示さないと仮定される(しかし、両方の層がヒステリシス画像安定性を示す場合に、同様の原則が適用される)。
図10Aでは、白色層が黄色に切り替えられるにつれて辿られる経路が見える。短い切替時間で、シアン層が完全にシャッタされる一方で、白色層は完全には黄色に切り替えられていない。これは、
図10Aでxとして示される、中間黄色状態を提供する。シアンシャッタの弛緩は、yとして示される青緑色を提供する。黄色の継続的な切替は、完全な黄色状態を提供し、そこから、シアンシャッタの緩和によって緑が得られる。
図10Bに示されるように、黄色から白に切り替える時に辿られる経路は、シアンシャッタの極限(すなわち、開閉)で同じ点を訪れるが、同じではない。純黄色または白色状態は、1つの駆動方向のみで獲得されることが注目に値する。シアンシャッタがヒステリシス画像安定性を示さない場合、デフォルトではない状態を維持するために、保持電圧が必要とされる。
【0077】
図11は、本発明の3層ディスプレイの概略側面図を示す。この3層ディスプレイは、コンセートレータ電極が、壁が内部よりも伝導性であるカプセルの第1の層に置換されることを除いて、
図8A−8Dに示される2層ディスプレイと略同様である。このカプセルの層は、色素を含有せず、透明であってもよく、単純にテンプレートの役割を果たし、カプセルの第2の層(第1の色素を含有する)を成形し、カプセル壁シャッタを提供する働きをする。
図11のディスプレイが、2つの原色の4つの可能な極限状態を達成する機構は、
図8A−8Dを参照して上記で説明されるものと正確に類似している。この種類の3層ディスプレイは、以下の実施例5で詳細に説明される。
【0078】
第3の原色は、いくつかの異なる方法で、
図8A−8Dおよび11に示されるディスプレイの中で提供されてもよい。
図12Aは、上述の3つの方法のうちのいずれかを使用してシャッタされる第3の原色の提供を図示する(コンセートレータ電極が示されているが、カプセル壁/幾何学的シャッタリングまたは側壁シャッタリングも使用されてもよい)。
【0079】
図12Bは、第2の色と同じ層の中にあり、すなわち、白色色素と組み合わせ、垂直に切り替えられた第3の色の提供を図示する。再度、第3の色は、第1または第2の色のいずれか一方よりもかなりゆっくりと切り替えられるべきである。
図12Bのディスプレイでは、第2および第3の色は、並んで配設され、これは、
図12Aに示されるものよりは好ましくない構成である。しかしながら、第3の色を含有するカプセルが、第2の色を含有するカプセルとは異なるサイズになる可能性があり、したがって、カプセルのいくらかの重複が達成されてもよい可能性がある。加えて、第2および第3の色の何らかの混合が、構造内の光散乱によって達成されてもよい。
図12Bは、第1の色素のカプセル壁/幾何学的シャッタを示すが、カプセルの層は排除されてもよく、代わりに、コンセートレータ電極が、第1の色素をシャッタするために使用されてもよい。
【0080】
図12Cおよび12Dは、
図12Aおよび12Bに示されるディスプレイと略同様である、本発明の3層ディスプレイの2つの異なる光学的状態を示す。
図12Cおよび12Dに示されるディスプレイでは、第1の電気光学層(
図12Cおよび12Dに図示されるような最下層)は、黄色色素を含有し、安定状態であり、閾値を有し、高い動作電圧を必要とする。この層の中の黄色色素は、色素が、この層の中の各カプセルの錐体上部の最上頂点に限定される、
図12Cに示されるシャッタ状態と、黄色色素が、各カプセルの平坦な下面の全体を覆う、
図12Dに示される非シャッタ状態との間で移動可能である。
図12Cおよび12Dに示されるディスプレイの第2の電気光学層は、シアン色素を含有し、安定状態ではない。この層の中のシアン色素は、色素が、各カプセルの最上および最下頂点に限定される、
図12Cおよび12Dに示される2つのシャッタ状態と、色素が各カプセルの全体を通して均一に分布させられる、非シャッタ状態(図示せず)との間で、移動させることができる。ディスプレイの第3の電気光学層は、
図12Cに示される非シャッタ位置と、
図12Dに示されるシャッタ位置との間で(図示されるように)垂直に移動させることができる、マゼンタ色素を含有する。
図12Cおよび12Dに示される上部電極には、白色反射体が提供される。
【0081】
すでに示されたように、一側面では、本発明は、全ての色素が流体を通して実質的に均一に分散された時に、媒体が実質的に黒く見えるように、流体中に複数の異なる有機色素を含む、可変透過電気泳動媒体を提供する。また、媒体は、(電荷制御剤または同様の作用物質、界面活性剤以外の)流体中にポリマー添加剤を実質的に含まないが、依然として高度の画像安定性を有する。そのような可変透過媒体の好ましい形態では、電気泳動媒体に印加される周波数および電圧を操作することによって、各色素を、分散状態または充填状態にさせることができ、媒体がかなりの色域を表示することができるように、色素は、かなりの異なる誘電泳動移動度を有するように選択される。
【0082】
色素の技術分野で当業者に周知であるように、黒を含む付加的な色を提供するように、2つ以上の色素の混合物を作製することができる。自動車塗料等の厳しい用途のために、広範囲の色素が開発されており、これらの色素のうちのいくつかは、VT媒体の好適な特性を実証している。キクナドリンおよびフタロシアニン族の色素が有用であることが分かっている。そのような色素は、非常に広い色域を全体でもたらすように混合することができるが、これまで、色域の一部になるために黒を必要とするという追加制約が、単一の媒体で達成可能な色域を縮小してきた。
【0083】
いくらか予想外に、VT媒体で有用な色素のうちのいくつかは、広範囲の印加された周波数および電圧への異なる応答という意味で、広範囲の電気泳動移動度を表すことが分かっている。したがって、電気泳動媒体に印加される周波数および電圧を操作することによって、各色素を、個別に分散状態または充填状態にさせることができ、すなわち、異なる有機色素を、相互から独立して「シャッタ」させることができる。分散状態は、色素が透過光を吸収することを可能にし、分散が均一になるほど、吸収が良好になる。充填状態は、色素が位置する媒体の面積の割合を最小限化し、それにより、その色素による吸収を最小限化する。全ての色素が充填された場合、媒体は、その「開放」または実質的に透明の光学的状態を成す。他方で、全ての色素が流体の全体を通して分散された場合、中間色を達成するように、種々の色素の量および色が平行を保たれているならば、媒体は、実質的に黒色の光学状態を成す。少なくとも1つの色素が分散され、少なくとも1つの色素充填された場合、媒体の色は、分散色素の色に近づき、種々の色素の分散の状態の独立制御によって、かなりの色域を生成することができ、カラー画像技術分野の当業者によく知られる理由により、そのようなVT媒体は、異なる色および誘電泳動移動度を有する、少なくとも3つの異なる色素を含有することが、通常好ましい。
【0084】
本発明のディスプレイは、すでに論議されているように、3つの別個の色素を駆動するために、(これら3つの色素が1つ、2つ、または3つの別個の電気光学層に存在しようと)種々の駆動方法を利用することができる。おそらく驚くべきことに、1組の電極およびDC電圧のみを使用して、相互から実質的に独立して3つの別個の色素を駆動することが可能である。概念的に、DCおよび1組の電極のみを使用して、3つの異なる色素を駆動するための方法は、以下のように要約されてもよい。
【0085】
(原則は層を必要としないが)以下の特性を伴う3色形成層があると仮定する。
(a)層1は、電圧(またはインパルス)閾値を有し、安定状態であり、その色は、印加された電圧の極性に依存する。
(b)層2は、より低い閾値を有するか、または閾値を持たず、安定状態であり、その色は、印加された電圧の極性に依存する。
(c)層3は、閾値を持たず、安定状態ではなく、層2よりも速く切り替わる。層3は、正または負のインパルスで駆動されようと同じ状態に達し、電位が印加されない時にその全く正反対に弛緩する。
【0086】
これらの3つの条件を考慮すると、駆動スキームは以下のとおりである。
(a)層1を所望の色に設定するために高い電圧を使用する。実践では、これは二元となり得て、この場合、黄色となるべきである。これはまた、層2および3にも影響を及ぼす。
(b)層2を所望の色に設定するためにより低い電圧を使用する。これは、層1に影響を及ぼさず、層3をその極限状態に切り替える。
(c)第3の層がその所望の色に弛緩することを可能にし、保持電圧(または任意の電圧におけるパルス)でそれをそこで保つ。
【0087】
これの代替案は、3つ全ての層が安定状態である場合、3色に対する3つの異なる電圧において連続的にアドレス指定し、より低速の層をアドレス指定する時に、より高速の層の付随切替を補正するという、より率直なスキームである。この場合、最低速層が最初にアドレス指定され、層1および2はそれぞれ、閾値を有する。しかしながら、これは、はるかに設計し難い。
【実施例】
【0088】
ここで、例証目的のみとしてであるが、本発明の媒体で使用される好ましい試薬、条件、および技法を示すように、以下の実施例が挙げられる。
【0089】
(実施例1)赤色、緑色、および青色色素を含有する第1の媒体
この実施例で使用された色素:
Clariant Hostaperm Pink E 02、1.45の比重、77m
2/gの表面積、および90nmの平均粒径を有すると製造業者によって記載されている、赤色キナクリドン色素(Clariant Corporation, 4000 Monroe Road, Charlotte NC 28205より市販されている)。
Clariant Hostaperm Green GNX、同じ製造業者から入手可能であり、2.05の比重、40m
2/gの表面積、および50nmの平均粒径を有すると製造業者によって記載されている、緑色銅フタロシアニン色素。
Clariant Hostaperm Blue B2G−D、同じ製造業者から入手可能であり、1.6の比重、44m
2/gの表面積、および75nmの平均粒径を有すると製造業者によって記載されている、青色銅フタロシアニン色素。
【0090】
(製造業者によって記載されたように)d−リモネン中で約20重量パーセントの色素、および色素表面積の1平方メートルあたり0.0044gのSolsperse 17000を含有する、各色素の練り顔料を、実質的に前述の2007/0146310で説明されているように調製した。各練り顔料のサンプルを、d−リモネンで0.01重量パーセント色素まで希釈し、2mm経路長のサンプルキュベットを使用したMinolta CM−3600d分光計を用いて、色透過について結果として生じた分散を測定した。練り顔料をまた、可能な限り黒に近い色を有する(すなわち、従来のCIE L*a*b*色空間の中で可能な限り最小のa*およびb*値を有する)混合分散を生成するように混合した。結果は以下の表1で示される。
【0091】
【表1】
【0092】
「黒色」混合物は、実際には、いずれの緑色色素も追加することもなく、緑色になる傾向があったことに留意されたい。これは、「青色」色素の青緑色相によって引き起こされた。
【0093】
(実施例2)赤色、緑色、および青色色素を含有する第2の媒体
70nmの平均粒径を有するキナクリドン色素である、Clariant Ink Jet Magenta E02 VP 2621が、実施例1で使用されたピンク色色素に代替されたことを除いて、実施例1を繰り返した。再度、練り顔料をまた、可能な限り黒に近い色を有する混合分散を生成するように混合した。結果は以下の表2で示される。
【0094】
【表2】
【0095】
再度、混した「黒」は、緑色になる傾向があり、好適な代替青色色素を見つけることができなかったため、色素セットの大きな変化が必要であったと判定された。
【0096】
(実施例3)緑色、紫色、および黄色色素を含有する媒体
ピンク色および青色色素が、同じ製造業者からのClariant Hostaperm Violet RL02およびClariant Novoperm Yellow 4G VP2532と置換されたことを除いて、実施例1を繰り返した。前者が、1.49の比重、80m
2/gの表面積、および50nmの平均粒径を有すると製造業者によって記載されている、ジオキサジン色素である一方で、後者は、1.44の比重、33m
2/gの表面積、および162nmの平均粒径を有すると製造業者によって記載されている、ジスアゾ色素である。再度、練り顔料をまた、可能な限り黒に近い色を有する混合分散を生成するように混合した。結果は以下の表3で示される。
【0097】
【表3】
【0098】
表3から分かるように、この1組の色素の混合物は、良好な中間黒色を生成する。
【0099】
米国特許第6,866,760号の実施例1で説明されているのと実質的に同じ方式で、この黒色混合物を使用して、ポリマー分散電気泳動媒体を生成した。ポリマー分散媒体を、ポリエチレンテレフタレート/ITO膜のインジウムスズ酸化物(ITO)被覆表面上に被覆し、乾燥させ、接着剤層を塗布し、駆動電圧および周波数の種々の組み合わせで駆動された、実験的な単ピクセルディスプレイを生産するように、結果として生じた膜を後方電極に積層した。
【0100】
そのような多色素ディスプレイでは、全ての色素が充填された場合、ディスプレイは開いている(実質的に透明である)ように見え、全ての色素が分散された場合、ディスプレイは閉鎖している(実質的に黒い)ように見える。その分散形態での各色素の割合が、ディスプレイ中のその色素の全体的割合とは異なる(すなわち、表3に示される57.8%緑色、22.9%紫色、19.3%黄色とは異なる)場合、ディスプレイの色は、より分散した色素の色に近づく。例えば、黄色色素がよく分散され、緑色および紫色色素が充填された場合、ディスプレイは、黄色に見える。代替として、黄色および緑色色素が分散され、紫色のみが充填された場合、ディスプレイは、黄緑色に見える。以下の表4は、印加された波形および生成される対応色の実施例を挙げる。
【0101】
【表4】
【0102】
上記の色、および異なる波形を使用して生成される他の色が、添付図面の
図17のa*b*面で描画されている。色は、サンプルの後ろに配置された白色背景を伴って、反射モードのEye−One分光光度計を用いて測定された。白色背景は、L*a*b*計算のための参照白色点として取り扱われた。
【0103】
図から、実験的ディスプレイは、a*b*面の緑色/黄色/青色部分の中だけであるが、かなりの色域を表示することができ、この特定のディスプレイは、正のa*(すなわち、赤色)を生成できなかったことが分かるであろう。しかしながら、この実験的ディスプレイによって表示されることが可能なかなりの色域、および市販されており、そのようなディスプレイに組み込むために好適である広範囲の色素を考慮すると、付加的な色素の評価および処方のさらなる研究により、a*b*面により集中した、より広い色域を有するディスプレイを生産するであろうと予想できる。
【0104】
(実施例4)シアンシャッタリングカプセルのための被覆スラリー
シアン色素、Irgalite Blue GLVO(BASF, Ludwigshafen, Germanyから入手可能である)(8g)を、Isopar E(12g)およびSolsperse 17000の溶液(Lubrizol Corporation, Wickliffe, OHから入手可能である、Isopar E中の20gの20%w/w溶液)と組み合わせ、シアン色素分散を得るようにビーズとともに撹拌することによって、混合物を分散させた。
【0105】
このようにして調製されたシアン色素分散(5.75g)を、Isopar E(109.25g)と組み合わせ、カプセル化の準備ができた内相を生成するように、結果として生じた混合物を機械的に一晩圧延した。次いで、米国特許第7,002,728号で説明されている手順に従って、このようにして調製された内相をカプセル化した。結果として生じたカプセル化材料を沈降によって単離し、脱イオン水で洗浄し、45および20μmメッシュの篩を使用して篩過することによって、サイズ分離した。Coulter Multisizerを使用した分析は、結果として生じたカプセルが40μmの平均サイズを有し、全カプセル体積の85パーセント以上が、20〜60μmの所望のサイズを有するカプセルの中にあったことを示した。
【0106】
結果として生じたカプセルスラリーをpH9に調整し、過剰な水を除去した。次いで、カプセルを濃縮し、上澄み液を廃棄した。カプセルを、水性ポリウレタン結合剤(米国特許出願第2005/0124751号で説明されているものと同様に調製された)と混合し、少量のTriton X−100界面活性剤およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを追加し、以下で詳細に説明されるように、ディスプレイで使用する準備ができたスラリーを提供するように徹底的に混合した。
【0107】
(実施例5)1%w/wの色素を含有するシアンシャッタリングカプセルのための被覆スラリー
Irgalite Blue GLVO(26g)を、Isopar E(70g)およびSolsperse 17000の溶液(Isopar E中の70gの20%w/w溶液)と組み合わせ、シアン色素分散を生成するように、混合物をガラスビーズとともに磨砕機の中で分散させた。このようにして調製されたシアン色素分散(5.75g)を、Isopar E(109.25g)と組み合わせた。カプセル化の準備ができた内相を生成するように、結果として生じた混合物を機械的に一晩圧延した。次いで、40μmの平均サイズを有し、全カプセル体積の85パーセント以上が20〜60μmの所望のサイズを有するカプセルの中にある、カプセルを生成するように、実施例4の手順に従って、このようにして調製された内相をカプセル化した。次いで、上記の実施例4と同じ方法で、カプセルを被覆スラリーに組み込んだ。
【0108】
(実施例6)マゼンタシャッタリングカプセルのための被覆スラリー
マゼンタ色素Quindo Red 19(Sun Chemical Corporation, Parsippany, NYから入手可能である)に、実質的に米国特許第7,002,728号で説明されているようなポリ(ラウリルメタクリレート)被覆を提供した。次いで、マゼンタ色素分散を生成するように、被覆色素(13g)をIsopar E(30g)と組み合わせ、200μmメッシュ膜を通して濾過し、固体率が17%であると判定された。
【0109】
このようにして調製されたマゼンタ色素分散(13g)を、Isopar E(88g)およびSolsperse 17000(Isopar E中の8gの20%w/w溶液)と組み合わせ、カプセル化の準備ができた内相を生成するように、結果として生じた混合物を機械的に一晩圧延した。次いで、40μmの平均サイズを有し、全カプセル体積の85パーセント以上が20〜60μmの所望のサイズを有するカプセルの中にある、カプセルを生成するように、実施例4の手順に従って、このようにして調製された内相をカプセル化した。次いで、上記の実施例4と同じ方法で、カプセルを被覆スラリーに組み込んだ。
【0110】
(実施例7)マゼンタ/白色垂直切替カプセルのための被覆スラリー
機能性マゼンタ色素(10g、上記の実施例6で説明されるように調製された)を、Isopar E(40g)と組み合わせ、マゼンタ色素分散を生成するようにビーズとともに撹拌することによって、結果として生じた混合物を分散させ、200μmメッシュ膜を通して濾過し、固体率を判定した。この分散(18.82g)を、二酸化チタン(E. I. du Pont de Nemours Corporation, Wilmington, DEから入手可能なR794)(米国特許第7,002,728号で説明されるように扱われた70.57gの60%w/w分散)、少量のSolsperse 17000および分子量600,000のポリ(イソブチレン)、ならびに付加的な量のIsopar Eと組み合わせた。カプセル化の準備ができた内相を生成するように、結果として生じた混合物を機械的に一晩圧延した。次いで、40μmの平均サイズを有し、全カプセル体積の85パーセント以上が20〜60μmの所望のサイズを有するカプセルの中にある、カプセルを生成するように、実施例4の手順に従って、このようにして調製された内相をカプセル化した。次いで、上記の実施例4と同じ方法で、カプセルを被覆スラリーに組み込んだ。
【0111】
(実施例8)黄色/白色垂直切替カプセルのための被覆スラリー
黄色色素Paliotan Yellow L 1145(BASFから入手可能である)を、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N’−(4−ビニルベンジル)エチレンジアミン塩酸塩で表面処理し、その後に、実質的に米国特許第7,002,728号で説明されるようにポリ(ラウリルメタクリレート)被覆の提供が続く。この黄色色素(30g)を、Isopar E(70g)と組み合わせ、2時間超音波で分解し、機械的に一晩圧延した。次いで、結果として生じた分散(45.6g)を、実施例7と同じR794二酸化チタン(102.6gの60%w/w分散)、少量のSolsperse 17000および分子量850,000のポリ(イソブチレン)、ならびに付加的な量のIsopar Eと組み合わせた。カプセル化の準備ができた内相を生成するように、結果として生じた混合物を機械的に一晩圧延した。次いで、40μmの平均サイズを有し、全カプセル体積の85パーセント以上が20〜60μmの所望のサイズを有するカプセルの中にある、カプセルを生成するように、実施例4の手順に従って、このようにして調製された内相をカプセル化した。次いで、上記の実施例4と同じ方法で、カプセルを被覆スラリーに組み込んだ。
【0112】
(実施例9)色素を含有しないカプセルのための被覆スラリー
カプセル化の準備ができた内相を生成するように、Isopar E 中のSolsperse 17000の溶液を機械的に一晩圧延した。次いで、40μmの平均サイズを有し、全カプセル体積の85パーセント以上が20〜60μmの所望のサイズを有するカプセルの中にある、カプセルを生成するように、実施例4の手順に従って、このようにして調製された内相をカプセル化した。次いで、上記の実施例4と同じ方法で、カプセルを被覆スラリーに組み込んだ。
【0113】
(実施例10)シアン/黄色2色ディスプレイの組立および切替
50μm間隙を伴うバー塗工機を使用して、実施例4で調製されたシアンシャッタリングカプセルスラリーを、50μmピッチおよび1μm線幅のプリント六角格子金属電極を持つ、125μmポリ(エチレンテレフタレート)(PET)膜上に被覆した。被覆を60℃で乾燥させ、その後に、100μmの間隙を伴うバー塗工機を用いて、上記の実施例8で説明されるように調製された黄色/白色垂直切替カプセルスラリーを使用して、カプセルの第2の被覆を塗布した。第2の被覆層を60℃で乾燥させた。解放シート上に事前被覆された、テトラアルキルアンモニウム塩でドープしたポリウレタン接着剤の層を、米国特許第7,002,728号で説明されるようにカプセルの第2の層の上に積層した。解放シートを除去し、結果として生じた多層構造をグラファイト後方電極上に積層した。最終的に組み立てられると、ディスプレイ構造は、その画面からの順序で、PET膜基礎の第1の層と、パターン化電極の第2の層と、シアンシャッタリングカプセルの第3の層と、黄色/白色垂直切替カプセルの第4の層と、伝導性ドープ積層接着剤の第5の層と、グラファイト後方電極を備える第6の層とを備えた。
【0114】
40Vから−40Vに及んだDC電圧によってオフセットされた、30Hzおよび+/−10Vにおける方形波AC信号を印加することによって、このようにして生成されたディスプレイ構造を駆動した。ディスプレイが駆動されるにつれて、タングステン環光源によって照射され、ディスプレイから反射された光を分光光度法で分析し、以下の表5で示されるL*a*b*値を生じた。
【0115】
【表5】
【0116】
これらの結果は、
図13Aおよび13Bで図式的に示されている。
図13Aは、上面透明電極において30Hz AC駆動に印加されるDCオフセットの関数として、L*、a*、およびb*値を示す。結果として生じた状態はわずかに劣るが、30Hz AC構成要素なしで、同様の状態が単純DC駆動を用いて得られることに留意されたい。
【0117】
このディスプレイは、
図8A−8Dに示されるように動作する。上面側でコンセートレータ電極と接触し、反対側でカプセルの第2の層と接触している、カプセルの第1の層は、正電荷を持つシアン色素を含有する。DCオフセットが正である時に、シアン色素は、(
図8Cに示されるように)カプセルの第1の層とカプセルの第2の層との間の接合点でシャッタされる。DCオフセットが負である時に、シアン色素は、(
図8Aに示されるように)コンセートレータ電極に集まる。DCオフセットがゼロに向かって移動するにつれて、色素は、シャッタ状態から離れる。
図13Aのa*値で見られるヒステリシスループは、これらの変化を反映する(あまり負ではないa*は、シャッタされたシアン色素に対応する)。DCオフセットが増加させられるにつれてシャッタ状態に向かう色素の移動が、DCオフセットが減少させられるにつれてシャッタ状態から離れる色素の移動よりも速いため、わずかなヒステリシスがある。
【0118】
第2のカプセル層の中の垂直切替カプセル(すなわち、粒子が印加された電場と平行に移動するカプセル)は、正電荷を持つ黄色色素、および負電荷を持つ白色色素を含有し、したがって、上面が負に帯電した時に、このカプセルの層は、黄色画像(正のb*)を表示し、上面が正に帯電した時に、白色画像(覆っているシアン層の中の青色成分により、負のb*)を表示する。
【0119】
図13Bに示されるa*/b*プロットは、
図9Bで概念的に示されるものと実験的に対応する。
【0120】
(実施例11)シャッタリングを方向付けるために無色素カプセルの層が使用される、シアン/マゼンタ2色ディスプレイの組立および駆動
この実施例で生産されるディスプレイは、
図12Aに示される構造を有する。
【0121】
上記の実施例10におけるカプセルの第1の層と同じ条件を使用して、上記の実施例9で調製された無色素カプセルスラリーを、インジウムスズ酸化物(ITO)の透明伝導性被覆を有するPET膜上に被覆し、乾燥させた。カプセルの第2の被覆は、80μmのバーのバー塗工機間隙を用いて上記の実施例5において調製されたシアンシャッタリングカプセルスラリーを用いて塗布し、60℃で乾燥させた。第3のカプセル層を形成するように、100μmのバー塗工機間隙を使用し、上記の実施例7で調製されたマゼンタ/白色垂直切替カプセルスラリーを使用して、カプセルの第3の被覆を塗布し、60℃で乾燥させた。実施例10と同じ方法で、接着剤層をカプセルの第3の層の上に積層した。解放シートを除去し、結果として生じた多層構造をグラファイト後方電極上に積層した。最終的に組み立てられると、ディスプレイ構造は、その画面からの順序で、PET膜基礎の第1の層と、非パターン化連続透明電極の第2の層と、無色素カプセルの第3の層と、シアンシャッタリングカプセルの第4の層と、マゼンタ/白色垂直切替カプセルの第5の層と、接着剤の第6の層と、グラファイト後方電極を備える第7の層とを備えた。
【0122】
40Vから−40Vに及んだDC電圧によってオフセットされた、30Hzおよび+/−10Vにおける方形波AC信号を印加することによって、このようにして生成されたディスプレイ構造を駆動した。ディスプレイが駆動されるにつれて、タングステン環光源によって照射され、ディスプレイから反射された光を分光光度法で分析し、以下の表6で示されるL*a*b*値を生じた。
【0123】
【表6】
【0124】
これらの結果は、
図14Aおよび14Bで図式的に示されている。
図14Aは、上面透明電極において30Hz AC駆動に印加されるDCオフセットの関数として、L*、a*、およびb*値を示す。上記の実施例10の場合ように、結果として生じた状態はわずかに劣るが、30Hz AC構成要素なしで、同様の状態が単純DC駆動を用いて得られることに留意されたい。
【0125】
このディスプレイは、以下のように動作する。一側面上で無色素カプセルと接触し、反対側でカプセルの第3の層と接触している、カプセルの第2の層は、正電荷を持つシアン色素を含有し、
図4で概念的に示されるようにシャッタする。DCオフセットが正である時に、シアン色素は、カプセルの第2の層とカプセルの第3の層との間の接合点でシャッタされる。DCオフセットが負である時に、シアン色素は、カプセルの第2の層と(無色素)カプセルの第1の層との間の接合点でシャッタされる。シアン色素のシャッタリングは、矢印iが、上面が正電荷を持つ時のシャッタおよび非シャッタシアン色素の間の移動に対応し、矢印iiが、上面が負電荷を持つ時のシャッタおよび非シャッタシアン色素の間の移動に対応する、
図14Bに示されるa*/b*プロットで容易に見られる。
【0126】
垂直切替カプセルは、正電荷を持つマゼンタ色素、および負電荷を持つ白色色素を含有し、したがって、上面が負に帯電した時に、このカプセルの層は、マゼンタ画像(より正のb*)を表示し、上面が正である時に、白色画像(より負のb*)を表示する。この切替は、
図14Bの矢印iiiに対応する。
【0127】
(実施例12)
図12Aの通りのシアン/マゼンタ/黄色3色ディスプレイ
第2の被覆では、バー塗工機間隙が80μmであったことを除いて、第1の被覆層には上記の実施例6で調製されたマゼンタシャッタリングカプセルスラリー、および第2の被覆層には上記の実施例5で調製されたシアンシャッタリングカプセルスラリーを使用して、実施例10の最初の2つの被覆ステップを繰り返した。次に、第3のカプセル層を形成するように、100μmのバー塗工機間隙を用いて、上記の実施例8で調製された黄色/白色垂直切替カプセルスラリーを塗布し、60℃で乾燥させた。全て実施例10のように、接着剤層をカプセルの第3の層の上に積層し、解放シートを除去し、残りの層をグラファイト後方電極上に積層した。最終的に組み立てられると、ディスプレイ構造は、その画面からの順序で、PET膜基礎の第1の層と、パターン化電極の第2の層と、マゼンタシャッタリングカプセルの第3の層と、シアンシャッタリングカプセルの第4の層と、黄色/白色垂直切替カプセルの第5の層と、伝導性ドープ積層接着剤の第6の層と、グラファイト後方電極を備える第7の層とを備えた。
【0128】
全て実施例10と同じ方法で、ディスプレイ構造を駆動し、照射し、そこから反射された光を分析した。結果は以下の表7で示される。
【0129】
【表7】
【0130】
これらの結果は、それぞれ、
図13Aおよび13Bに直接相当する、
図15Aおよび15Bで図式的に示されている。広範囲の色がディスプレイによってアドレス可能であることが分かる。色は、a*軸に沿ってオフセットされ、マゼンタシャッタが完全には閉鎖していないことを示す。そのようなオフセットは、均一な色フィルタをディスプレイ全体に適用することによって補正されてもよい。
【0131】
(実施例13)単一の印加電圧および時間変調を使用した2色ディスプレイ
PET上のITO被覆が、無色素カプセル層の塗布前に、イオンドーパントを含む組成物で前処理されたことを除いて、本質的に上記の実施例11で説明されるように、ディスプレイを調製した。以下の表8に示される波形を使用して、このディスプレイをアドレス指定した。
【0132】
【表8】
【0133】
駆動は、長さ200msの30Vにおけるパルスを継続し、その後に、長さが2秒の休止が続いた。ディスプレイによって生成される色は、文字が表8の最後の列の中の文字に対応する、
図16に示されている。負の電圧が、シアン色素をシャッタし、
図16の位置aに対応して、マゼンタ/白色カプセルをマゼンタに切り替える。電圧がゼロで保持されると、安定状態であるマゼンタ/白色カプセルは、マゼンタ状態にとどまるが、安定状態ではないシアンシャッタは、
図16の位置bに対応して、透明状態からシアン状態に弛緩する。次いで、正の電圧が、
図16の位置cに対応して、シアンをシャッタされた透明状態に、マゼンタを白色状態に切り替える。電圧がゼロで保持されると、安定状態であるマゼンタ/白色カプセルは、白色状態にとどまるが、安定状態ではないシアンシャッタは、
図16の位置dに対応して、シアン状態から透明状態に弛緩する。次に、駆動の極性が逆転されるが、切替時間は、2秒の休止によって分離されたパルスにおいて200msまで削減される。マゼンタ/白色カプセルが、(安定状態であるため)白色からマゼンタ状態に増分的に切り替えられる一方で、シアンカプセルは、部分的にシャッタする(位置e)が、電圧がゼロまで低減されるたびに、非シャッタ状態に弛緩する(位置f)。このパターンは、短パルスが継続されるにつれて繰り返す。
【0134】
先述の論議から、本発明は、複数の色を表示することが可能な可変透過電気泳動媒体を提供することが分かるであろう。可変色区分化オーバーレイとして使用される時に、本発明の媒体は、従来の(静止)色フィルタアレイよりもはるかに広い色域を提供することができる。本発明はまた、高い画像安定性を伴う低ヘイズモノクロ可変透過媒体も提供する。