(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5657890
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】ヒト塩味受容体および塩味知覚を調節する方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/705 20060101AFI20141225BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20141225BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20141225BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20141225BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20141225BHJP
A61P 3/12 20060101ALN20141225BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20141225BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20141225BHJP
【FI】
C07K14/705ZNA
G01N33/483 F
G01N33/50 Z
G01N37/00 103
!A61K45/00
!A61P3/12
!C12N15/00 A
!C12Q1/02
【請求項の数】20
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2009-533380(P2009-533380)
(86)(22)【出願日】2007年10月18日
(65)【公表番号】特表2010-506929(P2010-506929A)
(43)【公表日】2010年3月4日
(86)【国際出願番号】US2007022253
(87)【国際公開番号】WO2008051447
(87)【国際公開日】20080502
【審査請求日】2010年10月15日
(31)【優先権主張番号】60/853,290
(32)【優先日】2006年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599150263
【氏名又は名称】モネル ケミカル センシズ センター
【氏名又は名称原語表記】Monell Chemical Senses Center
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ブランド,ジョゼフ,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒューク,タウフィクル
【審査官】
小暮 道明
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2005/014848(WO,A1)
【文献】
J. Biol. Chem., 271[2](1996) p.807-816
【文献】
J. Gen. Physiol., 108(1996) p.49-65
【文献】
Anal. Biochem., 286(2000) p.206-213
【文献】
Protein Expr. Purif., 4(1993) p.312-319
【文献】
J. Biol. Chem., 270[46](1995) p.27411-27414
【文献】
J. Biol. Chem., 281[12](Mar 2006) p.8233-8241
【文献】
Accession No. NM_002978,Database DDBJ/EMBL/GenBank,2006年 5月14日,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/34101281?sat=11&satkey=6289176
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/
C07K
G01N33/
C12Q1/
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト塩味受容体のモジュレーターを同定する方法であって:
少なくとも1つのヒト塩味受容体を人工脂質膜において構築すること、ここで、前記ヒト塩味受容体は、少なくとも1つのベータサブユニット、少なくとも1つのガンマサブユニット、および少なくとも1つの配列番号12のアミノ酸配列を含むデルタサブユニットを含み、
ヒト塩味受容体と試験化合物とを、ナトリウムまたはリチウムの存在下で接触させること、
および
前記試験化合物の非存在下における前記ヒト塩味受容体の生物学的活性と比較した、前記試験化合物の存在下における前記ヒト塩味受容体の生物学的活性の調節を決定すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
ヒト塩味受容体と上皮ナトリウムイオンチャネルアンタゴニストとを接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
人工脂質膜が、ミセル、リポソームまたは脂質二重層である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ヒト塩味受容体の少なくとも2つのサブユニットが、互いと比較して異なる比率で脂質膜に存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ハイスループットスクリーニングに適合している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種のリン脂質と、上皮ナトリウムイオンチャネルもしくは特定の比率の上皮ナトリウムイオンチャネルサブユニットとを含み、少なくとも1つのアルファサブユニット、少なくとも1つのベータサブユニット、少なくとも1つの配列番号12のアミノ酸配列を含むデルタサブユニット、および少なくとも1つのガンマサブユニットを含む少なくとも1つの上皮ナトリウムイオンチャネルを含む、ヒト塩味受容体のモジュレーターを同定するための人工脂質膜。
【請求項7】
膜がミセル、リポソームまたは脂質二重層である、請求項6に記載の人工脂質膜。
【請求項8】
少なくとも1つのイプシロンサブユニットをさらに含む、請求項6または7に記載の人工脂質膜。
【請求項9】
少なくとも1種のリン脂質と、上皮ナトリウムイオンチャネルもしくは特定の比率の上皮ナトリウムイオンチャネルサブユニットとを含み、少なくとも1つの配列番号12のアミノ酸配列を含むデルタサブユニット、少なくとも1つのベータサブユニット、および少なくとも1つのガンマサブユニットを含む少なくとも1つの上皮ナトリウムチャネルを含む、ヒト塩味受容体のモジュレーターを同定するための人工脂質膜。
【請求項10】
膜がミセル、リポソームまたは脂質二重層である、請求項9に記載の人工脂質膜。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項に記載の人工脂質膜を調製する方法であって:
少なくとも1種のリン脂質を含むミセルまたはリポソームと、上皮ナトリウムイオンチャネルまたは特定の比率の上皮ナトリウムイオンチャネルサブユニットとを混合すること、ここで、前記上皮ナトリウムイオンチャネルまたは上皮ナトリウムイオンチャネルサブユニットは、少なくとも1種の界面活性剤を含む好適な水性緩衝液に溶解しており、
前記ミセルまたはリポソームを、前記上皮ナトリウムイオンチャネルまたは上皮ナトリウムイオンチャネルサブユニットとともに、十分な時間インキュベートすること、および
前記少なくとも1種の界面活性剤を除去すること
を含む、前記方法。
【請求項12】
平面脂質二重層にプロテオリポソームを再構成することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
塩味知覚のモジュレーターを同定する方法であって:
少なくとも1つの上皮ナトリウムイオンチャネルを人工脂質膜において構築すること、ここで、前記ナトリウムイオンチャネルは、少なくとも1つのベータサブユニット、少なくとも1つのガンマサブユニット、および少なくとも1つの配列番号12のアミノ酸配列を含むデルタサブユニットを含み、
前記イオンチャネルと試験化合物とを、ナトリウムまたはリチウムの存在下で接触させること、
前記試験化合物の非存在下における前記上皮ナトリウムイオンチャネルの生物学的活性と比較した、前記試験化合物の存在下における前記上皮ナトリウムイオンチャネルの生物学的活性の調節を決定すること、および
前記試験化合物の非存在下における対象の塩味知覚のレベルと、前記試験化合物の存在下における対象の塩味知覚のレベルとを比較すること
を含む、前記方法。
【請求項14】
細胞ベースのアッセイにおいて、上皮ナトリウムチャネル活性について陽性の候補化合物をスクリーニングする工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのベータポリペチドサブユニット、少なくとも1つのガンマポリペチドサブユニット、少なくとも1つのデルタポリペチドサブユニットを含み、ここで前記デルタポリペチドサブユニットが配列番号12のアミノ酸配列を含む、単離されたヒト塩味受容体。
【請求項16】
デルタポリペチドサブユニットが配列番号9のアミノ酸配列を有する、請求項15に記載の単離されたヒト塩味受容体。
【請求項17】
ヒト塩味受容体のモジュレーターを同定するためのキットであって:
少なくとも1種のリン脂質、
デルタサブユニット、ベータサブユニット、および配列番号12のアミノ酸配列を含むガンマサブユニットを含む、実質的に精製された上皮ナトリウムイオンチャネルサブユニット、
を含み、
任意に、上皮ナトリウムイオンチャネルモジュレーター、ナトリウムまたはリチウム、
および
ヒト塩味受容体のモジュレーターを同定する方法において前記キットを使用するための指示
を含む、前記キット。
【請求項18】
サブユニットが単一の容器内で既知の比率で混合されている、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
少なくとも2つのサブユニットが、互いと比較して異なる比率で存在する、請求項17または18に記載のキット。
【請求項20】
モジュレーターが、アミロライド、フェナミル、ベンザミル、クロルヘキシジンまたはグアニジンイオンの給源または有機ポリアミンである、請求項17〜19のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は2006年10月19日出願の米国仮出願第60/853,290号の利益を主張し、その全内容は、その全体があらゆるの目的のために、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本発明は、一般的には細胞生物学の分野に関する。より具体的には、本発明はナトリウムイオンチャネルおよびヒトでの塩味認識におけるその役割に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
特許、公開された出願、技術論文および学術論文を含む種々の出版物が本明細書中に引用されている。これらの引用された出版物の各々は、その全体があらゆるの目的のために、本明細書中の参照によって組み込まれる。
【0004】
ナトリウムは、体の代謝において重要な役割を演じており、これは、とりわけ、電気刺激の伝達ならびに体液および電解質のホメオスタシスを含む。そのうえ、ナトリウムは動物、特にヒトによって摂取される種々の食品における風味の発現および安定性に寄与している。ナトリウムイオンはある種の刺激の苦味を妨げ、それによって食物の味を調節することができる。苦味に対するナトリウムのこの抑制効果は、ナトリウムイオンを含んでいる化合物の塩味に依存せず、むしろナトリウムイオンの濃度に依存する。
【0005】
ナトリウムの過剰な摂取は、しかしながら、胃がんおよび高血圧を含む種々の疾病状態に関係している。高血圧は、心疾患、脳卒中および腎臓病の主要なリスク因子である。過剰なナトリウム消費の潜在的にネガティブな健康への影響のため、米国FDAは、成人にその摂取量を1日あたりナトリウム2400ミリグラム未満に制限するよう推奨している。それでも、アメリカ人は一般的にこの推奨された許可量を大幅に超過している。このように、種々の医学団体や科学団体は、ナトリウム摂取の劇的な低減を推奨している。
【0006】
ナトリウム摂取を低減するという目標を推進するために、多数の塩味模倣物質および塩味増強物質が開発された。一般に、かかる模倣物質は、これらが塩化ナトリウムのクリーンな塩味を欠いており、そのほとんどが食品の風味にナトリウム塩のようには影響を与えないことから、商業的に実現可能ではなかった。
【0007】
代用塩として一般に知られている塩味模倣物質の不足は、味覚受容体の極端な構造特異性を反映している。知られている限りでは、塩化ナトリウム(NaCl)および塩化リチウム(LiCl)のみが真の塩味をもたらす。NaおよびLiと対になったより重いアニオン、そして、Clと対になったより重いカチオンは、いずれも苦くなる傾向がある。カチオン特異性はイオンチャネルを示唆し、一方、塩化物の効果は細胞間シャント(paracellular shunt)を示唆する。さらに、NaClが塩味を与える濃度は50mMを超えており、これは受容体プロセスの上限の濃度である。これらの2つの知見−NaおよびLiについての特異性、および有効濃度範囲−は、ヒトにおける塩味のメカニズムを見出す鍵になると考えられている。
【0008】
過去20年の間、特定の阻害物質および増強物質の存在下または非存在下における神経活動の、塩によって誘導された変化に関する質的および量的な多数の研究は、上皮ナトリウムチャネル(ENaC)が塩味に関する主要な受容体として作用するという仮説を導いた(Brand et al. (1985) Brain Res. 334:207-14、Feigin et al. (1994) Am. J. Physiol. 266(Cell Physiol):C1165-72、および、Brelin et al. (2006) Adv. Otorhinolaryngol. 63:152-90)。ENaCは多くの実験動物において塩受容体として機能しているが(Halpern, BP (1998) Neurosci. Biobehav. Rev. 23(1):5-47)、同じことがヒトにも当てはまるという決定的証拠は明らかにならなかった。特に、ヒトにおいてアミロライドがナトリウムによって誘導された塩味反応を阻害することができないことは、ENaCがヒトの塩味認識に、少なくとも他の動物で観察される程には関与していないことを示唆する。
【0009】
このヒトと動物モデルとの間の相違のため、ヒトにおける塩味知覚の基礎をなしている伝達機構は、依然研究中である。神経の十分な活性化は、結局より高い皮質野で塩味の感覚を引き起こす(Schoenfeld, MA et al. (2004) Neuroscience. 127:347-53)。
【0010】
多くの齧歯動物の味覚細胞がアミロライドに対して示す強い反応のため、これらの細胞のENaCは、タイトジャンクションのレベルより上の頂端膜に主に位置すると推測される。この位置は、これらがアミロライドなどの薬物の作用の影響を受けやすくする。アミロライドはタイトジャンクションを通過することができないと推測される。頂端膜において直接的な機構を増大させるのは、タイトジャンクションレベル以下の味蕾の側底部への細胞間シャント経路である(Mierson, S et al. (1996) J. Neurophysiol. 76:1297-309)。ナトリウムはタイトジャンクションを通過することができるため、細胞間機構はアミロライド不応性の塩味反応をもたらすはずである。大多数の味覚細胞ENaCがこれらのタイトジャンクションの下に位置するため、ヒトの塩味反応はアミロライド不応性である可能性がある。塩知覚のための他の機構が存在し得る。これらは、ENaCとは全く異なるか、またはナトリウム負荷によるENaCの代替的な作用であるか、またはENaCの発現または組成に対するホルモンの影響である可能性がある。
【0011】
ENaCは、上皮におけるナトリウム透過を媒介するカチオンチャネルタンパク質のファミリーを含む(Mano, I et al. (1999) Bioessays 21:568-78)。発現クローニングは、当初3つの相同遺伝子があり、それぞれチャンネルの3つのサブユニットの1つ−すなわち、アルファ(α)、ベータ(β)およびガンマ(γ)をコードしていることを示した(Canessa, CM et al. (1994) Nature 367:463-7)。3つすべてのサブユニットの共発現は最大のNa
+チャネル活性にとって不可欠であるが、αサブユニットはそれ自体によりわずかな電流を生じる。第4のサブユニットであるデルタ(δ)が後にクローニングされ、構造的にも機能的にもαサブユニットと類似しているが、アミロライドに対して30倍低い親和性を有することが示された(Waldmann et al. (1995) J. Biol. Chem. 270:27411-4)。この低いアミロライド感受性は、PreMR2配列と呼ばれるモチーフに反映されていると推測される。ENaCの膜貫通トポロジーは、長い細胞外ループに隣接する、細胞内アミノ末端およびカルボキシル末端を有する2つの疎水性膜貫通ドメインを含む。ENaCのサブユニットの化学量論比は、ラットでα2βγ構成(Firsov et al. (1998) EMBO J. 17:344-52)、ヒトでα(1)β(1)γ(1)構成(Staruschenko, A (2005) Biophys. J. 88:3966-75)である証拠があるため、種特異的かつ組織特異的である可能性がある。
【0012】
健全性および健康の向上のために、ナトリウム摂取を減らす必要がある。この必要性は、ナトリウム味に対する欲求および食品に改善された風味を与えるナトリウムの能力とバランスをとる必要がある。ナトリウム風味を犠牲にすることなく食事のナトリウムを減らす1つの魅力的な手段は、塩味のモジュレーターを用いることである。したがって、塩味知覚のための明確な受容体を確立するニーズ、および、塩味知覚のモジュレーターを同定する手段に対するニーズがある。
【発明の概要】
【0013】
概要
本発明は、少なくとも1つのベータポリペチドサブユニット、少なくとも1つのガンマポリペチドサブユニット、および少なくとも1つのデルタポリペチドサブユニットを含む単離されたヒトの塩味受容体を提供し、ここで、デルタポリペチドサブユニットは配列番号12のアミノ酸配列を含む。いくつかの側面において、デルタポリペチドサブユニットは、配列番号9のアミノ酸配列を有する。また、少なくとも1つのアルファポリペチドサブユニット、少なくとも1つのベータポリペチドサブユニット、少なくとも1つのデルタポリペチドサブユニット、および少なくとも1つのガンマポリペチドサブユニットを含む、単離されたヒトの塩味受容体も提供される。
【0014】
本発明はまた、上皮ナトリウムイオンチャネルのモジュレーターを同定するための方法を提供する。かかる方法は、少なくとも1つの上皮ナトリウムイオンチャネルを脂質膜において構築すること(ここで、上皮ナトリウムイオンチャネルは少なくとも3種類のサブユニットを含み、これらは独立して、アルファサブユニット、ベータサブユニット、ガンマサブユニット、デルタサブユニットおよびイプシロンサブユニットである)、イオンチャネルと試験化合物とを、ナトリウムイオンまたはリチウムイオンの存在下で接触させること、および、試験化合物の非存在下における上皮ナトリウムイオンチャネルの生物学的活性と比較した、試験化合物の存在下における上皮ナトリウムイオンチャネルの生物学的活性の調節(modulation)を決定することを含む。脂質膜は、好ましくは人工膜である。
【0015】
いくつかの側面では、上皮イオンチャネルは、1つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む。別の側面では、上皮イオンチャネルは、1つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、1つのガンマサブユニット、および1つのイプシロンサブユニットを含む。別の側面では、上皮イオンチャネルは、2つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む。さらなる側面では、上皮イオンチャネルは、3つのアルファサブユニット、3つのベータサブユニット、および3つのガンマサブユニットを含む。追加の側面は、上皮イオンチャネルが1つのデルタサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含むものを含む。別の側面では、上皮イオンチャネルは、2つのデルタサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む。さらに別の側面では、上皮イオンチャネルは、2つのデルタサブユニット、2つのベータサブユニット、および2つのガンマサブユニットを含む。さらに別の側面では、上皮イオンチャネルは、3つのデルタサブユニット、3つのベータサブユニット、および3つのガンマサブユニットを含む。
【0016】
上皮ナトリウムチャネルのモジュレーターを同定する方法において、該方法は、上皮ナトリウムイオンチャネルを、上皮ナトリウムイオンチャネルアンタゴニスト、例えば、限定することなく、クロルヘキシジン、アミロライド、フェナミル、ベンザミル、またはこれらのホモログ、アナログもしくは誘導体などと接触させることをさらに含んでもよい。
【0017】
上皮ナトリウムチャネルのモジュレーターを同定する方法において、膜のための適当な脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリシン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、コレステロール、カルジオリピン、またはこれらのホモログ、アナログもしくは誘導体の少なくとも1つを含む。このようにして、脂質は、ミセル、リポソームまたは脂質二重層として組織され得る。
【0018】
上皮ナトリウムチャネルのモジュレーターを同定する方法のいくつかの側面では、上皮ナトリウムイオンチャネルの少なくとも2つのサブユニットは、互いと比較して異なる比率で脂質膜に存在している。
【0019】
上皮ナトリウムイオンチャネルの生物学的活性の調節を決定するための工程において、例えば、当該技術分野で知られている任意の好適な手段、例えば、限定することなく、電圧クランピング、および/または指示色素の測定などを用いることができる。本方法は、ハイスループットスクリーニングに適合させることができる。
【0020】
このように、上皮ナトリウムチャネルのモジュレーターを同定する方法は、上皮ナトリウムチャネルのモジュレーターとして作用する、同方法によって同定された化合物を提供する。これらの化合物は、化合物を薬学的に許容し得る担体と混合することによって、組成物に製剤化することができる。
【0021】
特定の側面において、本発明は、ヒト塩味受容体のモジュレーターを同定するための方法であって、脂質膜において少なくとも1つの塩味受容体を構築すること(ここで、該塩味受容体は少なくとも1つのベータサブユニット、少なくとも1つのガンマサブユニット、および少なくとも1つのデルタサブユニットを含む)、イオンチャネルと試験化合物とを、ナトリウムイオンまたはリチウムイオンの存在下で接触させること、および、試験化合物の非存在下における塩味受容体の生物学的活性と比較した、試験化合物の存在下における塩味受容体の生物学的活性の調節を決定することを含む。
【0022】
いくつかの側面では、ヒト塩味受容体は、1つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む。別の側面では、塩味受容体は、1つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、1つのガンマサブユニット、および1つのイプシロンサブユニットを含む。別の側面では、塩味受容体は、2つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む。さらなる側面では、塩味受容体は、3つのアルファサブユニット、3つのベータサブユニット、および3つのガンマサブユニットを含む。追加の側面は、塩味受容体が1つのデルタサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含むものを含む。別の側面では、塩味受容体は、2つのデルタサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む。さらに別の側面では、塩味受容体は、2つのデルタサブユニット、2つのベータサブユニット、および2つのガンマサブユニットを含む。さらに別の側面では、塩味受容体は、3つのデルタサブユニット、3つのベータサブユニット、および3つのガンマサブユニットを含む。
【0023】
ヒト塩味受容体のモジュレーターを同定する方法において、デルタサブユニットは、好ましくは配列番号12のアミノ酸配列を含む。いくつかの側面では、デルタ受容体は配列番号9のアミノ酸配列を含む。ヒト塩味受容体のモジュレーターを同定する方法において、該方法は、上皮ナトリウムイオンチャネルを、上皮ナトリウムイオンチャネルアンタゴニスト、例えば、限定することなく、クロルヘキシジン、アミロライド、フェナミル、ベンザミル、またはこれらのホモログ、アナログもしくは誘導体などと接触させることをさらに含んでもよい。
【0024】
ヒト塩味受容体のモジュレーターを同定する方法において、脂質膜は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリシン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、コレステロール、カルジオリピン、またはこれらのホモログ、アナログもしくは誘導体の少なくとも1つを含んでもよい。脂質は、ミセル、リポソームまたは脂質二重層として組織され得る。
【0025】
ヒト塩味受容体のモジュレーターを同定する方法のいくつかの側面では、上皮ナトリウムイオンチャネルの少なくとも2つのサブユニットは、互いと比較して異なる比率で脂質膜に存在している。膜におけるチャンネルは、好ましくは、機能的なヒト塩味受容体の少なくとも1つの生物学的活性を含む。
【0026】
ヒト塩味受容体の生物学的活性の調節を決定するための工程において、例えば、当該技術分野で知られている任意の好適な手段、例えば、限定することなく、電圧クランピング、および/または指示色素の測定などを用いることができる。本方法は、ハイスループットスクリーニングに適合させることができる。
【0027】
ヒトの塩味知覚を調節する化合物は、本発明の方法によって同定され、例えば、塩味模倣物質(mimic)、塩味増強物質(enhancer)、塩味修飾物質(modifier)および塩味阻害物質(inhibitor))を含んでもよい。したがって、本発明はヒトの塩味知覚のモジュレーターを提供し、これはさらに、当該化合物を薬学的に許容し得る担体と混合することにより組成物に用いることができ、または食品もしくは飲料において、当該食品もしくは飲料の塩味知覚を調節するために用いることができる。
【0028】
本発明はまた、少なくとも1種のリン脂質と、上皮ナトリウムイオンチャネルまたは特定の比率の上皮ナトリウムイオンチャネルサブユニット(ここで、サブユニットは、アルファサブユニット、ベータサブユニット、ガンマサブユニット、デルタサブユニット、およびイプシロンサブユニットからなる群から選択される)とを含む人工脂質膜を提供する。
【0029】
人工脂質膜は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリシン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、コレステロール、カルジオリピン、またはこれらのホモログ、アナログもしくは誘導体の少なくとも1つを含んでもよい。脂質膜は、例えば、リポソームまたは脂質二重層として組織され得る。
【0030】
いくつかの側面では、人工脂質膜は、1つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む、少なくとも1つの上皮イオンチャネルを含む。別の側面では、上皮イオンチャネルは、1つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、1つのガンマサブユニット、および1つのイプシロンサブユニットを含む。別の側面では、上皮イオンチャネルは、2つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む。さらなる側面では、上皮イオンチャネルは、3つのアルファサブユニット、3つのベータサブユニット、および3つのガンマサブユニットを含む。追加の側面は、上皮イオンチャネルが1つのデルタサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含むものを含む。別の側面では、上皮イオンチャネルは、2つのデルタサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む。さらに別の側面では、上皮イオンチャネルは、2つのデルタサブユニット、2つのベータサブユニット、および2つのガンマサブユニットを含む。さらに別の側面では、上皮イオンチャネルは、3つのデルタサブユニット、3つのベータサブユニット、および3つのガンマサブユニットを含む。
【0031】
本発明はまた、かかる人工脂質膜を調製する方法であって、少なくとも1つのリン脂質を含むリポソームと、上皮ナトリウムイオンチャネルまたは特定の比率の上皮ナトリウムイオンチャネルサブユニット(ここで、上皮ナトリウムイオンチャネルまたは上皮ナトリウムイオンチャネルサブユニットは、少なくとも1つの界面活性剤を含む好適な水性緩衝液に溶解されている)とを混合すること、リポソームを、上皮ナトリウムイオンチャネルまたは上皮ナトリウムイオンチャネルサブユニットとともに十分な時間インキュベートすること、および前記少なくとも1つの界面活性剤を除去することを含む方法を提供する。
【0032】
人工脂質膜を調製する方法は、プロテオリポソームを平面脂質二重層に再構成することをさらに含んでもよい。
【0033】
本発明はさらに、塩味知覚のモジュレーターを同定するための方法であって、少なくとも1つの上皮ナトリウムイオンチャネルを脂質膜において構築すること(ここで、上皮ナトリウムイオンチャネルは、アルファサブユニット、ベータサブユニット、ガンマサブユニット、デルタサブユニットまたはイプシロンサブユニットの少なくとも1つを含む)、イオンチャネルと試験化合物とを、ナトリウムイオンまたはリチウムイオンの存在下で接触させること、試験化合物の非存在下における上皮ナトリウムイオンチャネルの生物学的活性と比較した、試験化合物の存在下における上皮ナトリウムイオンチャネルの生物学的活性の調節を決定すること、および、試験化合物を対象に投与して、試験化合物の非存在下における対象の塩味知覚のレベルと比較した、対象の塩味知覚の調節を決定することを含む方法を提供する。
【0034】
いくつかの側面では、上皮イオンチャネルは、1つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む。別の側面では、上皮イオンチャネルは、1つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、1つのガンマサブユニット、および1つのイプシロンサブユニットを含む。別の側面では、上皮イオンチャネルは、2つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む。さらなる側面では、上皮イオンチャネルは、3つのアルファサブユニット、3つのベータサブユニット、および3つのガンマサブユニットを含む。追加の側面は、上皮イオンチャネルが1つのデルタサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含むものを含む。別の側面では、上皮イオンチャネルは、2つのデルタサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む。さらに別の側面では、上皮イオンチャネルは、2つのデルタサブユニット、2つのベータサブユニット、および2つのガンマサブユニットを含む。さらに別の側面では、上皮イオンチャネルは、3つのデルタサブユニット、3つのベータサブユニット、および3つのガンマサブユニットを含む。
【0035】
いくつかの側面では、デルタサブユニットは、配列番号12のアミノ酸配列を含む。いくつかの側面では、デルタサブユニットは、配列番号9のアミノ酸配列を含む。
【0036】
いくつかの側面において、対象はヒトである。
【0037】
本方法により、in vitroでヒト塩味受容体と反応し、かつ、対象により塩辛いものとして知覚される化合物の同定が可能となる。本発明はしたがって、かかる化合物であって、当該化合物を薬学的に許容し得る担体と混合することにより組成物に用いることができ、または食品もしくは飲料において、当該食品もしくは飲料の塩味知覚を調節するために用いることができる化合物を提供する。好ましくは、該化合物は塩味の知覚を可能にするが、塩と比べて血圧への影響が少なく、かつ、対象に対する有害反応を有しない。
【0038】
いくつかの側面において、化合物を、細胞ベースのアッセイにより、上皮ナトリウムチャネル活性についてさらにスクリーニングすることができる。
【0039】
本発明はまた、ヒト塩味受容体のモジュレーターを同定するためのキットであって、少なくとも1つの形態のリン脂質と、アルファサブユニット、デルタサブユニット、ベータサブユニット、ガンマサブユニットまたはイプシロンサブユニットを含む、実質的に精製された上皮ナトリウムイオンチャネルサブユニットとを含み、任意に、上皮ナトリウムイオンチャネルモジュレーター、ナトリウムまたはリチウム、およびヒト塩味受容体のモジュレーターを同定する方法においてキットを使用するための指示を含むキットを提供する。
【0040】
指示は、例えば、対象となる種々の形態の上皮ナトリウムイオンチャネルを得るために特定の比率でサブユニットを混合するための指図を提供してもよい。いくつかの側面では、少なくとも2つのサブユニットが、互いと比較して異なる比率で存在するように添加される。
【0041】
本キットは、モジュレーター、例えば、限定することなく、アミロライド、フェナミル、ベンザミル、クロルヘキシジン、またはグアニジンイオンの給源などを含んでもよい。
【0042】
本発明はまた、(塩味知覚を刺激することまたは塩味知覚を阻害することにより)塩味知覚を調節する方法であって、ヒト塩味受容体と、塩味知覚を刺激する化合物とを接触させることを含み、ここで該塩味受容体が少なくとも1つのベータポリペチドサブユニット、および少なくとも1つのデルタポリペチドサブユニットを含み、該デルタポリペチドサブユニットが配列番号12のアミノ酸配列を含み、該化合物が該デルタサブユニットと特異的に相互作用する方法を提供する。
【0043】
いくつかの側面では、ヒト塩味受容体は、1つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む。別の側面では、塩味受容体は、1つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、1つのガンマサブユニット、および1つのイプシロンサブユニットを含む。別の側面では、塩味受容体は、2つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む。さらなる側面では、塩味受容体は、3つのアルファサブユニット、3つのベータサブユニット、および3つのガンマサブユニットを含む。追加の側面は、塩味受容体が1つのデルタサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含むものを含む。別の側面では、塩味受容体は、2つのデルタサブユニット、1つのベータサブユニット、および1つのガンマサブユニットを含む。さらに別の側面では、塩味受容体は、2つのデルタサブユニット、2つのベータサブユニット、および2つのガンマサブユニットを含む。さらに別の側面では、塩味受容体は、3つのデルタサブユニット、3つのベータサブユニット、および3つのガンマサブユニットを含む。
【0044】
いくつかの側面では、化合物は、配列番号12のアミノ酸配列を含むデルタサブユニットの部分と特異的に相互作用する。いくつかの側面では、化合物は、配列番号12のアミノ酸配列を含むデルタサブユニットの部分と結合する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、ATPアーゼ組織化学法によって染色されたヒトの味蕾を示した図である。
【
図2】
図2は、ヒトの味覚細胞に対する免疫組織化学法を用いた二次メッセンジャー酵素、ホスホリパーゼCベータ2(PLCbeta2)の抗体による検出を示した図である。パネルAは、抗体によって標識された細胞のサブセットを示す。パネルBは、味蕾およびその周囲の茸状乳頭のコントラスト像である。
【0046】
【
図3A】
図3Aは、最上行のGenBank配列(DENACGB)と比較した、10個体(それぞれDENACA、DENACD、DENACE、DENACG、DENACH、DENACI、DENACJ、DENACT、DENACVおよびDENACWとラベルされている)のcDNAからシーケンシングしたENaCデルタサブユニットのアラインメントを示した図である。DENACA、DENACD、DENACE、DENACG、DENACH、DENACI、DENACJ、DENACT、DENACVおよびDENACWは、それぞれ配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25および配列番号26に対応している。
【
図3B】
図3Bは、最上行のGenBank配列(DENACGB)と比較した、10個体(それぞれDENACA、DENACD、DENACE、DENACG、DENACH、DENACI、DENACJ、DENACT、DENACVおよびDENACWとラベルされている)のcDNAからシーケンシングしたENaCデルタサブユニットのアラインメントを示した図である。DENACA、DENACD、DENACE、DENACG、DENACH、DENACI、DENACJ、DENACT、DENACVおよびDENACWは、それぞれ配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25および配列番号26に対応している。
【0047】
【
図3C】
図3Cは、最上行のGenBank配列(DENACGB)と比較した、10個体(それぞれDENACA、DENACD、DENACE、DENACG、DENACH、DENACI、DENACJ、DENACT、DENACVおよびDENACWとラベルされている)のcDNAからシーケンシングしたENaCデルタサブユニットのアラインメントを示した図である。DENACA、DENACD、DENACE、DENACG、DENACH、DENACI、DENACJ、DENACT、DENACVおよびDENACWは、それぞれ配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25および配列番号26に対応している。
【
図3D】
図3Dは、最上行のGenBank配列(DENACGB)と比較した、10個体(それぞれDENACA、DENACD、DENACE、DENACG、DENACH、DENACI、DENACJ、DENACT、DENACVおよびDENACWとラベルされている)のcDNAからシーケンシングしたENaCデルタサブユニットのアラインメントを示した図である。DENACA、DENACD、DENACE、DENACG、DENACH、DENACI、DENACJ、DENACT、DENACVおよびDENACWは、それぞれ配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25および配列番号26に対応している。
【0048】
【
図4】
図4は、異なる構成のENaCのアミロライドによる阻害を示した図である。ヒトデルタ、ベータ、ガンマで構成されたENaCは、ヒトアルファ、ベータ、ガンマから構成されるものよりもアミロライドに対して感受性が低かった。
【
図5】
図5は、ヒト味蕾における細胞のサブセットの免疫標識を示した図である。
【0049】
【
図6】
図6は、水性懸濁液からの、マイクロピペットによる単離されたヒト味蕾細胞の回収を示した図である。このようにして回収された細胞は、さらなる研究のためにRNA保護媒体中に置く。
【0050】
【
図7】
図7は、ENaCサブユニット、アルファ、ベータ、ガンマおよびデルタの部分的転写物の増幅をトレースした単一細胞の初期の定量RT−PCRを示した図である。結果は、アルファ転写物がゲノム対照を示すものとして、細胞が、デルタ、ベータおよびガンマの等量のコピーを含んでいることを示唆している。
【0051】
【
図8A】
図8Aは、最上行のGenBank配列(GENACGB)と比較した、10個体(それぞれGENACA、GENACB、GENACD、GENACE、GENACG、GENACH、GENACJ、GENACT、GENACVおよびGENACWとラベルされている)のcDNAからシーケンシングしたENaCガンマサブユニットのアラインメントを示した図である。GENACA、GENACB、GENACD、GENACE、GENACG、GENACH、GENACJ、GENACT、GENACVおよびGENACWは、それぞれ配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35および配列番号36に対応している。
【
図8B】
図8Bは、最上行のGenBank配列(GENACGB)と比較した、10個体(それぞれGENACA、GENACB、GENACD、GENACE、GENACG、GENACH、GENACJ、GENACT、GENACVおよびGENACWとラベルされている)のcDNAからシーケンシングしたENaCガンマサブユニットのアラインメントを示した図である。GENACA、GENACB、GENACD、GENACE、GENACG、GENACH、GENACJ、GENACT、GENACVおよびGENACWは、それぞれ配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35および配列番号36に対応している。
【0052】
【
図8C】
図8Cは、最上行のGenBank配列(GENACGB)と比較した、10個体(それぞれGENACA、GENACB、GENACD、GENACE、GENACG、GENACH、GENACJ、GENACT、GENACVおよびGENACWとラベルされている)のcDNAからシーケンシングしたENaCガンマサブユニットのアラインメントを示した図である。GENACA、GENACB、GENACD、GENACE、GENACG、GENACH、GENACJ、GENACT、GENACVおよびGENACWは、それぞれ配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35および配列番号36に対応している。
【
図8D】
図8Dは、最上行のGenBank配列(GENACGB)と比較した、10個体(それぞれGENACA、GENACB、GENACD、GENACE、GENACG、GENACH、GENACJ、GENACT、GENACVおよびGENACWとラベルされている)のcDNAからシーケンシングしたENaCガンマサブユニットのアラインメントを示した図である。GENACA、GENACB、GENACD、GENACE、GENACG、GENACH、GENACJ、GENACT、GENACVおよびGENACWは、それぞれ配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35および配列番号36に対応している。
【0053】
【
図9】
図9は、平面脂質二重層における、L−アルギニンに対するナマズの推定味覚受容体活動のシングルチャンネル記録を示した図である。ナマズ味覚上皮からの精製された受容体タンパク質を含むプロテオリポソームを平面脂質二重層に融合させた。対照記録(パートAに示されるトレース)は、プロテオリポソームを膜浴溶液(membrane bathing solution)に添加後、L−Arg添加前に得た。二重層のシス側への10μMのL−Argの添加は、規則的で周期的なチャンネル活動を引き起こした(当該記録を拡大目盛で示す差し込み図を含むパネルBに示されるトレース)。数分のシングルチャンネル記録の後、100μMのD−Argをシス側に添加し(パネルCに示されるトレース)、活動は停止した。膜電位は−100mVであった。全てのパネルに示されるトレースは、この特定の状態の連続した記録である。
【0054】
詳細な説明
当然のことながら、この発明は、特定の方法、試薬、化合物、組成物または生物系に限定されず、もちろん多様であり得る。また当然のことながら、ここで用いる用語は特定の側面だけを記述することを目的としているに過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0055】
本発明の方法および別の側面に関する種々の用語が、明細書および特許請求の範囲を通して用いられている。かかる用語は、特に明記しない限り、当該技術分野におけるその通常の意味が与えられることとする。他の具体的に定義された用語は、ここに提供される定義と一致した方法で解釈することとする。
【0056】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別様に決定づけない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、単数形の「細胞」への言及は、2個または3個以上の細胞の組合わせなどを包含する。
【0057】
ここで用いる用語「約」は、量、継続時間などの測定可能な値を示す場合、特定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、より一層好ましくは±1%、そしてさらにより好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味し、かかる変動は開示された方法を実行するために適している。
【0058】
ここで用いる場合、「上皮ナトリウムチャネル」または省略形の「ENaC」は、特定の上皮または細胞膜を横切る、ナトリウムイオンの流れまたは輸送の原因となるマルチサブユニットタンパク質を指す。ENaCは一般的に複数のサブユニット、通常はα、β、γサブユニットから構成される。また、特定の組織の一部のENaCに存在することがあるδおよびεサブユニットもある。ここで見出された「塩味受容体」は、味覚細胞に局在するENaCの1種であり、一側面において、β、γ、およびδサブユニットで構成される。
【0059】
ここで用いる場合、「試験化合物」は、任意の精製された分子、実質的に精製された分子、化合物の混合物の1または2以上の成分である分子、または化合物と、本発明の方法を用いて分析することができる任意の他の材料との混合物を指す。試験化合物は、有機もしくは無機化学物質、または生体分子、ならびにそのすべての断片、アナログ、ホモログ、結合体(conjugate)および誘導体であってもよい。生体分子は、タンパク質、ポリペチド、核酸、脂質、単糖、多糖、ならびにそのすべての断片、アナログ、ホモログ、結合体および誘導体を含む。試験化合物は天然由来であっても合成由来であってもよく、その天然に存在する給源から単離もしくは精製されても、de novo合成されてもよい。試験化合物は構造または組成に関して定義されていてもよく、または、未定義(undefined)であってもよい。化合物は、未知の構造の単離された製品であっても、複数の既知の物質の混合物であっても、または1種または2種以上の化合物を含む未定義の組成物であってもよい。未定義の組成物の例は、細胞および組織抽出物、原核細胞や真核細胞、古細菌細胞が培養された増殖培地、発酵ブロス、タンパク質発現ライブラリーなどを含む。
【0060】
ここで用いる場合、「調節する」は、タンパク質の特定の活性の量、質または効果の任意の変化、増大または減少を意味する。「モジュレーター」は、例えば、アゴニスト、アンタゴニストについてのin vitroおよびin vivoアッセイを用いて同定した任意の阻害性分子または活性化分子、および、ここで定義された断片、変異体および模倣物を含むこれらのホモログであって、前記分子と実質的に同じ生物学的活性を示すものを指す。「阻害物質」または「アンタゴニスト」は、対象とする分子もしくは経路を低減し、減少させ、遮断し、妨げ、活性化を遅延させ、不活性化し、脱感作させ(desensitize)、またはその生物学的活性または発現を下方調節する調節化合物である。「インデューサー」、「アクチベーター」または「アゴニスト」は、対象とする分子もしくは経路を増大させ、誘導し、刺激し、開放し、活性化し、促進し、活性化を増進させ、感受性を高め、または上方調節する調節化合物である。本発明のいくつかの好ましい側面において、対象とする分子もしくは経路の生物学的活性または発現の阻害または上方調節のレベルは、約50%〜約99%より大きい、より具体的には、約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の減少(阻害または下方調節)または増加(上方調節)を指す。阻害または上方調節は直接的であっても、すなわち、対象とする分子もしくは経路自体に作用しても、または間接的であっても、すなわち、対象とする分子もしくは経路に影響を及ぼす分子もしくは経路に作用してもよい。
【0061】
「薬学的に許容し得る担体」は、組成物の1種または2種以上の有効成分の生物学的活性の有効性を妨げず、それが投与される対象に対して毒性ではない媒体を指す。
【0062】
「Ct」または「閾値サイクル」は、ベースラインシグナルより上の、顕著なリポーター蛍光の増加が最初に検出されるPCRサイクルを指す。
【0063】
「ΔCt」は、サンプルアッセイのCtと対照サンプルのCtとの差を指す。したがって、ΔCt=Ct(標的)−Ct(対照)である。
【0064】
「ΔΔCt」は、標的サンプルの平均ΔCt値と、対応するキャリブレーターサンプルの平均ΔCt値との差を指す。したがって、ΔΔCt(試験サンプル)=AvgΔCt(試験サンプル)−AvgΔCt(キャリブレーターサンプル)である。
【0065】
ここで用いる「生物学的活性」は、限定することなく、膜を隔てたナトリウム勾配の維持、イオン流量の変化、膜電位の変化、電流の振幅、電位開口、クロルヘキシジン、アミロライドまたはそのアナログに対する感受性、ブレチリウム、ノボビオシンまたはグアニジンイオンによる刺激、サブユニット特異的モノクローナル抗体への結合などを含む、ENaCの測定可能な機能を指す。
【0066】
本発明は、ヒト塩味受容体が上皮ナトリウムイオンチャネルであるという知見に基づく。したがって、本発明の1つの目的は、ENaCサブユニットの正確なモル比を用い、ENaCの生物学的活性を調節する化合物を同定するために脂質二重層にENaCを再構成することである。特に、本発明の1つの目的は、ENaCサブユニットの正確なモル比を用いて、ENaCの生物学的活性を調節する化合物を同定するため、および、ヒトにおける塩味知覚を調節する化合物を同定するために、脂質二重層にENaCを再構成することである。いかなる特定の理論または作用機序に制限されることをも意図することなく、ある種の味覚受容体細胞の上皮ナトリウムチャネルを通してのナトリウムイオンの受動的な流入によって、脱分極をもたらす細胞内イオンバランスの変化が生じ、最終的に神経伝達物質の放出がもたらされ、これが今度は塩味の知覚を生じると考えられている。
【0067】
一側面において、本発明は、ヒト塩味受容体を結合および/または調節する化合物を同定するためのアッセイを提供する。この方法は、脂質膜において少なくとも1つの上皮ナトリウムイオンチャネルを構築すること(ここで、上皮ナトリウムイオンチャネルは、アルファ、ベータ、ガンマまたはデルタサブユニットを含む)、少なくとも1つのイオンチャネルと試験化合物とを、ナトリウムまたはリチウムの存在下で接触させること、および、試験化合物の非存在下における前記少なくとも1つのイオンチャネルの生物学的活性と比較した、試験化合物の存在下における前記少なくとも1つのイオンチャネルの生物学的活性の調節を決定することを含む。
【0068】
試験化合物を含んでいるサンプルの生物学的活性が試験化合物を欠くサンプルの活性より高い場合、当該化合物はアゴニストである。試験化合物を含んでいるサンプルの活性が試験化合物を欠くサンプルの活性より低いならば、当該化合物はアンタゴニストである。
【0069】
上皮ナトリウムイオンチャネルは、異なるサブユニットを含むヘテロ多量体複合体である。ENaCの種々のサブユニットが同定されており、これは、限定することなく、アルファサブユニット、ベータサブユニット、ガンマサブユニット、デルタサブユニット、およびイプシロンサブユニットを含む。ENaCサブユニットは任意の種に由来してもよいが、哺乳類ENaCサブユニットが好ましく、最も好ましい種はヒトである。ヒトのENaCサブユニットをコードする核酸配列および推定アミノ酸配列の例は、本明細書に示されている。実質的に相同なアミノ酸配列を有する、または、サブユニットタンパク質のアイソフォームである他のサブユニットを、本発明を実行する際に用いてもよい。「実質的に相同な」アミノ酸配列は、少なくとも、サブユニット配列に関して本明細書に示されている配列と、約80%〜約100%同一であるタンパク質配列である。より好ましくは、配列は約85%〜約100%同一である。最も好ましくは、配列は、サブユニットに関して本明細書に記載されている参照配列と約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。
【0070】
ヒトアルファサブユニット、ヒトベータサブユニット、ヒトガンマサブユニット、およびヒトデルタサブユニットをコードする代表的なヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7として示されている。ヒトアルファサブユニット、ヒトベータサブユニット、ヒトガンマサブユニット、およびヒトデルタサブユニットに対する推定アミノ酸配列は、それぞれ、配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8として示されている。塩味受容体に関する好ましい側面では、デルタサブユニットは、配列番号8に関して、532位にシステインを含む。Cys
532を有するデルタ受容体は、配列番号9で示される。かかる置換は、tacからtgcへのトリプレットコドンにおける変更により生じることがあり(配列番号7で示されるものに関して)、これはチロシン(Tyr)からシステイン(Cys)への変化をもたらす。
【0071】
いくつかの側面では、ENaCは、少なくとも1つのアルファサブユニット、少なくとも1つのベータサブユニット、および少なくとも1つのガンマサブユニットを含む(例えば、(α)1(β)1(γ)1)。別の側面では、ENaCは少なくとも1つのアルファサブユニット、少なくとも1つのベータサブユニット、少なくとも1つのガンマサブユニット、および少なくとも1つのデルタサブユニットを含む。別の側面では、ENaCは2つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニット、1つのガンマサブユニットで構成される(α2βγ)。別の側面では、ENaCは3つのアルファサブユニット、3つのベータサブユニット、および3つのガンマサブユニットで構成される((α)3(β)3(γ)3)。別な側面では、ENaCは、イプシロンサブユニットと、少なくとも1つの他のサブユニット、例えばアルファサブユニット、ベータサブユニット、デルタサブユニット、ガンマサブユニットまたはこれらの組合せとを含む。さらに別の側面では、ENaCは複数のベータサブユニットを含む。好ましい側面では、ENaCは少なくとも1つのベータサブユニット、少なくとも1つのガンマサブユニット、および少なくとも1つのデルタサブユニットを含む(塩味受容体)。最も好ましい側面は、少なくとも1つのベータサブユニット、少なくとも1つのガンマサブユニットおよび少なくとも1つのデルタサブユニットを含み(例えば(β)1(γ)1(δ)1)、デルタサブユニットがCys
532を含むENaCである。
【0072】
種々のサブユニットは、ENaCにおいて、他のサブユニットと比較して異なる比率で存在してもよい。観察されるバリエーションは、対象とする特定のENaCがどの組織に発現されているかに関係していることがある。例えば、限定することなく、ENaCは2つのアルファサブユニット、1つのベータサブユニットおよび1つのガンマサブユニットを含んでもよい。したがって、本発明の特定の側面では、脂質膜に構築されたENaCは、他のサブユニットと比較して異なる比率で存在する少なくとも2つのサブユニットを含む。別の側面では、ENaCは他のサブユニットと比較して同じ比率で存在する少なくとも2つのサブユニットを含む。ENaCサブユニットの比率はまた、対象とするENaCが発現される組織に応じて異なり得る。さらに、種々の組織で発現される各々のサブユニットの形態に、重大な配列の多様性が存在し得る。例えば、限定することなく、塩味受容体に発現されているENaCのデルタサブユニットは、好ましくは配列番号8(腎臓由来のヒトデルタをコードする)の532位のデルタの推定アミロライド結合部位にシステインを有する。ヒト腎臓デルタは、この位置にチロシンを有する。したがって、ヒト塩味受容体を発現させる場合、CYS
532を含むMGSL
CSLWFGA(配列番号12)の推定アミロライド結合部位を有するデルタを用いることが好ましい。このモチーフは、少なくともアミロライド結合の推定部位であるため、ヒト塩味受容体を調節する他の化合物もまた、この部位に結合することができる。
【0073】
本発明の特定の側面では、その中にENaCサブユニットを有するように製造された脂質膜は、塩味受容体を形成するENaCサブユニットを含む。これらの塩味受容体は、少なくとも1つのベータサブユニット、少なくとも1つのガンマサブユニットおよび少なくとも1つのデルタサブユニットを含む。好ましい側面では、デルタサブユニットは、Cys
532を含む。別の側面では、ENaCはアルファ、ベータ、ガンマ、デルタおよびイプシロンから選択されるサブユニットを含む。いくつかの側面では、ENaCは少なくとも1つのアルファ、少なくとも1つのベータおよび少なくとも1つのガンマを含む。別の側面では、ENaCは少なくとも1つのイプシロンサブユニットを含む。
【0074】
脂質膜に構築されるENaCまたは種々のサブユニットは、当該技術分野で好適な任意の給源から得ることができる。例えば、ENaCまたはその任意のサブユニットは、細胞系および安定した細胞系を含む、ENaCを発現する任意の細胞から新たに単離することができる。例えば、限定することなく、ENaCは神経組織、すい臓、精巣、卵巣、舌、大腸、腎臓、肺、汗腺などで発現している。いくつかの側面では、塩味知覚のためのENaCは、舌の乳頭から単離される。別の側面では、ENaCまたはその任意のサブユニットは、組換えにより発現させ、精製し、機能的なENaCを形成するために脂質膜を再構成するのに用いることができる。
【0075】
特定の側面では、ENaCの各々のサブユニットは、組換え発現系、例えば、限定することなく、細菌細胞、Spodoptera frugiperda細胞、哺乳類細胞およびカエル卵母細胞などにおいて、個別に発現させる。発現させたサブユニットは、当該技術分野でよく知られた標準的な生化学的手段で精製する。あるいは、発現タンパク質は、ENaCサブユニットを特異的に結合する固定された抗体を用いて免疫精製してもよい。免疫親和性により(対象とするサブユニットまたはENaCを特異的に結合する抗体を用いて)タンパク質を精製する方法である。別の側面では、ENaCサブユニットは、発現タンパク質の迅速な精製およびその後のタンパク質からの切断を可能にするポリペチドとの融合タンパクとして発現させる。かかる精製システムは、限定することなく、pGEXシステム(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質)および多ヒスチジン(multi-histidine)融合タンパク質(ニッケル結合アフィニティー精製のため)を含む。これらおよび他のタイプの精製は、多数の参考文献に記載され、当業者によく知られている。特定の好ましい側面では、ENaCサブユニットはバキュロウイルス系およびSpodoptera frugiperda細胞を用いて同時に発現させ、膜画分はRao, U.S. et al. (2002) “Activation of Large Conductance Sodium Channels Upon Expression of Amiloride-Sensitive Sodium Channel in SF9 Insect Cells” J. Biol. Chem. 277(7):4900-4905に記載されたとおりに調製する。
【0076】
特定の側面では、ENaCのサブユニットは、膜に組み入れる前に実質的に精製される。ここで用いる場合、「実質的に精製される」とは、サブユニットが、それを得た細胞に由来する混入物質(例えばタンパク質、多糖および脂質)を少なくとも80%含まないことを指す。好ましくは、サブユニットは混入物質を少なくとも約85%含まない。より好ましくは、サブユニットは混入物質を少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上含まない。
【0077】
組織に存在し得る特定のENaCを本発明の人工膜に再現するために、ENaCに存在するサブユニットの比率を定量PCRで決定することができる。多量体受容体のタンパク質サブユニットの比率は、しばしば所定の受容体について細胞内で産生されるmRNAの量に相関するため、定量PCRは、存在するmRNAの比率を決定する効率的な手段を提供することができる。定量PCRを実行するためのプロトコルは、当該技術分野でよく知られている。さらに、本明細書に示されているENaCの配列、ならびに特定の遺伝子のメッセージを特異的かつ確実に増幅することができるPCRオリゴヌクレオチドプライマーを選択するための、当該技術分野における知識および利用可能なソフトウェアに鑑みれば、当業者は、容易かつ日常的に、組織サンプルに対して定量PCRを行い、特定のENaCを形成するサブユニットの同一性および比率を決定することができる。mRNAの相対量を決定するためのアッセイは、当該技術分野でよく知られている。一度mRNAの比率が決定されたら、生物学的に活性を有するENaCを形成するための適切な化学量論のタンパク質を提供するために膜に加えられなければならない各々のサブユニットのタンパク質の量を推定することができる。
【0078】
アフィニティー精製されたタンパク質の濃度は、タンパク質溶出液の総窒素含量を測定し、当該窒素含量を、溶出液の総タンパク質含量と比較することによって決定することができる。窒素含量は、当該技術分野における任意の好適な手段、例えばよく知られたケルダール窒素法により決定することができる。タンパク質濃度は、例えば、タンパク質サンプルを280nmでの吸光度について分析し、吸収係数を導出する分光光度法により決定することができる。タンパク質の濃度および/または純度を評価するための当該技術分野で知られている任意の手段を用いることができる。
【0079】
したがって、本発明は、機能的なENaCに構築される実質的に精製されたENaCタンパク質サブユニットを含む人工膜系を提供する。具体的には、本発明は、実質的に精製されたヒト塩味受容体を含む人工膜系を提供する。これらの膜系は、限定することなく、内因性のENaCなどの混入タンパク質から分離された塩味受容体を含む、ENaCの分析を可能にする。本発明は、選択したサブユニットの正確な比率の集合を可能にする既知の比率でサブユニットを加える、ENaCの構築を可能にする。脂質膜は、脂質の任意の組合せを含むことができる。好適な脂質の非限定例は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリシン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、コレステロール、カルジオリピン、またはこれらのホモログ、アナログもしくはその誘導体を含む。リン脂質が好ましく、当該技術分野において好適な任意の給源から得ることができる。例えば、リン脂質は細胞から抽出することができ、またはリン脂質は市販の合成リン脂質であってもよい。
【0080】
脂質膜は、任意のコンフォメーションまたは相であってもよく、これは、限定なしに、リポソーム、脂質二重層または六方相を含む。リポソームおよび脂質二重層が特に好ましい。
【0081】
試験化合物の、ENaCの生物学的活性に対する効果は、当該技術分野において好適な任意の手段で決定することができる。試験化合物は、複数の濃度で評価することができる。いくつかの側面では、試験化合物は、ENaCの少なくとも1つの生物学的活性を調節するその能力について評価される。好ましい側面では、ENaCは塩味受容体である。
【0082】
ENaCの生物学的活性は、脂質膜に構築されたENaCの電流を測定することによって決定することができる。電圧クランピングは、ENaC電流を測定する1つの好ましい技法である。電圧クランプ技法は当該技術分野でよく知られている(Nagel, G et al. (2005) J. Physiol. 564(Pt 3):671-82、Staruschenko, A et al. (2004) J. Biol. Chem. 279:27729-34、Tong, Q et al. (2004) J. Biol. Chem. 279:22654-63、Sheng, S et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:8572-81)。以下のパラメータを電圧クランプを用いて測定することができる:シングルチャネルコンダクタンス、チャンネル開口時間、電位依存性、特定の化合物の適用により誘導される遮断、および特定の化合物の適用により誘導される活性化。ENaCの生物学的活性を測定するための他の好適な技法は、フラックスアッセイ、パッチクランピング、電位感受性色素、およびイオン感受性色素を含む。好ましくは、ENaC活性は、膜電気生理学によって、あるいは、ナトリウムもしくはリチウムまたはそのアナログ(例えばアイソトープ)に対する膜電位色素の蛍光の変化を評価することによって測定する。全てのかかるアッセイは当該技術分野でよく知られている。(Gill, S et al. (2003) Assay Drug Dev. Technol. 1:709-17、フラックスアッセイ、Caldwell, RA et al. (2005) Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol. 288:L813-9、パッチクランプ)。種々の電位感受性色素が市販されており、これは、限定することなく、スチリル、オキソノール色素およびメロシアニン−ローダニン色素を含む。好適な電位感受性色素の選択は、当該技術分野における関連する能力の範囲内である。同様に、種々のイオン感受性色素が市販されており、これは、単一励起色素、二重励起レシオメトリック色素および二重発色レシオメトリック色素を含む。
【0083】
塩味受容体は、ナトリウムおよびリチウムイオンに応答する。しかしながら、他のENaCと異なり、ヒト塩味受容体は、アミロライドに感受性ではない。したがって、アミロライドは塩味受容体ENaCを阻害も刺激もしないはずである。逆に、クロルヘキシジンはヒトにおける塩味応答の阻害物質として作用し、塩味修飾物質を同定するためのアッセイに用いることができる。試験化合物による塩味受容体の刺激の特異性は、その効果がクロルヘキシジンによって阻害されることを示すことにより評価することができる。さらに、クロルヘキシジンの作用を克服すること(および本発明の膜系における塩味受容体を刺激すること)ができる試験化合物は、強い塩味増強物質である。グアニジンイオンを含む塩基性化合物、および一部のアミンは、塩味増強物質として作用する。これらは、グアニジン、アルギニンおよびホモアルギニンを含む。L−アルギニンおよびD−アルギニンのいずれも、等しく有効である。いかなる特定の作動理論に縛られることは望まないが、この鏡像異性特異性の欠如は、主要な増強効果が、コンパクトな塩基性部分、この場合はグアニジンイオンに由来することを示唆している。したがって、本発明の膜系の塩味受容体は、これをグアニジンイオンの給源と接触させることによって刺激され得る。大部分のナトリウムチャネルの遮断剤および増強物質がチャンネル孔内腔内側の酸性部分と相互作用するグアニジニウム基を含むことから、これらの増強化合物がヒト塩味イオンチャネルと直接相互作用することが推定できる。したがって、ヒト塩味の分子機構は、既知のナトリウムチャネルと共通の選択された機能的な特徴を共有するが、固有の薬理学的特質をも有している。
【0084】
アミロライドおよびアミロライド誘導体(例えばフェナミル、ベンザミルなど)は、他のENaC、例えばアルファサブユニットを含むものを評価するのに有用たり得る。アミロライドおよびその誘導体はまた、アッセイにおいて、サブユニット調製物の純度が低い場合、例えば、宿主細胞ENaCが調製物に混入している場合などに、バックグラウンド(内因性ENaC)を阻害するために用いることができる。したがって、本発明のいくつかの側面において、本方法はナトリウムイオンチャネルアンタゴニストとENaCとを接触させることをさらに含む。かかるアンタゴニストは、当業者によく知られている。好ましくは、アンタゴニストは、アミロライド、クロルヘキシジンまたはそのホモログ、アナログもしくは誘導体である。
【0085】
本発明はまた、その範囲に、塩味受容体の生物学的活性を調節する化合物を同定するためのハイスループットスクリーニングアッセイを含む。ハイスループットスクリーニングアッセイは、多数の試験化合物を効率的にスクリーニングすることを可能にする。例えば、限定することなく、構築されたENaCを含む脂質膜を、96穴マイクロタイタープレートなどのマルチウェルプレートの全体にわたって分散させることができる。マイクロタイタープレートの各ウェルは、候補モジュレーターに対して別々のアッセイを行うために用いることができる。マイクロタイタープレートは、同一のアッセイ条件下で、複数の濃度の試験化合物、複数の試験化合物の、単独での、あるいは、他の試験化合物と組み合わせてのスクリーニング、および本明細書に記載され、例示されている、種々の比率のサブドメインを有するENaCを包含する複数のENaCのスクリーニングを可能にする。本発明の別の側面では、対象とするENaCを含む平面脂質二重層を試験化合物と接触させ、測定を行う。平面二重層の一方または両方の側の溶液を変え、二重層を第2の試験化合物と接触させる。これは、ハイスループットアッセイとして連続的に用いてもよい。アッセイは、追加のアゴニストまたはアンタゴニストの存在下で行ってもよい。試験化合物について得られるデータは、既知のアゴニストまたはアンタゴニストの存在下で得られた測定値、および/または対照サンプル(例えば非刺激性の/非阻害性の媒体)に対して得られた測定値と比較される。
【0086】
連続アッセイ(serial assay)を、塩味修飾物質として作用する試験化合物のプールを絞り込むために行ってもよい。例えば、本発明のin vitroアッセイは、第二の、または、確認のためのスクリーニング工程としての細胞ベースのアッセイと組み合わせてもよい。かかるアッセイは、例えば、Servantらの米国出願公開第2005/0059094号に記載されている。
【0087】
本発明の追加の側面は、in vitroおよびin vivoスクリーニングアッセイの組合せにより、対象における塩味知覚を調節する化合物を同定する方法を特徴とする。1つの側面において、試験化合物を、上皮ナトリウムイオンチャネルに対するその調節効果を決定するためにまずin vitroでスクリーニングし、次いで、該化合物が対象における塩味知覚を調節、好ましくは増強することができるか否かを決定するためにin vivoでさらにスクリーニングする。
【0088】
1つの側面において、in vitroスクリーニングアッセイは、ヒト塩味受容体のモジュレーターを同定することを含み、これは、試験化合物を少なくとも1つのENaCと接触させること、および、試験化合物の非存在下におけるENaCの生物学的活性と比較した、試験化合物の存在下におけるENaCの生物学的活性の減少を決定することを含む。この側面は、本明細書に記載された詳細に従って実行することができる。1つの側面において、in vivoスクリーニングアッセイは、対象において塩味知覚を増強する化合物を同定することを含み、これは、対象に試験化合物を投与すること、および、対象における塩味知覚が、試験化合物の非存在下における対象による塩味知覚のレベルと比較して増強されているか否かを決定することを含む。
【0089】
in vivoスクリーニングのために、対象は、施設内倫理委員会が認可した方法、例えば印刷媒体における一般的な広告などによって募集することができる。研究に入る前に、各々の対象はインフォームドコンセントを提供する。参加者には、試験前の少なくとも1時間、摂食、飲水またはガムをかむことを控えるよう要求することがある。対象は、研究に参加するために支払を受けることがある。
【0090】
対象を研究するために投与される候補試験化合物を含む実験溶液は、二成分混合物の形態、例えば化合物とNaClなどの無機塩との混合物の形態で提示することができる。試験化合物および無機塩についての好適な濃度範囲を確立するために、予備実験を行うことができる。例えば、4種類の濃度の試験化合物を、4種類の濃度の無機塩とともに用いる。水溶液は、無機塩を含む試験化合物の濃度の全ての可能な組み合わせを包含するように調製することができる。
【0091】
所定の刺激の塩味増幅特性を評価するために、当該技術分野で好適な任意の手段を用いることができる。かかる手段の1つの非限定例は、マグニチュード推定法である。マグニチュード推定法は、サンプルから知覚された塩味の強さのレーティングを測定する。塩味評価に参加している対象に、溶液の塩味または相対的な塩味をレーティングするように指示することができる。対象は、各々の溶液を、1回、2回、3回または4回以上試飲することができる。
【0092】
試験溶液を試飲する前に、対象に、その口をすすぐように指示することができる。例えば、対象に、好ましくは約2分間などの短い時間内で、4回、水ですすいで吐き出すように指示することができる。その後、試験サンプルおよび無機塩溶液を、対象に、好ましくは順不同かつ非復元的に投与することができる。例えば、溶液は、10mlのアリコートでポリスチレン製医療カップ(Dynarex、NY)に調製し、対象に投与することができる。対象に、溶液の相対的な塩味をレーティングするように指示することができ、各々の溶液についての相対的な塩味のレーティングを算術的に平均し、単一の塩味レーティングを得ることができる。
【0093】
マグニチュード推定法は、用いる対象数の変動による違いを示さないことがある。マグニチュード推定タスクにおける特異な数の使用によって生じる分散を排除するために、塩味レーティングを、水中のNaClのみの塩味レーティングの総算術平均(全てのNaCl濃度にわたる平均値)に対して標準化することができる。各々の対象の平均塩味レーティングは総塩味平均に分割することができ、この商を、その個人の塩味レーティングのための乗法標準化係数(multiplicative standardization factor)として用いることができる。この手法は、水中のNaClの平均塩味レーティングを対象にわたって同等にする。
【0094】
分散分析(ANOVA)を、マグニチュード推定法からの標準化された反復測定データに対して行い、事後的対比較をチューキーの忠実有意差(HSD)分析で行うことができる。
【0095】
マグニチュード推定法に代わるものは、強制ランキング法であり、これは一連の二択式強制選択ペアリングを用いて、推定増強物質である試験化合物の存在下または非存在下におけるNaCl水溶液の塩味をランキングするものである。この手法において、対象に、第1のサンプルペアの第1の溶液(例えば、5mlまたは10mlの溶液)の半量を3秒間味見し、吐き出すように指示することができる。次いで、対象は2回すすぎ、第2のサンプルの半量を味見し、吐き出し、2回すすいで、同じ手法により2つの溶液の残りを味見する。両方の溶液を2回味見した後、対象に、どちらの溶液がより塩辛いと思ったかを示すよう求めることができる。対象がいずれの溶液もより塩辛くないようであったと報告した場合、対象に推測することを求めることができる(強制選択)。この手法を、全てのサンプルについて反復することができる。
【0096】
塩味ランキングは、特定の溶液が他の全ての溶液より塩辛いものとして選択された回数に基づき、ペアワイズランキングのフリードマン分析により計算することができる。個々のランキング間の違いが有意であるか否かを決定するために、チューキーHSDを算出することができる。
【0097】
上記の本発明のスクリーニング法のいずれかによって同定された化合物は、この発明の範囲内にあるものとする。かかる化合物は好ましくはENaCのアゴニスト、より好ましくはヒト塩味受容体のアゴニスト、より一層好ましくはヒト塩味受容体の増強物質である。本明細書に記載のとおり、かかる化合物を、それが投与される対象において塩味知覚を増強するために効果的な量で、薬学的にまたは栄養補助食品的に許容し得る担体と混合することにより、栄養補助食品または医薬組成物として製剤化することができる。
【0098】
前記アッセイを用いて、塩辛いと知覚される化合物を同定すること、および塩味を増強する(例えば、低減した量のナトリウムまたはリチウムを、より高い濃度のナトリウムまたはリチウムとして知覚されるようにする)化合物を同定することは、本発明の対象である。本発明は、限定することなく、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質、小有機分子などを含む天然分子または合成分子を含む化合物のライブラリーを、代用塩、塩味増強物質または塩味阻害物質として作用するその能力についてスクリーニングすることを可能にする。本発明は、本発明の方法によって同定された代用塩、塩味増強物質および塩味阻害物質を含む。
【0099】
本発明が提供するものはまた、人工脂質膜およびこれを調製する方法である。人工脂質膜は少なくとも1種の脂質と、構築されたENaCまたは少なくとも1つのENaCのサブユニットである。好ましい側面では、ENaCは塩味受容体である。脂質膜は任意の好適な脂質を含むことができ、好ましくはリン脂質を含む。好適な脂質は、限定することなく、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリシン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、コレステロール、カルジオリピン、またはそのホモログ、アナログもしくはその誘導体を含み、これらは、当該技術分野で好適な任意の給源から得ることができる。これらは脂質膜は任意のコンフォメーションであってもよく、好ましくはリポソームまたは脂質二重層である。
【0100】
1つの側面において、人工脂質膜は、少なくとも1つのリン脂質を含むリポソームを、好適な水性緩衝液に溶解したENaCまたは特定の1種または複数種のENaCのサブユニットと混合することによって調製される。水性緩衝液は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。好適な界面活性剤は当該技術分野でよく知られており、限定することなく、Tween、Triton、CHAPS、コール酸ナトリウムおよびオクチルグルコシドを含む。リン脂質とENaCまたはそのサブユニットとを混合した後に、脂質膜中でのENaCの構築を可能にするために、混合物を数分、好ましくは少なくとも約20分の間インキュベートする。インキュベーションの後で、界面活性剤を当該技術分野において好適な任意の手段、例えば本明細書に記載および例証されたものなどで除去する。当該技術分野で知られているタンパク質を含む脂質およびリポソームを調製する他の方法を、ENaCサブユニットを含む脂質およびリポソームを生成するのに用いることができる。
【0101】
いくつかの側面では、ENaCはリポソーム中で構築される。リポソームは、本明細書中に記載および例証されたものを含む、当該技術分野でよく知られた日常的な技法を用いることで、平面脂質二重層に変換することができる。いくつかの側面では、リポソームは周囲の環境に見出されるものとは別の物質を含む。例えば、限定することなく、リポソームは、試験化合物による刺激に伴うナトリウム流のマーカーとしてのナトリウム量の変化を示すために、ナトリウムまたはリチウムに応答する蛍光電位感受性色素、または、膜電位色素を含んでもよい。
【0102】
本発明はまた、ヒト塩味受容体のモジュレーターを同定するためのキットを提供する。本キットは、少なくとも1種のリン脂質、単離された1または2以上の上皮ナトリウムイオンチャネルサブユニットおよび任意にナトリウムおよび/またはリチウムイオンの給源、ならびに、ヒト塩味受容体のモジュレーターを同定する方法においてキットを用いるための指示を含む。いくつかの側面では、キットは任意に上皮ナトリウムイオンチャネルアンタゴニストおよび/またはアゴニストを含む。
【0103】
本発明は、塩味受容体と、Cys
532を含むデルタサブユニットの推定アミロライド感受性領域と特異的に相互作用する化合物とを接触させることによって、対象における塩味知覚を調節するための方法を提供する。ヒト対象において、このデルタサブユニットは、配列番号12のアミノ酸配列を含む。モジュレーターは、受容体を刺激することまたは受容体を遮断することによって、塩味知覚を増強または阻害し得る。化合物は、受容体と、好ましくは配列番号12のアミノ酸配列を有する推定アミロライド感受性領域で結合することによって、デルタ受容体と相互作用し得る。
【0104】
当該技術分野で利用可能な、合理性に基づいたドラッグデザインのためのコンピュータプログラムを用いて、本明細書で利用可能な一次アミノ酸配列データおよびイオンチャネルの三次構造に関する当該技術分野における知識に基づいて分子モデリングを行い、ヒト塩味受容体の3次元モデルを提供することができる。かかるモデリングは、特定の調節部位、例えば、デルタサブユニットの推定アミロライド結合部位である配列番号12のモチーフを含む部位と相互作用する候補化合物の合理的な選択を可能にする。これらの化合物または化合物群は、塩味修飾物質(salty taste modifier)として作用する。これらの領域(例えば、デルタサブユニット配列番号12)と相互作用する化合物は、塩味知覚の修飾物質として有用である。したがって、本明細書に示すデータは、塩味受容体を含むサブユニットと、塩味知覚に関与しているとみられるサブユニットのエリアとの構造機能相関を提供する。
【0105】
以下の実例および理論例(prophetic example)は、本発明をさらに詳細に説明するために提供されている。これらは本発明を例証することを意図しており、限定することは意図しない。
【実施例】
【0106】
例1
ヒト茸状乳頭および味覚細胞を得るための手法
ヒト茸状乳頭を含む味蕾は、局所麻酔下で実行される小手術生検法によって、ボランティアの舌の前背面から日常的に得られる。一般的な手法は、Spielman, AI et al. Collection of taste tissue from mammals. Experimental Cell Biology of Taste and Olfaction. Spielman AI and Brand JG eds. CRC Press, Boca Raton, FL, pp 25-32に記載されている。ボランティアは、インフォームドコンセントを提供する。この手法は施設内倫理委員会によりチェックされ、承認されたものである。切除された乳頭は、その後、RNA抽出、免疫組織化学またはin situハイブリダイゼーションのために、または、単離された味覚細胞の懸濁液をもたらす手法に用いることができる。
【0107】
RNA抽出、組織化学およびin situ分析
全RNA抽出に用いる場合、乳頭を直ちにTRIzol
TM試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いた標準的な抽出手法に供する。RNA抽出物は、大部分のゲノムDNAを除去するために、DNA分解酵素で処理する。さもなければ、残存するあらゆるDNAは、イントロンを挟んだ(intron-spanning)プライマーが利用できないその後の工程において、偽陽性の結果をもたらし得る。しかしながら、ゲノム材料は、ゲノムDNAの単一コピーがPCRの最も高い感度の時点を知らせ、それによって当該手法における便利なエンドポイントを提供するため、定量逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(QRT−PCR)に有用である。その後、逆転写をRNAに対して行い、相補的DNAまたはcDNAとして知られるRNAのDNAによるコピーを得る。このcDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応において基質として用いる。
【0108】
茸状乳頭RNAおよびその後のcDNAは概して高品質であるため、研究対象のタンパク質の全コード配列またはオープンリーディングフレーム(ORF)を直ちに増幅することができる。この増幅を行うのに用いられるオリゴヌクレオチドプライマーは、GenBankでアノテートされている同じ、または、類似したタンパク質の公開された配列に基づいて設計する。PCR反応生成物は、アガロースゲル電気泳動によって分析することができる。この手法は、味蕾細胞で発現されることが知られている遺伝子の全コード配列(その全長配列は、単一細胞分析からは容易に得ることができない)を得るのにしばしば用いられる。
【0109】
切除された乳頭はまた、一般組織化学分析もしくは免疫組織化学分析、またはin situハイブリダイゼーション分析に用いてもよい。組織を固定し、保護するための種々の技法および手法が利用可能であり、これらを用いることができる。例えば、
図1はATPアーゼ組織化学法によって染色されたヒトの味蕾を示す。
図2は、ヒト味覚細胞に対する免疫組織化学法による、二次メッセンジャー酵素、ホスホリパーゼCベータ2(PLCbeta2)の抗体検出を示す。手順は以下の通りである。茸状乳頭の組織切片(8〜10ミクロン)を1×PBS中で10分間、3回にわたって洗浄し、ブロッキングバッファー中に室温で4〜18時間置いた。ブロッキングバッファーを除去し、一次抗体(ウサギ抗PLCbeta2)を、3種の濃度(バッファー中、1:50、1:100および1:200)で添加した。一次抗体液を除去し、スライドグラスを、PBS中で3回洗浄した。最初の洗浄は直ちに流したが、それ以降の洗浄は、それぞれ10〜20分の間インキュベートした。過剰な流体を排出し、二次抗体液(CY3標識ヤギ抗ウサギ、1:1000)を切片に加え、スライドグラスを45〜120分間室温でインキュベートした。スライドグラスを、PBS中で3回洗浄した。最初の洗浄は直ちに流したが、その後の以降の洗浄は、それぞれ10〜20分の間インキュベートした。過剰な流体は排出するが、スライドグラスは湿ったままにした。カバーグラスをスライドグラス上に置き、スライドグラスを蛍光顕微鏡下で検討した。
【0110】
ENaCサブユニットを同定し、これをシーケンシングするためのRT−PCR
生検で得た茸状乳頭からの総RNAの抽出を上記の通り、DNA分解酵素処理なしで行い、次に第一鎖cDNAの合成を行う。ENaCサブユニット(500bp以下のサイズ)の増幅は、上記のプライマーを用いて、PCR Core System I試薬キット(Promega Corp., Madison WI)により行うことができる。
【0111】
明らかに正しいサイズの生成物が得られたら、この生成物をゲルから切除し、精製する。次いで、生成物をプラスミドベクターにライゲーションし、その中に挿入されたタンパク質(例えば、ENaCδ)のコード配列に関する遺伝子を有する組換えプラスミドを得る。組換えプラスミドは、細菌細胞を形質転換するのに用いる。この細菌細胞は、適切な細胞増殖培養液を提供した場合、大量のプラスミドを生成する。細菌培養物の精製は、純粋な形態の組換えプラスミドを生じ、これによりヒト茸状乳頭からのタンパク質遺伝子の配列を得ることが可能となる。最後に、BLASTプログラムを用いた、配列の生物情報学的分析により、実際に正しい配列が得られたことを確認する。
【0112】
この手法を用い、ヒト茸状乳頭において4種のENaCサブユニットの転写物に関する証拠が見出された。これらのサブユニットは、アルファ、ベータ、ガンマおよびデルタENaCサブユニットである。アルファサブユニットの完全なORFはほとんど観察されなかったが、他のサブユニットの完全なORFはほぼ常に観察された。驚くべきことに、ENaCのデルタサブユニットがヒト茸状乳頭に存在することが見出された。
【0113】
例2
ヒト塩味受容体の同定およびデルタサブユニットの重要性
本発明により、ヒト茸状(味覚)乳頭におけるENaCのデルタサブユニットが提供される。当該サブユニットが見出されたクローンは、舌の前背面から複数の茸状乳頭を取り出すための生検処置を受けることに同意した3名の個人からのプールされたcDNAからのものであった。
【0114】
デルタサブユニットの特徴
上皮ナトリウムチャネルのデルタサブユニットは、RT−PCRによって13名の個人からの茸状乳頭で検出された。検出された断片はPCRによって増幅し、サブクローニングした。次いで、これらの13名の個人からのデルタサブユニットをコードしているポリヌクレオチドを完全にシーケンシングした。茸状乳頭からのヒトのデルタサブユニットが、腎臓からクローニングしたヒトのデルタサブユニットと、推定アミロライド結合部位において異なることが決定された。推定アミロライド結合部位は、腎臓からのデルタサブユニットでは第532アミノ酸にチロシンを含むが(配列番号8)、茸状乳頭からのデルタの第532アミノ酸は、シーケンシングした13サンプルの各々においてシステインであった(配列番号9)。
【表1】
【0115】
図3は、11のデルタサブユニットのアミノ酸配列配列を示し、ここで、最初の配列はGenBank配列であり、他の10の配列は、10名の異なる個人からのものである。180位に、可能な多型(RからP)を示す。可能な多型を示している他の位置は、278位(FからI)、355位(SからR)、389位(EからQ)および566位(RからH)である。566位はまた、アミロライドの結合に関係している。いかなる特定の理論または作用機序に制限されることを意図することなく、多型は塩味刺激に対する感受性に関与し得るか、または、味覚モジュレーターに対する感受性に関与し得る。
【0116】
532位におけるYからCへの変更は、ラット塩味受容体が明らかにアミロライドに感受性であるが、ヒト塩味受容体はそうでない理由を説明する一助となり得るため、重要である。ラットのデルタENaCサブユニットは、偽遺伝子であるため発現されない。アミロライド感受性のアルファサブユニットがラットにおいて塩味受容体の一部として機能すると考えられる。この置換は、受容体の感受性および特異性を顕著に変えないが、チャンネルの薬理を変化させる。
【0117】
デルタサブユニットはアミロライド感受性であるが、それはアルファよりは感受性ではない(
図4)。したがって、ヒト塩味受容体ENaCがデルタの通常の形態を含むのであれば、これもまたアミロライド感受性を示すはずである。しかし、ヒトの味覚細胞からのデルタの推定アミロライド結合部位は、非保存的置換を含んでおり、したがって、腎臓におけるデルタサブユニットとは異なる、アミロライド対する感受性を有し得る。いかなる特定の理論または作用機序に制限されることを意図することなく、デルタがより少ない感受性を示すのであれば、この知見は、特にアミロライドがタイトジャンクションを超えることができないことから、デルタがヒト塩味受容体であることを意味すると解釈できる可能性がある。ラットとヒトとの間の違いのため、ラットはおそらくヒトの塩味知覚のよいモデルではない。
【0118】
ヒト茸状乳頭デルタENaCサブユニットの細胞特異性
ヒトの味蕾は
図1に示されており、そこでは、ヒト茸状乳頭の8ミクロン切片をATPアーゼ組織化学法によって染色してある。問題は今度は、これらの味覚細胞の一部がデルタENaCを発現するのか、全てが発現するのか、またはいずれも発現しないかということになる。デルタサブユニットを発現する細胞のみを見るために、デルタ型のヒトENaCに対する抗体をウサギで作製した。代表的な写真を
図5に示す。スライドは、ヒト味蕾内の細胞のサブセットに対する組織特異的標識を示す。この意味は、ヒト塩味受容体が、デルタ、ベータおよびガンマサブユニット、あるいは、アルファ、デルタ、ベータおよびガンマサブユニットの多量体から構成されるENaCであるということである。味覚細胞におけるデルタのこの特異性は、これらの同じ味蕾における全長アルファの顕著な不足とともに、ヒト塩味受容体がデルタを含むENaCであり、他者が示唆するような単なるアルファ、ベータ、ガンマENaCではないことを示唆している。
【0119】
ヒトの味蕾細胞の単離
単離された味蕾単一細胞の懸濁液は、ヒト茸状乳頭から、生検で得た乳頭のコラゲナーゼベースの酵素的手法でのインキュベーション、引き続く、酵素を効果的に除去するための乳頭の洗浄、その後のガラスのピペットによるその破砕により調製した。得られた懸濁液は、味蕾細胞について濃縮した。個々の細胞をガラス製マイクロピペットで捕獲し(
図6参照)、後に、2〜10μlのRNAlaterを含むチューブに個別に入れた。
【0120】
デルタサブユニットは味蕾細胞に位置する
cDNAを、上述のとおり個別に単離、捕獲した7種のヒト茸状味覚細胞から得、次いでプールした。正しいサイズ(〜500bp)の生成物が認められ、シーケンシングによりそのヒトENaCデルタサブユニットとしての同一性が確認された。デルタENaCのORFの重複セグメントを同定するこのPCR手法を用いて、味覚細胞デルタENaCの完全なORFを得た。
【0121】
ネステッドプライマーを用いた単一細胞RT−PCRも行い、試験した12のヒト味蕾細胞のうち2つが、全長アルファを発現することなく、デルタ、ベータおよびガンマサブユニットを発現している強い証拠を提供したことが明らかになった(データは示さず)。1つの初期の単一細胞Q−RT−PCRは、アルファサブユニットについてのメッセージを示さなかったが、デルタ、ガンマおよびベータについてはほぼ同数のメッセージコピーを示した(
図7)。
【0122】
単離された味覚細胞の調製物に対するカルシウムイメージングを用いることにより、塩化ナトリウムによって活性化される個々の細胞を特定することが可能である。これらの細胞は、捕獲し、その内容をQ−SC−RT−PCRによって分析する。30の塩感受性細胞群の中で、最も発現しているサブユニットは、デルタであることが決定された。8つはデルタ、ベータおよびガンマを発現したが、7つは、デルタ、アルファ、ベータおよびガンマを発現した。
【0123】
ガンマについてのGenBank配列と比較した、味覚細胞からシーケンシングした10のガンマサブユニットのアミノ酸配列のアラインメントを
図8に示す。
【0124】
塩味受容体をデルタ、ベータ、ガンマまたはデルタ、アルファ、ベータ、ガンマとして同定したことにより、下記の例に示すとおり、分析のために各々のサブユニットを発現し、脂質二重層に再構成する。
【0125】
例3
リポソームおよび人工脂質二重層の調製
この例は、大量の受容体をその膜環境から可溶化し、受容体を精製し、脂質二重層などの人工脂質膜に受容体を再構成するために容易に行うことができる技法を示す。かかる膜は、そこで受容体がそのネイティブなコンフォメーションを回復し、詳細に、単離状態で、例えば、他のタンパク質または生細胞の代謝的な気紛れからの干渉なしに研究できる、人工生体膜として用いられる。
【0126】
この例は、一つには、ナマズからのL−アルギニン(L−arg)に対する味覚受容体の抽出、精製および膜再構成を説明する。Grosvenor, W et al. (2004) BMC Neuroscience 5:25に公開され、説明されている本方法は、下記のとおり、脂質膜におけるENaC、ENaCサブユニット、および塩味受容体の再構成に容易に適合させることができる。ナマズは、受容体が特定のアミノ酸に極めて感受性であることから味覚受容体研究のモデルとした。かかるアミノ酸の1つは、L−argである。ENaCと同様、ナマズのL−argに対する味覚受容体はイオンチャネルである。同様のアプローチを、L−argおよびENaC型受容体を可溶化する際に利用する。受容体は主にその由来によって異なる。L−arg受容体はナマズ味覚組織から精製し、ENaCサブユニットは異種細胞培養発現系によって合成する。
【0127】
リポソームの生成
リポソームは、可溶化された受容体を二重層構築物へ運ぶのに用いる。膜溶解性タンパク質を研究するための大きな課題は、タンパク質をその天然の膜または合成エンドポイントから人工脂質二重層まで動かすための手法を開発することである。可溶化は通常界面活性剤を用いるが、この界面活性剤は、二重層の損傷を避けるために除去しなければならない。リポソームは、界面活性剤系からタンパク質を取り込み、それを二重層に引き渡すことによって、この移送を実行する。
【0128】
リポソームは、0.5mlのクロロホルム中の、2:1の比率の1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン:1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPE:DOPC)の混合物5mgを丸底フラスコに加えることによって調製する。フラスコは、30〜40分間、4℃で回転させる。クロロホルムを蒸発させた後、脂質の薄層が形成され、これに2mlの緩衝液(300mMのNaCl、50mMのTris、pH=7)を加える。緩衝液添加後、フラスコを3〜5分のパルスにて3回浴中で超音波処理し、リポソームの形成を誘導する。あるいは、プローブソニケーターで30〜40秒だけパルスしてもよい。
【0129】
L−ArgRのリポソームへの溶解および脂質膜におけるL−ArgRの薬理
複数の界面活性剤、例えばTween、CHAPS、Triton、コール酸ナトリウムまたは/およびオクチル−グルコシドのうちの1つを含む100mMのNaCl/50mMのトリス、pH=7.1に溶解した、所定量(0.01〜0.5μg)のL−ArgRをリポソームに加えた。シングルチャンネル事象としてのチャンネル活性を測定するためのタンパク質の脂質に対する比率(質量:質量)は、1:2000〜5000である。巨視的特性を測定するための比率は、1:50〜100の範囲である。タンパク質−脂質混合物は、20〜30分間インキュベートする。
【0130】
二重層において測定したL−ArgRの特性は、L−ArgRがその天然の状態にあるときの、動物からの味覚神経記録を通して観察されるものと極めて類似している。例えば、味覚神経記録は、天然の受容体の感度がL−arg0.数μMの範囲であるが、D−argは受容体を阻害することを示す。
図9は、L−ArgRが二重層に再構成された場合に、同様の特性が見られることを示す。これは、L−ArgRなどの受容体が、二重層にある場合に、その活性を二次的な神経記録から推定しなければならない天然の状態にある場合よりも、より直接的かつより容易に研究されることを示すものである。
【0131】
リポソームへのENaCタンパク質の再構成
複数の界面活性剤、例えばTween、CHAPS、Triton、コール酸ナトリウムまたは/およびオクチル−グルコシドのうちの1つを含む100mMのNaCl/50mMのトリス、pH=7.1に溶解した、所定量(0.01〜0.5μg)の対象とするナトリウムチャネル、例えば、ENaCα、ENaCδ、またはENaCサブユニット、α、β、γ、δに由来する特定の比率の混合物をリポソームに加える。シングルチャンネル事象としてのチャンネル活性を測定するためのタンパク質の脂質に対する比率(質量:質量)は、1:2000〜5000である。巨視的特性を測定するための比率は、1:50〜100の範囲である。タンパク質−脂質混合物は、20〜30分間インキュベートする。膜チャネルであるENaCタンパク質は、リポソームに再構成される間溶液のままである必要があるため、この手順を引き続き行う。
【0132】
1種または2種以上のENaCを含む再構成された界面活性剤不含プロテオリポソームは、少なくとも2つの方法で調製することができる。1つの方法では、これらはタンパク質:脂質混合物の、ゲル濾過カラムを介した遠心により形成することができる。これらのゲルカラムはSephadex G-50(fine)から調製し、一晩膨潤させ、5mlのディスポーザブルカラム(ベッド体積1.5ml)に注ぐ。カラムは、遠心機にて〜1,000×gで事前に回転させておく。タンパク質:脂質混合物をカラムの最上部に負荷し、界面活性剤不含プロテオリポソームは、カラムを700gで1分間回転させることによって回収することができる。あるいは、界面活性剤は透析によって除去することができる。透析のために、タンパク質:脂質混合物をカセット透析装置に装填し、混合物を、2000mlのTris/NaCl/スクロース(界面活性剤不含)バッファーに対して、4℃で一晩透析する。界面活性剤の濃度が透析の間に低下するため、タンパク質を含むリン脂質小胞が自発的に形成されるとみられる。
【0133】
チャンネルタンパク質のプロテオリポソームから平面脂質二重層への再構成
平面脂質二重層は2つの水性コンパートメントの間の開口上に形成され、これらを、作業上の目的のために、シスおよびトランスコンパートメントと呼ぶ。制御膜電位を制御するために、電圧発生器をシスコンパートメントにAg/AgCl電極により接続する。トランスコンパートメント(仮想アース)は、第2のAg/AgCl電極によって、電流測定用増幅器の入力に接続する。
【0134】
二重層の形成
DOPE:DOPCの4:1混合物を25μlのn−デカンに溶解する(15〜25mg/mlの範囲の濃度)。この混合は室温に保ち、実験を行う各日に調製する。電極コンパートメントを3MのKClで満たし、Ag/AgCl電極をコンパートメントに設置する。シスおよびトランスコンパートメントを記録用浴溶液(100mMのNaCl、10のTris、pH7)で満たし、これらと電極コンパートメントとの間に寒天ブリッジを設置する。二重層を形成するために、脂質混合物滴をシス側から穴の上へ散布する。
【0135】
抵抗が増加し、かつ、シグナルが飽和していないときに、脂質が穴の周囲に完全に形成されたことを決定することができる。組織化された二重層が形成されたことを確かめるために、二重層を横切る電圧パルスを印可することができ、容量性電流を測定することができる。100μmの穴に関して、キャパシタンスは50〜100pF程度であるとみられる。二重層の電気抵抗は、109オームを超えるとみられる。
【0136】
再構成
二重層が形成された後、10〜15μlのプロテオリポソームを、継続的に攪拌しながら二重層のシス側に加える。チャンネルサブユニットが二重層に取り込まれるとき、電流は段階的に変化するとみられる。多数のチャンネルを組み入れる場合、巨視的な電流を測定する。
【0137】
リポソームの二重層との融合は自発的に生じ、電流は約5〜30分以内で記録することができる。場合によっては、事前に300mMのNaCl中で形成したリポソームを100mMのNaClを含む二重層浴溶液に加えることによってリポソーム全体に濃度勾配を作出することにより、または、100mMのNaClをシス側に、10mMのNaClをトランス側に加えることによって脂質二重層を隔てた濃度勾配を作出することにより、または、二重層へのDOPSなどの負荷電脂質の添加によって二重層および/またはリポソーム脂質の組成を変えることにより、リポソーム融合を促進することが必要となることがある。
【0138】
例4
脂質二重層における種々の比率のENaC受容体サブドメインの発現
これは、理論例である。ENaCは、通常、サブユニットα、βおよびγ(大部分の組織ではα2βγ複合体)か、サブユニットδ、βおよびγの、いずれかの3つのサブユニットを含むヘテロ多量体複合体である。これらのサブユニットは、しばしば組織源により決定される種々の比率で集合することができる。サブユニットの相対比を変えることにより、これらのチャンネルにユニークなキネティクスおよび薬理が付与される。いかなる特定の理論または作用機序に制限されることを意図することなく、δサブユニットは多くの組織でαサブユニットと置き換わっており、かかる置換が特にチャンネルの薬理を変更すると考えられる。
【0139】
ENaCサブユニットの比率の評価に特に関連する単一細胞定量PCR
メッセージの量とタンパク質の量との間の1対1対応は保証されていないが、Q−PCRはENaC比率の評価に利用できる1つのツールである。塩味覚細胞が活動しているならば、特定のサブユニットの複数のコピーを有していると考えられる。メッセージのコピーの比率は、少なくとも近似的にタンパク質生成物の比率であると考えられる。定量単一細胞PCRを用いて、対象とする任意のタンパク質についての、メッセージの相対的存在量の半定量的な像を得ることができる。この手法は、理論的には単純であるが、多数の困難な障害がある。味覚細胞に関しては、例えば、現在単離細胞を得るために用いている時間のかかる手法(上記参照)がRNAの破壊をもたらすため、RNAの品質が問題となることがある。実験技法を信頼あるものとするために、以下の手法を行うことができる。(1)対象とする各々の遺伝子について複数のユニークプライマーを設計し、同じPCR条件下で対象とするすべての遺伝子についてほぼ同一の効率を有するもののみを用いる。(2)水を対照とするPCRを用いた場合にブランクとして記録されるものより上の適切なペアから、プライマーセット(プライマーペアの混合物)を構築する。(3)個別の細胞(上記のとおりの)をRNaseのない環境で回収し、細胞を溶解させ、市販のキットを用いて単一細胞mRNA内容物を逆転写する。(4)全ての反応が線形増幅相となるよう、第1段階のPCRの限定された数(10〜25)のサイクルを、上記のプライマーセットおよび条件で行う。(5)上記の反応物を希釈し(100×〜1000×)、アリコートをテンプレートとして、上記セットからの1対のプライマーとともに用い、Q−PCR装置を用いてPCRの第2段階を行う(2反復/3反復で)。(6)データ分析に、相対定量法を用いる。正規化は、定義上、遺伝子の1つのコピーが存在する、翻訳/転写されていないゲノムDNAの増幅に基づく。遺伝子発現の違いは、比率(サンプル中の標的遺伝子とゲノム参照配列との間のΔCt)の差(2サンプル間のΔCtの差であるΔΔCt)を比較することによって決定することができる。
【0140】
味蕾細胞がヒトENaCサブユニットδ、β、およびγについてのメッセージを含むが、αについてのメッセージは含まないことは明らかであった。この分析のQ−PCRトレースを
図7に示す。この単一細胞から、その細胞のENACが多量体構造、δ1β1γ1であることを結論づけることができる。しかしながら、これらのトレースは正規化されていないため、最終的な構造は異なる化学量論比を有し得る。しかし、最良の証拠は、ヒト塩味受容体がδ1β1γ1で構成されることを示唆している。
【0141】
一度配列の確証が得られたならば、組換えプラスミドを、in vitroタンパク質発現(IVPE)として知られるプロセスにおける基質として用いることができる。この手法は、細胞によるものであれ、無細胞系であれ、所望のタンパク質、この場合、ENaCサブユニットδ、α、βおよびγの大量(mM)の生成を可能にする。製造されたタンパク質の同一性を確認するためにウエスタンブロットを用いることができる。タンパク質に対する抗体を用いた反応混合物の分析(ウエスタンブロット)を、所望のタンパク質が実際に得られたことを確認するのに用いる。
【0142】
所望のタンパク質は単離および精製することができる。アフィニティークロマトグラフィーによるタンパク質の精製は、Sephadexなどのカラムマトリックスで抗体をタンパク質に化学的に結合させることを含む。IVPE反応混合物をカラムに通すことにより、タンパク質が、カラム上のその抗体に結合することとなる。好適な試薬によるカラムの溶出は、濃縮されたタンパク質をもたらす。タンパク質溶出液は、ケルダール法におけるように、全窒素を測定することにより定量することができる。次いで、この総窒素含量の測定値を280nmでのタンパク質の吸収と比較して、吸収係数を算出する。この点から、280nmにおける吸収は、タンパク質濃度の便利で正確な測定値となる。
【0143】
ENaCの各々のサブユニットの実際の濃度を知ることにより、これらのサブユニットを、単一細胞のQ−PCRによって推定した特定の比率で組合せることを可能にする。これらのタンパク質は膜に結合していることから、これらは可溶性のままで存在するために若干量の界面活性剤を要求する。これらが可溶性であることはこれらを特定の比率で組み込むために必要だが、界面活性剤は、活性を測定するためにこれらが再構成される必要がある脂質二重層を破壊する。したがって、単離されたタンパク質と共に脂質二重層を再構成するには、すべての界面活性剤を除去することを要する。界面活性剤は、当該技術分野で好適な任意の手段、例えば本明細書に記載された透析などにより除去することができる。単離されたタンパク質の脂質膜への再構成は既述であり(Grosvenor, W et al. (2004) BMC Neurosci. 5:2202-5)、上記の例にまとめてある。ヒトENaCのためのサブユニットが合成されているため、任意の推定塩味受容体サブユニットの組成および比率に対して慎重な制御を行うことができる利点が得られる。
【0144】
本発明は、上記で説明および例示された態様に限定されないが、添付の特許請求の範囲の範囲内で変更および改変が可能である。
【0145】
配列表
【表2】
【0146】
【表3】
【0147】
【表4】
【0148】
【表5】
【0149】
【表6】
【0150】
【表7】
【0151】
【表8】
【0152】
【表9】
【0153】
【表10】
【0154】
【表11】
【0155】
【表12】
【0156】
【表13】