(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5657906
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】液晶表示装置及びその製造方法、電子機器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1333 20060101AFI20141225BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20141225BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
G02F1/1333
G02F1/13357
G09F9/00 350Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-76381(P2010-76381)
(22)【出願日】2010年3月29日
(65)【公開番号】特開2011-209470(P2011-209470A)
(43)【公開日】2011年10月20日
【審査請求日】2013年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】神岡 豊
(72)【発明者】
【氏名】半田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佳央
(72)【発明者】
【氏名】市野 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】細川 太郎
【審査官】
磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−090053(JP,A)
【文献】
特開2010−060591(JP,A)
【文献】
特開2009−086188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルと、
前記液晶パネルの表面に光学接着剤により接着され、外周が前記液晶パネルよりも大きな透明体と、
前記液晶パネルの背面に設けられた背面光源と、
前記液晶パネルと前記背面光源を収納し、側壁に溝が形成された枠体と、を備え、
前記溝は、前記側壁の他の部分より高く、前記液晶パネルの表面より低く形成され、
前記溝に充填された接着剤により前記透明体と前記枠体とが接着されることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
液晶パネルと、
前記液晶パネルの表面に光学接着剤により接着され、外周が前記液晶パネルよりも大きな透明体と、
前記液晶パネルの背面に設けられた背面光源と、
前記液晶パネルと前記背面光源を収納し、側壁に溝が形成された枠体と、
前記枠体と前記透明体の外周に設けられた外装ケースと、を備え、
前記溝は、前記側壁の他の部分より高く、前記液晶パネルの表面より低く形成され、
前記溝に充填された接着剤により前記透明体と前記枠体とが接着されることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
前記枠体と前記外装ケースとの間には緩衝材が設けられ、
前記透明体と前記外装ケースとが接触していないことを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
液晶パネルの表面に透明体を光学接着剤により接着する第一工程と、
側壁に、前記側壁の他の部分より高く、前記液晶パネルの表面より低く形成される溝が形成された枠体に背面光源を収納し、前記溝に常温硬化型の接着剤を設ける第二工程と、
前記液晶パネルを前記枠体に収納するとともに、前記透明体と前記枠体とを前記常温硬化型の接着剤により接着する第三工程と、を備えることを特徴とする液晶表示装置の製造
方法。
【請求項5】
前記常温硬化型の接着剤は、粘度が70Pa・sであることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの表示面に光学接着剤で透明な基板を貼り付けた液晶表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルの薄型化に伴い、液晶パネルの表示面に傷や衝撃から保護するカバーガラス等の透明な保護板が設置された液晶表示装置が普及している。また、電子機器の多機能化に伴い、液晶パネルの表示面にタッチパネルが設置された液晶表示装置も広く利用されている。このような液晶表示装置では、液晶パネルと透明な保護板またはタッチパネル(以下、透明体と称す)との間に屈折率の異なる空気層が介在すると、光が空気層により反射されて液晶表示装置の透過率が低下するため、液晶パネルと透明体との間に光学接着剤が充填される構成が広く知られている。このような構成によれば、液晶パネルと透明体が一体化されるため、耐衝撃性が向上する利点がある。
【0003】
また、液晶表示装置では、液晶パネルを背面から照明するためのバックライトが用いられる場合がある。このような場合に、表面に液晶パネルよりもひと回り大きい透明体が光学接着剤により貼り合された液晶パネルがバックライトとともに、枠体であるバックライトフレームへ組み込まれる構成が知られている。また、このような液晶表示装置において、透明体とバックライトフレームが、液晶パネルの外側で重なり合う部分で常温硬化型の接着剤により一体的に接着することにより、耐衝撃性を向上させる構成も提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
図6(f)〜(j)は従来の液晶表示装置の製造工程を示す図である。まず、
図6(f)に示すように、液晶パネル3の表面にはUV硬化型の光学接着剤2が塗布される。次に
図6(g)に示すように、透明体1と液晶パネル3とを貼り合せる。そして、
図6(h)で背面光源17と光学シート16を収納する枠体4を準備し、
図6(i)に示すように枠体4に透明体1と光学接着剤2と液晶パネル3が一体となったものを組み込む。最後に
図6(j)で、透明体1と枠体4の間に常温硬化型の接着剤5を充填させる。このとき透明体1と枠体4の隙間は0.6mm程度であるため、常温硬化型の接着剤5を均一に設けるために、ディスペンサー装置を使用し、0.6mm以下の先端を有するノズルを用いる。また、常温硬化型の接着剤5には、粘度が20Pa・s程度の接着剤が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−163132号公報(第1図)
【特許文献2】特開2009−122655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の液晶表示装置ではディスペンサー装置を利用して接着剤を設ける場合に、ノズル先端は透明体1と枠体4に接触させない様に位置あわせする必要があった。具体的には、ノズル先端と透明体1及び枠体4との隙間はそれぞれ0.05mm程度必要とされ、ディスペンサーの位置あわせに手間がかかった。また、ノズル先端が枠体の内部に接触したり、接着剤の充填領域に浸入しすぎたりした場合には、枠体4内に設けられた光学シート16に常温硬化型の接着剤5が浸み込み表示不具合が発生するという課題があった。
【0007】
また、液晶パネルの薄型化に伴い、液晶パネルと枠体との間隙が小さくなり、ディスペンサーのノズルがはいらなくなるという課題があった。そのため、液晶表示装置の耐衝撃性や表示品質が低下を招いていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液晶表示装置は、表示面に液晶パネルよりも外周の大きな透明体が光学接着剤により接着された液晶パネルと、背面光源とが枠体に収納されており、この枠体の側壁には接着剤を塗布するための溝が形成される。そしてこの溝に塗布された接着剤により枠体と透明体とが接着され、透明体と、液晶パネルと背面光源と枠体が一体化される。
【0009】
また、本発明の電子機器は、上述の液晶表示装置が外装ケースに収納されており、枠体と外装ケースの間には緩衝材が設けられる。さらに、透明体と外装ケースとは接触しないように設定される。
【0010】
また、本発明の液晶表示装置の製造方法は、まず、液晶パネルの表面に透明体を光学接着剤により接着する。そして、側壁に溝が形成された枠体に背面光源を収納し、この溝に常温硬化型の接着剤を設ける。さらに、液晶パネルを枠体に収納し、透明体と枠体とを常温硬化型の接着剤により接着する。
さらに、常温硬化型の接着剤は、粘度が70Pa・sであることとする。
【発明の効果】
【0011】
透明体とバックライトフレームとの間隙にディスペンサー装置のノズルを差し込まずに接着剤を均一に充填させることができ、液晶表示装置の耐衝撃性を向上できる。また、バックライトフレームの側壁に溝を設け、この溝に比較的粘度の高い接着剤を充填させるため、接着剤がバックライトの光学部材へ浸み込むのを防いで、液晶表示装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の液晶表示装置を電子機器の筐体に組込んだ構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の液晶表示装置の構成を示す上面図である。
【
図3】本発明の液晶表示装置に用いられる液晶パネルの構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の液晶表示装置に用いられる枠体の構成を示す上面図である。
【
図5】本発明の液晶表示装置の製造方法を説明する工程図である。
【
図6】従来の液晶表示装置の製造方法を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の液晶表示装置は、液晶パネルの表示面に液晶パネルよりも外周の大きな透明体が光学接着剤により接着される。この液晶パネルは、背面光源とともに枠体に収納されるが、この枠体の側壁には接着剤を塗布するための溝が形成されている。そしてこの溝に塗布された接着剤により、枠体と透明体とが接着され、透明体と、液晶パネルと背面光源と枠体が一体化された構成となる。なお、透明体は、液晶パネルを保護する透明な保護板またはタッチパネルでもよい。
【0014】
また、枠体の側壁は、液晶パネルの端子部に対応する辺を除く三辺に形成される。
また、溝に塗布される接着剤は、比較的粘度の高い常温硬化型の接着剤でもよい。
また、背面光源と液晶パネルとの間には、光学シートが設けられてもよい。
また、本発明の電子機器は、上述の液晶表示装置が外装ケースに収納されており、枠体と外装ケースの間には緩衝材が設けられる。さらに、透明体と外装ケースとは接触しないように構成される。
【0015】
また、本発明の液晶表示装置の製造方法は、液晶パネルの表面に透明体を光学接着剤により接着する。そして、背面光源を収納する枠体に接着剤を設けて透明体と枠体を接着するとともに、液晶パネルを枠体に収納する。枠体の側壁には接着剤を塗布するための溝が形成されている。また、接着剤は、側壁上面よりも高い位置まで設けられる。そのため、接着剤は、比較的粘度の高いものが用いられ、具体的には粘度が70Pa・s程度の常温硬化型の接着剤が望ましい。本発明の液晶表示装置の製造方法では、枠体に形成された溝に接着剤を塗布し、その後、液晶パネルが枠体に組み込まれる。
以下に本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
本実施例の液晶表示装置の構成を、図を用いて説明する。
図1は本実施例の液晶表示装置の構成を模式的に示す断面図である。液晶パネル3の表面には、光学接着剤2によりカバーガラスまたはタッチパネル等の透明体1が全面接着されている。透明体1は、ガラス、アクリル、PMMAなどの保護用のカバーガラスであってもよいし、静電容量方式等のタッチパネルであってもよい。透明体1は、液晶パネル3の外周よりも大きなサイズとなっている。さらに、液晶パネル3は背面光源17上に設けられた光学シート16の上に配置されるとともに、枠体4に収納される。枠体4の側壁には溝6が形成されており、この溝6には接着剤5が充填される。
図2は本実施例の液晶表示装置の上面図である。図示するように、液晶パネル3の6時方向、すなわち、ドライバーICや回路基板9が実装された端子部側を除く三辺に接着剤5がコの字状に設けられている。この接着剤5により、枠体4と透明体1が接着され、
図1に示すように透明体1と液晶パネル3と背面光源17および光学シート16を収納する枠体4とが一体化される。
【0017】
ここで、液晶パネル3の構成について詳しく説明する。
図3は、本実施例に用いられる液晶パネル3の断面図である。
図3に示すように、液晶パネル3は基板12と対向基板11との間に液晶(図示しない)が挟持されている。対向基板11の表面には上偏光板10が、基板12の裏面には下偏光板13が設けられる。基板12の表面の端子部には駆動用のドライバーIC8と回路基板9が実装される。
【0018】
なお、この液晶パネル3は、枠体4に収納される。そのため、枠体4の外周は透明体1よりも大きく設定される。
【0019】
図4は本実施例に用いられる枠体4の上面図である。
図4に示すように、枠体4には、液晶パネルの端子部に対応する辺(6時方向の辺)を除いた三辺に側壁が形成されており、この側壁には、接着剤5を充填するための溝が設けられる。本実施例では溝の深さは0.2mm程度で、溝の幅は0.6mm程度である。接着剤5には常温硬化型接着剤が用いられる。
【0020】
枠体4の凹部7には、
図1に示す背面光源17とその上面に光学シート16が設けられ、光学シート16上に液晶パネル3が配置される。なお、背面光源17には、側面に設けられたLED光源からの光を導光板で導光し、液晶パネルを背面から照明するサイドライト型のバックライトや、冷陰極蛍光管、ELバックライト等の照明装置を用いても良い。また、光学シート17にはレンズシートや拡散シートなどを用いてもよい。また、光学シート17を設けなくてもよい。
【0021】
そして、
図1に示すように枠体4の凹部に液晶パネル16が収納されるとともに透明体1が枠体4の溝6に設けられた接着剤5により枠体4に接着される。これにより、本実施例の液晶表示装置は、背面光源17を収納した枠体4、液晶パネル3及び透明体1が一体化された構成となる。
【0022】
このように、枠体4の側壁に接着剤を設けるための溝6を形成することにより、接着剤5が背面光源17側に浸み込むのを防止し信頼性を向上させるとともに、液晶表示装置の耐衝撃性をあげることができる。
【0023】
次に、本実施例の液晶表示装置を組み込んだ電子機器の構成について説明する。本実施例の電子機器は、
図1に示すように、上述の液晶表示装置が電子機器の筐体カバー14に収納された構成となっている。ここで、枠体4と筐体カバー14が接触する箇所には、緩衝材15が設置される。一方、透明体1と筐体カバー14とは接触しないように配置される。このような構成により、筐体カバー14に外部衝撃が加わった場合に、接着剤5で衝撃を吸収し、液晶パネルや透明体の破損を低減することが出来る。
【実施例2】
【0024】
次に、本実施例の液晶表示装置の製造方法を説明する。
図5(a)〜(e)は本実施例の液晶表示装置の製造方法の工程を示す図である。なお、本実施例の液晶表示装置は実施例1と同じ構成であるため、液晶表示装置の構成部材については適宜説明を省略する。
【0025】
まず、
図5(a)に示すように、カバーガラスまたはタッチパネル等の透明体1に対向する液晶パネル3の表面に光学接着剤2を塗布する。そして
図5(b)に示すように透明体1と液晶パネル3を全面接着する。次に、
図5(c)に示すように、枠体4を準備する。枠体4には背面光源17および光学シート16が配置されている。枠体4は、上述にもあるように中央部に凹部が設けられており、この凹部に液晶パネルが収納される。
図5(d)は枠体4の側壁に形成された溝に接着剤5を充填する工程を示す。接着剤5は、溝の高さよりも高く、かつ、溝から流れ出さないように設けられることが望ましい。そのため、接着剤5には、粘度が従来よりも高いものが用いられる。具体的には70Pa・s程度の粘度の常温硬化型の接着剤を使用するとよい。本実施例では、枠体4の側壁に幅が約0.6mm、高さが約0.2mmの溝が形成され、0.4mmほどの高さで接着剤が充填される。また、本実施例では、接着剤5に、粘度が70Pa・sの常温硬化型の接着剤が用いられる。
【0026】
接着剤5を溝に塗布した後、
図5(e)に示すように、液晶パネル3を枠体4の凹部に収納し、透明体1と枠体4とを接着剤5により、接着する。
【0027】
このように、本実施例では、従来と異なり、バックライトフレームに透明体を設けた液晶パネルを組み込む前に、バックライトフレームに形成された側壁の溝に常温硬化型の接着剤が塗布される。このような方法によれば、接着剤は溝に沿って塗布されればよいため、ディスペンサーの調整が従来よりも容易になる。すなわち、バックライトフレームと液晶パネル及び透明体との隙間の大きさに影響されずに接着剤を均一に設けることができる。また、高粘度の接着剤が溝に設けられているため、接着剤が光学シートや背面光源に浸入するのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 透明体
2 光学接着剤
3 液晶パネル
4 枠体
5 接着剤
6 溝
7 凹部
8 ドライバーIC
9 回路基板
10 上偏光板
11 対向基板
12 基板
13 下偏光板
14 筐体カバー
15 緩衝材
16 光学シート
17 背面光源