(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ステントは、一般に、血管または他の生体内管腔が、狭窄または閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するものである。詳説すると、ステントは、狭窄または閉塞部位を拡張し、その管腔サイズを維持するために、そこに留置する医療用具である。
【0003】
ステントには、例えば、1本の線状の金属もしくは高分子材料からなるコイル状のタイプ、金属チューブをレーザーによって切り抜いて加工したタイプ、線状の部材をレーザーによって溶接して組み立てたタイプ、または、複数の線状金属を織って作ったタイプがある。
【0004】
また、これらのステントは、そのステントをマウントしたバルーンによって拡張されるもの(バルーンエクスパンダブルタイプ)と、外部からの拡張を抑制する部材を取り除くことによって自ら拡張していくもの(セルフエクスパンダブルタイプ)とに分類される。
【0005】
例えば、セルフエクスパンダブルタイプは、一般に、管内カテーテルの先端付近に取り付けられ、その上からシース等を被せられて使用される。詳説すると、カテーテルが、患者の体管腔内の治療部位へ進められ、治療部位にてシース等が取り除かれ、これに伴って、ステントが自己拡張することで留置される。近年、尿管、胆管、または下肢動脈の形成術に対して、これらのステントが多く用いられるようになってきている。
【0006】
セルフエクスパンダブルステントが、目標とする病変部にまで搬送される場合、一般的には、そのステントはデリバリーカテーテルの中に挿入される(なお、ステントを装着したデリバリーカテーテルを、ステントデリバリーカテーテルと称する場合もあるし、デリバリーカテーテル自体をステントデリバリーカテーテルと称する場合もある)。
【0007】
このような挿入の場合には、ステントはデリバリーカテーテルのアウターチューブの内径以下に縮径(クリンピング)される。そして、このようなステントは、デリバリーカテーテルで病変部にまで搬送後、アウターチューブから乖離して病変部に配置される。
【0008】
一般的に、ステントのクリンピングには、ステントクリンピング装置が使用される。さらに、デリバリーカテーテルの先端と、ステントクリンピング装置のクリンピングヘッド(ステントを縮径する部分)とが突き合わされ、ステントがデリバリーカテーテルのルーメン内に挿入される。
【0009】
ステントのクリンピングの一例としては、特許文献1が挙げられる。そして、この特許文献1によると、ステントを弾性管に挿入してクリンピングするので、ステントは、自身の長手方向および半径方向に力を加えられることでクリンピングする。
【0010】
ステントデリバリーカテーテル(ステント送達システム)の一例としては、特許文献2が挙げられる。そして、この特許文献2によると、ステントが内側シース内へ挿入され、内側シースが外側シース内へ挿入される。このようになっていると、ステントは、展開する場合またはデリバリーカテーテルに充填される場合に、ステントに発生する摩擦を抑えられる。
【0011】
また、ステントデリバリーカテーテル(ステントを搬送するための装置)の一例としては、特許文献3も挙げられる。そして、この特許文献3によると、ステントおよびステント装着部材が、外側管状部材の近位端部に近くで、軸線方向に移動または摺動させられ、ステントがステント展開領域内で半径方向に圧縮される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[実施の形態1]
実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、断面図でなくても、ハッチングを付す場合もある。
【0031】
図3は、ステントデリバリーカテーテル69の一例を示す。ステントデリバリーカテーテル69は、ステント29を血管の病変部(狭窄部)に搬送するためのものであり、管腔内に挿入可能に細長く、かつ可撓性を有する(なお、ステントデリバリーカテーテル69から、ステント29を取り除いたものを、デリバリーカテーテルと称する場合もあるし、ステントデリバリーカテーテル69と称する場合もある)。
【0032】
ステントデリバリーカテーテル69は、ステント29と、アウターシャフト39と、インナーシャフト49とを含む(別表現すると、ステントデリバリーカテーテル69は、ステント29と、アウターシャフト39およびインナーシャフト49を有するデリバリーカテーテルとを含む)。
【0033】
ステント29は、
図4に示すように、環状の略波形構成要素[環状要素]22が一方向となる軸方向に連続することによって形成されており、略波形構成要素22は、伸長するストラット21をつなげることで形成される。
【0034】
図4に示すようなステント29では、外径ODおよび軸方向長さLDは、病変部管腔の内径および長さに合わせて、適宜選択されるものであり、治療目的とする管腔に応じて異なる。例えば、浅大腿動脈用のステント29では、外径ODは、6.0mm以上10.0mm以下程度、軸方向長さLDは、30mm以上200mm以下程度に設定される。
【0035】
なお、このステント29は、例えば、ニッケルチタン合金のパイプにレーザーカットを施したものを、拡径して熱処理して形成される(なお、拡径状態のステント29の外径を、第1の外径と称する)。
【0036】
アウターシャフト39は、ステント29を縮径状態にして収容するアウターチューブ31を含む(なお、ステント29を収容しているアウターチューブ31の一部分を、ステント保持部と称することもある)。なお、ステント29は、血管の狭窄部を拡張させて治療するセルフエクスパンダブルステントであり、アウターチューブ31のルーメン32による規制が解除されると、ステント29の内径は、アウターチューブ31の外径以上に拡径し、その拡張後の外径が確定される。
【0037】
また、アウターチューブ31は、挿入する管腔(血管等)に追従する程度の柔軟性、耐キンク性、および、ステントデリバリーカテーテル69を手技中に引っ張った場合に伸びない程度の引っ張り強度を有する部材で形成される。
【0038】
また、アウターチューブ31が移動させられる場合に、アウターチューブ31の内側の層は、層の内周面に接触しているステント29との移動抵抗(摺動抵抗)を減少させ、アウターチューブ31の移動操作を、容易に行えるような滑性を有する。
【0039】
以上のような特性を満たす観点から、アウターチューブ31は、外層(外層管)31Tおよび内層(内層管)31Nが樹脂材料で形成されており、外層31Tと内層31Nとの間に、金属素線の層(補強層)31Mを埋め込んだ、3層の樹脂−金属複合チューブで形成されていると好ましい。
【0040】
外層31Tは、補強層31Mを被う層であり、例えば、50〜120μm程度の厚みを有する。そして、外層31Tの材料としては、例えば、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等の各種エラストマー、またはこれらのうちの2以上を組み合わせたものが挙げられる。
【0041】
なお、ポリアミドエラストマーとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン64、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、N−アルコキシメチル変性ナイロン、ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸縮重合体、もしくはメタキシロイルジアミン−アジピン酸縮重合体のような各種脂肪族、または、芳香族ポリアミドをハードセグメントとし、ポリエステル、ポリエーテル等のポリマーをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられる。
【0042】
また、その他には、上述のポリアミドと柔軟性に富む樹脂とのポリマーアロイ(ポリマーブレンド、グラフト重合、またはランダム重合等)、または、上述のポリアミドを可塑剤等で軟質化したもの、さらには、これらの混合物をも含む概念が、ポリアミドエラストマーである。
【0043】
また、ポリエステルエラストマーとは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステルと、ポリエーテルまたはポリエステルとのブロック共重合体が代表的であり、その他、これらのポリマーアロイや飽和ポリエステルを可塑剤等で軟質化したもの、さらには、これらの混合物をも含む概念である。
【0044】
なお、加工性および柔軟性の観点から、優れたポリアミドエラストマーの一例としては、ARKEMA社製のPebaxまたはRilsanが挙げられる。
【0045】
補強層31Mは、外層31Tに被われた層であり、合成樹脂素線および金属素線の少なくとも一方を含んで形成される層である(要は、補強層31Mは、合成樹脂素線のみで形成されてもよいし、金属素線のみで形成されてもよいし、合成樹脂素線と金属素線とで形成されてもよい)。
【0046】
なお、合成樹脂素線または金属素線は、素線単独で形成されてもよいし、集合体の素線(例えば、線を撚ったものや束ねたもの)で形成されてもよい。
【0047】
また、金属素線は、編組構造およびコイル構造の少なくとも一方の構造で形成されており、アウターチューブ31の長手において、一方の端から他方の端までで形成されていると好ましい(なお、術者の手元に近い側を近位端、近位端に対して反対側を遠位端と称する)。
【0048】
なお、合成樹脂素線の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリオキシメチレン、高張力ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−酢酸ビニルケン化物、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ケブラーに代表される芳香族ポリアラミド等、これらのうちのいずれかを含むポリマーアロイ、カーボンファイバー、または、グラスファイバーが挙げられる。
【0049】
また、金属素線の材料としては、ステンレス、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ピアノ線、Co−Cr合金、Ni−Ti合金、Ni−Ti−Co合金、Ni−Al合金、Cu−Zn合金、Cu−Zn−X合金(例えば、X=Be、Si、Sn、Al、Ga)のような超弾性合金、または、アモルファス合金等の各種金属素線が挙げられる。
【0050】
なお、これらの材料のうち、加工性、経済性、または毒性がないこと等の理由から、ステンレスの使用が好ましい。また、金属素線は、耐キンク性または耐伸び性の観点から、平角線であると好ましく、例えば、厚みは10〜40μm、幅は80〜120μm程度に設定されと好ましい。
【0051】
内層31Nは、補強層31Mに被われた層であり、例えば、10〜50μm程度の厚みを有する。そして、内層(内層管)31Nの材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド等の樹脂、または、それらのうちの混合物が挙げられる。
【0052】
なお、内層31Nが面することになるアウターチューブ31のルーメンを通るステント29に対し、優れた滑性を有する観点からは、ポリテトラフルオロエチレンまたはテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体で、内層31Nが形成されると好ましい。
【0053】
インナーシャフト49は、インナーチューブ(内側管状部材)41、プッシャーマーカー43、およびコアワイヤー45を含む。
【0054】
インナーチューブ41は、中空(ルーメン)を有するチューブであり、アウターシャフト39のアウターチューブ31のルーメン32内に、少なくとも一部が挿入される。そして、インナーチューブ41に形成されたルーメンには、不図示のガイドワイヤーが挿入され、アウターシャフト39を病変部にまで導く。
【0055】
なお、インナーチューブ41は、挿入される管腔に追従する程度の柔軟性、耐キンク性、およびカテーテルを手技中に引っ張った場合に伸びない程度の引っ張り強度を有する。
【0056】
例えば、ポロイミド、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド等の樹脂、または、それらのうちの混合物が、インナーチューブ41の材料として挙げられる。なお、滑性および引っ張り強度の観点からは、ポリイミドでインナーチューブ41が形成されることが好ましい。
【0057】
プッシャーマーカー43は、インナーチューブ41の周囲に装着(接着または溶着)されつつ、アウターチューブ31のルーメン32に収まり、インナーチューブ41の移動に応じて、ステント29をアウターチューブ31から押し出す。
【0058】
そのため、プッシャーマーカー43の位置は、インナーチューブ41の先端から、ステント2の軸方向長さ(全長)の距離以上であると好ましい(プッシャーマーカー43の寸法は、適宜設定されるが、例えば、厚みが100〜200μm程度、全長が1.0〜3.0mm程度に設定されると好ましい)。
【0059】
プッシャーマーカー43の材料としては、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金、タングステン、タンタル、金、白金、イリジウム、パラジウムから成る群から選択される1以上の材料が挙げられる。なお、例えば、強度、加工性、または経済性の理由からみると、ステンレス鋼が、プッシャーマーカー43の材料として好ましい。
【0060】
また、プッシャーマーカー43がX線不透過性の材料で形成されると、X線透視下にて、体内管腔内の病変部まで、ステントデリバリーカテーテル69の先端が視認されつつ進められる。その上、ステント29が配置される場合、ステント29とデリバリーカテーテル(ステントデリバリーカテーテル69からステント29を除いたもの)との位置関係も確認される。そのため、このステントデリバリーカテーテル69は、より安全で効率的にステント29を搬送、放出させられる。
【0061】
コアワイヤー45は、インナーチューブ41に平行に並びつつ、つながり、さらに、プッシャーマーカー43につなげられる。詳説すると、コアワイヤー45における側面の一部が、インナーチューブ41につながり、コアワイヤー45における端部が、近位端側に向いたプッシャーマーカー43の一面につながる(要は、コアワイヤー45は、インナーチューブ41およびプッシャーマーカー43に対して、部分的に、接着または溶着される)。
【0062】
このようになっていると、インナーチューブ41およびコアワイヤー45につなげられた操作部51を介した術者の力が、損失することなく、インナーチューブ41およびコアワイヤー45(すなわちインナーシャフト49)に伝わる。そのため、このインナーシャフト49を搭載するステントデリバリーカテーテル69は、より安全で効率的に、ステント29を配置させられる。
【0063】
また、コアワイヤー45の材料としては、ステンレス鋼またはニッケルチタン合金等の材料が挙げられる。なお、強度、加工性、または経済性の理由からみると、ステンレス鋼が、コアワイヤー45の材料として好ましい。
【0064】
また、コアワイヤー45の寸法は、適宜設定されるが、例えば、外径が0.20〜0.60mm程度に設定されると好ましい。また、コアワイヤー45とインナーチューブ41とは、樹脂または金属管によって一体化されても構わない。
【0065】
ここで、ステント29のクリンピング(縮径)と、縮径されたステント29のデリバリーカテーテルへの装着について、
図1A〜
図1Hを用いて説明する。
【0066】
図1Aは、ステントクリンピング装置[縮径装置]におけるクリンピングヘッド71を示す断面図である。クリンピングヘッド71は、
図1Bに示すように、ステント29を収容するとともに、ステント29の外側を押さえつける機構を有する(なお、クリンピングヘッド71において、ステント29を収容し、内径を変化させる中空を、収容腔72と称する)。
【0067】
そして、ステントクリンピング装置におけるクリンピングヘッド71内に、ステント29が配置された後、
図1Cに示すように、中実状の芯棒11で形成されたマンドレル19が、ステント29の内側に挿入される。この後、
図1Dに示すように、ステント29は、内側にマンドレル19を入れた状態で、クリンピングヘッド71によって、外側を押さえつけられる(白色矢印参照)。
【0068】
なお、
図1Cに示されるマンドレル19は、拡径状態のステント29の内径よりも小さな外径を有するとともに、中実状で、比較的高硬度な材料で形成される。例えば、鉄、ステンレス、真鍮、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ピアノ線、または、超弾性合金{例えば、Co−Cr合金、Ni−Ti合金、Ni−Ti−Co合金、Ni−Al合金、Cu−Zn合金、あるいはCu−Zn−X合金(例えば、X=Be、Si、Sn、Al、Ga)}が、マンドレル19の材料として挙げられる。
【0069】
図1Dに示すように、クリンピングヘッド71によって、ステント29の外側(表面)が押さえつけられる場合、高硬度のマンドレル19がステント29の内側を支えていると、ステント29の内径は、マンドレル19の外径と同程度にまで縮径する(なお、縮径されたステント29の外径を、第2の外径と称し、縮径前のステント29の外径を、第1の外径と称する)。
【0070】
つまり、縮径されたステント29を製造するためには、ステント29を外側から押さえることで、ステント29を縮径させるステントクリンピング装置に、ステント29を配置させる工程と、ステント29の内側に、マンドレル19(別表現すると、芯棒11)を挿入する工程と、ステント29を、拡径状態の第1の外径から、縮径状態の第2の外径にまで縮径させる工程と、が含まれる。
【0071】
そして、このような工程を経ると、ステント29の表面はクリンピングヘッド71に接し、ステント29の内面はマンドレル19の表面に接することから、ステント29の形成するストラット21は、クリンピングヘッド71とマンドレル19とによって挟まれることになる。したがって、ストラット21がささくれ立って、ステント29の内側および外側にとびでない(均一に縮径されたステント29が完成する)。
【0072】
この後、
図1E(白色矢印参照)に示すように、縮径したステント29から、マンドレル19が引き抜かれる(要は、第2の外径に縮径されたステント29から、マンドレル19を引き抜く工程が存在する)。なお、縮径されたステント29では、ストラット21がささくれ立たないので、マンドレル19は、ステント29から容易に引き抜かれる。
【0073】
次に、
図1Fに示すように、縮径状態のステント29を保持したクリンピングヘッド71の収容腔72と、デリバリーカテーテルのルーメン32とが、例えば、同軸状に合わされる(なお、クリンピングヘッド71の収容腔72の内径は、アウターチューブ31のルーメン32の内径よりも小さい)。詳説すると、収容腔72における両方の口の一方と、アウターチューブ31におけるルーメン32の口(遠位端側の口)とがつきあわされる。
【0074】
その後、
図1Gに示すように、クリンピングヘッド71の収容腔72における両方の口の他方(アウターチューブ31に接触しない口)から、中空状の棒材12が、収容腔72に挿入される。この棒材12の外径は、縮径したステント29の内径よりも大きい一方で、縮径したステント29の外径よりも小さい(その上、この棒材12の内径は、アウターチューブ31のルーメン32内に位置するインナーチューブ41に干渉しないように設計されている)。
【0075】
そのため、この棒材12は、クリンピングヘッド71の収容腔72に収まるだけでなく、その収容腔72に沿って、アウターチューブ31に近づいていくと、ステント29の両端における一方の周縁に接触する。すると、
図1Hに示すように、棒材12がアウターチューブ31に向かって進行していくと、その棒材12は、縮径されたステント29を押し、デリバリーカテーテルに移動させる(詳説すると、ステント29は、アウターチューブ31のルーメン32に到達する)。
【0076】
なお、均一に縮径されたステント29では、ストラット21の重なりが防止されるので、ステント29の軸方向に、術者の力が伝わりやすくなる。そのためステント29は座屈することなく、容易に、デリバリーカテーテルのルーメン32に挿入される。
【0077】
また、棒材12の材料は、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス、真鍮、銅、タングステン、ニッケル、チタン、ピアノ線、または、超弾性合金{例えば、Co−Cr合金、Ni−Ti合金、Ni−Ti−Co合金、Ni−Al合金、Cu−Zn合金、あるいはCu−Zn−X合金(例えば、X=Be、Si、Sn、Al、Ga)}で形成される。
【0078】
また、
図1Eに示されるような、芯棒11で形成されたマンドレル19は、必ず引き抜かれるとは限らない。例えば、芯棒11がステント29に差し込まれたままの状態において、芯棒11の外径よりも大きく、かつ縮径されたステント29の内径よりも大きな内径を有する中空状の別の棒材(要は、芯棒11を、内部に通じさせるような別の中空状の棒部材)で、縮径されたステント29を押し、デリバリーカテーテルに移動させられてもよい。
【0079】
ただし、このような工程では、芯棒11は、インナーチューブ41に接触(干渉)しないように配置されなくてはならない。
【0080】
ところで、
図1C〜
図1Eでは、中実状の芯棒11で形成されたマンドレル19が利用された。しかし、これに限定されるわけではない。例えば、中空の芯棒11で形成されたマンドレル19であっても構わない。
【0081】
また、マンドレル19が、芯棒11と棒材とを含むタイプで、ステント29の内側に挿入される芯棒11の端に、棒材をつなげていても構わない。
【0082】
このようなマンドレル19を用いた、ステント29のクリンピング、および、縮径ステント29のデリバリーカテーテルへの装着について、
図2A〜
図2Gを用いて説明する。
【0083】
図2Aおよび
図2Bは、
図1Aおよび
図1B同様に、クリンピングヘッド71およびステント29を収容したクリンピングヘッド71を示す。
【0084】
そして、
図2Cに示すように、中空状の芯棒11の端に、中空状の棒材12の端をつなげたマンドレル19が、ステント29の内側に挿入される。詳説すると、芯棒11が、クリンピングヘッド71の収容腔72に挿入されるとともに、ステント29の内側に挿入され、棒材12は、収容腔72およびステント29の内側には挿入されない。
【0085】
なお、マンドレル19における中空状の棒材12は、芯棒11よりも大外径を有し、ステント29の内側に挿入される芯棒11の端に、つなげられる(一連状になるように、芯棒11と棒材12とはつなげられ、芯棒11と棒材12とは、同軸上に配置されていると好ましい)。また、この棒材12の外径は、縮径したステント29の内径よりも大きい一方で、縮径したステント29の外径よりも小さい。
【0086】
この後、
図2D(白色矢印参照)に示すように、ステント29は、内側に芯棒11を入れた状態で、クリンピングヘッド71によって、外側を押さえつけられる。
【0087】
つまり、縮径されたステント29を製造するためには、ステント29を外側から押さえることで、ステント29を縮径させるステントクリンピング装置に、ステント29を配置させる工程と、ステント29の内側に、マンドレル19の芯棒11を挿入する工程と、ステント29を、拡径状態の第1の外径から、縮径状態の第2の外径にまで縮径させる工程と、が含まれる。
【0088】
次に、
図1F同様に、縮径状態のステント29を保持したクリンピングヘッド71の収容腔72と、デリバリーカテーテルのルーメン32とが、例えば、同軸状に合わされる(
図2E参照)。
【0089】
その後、
図2Fに示すように、マンドレル19における棒材12が、収容腔72に沿って、アウターチューブ31に近づけられる。すると、芯棒11との繋ぎ目付近の棒材12の周縁が、ステント29の両端における一方の周縁に接触する。すると、
図2Gに示すように、棒材12がアウターチューブ31に向かって進行していくと、その棒材12は、縮径されたステント29を押し、デリバリーカテーテルに移動させる。
【0090】
ところで、
図3に示したステントデリバリーカテーテル69は、高速交換(RX)型といわれるタイプである。しかし、これに限らず、オーバー・ザ・ワイヤー(OTW)型のステントデリバリーカテーテル69もある。OTW型のステントデリバリーカテーテル69は、RX型のステントデリバリーカテーテル69(
図3参照)と違って、
図5に示すように、インナーチューブが取り外されている 。
【0091】
そして、このようなOTW型のデリバリーカテーテルに対して、ステント29が装着される場合、
図1A〜
図1Eに示したような工程が行われてもよい。
【0092】
すなわち、ステント29のクリンピングにおいて、棒材12を含まず、芯棒11で形成されたマンドレル19が使用される場合、ステント29を外側から押さえることで、ステント29を縮径させるステントクリンピング装置に、ステント29を配置させる工程と、ステント29の内側に、マンドレル19(別表現すると、芯棒11)を挿入する工程と、ステント29を、拡径状態の第1の外径から、縮径状態の第2の外径にまで縮径させる工程と、が行われる(なお、マンドレル19における芯棒11は、中実状であっても、中空状であっても構わない)。
【0093】
そして、縮径されたステント29は、
図6Aに示すように、縮径状態のステント29を保持したクリンピングヘッド71の収容腔72と、デリバリーカテーテルのルーメン32とが、例えば、同軸状に合わされ、収容腔72における両方の口の一方と、アウターチューブ31におけるルーメン32の口(遠位端側の口)とがつきあわされる。
【0094】
その後、
図6Bに示すように、クリンピングヘッド71の収容腔72における両方の口の他方(アウターチューブ31に接触しない口)から、中実状の棒材12が、収容腔72に挿入される。この棒材12の外径は、縮径したステント29の内径よりも大きい一方で、縮径したステント29の外径よりも小さい(すなわち、
図1Gに示される中空状の棒材12と違って、
図6Bに示される棒材12は、中実状であっても構わない)。
【0095】
そのため、この棒材12は、クリンピングヘッド71の収容腔72に収まるだけでなく、その収容腔72に沿って、アウターチューブ31に近づいていくと、ステント29の両端における一方の周縁に接触する。すると、
図6Cに示すように、棒材12がアウターチューブ31に向かって進行していくと、その棒材12は、縮径されたステント29を押し、デリバリーカテーテルに移動させる。
【0096】
また、ステント29のクリンピングにおいて、芯棒11と棒材12とを含むマンドレル19が使用される場合、
図7A〜
図7Dに示したような工程が行われてもよい。
【0097】
すなわち、ステント29を外側から押さえることで、ステント29を縮径させるステントクリンピング装置に、ステント29を配置させる工程(
図7A・
図7B参照)と、ステント29の内側に、マンドレル19における中実状の芯棒11を挿入する工程(
図7C参照)と、ステント29を、拡径状態の第1の外径から、縮径状態の第2の外径にまで縮径させる工程(
図7D参照)と、が行われる(すなわち、
図2C・
図2Dに示される中空状の芯棒11と違って、
図7C・
図7Dに示される芯棒11は、中実状であっても構わない)。
【0098】
その後、
図7Eに示すように、縮径状態のステント29を保持したクリンピングヘッド71の収容腔72と、デリバリーカテーテルのルーメン32とが、例えば、同軸状に合わされる。
【0099】
そして、
図7Fに示すように、マンドレル19における中実状の棒材12が、収容腔72に沿って、アウターチューブ31に近づけられる。すると、芯棒11との繋ぎ目付近の棒材12の周縁が、ステント29の両端における一方の周縁に接触する。すると、
図7Gに示すように、棒材12がアウターチューブ31に向かって進行していくと、その棒材12は、縮径されたステント29を押し、デリバリーカテーテルに移動させる(すなわち、
図2F・
図2Gに示される中空状の棒材12と違って、
図7F・
図7Gに示される棒材12は、中実状であっても構わない)。
【0100】
なお、以上では、ステント29は、外径を第1の外径から第2の外径までに縮径されていたが、これに限定されるものではない。
【0101】
例えば、ステント29は、外径を第1の外径から第2の外径までに縮径されるまで間に、外径を第3の外径まで縮径させられる工程を、少なくとも一回含んでもよい。段階的に、ステント29が縮径される場合、ストラット21の形状が一律になりやすく、ひいては均一にステント29が縮径されるためである。
【0102】
なお、ステント29における第3の外径は、第1の外径の50%以下であり、縮径の速度は0.5m/S以上10.0m/S以下の範囲の中から選ばれると好ましい。
【0103】
また、第2の外径にまで縮径されたステント29が、縮径状態を維持されながら、棒材12によって、デリバリーカテーテルに移動させられる場合に、ステント29が液体窒素等で冷却させられてもよい。ステント29は、冷却されると、第2の外径から拡径しにくくなるためである。
【実施例】
【0104】
ここで、上述してきたステントデリバリーカテーテル69の一例の数値実施例を挙げるととともに、比較例も挙げ、それらを比較評価した。もちろん、この例に限定されるものではないことは、いうまでもない。
【0105】
[実施例1]
ステント29は、セルフエクスパンダブルタイプである。このステント29は、外径3.0mmのニッケルチタン合金のパイプをレーザーカットすることで形成され、外径8.0mm[第1の外径]にまで拡張させられ、さらに熱処理を施されている。
【0106】
そして、このステント29に対して、外径1.24mmの円柱形のマンドレル19(諸説すると芯棒11)が、ステント29の軸方向に沿って挿入する。その後、クリンピングヘッド71が、縮径速度1.0m/sで、ステント29の外径を4.0mmにまで縮径させて、第3の外径とする。さらに、クリンピングヘッド71は、縮径速度1.0m/sで、ステント29の外径を、第3の外径から1.72mmまで縮径させて、第2の外径とする。
【0107】
そして、ステント29は、第2の外径にクリンピングされた状態を維持されつつ、マンドレル19がステント29から抜去される。その後、クリンピングヘッド71の端とステント29の端とが、デリバリーカテーテルにおけるアウターチューブ31のルーメン32の開口に突き合わされ、外径1.68mmの中実状(円柱形)の棒材12で、ステント29は押し出され、アウターチューブ31のルーメン32に挿入される。
【0108】
なお、ステントデリバリーカテーテル69は、オーバー・ザ・ワイヤー型である(例えば、RX型のステントデリバリーカテーテル69から、ポリイミドで形成された厚み20μm、内径0.53mmのインナーチューブ41が除外されている)。
【0109】
また、プッシャーマーカー43は、厚み180μm、内径1.25mmの、SUS304製の円筒状チューブである。なお、プッシャーマーカー43は、コアワイヤー45の先端に、接着剤で接着され、アウターチューブ31の先端から50mm付近に配置される。
【0110】
コアワイヤー45は、SUS304製で、外径0.45mmのワイヤーである。なお、コアワイヤー45は、ショアD硬度55のPebax5533で形成されたチューブ(厚み175μm、内径1.25mmのチューブ)で被覆されている。
【0111】
操作部51は、ステンレス鋼で形成される。
【0112】
アウターチューブ31では、外層(外層管)31Tは、ショアD硬度70のPebax7033 SA01(ARKEMA社)と、Rilsan−AESN(ARKEMA社)とを、3:1でブレンドした材料で形成された。なお、アウターチューブ31は、厚み125μm、内径1.75mmのチューブである。
【0113】
また、内層(内層管)31Nは、ポリテトラフルオロエチレンで形成された、厚み40μm、内径1.78mmのチューブであり、その内層31Nの上には、厚み25μm、幅100μmのSUS304製の素線を16本の素線を用いて編組した補強層31Mが被っている。
【0114】
[比較例1]
ステントは、実施例1同様、セルフエクスパンダブルタイプである。このステントは、外径3.0mmのニッケルチタン合金のパイプをレーザーカットすることで形成され、外径8.0mmにまで拡張させられ、さらに熱処理を施されている。
【0115】
そして、このステントに対して、クリンピングヘッドが、縮径速度1.0m/sで、ステントの外径を4.0mmにまで縮径させて、第3の外径とする。さらに、クリンピングヘッドは、縮径速度1.0m/sで、ステントの外径を、第3の外径から1.72mmまで縮径させて、第2の外径とする。
【0116】
そして、クリンピングヘッドの端とステントの端とが、デリバリーカテーテルにおけるアウターチューブのルーメンの開口に突き合わされ、外径1.68mmの中実状の棒材で、ステントは押し出され、アウターチューブのルーメンに挿入される。
【0117】
なお、ステントデリバリーカテーテルは、実施例1同様のオーバー・ザ・ワイヤー型である。
【0118】
[評価]
実施例1と比較例1とに関して、カテーテルへの挿入可否に関する評価を実施した。詳説すると、ステントは、自己拡張型ステントクリンピング装置 SC900(Machine Solutions Inc製)によってクリンピングされる。この縮径されたステントのデリバリーカテーテルへの挿入可否について評価した。評価は、各例(実施例1および比較例1)において、サンプル数を5本とした。
【0119】
[評価結果]
評価結果は、以下の通りである。すなわち、比較例1では、全てのサンプルにおいて、クリンピングを行ったステントをデリバリーカテーテルに挿入することができなかった。しかしながら、実施例1では、全てのサンプルにおいて、クリンピングを行ったステントをデリバリーカテーテルに挿入することができた。
【0120】
デリバリーカテーテルへの挿入成功率[%]
実施例1 100%(5本/5本)
比較例1 0%(0本/5本)