特許第5657948号(P5657948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5657948
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】真空処理装置及び基板移載方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/56 20060101AFI20141225BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   C23C14/56 G
   H01L21/68 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-178994(P2010-178994)
(22)【出願日】2010年8月9日
(65)【公開番号】特開2011-74487(P2011-74487A)
(43)【公開日】2011年4月14日
【審査請求日】2013年5月29日
(31)【優先権主張番号】特願2009-202184(P2009-202184)
(32)【優先日】2009年9月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227294
【氏名又は名称】キヤノンアネルバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】曽根 浩
(72)【発明者】
【氏名】東坂 隆嗣
(72)【発明者】
【氏名】吉林 和俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 辰憲
(72)【発明者】
【氏名】高橋 達宏
【審査官】 伊藤 光貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−210695(JP,A)
【文献】 特開平05−033127(JP,A)
【文献】 特開平09−285982(JP,A)
【文献】 特表2002−504744(JP,A)
【文献】 特表2000−503478(JP,A)
【文献】 特開2002−288888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空処理が行われるプロセスチャンバと、
前記プロセスチャンバに連結され、複数の基板を重力方向に対して基板面の法線が交差する垂直姿勢で収納する基板収納部が内部に設けられた基板移載チャンバと、
前記プロセスチャンバ及び前記基板移載チャンバの内部を貫通して設けられた基板搬送路と、
少なくとも2枚の基板を前記垂直姿勢で搭載した状態で、前記基板搬送路に沿って搬送される複数のキャリアと、
前記基板移載チャンバ内の前記基板搬送路の所定位置に設定された基板移載位置に停止した状態の前記キャリアに対して、前記基板収納部に収納された基板を移載する基板移載ロボットと、を備えた真空処理装置であって、
前記基板移載ロボットは、
駆動軸と、
該駆動軸に連結された第一アームと、
該第一アームに回動可能に連結された第二アームと、
該第二アームに回動可能に配設されたエンドエフェクターと、を備え、
前記エンドエフェクターは、少なくとも2枚の基板を一方向に向けて保持する保持部を2つ以上有してなる第一保持群と、少なくとも2枚の基板を逆方向に向けて保持する保持部を2つ以上有してなる第二保持群とを備え、
前記第一保持群および前記第二保持群はいずれも、基板に形成されたセンタ穴に差し込まれた状態で、前記垂直姿勢で基板を保持するものであり、
前記基板移載位置に停止した状態の前記キャリアに前記第一保持群の保持部が対向したときに、前記第二保持群の保持部は前記基板収納部に収容された基板のセンタ穴に向くように設けられていることを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
前記第一保持群および前記第二保持群はいずれも、2枚の基板を同時に保持可能な保持部を2つ有して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の真空処理装置。
【請求項3】
前記基板移載ロボットは、前記エンドエフェクターの重力方向の位置を下降位置と上昇位置の2段階で制御する上下動手段をさらに備え
前記上下動手段は、前記第一保持群の各保持部に保持した基板のうち1枚ずつを、前記基板移載位置に停止させた前記キャリアに移載するよう前記エンドエフェクターの重力方向の位置を制御し、
前記上下動手段は、前記第二保持群の各保持部に前記基板収納部から2枚ずつの基板を保持するよう前記エンドエフェクターの重力方向の位置を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2項に記載の真空処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の真空処理装置を用いた基板移載方法であって、
予め基板が収納された前記基板収納部から、前記第一保持群の前記保持部に2枚ずつの基板を保持する第一ステップと、
前記基板移載位置に停止させた前記キャリアに、前記第一保持群の前記保持部に保持した基板が対向するように前記エンドエフェクターを回転する第二ステップと、
前記第一保持群の各前記保持部に保持した基板のうち1枚ずつを、前記基板移載位置に停止させた前記キャリアに移載する第三ステップと、
前記第二保持群の各前記保持部に前記基板収納部から2枚ずつの基板を保持する第四ステップと、
基板を移載した前記キャリアを、真空処理を行うプロセスチャンバに向けて搬送するとともに、基板を搭載していない第2のキャリアを前記基板移載位置に停止させる第五ステップと、
前記第2のキャリアに、前記第一保持群の前記保持部に保持した基板のうち残りの1枚ずつを移載させた後に、前記第一保持群の前記保持部が前記基板収納部に対向するように前記エンドエフェクターを回転する第六ステップと、
を有することを特徴とする基板移載方法。
【請求項5】
前記第四ステップと前記第五ステップは、並行して行うことを特徴とする請求項4に記載の基板移載方法。
【請求項6】
前記基板収納部が基板を奇数列に分けて収納するものであるとき、前記基板収納部から基板を保持する前記第一ステップ及び前記第四ステップを行う動作のうち、任意の1動作だけが奇数枚の基板を各前記保持部に保持するものであることを特徴とする請求項5に記載の基板移載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の移載に用いられるロボットを備えた真空処理装置及び基板移載方法に関し、特に、センタ孔を有する磁気ディスクや光ディスクのような記録媒体を成膜するインライン式成膜装置などにおいて基板の移載に用いられるロボットを備えた真空処理装置及びロボットを用いた基板移載方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、成膜処理前の基板を基板収納部から取り出してキャリアに搭載し、または、所定の成膜処理が終了した基板をキャリアから取り外して基板収納部へ格納する作業にロボットが用いられている。
【0003】
このようなロボットとして、スカラタイプのロボットが用いられることが多い。例えば、駆動部本体と駆動ベルトを介して駆動制御される第一アーム、第二アームを備えるロボットであり、第二アーム先端にはアダプターを有するロボットである。このアダプターには、基板を保持できる様々な形状のエンドエフェクターが設けられ、基板の移載ができるように構成されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1に記載されたロボットのエンドエフェクターは、2枚の基板を同時に搬送し、2枚の基板を搭載できるキャリアへ順次基板を搭載することができる。また、特許文献2に記載されたロボットのエンドエフェクターは、弓形のエンドエフェクターを用いることで、基板を同時に2枚搬送するとともに、これらの基板を同時にキャリアへ搭載する動作を可能とすることでスループットの向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−274142号公報
【特許文献2】特開2001−210695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に開示されたロボットにおいても、一定速度以上に動作速度を増加させると基板の保持が不安定になるという不都合がある。また、動作速度の高速化に伴いメンテナンス間隔を短くせざるを得ないという不都合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、基板移載用のロボットの動作速度の増加を抑えつつ、基板のキャリアへの搭載速度、若しくはキャリアからの回収速度を向上し、高スループット化に寄与する真空処理装置及び基板移載方法を提供することにある。
【0008】
本発明に係る真空処理装置は、真空処理が行われるプロセスチャンバと、
前記プロセスチャンバに連結され、複数の基板を重力方向に対して基板面の法線が交差する垂直姿勢で収納する基板収納部が内部に設けられた基板移載チャンバと、
前記プロセスチャンバ及び前記基板移載チャンバの内部を貫通して設けられた基板搬送路と、
少なくとも2枚の基板を前記垂直姿勢で搭載した状態で、前記基板搬送路に沿って搬送される複数のキャリアと、
前記基板移載チャンバ内の前記基板搬送路の所定位置に設定された基板移載位置に停止した状態の前記キャリアに対して、前記基板収納部に収納された基板を移載する基板移載ロボットと、を備えた真空処理装置であって、
前記基板移載ロボットは、
駆動軸と、
該駆動軸に連結された第一アームと、
該第一アームに回動可能に連結された第二アームと、
該第二アームに回動可能に配設されたエンドエフェクターと、を備え、
前記エンドエフェクターは、少なくとも2枚の基板を一方向に向けて保持する保持部を2つ以上有してなる第一保持群と、少なくとも2枚の基板を逆方向に向けて保持する保持部を2つ以上有してなる第二保持群とを備え、
前記第一保持群および前記第二保持群はいずれも、基板に形成されたセンタ穴に差し込まれた状態で、前記垂直姿勢で基板を保持するものであり、
前記基板移載位置に停止した状態の前記キャリアに前記第一保持群の保持部が対向したときに、前記第二保持群の保持部は前記基板収納部に収容された基板のセンタ穴に向くように設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る基板移載方法は、上記の真空処理装置を用いた基板移載方法であって、
予め基板が収納された前記基板収納部から、前記第一保持群の前記保持部に2枚ずつの基板を保持する第一ステップと、
前記基板移載位置に停止させた前記キャリアに、前記第一保持群の前記保持部に保持した基板が対向するように前記エンドエフェクターを回転する第二ステップと、
前記第一保持群の各前記保持部に保持した基板のうち1枚ずつを、前記基板移載位置に停止させた前記キャリアに移載する第三ステップと、
前記第二保持群の各前記保持部に前記基板収納部から2枚ずつの基板を保持する第四ステップと、
基板を移載した前記キャリアを、真空処理を行うプロセスチャンバに向けて搬送するとともに、基板を搭載していない第2のキャリアを前記基板移載位置に停止させる第五ステップと、
前記第2のキャリアに、前記第一保持群の前記保持部に保持した基板のうち残りの1枚ずつを移載させた後に、前記第一保持群の前記保持部が前記基板収納部に対向するように前記エンドエフェクターを回転する第六ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ロボットの速度増加を行わずに生産性を向上することが可能である。また、基板搬送時にロボットの動作回数を削減することが可能となり、産業用ロボットの長寿命化にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る真空処理装置の概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係るロードチャンバの部分平面図及び部分側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るロボットの概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係るキャリアの概略図である。
図5】本発明の一実施形態に係るロボットの動作説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係るロボットの動作説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係るロボットの他の真空処理装置への搭載例である。
図8】本発明の他の実施形態に係るエンドエフェクターの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は発明を具体化した一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0013】
図1図6は本発明の一実施形態に係る真空処理装置及び基板搬送ロボット(以下ロボットとする)について説明した図であり、図1は真空処理装置の概略図、図2はロードチャンバの平面図及び側面図、図3はロボットの概略図、図4はキャリアの概略図、図5図6はロボットの動作説明図である。なお、図面の煩雑化を防ぐため一部を除いて省略している。
【0014】
図1に示す真空処理装置Sは、インライン型のスパッタリング成膜装置であり、ロードチャンバLL、アンロードチャンバUL、成膜室(チャンバ)S1やその他の処理室などとして機能する複数のチャンバが四角形状にゲートバルブGVを介して連結されている。基板9は、基板カセット28に搭載された状態で、ロードチャンバLLに装填され、カセット間移載ロボット30によって基板収納部27に移載される。そして、基板9は、ロボット15によって後述するキャリア10に移載され、キャリア10に搭載された状態でチャンバを貫通して設けられた基板搬送路22に沿って搬送され、各チャンバで所定の処理が施される。
【0015】
本実施形態における基板9としては、磁気ディスクや光ディスクなどの記憶メディアに用いられる円盤状部材が好適に用いられるが、キャリア10に取り付けられた基板ホルダ13を交換することにより、種々の形状のガラス基板、アルミニウム若しくはアルミニウム合金などの金属基板、シリコン基板、樹脂基板などを用いることができる。なお、ロードチャンバLLとアンロードチャンバULをまとめて基板移載チャンバとする。
【0016】
本発明に係るロボット15は、スパッタリング成膜装置、電子ビームなどを使用した薄膜形成、若しくは、表面改質、ドライエッチングのような真空処理に用いる装置に幅広く適用可能なものであるが、本実施形態においてはインライン型のスパッタリング成膜装置に適用した例(真空処理装置S)について説明する。
【0017】
図2は、本発明の実施形態であるロードチャンバLLの平面図及び側面図を示す。ロボット15は、ロードチャンバLL内の基板搬送路22と基板収納部27の間の位置に設置されている。キャリア10は、基板9を搭載した状態で基板搬送路22に沿って移動する部材であり、基板9の移載動作中、ロードチャンバLL内の所定位置(基板移載位置)に停止制御される。また、ロードチャンバLL内には成膜前の基板9が別途収納されている基板収納部27が設置されている。ロードチャンバLL内に設置されたロボット15の動作によって、基板収納部27に格納された基板9をキャリア10に移載される。
【0018】
なお、アンロードチャンバULはロードチャンバLLとほぼ同様に構成されている。すなわち、処理済の基板9は、アンロードチャンバUL内に設置されたロボット15の動作によって、キャリア10に搭載された基板9が基板収納部27に格納され、そして、カセット間移載ロボット30により、基板カセット28に搭載された後、基板カセット28ごとアンロードチャンバULから取り出される。また、基板収納部27は、基板9を25枚ずつ二列に並べることができ、基板カセット28は、基板9を25枚若しくは50枚ずつ二列に並べることができる。
【0019】
キャリア10、エンドエフェクター6、基板収納部27のそれぞれは、図2に示すように、基板9の搬送路が上下、左右一致するように配置され、最短の距離並びにステップ数で基板9の移載が可能な位置関係に設置されている。
【0020】
図3は、本発明に係るエンドエフェクターを備えたロボットの概略図を示す。本実施形態に用いるロボットは、スカラタイプのロボットであり、駆動機構としてのロボット本体1に、駆動機構からの回転力を伝達する駆動ベルトを備えた第一アーム3、第一アーム3と同様の機構を有する第二アーム4が設置されて構成されている。ロボット本体1には、回転のための駆動源(駆動軸)と上下動のための駆動源(上下動手段)が内蔵されるとともに、チャンバに設置するための接続フランジ2が設けられている。第二アーム4には、エンドエフェクター6を接続するためのアダプター5が設置されている。
【0021】
ロボット本体1の駆動力は、駆動軸と第一アーム3と第二アーム4を介してエンドエフェクター6に伝達される。第一アーム3、第二アーム4の角度を制御することにより、第二アーム4に取り付けられたエンドエフェクター6の直進や回転動作を行うことができる。また、エンドエフェクター6は、ロボット本体1の上下の機構により、接続フランジ2に対して上下動可能に構成されている。具体的には、第一アーム3が上下動可能に構成され、第一アーム3に載っている第二アーム4、エンドエフェクター6などが第一アーム3に伴い上下動することができる。なお、エンドエフェクター6は第二アーム4に対して旋回運動可能に構成されている。
【0022】
エンドエフェクター6は、アダプター5と接続される支持部材6aの端部位置に基板9を保持する係止機構6bを取り付けたものである。係止機構6bは、基板9を載せるためのピック8(保持部)と、エンドエフェクター6にピック8を接続するピック接続ブロック7を主要部材として構成されている。
【0023】
具体的には、エンドエフェクター6は、略X形状に形成された支持部材6aの中心から4方向に向けて延設された部分の先端部に、それぞれピック接続ブロック7とピック8が連結されて構成されている。それぞれのピック8には同時に2枚の基板9を保持するために、溝などからなる係止部が所定間隔をおいて2つ形成されている。すなわち、エンドエフェクター6は、最大で計8枚の基板9を同時に保持することができる。また、支持部材6aに連結されたピック8のうち、2つは一方向に、残りの2つは逆方向に向けて基板9を保持可能に取り付けられている。なお、支持部材6aの形状としては逆方向に基板を向けて保持できるものであればよく、例えばH形状などあってもかまわない。また、1つのピック8に最大3枚以上の基板9を保持可能に構成してもよい。
【0024】
キャリア10の概略図を図4に示す。キャリア10は、成膜室間を移動するための機構部を有するスライダー11上に、基板9を支持するための基板支持爪14が設置された基板ホルダ13が接続されて構成されている。基板支持爪14は弾性を有する部材であり、屈曲形状の板ばねから構成されている。本実施形態において用いられるキャリア10は、2つの基板ホルダ13を備えているため、基板9を同時に2枚搭載することができる。なお、キャリア10の形状は、成膜室間を搬送する機構部に応じて変化し、また、基板9を支持するための基板支持爪14も適宜変更可能である。基板支持爪14は上側に2つ、下側に1つ設けられており、下側の基板支持爪14を押し下げることで基板の保持を開放することができる。なお、基板支持爪14の数や配置は適宜変更できることはもちろんである。
【0025】
ここで、図5及び図6に基づいて、ロボット15による基板9の移載動作について説明する。なお、図5図6に関する説明において、片側の2セットのピック8が設置されている部位をAアーム(エンドエフェクター6の一方側)、反対側2セットのピック8が設置されている部位をBアーム(エンドエフェクター6の他方側)とする。なお、Aアームに設置されたピック8群を第一ピック群(第1保持群)、Bアームに設置されたピック8群を第二ピック群(第2保持群)とする。
【0026】
図5(a)は、ロボット15が初期状態にあるロードチャンバLL内の平面図及び側面図である。このとき、エンドエフェクター6の4つのピック8には基板が保持されておらず、一方、基板収納部27には成膜前の基板9が収納され、キャリア10には未だ基板9が載っていない状態である。
【0027】
次に、図5(b)に示すように、エンドエフェクター6のAアームにて基板収納部27から4枚の基板9を2つのピック8(第一ピック群)に載せる動作を行う。エンドエフェクター6は、第一アーム3と第二アーム4の動作によって基板収納部27側に移動し、基板9のセンタ穴にピック8を差し込んだ状態で、ロボット本体1の上下動機構によりエンドエフェクター6ごと上昇させることで基板9をピック8に保持する。なお、基板収納部27には、ピック8の基板係止部の間隔に合わせて基板9が収納されているため、ピック8は同時に2枚の基板9を保持することができる。
【0028】
図5(c)は、Aアーム上のピック8(第一ピック群)に基板9を4枚載せた状態を示しており、継いで、図5(d)に示すように、エンドエフェクター6を180°旋回させて、キャリア10側へAアームを向けた状態とする。
【0029】
図5(e)では、エンドエフェクター6は、Aアームをキャリア10へ移動させて、Aアームのピック8に係止された2枚の基板9を基板移載位置に停止しているキャリア10に搭載する動作を行う。このとき、キャリア10の基板ホルダ13に設けられた下側の基板支持爪14を押し下げ、ピック8に係止された基板9を基板ホルダ13の基板保持位置に移動させる。そして、ロボット本体1の上下動機構により、キャリア10の上側の基板支持爪に接触するまでAアームのピック8に保持された2枚の基板9を上昇させ、その後に下側の基板支持爪14を元に戻す操作を行っている。こうして、基板9のキャリア10への移載をスムーズに行うことができる。
【0030】
キャリア10の上側の基板支持爪に接触させる際のエンドエフェクター6の上下方向(重力方向)の位置を上限位置、下側の基板支持爪14を押し下げられた基板ホルダ13の基板保持位置に基板9を移動する際の上下方向(重力方向)の位置を下限位置として、上下位置の制御が2段階で行われる。なお、基板9の保持動作時なされるエンドエフェクター6の上下動制御も、上限位置と下限位置との2段階で行われる。
【0031】
図5(f)では、エンドエフェクター6は、Aアームのピック8に2枚の基板9を載せた状態で待機位置へと戻る。このとき、Aアームのピック8には、2枚の基板9が係止された状態となる。なお、本実施形態においてはキャリア10に保持されるときの基板9の高さは、基板収納部27に収納されている基板9の高さと同じになるように配設されている。このため、エンドエフェクター6は基板9の保持動作時にだけ上下動すればよく、上下方向の動作を最小限とすることができる。こうして基板9のキャリア10への移載をスムーズに行うことができる。ただし、基板収納部27とキャリア10に保持される基板9の高さが異なっていてよいことはもちろんである。また、エンドエフェクター6が回転動作と上下動作を同時に可能に構成されると好ましい。
【0032】
図6(a)では、Aアームのピック8に2枚の基板9を載せた状態で、エンドエフェクター6を後退させて、基板収納部27より4枚の基板9をBアームのピック8に載せる動作を行う。具体的には、Aアームのピック8に2枚(各1枚)の基板9を載せた状態で、第一アーム3と第二アーム4の動作によってBアームを基板収納部27に移動し、基板9のセンタ穴にピック8を差し込む。そして、ロボット本体1の上下動手段により第一アーム3を上昇させ基板収納部27より4枚の基板9をBアームのピック8に載せる動作を行う。
【0033】
その後、エンドエフェクター6は、第一アーム3と第二アーム4の動作によって任意の定位置、例えば待機位置に移動する。このとき、図5(e)で基板9を移載されたキャリア10(第1のキャリア)は処理室側へと搬送されるとともに、基板9を搭載していない次のキャリア10(第2のキャリア)がロードチャンバLL内に搬送される。
【0034】
図6(b)では、Aアームのピック8(第一ピック群)に2枚の基板9、Bアームのピック8(第二ピック群)に4枚の基板9を載せた状態であり、継いで、図6(c)に示すように、Aアームをキャリア10(第2のキャリア)へ伸ばし、Aアームのピック8に載っている残りの2枚の基板9を、キャリア10(第2のキャリア)へ載せる動作を行う。
【0035】
図6(d)では、エンドエフェクター6は、Aアームのピック8は、キャリア10(第2のキャリア)に基板9が全て移載されて、基板9が載っていない状態であり、Bアームのピック8には4枚の基板9が載せられた状態である。この状態でエンドエフェクター6は待機位置へ戻される。
【0036】
図6(e)では、エンドエフェクター6を180°旋回し、キャリア10側へBアームが向いた状態となる。また、同時に、基板9を載せたキャリア10(第2のキャリア)は、成膜室へと搬送され、新たな、基板9を載せていない次のキャリア10がロードチャンバLL内へと搬送される。この後、図6(f)に示すように、エンドエフェクター6は、AアームとBアームを入れ替えた状態で、図5(e)からの動作を繰り返す。
【0037】
また、アンロードチャンバUL内のおいても、ロードチャンバLLと同様の構成とすることができる。この場合、ロボット15はロードロックLL内とは、ほぼ逆の動作を行うことになる。
【0038】
上述したX形状のエンドエフェクター6を用いたロボット15の動作では、基板収納部27からキャリア10へと基板9を運ぶ際、エンドエフェクター6の180°の旋回を繰り返すことで基板移載動作が可能となる。すなわち、従来の360°の旋回を180°にすることができるため、ロボット15の動作速度の増加を伴うことなく基板9の移載速度の向上を図ることができる。さらに、各2枚の基板9を載せることが可能なピック8を使うことで、基板収納部27から基板を載せる動作とエンドエフェクター6を回転させ基板移載動作が可能な位置に回転させる動作の2動作を異なるステップで実施することが可能となる。
【0039】
すなわち、従来、“180°回転”→“基板保持”→“180°回転”の3動作でキャリア10に基板9を一回移載していたが、本実施形態では、“基板保持”と“180°回転”の2動作毎にキャリア10に基板を一回移載することができる。具体的には、第一ピック群に保持された1枚目の基板9をキャリア10に移載した後であって、第一ピック群の2枚目の基板9を次のキャリア10(第2のキャリア)に移載する前のタイミングに、基板収納部27より基板9を逆側のピック8(第二ピック群)に保持する動作を行っている。この動作により、ロボット15の動作速度の増加を伴うことなく基板9の移載速度を大幅に向上することができる。
【0040】
ここで、基板9を同時に3枚保持できる各ピック8を用いた場合の動作については説明する。まず、エンドエフェクター6のそれぞれのピック8に同時に2枚までしか基板を保持しない場合について説明する。基板収納部27の基板9の収納枚数が奇数であった場合、最後の一列に収容された基板9に対しては各ピックが一枚だけ保持する動作が行われることになる。
【0041】
例えば、25列の基板が収納できる場合であれば、基板収納部27からの受け取り回数が12回目までは、1つのピック8に2枚の基板が受け取れる。しかし、13回目は残った1枚だけがそれぞれのピック8に受け取られることになる。この結果、12回目までは図5に示した繰り返しが可能であったが、13回目だけは、一方側のピック8に各一枚の基板9が載った状態でエンドエフェクター6を反転させる動作を行うことになる。このままでは、13回目のタイミングだけ、キャリア10への基板9の移載時間が多くかかってしまい一時的にスループットが低下する。
【0042】
次に、各ピック8は同時に3枚の基板9を保持できるように構成した場合について説明する。この場合に、25列の基板が収納できる基板収納部27を用いると、基板9を移載する動作として、基板収納部27からの受け取り回数が11回目までは、図5に示した繰り返し動作に従い、それぞれのピック8に2枚の基板9を受け取っている。そして12回目だけは、一度に3枚の基板9をそれぞれのピック8で受け取るように設定することができる。
【0043】
基板収納部27からの受け取り回数が1回分減るため、キャリア10への基板9の移載に要する時間を節約し、スループットの向上を図ることができる。なお、3枚の基板9を保持できる基板係止機構での移載方法は、上述した方法に限定されるものではなく、基板収納部27からの基板9の受け取り枚数を常にそれぞれのピック8ごとに2枚以上にしてもよい。また、同様に一度に保持できる基板9の枚数も3枚に限定するものでない。さらに本実施形態においては、基板収納部27からの受け取り回数が12回目で各ピック8に基板9を3枚受け取ることとしているが、1回目や他の回数であってもよいことはもちろんである。
【0044】
図7は、ロボットの他の真空処理装置への搭載例である。図7に示す真空処理装置Tは、図1に示した真空処理装置Sと比べて、ロードチャンバLLとアンロードチャンバULが移載チャンバLUとして一体に構成されている点に大きな違いがある。なお、図7に示した真空処理装置Tにおいて、真空処理装置Sと同様の部材、配置等には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0045】
移載チャンバLUは、真空処理装置SのロードチャンバLLとアンロードチャンバULが基板搬送路22側で内部空間が一体に連結されており、移載チャンバLU内の基板搬送路22側にはロボット15が一台だけ配置されている。移載チャンバLU内では、この一台のロボット15によって、キャリア10からの処理後の基板9の回収と、未処理の基板9の搭載とがいずれも行われる。
【0046】
ロボット15にはX型のエンドエフェクター6が搭載されており、Aアームを基板搭載用、Bアームを基板回収用として使用されている。基板収納部27を2箇所設置し、一方を未処理の基板搭載用、他方を回収された(成膜後)基板9の収納用とすることにより、ロードチャンバLLとアンロードチャンバULを1つのチャンバ(移載チャンバLU)とし、1つロボット15で基板9の搭載及び回収が可能となる。
【0047】
ロボット15の動作としては、成膜後の基板9をBアームにてキャリア10より取り出し、既に載せてあるAアーム上の成膜前の基板9をキャリア10に載せる。そして、キャリア10(第1のキャリア)の搬送を行い、次のキャリア10(第2のキャリア)が基板回収・搭載位置に移動する間に、Bアーム上の基板9を基板回収用の基板収納部27に運び、その後、未処理基板を収納した基板収納部27からAアームに成膜前の基板9を載せる。次のキャリア10に対しても同様のサイクルを行う。
【0048】
A・Bアームのピック8上の基板9を各1枚とした例を上述したが、ピック8上の基板9を各2枚とすることもできる。この場合、基板収納部27への収納及び搭載動作を各キャリア毎に行う必要がなくなる。すなわち、1つのキャリア毎に収納及び搭載のいずれかの動作を行うようにすることが可能となり、基板9の移載速度の低下を伴うことなく、ロボット15の動作量を抑えることができる。
【0049】
図8は、他の実施形態に係るエンドエフェクターの概略図である。図3に示したエンドエフェクター6を有するロボット15は、アダプター5に取り付けられたエンドエフェクターを変更することができる。変更するエンドエフェクターとしては、ピック8を2セット配設可能なエンドエフェクター16(図8(a))、ピック8を3セット配設可能なエンドエフェクター17(図8(b))、ピック8を6セット配設可能なエンドエフェクター19(図8(c))、ピック8を8セット配設可能なエンドエフェクター20(図8(d))、などが考えられる。
【0050】
エンドエフェクター16,17,19,20の各支持部材は、中心から等角度間隔に2、3、4方向に延設部が延設された形状を有している。また、エンドエフェクター16,17,19,20の各ピック8は、中心から等角度間隔に2、3、4方向に基板9の成膜面を向けて保持することができる。特に、エンドエフェクター19,20は、各方向に延設された部分の途中(延設部の先端)で分岐しており、分岐した部分よりも先端部側は分岐前の延設方向と平行に延長されている。
【0051】
エンドエフェクター16,17,19,20を備えたロボットを用いてキャリア10に、基板9を移載するときは、いずれか一方向側のピック8を使ってキャリア10に基板9を移載した後に、エンドエフェクター16,17,19,20を所定角度回転させて他の方向側のピック8に基板9を載せる動作を行うことで、エンドエフェクター6を備えたロボットとほぼ同様の基板移載方法を採用することができる。
【0052】
なお、図8に示したエンドエフェクター16,17,19,20は一例であり、この他にも上下方向にピック8を配設可能なエンドエフェクターも構成できることはもちろんである。さらに、エンドエフェクター16,17,19,20の各支持部材や各ピック8は、必ずしも等角度間隔に配置される必要はなく、所定角度ずらして配置される構成であってもよい。
【0053】
本発明に係るロボット15は、運搬用での用途に止まらず、産業用ロボットに広く応用することが可能である。例えば、溶接ロボットなどでも同様の構造を用いることができ、2ラインの間に跨り設置することによって、今まで2台の産業用ロボットを使用していたものを1台にすることが可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8