(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、ギヤボックスを使用した動作機構においてはバックラッシ(ガタ)が発生する。そのため、機能上高い位置決め精度が必要とされる機構においては、バックラッシの影響を考慮した機構及び制御が必要とされる。
【0003】
このため、ソフトウェア制御によりバックラッシを測定して位置補正値を算出し、その補正値を位置制御にフィードバックさせることでバックラッシを除去する方法が知られている。
【0004】
こうしたソフトウェア制御による位置補正として、ステッピングモータを用いてギヤボックスの駆動を行う場合の位置補正方法について、
図8を参照して説明する。
【0005】
ステッピングモータは、印加されたパルス数に応じて回転する。このため、モータによる回転駆動としては、正確な位置制御を行うことができるものである。
【0006】
ソフトウェア制御による位置補正動作では、まず、ギヤボックスによる移動対象を原点位置に移動させ、その位置で原点リセットを行う(ステップS1)。こうしてリセットした原点位置から+方向に25パルス移動させ(ステップS2)、そこから原点まで戻るためのパルス数“A”を測定する(ステップS3)。また、原点位置から−方向に25パルス移動させ(ステップS4)、そこから原点まで戻るためのパルス数“B”を測定する(ステップS5)。
【0007】
こうして得た測定値“A”、“B”を用いて、+方向と−方向のそれぞれについて測定値と理論値(送りパルス)の差を算出し、その平均値をバックラッシ(XB)とする。式として表すと以下のようになる。
XB_A=|パルス“A”|−25パルス
XB_B=|パルス“B”|−25パルス
バックラッシ(XB)=(XB_A+XB_B)/2
【0008】
また、こうしたソフトウェア制御による位置補正で、駆動機構におけるバックラッシュの補正を行うパンチルトカメラが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係るギヤ駆動機構およびライブラリ装置を適用した一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
まず、本実施形態の概略について説明する。
本実施形態のライブラリ装置は、磁気テープを収容する磁気テープカートリッジ(以下、カートリッジ)を、取り外し可能なカートリッジ収納棚(以下、マガジン)内に複数格納でき、磁気テープドライブ(以下、ドライブ)が着脱可能となっている。また、マガジン、ドライブの相互間でカートリッジを移動させるアクセッサ機構を備える。
【0018】
本実施形態では、このアクセッサの位置制御を行うための原点の位置決めの際に、アクセッサの自重による慣性力等で位置ズレを起こさないよう、アクセッサにバイアス機構を付設し、センシング時にバイアス機構が働くようにする。このことにより、原点の位置決めの際にバックラッシを実質“ゼロ”にすることができ、原点リセット位置を安定化させることができる。
【0019】
次に、本実施形態のライブラリ装置の筐体構造について、
図1、
図2を参照して説明する。
図1、
図2は、本実施形態のライブラリ装置にドライブや電源等の部品を取り付ける前の筐体構造を示す。
【0020】
本実施形態のライブラリ装置は、筐体内部の構造として、アクセッサ走行路11と、ドライブスロット12と、マガジンスペース13と、電源スペース14と、制御部スペース15とに分かれるように構成される。
【0021】
アクセッサ走行路11には、アクセッサ20と、ラック30と、ガイド31とが設けられ、アクセッサ20は、平行に設けられたラック30およびガイド31に沿って直線上を移動できるようになっている。
【0022】
また、アクセッサ走行路11におけるドライブスロット12側の端部に、センサフラグ16が設けられ、アクセッサ20は、センサフラグ16により位置制御のための原点の位置決めを行う。
【0023】
ドライブスロット12は、カートリッジ内の磁気テープに対して情報の読み書きを行う各種のドライブを装着可能となっている。
【0024】
マガジンスペース13は、カートリッジを複数格納するマガジンを装着できるようになっている。
【0025】
電源スペース14に格納される電源部は、アクセッサ20やドライブといった装置内の各部分に電源を供給する。
【0026】
制御部スペース15に格納される制御部は、本実施形態のライブラリ装置に接続される不図示のPCなどに実装された制御プログラムの制御に連動して動作し、装置内の各部分の動作制御を行う。
【0027】
本実施形態のライブラリ装置は、以上のような構成により、アクセッサ20がマガジンへの所定のカートリッジ着脱位置と、ドライブへのカートリッジ着脱位置との間を移動し、アクセッサ20に取り付けられたアクセッサ機構が、マガジンおよびドライブの相互間でカートリッジを所定位置から所定位置へと移動させる。
図1、
図2の例では、アクセッサ20についても、カートリッジを移動させるための所要部品が取り外された状態を示す。このカートリッジを移動させる構成や、ドライブ、マガジンの構成は公知のものであり、説明を省略する。
【0028】
次に、本実施形態のライブラリ装置におけるアクセッサ20とその駆動機構について、
図3〜
図5を参照して説明する。
【0029】
図3は、アクセッサ20底面の外装板を一部取り外した状態を示す。
アクセッサ20は、駆動手段であるステッピングモータ(不図示)からの回転力を、不図示のギヤボックスに入力して回転速度を減速させ、ピニオン21に伝達する。こうしてピニオン21に回転力が出力され、そのピニオン21とラック30とが咬合することにより、アクセッサ20はガイド31に沿って直線上を移動する。
【0030】
アクセッサ20は、
図4、
図5に示すように、移動方向におけるセンサフラグ16の方向の外壁部分に、バイアス機構22と、センサ穴23とを備える。
【0031】
このため、アクセッサ20が、装置筐体におけるドライブスロット12側の壁面に所定距離まで近づくと、板状部材であるセンサフラグ16がセンサ穴23内に挿入される。また、バイアス機構22が筐体内側の壁面に押し付けられることにより、その壁面から離れる方向にバイアスが発生する。
【0032】
図6に、バイアス機構22の構成例を示す。
この
図6に示すように、バイアス機構22は、コイル状のバネ221の内側に伸縮筒222が設けられ、その伸縮筒222先端のネジ穴にネジ223が螺合されて構成される。このため、ネジ223が装置筐体内側の壁面に押し付けられると、ネジ223とアクセッサの壁面との間でバネ221を弾性変形させ、弾性による復元力を発生させる。
【0033】
伸縮筒222は、バイアス機構22が取り付けられたアクセッサ20の壁面の取り付け平面と垂直な方向にのみ伸縮する。また、この伸縮筒222の伸縮方向がアクセッサ20の移動方向と同一になるよう、バイアス機構22はアクセッサ20壁面に取り付けられる。
【0034】
このため、アクセッサ20が装置筐体におけるドライブスロット12側の壁面に所定距離まで近づくと、ネジ223が装置筐体内側の壁面に押し付けられ、その押し付け力によりバネ221がねじれたり曲がったりすることなく、伸縮筒222の伸縮方向に沿ってバネ221が弾性変形する。このため、伸縮筒222の伸縮方向、すなわちアクセッサの移動方向に沿って、ネジ223が押し付けられている装置筐体内側の壁面から離れる方向に弾性による復元力が発生し、バイアスとして作用する。
【0035】
図7に、本実施形態による原点位置決め動作の概略を示す。
センサフラグ16は、上述のように板状部材からなる。アクセッサ20がアクセッサ走行路11をドライブスロット12側に移動し、装置筐体壁面に所定距離まで近づくと、センサフラグ16はセンサ穴23内に挿入される。
【0036】
センサ穴23の内側には、フォトインタラプタ24が設けられる。フォトインタラプタ24は、不図示の発光部と受光部を備え、この発光部からの光が受光部により受光されるか否かを検出する。
【0037】
板状部材であるセンサフラグ16が上述のようにセンサ穴23の中に挿入され、フォトインタラプタ24の発光部からの光を遮ると、アクセッサ20の位置制御を行う制御部は、フォトインタラプタ24の受光部が光を受光しなくなったアクセッサ20の位置を原点とするよう原点リセットを行う。
このように、板状部材であるセンサフラグ16の縁端部におけるフォトインタラプタ24の発光部からの光を遮る位置が、アクセッサ20の位置制御における原点を定義する位置となる。
【0038】
また、アクセッサ20が、センサフラグ16の設けられた装置筐体壁面に所定距離まで近づくと、バイアス機構22の先端のネジ223が装置筐体内側の壁面に接触する。この位置からアクセッサ20が移動方向におけるセンサフラグ16の方向にさらに移動すると、バイアス機構22のバネ221が弾性変形し、センサフラグ16の設けられた装置筐体壁面から離れる方向に復元力が発生し、バイアスとして作用する。
【0039】
ここで、バイアス機構22は、アクセッサ20が原点に向けて移動していく際に、アクセッサ20がその原点位置に到達するより前に装置筐体内側の壁面に先端が接触し、復元力が発生し始める長さとして設けられている。このため、上述のようにフォトインタラプタ24がセンサフラグ16により原点の検出を行う時点では、すでにバイアス機構22の先端が装置筐体内側の壁面に接触し、バイアスが作用し始めている。
【0040】
また、バイアスの作用方向は上述のようにアクセッサの移動方向と同じにされている。また、アクセッサ20を駆動するためのギヤボックスやラック・ピニオン機構によるバックラッシの発生方向も、このアクセッサ20の移動方向であるため、バイアスの作用方向はバックラッシの発生方向と同じである。
【0041】
このため、上述のようにフォトインタラプタ24がセンサフラグ16により原点の検出を行う際には、バイアス機構22によるバイアスがギヤボックスやラック・ピニオン機構に作用し、バックラッシを実質“ゼロ”にする。このため、バックラッシのない状態で、原点の位置決めを安定して行うことができる。
【0042】
アクセッサ20の位置制御を行う制御部は、こうして安定的に原点リセットを行い、その原点からの移動距離により位置制御を行う。
【0043】
アクセッサ20を移動させる駆動手段であるステッピングモータは、印加されたパルス数に応じて回転する。このため、制御部がステッピングモータに印加するパルス数をカウントすることにより、原点から移動方向への移動距離を算出し、精密に位置決めするよう駆動制御する。
【0044】
本実施形態では、この原点の位置決めを、上述のようにバックラッシを除去した状態で行うため、原点リセットを安定して行うことができる。このため、確実に位置決めされた原点位置に基づいて、アクセッサ20の精密な位置制御ができる。
【0045】
上述した原点リセット動作は、アクセッサ20がアクセッサ走行路11を移動していく中でセンサフラグ16の近傍に位置している場合や、装置への電源投入時など、予め定められた各種のタイミングで行われる構成であってよい。
【0046】
以上のように、上述した本発明の実施形態では、バイアス機構22によるバイアスの作用するタイミングが、フォトインタラプタ24によるセンサフラグ16を対象としたセンシングの実施タイミングと同期している。このため、可動側であるアクセッサ20を駆動するギヤボックスやラック・ピニオン機構でのバックラッシに起因するガタを除去した状態で原点のセンシングを行うことができる。このため、原点の位置決めのためのセンシング位置を安定させることができる。
【0047】
このように、上述した実施形態によれば、アクセッサ20に付設されたバイアス機構により、実質バックラッシを“ゼロ”にして原点の位置決めを行うため、従来方式のようにソフトウェア制御による位置補正を行う必要なく、精密な位置制御ができる。
【0048】
このため、磁気テープライブラリ装置におけるアクセッサ機構の原点リセット位置を安定化させ、位置制御の精度を向上させることができる。
【0049】
なお、上述した各実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。
【0050】
例えば、バイアス機構22で弾性変形による復元力を発生させる弾性部材は、上述したコイルバネに限定されず、例えば板バネを用いても本発明は同様に実現することができる。
【0051】
また、バイアス機構22は、上述した実施形態のようにアクセッサ20に設けられる構成に限定されず、例えば筐体内壁に設けられる構成であってもよい。すなわち、アクセッサ20の移動方向に弾性変形の復元力を作用させることができれば、バイアス機構は任意の位置であってよい。
【0052】
また、バイアス機構は、上述した実施形態のように原点近傍でのみバイアスを発生させるものに限定されず、例えば定荷重バネなどを用いて、アクセッサ走行路11の全体でアクセッサ20にバイアスを作用させる構成であっても、本発明は同様に実現することができる。
【0053】
また、原点を定義するセンサフラグ16は、上述した実施形態のようにドライブスロット側に限定されず、アクセッサ走行路11における移動方向の反対側に設ける構成であっても、本発明は同様に実現することができる。
また、アクセッサ20が原点の位置にある状態でフォトインタラプタ24により原点検出可能な位置であれば、例えば装置筐体の天井や床面など、任意の位置であってよい。この場合、フォトインタラプタ24は、そのセンサフラグ16により原点位置を検出可能なように、そのセンサフラグ16の位置に対応した位置に設けられることとなる。
【0054】
また、センサフラグにより原点位置を検出するセンサは、上述した実施形態のようにフォトインタラプタに限定されず、所定の原点指標により原点位置を確定することができれば任意のセンサであってよい。
【0055】
また、アクセッサ20を移動させる駆動機構は、上述した実施形態のようにラック・ピニオン機構に限定されず、例えばウォームギヤによる駆動機構など、各種のギヤ駆動機構であっても本発明は同様に適用することができる。
【0056】
また、上述した実施形態では、磁気テープカートリッジのライブラリ装置として説明したが、このものに限定されず、各種のギヤ駆動機構についても本発明は同様に適用することができる。
この場合、上述した実施形態では、ギヤ駆動機構による移動対象がアクセッサ20であることとして説明したが、移動対象はこのものに限定されず、適用される装置に応じたものであってよい。
【0057】
また、ギヤ駆動機構による移動対象の移動経路は直線に限定されず、ギヤ駆動機構により移動可能な任意の経路形状であってよい。この場合、上述した実施形態におけるバイアス機構は、移動対象が原点近傍に移動した際に、移動対象の原点近傍における移動方向における原点から離れる方向にバイアスが作用するように設けられることとなる。